紅葉「開花宣言」

作品集: 最新 投稿日時: 2005/10/19 08:55:19 更新日時: 2005/10/21 23:55:19 評価: 24/27 POINT: 173 Rate: 1.58

「珍しいですね。紫様が私を連れて散歩だなんて」
「たまにはそういう気分の時もあるわ。60年に一度くらいはね」
 今、幻想郷は花に包まれている。四季の花が取り乱れて咲く、60年に一度の大異変。とはいっても彼女らにとっては何度も繰り返されたことであり、いちいち騒いだりはしない。
 しかし、好奇心を抜きにしても、花見にうってつけな景色であるのは確かである。
「滅多にないことなんだから、家にこもっていてはもったいないわ」
 と、いつものように前触れもなく、家の掃除にとりかかっていた藍を無理やり伴って、紫は散歩に出てきたのであった。
「でも前回はお供させてもらった記憶がありませんが」
「そうだったかしら? まあ今回はそういう気分なのよ」
「しかし平和ですねぇ」
 今、幻想郷のあちこちで、異変の意味を理解しない若輩者達が激突している。しかし今、彼女らにその喧騒は届かない。わざわざ人気のないところを選んで歩いているのだろう。
「そうねぇ、だけど平穏な日常というのは必ず破られるものなのよ。なぜならそれが王道だから」
「はぁ、そういうものですか」
 主の言う言葉はいまいち理解しにくいが、それはいつものことである。適当に流す。
 だが理解は出来なくとも、主の言葉に間違いはない。それもいつものことである。
(つまり、私は警護役ということだろうか?)
 だがそれも不可解だ。彼女の主ならば、売られた喧嘩は自分で買うだろう。彼女の手に負えない相手など存在しないし、そんな格好の遊びの種をわざわざ藍に譲るわけもない。
(まさか殴りこみとかじゃないよねぇ……)
 そのように、藍が思案にふけっていた時。
「しばらくぶり」
 前方にある大木の陰から、不意に声が掛けられた。藍の体に緊張が走る。
 その声は、たまたま会った旧友に挨拶をかけるような気軽なものだ。しかし、人影が放つ肌を刺すような気配。それは間違いなく、殺気。
「あら、奇遇ね。よかったら一緒に散歩でもどうかしら?」
 突然現れた謎の人物にたいして、紫は平然と語りかける。軽快な足音を一つ鳴らして、その人物は姿を現した。
 紫と同じ大きな日傘を肩に掛け、赤いチェック柄の上下に身を包んだ少女。長く伸ばした緑色の髪を揺らして、二人に微笑みかける。
「相変わらずぬけぬけととぼけるわね。あら、今回は式も連れてるんだ。いよいよ今回は一人じゃ危ないって判断したのかしら?」
 藍は、挑発的に語りかける緑髪の少女、風見幽香の言うところを理解することはできなかったが、どうやら彼女がこちらに敵意を向けているのは確かだ。主を護るのは式の務め。紫をかばうように一歩を踏み出そうとした。が、不意につぶやいた紫の声が、それを引き止めた。
「60年……少しは腕をあげてきたのかしら?」
「……紫様?」
 藍の怪訝そうな声に、紫は、
「藍は下がってなさい。彼女の相手は私がするから」
「え? しかしそう言われても」
 主を戦わせて自分は傍観など、式としてあるまじき行為だ。
「いいから。今回あなたは見学。60年に一度のイベント、しっかり勉強しておきなさい。そのためにあなたを連れてきたんだから」
「やっぱり解ってるんじゃないの。わざわざ出てきたのだって、自分の周りに余計な被害を出したくないからでしょう? まったく、他人を煙に巻いて楽しむのは相変わらずね」
「あら、それはあなたも『真似ている』のではなくて? そういえば60年前と少し口ぶりも変わったかしら?」
 幽香がくすりと笑う。
「そうね。またひとつあなたに近づいた。いえ、もう追い越したかも!」
 言うと同時に、幽香が踏み込んだ。響き渡る衝撃音。
 幽香が手にした傘で紫に斬りかかり、紫はそれを同じく携えた日傘で受け止めたのだ。
 その一連の流れに、藍は警戒をしていたにも関わらず、全く反応することがすることができなかった。
「紫様! 貴様っ……」
 藍は主の援護をしようと、紫とせり合う幽香に飛びかかろうとした。
 その時、幽香が顔だけで藍に振り向いた。口の端を吊り上げて藍に笑いかける。
 その笑顔を見た時。ぞくり、と。ただ笑いかけられただけで、藍に確信めいた直感が走った。
(殺される)
 と。仕掛ける一歩手前の態勢のまま硬直する。あと一歩が踏み込めない。
 相手の手の内など知らない。ただ、あと一歩の距離を侵せば殺られるという確実な結果のみが予感できる。
 そうして動けない藍に向かって、幽香は紫とせりあったまま、無造作に片手を伸ばした。
「――――っ!」
 反射的に、逃げた。理性と本能、その双方が全力で後退を主張する。
 幽香の何気ない一挙一動が、どうしようもなく恐ろしい。
 こと「殺すこと」に関しては、風見幽香は自分とは別の次元に存在するのだ。
 格の違い。普段、主に感じているのと同じ、絶対的な隔絶を、目の前の敵からも感じる。
「あらあら、あなたの式は臆病ね」
 場違いに呑気な声で幽香が言った。
「あなたがガサツ過ぎるのよ。いきなり不意打ちだなんて野蛮だわ」
「先にやったのは、あなたじゃないの」
 ぎりぎりと傘が軋む音がする。だが二人とも笑顔を崩さない。
「はい? どう見ても仕掛けてきたのはあなたじゃない」
「何を言ってるのよ。ずっと昔の話よ」
「ああ、あれ。まだおぼえてるわよ。60年振りにいさんで出てきたと思ったら、呑気に口上並べ立てはじめるんだもの。で、隙だらけだったから背中からぼーん! うふふ、あれは素敵な吹っ飛びっぷりだったわ」
「そう、背中からぼーん、よ!」
 幽香が叫ぶと同時に、さっきまで藍が立っていた場所から何かが飛び出す。それは、土煙に紛れて紫へ猛然と延びる、鋭利な竹。
 生物としてありえない速度で成長するそれは、天然の槍となって紫に襲い掛かる。
 その攻撃を紫はさりげなく身を捻るだけでかわした。だがその一瞬の隙をついて、幽香の傘がかすむ。
 響き渡る音は三撃。しかし藍にはその軌跡の残像すら捉えることができない。
 打合いと同時、幽香が後ろに跳ねた。距離を取るために自ら離れた格好だ。一方の紫は日傘を横に振り抜いた格好で、悠然と笑っていた。
 幽香は着地と同時に地面に手を付く。瞬間、土がはじけ、黄色の大輪が姿を現す。
 直径にして1メートルはあろうかという巨大な向日葵の花。それが数十。
「あらあら、怖い怖い」
 紫は困ったように笑う。目の前にある向日葵が、でかいだけの花でないことは百も承知なのである。
「全弾発射よ!」
 幽香の号令に合わせて、機関銃の掃射もかくやというほど壮絶な種子の斉射が紫を襲う、と同時に紫の背後にスキマが開いた。
「さようなら〜♪」
 これ見よがしに手を振ってスキマに飛び込む。直後にスキマが閉じ、何もない空間を有機の弾丸が飛び抜けていく。
 直後、幽香の頭上に突然スキマが開いた。その中から、日傘をまっすぐ幽香に向けて紫が飛び降りてくる。
「こんにちは〜♪」
 幽香は、その紫の日傘の尖端ただ一点目掛け、神速の突きを繰り出す。
 二人の傘が衝突。鋭い金属音が響き渡る。一瞬互角と見えたぶつかり合い、しかし足場のある幽香に分があったのか、紫が衝突の反動で弾き飛ばされた。
 不意に幽香が傘を広げた。次の瞬間、紫が出てきたスキマから妖弾が雨のごとく降り注ぐ。
 だがそれらは幽香の傘にはばまれてむなしく四散した。
「あら〜見切られてたか」
 幽香から離れた位置に紫が着地する。
「この60年でだいぶ腕をあげたみたいね?」
 スキマを利用した時間差攻撃を防がれたにも関わらず、紫の態度は余裕にあふれている。
 しかし一方の幽香もまったく臆する様子はない。事実、ここまであの紫にまったく引けを取らない攻防を繰り広げている。
 巻き添えを食らわない位置で戦いを傍観していた藍は、その戦いに寒気を覚えていた。
 彼女も妖弧としての自分の力には自負がある。だが、目の前の二人と戦うことになれば、生き延びる自信はなかった。
 なにより二人の戦いは、この幻想郷にあっては異常である。
 お互いが最小の労力を持って最大の成果を、すなわち相手の命を奪い合う、真剣勝負。それはごっこ遊びが暗黙の了解となっている幻想郷の常識を、完全に逸脱している。
「あなたの連勝記録もここまで。今度という今度は私が勝つ」
 幽香が不敵に言い放った。
「そのセリフ、何度目かしら。そんなに幻想郷最強の肩書きが魅力?」
 やれやれと首を振って紫がつぶやく。
「私には正直どうでもいいんだけどね」
「じゃあおとなしく殺されてちょうだい」
「あら?」
 紫は呆けたような声をあげ、足元を見た。
 無数のツタが彼女の足に絡みつき、決して逃すまいと縛りつけている。
「困ったわ。これでは身動きがとれないわねぇ」
 小首をかしげ、苦笑して頬を掻いた。そこに好機とばかりに幽香が猛然と突進してくる。
「油断してるからそうなる!」
 ここぞとばかりに傘を振りかぶる。一見鈍器すらならないような武器でも、彼女の力と技にかかれば鋼鉄も両断する刃となる。
 その幽香の渾身の一撃を、
「遅い」
 がっしりと。紫が素手で掴んでいた。
「はい?」
 呆けた声を上げる幽香。その周囲の虚空に、波紋のような揺らぎが浮かぶ。
「足を封じたからといって、馬鹿正直に勝負を決めにくるところはまだ未熟ね」
 その揺らぎから、無数の光条が放たれた。
「! しまっ……」
 不意の攻撃を幽香は回避することもできず、その攻撃をまともに浴びる。
 と同時に、幽香の体が掻き消えた。
「――――なんてね」
 不敵に笑う声は、紫の背後から。
「あら?」
 紫は前を向いたまま呆けた声を上げる。
 分身を捨石にし、幽香自身は姿を消して紫の背後に回りこんでいたのだ。無防備な紫の背中に向けられる幽香の傘に、エネルギーが集中する。
 オリジナル・マスタースパークの零距離発射。動きを封じられた状態の紫が避けられるはずはない。
「塵も残さず消し飛べ!」
「あらあら、怖いこと言うのねぇ」
 その必殺の一撃が放たれる瞬間、紫の背後、構えた幽香の傘の先端、両者の狭間にスキマが口を空けた。
「げ」
 轟音と共に放たれる閃光。すべてを焼き尽くし薙ぎ払うはずのそれが、むなしくスキマに吸い込まれる。
 両者、沈黙。
「そんなやり方じゃ私には届かない。いい加減学習したらどうかしら」
 こともなげに言うと、紫は絡みついたツタをぶちぶちと引きちぎる。
「この様子じゃ60年前の繰り返しかしらね」
 からかうように言う紫に対し、幽香はうつむいて呟いた。
「ほんといまいましいわね、そのスキマ」
 あらゆる物理攻撃を無力化する異次元の扉。それが紫の神算鬼謀と合わされば死角はない。
 だがそれすらも紫の力のすべてではないのだ。負けず嫌いの幽香にして、幻想郷最強として認めざるを得ない紫の深さは、誰にもはかり知ることはできない。
「まったく、ずるいわ。ずるい……。けどね、無敵ってわけじゃない」
 幽香が顔をあげた。
「さあ、ここからが今回のメインイベント。後ろのお狐さんもよく見ておきなさい。八雲紫の最期をね」
「あらあら、秘策あり、ってところかしら。楽しみだわ」
 まるで勝利を確信したかのように語る幽香にたいして、紫は余裕の態度を崩さない。例えどんな手を隠していたとしても、たやすくあしらう自信がある。
「『私が告げる』」
 幽香の声がおごそかに響いた。
 まるで、世界そのものが彼女の言葉に耳を傾けるように静まり返る。
 天空に両手を伸ばし、空を仰いで言葉を紡ぐ。
『咲きほこれ、常世の万華。私が望むは――――』

 紫の顔から、笑みが消えた。

 ずっと余裕を崩さなかった紫が、その焦りも露わに荒々しく振り向いて叫ぶ。
「藍! 逃げなさい!」
「……え?」
 その急変に、言われた藍はとっさに反応できず、立ち尽くすのみ。
 だめだ、間に合わない――――
 紫の背筋に冷たいものが走る。胸の内で舌打ちし、彼女は覚悟を決めた。
 藍の足元に突如スキマが口を開く。呆然としていた藍は足場を失い、スキマに吸い込まれる。
「なっ……紫様、一体っ」
 問う声も最後まで言わせず、藍をすっぽりと飲み込んだスキマの口を閉じる、と同時。
 
『――――赤い花』

 それは、世界を殺す呪言。
 
 冷たい風が疾り抜けた。
 獣が、それに触れる。
 鳥が、それに触れる。
 生きとし生けるもの、それに触れる時――――
 
 風船が弾けるような乾いた破裂音と、バケツの中身をぶちまけたような水音。
 幽香を中心として、連鎖的に広がっていく。
 一つ一つの音はかすかなもの。だがそれが何千何万と重なれば、遥かに轟く死の合奏――――。
 
 それも一瞬だ。一瞬で全てが終わった。
 すべての命が、はじけた。
 鳥のさえずりも虫の声も消え、ただ吹き過ぎる風が草葉を揺らす音だけがむなしく響く。
 そして、すべてが、赤色に染まっている。
 木も、草も、大地も、
 幽香の前、虚ろにたたずむ八雲紫、であったものも――――
 
「……あはっ」
 幽香が笑う。
「あはははは! なんて愚かなの! 式を逃がすために自分が犠牲に? らしくないったらありゃしない!」
 顔を手で覆って空を仰ぎ、狂ったように笑い声を上げる。その歓喜に紛れて、指の間から雫がこぼれ落ちた。
「式なんて使い捨ての道具じゃない。見捨てて自分だけみじめに逃げればよかったのに!」
「勘違いしないで」
 幽香の笑い声がぴたりと止まった。
 空を仰いだ格好のまま幽香は彫像のように静止する。
 数秒間の沈黙。
 幽香は、顔を覆った指の間から、血塗れの紫をぎろりと睨む。
「あんた。なんで生きてんの」
 その一言でとどめが刺せそうなほどの強烈な殺気。
「私の知り合いに、似たような力を使う子がいてね。抵抗の仕方、知ってたから。けど痛かったわ〜」
 体のいたるところから血を噴き出し、誰が見ても死体と見間違えるほど凄惨な姿でありながら、紫の声はいつものように軽い。
「……白玉楼の亡霊嬢!」
 憎々しげに呟いて幽香が歯噛みする。紫にまでその音が聞こえるほど強く。紫は思った。たまには命がけで他人をからかってみるのも悪くない。
「あなた、随分と無粋な技を使うようになったのね」
「無粋? そうかしら」
 かろうじて平静を取り戻し、幽香は紫に笑いかけた。まだはらわたは煮えくり返っているが、目の前の死体もどきの方が余裕にあふれているというのは屈辱だ。
 幽香は言う。
「綺麗だと思わない? 見渡す限りの赤、赤、赤。まるで季節はずれの紅葉が訪れたみたい。せっかくだから、もみじ狩りでも楽しんでいこうかしら? あなたにとどめを刺してから、ね」
 紫はため息をつく。
「正直驚いたわ。動物を『咲かせる』なんて。『花を操る力』……戦いには向かない力だと思っていたけど、まさかこんなやり方で殺しに転用するなんて」
 幽香をまっすぐに見つめる。唇の端をゆがめて、笑った。

「こんなことなら、あなたに初めてあった時、無理矢理にでも私のものにしておけばよかった――――」

 背筋に走るものを感じて、幽香は震えた。
 それは、この日初めて、幽香が紫に圧倒された瞬間だった。
 
「……ふん。好きに言ってなさい。殺しそこなったのは悔しいけど、どの道あなたは死に体よ。とどめを刺してそれで終わり」
 幽香が紫に歩み寄る。永きに渡る因縁に決着を付けるために。
「死に体、ね。ほんとにあなたは詰めが甘いわ」
「なんですって……まさか」
 不意に足を止めた幽香に向かって、紫が微笑みかけ、手をかざした。
「勘違いしないで、って行ったでしょう。私が逃げずにあなたの技を受けたのは、藍を逃がすためじゃない……」
 紫を中心として展開される無数の妖弾。それは彼女の十八番。
「私が逃げちゃったら、あなたをぶちのめせないじゃない?」
 弾幕結界。
「まさか、まだ余力を残してるって言うの……!」
「といっても、抵抗するのにほとんど力を使っちゃったから、あとスペル一発分がせいぜいってところね。まあ、あなたの方はさっきの技でからっぽみたいだけど。それくらいは一目で看破できるようになりなさいね?」
 優しく諭すような口調に、幽香は歯噛みする。自分の全力を込めた必殺の攻撃を、力を温存したまま凌がれた。純粋に、自分の力が及ばなかった。その悔しさに。
「……そう。結局、最後は『いつもの』で決着を付けることになるのね」
 妖弾が幽香を包囲する。もし幽香に僅かでも力が残っていれば、スペルで打ち消してそれで終わりだった。そのあと瀕死の紫をひねることなど造作もない。
 だがその一発分の力がない。となれば、あとは……。
「残念ね。これを避けきれば私の勝ちよ」
「あら、それの何が残念なのかしら?」
 いたずらっぽく微笑んで紫が言うと同時に、弾幕結界がその輪を縮める。
 幽香は。真っ直ぐ自分目掛けて来た弾を横に避けた先へ、当然のように飛来してきた別の弾を傘で切り払うが、しかし隙を縫って飛んできた弾に右足を裂かれ、左右から同時に迫る攻撃を、前につんのめるようにして避け、頭があった場所を弾が掠めて、取り残された緑の長髪が切り落とされ、直後、八方からの同時攻撃を、神速の傘捌きで片っ端から叩き落し、
「残念なのは――――」
 ばきり、と。鈍い音を立てて。
 傘が、折れた。
「……それが、不可能だということよ」
 儚げに笑って。自らに殺到するその弾幕を、幽香は受け入れた――――。



「あーあ、また私の負けかぁ」
「いい加減諦めて、別の趣味でも見つけたら?」
 もしこの場に傍観者がいたなら、その光景の壮絶さに間違いなく卒倒していただろう。
 あたりは1キロ先まで続く一面の血の海で(幽香に言わせれば血の花畑ということなのだろうが)、その中心でこれまた全身血まみれ傷だらけの少女二人が楽しげに語らっているのだ。
 幽香は赤い地面に仰向けになって寝ていた。紫と違い衣服までぼろぼろになっていて痛々しいが、本人はけろりとしている。
「大体ずるいわよ。回避不可能な弾幕はルール違反じゃないの?」
 隣に立つ紫を横目で睨んで言う。
 そもそもルール無用の勝負であることを棚にあげてそこを糾弾するのはどうかと思うが、そういう自己中心的なところは二人に共通する資質でもある。おそらく、これは生来の。
「回避不可能だなんて失礼ね」
 そういうと紫は、握った手を開いた。そこには、妖弾が一発。
「うっそー……」
「すぐ力押しに頼るから詰むのよ。あの子だったら、間違いなく抜けていたわ」
「あいつと比べないでよ。あれは別格でしょ」
「あらあら、あなたとした事が珍しいわね。自称最強の血が騒がないの?」
「だってあいつ張り合いがないし。第一、あと60年もすれば勝手に死ぬでしょ」
 幽香は少し軽くなった自分の頭に手を当てて、
「この髪、お気に入りだったんだけどなぁ」
「これでまた一歩私から遠ざかったわね」
「うるさいなぁ、60年後にはまた伸びてるわよ」
「喋り方も戻ってない?」
「疲れたのよ。一時的なものよ。ほっといてよ」
 口を尖らせて言う。むすっとしたその顔からは、先ほどまでの壮絶な殺気はかけらも感じられない。
「とにかく疲れた〜。ていうか痛い。もう、こういう時はさっさと寝るに限るわ!」
 幽香はその場でごろんと寝転がり、
「おやすみ〜」
 次の瞬間にはすでに安らかな寝息を立てて熟睡していた。
『す〜……す〜……』
 無防備に寝姿をさらす幽香を見下ろして、紫は、
「……かわい〜」
 場違いな感想を漏らした。
「こんなに可愛いなら、やっぱり無理矢理にでも私のものにしておけばよかったわ。さすがに今からじゃ式にはできないし。惜しいことをしたわ」
 頬に手を当てて、本当に悔やんでいるかのように困った顔をする。どこまで本気なのやら。
「さて、私もくたくただし、帰って寝るとしようかしら」
 体をほぐすように伸びをしてから、指を一つ鳴らした。
 が、何も起きない。
「あれ?」
 呆けた声を出す。
「あらあら、掛け値なしにからっぽだわ。これは、今回の勝負は引き分けかしら」
 うーん、と首を捻ること1秒。
「まあこの周りは凄いことになってるし、藍がすぐに迎えにくるでしょう」
 問答無用で強制送還したから、今ごろこっちへ大急ぎで向かっているはずだ。幸い目印には困らない。
 寝息を立てる幽香の隣に、並んで横になる。
「次は……危ないかもね」
 呟いて、紫も眠りについた。
 
 
 
 春の紅葉に包まれて、二人の少女が眠る。
 こうして、60年に一度の、もう一つの異変が終わりを告げた。

点数を付ける前に言っておくッ!
おれは今回東方SSコンペをほんのちょっぴりだが体験した。
い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……

あ…ありのまま 今回 起こった事を話すぜ!

『おれは幽香様の最強を証明するSSを書こうと思ったら
 いつの間にかゆかりんにぶちのめされていた』

な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった

頭がどうにかなりそうだった…

スキマだとか境界操作だとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…





あーん!幽香さまが負けた!
幽香さまよいしょSS&幽香さまF.Cつくろー!って思ってたのに…
くすん…美形薄命だ…

・゚・(ノД`)・゚・うっうっう…ひどいよお…ふえーん!!
この間「今、時代はゆうかりんだ!」のプロットを出してまだ2週間じゃないですか!
どーして、どーして!?あれで終わり!?嘘でしょ!?
信じられないよおっあんなスキマごときにやられるなんてっ!!
霊夢と差がありすぎるわっ!!再戦ありますよね?ね?ね?
……泣いてやるぅ・゚・(ノД`)・゚・

私はあのおそろしく鈍い彼女が(たとえドSでもさ!ヘン!)大好きだったんですよっ!!
幽香さまあっ!負けちゃ嫌だああああああっ!!
俺のカバッ!!え〜ん・゚・(ノД`)・゚・

swal4Al.
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2005/10/19 08:55:19
更新日時:
2005/10/21 23:55:19
評価:
24/27
POINT:
173
Rate:
1.58
1. 5 七死 ■2005/10/19 00:33:58
紅葉と題して、その正体はガチガチバトルin花映塚!
血の花吹雪が舞い散る弾幕バトルの演出たるや十二分にお見事!

しかし最強対決に熱心になるあまり、肝心の紅葉の出番が今一歩。
物語の最後が、「台詞」人物描写「台詞」人物描写の駆け込みパターンになってしまったのも残念至極。

されど、再びこの大嵐、喧嘩と言う名の仇華と見える事を願いながら、今は御評価これにて御免つかまつる!
2. 7 床間たろひ ■2005/10/19 00:58:56
いやいや幽香さま、バリッバリに格好良いっすよ。旧作もやってみたいなぁ。
例え本気の殺し合いでも常に余裕を忘れない。
事が終わった暁にゃ枕を並べて眠るも一興。
それが幻想郷クオリティ
3. 3 匿名 ■2005/10/19 01:15:23
うーん、話の展開としては悪くないけど……
4. 10 アルファ〜 ■2005/10/19 16:08:41
幽香が出てくるSS無いな〜、と思ってたら…。
GJ!、です!
幽香ファンなら夢見る?幽香VS紫、楽しませてもらいました。
花映塚以降にも出てくれないかなぁ…
5. 5 おやつ ■2005/10/22 00:06:32
泣くな!
あんたは良く頑張った!
と、言いたいところだが……紫様の無敵性を打ち破れなかったあんたは負けたんだ……
このまま負け続けるのか?違うだろ?
次こそは!
ゆうかりんが一花咲かせるところを魅せてくれ!!
6. 6 papa ■2005/10/22 14:50:39
幽香怖い。
自称幻想郷最強の強さと恐怖を見せられた作品でした。
7. 8 ■2005/10/22 21:43:17
点数だけというのも味気ないので、一言。

ゆ う か り ん
8. 7 一之瀬翔弥 ■2005/10/23 00:25:56
幽香さんのスペルカードに全部持ってかれました。
少年漫画的ですが、それが結構好き♪
肝心なところでスッと良くなるテンポに脱帽。
9. 7 MIM.E ■2005/10/23 21:42:24
最近幽香よくね? とおもってたおいらにとってウハウハなSSでした。
事実紫が強いのかどうかは分かりませんが、幽香のすごみみたいなのがかっこいいですよね。がんばって勝つまで再挑戦だ!
GJ!
10. 9 まんぼう ■2005/10/24 02:49:30
紅葉というお題から幽香VS紫をするとは……まったく予想外でしたね。
良い作品でした。
11. 4 Tomo ■2005/10/24 11:12:46
真剣勝負の緊張感から開放されると、一転してまったり。という流れに東方らしさを感じます。勢いはあるので、場面構成にもう一工夫欲しいなと思いました。
12. 6 藤村りゅ ■2005/10/24 15:59:11
 ダークな幽香が飛びすぎで違和感、があるようなないような。
 まあでもこっちが本当っぽい感じもします。強者は弱いもの苛めはしても殺しはせんイメージがあるので、食い違ってしまったやも。
 何となく、花が汚れるからそんなことしないわよって言いそうですしね。
 強者は余裕があるものなのですよ。
13. フリーレス 楠木忍 ■2005/10/25 20:29:17
是非次の機会には、幽香の活躍るするお話をお願いします。
14. 9 木村圭 ■2005/10/25 21:38:38
何このステキで本気な殺っちゃう気。
幽香さんの凄まじさ、十分に体感しましたよん。
でも殺す気の幽香を弾幕ごっこで返り討ちにした紫はもっと(パァンバシャッ
ところで紫が妖弾を握っている理由がイマイチ分からずorz
不可を可にするための一発の蜘蛛の糸、でいいんでしょうか?
15. 8 世界爺 ■2005/10/26 01:02:34
後書きがジョジョい。

それは一旦置いといて。
天上天下カリスマ対決。最強の競演もまたお祭り騒ぎ。
そーいやダイハード同士ならガチバトルしても平気っぽいなぁ。

花と一緒に再び蘇る幽香のカリスマ。彼女自身は惜敗ながら、しかと感じさせていただきました。
確かに幻想郷でも最強言われてるからなあ。しかし紫が一枚上手であった。ただそれでも次が分からない。
さてさて、次の六十年が楽しみです。

それとゆうかりんの寝顔が見たいd(ry
16. 8 美鈴まさき ■2005/10/26 02:44:11
 スキマの大妖怪と自称幻想卿最強のガチンコ弾幕バトル。
 戦闘ものが好きな私にとってツボに入りました。
 個人的にはもう少し腹黒い駆け引きがあれば、よりふたりの強さが引き立つのかとも思ったり。
17. 7 ■2005/10/27 23:49:35
幽香の旧作データを知らない私としては、購入予定の紫香花で少しでも触れられてるといいなぁ…と思ってみたり。ネタとして使うのに、情報が欲しい…
18. 7 ■2005/10/27 23:52:42
怖い怖い怖い怖い怖い幽香怖い幽香怖い
いや、マジで……藍死ぬって。
こーいう話は大好きなんですが……いや怖い怖い怖い怖い怖い
まぁ読んでて楽しかったです。怖い
19. フリーレス ■2005/10/28 14:34:57
どうも、執筆者の執です。とはいえ初めて使う名ゆえ、無意味な名乗りですが。
名無しさん、あるいは14と書けば解る人もいるかもしれませんが、流石に忘れられてるでしょうな。
創想話での活動経歴はナシです。ずっと匿名で活動してきましたゆえ。

自分の作品を卑屈に貶めすような発言は嫌いなため、「だが謝らない」主義ですが、今回二つだけごめんなさいさせていただきます。
一つ目。こんなイレギュラーなアプローチの作品が作品リストの一番上に載っちゃってごめんなさい。
上から順に読むタイプの人の場合……ほのぼのテーマのはずがいきなりガチバイオレンスバトルだもんな。
前菜に激辛キムチを出してしまった気分だ。ごめんなさい。
二つ目。藍さまが完全にかませ犬と化しています。藍さまファンの人、ごめんなさい。ちなみに私は藍さまファンです。ごめんなさい私。

謝ると同時に感謝の言葉を。とはいえ主催者の方やコンペスレの人への感謝は言うまでもないこと。
というわけで個人的なものを。
火曜日の授業で休講かましてくださった仏教学概論のM先生。おかげで無事書き上げられました。
いやぁ、なんせこの作品が書き上がったのが締め切りの40分前でしたからね。講義があったら確実に原稿落としてましたよ。不謹慎ですが、本当にありがとうございました。

ちなみにこのSSの主役はゆうかりんです。間違ってもゆかりんではありません。
そもそもゆうかりんの最強ぶりをアピールするSSのはずだったのに……。
花映塚からのにわかファンではありますが、旧作でのぶっちぎれた言動の数々は知ってましたし、花映塚の登場シーンでは狂乱したものです。
彼女こそ最強でなくてはならない、そう考えて筆を執ったはずが……蓋を開けてみればなんだこりゃ。
創作と勝負事ってのは思い通りにいかないもんですねまったく。
20. 6 風雅 ■2005/10/28 14:37:09
おー、最強対決。
紫に挑む戦いを挑む話の場合例のスキマにどう対抗するかがキーになりますよね。
で、幽香は……なるほどなるほど。
アイデア次第なのは戦いもSSも同じ、ってことで。
21. 10 セノオ ■2005/10/28 14:56:37
SUGEEEEEEEEEEEEEEE! 熱い!
幽香と紫の邂逅は一度は見てみたいと思っていましたが、
まさかこの場所で出会えるとは! しかし――あーん! 藍さまがかませ役だ!

しかし、ありがとう。いいものでした。
22. 7 K.M ■2005/10/28 16:14:37
スゲェこのガチバトル・・・にしても、幽香様のあの能力はなんと恐ろしいことか
喰らったら、電子レンジの中に入れられたみたいになるって解釈でいいんでしょうか?
・・・いや、真に恐ろしいのは作者の意に反してしまうほどの紫様と言う存在ですけどね
23. フリーレス 名前は無し ■2005/10/28 16:56:40
幽香VSゆかりん……
SS書きにとってはとてつもなく魅力的な対決ですね。
片や海千山千の大妖怪、片や最強を目指すフラワーマスター!
ううーん、中々よい幻視をさせていただきました。
というか、もし仮に、幽香がゆかりんの式になっていたら、もはや天下無法の最強主従だったのでは?
いや、むしろ最凶? 最驚?
東方幽々夢のエクストラで、幽香が登場とかいう、ありえない映像を一瞬だけ夢想しました。w

…………ええ、だって、仮に幽香が式になったのなら、やっぱりスッパをするんで(以下略!
24. 8 名無しでごめん ■2005/10/28 20:43:09
「お題あり」最後の投稿を飾るのに相応しい弾幕美。
幻想郷最強決定戦の名の通りのバトルを書き切ったその筆力、お見事でした!
25. 9 es-cape ■2005/10/28 23:24:36
東方から弾幕を抜かしてバトルにすれば異能力物になる。
すなわちそいつはジョジョと一緒なわけで。

『咲かせる能力』の応用で『生物を咲かせる』、ジョジョっぽい能力の拡大解釈だと思ったら『やはり』ってやつだぜ!
その内『秘めた才能を開花』させたりもできるようになりそうな幽香様にしびれる憧れる。

最終的にスペル決着に持っていって、死人を出さずに終えるところも上手いと思いました。
一つ欲を言えば、紫が開花に耐えたところ、何か理屈を捏ねてくれれば良かったかと思います。
ともあれ、けれんみたっぷりのセリフと勢いのある文章、バトル物として十分に面白かったです。
26. 8 弥生月文 ■2005/10/28 23:24:39
紫様かっけぇー。幽香さんこえぇー……
あとその後書きはずっこいです。爆笑しましたw
27. 9 SSを書きなぐる程度の能力 ■2005/10/28 23:59:51
60年目の幻想邂逅。最強の二人の対決、堪能させていただきました。
……でも幽香さまー。このSSだと言動とか技とか完璧に悪役の所業ですよー。それだとゆかりんの胡散

臭さ補正入れてもやられ役にしk(赤い花
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