ゆめうつつ

作品集: 最新 投稿日時: 2005/10/19 08:03:49 更新日時: 2006/02/04 03:32:48 評価: 26/27 POINT: 179 Rate: 1.51









夢を見る。









いや、夢といっても過去に見た映像が再生されているだけのもの。
そこで私は泣いていた、年甲斐もなしに。
降りしきる紅葉の中、彼女は私の膝の上で目を閉じたままだ。
人間というものは時間の流れに逆らえない。それは博麗といえども例外ではない。
もうすっかり皺だらけになってしまった手を、昔から変わらぬ自分のそれと重ねる。

「人生の最後をこんな綺麗なところで迎えられるなんて幸せ者よ、私は」

そう言って彼女はゆっくりと目を開けると、頬に降りてきた紅い葉をくすぐったそうに受けた。
長い年月を無駄に生きてきただけなのだろうか、私は。こんな時に、気の利いたこと一つも言えないなんて。

「ねえ、紫。雨が降ってるのかしら?なんだか手が濡れてるわ」

再び目を閉じた彼女が言う。だが空は見事な秋晴れで、雨など降っているはずもない。
濡れているのは、他ならぬ私の……
そして落ちた紅葉を払おうと触った頬は――
静かな笑みの形を残しているというのに、もう冷たかった。













そこで目が覚めた。









もう色褪せてしまうほど昔のことのはずなのに、私はまだあの場所から動き出せずにいる。
あれほど私の心を捕えて離さなかった人間はいない。無限とも言える時を生きて、後にも先にもただ一人。
そう思っていたはず。


だが今の博麗の巫女はどうなのか?
何故か初めて見た時に、既視感のようなものがあった。外見なんて、全くと言っていいほど似ていないのに。
だがそれ以来、霊夢を見る度に彼女を重ねてしまう。
会う度に、彼女が霊夢を侵食していく。
それはまるで、私が代役を一方的に押し付けているように……


そんな考えが頭に浮かんでやめた。これ以上考えるのは、何かとてもよくない気がしたのだ。
頭の中がすっきりしないのは、寝起きのせいだと思うことにして食事の為に居間へと向かうことにしよう。
のそのそと起き上がり軽く伸びを。と、そこで開け放したままにしてある窓から外が見えた。
昨日までは何とも思わずに見ていたその景色。
だが今ではあの夢のせいか、見事に染まった葉が視界に入るだけで心にざわざわと漣が立つ。
嫌が応にも彼女を思い出させるあの色。
それを見るのが嫌で、視線を下へと向けた。だがそこには外から吹き込んだのであろう葉が一枚。
そんな偶然がまた私の心をささくれ立たせる。
だから、私は半ば逃げるようにして部屋から出た。
幻想郷一の大妖怪がこんなものを恐れているなんて、我ながら笑い話にもならなかった。










味わうことをせず、ただ流し込むだけの食事を終えても気分は晴れない。今日の天気とは正反対である。
かと言って、このまま家の中で時間を潰すのにも中々骨が折れるし、今更寝なおすというのも難しい話だ。
普段なら道楽の為にする悪戯も、今日はどうも良いものが浮かんでこない。
くさくさした気分を転換しようと煙管を吸い、肘置きに凭れ掛るようにする。
だらりと伸ばした足が、裾から遠慮なく覗いていた。
それにしな垂れかかるような体勢だから、編み上げていない長い髪は畳の上に乱雑に散っている。
傍から見たら、何ともだらしのない格好だろう。
ぐうたらな生活により目覚めたのが昼過ぎであるうえに、このまま夜を迎えてそのまま意識を手放すというのはあまりに不毛だ。
しかしやることも特になく、それなりに長い不毛な時間を過ごし続けた時――
襖の向こうから発せられる藍の声が、今まで単調に紡がれるだけだった糸をぴぃんと弾いた。

「紫様、少々お時間をいただいてよろしいでしょうか?」
「構わないわ。入りなさい」

まるで最初から藍の言葉がわかっていたかのように即答する。
その言葉を聞くなり、静かに一礼をして藍が私の目の前までやってきた。

「一体、どうしたのかしら。何か私の力を借りなければならない事でもあるの?」
「いえ、そういうわけではありません」

藍の様子がいつもとは違う。どうやら緊張しているようだ。
無言の時間が流れ、二人の間に紫煙がゆらゆらとくゆる。
そして意を決したように口を開いた。

「紫様のご様子が少々優れないようだったので、僭越ながらお話を聞きに参った次第です。
 私でよろしければ何なりとお申し付けくださいませ。あなた様の代わりに全てに立ち向かいましょう」


……最近、こんな風に自分の式に驚かされることがある。
心の機微を敏感に察知し、私が自分で気づいていない答えを示してくれることがあるからだ。
ここまで聡い必要は無いと思うが、それだけ気を遣ってくれているということなのだろう。
だからこれ以上情けない姿は見せられない。藍は良くわかってはいないながらも、私の背中を押したのだ。


「ありがとう。でももういいわ。あなたがくれた言葉のおかげで、踏ん切りがついたしね」
「と、言いますと?」
「自分の心が晴れないのなら、その原因と立ち向かえばいいだけなのよ」

そう言って藍に向き直ると、軽く頭を撫でてやった。
最初は驚いた顔をしたがそのまま静かに目を瞑り、されるがままになる。
手を動かすたびに帽子の下にある二つの耳がくすぐったそうに動いていて、その姿がなんだかひどく懐かしかった。















ざっ、ざっ、ざっ。
季節のせいか、神社に溜まる落ち葉も増えている。
よって、霊夢が掃除に掛かる時間も必然的に多くなるわけで。
しかもこれから季節は冬に向かう。ただでさえ少ないお賽銭が、これからはより少なくなること請け合い。
だからだろうか、博麗霊夢は見るからに不機嫌だった。

「あー、もう。やってもやっても終わらないじゃないの!!」

箒をぽいと投げ捨て、うがーと大きな声で叫ぶ。そのついでに一ヶ所に溜めた落ち葉を蹴り飛ばした。
せっかく掃除したのに、そんなことをしては意味が無いだろう。
境内にばらばらと散らばる落ち葉を踏む度に、くしゃり、かさかさと乾いた音が鳴る。
童心に戻ったようでなんだか楽しい。

「あら、何やってるの? 麦踏は神社でするものじゃないということを知らないのかしら」
「わかってるわ。それよりも気づくのが随分遅かったわね。あなたの後ろにいただけなのに」

ようやく私を認識した霊夢が声をかけてくる。が、その顔は特に歓迎している風でもない。
かと言って、厄介そうな顔をしているのでもなかった。飄々と、達観したようなその表情。
それがいつもの博麗霊夢だった。
私はそれに安心した。相手が身構えている状態で話を切り出すのも、なんだか都合が悪く思えたからだ。

「どうしたの。麦踏しに来たんじゃないのはわかったけれど、紫がここに何をしにきたのかがまだわからないわよ」
「ふふふっ、ちょっと霊夢をお誘いに来たの」

珍しく、思っていることをそのまま告げた。
今日の目的への過程を、色々とこねくり回すつもりは毛頭無い。

「お誘い? また夜を止めに行くとか言うんじゃないでしょうね」
「そんな無粋なことはしないわよぅ。今日はあなたを紅葉狩りに誘いたかっただけ」


突拍子も無い提案に、訝しげな表情を作る霊夢。それを説得する意味合いもこめて「風流でしょ」と、笑いかけた。
ここでこの誘いが拒否されてしまえばそれで終わってしまうのだが、なぜだか受け入れられる自信がある。




だって追憶の中の彼女は受け入れたのだ、全てを。
こんな信用する必要などまるで無い妖怪も、そのまま受け入れた。
彼女が私を拒んだことはなかった。
だから霊夢もそうするような気がしたのだ。
これはまるで根拠の無い予想。いや、妄想に近いかもしれない。
だが私の幻想は――








「ええ、いいわよ。どうせ暇だしね」








こうして現実となる――















小高い山の頂上にたどり着いた。スキマを経由したため、時間は殆どかからない。
普通に行ってもよかったのだが、あまり時間が遅くなってしまうのは避けたかった。
もう、日没も近い。

「ほんと何度通っても、あのスキマってやつには慣れないわ。なんかぐよぐよに見えるけど、実体が無いから気味が悪い」
「そうかしら。慣れればあそこほど快適な空間もないと思うわよ。四季を感じられないのが難点だけどね」

ぽっかりと木の生えてないところがあり、そこへ移動すると、すぅっと景色が変わる。
視界を覆っていたものは無くなり、ただ無限に広がる空と情景がそこにあった。

沈み行く夕日は紅葉をより紅く染め上げ、目の前に広がる山々はまるで燃えているかのようだ。
かぁかぁと鳴く烏が、落日に向かって飛んでいるようで淋しく感じる。

「ふわぁ、凄いわね…… これだけ紅葉ばかりがあるのも珍しいわ。今の時間とも相まって、まさに絶景ってやつかしら」

霊夢が感嘆の声を上げた。普段見せない子供のようなその顔に、愛おしさのようなものがこみ上げる。

「気に入ってもらえて嬉しいわ」

私は心からそう思った。




二人並んで、同じものを見つめる。
二人の影が長くなる。
そして、二人の影が一番長くなった時――


「ねえ、紫。あなたはどうして私をここに連れてきたの?」

くるりと、踊るように回りながら霊夢は私に聞いた。半分近く沈んでしまった夕日を背に。
紅白の衣装も逆光によって、白の部分が紅く染まって見える。それは宛ら紅葉のようで。

「本当に、困った子ね。私から話そうと思っていたのに……」

紅い霊夢が眩しくて、嘘をついた。私は基本的に臆病者なのだろう。
誰がどう見たって、今日の私は普通ではない。そんなことにも気づけないほど鈍い娘でもないのだ、この子は。
だから自分から言い出さずに、彼女から疑問を投げかけるように仕向けた。
そんな弱さにと狡さに少々呆れもする。


だがここからはもう逃げない。私は霊夢と向き合った。
もう、風が冷たく感じる。





「私、あなたに謝らなきゃいけない」




小さく、でも確かな声でそう告げた。

「私は幻想郷を護る者として、過去に博麗の者と関わり合いを持つことも少なくなかったわ。
 それこそ、この間みたいに力を合わせて何かを為すこともあった。でもね、私はその者たちに興味を持てなかったの。
 協力関係が終われば、それでお終い。その代の人間が生きている内にもう一度会うなんてことも滅多に無かった。
 ……たった一人を除いてね」

懺悔とも独白ともつかぬ言葉を紡ぐ。
霊夢はそれをじっと聞いていた。俯いているために、表情はよく見えない。

「もう何代前かは忘れてしまったけれど、一人だけ。ただ一人だけ親しくしていた巫女がいたのよ。
 彼女は捉え所の無い人間でね、いつもふわふわと、宙に浮いているようだった。
 でも人間味が無いってわけじゃないの。はしゃぐ時もあるし、悲しむ時もちゃんとある。
 そう、霊夢。あなたは彼女に似すぎている――」


ざぁ、と風が吹いた、強く。それに伴い、紅い手が舞う。
そして、俯いたままの霊夢の前髪を静かに揺らした。
黙っている。何も言わない。


「私はきっと、彼女のことが好きだったのよ。狂おしいほどに。その理由は今となってはわからないけれどね。
 でも、もういない。当たり前よね、人間なんだもの。
 だから霊夢を初めて見た時、我が眼を疑ったわ。いや、眼じゃない。自分の感覚を疑った。
 それ以来、私はあなたに必要以上に近づいた。信じられないぐらい積極的にね。
 だって、近づく度に時間が過去に巻き戻るようにも感じたのよ。
 その都度思ったわ。実は霊夢の姿をしているだけで、中身は彼女なんじゃないかって……
 でもね、もう私には真実なんてどうでもよかったの。ただ穏やかな空気に抱かれていたかった。
 永夜の事件の時もそう。あなたを誘ったのも、ただ残滓のようなものに触れたかったからだけ。
 霊夢だから選んだわけじゃなかった」


一言一言が、身を切り刻んでいるかのようだ。



小さく、小さく、小さく。
細かく、細かく、細かく。



だがその切り刻まれたモノは私なのか、霊夢なのか。はたまた別のモノなのか。
それが、自分でもわからない。

「でもね、そんな都合のいいことをいつまでも続けていられるわけが無いの。
 罪悪感とか、色々なものが混ざり合った汚い泥が、少しずつ、少しずつ、心に積もっていった。自分の知らないうちに。
 そのままにしておくと、それは凝り固まって私は動けなくしてしまう。今日やっとその事に気づいたのよ。
 だから私は謝らなきゃいけないの、霊夢。あなたを通して別の人を見ていたこと。
 あなたを私の都合のいいようにだけ利用していたこと。失礼、なんて言葉じゃとても追いつかないような罪ね」

私が大方話し終えたところで、もう一度風が吹いた。今度は弱く。
そしてそれが止んだとき、霊夢は静かに顔を上げた。その顔は、憂いと悲しみを綯い交ぜにしたようなもので――
追憶の中では見た事のないものだった。



「それで…… 紫はどうしたいの?」

小さく呟く。

「もう、会わない。これから先に何かあったとしても、二度とあなたの前には現れない。誓うわ。」

あぁ。
こんなところでも自分の弱さを再認識する。私がしているのは、ただの逃げだ。
その場の自分を無かったことにして、ただ放り出すだけ。
もう逃げない、と先程心に決めたばかりなのに。

「そう。それと、もう一つ聞きたいわ。私にそのことを話そうと思った理由は何なの?」

矢継ぎ早に繰り出される言葉。
おかしい。その事ならさっき話したはずだ。質問の意味を図りかねるので、戸惑いながら霊夢を見た。
すると、霊夢は鋭い眼で私を射抜き、鋭い言葉で私を切り伏せた。

「夢でも見たんでしょう? その女の。だから私にそのことを話す気になった。
 でも言い出しにくいから、それを隠した。
 本当、今日のあなたの行動の根本は、全部そいつに起因してるのね。
 その結論が、勝手に勘違いして、勝手に近づいて、勝手に身代わりにしたことは、
 勝手にさよならしますから許してくださいってこと?」


私が無意識のうちに避けていたものを、一息で全て突きつけられた。
そして――










「ふざけるんじゃないわよっ!!」










絶叫した。

あの博麗霊夢が声を荒げるなんて事は、考えたこともなかった。
だが今の状況はどうだ。
叫んだせいなのか、霊夢は肩を上下させて息をしている。
予想外のことに呆然としている私を尻目に、霊夢は大きく息を吸い込んだ。

「あんたが私を身代わりにしてたり、利用してたことは確かに腹が立つ。正直言って、弾幕ごっこじゃすまないぐらいにね。
 でも、そんなことよりもね。もう二度と現れないってどういうことよ!!
 理由はどうあれ、私と紫はもう知り合いなの、わかる?
 そんな関係になっちゃったやつが、自分の目の前からぽんといなくなってみなさいよ。それこそ不愉快でしかたないわ。
 いなくなる必要なんてどこにも無い」

霊夢は一気にまくし立てた。私は混乱しながらも、反論する。

「で、でも、私は償いとして――」
「あー、もうごちゃごちゃ五月蝿い!! 償いなんていらないわよ、そんな重っ苦しいもの。
 お賽銭でももらったほうが百倍ましだわ。そんなに償いがしたいんだったら、証明しなさい。
 私は博麗霊夢で、紫が思い描いている亡霊なんかじゃないってことを。
 そうしたらあんたの幻想も壊れて、私からしたらいい気味よ。
 とにかく、このままさよならなんて、絶対に許さないからね」

そこまで言われて、やっと気がついた。自分の自意識過剰と、愚かさに。





「はぁ、あなたには敵わないわ」

自然に笑みが浮かぶのがわかる。それにつられて霊夢も笑った。


その時、「あっ」と霊夢が小さく声を上げた。
そして小走り気味に移動すると、その先でしゃがみこんだ。
一体何をしているのだろう? 私は不思議に思って近づく。

「ねぇ、紫。眼を閉じて」

いきなり何を言うのだろうか、霊夢は。
ひょっとして何か企んでいるのではないのかと思うが、背を向けているので、どんな表情なのか窺い知る事は出来ない。
まぁ変な事をされることは無いだろう。実はまだ凄く怒っていて、いきなり夢想封印をされたりはしないはずだ。
と、信じたい。
私は瞼を閉じた。

「両手を出して」

また新たな要求をされる。
その言葉の通りにした。両手を受けるようにして差し出す。
すると、何かが掌にのる感触がした。
何かと思い、反射的に目を開けてみると、





そこには花があった。





小さな花。
それは紅紫の小さな花。


「キレイでしょ。ねぇ、その花の名前知ってる?」

見た事はある。だが名前までは知らない。
花の名前なんて、誰でも知っているものしか知らない程度だ。

「それね、ゲンノショウコって言うのよ」
「ゲンノショウコ?」
「そう。漢字では『現の証拠』って書くの。色も紫で、今のあなたにあげるにはぴったりでしょう?
 その花みたいに幻じゃなくて、現実を大切にして欲しいわ」

現の証拠…… 幻に引きずり込まれかけていた私を現実に戻してくれそうな、この花。
霊夢にしては、風流なやり方だ。それにとても優しい。
すとん、と何かが胸の中に落ちた感じがした。


霊夢が目の前で大きく伸びをする。
説明とちょっとのお説教を終えて、満足したようだ。

だが、違う。それでは不十分だ。この花は紫ではない。
最後の最後で間違っているのが、霊夢らしいといえばそうなのだが。

「違うわよ、霊夢。これは紅紫の花。
 私の色と、紅白のあなたの色が二つになった花。そして、この名前。現の証拠だったかしら?
 なんだか運命的じゃない。私もあなたも現実に、今ここにいることの証明」

そう言うと、霊夢はきょとんとした顔をしている。
そんな霊夢を尻目に、私は歩き出した。
進むたびに、風で舞い散る紅葉が頬に触れる。
思えば、今日は一日これに付き合いっぱなしだ。
夢の中では死に逝く彼女と共にこの場所で紅葉を眺め、そして今は同じ場所で霊夢と語り合った。

「ここで、さよならね…… あなたは、もうここにはいないもの」

一枚の紅葉を指先で弄びながら、幻に別れを告げる。
そして、そっとそれを空へと放った。



心にぽっかりと穴が開いた感じがする。
でも霊夢は救ってくれたのだ。呪縛を解いてくれたのだ。
言葉は乱暴だったが、それは私に気を遣わせないようにする為だったのかもしれない。
全く、私があれだけ酷い事をしたというのに。


「ちょっと、紫。勝手に帰らないでよ…… って何? 人の顔みてニヤニヤするなんて趣味悪いわよ」

後ろから霊夢が走ってきて、横に並んだ。
眉を寄せているところから、私の表情が気に入らないといったところか。

「いや、霊夢は優しい子だと思ってね。」
「うわ、あんたに言われるぞっとするわ」
「あら失礼ね」

軽口を言い合いながら、二人で歩く。
隣の霊夢がいることが、ひどく安心できる。
隣にいてくれるだけで、ぽっかりと開いた穴が少しずつ小さくなっていく感じがする。


私はこれから霊夢を見つけるために歩き出す。
時間は掛かるだろうけど、決して無理な話じゃない。だって私は一人じゃないのだから。
右手に握り締めたままの紅紫の花の感触を確かめながら、そんなことを思った。
それにしても、今日は本当に何から何まで博麗に寄りかかってしまった。
だから、何かお礼をしたいと思って――










「そんな優しいところも彼女にそっくりだわ」

わかっていて、意地悪をした。





すると――











「あんた、全然わかってないじゃないのー!!」

今日二回目の絶叫が、秋の山々に響き渡った。












<終幕>
皆様、ご機嫌いかがでしょうか?

お祭りに参加してみましたが、時間ぎりぎりで申し訳ありません。
出来る限り粘ってはみたものの、お題を消化しきれてない無理矢理感が自分でも悔やまれます。
要精進ですね。

この作品を読んでくれた方、本当ににありがとうございます。
ご意見ご感想、ご指摘などをお待ちしております。

では、このコンペが成功することを祈りつつ失礼いたします。
二見 見二
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作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2005/10/19 08:03:49
更新日時:
2006/02/04 03:32:48
評価:
26/27
POINT:
179
Rate:
1.51
1. 9 名無しの読者 ■2005/10/19 02:31:21
後書きにあるように、お題がちょっと薄い気がします
それがなければ満点の出来でした
2. 6 月城 可奈女 ■2005/10/20 01:02:09
キャラに関しては私的に受け付けにくいのですが、それでも上手い話だったと思います。
3. 5 おビールをお持ちしました ■2005/10/21 00:05:21
途中までは興味深く読んでいたのですが、霊夢が怒鳴った辺りから何か違和感を覚えてしまって……
霊夢には去るものは追わずなイメージがあったもので。
4. 4 おやつ ■2005/10/21 01:22:33
人間味あふれる紫様に切れた霊夢がおいしゅうございました。
この二人は決して超越者ではないのでしょうね。
5. 7 papa ■2005/10/22 13:23:42
霊夢と紫の関係ってなんだか不思議です。
6. 10 名前は忘れました ■2005/10/22 17:13:03
落ち着いた雰囲気がとてもよかったです
なによりも小道具の使い方が秀逸

長く生きたからこそ、過去にとらわれてしまう紫が救われますように・・・
7. 3 一之瀬翔弥 ■2005/10/23 00:04:26
霊夢さんがいかにも霊夢さんらしい印象が。
反面、紫さんが説明に終始してしまっている感が惜しい。
8. 7 匿名 ■2005/10/23 02:33:44
良い霊夢と紫でした。
人は変わっても想いは変わらない。
だからこその悲劇であり喜劇であったのかもしれません。
9. 6 名も無き読者 ■2005/10/23 10:19:50
この種の作品は滅多に出ませんが、個人的には好きです。
10. 8 MIM.E ■2005/10/23 12:07:22
互いの気持ちと距離を再確認する話にはめっぽう弱い。
紫が弱いとか霊夢が力押しだとかそういうことは些細な事で
むしろ弱い紫はよいと思えてしまった。
ていうか紫かわいいなぁ。気持ちの動く話は大好きですGJ
11. 7 床間たろひ ■2005/10/23 17:37:16
おおぅ! 珍しく紫様がメランコリックでセンチメンタルだ。

関係って結局、今どう付き合うかってだけなんですよね。
過去に何があろうと、未来でどうなろうと、今、隣に大切な人がいる。
それが一番大事じゃないかな、と。
勿論、過去も未来も軽んじて良いものではないけれど、そのために今を
否定する事は勿体無いですよね。
良いお話でした♪
12. 8 Tomo ■2005/10/24 11:26:53
霊夢と紫、それぞれの心遣いが丁寧に描かれていて、とてもいい作品だと思います。細かい部分で、ここはシリアスに押さえたほうがいいかも。と思った描写がちらほら見受けられました。でも、ポップな描写があることで、物語が沈み過ぎず、軽やかなまま着地出来ている点が優れているのではないかとも考えました。
13. 7 藤村りゅ ■2005/10/24 15:50:05
 僭越ながら、作者さんの予想が付いた気が致します。
(とは言いながら外れていると恥ずかしいので言いませんけれども)
 霊夢の影を追う紫、その逆のパターンは珍しいですね。
 今の恋人に過去の恋人を重ねている、という構図に近いものがありました。
この作品ではもっと重いものですけど、影を振り払うのは難しいものだと思います。
14. フリーレス 楠木忍 ■2005/10/24 21:53:44
結界に縁のある妖怪だけに、歴代の博麗の巫女と関わりがあってもおかしく無いですよね。
話の上手さに、読んでる間中感心し通しでした。
15. 9 さい ■2005/10/25 15:35:08
確かに消化不良は否めませんね
それに霊夢の人格が、少しいい人過ぎる気もします
でも、心情と場面の描写がきっちりされているので、技巧的な感じがしました
派手さはないけれど、心がぽっと暖かくなる・・・
そんな作品だと思います
荒削りなところは多々あります
だけど、あなたの成長していく過程をぜひ拝見したいと思いました
その期待を込めての9点です
16. 4 木村圭 ■2005/10/25 21:44:09
絶対未来の話だと思ったんだけどなぁ……。
へたれゆかりんもたまには良いものです。
17. 9 世界爺 ■2005/10/26 00:54:44
違えた夢も、いつかは正しく。

紫の逃げの一手を一喝、間違えた部分を吹き飛ばす霊夢。
弱さ、罪を認めて先に進む。当たり前のノーマリティ。
そんな風に生きて誇っている彼女だからこそ、誰もが惹かれるのかなあ。

胡散臭さや主犯の役回りが多いゆかりんだからか、なかなか新鮮に感じられるお話でした。
冷たいように見える? いやいや、無関心に見えるのが一番優しい状態なのですよ。
大切なときに、いつでも関心を向けられるのですから。
18. 9 美鈴まさき ■2005/10/27 00:12:47
 紫の懺悔に対する霊夢の反応がらしくて良いですね。大抵のことならさらっと流せるけれど、譲れない一点は絶対に引かない。
 ラストの二行、個人的には好みでは無い終わり方ですがあくまで好みの問題。素晴らしい作品でした。
19. 7 ■2005/10/27 22:56:26
この会話の風景って紅葉の中でこそって気がしますので、お題については問題なしと思います…一意見ですけど。そして、最後はやっぱり素直じゃないですね紫。
20. 6 ■2005/10/27 23:16:06
紫と霊夢……こんな見方もあるんですね。
良い話だと思いました。
話にうまく波があって読みやすかったです。
21. 5 七死 ■2005/10/27 23:41:10
秋の夜風に辛口端麗。
俺は、お前のことをあいつと重ね合わせてるだけなのかも知れん。
うーん、展開に求む後一捻りと言った所でしょうか、文章には全く非が無いだけに、残念です……。
22. 8 風雅 ■2005/10/28 14:30:42
紫も長く生きている分引きずるものがあるのでしょう。
霊夢がそれを軽減しているだろうことも、きっと彼女は無意識にやっているのが素敵。
つまらない批評ですが、紫の独白の部分ではもう少し「間」を感じさせてほしい、と思ったりしました。
23. 7 K.M ■2005/10/28 18:36:21
♪思い出はいつも甘い逃げ場所 だけど断ち切れ明日を生きるため
・・・読み終わって最初のこのフレーズが頭をよぎった私は駄目人間かも知れないorz

背負った罪は罰せられるべきかも知れないが、罰し方を間違えればそれは
更なる不幸の元になる・・・そうならなかったことはとても喜ばしいことだと思う
24. 6 流砂 ■2005/10/28 20:24:55
どっしりとした良いSSでした。 難を言えば序盤の流れが急すぎるかな、と。
あと、絶叫は意味は正しいにしても違和感がありました。
25. 6 名無しでごめん ■2005/10/28 20:38:26
ご意見ご感想を〜と書かれているので、一つだけ勝手な感想を。
霊夢が絶叫する、という場面が腑に落ちなかった気がします。
霊夢の性格とか考えますと、どうしても。
ゲンノショウコを用いた場面はとても綺麗でした。差し出がましい感想ごめんなさい。
26. 7 弥生月文 ■2005/10/28 23:17:14
ネタがベタ(東方SSで、ではなく、お話として)に思えましたが、文章力に魅せられました。
27. 9 SSを書きなぐる程度の能力 ■2005/10/28 23:54:22
今はもう夢の中のあなたへ。ばいばい、さようなら、おやすみなさい、ありがとう。
ちょっと意外な紫の物語、楽しませてもらいました。
欲を言えば、本編にあたる部分の前に普通に会っている霊夢に紫が彼女を感じるシーンがあるとなお良かったかも。
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