花の小箱

作品集: 最新 投稿日時: 2006/10/16 08:23:43 更新日時: 2006/12/07 17:52:08 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00










 風見幽香は妖怪である。

 儚く脆い花の妖の中、独り生き過ぎて大妖怪と成った者。


 風見幽香は苛めっ子である。

 強大な力を持つが故に、人に恐怖を与える象徴と成った者。


 風見幽香は恐れられている。

 それが妖怪の役割である故に、全てのものに恐怖を与える者



 風見幽香は優しすぎた。

 今までに妖精さえ殺さなかったから、逆に恐怖と恨みだけが連なっていく。

 優しさ故に、弱い者は幽香から離れていった。

 それを幽香はどうとも思わない。考えようとしない。

 幽香にとって、それはあたりまえの事だったのだ。

 何故呼吸が必要なのか、そんなことを普段から考える者は哲学者くらいなものだろう。

 あいにく幽香は哲学者ではない。故に、それをなんとも思わなかった。





――とある小さな箱を拾うまでは。











 ◇ No.00






 それはよく晴れた、草花にとって最高の日だった。

 人妖は春の香りに眠気を誘われて舟を漕ぎ、妖精達は花の上に舞い踊る。

 そんな素晴らしい陽光に照らされながら、風見幽香はいつもと同じ日々を過ごしていた。

 季節の花達と言葉を交わし、花達と共に日の下に目を閉じる。

 変わることのない、長過ぎる時間が流れていく。

 この季節、春の陽気に誘われた妖精で騒がしい筈の花畑は妙に静かだった。

 その理由を幽香は知っている、気づいている、それ故に気づかぬふりを通している。

 妖精は隠れているのだ、強大な力をもった幽香を恐れて。

 苛めっ子を恐れて。

 それは幽香にとってあたりまえの日常だった。

 いつもと同じだから、日常だから、それ故に気紛れだって起きようものだ。


「何を考えているのかしら」


 その呟きは自身ではなく、目の前に蠢く奇妙な物体に向けられたものだった。

 幽香の目の前にはつぼ型の花弁を持った個性豊かな植物がある。

 それだけではけして奇妙とは表現しなかっただろう、様々な花を操る幽香には見慣れたものだ。

 ウツボカズラと呼ばれるその植物は、氷精を飲み込んでいること以外はまったく変わりないものだった。

 幽香の身の丈ほどもあるそのウツボカズラは氷精の足を口にあたる部分から出しながら蠢いている。

 その内部からは騒がしい罵声と涙声が漏れていた。

 それを眺めて、幽香は手に持った日傘を弄びながら口を開く。


「こらこら貴方、それは食べるとお腹を壊すわよ。出しておあげなさい」


 何を考えているのか、幽香が心の中で呟いた言葉は今度こそ自身に宛てられたものだった。

 それは、いままでに無かった、ありえない気紛れだったのだ。

 風見幽香が妖精を助けるなど、誰が信じようものか。

 その証拠に幽香自身も信じてなどいない。

 だからそれはきっと気の迷いだったのだ。


「……あ」


 幽香が半ば強制的に思考を切り替えると、嫌な香りの粘液に濡れた氷精と目が合う。

 氷精は生意気そうな目を向けていた。

 それでも、口を開こうとして動きを止める。

 幽香を見つめ、確認して、安堵の表情を恐怖で塗りつぶしていく。

 その身は震えていた、震えながら何かを呟いている。


「あんたなんか……恐くないんだから」


 震える小さな強がりは、明らかな恐怖と拒絶を表していて。

 それは気紛れの果てにあったものはいつもと同じだと幽香に気づかせて。

 どうしようもなく、幽香の心を崩していくのだった。


「気をつけなさいね、お馬鹿さん」


 幽香は微笑を崩さずに優しく言ってみせた。

 額でも弾いてやろうとも思案したが、向けた指先に氷精の肩が跳ねるのを見て止める。

 本当は、本当はもしかしたら。

 氷精が幽香に似ていたから、アレもまた仲間から外れた存在だから。

 馬鹿みたいな期待を溢したのかもしれない。

 幽香はそれ以上言葉を溢さず、氷精に背を向ける。

 結局自分は、苛めっ子でしかないのだと感じながら。

 日常へと戻っていく。











 ◇No.EX-1






 それはとても怪しい箱だった。


「あら、くれるの?」


 蠢くウツボカズラから渡された古臭い小箱。

 古びた赤茶の小物入れのような箱で、飾りの一つもついていない。

 ただ一つ目に付くのは、小さく掘り込まれた読み辛い文字だけだった。


 “あなたの真なる願いを只一つ、できる限りで叶えましょう”

 
 果てしなく胡散臭い謳い文句に、幽香は眉をひそめる。

 露骨に書かれた奇跡の文字、これほどまでに怪しいものがあるだろうか。

 できるなら、幽香はすぐさまこの馬鹿馬鹿しい箱を投げ捨ててまどろみへと堕ちたかった。

 それでも、目の前で蠢くウツボカズラの期待に満ちた気配を前に捨てることなどできはしない。

 だから幽香は必然的に箱を開けた。

 期待など欠片もなく、蓋を上げたのだ。



 結論から言うと箱は本物のようだった。



 箱の中からは煙も昇らず、陽気な魔神さえも飛び出すことはない。

 あるのは薄汚く積もった埃くらいなものだ。

 それでも、幽香は目を見開いて箱を見つめている。

 箱からは声がした、しわがれた老婆のような声が幽香に直接語りかけてきたのだ。




  あなたの願いは白くなること。恐れではなく、親しみを受けること。

  それを、私の力では完全に叶えることはできません。

  故に、七度の日が昇る刻を期にあなたの願いを叶えましょう。




 箱は語る、お前の願いは誰かと親しくすることだと。

 その願望を七日間だけ叶えてやろうと。

 もちろん幽香はまだ願い事など口にしていない。思い浮かべてさえもいない。

 幽香には願いなどなかったのだ。

 自分に平伏する者達も、蓬莱の薬さえも幽香は欲していない。

 それなのに、全ては自動的に処理され叶えられた。


「勝手なことを……」


 呟きながら見下げる指先に箱はない。

 元よりそこには何も存在しなかったかのように、箱は消えていた。

 残っていたのなら握りつぶしてやったのにと、幽香はとても残念に思う。


「――くだらない」


 本当につまらなそうな声で呟いて、幽香は箱と同様に姿を消した。

 静寂に包まれる花畑に、怪しげな小箱も恐怖の大妖怪も既に存在しない。

 その中で、残されたウツボカズラだけが一輪、嬉しそうに蠢いていた。











 ◇NO.01






 陽光に照らされた花畑。

 春の香りに包まれたその場所で、今日も幽香は花と共にあった。

 その周辺からはやはり、喧しい妖精達の姿は見えない。

 それでも、潜んでいる人影に幽香は気づいている。

 己を恐れて身を隠す者達の存在を幽香は知っている。

 それを気にする様子もなく、幽香は花を楽しんでいた。



 花畑に潜められた声が漏れ聞こえる。

 その声にいつもと違う、恐れではない感情が含まれていたような気がして、幽香は軽く頭を振った。


「何を考えているのかしらね」


 呟きは自身ではなく、またも目の前の存在へと向けられる。

 幽香の目の前に二人の妖精はいた。

 一人は恐怖も何もない、純粋な笑顔で幽香を見つめていた。

 もう一人は不機嫌そうに目を伏せて、何を口にしようか迷うように幽香のほうを窺っている。 

 前者は緑を基調にした服に身を包み、この花畑でも度々見かける温和そうな妖精だった。

 後者は青を基調にした服を纏い、氷の羽を持った冷たい氷精。妖精のくせに強い力を持った異なる者。

 見覚えのあるその姿、幽香に似ていたその姿、その傍らには仲間がいた。


「チルノちゃん、ほら」
「……分かってるわよ」


 温和そうな妖精がチルノへと囁くと、意を決したかのようにチルノは伏せていた目線を上げた。

 昨日のことで、なにか仕返しでもする気だろうと幽香は思う。

 特に何かをした覚えはなくとも、幽香は恐れ恨まれることに慣れていた。

 妖精さえも殺さぬ幽香は、それ故に、生き残った者に恐れ恨まれる。

 だからいつもと同じく、優しく易しく殺すことのないように。

 それでいて、二度とこんなことをしないように苛めを行う。

 見たところ、チルノは妖精でありながら妖怪と同等の力を持っている。

 傍らにいる妖精も、大妖精と呼ばれる強力な者だった。

 それなら、多少強めに弾を撃っても平気だろう。

 そんなことを考えながら幽香は微笑む。


「何か用かしら?」


 黙したままの妖精達に、含みを持たせた笑顔で幽香は尋ねた。

 手には手加減を加えた魔力を絞り、練り上げていく。

 チルノと目が合って、それを外さぬままに答えを待った。

 それが、開戦の合図となるだろうと思いながら、幽香は笑みを深くしていく。


「……昨日は、ありがと」


 すぐにでも撃ち出そうとしていた弾幕が、幽香の手の中で消えていく。

 照れたように目を伏せたチルノから出た言葉に、幽香は笑みを崩して眼を丸くしていた。

 昨日は幽香を恐れ、逃げだしたとは思えない、暖かみのある言葉。

 それは予想もしていなかった礼の言葉だった。


「幽香さん、チルノちゃんを助けていただいてありがとうございます」


 隣に立っていた大妖精もまた、チルノが礼を言うのを確認してから幽香へと頭を下げる。

 幽香は状況を飲み込むこともできず、その光景を呆然と見つめていた。

 こんな状況になるのは初めてだったのだ。

 初めて起した気紛れの結果、期待も何もなかった結果。

 不意に、昨日の胡散臭い小箱のことが幽香の脳裏をよぎる。

 あなたの願いは白くなること、その願いを七日間だけ叶えましょう。

 勝手に定められた願い、勝手に受理された想い、勝手に叶えられた親しみ。

 くだらないと、幽香は思う。

 自分は大妖怪だ、弱い者に恐怖を与えるのが役目であり、存在理由。

 その対象と親しくなりたいなどと願うなんてありえないと、幽香は必死でそれを否定した。

 二人の妖精が幽香に背を向ける。

 そして、飛び立つ前にチルノが幽香に振り返った。そこには笑顔が浮かべられている。


「あんたって、実は良い奴だったんだね」


 幽香の目の前に笑顔がある。

 昨日は恐怖に染め上げられていた顔が、幽香に向って笑いかけている。

 恐らくそれは箱の力のおかげだ。普段だったならこうはならない。

 去り往く背中を見送りながら、幽香は自然と手を振っていた。


 その無意味な行為は、妖精の笑顔につられたのかもしれない。

 あと六日間、こういったことが起こるのかと考えて、幽香は溜息を漏らす。

 その表情は、相変わらずの微笑だった。











 ◇No.02






 いつもと違う朝だった。

 天気が悪いわけではない、風が強いわけでもない。

 ただ普通に、周りから騒がしい声が聞こえてくるだけだった。

 幽香がいるときは静かだった花畑、話すものは花くらいだった花畑。

 そこには笑顔を浮かべる妖精達がいた。

 幻想郷では見慣れたその光景は幽香にとっては異質なものだった。

 信じられないようなものを見たかのように目を見開く幽香へと、軽すぎる衝撃が襲う。

 同時に、鞠が布に当ったような可愛らしい音が鳴った。


「――あ」


 どちらのものか分からない程小さく漏れた声と同時に、幽香の向けた視線の先に一人の妖精がいた。

 それはたいした力も持たない一般的な妖精だった。

 幽香と目を合わせなどすれば、とたんに泣き出してしまうような小さく弱い存在。


「……危ないわよ?」


 勤めて普段どおりに幽香は微笑む。

 それで終りだ、妖精は泣き叫びながら散って行くだろう。

 いつもと同じ、静かで独りの花畑に戻るだけだ。

 もう少しだけ、妖精の舞う花畑を見ていたかったと感じながら、幽香は思考を振り払った。

 昨日のことで、普段と違う出来事に期待でもしてしまったのだろうか。



 目の前では、妖精が不思議そうに幽香を見つめていた。

 その綺麗な瞳が幽香の身体を見回して、最後に目が合う。

 こんなに鈍い妖精なら、泣いてしまうだろうと思いながらも幽香は微笑を崩さない。

 幽香はそれに慣れすぎていたのだ。

 故に、幽香は微笑を崩さず、いつもどおりの苛めっ子となる。


「――ごめんなさい」


 妖精の声に怯えはなかった。

 崩れるはずのなかった幽香の微笑みに亀裂が走る。

 目の前にある満面の笑みを、幽香は呆然としながら見つめていた。

 皮肉はない、恐怖なんかありはしない、純粋に向けられた笑顔がそこにある。


「これあげる、幽香おねえちゃん!」


 驚き戸惑う幽香の目の前に手が出される。

 反射的に差し出した手の上に、何かのガラクタが置かれた。

 幽香はそれをなすがままに受け取って、己の手の中に視線を落とした。

 そこにあったのは、木片を繋いでなんとか人の形を保ったかのような人形だった。

 妖精は相変わらず笑顔のまま、得意げに胸を張っている。

 幽香は何も考えようとは思えず、ただその笑顔を見つめて、呟く言葉を捜していた。


「……何を「私も! これあげる」」


 ようやく溢した声は突然の声と、横から差し出された手に遮られる。

 妖精の手と共に人形の隣に置かれたのはカタツムリの殻だった。

 顔を上げると、そこには得意げな顔をした妖精が二人に増えている。

 否、よく見れば幽香の周りには無数の妖精たちがいた。

 見回す顔に浮かべられた表情は揃いも揃って笑顔。

 その全てが、挙って幽香の手にガラクタを落としていく。


 人形、カタツムリ、リボン、どんぐり、フリルの切れ端、空き瓶
 カラスの羽、鳴らない鈴、ガラス片、透明な小石、裁縫針、ドロワーズ


 数え切れないガラクタが手を溢れた頃、幽香は妖精たちの中に見覚えのある顔を見つけた。

 緑の装いに温和な笑顔を浮かべた大妖精。

 青の装いで不機嫌そうに、幽香と目を合わせると同時に赤くなりながら顔をそむけるチルノ。


「なによ、これ」


 手の上のガラクタを持て余しながら、幽香は二人の妖精に声をかけた。

 そうでもしなければ、周りの微笑みに耐えられそうもなかったのだ。

 普段から善意に耐性などない幽香に、この微笑は優しすぎる。


「みんな貴女と友達になりたいんですよ。それはその証、友達の証」 


 その様子をクスクスと笑いながら、大妖精は手を差し出してきた。

 幽香の手に盛られたガラクタに小さな音を立てながら香水の小瓶が落とされる。

 そして、それに続くように、チルノも手を差し出してきた。


「大ちゃんがどうしてもって言うから、仲間に入れてあげるんだから」


 顔を赤らめ、突き出した手から氷の欠片をガラクタの山に乗せる。

 友達の証、そんな大層な名前のついたガラクタ達を見つめて、幽香は何も思うことはない。

 何も思うことなく、それを捨てようとも思わず、無意識のうちにしっかりとそれを手に受け止めた。

 幽香の目の前でチルノは目を逸らし、飛び立とうとしているところだった。

 大妖精もまた、それを優しく笑いながら幽香に頭を下げると後を追って飛び立つ。

 その後には、ガラクタを手一杯に抱えた幽香と、妖精たちが残された。


「……どうしろって言うのよ」


 困り顔で呟いて、幽香は服を引っ張る何かに気づいた。


「遊ぼう」


 満面の笑みを浮べながら妖精は言う。

 恐れられし大妖怪、風見幽香に親しみを込めて遊びに誘う。

 それは幽香にとって、とてもくだらないことだった。

 後五日間、こんなことが起きるのだろうかと考えると気が重くなる。

 それでも、妖精の舞う花畑を見ながら、たまにはいいかもしれないと幽香は思う。

 ほんの気紛れ、気の迷い。

 それはきっと、あの胡散臭い箱のせいなのだから。

 服を引っ張る妖精の額を指で軽く弾いて、幽香は微笑む。

 先ずはこのガラクタの山をどうにかしなければならないだろう。

 そんなことを考えながら、幽香は氷の欠片を取り出して、口に含みながら歩き始める。

 キンと冷えた氷の欠片は、冷たく美味なものだった。 











 ◇No.03






 最悪な朝だった。

 天気は良かったし、気温も丁度良い。

 気に障ったといえば、ベッドの中に妖精が潜り込んでいて叫びそうになったことか。

 部下であるエリーとくるみが増えた仕事に不満そうなくらいだった。



 大妖怪と呼ばれる者に、寝起きが良い者は多くない。

 その例に漏れることなく、幽香はねぼすけと呼ばれる部類に座を成していた。

 永い時を生きてきたのだから、眠りくらい他者より深くても良いだろうと、幽香は日頃から思っている。

 そんな朝から、元気すぎる長生き妖怪が尋ねてきたりしたら、気を悪くするのも当然だろう。


「それで、妖精を助けたって本当なんですか?」


 幽香の座る食卓の対面には、手帖を持った天狗が行儀悪く身を乗り出していた。

 その好奇に染まった汚い瞳を見て、幽香は溜息を一つ溢す。

 射命丸文、六十年くらいに一度のお祭りで、周りを煩く飛び回っていた自称新聞記者だった。

 その文が、何処で耳にしたのか取材に来たというのだ。

 普段なら力ずくでのお引取りを願うところだが、昨夜から妖精を自由に出入りさせていたのが不味かったのだろう。

 それは、ささやかではない部下の嫌がらせだった。

 もちろん、幽香は素敵な部下に似合うような素晴らしいお仕置きを思案してある。

 しかし、それには目の前の厄介者を片付けなくてはなるまい。

 強い力と狡猾さを持つくせに、それを隠したがる天狗は非常に厄介だ。


「――別に「そうです、変てこ植物からチルノちゃんを助けてくれたんですよ!」」


 適当にあしらう為の言葉が、文の隣に座る大妖精の声に掻き消された。

 そのまた隣ではチルノが不機嫌そうにそれを見ている。


「なるほど、助けられたのはチルノさんだったんですね」
「もう、大ちゃん余計なこと言わないでよ!」


 大妖精の言葉を手帖に書き込んでいく文を眺めながら、幽香はチルノに深く同意した。

 こうなったら速さ馬鹿の天狗は意地でもお帰り願えないだろう。

 朝から弾幕なんて面倒なこともする気は起きず、幽香はただそれを見つめていた。

 幸い、文の興味は大妖精とチルノに向っていたので、幽香にまとわりつくことはなかった。

 それでも、目障りであることに変わりはない。

 幽香にできることといえば、飲み物を運んできた部下に脅しの微笑を向けることだけだった。


「ところで、苛めっ子を自称するあなたが何故チルノさん……お?」
「……お?」


 再度身を乗り出してきた文の言葉に妙な声が混じり、幽香もつられて妙な声をあげた。

 顔を合わせる文の表情は真剣で、ただ一点を凝視していた。

 その視線の先にはこれといって妙なものはない。

 あるのは幽香の白い指先と、グラスくらいだ。


「……昼からお酒ですか?」


 平静を装いきれていない、ものほしそうな文の目に、天狗は無類の酒好きだったと思い出す。 

 花達が作ってくれた花のカクテル、それを楽しむのが最近の幽香の趣味となっていた。

 不機嫌な時、それを運ばせるのも当然で、寝起きにもかかわらず幽香のグラスにはそれが注がれていた。

 それを目聡く見つける天狗もたいしたもので、その目はグラスから離れようとしない。

 グラスに注がれた淡い桃色の花の酒。

 それを文に見せつけるように飲み下しながら、幽香は微笑みを浮かべる。


「あなたもいかが? あ、取材の最中ではお酒は飲めないわねぇ」


 文が唾を飲み込む音を聞きながら、幽香は残念ですわと思ってもないことを言ってのける。

 朝から失礼されているのだ、このくらいの皮肉を言ってやらなければ気が済まない。

 予想通り、文は泣きそうな顔で幽香を見つめていた。


「あ、ちょっと休憩しましょうか。朝からで疲れたでしょうしね!」
「一度中止したら、もう取材は終りにしていただきますわ」
「――うっ!」


 狡猾であるといわれた天狗は幽香の目の前で微かに震えていた。

 扱いやすすぎる。そんなことを思いながら、幽香は苛めがいのある相手をニヤニヤと見つめる。

 弾幕勝負のときは速いだけでつまらなかった相手がこんなにも面白いものとは思わなかったのだ。


「さぁ、取材を続けましょうか、何処までいったのかしら……あぁ美味しい」


 震える文に見せ付けながら、ゆっくりとボトルを傾けてグラスを桃色で染めていく。

 そして、本当にわざとらしく、美味であると口にする。

 それだけで、文という名の新聞記者は膝を折ったのだった。


「取材はこれだけあれば充分ですね、ありがとうございました」
「あら、もういいの? それでは帰り道の案内役を――」
「あ、あの、よろしかったら、本当によろしかったらそのお酒を少しだけ御馳走になりたいなぁなんて! えぇ、もちろん記事の為なんですけど大人気のコーナーで美味しいお酒の紹介という、嘘です、飲んでみたいだけなんです、飲ませてぇ! お願いしますからぁ」


 必死に言葉を連ね、最後には涙目になってしまった文を見下ろして、幽香はクスリと笑った。

 普段なら、優しく微笑んで手を振るはずの風見幽香。

 それでも、あまりにも文が可笑しかったからだろうか。

 幽香は一言、部下にボトルを一本持ってくるように言いつけた。


「これは、美味しいですねぇ」


 グラスを傾けて、顔を上げた文はこれ以上ないというほどに良い笑顔を浮べていた。

 その隣で大妖精もちゃっかりとグラスを傾けている。

 それを恨めしそうに、子供だから駄目よと窘められたチルノが見上げている。

 文は至福の表情で、それはもう豪快にカクテルを飲み干していった。

 三本目のボトルを礼儀知らずに掲げてお代わりを要求する姿に、幽香は溜息を溢した。


「あの蟒蛇のボトルはもっと強い酒を混ぜてきなさい」


 三杯目の茶碗はそっと出すものだと、礼儀知らずの天狗を見つめて。

 困り顔でボトルを片付けていく部下を捕まえると、幽香は一つ囁く。

 四本目のボトルが食卓に身軽になった身体を転がして、文の顔に初めて朱色が混じる。


「えへへ、おいしぃですねぇ、ゆうかさぁん」


 頭の悪そうな声色が混じり始めて、五本目のボトルが投げ捨てられる。

 その隣では、隙を見てグラスをちょろまかしたチルノが真っ赤になって食卓に突っ伏していた。


「それでね、ちるのさんたら可愛いことに泣きじゃくりながら強がりをですね」


 二桁目のボトルが転がって、幽香の目の前は泥酔した天狗がきゃあきゃあ騒いでいた。

 隣で微笑む大妖精はそれを見下してうふふと笑っている。

 両者の意外な一面を目にしながら、幽香は部下へと目を向けた。


「エリー、何を混ぜたのよ」
「さぁ? 96って書いてあったお酒ですけど」


 素敵ねと呟きを溢して、チルノに覆いかぶさった文を殴り倒しながら幽香は微笑んだ。

 日傘が少し曲がったが、それ以上の快感を幽香は確かに手にしていたのだ。

 後四日間、こんな時間を過ごすのも悪くないと、幽香は思っていた。











 ◇No.04






 その日の幽香は機嫌が悪かった。


「久しぶりに来てやったんだ、茶の一つも出すのが礼儀だぜ」
「あいにく、招いていない客用のお茶を切らしているのよ」


 元凶である存在が目の前で茶を要求しているのだから、気を悪くするのも当然だろう。

 当然のように不機嫌になって、幽香は黒のローブにエプロン姿の霧雨魔理沙を見つめていた。


「それで、今度は何を奪いに来たのかしら」


 魔理沙は以前にも夢幻館を訪れている。

 その時は幽香の持つ強大な力を奪おうという悪役全開の用件だった。


「なんだ、人を泥棒みたいに」
「門番を跳ね除けて不法侵入する奴は大抵が泥棒なのよ」


 本当に不本意そうに悪態を吐く魔理沙を睨みつつ、幽香は大きな溜息を溢した。

 朝の眠い時間帯に二日続けて起されているのだ。

 未だに夢の余韻に浸る幽香にはいつもの微笑はない。


「幽か――うげっ、なんで魔理沙がいるのよ」


 不意に、幽香の重たい意識に妙な声が響く。

 気だるげに上げた視線の先では、チルノが奇妙な顔で魔理沙を指差していた。

 いつまでいる気なのか分からないが、幽香はそれをひとまず無視することにした。


「本当に何しに来たのよ、あなた」


 そして、いつまで居座るのだろうかと二人分の人影を見つめながら言う。

 チルノはそれを気にする様子もなく、魔理沙を避けながら幽香の膝へよじ登っていた。

 振り落とす元気も無いので、幽香もそれを黙認して魔理沙を見つめる。


「ほぉ、お前が妖精を助けたってのは本当みたいだな」
「どこで聞いたのよ、そんなデマ」
「このデマだぜ」


 デマという名称付きで魔理沙が懐から取り出した紙が幽香の目の前に突きつけられる。

 文々。新聞と書かれたそれは見掛けだけはまともな天狗の配るゴシップ紙だった。



  先日、妖怪化した花畑の中にてウツボカズラに氷精が襲われた。

  それを救った妖怪が居たという情報が記者の耳に入り、早速インタビューに向った。

  妖精を助けた話など珍しくも無いとお考えの方も多いと思われますが、その助けた妖怪が問題なのだ。

  その奇特な妖怪とは大妖怪と恐れられる風見幽香氏その人である。

  幽香氏は自他共に認める苛めっ子であり、普段ならそれを眺め、冷笑すら浮べる筈なのである。

  名前を伏せることにより特別に門番である人物からコメントを頂いたところ。

  「幽香様が妖精を? あのガチSの幽香様が? ありえませんよ、あっはっは」

  その後、突然と飛来した極太レーザーにより、彼女の姿は消えてしまった。

  さて、そんな幽香氏が何故、妖精などを助けたのか。

  残念ながら信憑性のあるコメントは本人から頂けず。ただ一言、「気紛れだわ」とのコメントを頂いている。

  被害者である氷精のチルノ氏とその御友人である大妖精氏の言う限りでは、当たり前のことのように助けてくださったとのことで。

  幽香氏が心変わりした何らかの異変が起きたのではないかと記者は考えるものであり。以後も調査を続けていく方針である。



「あの天狗、あの後コレを書いたのかしら……」


 突きつけられた新聞を魔理沙へと投げ返しながら、幽香は泥酔した天狗を思い返す。

 あの後花畑に投げ捨てさせたのだが、幻想郷最速とはよく言ったものである。

 元来、力のある者は無駄なものに力を注ぐものだが、あの天狗は良い例となるだろう。

 そんなことを思いながら、ふと、幽香は疑問を口から溢す。


「それで、あなたはまさかこんな事を確かめに来たの?」


 そうなのだとしたら魔法使いとは余程暇な職業なのだろう。

 流石にそうではなかったのか、魔理沙の顔に険が混じる。


「違う、こんないんちき記事を確かめる為に来るわけがないだろう。ほら、此処を見ろ」


 魔理沙は紙の大半を使った記事を指差しながら、再度幽香に新聞を渡す。

 美味珍味、天狗の名酒紹介と書かれた記事には昨日天狗が飲み干していった花の酒が描かれていた。



  インタビューの終了後、断ったにもかかわらずどうしてもと言われ口にしたこの酒は正に名酒と呼ぶに相応しいだろう。

  微かな甘さが喉元を降ると同時に昇る花の香りは女性に好まれる趣向である。

  難点としては酒好きには少し度が低いことだろうか。

  それにもかかわらず、十二本目のボトルで恥ずかしながら気を失ってしまったことから。

  このカクテルには幻覚作用があるのではないかと記者は睨んでいる。

  色は淡い桃色に、ボトルごとに違う様々な花の香りが鼻をくすぐる。



 以下、永遠とカクテルについての講釈が続き、幽香は納得する。


「――帰れ」


 朝から酒を飲みに不法侵入を行う魔法使いを見据えて、納得すると同時に言葉は紡がれた。

 心からの言葉を放った幽香の顔には、今朝初めての微笑が浮べられている。

 今なら手加減無しでスペルカードを発動させてもいいかもしれないと、幽香は純粋に思った。


「まぁ待て、今すぐ飲ませろって言ってるわけじゃないんだ」


 幽香の心情を察したのか、やけに慌てて魔理沙は言葉を紡いだ。

 礼儀知らずとはいってもそこまで酷くは無かったと理解して、幽香は気を落ち着かせる。

 そして、再び疑問に思う。何故魔理沙は訪れたのだろうかと。


「明日、神社で宴会をやるんだよ」
「あら、そうなの」
「そうなの、だからその花の酒とやらを持って参加しろ。以上だ」


 その言葉に、幽香の動きが一瞬だけ止まった。

 神社で行われている宴会については幽香も耳にしたことがある。

 それはあの八雲さえも参加するというものだと聞き及んでいたが、それに自分が招待されているのだ。


「……私が?」
「お前以外に誰がいるんだよ。とにかく、ちゃんと持って来いよ」


 目を丸くする幽香に、魔理沙は小馬鹿にしたような挙動をみせて、背中を向けた。

 しかし、そんなことにも気づけないほどに、幽香は動揺していたのだ。

 あの箱はこんな事まで起そうというのだろうか。

 胡散臭い小箱を、叶えられた願いを思い返しながら幽香は意識へ没頭していく。

 自分の願いは、本当にあれだったのだろうかと。


「そういえば、これに書いてある幻覚作用って本当なのか?」
「――え?」


 背中を向けていた筈の魔理沙を目の前に映して、幽香の瞳が大きく開かれる。

 いつのまにか、魔理沙は幽香の目の前まで来ていた。


「大丈夫かよ。それで、幻覚作用とかあるのか?」
「あるわけ無いでしょう、普通に考えなさい」
「私は普通だぜ」
「天才を自称する奴は頭が柔らかすぎるのよ、もっと硬く考えなさい」
「何言ってるんだ、普通は硬過ぎる思考が咎められるものだろ?」
「そう思っているうちはまだまだよ、天才さん」


 幽香は微笑み、魔理沙の額をパチンと弾く。

 避けることなくそれを受けた魔理沙は不機嫌そうに幽香を睨んでいた。


「害がないならいいさ、とにかく明日だからな」
「……気が向いたらね」


 曖昧に返した言葉に納得したのか、魔理沙は再び幽香に背を向けた。

 恐らく、幽香の気持ちは決まっていた。

 脳裏で、部下に酒を作らせる命令文を組上げていたことから、その答えは明確だったろう。

 ふと、膝の上に乗っていた喧しい氷精の声がしないことに気がついて、幽香は視線を下げる。

 そこには羨ましくも、安らかな眠りに堕ちたチルノが寝息をたてていた。


「どうすればいいのかしら……」


 普段ならそのまま落として笑ってやるところなのだが。

 安らかな寝顔に毒されたのか、チルノが目を覚ますまで幽香が動くことは無かった。

 後三日間、この時間が続いてくれる。











 ◇No.05






 青く広がる空を朱が犯していく黄昏の刻。

 幻想郷を一望できる境内へと続く石段は、空の朱に染まり伸びていく。

 その光景はどこか異界へと続いているように感じさせた。

 そんな古めかしい朱を踏みしめながら、幽香は優雅に石段を昇っていく。


「幽香ぁ、重いよー」


 風に嘯き月を弄ぶ幽香へ、気持ち良い風が情けない声を届ける。

 仕方なく振り向くと、幽香から十段ほど低い位置にチルノがいた。

 その小さな身体が半分隠れるボトルを二つも抱え、危なっかしく石段を上がっている。

 恐らくは重くて飛べないのだろう、幽香が石段を歩く理由の一つはこれだったのだ。


「手伝うって言ったのはあなたでしょう?」
「うぇ……大ちゃん、手伝ってよ」
「一人でやるって言ったのはチルノちゃんでしょ」


 無情に囁き、微笑む大妖精に苦い視線を送りながら、チルノは大きな溜息を吐いている。

 それでも、クスクス笑いながらボトルを一本受け取っているあたり、大妖精の性格がうかがえた。


「ほら、もう着くわ」


 幽香の呟きは励ましの虚言ではない。

 事実として、朱が映える鳥居が石段の果てから顔を出し、ざわめきが幽香の鼓膜を揺らしているのだ。

 一段上るごとにそのざわめきは大きくなり、急に元気になったチルノが幽香の横を通り抜けていく。


「……あ」


 足が止まってしまう。

 あと一段、この石段を踏みしめれば、賑やかな境内を見回すことができただろう。

 しかし、どんなに幽香が進めと命じても、足は動かなかった。


 迷っているのだ、此処まで来て。



「ほら、真ん中で止まらないでくださいよ」


 そんな迷いに構うことなく、誰かの手が背を押して、前のめりになった幽香は容易く一歩を踏み出した。

 その隣を、風に乗って瞬間移動でもしたかのような速さで大妖精が抜けていく。

 妖精界最速を謳うことさえできそうなそれを眺めながら、幽香は呆然と境内を見上げた。


「早く上ってきてください、幽香さんが一番遅いですよ」


 チルノの隣、微笑み幽香を呼ぶ声に、恨み言を吐こうとしていた口が塞がる。

 けれど、やられっぱなしは少々癪に障った。


「そんなところで立ち止まっていたら邪魔よ」


 幽香は日傘を閉じると、少し本気の速度で大妖精の隣に立った。

 目の前には驚き目を丸くした二人の妖精が幽香を見つめている。

 そんな姿をクスクスと笑いながら、幽香は大妖精の背中を日傘の先で軽く押してやる。

――びたん。


「「……あ」」


 柔らかい何かが地面に落ちたときのような音と同時、幽香とチルノの声が重なる。

 眼前には綺麗に転んだ大妖精が倒れていた。


「痛い……です」


 大妖精は起き上がりながら、赤くなった鼻を撫でながら幽香を見つめていた。

 責めるような視線が刺さり、それは幽香に何らかの罪悪感を与えてくる。

 その眼差しは苛めっ子に苛められた目ではなく、信用していた者に酷い仕打ちを受けたような目だったのだ。


「さぁ、早く行かないと遅刻してしまうわね」


 そんな視線から逃げるように、幽香は踵を返して境内を進んでいく。

 迷いなど、いまさらどうでも良くなっていた。





 博麗神社は多くの人妖で賑わっていた。

 そこには幽香が幾度か目にしたものも多い。

 幽香と目が合った者は総じて珍しい者を見たような顔をしたが、そこに嫌悪や恐れは無い。


「ちゃんと来たみたいだな」


 内心驚きながら場を見渡す幽香に初めて声が掛けられる。


「随分と賑やかなのね」
「知ってる奴は大体呼んでるからな」


 何かを探すように視線を動かす魔理沙を不快に思いながら、幽香はもう一度場を見渡した。

 妖怪ばかりが集まる宴は、魔理沙の人間としての立ち位置を連想させた。

 人里から離れた魔法使いが幹事の宴など、まともな奴が呼ばれるわけがない。

 妖が大半を占める面々に少数の異常な人間が酒を飲み交わす。

 そこにはあの閻魔さえも加わっており、それはとても異様な光景だった。


「おい、酒はどこだ? 参加するにはアレが必要なんだぜ」


 無視し続けられた魔理沙が根を上げて、幽香へと用件をぶつけてくる。

 そういえば、呼ばれた理由はそれだったのだと、今更ながら幽香は思い出す。


「あら、それならそこの妖精が――」
「居ないぜ」


 言われて、幽香は境内を振り返る。そこに妖精の姿はない。

 この短い一時の内にはぐれてしまったのか。

 幽香は溜息をつきながら人妖の波を見て回る。



 苛め甲斐のありそうな紅の姉妹が右手の視界に映った。

 姉は妹の我侭を嬉しそうに聞きながら、己の我を従者に押し付けている。

 従者の人間は一度だけ見た顔で、微笑んで見せると軽く会釈を返した。

 恐らくは主人の前で猫を被っているのだろう。

 そこに、氷精の姿はない。

 そして、間もなく姿を消した従者から視線を外し、左手に兎の群れを見る。


 いつしか顔を合わせた兎が二匹じゃれあっていた。

 いや、黒髪の方のうさぎに銀髪の兎が一方的に遊ばれているというのが正しいだろう。

 その隣では嫌悪感を含ませた表情で睨み合いながら、不味そうに酒を飲みあう者がいる。

 一見不気味なその二人を、周囲の兎達は興味なさそうに無視しているため、当人達には普通なのだろう。

 そこへ、異様な看護師の服を纏った女性が現れる。

 手には盆を、その上には日本酒のお替りが乗っていた。

 包容力のありそうな女性だ、母性すら感じさせる姿は主に胸部に集約されている。

 その女性の身体が、先の大妖精のように綺麗に前のめりになった。

 先には険悪な二人が居る。もちろん、盆に乗った物もそちらへと落ちていく。

 その瞬間、確かに看護師の女性の口元には笑みがあった。

 そこにはもちろん、氷精の姿はない。

 険悪だった二人が興をそがれたように、酒を飲み交わす姿を横目に、幽香は視線を外していく。

 泣いてはいないだろうかと、らしくない考えを浮べながら、幽香は妖精を探していた。


「幽香、こっちだって」
「荷物を持ったままフラフラと行かない、おかげで探すはめになってしまったわ」


 それなのに、馬鹿は楽しそうにそこにいた。

 周りには幼さを残す小妖怪達がいる、手元に持っているのは酒ではなくジュースの類だろう。

 とりあえず、その広い額を軽く弾いておく。少し強すぎたのか、チルノは暫く蹲っていた。


「あらあら、賑やかですわね」


 そして、その先にはあまり関わりたくない者までいた。

 八雲紫、妖怪の間ではよく知られる迷惑者の大妖怪だ。


「貴方も参加していたのね」
「まぁね、この子の付き添いよ」


 紫の眼下にはチルノ達の輪に加わっている黒猫が居た。

 黒猫は幽香の視線に気づくと同時に微笑み会釈する。


「――お前は呼んだ覚えはないぜ、何処にいるか分からないしな」
「あら?」


 そこへ、追いついてきた魔理沙が口を挟む。

 同時に黒猫が不機嫌そうになるのを見て、実はこいつの方が嫌われているのではないかと幽香は思う。


「さぁ、参加費の酒を一杯頂きに来たぜ」
「あら、そんな決まりがあったとは知りませんでしたわ」
「呼んでないから説明もしてない。とにかく来たなら酒も持ってきたんだろ?」


 図々しく詰め寄る魔理沙に微笑みさえ浮べて、紫は式に視線をやる。

 あの八雲が人間に対してこんなに甘いとは、信じられない光景だった。


「ところで幽香、例の酒はあったのか?」
「例の酒?」


 狐の式からグラスを受け取った魔理沙が幽香に振り向きながら口にする。

 それと同時に、紫と狐も興味深そうに幽香へと視線を向けた。

 余計なことを言う、そんなことを思いながら、幽香はチルノの隣に置かれたボトルを手にとり魔理沙へ渡す。


「それは何のお酒なのかしら」
「知らん、とにかく美味い酒だぜ」


 器用にコルク栓を空けて、魔理沙は酒を飲み干したグラスにそれを注いでいく。

 そして、魔理沙から返されたボトルを、狐がもの欲しそうに見ているのに気づく。


「貴方も、いかがかしら」
「あ、いやその……すまない、頂こう」


 呆れながらも進めてみると、狐は否定しきれていない言葉から顔を赤らめてグラスを差し出してくる。

 ついでにと、幽香は紫と自分の分も注いで、四者同様にグラスを掲げてそれを飲み下す。


「……あら」
「これは、美味いぜ」
「あぁ、強い酒の後に飲みたくなる味だな」


 三者三様の美味の声に、微笑みながら幽香も酒の味に満足しながら頷く。

 そして、その声に惹かれたのか、様々な人妖が集まってきた。

 紅の姉妹とその従者、和服を纏う姫にそれを睨む妙な人間、亡霊と庭師などその顔は様々だ。

 そんな多くの人妖の瞳が、幽香と手にした二本のボトルに向いている。

 当然ながら、足りるわけもない。


「第二十五回、美酒争奪弾幕ごっこ」


 困惑する幽香の隣で、魔理沙が笑みに歪めた口からそんな言葉を漏らす。

 同時に、人妖達の目の色が変わっていくのを、幽香は呆然と見つめている。


「お嬢様、必ずあのボトルは紅魔のものとしましょう」
「幽々子様、私の半身は酒の争奪の為にあるわけではありません」
「紫さま、我々は既に……そうですね、確かにもう一度味わいたくはあります」
「姫、あれを御所望ですか? 承知しました」


 博麗神社の喧騒は更に大きく、酔い人達の酒宴は続く。





 見回す境内は酷い有様で、中心では博麗霊夢が涙ながらに商品のボトルをラッパ飲みしていた。

 あの後、神社に被害を与えた人妖達は例外なく霊夢に撃ち落され、説教を食らっていた。

 弾幕好きの幽香も例外ではなく、明朝の掃除を命じられている。

 博麗霊夢は昔と変わらず、幽香を楽しませてくれた。


「霊夢ったら酷いものよね、洋服がぼろぼろなの」
「紫様は油断が過ぎるのです、本来なら霊夢など足元にも……」


 目の前で涙目の紫が杯をチビチビと舐めていた、とても似合わない。

 恐らくは、紫も手加減を加えた一人だろう。霊夢にはそうさせるだけの魅力があった。

 その隣を、黒猫と呆れ顔の狐が寄り添っていた。


「ねぇ、八雲紫」
「あら、紫でいいのよ。お酒を飲み交わした仲じゃない」
「あなたは何故式なんて従えているの? あなたほどの力があれば、そんなものいらないじゃない」


 思わず出た問いに、狐の顔が険しくなる。

 その眼差しを微笑み無視して、幽香は紫の返答を待った。


「……そうねぇ、居ると便利なものよ?」
「そうかしら、自分より能力が格段に劣る者を使役するなんて、余計に手が掛かるものよ」


 紫はわざとらしく考える素振をしながら、答えた。
 
 それは、幽香にとってはおかしな回答で、満足できるものではない。


「そうね、でもそんな対象が必要な時もあるの」
「……そうかしら」
「寂しくなくなるじゃない。あなたにとって、その妖精がそういった存在なのではなくて?」


 紫が指差す先、疲れて寝てしまったのかチルノと大妖精の姿がそこにあった。

 自然にその頭を膝に許したのは何故だろうか。

 もしかしたならば、あの胡散臭い箱の呪いか何かを貰ったのだろうか。

 視線を落としながら、そんなことを幽香は思案しつつ酔いの回った頭を揺らす。

 目の前では酔ったような、そうでもないような胡散臭い表情で式に抱きつく紫が居た。


「……違うわね」
「それなら、今後そうなるでしょう」


 返答に重ねられた予言めいた言葉に、幽香は反感を抱く。

 抱きながらも、何故かそれを否定しきれなかった。


「やっぱり、あなたとは親しくなりそうもない」
「なれそうも、ではなくて?」
「なろうと思わないもの」


 これ以上交わす言葉もない、確信しながら膝の上のチルノと大妖精の鼻をつまむ。

 酸素不足に喘ぎ、目を覚ました妖精二人を引き連れて、幽香は夜も明けようとする境内を立ち去った。

 その後ろで、紫が手を振っていたが、微笑みすらせずに幽香は無視してやる。

 残り二日、もう会うこともないだろうから。











 ◇No.06






 結局、宴会での紫の言葉が脳裏を離れることはなかった。


――あなたにとって、その妖精がそういった存在なのではなくて?


 夢幻館の食卓にはあたりまえのように、二人の妖精がいる。

 後一日で消えてしまう存在が、そこにいる。


「あなた達はいつまで此処にいる気なのかしら」


 浮べるのはいつもの微笑。その中に、これ以上はない威圧を混ぜた微笑。

 そんな殺気さえ感じさせる微笑で、幽香は言葉を口にした。

 それを受けた二人は困惑した様子で幽香を見つめている。


「私達、居ると迷惑ですか?」
「――あたりまえでしょう。私は大妖怪、風見の幽香。その根城である夢幻館に留まる妖精なんて、いつ殺されてもおかしくないのよ?」


 微笑が途絶える、止めたのではない、浮べられないのだ。

 漂う殺気にチルノは震えていた。

 涙さえ浮べた瞳は幽香から逸らせず、動くことすら叶わない。

 それが、本来あるべき姿なのだ。


「幽香、あたい……やっちゃいけないこと、しちゃったの?」
「――え?」
「ごめん、なさい。……謝るからお願い、嫌いにならないで」


 ポロポロと涙を溢れさせ、チルノは真っ直ぐと幽香を見つめていた。

 よく見れば、そこには恐怖など微塵も含まれておらず、ただ哀しそうに顔を歪めている。


「そんな優しそうな顔で言われても、恐くなんてありませんよ」
「……何を」
「私達は、あなたが好きだから此処にいるんです。何か気に障ったのなら謝りますから……」


 平然そうに呟く大妖精、その姿もチルノと同じく震え、瞳には薄く涙を浮べていた。

 二つの涙に圧されるように、幽香は押し出していた威圧を止める。

 全てはあの胡散臭い箱が成した幻。

 これ以上共に過せば喪失感が大きくなるのを知りながら、幽香には二人の妖精を突き放せない。

 もう戻れないほどに、安らぎを与えられてしまったのだから。


「勝手に、しなさい」


 涙を溢す二人の妖精をそっと一撫でして、幽香は食卓を後にする。

 馬鹿みたいに流れようとする涙を抑えるのに必死で、振り返ることさえできなかったのだ。

 後一日、全てが終わってしまう。

 幽香は朱が照らす幻想郷へと扉を開いた。



 暮れ往く夕日に照らされ、朱に染まった花畑を幽香は走る。

 飛ぶことさえ忘れて、その視線は下を向いていた。

 当てなどない、希望すらしていないくせにその足は止まろうとしない。

 目的は、恐らく胡散臭い古びた小箱。

 ウツボカズラが箱を拾ったという花畑を、馬鹿みたいに幽香は走り回っていた。

 囁く花達の声さえ、今は耳に入らない。

 黄昏は暮れていく。幽香を一人残して幻想郷は暮れていく。

 願いの砂時計が、数少ない砂を無情に落としていく。


「何を……考えているのかしらね」


 星の浮かぶ夜空の元、座り込んだ幽香にはもう涙を止めることさえできない。

 頬を伝う涙が花畑を濡らしていく。

 物語のような、幼稚な奇跡など起こりはしない。

 月さえ見えない夜空の暗闇の中では小さな箱など見つかりようもなかった。

 もし月明かりがあったとしても、それが見つかることはなかったろう。

 あの小箱は、そういうものなのだ。




 幽香はゆっくりと、震える足を立てる。

 終わる幻想への悪あがきさえ終えて、舞台の幕が閉じるのを待っている。

 この夢の終わるのは日が昇るまで。

 扉を潜った寝室の中、幽香は泣きつかれた妖精が眠るベッドを見下ろし、乾いた瞳を再び潤す。

 涙の跡が残る瞳を閉じて、幽香は二人分の温もりを抱いて夢の終りを待った。

 夢と共に、幽香の意識は眠りの中へと落ちていく。

 天蓋から、雲を抜けた歪な月が三人を照らしていた。











 ◇No.07






 目覚めたベッドの上は久しく感じた広さを持っていた。

 その中に、幽香を慕う妖精はもういない。

 七度目の日が昇った今、夢はもう終わっているのだ。

 寂しいわけがない、いつもと同じにようやく戻っただけなのだ。

 隣から聞こえてくる挨拶など、邪魔なだけだった。

 いつまでも眠ろうとする姿など、目障りなだけだった。

 いまはそれさえも、何も感じることもできない。

 ただ、それだけだった。



 懐かしい、いつもと同じ朝を過す。

 一人の食卓に一人分の食事を並べ、話すことなく食事を終える。

 いつもと違ったのは、居眠りをしている門番を蹴り起すことなく出かけたことだろうか。

 見送りなどない、いつもの門を潜って幽香は花畑を行く。


 そこに、遊びまわる妖精の姿など――




「……これは何なのかしら」


 幽香の眼前には極めて普通の光景が広がっていた。

 花畑であるから、当然色とりどりの花々が陽光に照らされ風に揺れている。

 温かい陽気なのだから、当然妖精たちは舞い踊っている。


 幽香は友達になったのだから、当然隠れるわけもない。


「あぁ、ここにいたのか」


 背後からは嫌な声が聞こえた。

 男のような言葉遣いの黒い奴だと、意識では分かっていても理解しようとしない。

 幽香の振り向く先、霧雨魔理沙がそこにいた。


「四日後、また宴会があるから例の酒を今度は多めに持って来い、以上だ」
「……は?」
「なんだ、どうせ暇だろう? いつも迷惑なくらい弾幕ごっこばかりしてるんだし」


 目の前で朗らかに笑う魔理沙からの招待。

 箱の魔法は確かに、七度日の昇った今はありえない。


「何で……」
「お前ってこういうの来ないと思ってたけど、一度顔を出したなら断るのは無しだぜ」


 絶対に来いという招待というよりは命令という言葉を残して、魔理沙は飛び去っていく。

 反論さえ許さない速さではあったが、もし魔理沙が返答を待っても、幽香は答えることなどできなかったろう。




「幽香さん、遊びに来ましたよ」


 答えの出ない意識に、温和そうな声が届く。

 振り向くことも、できそうもない。幻聴のような声だった。


「何で、終わってないの?」
「何がですか? とりあえず迷惑をかけるのも何なので遊びに来ることにしたんですけど」


 視界の中には大妖精と、その背後にチルノが映っている。

 大妖精は不思議そうに、チルノは涙の跡を恥ずかしそうに隠しながら、揃って幽香を見つめていた。

 胡散臭い魔法の小箱。

 そういえば、築いた関係も全て消え去るとは一言も言っていなかったのだ。

 ようやく問いを出した幽香は、大切な二人の妖精を無意識のうちに抱きしめている。

 偶には、こんなことをしてもいいだろう。

 照れたチルノと、驚いている大妖精を抱きながら、幽香はやはりいつもの微笑を浮べていた。

 そう、偶にはこういうのもいいものなのだ。













 ◆No.EX-2






 日の暮れた花畑を夕日の朱が染め上げていく。

 その光の前では、黄色も青も白の花も朱色に染まらずを得ない。

 そんな朱色の花畑を森近霖之助は歩いていた。


「……ん?」


 黄昏の時を楽しむ視界の端に、何か異様な物が見えた気がして、霖之助はその足を止める。

 花に囲まれ己を主張するように、その小箱は存在していた。

 古めかしいその箱を拾い上げて、霖之助は目を丸くした。

 手にとって最初に分かったことは、これが己を必要とするものへと渡り歩く能力を持つことだった。

 そんな不思議な箱は古びた赤茶の小物入れのようなもので、飾りの一つもついていない。

 ただ一つ目に付くのは、小さく掘り込まれた読み辛い文字だけだった。

 “あなたの真なる願いを只一つ、できる限りで叶えましょう”

 それが箱の謳い文句だった。

 しかし、この箱にそんな能力がないことを霖之助は知っている。

 霖之助の力、未知のアイテムの名称と用途がわかる程度の能力。

 名称と用途しか分からない能力だが、この箱の真実を知るのには充分すぎるものだった。


 “人妖を騙す程度の能力”


 それが、この小箱が持つ能力だった。

 霖之助がどんなに力を込めても、小箱は開こうとしない。

 恐らくは、霖之助はこれを必要とする者への渡し役に過ぎないのだろう。

 使うこともできず、止めて置くこともできないそれを霖之助は興味無さそうに見下ろす。


「まぁ、精々高く売れておくれよ」


 誰かに言うでもなく呟くと、霖之助は手にした小箱を袖口へと仕舞う。

 店内においておけば、自然に売れてくれるというのだから少々高値をつけてやろうと霖之助は思っていた。

 もちろん、店の常連が代金を払っていかないことなどすっかり忘れている。

 その点で言えば、小箱は確かに霖之助を騙していた。

 帰路を急ぐ霖之助がそのことに気づく様子はない。


 霖之助が扉を開けたとき、本当に小さく箱が嗤ったような気がした。

















「最近チルノさんは幽香幽香って……何で気になるんでしょうね」

 朱に染まる空、地を行く人を馬鹿にしたように鳴く鴉の隣を漂いながら、文は写真を取り出す。
 写された姿は氷精のもので、記事などにはまったく使えないものだった。

「はぁ、こんなときはネタを探しましょうか、もうそろそろ新しいものを仕入れたいし」

 誰に言うでもなく空を行くと、眼下に丁度良く香霖堂を見つけた。
 何故そこに行こうとしたかは分からないが、記者の勘ということにして、文は徐々に降下していく。
 戸を叩き店内に入ると、嗅ぎ慣れた埃の匂いと青年の顔を見つけた。

「こんにちは、早速ですが何かネタはありませんか、褌以外で」
「いきなりでとても失礼だね」

 眼前では霖之助が本に目を落としたまま、興味のない声をあげる。
 その様子に溜息を吐き、店内を見回したとき。ふと、文の目に小さな箱が止まった。
 箱は古びた赤茶の小物入れのようなもので、飾りの一つもついていない。
 ただ一つ目に付くのは、小さく掘り込まれた読み辛い文字だけだった。

 “あなたの真なる願いを只一つ、できる限りで叶えましょう”

 箱を手に取り、手の中で回してみたりする。
 そこからはやけに強力な妖力を感じて、文は興味を得た目で霖之助を見る。

「店主、これは御自分でお使いにならないんですか?」
「……あぁ、それは僕には開けられないんだ。少々値が張るが……買い取るかい?」
「――是非」

 軽く蓋がずれるのを確認して、文は霖之助に満面の笑みで答える。
 戸は開かれ、軽い足取りで文が外に出ると同時。
 本当に小さく、箱が嗤ったような気がした。

――あなたの願いは。


 ◆

 人と関わり合いのない人は自ら強く他人を欲していないのだと思います。
 逆に、他者を欲している人は切っ掛けさえあれば容易く友を得ることができる。
 あなたの周りに友人はいますか? 居ないのならば願うことです。
 そして、切っ掛けという名の箱を掴み、恐れずに開いてください。
 あなたの願いは、きっと叶うはずです。


 すなわち、ゆうかりん可愛いね。
眼帯兎
http://arukadesu.hp.infoseek.co.jp/
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2006/10/16 08:23:43
更新日時:
2006/12/07 17:52:08
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5.00
1. 3 箱根細工 ■2006/10/28 04:08:57
冗長に感じました。
2. 7 読むだけの人 ■2006/10/28 05:40:22
話としてはなかなか面白かったです
一つツッコミを入れておきますが、幻想郷における妖精は
『完全に滅されることは無い』とされています
多分幽香でも妖精は殺せませんよ?
3. 4 爪影 ■2006/10/29 01:56:49
 お後が宜しいようで。
4. 8 翔菜 ■2006/10/29 03:47:32
畜生――良い話を読んだ後なのに、コンペ用にいつも苛めっ子のゆうかりんが苛められるSS書いてて挙句落とした自分が馬鹿に思えてきて笑いが止まらねぇww

いやー、良い話でした、友情と言うのは誰にせよ何かしらきっかけが必要。
幽香はそのきっかけを掴む前に強大な力を手にしてしまったのか、それともきっかけを掴む機会なくいつの間にかそんな力を手にしていたのか……それはよくわかりませんが。
誰だって友情には弱いものです。
これは使い回しの言葉になりますけども、――最初からある程度の絆の強さが必要な愛情とは違って、友情は最初からその絆が太いなんて事はありえない。
細い絆をどんどん強くして行くもの……これからも幽香たちの絆が強く太くなる事を祈りつつ。
5. 10 kuro ■2006/10/29 16:00:45
これは良い……。
やっぱり一人は寂しい。
ご馳走様でした。
6. フリーレス サカタ ■2006/10/30 21:25:15
とてもいい作品でした。最終日の幽香が泣くところは目頭が熱くなりました。それ故に、残念な部分が数多くありました。まず改行の多さです。なにか意図してやっているんだとは思うんですが、それが何かは伝わらなかったですし、見づらさだけが残ってしまいました。詩的な印象を与えたかったのかとも思いましたが、内容がまったくの文章で読み物でしたので、そうではないのかな、と思います。それと作者のメッセージの使い方です。もう1つのオチ的な意味合いの内容です、とするならばそれは本文に付け加えるべきだと思います。そうしないと、本文は完成品でない、ということになります。また、そういう意図は無く、あっても無くてもいいけどこういうのもあります、的な意味で書いたのだとしても、それであれば書く必要がまったく無いものです。それは見苦しさを招くと思うからです。必要であれば本文に書くし必要でないならどこにも書くべきではない、それが当然なのではないでしょうか?
全体的に分かりやすかったとは思うんですが、『優しさ故に、弱い者は幽香から離れていった』ここが少し。おそらく優しいから殺さない→死なない=消えない=存在する→怖いから離れていく、だと思うんですが、もう少し分かりやすい表現にしたほうがよかったと思います。
いずれにせよいい作品ではあったので、これらが大変残念です。次回作はぜひ期待しています。
7. 7 2:23am ■2006/10/30 22:40:52
面白い。風が凪ぐような安心感。糸をつむぐ心の迷い。いいですね。
そして最後にひとつ。
「機会が二度君のドアをノックすると考えるな」
8. 6 nn ■2006/10/31 02:39:32
とりあえず、幽香よりチルノが可愛かった。かわいいよ、チルノ。
非常に良い雰囲気の作品だと思いますが、その分最後のほうに露になった件の箱が持つ皮肉めいた雰囲気が全体と齟齬を起こして何が言いたいんだか分からない作品になってしまったと思います。
最後の隠し味で全部台無しになってしまった、ような印象です。
9. 8 おやつ ■2006/11/01 22:47:36
ゆうかりん可愛いね!
幽チル派の自分には最高の逸品!
落ちに破滅を予期していた私はとりあえず閻魔に裁かれてきますね。

ん? 得点は持ってけ泥棒w
10. 6 雨虎 ■2006/11/02 00:06:02
7日を過ぎてもチルノ達との関わりは消えないオチは正直予想できました。
ですが、このような能力の所為にしたのは上手かったと思います。
たまにはこんな幽香も良いものですね。
11. 2 らくがん屋 ■2006/11/02 16:15:29
長い割りに中身が無く、テーマ処理は出来ていないも同然。
キャラに思い入れが無いと読めたものではない、読者を楽しませることを放棄しているSSに見える。
全文一行空けという読みにくさ抜群処理をカマされたので更に減点です。
12. 10 椒良徳 ■2006/11/03 10:07:10
素晴らしい。
ゆうかりんの可愛さが素晴らしい。
そして貴方の文章がまた素晴らしい。
13. 6 つくし ■2006/11/04 12:35:56
温かいお話で、佳い予定調和で、楽しめました。ただ、幽香というキャラと幻想郷という空間を思うと、少し感傷的に過ぎる気もします。私の幽香像と合わなかっただけだろ、と言われると反論は出来ないのですが。
14. 10 ■2006/11/05 02:30:24
ゆうかりん…こんなに凶悪なツンデレはそう見られるもんじゃねえ。いいもん、見せてもらったぜ…ぐふっ(出血死


嘘で騙されたまま信じ込んで行動すると、時にそれは真実になっていたりします。果たして、真実と嘘の境界線とはどこに…?
15. 7 as capable as a NAMELESS ■2006/11/05 02:52:39
終わりが近づいてくる時の寂寥感? には弱いのです。
あと登場キャラ全員かわいいよ登場キャラ全員。
16. 5 反魂 ■2006/11/07 03:07:36
ちょっと箱が肩透かしだったかな、という印象です。空の箱が喋るという意味深な伏線だった割には、結局まったく別の方向性の種明かしで終わってますし。
あと「もちろん、その思考には店の常連が代金を払っていかないことなど忘れている」みたいに、ちょっと日本語が妙になってるところが散見されました。

まあですが、それを度外視しても良いくらい温かいお話でした。
友情というテーマを真正面から書ききった清々しいお話、更にそれが幽香という大妖怪を主軸に語られた分、一層際立ったインパクトがありました。
やや異色にして、読了感の爽やかな作品です。
17. 10 74 ■2006/11/12 22:25:18
後味さわやか。10点はこれにきめました。
18. 9 たくじ ■2006/11/12 22:41:51
面白かったです。終わりが来てしまった時、実は終わってはいなかったと気づいた時、その時の思いがすごく伝わってきて半泣きになりました。もう本当にゆうかりん良かったね。
ただ一行ごと空けるのは正直とても読みづらかったです。内容的にはとっても満足満点!
19. 6 藤村うー ■2006/11/13 00:51:15
 チルノがころっと行き過ぎなところ以外はわりとスムーズに。こんな感じのオチだろうとは思いましたが、いい感じに騙されたからそれはそれでいいのだろうとも思います。
 でも幽香も部下がいるからその意味では寂しくもないんじゃないだろうか、と思わないでもありませんが、やっぱり部下との付き合いは少ないのでしょうか。部下側が幽香を慕ってるかどうかは別として。
20. 7 いむぜん ■2006/11/15 20:12:23
説明などが冗長でなく、丁寧な印象を受けまして。
行間が空いているのが、この作品全体に漂う緩さや優しさ、期間限定の小さな異変、といった見えない環境を現しているような気がする。
でも、読んでて「今回のお題って酒だっけ?」と思わなくもなかったり。
読んでて気持ちよかったのは事実。オチも大仰な仕掛けではない所が上手いと思いました。
ゆうかりん可愛いよ。
21. 6 しかばね ■2006/11/16 19:47:58
妖怪ウツボカズラは怖いな。
というのはさておき、ほのぼのさせて頂きました。
文の願い事は何でしょうね?
22. 9 blankii ■2006/11/16 20:20:59
どんな結末を着けてくれるのか? それを楽しみに読みました。ストンと胸に落ちてくる言葉、オチも納得。ゆうかりんと妖精達に幸あれ。
23. 10 ABYSS ■2006/11/16 22:02:16
上手い。本当に上手いですね。
事の顛末もすばらしい。本当、良いと思います。
あと、あとがきのラストは非常に同意します。
24. 8 ルドルフとトラ猫 ■2006/11/17 00:54:06
ほっとさせられた
25. 3 人比良 ■2006/11/17 20:26:42

だまされて幸せになれるのならいいなあ、と。
てゐに持たせたい所です。
26. 6 目問 ■2006/11/17 21:39:00
 うん、たまにはこういうのもいいかもしれませんね、本当に。
 良い話だっただけに、後書きの褌うんぬんはちょっと興醒めだったかも。
27. 7 木村圭 ■2006/11/17 22:44:10
チルノが可愛いとかガラクタの中にとても変な物が混ざってるとかそういうことは二の次にして、まずは叫ばなきゃいけないでしょう。
ゆうかりん可愛いよ!
考えてみれば、大妖怪らしくその辺の妖怪を苛めて回っている大妖怪って幽香しかいないですねぇ。む、実は真面目な人なのか?
28. 1 時計屋 ■2006/11/17 22:44:32
文章も構成もまだまだ練りこめると思います。
29. 10 K.M ■2006/11/17 23:14:03
七日間限定の願い事…嗚呼なんてファンタジー。
それにしても、幽香が可愛い過ぎるですよ、ホント。
30. 8 灰次郎 ■2006/11/17 23:23:01
チルノ達ごと幽香を抱きしめたい衝動に駆られた
可愛いねゆうかりん
31. フリーレス Fimeria ■2006/11/19 03:05:40
拙い作品をお読み頂き、沢山の感想指摘を有難うございました。
ささやかですが皆様のコメントにお返事を書かせていただきます。

灰次郎様
可愛いですね、ゆうかりん。素敵ともだち。

K.M様
7日間に固執し過ぎて無駄に膨らんだかもしれません。
可愛く描けているなら、良かったです。有難うございます。

時計屋様
耳に痛いです、今後精進していく所存です。お目汚し失礼いたしました。

木村圭様
ガラクタのアレは仕様です、忘れてくださいませ。真面目に妖怪してる大妖怪は幽香くらい、なんでしょうかね。

目問様
えぇ、偶にはいいものなんです。褌はちょっと後悔してます。すみません。

人比良様
そうですね、嘘吐きの嘘は騙された方も騙されて良かったと思うものらしいので。てゐに持たせるのも案外アリだったかしら……。

ルドルフとトラ猫様
ありがとうございますー。

ABYSS様
有難うございます。まだまだ至らぬところも多く精進していく所存です。あとがきは、多分持論ですので同意してくださると嬉しいものですの。

blankii様
ご期待に添えたようで嬉しい限りです。もっと良い構成もあったかもしれませんが精一杯出し切ったつもりです。何かを。

しかばね様
文の願いは……なんでしょうかね。悩みなど無さそうに見える彼女はきっとネタを望むのでしょうけど、恐らく恋とかその辺です。ウツボカズラこえー。

いむぜん様
酒は、何故か馴染みやすくて小道具として出してしまいがちですね、自重いたします。オチは雰囲気を壊さない程度にしっとりとさせたかったのですが……巧く出来ませんでしたね。ゆうかりん可愛い。

藤村うー様
チルノはHだから、というわけではなく子供は優しい人を見つけるとああいったように懐くものだと……思っていましたが……違和感ありましたか。そうですね、幽香は部下のことを恐怖で従っていると思う傾向があるかもしれません。部下から見れば可愛い女の子なわけですが。

たくじ様
有難うございます。1行空けについては検討した結果今後詰める事にしました。辛い思いをさせてしまってすみません。善処いたします。

74様
貴重な満点を……ありがとうございます!

反魂様
香霖の場面は……たしかに日本語が残念になってますね。貴重な感想指摘を有難うございます。

as capable as a NAMELESS様
登場するキャラは愛情を籠めて動かしたつもりでしたので、そう言っていただけると本当に嬉しいです。有難うございました。

翼様
そうですね、嘘から出た真とはよく言ったものです。嘘と真実、もしかしたら隣り合わせに混ざり合っているのかもしれません。シュレーディンガーのように不確定に。

つくし様
たしかに、少しキャラが感傷的に成っているように思えますね。ただ、孤独とはそうさせるものでありあの箱の嘘だと思っていただければ。

椒良徳様
有難うございます。幽香は素晴らしいです。

らくがん屋様
御指摘有難うございます。どうも無駄に長くなっているのは感じておりました。楽しませることを放棄、耳に痛いです。今後改善していこうと思います。有難うございました。

雨虎様
そうですね、予想できるオチから苦し紛れの2段落ちでしょうか……お褒め頂き有難うございます。偶には可愛くなっても女の子だからいいですよね。

おやつ様
破滅も良かったのですが、今回はほのぼのとしたものを目指そうと決めていたのでこういった形になりました。どちらにせよバッドエンドは書けなかったと思いますが……。持ってきます店長!

nn様
最後の落ちはこのお話の骨組みの種明かしをして読後をすっきりさせるものにしたかったのですが。どうも折り合いがつかなかったようですね、すみません。御指摘有難うございました。

2:23am様
「機会が二度君のドアをノックすると考えるな」いい言葉ですね。そのときは一度しかないから、自分にとって最善の行動が出来るようになりたいですね。

サカタ様
改行の多さは沢山の御指摘を頂きました。悔やまれるばかりです。あとがきの部分は読者の方に想像を膨らませていただければと思ったのですが……本文とは違った何か、それが「SSとしての」あとがきだと私は思っています。お目汚しになったようで、本当に申し訳ないです。

kuro様
一人でいるのは何でもない、人間って一人ですからね。でも他者の存在に気づいてしまったらそうはいきません。ソレを求めてしまう心が寂しいって感情なのではないでしょうか。

翔菜様
ちょいと特殊なものになっているかもしれませんね。細い絆をどんどん強くして行くもの、きっと喧嘩をしながら太くなっていくんでしょうね。拙作をお読み頂き有難うございました。

爪影様
宜しくなっていたらいいのですが……有難うございますです。

読むだけの人様
げふっ、そこを突かれると痛いですね。妖精は滅されることは無くても死はありますので、あるのかな、あったような気もする。滅と死は違うものと解釈してたようです。どちらにせよ、妖精は弱者の代表として比喩に使っています。

箱根細工様
冗長ですか、たしかに長くなりすぎたように思います。今後改善して行こうと思います。御指摘有難うございました。


投稿者の皆様はもちろん、評価に参加してくださった皆様お疲れ様です。
おかげさまで楽しいお祭りとなりました。
本当にありがとうございました。
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