騒霊たちの休息

作品集: 最新 投稿日時: 2006/03/24 17:59:47 更新日時: 2006/03/27 08:59:47 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
酒の席というのは大抵が賑やかなものである。
幻想郷においてもそれは違わず、宴会となれば人妖の垣根を越えて騒いでいる。
伊吹萃香が起こした不自然な宴会の連続の後、回数は減ったものの勢いだけは以前とは比べ物にならなくなった。
酒が入った後はタガが外れ始め、弾幕ごっこが開始されることも少なくない。
それも幻想郷における宴会ではよく見られる光景だ。
ここぞとばかりに言い返して弾幕られる奴も少なくない。
一回騒いでそれでお終い。
後々まで尾を引かないのが宴会のいいところだと思う。


で、宴会をやるのにもきっかけというものがある。
大抵の言いだしっぺは魔理沙、それに乗って最初に騒ぎ出すのは主に萃香である。
そして開催通知を出すわけでもないのにどこからともなく集まってきて宴会が始まる。
場所は博麗神社。
宴会に人妖が集まる結界でも張ってあるのではないだろうか。
逆を言えば宴会好きが大半を占める幻想郷であってもきっかけがなければ宴会は始まらない。
「やりたいから」という理由だけで始まることもあるが、冬はなんといっても寒い。
雪が降らなければ雪見酒もない。
冬眠する妖怪も少なくはない。
例を挙げると蟲の妖怪であるリグルとか。
春から秋が宴会の時期とすれば冬は宴会の休憩期間といったところか。
まあそういうわけで宴会の回数は暖かい時期にくらべて激減していた。


「姉さんそこの胡椒とってー。」

「ん。リリカ、トマトを残すな。全部食べなさい。」

「えー、だってこの中のにゅるっとした部分がー。」


幻想郷のチンドン屋・・・もとい騒霊楽団のプリズムリバー三姉妹は自宅で遅めの朝食を摂っていた。
全員いつもの演奏時の服ではなくゆったりとした部屋着である。
もともとあの服は出かけるときにしか着用していないのだが。

「最近暇よねぇ。宴会がないから依頼もあまりないし。」

「私は音ネタ集めるのに出かけてるからそんなに暇じゃないけどね。でも寒いから家でゴロゴロしてたい気分。」

「今日は暖かくなるらしいぞ?」

「なんで?」

「あまり気圧が下がってない。」

プリズムリバー三姉妹は宴会の席に、盛り上げ役として呼ばれることが多い。
定期的にライヴを行うこともあるがこう寒くては客はあまり集まらない。
花の異変のように寒さがあまり関係ないような霊があふれているわけでもない。
冥界にでも行ってやってみようかと思ったら、幻想郷よりも寒かった。
霊よりも自分たちが耐えられなかった。
要するにライヴにも向いてない季節なのである。
その結果、暇を持て余すわけである。

「で、今日はどこいく?」

「冥界はよく行くし、吸血鬼のところは妹様とかいうやつに殺されかけたし、兎のところはなんかの実験台にされかけたしねぇ。」

「ああ、それで一つ思ったんだが。」

少しだけ会話が止まる
呑み終えたコーヒーのカップを置く音が響く。

「今日は家で宴会をやろうと思うんだが、どうだろう?」

「家で?なんでまた。」

「しかも幻想郷の端のほうっていうか、こんな一軒家でやって人は集まるの?」

「まぁ落ち着け。まず私は招待する気もないし大々的に宣伝もしないぞ?」

「じゃあ宴会にならないじゃん。」

「私たちだけでやるのは宴会にはならないか?呑んで騒いで歌って踊って。神社でやるものと変わらないだろう?」

「んー・・それもありかもねぇ。そう考えれば依頼されて演奏するばかりであまり酒を飲むことも無かったもんねぇ。」

「お酒はあるの?」

「前に冥界から演奏の礼でそれなりに古い酒をもらった。」

「じゃあやってみましょうよ。意外と面白いかもしれないわよ?」

「暇だったからいいかもね!じゃあ私は準備にぐえっ!」

「その前に食器を片付ける。今日はあなたが片付け担当なんだから逃げるんじゃないの。」

「ちぇー」

その晩、幻想郷の外れで小さな、本当に小さな宴会が始まる。





           騒霊たちの休息




「・・・ねぇ、姉さん。」

「どうしたメルラン。」

「これってピクニックと何が違うのかしら。」

「テンションとやる時間と、あと料理の豪華さとその他もろもろが違う。」

「あとその辺でリリカが酔いつぶれてる辺り。」

宴会の会場はプリズムリバー邸からやや離れた小高い丘の上である。
現在は日付が変わるか変わらないかといった時刻。
今夜は月の明かりがやわらかい。
二人の手にある猪口と、リリカの手の中にあるグラスと、地面に敷いているシートの上にあるグラスには酒が注がれている。
朝に話題に出たそれなりに古い酒である。

「古臭い味ねぇ。」

「これが味わいなんだろうね。多分」

「あははー・・星がたくさーん・・・」

「・・・風流のかけらもない。」

「なんでこんなところで宴会してるんだったっけ?」

「いや、なんか宴会と言えば外じゃないかなーって。」

「姉さん意外とアバウトなのね・・・。」

雪は降らず、気が早い春の植物はもう芽を覗かせている。
しかし夜はまだ寒い。
近くには人間はもちろん野生の獣も、妖怪すらも見かけない。
あたりに聞こえるのは風にゆれる草が立てる音と、BGMがわりに演奏する姉妹の楽器のみである。
リリカのキーボードは本人同様地に落ちているが。
いつの間にかリリカは酔いつぶれて眠っている。

「・・・宴会というにはなんだかなぁ。」

「いつもの賑やかさが無いわねぇ。」

「まぁ頭数もないし、何より酔わないものねぇ、私たち。」

「そもそも霊の類って酒に酔うのかな・・?」

二人はリリカを見る。
熟睡しているようだがあまり顔の火照りは無いようだ。
酒臭いのは自分たちが飲んでいるからだろう。
この古い酒は匂いにも独特なものがある。

「幽々子は?よく宴会で酔っ払ってるみたいだけど?」

「あいつはもとから酔っ払ってるような言動だから判断がつかない・・・」

「お付の妖夢は?確実に顔も赤くなってるし呂律が回らなくなるじゃない。」

妖夢はあまり酒を飲むほうではない。
というかほとんど飲まないのだ。
嫌いではないのだろうが幽々子にとめられるのだ。
「まだ妖夢には早いわよー。」
とかなんとか言いくるめられている。
そうすると魔理沙あたりがその目を盗んで酒を飲ませるのだ。

「あー・・・たしかに酔っ払ってるなぁ・・あれは。」

「やっぱり酔うのかしらねー。私たちが強いだけで。」

「何か忘れてるような気がするが・・・まぁいいか。」

二人は空を見上げる。
月はだいぶ西の方へ傾いていて、星々が作る形も位置がずいぶん変わっている。
ふと演奏をやめてみると、先ほどよりも風が止み、静寂が空間に広がっている。
騒霊がいる所は良くも悪くも賑やかになる。
しかし、騒霊が三人もいるのに、ここには静寂があった。
自分たちの能力が消えてしまったようなそんな気がした。

「・・・・。」

少し心配になってバイオリンの弓を動かす。
自分の意思どおりに弓は動き、いつもどおりの音を奏でた。

「たまにはいいかな・・・静かなのも。」

口から思ったことがこぼれた。
メルランは大きな目をいつもより少しだけ大きくして、

「姉さんらしくないわ。おとなしいようで実は一番騒がしいのが好きな姉さんが静かがいいなんて・・・。」

まるで劇画タッチのマンガのように驚く。
三人の姉妹は同じくらい騒がしいことが好きなのだ。
そのベクトルはさまざまな方向にバラけるが。

「確かに・・・私らしくない気もする。」

苦笑する。

「しかし、たまにこんな静寂もよくないか?」

メルランが何で?と返してくる。
なぜなら、と即座に答える。



                今日は私たちの休息の日だからさ。




















後日談。

「おはようー・・・」

リリカが起きてきた。
髪はぼさぼさで、まだほんのりと酒のにおいがする。

「少し頭がゆらゆらするー・・・助けてメル姉ー・・・」

「ぽ?」

「・・・メル姉の頭が春ー・・・」

もう陽は高く、もう昼近くだ。
私はリリカにホットミルクをカップに入れて渡す。
ついでに薬でも渡してやりたいが霊用の薬なんかあるわけもない。

「はぁー・・・」

リリカが席についておちついたようなので私も席について気になったことを質問する。

「ところで頭がガンガンする、とか気持ち悪いっていうのはないのか?」

「へ?ないよ。なんか寝すぎたっていう感じ。」

「まぁ半日近く寝てれば誰でもそうなる。」

顎に手を当てて考える。
やはり霊は酒に酔わないのか?
しかし・・・相変わらず腑に落ちないような、引っかかることがある。

「妖夢は確かに酔っていたはずなのに・・・。」

「そりゃあ酔うでしょう。」

「しかし私たちを含めて酒に酔っていないようだぞ?霊は。」

「だってあの子半分人間じゃん。」

「あ。」



リリカは酒を飲んだっていう状況に酔ったんだと思う。

今回はいつもよりも短くまとめてみました。いかがでしたでしょうか。
未成年、極度に酒に弱い、むしろ酒嫌いの俺にとってはしんどい題でした。
酒風味は薄いです。
今回のSSは山の盛り上がりも谷の盛り下がりもないorz

そんなSSでも読んでいただけたなら幸いです。・゚・(ノд`)・゚・。
小宵
http://www.geocities.jp/snoetic_road/
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投稿日時:
2006/03/24 17:59:47
更新日時:
2006/03/27 08:59:47
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1. 4 月影蓮哉 ■2006/03/25 15:15:16
ごくありふれた日常の中の面白さでした。
ちなみに俺はトマトが大嫌いです(関係ない
2. 5 名無し ■2006/03/25 20:17:37
雰囲気に酔ったってやつですね。
酒を一口飲むだけで、何となく気分が良くなるものです。
3. 2 爪影 ■2006/03/26 20:39:25
しんどいお題いに挑戦した貴方の、その心意気や良し。
4. 2 反魂 ■2006/03/28 21:19:17
私も酒ダメ人です。ですので同じ酒の呑めない者同士、
酒に抱くイメージが良く伝わってくるお話でした。
実際の酒との違いや、いかばかりなるか……。
5. 5 水酉 ■2006/03/29 18:31:38
酒ではなく雰囲気に酔う事って、結構あるなあ。
気の置けない人々と飲む時は、特に・・・。
6. 3 名前はありません。 ■2006/03/29 21:52:20
短いけどよくまとまってると思います
7. 5 papa ■2006/03/30 19:09:33
いつもやかましいやつらほど、静かになるとしんみりするものです。

話の大筋は悪くないですけれど、話が短いせいで、途中部分がすっぽり抜け落ちている感じがしました。
8. 4 つくし ■2006/04/01 15:10:57
まったりと。静かな三姉妹。ごちそうさまでした。
9. 4 おやつ ■2006/04/02 19:11:16
落ちは読めてしまいましたが、三姉妹は良い味が出てたと思います。
メル姉の「ぽ?」は吹きましたw。
10. 6 かけなん ■2006/04/06 00:55:54
未成年は飲んじゃダメ! とは強く言えない。
慣れれば美味いのでチビチビでも飲んでみるのがいいかも知れません。
その中でも好みはあるでしょうけど。

いい三姉妹でした。とりあえず何故かリリカモエス。
11. 2 藤村琉 ■2006/04/07 01:45:20
 構成が甘いです。せめて、お話はちゃんと終わらせるようにしましょう。
 妖夢の話ばかりというのも問題。短いんですからせめて三人の話をしましょう。
 ルナサの口調が男っぽい、というのはこの作品だけのことでもないのですけど、案外女の子女の子した喋り方なので要注意。
12. 7 ■2006/04/10 00:00:12
山谷は確かにあまりありませんでしたが、その平坦さのおかげで、最後の素ボケが非常にのほほんとした感じで良かったですね。
13. 5 MIM.E ■2006/04/11 22:09:56
三人だけの宴会の少し寂しくて物足りなくて静かで、でもそんないつもと違う雰囲気が少し大切に思える
そんな雰囲気を感じました。この三人大好きですよ。
もう少しいろんなところを描写していただけたらもっと好み度が上がったと思いました。私見ですが。
14. 7 ■2006/04/11 22:58:55
騒がしい宴会も、静かな非日常も、すてきなものです。そういえば三姉妹は演奏ばかりしていて呑んでいないのだろうか。
15. 1 木村圭 ■2006/04/12 02:24:00
ゆるゆるーっと流れていくのも嫌いではないですが。オチが早々に読めてしまった……というより分かりきったことをオチに持ってこられると面白くないです。
16. 6 NONOKOSU ■2006/04/12 03:12:05
騒霊・幽霊だけの宴会は、それがいくら賑やかでも、どこか儚く、脆い雰囲気があるんじゃないかなぁ、と個人的には感じていました。
どうしてなのか自分でも理由が良く分かってなかったんですが、
『実は酔えない』というのは、その理由のひとつとしてありそうです。
17. 5 とら ■2006/04/12 06:11:00
騒霊たちだってたまにはこんな日もいいかもしれません。
18. 4 ■2006/04/12 07:30:26
んぃー、雰囲気は嫌いじゃないんですけど、なんというかー……寂しいかなぁ?
あと、特に自分は気にしないんですけど、セリフの最後に『。』はいらないとかの話を聞いたことが、あるような。
19. 6 K.M ■2006/04/12 22:38:38
そういう大事な事を忘れるあたり、あるいはホントに酔ってんじゃなかろうか?
20. 5 椒良徳 ■2006/04/12 23:31:53
御免なさい。時間がないようなので、コメントはまた後日書かせていただきます。
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