恋見酒

作品集: 最新 投稿日時: 2006/03/25 09:03:54 更新日時: 2006/04/21 17:31:01 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
「お、酒か。いいな、私にも飲ませろ」
 そう声をかけられ、私は待ち侘びてた者の来訪に気づく。
「というか、お前、こんな薄暗いうえに埃っぽいとこで飲んで愉しいか?」
 別に好き好んでこんなところで独り寂しく酌を始めたわけじゃないわ。
「いいか、そもそも酒はだなあ。花見酒、月見酒、雪見酒と、空の下で自然を前に、その時期折々の美しいもの眺めながら飲むもんだぜ」
 一体誰のせいで不貞飲みしてると思ってるのよ。
 また来るぜとか言って、半月経ってもやって来なかったくせに。
「ってわけで、外行こうぜ。外へ!」
 会いたかったぜなんてのは無理でも、せめて遅れた言い訳くらいしてほしいものだわ。
 全てをぶちまけて糾弾してやりたい思いに駆られる。
「ほら行くぞ。後ろ乗れよ」
「……仕方無いわね」


 ひゅうと風を切り、勢い猛に飛び進む。
 彼女の腰を掴み箒の後ろで体を預け共に空をゆく。この唐突に訪れたちょっとした幸福に、私の不機嫌は治まりつつあった。嗚呼、結局恋なんてのは惚れた方の負けなのね。嬉しいのと悔しいのが織り交ざった微妙な感情に私は心の中で苦笑する。
 空は宵月夜――といっても月は霞んでしまっているけど――、私たちは湖と森のはざま、快い風の吹く平野に足を下ろす。
「あー、なんだ、今日の月はえらく不恰好だな」
 今気づいたわけではないだろうが、彼女が今宵の月への不満を洩らす。
「お世辞でも美しいと評すには少し厳しいわね」
「お前、月を操る程度の能力あるだろ? なんとかしてくれ」
「できるできないはさておき断るわ」
「じゃあ今すぐ雪でも降ってこねえかな」
「今は早秋よ」
 困ってしまったのか彼女は左右の腕を組み唸り声を発する。が、それも暫しのこと。
「まいっか。さっさと飲もうぜ」
「その時期折々の美しいもの……は?」
「気にすんな。ほれ、相酌だ。そっちからついでくれ」
「……仕方無いわね」


 想定外だった。惚れた相手と酌を交わすのがこんなに難しいことだったなんて。
 口に含めるまではいくものの、そこから上手く喉を通らない。いったい何で今さら緊張してるというのかしら。杯に集中するのよ。そう、杯に。
「んー。なんだあ、お前さっきから全然飲んでないじゃないか?」
 ――近い。近すぎるのよ、貴方の顔が! 
「もしかして下戸か? なわないよな、さっき一人で飲んでたし」
 ちゃんと飲めるわよ……普段は。
 思い出すのよ。これくらいのこと何ともないことじゃない。ただ口の中の液体を嚥下すればいいだけのこと。動け、動くのよ、私の喉。
 願いが通じたのか喉が動き、ごくり、となんとか飲み込む。
「の、飲んでるわよ、ちゃんと」
「ならいいんだけどよ」
 だめだわ、緊張しすぎて酒がまるで濁り水のよう。
 全然美味しくない感じれない。折角一緒に飲んでるのに――
「ま、酔い潰れたら私ん家にでも泊めてやるからガンガン飲めよな」
 え?
 貴方の家に?
 お泊り?
「散らかってるけどよ、でもこの前、地下に温泉脈を召喚したから暖かくて心地よいぜ」
 彼女は自慢げに笑う。
 私はというと、頭に浮かんだ妄想を一旦振り払い、なんとか言葉を返す。
「……というか私のお酒よ、これ」
 嗚呼、酔い潰れなければ。絶対に酔い潰れよう!
 そう心に誓うも、このままじゃ全く酔えそうにない。
 考えろ、考えるのよ私。どうやったら酔い潰れるか。
「――ねえ」
「ん?」
「貴方、私をわざわざ外へ連れ出してくせに、まだ『その時期折々の美しいもの』ってやつを見せてくれてないわよね?」
「ははは。まあ、気にすんなよ」
 笑って誤魔化そうとするが、そこへ畳み掛ける。
「今宵目にできる美しいものあるわよ」
「お! なんだなんだ?」
 作戦通り。逃さないわよ。
 私はそれについて述べる。
「――代わりにそれを見せてほしいんだけど」
 彼女は再び腕を組み唸るが、それもまた暫し。
 面倒くさそうに、けどそれも面白いかもなとでも思ってそうに笑みを浮かべつつ、答えを発す。
「……たくっ、仕方無えな!」


 ふふっ。
 なんて、誰もいないのに声を出して笑んでしまった。 
 お酒が美味しい。いつも飲んでるお酒なのに、いつもの数倍美味しく感じる。
「いっくぜー! 二発目ーっ!」
 宵月夜の元に浮かんでいる彼女が弾丸が放つ。
「マスタースパーク!!」
 空に閃光が迸る。
 彼女は少し酔ってるのか、箒の動きが揺らついているが、放たれた光線は見事なまでにまっすぐだ。
 そして、その光はこの夜の闇にて月以上に輝かしく、黒色の衣服で夜空に紛れつつも、弾丸を撃つとその明かりにてくっきりと現れる彼女の姿は花や雪なんかとは比べ物にならないほどに美しい。
 嗚呼、美しいものを眺めながら飲むお酒は確かに美味しいわね。
 それに、これなら緊張しないし。
 ただ雅やかではないから、風流とは言えないかしら? 彼女が雅なわけがあってたまるものか。あれは暴走ロケットのようなものだわ。しかも迷惑を振りまきつつ駆け回ってるんだけど、それでも憎めないんだから溜まったものじゃないのよね。でも……。
 あーもう。そうよ、惚れた私の負けよ。仕方ないじゃない。
 それにしても本当に美味しいわ、このお酒――
「おーい! どうだ、パチュリー! 綺麗かー?!」
 上空から彼女が大声で問いかけてくる。
 それに私も大声で返す。
「ええ! とても綺麗よ、魔理沙! だから、もっと撃ちなさい!」
 さあ、彼女が力切れし、この場に戻ってくる前に酔い潰れてしまわなければ。
 酒はとても美味しく、流れる川の如く喉へと零れてゆく。この調子なら半刻もあれば思考も鈍り、赤い顔して彼女にもたれかかれるだろう。そして、その後は――!?


 景気良さげに三発目を撃ちにかかる彼女と、今後への妄想を肴にどんどん飲み進める。
 そんな私の恋見酒。
パチェ×魔理の普及の一因になれたらなあと思って書きました。
青耶麻
作品情報
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最新
投稿日時:
2006/03/25 09:03:54
更新日時:
2006/04/21 17:31:01
評価:
0/0
POINT:
0
Rate:
5.00
1. 4 かけなん ■2006/03/25 00:47:54
えーと、……妄想しとく
2. 3 2:23am ■2006/03/25 00:55:52
これはいいキラーパスですね。
3. 8 ありがとう ■2006/03/25 01:04:52
魔理×パチェでなく?
4. 1 ラナ ■2006/03/25 04:10:00
パチェマリフォー!
5. 6 ひるぅ ■2006/03/25 16:00:39
パッチェさん頭良いw
でもその後勢いに乗った魔理沙の手元が狂ってパッチェさんにマスタースパーク直撃とかなったりして(ぁ
でもそれはそれで吹っ飛ばされたパッチェさんを魔理沙が家に運んで……と言う感じになりそうだw
6. 3 S某 ■2006/03/25 16:01:31
外へ引っぱり出す理由に酒を持ち出すのは、上手い酒の使い方だと思いました。
ただこの系統のお話として、過程すっ飛ばしてラブがあるというのはやはり辛いです。
7. 6 月影蓮哉 ■2006/03/26 10:56:58
ぱっちゅさん、素直じゃないなぁと思いました。
そんな所もまた、魅力ですが。
8. 1 反魂 ■2006/03/27 10:00:04
甘ぇ。甘ぇよヲイ
9. 4 爪影 ■2006/03/30 00:56:14
パチェ萌え――すみません言ってみたかったんです。
10. 3 名前はありません。 ■2006/04/02 07:30:48
誤字発見だけど軽いものなので減点無しで
11. 4 つくし ■2006/04/02 17:28:04
甘い、あまーい。ごちそうさまでしパチュ魔理萌え。
12. 1 藤村琉 ■2006/04/07 02:19:52
 とりあえずもうちょっと原作やり直しましょう。
 魔理沙の口調が男すぎます。
13. 5 おやつ ■2006/04/08 22:54:59
はい先生!
最初まりポンじゃない方誰だか判りませんでした!w
しかしこれは乙な酒かも。
いろいろな酒を読んできましたが、なるほど……恋見酒ねぇ。
14. 5 水酉 ■2006/04/09 14:14:29
なるほど、それもまた妙なるものかな>恋見酒
15. 9 ■2006/04/09 23:27:01
これは実にパチェ萌…ごほんごほん!何はともあれ、表情と内心の一致しないパチェは素晴らしい。魔理沙の華やかなマスタースパークのグラフィックも素晴らしい。
16. 4 MIM.E ■2006/04/11 21:31:02
惚れたほうが負け。パチュリーにそう言わしめる魔理沙の魅力がいかほどか。
情景は魔理沙らしくてよかったです。
17. 5 NONOKOSU ■2006/04/11 22:22:24
酒は飲んでも飲まれるな、とはよく聞きますが、
恋に関しては、むしろ戦闘的な警句が多いような気がする今日この頃。
どっちも酔うことに変わりなく、下手をすれば後々まで響く二日酔い、時に中毒を起こしてまうというのに、果たして違いはどこにあるのだろう? とかつらつら考えました。

――ええ、つまり、パチェの脳内は、きっと素薔薇しいことになっているということで!
(↑なんの感想にもなってない)
18. 6 とら ■2006/04/12 03:13:01
パチェ策士乙。
19. 6 papa ■2006/04/12 21:43:50
これは良いパチェ魔理ですね。いや、魔理パチェ?
20. 6 K.M ■2006/04/12 22:44:24
随分と乙なマネをするもんだ
21. 5 ■2006/04/12 23:54:59
ナイスパチェマリ。マリパチェ?
22. 4 椒良徳 ■2006/04/12 23:59:45
御免なさい。時間がないようなので、コメントはまた後日書かせていただきます。
23. フリーレス 青耶麻 ■2006/04/18 17:32:34
感想くださった方、ありがとうございました。
精進します。というかもっと原作やりこみます。
でも難しくて越せません。げふん。
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