Maze Museum

作品集: 最新 投稿日時: 2006/10/28 08:16:12 更新日時: 2006/10/30 23:16:12 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
 「妖夢〜、よーーむ〜〜?」
物置の整理をしていた半人半霊の庭師こと魂魄妖夢は己を呼ぶ主の声を耳にし、
整理を中断して手に持っていた化粧箱をその場へ置くと幽々子の元へと向かった。
 「はい、何か御用でしょうか幽々子様」
 「ヒマなんだけど何かないかしら?」
とりあえずコケた。その拍子に、右側頭部を板張りの廊下へ強かに打ち付けてしまった。
ぶっちゃけかなり痛いのだが、呑気な主は労わりの言葉ひとつくれなかった。
 「う〜ん、妖夢のズッコケもいい加減見飽きちゃったし……
   そうだ、今度は転んだ拍子にリアクションで骨折するというのはどうかしら」
 「無茶言わないでください〜〜」
妖夢は頭の痛みが増した気がした。多分、この痛みはコケた拍子に頭を打った所為だけではないのだろう。
しかし、妖夢はここでめげている暇はないのだ。
以前、退屈退屈と喚いていた主は紅魔館や永遠亭のメンツと合同でキノコ狩りを提案したことがある。
その際に妙な対抗ルールを各チームへ課し、紆余曲折の果てに山ひとつ消し飛ぶ事態に発展させた前科があるのだ。
この『ビッグ食欲魔霊暴走事件』は、慧音の紡いでいる歴史の中でも上位に入る惨劇だとかそうでないとか。

まぁ、それは兎も角として。
このまま放置すればまたしても斯様な悲劇を引き起こす可能性もある。
何度も何度も大事件の元凶となっていては、白玉楼の威圧感やらカリスマやら
そういう大事な物が(元からあるかは別問題として)地に落ち泥にまみれラグビー部のユニフォーム状態になってしまう。
とりあえずそれだけは避けたい妖夢は、必死で頭を酷使した。
 (まず、実害のないものが望ましい……いや、望ましいじゃなくて絶対条件だ。
   要するに一人でできる物だな。そして、できるだけ時間のかかるもの……
   ってそんな都合のいいアイデアあるのかな?いやいや妖夢、
   諦めたらそこで試合終了ですよ絶望するな、するとき、すれば、しよう……って絶望しちゃだめだろっ!?
   あぁもう折角の読書の秋なのになしてゆっくり読書もできずこんな目に……んっ?これはいけるか!!)
幽々子様アイデアだけは阻止したい。妖夢は思いつきを進言した。
 「でしたら読書はいかがでしょうか。以前紫様から頂いた書物が幾つかあるはずですが」
 「読書?ん〜〜なんだかそんな気分じゃないのよねぇ」
しかし妖夢の提案ははずれてしまった!
あんまりにもあんまりな理不尽却下理由だが、仕える相手の意向とあらば仕方が無い。
妖夢は全力で頭と口を動かし続けた。
 「え〜と、それでしたらば芸術の秋、もとい何か芸術作品を作られてはいかがでしょうか?」
 「芸術作品?」
『食いついた!!』と書いて『フィーーーッシュ!!』と読む!
話題に乗ってきた幽々子に対し、妖夢は舌先九寸で丸め込みにかかる。
彼女の下で働いているとだんだん口が上手くなっていく気がするのは……おそらく気のせいでは無いだろう。
 「そう、芸術作品です幽々子様。日々の喧騒を忘れ心を安らかにし自分自身を見つめ一意専心に何かを産み出す。
  どうですか幽々子様?久しぶりに絵を嗜むのも風情があってよろしいものかと思いますが」
 「え〜〜?」
 「作品が幾つかできましたらば、村や神社に売り払いましょうか。
  折角の食欲の秋ですし、その場合は臨時収入で秋の味覚を可能な限り入手して料理致しますが」
 「判ったわ妖夢。きっと入魂の名作完成させるから後はお願いね」
勝った。勝ちましたよ我が師匠。
電光石火のスピードで自室へと引っ込む幽々子を見て、
妖夢は心の中で祖父に対してなんだかよく判らない勝利報告をした。
 「さて、これで当分の間は静かになるな。
   風雅だの趣だので動かせないときは、食欲を刺激するに限る……と」
心の棚に『幽々子様操縦法その2』と書いたリモコンを置くイメージをしながら、
妖夢は再び物置の整理へと取り掛かるのだった。
 「え〜と、この衣装櫃は幽々子様の昔のお召し物で、こっちの黒い行李は……」

そんなこんなで、以降の6日間は特にどうということもなく過ぎていった。
妖夢は相変わらず、庭木の剪定をしたり、料理を作ったり、修行したりで日々を過ごしていた。
一方の幽々子は食事と睡眠以外のほとんどを自室に篭っていたが、食事の準備ができたと呼べばすぐに来るし、
気分転換なのかちょくちょく外出するしで妖夢から見ればこれといった問題もなく経過した。
実は幽々子の外出頻度が後半になるにつれどんどん増えていたのだが、
妖夢はそれを『作品制作が煮詰まっているのだろう』と解釈した。

            ************

そして、『それ』は7日目の事だった。
 「妖夢、美術館へ冒険に行きましょう」
 「はい?」
朝食の席でいきなり想定外のことを言われ、妖夢は呆気にとられた。
そんな妖夢を他所に、幽々子は箸で器用に魚の皮を剥ぎつつ言葉を続けた。
 「んもう鈍いわねぇ。美術館よ、び・じゅ・つ・か・ん。知らないの?
  さまざまな美術品が収容され、その絢爛さは宛ら宝石箱とでも言うべき素晴らしき施設……」
 「いえ、美術館という概念自体はわかりますが。でも何ですかいきなり」
 「ん〜……絵以外の芸術品もいいかなぁって悩んでたんだけど、なかなか良い案が思い浮かばなくって。
   で、他人の作品見てインスピレーションを喚起しようかなぁ。と、こういう訳よ」
凄まじい速度で箸の端を動かし魚の骨を除去しつつ、幽々子は受け答えをした。
 「……パクリはいけませんよ?」
箸とご飯茶碗を置き、真正面から見据え真面目な顔でボソリと言い放つ。
しかし幽々子はどこ吹く風とばかりに、魚の中骨から実を剥いで食べつつ喋る。
 「判ってるわよそれぐらい。模写なら模写ってちゃんと言えばいいんでしょ?」
 「いや、そう意味ではなくてですね……って、それより幽々子様、この辺に美術館なんてありましたっけ?」
はた、と思いついたことを口にする妖夢。
そういえばもう長い事この白玉楼で生活しているが、美術館の話などついぞ聴いたことがなかった。
 「うん、それなんだけどね。この間、紫が幻想郷を逍遥してたら山奥に荒れ果てた美術館見つけたんだって」
 「えっ?それはいつの話ですか?」
 「確か3日前……いえ、4日前ね。気晴らしにマヨヒガへ行ったんだけど、そのときに聞いたのよ。
   もしかするとその美術館、つい最近幻想郷へ来た新入りさんなのかも知れないわね」
 「はぁ……そうなんですか」
現実離れ(この幻想郷にはやや似つかわしくない言葉だが)した話を聞かされ、
少々頭が混乱してきた妖夢は気を落ち着かせるためにも味噌汁を一口啜った。
 「聞いた話だとスゴいのよ?昨日やっと測り終えたんだってけど、
   単純な広さが確か……大きい種類の畳で数えると720万畳分を超えてるんだっけかな?」
 「ぶっげふ!げほ、ごほげほっ!!」
 「あら妖夢、咽るなんてはしたないわよ?」
しっかりと卓袱台ごと朝食を持ち上げ避難させた幽々子が妖夢を窘める。
しかし、気管に味噌汁が入った妖夢はそれどころではなかった。
 「ごふ、げぐべふ……幽々子様、その数字本当ですか?それ滅茶苦茶広いじゃないですかっ!?」
平方キロメートルで換算すれば、おおよそ13万平方キロメートルである。確かに尋常ではない。
 「ケフケフ、あぁ、大分楽になってきた……ってそれはこの際もうどうでもいいです」
 「じゃあ食休みもかねて一刻(およそ30分後)に出発でいいわね?」
 「違います幽々子様!!どうでも良いと言ったのは私の気管に関してです!!
   そんな広大な美術館、一体どれほどの時間をかけて観て回りきるお積りですか!?」
卓袱台をバシバシ叩きつつ妖夢が声を荒げるものの、幽々子は一向に気にした様子がなかった。
身を完全に剥ぎ終えた中骨を齧りつつ、妖夢に対しあっけらかんと言い放った。
 「大丈夫よぉ、紫に聞いて見に行く場所はもう決まってるから」
 「あぁ…………なるほど、失礼しました」
確かに全部見て回るの厳しいだろう。しかし、観るべき物とその数が決まっているのなら話が別である。
 「妖夢は早とちりさんね」
 「面目次第も御座いません」
素直に頭を下げる。
馬鹿でかい数字を聞いて頭が麻痺し、こんな簡単なことにも思い至らないのではこちらの非に間違いはない。
 「それじゃ、一刻後に」
 「心得ました」
改めて恭しくお辞儀をする。
その様子を見て、幽々子は上機嫌に御飯へ魚の皮と小骨を乗せ、楽しそうにそれを咀嚼・嚥下するのだった。

            ************

 「ここがそう……ですか?」
かなりの距離を飛行し、漸く二人は目的の場所へと辿り着いた。
途中氷精にケンカを吹っかけられたり幽々子が方向を間違え遠回りになったりもしたが、
あんまり大した事ではないのでこの場では割愛させて頂く。
 「そう、これが目的の美術館よ」
二人の目の前には、荘厳な雰囲気を纏う巨大な建造物が聳え立っている。
しかし、事情は不明だが荒れ果てている所為と山の木々に覆われている所為で、
この館はどこか陰鬱で逼塞な空気も同時に醸し出している。
ホラーテイストな空気を振り払うべく、妖夢はなんかしらの会話をすることにした。
 「ところで幽々子様、この美術館の名前はなんというのですか?」
その言葉を聞き、幽々子は無言で入り口の上方を指差した。
妖夢が視線をそちらに向けると、そこには1枚の汚れた布が垂れ下がっていた。
 「ホントの名前はわからないわ。とりあえず、紫が便宜上ああ名付けたけど」
その布は破けたり色落ちしていたりでほとんどの部分が判別不可能だったが、一部は読むことができた。
そこには『Maze Museum』と書いてあるのだが、
『aze』は明らかに読めなくなった部分へ後から書き足されたものだった。
 「迷宮(Maze)……美術館(Museum)…………」
誰にともなく、妖夢はその名を呟いた。

――――チャチャチャッ チャッチャチャ チャチャチャチャチャーン

 「さぁ妖夢、折角だから一緒に観て回りましょう」
 「は、はい。わかりました」
欠けた名前『M Museum』の本名に思いを馳せていた妖夢は、幽々子の声で現実へと引き戻された。
推測材料がない以上、考えても無駄だろう。
そう思考を割り切り、妖夢は幽々子の後を追うことにした。

            ************

 「なんというか……雑駁この上ない場所ですね」
二人は、幾つもの松明によって薄暗い状態にキープされている森閑とした館内を歩いて進んだ。
美術館内部の内部の美術品は、その状態はもちろん様式までもがピンキリだった。
絵の具の一部分が溶けている油絵、腕が欠落した女神像、
新品同様の陶器、素晴らしい墨絵、皹がうっすらと見える硝子細工……
絵にしても肖像画があったり抽象画があったりと、展示物は統一性の感じられるものではなかった。
 「このカオスな感じがいいんじゃないの。この雰囲気が解せないようじゃ妖夢もまだまだよ。
  状態が悪いのも複数あるけど、キュレーターとかが居ない以上は仕方ないわね。
  今度幾つか持ち帰って、修復にチャレンジを……ってあら?」
 「どうかなさいましたか?」
 「え〜っと、目的の部屋はどっちだったかしら?」
進路は、二股に分かれていた。右か左か、二者択一である。
 「もしかして思い出せないのですか?」
さて困った。この建物は洒落にならないほど広い。おまけに、薄暗い所為で視界はあまりよろしくない。
特定の『ある物』を闇雲に探すとなると、どれほどの時間がかかるのかまったく想像出来そうにない。
 「確かここから2つか3つ先の部屋だったと思うんだけど……仕様がないわ妖夢、二手に分かれましょ」
 「えぇっ!?」
 「美術館で大声出すのはタブーだけど、他には誰も居ないからきっと許してもらえるわよ。
   それじゃ、柳と幽霊の描かれた日本画を見つけたら大声上げてね。あの絵がとても気に入ったのよ」
言うが早いか、幽々子はさっさと左の通路へと行ってしまった。
一人残された妖夢はしばし呆然としていたが……
嘆息しつつも言いつけどおりに半身を伴って右のルートへと進んでいくのだった。

――――ホントに囁いたの?
        さぁ?ホントかどうかはどうでも良いじゃないの。大事なのは……
        大理石製の台上にある天使像が、ということね

 「さて、この天使が描かれた扉の向こうは……っとと。この部屋はさすがに違うかな?」
妖夢が最初に扉を引き開けた部屋は、ちょっとした体育館ほどの空間を持つ広間だった。
ただし、体育館と違ってステージ等のない単なる直方体の箱状であり、天井は3メートルほどなのだが。
壁にずらりと並んだ松明が、20体ほどの石製天使像を不気味に照らし出していた。
妖夢は部屋に入り、反対側に出口を確認し……そして入り口のすぐ傍に一つの立て札を見つけた。
 「え〜と……何々?
   『堕天軍像:天使軍の各階級に1人潜みし裏切り者。
   その全てが打ち倒されしとき、新世界への扉は開かれる。』……か。
   どこかの神話の一節なのかな……まぁいいか。早く幽霊の日本絵を探さないと」
ローブのような服を着た天使像の隙間を通り、反対側へと向かう。
天使像は壁際に並ぶのではなく、室内にランダムに配置され、その全てが台座の上に立っていた。
きょろきょろと左右を見渡しながら歩いたが、やはりこの部屋に幽霊画は見えかった。
念の為に壁際に置かれた天使像の裏もチェックしたが……やはり存在しなかった。
 「やはりこの部屋には無いか」
後数歩でこの部屋を出るということで、妖夢は少し気を抜いた。
その瞬間。
何の前触れもなく扉が閉じ、一斉に松明の明かりが消えた。
 「!!?!」
咄嗟に思考を戦闘モードに切り替える。一足で壁際まで移動し、壁を背にして柄へ手を掛ける。
背後からの攻撃がない状態で、前方へと意識を集中する。しかし……
 (何も動く気配が、ない?)
暗闇の中、警戒をし続けるが一向に何も起きる気配がない。
そして暫くの後、またしても前触れなく全ての松明が一斉に燃え上がった。
薄暗くではあるものの世界に光が戻り、天使像が見えるようになる。
妖夢は注意深く周囲を観察するが、見た目に暗くなる前との差異を見つけることができなかった。
 「何……だったんだ?今のは……」
困惑しながらも、柄から手を離し歩き出そうとする。
それが引き金であったかのように。間髪を容れず。
 「きゃあぁああぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
幽々子の悲鳴が響き渡った。
 「幽々子様っ!!」
声を聴いた瞬間、妖夢は弾かれるようにこの部屋へ入った扉へ飛翔し……
そして、『扉の絵が描かれた壁』に激突した。
 「なばっ!?えっ?あれ?」
入ってきたはずの扉は、いつの間にか立体感まで再現された『絵』になっていた。
両手を使ってドンドンと『絵』を叩くが、音の響きから考えても隠し扉ということはなさそうだった。
訳がわからず室内を振り返り確認する。
天使像の位置関係から考えても、この場所が入室したドアのはずだった。
 「ちっ!!」
入り口から出ることを諦め、反対側の出口へと向かう。しかし……
 「やはり、こっちもか」
出口の方も、やはり絵となっていた。
入り口が絵になっていた時点である程度予測はできていたが、だからと言って嬉しい訳が無い。
つまり、20体の天使像と共に、この一室へ閉じ込められた、ということだ。
 「む?」
出口の『絵』のドアノブには、一つの札が掛けられているかのように描かれていた。
 「『トロンプ・ルイユ:見る角度を考慮した陰影などで立体感まで再現された絵。
   ぱっと見は、本物がそこにあるかのように見える。所謂トリック・アートの一種。』か」
この絵がどんなジャンルかは判ったが、こんな場所で美術の講義を受けても素直に喜べない。
一刻も早く幽々子の元へ向かわねばならないのに、この密室へと閉じ込められてしまったのだ。
壁の向こうがどうなっているかわからない以上、迂闊に壁を斬り進んで行く訳にもいかない。

さて、どうしたものか……と扉の絵へ向き合い考えていると、不意に背後で微かな物音がした。
 「何者だっ!!」
振り向きざまに楼観剣で背後に当たる部分を薙ぎ払う。
この一瞬で斬撃が襲ってくると考えていなかったのか、『それ』はあっさりと斬り伏せられた。
ゴトゴトゴト、と重い音が密閉された箱の中へと響く。
『それ』は、台上に佇んでいた筈の天使像の1体だった。
室内を見やると、最早隠す気も無いのか……7体の天使像が動き出していた。
一番妖夢に近い1体が、何事かを囁いている。
 〔ここ は 夜 は とても 寒い〕
妖夢は無言で弾幕を展開し、天使像らに放った。が……
 「なんだとっ!?」
天使像は背中の翼を羽撃いた。
飛び散る羽根は自らの意思を持つかのように妖夢の弾幕へと殺到し、その全てを相殺迎撃した。
一瞬の驚愕。その隙を狙い正面から1体の天使像が妖夢に組み付こうとする。
しかし、妖夢は慌てることなく白楼剣でその1体の胸板を貫いた。
仲間が倒されたにもかかわらず、天使像達は口々に何かしらの言葉を無関心な口調で呟いている。
 〔服 が 欲しい〕
 〔もっと 暖かく なりたい〕
残り6体。
天使像は、出口の扉の絵の前に立つ妖夢を中心に、2体1組の3班が半円状になるよう展開した。
統一された動きで、じりじりと妖夢との間合いを詰めていく。
 「これじゃあここに到達する前に日が暮れてしまうじゃないか。
   さぁ、俊敏に次の動作に移れ。次はどうする気だ?」
幽々子の状況が掴めない以上勝負を急ぎたい妖夢は天使像たちを挑発する。
妖夢の挑発に乗ったのか、ほぼ同時に3つあるコンビのうちから1体ずつが妖夢へ向かって地を駆けた。
そして、残りもまた前を走る天使像の後を追い妖夢へとダッシュし始める。
 「ほう?」
背後は壁であるため、後ろに下がることはできない。
前を走る3体が妖夢に組み付き、後衛は妖夢が前衛を飛び越えようとしたとき迎撃する腹らしい。
流石の妖夢も、重量ある石像3体に同時に組み付かれては劣勢に陥らざるを得ない。
それに、前衛を相手に隙を作れば今度は後衛が同時に襲い掛かることだろう。
 「だがまだまだ甘いなっ!!」
妖夢は天使像の接近する3方向に対し弾幕を展開する。
天使像は当然のように翼を動かし、宙を舞う羽根で弾幕を迎撃する。
だが、それこそが妖夢の狙いだった。
羽根が視界を悪くした瞬間、『わざと弾幕密度を薄くしておいた』前方へと床を蹴る。
他方の天使像は、ここより濃い密度の弾幕を迎撃したため
僅かながら前方よりも迎撃に要する時間が長く必要だった。
ほんの一瞬。しかし、広漠なる庭を管理する妖夢の脚力にはその刹那で十分だった。
驚く暇も有らばこそ。
正面での相殺が終わった瞬間、正面から迫っていた前の天使像は袈裟懸けに両断され、
直後にその後ろを走っていた天使像はそれと同じ勢いで斬り上げられていた。
残りの天使像は、4体。
妖夢が正面から迫る2体を倒し振り返ったとき、
残りの天使像達は妖夢の方を向き直立静止していた。
てっきり追撃されると思った妖夢は肩透かしを感じながらも、油断無く天使像と対峙する。
 〔君 は 強い な〕
 〔服 は もう 諦め よう〕
その言葉とともに、4体が全員石翼を大きく広げた。
妖夢の背筋に、冷たいものが走る。
先程まで、天使像達は妖夢の服を奪うべく取り押さえようとしていた。
その為に羽根弾は迎撃にしか使わなかったのだろうが、それをやめるということは……
天使像たちが、再び囁き始める。
 〔宝石箱 の 宝石 みたい に〕
 〔我々 は ただ 仕舞われ 続けた〕
 〔手入れ も して 貰え ない〕
 〔だが それ も もう 終わり だ〕
妖夢は全力で床を蹴り、少しでも間合いを広げようとする。
 〔〔〔〔君 に 代わり に 残って 貰い 我々 は 外に 出る〕〕〕〕
風切り音とともに、夥しい量の羽根が妖夢へと飛来した。

 「ちぃぃぃぃっ!!」
覆い包むような羽根弾幕を両手の刀で斬り払い、強引に隙間を作る。
ホーミング能力は弾幕の迎撃にのみ効力を発揮するのか攻撃自体は単調なのだが、
いかんせん発射される羽根の量が多すぎるため、妖夢は徐々に後退せざるならなくなる。
その一方で、天使像たちも徐々に間合いを詰め始める。
ここで一気に接近すれば非常に有利なのだろうが、
誤射の可能性が高い所為かゆっくりと接近するのみだった。
両者が少しずつ移動する以外は膠着状態かと思われたが、
終焉は意外と早い段階でやってきた。只管に羽根を回避し続ける妖夢だったが、
いなした羽根が4桁に達すると思われるころから急に密度が薄くなった事に気付いた。
妖夢が羽根弾幕の隙間に注視すると、天使像4体のうち2体が羽根を撃ち尽くしていたのだ。
それは、2体がもう羽根を撃てず弾幕も迎撃できないことを意味していた。
おそらく残り2体も羽根切れが近いのだろう。
そこに勝機を見出した妖夢は、一気に距離を詰めるべく姿勢をやや低くした。
だが、おそらくはそれを待っていたのだろう。
天使像達はその瞬間単調な動きをやめ、急に統制された動きを始めた。
羽根の残った2体の天使像は、全ての羽根を一斉に撃ちだした。
ただし、これは妖夢の左右、そして前方へ向けて発射された。
そして羽根の無い天使像のうち1体がもう1体を足場に妖夢へ向け跳躍し、
足場にされた1体もまた妖夢に向かって疾走した。
天使像達は、勝利を確信していたことだろう。
ありったけの羽根弾により、左右・前方への移動は封じられている。
そして、その場に立ち続けていれば空中と地上の同時攻撃を受けることになる。
真上にジャンプしようにも、前方ダッシュするべく低くした姿勢からは
空中から襲い掛かる天使像を回避できる高さまで飛ぶには時間が足りない。
つまり妖夢にとって一番安全なのは背後なのだが、妖夢の背後には天使像の乗っていた台座があった。
これが、天使像たちの狙いだった。
羽根の密度をわざと一部分緩くすることで、妖夢を無意識的にその台座前へと誘導する。
妖夢は羽根弾幕を迎撃しつつ後退したため、当然後方にある台座は見えていない。
よって、妖夢は台座に気が付いていないはずなのだ。
そうとは知らず後退しようとした妖夢が台座に足を取られ転んだところを仕留める。
これが天使像たちのとった最後の策であった。
が、天使像達は甘く見ていた。
二百由旬あるとされる庭を管理する庭師の空間把握能力を。
妖夢は即座に背後の台座へと一瞥することも無く飛び乗り、そこから真上へと飛んだ。
彼女は、室内の構成・配置などを完全に暗記していたのだ。
妖夢が予想外の行動を取った為、空中と地上から接近していた2体は混乱した。
そのまま2体同時に台座へ直撃し、縺れ合い床に倒れたところを二体重ねて四つに斬られてしまった。
羽根を撃った天使像が策の破れた混乱から立ち直り動き出すよりも早く。
2体同時に輪切りとした妖夢は2体へ向けて楼観剣と白楼剣を投げつけ、両者の頭部を粉砕した。

 「……さて、これからどうしたものか」
妖夢は投げた二刀を回収してから、首をひねった。
この密室内の当座の敵は撃破したものの、この部屋の出口が現れたりすることは無かった。
 「不親切だなあ。お約束ならばこれで壁の一部が開いたりとかするものだが」
そうぼやいてみた所で、どこかの壁が動いたりする気配は無かった。
 「入り口にそれっぽい文章の立て札があったあたり、何か仕掛けはあると思うけれども」
妖夢は、この部屋に入った直後に読んだ一文を思い出し室内をうろうろしつつ思索を始めた。
 「『天使軍の各階級に1人潜みし裏切り者。その全てが打ち倒されしとき、新世界への扉は開かれる。』
   ……多分『裏切り者』は像であることを止めたあの8体の事だな。
   で、全員を倒せば『新世界』すなわち次の場所への扉が開く……と思ったが。
   ん、8体?『裏切り者』は各階級に1人。そして天使の階級は確か……あぁ、そういうことか」
あることに思い当たった妖夢は、白楼剣を抜き壁際に見える像の一つへと投擲した。
白楼剣は狙いを過たず妖夢の狙った場所へと突き刺さった。
 「天使の階級は9つ。つまり『裏切り者』は9体いなければならない。
   つまりあと1つ『像で無いもの』があるということだ。
   そしてさっき室内を歩き回ったときに気付いたが、
   これだけが見る角度を変えても影の形が変わらなかった。
   おそらく入り口と出口が絵に変わったとき、実物の像から一緒に摩り替わったのだろうな」
妖夢が白楼剣を投げ突き刺した『天使像の描かれた壁』は罅割れ崩れ去り、
そこにはぽっかりと通路が口を開いた。

            ************

 「さて、いったいこの館は何なんだ?」
通路を進みつつ、妖夢は今更な疑問を口にした。
 「古きものは付喪神になるというが……どうにも腑に落ちない。
   あの天使像達が付喪神であった可能性は高い。
   だがそれだけでは、あの立て札があったことは説明できないし
   そもそも天使像達が外に出なかった理由も分からない。
   あの文章は、天使像たちと戦う相手がいることを前提としている。
   ならばそれを実行しえるのは誰だ?よもやこの館自体が……いや、まさか!」
妖夢は立ち止まり、天井を見上げた。
 「もしも『この美術館自体』が付喪神となっているとしたら?
   そして、その付喪神が冒険者の求める宝箱のような自分の体を認識しているとしたら?
   宝箱に擬態した魔物が如くに、自らの姿で獲物を誘き寄せる妖怪となっているとしたら?
   この美術館の内部はそいつの体内ということになり、
   美術館内部の仕掛けは、そいつが獲物の奮闘を眺め楽しむものという可能性も……」
自分は、巨大な化け物の体内に呑み込まれたのかも知れない。
嫌な予測を振り払うように妖夢は首を振り、再び通路を進み始めた。
例え相手が何であろうと、大切なのは自分は冥界一硬い盾として主人を守るだけなのだ。
今は、一刻も早く幽々子様と合流することを考えれば良い。
そのまま進むと、程なくして次の部屋と思しき扉が見え始めた。
ウジャト眼など古代エジプトを思わせる文様の施された、豪奢な扉だった。
その扉に手を掛け、入る直前に妖夢はふと思い当たったことを口にした。
 「なんだか、さっきの部屋以来やけに独り言が多いような……」
首を傾げるも、答えなぞ出よう筈が無い。
気を取り直して、妖夢は『死の翼触れるべし』と書かれたその扉を押し開けたのだった。

――――石の布団って痛くないのかしら?
        元王様としても、死んでる身としてはどっちでも良いんじゃない?
        5,000年も死の眠りに就いてるけど、本気で蘇る気だったのかしらね

室内は、予想通りエジプト美術品の展示室だった。
広さなどは先程の天使像ルームと同様の造りなのだが、
この部屋は展示物がケースに入れられており、そのケースが入り口と出口をつなぐ3つのラインに分かれていた。
右手側が古王国時代で、中央が新王国時代。左手側のラインは末期王朝の遺品がずらりと並んでいた。
 「ここにも何かあるのか……?だが、進まない訳にも行かないな」
意を決し、警戒しつつ室内へと足を踏み入れる。
入った直後に扉が閉まるということも無く、特に問題なく部屋中央へと進む事ができた。
しかし、問題はここからだった。
そこから先は、多数の棺が横たえられ並べられていた。それだけならさほど問題ないのだが、
その中に一つだけ展示品の並びを無視して一つの大きな棺が立てられていたのだ。
配置の不自然さもあいまって、その存在は非常に怪しかった。
 「没薬(もっこう)の臭いが強いな……となると中にいるのは!」
楼観剣を抜き、音も無く足元に迫っていた亜麻布の包帯を断ち切った。
 「隠れていないで出てきたらどうなんだ?」
弾幕を発生させ、巨大な棺を撃ち抜こうとする……が、
周囲に4つ配置されたカノポス壺(内臓を納める壺)が高速回転しつつ浮遊し軌道を塞ぎ、その殆どを弾いてしまった。
それぞれ「隼」「ジャッカル」「狒々」「人」がかたどられた4つの壺は、弾幕を弾いたあと出口の前へと陣取った。
ふよふよ浮きつつ回転を続けているのだが、どうやらボスを倒さぬ限り通すつもりは無いらしい。
そして当のボスだが、棺に入ったままでは相手をするのは無理と判断したのか、ゆっくりとその奥から姿を現した。
 「やはり、木乃伊(ミイラ)か」
防腐に使われる植物の臭いで想像していた事だが、やはり棺の中にミイラがおり、それがこの部屋の支配者であった。
大部分の包帯が解包されており、腕からは何本もの包帯をだらりと垂らしていた。
しかし、その包帯がただの飾りでないことは既に妖夢には分かっていた。
先程妖夢の足元へ忍び寄っていた包帯、あれはまさしく目の前に立つミイラのものであった。
つまり、このミイラは包帯を自在に操れるということなのだろう。
一本でも絡みつかれれば、後続を防ぐ難易度は格段に上昇する。それが非常にまずいのは明白である。
とは言うものの、いつまでも攻めあぐねている訳にはいかない。
一刻も早く幽々子と合流する必要があるのだ。
攻勢に出ようとし……次の瞬間、全力でその場を飛び退いた。
この間合いで直接絡めとるのは困難と判断したのだろう。
ミイラは周辺に多数配置された棺の一つに包帯を巻きつけ、それを鎖付き鉄球のようして妖夢へむかって叩きつけた。
 「うわわわわぁっ!」
どうにか避けたものの、棺の重さに掛かる重力に遠心力の加わった力は凄まじく、一撃で床に大きな凹みを作った。
こんな威力では、たとえ刀で受け止めたとしても無事では済まないだろう。
 「このっ!!」
もとより致命傷を与えるつもりは無かった。
単なる牽制で放った弾幕だが、ミイラは器用に棺をひとつ手元に引き寄せ、それを使い捨ての楯とした。
その棺を振りかぶり、距離の開いた妖夢に対し今度はハンマー投げのように棺を発射した。
流石に今度は余裕を持ってかわしたものの、着弾地点の状況を見るに威力はやはり尋常ではない様子だった。
真正面からの攻撃は得策ではないと判断し、妖夢はひとまず展示ケースの背後へと隠れた。
ミイラの位置からは見えない位置であり、そのまま死角から死角へ移動できるためこれで時間は稼げるはずである。
 「あの威力じゃ、撃ち合っても勝ち目は薄いかな?楯もまだたくさんあるみたいだし……
   棺の数も無限じゃないから時間を掛ければどうにかなるけど……急ぎたいからな。
   木乃伊だから松明を食らえば燃えるだろうが、おそらく包帯で妨害し、燃える部分は自切するからまず無駄。
   かと言って剣で斬るべく接近しようものなら、間違いなく寸毫の隙間もないほどびっちり絡めとられる……
   展示ケースの死角を通れば背後にも回れそうだが、カノポス壺が頑張ってるから素通りは不可能。
   壺を無力化するのが早いか、気付かれるのが早いか……分が悪すぎるな。
   やはり接近戦だが、懐に入るには……………………よし、これもまた一種の賭けだがこの手で行くか」
長考を終え、妖夢はミイラを倒すべく行動を開始した。

ミイラからしてみれば、非常に単調な時間だっただろう。
ひたすら展示ケースの陰に隠れる続ける相手に対し、闇雲に棺を放つ。
しかしそれは当たることなく、決定打とはならない。
一方で相手もまた散発的に弾を撃ってくるのだが、たいした弾ではなく棺の楯で簡単に止めることができる。
その棺を放つも、やはりちょこまかと動き続ける相手には当たることがない。
それを何回繰り返しただろうか?何度目とも知れぬ攻撃に対し楯をかざし……その瞬間、決着は付いた。
棺を自分の真正面に配置した瞬間、『その棺から』刃が突き出され、ミイラの心臓部分を貫いたのだ。
 「荼毘に付されろ」
その状態、すなわち至近距離から弾幕を放たれ、ミイラは壁の松明へと吹き飛ばされた。
エジプトのミイラは脳髄を含むほとんどの内臓を取り除き作るのだが、
古代エジプトの思想では心臓こそが知性・感情・人格の源とされ、ミイラの内部に残されていた。
その心臓を貫かれた以上、もはや反撃する力は無かったのかもしれない。
ナトロンにより乾燥された体は、松明から引火した炎により包帯ごと全てが炎上してしまった。
完全にミイラが燃え落ちるのを確認してから、妖夢は先程から弾が飛んできていた方向へ足を進めた。
ミイラは妖夢がいると思っていたその場所にいたのは……妖夢の半身だった。
そう、妖夢は自分の半身を囮とし、ミイラの気を引きつけている内に展示ケースの死角を通り
ミイラの横に並んだ棺の1つに穴を開け、こっそり入り込んでいたのだ。
そうとも知らずミイラは妖夢入りの棺を楯にし……自ら懐に呼び寄せ、不意を衝かれたのだ。
 「楯にされず投げられる可能性もあったが、それでも十分不意打ちになったはずだからな。
   決して分の悪い賭けではなかったさ」
出口を見れば、主を失った所為かカノポス壺も完全に沈黙していた。
悠々と出口から出ようとして……再び妖夢は自問自答した。
 「いや、なんかホントに独り言が多いよね、コレ?」

            ************

ミイラの部屋を通り過ぎ、妖夢は通路を進んでいる。
この先に何が居るのかは分からないが、とにかく先へと進むしかないのだ。
館自体から不吉なイメージを直に受けるのだが、それも最早どうでもいい。
最優先事項は、自分の主である幽々子を見つけることなのだ。
そして……またしても妖夢は扉へと突き当たった。
その扉には、ポップな絵柄でバイオリンやトランペット、それらのケースに五線譜が描かれていた。
ただ、それらは微妙に輪郭が歪んでおり、その歪みの中心となる部分には時計が配置されていた。
 「『時間旅行へようこそ:珠玉の芸術作品を心行くまで時を越えてご堪能ください』か。
   さて、鬼が出るか、蛇が出るか……」
そう呟いてから、妖夢は、その美術館で最後となる扉を押し開けた。

――――それで?最後にはどうなっちゃうの?
        最後はね……一番気に入っていた絵に閉じ込められちゃうの
        へぇ……でも好きな絵の中でずっと過ごすのなら、バッドエンドじゃなくてハッピーエンドなのかしら?

美術館に不似合いなドアの絵柄に似合わず、室内はスタンダードな絵が多く配置されていた。
おそらく、シンプルなものこそが最も長く愛され続けるという意味合いなのだろう。
単純な構図ながらも心打つ作品が多く展示されていた。
尤も、痛みのせいでコメント不能な物もちらほら見受けられたが。
 「田園風景、貴族の肖像画、静物画、柳と幽々子様、港、滝……ってうぉい!!」
 「あ、妖夢だ〜」
 「何故に絵の中に居るんですか幽々子さまっ!!」
並んでいる額縁のひとつの中に、なぜか幽々子が居た。
しかも、絵として描かれているのではなく、人間の上半身ほどの大きさの額の中で動いている。
 「えっと、話せば長いことながら……」
 「構いません。話してください」
 「絵の中に閉じ込められちゃった」
 「思いっきり短いじゃないですか」
とりあえず、ツッコミを入れる。額の中の幽々子様は、やっぱり幽々子様だった。
あまりの緊張感の無さに、妖夢は思わず肩を落とした。
 「ある画家には『幽霊の絵を書いたらあまりにも真に迫っていた所為で本当に幽霊が現れた』という
   逸話もあるけど、これはその逆みたい」
 「つまり、その……幽霊だから、その絵に引っ張りこまれたと?」
 「どうやら、この幽霊と柳の絵を描いた作者はよっぽどの思いを籠めていたみたいね。
   もしかしたら、私がこの絵を気に入ったのはその辺を感じたのかもしれないわ」
 「はぁ……」
 「それでお願いなんだけれど妖夢、この絵に全力で白楼剣の突きをしてもらえるかしら」
 「はい?」
唐突な話題転換についていけず、少々困惑する妖夢を他所に幽々子は当然のことを話すように続けた。
 「いいこと妖夢?これはつまりこの絵の作者の未練が引き起こした事態ともいえるわけよ。
   絵に思いが残っているということは、絵に対する執着があまりにも強いということともイコールなのよ。
   だとすれば、人間の迷いを断ち斬る白楼剣ならば……」
 「なるほど、解りました」
突きに体重を乗せるため、幽々子の居る額縁から距離をとる。
そして白楼剣を抜き放ち、水平に構える。
絵の作者がどれほどの思いを籠めたのかは知らないが、
妖夢には自分の幽々子への思いがそれを凌駕する自信があった。
必ず、幽々子様を、助け出す。
それだけを考える。
 「幽々子様、参ります」
 「ええ」
全身全霊の脚力を以って床を蹴る。
そして全体重を乗せた突きを絵に向けて繰り出す。
絵に触れるか触れないかという刹那の瞬間、威力を決定付ける一歩を踏み出し絵を貫く……
……ことができなかった。

 「へ?」
そこには一切の手ごたえが無く、腕はどこまでも奥へ奥へと吸い込まれていった。
 「え、ちょ……うわわわっ!!」
勿論、全体重を前に掛けていた体は止まりきれず。
下半身が壁にぶつかり、いよいよ体勢を制御できなくなった妖夢は
『額縁の模様を縁取った壁に開いた穴』から妖夢は隣の部屋へとヘッドスライディングする羽目となった。

            ************

 「う〜ん、これってなかなか見事なトリックアートよね」
額縁に細工された穴の縁を上機嫌に叩く幽々子に対し、
不本意なヘッドスライディングで鼻やら腹やらを強かに打ちつけた妖夢は実に痛々しかった。
そんな彼女にできることは、疲れ果てた声で主に質問することだけだった。
 「幽々子様、とりあえず倒れたままですが、起き上がる気力も無いのでご無礼をお許しください。
   流石の鈍い私でもこの一件を仕組んだのは幽々子様だと判ります。
   どういうことなのかご説明願えないでしょうか」
 「一言で言えば……『どっきりかめら』かしら?」
その一言で、妖夢はガツンと音を立てて撃沈した。
完膚なきまでに突っ伏している。
ちなみに、半身は妖夢の傍らで痙攣を起こしていたりする。
 「つまりね妖夢。私は芸術作品ということで、絵ではなく映画を作ろうとしたわけよ」
突っ伏している妖夢の反応を待たず、幽々子はコロコロと笑いながら話を続ける。
 「折角この私が作るのだから、どうせなら物凄い大作にしたいじゃない?
   で、紫に相談したら映画はどうかって勧められて……あ、映画って言葉知ってる?
   この『びでおかめら』っていう黒くてゴツい箱で映像を記録し、それを編集して作るんだって。
   紫がわざわざ貸してくれたのよ」
未だに、妖夢はうつ伏せで倒れている。この一言を聞いて、全く動かなくなった。
半身もまた、ピクリとも動かない。
 「何回か紫と相談した結果、妖夢を主役にしたアクションムービーにしようって決まったのよ。
   おめでとう妖夢、私を差し置いて主演女優賞がもらえるかもしれないわよ?
   ちなみにこの映画、役者が私と妖夢、撮影が紫と藍、雑務が橙を含む全員で……
   あぁそうそう。あと特殊技術でアリス・マーガトロイドに協力してもらってるわ。
   ちょっと顔を上げて御覧なさい」
倒れたままどうにかこうにか顔を上げると、幽々子の横に隙間が開きそこから名前の挙がった4人が顔を出した。
 「はい妖夢お疲れ様。今朝からずっと妖夢を
   ほんの少しだけ隙間を開いて撮影してたんだけど、気付かなかったでしょ?
   あ、ちなみに途中で独り言が多くなったって思ったみたいだけど、
   ちょっと『心の声』と『ホントの声』の境界弄らせてもらったから。
   観客へ簡単に状況説明するために、ね。
   言うまでも無いと思うけど、天使像の部屋で明かりを消した時に
   隙間を通して貴方をそっくりだけど別の部屋に送ったのも勿論私よ」
 「薄暗いお陰で画質はやや悪いが、上手く明度調整やら編集やらするから安心してくれ。
   それと……心を強く保って生きてくれ」
 「こっちも大変だったんだよー?こんな無駄に広いセット突貫工事で作ったりとか」
 「まったく、私渾身の人間大天使人形や人間大ミイラをよくもあんな滅茶苦茶にしてくれたわね……
   質感を完全再現するために素材集めに奔走したり、並みの労苦じゃなかったわよ。
   まぁ、そういう役回りって分かってたから覚悟してたけど、操作も大変だったんだからね?
   …………わ、私が笑ってるのは言われた仕事を上手くこなせたからなんだからねっ!?
   べべ別に撮影に誘って貰えた自体が嬉しいんじゃないんだからねっ?!ホントよっ!!」
妖夢の虚ろな視線の先では、4人が思い思いのことを言っていた。
しかし、その殆どが精神・肉体ともに疲れ果てた妖夢の耳を素通りするだけだった。
よって。その言葉を聞いた所為ではないのだが。
妖夢はゆらりと立ち上がった。
まるで幽鬼の如き気配を敏感に感じた紫はやや顔を引き攣らせたのだが、
これから先のことで頭がいっぱいな幽々子はそれを感じ取ることができなかった。
 「でも私ちゃんと最初に『危険なことだ』って言ってあるのよ?
   キチンと『美術館へ冒険に行きましょう』って言ったわよね。冒険は『危険を冒す』って意味だものね。
   ま、それはさておき……さーて、きっと大儲けできるわよー?秋の味覚食べ尽くせるわね〜〜。
   紫もどう?一緒に食べ……ってなんで隙間閉じてるの?」
紫曰く、次の瞬間妖夢は抜刀し幽々子に飛び掛かったらしい。
スタッフロールにでも使おうかと撮影しようとしたが、恐るべき鋭敏さで隙間に反応し
こちらを攻撃しようとしてくるため断片的にしか撮影できなかったのだそうな。

            ************

 「妖夢〜、よーーむ〜〜?」
『半人半霊バーサークデッド事件』の一週間後。
山々やら特定の人物やらに多大な犠牲の生じた映画は、漸く編集も終わり
幕や角材を様々な所から掻き集めて作られた即席の映画館にてついに公開されることとなった。
幽々子に呼ばれ、入り口の傍らで入場料の徴収に当たっていた妖夢(やさぐれモード)は
拍車つきの靴を履いた足を机から下ろし、視線をそちらに向けた。
ちなみに、半身は原理不明だがサングラスを掛けていたりする。
 「あぁ幽々子様、入場料はそれなりにゲットできましたよ
   よかったですねおめでとうございますああ私も嬉しいなぁ」
(ある意味当然と言えば当然の帰結だが)妖夢は今でも不機嫌だった。
ちゃんと食事の用意やらはして貰えるものの、なかなか会話してもらえないのだ。
一部破れた黒い革ジャケットを着用し椅子にふんぞりかえっている現在もそれは続いていた。
 「かなり大きめに造った筈なんですけど、ほぼ満室ですよ。
   射命丸経由でチラシ撒いたのが効いたみたいです。お陰で収入もすごいもんでさぁ」
今回、意地汚い――もとい、食欲溢れる幽々子は妖夢に命じてこの映画のチラシを作らせ、
そしてそのチラシを射命丸文に頼んで配布してもらった。
そこには『お金が無くても、相応の食べ物を持って来れば鑑賞できます』と書いてあった。
そのせいで金銭と縁のない妖怪や妖精達も大勢来た為、想像以上の観客動員数となったわけである。
 「うん、これは私の予想通りね。さーて今日の夕御飯が楽しみだわ〜〜」
 「へいへいそうですか。まぁ武士に二言はありませんからね。
   経過はどうあれ、約束通り芸術作品を創り得たお金で色々と秋の味覚を入手しますよ」
 「くぅ〜〜〜、生きてて良かったわ!!(注:死んでます)でもね妖夢、油断しちゃだめよ?
   そろそろ映画が終わるわ。全てのお客様が帰るまでお仕事終わらないんですからね?」
その瞬間、妖夢(やさぐれモード)は不気味な笑みを浮かべた。
 「えぇ、終わるまではまだありまさぁね……クックックック」
 「…………ちょっと妖夢、それどういう意味なの?」
 「さぁてね?観客の声でも聞いてみたらどうですかい?」
そう言われて、幽々子は観客のざわめきへと耳をそばだてた。
 『どうよリグル!!私映画に出たのよ!!あの日の朝ケンカをふっかけたのは正解だったわね!!』
 『冒頭の、ちょっとしたヤラレ役じゃないか……どう考えても時間合わせだと思うよ、チルノ』
 『いいのいいの!さ、エンディングも終わったし帰りましょ』
 『何言ってるのさ、まだ同時上映があるじゃないか』
 『あ、そういえばそうだっけ』

 「同時……上映……?」
幽々子は、そんな話を聞かされていなかった。撮った映画は1本のはずである。
いったい何がこれから上映されているというのだろうか?
 「幽々子様、チラシをご覧になりますか?」
呆然とする幽々子に対し、妖夢は慇懃無礼にチラシを渡した。
ひったくるようにチラシを手にした幽々子は視線を巡らせ……ある一点を凝視するにいたった。
 「『同時上映:実録!ドキュメント・オブ・幽々子〜亡霊的な彼女の昔話〜』……?」
硬直する幽々子の肩をポンと叩き、妖夢は同情するような声色で真実を伝えた。
 「以前物置を掃除してたら、黒い行李を見つけましてね。
   中を確認してみたらばなんと、8ミリテープがびっしりと入っていまして。
   紫様に尋ねてみたところ、以前興味本位で手に入れた撮影機を師匠に譲ったことがあったとか」
幽々子は、まだ硬直している。
 「どうやら師匠も気に入ったみたいで、色々と録画していたみたいですよ……初めて知りましたが。
   で、ついでに編集したのでどうせなら幽々子様の赤裸々な過去を皆様に知っていただこうかと」
幽々子はプルプルと小刻みに震えだした。そんな彼女の耳に、観客の声が届く。
 『うっわ、何これ?』
 『笑っては悪いですわ、お嬢様』
 『そういう咲夜だって顔引き攣ってるわよ……プフッ』
 『ほうほう、これはこれは』
 『おい香霖、顔が怖いぞ』
 『こりゃすごいですね』
 『小町、良いところなんですから静かにしてください』
がくり、と。
幽々子は膝からくずおれた。
そんな幽々子に対し、妖夢は色々な感情が綯い交ぜとなった表情を浮かべ、もう一度肩を叩いた。
 「おめでとうございます。この収入の殆どは『あなたの体を張った奉仕のお陰』です。」
そして次の瞬間、幽々子の絶叫が幻想郷に木霊した。

こうして、此度の映画騒動は幽々子の過去やら白玉楼の威圧感やらカリスマやらを失った替わりに
対外的には大成功で幕を閉じたのだった。

                                          FIN(深い意味は無いけどフレンチ風味に)
  スタッフ
主演:魂魄妖夢  助演:西行寺幽々子  撮影:八雲紫&八雲藍
特殊技術:八雲紫&アリス・マーガトロイド  大道具&小道具:橙&八雲藍
特別出演:チルノ
企画:西行寺幽々子&八雲紫
脚本:西行寺幽々子&八雲紫&アリス・マーガトロイド

スペシャルサンクス:
東方シリーズ
真っ暗森の歌に匹敵する、素敵なみんなのトラウマメイキングソング

そして

この作品を読んでくださった全ての皆様
K.M
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2006/10/28 08:16:12
更新日時:
2006/10/30 23:16:12
評価:
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0
Rate:
5.00
1. 6 as capable as a NAMELESS ■2006/10/29 19:28:27
凄い、脳内で曲が鳴ってたにも関わらず後書き見るまで元ネタに気づかなかったっす。
2. 2 箱根細工 ■2006/10/31 01:36:48
今一。
3. 5 らくがん屋 ■2006/11/01 16:36:41
独特な改行が読みにくいけど、まあ減点するほどでは無し。
幽々子黒幕が速攻バレてしまうのが弱点だけど、オチの妖夢が萌えるので相殺。
4. 5 椒良徳 ■2006/11/03 13:03:51
タイムトラベルは楽し♪
メトロポリタンミュージアム♪
大好きな絵の中に♪
閉じ込められた♪
……覚えているものですねえ。いや、思い出させやがってからに。
 さて、よんでいて気になったのですが
>そして、その付喪神が冒険者の求める宝箱のような自分の体を認識しているとしたら?
ここは「宝箱のように」ではないでしょうか。別にあかんわけではないですが。
あと、バトルシーンが説明的な固い文章で占められていて、魂が熱く燃えませんでした。もう少し文章を練ると良いのではないでしょうか。
5. 6 nn ■2006/11/07 01:30:22
天使の台詞にどうも心当たりがあると思ったら、あのMの話だったのですね。絵の中に入った時点で合点がいきました。ただ、話がすこし雑で軽い印象を受けます。もうちょっと練って欲しかったと思います。
6. 2 反魂 ■2006/11/08 21:54:23
何というか……全体的にちょっとバタつきすぎな印象があります。
コメディにしてもバトルにしても、小ネタを散りばめすぎた分テンポに欠ける感じが。プロット自体は面白い分シンプルさを重視し、引き締めるところをきちっと引き締めていれば、もっと楽しめる作品になった気がします。

あと個人的な意見ですが、こういう展開にするなら最初のフリは無しでも良かったのでは。のっけからシリアス調の冒険譚気味に起こしておいて、生死を賭したような壮絶なバトルを繰り広げ、そして最後の最後で目一杯落とす……って手法だったら、私は完璧にお手上げでした。

失礼、色々厳しいことは申し上げましたが、純粋な感想としては
  『その発想はなかった』
この一言にまっこと集約されるモノでございましたとさ(笑
7. 2 爪影 ■2006/11/09 19:57:33
 どうにも読み難い印象を受けたので、この点数にて。
8. 2 VENI ■2006/11/10 22:27:00
細かな描写はイメージを膨らませるためには必要だと思うのですが、
少々描写が細かすぎてテンポが悪い気がしました。
もうちょっとスリムにしても良いと思います。
9. フリーレス サカタ ■2006/11/12 04:23:10
話は面白かったです。映画撮影というオチもよかったです。
ただ文章構成というか、左詰じゃないのが読みづらかったです。そして少し長いですね。もう少し短く出来ると読みやすくなっていいと思います。
10. 3 たくじ ■2006/11/12 22:03:58
独特のスペースの使い方のために読みづらかったです。
内容と関係ないところで読み手がつまづいてしまうのはもったいないなぁと思います。
11. 9 ■2006/11/13 00:33:57
タイムトラベルは 楽し♪
そうですね、最後のタイムトラベル幽々子様ドキュメントは非常に楽しいでしょうw

あの歌って確かに怖いですけど、不思議な感じで何か好きだったりします。天使の最後のほうあたりで「あ、これ」と気付いてとても懐かしくなりました。
12. 3 藤村うー ■2006/11/13 02:42:47
 戦闘描写が淡々としていて、緊迫感がなかったところが残念。
 ところどころに現代的な表現があるのは、物語の目線でなく書き手の目線に立っていたからだと解釈しました。最後には映画に発展してますし、そのあたりの細かいところは気にしてもしょうがないとは思うのですけれども。
 仮に映像作品として後に公開するとしても、口頭の説明を増やすのはちょっと引っかかりました。明らかに説明しなくてもいいところも説明していましたし。
13. 3 Fimeria ■2006/11/13 06:09:12
話の過程ではなく、戦闘を書きたいから書いたというのが第一印象です。
箱というテーマが少し薄いような気がしました。
その為、少々厳しい点数になってます、ごめんなさい。
こう感じた人も居るのだと受け流していただければ幸いです。
14. 2 おやつ ■2006/11/14 11:03:08
タイムトラベルは、楽しいー♪

妖夢はよく頑張った。これからも頑張ってくれ。
今回のことでゆゆ様も少しは大人しく……ならねぇよなぁw
妖夢さんは少々独り言が多い寂しんぼさんですね!

15. 5 2:23am ■2006/11/14 23:10:45
うーん、落ちが弱かったですかね。途中の描写の印象が強すぎて。
16. 4 翔菜 ■2006/11/15 04:46:01
基本的な描写等は上手かったのですが戦闘シーンは少し冗長とも。かったるい感じは否めませんでした。

妖夢の独り言の多さはオチで納得、結構クスリと来ました。
妖夢がやられっ放しで終わらないのも良かったです。
17. 6 ABYSS ■2006/11/15 14:01:26
流れとオチと複線と。うまく絡み合ってて面白かったです。
ちょっと途中だれたのと、あとテーマが一瞬思い浮かばなかったのが少しマイナスだと思いました。
18. 1 つくし ■2006/11/15 19:10:49
自業自得哉。合掌。えーと、何か元ネタがあるのでしょうか? ゼルダの伝説みたいなゲームが画面に展開しているのをそのまま写生したような文章で、説明がやたら多く、読むのに疲労を感じました。また、文章レイアウトも非常に読みづらいです。また、複文を多用するのは読者を混乱させやすい為、注意が必要です。ギャグとしてもちょっと弱いかも。
19. 4 いむぜん ■2006/11/15 21:13:51
なんで美術館?と思ったところへ外で幻想になった可能性が示唆されて、そっち方面かと思ったら「紫、なんでもあり」だった。期待した方が悪いのか。
小さい戦闘を2つ挟んで仕掛けのネタばらしなんだが、さっきの美術館の生い立ち(?)も気になってたので、ここでがっかり。途中の会話で悪い奴らが判っちゃったというのもあるが。
創想話にあったら面白いんだろうけど、箱でなくてもいいような。
ツッコミどころとしては、
美術館の名前ってなんだったの?妖夢がお化けが苦手って話がどっかに消えてるような。
あとヤグルマ。
20. 5 blankii ■2006/11/16 21:10:02
妖夢が黒い……。まぁ、あれだけ弄られれば当然か。戦闘場面が状況描写に終始してしまったのが少し残念です。
21. 5 灰次郎 ■2006/11/17 02:51:37
プリズムリバー姉妹が楽器のケースを持って登場
とか期待してみたがそんなこともなかった
22. 3 人比良 ■2006/11/17 20:08:45

やめてメトロなポリタンやめて
トラウマスイッチを果てしなく刺激されるお話でした。
23. 3 目問 ■2006/11/17 22:28:02
 タイトルで既に例の歌が脳裏に。
 見た目にちょっと読みにくくなってしまってるのが残念です。
24. 4 時計屋 ■2006/11/17 23:23:46
トリックアートを凝らした怪奇な美術館が舞台という発想と、お話自体は面白かったのですが……。
残念ながら話の動きに、文章がついてきていない印象を受けました。
25. フリーレス K.M ■2006/11/26 07:14:28
今回はこの作品を読んでくださり、ありがとうございました。

一部の方はお気づきですが、この作品の大本のモチーフはある歌です。
かつてNHKの「みんなのうた」で放送されていた「メトロポリタン美術館(ミュージアム)」という曲がそれです。
(うた:大貫妙子   作詞/作曲:大貫妙子   アニメーション:岡本忠成)
20歳前後の人ならば、たいていは知っているであろう、映像・曲ともどもインパクトのある曲です。
知らない人がいるだろう事は、確かに予想できていました。
が、「分かる人は書いてないほうが楽しめるのでは?」という思いもまた頭にありました。
葛藤の結果、あえて曲名を顕にせず後書きで「〜〜〜トラウマメイキングソング」と書くにとどめました。
分からなかった皆様には、この場で深くお詫び申し上げます。ごめんなさい。

なかなかしっくりくるネタが出ず、自分にとってコンペ史上過去最高の難産でした。
箱について「ブラックボックス」「びっくり箱」他色々と考えを巡らせ、行き着いた先が「宝石箱」でした。
そこから「宝石→博物館→美術館」と連想していき、「美術館→例の曲」と発展しました。

最初は、妖夢が天使像やミイラと対話する内容だったのです。
しかし、美術館行きの動機を考えていくうちに「箱」性が薄いと感じ始め…
そこに「密室→暗室→映画館」がプラスされこのような作品と相成りました。

なお、文のレイアウトに関しては酷評されておりますが、戒めの意もこめてこの場では訂正しません。
このときの私の全力の結果が、このような形となってしまったので……
別の場で再発表する機会があるならば、そのときは改訂しようかと考えておりますが。

それでは、いつもどおりにコメント返しをさせていただきます。

>時計屋さん
もっともっと精進せねば、折角のアイデアも生かせないか………次回はもっとがんばります。

>目問さん
やはり分かる人には即座に分かりましたか。
表示形式は…今回最大の失点です、はい。

>人比良さん
あの歌は、やはりトラウマ度が高いですよね。

>灰次郎さん
ごめんなさい。私も出したかったのですが、どうしても出演させられられませんでした。
自分に出来る最大の妥協点が、3番目の扉のイラストでした。
スタッフロールにテーマ曲もしくはBGM担当で名前だけ出すという手もあったのですが…

>blankiiさん
実は戦闘物が初挑戦な私。ぶっつけ本番で経験不足という地金を曝け出してしまいました。

>いむぜんさん
ツッコミどころ多い作品になってましたか……無念。
>>そっち方面かと思ったら〜
>>美術館の生い立ち
この点に関しては、ご期待に沿えずごめんなさいとしかいえません。
>>箱でなくても〜
申し訳ない。一応、「箱状の部屋」とか「棺」とか強引に「箱」へこじつけてみたけど……駄目でしたか
>>美術館の名前
上記の通り歌がモチーフなので、あえて書きませんでした。上記参照。
>>妖夢がお化けが苦手って話〜
確かに、入る前の「ホラーテイストな空気を〜」でほのかに匂わせる程度になってしまってます。
戦闘開始後は、タイミングがなかなか見つからなかったもので……
でも、初めて天使像を見たときにびびる描写ぐらい入れた方がよかったかもしれませんね。
>>ヤグルマ
タイムリーかな?と思いまして。不快に感じられたのなら、申し訳ないです。

>つくしさん
元ネタは、歌です。上記参照。
戦闘描写・レイアウトに関しては、もっと上手になれるよう努力します。

>ABYSSさん
う〜む……元ネタはもっとはっきり明記した方がよかったですかね。少し後悔。

>翔菜さん
天使像が最初12体だったのを削ったり、ミイラの戦闘を一気に終わらせたり努力はしたのですが……
冗長さはどうにもフォローできませんでしたか、反省。
>>やられっ放しで終わらない
やはり、物事にはそれ相応の報いがあってしかるべきかと。

>2:23amさん
オチが弱かったですか……途中が濃すぎるというのは盲点でした。
次に作品を書くときには、気をつけようと思います。

>おやつさん
妖夢の独り言は、戦闘描写・状況描写の未熟さをどうにかしようと足掻いた苦肉の策でした。
それが良いか悪いかはさておき、このアイデア自体は結構気に入っていたり。

>Fimeriaさん
初めは、戦闘のない作品にするつもりだったのですが……思い付いたら止まりませんでした。
戦闘シーンに力を入れすぎたのは事実なので、その批判は真正面から受け止めます。
また、他の人と被らない「箱の作品」を目指した結果、根本を忘れた感も確かに否めません。
辛口コメント、恐れ入ります。

>藤村うーさん
幻想郷から見ると、映画は世界観にそぐわなかったでしょうか?
ぎりぎりセーフかと思ったのですが……すみません。

「エジプト文明」絡みなど、現実世界に即した描写が多いのは事実です。
妖夢が没薬(もつやく)や天使の階級について知っていたのは……やり過ぎだったかもしれませんね。

口頭説明の多さに関しては、きっと私の未熟ゆえです。
もっと描写を取捨選択できるレベルに到達できれば、克服できると思うのですが……先は長そうです。

>翼さん
ネタを満喫していただいたようで、何よりです。
あの曲は、私も大好きです。同世代で行ったカラオケで歌うほどに。(大概、懐かしがってもらえます)

>たくじさん
レイアウトに関しては、今回の反省材料のひとつです。
第一回コンペで読みづらいといわれ、文体に気を使うようにしており……
良かれと思ってこのような形にしたのですが完全に空回り、裏目となってしまいました。無念。

>サカタさん
レイアウトとともに、文の量自体もまだまだ未熟、かorz
もっと的確かつ適切な量を書けるようになるには……次回の課題ですね。

>VENIさん
「アレもコレも」ではなく「必要最小限でスッキリ」……がんばります。

>爪影さん
「読みやすい」……私の至上命題です。次回こそは、次回こそは……!!

>反魂さん
思いついたネタを可能な限りつぎ込もうとする私にとっては、非常に耳の痛いコメントです。
ですが、この習性はおっしゃるとおり文のテンポなどをかなり犠牲にしてしまいます。
分かっては、いるのです。今回も幾つか削ったのですが……
『もっと削ろう』と考えると『いやいや、このネタは必要だろう?』とブレーキが思いの外強く働くのですorz
バッサリとネタを切り捨てる思い切り・覚悟がほしい……いや、持てるよう精進します。

ストーリー順に関しては、起承転結を意識したのでその構成はまったく思考の外でした。
まさにコロンブスの卵、言われてびっくり……あぁ、自分の未熟さを思い知らされます。

厳しいですが、的確なコメント恐れ入ります。
そんな方にネタを楽しんで頂けたのは、とても光栄です。参加した甲斐がありました。

>nnさん
プロットを思いついたあと一気に書き上げたのは事実です。その後も推敲は行ったのですが……
プロット自体をもっと練りこむべきだったか。まだまだ私は甘くて青いということですね。猛省。

>椒良徳さん
懐かしさ直撃ですか。それは書いた身としては何よりの賛辞です。
>>「宝箱のように」ではないでしょうか。
『付喪神は、認識している。冒険者の追い求める宝箱が如き自分の体を。』
倒置で書けば、こういう意味です。分かりにくい文章は、こちらの失点ですね、はい。
>>バトルシーンが説明的な固い文章で占められていて〜〜
やはり、経験不足が響いたか……それでも、チャレンジしてみたかったのは事実。
そのことの批評は、真正面から受け止めさせていただきます。
別口で練習してみようかな……

>らくがん屋さん
改行に関しては、次回改善努力をします。

やはり黒幕は即効バレてしまう方もいらっしゃいましたか。
妖夢に萌えていただけたならば恐悦至極。

>箱根細工さん
ネタがつまらなかったか、文章作成能力に問題がありすぎたか……残念です。

>as capable as a NAMELESSさん
してやったり、とニヤつく頬を懸命に抑えております。あぁ、やっぱりこの題材を選んでよかった。
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