壊れる紅葉

作品集: 最新 投稿日時: 2005/10/19 08:37:01 更新日時: 2005/10/21 23:37:01 評価: 24/25 POINT: 141 Rate: 1.33
じー。
紅葉を一枚だけ、手にとって見てみる。
まっかないろ。
指でふれると、あっというまに壊れてしまう。
まるで、砂でできたオモチャみたい。

「ふふ……」

おもしろいっ!
こんなに簡単に壊れるなんて!

「えい!」

くしゃ。
手で握りつぶした紅葉は、もとからそうだったみたいにコナゴナになる。
ふふ、
ふふふ……!

「おもしろぉい……!」

そっか、こわすことは、こんなにも面白いんだ。
顔を上げる。
そこは森。
閉じられた場所を抜け出して、私はここにいる。
ひろいひろい世界。
10歩以上あるいても先がある!

「なにから壊そっかなぁ」

あの山がいいかな?
それともこの森?
あの月なんか、とっても壊しがいがありそう。
ああ、どれがいいかな?
どれからにしようかな?
なんだか目移りしちゃう。

壊れるイメージ。
壊すイメージ。
ぼろぼろと、さっきの紅葉みたいに崩れる世界。

「あはっ」

身震いする。
身体の奥が震えだす。

なんて、なんてステキなんだろう!
こんなに色んなものが、私のためにある!
私に壊されるためにある!

「あははっ!」

お姉さまは酷いなあ、
こんなステキなことを、独り占めにしてるだなんて。
こんなに色んなものを隠してただなんて。
いっそ壊しちゃおっかな?
それとも手足をもいじゃおっかな?
んー、でもめんどくさいなぁ。
まあ、気分がいいから、後にしよ。

「――ん?」

目の端を、なにかが掠める。

「えいっ!」

私はソレの《目》を潰した。
私が手を握りしめただけで、ソレははじけた。
まるで花火みたいに、ぱぁん! って。
あ、ホンモノは見たことはないんだけどね?

「なんだろなんだろ」

まっかに染まった、変なもの。
よく分からない、細長いものとか、丸いのとか、ぶよぶよしたものが、無茶苦茶に散乱してた。
あと、なんかすごく臭い。

「たのしくなぁーい」

地面を蹴る。
これはシッパイ。
もっと綺麗に、もっとボロボロにならなきゃ。

「ま、いっか」

気分を切り替え、歌いながら、道を歩く。

口をつくのは古い歌。
誰も知らない、私だけが作った歌。
夜のまっくらな、誰も居ない場所で音が行く。
とおくとおく、ひそひそと。
私、あんまり大きな声じゃ歌えないんだよね。
あんな狭い場所に閉じ込められてたから、あんまり大声だと耳が痛いの。
それをずっとしてたから、いつの間にか歌まで小声。
こんな時は、ちょっと憂鬱になる。
ま、どうでもいいよね、こんな話。

目を閉じ歩く。
くるっとターン。
周囲の森がぐしゃ、っと潰れる。
HO! 山のてっぺんに呼びかける。
ごろん、って半分がこっちに転がった。
目についた星を、かたっぱしから消していく。
どんどんどんどん黒くなる。
夜空が消えて、

「あたしのものっ!」

あはは、
あははは!

死んでく、消えてく、滅びてく。
それは私が触れたから。
私のものになったから!
ステキステキステキ!

ぐるぐる回る。
私が回る。
回るたびに世界が壊れてく。
私の思い通りになる世界!


「そこまでよ」


「!」

いつの間にか、月が紅い。
私のものじゃない世界。

「なぁに? お姉さま……」

憂鬱そのものの声で言う。

「そこまでよ、部屋に戻りなさい」
「はぁ?」
「聞こえない? 部屋に戻るのよ、フラン」

ホントに、なに言ってるんだろ?

「ヤ」

べえ、って舌を出してやる。
こんなに広いんだから、少しくらい私にくれたっていいじゃない!

「もっともっと壊すんだから、お姉さまは邪魔しないで」
「そんなわけにもいかないの」

たった五年しか違わない癖に、大人みたいなため息ついて、

「ロードたるもの、支配が出来なきゃ駄目なのよ。フラン、あなたはまだ、それができていない」
「支配ってなに? それって壊すのとどう違うのよ」
「支配は支配よ。あなたのそれは入手じゃないわ。けれど支配したものは活用できる」
「んなことしなくてもいいじゃない」
「フラン、私たちは吸血鬼なの。私たちは血をもって人間を支配しなければならない」
「知らないもーん」

ああ、もうメンドクサイなあ。
お姉さまの話って、いつもよく分かんない。
分かんないのに、「聞かなきゃ」とか思っちゃうのは、ホントに不思議。

でも、こんな広いんだから、大丈夫だよ。
私みたいなのがいたって。
支配しない吸血鬼がいても、ぜんぜん構わないじゃない?

……あ、けど、お姉さまって頑固なんだよね。
一度言い出したら、絶対に引かない。
私がそういっても、頷いてくれることはなさそう。
ああ、もう、ホントにメンドクサイ!

「フラン、部屋に戻りなさい。あなたは学ばなきゃいけない」

だから――

私は手を握る。
お姉さまの破壊点をぎゅ、っと握る。

「メンドクサイからもういらない」

とたんにはじける。
とたんに真っ赤。
さっきの臭いやつみたい。

あ、ヤダな。
キタナイのは、イヤ。

だから壊す。
もっと壊す。
もっともっと綺麗に。
これは私の好きな破壊じゃないから。
あの紅葉みたいにコナゴナに――!
ボロボロになってくお姉さま!
ハネも瞳も血も内臓も、なにもかも綺麗に枯れて……


「 そう 」


「え?」


「 それがあなたの答えなのね 」


ヒビが、入った。
周りに風景にヒビが入れられた。
当たり前にみたいに、びし、びし、と世界が割れていく。
私じゃない。
私はなにもしていない。
こんな破壊を私は知らない!


「 なら、しょうがないわ 」


森にも月にも星にも地面にも空気にも元素にも精霊にも魔力にも、なにもかもにヒビが入る。
黒い黒いその向こうに、あの部屋が――
私が閉じ込められてた密室が見える!


「 ――やりなおしなさい―― 」


さかしまに。
時が、さかのぼる――――




 ***



……あーあ、ひまだなー。
さっき、珍しく鍵が開いてると思ったら、お姉さまが来て閉めちゃうし。
あともうすこしだったのにー。

まあ、でもいっか。
お姉さまが、珍しく差し入れなんかしてくれたし。
これ、紅葉って言うんだって!
コナゴナに砕けるのが面白いの!
あー、でもすぐに無くなっちゃうんだよね。
ちょっと、もったいなかったかな?

はーあー、けど494年も、よくこうして閉じ込められてるよ、私。
一回くらい、脱出のチャンスがあってもいいとは思わない?




目指せ最短。
間に合え締め切り!
ギリギリマスター
作品情報
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投稿日時:
2005/10/19 08:37:01
更新日時:
2005/10/21 23:37:01
評価:
24/25
POINT:
141
Rate:
1.33
1. 7 匿名 ■2005/10/20 02:58:12
紅葉の使い方が上手いなあ、と。
何かすごく実感が沸くだけに、ぞっとしてしまいますね。
2. 8 おビールをお持ちしました ■2005/10/21 17:10:10
中々興味深いお話でした。
なるほどなるほど、と。
3. 4 おやつ ■2005/10/21 22:43:04
おっかない……けど素敵。
こういう世界大好きです。
それにしても、素敵な投稿時間ですね。
4. 5 papa ■2005/10/22 14:28:24
この怖くてスプラッタなところも妹様の魅力なんでしょうか。

レミリアの能力って運命を操る能力じゃ・・・。
5. 7 一之瀬翔弥 ■2005/10/23 00:14:45
こんな感じの大好きです♪
狂気と恐怖の描写に脱帽。
多謝♪
6. 7 MIM.E ■2005/10/23 13:37:10
倒錯した世界。何でも壊す妹様。
最後のは姉様のちからでしょうか?
それにしても、何でも壊す力というものにどうしてこんなに魅力を感じるのか。
妹様が壊すのは幼さゆえか、などと考えてしまいました。
7. 9 床間たろひ ■2005/10/23 22:34:03
おおぅ! 痺れた。

最初、俺がフランに持ってたイメージはこんな感じだったけど
それを何倍も洗練させたような語り口。見事です!
8. 5 七死 ■2005/10/23 23:45:52
残念、御題フリーの方に参加していただければもっと高く評価できたのに〜……。
もう少し紅葉を上手く使ってほしかったです。

でも、ひさしぶりに妹様の狂気が見れて嬉し懐かしでした。
9. 4 Tomo ■2005/10/24 11:22:29
フランドールの一人称は面白い題材だと思いました。狂気が彼女自身にも向けられたりしたらかなり印象に残ったかも。
10. 7 藤村りゅ ■2005/10/24 15:53:24
 短い中にループをまとめられる手腕に感嘆。
 フラン視点なので情景が分かりづらく、またそこが恐怖を誘いました。
 短いからこそ映える、という珍しい構成だと思います。
11. 3 木村圭 ■2005/10/25 21:41:41
よく霊夢(or魔理沙)が壊されなかったもんだとガクガクブルブル。
最初メディスンかも、と疑ってたのは秘密。
12. 8 世界爺 ■2005/10/26 00:57:21
ああ、怖えぇ。淡々とした文章が逆に怖い。
これぞ狂気と言わんばかりの無邪気な振る舞い。
ひょっとしたら、気づかぬうちに幻想郷は何度も壊れて再生しているのやも―――

そんな風に考えてもっと怖く。
フランちゃんはコワカワイイ。
13. 8 ■2005/10/27 23:13:30
ガクガクブルブル(AA略)
でも、こういうフランも大好きです。元々、スカーレット姉妹と中国に東方へ引きずり込まれた身として堪能させていただきました。
14. 1 ■2005/10/27 23:33:12
壊れフランの使い方が良くない、と思いました。
これだとただ壊れてるだけだし、オチも中途半端な気がします。
最短を目指すくらいならもっと文の量を増やして中身を濃くした方が良いと思います。
締め切りがあるから仕方ないのかもしれませんが。
15. 5 風雅 ■2005/10/28 14:33:47
こーゆー話は途中まで冷や冷やしながら読みます。
でも、フランがどれだけ圧倒的な破壊力を持っていても、レミリアはそれを捕らえて閉じ込めてるんですよね。
やっぱり手のひらの上なんでしょうか。
16. 8 ■2005/10/28 14:50:38
う、微妙に方向性かぶったか(汗)。
さておき、こういう『雰囲気』のある作品は大好きです。
私はまだ基本を固めるので精一杯。道は遠し。
17. 4 K.M ■2005/10/28 17:17:57
いきなり外に出すのは危険ということで、まずはワンクッション・・・結果、不適合
それでも、「やりなおし」だから救いがあると思う
18. 6 名無しでごめん ■2005/10/28 20:40:26
妹様の思考を上手く表現されていると思います。
妹様の壊す世界と、崩れる紅葉。
やったことありますが、本当にボロボロ崩れるんですよねぇアレ。
正にイメージぴったりでした。
19. 5 流砂 ■2005/10/28 21:15:58
ひえぇぇ。
20. 7 es-cape ■2005/10/28 22:47:14
こいんいっこいれられる。強制的に。

遊んでいるシーン、森と山と星と空を壊す十行が良かったです。

最後は……やはり咲夜さんでしょうか?
それとも運命を弄ったレミリア?
もしかしたら紫?
分からないような分かるような、そんな感じが好きです。
21. 5 弥生月文 ■2005/10/28 23:19:56
 
22. 4 ななし ■2005/10/28 23:20:10
すみません、コメント間に合いません。
23. フリーレス nonokosu ■2005/10/28 23:26:31
ええと、かなり迷ったのですが、告白します。
実は『ギリギリマスター=nonokosu』です。
締め切りの1・2時間前に、ふと「もう一作品書いてみようかな」などと考えつき、奇跡的に執筆が完了、そして投稿ということをやらかしたので、その勢いに乗って別の名前で投稿しました。
現在、めっさ反省中です。
というか三作品投稿は多すぎだ、自分。

……あと、これで記憶している名前が違っていたら、実にマヌケであることだなあ(古文現代訳調)。
そして、その可能性は、まったく否定できない……

あと、ひょっとして、これ、誰か別の人のssとかぶってませんかね?
読み返してみた時、それが一番ひっかかりました。
本当にハイテンションのまま、本能の赴くままに書いただけのはずなんですが、
どうも『以前に見たことがあるんでは?』という疑いが、現在、晴らしきれません。
以前、プチに投稿した時にも同じことで悩んでたんですが、うーん。記憶が正しいのか、それとも単なるデジャヴュなのか……
(どうも、本気で駄目脳保持者だ……)
24. 7 SSを書きなぐる程度の能力 ■2005/10/28 23:57:00
歯止めの利かないハカイとキョウキ。変転はもう少し先のお話。
狂気のイメージに惹かれる物がありました。今度はもっと長い話も読んでみたいですね。
25. 7 IC ■2005/10/28 23:59:25
短い文節にリズムと躍動感が感じられて、自分で何かを壊しているような気がして楽しい。
けど、楽しいと感じている自分に怖さを感じます。
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