無限の国のアリス

作品集: 最新 投稿日時: 2006/03/25 01:51:55 更新日時: 2006/03/27 16:51:55 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00


「よっ、また来たぜ。
 どうせまた暇してるんだろ?
 だったら……」

 いつものように始まる宴会。
 鬼のひょうたんから、とめどなくあふれる酒。
 宴会も、尽きることを知らない。
 ずっとこんなことをしていたら、この神社は酒で沈んでしまうのではないか。
 アルコールのにおいのする湖面に、静かに映る月。
 鳥居だけが頭を出している。
 それはそれで、悪くはないのかもしれない。
 あまり長居をすると、悪酔いしてしまいそうだけど。

 三日月が静かに見守る中。
 人間と妖怪が、杯を交わす。
 なんて奇妙な光景なのだろう。
 少し離れた場所から眺める。
 本音を言うと。
 私はお酒はあまり好きではない。
 人間も、あまり好きではない。
 嫌なことを思い出すから。



 人間は脆い。
 とても脆い。
 その上、人形よりも修復が困難だ。
 私は、ただ人間と遊びたかっただけなのに。
 なんで、あんなにも簡単に壊れて動かなくなってしまうのだろう。
 ちょっと弾幕の当たり所が悪かっただけなのに。
 なんで、あんなにも早く寿命が尽きて枯れ果ててしまうのだろう。
 ちょっと歳月が流れただけなのに。
 その度に、私は酒を使った。

 溺れてしまえば。
 忘れられる。
 もう顔も名前も思い出せない。
 壊れ、枯れてしまった人間のトモダチ。

 妖怪と人間は、相容れることはできないのだ。
 強さも、寿命も、何もかもが違う。
 違いすぎる。

 だから、人形なのだ。
 人の形をした、人ならざるもの。
 壊れても簡単に修復ができるし。
 寿命なんてものもない。



「んー、楽しんでるか?」
 世話焼きの黒白が、私のとなりに座る。
「……ぼちぼち」
 私は、こいつが苦手だ。
「まあ、呑め」
 私の杯に酒を満たす。
 なみなみと。
 揺れる水面。
 映った私とあいつの顔も、ゆらゆら揺れる。

 勝手に現れるこいつも。
 きっと他の人間と同じように、勝手に消えていくのだろう。
 人間は脆いから。





 蓬莱人。
 ただの伝説だと思っていたのに。
 竹林のお化け屋敷。
 その奥に、ひっそりと住んでいた。
 死なない人間。
 死ねない人間。
 生きない人間。
 生きられない人間。
 どんなに壊しても、簡単に修復され。
 千年の歳月は、一歩たりとも老いを進められない。

 妖怪のような人間。
 人間のような妖怪。
 蓬莱人形。

 もし、あいつも蓬莱の力を得たら……?





「あんたも呑みなさいよ」
「あー。そろそろきついぜ。
 でも、おまえの酌を断るのは勿体ないな」
 なみなみ注がれる酒。
 なみなみ盛られる薬。





「蓬莱の薬?」
 永遠亭の薬師。
「そんなもの、どうしようって言うの?」
 薬のにおいが鼻につく。
「それは……その……」
 あいつを……。

 沈黙。
 沈黙。
 沈黙。

「……ふぅ。しょうがいないわね」
 白い、小さな包。
「あげるわ。ただし……」
 薬師の顔が近づく。
 双眸。
 太古の満月のような、瞳。
 吸い込まれそう。
「使った者は呪われるわ。

 永遠に。
 
 それでもいいのなら、勝手になさい」





「ぷはぁ、酒はいいよな、やっぱり」
 呑んだ。
 呑み干した。
 薬。
 私も呑む。
 たっぷりと呪いが溶けた酒。

 ……。
 …………。
 ………………。
 これで。
 もう、壊れない。
 もう、老いない。

「ねぇ、魔理沙」
「あー? ……がっ」
 ぎりぎり。
 ぎりぎり。
 両手に力を込める。
「あっ…………りす…………」
 絞まる。
 絞まる。
 もっと絞まれ。
「ねぇ、魔理沙。もう私たちは……死ねないのよ」
 だから。
 ぎりぎり。
 いくら絞めても大丈夫。
 ぎりぎり。
 ちょっと苦しいけど。
 ぎりぎり。
 死なないから。
 ぎりぎり。
 死ねないから。

 あはははははははははははははは。

 世界に亀裂が入る。
 ぴしぴしと。
 ぎりぎりと。
 夜空が。
 三日月が。
 神社が。
 ばらばらになっていく。

 ようこそ、無限の国へ。
 歓迎するわ。
 私のトモダチだもの。






















 この国は終わらないの。








 ずーっと、ね。


















 素敵だと、思わない?







 ――――ああ、そうだな。

















 素敵だと、思わない?







 ――――ああ、そうだな。

















 素敵だと、思わない?







 ――――ああ、そうだな。


















 ステキだと、オモわない?







 ――――ああ、そうだな。


















 ステキだとオモわない?







 ――――ああ、そうだな。


















 ステキダトオモワナイ







 ――――ああ、そうだな。


















































 おかしいなぁ。














 あのね。



























 飽きちゃった。






 どうしようもなく、飽きちゃった。

 この世界に。







 ――――ああ、そうだな。



























 ねえ、魔理沙。










 どうしてかな?







 ――――ああ、そうだな。






























 あははははははははははは。






















 どうしよう。






















 ねえ。


















 助けてよ、魔理沙。





























 ――――ああ、そうだな。






































































 …………。
 …………。

 これは……。
 見覚えがある。
 そう。
 これは、私の家の天井。
 窓から差し込む光がまぶしい。

「あら、お目覚めかしら」
 横を見ると、薬師がいた。
「どうだったかしら、胡蝶夢丸の味は」
 太古の満月のような瞳ではなく。
「これに懲りたら、蓬莱の薬なんて諦めることね」
 どこか優しい。
「あなたにとっては、蓬莱の世界はただの毒よ。
 退屈で退屈で、退屈すぎて死んでしまうわ」
 そんな瞳で。
「私は耐えられるけどね。
 最近、面白い玩具も見つけたことだし。

 ――――もちろん、あなたたちのことよ」



「それじゃ、お大事に」
 ぱたん。



 ばたん。
「あ、そうそう。
 お酒と一緒に、薬を飲んじゃ駄目よ」



 窓の外を見る。
 今日は、良い天気だ。





「……ふぅ、ちょっと大げさかしら」
 アリスは今日も、一人家の中で人形劇をしていた。
 観客は人形たち。
「暇ね……」

 乱暴に開け放たれる扉。
「よっ、また来たぜ。
 どうせまた暇してるんだろ?
 だったら……」

「あんたは、いつも唐突ね、まったく。
 まっ、しょうがないから付き合ってあげてもいいわ」
 薬一包をポケットの中に。
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投稿日時:
2006/03/25 01:51:55
更新日時:
2006/03/27 16:51:55
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1. 4 反魂 ■2006/03/25 14:16:22
雰囲気が何とも言えず好き。
言葉に言い表しにくいんだけど。
2. 3 月影蓮哉 ■2006/03/25 15:29:38
ちょっと怖かったですね。
後行間開けすぎが何かよくないかなぁと思いました。
3. 5 爪影 ■2006/03/26 23:43:45
酒分は少ない、と感じました。良い作品だ、とも感じました。
4. 1 名前はありません。 ■2006/03/30 08:49:24
ちょっとスペースが空きすぎな気が
5. 5 papa ■2006/03/30 19:11:42
壊れたアリスがすごく怖いです。
6. 6 水酉 ■2006/03/31 20:36:07
「胡蝶夢丸ナイトメア」でなく「胡蝶夢丸」でこの夢を見たのだとすれば。

あな恐ろしや。
7. 4 つくし ■2006/04/01 15:44:10
ループされる、耽美的な文章。ごちそうさまでした。
8. 6 おやつ ■2006/04/02 19:49:16
この手の雰囲気の作品は大好きです。
お酒と薬は一緒に飲んではいけません。
不味いです拙いです。
9. 3 藤村琉 ■2006/04/07 01:49:16
 空行を多用しすぎで読むのが面倒です。
 文章を読んでいる気がしません。
 バッドエンドでなおかつ夢落ちなのですが、アリスのこういう話は大抵魔理沙を巻き込んでどうこうなっちゃう場合が多いので、そういう意味ではよくある話なのかもしれません。もうちょっと違った切り口のバッドエンドならまた違ったかも。
 あとお酒あんまり関係ないです。
10. 5 ケイネスキー ■2006/04/08 03:32:51
アイディアが非常に新鮮に感じました。酒と蓬莱の薬、詠唱組をこのように絡ませるとは…。
あとがきも含めた締め方も上手かったと思います
しかし惜しむべくは中盤のリフレインが…ちょっと…くどすぎます。
あれは思い切って大幅に削ってしまった方が、話が冗長にならずに良かったのでは
ともあれ、大変面白かったです
11. 5 かけなん ■2006/04/08 13:19:17
確かにお酒で飲むものじゃないよなぁ。
正直、コワカタ。
12. 8 ■2006/04/11 00:16:43
夢の夢はまた夢の中の夢。はて、どこまでが現実なのか、何が本当に起こるのか。
13. 9 ■2006/04/11 19:12:34
――ああ、そうだな。植物の名前じゃないぜ?
アリスの狂気と、読後に感じるどことなくのんびりした感じがなんとも。
読みやすくはあるんだけど、空白地多すぎな気も(けーね
14. 2 MIM.E ■2006/04/11 22:07:13
妖怪はどれだけの年月を経たら退屈に飽きてしまうのだろう。永琳にできてアリスに出来ないのは
アリスの興味が世界ではなく魔理沙にのみ狭く注がれるからだろうか。その辺が理解できなかった。
好い者同士の永遠が決して飽かぬ夜とならないのは蓬莱の薬を労せず貰ったため、魔理沙に不意打ちで
飲ませたため、そもそもアリスには向かない? 歪んだ永遠は嫌いじゃないんですけどね。
結局、アリスはアリスでしかないという結末に思えました。
15. 4 木村圭 ■2006/04/12 02:27:46
夢オチにする必要はあったのか無かったのか。個人的にはしない方が好みです。空白が妙に不安を煽って困る。
16. 5 NONOKOSU ■2006/04/12 03:04:14
うーん、評価が難しい。
できればもうちょっと行間を詰めて欲しかったです。
17. 5 とら ■2006/04/12 05:38:58
「ああ、良かった」と思うべきか否か。
18. 5 ■2006/04/12 17:46:39
恐い恐い。アリスが恐い。バッドエンドじゃなくて良かった…
19. 5 K.M ■2006/04/12 22:41:55
永遠の生とは、どれだけ先例があっても踏みかねない地雷のようなものなのか・・・
20. 9 椒良徳 ■2006/04/12 23:34:48
御免なさい。時間がないようなので、コメントはまた後日書かせていただきます。
21. 5 名無し ■2006/04/12 23:55:10
なんだー夢オチかー、と安心したところに叩きつけられるあとがきがまた怖い。
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