勢いだけで赤い悪魔に酒を注ぐ

作品集: 最新 投稿日時: 2006/03/24 09:10:05 更新日時: 2006/04/19 02:20:09 評価: 24/27 POINT: 141 Rate: 1.33


「タコが焼けたわぁ、タコが焼けたわぁー、あはははは」
「大げさだぜ、でも焼いたのか。タコ、焼いちゃったのかぁ、ふふふふふ」

気持ち悪いわね、タコくらいで何? ってかタコって何よ。
それは人格破綻するくらい焼くことに、幸せ感じる何かなの!?

私はアリス。マーガトロイド。
そもそも鍵は、開いてたし? 魔理沙だし、遠慮は無いし、ずかずか上がって当然なのよ。
なのに居なかったなんて、私が訪ねてきてあげたのに、居なかったなんて!!
だから隠れた、押し入れの中。ぐたぐたしてて、がこがこぐぎぎが狭いのだけど。
特にこの、今も背中に当たってる、ガリイレンって感じの突起は痛いじゃないの狭いじゃないの何するのよ何なのよもう!!
後で覚えてなさいガリレイン、身動きとれたら粉みじんにしてあげるんだから。
あー、でも危ない魔法具だったりしたら魔理沙を叩こう! 無理なら上海で。

「しかしあれだな霊夢、こんな変な生き物が川を泳いでるなんて信じられないな、うっかり遭遇したら地獄を見るな、主にこの丸いとこが」
「魔理沙、海だって何度も言ったでしょう? ていうか聞いて! これ赤くなったのよ! 主にこの丸いとこが」
「おいおい、血だらけは勘弁してくれよ。ちゃんと洗ってから焼いたのか? 主にその丸いとこを」
「違うと思うなぁ、血は黒かったし。主にこの丸い……ってここは赤いんだけどね!」

丸いから何なのよ。丸いところにこだわりきれて無いじゃないのよ。

「ぶーーーー。悪魔かよ! 前に一度見たぜ、食うのか!? たかがおやつに命賭けさせる、なんてその川ルナティック!」
「だから海。ちゃんときちんと食べられるって、霖之助さん言ってたわ」
「海は湖よりでかいのだろう? 知ってたか? 川だって実は湖より広いんだ。私だってどちらかと言うと霊夢よりヒロインだ」
「なるほどね、でもそこは私じゃなくてアリスにしときなさいよ」

なんで私なのよ! 

「確かにな」

納得しないでよ!

ああ、ああ、ああもう、だから、そこには理由があるの? 
丸い悪魔が血だらけで、焼かれて海が川だなんて。
そんな異次元語る貴女たちに、私を馬鹿にする権利はあるの! 
ツッコミたい! はたきたい! スリッパならここにあるのに! 
あ、痛い、ガリレイン背中痛いから、ごめん、あんまり動かないからちょっとだけ大人しく仕舞われてて、痛、いたた。





……さて、私は、出て行くタイミングを失っているのです。

ほんの数刻前の時間、上海に戸口を見張らせて、私は押し入れに隠れて、魔理沙の帰りをワクワク待った。
部屋に帰って来たなら飛び出して、びっくりさせて、やるはずだった!

“ただいまー、って誰もいないけどな。あーそれにしてもアリスって……”

でも、帰ってきた魔理沙は私が飛び出る前にこんな独り言を言うんだもの、気になるじゃない
聞きたくなるじゃない、乙女炸裂しちゃうじゃない!
だから息をひそめて聞き耳たてた。 押し入れのスキマからこっそり様子をうかがった。
魔理沙の本音を聞くために。魔理沙の本音を見るために。 



“アリスってさ…………独り言多いよな、そう思わないか霊夢”



大きなお世話よこの魔理沙!
しかも霊夢も居るのね! 連れ込みね! 衝撃の三角関係! 隠れた私はさしずめ愛人!?
アハハハ、残念だわね、魔、理、沙! 私は隠された愛人どころか、ここに呼ばれてすら居ないわよ!
不法侵入万歳いやほーーーーーーーーー!
ダレか私のボケにツッコミ入レて、後生だから放置しないで、この際上海でもいいから!

……上海居ないしぃ。


そんなわけで私は出て行くタイミングを失って今に至っているのです。
私、泣いてもいいですか?
私は押し入れサメザメカメガメ、一方茶の間は食め食め噛め噛め。三時のおやつに焼きタコだコラ!


「んでその焼きタコってウマいのか? 塩とか砂糖とかつけるの?」
「あはは、あはは、甘いわね! タコはそのままでもほんのり甘いの! パク! ぐにゅ! うぇ゛ 甘くないわけなくないわよ!!」
「そそそそそれって結局甘いのか? 甘くないのか!? どっちなんだー!!」

いいから落ち着つきなさい。タコで頭抱えてうち震わすのは止めなさい。
恥ずかしいから。主にそんな光景を覗き見てる私が。

魔理沙もタコをつまんで食べた。くちゅくちゅむにゅみゅにゅ下あごが滑る。
あ、今、うぇって顔した。 魔理沙の珍しい顔を見れてラッキー
な訳ないわよ!

「霊夢、これ半生じゃないか? 味は悪くないが、固かったり柔らかかったり噛み切れなかったり、やな感じだぜ」
「ちゃんと火が通ればいいってもんじゃないのよ? 愛情が大切なのよ」
「煮え切らない、いや、焼き切れない愛情だな……霊夢、恥ずかしいじゃないか……」

なんでよ!

「魔理沙、焼き切れないんじゃなくて、焼き足りなくて噛み切れない愛情よ、減点3」

そんな事どうでもいいわよ。結局料理下手認めてるじゃないのよ。

「今思ったけどさ、アリスの煮え切らない人形への愛情も食べられてるからこそ生まれる年季の入った機微なのかな?」
「どっちがどっちを食べるの?」

食べないから、食べられてないから、まったく無いから、そんな事有り得ないから。


あぁ、でも、例えば月の深い青い夜、私の人形たちがひとりでに動き出して、ベットに横たわる私の、シーツからはみ出た指先に、
カプッと噛み付いて、食み食みしたとしたら、歯なんて付けてないから痛くもなくて、でも指を包んで圧迫する、
一生懸命にくりかえす、一心不乱な、私の人形ふふふ。

怖いだけよ!!!

ち、ちっとも、ちょっといいかも、なんて、思ってないんだからねっ!! あばーーーーーーーーーーーーーー!! 
あ、あ痛、ガリレインごめん、もう興奮しないから、背中虐めないで、痕出来るから……は、あ、
はぁ、はぁぁ、落ち着いた。
このテンション維持しないとこの状況絶えきれないのよ。誰か、神でも様でも察してよ……

(神と聞いてあr)

来るな来ないで今だけは止めて、恥かくから、娘が友達の前で、一生消えない傷を負うから頼みますお願いします
後で孝行します、近いうちに孫の顔見せれる様に努力だけはいたします。
だから、来るな来るな来るな、ママは歩いてお帰りぃ!!

(……)

はぁぁぁはぁぁぁぜぇぇぇぜぇぇぇぇ
テレパシーが通じた?!

(……と思う神綺であった)

蔑ろにされたからって自虐ネタに走らないで!!

「ん? 霊夢、今、物音しなかったか?」

やば

「ケヒー」

超やば!

「どうどう、落ち着け、霊夢、多分気のせいだ。獲物じゃない、今日は食べ物はここにたくさんあるからな」
「だって、焼きタコおいしくないんだもの」
「自分で作っといて、しょうがないなぁ、まだ材料のこってるか?」

助かった? 
ん あ、こっち……来る? 
え あ どうしよ!? 

みつかる?! ピンチ!!

どきどき 

あー 

あーーー 



あぁぁぁぁ 
台所、行っちゃった。

べべべべつに、実は全部知ってました出てこいよ。とか、期待したわけじゃないんだからね! 



……ぅぅぅ。





「なぁ、霊夢、そろそろ夕方だし、おやつじゃなくて本格的に夕食作っちゃっていいか?」
「親子丼で遠慮しておくわ、魔理沙」
「そこは、おかまいなく、とかだろ、遠慮するなら普通」
「だいたいなんで親子丼! 失礼だ! 遠慮された存在足らしめられた親子丼に無礼千万味塩和尚だ!」
「自分で注文して自分で切れるなよ」

和尚にツッコミ入れなさいよ!

どんだけスパイス利かせないといけない生臭和尚よ!
毎朝親子丼食べないと悟り開けないのですおしょしょう。
なんて言うに決まってる、変な語尾なんて付けちゃっておしょしょーう!
ていうか信仰関係ないの?! あなた仮にも巫女でおしょう? なーんちゃって、あはは!
面白くないわよ! なんで私が一人で霊夢のボケ発展させてるのよ!

「でもね、魔理沙、貴女が親子丼を完成させた暁にはきっと、類い稀なる神秘に頭ひねくれるわ」
「ひねくれてるのはお前の方だぜ、霊夢」

その通りよ!
ん、あれ、えっと、それでいいのよ魔理沙! でも私にもツッコミの余地残しておいてよ!
暇なのよ、出て行けないから暇なのよ!
いいわ、魔理沙がそう言う態度取るなら私はこれからもうツッコミ入れてあげないんだからね!

「ふむ、まぁ親子丼は出来るか。鶏肉は悪くなりそうだから全部料理に使うとして、野菜が足りないな」
「お茶っ葉なら持ってきてるわよ」
「おいおい、今からそれ植えて育ててたら夕飯には間に合わないぜ?」
「それでいいのよ。明日の夕飯用だから」
「明日も来る事は決定なんだな」
「通い妻になります」
「おい霊夢、それを言うならむしろ……いや……合ってる。ばっちりだぜ霊夢!」

……くっ……

「その言葉、プロポーズと受け取られて後悔するわよ」
「ありがとう!」
「いえいえ明けましておめでとう」
「おせちにするにも茶葉は余るなぁ」
「余ったらそのままプリンにするのよ」
「たまごは親子丼用だから余ってないぜ?」
「プリンにたまごが要るなんて初耳ね、魔理沙私に何食べさせるつもり!?」
「たこ……」
「たこ!?」
「たこ……プリン」
「それならオッケーよ。驚かさないでよ」

……くぅぅ……くぁぁ……ツッコミいれない……わよ!……

「それにしても、魔理沙ったら冗談すぎるから、何となく押し入れに向けて夢想封印したくなるところだったわ」

……え……

「おい、霊夢、その冗談だけはよしてくれ。ちょっとでも衝撃与えると幻想郷ごと吹き飛ばすようなものが入ってるんだ」
「あ、うんごめん。そう言えばそうだったわね」

……え゛え゛え゛……
……魔理沙なんてモノを……


「まぁ、まじめな話」
「そう言うと思ったわ」
「あ、先に人の結論言うなよ!」


まだ誰も何も言ってっ!……く……危なっ……下手に動くところだった……うぅぅ
……こんな事で、世界も、人生だって終わらせたくないわ!
あ、痛い、ガリレインがまた下がってきた、背中痛い、あれ、でももしかして、
魔理沙が言ってる幻想郷吹き飛ばす程危ないものってもしかして、背中に当たってるこれだったりして?
えー、でもー? まさか……ねぇ。最終兵器ガリレイン! なーんて有り得ない? あれでもソレっぽくない?
最終兵器ガリレイン? 最終兵器ガリレイン。 最終兵器ガリレイン! シャンハーイ逃げてー! どかーん!
あぁ、私はここで、死ぬのね! 死なせないぜぇ! あぁ! 魔理沙! 助けにきてくれたのね! 消えろガリレイン!
ますたーすぱーーーーーー…………。 うん。落ち着いてアリス。現実逃避にはまだ早いわよ。大体よく考えて。
ガリレインなんてソレっぽい名前だけれど、名付けたのは私だもの! あは! なーんだ、それなら安心ね!
って



この際真偽に名前は関係なかった!!



「そう言えば霊夢?」
「何よ?」
「この時期に明けましておめでとうはどうかと思ったぜ」

今更そこにツッコミいれるの!

って……あぁあぁあ!
魔理沙にツッコミ入れないって決めたのに!


心に誓った事すら守れず、そんな私が世界を守る、なんて出来る訳も無く。
ぜーんぶ上手く行かない気がしてきたわ。
もう駄目なのね、終わるのね。思えば春の来ない日々だった。
自分で大事に持ってて何する気だったのかしらね私。
リリーとか言う妖精みたいに、届けて回ればよかったかしら。
そしたらもっと幸せな、明るい日々を送れたのかしら。
あはは! 春ー! 春ー! ごめん、自分に嘘はつけないわ。
結局、私は私でしかないの。思えば当たり前の事。皆等しく当たり前の業。
魔理沙も、霊夢も、そして背中のガリレインも、みんな自分を精一杯生きてる。
それなのに私は、私ときたら、こんな人の家の押し入れに隠れるなんてネクラな事して。
うっかり背中に終末のスイッチ抱えて春振りまく妄想に浸る。
最低よね。上海に愛想つかされて独りぼっちなのも当たり前。
こんな私に運命握られちゃった幻想郷の皆さん残念でした!
ごめん、ほんっとうにごめん、泣いて済む問題じゃないけど。
願わくば、魔理沙の言い方が大げさなだけで、
幻想郷全体じゃなくて、ふっとぶのはこの家だけってことで、
う、ふ、ふ、魔理沙と心中、きゃーーーーーーーーーーーーーーー


「ま、嘘なんだけどな。押し入れの話」
「魔理沙、それも今更よ」

嘘かよ!!





あはは。うふふ。そうなのね。
私は決めた。正直に生きる、そう! 私は私の道を行く!
ガリレインへの報復は、後できっちりつけるとしまして、今問題は今後の進退。
わたくしアリスとしましては! 
このまま黙って隠れつつ、明日の昼頃、留守を見計らい、こっそり逃げる、算段です!
そうと決まればテンションあげて! 理不尽の世に、誰も気がつかない鋭いツッコミ!
それ、する意味あるの? とか聞かないで! マジで。

「よし、霊夢、夕飯できたぜ」

いつの間に作ったのよ! 結局何作ったのよ! タコは! 話題のタコについて言及は!

「タコは?」
「茹でた」

茹でたの!! 湯で茹でちゃったの!! 茹で蛸ちゃったの!!
あれ、別に普通かしら?

「へぇ、真っ赤ね。まるで未来の私たちを祝福してくれてるのかのよう」

どんな未来よ!

「あぁ、そう言えばタコと霊夢は似てるな、赤いところとか、白いところとか」

あら本当に全くその通りよ!

「タコな未来っていったい何よ?」

それさっき私が言ったわよ!

「自分で言って自分に突っ込むのはさっきやっただろ?」

親子丼に失礼よ!

「タコみたいだなんて、ひどいわ魔理沙」

タコに失礼よ!

「音速遅れてるぞ霊夢」

音速に失礼よ!

「ぶっちゃけ、あまり食べたくないのよ」

正しく魔理沙に失礼よ!

「タコみたいにむくれるなよ、ますますタコ巫女だな。けど、このタコはさっきのとは全然違うぜ、騙されたと思って食べてみなって」

そんな台詞で騙される人いないわよ!

「あらホント騙されたおいしいぃ!」

いたぁぁぁ!!


「さっきと違ってぷりぷりして美味しいわね。それに、なんか香ばしくて……これはもしかして」
「お、気がついたか? さすが霊夢、料理はからっきしでもこれは気がつくよな」
「お酒……で茹でたの?」
「正確には蒸したんだ、お鍋に張った湯がかぶらない様に容器を入れてその中にタコを入れて、あとは少量の酒と薬味を加えてふたを落とす」
「へぇ凄いのね」

へぇ

「たいした事無いさ。同じ要領でごぼうの天ぷらも作ったぜ」
「へぇ酒蒸しって便利ね」

へぇ、ってそれ同じ要領は無理よ!
天ぷら酒蒸したらべちょべちょじゃないの!

「それから、霊夢リクエストの親子丼と、余った鶏肉で作ったささみ揚げ」
「タコプリンは!」

ある分けないわよ!

「後のお楽しみだ」

あるの!?

「(なーんて冗談だけどな、うふふ)」

霊夢の聞いてないところで種明かしして笑わないでよ! ていうかいつの時代の魔理沙よ!

「昔の話でござるでござるよにんにん」

突然無意識に私のツッコミ察知してボケないでよ! これだから博麗の直感ボケは嫌いなのよ!

「そう言えば霊夢、このごぼうの天ぷら見てて思いついたのでござるでにんにん」
「何よでござるでにんにん?」
「アリスって……ござるってにんにん」

何よ? どきどきでござるのにんにん




「やっぱりごぼううめー」

ごぼうに負けた!! ござるを返して! あのすばらしいにんにんをもう一度! じゃなくてどきどきをもう一度!

「アリスがどうかしたの?」

霊夢ありがとう! どきどきを再びありがとう! さっきの嫌い発言訂正するわ!

「いや、人形の髪の毛ごぼうで作ったら勝手に伸びるし食べられるしいいだろうなと思っただけ」

……ぁ、想像しちゃった。
聞かなきゃよかったぁぁ!




「それなら人形の目と鼻と口はこれね」
「間違いないな。特にそれは上手く出来たんだ」
「人形の半分はささみ揚げで出来てます」
「いや、霊夢、人生八割方ささみ揚げだぜ」
「それが真理ね……残りの二割は?」
「タコだなぁ」
「タコかぁ……正直私。タコを見かけたときはこれしか無いって思ったの。私の代わりに幻想郷を守る次代の巫女は。これしかないって」
「酒飲んで赤くなってひと味変わる。食えないヤツがこんなにも歯ごたえのあるヤツになるんだもんな。確かにタコにならお前の代わり任せられると思う」

私の平和、酔っ払いタコに守られたくないわよ!

「私もね、本当は色々とウケを狙ってあざとい事したのよ。ここだけの話、巫女を続けるのも苦労したわ。何度かイメチェンもしてみた。でもタコはその四倍凄い」
「具体的には腋の数か?」
「霧雨魔理沙々身揚げ!」
「タコミコ霊夢!」

ん、あれ? もしかして喧嘩してるの? どこら辺から仲違い始めたの?!

ぐぅ。
んぁぅぅぅぅ。
……。
お腹空いた。

「お腹空きました!」
「笑顔でごぼうとささみ揚げ完食して言う台詞かよそれ」
「向こう三年分食べておかないと」
「明日も来るんだろう?」
「ふ……今日の魔理沙はずっと特別な宝物にしたい味わいなんだもの」
「そんな事面と向かって言われると照れるぜ」
「あら、そんなにたいした意味はなかったのよ。本当に全くこれっぽっちも」
「いいんだよ、些細な勘違いから生まれた沙々身な身の上は乙女のたしなみだぜ」
「報われない勘違いね。でもそれでもいいなら、魔理沙の親子丼もらうわよ?」
「それとこれとは話が違う!」

あなたたちのその意味不明な幸せを私のお腹にも下さい。

「それなら、交換条件にしましょう」
「自分の分は?」
「もう食べた。さっきも言ったけれど、親子丼の類い稀なる神秘、知りたくない?」

……少し知りたいじゃない。 どうせくだらない事でしょうけど。 

「御免被る!」

聞きなさいよ。

「断ってくれてありがとう!」

聞かせなさいよ。

「どうせアリスに似てるとか言い出すつもりだったんだろ?」
「アリスに?」
「まず黄色いだろ。それから白い」
「それだけでしょう」
「それだけじゃないぜ。アリスのダシの利いたふっくら感とか、三つ葉を添えたような顔の造形とか、酒を多めに入れて味付けした分程よい癖毛ぐあいとかそっくりだぜ」

そんな風に言われたのは生まれてこの方初めてよ。

「でも、魔理沙だって親子丼黒い器に盛ればぴったりの色してるわよ」
「霊夢、他人に言っていい事と悪い事があるんだぜ?」

その態度の意味不明さが不快だわ。

「じゃぁおかわり頂戴」
「素直にそう言えよ」

おかわりあるなら始めからそっち勧めなさいよ。私の分とか期待しちゃうじゃないのよ。
お腹空いてるのよ。せめてここから出るチャンスが、チャンスがあれば。

「それで結局、親子丼の神秘って何なんだ?」
「あー。親子丼と言うか、ひよこの神秘ね」
「たまごが先か、鶏が先か?」
「実は親子じゃなかった説」

新しいわね。

「そりゃ、正確には血のつながりが無いことが殆どかもしれないけど」
「違うわ。そもそもひよこは鶏にならない」
「へ?」

は?

「あんなにフワフワもこもこした黄色いひよこが真っ白クエーな鶏になるのが理解できない」
「霊夢、それは言いがかりだぜ」
「じゃぁ、魔理沙は見た事あるの!? あの黄色くてふかふかしたぽよぽよしたひよこが、突然胸に秘めた幼心を燃焼させて、真っ白に燃え尽きた中から、たくましさと引き換えに厳つさを手に入れてクエェと叫びながらコケコッコーする様を! 赤い鶏冠は今も消えない熱い決意の炎よ!」
「ないなぁ」

ないわね。

「ツッコミが淡白ね」
「卵白だけに」

お腹空いた。


「さっきからずっと気になってたんだけど、今日はアリスの話題が多いわよね」
「そう言えばそうだな」
「なぜかしら?」

お腹空いた。
……どうせ、また期待させてがっかりするオチよ。

「やっぱり、あれかな」
「なぁんだ、魔理沙も理由分かってるんじゃない」
「くさいな」
「匂うわよね」

くんくん。そうかしら。むしろ、酒蒸しタコとか親子丼の香りがここまでしてくるけど。
ぐぅ。 
ってヤバ。

「聞こえたわよね?」
「聞こえたな」

ええぇぇえぇ、ばれた? 私見つかった? どうしよう!
あぁでも、出て行けたら、こんな辛い思いしなくて済むのかしら。
アリスちゃんちょっとお茶目しちゃいました、エヘ。
なんて、笑って済ませられるのかしら。
或は、白い目で見られ、信じられない見損なったわとか言われ、絶交追放、天狗のネタに。
二度と表を歩けない、暗い未来が待つのでしょうか。
そしたら魔界に帰ろうかしら。あ、でもさっき、ママを邪険に扱っちゃった。
私はアリス。マーガトロイド。今、生まれて初めて絶体絶命のピンチと逆境の甘美に酔いしれてます。
ママごめんね、こんな娘でごめんね。

「ほら、出てこいよ」
「居るのは分かってるのよ?」

………………。
ぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーぅぅぅ…………「てへ、実は」
「シャ……シャンハーイ?」
「やっぱり居た」
「おいで上海人形、アリスみたいに虐めたりしないわよ」

って、そっちなの!! 上海!! 何してるのよ上海!!
しゃんはい!!

「さっきから妙に人形くさいと思ったのよね」
「おおかた、悪戯しに来たアリスに置いてかれたんだろうぜ」
「上海、お前も情けない主人もってつらかったんだろう?」
「いいのよ、今だけは自由にくつろいで、さ、お酒もいっぱいあるわ」
「シャ、シャ、シャンハーイ」
「あは、照れちゃってかっわいー。しゃんはーい」
「シャンハーーーイだぜ」

しゃんはーーーーーーい!!

「上海、どうせだからここに助手として住まないか?」
「それがいいんじゃない? 爆弾代わりに使われることも無いわよ」
「シャ……シャンハーイ」
「おろおろ迷っちゃってかっわいー」
「タコ食べるか?」

しゃんはああああああああああああーーーーーーーーーーーい!!

「シャンハーイ」
「しゃんはーい」
「シャンハーイだぜ」

じゃんばぁぁぁぁぁぁぁーーガコ、バタン。
あ。戸が倒れた。





あ゛





「あ、アリス?」
「あー。アリス?」
「アリスー」




「勢いだけでどうにかなると思うなよ!!」




「「お前が言うな!!」」
















で、結局食べてる一緒にタコを。
なによ、美味しいじゃない。
タコのくせに。

「もっと早く出てくればよかったのに」
「五月蝿いわね、その事は反省してるわよ」
「あら、素直ね、逆に不気味」
「おいおい、霊夢、アリスだって自分の気持ちに素直になる事はあるさ」
「な、なによ」
「いやいや、みなまで言うな。私には分かってるぜ」

そんな風に胸を張ってまっすぐ瞳を向けて言う魔理沙がちょっとかっこ良くて。

「アリス、お前タコの酒蒸し食べたかったんだよな、叫ぶくらい」
「なるほど、愛しちゃったのね。タコ愛しちゃったのね!!」

違うわよ!!




上海「タコガヤケタワァ」
MIM.E
http://homepage2.nifty.com/mahyura/main/index.html
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2006/03/24 09:10:05
更新日時:
2006/04/19 02:20:09
評価:
24/27
POINT:
141
Rate:
1.33
1. 6 月影蓮哉 ■2006/03/25 14:51:55
アリスナイス。
2. 10 サブ ■2006/03/26 03:22:42
は っ ち ゃ け す ぎ だ !(最高の褒め言葉)
3. 5 落雁 ■2006/03/26 11:23:54
飲んでないのに酔っ払ってるとしか思えない連中が最高です。読んでいて、こう、ニヤついちまう感じでした。
4. 5 爪影 ■2006/03/26 19:24:47
焼いたタコは美味しいと、僕は思うんだな、うん。
5. 5 おやつ ■2006/03/26 22:12:11
なんだろうこの世界……?
非常に不思議な味わいでした。
タコとかシャンハイとかアリスとか。
6. 6 名無し妖怪 ■2006/03/28 02:30:13
なにこの素敵空間
7. 3 名前はありません。 ■2006/03/28 15:58:57
面白いけどあまり酒と関係無いような…
8. 4 水酉 ■2006/03/28 18:25:59
私「クレクレタコラ」
9. 5 papa ■2006/03/30 19:07:01
タイトルで、レミリアの話かと思いましたが、だまされました。

勢いがつきすぎたせいか、何を伝えたかったのかがわかりませんでしたけれど。
10. 6 つくし ■2006/04/01 14:37:41
文章に酔いました。くらくらと。くらくらと。ガリレイン。物語を脱臼させるその文章との戯れに乾杯。
11. 6 Fimeria ■2006/04/04 03:42:11
アリスが崩壊してゆく

突っ込み調の文体に不覚にもディスプレイを汚してしまいました。
これぞSSにしか成せぬモノといった感じです。壊れてますね、主にアリスが。
まさに抱腹卒倒(?)

ガリレインの存在感に6点を
12. 6 かけなん ■2006/04/04 18:15:16
いっそ川を泳いでた摩訶不思議テンションのままがよかったなぁ。
幻想郷に海はないのだし。

ノリとかはすげぇ好きでした。
13. 6 ■2006/04/05 15:57:40
……なんだこの異次元w
14. 6 藤村琉 ■2006/04/07 01:40:39
 ……いかんなあ。
 ツボだなあ。
 ネタや会話がちょっとどころじゃなく飛躍している箇所と、全体的に文章が粗いところがありますが、ネタとテンションを洗練したらもっと凄くなると思います。ですが、洗練されたら角が取れて個性そのものが殺ぎ落とされる気もするので、いっそのことこのままで行ってほしいような気も。
 今の私にはめちゃくちゃツボなのですが、一般的にはどう感じるか分かりません。
 未知数です。無限大です。
15. 9 ■2006/04/09 01:48:28
酔っ払いの会話に乾杯。ってか、このストーリーに入る前にどんだけ呑んでるんだこの二人は。素面とは認めん。
16. 6 反魂 ■2006/04/11 05:21:33
んで、結局ガリレインは何だったのですか?w

いやあ、SSというか漫才でも聞いてる気分。
アリスの怒濤のツッコミ、素晴らしい。
ただちょっとお酒の要素が薄すぎるので、そこは採点から減点です。
17. 5 床間たろひ ■2006/04/11 21:27:30
アンテナバリ3。
良い電波でしたw
18. 8 木村圭 ■2006/04/12 02:18:40
何この素敵空間。最初から最後までずーっとニヤニヤしてました。これだけ勢いがあれば倍くらいの容量があってもスルスルと読めてしまいそう。
19. 6 NONOKOSU ■2006/04/12 03:20:38
アリス=マーガトロイドのつっこみの成分解析結果 :

アリス=マーガトロイドのつっこみの88%はかわいさで出来ています。
アリス=マーガトロイドのつっこみの11%は濃硫酸で出来ています。
アリス=マーガトロイドのつっこみの1%は毒物で出来ています。

……いや、ごめん。
そんな感じだなぁ、と。
ただ、まあ、濃硫酸や毒はボケの側の責任かもしれないけど。
(上の解析結果は本物です)
20. 5 とら ■2006/04/12 06:27:50
危うくお題を忘れそうになるぐらいの勢いでした。
21. 4 偽書 ■2006/04/12 21:56:35
勢いだけでどうにかなることもあるといいなあ、と思うのですよ。
22. 6 K.M ■2006/04/12 23:19:57
ヤベェ、このハイテンションには着いていききれねぇw
23. 7 椒良徳 ■2006/04/12 23:29:17
御免なさい。時間がないようなので、コメントはまた後日書かせていただきます。
24. フリーレス MIM.E ■2006/04/16 02:10:50
こんな私の思考回路丸出しな作品にたくさんの評価
本当にありがとうございます。

>>月影蓮哉様
ホントにアリスは最高ですよね! 彼女じゃなければこれは出来ない。

>>サブ様
てへ。

>>落雁様
酔ってないですよ?(抑揚の無い声で)
そんな風に思っていただくことがこの作品の酒というテーマへの挑戦でした。

>>爪影
僕もそう思う。霊夢に今度あって聞いておきます。

>>おやつ様
たしかに、おかしな会話をしている自覚はありますが、
確かに存在する日常現実世界の一場面であると主張して止みません。

>>名無し妖怪様
アリスって可愛いですよね。

>>名前はありません。様
はい、力不足ですみません。もっと得体の知れないはっちゃけ具合にしないと駄目だったと思いました。
酒蒸しは一つの保険で、本来はこいつら酔ってるよな? っていうのが酒に対する答え。
足りませんでした。反省します。

>>水酉様
タコタコアゲル

>>papa様
レミリアかと思うかもしれない。後からそう思いましたが
題名を決めたとき、そんな些細な迷いはなかった。
伝えたかったのは勢いだけでした。すみません。

>>つくし様
ありがとう。本当にありがとう。

>>Fimeria様
アリスはちょっとお茶目なだけで、崩壊してたのは残りの二人だと小声で主張します。
でないと、私の人格が疑われ…。
笑ってもらえたならば、それが一番の目的でした。ありがとう。

>>かけなん様
はい、海は無いです。海は無いけれど、どれくらい海の存在を知識として知っているのか
その辺は悩もうとしました。
テンションやネタの方向性が一定じゃないのは力量不足でした。次もがんばります。

>>匠様
異次元じゃないですよ?(キョドッた声で)

>>藤村琉様
気に入ってもらえた、すごく嬉しいですありがとう。
本当に。こんな飛びすぎた作品、誰にも受け入れてもらえないのではないかと心配してました。

>>翼様
素面とは認めん!! それが聞きたかった。感謝。
飲んで無いですよ?(自信なさそうに)

>>反魂様
ガリレインは永遠の謎です。ガリレインの人気に嫉妬です。
お酒の要素、真顔で少ないといわれたら、頷くしかない。
理不尽なボケにひたすら突っ込む姿って孤高の戦士というか、カッコイイと思いません?

>>床間たろひ様
良いといってもらえたことはすごく嬉しい。
でも、電波じゃなくて日常ですよ。少なくても私の理想郷ではアハハ。

>>木村圭様
正直、この長さでも書くのものすっごい苦悩しました。
ついさっきのあのテンションが続いてくれないのですもの。

>>NONOKOSU様
あらびっくり、ぴったりね!でも
アリスのつっこみ はすべて優雅さで出来ているそうですよ。

>>とら様
そこで、こいつら酔ってるのか? と思わせられなかったことが悔しい!
でもありがとう!

>>偽書様
本当に、そうですよね。

>>K.M様
勢いだけでどうにかなると思ってましてすみません。

>>椒良徳様
読んでもらえた事に最大の感謝を。

25. フリーレス MIM.E ■2006/06/10 01:53:59
いまさら気がつきました。
爪影様、呼び捨てにしてすみません。
気付くの遅すぎだよおいら。
26. フリーレス 匿名評価
27. 6 wrpskxj ■2012/06/20 08:02:03
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