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作品集: 最新 投稿日時: 2006/10/25 05:27:08 更新日時: 2006/11/23 21:09:31 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00



「じゃあ、ちょっと行ってくるわ」
「はぁ」

外出の旨を伝えたのは境界の大妖、八雲紫。
気の抜けた返事を返すのはその式、八雲藍。

がらがらぴしゃんと玄関の戸が閉まれば、紫の姿はもう見えない。

紫が出かける事、それ自体はさほど珍しくも無いのだが、この日は少しばかり事情が違った。
紫が外出するとなれば、その移動方法は十全スキマによる空間転移であるといってよい。
夜の空気を楽しむ事もあるが、それとても家から歩いて出かける事など殆どない。
ましてや、
「なんで、ジャージ姿なんだ?」
藍は紫の出掛けの姿を思い出す。

豊かに波打つ金の髪を高くひとつに結い、紫紺のジャージの上下にジョギングシューズまで履いたフル装備で出かけて行く様子は、まるで午後のテニスに出かける奥様のように嘘臭い活発さに満ちている。
もし普段の紫を知る者がその姿を見たなら、夢でも見ているかと疑うか、その場で卒倒しかねない。
心胆の弱い者なら小町か幽々子に挨拶をする事になるだろう。
何か始めたのは分かる。
だが、何を始めたかまでは分からない。

「まぁ、どうせ長続きはすまいて」
藍に出来る事は、アクティブモードの紫が起こすであろう珍事に、自分や可愛い橙が巻き込まれない事を祈るのがせいぜいであった。



しかし、もって三日と踏んでいた藍の予想に反してジャージ紫は長続きしていた。
毎日のように規則正しく出かけていき、数時間の後に額に汗して戻ってくるのである。
明らかに何処かで汗をかいてきている。それも健康的な汗をだ。
幻想郷全体を見回しても、類を見ない健全な姿といえるだろう。
これ以上となると、鍛錬好きの妖夢か、紅魔館を取り仕切る咲夜くらいしか思いつかない。
もっとも咲夜の場合は、額に汗して働くところを見せるような真似はしないだろうが。
尋ねればあるいは普通に答えを貰える類の事なのかも知れないが、正直なところ、まさか一ヶ月も続くとは思っていなかったし、ここまで続くと何か執念めいたものすら感じるので、今更聞くのも躊躇われる。
結局藍は、今日も黙って見送る事しか出来ないのである。



◆◇◆



見送りが、『いつも通り』になり始め、主の行動のあまりの有り得なさに藍が薄ら寒いものすら感じ始めた頃。
それを発見した。

納屋の掃除中であった藍は、棚の上に見慣れぬ箱があることに気が付いた。
「これは……最近の物だな」
家事に関してはフルスペックである藍は、どこに何がしまわれているか程度の事なら完璧に記憶している。
そもそも変化に乏しい生活なのだ、些細な違いでも目に付くのである。
その記憶によれば、この箱はつい最近までは家に無かった筈での物ある。
「……」
大きさは、縦三十二センチ、横二十三センチ、厚さは五センチといったところか。前面が蓋になっており、蓋を外して物を収納する方式の、黒の厚紙の箱である。
別段珍しい物ではないし、何かの封印が成されている様子も無い。妖気霊気の類も感じられない。
持ってみると少し重みがある。何か入っているようだ。
「家の事を引き受ける身である以上、得体の知れない物を放置しておくわけにはいかんしな」
藍はなんとなく言い訳してから、蓋を開けてみる。

すふぉ……と、紙の摩擦が生む僅かな音が午後の納屋に妙に大きく聞こえた。

「本……か」
中に入っているのは、箱のサイズとほぼ同じの古い本であった。
主の悪戯である可能性も考慮していたので少し拍子抜けしたが、まだ油断は出来ない。

あまり読まれた形跡の無い、ただ時間が経過しただけの表紙には『ブック・オブ・キーディティクト』とある。
ざっと二百年ものだろうか。
もっとも、形態保存の処理がされている感じなので何とも言えない。魔道書ならば外見の古さなど当てにならないのだから。
藍は睨むように眺める。
これは、洋書のようである。
これは、うちの書斎にあるものではない。
これは、西行寺の書架にあるものでもない。
西行寺の書架はかなりの広さがあるので、一冊くらいこういった物が在るかも知れないが。
「……」
手に取り、開いてみる。
中身は、行方不明になった鍵の場所を特定する術式に関するあれこれが纏められていた。
魔理沙あたりが読みそうな内容だ。つまり、藍には用が無い、そして紫にも用は無いはずだ。
何の気紛れで、読みもしない本を箱に仕舞っているのだろうか?
「…………」
本を閉じて記憶を検索していた藍の、形の良い眉が次第に寄ってくる。
この箱がここに置かれたであろう時期と、紫の奇妙な行動が始まった時期はおおよそ一致するのである。
藍の嗅覚は、この本から漂う厄介事の匂いを嗅ぎ付けている。
錆びた鉄のような、そして人を巻き込まないと気が済まない類の、いつ噴火してもおかしくない休火山のような臭いだ。
「……」
しかし、このまま出所不明の本を放置しておいても気分がよろしくない。
この本が原因でのトラブルが舞い込むとして、何も知らないままその事態を迎えるのと、ある程度の予備知識があるのとでは安全の度合いが大きく異なるのだ。
もし災厄が降りかかり、そして逃れられないものだとしたら、自分はともかく橙はどうなる。
目に入れても痛く無いほどかわいい式の、あの笑顔が悲しみに曇るのは何としても避けなければならない。
どうしたものだろうか?

『分からなかったら人に聞く!』

稲妻のような鮮烈さをもって脳裏にその声が閃いた。
天啓とも言うべき光明に、藍は目を細める。
ああそうだ、そうだとも。
橙、お前は私を導いてくれるのだな。
藍は、記憶のかなり広い領域を占める天真爛漫な笑顔を思い浮かべ瞑目する。



◆◇◆



数時間後。
沈む夕日が山を染めてゆく時間。
場所は変わって、里にほど近い一軒のくたびれた庵。


記憶内の橙と戯れていてうっかり三時間ほど過ごしてしまった藍は、飯綱権現降臨でかっ飛ばし慧音の哨戒使い魔をまとめて轢き潰し、慌てて飛び出してきた術者をひっ捕まえてそのままの勢いで玄関に飛び込んだ。


「……と、言うわけなんだ」
「……」

黒光りするちゃぶ台に置かれた本を凝然と見つめているのは、けったいな形をした帽子をかぶっている人物、上白沢慧音。
意志の強さを窺わせる眼と眉が、今は不審と困惑の色を湛えており、顔にはでっかく「厄介事を持ち込みおって」と書いてある。
藍は、腕組みをして俯いたままに動かなくなった慧音を見て思う。ああ、自分の勘はきっと当たっているのだろう、と。
過去を探る能力を持っているこの半獣を頼ってきたものの、こうまで予想通りのリアクションをされると、それだけでお腹がいっぱいになるだけの悪い予感がしてくる。

「いや、どうしても、というわけではないのだ。気が進まないのならば、この件は聞かなかった事にしてくれて構わない」
傾いたままの慧音にそう言う藍は、何が何でも知りたいと言う訳でなかった。
むしろ、知らなくてよい事が潜んでいる、という予感が強まった気がしてならない。
知るだけで巻き込まれるタイプの厄介事もあるのだ。

それにしても、と渋い視線のままで藍は思う。
あのマスターグレード重箱帽子はどこまで傾けば落ちるのだろうか? 今度計算させてもらおうか。



慧音の返答がないまま、湯飲みから立つ湯気は弱くなり、手を付けられぬままに茶は冷めてゆく。
待つ事には慣れていたが、むしろあまりに深刻に悩む慧音の方こそが不憫に思えてきた。
見切りをつけた藍が本を引っ込めようと袖から手を抜いた時、慧音がようやく口を開いた。

「いや……やってみよう」
ちっとも良くなさそうな間を取っておきながら、慧音は了承した。
「……いいのか?」
「……藍殿の危惧するところは分かる。世の中、知らないままでいた方が幸せな事など、それこそ星の数ほどあるのだ」
歴史を織り重ねていく慧音の言葉には、どこか諦めめいたものがある。
「ここにこの本が来たという時点で、我々はこれに関わる事が定められているのだろう」
「らしくないな、因果を語るとは」
藍の言葉に苦笑する慧音。
「実際、運命を操る存在が近所にいるのだ、そうも思いたくなるさ」
「違いない」
慧音の言葉に苦笑する藍。
「それに私も興味はある。ただ、八雲紫がらみで過去を覗いてただで済むとも思えなくてな。踏ん切りがつかなかったのだ」
「ふむん」
きわめて適切な判断だ。頼った甲斐があるというものだ。
「だが私にも知識欲はある、この本が孕む歴史、白日の元に暴いて見せようぞ」
顔を上げた慧音はもっともらしい事を言ってはいるものの、その顔にはいたずらな笑みを浮かべている。
なんのかんの言いつつもこういう事が楽しいのだろう。

「では行くぞ」
「うむ、よろしく頼む」

慧音は座り直すと、自身の能力を解放し、歴史の一部を紐解く。
過去の出来事を視覚できるように抽出する、歴史を操る能力の一つであった。

部屋の光景が捲れる感触のあと、藍の視覚は闇に塗りつぶされた。



●○●



初めは闇の中だった。
どこかの箱の中に収められていたのだが、金の甲冑の人物に持ち出された。
甲冑の人物は外の世界の悪魔と戦っていたが、今回知りたい事とは関係ないようなので、慧音は一気に記録を飛ばした。

慧音の調節で歴史を飛ばしていくと、風景がまるでページを捲るように変わっていく。
変化はないが、時間だけが堆積していく。

そこは図書館であるらしい。おそらくは紅魔館の図書館だろう。
何も起こらないまま、時だけが流れていく。
慎重に倍速の率を調整しつつ進み見ると、ようやく変化が訪れた。
見慣れたとんがり帽子の人物がこの本を持ち出したのである。

魔理沙か、なるほど持ち出しの証拠映像だな。

もう少し飛ばす。

魔理沙の持ち出しで図書館を出た本は、霧雨邸にしばらく置かれた後、何故か博麗神社に移された。
他にも数冊の本が確認できるところを見るに、よく寄る所に暇潰し用として置いているようだった。
折角有用そうな本を持ち出しているのに、それを活用しない魔理沙に傍観者達は呆れてしまう。

変化を追って歴史を捲っていた慧音であったが、ついにその日に辿り着いた。



●○●



神社の茶の間。
時間は午後くらいだろうか。
穏やかな日差しの見える庭先とは裏腹に、茶の間は沈黙が支配していた。
そこには三つの人影がある。

一人は紅白の巫女、博麗霊夢。
一人は黒白の魔法使い、霧雨魔理沙。
一人は七色の人形遣い、アリス=マーガトロイド。

女三人寄れば姦しいというが、どういうわけか三者の間には会話は無く、どことなく硬質の空気が漂っている。

三人の視線の先、ちゃぶ台の上にはワンホールのケーキが鎮座していた。
生クリームを使った直径二十センチ強の、何の疑う余地も無く普通の苺ケーキである。
付随する情報を読み取る慧音には、それがアリスの作であると読みとれた。

少し前の時間、アリスが霊夢の為にと作ってきたケーキなのだが、ナイフを入れる直前に魔理沙がやってきた。
霊夢の為に作ったつもりではあるが、まさかお前に食わせるケーキは無ぇとは言えず、うっかり、
「三等分よね」
と口走ったのが、この事態の発端である。
己の発したこの言葉、よもやこれ程の膠着状態を生み出そうとは。
アリスの意識は硬い唾を飲んだ。

円を三等分。
即ち、ひとつのピースを百二十度で切るわけだが、これが曲者だった。
正確に三等分する程度の技量など、手先の器用さに覚えのあるアリスにとっては造作も無い事なのだが、「円を三等分にするのは難儀」という先入観から、どう切っても等分に見えないのだ。
その上、ナイフについたクリームにまでいちゃもんをつけられては、さすがのアリスもお手上げだ。
おそらく誰が切ったとしても文句は出るだろう。それが分かっているが故に、誰も名乗りを上げられないのである。

アリスはその器用さと几帳面さを、菓子作りにおいても発揮する。
アリスの作る洋菓子は一度口にしたものを虜にする魅力を秘めており、紅魔館筆頭の悪魔の狗を向こうに回しても、一歩も引けを取らぬものであった。
価値の有る物であるのなら、微細な差であっても不公平感が生じるというのは人類の歴史が証明している。
ミリ単位、グラム単位であっても議論の、そして争いの種になりかねない。

こんなクリームとカロリーの塊を三分の一ホールも食べてしまえば、その後が大変な事になるくらい予想の出来ぬ三名ではないが、そんな理由でアリスのスイーツから手を引くわけにはいかない。
乙女の体内には「甘いもの嚢」があるのだ、この程度の糖分、なにするものぞ。
こと、欠食気味の霊夢においては貴重な栄養補給のチャンスである。
退く理由などどこにも無かった。

等分。
糖分。

一刻も早く摂取したい。しかし切る係はイヤだ。
三人は鏡を前にした蝦蟇の如くに動けなくなっていた。

時間だけがただ過ぎていく。
焦りが募る。生クリームは長時間の常温には耐えられないのだ。
ケーキと一緒にと淹れた紅茶もすっかり温くなったしまった頃。
事態は動いた。



「どうやらお困りのようですわね」



笑みを含んだ声と共に茶の間の空間に裂線が走り、三人は顔を跳ね上げた。
「その声は!」


それは、幻想郷の厄介者。
それは、神隠しの主犯。
特級要介護のぐうたらちゃん。
数々の異名を持つ大妖怪、八雲紫の操るスキマ発生の前兆であった。




……来たな八雲紫。さあ、何が起こる? 何が起きた?
傍観者達は見逃すまいと意識を凝らす。




次の瞬間、紅白の残像が舞った。
事態を予測不能な方向へと転がす事にかけては、類稀なるポテンシャルをもつこの迷惑妖怪の出現は、この場においては歓迎されるものではない。
幸せいっぱいの午後のお茶の時間が、阿鼻叫喚の地獄絵図と化さないという保障はどこにも無いのだ。
障害を排除する為、袖を翻し、霊夢が空間の切れ目に飛びかかる。

「お呼びじゃないのよ!」
その手には博麗の名が刻まれた長大な針。
霊夢は出来たばかりの断裂を、霊気の糸でまつり縫いにしていく。袖がはためく音すらも連なって聞こえてくる、目にも留まらぬ早業だ。
しかし、紫の出現が僅かに早く、半分ほど縫い塞いだところで金髪の頭が出てきた。
「いたたたた!? いたいいたい! 挟んでるわ! 挟まってるってば!」
普段通りに開けたスキマが急に狭くされた為に、紫は途中で引っかかってしまっていた。
それを見て、
「ちっ、止め損なった! 【夢想――」
間髪入れずカードを抜き、必殺のスペルを放とうとする霊夢。

スキマから首だけ出していた紫は、この霊夢に少しばかり感心した。
このような形とはいえ、結界修復術の上達を見られたのである。凛々しい霊夢の顔に思わず見惚れてしまう。
それはともかく。
目の前に突き付けられた符は命中率重視の「集」、確かにこれならスキマに退避してもある程度は追ってくるだろう。どうあっても逃がさないつもりらしい。
折角遊びに来たのに挨拶代わりにスペルを撃たれて少し寂しかったが、結界とスキマでこの八雲紫が遅れを取るわけにはいかない。ありえない。

「うふふ、腕を上げたようですわね? でも、甘いですわ!」

霊夢とて、目の前に首だけ突き出しているこの寝ぼすけが、真っ向からやりあえば面倒な奴であるというのは百も承知である。
だから、突ける隙は突く。そうでもしなければ、この困ったちゃんは退けられないのだ。
今、自分の背後には、かけがえのない存在がある。それを守る為にも負けられないのだ。
霊夢は、守るべき物の為に戦う者の強さというものを、少し理解した気がした。

だが、人知を超えた力を秘めるこの妖は、霊夢の予想の斜め上を行った。






にゅるぅり






「うわ!? 気持ち悪っ!」
果たして何の境界を弄ったのか。
自身を軟体化させた紫は、押し出されたところてんの様にスキマからまろび出て来た。

茶の間の畳の上にわだかまった紫(軟)は手足などは分化しているものの、そのシルエットは人型から逸脱しており、まるで悪夢のような不気味さであった。
微妙に歪んだ頭のままで奥に居た魔理沙と目が合い、黒衣の魔法使いは空気を喉に詰めたような声を出した。

紫は、一番近くにいた霊夢の足に絡みつくと、その身体を支えの棒に見立てて朝顔の蔓のように巻きつき立ち上がる。
いや、足すらも軟体化しているので、立つという表現が適切かどうかすら定かではなくなっていた。
紫の出現から僅か数秒で、茶の間は異空間へと変じていた。

巻きつかれ、血の気を失った顔をしている霊夢とは対照的に、柔らかく歪んだままニタリと笑みを浮かべる紫。

「霊夢! 私の心の平和とケーキのために、ここで散ってくれ!」
巻きつく紫の不気味さに耐え切れなくなった魔理沙が暴挙に走った。
抜き放たれた八卦炉、内に秘められし真火が魔理沙の魔力で追い焚きされる。恐怖によって微妙に正気を踏み外している魔砲少女は、震えと共に剣呑な唸りを上げている砲口を霊夢達に向けた。

様々な人妖の取り決めた条約により使用を禁じられている「屋内マスタースパーク」だ。

太陽がその場に生まれんとするかの如き輝きが、霊夢もろとも紫を照らし焼き尽くそうとする。
「よしなさい魔理沙、どうせ逃げられるだけよ」
魔理沙が恋と破滅の魔法を放つ寸前。辛うじて冷静さを残していたアリスが青い顔のままに友の蛮行を制止した。
「八雲紫。貴方の本性ってば、ひょっとして蛇?」
「あら、失礼しちゃいますわ。あんな人を唆すだけが趣味の女と一緒にしないで頂けるかしら」
その言葉を合図にしたように、紫の身体が普段の形に戻った。
「こんな慈愛に満ちた少女を捕まえて蛇だなんて。失礼だと思いませんこと? ねぇ霊夢」
その言葉を合図にしたように、我に返った霊夢がもがき出した。
髪や袖を振り乱し、紫の拘束から逃れようとする霊夢。
そうはさせじと的確に要所を押さえ、霊夢の抵抗を絡めとる紫。
その様は、紅白の蝶が蜘蛛の巣にかかってもがいているようにも見え、どことなく淫靡さを醸し出していた。
「いいから離しなさいよ!」
「あら、つれないですわ」
背後から霊夢を抱きしめる形となっている紫は、霊夢の頬に頬擦りする。蜘蛛が蝶ににじり寄る。
絡みつき振り解けず、あわよくば唇を奪おうとする少女の姿形をした怪異に、霊夢は容赦の二文字を捨て去った。

「後悔させてあげるわ……! 夢想封印――」
刮目した霊夢は、紫の拘束から左手を引き抜くと、奇跡の顕現を叫ぶ。
「――測!!」

裂帛の気合と共に放たれたのは、浄化と封魔の力……ではなかった。
抜き放った左手、その人差し指と親指が「コ」の字を形作り、神速をもって紫の脇腹へと突き刺さったのである。


きゅう


「っ!?」
符の前兆である霊力を感じなかった紫は、それ故に油断した。
隙をみせた脇腹の柔肉を抓まれて、ギクリと不自然な姿勢のまま動きを止める。

「あら紫。油断がすぎるんじゃないかしら? いろいろな意味で」
「な……何の事でしょう。仰る意味がわからないわ」
冷や汗をかきながらも、薄く微笑みしらばっくれる紫の脇の肉に、容赦ない追い討ちがかけられる。


ぎゅむ


「アッ――!!」
八雲紫が悲鳴をあげた。
その事実と、予想以上に乙女チックかつ凄絶な悲鳴は、二人の魔女に幻想郷最期の日を予感させるだけの威力を持っていた。
アリスなどは既に涙目になっている。

「身体の線が出ない服なんか着ているから無頓着になるのよ。 ね ぼ す け さん」
「ぁぁああ……れいむ……」
脇腹を抓まれ身を捩る紫は、まるで萎れゆく花のような弱々しさ。まな板の上の魚の方がまだ元気がある。
「ふふ、どうかしら? このまま大声で天狗でも呼んでみようかしらね」

その非情な言葉に、血の気を失い紙のような白さになっている紫と対照的に、勝ち誇りニヤリと笑みを浮かべる霊夢。
形勢が完全に逆転していた。

怠惰という自身が犯した罪。
その証に蛇の牙の如くに喰らいついた二指。流れ込み、己を苦しめるのは断罪という名の毒か。

「……恐ろしい技を、身に着けたようね……」
観念した表情の紫は、静かに霊夢から身を離した。
しかし、この日の霊夢は非情だった。徹していた。
解放された霊夢は、影が粘り像が残る高速度で滑るように部屋の隅へと移動する。
そこには、魔理沙が暇潰しにと持ち込んだまま置き去りにしてある本の山があった。

「……!!」
紫が声の無い悲鳴をあげる。
霊夢の意図。
その次の行動が読めた紫は何かを叫ぼうとしたが、喉から出たのは壊れた笛のような空気の漏れる音だけであった。
両の手を頬に当て、青褪めた顔は目を見開いている。無音にルビを振るならば「ヒィ」であろうか。

霊夢は静かな瞳で本の山を一瞥すると、迷うことなく一冊の本を拾い上げる。
「……これね」
手に取り、「コ」の字を堅持したままの左手に宛がう。
その本のタイトルは『ブック・オブ・キーディティクト』
指は最初から本の厚さを測ったのではないかというくらいに、見事に一致した。

全ての傍観者が理解した。
「コ」の字イコール本の厚さイコール、八雲紫の――

「ああ……!!」
概念的数値を物理変換された紫は、へなへなと崩れ落ちたかと思うと、その場にぺたんと座り込んでしまった。
血の気の失った頬を、溢れ出した透明な雫が静かに流れ落ちていく。
「うぅ、ぐすっ……ひぅ……」
表情を崩し、一度しゃくりあげたかと思うと、
「ううぅぅ……れいむが……いじめ……うぁ〜〜……」
紫は泣き始めてしまった。
まさかの事態に魔理沙もアリスも、そして霊夢ですらも対応出来ない。

なんとなく気まずい雰囲気の中、紫はぐずるように泣き続けていた。



少しして、落ち着きを取り戻したかに見える茶の間。
あれだけの仕打ちを受けてなお、そして、博麗の奥義を目の当たりにしたにも関わらず、ケーキ争奪戦線に脱落者は出なかった。
皆、甘い物の誘惑には勝てないのだ。
普通である魔理沙言うに及ばず、強大な力をもつ妖怪や無重力の巫女であってさえ。

先程までさめざめと泣いていた紫であったが、今は少しばかり縮んでいた。
何の境界をどう弄ったのか知れないが、紫の容姿はレミリアと同程度まで幼女化しており、どこからか取り出したラベンダー色のドレスを見事に着こなしていた。
「あんた、それレミリアのドレスじゃない、勝手に着るとうるさいわよ」
どうやら神社に備え置きのレミリアの着替えらしい。
しかし、呆れた様子の霊夢の言葉にも、紫は弱々しい笑みを浮かべるだけである。

自分の体型すらも自在に変容できるなら、さっきの数値も一時的なモノと割り切れるんじゃないか、という魔理沙の指摘に、
「自分が一番楽な姿形の時に録られた数字なのよ……」
紫は一切の言い訳も無く、乾ききった表情で答えた。
さしものスキマ妖怪も、皮下脂肪の厚さをページ数で数えられるのには耐えられないようだった。
それを聞いた魔理沙が俯き、アリスが目頭を押さえた。



紫の言葉に目を伏せるように、過去の映像が畳まれていく。闇に落ちていく。



●○●



「……」
「……」

日が落ち、闇に染まった茶の間を重苦しい沈黙が支配する。
過去の閲覧を終えた慧音と藍であったが、石化の呪いでもかけられたかのように、両名とも身じろぎ一つ出来ないでいた。
藍は思う。いっそ呪いでも何でもいいから石になってしまえば、この後の事を考えなくて済むだろうか。
予想を上回る超弩級の知らなかった方がいい事に、汗だけは真夏に鍋焼きうどんでも食べているかのように出てくる。
もっとも汗の種類は正反対の冷たい汗だが。

闇の中、視線を上げずに藍が口を開く。
「夢想封印―測……恐ろしい技だ……」
「ああ……」
紫のマジ泣きを思い出し、青褪めた慧音が掠れた声を出す。気付けば喉がからからになっていた。

八雲紫を打ち破った秘奥義。
乙女の夢と幻想を砕いて封じ、厳然たる現実を突きつける恐怖の技。その威力は今見たとおりである。
何の負い目もないプロポーションをしていれば、あるいは通用しない技なのかも知れないが、乙女の脇腹には常に甘い物の誘惑という世界の危機が迫っているのだ。
そして、あの「測」が対象とする部位が脇腹だけではない可能性もある。
ルナティッククラスの攻撃に晒されでもしたら、三体数のみならず全身のあらゆる数値を録られかねない。

「あれが、博麗の力なのか……」
すっかり冷たくなっっていた茶で喉を湿らせる慧音に、不安げな藍が目を向ける。
「もし……アレを喰らったらどうする、やはり走るか?」
「私なら舌を噛む」
即答だった。
「!?」

慧音のあまりの潔さに絶句していた藍であったが、訪問の本来の目的を思い出した。
「上白沢先生、この件の物証たるこの本。こいつをなかった事にはできまいか?」
「私もそれを考えていたところだ……」
同じく視線を本の表紙に固定したままで、慧音が答える。
「ならば」
「だが」
促す藍に、しかし慧音は否定的だった。
「何を躊躇う必要がある! この事実を知った者にどんな災いが降りかかるか知れたものではないのだぞ! いや、貴殿はいいかもしれないが私は紫様と毎日顔を合わせるのだ、これからの長い時間を平穏に過ごすためにも、是非に!」
「それは、どうだろうか。藍殿」
闇の中、シルエットだけが見える慧音が顔を上げるのが分かった。
「?」
「貴殿は疑問に思わないだろうか。何故、八雲紫ほど力のある者が、こんな本をいつまでも大事に保管しているのか、と」
「た、確かに」
「貴殿の主ならこんな本の一冊や二冊、ましてや皮下脂肪などどうにでも出来る力を持っているはずだ」
にも拘らず、と慧音は続ける。
「この本を抹殺するのではなく、毎日汗を流しているという」

言われてみれば慧音の言う通りだ。
こんな本の一冊、見られて困るものならどこかに隠してしまえば済む話だ、神隠しの主犯には造作もない事だろう。
慧音の言葉があるまで、その事に意識が向かなかった。

「紫殿はこの本を戒めとし、自分の力でこの試練を乗り越えようとしている、そうは思えないだろうか」
境界操作も自分の能力と言えるが、それでもなお走ろうというのか。
「だが、何故急に」
「こればかりは当人に聞いてみるほかあるまい。だが一つ、無関係とは思えない光景を私は見ている」
「と申されると?」
「貴殿の式の橙。あの子がいじめられているのを、少し前に見た事がある」
「なんと!」
聞き捨てなら無い話だ。場合によっては今すぐにでも報復に向かわなければなるまい。
刮目する藍に慧音が続ける。
「内容は主の主である紫殿の怠惰。ひらたく言えば、食っちゃ寝だ、という事を囃したてられていた」
「まさか……!」

その事実と主の行動が線で繋がるというのか!?
驚き、そして九本の尾ごとうなだれる藍に、慧音はやさしく声をかける。
「紫殿なりに、何らかの責任を感じていたのかも知れないな」
「紫様……」

嗚呼、何という事だろうか。
あの誰もが認めるだらけ妖怪が額に汗して走っているのは、橙、いや家族の為なのだという。
他者など省みない消極的傍若無人だと思っていたが……文字通り身を削る努力をしていた主に、藍は目頭が熱くなるのを感じた。

「さあ、私の役目はここまでだ。何をすべきかは自分で考える事だな」
慧音が柔らかい笑みを浮かべて言った。そうだ、外は待宵。そろそろひとっ走りした紫様が戻ってくる頃だろう。
何か美味しいものを作ろう。紫様の好物で、カロリーの高くないメニューを揃えよう。
藍は目を閉じ、一つ頷いた。
「上白沢慧音。なんと礼を言ったらいいのか分からない。だが、この恩は必ず」
「ははは、狐の恩返しだな」
「ふふふ、そうかもな」



◆◇◆



藍が帰還してすぐ、紫はいつも通りに帰ってきた。
首にタオルをかけたジョギングウェア姿は相変わらずだったが、これの理由が分かった以上もはや違和感はなかった。

「藍」
「はい。申し訳ありません、所用で外出をしておりました。ただちに食事の支度を」
「それは後で良いわ。それより、納屋にあったこのくらいの箱、知らないかしら?」
額の汗を拭きつつ、紫が問う。
来た。やはり気にかけていたのか。
「これですか」
藍は袖から箱を取り出す。

臆する事は無い。
この箱の中身が持つ暗黒の歴史は、既に八雲一家の問題なのだから。その十字架、共に背負っていこう。
藍は、紫の目を見据えて箱を差し出す。

「そう、貴方が持っていたのね」
「無断での持ち出し、申し訳ありません」
「その本……なんだか分かったかしら?」
紫のアメジストの瞳で穏やかに見つめられ、一瞬、藍は返答に窮した。そして、その沈黙が答えになった。
「いいのよ。そう、貴方の予想通りダイエットよ。たまには身体を動かすのも悪くないわね」
にっこりと微笑む紫。どこまでも爽やかだった。
「それでね、藍」
来た。
「ちょっと練習相手になってもらえるかしら」
そう言うが早いか、紫はジャージのファスナーを下ろすとTシャツとショートパンツ姿になる。
汗に濡れたそれは肌に張り付いてなかなかに扇情的であると言える姿だったが、残念ながらここにその価値を見出す者は居ない。天狗とか。
「私でよろしければお相手いたしますが……」
「お遊びよ。戯れに、というところね」

遊びと言いつつやる気満々の紫の姿に、藍は思考を巡らせる。
どうやら、走る以外にも何か訓練をしていたようだ。それも相手が必要な類のもの。
いやむしろ走るのはそれの基礎練習なのか?
藍が思考の隙を見せている間に、紫は取り出した細布を手早く握った手に巻きつけて始める。
「バンテージ、ですか? 随分手馴れているようですが」
拳闘などで拳を痛めないようにする等の目的で巻かれる布。なんだ、殴りあう気か?

しかし予想とは異なる答えが返ってきた。
「ああ、これ? 霊夢のサラシよ」
「!?」
確かによく見ればバンテージにしては生地が……いや、なんだってそんなもん巻いてるんだ!?
「左は小町ちゃんのよ」
「……!」
もはや言葉も無い。
巫女と死神。どちらも神関係の職業と言えなくもない気がするが、加護とか縁起ならもっと他になんかあるだろうに。
あれか、右がマイナス(貧乳)左がプラス(巨乳)か。幻想郷を支える概念をプラスマイナス併せ持つ事で、神すらも穿つ拳を手に入れたという事か。
そんなアホな。

藍が慄然としている間に紫は拳を完成させていた。
思わず硬い唾を飲む。
見た目こそ普通であったが、その両拳を固めているのは本来、少女の秘密を守る儚い薄布なのである。
どこの世界にサラシを拳に巻いて殴り合おうという戯け者が居るというのか。いや、布を巻いて守る物という意味では拳も胸も一緒という事なのか。どちらも武器になるという点では一緒だが。古代ローマあたりの拳闘士なら、恋人か妻あたりのサラシを必勝の祈願と共に巻きつけた勇者が一人くらい居たかも知れないな。でもあの頃の女性の下着ってどんな物なんだろう。

藍の思考は底抜けに脱線していこうとしたが、紫の構える気配に辛うじて正気を取り戻す。
何度見てもバンテージしか見えない所が恐ろしい。
「……しかし、紫様が拳闘とは」
徒手での戦闘は久しいが、藍も格闘戦は嫌いではない。半身になって掌底を構える。
汗を流すだけなら他にもいろいろあったろうに。しかし、主公認で殴れるのは美味しいかもしれない、と藍は思い直す。

「拳闘とは少し違うわ」
「と申されますと?」
そう言いながら紫は構える。
両拳を顔の前に揃え、手の甲が前を向くような構えはバンテージ(サラシ)がなければ「ぶりっこのポーズ」だ。恐ろしい。
顔の下半分を隠して紫が告げる。


「覚えておきなさい、BOXINGよ」


紫がそう言い終わると同時、茶の間が風景が溶け出し、床の感触が変わり、一瞬の暗転の後、天井からは白光が叩きつけられる。
改変の完了を告げるかのように、甲高い鐘の音が一つ響いた。

紫の能力慣れしている藍の感覚の眼には、【居間とリングの境界】が物凄い勢いでリング側に引っ張られたのが視えた。

ってか、うちの居間にそんな愉快な境界が潜伏していた事が驚きだよ! 普通そんな境界あり得ないだろうに!
思わず脳内でツッこんでしまった藍に、紫が放たれた矢のような速度で踏み込んできた。
足を止めていた藍の右脇腹、人間で言うところの肝臓のある辺りに紫の左拳が突き刺さる。

打音と激震。

叩くというよりは撃ち砕くという方が近い衝撃が、打たれた右から左へと突き抜けた。
「……ご」
藍は妙な声を漏らして身体をくの字に折る。

なんだ、この拳は!? まるで鉄か何かで出来ているようじゃないか……!
妖力を全く感じない拳なのに、おそろしく力の集約された一撃は、藍に拳骨で丸太を殴って土手に埋め込んでいる紫の姿を幻視させる。
まるで弾幕戦で被弾した時のような、いやそれ以上の痛みを藍の身体に刻む。脂汗が出てきた。

藍は紫の拳の速さと叩きつけられた衝撃に舌を巻き、そして、唐突にあの箱が置かれていた理由を理解した。



◆◇◆



藍が帰り、一人となった庵には静寂が戻ってきていた。
しかし、その静寂は普段の止水のような静寂ではなく、間近に迫る嵐雲を見据える静けさであった。

一日の出来事を史書に纏めながら慧音は思う。
嵐の前には静寂はない、嵐の前にあるのは大暴風雨だ、とは誰の言葉だったろうか。
筆を走らせながら、慧音は先程の出来事を振り返った。


実のところ、慧音には一つの懸念があった。
藍には話さなかったが、あの箱が目に付く所にあった可能性が実はもう一つある。
それは、罠である。

あの日の出来事は、現場に居合わせた魔理沙やアリスからとっくに広まっていなければおかしいはずの事件であった。
にも関わらず、こういう手段でなければ真相に辿り着けなかったと言うのは、何らかの形で口封じが行われたから、とは考えられないだろうか。
走る事(ダイエット)は避けられない。
在所不明のマヨヒガ周辺を走るのであれば、人目につくことも無いかも知れないが、家の者にまで隠し通すとなれば話は変わってくる。
ならば、知られてなお口外させない抑止力を設ければいい。
八雲紫がそういった判断を下した可能性が無いと、一体誰が保障してくれる?

そして、この予想が正しかった場合。
恐らく、今頃はマヨヒガで八雲藍の処刑が執行されているに違いない。
どういった方法になるかは想像もつかないが、以前読んだ新聞には平然と虐待が行われている様子が記されていた事もあった。
平和な一家団欒のはずが、血と涙で彩られた残酷無残の仕置きの宴に変じたとしたら……
帰り際の藍の晴れやかな笑顔を思い出すと、自分の予想が外れてくれる事を強く願わずにはいられない。

そして、この予想が正しかった場合。
あの本が持つ禁忌の数字の意味を知る自分にも、八雲紫による封殺の魔手が迫る事だろう。
しかし、里を守る事を課しているこの身は、逃げ隠れる事を許されない。
そして自分の身にもしもの事があれば……

そこまでを思考の赴くままに書き連ねた所で、玄関の戸が控えめに叩かれた。

夜も更けたこんな時分に、一体誰であろう。
戸の向こうには妖の気配は感じられない。では、里の者であろうか。

慧音は筆を置くと、玄関に向かった。
自分が開けようとしている戸の向こう側が、【玄関先と野外特設リングの境界】が曖昧になっている異空間であるとも気付かずに。






僅かな静寂の後。

ゴングが、鳴った。







――了――






戯れなれば、当て身にて……



土下寝。

えー、とりあえずこんぺお疲れ様でした。
作者、読者、運営各位、本当にお疲れ様でした。

いやもう何と申しましょうか。この結果。


前回。

祭りに参加したくて書いた【にんじん】があんな事になってしまい、一日浮かれた鼠は一週間くらい凹みました。

裸踊りのつもりで書いた一発ギャグで、しかも早めに出したから評価が集まったっぽい。

本来評価されるべきものがすぐ下にあるのは存外心臓に悪いものです。


はしゃいでいたらうっかり高い所に上がってしまい、降りられなくてニャーニャー鳴いている猫(鼠ですが)と大差無い状態で耐えていましたが、ようやく降りるチャンスがやってきました。

箱とういうお題に決まって頭を抱え、出てきたのはやはり箱庭、フランちゃん、賽銭箱。

箱入り娘は夏前にメディ×フラン(課外授業)で、ダブルで使っていたのでアウト。というか、あれを書いていたお陰で、逆に箱入り娘には未練は無かったですか。

賽銭箱。適当に薄く書いて賽銭箱同様「中身がない」話ってのもいいかなぁ、程度に。てゐ主導の話を書こうとして、上手い詐欺が書けずにアウト。

箱庭……書き出すとすぐ規模が大きくなる概念を持っているので、こんなデカくなりそうなお題はパス。

他にもチルノの冷蔵庫とかイナバ物置とか夜行バスとか出てきましたが、どれもまとまりませんでした。

ああ、こんなに苦しんでいるのは俺だけなんだろうか、皆はスラスラ書いているんだろうか。

時間だけが過ぎていく中、鼠は考えました。

きっとパスした3つのネタはよく出てくるだろう。そして、手の込んだ料理が続けばそれがどれだけ美味しかろうと舌が疲れてくるに違いない、ならば、刺激物があってもよかろう、即ち、隙間産業でいこう。と。

そんなわけで方向は決まりました。正直またギャグ(コメディ)かよとも思わなくもないですが、むしろその必然がありました。
盛大に散って降りられれば、後腐れもなかろう、と考えたのです。

今回の【ING】は自爆テロのようなものです。

きっと黙っていても面白い話は沢山出てきて、自然に降りられるに違いない。
気が楽になった鼠は、「お祭りなんだから楽しまないとな」と、花火を用意します。

導火線に火が点いた花火を抱いて飛び降りたら、花火の炸裂によって打ち上げられてしまった。そんな感じ。

初めからデッドボールのつもりで暴投したんですが、花形満が多かったらしく、ことごとく打ち返された気分です。


グダグダと泣き言を書きました。
祭の終わりにはふさわしくないでしょう。しかし、瞬間最大風速でランクインしてしまった者が素直に浮かれてる訳でないのです。
というか、今もってなお狐に抓まれた気分です。贅沢な悩みだとか言わないで下さい、小心者には少々厳しいのです。


もし、次回があるならば。
あるべきモノが在るべき所に納まりますように。



とかなんとか書いてますけど、こんぺ自体はとても楽しかったです。 もし次回があるなら参加したいですし。

最後にもう一度、参加各位。
お題と締め切りに苦しんだ作家の皆様。
限られた期限で拙作を読み、感想をつけてくださった読者の皆様。
こんぺの開催と運営を執り行った管理人様。
そして、東方という素晴らしい世界を示してくださった神主に。
最大限の感謝を。
お疲れ様でした、そしてありがとうございました。
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2006/10/25 05:27:08
更新日時:
2006/11/23 21:09:31
評価:
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POINT:
0
Rate:
5.00
1. 3 箱根細工 ■2006/10/28 06:03:40
良い突飛さとは思えませんでした。
2. 5 床間たろひ ■2006/10/28 11:12:40
待て、その当て身は顎を吹き飛ばし頭部を二倍に膨れ上がらせるぞw
3. 7 爪影 ■2006/10/29 04:08:44
 嗚呼、阿鼻叫喚。
4. 5 Fimeria ■2006/10/30 01:43:18
……これが、博麗の力なのか。
そしてゆかりん、変なもの巻いてんじゃないんだよ。
箱というよりは本を題材にしている気がしたのが残念なところです。
5. フリーレス サカタ ■2006/10/31 03:34:55
面白かったです。テンポもよくて読みやすかったです。
6. 9 2:23am ■2006/10/31 23:17:38
最高です。非常にどうでもいい(褒め言葉)。しかし耳が痛い……。
7. 7 74 ■2006/11/01 19:55:30
なんだかよくわからんが、わからんなりに面白かった
8. 8 nn ■2006/11/01 22:04:45
正直ロリゆかりんの描写が見られただけで満点なのですが、やはりコンペということで自重しました。作品のテンポといいお題のとってつけた感といい非常に良い作品でした。話のオチがもう少し何らかの強さがあったなら本当に申し分のない作品だっただろうと思います。
9. 7 翔菜 ■2006/11/02 04:10:07
箱の中の秘密は地獄への近道……なんてこったい。
10. 8 おやつ ■2006/11/02 06:05:00
藍様ぁ。・゚・(ノД`)・゚・。

慧音先生との会話といい、紫様のマジ泣きといい、素敵な見所満載でございました。
おなかいっぱい。GJ!
11. 7 らくがん屋 ■2006/11/02 16:10:55
テーマ処理は正直どうかと思うけど、コンペ全作を通して二番目に爆笑させてもらったのでこの点数を。
一箇所だけツッコミ。「アッ――!!」は乙女の悲鳴じゃないよ……。ゆかりん汚れてるよ……。
12. 7 椒良徳 ■2006/11/03 10:35:22
お美事にございまする。
13. 7 つくし ■2006/11/04 13:37:45
バーローwww確かにボクササイズはダイエットに有効だとかどうとか。
前半にしっかりタメを作って後半でギャグを開放するお手本のような構成で、楽しめました。
14. 5 雨虎 ■2006/11/06 20:07:19
そして新たなるゆかりん最強伝説が幕を開ける……
新鮮な紫が見られて良かったです。
15. 8 as capable as a NAMELESS ■2006/11/06 22:59:56
ものすごく馬鹿馬鹿しい話を凄い臨場感と迫力で描き出すその手法が良し。
16. 5 反魂 ■2006/11/08 00:50:24
ああん、そこまで予測してるのに慧音無警戒すぎるよ慧音。

ここは仕方ない。贅肉スキマ妖怪には『夢想封印-集-』ではなく、『脂肪吸引-チュウ-』を喰らわせましょう。なんちて。
17. 8 ■2006/11/10 23:59:01
ただ一言に全ての感想は集約出来よう。


…何じゃこりゃあ!w
18. 6 匿名 ■2006/11/12 17:49:08
笑いました。面白かったです。
19. 7 たくじ ■2006/11/12 22:37:44
面白かったです。
藍と慧音のやり取りも、神社での醜い争いもいいです。特に霊夢。ゆかりんを泣かすいじわるっぷりが最高ですね。ねぼすけさんって。
でもそういう中盤のやり取りが面白かっただけに、オチは物足りないなぁと思いました。うまくテーマを使ってるとは思うのですが。
20. 4 藤村うー ■2006/11/13 01:12:34
 ラスト、オチの前のちょっといい話の辺りで終わっておけば……というところが少し。何となく良さげな話で終わりそうになったところを裏切れられたことの痛快さより、勿体ない、という台無し感の方が若干上回ってしまいました。
 謎解きの辺りが少し無理やりな感じがしたのも、もやもやとした一因かもしれません。確かに謎がなければオチはつかなかったのですが、その謎の部分がオチの手前で大体解決したように感じられたので、その後にまた謎解きが来たために何だか面倒くさい複雑だなと思ってしまいました。
 不精でごめんなさい……。
 トリックのある話だと、ある程度複雑なのは仕方のないことなのですけども。
 何より、ギャグであるはずなのにオチの場面がさほど笑えなかった、というところが致命的だったのかもしれません。体重のシーンは素敵なノリだったのですけど。
 それと箱があまり関係ありませんでした。
21. 5 いむぜん ■2006/11/15 20:23:17
序盤の説明が不足気味だから違和感がある。
あと途中に山場があるせいか、オチが弱い。「舌を噛む」は笑いましたが。
ってか鴨川会長か。
22. 9 blankii ■2006/11/16 20:25:02
か・わ・い・い・よ! か・わ・い・い・よ、ゆかりん!! と叫びたくなる……黒いですが。あと、藍様の秘蔵メモリー覗きてぇ。
23. 9 ABYSS ■2006/11/16 20:35:29
正直大爆笑から逃れられませんでしたっていうか奥義とか境界とかはっちゃけすぎですから本当!
さて、素晴らしいコメディでしたがそれゆえテーマがどっかいっちゃったのが惜しいですね。もう少し中心に据えても良かったと思います。
24. 8 しかばね ■2006/11/17 01:02:43
残酷無残。

箱+ingでボクシング……タイトルも含めて、お見事でした。
藍と慧音のその後が心配です。
25. 7 灰次郎 ■2006/11/17 02:10:55
混沌としてる
箱じゃねえとかそういうのはどうでもよくなるくらい
26. 10 ルドルフとトラ猫 ■2006/11/17 16:13:06
これはww
二重三重にやられた、降参だぜ
27. 3 人比良 ■2006/11/17 20:24:40

 反則だと思う反面、それもありだよ、と誰かが囁いた気がしました。
 完敗、むしろ乾杯。
28. 8 目問 ■2006/11/17 21:43:47
 反則だw それはもう色々と。
 強引なところはありますが、文章が丁寧でとにかく面白かったです。
 ドルアーガ懐かしいなあ
29. 6 木村圭 ■2006/11/17 22:46:38
箱アイエヌジィィィィ!!!!?
もうどこから突っ込んだら良いのやら。境界が一番ツボでした。
30. 2 時計屋 ■2006/11/17 22:51:28
妖々夢のゆかりんがやっぱり下膨れにしか見えない件。
それはさておき、こういう話ならば文章はもっと軽いほうがいいと思います。
あと箱があんまり話と関係ないので減点させていただきました。
31. 9 K.M ■2006/11/17 22:54:52
BOXING→BOX→箱とな?
「コ」も恐怖だが、紫様のリバーブロー、恐るべし。
そしてボクササイズの犠牲者は…強く生きてくれ。
32. フリーレス 名無しかと思われ ■2006/11/19 00:12:15
拳と言う箱を作る
それ故にBOXING……いや、バキ読んでてよかった
33. フリーレス ■2006/11/20 20:09:27
箱根細工さま 仰るとおりです。前回よりも突飛さを強化したので、更に読み手を選ぶ作りになりました。 笑えないギャグなどマイナスが付いても仕方なし。その程度の覚悟は持っております。

床間たろひさま その後、主に刃向かった藍様は横合いから飛び出してきた橙に爪で刺されて……アレ? いやいや、藍差は忠義が判ってらっしゃるから大丈夫。 ほんとかな。

爪影さま てーんこのきつね ふさふさ ゆかりのほんみぃたら あーかいけーしょう(化粧)さーいた  むーざんむーざん。

Fimeriaさま 幻想郷の調停者にはまだまだ秘密の力が山ほどあります。 ほんとかな。 素手で殴ると手が荒れるじゃないですか。証拠が残るともいいますが。 あと、ただの本が無駄に存在感ありますね。もっと適当に扱うべきでした。反省。

サカタさま ありがとうございます。テンポですか。これを書いている間は割合アルコールが入っている事が多かったので千鳥足テンポとでも呼ぶべきかも知れません。

2:23amさま テーマもお題の消化もあったもんじゃありません。 どちらかというと、どうでもよさがテーマです。 私も最近腹が気になります。

74さま 散さまですか。違いますね。 理解するほどの内容が無いので、わからない、というのは存外真理に近いのかも知れません。 ほんとかな。

nnさま 改装前のこの話はもう少し過去の部分が長くてですね、泣かせた詫びに霊夢が紫に「あーん」をさせられる、というのがありました。 鼠の書くゆかりんは霊夢が大好きです。どうでもいい事ですか。 オチについては、他でも言い訳していますが、落とし所が判らなくなってしまいああなりました。練り込んでもあんまり変わらない気がします。 タイトルはどうでもいいのですが、これが無いとこの話が成立しない気もしますし。

翔菜さま 今度は名前を間違えませんよ。 慧音が居なければこの地獄には行けないんですよ。なので、紫は最初から慧音も葬るつもりでした。 ゆかりん、おそろしい子……!

おやつさま ああん、八雲一家大好きの貴方にお見せしてもよいものか。 藍さまは……きっと無事でしょう。ゆかりんも戯れに、と言ってます、まさか命までは。はは。 蛇足ですが、作中の『飯綱権現降臨でかっ飛ばし〜』の件はおやつさまの藍様からイメージを頂いております。
慧音先生は完全に被害者。しかも、先生が居ないとこの件は暴けないので、藍様の仕置きには洩れなく慧音先生が付いてきます。合掌。

らくがん屋さま テーマ処理よりも、こんぺ全体の薬味を目指した本作、その意味では失格かも知れませんが。 ゆかりんの悲鳴ですか、最初は「ひぎぃ」だったんでs(スキマ)

椒良徳さま は はこぉ(曖昧)

つくしさま ボクササイズは仕置きとダイエットで一石二鳥です。 というか、このネタで被ったら結婚を申し込みたい所存で望み申した。

雨虎さま マヨヒガ無双です。 新鮮と異端って紙一重だと思います。 ブームの最先端とか、誰も付いてきてないから先端なんじゃん! とか。

as capable as a NAMELESSさま 真面目に不真面目。これしか武器が無いのが悩みの種ですが。 お楽しみいただけたようでなによりです。

反魂さま 慧音先生はしっかり者ですが、時々抜けている方が可愛いと思います。 というか『脂肪吸引-チュウ-』って……なんだろう、物凄い敗北感ですよ。

翼さま なにものでもございませぬ。 深く考えたら負けです。

匿名さま お口に合いましたようで何よりです。

たくじさま ありがとうございます。 慧音先生は基本的に厄介ごとを押し付けられる側(霊夢が積極的に動かないのに対して、慧音先生は頼まれるとなかなか断れないと解釈)です。苦労人同士、藍様以外にも、妖夢やうどんなんかとも話が合うかもしれません。 霊夢はまとわりつく紫を鬱陶しく思いつつも邪険には出来ない、そんな感じで。好きな子には意地悪をし(針)
オチですか。正直な話、鼠の脳みそでは作中の過去部分が限界です。話の展開上、あそこで終わらせられないので、オチが負けるのは自明の理です。つまるところ、この話はオチが弱いという構造上の欠陥を抱えたままに作り上げられた話なわけです。ああん。

藤村うーさま 故あっていい話で終わらせるつもりは微塵も無かったので、終盤は作者のエゴで書かれていることになります。 オチについては他でも書いていますが、話の中頃に最高点が来る構造になった時点で敗北確定です。 ジェットコースターって終わりは案外しみったれてるじゃないですか、そんな感じです。 テーマの消化については「ボクシングの語源が拳で箱をつくる」という説明が言い訳がましかったのでバッサリ斬りました。当然の評価です。
あと、結果発表SSを拝見させて頂きました、ありがとうございます。

いむぜんさま 序盤、よく読むと矛盾があります。 藍様が家の事を把握している割に、一ヶ月近く箱の存在に気が付いていません。 納屋の掃除がそんなに頻繁でない、というのが言い訳なんですが、その辺を書いていないのでアウトです。 「舌を噛む」は知人の言葉なので純粋に鼠の脳製のギャグではないのが悔しいところです。 あと、正解、ヤング鴨川です。 藍様の肋骨が心配です。

Blankiiさま 加齢臭じゃねぇ! 少女臭だっつってんだろ! ダラズ!! みたいな。 黒さは乙女心の落とす影です。どれだけ永く生きても美しくありたい、そんなかわいいゆかりんのハートがちょっと弾けちゃったのがこの話です。 藍様のメモリーには水の苦手な橙をお風呂に入れるシーンとk(役小角)

ABYSSさま テーマなんて箱ってどっかに入ってれ(スキマ) それはさておき。 きっと浮くであろうギャグ系を選んだ手前、やはりある程度はっちゃけないといけません。 慧音先生が割を食ってますが。

しかばねさま むーざんむーざん さーとの守護者ずんずん ゆかりのれきしのぞいたら あーかい くちべにさーいた むーざんむーざん  タイトルはオチと合致しているので、勘のいい人なら見ただけでオチまで見抜かれるのでは、とヒヤヒヤしてました。

灰次郎さあ ま、細かい事気にすんな! うそです。テーマは辛うじてタイトルで使ってますが、果てしなく暴投気味の話です。むしろデッドボール。

ルドルフとトラ猫さま いっそ四重まで狙いますか。ゆかりんも居ますし。やられた、というのは最高の賛辞と判じます。ありがとうごさいました。

人比良さま 反則です。テーマと向かい合う事を放棄したところからのスタートですから。 畏れながら、12本も書いている貴方も十分反則だと思いますです。 それだけあってなお、ネタが被らなかったのが幸いかも知れませんが。

目問さま 反則上等。というか「手柄を立てちまえばこっちのもんよ!」状態ですか。 もう初めに「夢想封印―測―」ありきの作りなので、いかにそこまでの道を繋ぐかが全てでした。辛うじて繋がった程度ですが。 ところでギルってば結構分厚い本を何冊も持って塔を昇ってたんですね。

木村圭さま 読んでいる人に疑問を持たせても構わず走り抜ける。そんな感じです。イカサマ魔球を立て続けに3つ投げて、はいアウト。みたいな。 境界操作は……実はリングこそがこの話の箱だったんだよ! な、(略)

時計屋さま 頭の悪い話を重苦しく書く。これしか出来ないのでこうなり申した。 前回は軽めだった反動が出たのかも知れませんけど。 箱は1:本の入っていた箱。 2:BOXING(拳で箱を作る) 3:リング 4:一応この箱が二重底の宝箱(中身はスカ) というのが。まあ、見えなければ無いのと一緒ですが。

K.Mさま ゆかりんは、リバーブロー、ガゼルパンチ、デンプシーと繋ぎますが、藍様が土壇場で堪えてデンプシー破りを仕掛けます。 しかし、それも破り破りによってスカされ、最後は虎拳でフィニッシュです。 なんだこれ。

名無しかと思われさま 大 正 解。 あなたスレ337のですね?
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