開けたら価値が下がる箱。

作品集: 最新 投稿日時: 2006/10/28 07:24:08 更新日時: 2006/10/30 22:24:08 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00


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「ねぇ鈴仙、ちょっと良い?」
「何、てゐ」
「開けたら価値が下がる箱とかあったら、鈴仙は信じる?」
「開けたら価値が下がる箱? どうだろう……それがどんな箱かにもよると思うけど」
「いやね、実はここにあるのよ」
 そう言って因幡・てゐが取り出したのは、何の変哲も無い小さな箱だった。てゐはその箱を鈴仙・優曇華院・イナバに手渡すと、
「ほら、この前屋敷の隣にある蔵の大掃除をしたでしょ? あの時に見付けて、こっそり持ち帰ってたのよね」
「てゐ……。そういうのは何があるか解らないから、すぐに師匠に渡すように言ってあったでしょ?」
 少々呆れながら言う鈴仙に、てゐは楽しそうに笑い、
「いやー、だって開けたら価値が下がっちゃうような箱よ? これは何か商売の臭いが――」
「馬鹿言わないの」
「あいたッ!」
 てゐの頭を軽く叩くと、鈴仙は受け取った箱をまじまじと観察してみた。
 箱の大きさは手の平よりも少し大きい程度で、正方形。漆塗りが施されているらしく、その表面には黒い艶があり、けれど蓋が開かぬように紙で封がなされていた。そしてその紙には何か文字が書かれており……
「『開けたら価値が下がる箱』。……ねぇてゐ、こう、もう少し捻りは無かったの?」
「ちょ、違ッ!! それ書いたの私じゃないから!」
「誰も字の事は聞いていないけど」
「……ッ」
 鈴仙のツッコミにてゐが一瞬言葉につまり、しかし彼女は動揺を見せる事無く、
「……ともかく、信じる? 信じない?」
「そうねぇ……」
 聞いてくるてゐに苦笑し、箱を耳元で軽く振ってみる。何も入っていないのか、それともぎっしりと何かが詰まっているのか、箱の中から音は聞こえてこなかった。
 だが、何か物が入っているとするなら、この箱は軽すぎる。恐らく中身は空なのだろう。
 鈴仙は箱を両手で包むように持つと、
「んー、まぁ信じてみようかしら。何が入っているのか解らない以上、この箱に価値があるのは確かかもしれないもの」
「そう? なら、その箱は鈴仙にあげるわ」
「え、くれるの?」
 商売の臭いはどこにいったのだろうか。
 聞き返した鈴仙に、てゐは笑みを浮かべ、
「うん。そもそも、私が『開けたら価値が下がる箱』なんて物を売ろうとしても、最近じゃ疑うヤツの方が多いだろうからね。初めから鈴仙にあげようと思ってたのよ」
「そうだったの……。ごめんね、思わず叩いちゃったりして」
「良いの良いの。報告しないでガメた私が悪いんだし。……それじゃ、私は部屋に戻るから。その箱、どうするのかは鈴仙の自由だよ」
 そう言うと、さっと踵を返しててゐが駆けていく。
「あ、てゐ……。行っちゃったか……」
 止める間も無く、てゐの姿は薄暗い廊下の先へと消えていた。
 箱を持った鈴仙一人が廊下に取り残され、一体どうしようかと思案する。 
「信じるとは言ったものの……」
 この箱が出てきたという蔵は、鈴仙がこの永遠亭に逃れて来た時からあったかなり古いものだ。輝夜の力のお蔭で永遠亭共々風化せずに存在しているが……あまり頻繁に使われてもいない為、その手入れが疎かになっている場所でもあった。
 中には壊れた家具や日用品、更には実験ミスで生まれた産物や、数多くの月の道具までもが押し込まれている始末。つまり、この箱が本当に『開けたら価値が下がる箱』である可能性はゼロでは無いのだ。
 この紙にした所で、消えかけていた文字をてゐが書き足しただけの可能性もある。 
「……取り敢えず、師匠に見せてみよう」
 小さく呟き、鈴仙は長い廊下を歩き始めた。

……

 長い廊下と沢山の部屋を持つ永遠亭といえど、毎日そこで暮らしていれば、どこにどの部屋があるかはおのずと解ってくる。
 暫く歩き、鈴仙は通い慣れた永琳の実験室の前にまでやって来ると、
「師匠、鈴仙です。宜しいですか?」
「ええ、入って構わないわよ」
「失礼します」
 そう一言断ってから襖を開け、
「師匠にちょっと聞きたい事が……って、姫もいらしたんですか」
 何やら作業をしている八意・永琳の隣には、その作業を見守る蓬莱山・輝夜の姿もあった。
 鈴仙は後ろ手に襖を閉め、部屋の中へと入りながら、
「珍しいですね。姫が師匠の実験室に来るなんて」
「暇だったから永琳の実験を見学していたのよ」
「そうでしたか」
 頷き、鈴仙も身近な椅子へと腰掛けた。純日本家屋であるこの永遠亭の中で、唯一実験器具や薬品棚が並んでいるこの部屋は少し変だと思うが口にはしない。
 と、そんな鈴仙に作業途中の永琳が問い掛けてきた。
「私に聞きたい事というのは、何かしら?」
「あ、そうでしたそうでした。あのですね、さっきてゐからこんな物を貰ったんですが……」
 すっと手を差し出してきた永琳に箱を手渡し、鈴仙は説明を続ける。
「てゐが言うには、それは開けたら価値が下がる箱、なんだそうです。この前蔵を掃除した時、見つけてきたんだとか」
「そう……。確かに『開けたら価値が下がる箱』って書いてあるわね」
 左手でフラスコを振りながら、永琳が箱へと視線を落とす。そのまま軽く箱を振ったりした後、
「でも、こんな箱を蔵に仕舞った事があったかしら。中に物が入っているようには思えないし……」
 振っていたフラスコの中身を試験管の中へと移し入れながら、永琳が小さく首を捻る。
 すると、箱を興味深げに眺めていた輝夜が口を開いた。
「永琳、ちょっと貸してみて」
「解りました。どうぞ、姫」
 永琳から箱を受け取った輝夜は、それをじっくりと眺め……
「イナバ。これは蔵に入っていたのよね?」
「はい、そうみたいですが……」
「なら、これは私が貰っても良いかしら?」
 突然の輝夜の言葉に、鈴仙は一瞬返す言葉を失った。だが、姫がその箱を欲しがるという事は、
「……やっぱり、その箱には何か価値が?」
 鈴仙の問い掛けに、しかし輝夜は否定するように小さく首を振ると、
「多分、価値は無いわ。この箱自体は古い物だけど、漆の塗りやこの紙は比較的最近のものだもの」
「そうなんですか……。でも、どうしてそんな事が解るんです?」
「長い時を生きてきたからね。どのくらいの年月が経てば、どのくらい物が変化するかぐらい嫌でも解ってくるわ。……イナバもそうじゃない?」
 輝夜の問い掛けに、思わず鈴仙は視線を逸らした。鈴仙自身もう長い間この永遠亭で暮らしているが、そういった事を考えた事は無かったからだ。
「いやその……私は、あまり……。気にした事も無かったので……」
 そう答えた鈴仙に、輝夜は「そうだったの」と微笑み、
「だったら、今日から少し世界の見方を変えてみると良いわ。恐らくイナバが思っている以上に、世界は変化しているから」
「気を付けてみます。……でも、それならばどうしてその箱を?」
 まだその理由が解らない。そう思っての問いに、輝夜は楽しそうな微笑みを浮かべ、
「ちょっとした暇つぶしを思いついたのよ」
 

1


 部屋から出て行く鈴仙の姿を見送った後、永琳が口を開いた。
「……ウドンゲ、残念そうにしていましたね」
「そうね。少し悪い事をしてしまったわ。……永琳、多分似たような箱が蔵にまだあるだろうから、あとで見つけておいて頂戴。同じように細工をするのも忘れずにね」
「解りました。しかし姫、どうしてそのような事がお解かりに?」
 疑問符を持って聞いてくる永琳に輝夜は微笑み、
「元々この屋敷とあの蔵は、私達がここにやってくる以前からあったものだもの。蔵に入っていたという事は、前の持ち主が使っていた物という事になる。それなら、似たような物がまだあってもおかしくは無いでしょう? ……まぁ、無い可能性もあるけれど」
 恐らく無い可能性の方が高いが、その時はその時だ。可哀想だが、鈴仙には諦めてもらうしかない。
 そう思っての輝夜の言葉に永琳は頷き、 
「確かにそうですね。では、後で探しておきます」
「頼んだわ。それじゃ、私は妹紅の所に行って来るから」
 椅子から立ち上がりながら言い、恐らく同じように暇を持て余しているだろう藤原・妹紅の事を考え――刹那、永遠亭を揺らす爆音が外から響いてきた。
「?! 今の音は……?!」
 作業していた手を止め、辺りを窺うように視線を鋭くする永琳へと、しかし輝夜は廊下へと歩き出しながら、
「多分妹紅よ。ちょっと行って殺してくるわ」
 そう簡単に告げて、再度響いて来た爆音を聞きながら廊下へと出た。
 すると玄関方面からは何やら悲鳴が聞こえてきており、各所から因幡達が迎撃の為に立ち向かっているだろう事が予想出来た。
 少々急ぎながら廊下を飛び、見えて来た玄関を越える。すると、そこには予想通り炎を背負った一人の少女が居た。
 輝夜は外へと出ている因幡全員を屋敷の中へと下がらせると、箱を手に微笑みを浮かべ、
「ごきげんよう、妹紅」
「はいはいごきげんよう」
 律儀に言葉を返した藤原・妹紅へ対し、輝夜は箱の存在をチラつかせながら、
「妹紅から乗り込んで来るなんて珍しいわね」
「たまにはこういうのも良いと思ってね。……っていうか、その箱は何」
「ああ、これ?」
 妹紅があっさり喰い付いた事に内心笑みを浮かべつつ、輝夜は箱をその視線から隠すように胸に抱き、
「これはとてもとても大切な箱なのよ。だから肌身離さず持っているの。……でも、妹紅にだったらこれをあげても良いわ。まぁ、私に勝ったら、だけど」
「いらない」
「そんな事言わずに」
 そして輝夜は、箱へと愛しげな視線を落とし、
「ほらここに、藤原・不比――」
「ッ!!」
 その言葉を言い切る前に、妹紅が表情を変え、一気に輝夜へと向かい飛び掛ってきた。直線的なその動きを、輝夜は優雅に回避しながら、
「あら、いらないのかしら? なら、これは私が大切に大切に持っているわね」
「輝夜ぁぁぁ!!」
 輝夜の言葉に嘘があるとは知らず、激昂した妹紅が叫びを上げる。彼女にとって、やはり不比等の名前は特別なものがあるのだろう。 
 怒りに染まった瞳を向けてくる妹紅へと微笑みながら、輝夜は弾幕を展開させた。

 
2


 二時間半程に及ぶ戦闘の末、今回勝利を収めたのは妹紅の方だった。
 あの輝夜の口から父親の名前が出た事で、思っていた以上に無茶をしてしまったが、結果的に押し切る事が出来たようだ。
「さてと……」
 息を整え、千切り落とした輝夜の手から箱を無理矢理取り上げると、妹紅はそれに視線を落とした。
 しかし、そこに書かれていたのは、
「……『開けたら価値が下がる箱』? なんだ、これ」
 箱のどこを見ても、父親の名前など記されていない。
 呆然と呟いた妹紅に返って来たのは、いつの間にか復活した輝夜の声だった。
「残念、嘘よ」
「う、そ?」
「そう、嘘。それはただの箱よ」
「こん、の……!!」
 腹いせにその憎らしい頭を吹き飛ばそうと弾幕を飛ばすも、あっさりと回避されてしまった。思った以上に、妹紅自身も疲弊しているらしい。
 そしてそれを自覚した途端、一気に疲れが襲い掛かって来た。
「……帰る」
 そう小さく呟くと、妹紅は輝夜と目を合わせる事無く歩き出した。
 と、その背後から、
「その箱、大切にしてね」
 そんな声が聞こえた気がするが、多分気のせいだろう。そう思い込んで、妹紅は永遠亭を後にした。 

……

 疲れた体を引き摺って家へと辿り着くと、妹紅はそのまま畳の上に横になった。
 同時に手に持った箱を部屋の中へと放り投げようとし……寝転がった体勢で、再度箱を見てみる事にした。
「……」
 見た目はただの箱で、封をしてある紙には『開けたら価値が下がる箱』と書いてあるだけ。しかも先程の戦闘で汚れ、少し文字が見難くなってしまっていた。それを確認しつつ、今度は耳元で振ってみるが……音はしない。
「……ただの箱、か」
 だが、何と無く封を開ける気にはならなかった。例え嘘だとしても、何の理由も無しに、あの輝夜が藤原・不比等の名前を出すとは思わなかったからだ。
 勝手な思い込みかもしれないが、少し心に引っ掛かってしまっていた。
 それに輝夜の事だ。箱を開けたら中から変な物が飛び出してくる可能性もある。何しろ彼女の部下には永琳という天才が居るのだから。
「まぁ、それは考え過ぎか。でも、どうしようかな……」
 と、思い悩み出した所で、玄関から声が飛んできた。
「妹紅ー? 居るか?」
「あー、開いてるからー」
 寝転がったまま声を上げると、
「失礼するぞ」
 そう律儀に断ってから、一人の少女がやって来た。同時に妹紅はゆっくりと体を起こすと、
「どしたの、慧音」
「竹林から煙が上がっているのを見た者が居てな。妹紅かもしれないと思って、様子を見に来たんだ」
「そうだったんだ。ありがとね」
「いや、無事ならそれで良い。……だが、その様子を見ると、今日も一戦交えてきたようだな」
「え……?」
 言われるがまま、上白沢・慧音が見ている場所へと視線を落とした。
 慧音が見ていたのは妹紅の服で、見ればそこは泥や土で汚れ、更には弾幕で破けて一部ぼろぼろになっていた。箱と疲れに気を取られていたせいか、すっかり忘れてしまっていたらしい。
「あー……。ちょっと着替えてくるね」
「ああ、解った。その間、私はお茶の準備をしていよう」
 慧音は小さく苦笑すると、棚から急須と茶筒を取り出し始めた。
「ごめん、お願い」
 その姿に小さく誤り、着替えを済ます為に立ち上がる。
 取り敢えずリボンを解き、箪笥のある部屋まで向かうと、肩紐を外してズボンを脱いだ。そしてシャツのボタンを上から全て外すと、汚れが床に付かないようひっくり返しながら脱いでいく。
 そして箪笥から替えの服を出し、さっと着替えを済ますと、汚れた服を抱えて風呂場へと。そこにある洗濯物用の籠へと服を放り込み、
「……無駄に洗濯物を増やしちゃったな……」
 溜め息と共に呟く。
 毎度毎度の事とはいえ、もう少し考えて戦った方が良いのかもしれない。そんな事を考えながら、妹紅は部屋へと戻った。
 するとそこにはもうお茶の準備が出来ており、後は鉄瓶のお湯が沸くのを待つばかりとなっていた。
 それに微笑みつつ、妹紅は慧音の正面へと腰掛けながら、 
「火力、足そうか?」
「いや、大丈夫だ。……というか、火鉢の火力を上げるのはどうかと思うぞ?」
「早く沸騰した方が良い時もあるから」
「そういうものか……?」
 少し眉を寄せ、困ったように慧音が言う。そして彼女は床に転がしていた箱へと視線を向けると、
「まぁ良い。……時に妹紅。さっきから気になっていたんだが、その箱は何なんだ?」
「ああ、これ?」
 妹紅は苦笑しながらそれを手に取り、
「輝夜から奪ったものなんだけど……」
 もう一度箱を眺めつつ、考える。
 そう、例えばこれが本当に父親に関係するものだったとして……今更それを手に入れて、一体何があるというのだろうか。
 過ぎ去ってしまった過去には、どう足掻いたって戻る事は出来ないのに。
 そう、例えばこれが蓬莱の玉の枝だったして……輝夜からそれを奪い取った所で、一体何があるというのだろうか。
 唯一の本物を手に入れた所で、父親の辱は消えないというのに。
「……」
 つまり……箱が何であろうと、今の妹紅には不必要なものでしかない。
 それを考えたら、妹紅の中で何かが吹っ切れた。
「……慧音にあげるよ。っていうか、捨てといて」
「なんだ、捨てて良いものなのか?」
 確認するように聞く慧音の言葉に、妹紅はしっかりと頷き返すと、
「うん、捨てて大丈夫。例え中身がなんであれ、私には必要の無いものだから。
 ……あ、もしかしたら危険かもしれないから、開ける時には気を付けてね」


3


 妹紅から箱を受け取った慧音は、里への道を歩きながら考えていた。
 捨てて良いとは言われたものの、ただ捨てるのも勿体無い。箱に付いた汚れを落とせば、再利用する事も出来るし……もし何か危険があったとしても、満月の夜に開ければ大丈夫だろう
 ……だが、問題は、
「この『開けたら価値が下がる箱』、という一文か」
 恐らく悪戯か何かなのだろうが、いざ開けようと思うと躊躇ってしまうものだ。世の中にはこういったものでも簡単に開けてしまう者も居るのだろうが、しかし慧音は簡単に開けられないタイプだった。
 封となっている紙と睨めっこをしつつ歩を進め……ふと、体が誰かにぶつかってしまった。
「っと、すまない」
 慧音は咄嗟に視線を上げ、ぶつかった相手へと頭を下げ――
「別に良いわよ。……って、どうしたの?」
 目の前には、この封など簡単に開けてしまうだろうメイドが居た。
 そして慧音は、どうして十六夜・咲夜がこんな所に居るのだろうかと考えて……気付けば里の中心近くにまで戻って来ていた事に気が付いた。どうやら箱の事に意識を向け過ぎていたらしい。
 注意散漫だな、と思いながら慧音は咲夜へと視線を戻すと、
「いや、なんでもない。それより、お前こそどうしたんだ?」
「ちょっと買い物にね。朝食の時間までに用意は済ませないとだから」
「朝食……? ああ、お前の主は夜型だったな」
「そういう事。それじゃ、私は行くわね」
「……いや、ちょっと待ってくれ」
「ん?」
 歩き出そうとした咲夜を呼び止め、慧音は持っていた箱を咲夜へと見えるように持つと、
「さっき妹紅から捨てて良いと言われて貰ってきた箱なんだが……ただ捨てるのも勿体無いと思ってな。少し汚れてしまっているが、使う気は無いか?」
「……ちょっと貸してみて」
 言われるがままに箱を手渡し、慧音は説明を続ける。
「妹紅が言うには、輝夜から奪ってきたものらしい」
「輝夜からね……。んー……作りもしっかりしているし、悪いものじゃあ無いみたいね」
「どうする? 無理なら、これから里の者に聞いて回ろうと思うんだが」
 慧音の問いに、咲夜は暫し悩んでから、
「……頂こうかしら。このくらいの箱、丁度探していたところでもあったから。……でも」
「でも?」
「この『価値が下がる箱』っていうのは何なの?」
 怪訝そうに聞いてくる咲夜に慧音は苦笑し、
「初めからそれは付いていたらしい。妹紅にもその詳細は解らないそうだ。まぁ、出所が輝夜だから、危険がある可能性もあるんだが……」
「そうなの。……でも、中身が入っている音もしないし……これは多分、てゐの悪戯っぽいわね」
「あー……確かに、そうかもしれん。あの兎なら、こういった悪戯を思い付いてもおかしく無いからな」
 そう答えた途端、封を破る事に対する躊躇いが少し減って、慧音は自身の心情の変化に思わず苦笑した。
 そんな慧音に対し、咲夜は「そうでしょう?」と微笑んで、
「兎も角、これは貰っておくわね」
「ああ、有効利用してくれ。そうすれば、その箱も喜ぶだろうからな」


4


 太陽が山の背に沈み、月が世界を照らし始めた頃。
 紅魔館正門へと咲夜が降り立つと、紅・美鈴がこちらへとやって来た。 
「おかえりなさい、咲夜さん」
「ただいま、美鈴。……そうそう、丁度良い箱が見つかったわ」
 立ち止まり、咲夜は持参していた買い物袋の中に手を入れながら告げた。
 すると美鈴は嬉しそうに、
「本当ですか? じゃあ、これでもう調味料の瓶がバラバラにならなくて済みますね」
「ええ。それで……これが、その箱なんだけど」
 先程慧音に貰ったばかりの箱を取り出し、咲夜は美鈴へと手渡した。
「どう? ぴったりだと思うんだけど」
「確かに、ぴったりっぽいです。……でも、何か封がしてありますね。えーっと――」
 暗い中、妖怪である美鈴は灯りが無くても文字ぐらい読む事が出来る。けれど書いてあった字は少し汚れていて読み難くなっていた為、咲夜がその内容を告げようとした瞬間、
「何なにナニー?!」
 大きな声と共に、紅魔館玄関から飛び出してくる紅い影があった。
 影は凄まじい勢いで咲夜達の下へと突き進み、そして急停止。天真爛漫な表情を持ったその少女は、楽しそうに微笑んで、
「何かあったの? ていうか咲夜にめーりん、何その箱?」
 突如現れたフランドール・スカーレットに一瞬驚きつつも、咲夜は微笑みを浮かべ、
「食堂で使う調味料入れにしようと思いまして」
「咲夜さんが持って来てくれたのを、私が見ていたんです」
 そう言って美鈴がフランドールへと箱を手渡した。
 紅い悪魔第二号は興味深げにそれを眺め、
「ふーん……。でもこれ、『開けたら価値が下がる箱』って書いてあるよ?」
「本当ですか? ちょっと見せて下さい」
 そして美鈴がブランドールから箱を受け取り、もう一度視線を落とした。そして、
「えっと……確かに書いてありますね。……咲夜さん、どうするんです?」
 少し不安げに聞いてくる美鈴に、咲夜は微笑み、
「大丈夫よ。元々輝夜が持っていた物らしいし……出所が永遠亭なら、てゐの悪戯だろうから」
「そうでしたか」
「だったらコレ、開けて良いんでしょ?」
 身を乗り出して聞いてくるフランドールに咲夜は頷き、
「ええ、構いませんよ」
「やった。めーりん、貸してー!」
 美鈴から箱を受け取ると、フランドールはその小さな手をいっぱいに使って箱の蓋と底を掴み、
「おーぷーん!」
 刹那、
「ダメ」
「あー!!」
 小さな否定の言葉と共に、フランドールの手から箱が消えていた。
 そしてその声の主は、咲夜のすぐ隣へと音も無く降り立つと、
「フラン。勝手な事はしちゃダメよ」
「ぶー。咲夜が良いって言ったもん」
「それでもダメ。私が許可を出していないもの」
 そう言って、レミリア・スカーレットは咲夜へと視線を向け、
「咲夜、これの出所を正確に教えなさい」
「は、はい。先程里で慧音から貰って来たのですが……慧音が言うには、妹紅が輝夜から奪ってきたものだと」
「つまり、これは蓬莱山が持っていたのね?」
「恐らくは……」
 断言出来ないが、あの慧音が嘘を吐く事は無いだろう。
 咲夜の説明にレミリアは少し考え、
「……この箱は私が預かるわ。良いわね?」
「えー、私が開けるのー!」
 両手を上げてむきー、と主張するフランドールにレミリアは小さく首を振り、
「ダーメ。輝夜が妹紅の元に持って来たとなると、開けた瞬間何かが起こる可能性は否定出来ないもの」
「私なら平気!」
 胸を張り両手を腰に、大丈夫だと主張するフランドールにレミリアは再度首を振り、
「もしもこの中に、永琳が作った薬が入っているような事があれば、いくらフランでも危ないわ。だから、今回は諦めて」
「うー……解った……」
 妹を心配する姉の気持ちが通じたのか、珍しくフランドールが引き下がった。レミリアはそんなフランドールの頭をそっと撫で、
「取り敢えず、パチェと一緒に調べてみるわ。朝食は……その後にお願いね」
 そう告げると、レミリアはフランドールの手を取って紅魔館の中へと戻っていった。


5


 フランドールを部屋へと連れ戻した後、レミリアはパチュリー・ノーレッジの元へとやって来ていた。
「パチェ、居ない訳ないと思うけど、居る?」
 膨大な蔵書量を誇るヴアル魔法図書館の外れでそう声を上げると、
「何かしらレミィ。私はいつでもここに居るけれど」
 案外近くから返事が返って来た。
 声の方へと歩いて行くと、新しい魔道書を書いていたらしいパチュリーが机に向かって作業をしていた。
 レミリアはその正面にある椅子へと腰掛けつつ、机の上に箱を置き、
「箱なのだけれど」
 分厚い本に筆を走らせつつ、パチュリーはちらりと箱へと視線を移し、
「箱みたいね。それがどうかしたの?」
「咲夜が持ってきたのよ。何でも輝夜が妹紅と殺り合う時に持ってきた物らしいの」
「それで?」
「そこで、これがただの箱なのか、それとも輝夜が妹紅用に用意したアレなブツなのか、確かめる方法が無いかパチェに聞きに来たのよ」
「そういう事ね」
 そこで初めて筆を止めると、パチュリーはレミリアへと視線を上げ、
「取り敢えず、箱を貸してくれる?」
「ん。……まぁ、見た目はただの箱なんだけどねぇ」
 パチュリーに箱を手渡し、椅子の背もたれに体重を預けながらレミリアは呟いた。
 対するパチュリーは箱を様々な角度から注視しつつ、
「確かに、見た所はただの箱ね。……ん? 『開けたら価値が下がる箱』? 誰かの悪戯かしら。それとも本当にそうなのかしら」
「そこも謎な所ね。まぁ、輝夜の所にはあの白兎が居るし、悪戯な可能性も捨てきれないけれど」
「だけど、悪戯じゃ無い可能性もあるんだろ? そしたら迂闊に封を切らない方が良いんじゃないか?」
「そうね。でも、まずはこれの中身を知る事が重要だから、どの道封は開けないといけないわ。それに、私の魔法で封を元に戻す事は不可能じゃないし」
「でも、何か起こったら後の祭りだぜ? もしかしたら封自体に魔法が掛かってる場合もあるだろうし」
「確かに、その可能性もあったわね。……で、どうして魔理沙がここに居るのかしら?」
 何気なくそして唐突に会話に加わっていた白黒の魔法使い――霧雨・魔理沙へと視線を向けながらレミリアが問い掛ける。
 すると魔理沙は少し考え、
「あー? 今日もちゃんと玄関からやって来たぜ?」
 彼女は、私は悪い事はしてない、といった風に答えた。
 レミリアはそんな魔理沙に小さく溜め息を吐くと、
「そういう話じゃない」
「そうよ。……って、魔理沙。どうしてそんなに嬉しそうに箱を手に持っているのかしら?」
 その言葉通り、いつの間にかパチュリーの手から、魔理沙の手へと箱が移動していた。
 箱を手の中で遊ばせる魔理沙は、とてもとても嬉しそうに、
「そりゃあ……なぁ? この箱が危険な物かどうかは私でも調べられるから、かな?」
「「……」」
 猛烈に嫌な予感がする。
 その瞬間、レミリアは運命予測をするという、一番簡単で一番重要な事を行っていなかった自分自身を呪った。
 つまり、
「貰っていくぜ!!」
「ッ! 待て!!」
 一瞬で箒に跨り空へと飛んだ魔理沙を追いかけるように、レミリアは椅子を倒しながら思い切り跳躍。本棚の一つを足場にして方向転換を行い、一気にその背中を追いかける。
 だが、白黒の魔法使いは予想外の逃げ方をした。
 彼女は懐から一枚のスペルカードを取り出したと思うと、
「――ブレイジングスター」
 本来こちらへと突撃する為に使っているスペルカードを、よりにもよって前方への加速の為に使用してきたのだ。
「な……!!」
 彗星の加速を持った魔理沙はもう止まらない。紅魔館の壁に大きな穴を開け、そのまま夜の闇へとすっ飛んでいった。


6


 結局、一晩掛けても箱の中身が何なのかは解らなかった。
 だが、取り敢えず危険な物では無いだろう事は解った為、魔理沙は箱を手に香霖堂へと足を運んでいた。もしこの箱が何かのアイテムだった場合、その名称と用途だけは解る店主が居るからだ。
 古ぼけた香霖堂の扉を開き、店の奥へと進みながら、
「よう香霖。ちょっと頼みたい事が……って、今日はアリスも居たのか」
 何かを買うつもりなのか、アリス・マーガトロイドは並べられた商品を前に思案顔を浮かべていた。
 そして魔理沙に気付いた森近・霖之助が顔を上げ、
「いらっしゃい魔理沙。ちょっと待っていてくれるかい?」
 と、そう霖之助が魔理沙へと告げたところで、
「……良し決めた。この糸にするわ」
「ありがとうございます」
 なにやら決まったのか、霖之助はアリスが指差した糸を和紙で包み始めた。
 魔理沙はそれを眺めつつ、いつものように商品へと腰掛けながら、
「アリス、糸なんて買ったのか?」
「ええ、そうよ。人形に使う糸が切れてしまったから、今日はそれを買いに来たの」
 料金を払い、受け取った商品を傍らに浮かべる人形に持たせながらアリスが答える。
 魔理沙はそれに頷きつつ、
「でも、糸なら里にでも売ってないか?」
「里のでも良いんだけど、やっぱり多少なりとも曰く付きの物の方が魔力を持ちやすいのよ。そしてそういった糸で作った人形の方が、強い力を持ちやすいの」
「そういうもんなのか」
「そういうものなのよ」
 人形遣いには独自のポリシーがあるらしい。
 だからこそ魔法使いという存在は反発しやすいのだが……それはさて置き、魔理沙はスカートの中から箱を取り出し、
「……で、香霖。ちょっと頼みたい事があるんだが」
「なんだい?」
「この箱が何かのアイテムなのかどうか、確かめて欲しいんだ」
 言って、魔理沙は机の上へと箱を置いた。
 霖之助とアリスはそれを同時に眺め、
「……魔理沙。私にはただの箱に見えるんだけど」
「僕にもそう見えるね」
「二人とも奇遇だな。私もただの箱に見える。けど、これの持ち主は輝夜だったらしくて、しかも箱には封がしてあるんだよ。それと……」
 魔理沙の言葉を聞きながら箱を手に取った霖之助が、その封に施されている文字に気付き、
「『開けたら価値が下がる箱』?」
 霖之助の言葉に、魔理沙は眉を寄せながら頷き、
「そういう事だ。取り敢えず昨日一晩それを調べてみたんだが、危険な物じゃないだろう事は解った。となると後はその紙に書いてある事が本当か嘘かが問題になるんだが……もし本当に開けたら価値が下がる箱なら、開けた瞬間に箱に変化が起こる可能性がある。となると、その箱が何らかのアイテムである可能性があるかもしれないと思ってな」
「つまり、これがどんなアイテムなのかを僕に判断しろという事か」
「そういう事だ。話が早くて助かるぜ」
 笑みと共に言うと、霖之助は小さく溜め息を吐き……しかし、そっと箱を持ち直した。
 そしてその外見を確かめるように、ゆっくりと箱の全面に目を通し……
「――残念だけど、これはただの箱みたいだ。蓋を開けて物を仕舞う――それ以外の用途を持っていないよ」
「そうか……。じゃあ、今の所これは百か」
「百?」
 魔理沙の言葉に、霖之助が首を傾げた。解らないのはアリスも同じだったようで、
「一体どういう事?」
 そう聞いてくるアリスに、魔理沙は指を一本立て、
「今この箱には百の価値がある訳だ。でも、開けてしまったらゼロになる。だから、百かゼロ」
「そういう事ね。……そして、開けなければ二百になっていく可能性もある訳ね」
「そういう事だ。だけど、多分これは悪戯で確定だろうな。重さから考えるに中身が入ってるとも思えないし、この封自体も魔法で加工された訳じゃない、ただの糊付け――」
 と、魔理沙が説明を続けていた時、香霖堂に新たなお客がやって来た。
 静かに扉を開けたその人物は、丁寧に扉を閉めた後、
「あのー、居らっしゃいますでしょうか?」
 聞こえて来た声の方へ、説明を続けながら魔理沙は視線を向け……
「――だから……って、妖夢じゃないか。どうしたんだ?」
 そこに居た少女――魂魄・妖夢へと問い掛けた。
 妖夢は店内へと歩を進めつつ、
「ちょっと欲しいものがあって」
「だそうだ香霖。今日は大繁盛だな」
「魔理沙、少し黙っててくれ。……それで、今日は一体何をお探しで?」
「あのですね、少し大きめの花瓶を頂きたいのですが……」
「花瓶か……。ちょっと待っていて下さい」
 そう言うと、霖之助が店の奥へと引っ込んで行く。
 何気なくその姿を眺めていると、アリスが問い掛けてきた。
「で、その箱はどうするの?」
「んー、どうしたもんかなぁ……」
「……箱?」
 疑問符を浮かべて聞いてくる妖夢に、魔理沙は箱を手に取りながら、
「これの事だ。今、百にするかゼロにするかを悩んでたんだよ」
「百か、ゼロ?」
「……魔理沙、それじゃ伝わるものも伝わらないでしょ。……えっとね、その箱には……」
 アリスが説明を行い、それでやっと合点がいったのだろう妖夢は小さく頷き、
「そういう事ね。……じゃあ、魔理沙はその箱をどうするつもりなの?」
「まぁ、私は何でも蒐集するからな。このまま家に持ち帰る」
 だが、そんな魔理沙の言葉に、アリスは少し皮肉げに、
「でも、使わないんでしょう?」
「それを言うなよ。でも確かに……前に香霖に言った事もあったけど、私は集める事が目的だからな。使わない事は多い」
 そんな魔理沙の言葉に、妖夢は少し考えた後、
「……なら、私に貰える? 小物入れにでもして使おうと思うから」
「別に構わんが……開けたら価値が下がるぜ?」
「そんな事は無いわ。道具は使ってこそ、本当の価値が出る物だと思うから」


7 


 購入してきた花瓶に早速花を活け、和室の一つへと運び込む。今まで何か淋しかったこの部屋も、これで少しは華やかになるだろう。
 そんな事を思いながら花の位置を整えていると、部屋の中に西行寺・幽々子がやって来た。
「お帰りなさい、妖夢。これが買ってきた花瓶?」
「はい。予定していた物より少し小さいですが、十分なサイズの物があって助かりました」
「そう、それは良かったわ。……それより妖夢。その箱はどうしたの?」
 花を弄っていた手を止め、幽々子の視線を追うと、そこには置きっぱなしにしておいた箱があった。
 妖夢はそれを手に取ると、幽々子へと手渡し、
「魔理沙から貰ったんです。小物入れにでもしようかと思って」
「そうだったの。……ん〜、でもこれ、『開けたら価値が下がる箱』って書いてあるわよ?」
 箱へと視線を落としながら言う幽々子に、妖夢は苦笑し、
「多分、悪戯でしょう。その箱自体ただの箱で、中身に何か入っている様子も無いようですから」
「そうなの。でも、だからこそ、逆に封を開け難かったりするわよねぇ」
 同意を求めるように聞いてくる幽々子に、妖夢は少し首を傾げ、
「……そうですか? もしその箱が見た目よりも重たかったり、何か変なところがあったりすれば考えますが……」
 当然封の文字は変ではあるが、封事態に妙なところが無い以上、問題は無いだろう。
 そう答えた妖夢に、幽々子は少し残念げに、
「妖夢は夢が無いのねぇ。こういうのは、何より信じる心が大事なのよ」
「はぁ……」
 どうやら幽々子は箱を開けずに取っておきたいタイプの幽霊らしい。
 しかし、道具は使わなければただのゴミと一緒だ。しかも開けたら価値が下がるなどという眉唾物の話を、妖夢はそう簡単に信じる事が出来なかった。
「では幽々子様、その箱は開けずにおくのですか?」
 確認の為に問い掛けると、幽々子は小さく首を振り、
「いいえ、妖夢に返すわ。この箱は、妖夢が使おうと思って貰って来たものですもの」
「……幽々子様、心遣いはありがたいのですが……その、物凄い残念そうな顔で言われても逆に困ります……」
「いえいえ妖夢。私は心を鬼にして……」
「いや、使い方間違ってますから……」
 と、そんなやり取りを行っていると、玄関の方から声が聞こえて来た。
「御免します」
「あ、はーい」
 取り敢えず箱の事は置いておいて、玄関へと向けて声を上げる。
 同時に箱を放す気配の無い幽々子も置いといて、妖夢は玄関へと向かった。
 するとそこには一人の女性がやって来ており、
「こんにちわ、妖夢」
「これは藍さん。いらっしゃいませ」
 言いながら軽く頭を下げた妖夢に、八雲・藍は微笑んで、
「今日は、マヨイガで取れた柿を持ってきたんだ。幽々子様と一緒に食べてくれ」
「ありがとうございます。どうぞ、お上がりください」
 籠いっぱいに載せられた柿を受け取りつつ、藍を屋敷の中へと招き入れる。
 だが、彼女は小さく首を振ると、
「いや、これから紫様を起こさねばならないから、私はすぐに行く事にするよ」
「でも、お茶の一杯ぐらいでも……」
「そうよ〜。折角こんなに柿を頂いたんだもの。こちらからもお持て成しをさせて頂戴」
 いつの間にかやって来ていた幽々子の言葉に、藍は少しだけ考え……
「では、ご馳走になります」
「一名様ご案内〜」
「あの……幽々子様、案内は私が行いますから……」
「……妖夢はノリが悪いわ……」
 なよなよと崩れながら、しかしちゃっかり妖夢の手元から柿を数個奪いつつ幽々子が言う。
 藍はその姿に少し苦笑しつつ、
「……ん? 幽々子様、その箱は一体?」
「ああ、これ? これは……って、妖夢。良い事を思いついたわ」
 妙に凛々しい表情で幽々子が言う。対する妖夢は突然の言葉に疑問符を浮かべつつ、
「? なんですか?」
「この箱の封を開けずに中を調べる方法よ」
「そ、そんな事が出来るんですか?」
 透視でも出来ない限り難しいと思うのだが……と、そういえばそれと似たような事が出来るだろう妖怪が一人だけ居た居た事に妖夢は気が付いた。
 妖夢の表情変化に気付いたのか、幽々子は微笑み、
「そう。紫に頼めば良いのよ」


8


 幽々子と妖夢に詳しく話を聞いた後、箱を借り受けた藍は、マヨイガにある自宅へとそれを持ち帰っていた。
「『開けたら価値が下がる箱』か……」
 正直、あまり信じていない。
 しかし、魔法や呪術が当たり前に存在するのがこの幻想郷だ。少なからず可能性はゼロでは無いのだろう。
「……まぁ兎も角、紫様を起こさねば始まらないか」
 取り敢えずテーブルの上に箱を置くと、藍は紫が寝起きしている屋敷へと向かった。
 箱をそのままにしておく事に少し不安はあったが……
「まぁ、橙なら勝手に開けるという事はしないだろう」
 そう、己の式神を信頼する事にした。


9


 藍が家から出てから数分後。
 縁側で丸くなっていた橙は、眠たげな目を擦りながら箱のある部屋へとやって来た。
「藍様ー? って、そろそろ紫様を起こしに行ったのかな……」
 最近は夜が早い為、それに合わせて藍も紫を起こす時間を少しずつ変化させているらしい。その為、少し早いと思われるこの時間から、紫を起こし行ったのだろう。
 そんな主の働きを凄いと思いながら、橙は畳の上へと寝転がり……ふと、テーブルの上に置かれた箱に気が付いた。
 ぱっと見は黒光りしており、ちょっと高級そう。もしかするとお菓子でも入っているのかもしれない。
「今朝、西行寺家に行くって言ってたもんね……」
 小さく呟きながら上体を起こすと、橙は箱を手に取った。
 取り敢えず蓋を開けて中を見てみようとして……封がされている事に気が付いた。
「ん? ……んーと、『開けたら価値が下がる箱』?」
 また妙な事が書いてある。
 しかしそんな事が書いてある箱がここにあるという事は、藍か紫の持ち物に違いない。という事はつまり、この箱は多分本当に開けたら価値が下がってしまうに違いない。
 でも、
「……中身が気になる」
 取り敢えず耳元で振ってみると、かすかに何かが擦れる音が聞こえた。
 となると、中に何かが入っており、それを含めて価値があるという事だろうか。
「……気になる」
 だから考える。
 もし本当に価値があった場合、藍ならばこうやって無造作に箱を置いておく事は無いだろう。
 つまり、こんな風にあからさまに置いてあるという事は、恐らく持ち主は紫で確定。
 しかし、もし持ち主が紫だった場合、封を開けた途端に何か怪しげな術が発動しないとも限らない。その場合、マヨイガが全滅するクラスの術が発動する可能性もゼロでは無――と、想像が恐い方向へと向かってきたので、取り敢えず橙は一度箱をテーブルの上に戻した。
「うーん……」
 ここは正直に藍の帰りを待った方が良いだろうか。
 いやしかし、こういうものは一度気になりだすと止まらないものでもある。
「んー……」
 ……と、うんうんと唸りながら考える事数分。
 不意に、外に誰かが降り立った音がした。藍かと思いながら橙が障子を開くと、そこにはきょろきょろと辺りを窺う天狗の姿があった。
「あ、天狗」
「あ、猫」
「……何の用? 今は藍様も紫様も居ないけど」
「えぇ、居ないんですか?」
「うん。藍様は兎も角、紫様はまだ寝てるんじゃないかな」
 気持ち良さそうに眠る紫の寝姿を思い出しつつ告げると、射命丸・文はしなしなと崩れ落ち、
「……最近良いネタが無いんで、いっそネタの元凶となりうる八雲・紫に突撃取材をしようと思ってたのに……」
「残念だったね」
「ええ、残念です……。仕方ないので、日を改めて……って?」
「ん?」
 残念そうに呟いた文の視線が橙の背後へと向けられた。そしてすぐにその視線が鋭くなり、
「……あの箱は何ですか?」
「え、あ……あれはダメ」
「駄目? どうしてです?」
「開けたら価値が下がる上に危険かもしれないから」
 そう言った瞬間、一瞬にして文の目の色が変わり、橙は己が思いっきり直球ど真ん中で失言を放った事に気が付いた。
 獲物を狙う眼となった文は、橙では無くその背後にある箱へと視線を向けつつ、
「……では、どんな箱なのかこの目で――」
「ダメ!」
 咄嗟に障子を閉めると同時、橙は箱を掴んで走り出した。
 その背後で力強く障子を開く音が響き、
「逃げるなんて怪しいですよ!」
「怪しくなーい!」
 地の利のある家の中を右へ左へ、上へ下へと逃げ回る。けれど自称幻想郷一の速さは尋常では無い。常に一定の距離をマークし続ける文に対して焦りを覚えながら、橙は胸元からスペルカードを取り出し、
「青鬼赤鬼ッ」
 家の外へ出ると同時に声を上げた。
 途端、出現した双鬼が文へと牙を向き―― 
「甘いですよー」
 そう軽く呟いた文が、手に持った古ぼけたカメラのファインダーを切った次の瞬間、彼女へと襲いかかろうとしていた弾幕が一瞬にして消滅した。
「ッ! それ卑怯ー!!」
「一瞬一瞬が勝負ですから!!」
 そう叫びつつ、弾幕の間をすり抜けながら文が迫る。
 それに追撃を行う余裕も無く、橙は箱を抱えて逃げ続ける。

……

「ちょっと取材するだけですからー!」
「危ないからダメー!」
 手持ちのスペルを乱発しつつ、勢い良く迫ってくる文を撒こうと走り続ける。しかし、このままでは逃げ切れずに箱を奪われる可能性が高い。
 というか取材なのだから箱を奪われたりはしないだろうが、文の場合、
「開けたら価値が下がる箱? 中身は何なんでしょうねぇ。開封してみましょー」
 とか笑顔で言いつつ開ける可能性はかなり高い……と思う。けれどその瞬間何が起こるか解らない以上、橙は逃げ続けるしかなかった。
 しかし、
「ふふふ……。私と追いかけっこをして勝てるとお思いですか?」
「ッ?!」
 一瞬の隙をつき、文が橙の正面へと回りこんだ。
 しかし、走る足は止まらない。器用に後ろへと飛ぶ文の姿を見ながら、橙は走り続ける。
「そんなに必死に逃げるという事は、やはり何かあるんですね?」
「……解らないから逃げるの」
 戸惑いながら告げる橙に、文は怪訝そうに、
「解らないから?」
「うん……。だってこの箱は……」
 走りながら説明するという事を行おうとした直後、何やら遠くから声が聞こえて来たような気がした。
 具体的に言うと、文の背後から。
 しかし橙にはその声がどこから聞こえて来ているのかが解らず、気のせいだと思いながら、
「多分紫様の持ち物だから、迂闊に変な事はさせられないの」
「八雲・紫の……そうでしたか……。ですが、大丈夫です。変な事なんてしませんよ。見たところ封がしてあるように見えますけど、あわよくば開封しようなんてこれっぽっちも――」
「あぶなーい!!」
「「……危ない?」」
 危険を知らせるその叫びに、橙と文の声がユニゾンした直後、
「いッ?!」
 破壊音を上げ、文が何かに衝突した。当然その姿を追うようにして走っていた橙は、止まる事が出来ずに文へと激突する事となった。
 そして文を押し倒すような形で倒れた橙へと、悲痛な叫び声が降ってきた。
「や、屋台がー!!」
「屋台……?」
 その声に顔を上げると、そこには目に涙を浮かべ、おろおろと動揺するミスティア・ローレライの姿があった。
 そして今橙達がぶつかったのは彼女の屋台だったのだろう。ミスティアはこちらへと視線を落としつつ、
「危ないって言ったの、聞こえなかったの?!」
「え、あ……その、私は文から逃げてたから……」
「! 射命丸さん!!」
 ミスティアの言葉に、文は橙を抱くようにして起き上がり、
「……す、すみません、前方――じゃない、後方不注意だったみたいです……」
 そう言って、文がミスティアへと頭を下げる。橙も同様に頭を下げ、文の体から離れると……
「あれ、箱が無い……」
 見ると、手に持っていた筈の箱が無くなっていた。恐らく、文とぶつかった拍子に放してしまったのだろう。
 一体どこに行ったのかと思い視線を巡らすと……遠く離れた木の根元に転がっているのが見えた。
 怒るミスティアに頭を下げる文は放っておいて、橙が箱を取りに行こうと歩き出し……
「ミスティアー、一体今のは何の音?」
 箱の近くにある木々の奥から、まるで少年のような格好をした緑髪の少女が現れた。
 そして少女――リグル・ナイトバグは事態の把握に努めようと周囲を見渡し、
「な、何か凄い事になってるね……。……ん?」
 と、リグルが箱に気付き、手に取った。そしてその箱を興味深げに眺めるリグルへと、橙はゆっくり近付きながら、
「あ、あの、それを返して欲しいんだけど……」
「ああ、これはキミのなの? じゃあ――」
 と、リグルが橙へと箱を手渡そうとした所で、
「リグル! その箱渡しちゃダメ!」
 と、背後から声が飛んできた。
 一体どうして、と橙が背後を振り向くと、そこには怒りを持ったミスティアがこちらを睨んでおり、
「屋台を直してもらうまでは、それを預かっておくから」
 そう告げられたミスティアの言葉に、橙は驚きを隠せずに、
「わ、私は何にもしてないよ?!」
「人手は多い方が良いの!」
「り、理不尽だ……」
 力無く呟き、小さく項垂れる。それでも、ミスティア達ならば奪うという事は無いだろうと諦め、仕方なく壊れた屋台の下へと歩き出そうとして……
「……『開けたら価値がさがる箱』?」
「?!」
 その声に慌てて振り向くと、再びリグルが箱を見つめていた。
 橙は思わず箱へと手を伸ばし、
「だ、ダメ!!」
「ちょ、ま、一体何を?!」
 手を伸ばした橙から、リグルは体を反らす事で箱を遠ざけた。しかし橙はリグルの体を押し倒すようにしながら、
「危ないからダメッ!」
「ッ!!」
 だが、あと少しで手が届くという所で、リグルが橙を引き剥がしながら数歩後ろへと下がった。
 橙は倒れそうになる体をなんとか持ちこたえさせ、
「その箱を返して!」
「そうそう、返してください」
「そうです……って、え?」
 続いて来た声に視線を向けると、隣には説教を受けていた筈の文が居た。
 直後、
「射命丸さん! 逃げないでください!!」
 届いてきた怒りの声から逃げるように、文はリグルにだけへと注意を向け、
「……という事で、それは返してもらいます」
 言うと同時、文が加速した。


10


 何が何だが良く解らないが、リグルは逃げていた。
 背後には二人の少女。そして更に背後からはその二人を追うミスティアが、逃げるリグルへと向かって来ているのだ。
「一体何なのよ……!」
 橙はこの箱を危険だと言っていたが、一体何が危険なのだろうか。その説明を求めようにも、もう立ち止まるに立ち止まれない状況になっていた。
 取り敢えず蟲達に指示を出し、追って来る二人に襲い掛からせつつ、リグルは一気に森を走りぬける。
 そして見えてきた湖の上空、夕日で赤く染まるそこには不自然な闇が浮いていた。
 あれは……
「ルーミア!!」
「……なーに?」
「これパス!!」
「えぇ?!」
 闇へと向かい箱を思い切り投げる。そしてそのまま踵を返すと、リグルはやって来るだろう二人へと相対するためにスペルカードを取り出した。


11


「ちょ、リグル?! って、聞いてないし……」
 箱を受け取ったルーミアは、眼下に立つリグルへと向け溜め息を吐いた。
 いきなりパスを回されても、コレがなんだか解らない以上対処しようが無い。
 取り敢えずリグルへと話を聞こうと、ゆっくりと高度を下げ……森の奥から凄まじい勢いで飛び出して来た二つの影の登場に、ルーミアはその体を止めた。
 そして現れた二人の少女へとリグルが弾幕を放ち始め……不意に、一人の少女がこちらへと気付いた。
 直後、
「箱はそこですね?!」
 叫び声と共に、文の方がこちらへと向かって一気に加速して来た。
 こちらを射抜くその眼は獲物を狙うハンターのもの。それを見た瞬間、ルーミアは迎撃するよりも逃走する事を選択した。
 だが、加速の面で天狗に敵う筈が無い。ならば、この状況から逃げ切れる唯一の手段は……
「チルノー!! パスッ!!」
 ルーミアは逃げる事にした。


12


「……え? ってえぇぇぇ?!」
 遠くで名前が呼ばれた気がしてチルノが振り返ると、何故かこちらへと向かって小さな箱と、それを護るように弾幕が飛んで来ていた。
 そしてその後ろからは文がやって来ており、どうやらその箱を狙っている様子。
 直後、文の更に背後にある闇から声が飛んできた。
「チルノ、箱を持って逃げてー!」
「逃がしませーん!!」
 どうやら逃げなければいけないらしい。
「よ、良く解んないけど解った!!」
 飛んできた箱を手に取ると、こちらへと弾幕がぶつかる前にチルノはスペルを宣言した。
「――パーフェクトフリーズ!!」
 その瞬間、迫って来ていた弾幕の全てが動きを止め、文を足止めする壁となった。
 すぐに文がカメラを構え、弾幕を消し去ろうとし始めるが……あれは連射が出来ない事をチルノは知っていた。
 更に文が弾幕を消してもすぐには追って来られないよう、チルノ自身も弾幕を放ちつつ、状況を理解出来ていないままにチルノは逃げ出した。

……

 だが、所詮は妖精と天狗の足。
「私から逃れようなんて、そうはいきませんよ……!」
「く……!」
 すぐ背後へと文が迫り、その手が箱へと伸ばされた瞬間……チルノは一縷の望みを賭け、ある言葉を叫んだ。
「助けてレティー!!」
「?!」
 その瞬間、文の動きが一瞬停止し、その隙をついてチルノは再び距離を伸ばした。
 いくら文とはいえど、猛吹雪などを起こされたら上手く飛ぶ事が出来なくなるからだ。
 そしてチルノは、周囲を警戒するようにスピードを少し落とした文へと向け、
「……うっそー」
「な……!」
 目を見開く文を無視し、一気に加速する。
 が、
「ッ!」
 次の瞬間、まるで瞬間移動をしたかのような速さでチルノへと近付くと、文はその頭をガシリと掴み、
「……天狗を嘗めてもらっちゃ困りますねぇ……」
「痛い、痛い痛い痛いいたいいたいいたい……!!」
 ぐぐぐと指先に力が籠り、頭が締め付けられていく。
 チルノは無意識に箱を手放すと、その手を外そうともがき始めた。


13


「……ん?」
 外に何か落下してきた音がして、レティ・ホワイトロックは眠たげな目を開けた。
 まだ冬には少し早く、まどろみの中ではあるのだが……こうやって外で何かが起こると、目が覚めてしまう時もある。 
 そして何気なく寝床から出、音の方へと視線を向けると、何やら小さな箱が落ちてきていた。落ち葉のクッションで護られたようだが、その外観はもうボロボロである。
「何なのかしら……」
 眠い頭で寝床の外に出て、箱を拾い上げる。すると、上空から声が落ちてきた。
「……くッ。嘘から出たまことですか……」
「……何の事?」
 思わず言葉を返すと、そこには片手で掴んだチルノを背後へと放り投げた文が居た。
 彼女は地へとそっと降り立つと、レティの持つ箱へと視線を向け、
「その箱を渡してください」
「これを? ……どうしようかしら」
 あの天狗が欲しがっているという事は、これは普通の箱ではないに違いない。
 そう考えたレティに、文はこちらへと一歩を踏み出し、
「ならば、力尽くで……」
「あ、ちょっと待って。ここ、どこだか解ってる?」
「どこって……」
 訳が解らないといった風な表情を浮かべた文に、レティは居るのだろう彼女と合わせるように、
「「私の寝床」」
「?!」
 二つ同時に響いた声に、文が思わず肩を震わせた。
 そして今は枯れている草木の影から現れたのは、小さな人形。
「……春に咲くスーさんの為にも、ここで暴れさせる訳にはいかないわ」
「……そうでした。今は見る影もありませんが、ここはあの鈴蘭畑でしたね……」
 納得したように文が呟く。
 今は少し閑散としているが、ここは春になると一斉に花が芽吹く場所でもある。そして同時にあまり人妖が訪れない場所でもある為、冬を待つレティの寝床にもなっていたのだ。
 形勢不利と見えたか、少し文がたじろぐものの……しかし、その瞳にある光は弱まるどころかその強さを増し、
「ですが、私はその箱を取材すると決めたのです!!」
 叫びと共に、文が空へと舞い上がった。


14


 林を抜けると、そこは戦場でした。
「……なんか、凄いトコに出くわしたわ……」
 ライブ終了後、開いた時間を利用して音を集めていたリリカ・プリズムリバーは、視線の先で繰り広げられる戦闘を呆然と見上げながら呟いた。
 かなり本気な勝負らしく、その迫力は凄まじい。
 これは迂闊に近付かない方が良いな……と思いながら、その戦いの音を集めていると、不意に何かが転がって来た。
「……ん?」
 弾幕と一緒に飛んで来たそれは、なにやら小さな四角い箱。
 戦いを繰り広げている三人はそれに集中している為か、箱が飛んだ事に気付いていないらしい。もしかしたら気付いているのかもしれないが、戦闘中に取りに向かう事が出来ないのだろう。
 そんな事を考えつつ、リリカはその箱を眺め……ふと、妖怪三人が奪い合う程の箱から生まれる音とはどんなものだろうか、という興味が湧いた。
「……」
 そしてその直後、リリカの心の中に悪魔と天使が生まれた。
 悪魔は『箱を持って返ろうぜ』的な意見を繰り返し、天使は『止めときなさいマズいから』的な意見を繰り返し、互いに弾幕ごっこを開始させた。
 ……結果、否定的な意見を持っていた天使が倒され、リリカは悪魔の意見を受け入れた。
「でも、どうやってあの箱を取ろうかな……」
 恐らくリリカの存在はまだ気付かれていない。ならば、このまま大きなアクションを取らなければ、箱を奪ったのが誰だか判明すらしなくなるという事だ。
 完全犯罪という名のそれをどう行おうか必死に考え……ふと、普段使っているキーボードと同じ要領で、箱へと魔力を向けてみた。
 すると、案外あっさり箱は動き出し……
「っと、取れた……」
 上手く行った。というか、上手く行った事に驚いた。
 だが、そもそも騒霊とはポルターガイストを具現化した存在だ。家具を動かす事が出来て、すぐ近くに落ちた箱を動かす事が出来ない道理は無いのだろう。
「とにかく、逃げよう……」
 そしてリリカはそそくさと戦場を後にした。

……

 楽器の片づけが終わったのだろう姉達の下へと戻ると、早速メルラン・プリズムリバーが箱に気が付いた。
「何それー?」
 そしてそんなメルランの声に続くようにルナサ・プリズムリバーも箱へと視線を向け、
「箱みたいだけど……一体どうしたの?」
「えっと……その、さっき林の向こうで拾ったの」
「林の向こう?」
「そう、林の向こう」
 少しルナサの表情に疑念の色があったが、笑って誤魔化す。嘘は言ってない。
 そして逃げるようにリリカは自身の楽器の元へと歩き、楽器ケースを手に取りながら箱へと視線を落とした。
「あれ、何か書いてある……」
 ボロボロの箱には封がしてあり、その紙には筆で文字が書かれていた。
 しかし、その紙自体も汚れてしまっており、良く読めない。
 取り敢えず開けてみれば解るかも……と、一度楽器ケースを置こうとした所で、
「何やってるの」
「帰るよー」
 声に振り返ると、もう姉達は空へと飛んでいた。
「わ、解ったー」
 慌てて答えながら楽器ケースを掴みなおすと、リリカは姉達に続くように空へと飛んだ。
 
……

 三人でライブの事を話しながら、プリズムリバー邸へと向けて空を飛んでいく。
 しかし、箱の事が気になるリリカは、姉達にある提案をした。
「ねぇ、無縁塚を横切っていかない? その方が早く家に着くよ」
 早く箱を開けてみたいというリリカの思惑に気付く事無く、ルナサは少し考えてから、
「……確かにそれもそうね」
「じゃ、それで確定ー」
 そして進路を少し変え、リリカ達は無縁塚を横切るルートで屋敷へと帰る事にした。
 ……だが、その選択は間違っていたらしい。
 無縁塚に入って暫くした頃、正面に何かが見えてきた。
 くるりくるりと回るそれは白い傘。傘の持ち主はリリカ達に気付くと、
「あら? 珍しい顔ぶれね」
「……風見」
 ルナサの言葉に、風見・幽香は微笑みを浮かべ、
「どうしたのかしら、こんな所に」
「ライブの帰りよ。……それにより、貴女こそなんでこんな所に?」
 警戒を持って問い掛けるルナサに、幽香は微笑みを強め、
「花を愛でていたの。こんな辺鄙な場所でも、花は咲くから。……別に貴女達を虐めるつもりは無いわよ?」
 そして傘をくるりと回しその表情を隠す。
 何か嫌な空気が漂い始めた気がして、リリカは鋭い視線を弱めないルナサへと声を掛けようとし……
「……お前達、一体何を――」
「貴方達、ここで一体何をしているのですか」
 突如響いてきた声に、この場にいた全員が視線を向けた。
 そこに居たのは少し困った表情を浮かべる小野塚・小町と、少し厳しい表情を浮かべる四季映姫・ヤマザナドゥだった。
「え、閻魔様……」
 思わずリリカが呟き、対する映姫は小さく溜め息を吐くと、
「小町を叱りにやって来たというのに……。もう一度聞きましょう。貴女達はここで一体何をしているのですか」


15


 説教の順番待ちという何だか良く解らない状況に陥った幽香は、プリズムリバー三姉妹が説教を受けている様子をぼんやりと眺めていた。
「……全く、面倒な事をする閻魔だわ」
 相手が違えば説教も違う、という事は理解出来るが、だからって順番待ちは無いだろうと思う。
 当然、それを律儀に守っている幽香も幽香なのだが……逃げたら逃げたで後が大変そうなので、仕方なく従っていた。
 と、そんな事を思いながら眺めていた三姉妹の中、リリカが背後に箱を隠し持っている事に気が付いた。
「……」
 彼女の意識はその箱に向かっているらしく、映姫の説教も少し上の空に見える。
「何かしら、あれ……」
 だからという訳ではないが、何気なく幽香は呟き――直後、
「何かしらねぇ、あれ」
「?!」
 突如耳元で聞こえて来た声に、幽香は思わず背中を跳ね上げさせた。
 一気に顔が熱くなるのを感じつつ、勢い良く殺意を籠めて振り返ると、そこには微笑むを浮かべる女性が居た。
「八雲・紫……ッ」
「珍しい事もあったものねぇ。……あの風見・幽香が、何もせずに閻魔から説教を受けようとしているなんて」
「……五月蝿い」
「うふふ。食後の散歩をしていただけだったのに、面白いものが見られたわ。早速霊夢と魔理沙に……」
「止めーい!!」
 八雲・紫へと弾幕を放ちながら叫ぶ。
 だが、それは紫へとダメージを与える事は無く、
「……風見・幽香。一体何をしているのです?」
 怪訝げに聞いてくる映姫と、紫の姿が見えていなかったのか可哀想なものを見る目でこちらを見る三姉妹に、幽香の怒りは軽く頂点を超え、
「あーもう止めよ止め! 八雲・紫、出てきなさい!! アンタと閻魔、一緒に相手をしてやるわ!!」
「あらあらあら。ご氏名となると、登場しない訳にはいかないわね」
「……ならば、私も相手をしましょう。貴女には、まだまだ罪の意識が足りないようですから」
 そして妖しく微笑む紫と、厳しくこちらを睨む映姫に対し、幽香は問答無用で弾幕をぶっ放した。


16


 その場に居た全員を巻き込んだ戦闘の後、紫はリリカが落とした箱をちゃっかりと拝借していた。
 紫も幽香も周囲の被害を考えずに弾幕を放っていた為、その流れ弾も凄まじい事になっていた。更に幽香に対して映姫が『浄頗梨審判』のスペルを読み上げていた事もあり、最早回避の二文字を考えられぬ程の惨状が生まれていた。
 そんな状況から逃れる際、リリカはこの箱を落としてしまったのだろう。恐らく拾いに戻ろうとしただろうけれど……姉達が止めたに違いない。
 というか、幽香の弾幕を回避している途中、姉達に引っ張られていくリリカの姿をちらりと見た記憶はあった。何か叫んでいた気がしたけれど、あれは箱の事についてだったのかもしれない。
 しかし……貰って来たものは良いものの、
「……出掛ける時に藍が騒いでいたのは、この箱の事じゃ無いみたいね」
 藍の話では、箱はもっと綺麗なものだった筈だ。だが、リリカが落とした後、弾幕の雨に晒されぬようすぐに隙間へと落としたこの箱は、もうその時点でボロボロになっていた。
 それに、元はマヨイガにあったその箱を、プリズムリバー三姉妹が持っている訳が無い。
 つまり、藍の言う箱とこの箱は、似て非なる物、なのだろう。
 そんな事を思いながら、紫は博麗神社の境内へと足を踏み入れた。
 音も無い静かな境内を歩いて行くと、社の縁側で伊吹・萃香が酒を呑んでいるのが見えた。
 紫はさしていた卍傘を畳み、隙間へと仕舞いつつ、
「こんばんわ、萃香」
「んー」
 楽しげに微笑み、萃香が答える。紫はその隣へと腰掛けると、光の灯っていない社の奥へと視線を向け、
「萃香、霊夢は?」
「ついさっき、夜の見回りに行ったよ。なんかそんな気分になったからって」
「そうなの」
 折角幽香の事を教えてあげようと思っていたのに、居ないのならば仕方が無い。
「……じゃあ暇ねぇ。する事が無くなってしまったわ」
「なら、一緒に飲む?」
 空になった杯を持ちながら聞いてくる萃香に、紫は微笑んで、
「それも良いわね」
 そう答え……不意に、紫はある事を思い付いた。
「……でも、ちょっと待っててくれる?」
 そう言って靴を脱ぐと、紫は社の中へと足を踏み入れた。
 そして隙間から先程手に入れた箱を取り出すと、神棚へとそれを置き、
「これで良しっと」
 一人満足げに微笑むと、紫は萃香の元へと戻り、
「さ、行きましょうか」
「ん? ここで飲むんじゃないの?」
「それも良いのだけれど、今晩は二人だけの宴会にしましょう。そういう気分なの」
「りょーかーい」
 笑みで頷く萃香に微笑むを返し、靴を履く。
 そして大きく隙間を開くと、紫は萃香と共に神社境内から姿を消した。


17


 深夜。
 夜の見回りから帰った博麗・霊夢は、部屋の明かりを点けつつある事に気付いた。
 出掛ける時には何も供えられていなかった神棚に、今は何かが置かれているのだ。
「何かしら」
 小さく呟きながら手に取ると、それはボロボロになった箱だった。黒く塗られていたのだろう塗装は剥げ落ち、封となっている紙ももう半ば破れてしまっていた。
「何か書いてあるけど……読めないわね」
 目を凝らしてみるも、汚れと紙の破損が酷く、読む事が出来ない。
 辛うじて封の役割をしている紙を千切ろうかと思うも……止めた。
「……まぁ、こんなにボロボロになるまで開けられなかったんだから、悪い物じゃ無いんだろうし」
 そう言って小さく微笑むと、霊夢は再び箱を神棚へと置いた。
 そして姿勢を正してから手を合わせ……
「……良しっと。さて、お風呂お風呂……」
 一人呟き、霊夢は部屋を後にした。




18










 某所。
 仕事から帰って来た男性がリビングの電気を点けると、テーブルの上に何か見慣れぬ箱がある事に気が付いた。
 それは手の平程の大きさを持った箱で、しかしその外見はかなりボロボロだった。しかも、同じくボロボロな紙で封までしてある。
 男性は不思議がりながらもその箱を手に取り、様子を探るように様々な角度から箱を眺め……最後に耳元で軽く振ってみた。
 すると、中から紙が擦れるような音が聞えた。
「……」
 男性は少し考えた後、箱を封じている紙を指で千切った。そして箱をテーブルへと戻し、ゆっくりと蓋を開け……
「何だ……?」
 箱の中には、二つに折り畳まれた紙が入っていた。
 男性は蓋を箱の隣へと置き、中から紙を取り出した。開いてみるとそれは手紙らしく、筆で文字が綴られていた。
「……」
 男性は眼鏡のずれを直すと、その文字を読み進めていく。
『貴方がこの手紙を読んでいるという事は、もうこの箱に価値はありません。
 ですがこの箱の中には、私から貴方への想いが詰まっています。どうそ大切にしてください』
「……」
 ……悪戯だろうか?
 だが、ここは鍵の閉まった家の中だ。こんな手紙を残すぐらいで乗り込んでくる者も居ないだろう。
「……」
 男性はその手紙を暫く眺め……ゆっくりと畳むと、再び箱の中へ仕舞った。そして蓋を閉めると、箱はそのままに着替えへと向かう事にした。
 ……箱をどうするかは、ビールを飲みながらじっくり考えればいいだろう。
 そんな事を思いながら。










19




「……あれ、箱が無くなってる」
 そう小さく呟いた霊夢に、萃香は疑問符を持って問い掛けた。
「? どうしたの霊夢」
「昨日神棚に汚い箱があったんだけど……。どこに行ったか、萃香は知らない?」
「んー……解んない。そもそも箱があった事自体知らないし」
「そう。……まぁ、無いなら無いで別に良いんだけど」
 どうでもよさげに言う霊夢に、萃香は少し苦笑して、
「良いんだ。――でも、無くなったって事はアレだよね」
「アレ?」
 返ってきた疑問に、萃香は酒を一口飲んでから微笑むと、


「箱は神棚にあったんでしょ? なら、神様の所に行ったんだよ」












end

 
宵闇むつき
http://redchain.hp.infoseek.co.jp/
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2006/10/28 07:24:08
更新日時:
2006/10/30 22:24:08
評価:
0/0
POINT:
0
Rate:
5.00
1. 5 as capable as a NAMELESS ■2006/10/29 12:28:25
全員登場と来た! 冗長だったり出ただけの奴がいたりと少々縛りに負けた感もありますが、ナイスファイトです。
2. 3 箱根細工 ■2006/10/31 00:37:11
一部キャラの公式からの逸脱が惜しまれる。
3. 6 らくがん屋 ■2006/11/01 16:37:33
長さゆえオチが引き立つとはいえ、文章の長さに対してネタが一発系止まりなのは残念。箱の中身もオーソドックス過ぎるし。オチは秀逸だった。
4. 6 床間たろひ ■2006/11/01 22:53:41
幻想郷制覇乙でしたw
こんだけ多くの人妖を配置して物語を回すのは大変だったと思いますが、それを実際に実行した貴方に拍手w 実際どうオチを付けるのだろうと思っていましたが、収まるべきところに綺麗に収まってます。お見事でしたw 
5. 10 椒良徳 ■2006/11/03 12:49:41
いやはや、ナイスアイデア。見事な筋書き。
うまい。実にうまい。
6. 7 アティラリ ■2006/11/06 00:45:47
巡り巡って神主の所へ
はてさて誰の思いが詰まっていたやら

あ、自分は容赦無く開けるタイプです
7. フリーレス nn ■2006/11/07 00:13:37
オチには趣きを感じるのですが、物語がそのオチを生かしていないような印象を受けます。輝夜の思わせぶりな発言の意味も分かりませんし、箱がリレーされていく様もただ淡々とリレーしているようにしか思えません。
8. 5 爪影 ■2006/11/07 16:31:21
 箱一個、嗚呼、はこいっこ。
9. 4 復路鵜 ■2006/11/08 20:55:12
まさかこのオチとは予想だにしませんでした………
10. 4 おやつ ■2006/11/08 21:15:00
なんと言うか、こう……好きですこういう話w
威風堂々と動じない箱の流れつく先は神様のところか……
11. 3 VENI ■2006/11/10 23:21:23
もう少し話の起伏が欲しかったです。
文章量で引っ張るならもう一味、と。
12. 6 Fimeria ■2006/11/11 16:04:33
転々としていく箱の様子、行き着く先と中身を気にしながら読み進めました。
なるほど、神棚から神主へですか。
箱の中身は妖夢から橙に渡るまでに入れられた、または出現したようですが……隙間妖怪が神棚に置く場面からなら納得も出来るのですが、どうなんでしょうね。
13. 10 ■2006/11/11 18:29:47
ずっと開けなかったから、神様への捧げものに相応しい価値があったんでしょうね。…それにしても、次から次へ箱が止まらずパスされていくスムーズな流れ、お見事でした。
14. フリーレス サカタ ■2006/11/11 23:36:07
うーん。長いわりに盛り上がりに欠けて面白くなかったです。疲れました。
箱にまつわるドタバタをもう少しキャラを絞って濃く描いたほうがよかったと思います。そして最後にZUNに開けさせてしまったのも残念です。最後まで開けないほうが話としては面白かったと。
15. 6 2:23am ■2006/11/11 23:42:36
想いは例えどんな道をくぐったとしても、想い主に届くのですかね。幻想の担い手に感謝を。
16. 4 たくじ ■2006/11/12 22:06:34
セリフがどうも説明的な感じがしました。
箱が渡っていく経緯も強引なところが多いように思います。
けど、こんな箱をめぐってひたすら争い合うのって何となく幻想郷の住人達らしいなぁ。
17. 5 藤村うー ■2006/11/13 02:38:14
 どうせなら、リリーホワイトや小悪魔や大妖精を出してくれたら……あと妖忌とか、名前や台詞を出さなくてもなんとかなりそうなものですが。画面の端に見切れるとか。
 全キャラ出演させようという意識の高さはともかく、長い……。
 長いのはいいのですが、冗長気味です。
 特に、箱がリグルに渡ってからリリカに流れるまで、明らかに全キャラ総出演のためにチョイ役を背負わされているキャラが何名がいて、ちょっと萎えてしまったりも。途中から、もう全キャラ出るんだろうなと想像がついていましたから、その時点から読むのが作業のようになってしまった感もありました。
 と、なんだかんだと言いながら、最後のオチは結構意外でした。
18. 5 翔菜 ■2006/11/14 16:48:03
あまりのドタバタ騒ぎ、中に何がある、どう落とす、と思ってたらこう来ましたか。
なるほど、神棚に置いたのなら神様の所に行くわなぁw

ただ、個人的にはもう一押し欲しかったかも。
箱を男が手にして、どうするかが。
19. 10 つくし ■2006/11/14 19:08:08
三月精と本読み妖怪以外の幻想郷メンバー総出演!小町が若干空気ですが。とかく、こういうお祭り的な空気の小説が大好きな私としては最高に楽しめました。オチがどこに転がるのかという期待を読者に抱かせて、最も意外かつ最も妥当な人の手に渡った箱に、感慨を抱かざるを得ません。
20. 6 13 ■2006/11/15 11:59:59
最後のメタオチが微妙でしたがなかなか面白く読ませていただきました
21. フリーレス 反魂 ■2006/11/15 13:56:30
あんまりと言えばあんまりな作品です。
起承転結も抑揚も何も無く、面白味の味付け調理が一切施されていない状態。ただ淡々と流れゆく事象を並べられて、正直途中から読むのさえ苦痛でした。それでも散々引っ張った「開けたら価値が下がる」の謎が決着するならまだ救いようがあったものの、それすらほぼ全く汲まないオチであっさり「end」。興醒めどころの騒ぎではありません。

オールキャストものは得てしてストーリが重視されない傾向にありますが、それにしてもこれはいい加減すぎます。次々とキャラを動かせる分書いてる側は楽しいと思いますが、読者はあくまで物語を読みに来ているのであって、プロモーションビデオを見に来ているのではありません。失礼ながら、読者のことをあまり考えていないんじゃないかとさえ見受けました。

オチ自体は面白いとは思います。ただそこに至る過程が等閑だったことを考えると、それも生きてこなかったという印象です。
22. 5 いむぜん ■2006/11/15 21:07:42
全部出すには出したが、という感じを否めない。面白かったけど。
後半が駆け足なのが残念。全体のペース配分を考えて書けばあるいは?
考えるのは面倒だろうけど、全部出すと決めたならそれは付きまとう問題だし。
23. 10 ABYSS ■2006/11/15 22:42:21
お見事です。完敗です。
発端からオチまで、止まらずに読んでしまいました。
流れもテンポもよく、静かな流れが大きくなっていく展開も見事。
オチは本当に「やられた!」と思いました。もう一度言いますが、完敗です。
24. 6 blankii ■2006/11/16 21:08:39
まさに幻想郷(+)オールスター。最後に誰が開けるのか? と思わせて、そうくるか! というオチでした。
25. 4 雨虎 ■2006/11/17 15:56:21
最後の最後にとんでもない所まで行き着きましたね。
ただ神様なのかなと違和感が……。
神主が持ち去ったということなら納得したかも知れませんが。
26. 4 人比良 ■2006/11/17 20:09:59

引っ張りすぎだ、と思う反面とんとん拍子で進んで読みやすかったです。
砦に意味はなく、中身にこそ意味がある。
最後の一文が素敵でした。
27. 5 目問 ■2006/11/17 22:24:47
 オールキャスト……って神主までっ。
28. 9 K.M ■2006/11/17 23:01:28
バケツリレーのバケツが如くに人手を渡り続ける他愛のない箱…
これだけの人数を書ききるとは凄いです。

終点はどこかと思ったらそこかよ!!
29. 1 時計屋 ■2006/11/17 23:21:24
展開が平坦で盛り上がりに欠けたように思えます。
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