紅に変わる葉

作品集: 最新 投稿日時: 2005/10/18 10:25:11 更新日時: 2005/11/09 22:57:38 評価: 23/27 POINT: 85 Rate: 0.92
*このSSには残酷な描写が若干含まれます

「掃除をしますので、少し外に出ていていただけますか?」
 読んでいた本を置き、扉に向かう。
 扉を開けて出ようとすると、そこにフランドールが居た。
「姉様 アソボ!」
 毒性を孕んだ無邪気な笑みに、レミリアの表情が少しだけ引き攣る。
 そのレミリアにフランドールが飛びかかろうとした瞬間、様子に気が付いた咲夜の声が響く。
「時よ!」
 止まった時の中で咲夜は、両手を広げてレミリアに抱きつこうとしているフランドールをかかえて、壁に向かって方向を変える。
「そして時は動き出す」

ごっち〜ん

「うQ〜」
 向きを変えられたフランドールは、見事に壁にダイビング。
 悶絶しながら崩れ落ちていった。
「良い手際ね」
「ありがとうございます」
 そういってフランドールを抱えて、部屋を後にした。

「満月…か」
 この所、フランドールは満月になると、頻繁に地下から出て来るようになった。
 大暴れはないが、それでもなかなかに騒ぎを起こしてくれる。
 最近はほとんど咲夜一人で片付けてしまうが、以前一度だけ出て来た時ははパチュリー・美鈴と三人で何とか抑えた。
 流血沙汰となり、屋敷の損傷もひどい物だった。

「あの時も…今頃の季節だったかしら?」
 掃除の為に開けられていた窓から外を眺める。
 遠くの山がうっすらと紅に染まっている。
 レミリアは過去を思い出す。
 自分が本気で妹を殺そうとした時の事を。



 まだ咲夜が屋敷に居ない頃の出来事。
 夜の散歩を堪能したレミリアが帰ると、屋敷が半壊していた。
「まさか・・・」
 屋敷の上空に魔力が放つ光を見つけ、すぐさまそちらに向かい飛んだ。

 半壊した屋敷の上空で、フランドールとパチュリー・美鈴が対峙していた。
「パチュリー様。もう持ちません」
「堪えて。レミィが居ないからあなたしか頼りが無いんだから」
「…頑張ってみます」
 パチュリーは何事か呟き美鈴に手をかざす。
「?」
「プロテクト(魔力防御)の魔法をかけたわ。短時間なら多少の攻撃は防げる」
 ほんのりと光を帯びた自分の体を見て、美鈴は納得する。
「では行きます。援護お願いしますね」
 飛びだした美鈴に無言で頷き、スペルカードを取り出す。
「…エメラルドメガリス」
 青緑色の弾幕が、パチュリーから放たれる。
 美鈴を追い越し、一直線に突き進む巨大な弾がフランドールを狙い、そこから撒き散らされる小さな弾が逃げ場を奪う。

「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 笑いながら巨大な弾を素手で破壊し、ジワジワと向かってくる。
 一つの巨大な弾を破壊した向こう側に、美鈴が居た
「隙あり!破山砲!」
 弾幕に紛れて懐に飛び込んだ美鈴が一撃を放ち、氣を込めた拳が鳩尾にめり込む。
 会心の一撃のはずだが、当のフランドールは平気な顔をしている。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 無造作に振った腕が、美鈴の横っ腹を捉える。
 あまりにも無造作なその一撃は、美鈴を紅魔館の壁に叩き付け、血を吐かせる一撃だった。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 狂気の瞳は次の標的を捉える。
 ニタリ と口元が歪む。
 振り上げた腕に魔力を込める。
 それを解き放とうとした時、その瞳に喜ばしい者が写った。

「今回はずいぶんと派手にやったわね」
 パチュリーの前に立ったレミリアの第一声。
「姉様…姉様が来た!アソボ!アソボ!!あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 喜びでさらに口元が歪む。
「美鈴 動けるなら屋敷の中に避難しなさい」
 返事の返せない美鈴は、口元の血を拭い、ふらつきながらも屋敷に入って行った。

「ちょっと暴れすぎね。きつくお仕置きしないと」
 両手を横に広げ、魔力を込める。
 紅い光が手の平に収束する。
 対するフランドールは、両手を上下に広げ魔力を収束させる。
「スカーレットシュート」
「カタディオプトリック」
 二つの弾幕がぶつかり合い、互いを打ち消しあう。
 相殺しあう紅と白にレミリアが飛び込み、フランドールに襲い掛かる。
「チェックメイト」
 囁き声が聞こえるほどの距離。
 紅の二つの瞳が、紅の狂気の瞳を見据える。
 振りかぶった拳を突き出す。
 しかし渾身の拳は、手応え無くフランドールの顔面を突き抜ける。
「キングのつもりがポーンだった。あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 レミリアが顔を上げると、三人のフランドールに囲まれていた。
「今度は私がチェックメイト。フォーオブアカインド」
 言い終わると同時に、三人が一斉に弾を撒き散らす。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 至近距離で撒き散らされた弾に逃げ場は無く、無数の弾にその体を翻弄される。

 一斉射撃が終わると同時に、本体であろうフランドールがレミリアを蹴り飛ばす。
「レミィ!」
 蹴り飛ばされたレミリアをパチュリーが受け止める。
 左腕は折れ、首がおかしな方向に曲がっている。
「パちェ…ぷロテくト」
 首が曲がっているせいか、レミリアの声はおかしい。
 止めようとしたパチュリーだが、獣のようにギラギラとしたレミリアの目を見て息を飲む。
「…こうなったらレミィは止まらない…」
 言葉に答え、レミリアにプロテクトをかける。

「凄く楽しいよ姉様!あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 興奮に目を輝かせたフランドール。
「穿ツ!」
 その姿を見据え、レミリアが言い放つ。
「死ヲ味アワせテあげルワ!」
 凄絶な姿のまま飛び上がり、再びフランドールと対峙する。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 無事な右腕を振りかぶり、魔力を生成する。
「止メるモノ無き魔槍 必殺『はートブれいク!』」
 生成した魔力を槍に変え、轟風と共に投げつける。
「そんなのへし折ってやる。あはははははははははははははは はぐぁ!!」
 叩きつけたはずの紅剣を突き抜け、狙い違わずフランドールの左胸を突き抜ける。
 槍は貫通し、言葉通りその体を穿った。

「かっ…がはっ」
 びくりと体を痙攣させた直後、盛大に血をぶちまけながら落下するフランドール。
 撒き散らされた血は庭の木々を紅に染める。
「一足早く紅葉が見られたわね パチェ」
 曲がった首を元に戻して言う。
「冗談言ってる状況じゃないでしょ。すぐ休んで。妹様は私が戻しておくわ」
 時間をかければ治るとは言え、自分の状況はひどい物だった。
 逆上した自分に代わり、妹を心配してくれたパチュリーに無言で感謝しつつ、レミリアは床に戻っていった。

 その後咲夜が住み着き、手を抜いていたとは言えレミリアは博麗の巫女に敗れた。
 しばらくぶりに暴れだしたフランドールも、すばしっこい魔女に負けた。



 過去の一騒動を思い出した後、レミリアは最近の事を思い出す。

 ある日パチュリーが面白い事を言った。
「レミィ あなたも妹様も何か変わったわね」
 その時は「そう?」とだけで終わっていたが、今何となくそれを実感していた。
 妹は頻繁に出てくるようになり、錯乱する事が減った。
 自分も頻繁に外出するようになり、以前は食料でしかなかった人間に興味を持つようになった。
 吸血鬼も、あの山の紅葉のように変わるものなのだろうか?
 それとも無意識のうちに、ハートブレイクを撃つ時、手元を狂わせたビジョンに捕われているのだろうか?
 無邪気な笑みを浮かべる妹に、抱きつかれて困る自分。

 そんな事を思いつつ、掃除道具を残したまま帰ってこない咲夜をどういじめてやろうか考えていた。



***以降皆さんのコメントを参考にして書き直したものです***



 パチェの図書館から借りてきた本を開く。
 秋は気候が良く、日が落ちるのも早いので、活動時間が長い。
 暇潰しに読書などするのも悪くない。
 それにしても…一体どう言うつもりなのだろうか?
 パチェに薦められた本は、大雑把に言うと『悪人が心改める』と言うあらすじだ。
 随分と出来過ぎた話だと思ったが、著者自身の体験を元に書いた物と知り、興味本位で読む事にした。



「掃除をしますので、少し外に出ていていただけますか?」
 本から目を上げると、扉からちょこんと顔だけ出した咲夜がいる。

 ?

 ぱちくり

 何故咲夜はノックもせずに、扉を開けて顔だけ出しているのだろうか?
「ノックはしましたよ 3回ほど」
 私の無言の訴えに気が付いたか、そのままの格好で返してくる。

 ノックなんて聴こえただろうか?

 疑問に思うが、こんなつまらない事に嘘はつかないだろう。
 納得いかないながらも納得し、机に本を置いて扉に向かう。
 入れ替わりに掃除用具を持った咲夜が扉を開けた瞬間、その頭上を紅い物体が飛び越えてくる。
 自分と咲夜の目の前に降り立った物体は、フランドールだった。

「姉様 アソボ!」

 毒性を孕んだ無邪気な笑みに、自分の顔が少しだけ引き攣るのが分かる。
 見れば咲夜も顔を引き攣らせている。
 珍しい表情だ。
 フランドールは獲物を狙うように胸の前に手を出し、無闇に指をわきわきさせている。

「遊ぼ!!」

 と言いながら飛びかかろうとした瞬間、その背後にいる咲夜の声が響く。

「時よ!」

 止まった時の中で咲夜は、両手を広げてレミリアに抱きつこうとしているフランドールをかかえて、壁に向かって方向を変える。
 私には何故かその光景が見える。
 見えるだけで動けないんだけど。
 私の『運命を操る』と言う力に関係するのかしら?
 設置の終わった咲夜は、もと居た辺りに戻り…

「そして時は動き出す」

 ぱちんと指を鳴らした。

ごっち〜ん!

 盛大な突撃音。

「うQ〜ぅぅぅ」

 向きを変えられたフランドールは、見事に壁にダイビング。
 悶絶しながら崩れ落ちていった。

「良い手際ね」
「ありがとうございます」

 そう言って、たんこぶを作って目を回しているフランドールを抱え、部屋を後にした。

「…満月か」

 先ほど咲夜のノックに気付かなかった理由が分かった。
 満月のせいで、読書に集中していた私の感覚は、より一層本にのめりこんでいたようだ。
 パチェじゃあるまいし…と自分の行動に苦笑してしまう。

 血が騒ぐのか、フランドールは満月になると、頻繁に地下から出て来る。
 大暴れはないが、それでもなかなかに騒ぎを起こしてくれる。
 最近はほとんど咲夜一人で片付けてしまうが、以前一度だけ出て来た時はパチェ・美鈴と私で何とか抑えた。
 流血沙汰となり、屋敷の損傷もひどい物だった。

「あの時も…今頃の季節だったかしら?」

 ふと外が見たくなり庭へ向かう。
 太陽は山に沈み、名残惜しいかのようにその光で稜線を際立たせる。
 息も絶え絶えな日の光が消えるのを待ち、遠くの山を眺める。
 思った通り赤・朱・紅・黄と、色鮮やかに染まっている。

 紅葉した山を眺めながら、過去を思い出す。
 私が本気で妹を殺しかけた時の事を。


* * * * * * * * * * * * *


 まだ咲夜が屋敷に居ない頃の出来事。
 夜の散歩を堪能したレミリアが帰ると、屋敷が半壊していた。

「まさか・・・」

 屋敷の上空に魔力が放つ光を見つけ、すぐさまそちらに向かい飛んだ。


 半壊した屋敷の上空で、パチュリーと美鈴がフランドールと対峙していた。
 美鈴は服のあちこちに焦げや破れがあり、剥き出しの腕や足には痣も見られる。
 パチュリーは無傷だが息が荒い。

「パチュリー様。もう持ちません」
「堪えて。レミィが居ないからあなたしか頼りが無いんだから」
「…頑張ってみます」

 そう言って息を吸って吐いて、むん!と四肢に力を入れ直す。
 紅い瞳だけが嫌に目立つフランドールを一瞥して、パチュリーは何事か呟き美鈴に手をかざす。

「?」
「マジックプロテクト(魔力防御)の魔法をかけたわ。短時間なら多少の攻撃は防げる」

 ほんのりと光を帯びた自分の体を見て納得する。

「行きます。援護お願いしますね」

 言い終わると同時に、フランドールに向かい飛び出す。
 その背中に無言で頷き、スペルカードを取り出す。

「環描く青緑の巨石 エメラルドメガリス」

 青緑色の弾幕が、パチュリーから放たれる。
 美鈴を追い越し、一直線に突き進む巨大な弾がフランドールを狙い、そこから撒き散らされる小さな弾が逃げ場を奪う。

「あははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

 笑いながら巨大な弾を素手で破壊し、ジワジワと向かってくる。
 一つの弾を破壊したその向こう側に、美鈴が居た。
 撒き散らされる小さな弾をパチュリーがかけた魔法で耐えつつ、巨大な弾に隠れて近づいていたのだ。
 とっさに反応できないフランドールの隙を突き、懐に飛び込む。

「隙ありっ 破山砲!」

 氣を込めた拳が鳩尾にめり込む。
 途切れた笑い声と確かな手応え。
 しかし美鈴の会心の一撃を受けて尚、当のフランドールは平気な顔をしている。

「あはは 弱い弱い!」

 無造作に振った腕が、美鈴の横腹を捉える。
 あまりにも無造作なその一撃は、美鈴を紅魔館の壁に叩き付け、血を吐かせるほどの威力。
 ずるり と力無く崩れ落ちる美鈴。

 フランドールは美鈴を一瞥した後、その瞳に次の標的を捉える。
 その目標に向かい、振り上げ魔力を込める。
 標的とされたパチュリーは、咳をしていて反応が出来ない。
 それを解き放とうとした時、その瞳に喜ばしい者が写った。

「ずいぶんと派手にやったわね」

 飛んできたレミリアの第一声。
 守るようにパチュリーの前に立ち、久しぶりに見る妹を睨みつける。

「姉様…姉様が来た! アソボ! アソボ!! みんな脆くてつまんないよ!」

 フランドールは叫び、歪んだ口元がさらに歪む。
 もはや喜んでいるのかどうか分からないほどに歪んでいる。

「レミィ 美鈴が…」
「酷いわね…。 美鈴 動けるなら屋敷の中に避難しなさい」

 一瞬だけパチュリーの示す方に目を向け美鈴の様子を確認し、すぐさま視線をフランドールに戻す。
 返事の返せない美鈴は、口元の血を拭い、ふらつきながらも屋敷に入って行った。

「ちょっと暴れすぎね。きつくお仕置きしないと」

 両手を横に広げ、魔力を込め、紅い光を手の平に収束。
 対するフランドールは、両手を上下に広げ魔力を収束。
 二人は同時に胸の前に手をかざし、スペルカードを発動させる。

「紅き矢の豪雨 スカーレットシュート」
「折れろ!屈しろ!逃げ惑え! カタディオプトリック」

 二人の手から紅と白の弾幕が解き放たれる。
 絶え間無く放たれる機関銃のような紅い弾幕。
 一見滅茶苦茶にばら撒いているように見えて、途中から方向を転じて狙いを澄ます白い弾幕。
 二つの弾幕がぶつかり合い、互いを打ち消しあう。
 その相殺しあう紅と白にレミリアが飛び込む。
 スペルカードに集中しているのか、フランドールはレミリアの動きにまったく反応しない。

「チェックメイト」

 囁き声が聞こえるほどの距離。
 ここにきてフランドールはレミリアの存在に気が付く。
 紅の二つの瞳が、同じ紅の狂った瞳を見据える。
 驚愕の表情を浮かべるその顔に、振りかぶった拳を突き出す。
 しかし渾身の拳は、手応え無くフランドールの顔面を突き抜ける。

「キングのつもりがポーンだった。 残念でした〜」

 予想外の所から声が聞こえる。
 驚いたレミリアが顔を上げると、三人のフランドールに囲まれていた。

「今度は私がチェックメイト。フォーオブアカインド だよ」

 言い終わると同時に、三人が一斉に弾を撒き散らす。

「「「あはははははっ!!」」」

 極至近距離で撒き散らされた弾に逃げ場は無く、無数の弾にその体を翻弄される。
 一斉射撃が終わると同時に分身が消え、締めとばかりに蹴り飛ばす。

「レミィ!」

 ボールのように蹴り飛ばされたレミリアを追いかけ、パチュリーが受け止める。
 見れば左腕は折れ、首がおかしな方向に曲がっている。

「パちェ…マじっくぷロテくトをかケなさい」

 首が曲がっているせいか、レミリアの声はおかしい。
 何かを言おうとしたパチュリーだが、獣のようにギラギラとしたレミリアの目を見て息を飲む。

「やッパり…アの子にハ『壊ス』と言う事ガどう言ウ事か、シっかりト教える必要ガアるよウね」

 パチュリーの目の前には『友人』のレミリアは無く、『吸血鬼』のレミリアがそこにいた。
 その様子に怯えながらも、言葉に答えマジックプロテクトをかける。

「凄く楽しいよ姉様!あははははははははははははははははははははははははははははははははははは。姉様は頑丈で壊れないから楽しいよぉ!」

 興奮に目を輝かせたフランドール。
 絶頂を迎えんばかりに身悶えしている。

「穿ツ!」

 その姿を見据え言い放ち、止めようとするパチュリーの腕を振り解く。

「死の味ヲ堪能シなさイ!」

 凄絶な姿のまま飛び上がり、再びフランドールと対峙する。

「あんまり無理しない方がいいよ。姉様が壊れちゃったら楽しめなくなっちゃう」

 いやらしい笑いを浮かべながら、腕を振り抜き弾幕を投げつける。
 パチュリーの魔法で弾幕を相殺しつつ、無事な右腕を振りかぶり魔力を生成する。

「ソノ身に『壊す』ト言う事を刻みツケる」

 魔力を槍の形に生成。
 振りかぶり力を溜める。
 狙いは左胸。
 心臓を抉られた程度では消滅しないだろう。

「止メるモノ無き魔槍 必殺『はートブれいク!』」

 轟風と共に投げつけようとした瞬間、怒りに染まったレミリアの脳裏に何かの光景が映り、一瞬にして怒りの感情を押し流した。
 しかしその光景は、手を止める事叶わず、無常にもその手を離れた槍は突き進む。

「そんなのへし折ってやる!」

 いつの間にか発生させていた紅剣を振りかぶり、叩くように槍へと振り下ろす。
 しかし叩き付けたはずの紅剣をすり抜け、そのままフランドールの左胸を突き抜ける。
 名前通りその心臓を穿った。

「えっ? ………が はっ」

 びくりと体を痙攣させた直後、盛大に血をぶちまけながら落下するフランドール。
 撒き散らされた血は庭の木々を紅に染める。
 吸血鬼は、心臓を抉られた程度では消滅する事は無いとはいえ、かなりの苦痛なのだろう、のたうち苦しんでいる。
 レミリアは呆然とその光景を眺めていた。

「一足早く紅葉が見られたわね パチェ」

 パチュリーが近づいてくる気配を感じ、平静を装った声で言う。
 曲がった首はすでに治癒しかかっているが、顔を背けているので、その動揺した表情は見えない。

「冗談言ってる状況じゃないでしょ。すぐ休んで。妹様は私が戻しておくわ」

 時間をかければ治るとは言え、自分も妹もひどい状態だった。
 逆上した自分に代わり、妹を心配してくれたパチュリーに無言で感謝しつつ、レミリアは床に戻っていった。


* * * * * * * * * * * * *


 その後咲夜が住み着きく。
 赤い霧の一件では、手を抜いていたとは言え博麗の巫女に敗れた。
 しばらくぶりに暴れだしたフランドールも、すばしっこい魔女に負けた。
 過去の一騒動を思い出した後、レミリアは最近の事を思い出す。
 ある日パチュリーが面白い事を言った。

「レミィ あなたも妹様も何か変わったわね」

 その時は「そう?」とだけで終わっていたが、今何となくそれを実感していた。
 妹は頻繁に出てくるようになり、暴れる事が減ったどころか、まるで加減を知るためにじゃれる猫のように見える時さえある。
 自分も頻繁に外出するようになり、以前は食料でしかなかった人間に興味を持つようになった。
 気紛れで招き入れた咲夜の影響もあるのかもしれないが、何よりあの巫女には興味を引かれる。

 吸血鬼も、あの山の紅葉のように変わるものなのだろうか?
 紅く染まった葉は枯れ、地に落ち、木の糧となる。
 糧を吸い木はまた元のように緑の葉を芽吹かせる。
 一見同じように見えるが、その緑の葉は元の葉とは別物だ。

 運命はくるくると舞う枯れ葉と同じ。
 何所に行くか分からない。
 私の能力は、ただその葉に何所からか風を送るだけ。
 その力が見せたあの時の光景は、糧を吸って新しく芽吹いた葉なのだろうか?

 無邪気に笑う妹に、抱きつかれて困る自分。
 あの時見えた光景。
 私の能力が見せた幻視。


 正直自分は『変わった』と言う実感は無い。
 けれど…パチェがこんな本を薦めてくるんだから、変わったのかもしれない。
 先ほどまで読み耽っていた本を再び開く。
 いや、きっと変わったのだろう。
 そうでなければ、いつまで経っても戻って来ない咲夜に、困り事を押し付ける程度のお仕置きしか思いつかない訳が無いのだから。
10/17の13時頃思いついた話です。
正直ちゃんとまとまるとは思いませんでした。
楠木忍
http://www1.odn.ne.jp/shino/
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2005/10/18 10:25:11
更新日時:
2005/11/09 22:57:38
評価:
23/27
POINT:
85
Rate:
0.92
1. 4 おやつ ■2005/10/20 18:42:52
展開は急に感じましたが、締めが決まっていて違和感は残りませんでした。
公式だと余り仲の良い姉妹ではなさそうですが、私はこっちの紅姉妹が大好きです。
2. 5 papa ■2005/10/21 18:14:50
妹様がこわいです。
いや・・・これでこそ妹様なのかもしれないですね。
3. 2 床間たろひ ■2005/10/22 01:18:33
ん〜未だにフランってどんなキャラなのか摑めないんだよね。
原作だと、この作品のようにイカレてるようなイメージはないんだけど……

どうせならもっともっと狂気に染まる妹様が見たかったり。
4. -1 楠木忍 ■2005/10/22 11:47:54
修正個所が…

・「今回はずいぶんと派手にやったわね」
 『今回は』は不用 初めて出てきたんだから

・狙い違わずフランドールの左胸を突き抜ける。
 『狙い違わずは不用』本当は狙いは違えている
 顔面を狙ってたんだから

・吸血鬼の心臓は木の杭で打たない限り滅ぼす事が出来ない
 これに関する記述を入れ忘れている

やっぱり勢いで作るとミスや抜けがありますね 反省
5. 6 MIM.E ■2005/10/22 20:09:36
フランの壊れっぷりに萌えた。
変わった事を自覚した二人が再び昔に戻る瞬間とか幻視した。
そうならなければよいが、そういう熱い展開もいいなぁ。
6. 5 一之瀬翔弥 ■2005/10/22 23:42:28
こう言う感じのもの、大好きです。
ただ、ちょっと妹様=狂気、に頼りすぎな印象も。
もうちょっと踏み込んだ描写があっても良かったかしらん。
全体としては十分以上に面白かったです。
7. 6 匿名 ■2005/10/23 20:48:20
怖えぇ! と思わせつつも最後は綺麗に纏める。その手法お見事でした。
8. 3 Tomo ■2005/10/24 11:49:09
紅葉が血に染まるという箇所を見落としそうになりました。ネタとして重要な部分だと思うので、構成や文章のディテールにもう一工夫欲しいところです。
9. 2 藤村りゅ ■2005/10/24 15:41:34
 全体的に単調なので、バトルでも盛り上がりに欠けていました。
 狂気の描写が一辺倒なので、アップダウンというか緩急が欲しかったです。
10. 1 Q-turn ■2005/10/25 15:08:44
>逆上した自分に代わり、妹を心配してくれたパチュリーに無言で感謝しつつ、レミリアは床に戻っていった。

こんなやり取り大好きです。
11. 2 木村圭 ■2005/10/25 21:48:40
手元が狂って心臓貫通ってどこ狙ってたんだあんた(汗)
バトルがあまりに短すぎて物足りませんでした。
12. 4 世界爺 ■2005/10/26 00:47:06
弾幕シーンにもうちょい迫力が欲しかったですね。
台詞だけに頼っているからか、いまいち乗り切れずじまい。
地の文との相乗効果で迫力や速度は発生するものですよー。
それにフランの狂気も……まあなんというかありきたりで。
ちょっと微妙なように感じました。壊れたように笑えばいいというものでも。

ただ、話はとても良かったと思います。
無邪気なフランドールが可愛いなあ。
13. 8 ■2005/10/27 14:56:56
凄惨ではありますが、どことなく真紅よりは紅葉色ですね。この場面。
14. 4 ■2005/10/27 22:34:54
壊れフランはあまり好きでないのですが、やっぱり怖いです。
紅葉をこのように使うのもまた、一興ですね。
15. 4 流砂 ■2005/10/28 03:24:59
いやいや妖夢、紅葉の様に変わっちゃ拙いだろうと突っ込みを入れてみるテスト。
自然の紅葉も、血の紅葉も、前向きな変化とは縁遠いものかと。
後、戦闘風景の細かい描写にもう少し力を入れると素敵かと思われます。
16. 3 風雅 ■2005/10/28 14:20:17
とりあえず書こうと思ったことが天晴れ。
でも話の整合性とお題の消化のみに留まっているのが残念かと。
もう少し深みがほしかったなあ。
17. 6 名無しでごめん ■2005/10/28 20:33:57
レミリア様恐いよレミリア様。
狂気の雄叫びを上げる妹様よりも、軽い口調で冗談めかすレミリア様が本気で恐い。
久々に吸血鬼ぽいレミリア様を見ました。
18. フリーレス ■2005/10/28 21:59:42
二人ともステキに壊れてるなぁ〜
19. 5 K.M ■2005/10/28 22:00:26
人と出会うと人は変わりうる。殺し合ったこともあったけどそれも今は昔。
こんな日々も悪くは無い・・・はず。とりあえず咲夜さんはこの後がんばれ。
20. 2 es-cape ■2005/10/28 22:39:34
どうせならば、もっともっともっと濃密な血と体液が見たかったです。そんなグロ好き。
最後のまとめ……吸血鬼姉妹の変化を突き詰めてくれれば、とても良かったと思います。
21. 1 弥生月文 ■2005/10/28 23:02:26
全体的に淡白で単調に感じました。フランの笑い方のくどさが特に。
22. 4 ななし ■2005/10/28 23:16:39
すみません、コメント間に合いません。
23. 5 IC ■2005/10/28 23:45:52
少し物足りないかなぁと。
狂気とかそういうのを見せたいだけなら十分ですけど、できればもうちょっと尺を取って、エピソード1つもしくは内面描写もあったらもっといいなあと思います。
ちょいと贅沢を言ってみました。
24. 4 SSを書きなぐる程度の能力 ■2005/10/28 23:47:36
狂い狂った妹も血の色までは狂っていなかったのか。
構成は現在→過去→現在ではなく直接過去から始めたほうが良かったと思います。
後、うまく言えないのですが戦闘シーンに全体的に緊張感が無いような……なんでだろう。
25. フリーレス 楠木忍 ■2005/10/30 01:06:43
 拙い作品に、様々な感想ありがとうございます。
 いくつかレスという名の言い訳でも…。


>『緊張感が無い』・『物足りない』
 流砂さんのコメント通り、描写の足りなさが原因です。
 以前から指摘されていて、意識はしていたのですが……まだまだ未熟です

>フランドールの笑い方
 同じ部分をリピートする、壊れたレコードを意識しました
 これを表すような言葉を入れるだけで、多少はフォローできたのかも知れませんが…

>手元が狂って心臓貫通ってどこ狙ってたんだあんた(汗)
 木村圭さんのコメントより
 自分のコメントで入れたのですが、本当は頭を狙ってました
 指摘通り『何所狙ってたんだ?』と思った方多数かと


 よくよく同じような所を指摘されているので、自分の弱点を明確に出来ました。
 コメントを書いて頂いた方だけでなく、読んでくださった方すべてに感謝します。
26. フリーレス 楠木忍 ■2005/10/30 01:10:31
他に書く場所が無いのでここに

他の方の作品に入れたコメントは、あえて点数無しで入れました
点数入れて評価するなんて恐れ多かったので…
27. フリーレス 楠木忍 ■2005/11/06 22:59:54
11/6 追記と言う形で、皆さんのコメントを参考に直してみました
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