蓬莱人の見る夢

作品集: 最新 投稿日時: 2005/10/16 07:53:02 更新日時: 2005/10/18 22:53:02 評価: 26/27 POINT: 152 Rate: 1.31



「蓬莱伝説」

 遠い、遠い昔のこと。
 月からやってきた悪魔は、地上の人間に蓬莱の薬を授けました。
 不老不死。永遠の命。それは、人間たちが長い間見てきた夢。
 しかし、人間たちは薬を火口に捨ててしまいましたとさ。
 
 もったいないなぁ。
 私なら、絶対に使うのに。
 んー、やっぱり20年分くらいだけ使おうかな。
 そして、残りは捨てよう。

 ……そうした、はずだったのに。




「二色蓮花蝶」

 紅。
 散っていく葉が、空と地面を染める。
 白。
 夏の厳しい日差しは、少しずつ緩んできた。

 この季節の散歩は楽しい。
 葉っぱを踏むときの、音と感触。
 さくさく、ふわふわ。
 なんだか昼寝をしたくなっちゃった。

 落ち葉に埋まれば、死んだ気分になれるかな?




「桜花之恋塚」

 人は、死ぬと桜の下に眠る。
 あの世でも、見事な桜が見れますように。
 この世の桜が、もっと綺麗に咲きますように。
 そんな願いを込めて。
 
 最近、この桜の花びらが薄くなっている気がする。
 下で寝てる人が、この桜に飽きたのだろうか。
 それで、夜中にこっそり起きて逃げ出したのかな。
 地面の中じゃ、暇だろうし。

 ほら、ここ。人が入ってたような、大きな穴が空いてる。




「明治十七年の上海アリス」

 時間の流れ。
 それは、毒のようなものだ。
 生あるものは皆、やがて死んでいく。
 逃げることは、できない。

 私は蓬莱の国にいる。
 今日はワルツを踊ろう。
 普段は着ない綺麗な服を身につけて。
 くるくるとまわり続ける。

 ここでは、時間なんて流れはしない。




「東方怪奇談」

 妖怪だって?
 あはははは、いるわけないじゃん。
 ただの作り話だよ。
 子供達を脅かすためのね。
 
 まったくもう。
 どうせ、私が人間じゃないって分かったら怯えるくせに。
 余計な好奇心は、身を滅ぼすっていうよ。
 人間は、あんまり食べたくないし。

 あーあ、また逃げられちゃった。




「エニグマティックドール」

 少しいびつで、少しかわいらしい人形。
 とてもとても綺麗な目をした人形。
 捨てても捨てても、私のところに戻ってくる人形。
 そんな人形。

 また、カラスに目を盗まれてしまったらしい。
 まったく、困ったものだ。
 しょうがない、私の目をあげよう。
 今度こそ盗られないようにしてね。

 自分の目を取り出すの、結構痛いんだから。




「サーカスレヴァリエ」

 たいへんお待たせしました。
 当座最大の目玉。
 世にも珍しい生き物。
 『殺しても死なない人間』の登場だよ!
 
 ほら、心臓を潰しても全然平気。
 内臓を取り出しても、ちょっと痛いだけだ。
 おっ、きれいな肝だね。
 なかなか健康的じゃないか。

 食べてしまいたいくらい。




「人形の森」

 人間が森の奥に迷い込んできた。
 外は大雨。止む気配はない。
 天気が良くなるまで、泊めてあげよう。
 退屈なら、私が話し相手になってあげるから。
 
 そんなに怖がらないでいいから。
 わっ、私の首が飛んだよ。
 痛いじゃないか、まったく何をするんだ。
 服が血まみれになっちゃったよ。

 …………あ、首だけで話したのはまずかったか。




「Witch of Love Potion」

 くっくっく。
 君が探しているのは。こいつ、だろ?
 なかなか苦労したけど、ようやく入荷したよ。
 どんな娘もいちころ、究極の惚れ薬さ。
 
 とても貴重なものだよ。
 ちょっと見た目は悪いけどね。
 少し値は張るけど、どうだい?
 今買わないと、他の誰かに取られちゃうよ。

 蓬莱人の心臓(ハート)、永遠の想いの象徴さ。




「リーインカネーション」

 この小さな村に、もう何年住んでいるだろう。
 そろそろ、みんなが噂し始めてるかな。
 私が老いていかないことに。
 表に出ることを控えないといけないかも。

 え、お母さんは元気かって?
 お母さんの小さいころによく似てるって?
 …………ああ、そういうことね。
 そんなに時間が経っていたのか。

 はい、元気ですよ。瓜二つって、よく言われます。




「U.N.オーエンは彼女なのか?」

 絶世の美女であり、稀代のトリックスター、U.N.オーエン。
 数多の怪事件の裏側には、必ずと言っていいほど彼女の影が見え隠れしていた。
 そんな彼女の最期は、とても凄惨で異様なものだった。
 体の一部を欠落した8人の少年少女の中央で。バラバラになっていた。

 あいつの腕と引き換えに、僕の腕を破壊された。
 目で目を、耳で耳を、足で足を、喉で喉を、胴で胴を、頭で頭を、心臓で心臓を。
 それでも………あいつは生きていたんだ! 歪な笑顔だった!!
 かろうじて生き残った者達はそう残し、やがて全員発狂した。

 この事件を語る人間は、誰もいなくなった。




「永遠の巫女」

 神様の生まれ変わりだ!
 燃え尽きた灰の中から、蘇られたぞ!!
 生き神様!!!
 おお、ありがたや、ありがたや。

 織り成す言葉は、神の言葉。
 あまねく行為は、神の行動。
 それはそれで楽しいんだけど。
 逃げた。

 永遠に神に仕えるなんて、とんでもない。




「空飛ぶ巫女の不思議な毎日」

 草木も眠る丑三つ時。
 今日はあいつの刺客が来た。
 人間と妖怪。
 変な組み合わせだ。

 この人間と妖怪は物好きだな。
 輝夜は飽きないな。
 そして。
 私も飽きないな。

 生きているって、なんて素晴らしいことか。




「蓬莱人の見る夢」

 …………ふわーっ。
 なんか、変な夢見ちゃったな。
 せっかく気持ちよく寝てたのに。
 変な気分だ。

 ひらひら、ひらひら。
 紅い葉が降ってくる。
 散りゆく姿は美しい。
 じゃあ、散ることのできないものは、穢らわしいのかな?

 …………そうだ、慧音のところに行こう。



「人間と妖怪のハザマ」

 人間だって、妖怪だって。
 いつかは死ぬものだ。
 幻想郷だって、いずれは死ぬだろう。
 それでも、お前は生き続けるんだろうか。

 そんなはずはない。
 死ぬことはできるはずだ。
 必ず、私がその方法を見つけ出してやる。
 永遠の苦しみを、無かったことにしてやろう。

 お前が、長すぎる生に発狂してしまう前に。
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2005/10/16 07:53:02
更新日時:
2005/10/18 22:53:02
評価:
26/27
POINT:
152
Rate:
1.31
1. フリーレス ■2005/10/19 00:27:29
れ?
不思議な感じ。
なんか好きだな、こういうの。
2. 4 おやつ ■2005/10/19 02:09:23
ミュージックになぞらえた蓬莱人の物語、お見事です……
お題の消化がやや弱かった気もしますが、GJでした。
3. 7 MIM.E ■2005/10/19 20:04:24
脈絡無く移り変わる場面につい引き込まれました。
きっとそれは思考とおなじで、だからいつの間にか考えを巡らせている。
それが楽しい作品でした。
4. 7 床間たろひ ■2005/10/19 23:54:34
さてひさびさにCDを聞いてみるか。
思えばこのCDをショップで聞いたのが、東方との最初の出会いだったんだよな。
GJです。
5. 7 匿名 ■2005/10/20 03:33:23
切っても、切っても、切っても、切っても、出てくるのは同じ紋様だけ。
ああ、何かそんな菓子を思い出しました。
6. 8 たまゆめ ■2005/10/21 09:48:59
---------生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く
---------死に死に死に  死んで死の終わりに冥し
---------はて
---------いきてるのか  しんでるのか
おつかれ様でした。



7. 5 papa ■2005/10/21 16:03:04
「蓬莱人形」と「蓬莱人」ですか。
曲のタイトルに沿った小話とはよく考えたなぁと思いました。

お題との関連が薄いですけど。
8. 4 Q-turn ■2005/10/21 22:50:53
>じゃあ、散ることのできないものは、穢らわしいのかな?

果たしてどちらの答えを、彼女は求めているのでしょうか。
……みなまでもありませんかね。
9. 10 es-cape ■2005/10/22 01:52:19
Sound Horizonライク……とかいうと作者の人に失礼でしょうか?
U.N.オーエンの辺りとかで特にそう思ったのでした。

オーエンで誰もいなくなったを入れたり、
本編の別キャラを暗示するような内容だったり、色々細かな仕掛けが面白かったです。
少し変わった形式もあいまって楽しんだものの、
ストーリー自体はややオチが薄い感じで、CDの力によるところも大きいのでそこそこの点数にしようかなと思っていました、が。


作者からのメッセージすら作品に取り込むなんて反則です。
ははは、こやつめ。
最初はちょっとした整合性と奇を衒っただけかと思いましたが、なるほどこれは作者からのメッセージに書くに相応しいですね。
『そこに書く』ということだけで、この後どうなるかを暗示するなんて洒落た真似を。ハッピーエンドの様な、ある意味でバッドエンドの様な。
それを踏まえて全体を見ると、東方を包括している感が強まって色々と考えることが出来ます。

勝手に想像して勝手に盛り上がってる所もあるかもしれませんが、イメージを掻き立ててくれたということも含めて。
10. 4 めるぽ ■2005/10/22 18:51:00
あらゆる場所で、あらゆる時代で、本編では決して語られない妹紅の過去。
お見事でした。しかし、紅葉の描写が申し訳程度に終わっているのが惜しいです。
テーマ縛りで無ければこのような評価はとてもつけられないのですが、
私の考えるテーマの割合のボーダーを割っていますので、申し訳ありません。
本心では、あなたのこの作品、大好きです。
11. 7 一之瀬翔弥 ■2005/10/22 23:09:13
独特のリズム感と表現がステキですね。
特に、「永遠の巫女」の下り。
キリリと引き締めて、一切無駄の無い表現に脱帽。
12. 5 Tomo ■2005/10/24 12:03:15
東方ならではのアイディアにコインいっこ。この発想でいくと、もうひと工夫出来そうな気がします。
13. 8 ■2005/10/24 12:32:14
なるほど…うまいですね。原文を読んだ時にも感じたちょっと暗くて不可思議な空気を感じます。
14. 3 藤村りゅ ■2005/10/24 15:23:17
 「蓬莱人形」のコメント再利用は、当て嵌めるのが上手だなと感じた反面、やや手抜きな印象を抱きました。
15. 8 ABYSS ■2005/10/24 19:54:02
む。味のある作品ですね…おもわず唸ってしまいました。
16. 9 ななし ■2005/10/24 23:16:08
ブラックだが素晴らしい。
惹き付けられるだけの力がある。
17. 5 木村圭 ■2005/10/25 21:56:05
この気だるいような、寂しいような気持ちを何と表現すればいいのだろう?
各タイトルの使い方が上手いと思います。とても。
18. 6 ■2005/10/25 22:45:29
ガクガクブルブル……怖い。
夢なのに夢なのに……怖い。
いい感じに背筋が凍りました。
19. 7 世界爺 ■2005/10/26 00:37:01
そういえば、蓬莱人形。彼女も人の形。
深い深い幻想の裏側。恐ろしくも美しい。
人間妖怪の境目で、彼女は優しい殺意を抱く。

多くは語らず、どこか短い独白めいた文章が逆に広がりを感じさせるように思われました。
20. 5 七死 ■2005/10/27 01:09:30
蓬莱人形のデスクパッケージの裏調っすね?
あの頃に妹紅の存在は神主様のシナリオ中にいたんでしょうか。

小説としては難があるものの、SSとしては面白いアイディアです。
後書きだけ慧音になっているのも綺麗に決まってます。
21. 2 美鈴まさき ■2005/10/28 02:01:12
 「U.N.オーエン〜」のくだりはSH?
 蓬莱伝説の章題を全てそのまま、というのは結構凄いかも。
22. 5 風雅 ■2005/10/28 14:07:18
上手いこと見立ててるなあ。
こうして読むと違和感がないあたりが……。
でもちょっとお題がこじつけっぽい、かなあ。
23. 7 名無しでごめん ■2005/10/28 20:19:18
BGMに蓬莱人形を引っ張り出してきました。
本歌取りのアイデアと、それらを一編の話としたのがお見事です。
おまけにメッセージで華麗に締めていて上手いなぁ、と。
24. 1 弥生月文 ■2005/10/28 22:43:46
元となっている蓬莱人形ブックレットは音楽の補完のための小節なので、文単体ではあまり面白味を感じませんでした。
25. 6 IC ■2005/10/28 23:15:35
ゾクリとくるフレーズが端々に……。最終章の独白が印象的です。
26. 6 SSを書きなぐる程度の能力 ■2005/10/28 23:34:22
蓬莱人形の映し鏡、狂って見えるのは夢ゆえか、それとも。
全体に描写が断片的にすぎてイメージが沸かない感じがしてしまいました。
後、蓬莱人形の方を知らないと分からない部分が多いような。
発想や垣間見える幻想に光る物は感じるだけに、残念。
27. 6 K.M ■2005/10/28 23:54:41
妹紅の一炊の夢ってやつですかね
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