にんじん

作品集: 最新 投稿日時: 2006/03/17 05:36:14 更新日時: 2006/03/19 20:36:14 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00

「では、先ほどの件、よろしくお願いしますね」
「ええ、確かに」
「助かります、八意さんくらいしかお願いできる人が居なくて」
「あらあら、根回しも大変ねぇ」
「これも記事の為ですから」
「まぁ、頑張りなさいな」
「では失礼しますね」

第三調合室、と書かれた看板の下をくぐり、板張りの廊下に出ます。
「えぇと、出口はどちらでしたっけ」





わたくし射命丸 文は今、永遠亭にお邪魔しています。

永遠亭。

竹林の中にひっそりと身を潜める広大なお屋敷。
矛盾していると思いますが、事実そうなのですから仕方ありません。
蓬莱山 輝夜さんを主に置き、腹心の八意さん、その弟子の月兎さんに、たくさんの妖怪兎が住まうお屋敷で、この界隈でもなかなかの大所帯です。
とある事情で、最近まで外との交流を極力抑えていたそうですが、十五夜の月見にお客を招いてから急にオープンになったそうです。
オープンになったとは言え、お屋敷をぐるりと囲む竹林は大変広く、案内の無い者が立ち入ろうとしても迷ってしまい、辿り着く前に妖怪の餌食になるか、知らないうちに追い返されているかのどちらかが大半です。
もっとも、このお屋敷に出入りするような方々は、そのどちらの障害もモノともしない程度の実力がありますけど。

スカーレット姉妹のお屋敷も大した広さですが、こちらもなかなかです。

迷いやすさとか。
・・・ええと、ちょっと説明しますと、ここの内部構造というのは増築や結界術による空間接続などで捻じ曲がっているところが多く、見た目以上に複雑に入り組んでいるのです。
その為、案内無しで歩くのは少々危険だったりします。
もっとも、紅いお屋敷と違って迷っていたらうっかり地下に降りていた、とかいう13番直行な罠はありませんが。

はい。 一度ご当主の妹君と、お茶の時間を過ごした事があります。
速度自慢を閉鎖空間に押し込めるのは、反則だと思います。
負けませんでしたけど。

まぁ、それはそれとして。

迷子になったようです。
慌てても仕方ありません。認めましょう、この事実。
・・・落ち着き払っても仕方ないのですが。
この区画は八意さんの作業場があるので、用の無い兎さん達は近付こうとしないのです。色々な意味で。
右を向いても左を向いても、ついでに天井を仰いでみましたが、どうにも代わり映えのしない内装です。
「だれかいませんかー!」
何度目かの呼びかけも虚しく響くだけです。
板張りの床は冷たく、立っていると段々冷えてきました。
お腹も空いてきました。
いけません、敏腕記者が取材先で空腹を抱えて迷子なんて、格好がつきません。
仕事中の空腹や睡魔なら記事の為と我慢出来ますが、取材を終えた気の弛みが私に隙を作り出したようです。
・・・冷静に分析していたら余計にお腹が空きました。

【風神一扇】でもぶちかませば、騒ぎを聞きつけた兎さんたちが来てくれるでしょうか・・・?
余所様の家の中で暴れたとあっては今後の取材に影響が出るのは明白ですが、このままで居るわけにも行きません。
晩秋、夜の廊下は冷え込む事でしょう。
このままだと、その・・・いろいろマズい事にもなりそうですし。

悪足掻きで右手の法則で歩いてもみましたが、得られたのは疲労感と空腹感と、あと、一つ。
迷符【ホームメイロ】 でもうっかり回しすぎたのでしょうか。 どこまでも同じ景色です。
あああ〜、なんでこんなに廊下が長いのですか〜。

・・・次第に余裕が無くなって来ました。
飲み込む唾が硬い気がします。
「止むを得ません」
右手に扇を持ち、肩に担います。

心の中で永遠亭の皆さんに謝りました。

「行きます! 【風神いっ「あ、こんなとこ」せん】!!」

右腕一本で振りぬいた横薙ぎの扇は、風の理力を解き放ち廊下に一陣の風を巻き起こしました。
砕きの力を秘めた空気の塊は、轟く風となって廊下の突き当たりにまっしぐらです。
ひとたび放てば止める事は私でも難しく、疲労空腹などを抱えた今の状態ではおよそ緊急停止不可能な技なのです。
ああ、面倒な描写はお腹が空くので割愛します。
ぶんっ ひゅごぅ どーん! です。
ほら、どー「ぎゃう」ん・・・?

上がった音は快音が一つと悲鳴が一つ。

・・・突き当たりの壁に当たる前に、横合いから出てきた誰かを巻き込みました。

いけません、いけません! 取材先で狼藉を働いたとあっては今後、永遠亭は出入り禁止になるかもしれません!
幸いここはひと気のない廊下、証拠は・・・隠滅してしまうに限ります!

倒れている影に歩み寄ります。
生きていれば御の字なのですけど・・・?
長い長い紫銀の髪、紺の上着と丈の短いスカート、そして頭から突き出ている萎れたうさぎ耳。
これだけ特徴的だと、うつ伏せでも分かります。
「だ、大丈夫ですか、うどんさん!」

そう、この方は鈴仙・優曇華院・イナバ。
月の兎さんで、大天才八意 永琳の弟子、そして曲者揃いの永遠亭では憐れなほど、まともな性格の持ち主。
皆に愛される弄られキャラ、ついでに言うとミニスカ同盟の一員です。

「うぅ〜、あやちゃん、ひどいぃ〜」
呻きながらも、身を起こすうどんさん。 ああよかった、命に別状はなさそうです。


−−


復活したうどんさんに案内してもらい、通常区画まで戻ってきました。
やはり、研究室を含む区画は結界で隔絶されており、危険な薬品などが容易く持ち出されないよう、迷路状になっているそうです。
というか、そういう説明は帰る前にして頂きたいところです。

その事を尋ねるとうどんさんは、
「だから私が案内に行ったのに。 まさか家の中で烈風弾を貰うとは思わなかったわ」
「ですからその件は、申し訳ないと・・・」
折角おさまりがついた話題が蒸し返されそうです。

と、その時。 ぐきゅい〜、と私のお腹が空腹を訴えました。

「わ。 すごい、こんなにはっきり聞こえるのね」
「うう、朝に軽く入れただけなので・・・お恥ずかしい」
「じゃあさ、これから食べに出ない?」
「あの屋台ですか?」
「うん」

というわけで、見送りに、と出てきたうどんさんとお酒を呑みに行くことになりました。
お腹が空いているので一刻も早く辿り着きたいですが、お腹が空いているので速度が出せません。
わりと低速で、宵の口の森の上を飛びます。

「今日、お休みなんだ」
「休みあるんですか」
「まあねー」
意外な事実。 永遠亭薬剤部には休暇の概念があるそうです。
そんな話をしつつ行きつけになりつつある屋台へ。
眼下に、歌姫夜雀さんのお店が見えてきました。



―――



串焼きと熱燗でお腹を暖めると、ようやくひと心地つきました。
お酒の入ったうどんさんは愚痴モードに突入です。
「最近、うちに出入りしてる人形は知ってるでしょ?」

知っている前提で話がきましたが、当然知らない訳はありません、ですが、さほど重要な話題とも思えないのでメモ数行にも満たない記事の端切れとしてしか認識していないですね。

「ええ、知っていますよ?」
「師匠があの子を気に入ったみたいでね」
「ほうほう、どのように?」
おや、これは新情報ですかね?
「着せ替え人形よ、まさしく。 まぁ、動作原理がどうのとか、鈴蘭畑の事とか、いろいろあるんだけど・・・」
てっきり薬剤関係の協力者程度かと思っていましたが、聞けば医療、調査行為と称したセクシャルで過剰なスキンシップが横行しているそうです。
世間知らずの幼子(精神的)にあんなことやこんなことを! と、うどんさんがエキサイトし始めました。
まぁ毒の塊であるあの人形と、平然と接することの出来る人材など数えるほどしかいませんけど。
「八意さん、見かけによりませんね」
「そうでもないわよ、根詰めて作業した後とか甘い物をやたら食べたりするし。わざとツラい思いをして、そのあとのご褒美を楽しんでいるみたい」
セルフ飴と鞭。 そんな単語が頭をよぎります。
「口の横とかにね、クリーム付けてたりする所とか可愛いのよ〜!」

最近交流の出来た紅魔館、メイド長自慢のスイーツなどをうっとりしながら食べている様は、実際目の当たりにしても、とても推定年齢からは信じられませんでした。
写真は撮ったので今度記事にしようと思いますが。

「そうねぇ、姫様みたいなやり方もあるけど、師匠は日常に緩急をつけている感じ?」
「緩急、ですか」
熱燗を流し込みます。
「普段はそういうこと、絶対に言わないんだけどね、たまーーにポソっと」
「長生きするのも大変なんですね」
「長く生き過ぎると大概の事には慣れちゃうんだって」
「では、その人形とのひと時も「飴」だと?」
「わりとべったりね。 私に臨時のお休みが出るほどには」
「良い事ではないですか」
「尊敬している人のああいう顔はあんまり見たくないなぁ」

そう言うと脱力したように卓に突っ伏します、あらら、長い髪に枝毛が。
診察室(仮)から「アハハ、ウフフ」と聞こえてくるらしいです。

「しぃしょ〜ぅ、もう私は飽きられたんですか〜」
オロロ〜ン、と うつぶせのうどんさんが泣き出しました。
と、思うと、
「それに!」
と猛烈な勢いで体を起こします。
「どこから仕入れてくるのか知らないけど、あの人形にはフリフリの服とか用意してるのよ!」
どこから、という事に関してはおおよそ見当がつきますが、お針子さんの仕事が早いのか新作が目白押しだそうです。
「私なんかこれ何年着てると思ってるのよ!」
「いつもその服なのですか?」
「ええそう! これ、師匠の作なんだけどね、ある程度の自己修復と自浄機能があって」
「破損や汚れも勝手に直る、と?」
そういえば先ほどの誤射の痕跡もありません。
「そう! すごいでしょう!さすが天才のすることは違うわ! さすが師匠!ステキ!」
なんでしょう、この浮き沈みの激しい兎さんは。
「この服はね、「荒事担当の貴方に」って師匠が作ってくれたのよ!」



姫や師匠、それに受け入れてくれた「家族達」を護る。
その役を頂いた時に贈られた服。守りの要の証として、弟子の精進に対するご褒美として。
朝、袖を通す度にその時の事を思い出し、自覚する。
大事な、証だ。

だがそれとこれとは話は別・・・!



「私は服なんかあんまり持ってないのに・・・!」
「はぁ」
「フリルも帽子も無しなんだからせめて脚出せって、理不尽だと思わない!? 自分が「少女の枠ギリギリにいる」とか「悪党面のニヤケ顔」とか言われているからって、弟子に当たることはないと思うのよ!」
いろいろとギリギリな発言が来ました。
まあ、お酒の席ですし、同盟のよしみもあるので、今回はオフレコと言う事にしておきましょう。

私は膝上20センチですが、飛行時には後方警戒を怠りませんし、風を操る事で大気に偏光レンズを作り出し、それで防護することも忘れていません。 高空機動時にはドロワーズも穿きます。 だって寒いんですよ? 空の上って。
しかし、ミニスカ同盟であるこの月兎さんは、ドロワーズの着装を上司に禁じられているそうです。

ガコン!
中身を一気にあおってコップを叩きつける鈴仙さん。中身は3センチ四方位の人参入りの焼酎のお湯割りです。
反動で人参がコップから飛び出しそうになりました。
・・・それ、美味しいのでしょうか・・・?
でも、先ほど「いつもの」という注文だけで出てきたところを見ますに、この店主のお脳でも憶える程度には繰り返し注文しているものなのでしょう。
あ、メモ書きがあるようですね。鳥族の宿命とはいえ、記憶力の弱さに対する努力、共感するところがあります。
「しかも歩くと怒るのよ!? 「あらあら折角の長くて綺麗な髪を引きずったらダメよ?ウドンゲ」とか言いやがるのよ!?」
八意さんの口調を真似(割と似ていました)すると、お酒のおかわりを注文します。
「でも、その長くしなやかな髪はうらやましいですよ」
「あやちゃんはいいわよ、大気防護とかで裾をコントロールできるでしょう? 私が同じことしようと思うろ、スカートのあたりの位相を狂わせてぶれさせないといけないのよぅ?」
一度失敗して、スカートだけ消してしまった事がありました。 ええ。もちろん記事にしましたよ。

またコップを一気に空けて、
ガコン!
また人参が跳ねました。
今度は、がりがりとおつまみを齧ります。
皿の上にあるのはお刺身くらいの大きさに切った人参を、塩を振って軽く焙ったもの、のようです。
先ほどの取材では永遠亭の台所事情には踏み込みませんでしたが、主の側近の弟子がこの様子だと、段々としなくてよい心配をしてみたくなりました。
ってか、一日当たりの人参の消費量とかどうなってるんですか、あそこ。
・・・あの辺りに大規模な人参畑があれば上からでも分かりそうなものですが、見当たらない所をみるに、月の頭脳の術でどこかに閉鎖型の結界を設けてその中で栽培しているのかも知れませんしね。
耕符【壺中の人参畑】 とか言って。
あ、八意さんなら品種改良して短期間で収穫できるようにしている、とかもありそうですね。
今度、取材に行ってみる事にしましょう。
「あやちゃあん、聞いてるぅ〜?」


――――


「お邪魔するよ」

暖簾をくぐってお客さんがきました。
上白沢さんでした。お一人のようです。

「おや珍しい」
「私もたまにだが来ているぞ」
「里の方は大丈夫なんですか?」
そういうと慧音さんは顔をしかめます。
「会う顔会う顔それを言うが、四六時中監視しているわけではないぞ」
「そういう印象ですし」
「聞かなかったことにしておいてやる」

慧音さんは私の隣に座ると(店は狭いので間は空けないのがここのルールです)お酒と串焼きを注文します。
「でもいいんですか?」
「留守番はいる、今夜くらいは問題ないさ」
あ、ちょっと心当たりが。
「えーと。魔理沙さんだったり?」
「そうだが? 何故知っている」
「先ほど出前の注文があったんです、魔理沙さんからここに」
「ここは、出前などやっていないだろうに」
「最近始めたそうです、リグルさんとかが時々オカモチ持って飛んでますよ」
なんでも虫を遣った連絡手段で注文を受けるとかどうとか。
「・・・あいつら」
「まあまあ、お酒は楽しく飲みましょうよ、ね」



慧音さんを加えて三人で呑みました。
うどんさんも、慧音さんも永遠亭の関係者なので、共通の話題があり、お酒の勢いも相まって愚痴大会になりました。
それぞれ、自分のすぐ隣にいる蓬莱人の起こす面倒事に巻き込まれる、という平穏ではない日々にはいろいろ思う所がある様子。

「まあ、好きでやっていることだしな」
「そ〜ぅねぇ〜」



根が真面目な慧音さんは、「明日に酒を残せないと言って」途中で抜けてしまいました。
もうすこし呑ませれば、いろいろ聞き出せそうだったんですけどねぇ。
隣を見るとうどんさんも寝息を立てています。
今日はここでお開きのようですね。



―――――



森の少し上をゆっくりと飛行中です。
酔いつぶれてしまったうどんさんを担いで、永遠亭まで向かいます。
一緒に居る方々がザルばかりなので、うどんさんもそれなりに強いはずなのですが、今日は飲みすぎたのですね。
まあ、私もザルの一人ですけど。

「うぅ〜 ゆ〜れ〜る〜」
背中でうどんさんが呻きます。お目覚めのようですね。
高空で急げばあっという間の距離なのですが、それは泥酔状態には危険です。
万が一緊急事態に陥った場合、高度があると広範囲に悲劇が降り注ぐことになります。
高空、高速でそんな事をしようものなら、即座に博麗の巫女が来て、結界の隙間で2 3日反省という事になりかねません。

そんなわけで低速、低空で安全飛行だったのですが仕方ありません。降りましょう。

「どうです、落ち着きましたか?」

木にもたれ掛かっているうどんさんは軽く立て膝になって・・・ああ、ダメです、描写はしません。できません。
お酒で前後不覚に陥っている女の子の無防備な姿を克明に書き記すほど、私は・・・
・・・まあ、個人的な記録ならばよいでしょう、あとで上司の許可を得れば済む話でしょうし。

「んう〜〜」
「うわ、ちょっと、うどんさん」
抱きつかれてしまいました。
「あ〜や〜ちゃ〜〜ん、んふふふぅ」
ああ、だめです完全に酔っ払いです。 グオー だめだはなしにならない! です。

うどんさんは、甘えるように私の喉元に頬をすり寄せます。
お酒で温まった体温が薄布ごしに伝わってきました。
「あやちゃん、いい匂い〜」
襟元、鎖骨の辺りを鼻先でくすぐります。 うわあ、くすぐったいです。
「うひゃ、息吹きかけないでくださいよっ、ぅわわっ」
ああっ、いけません。
身をよじったらバランスを崩して倒れてしまいました。

「あ・・・」
「・・・・」
説明しますと、私は今、うどんさんに押し倒される形になっています。
長い長い髪が肩から零れ落ち、閉じ込められたような錯覚に陥ります。
体温の篭った髪からうどんさんの香りがします。
なんだか、ドキドキしてきてしまいました。

押し倒されたまま見上げると、うどんさんもこちらを見ていました。
上気した頬、艶やかな唇、そして、
紅く輝く、宝石のように綺麗な―――瞳。

あ。

気付いた時には既に・・・ああ〜、月の兎の眼をまともに見てしまいましたよ!?
あら? あらら? 手足の感覚が妙です! なんと言いますか、風邪をひいて節々が熱を持ったときのように、手足が言うことを聞きません!

これ以上狂気の瞳を見ていたら、天狗の抵抗力でも自信がありません! いろいろとまずいことになりそうです!
被害の拡大を防ぐ為、私は思わず目を瞑りました!


直後、唇に柔らかい感触が。


む?


思わず目を開けると、目の前には目を瞑ったうどんさんの顔がありました。

「〜〜〜っ!?」

こちらが驚いていると、覆い被さっていたうどんさんはゆっくり離れていきました。
先程と同じ体勢に戻ると、嬉しそうにはにかみながら、
「えへへ、お酒くさかった? ごめんね。 でも、あやちゃんもおんなじ味したよ?」
ぺろりと舌先を見せます。
「・・・・・・!!」
唇を味見されたという事実に、顔から首まで熱くなっているのが分かります!
迂闊でした! 押し倒された後に目を瞑ればこうなる事くらい、予測してしかるべしです!
この間にも、そういう現場を目撃したばかりなのに!

「こういうの、なんだかドキドキするね」

あああ、うどんさんはなんだかスイッチが入ってらっしゃるご様子です!
ダメです!酒飲みが跋扈する幻想郷において、この手のシチュエーションの後などお腹いっぱいになるほど見ています!
そしてこの後は概ね2つの結末しかありません!

即ち。
1。「間違い発生!夜明けのコーヒー」ルート
2。「寸止めお預け逆流強酸直撃地獄」ルート

前者ならばこの際問題ありません! むしろ当方に迎撃の用意有りです!
しかし、しかしですよ? 後者であった場合!
ああああ、考えたくありません! 考えただけでそういう未来を引き寄せてしまいそうな気がします!

「もっかいしても・・・いいかな?」
うどんさんはうどんさんで、なんだかやる気満々です!?
潤んだ瞳で見つめられました! しまった二度目! ああ、寝ているはずなのに頭から落下している気がしてきました!
しかもなんですかこの色気!
うどんさんの髪で作られた檻が、二人分の吐息で暖まってきています!

うどんさんの顔がゆっくり降りてきました! こちらの返答お構いなしです! 一方的な宣戦布告というやつです!!
でも、うどんさん、かわいいなぁ・・・





見とれている隙に降下してきたうどんさんは、あと10センチの位置で動きを止めました。





あ。
なんですか、この予感。
だめ、だめですよ、鈴仙・優曇華院・イナバ!ここまできてそんなオチ、いくらネタに飢えている私でも認めませんよ!?
なんだかとってもルート2の予感がします!
人参さん達と再会できそうな予感がぎゅんぎゅんしてきました!

あ! 今、喉の辺りで「音」がしました! 「声」ではなかったですよ!?
な、なんですか今の不穏な音!
「な、なにか袋! ふくろ――――!」
だめ、だめですってば! お願いします! 許して! 出さないで!
せめてこの体勢は! 
ああ! おねがい顔にはかけないで―――――!!

「ぐ」
も、もうだめです、ここまできて持ち直すことはまずありえません。 統計的に分かりきっています・・・!
さようなら鴉達、さようなら幻想郷・・・!
ああ、一度くらい優勝したかったなぁ・・・

「ぁゃ ちゃ・・・ん」
「は、はいっ!? なんですかうどんさん!? お気を確かに!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん」

「ああああ! 諦めたらそこでお終いですよ!? ねえ、聞いてます!? せ、せめて顔だけは! 顔だけは――――!!」

最後の気力を振り絞ったのか、私の顔だけは、という懇願が届いたのか、うどんさんは顔を下げました、そして、

両手で私のブラウスのボタンを引きちぎると胸元に顔を突っ込み、

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

ぶちまけました。

「ひぃぃぎいいいいやあああああああああああああああああああああ!!!!!」





その絶叫は遠く紅魔館まで響き、テラスに出ていた主従にも届いた。





何故とかあったかいとかすごい量だとかお洗濯どうしようとか様々な思考が浮かび上がっては形作る前に濁流に流されていきます。

・・・ああ、人参さん。 またお会いしましたね。 すっかり角がとれて丸くなられて。 見違えてしまいました。



出すものを出したうどんさんは、すぐ隣で昏倒していました。
・・・レベル1になるまで出し切った胃袋は再開放の危険性は無いようです。 干渉で迎撃とか考えたくないですけど。

仰向けのまま夜空を見上げていると、涙が出てきました。
「うう・・・なぜ、こんなことに・・・」



――――――



遠く離れた湖上の紅い館。

気高くも幼い夜の王は、霧に投影していた遠見の魔法を解除すると、影のように佇んでいる従者に己の意見を述べる。
「ね? だから人参を食べると不幸が訪れるの。 根菜ごとき食べられなくても困らないのよ」
しかし、絶対の信頼を寄せる従者は、先ほどまでの惨(酸)劇にも眉一つ動かさず応えた。
「好き嫌いはいけません、お嬢様」 
「さぁーくぅーやぁー」









これは、お嬢様の我が侭に巻き込まれた一人の不幸な鴉天狗のお話。
・・・あれ?







―――おしまい―――





鈴仙

ゆすげ
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2006/03/17 05:36:14
更新日時:
2006/03/19 20:36:14
評価:
0/0
POINT:
0
Rate:
5.00
1. 6 月影蓮哉 ■2006/03/25 00:47:37
あはははは……。ああ、別にサルトルを話すわけじゃないですが(何
駄目だ。サワー沢口氏を思い出したw
2. 5 爪影 ■2006/03/25 01:24:50
とりあえず、ご愁傷様……
3. 10 ■2006/03/25 02:03:52
オチが最高。大爆笑。…ところで、最低でも神砂、覚悟、もと夏待ち(謎)
4. 9 名前はありません。 ■2006/03/25 16:50:51
面白すぎだと思います
5. 5 おやつ ■2006/03/25 20:57:40
落ちが良いっす
酔っ払いはいけない、始末に終えない。
不幸な天狗に合掌。
6. 3 床間たろひ ■2006/03/25 21:40:53
えーと……文よ、頑張れ? 早く洗い落とさないと匂い取れないよ?(経験者はかく語りき) 
7. 5 水酉 ■2006/03/26 03:51:14
・・・文はこれ記事にしたんだろーか?
8. 8 凪羅 ■2006/03/26 23:56:03
うどんげの苦労が実に良く分かるお話でした。
メランコだけでなく、うどんげにも構ってあげてください、師匠つД`)
文はご愁傷様です。
後でそれをネタにうどんげを苛めてあげなs(ry
9. 7 かけなん ■2006/03/27 02:46:26
にんじん嫌いなレミ様いいw
でも吐かない展開でもと思った僕は普通にエロス人。
10. 7 papa ■2006/03/30 18:39:33
タイトルを見て何かと思ったら、そ う き た か。
お酒の飲みすぎには気をつけたいものです。
11. 8 つくし ■2006/03/30 18:50:03
見事にオチにやられました。あと、後日にルート1を執筆することがあなたにできる善行だと思います。
12. 6 ■2006/04/04 02:04:33
りばーすりばーす。お嬢さま酷すぎw
13. 4 二見 ■2006/04/06 05:02:14
文がただの説明係になっているのが残念。
ギャグでいくならば、もう少しはっちゃけてもいいんじゃないかなとも思います。
14. 3 ■2006/04/07 00:32:07
 ニア「間違い発生!夜明けのコーヒー」ルート
鈴仙の口調の破壊力が高すぎますハイ。
しかしこれは酷いレミリア様ですね。
咲夜さんによる強制にんじん摂取の運命までは見通せなかったのだろうか(外道
15. 6 藤村琉 ■2006/04/07 01:20:05
 吐いたねえ。
 いやしかし、吐いたねえ。
 最後に予想外の展開が待っていて面白かったです。どことなく寓話ぽかったですし。
 吐く一歩手前でフェードアウトすると、読み手の想像の余地が広がってよりいい感じになる、かも。
16. 8 偽書 ■2006/04/07 22:02:56
巧いですねー。特に、結末がお見事。
17. 4 Hodumi ■2006/04/07 23:07:50
実に災難
18. 6 反魂 ■2006/04/11 00:55:37
いや、私もゲ○ネタ書いたのでね、こう、同族意識というか。
嗚呼でも、俺の作品にはカオスっぷりが足りない!
やはり胃液はカオスであるべきだ(何
19. 3 Fimeria ■2006/04/11 01:28:57
……なんという酸劇。
ルート2に移行してから笑いが止まりませんでした。
文はやはり不幸な目にあうのがしっくりときますね。
文の一人称で進む文体は雰囲気が良く感じ取れて巧いと感じました

文章面で恐らく既に指摘されているでしょうけども
文中…(三点リーダ)ではなく・・・を使っているところ
―(ダッシュ)を2本以上使っているところですかね。
私自身は気にしないたちなのですが、基本的に…と―は2個で1セットと決まっているようなので今後の作品のときに採用すると良いと思います。
20. 7 MIM.E ■2006/04/11 22:22:49
鬼だ! 悪魔だ! 理不尽の塊がいる!
人参好きなんですが……。かわいそうな文。これから先人参を見るたびに。とか。
でも、この後平謝りになるだろうウドンゲもそれはそれで。
ま、何をおいてもクリームつけたえーりんに勝るインパクトはありませんでしたがw
21. 7 kt-21 ■2006/04/12 00:57:32
レミリアさま外道すぎ。
22. 6 木村圭 ■2006/04/12 02:00:44
ああもう大好き。紅魔の主従でプラス一点。お酒は容量とペースを守って飲みましょう。
23. 8 NONOKOSU ■2006/04/12 05:48:16
すばらしきミニスカ同盟(いろんな意味で)。
24. 6 とら ■2006/04/12 18:21:43
うわあ、レッドタイフーン……
25. 7 K.M ■2006/04/12 21:39:51
アンタの所為かよ吸血鬼!
射命丸 文、いと哀れ(つд;)
26. 6 椒良徳 ■2006/04/12 22:31:52
タイトルを見て首を傾げましたが、なるほど、確かにニンジンだ。ウドンゲ×文というのは面白いカプですね。
27. 7 名無し ■2006/04/12 23:00:23
諸君、私は寸止めが大好きだ。
28. 6 名無し ■2006/04/12 23:26:34
リバース発動後の冷静な文がイイ!! 題名に合ってますねw
29. フリーレス ■2006/04/15 16:47:31
読了、誠にありがとうございます。
このような愚作にこんなにもたくさんのコメント、感謝の言葉もございません。

と、堅苦しいのはここでで。
えー。
採点期間中、全体に対するギャグSSの割合の少なさにビビッてました。
しかもネタが寸止め&ゲ■。しかもタイトルは投稿3分前につけたもの。
正直「やっちまった」と。

>>名無し氏 タイトルは投稿寸前に電波が届き、これになりました。
今見ると、確かにしっくりきているのかな、と自分でも思います。
>>名無し氏 寸止め。夢がありますよね。ないですかそうですか。
>>椒良徳氏 ずらりとならんだなかで平仮名四文字は浮いていますね。
最後に「ああ、なるほど」ってのが好きです。
あと、うどんげX文は博麗神社の鍋とも戦います。
>>K.M氏 今日もどこかで戯れに運命を書き換えられている人妖が…
>>とら氏 この話のきっかけは朝に駅で見かけた赤い、痕跡。
見た時には私も「うわぁ…」でしたが。 でも、何食ったんだろう?あの赤さ。
>>NONOKOSU氏 もちろん性的な意味も含みますね。
>>木村圭氏 暴飲も楽しい時間がありますが、代償は計り知れませんね。
安全運転が一番、ということですか。
>>kt-21氏 まあ、お嬢様は悪魔ですし。
>>MIM.E氏 まあ、お嬢様は(略) えーりんは庭先に簡易カフェテラスを作ってニコニコしなが午後のお茶を愉しんでいる所を撮られました。
>>Fimeria氏 ご指摘ありがとうございます。 なにせ2作目でして、SSという物のルールがまだよく分かっておりませんで。
次回作以降、反映させて頂きます。
>>反魂氏 何を仰いますか。整然と暴走した上で「吐符」。腹筋が軋みました。
ゲ■ネタでも1つ2つは被るとは思っていましたが…
>>Hodumi氏 まさしく災難。 しかも運命が敵。
>>藤村琉氏 恐れ多くも己の意見を述べまするに、「逃れようのない悲劇に叫ぶ文」を書きたかった……精進します。
>>坂氏 人参嫌いなレミリア様。 最近だと某「葡萄」作中のお嬢様でしょうか。あんな暴走書いてみてぇ。
>>二見氏 痛いところに刺さりました。まったくもってその通りです。反省材料です。 でも。 ゲ■で危険球を放っているのでこれ以上はどうなんだろう、みたいな脳内会議はありました。 保守派の勝ちでしたが。
次に活かしたいです。
>>匠氏 まあ、お嬢様は(略) わがまま放題な女の子って、結局しっぺ返しで泣かされます。 それが堪らなく…
>>つくし氏 では、ネチョスレデビューを果たせと。
この鼠、分を弁える者でござる。 だがしかし。
>>papa氏 お酒が回ってクルクルフワフワしている時は楽しいんですけどねぇ。
if、お嬢様が永遠亭に招待される事があるとしたら…?
>>かなけん氏 大丈夫です、私も普通にエロス人。 この界隈、おっぱい星人とか鎖骨県の住人だったりとか、うなじ右翼とか、いろいろ居ますし。
>>凪羅氏 それでもうどんげは師匠が好きです。耐えて、ちょっと拗ねる、みたいな。
問題はあの状況でカメラがどうなったか、という点。
あ! 至近弾でも撮影で消せるよ! 写真は見たくないけど!
>>水酉氏 なんて書きましょう? 「部下を省みない上司に不満が!」とか。
でも、インタビューとか成立するんだろうか。
>>床間たろひ氏 この話は友人の体験談も元にされています。 彼曰く、
「運命を呪った」と。
>>おやつ氏 始末に負えませんね。 酔った者勝ち。勝つために酔う。
でも後で全員敗者。 合掌。
>>名前はありません。氏 いや、そんな、ははは。でも愉しんで頂けてなによりです。
>>翼氏 ありがとうございます。 謎部分が謎。 ???
>>爪影氏 いやいや死んでませんし。 この程度でへこたれているような文でないことは文花帖のリトライ回数が証明してくれて…!
>>月影蓮哉氏 サワー沢口氏w 音、声。再現度の高さは自分の首を絞めていくような気も。 極まると放送禁止な感じ。

最後に、お読み頂いた全ての方に、参加発表の場を設けて頂いた管理運営の関係者各位に、最大限の感謝を。
本当にありがとうございました。
30. フリーレス ■2006/04/15 17:52:07
…しまった。
大仰に挨拶して締めたのに即座に手抜かりを発見。

>>偽書氏 ルート分岐を盛り込んだ時点で運命改変我侭娘が浮かびました。
唐突に、しかし自然に。
これも何かの力の作用なのかも。

あと、さっき書いた後に「サワー沢口氏」をもう一度観ました。
そう、勢いはあんな感じ。エレエレエレエレ。 優曇華、容赦ねえな。
31. フリーレス ■2006/10/19 20:11:33
第三回開催前に前回のをと見返したら、大ポカに気が付いた。

かけなん氏、ごめんなさい! 名前間違えたままでレスしてました!
漢字表記じゃなかったんですね……
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