鬼萃想

作品集: 最新 投稿日時: 2006/10/28 08:56:22 更新日時: 2006/11/22 02:35:56 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00


カッカッカッ―――


静寂の闇の中で、靴が奏でる硬質な音だけが鳴り響いていた。
周りは所狭しと本が並べられ、それでも収まりきらない蔵書の山が床に放置されている。
それらは室内の薄暗い光に照らされて……
まるで、本の墓場とでも言うような不気味な雰囲気を称えている。
その本の間を掻き分けるようにして、一人の少女がゆったりとした足取りで歩いていた。

寝間着のような乳白色の服と帽子に、色とりどりのリボンと月型の髪飾り。
アメジストを思わせる紫色の髪が揺れ、眠たそうに閉じた半眼からは闇色の瞳が覗いている。
題名のない黒い表紙の本を小脇に抱え直すと……
ヴワル図書館の主、パチュリー・ノーレッジは小さくため息をついた。

「 また来てる……」

そう呟いた彼女の声には、呆れと疲れの響きが混じっていた。
紅い霧が幻想郷を包み込んだ美しい満月の一夜……
それが明けて以来、この図書館には来訪者が多くなった。
黒白の少女から始まり、人形使い、たまに半霊や蓬莱人とまさに千客万来だった。
そのたびに十六夜咲夜や紅美鈴に注意を促がすのだが、残念ながらその効果は全くと言っていいほどない。

「 そろそろ本格的に対策を考えた方がいいのかしら」

パチュリーは眉間を軽く押さえながら、いつも自分が本を読んでいる場所に向かった。
そこには大きな机と、読み書きが充分に出来るほどの明かりが灯っている。
彼女はいつもそこで本を読み、時として魔法書を執筆する。
簡単に言えば、極めて重要なプライベート空間なのだ。
そこに何の許可もなく立ち入られたとあっては、腹も立つと言うもの……

「 こら、そこ! 何をしているの」

苛立ちを隠そうともせず、パチュリーは机を占領していた侵入者に声をかけた。
彼女がいつも座る椅子にあぐらをかき、身体がすっぽりと覆い隠されるほど大きな本を開いている。
本の影になっているので、その姿は見えないものの……
その本の両端から覗く特徴的なモノを見れば、誰であるかはすでに明白だった。

「 ん〜……? 見て分からない。本を読んでるの」

しかし、その侵入者は本から顔を上げる事も無く……
実にのんびりとした声で、パチュリーの問いに答えた。

「 あら、そう。バカでも分かる状況説明をどうもありがとう」

この時点で、彼女の怒りは限界点に到達した。
だが、ここで感情のままに弾幕ゴッコをすれば、ただでさえ散らばった本をまた集め直す事になる。
それに、この侵入者は、恐らくそれが目的で来ているのだ。
相手の思惑通りになるのは面白くないし、それに付き合ってやる理由もない。
パチュリーは大きくため息をついて気を紛らわせると、空いていた席に腰を下ろした。

「 うちの図書館には泥棒以外は来ないのかしら」

パチュリーは椅子に深く腰をかけると、手に持っていた魔道書を読み始めた。
精一杯の皮肉を込めたその言葉に、ようやく侵入者は本を倒してパチュリーの方に視線を向けた。

「 こらこら。私と魔理沙を一緒にするな」
「 似たようなものでしょう。白黒は本を、そして貴方は私の時間を盗んでいくわ」
「 人間じゃあるまいし……ちょっとくらいでケチケチしないの」

侵入者は口端を緩めながら、開いていた本を勢いよく閉じた。
そして、腰にぶら下げていた大きな瓢箪(ひょうたん)を手に取った。
それを横目で見ていたパチュリーは不機嫌そうに眉をしかめる。

「 ここでの飲食物は禁止よ」
「 嘘。あんた、ここでいつも紅茶とか飲んでるじゃん」
「 本を大事にしない者には特別待遇よ。後、零されでもしたらたまらない」
「 そうなんだ。何事も特別というのは気分が良いね」

皮肉をさらっと受け流すと、侵入者は何の遠慮も無く瓢箪に口をつけた。
彼女が喉を反らして瓢箪の中にある酒を飲むたびに、頭に生えた特徴的な長い角が揺れる。
その角が、いつ本や椅子を傷つけないかパチュリーは気が気ではなかった。
無視していれば何とかなるかと考えていたが……
向こうは傍若無人を絵に描いたような人物で、このまま何もせずに帰ってくれそうもない。
図書館の主は読もうとしていた魔道書をパタンと閉じて、今日一番のため息をついた。

「 それで……何の用なの、小鬼」
「 言わなくても分かってるクセに」

パチュリーの呼びかけに、してやったりという笑顔を浮かべて……
小鬼と呼ばれた侵入者は伊吹瓢から口を離した。



「 遊ぼう、引き篭もりっ!!」



しばらくの静寂の後……

「 やっぱり……」

パチュリーは肩を落として、小さくそう呟いた。
始めに彼女が来た頃は、色々と試したい新スペルなどがあり、言われるままに相手をしていたのだが……
さすがに新作の魔法も無くなり、充分な成果が得られたまでは良かった。
しかし、それで味を占めた小鬼が、暇つぶしに来るようになってしまったのは最大の誤算だった。

「 あの豆をぶつけてくる魔法以外なら何でも使っていいからさ。やろうよ」

早く早くと急かすように、小鬼は机に手をついて小さな身体を上下させる。
暗闇の中でも色褪せない鮮やかな金髪が、尻尾のように左右に揺れる。
まるで犬のような愛嬌のある仕草だが……

「 いやよ。今日はあまり体調が良くないの」

しかし、パチュリーの心を動かす事は出来ない。
もっともそれはパチュリーに限らず、この少女の正体を知っている者はみんな同じような反応を示すだろう。
この小鬼と遊ぶという行為がどれほど疲れるのか、誰もが身を持って知っているのだから……

「 体調良い時の方が少ないじゃん。いつもの事でしょう」
「 貴方と違って、私の身体は繊細なのよ。無理をしたら悪化するでしょう」
「 子供は外で遊ぶもの。身体を動かしていれば健康になるって」
「 確かに生きてきた年代は貴方が上だけど……でも、どっちが子供なのかしら」
「 うるさい。どうでもいいからやると言ったらやるの」

大きな瞳を爛々と輝かせて、身を前に乗り出してきた。
生きてきた時間の長さと濃さを現すかのように、まっすぐ伸びた二本の大きな角を誇らしげに見せ付けながら……
数多の妖怪の中でも最強と謳(うた)われる鬼の少女、伊吹萃香はパチュリーに詰め寄った。

「 そんなに遊びたければ、博麗の巫女とやればいいじゃない」

机の上に飛び乗ってきそうな萃香を目線で制しながら、パチュリーは逃げ道を模索する。
だが……

「 やだ。霊夢とやっても面白くないよ」

萃香は楽しそうだった笑顔を曇らせると、後ろにあった椅子に腰を下ろした。

「 そうなの? 例の百鬼夜行異変では、すごい激戦だったと聞いたけど」
「 まあね……でも、普段の霊夢は手を抜くから。勝っても負けても納得できない相手とはやりたくないの」

吐き捨てるように呟くと、萃香は不機嫌そうに口を尖らせた。
鬼の名を冠する者達は、他のどの種族よりも戦闘意欲が高く、そしてプライドが高い。
レミリアも紅魔異変以後、霊夢と何度となく弾幕ゴッコをしているが、その結果を彼女の口から聞いた事はない。
要するに、はっきりとした決着がついた事は一度もないのだろう。
それは博麗霊夢という人となりを知っている者には、容易に想像できる事だった。

「 だったら、もう一人の人間は?」
「 魔理沙? あれもダメね……勝つまでやろうとするんだもん」
「 ん? 勝敗がつくならいいんじゃないの?」
「 その場は勝っても、次の日とかにまた来るの。勝つまで休ませてくれないの……
  勝ち逃げするまで続けるなんて卑怯だよ」
「 それって、一度勝ったらもう勝負しないという事?」
「 そうっ!! まったく、あんなヤツとの再戦はこっちから願い下げだよ!」

萃香はぷくっと頬を膨らませると、退屈そうに足をブラブラと動かし始めた。

「 確か、あの神社には悪霊がいたんじゃなかったっけ?」
「 ああ、魅魔の事? 滅多にいないし、飽きた。同じやるなら、色々な魔法使うあんたの方が楽しい」
「 なるほど……じゃあ、うちの門番とか」
「 弱い者いじめは趣味じゃない」
「 咲夜とか……」
「 レミィがダメだって。今度やったらここへの出入りは禁止されちゃうのよ」
「 それならここじゃなくて、他の場所にいけばいいじゃない。冥界とか竹林とか」
「 遠いじゃん。帰りが遅いと、霊夢がご飯作ってくれないんだよ」
「 清々しいほど自分本位ね、貴方……」

パチュリーはズキズキと痛み出したこめかみを押さえながら、ほうっとため息をついた。
この鬼も、紅魔館の主であるレミリアに負けず劣らずの我侭だった。
早くここから追っ払う為には勝負するしかないか、とそう思った瞬間に―――
彼女の中で、ふと閃くものがあった。

「 ねえ、確か貴方……レミィと戦った事があったのよね」
「 うん、あるよ。なかなか面白かった」
「 でも、少しだけ不満に思ったんじゃない? だって、レミィは本気を出さなかったでしょう」
「 まあね……ちょっと痛い目みたらすぐに逃げて行ったよ。本当ならもっと戦えるクセにさ」
「 レミィには本気で戦えない理由があるのよ」
「 ふ〜ん。でも一応の決着はついてるしね。その理由とやらにも興味はないかな」
「 そう……」

萃香の答えを聞いて、パチュリーは薄っすらと笑みを浮かべた。

「 じゃあ、この話は無駄になるかしら?
  せっかく用意してあげようかと思ったのに。
  本気のレミリア・スカーレットと……生死をかけた勝負を」

伊吹瓢に口をつけようとしていた萃香の動きがピタリと止まった。
つまらなそうだった表情に緊張が走り、瞳が続きを促がすようにパチュリーに向けられている。
今の言葉で、戦闘種族としての血が疼いたのだ。

「 この紅魔館で、本気のレミィと戦った事がある者は二人いるわ。一人は私。そして……」
「 十六夜咲夜?」
「 違うわ。彼女はおろか、霊夢達ですら本気のレミィは知らないはずよ。
  スカーレットデビルと呼ばれていた頃のレミリア・スカーレットは……ね」

パチュリーは萃香にそう説明しながら、ふと数十年前の光景が目に浮かんだ。
赤い満月を背にして浮かぶ、コウモリの羽を持つ少女。
地獄の炎のような深紅の瞳を煌々と輝かせながら……
その淡いミルク色の服に、満月よりもさらに赤い鮮血の飛沫をつけた悪魔の姿を……

「 ふ〜ん……その頃のレミィは今よりも強かったの?」
「 強いわ。今の私が全力で戦っても勝率は三割もいかないわね」
「 へぇ、そこまであんたに言わせるとはね……」

興味が引かれたのか、萃香は机に身を乗り出すほど聞き入っている。
闘争本能が燻るようにしてその身体から妖気が溢れ出し、空気が帯電したかのようにピリピリと張り詰めていく。
パチュリーはその反応に満足しながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「 でも、残念ながらレミィ本人とは戦えないわ。さっき言ったように色々と理由があるから」
「 そこでもう一人の、レミリア・スカーレットに本気を出させた奴の登場ね」
「 ご明察」

無表情だった顔をわずかにほころばせると、パチュリーは静かに席を立った。

「 ついてきなさい。その子がいる部屋の前までなら案内してあげる」



――――――――――――――――――紅魔館 秘密の通路



コッ、コッ、コッ……

深遠の闇に小さな足音が消えていく。
わずかに入る月の光が、まるで地獄へ誘う道しるべのように等間隔で床を照らしていた。
周りは何の装飾もない無機質な壁で覆われ、まるで岩で出来た牢獄を彷彿とさせる。
その道を、萃香は臆する事なく堂々と歩いていた。

「 ふ〜ん……紅魔館にこんな場所があるとはね」

レミリアや咲夜もそうだが、紅魔館に住む者達は優雅さと気品を重視している。
貴族気質を忘れず、訪れたものを圧倒するほどの装飾が随所になされている。
それだけに、この単調で質素な室内は異様さを極め……
その岩肌に所々刻み付けられた、巨大な暴力の爪痕を引き立たせていた。
しかし、そんな光景を目にしても萃香に怯える様子はまったくない。
退屈そうに伊吹瓢の酒を仰ぎながら、深遠のより深い闇に足を踏み入れていく。

「 本当に何もないね。寂しい部屋だこと」

霊夢達が侵入した時は、それこそ館の全メイド達が集結したものだが……
今回はパチュリーが独断で招き入れた事もあってか、周りは静寂に包まれていた。

「 そろそろ飽きたな。何にもないんじゃあ……退屈だよ」

手に持っていた伊吹瓢を肩に担ぎ、萃香はそこでピタリと足を止めた。
そして、その小さな胸を膨らませると、静寂を打ち破るようにして叫んだ。

「 そう思うだろう? そこにいるあんたも!!」

ビリビリと壁が震動し、はっきりと透る声が闇を引き裂いていく。
周りは、月明かりで照らし出された窓枠しかない廊下の中央……
しかし―――

「 いつから気付いてたの?」

萃香のモノとは別の声が、どこからか響いてきた。
ソプラノのようにはっきりと、それでいてあどけない少女の声。
それが、この部屋の主であり、スカーレットデビルと本気で戦った事がある者の声だった。

「 入り口からずっとつけていたの、ちゃんと気付いてたよ」
「 じゃあ、どうして今まで声をかけなかったの」
「 だって、私が逃げられない場所に行くまで待っていたんでしょう?
  攻撃をしてすぐに逃げられたんじゃあ、興醒めも良い所だしね」
「 なぁ〜んだ。そこまで分かっていたんだ」

クスクスと上品な笑い声を上げて……
萃香の前に、金と赤色をまとった少女が闇から浮き出るようにして現れた。

「 初めまして、勇敢な鬼さん」

闇から現れた少女はスカートの端を両手で摘み上げ、深々とお辞儀をした。
それに合わせて、肩口で切り揃えされた金髪と横に結ったポニーテイルが優雅にたなびく。

「 え? 私の事知ってるんだ?」
「 もちろんよ。貴方が最近になってここに出入りしてる事も、その時の会話も全部聞いていたわ」

少女は顔を上げると、興奮を抑えるように背中から伸びる刃のような羽を一度だけ大きく羽ばたかせた。

「 そして、あいつに勝った事もね」
「 あいつ? 色々なヤツに勝ってるからそれだけじゃあ分からんよ」
「 お姉様。レミリア・スカーレット……そして魔理沙に霊夢。
  私のお気に入りの玩具を倒した貴方に、ずっと会いたかったわ」

スッと瞳が細くなり、姉と同じように禍々しい真紅の光を放ち始めた。
吸血鬼の瞳は見つめるだけで魅了されるほどの美しさと、そして狂気を秘めている。
その狂気をどこか懐かしそうに受け流しながら、萃香は屈託のない笑みを浮かべた。

「 あんたと私はどこか似てるね。幻想郷にはあまりいないタイプだ」
「 それは結構。じゃあ、ひょっとして考え方も似ているのかしら」
「 少なくても退屈はさせないよ。私の方はね」
「 私もそのつもりよ。せいぜい楽しませてくれる?」

ピキッ……と薪を割ったような小さな音が鳴り響いた。
やがて、それは徐々に大きくなり始め、耳鳴りのような音に変化していく。
妖怪の中でも頂点に位置する、鬼の名を冠する二人の少女。
その身体から吹きだす狂気と闘気がぶつかりあって、空気が恐怖の悲鳴を上げる。

「 自己紹介がまだだったわね。フランドール・スカーレットと申します」
「 私は伊吹萃香。あんたの破壊する能力とやらに興味があって来たわ」
「 いいわ、貴方の望むままに壊してあげる。
  その長い二本の角……次は足、腕……そして最後に貴方の命ごと砕いてあげる」
「 ふふっ……舐めるなよ、吸血鬼。
  それなら私はあんたの血を残らず絞り出してあげるよ」

フランドールは自分の身長ほどもある、曲がりくねった音符のような槍を構える。
一方、萃香は伊吹瓢を腰の鎖に結わえると、身体を前後に揺らしながら独特のリズムを刻み始めた。

「 弾幕ゴッコじゃない戦闘なんて久しぶり……せいぜい壊れないようにね」
「 はははっ! かかってきなよ、小さな吸血鬼さん」



「 じゃあ、行くよ―――!!」



カッと真紅の瞳を見開き、フランが地面を勢いよく蹴った。
萃香との距離はおよそ20m……
突進はもちろん、例えレザー型の弾幕ですら一瞬の内に届くのは不可能な間隔。
しかしフランは、萃香がまばたきをしたその一秒にも満たない瞬間に20という数字を0に変えた。

「 ふぅっ!!」

フランの猛禽類を彷彿とさせる鋭く、そして長い爪が何の躊躇もなく萃香に振り下ろされる。
鉄板はおろか、自然石ですら容易に引き裂く吸血鬼の爪は、まともに当たれば間違いなく命まで引き裂く。
それを音速に近い速度から振り下ろしたのだから、並みの者は何が起こったのか理解する前に死亡するだろう。
しかし……

「 ―――ふんっ!」
「 なっ!?」

スパーンッと乾いた音が鳴り、フランの振り下ろした爪が後方に弾かれた。
その手首に走る痛みと衝撃に……
フランの身体はバランスを崩し、後方にたたらを踏む。

「 こ、いつっ……!?」

萃香は音速で振り下ろされたフランの手首を、拳で正確に打ち抜いてみせたのだ。
フランは驚愕に顔を引きつらせながら、すぐに体勢を立て直そうとするが……

「 まだだっ!!」

その隙を、百戦錬磨を誇る萃香が見逃すはずがなかった。
床を踏み抜くほど強く地面を蹴り、その小さな身体を腰から外側に捻りこむ。
踏み込んだ足を土台にして、身体全体の筋肉を逆側に引き絞る。
それは弓を引く作業に似ている。
矢を番えた弦を思いきり引き絞ったのなら、後はそれを放つだけ―――

「 せいやぁああっ!!」

小さな身体に竜巻のような回転と反動をつけて、萃香の拳が放たれた。
フランの爪が猛禽類ならば、萃香の拳は岩そのもの。
生物を無慈悲に叩き潰す鬼の鉄槌に他ならない。
それは相手が誰であろうと変わらず、萃香はフランを殺すつもりで拳を伸ばす。

だが、その瞬間――戦慄が背中を駆け抜けた。

「 しゃあぁあっ!!」

跳ね上げられた腕とは逆の方で、フランは手に持っていた槍を振り上げていた。
顔を目掛けて迫る槍を尻目に、萃香はギリッと奥歯を噛んだ。

『 勢いがつき過ぎている。止められない!!』

だが、このまま行けば萃香の拳が届く前に、リーチの長い槍が先に当たる。
この一撃で終わればいいが……
最悪の場合、自分の方がダメージを喰らっただけに終わる可能性も高い。
通常、体勢を崩された所から反撃しようと考える者はいない。
何をしても威力が落ち、致命傷をもらう可能性が高い体勢でいるメリットがないからだ。
しかし、桁外れの身体能力を持つフランは片足が浮いた状態から、上半身の捻りだけで槍の一撃を放ってきていた。

「 はぁあああっ!!」
「 てぁあああああっ!!」

裂帛の気合と共に、両方の攻撃が交差した。

「 がはぁっ……!!」

フランの口から空気が漏れ、そのわき腹に萃香の拳が当たっている。
だが、しかし――

「 くぅっ……!!」

萃香はそれ以上拳を深く入れられず、身体が大きく横に流れていく。
その頬には朱色の線が走っていた。

「 拳を、当てられた……?」

フランはわき腹を押さえながら、素早く後方に飛んだ。

「 くっ、当たりが予想よりも浅すぎた……」

それを横目で追いながら、萃香は悔しそうに歯軋りをする。
懐に飛び込んできたフランに、後にも引きずるようなダメージを与えたかったのだが……
萃香は自嘲するような笑みを浮かべると、頬から垂れてきた血を指で拭い取った。

「 あの体勢から、冷静にこっちの一番嫌な攻撃をしてくるとはね……やるじゃない」
「 貴方の方こそ。臆せずに拳を振り切ってくるなんて」

あの攻撃が交差する瞬間に、萃香は身体と足を大きく開いて正拳突きから天を突くようなアッパーに無理やり軌道を変えたのだ。
前傾姿勢から180度転換して、後方に身体を逃がしたからこそ、槍の一撃は頬を掠める程度ですんだ。
だが、反動がついた動きを無理に変えようとすれば、それ相応のダメージが身体に返ってくる。
結果的に言えば、ダメージは萃香の方が上になってしまったかもしれない。
しかし、そうしなければフランの一撃は目に当たり……
骨を切る代わりに、萃香は距離感と視界を同時に失う事になっていた。
いくら萃香とは言え、フランの動きを片目で追うなど不可能に近い。

「 フフッ……あははははっ!! 久しぶりに熱い戦いが出来そうね」

フランは殴られたわき腹を愛しそうに撫でながら、狂ったように笑い出した。
さっきまでのあどけない少女の仮面が脱げ、狂気の吸血鬼フランドール・スカーレットの顔が表に出て来たのだ。
心臓まで押し潰されそうな重圧と妖気の中で、萃香もまた口端を大きく歪める。

「 ええ。幻想郷で思う存分に拳を振るえる相手がまだいたなんて……嬉しい限りよっ!!」

鬼の血が騒ぐのか。
萃香の瞳が生き生きと輝き出し、拳を一層硬く握りこんだ。

「 でも、勝つのは――」
「 私の方だっ!!」

今度は二人が同時に地を蹴った。
上空から弧を描いて迫るフランに対して、萃香は千鳥足のようなステップで迫っていく。

「 せいっ!!」

萃香の目の前に着地すると同時に、フランは爪を横薙ぎに振るう。
狙いはただ一点。
その酒気を帯びて赤くなった顔を切り裂く為の一撃。
だが、そこで萃香もピタリと足を止めた。

「 はぁああっ!!」

鋭い声と共に、何の予備動作もなく拳が飛んできた。
ふざけたような千鳥足はしっかりと地を噛み、一呼吸の間に拳を打ち出す理想の体勢を作り出していた。

ブォオオンッ!!

身の気もよだつような風切り音と共に、再びフランと萃香の拳が交錯した。

「 ちっ……!!」

フランの爪は萃香の顔を捕らえる事は出来ず、その爪端にわずかな頬の皮膚一枚を削るだけに終わる。

「 くっ……!!」

逆に萃香の拳も空を切り、フランの白い肌にわずかな赤い傷痕を残すだけだった。

「「 ふぅっ―――」」

どちらともなく、大きく空気を吸う音が響く。
そして―――

「「 はぁああああああああっ!!」」

おたがいに足を止めての乱打戦にもつれ込んでいった。
並みの妖怪ならば一撃で絶命するほどの攻撃が、たった1mにも満たない距離で何度も交錯し、ぶつかり合う。
音速すら超えたハンドスピードに空気が引き裂かれ、ぶつかり合う衝撃と妖気に大気が揺れる。
地鳴りのような音が響く中で、二人の少女は片時も相手から瞳をそらさずに攻撃を放ち続ける。

ビツッ――!

「 つぅっ……!」

肌を切り裂かれた痛みに、萃香は眉を潜めた。
直撃は一発もない。
それにも関わらず、すでに萃香の肌は裂傷だらけになり血飛沫が舞い始める。
フランの爪は鋭利で硬く、それでいて早い。
萃香のように身体の捻りを加えなくても、ただ振るだけで凶器になりえる。
それによって引き裂かれた空気は瞬間的に真空化し、ギリギリでかわしても皮膚が持って行かれるのだ。
しかし、ただ爪を振るだけなら、隙を見計らってさっきのように拳で打ち上げる事も出来る。
そこに勝機があると見ていたのだが……

「 っ!?」

その時、横薙ぎの爪の間から黒い線が迫ってきた。

「 ちぃっ!!」

それを素早く察知した萃香は身体を半身に傾けて、大きくのけぞる。
その上を―――

シュバッ―――!!

鋭い音を立てて、スペードの形に似た槍が貫いていった。
フランの持つ曲がった音符のような槍。
それがフランの攻撃の間合いを変化させ、萃香の目が爪を振る速さに慣れないように幻惑する。
しかも、そのリーチを利用して、萃香の手が届かない場所からの攻撃にも使える。
いつの間にか、萃香は防御主体の戦いを強いられる展開になっていた。

『 殴り合いの才能はレミィより上だ、こいつ』

だが、萃香とてやられっぱなしで終わる妖怪ではなかった。
冷静に一つ一つの攻撃を見て、確実に反撃の時を待ち続ける。

「 ここだっ――!!」
「 っ―――!!??」

萃香は迫りくる槍の突きをしゃがんで避けると、その隙を見計らって拳を振り上げた。

「 おぉおおおおおっっ!!」

ゴヒュウッ―――!!

空気を穿つ轟音と衝撃が、フランの耳横を通り過ぎていった。
地面スレスレから、萃香自身の身体を叩きつけるようにして放たれた一撃。
完璧に避けたはずなのに、フランの頬がビリビリと痺れて引きちぎられそうに痛む。

「 つっ……」

その衝撃がおさまると同時に、フランの口の中に血の味が流れ込んできた。
萃香の攻撃は単発ながら、その一撃一撃に必殺の威力が込められている。
もしあの拳が顔を直撃したらと思うと、背筋に冷たい汗が流れていった。

『 こいつ強い。こんなバカげた力持ち、今までに戦った事がない』

無意識に働く命への危機感から、フランは萃香に致命打を合わせる為の後一歩が踏み出せない。

「 はぁああっ!」
「 はっ、ふうぅうっ!!」

二人の少女は荒い呼吸を繰り返しながらも、攻撃の手を休めようとしない。
ここで引いたら、一気に持って行かれるとはっきり感じ取っていた。
しかし、相手の隙を誘って攻撃を重ねるが、その全てがことごとくかわされる。
フランは持ち前のスピードと身体能力で、萃香はカンと豊富な経験の差で。
死角はおろか、攻撃の打ち終わりの隙、体勢が崩れた瞬間を狙っても直撃を許さない。


ガキンッ―――!!!!


「 ちっ!」
「 キリがない……!!」

三度の拳と爪の交錯で、おたがいの攻撃を弾き合うと同時に……
萃香とフランはまったく同じタイミングで後方に飛んで、距離を開けた。
おたがいに、まともな攻撃は一切受けていない。
しかし、萃香はすでに血だらけになり、その肌をいくつも赤い雫が滴り落ちる。
フランは血こそ出ていないものの、病的に白い肌を赤い拳の痕が無数に走っていた。
それらの傷が痛くないワケがない。
だが、そんな感情など入り込む余地が無いほどに、彼女達の血はなお熱く燃え盛り始めた。

「 スペルカード―――」

キンッと硬質な音が響き、フランの指に一枚のカードが出現した。
それは自分から空中にクルクルと回転して浮かび上がり……
まるで陽炎のような黒い炎をまとって空気に溶け散っていく。

「 禁弾――スターボウブレイクッ!!」

フランの声が闇の広がる空間に響き渡る。
そして―――

ボッ……

最初は、ロウソクに火を灯したような音が鳴り……
それをきっかけにして、フランの背後から地響きのような轟音が近づいてきた。
闇に一つ、また一つと火が灯り、数百数千と言う無数の光が瞬き始める。

「 貫けぇええっ!!」

フランが手を前に突き出すのを合図に、それらの光は一斉に萃香を目掛けて放たれた。
夜空に走る流星のごとく、軌跡を描いて走る様子はまさに星で作られた虹色の矢。
幻想的な美しさの影に、絶対の破壊力を込めた無数の矢が萃香を貫かんと飛翔する。

「 ふっ……」

その光景を見て、萃香は小さく口端を緩めた。
まるで『この程度か』と言わないばかりの余裕の態度に、フランの表情が歪む。

「 鬼火―――」

萃香は大きく拳を振りかぶると同時に、大きく息を吸い込んだ。
すると、その拳を中心にして大気が渦を巻き始める。
それに引きずり込まれるようにして、空気、そして妖気が拳の中に集まっていく。

「 超高密度……燐禍術っ!!」

声高に技名を宣言すると同時に、その大気を引き込んだ拳が地面に振り下ろされた。

――ンッ……!!

地面に拳が当たったと同時に、館全体に衝撃波が伝わっていく。
しかし……

「 何も、起きない??」

その大げさなほどのモーションが終わっても、辺りは不気味な静寂に包まれていた。
そうしている間にも、スターボウブレイクの魔法矢は萃香に迫り、目前まで迫ってくる。

「 あっはははははははっ!! もしかしてこれで終わりなの? 伊吹萃香っ!!」
「 そう吠えるな。いつだって真打ちっていうのは……」


「 ―――遅れて現れるもんだよ」


萃香の声に応えるようにして……
静寂を突き破り、拳を叩きつけた場所の床が大きく口を開いた。
そして、その奥から炎をまとった大きな土の塊が噴出してくる。
その塊は萃香を守るように浮かび上がり、流星の矢をことごとく受け止めていく。

「 へぇ……驚いた」

これで決まるとは思ってはいなかったものの……
自分の想像を越えたスペルブレイクのやり方に、フランは目を白黒させる。
数千もの星の弾幕は数十の隕石にぶつかり、全てが砕け散っていく。
高濃度の妖気が弾け、土片が飛び散り……
辺り一面が瞬く間に粉塵の霧で包まれていった。

「 スターボウブレイクで押し切れないなんて……」

フランは苛つきに下唇を噛みながら、次のスペルカードを取り出そうとした。
その刹那―――

「 っっ!!??」

フランの瞳は、土煙に隠れたその中で腕を大きく回転させる萃香の姿を捉えた。
その腕はさっきと同じく、大気が渦を巻いて凝縮し……
妖気と土片を巻き上げて、萃香の身体よりも巨大な岩石を形成していく。

「 符の壱――投擲の天岩戸ッ!!」

萃香は腕を回転させるその動きのままに、岩石をフランに投げつけてきた。
高速で飛来する岩石は残っていたスターボウブレイクの矢を叩き折り、最短距離を走りながらフランに迫っていく。
今更、どう動いた所で逃げ道などない。
無常な岩石は捉えたモノを押し潰し、その中に命ごと閉じ込める。
完全に捕らえたと萃香は核心を持った。
しかし―――

「 フフフフッ……その程度で勝ったつもり?」

フランの口が三日月のようにつり上がり、真紅の瞳が宝石よりも輝きを放つ。
その手には音符の槍と、スペルカードが一枚握られていた。

「 禁忌―――」

フランは両手で槍を掴んで大きく振り被ると、持っていたスペルカードを炎上させた。
少女の声が響くと同時に、その身体から一陣の風が吹き付けてくる。
チリチリと肌を焼き、呼吸をすれば肺と喉が痛むほどの熱量を込めた風。
そして、それ以上に……
心臓を握り潰されかねないほどの圧倒的な質量を持った殺意を、その小さな身体から溢れさせて……
フランドール・スカーレットは禁断の技を宣言した。

「 レーヴァティィィイイイインッ!!」

その背後から巨大な炎が燃え上がる。
それは天を突かんばかりに立ち昇り、やがて一つの形を成していく。
炎と妖気で作られた巨大な剣―――
全てのモノを飲み込み、壊して焼き尽くす必殺のスペルカード。

「 砕け散れぇえええええっ!!」

弓を引くように、身体を限界まで後ろに反らせると――
フランは紅蓮の剣を振り下ろした。

「 ―――っっ!?」

萃香の顔が戦慄に凍りついた。
その一撃は眼前に迫っていた岩石を一瞬で蒸発させると、勢いを止めずに萃香を目掛けて振り下ろされる。

「 逃げなきゃ……」

萃香はとっさに身体を後ろに引くが……
上から落ちてくるレーヴァティンの圧倒的な業火の刃に、血の気が引いていった。

「 でも、どこに……?」

横に行こうが後ろに飛ぼうが、何をしてもよける事が出来ない……許されない。
かと言って、それを受け止めるなど萃香の力を持ってしても不可能だった。
フランがその能力を使った一撃から逃れる術は無い。
何故なら、彼女の能力はありとあらゆるものを破壊する。
絶対的な力の前に、弱者は平伏す事さえ許されず、ただ殺される――

ドシュゥウゥッ――!!

「 ぐっ………ふっ!!」

萃香の身体に無常なる炎の一撃が走った。
身にまとっていた服は一瞬で溶け散り、金色の髪が炎上する。
萃香の小さな身体は、あっという間に火だるまと化した。
時が止まったように空中で制止し、身体を炎で蹂躙される萃香を見て……
フランはその必殺の剣を収めた。

「 ふふ……あはは……」



「 ふふふはははははっ! あーーーーはははははははっ!!
  砕けた砕けたっ!! 所詮はくだらない玩具だったというワケね……」

フランは刃のような羽をばたつかせながら、狂気すら含んだ歓喜の声を上げる。
勝てた事が嬉しいのではなく、自分の力で壊した事に喜びを見いだす。
壊れた玩具が何であるかは、この少女にとって重要な事ではなかった。

「 まあ、それでもよく持った方か……
  しかし、こんなのにやられるなんて、お姉様も腕が落ちたものね」

ゆっくりと闇に溶けながら消えていく萃香を、つまらなそうに眺めると……
フランはその場を後にしようとした。
だが………

ボフッ――!!

「 えっ……?」

軽い音を立てて、萃香の身体が空気に霧散していく。
水蒸気のように薄い煙状になりながら、文字通り空気に同化していった。

「 な、何……今の?」

狐に化かされたかのように、一瞬で……それでいてあっけない最後。
何も残っていない空間を見つめながら、フランはきょとんとした表情を浮かべる。
しかし、すぐにフランはまだ戦いが終わっていない事に気付いた。

「 霧が……集まってくる!?」

フランを囲むようにして、真っ白な煙が立ち昇る。
そして――

「 いやぁ、少し飲みすぎたね。酒気を帯びてたせいかよく燃えるわ」
「 後ろっ!!??」

能天気な声に素早く反応して、フランは後方を向いた。
その眼前に、赤く燃えさかる拳が迫っていた。

「 妖鬼――密っ!!」

消えたはずの萃香の声が響き、とっさに交差させたフランの腕に鉄球でも投げつけられたような衝撃が走る。

「 ぐっ、うぅうっ!!」

骨ごと叩き折られそうな衝撃に、フランが後方に大きく弾かれる。
その身体を、萃香の拳にまとっていた炎が襲い掛かり、フランの身体に直撃した。

「 うわぁあああっ!!」

たまらず、フランは空中を飛んで炎をかき消した。
だが……その身に追ったダメージは決して小さくは無かった。

「 い、伊吹―――すいかぁああああっ!!」

勝利を確信した瞬間に叩き落された屈辱と、身体に走る痛みにフランは怒りを露わにする。

「 驚かされた分、ちゃんとお返しはしないとね」

その怒声を飄々と受け流しながら、萃香は伊吹瓢に口をつけた。
萃香の能力は疎と萃。
あらゆるものを集められる一方で、物と物の間を開ける事も出来る。
逃げ切れないと察した瞬間に、萃香は自身を霧化させて回避していた。
その時に、自分に似た色だけを引き寄せて、フランの目を欺いたのだ。

「 いくら、あんたでも……ぷぁっ、霧になった私までは破壊できないよ」
「 小賢しい真似、してくれるわね……」

地獄の底から響くような声を出して睨みつけるフランを肴にして、萃香は美味しそうに酒を仰ぐ。

「 さて、続きをしようか。あんたが負けを認めるまでね」
「 調子に乗らない事ね。今度は霧になる間もなく壊してあげる」

二人の少女の視線がぶつかり合う。
衰える所か、なおも昂ぶる闘気と妖気……そして殺気と狂気。
二人が放つ重圧に大気が揺さぶられ、地面に落ちていた石片が浮かび上がった。
高度の対魔法処理を施してある壁に亀裂が走り、館全体が恐怖に震える。
その中心に立つ少女は、再び相手を壊す為に駆け出し――

「「 はぁあああああっ!!」」

己の持つ絶対的な力をぶつけ合い始めた。



――――――――――――――――――紅魔館 ホール



「 咲夜さ〜〜んっ!! いないんですかっ!」

紅魔館の中を、紅美鈴は全力で駆けながらメイド長の名前を呼び続ける。
本来、このような行為は住む者の品位を下げると注意されるのだが……
今、紅魔館には十六夜咲夜どころかメイドの姿すら見えない。
嫌な予感に駆られた美鈴は、どこからか吹き出して来る妖気の元を探りながらそこに向かっていた。

「 この先を曲がればすぐだ」

掌の中に、緊張の汗が噴出してくる。
この先にある部屋はただ一つ……フランドール・スカーレットの部屋だけだった。
そこから尋常ではない妖気が溢れている。
普通の神経を持った者ならまず近づこうとは思わないだろう。
だが、その異常をこの館を守る要である咲夜が放置しておくはずがない。

「 っ!? 咲夜さんっ!!」

通路の角を曲がった先に、まるで仁王立ちするような格好で立つメイドが一人だけいた。
銀色の髪をなびかせ、その指には数本のナイフを握っている。
意思の強い切れ長の瞳を険しく細めながら、その先の通路を睨みつけていた。
とりあえず無事だと分かった美鈴は安堵のため息をつくと、咲夜の元に走っていった。

「 何かあったの、美鈴?」

近づいていた事に気付いていたのか、咲夜は振り返りもせずにそう尋ねてきた。

「 それは私の台詞ですよ! これって、妹様の妖気なんじゃ……」
「 ええ、その通り。この先で……今、幻想郷でも十本の指に入る妖怪が戦っているそうよ」
「 そうよ……? お嬢様が戦っているんじゃないんですか!?」
「 違うわよ。パチュリー様が用意した新しい玩具なんですって」
「 そんな……止めなくていいんですか!?」
「 だったら、貴方が止めてくれる? あの中に入る勇気があるのなら」
「 え、えぇ〜……」

美鈴は顔色を青くしながら、通路の先に視線を向けた。
ビリビリと壁を伝わる衝撃で館全体が震動し、妖気と言う名の質量を持った風が獣のようなうなり声を上げる。
自分とはまるで別次元の戦いが行われていると、容易に想像できる……
その中に飛び込める勇気など、あるはずがなかった。

「 逃げたければ逃げなさい。すでに館のメイドは全員退避させているわ」
「 咲夜さんは……逃げないんですか?」
「 お嬢様がまだ眠っていらっしゃるから。パチュリー様も残っていますし」
「 ど、どうして起こさないんですかっ!? 危険ですよ」
「 危険だから逃げろとでも言うつもり? お嬢様がそれで頷くと思ってる?」

この館の主は、わがままな一方で悪戯好きとしても有名だった。
無理難題を押し付けて、戸惑う者達の姿を見て楽しむ。
そんな悪趣味な部分を持ち合わせている者が、この事態を見逃すはずが無い。

「 そういう事よ。私はお嬢様が館から逃げるまではここにいなければならない」
「 だったら私も……」

ウォォォォオオオオン―――!!

その時、狼の遠吠えのような音が鳴り響き……
通路の奥から一陣の風が吹き付けてきた。

「 うぐっ!!??」

その風を受けた瞬間、美鈴は急激な吐き気に襲われた。
心臓が恐怖に縮み、足がガクガクと震えてその場に崩れ落ちそうになる。

「 大丈夫? 気をしっかり持ってないと……死ぬわよ?」
「 こ、これって……」
「 落ち着いて深呼吸しなさい。間違っても気は失わないようにしてね」

その風はすでに妖気などという類ではない。
圧倒的な狂気と殺意。
その本位を果たせずに散った空気が、他のモノを殺そうと蠢いている。
言うなれば、この風自体がすでに死の塊……見境無く生物を取り殺そうとする死神に他ならなかった。
戦いの余波だけでこれなのだから、その中心がどうなっているかはすでに予想すら出来ない。

「 さ、咲夜さんは……大丈夫、なんですか?」
「 大丈夫なワケないでしょう。さっきから苦しいわよ」
「 怖く、ないんですか?」
「 ……さあ? でも、もしあの通路から妹様が飛び出してきたら戦わないといけない。
  怖いだなんて思っていたら、その一瞬で殺されるわよ」

事も無げにそう呟きながら、咲夜は片手に持った懐中時計を握り締める。
今まで感じた事がないほどの力の余波……
霊夢達と戦っていた時ですら、これほどの狂気を感じた事はなかった。
フランドール・スカーレットの脅威を改めて認識させられる。

『 私で止められるかしら……メイド達とお嬢様、パチュリー様達の退避。
  少なく見積もっても三分は稼がないとね』

片時も通路から目を離さず、咲夜は臨戦体勢で状況を見守り続ける。

「 美鈴。どうするの?」
「 が、頑張ります。私もこの紅魔館を守る者ですから」

美鈴は口元を押さえながら、素早く立ち上がった。
しかし、すぐに膝が笑い、倒れそうになる。

「 無理だと思ったらすぐ離脱するのよ」
「 やりますっ! せめて、盾くらいにはなりますよ」
「 ふふっ……そう。言葉にした以上、紙の盾くらいの役目は果たしてね」

美鈴の言葉を聞いて、緊張し続けていた咲夜の神経が少しだけ緩む。
頼りにならないとは言え、味方がそばにいるという状況は多少なりとも心を楽にさせた。

『 でも、これで少なく見積もっても五分は稼がないとダメになったか』

咲夜は心の中で冷静に状況を判断しながら、フランと何者かの戦いが終わるのを見守り続ける。

『 一体、誰なのかしら。妹様と互角の戦いをする妖怪なんて……』



――――――――――――――――――紅魔館 秘密の通路



「「 はぁっ、はぁ……はぁ……」」

大きく肩で息をしながら、フランと萃香が睨みあっていた。
すでに肌は裂傷、切り傷だらけになり、服もボロボロになっている。
普段の彼女達ならもうやめたと言い出すほどのダメージだったが……
そんな緩んだ気持ちは一切見せず、己の持つ全ての力を解放していく。

「 禁弾―――カタディオプトリック!!」

フランの命を受けて、その身体から青い球体が空中に四散する。
その球体は周りを飛びかっていた妖気を吸収して、膨れ上がり……
部屋内をビリヤードの球のように跳ね返り、あたり構わず飛びかっていく。

「 すぅっ……妖鬼、疎っ!!」

それを見た萃香は口元に指を当てると、ヒョウッと言う口笛と共に空気を吐き出す。
すると、その吐息に混じっていた酒の粒子が、萃香そのままの形に変化し……
無数に散った小さな萃香は、青い弾幕の隙間を縫うようにしてフランに近づいてくる。

「 そんなヤワな攻撃でっ!!」

フランは瞳を大きく見開くと、掌に妖気を集中させる。

「 うぉおおおっ!!」

気合の一閃と共に、フランの手が空気を横に引き裂いていく。
まるで空気が傷を負ったかのように、三本のカギ爪の跡がくっきりと浮かび上がる。
そこから、血のように赤い魔力の波が押し寄せていった。
その大気の奔流はスピードを増し、萃香の小さな兵隊を蹴散らして飛んでくる。
しかし―――
萃香はまるでそれを予期していたかのようなタイミングで、片手に溜めていた疎の力を投げ放つ。

「 符の参――追儺返しブラックホール!!」

萃香の投げ放った小さな白い球は高速で飛来し、フランの放った血の竜巻に飲み込まれていく。
そして、そこで白い球から漆黒の闇が顔を出した。

「 くっ――!? なにっ??」

その時、フランの身体が強力な力で引っ張られた。
現れた漆黒の闇が渦を巻き、青の弾幕や血の竜巻を飲み込んでいく。
張り巡らせた弾幕が一瞬で消えた事に、フランは下唇が白くなるほど強く噛み締めた。

「 な、なんて滅茶苦茶なヤツ……」

フランは素早く後ろに飛びながら、何とかブラックホールに引き寄せられまいと抵抗する。
だが、それこそが萃香の狙い目だった。

「 酔符――っ!!」

萃香は素早く腕に付けられていた鎖を手にとり、一瞬のうちに高速回転させる。
そして、フランが地面に着地する瞬間を狙い――
その鎖を投げ放った。

「 鬼縛りの術っ!!」
「 なっ――うぁあっ!?」

着地した隙を狙われたフランの身体に、鎖が蛇のように絡みついていく。
両腕はもちろん、両足にいたるまで完全に拘束されたフランに、逃げられる場所など残っていなかった。

「 もらったっ!!」

萃香はその鎖を引き寄せると同時に、大きく拳を振りかぶった。

「 うぁああああっ!!」

フランは抵抗しようとするが、萃香の力によって強引に引きずられる。
鎖が解けた瞬間には、すでに眼前まで萃香の拳が迫っていた。

「 ちぃっ!!」
「 遅いよっ!!」

とっさにガードしようとしたフランの腕を弾き飛ばして、萃香の拳が鳩尾に突き刺さった。
筋肉を衝撃が突き抜け、押し潰された内臓が悲鳴を上げる。
フランの身体に、まるで腹がえぐられたと錯覚するほどの痛みが走った。

「 がっ……はぁっ――!!」

瞳を大きく見開き、フランは苦悶の表情を浮かべる。
そして、萃香はそのまま拳を上に振り抜いた。
風をきる轟音と共に、フランの小さな身体が空中に放り出される。
萃香はそのまま飛び上がると同時に、振り被っていた右を打ち下ろした。

「 ぐふぁあっ!!」

打ち下ろした拳が、寸分たがわず再びフランの鳩尾にめり込んだ。
そして萃香は右の拳に疎の力を集中させながら、フランの身体を地面に叩き付ける。

「 地霊――密っ!!」

フランを地面に叩き付けたと同時に、巨大な石の槍が天を穿つようにそびえ立つ。

「 うぁあああっ!!」

石の槍に身体を貫かれたフランは、そのまま空中に投げ出され――
もんどりを打ちながら石床を転がり、うつぶせになって倒れ伏した。

「 はぁ……はぁ、はぁ……んっ、んんっ……」

萃香はフランの姿を確認しながら、酒を口の中に流し込んだ。
乾ききった喉に清涼な酒が流れ込み、疲れきった身体に染み入っていく。
ここで追撃を決められれば、それが決定打になるかもしれない。
だが、その前に自分を回復させなければならないほどに、萃香も疲労していた。
刻一刻と傷口から血が滴り落ちている。
人ならば意識混濁、妖怪でも貧血で失神しかねないほどの傷を負っていた。
戦況だけ見るなら優位に立っているが、それもわずかな隙を見せればひっくり返るだろう。

「 はぁ……これで、まだ戦える……」

萃香は二の腕で口元を素早く拭うと、臨戦体勢を取りながら様子を窺った。
ボロボロになって横たわるフランを見れば、これで決着したと思えなくも無いが……
まだこれで終わるはずが無いと確信していた。

「 早く立ってきなよ。近づいてきた隙を狙ってるなら無駄な事だよ」

萃香は倒れたまま動かないフランに声をかけた。
風すらも止んだ静寂の一瞬が訪れる。
そして―――

「 ふっ……ふふっ……本当に、小賢しいヤツ……」

まるで幽鬼のように、音も無くフランが立ち上がった。
顔を伏せているので表情は分からないが、その前髪の下から覗く口が弧月のように歪んでいる。

「 スペルカード……」

何もない空間から引き寄せるようにして、フランの指の間にカードが出現する。
一見すれば、さっきと何ら変わらない状況であるにも関わらず……
危険を感じた萃香の背中を、冷たい汗が流れていった。

「 ねえ、私達ってさ……簡単にモノを壊せ過ぎだよね」

さっきまでの狂気が嘘のように静かな声で、フランが語りかけてくる。

「 まあね。力が強いと言うのはそれだけで不便な面もあるもんさ」
「 そうだね。だから、つい……手加減しちゃう。
  もっと楽しみたいから。この幸せな時間をもっと、もっと……
  でもね……貴方はダメ」

フランの指の中でスペルカードが炎上する。
ほの暗い闇の中に、炎によって薄っすらと浮かんだフランの表情は笑っていた。
ほおずきのように赤い瞳を輝かせながら……
そこには何の感情も無く、まるで人形のような作り物じみた笑顔を張り付かせている。

「 貴方は私を殺せるだけの力がある。
  手加減なんかいらないと思うと……楽しくなってきちゃう。
  実に百年……うぅん? 二百? 三百? あは、どうでもいいね。
  こんなに何かを壊すという事に、楽しみを感じたのは久しぶりだよ」

壊れたオルゴールが奏でる不協和音。
そんな美しくも耳障りな言葉を口から紡ぎながら、フランの背中の翼がバタバタと揺れる。

「 くっ……うぅっ……」

苦しそうに胸を抑えて、フランの上半身が前のめりになった。
顔を手で隠して、苦しげに息を吐き出す。
だが、萃香にはその揺れる肩が、まるで笑っているようにしか見えなかった。

「 貴方を、壊す……萃香を殺す、壊して塵にして、血煙にしてあげる。
  それを浴びたら、私……きっと幸せになれる」

顔を押さえた指の間から、真紅の瞳が覗く。
その瞳には萃香だけが映し出されていた。

「 壊す、壊す壊す……コワスコワスコワスコロスッ!!」

フランの背後に六芒星の術式が現れる。
その中心に立ち、フランドール・スカーレットは弾かれたように顔を上げた。

「 禁忌――!! フォーオブアカインドッ!!」

六芒星が白銀のような光を放ち、その中から三つの人影が浮かび上がる。
金色の髪をなびかせ、血よりも鮮明な赤い服をまとった少女。

「 フランドールが四人に、なった!?」

萃香は驚きに瞳を見開いた。
そう、それは紛れも無くフランドール・スカーレット。
多少妖気の質は違えど、容姿、雰囲気、狂気にいたるまで本人そのもの。
そんな者が三人も新しく現れたとなれば、萃香でなくても声を上げるだろう。
だが……未だにスペルカードは炎上し続け、それがまだ未完成である事を伝えていた。

「 オブ――!!」

ボウッ!! という音と共にスペルカードが消失する。
それと同時に、大気が轟音を上げて爆発した。

「「「「 レーヴァテインッッ!!」」」」

一瞬聞き間違いかと疑うほどの言葉を紡ぎ、四人のフランは背後にある六芒星に両手を突っ込んだ。
そして、その手に自分の身体よりも大きな炎の剣を引きずり出してきた。

「 あっ……冗談、でしょう?」

そのあまりにも絶望的な光景に、萃香は言葉を失った……
四人のフランドール・スカーレットが両手に二本づつの小型とは言えレーヴァテインを持っている。
逃げ道などなく、対抗する術も思い当たらない
巨大な六芒星を背にして、四人のフランはまったく同じ顔で同時に笑顔を浮かべた。

「 おまたせ」
 「 貴方のコンティニュークレジットを頂くわ」
  「 それじゃあ―――」
   「 壊れちゃえええええええっっ!!」

翼をはためかせ、四人のフランが萃香に迫ってくる。

「 くっ!!」

当然、萃香はそれを迎え撃つ気はなく、そのまま霧化して逃げ出そうとする。
これだけの魔力放出を長時間していられるはずがない。
それまでは撤退して、この技をやり過ごそうと考えた。
だが――!!

「 ふっ!!」

それを予想してフランの一人が、手に持っていたレーヴァテインを投げつけてきた。
空中に炎の尾を描きながら、光の早さで萃香に迫る。
完全に霧化する前に当たれば、間違いなく致命傷になる一撃。
確率は低いがこのまま逃げるか、それとも迎え撃つか……

「 くそっ!!」

萃香は散りかけていた身体を一瞬で戻すと、飛来してきた炎の剣を目掛けて拳を突き出した。
鬼という種族の血が、逃げる事を許さなかった。
ここで、もし致命傷を負えばそれで終わってしまう。
逃げようとした上に敗北するなどと言う屈辱は、萃香にとって死よりも耐えがたい事だった。

「 せぃやああっ―――」

二つの極限まで高められた闘気と、妖気が空中でぶつかり合う。
狼の咆哮のような炸裂音が鳴り、その余波を受けて空気が切り裂かれていく。
炎の剣と鬼の拳、二つが空間で均衡し合う。

「 ―――ああああああっ!!」

裂帛の気合と共に、萃香の拳が振り切られた。
力を失ったレーヴァテインは硬質な音を立てて床に転がっていく。
だが、ほっとする余裕すらなく、目の前にはすでに四人のフランドールが迫っていた。

「 死ねぇえええっ!!」
「 私をなめるなよ、フランドール・スカーレット!!」

フランは正面から同時にレーヴァテインを振り下ろした。
合計で七本にもなる無慈悲で、圧倒的な破壊力を込めた斬撃。
それを萃香は前に出て迎え撃つ。

ドドドドドドドドドッッッ――――!!

二人の声すらかき消すほどの轟音を立てて、拳と剣がぶつかりあう。
一瞬で終わると思われたフランの攻撃を、萃香は完全に受け止めていた。
二本を右手一本で叩き落し、次のフランのレーヴァテインを角で弾く。
その背後から現れたフランを伊吹瓢で叩き落して、最後のフランは左手で迎撃する。
流れるような動作で確実に攻撃をさばく萃香を見て、フランは驚愕するよりも高揚する心を抑えきれなかった。

「 あはははははははっ!! すごい、すごいよ、伊吹萃香っ!!」

狂ったような笑い声をあげるフランを尻目に、萃香は奥歯を噛み締める。
防御は出来たとしても、攻撃が一切出来ない。
一瞬でも防御の手を休めれば、たちまち萃香は塵になるまで炎の剣によって蹂躙される。
もはや絶望としか言いようの無い状況にも関わらず、萃香の瞳は力強く輝く。
たった一つだけ、そして一度だけのチャンスを慎重に狙い続ける。

「 もう少し……」
「 見事だね、萃香っ!! でも……これでっ!!」
「 っ!!」

振り下ろしと横薙一辺倒だったフランの攻撃に、突きと下薙が加わる。
萃香は何とか反応しようとするが、あまりにも多彩な攻撃に徐々にガードが崩されていく。

「 うぁああっ!!」

下から上に向かって振りぬかれたレーヴァテインの一撃によって、萃香の両腕が跳ね上がる。
萃香の身体に朱色の線が走り、鮮血が迸った。

「 もらったっ!!」

たたらを踏んで後退した萃香に、四方からフランが一斉に踊りかかる。
その瞬間、萃香は会心の笑みを浮かべた。

「 かかった――」

萃香の足元に魔方陣が召還された。
金色の象形文字が小さな円の中に複雑な式を描き、萃香の身体に力を流し込んでいく。

「 化かし合いは私の勝ちだっ!!」
「 なっ――!?」

危険を察知したフランが驚きに目を見開く。
だが、勢いのついてしまった身体は容易には止められない。

「 鬼神――ミッシングパープルパワーッッ!!」

身体に残った全ての力を注ぎこみ、萃香は大きく身体を開いた。
足元の魔方陣が大きく展開して、魔力の奔流が立ち昇る。
それを受けて、萃香の身体が大きく膨れ上がっていった。
身体や角は言うに及ばず、その鋼鉄すら貫く拳も何もかもが巨大化していく。

「 くっ!!」

フランはレーヴァテインを交差させて防ごうとするが―――
バキンッという派手な、まるで金属を叩き壊した時のような音と共に炎の剣が砕け散る。
その眼前には、まともに受けたら死ぬとまで直感した巨大な握り拳が迫っていた。

「 うぁああああああああっ!!」

萃香は渾身の力を込めて吠える。
巨大化した萃香に跳ね飛ばされて、フランはきりもみを描いて壁に向けて一直線に吹っ飛んでいった。
勢いよく飛び込んだ所に、身長ほどもある萃香の拳でカウンターを合わせられたのだ。
その衝撃とダメージは、通常の測りを遥かに振り切っていた。

ドゴンッッ―――!!

館全体に衝撃が走るようにして、フランは壁に叩きつけられた。
それでも勢いは止まらず、フランの身体を中心にして亀裂が走る。
そして、壁に威力を物語るような、巨大なクレーター状の穴を穿った。

「 ぐっ……あっ……!」

フランの口から多量の血が吐き出された。
煌々と輝いていた瞳の宝石が色を失い、ガックリと頭を垂れる。

「 はぁああっ、はぁああっ……はぁああっ」

力が切れて徐々に小さくなっていく萃香は、フランがどうなったかを確かめる事も出来ずに天を仰いでいた。
ここしかないと言うタイミングを得る為に払った代償は、あまりにも大きかった。
さばいていたとは言え、フランのレーヴァテインは確実に萃香の身体を削っていた。
すでに自慢の両腕は切り傷と火傷、青アザで真っ黒に染まり、持ち上げるだけでも激痛が走る。
体力はもちろん神経にいたるまで削られまくった萃香は、今そよ風が吹いても倒れてしまいそうだった。

「 で、でも……これでようやく……終わった」

萃香は膝に力を入れると、周りを見渡した。
そして、フランが倒れている数を慎重に数えていく。
一つ、二つ……三つ……

「 あれ? 一つ、二つ、三つ……一つ、足りない!?」


「 ―――誰をお探しかしら? 伊吹萃香……?」


笑いを押し殺したような声が背後の闇から響く。
弾かれたように、萃香が視線を向けると……
そこには四人のフランドールが、さっきと何一つ変わらぬ姿で立っていた。
そのあまりにも絶望的な光景に、萃香はガクリと膝をついた。

「 な、なんて非情な現実……笑いしか出て来ないよ」
「 惜しかったわね。私の本体を捕らえる事が出来ていたなら勝てたものを……」
「 はぁっ、はぁ……運が、悪かったようね」
「 違うわ。これは必然……貴方が霧になれるように、私も有効な避け方があるの。
  お姉様と戦った事があるなら、言わなくても分かるでしょう?」
「 コウモリ化か……」
「 うん、その通り。切り札は最後まで取っておかなくちゃね」

そう告げると同時に、三人のフランが萃香を取り囲んだ。
絶望と悔しさに、萃香は下唇から血が滲むほど強く噛み締める。

「 私、嘘は嫌いだからちゃんと貴方を血煙にまで砕いて上げる」

羽についていた刃から炎が噴出し、三人のフランが炎の翼を纏う。
両手のレーヴァテインを合わせて、合計十六本の破壊の爪。
それを構えながら、フランは童女のようなあどけない笑顔を浮かべた。



「「「「 おやすみなさい 」」」」



一人のフランが飛び出し、後ろに大きく振りかぶる。
そして、大きく息を吸い込むと、その真紅の瞳に殺意と言う名の炎を燃え上がらせた。

「 十六爪炎壁っ!!」

ブワッ―――ドドドドドドドドドッッッ!!

何もなかった空間に、炎の牢獄が出現する。
その中に閉じ込められた萃香は、その姿が霞むほどの勢いでレーヴァテインで殴られ続ける。
時間にして一秒、その間に切りつけられた回数は実に一万回。
一瞬にしてボロ雑巾のようにされた萃香は、抵抗する事すら許されずに吹き飛ばされていく。
だが、それだけで終わりではなかった。

「 砕けろっ!! 十六爪炎壁っ!!」

吹き飛ばされた先で、待ち構えていたフランがレーヴァテインを振りかぶる。
そして、一片の慈悲も無く、再び萃香を煉獄に叩き落す。
もう霧になる余裕すらないのか、萃香はフランの攻撃をただ無防備に受け続ける。

「 あははははははっ!! まだまだ終わらないよっ!! 十六爪炎壁っ!!」

今までの鬱憤を晴らすかのように、萃香は三人のフランにいたぶられる。
獲物を捕まえた猫が、わざと逃がして死ぬまでいたぶり、遊び尽くすように……
レーヴァテインの攻撃、三万回の間で萃香はお手玉にされる。

「 はい、パスッ!!」

最後に残っていたレーヴァテインでフランは萃香を上空に打ち上げた。
そこに、恍惚とした表情でいたぶられる萃香を眺めていた少女が待ち構えていた。
この地獄を作り出した張本人、フランドール・スカーレット。

「 禁忌―――!!」

フランが振りかぶると同時に、三人のフランが炎となって槍に吸い込まれていく。
空気がフランの身体から滲み出る狂気によって流動し……
まるで壊れたラジオから響く笑い声のような、不気味な震動音を上げ始める。
いや、それは空気だけではなかった。
紅魔館だけではなく、花畑や森、湖に至る周辺全てのモノが笑うかのようにして左右に激しく揺れる。
フランが呼ぶ狂気が、あらゆるものの精神を破壊して笑い声を上げさせる。

「 レーーーーヴァティイィィィィィンンンンンンンッッッ!!!!!!」

さっきの元とは比べ物にならないほどの、巨大な炎の剣が出現する。
フランドール・スカーレットの力の根源は狂気。
発狂した状態の彼女に今、伊吹萃香は映っていない。
ただ、目の前に飛んでくるモノを消し飛ばすという純粋な破壊衝動のままに、剣を振り下ろす。

「 ハハッハハッハハハッハッハッ!! くだけちれぇええぇええぇえええっ!!!」

狂った笑い声に応えるようにして、レーヴァテインが燃え上がった。
それは紅魔館の壁を貫き、その剣に触れたモノ全てを蒸発させる。
その様子はまるで灼熱の太陽。
その炎天下に晒された全てのモノを焼き尽くし、灰になるまで照りつける金色の炎。
一瞬で館の半分を飲み込んだレーヴァテインはそのまま、目の前にいる小さな鬼を飲み込んでいった。



――――――――――――――――――紅魔館 ホール



「 さ、咲夜さん……わたっ、し、もっ……ダメです」
「 こらっ!! こんな所で失神する余裕があるなら、自分で走りなさい」

咲夜は美鈴の襟首を掴むと、時を止めながら全力で外に向かっていた。
通路の奥から禍々しい空気と、太陽のような黄色い炎をまとった壁が押し寄せてくる。
レミリアが呼びに来るまではと考えていたが、そんな意地を張っている場合では無くなった。
フランが最後のレーヴァテインを発動させた瞬間に、すでに咲夜はここから引く事を決意していた。
そこから時を限界まで止めながら、逃げているのだが……

「 もうっ! どこまで付いて来るつもりよ」

まるで意思があるかのように、狂気に膨れ上がった炎が襲い掛かってくる。
数々の美しい調度品が一瞬で原型を歪められ、混沌とした形のままに揺らめき……
煙になる事さえ許されずに消滅していく。
ナイフで迎撃できない分、咲夜にとっては黒白や紅白などよりも遥かに性質が悪い。

「 大丈夫かしら、お嬢様……」

出来る事ならば、今すぐにでも駆けつけたい気持ちに駆られるが……
咲夜は意識が朦朧としている美鈴と、外に逃げるように指示したメイド達の事を考える。
おそらく、この狂気は周辺一体を狂わせている。
それなりの実力である美鈴ですらこうなのだから、すでにメイド達も安全ではないだろう。
ならば、まともに動ける自分が避難を指示しなければならない。

「 ま、お嬢様がこんな事で死ぬようなタマじゃないわね」

咲夜はあっさり見切りをつけると、メイド達を避難させた湖の方向に走り出した。

「 しかし……なんて破壊力……」

ありとあらゆるものを消し飛ばして迫り来る炎を尻目に、咲夜は背筋が凍る思いだった。
時を止めていても距離をつめられるほどの速度なのだ。
もし中心地にいたとしたら、間違いなく消し炭になっていただろう。

「 これが、フランドール・スカーレットの実力……か」



――――――――――――――――――紅魔館 廃墟


「 あはははははっ!! すっきりしたねぇ〜……」

ブスブスと焦げ臭い匂いが辺りに立ち込めていた。
紅魔館の壁には大きな風穴が開き、その周りの石がヘドロのように溶け落ちている。
狂気の爪痕を色濃く残した場所に立ち、フランは満足そうに羽をばたつかせた。

「 さて、予告通りに血煙になったあいつを探してやるか」

あれだけの熱量であれば、蒸発していてもおかしくはないのだが……
フランは瓦礫が散らばる床を、跳ねるようなステップで歩いていく。

「 いる? いないの……? むぅ……おっ??」

フランはとある物を目にして、そこに駆け寄っていった。

「 これって……萃香が持ってた瓢箪?」

瓦礫に埋もれるようにして、大きな瓢箪が落ちていた。
その表面は黒く焦げ、触っただけでも崩れそうだった。

「 そう言えば、この中にある水を戦闘中にも飲んでたっけ」

フランは瓦礫を足で蹴ってどけると、その瓢箪を手に取った。
そして、蓋を取ると興味深そうに中を覗き込んだり、匂いを嗅ぐ。

「 うえ。これってお酒?? んん……別にいらない」

酒の匂いに顔をしかめると、フランは伊吹瓢をつまらなそうに投げ捨てた。
トクトクと小気味良い音を立てて、開いた口から酒が零れ落ちていく。

「 血煙すら残らなかったか。残念……」

ガクリと肩を落とすと、フランはその場を後にしようとした。
だが、その時―――瓦礫の山の一角がわずかに動いた。

「 ん?」

フランはすぐに立ち止まると、その一角を凝視する。
瓦礫の山は次第に震えを大きくしていく。
その下で、何かが動いているのは明白だった。

「 すごい……すごいすごいっ!! あれだけやったのにまだ生きてるっ!!」

フランは歓喜の声を上げると、掌を勢いよく前に突き出した。
その指から赤い霧が発生し、突き出された風圧に乗って紅の衝撃波に変化していく。

ドゴンッ!!

瓦礫の山に衝撃波が直撃し、石やススが空中に飛び散っていく。
その中から、もんどりをうって萃香の身体が転がり出てきた。
だが、すでに身体は深い火傷に覆われ、全身が真っ黒に染まっている。
その肩がわずかに上下していなければ、息をしているのかさえ分からないほどの大怪我を負っていた。
しかし――

「 うっ……ぐぐっ……」

萃香は地面に手をつくと、ゆっくりとだが身体を起こし始めた。
未だになお立とうとする萃香の姿を見て、フランは呆然とした表情を浮かべる。

「 本当にすごい耐久力。まさかあの攻撃で死なないなんて」
「 私でも、不思議だよ……もう、帰ってこれないかと思った」

両膝に手をつき、萃香は二本の足で立ち上がる。
もう傷が無い場所を探す事が困難なほど、身体を痛めつけられようとも……
その瞳に宿る意思の炎は微塵も揺らいでいなかった。

「 多分、ミッシングパワーの力がまだ残ってたんだね……運が、良かった」
「 ふふっ……私も嬉しいよ。今度はちゃんと血煙にまで破壊してあげるね」

フランはにこやかな笑顔を浮かべると、その鋭利な爪を持ち上げた。
もはや、萃香に攻撃ができるほどの力など残っていなかった。

「 それじゃあ、本当にこれで――さよならだっ!!」

一片の躊躇も無く、フランは萃香に飛び掛った。
完全な勝利を望むのならば、ここで弾幕を張れば良かった。
今の萃香は霧になる事も出来ず、ただ弾を受け続けるだけの案山子でしかない。
だが、自身の持つ最大級の攻撃を受けても、なお立ち上がる萃香を……その手で引き裂きたかった。
悲鳴を上げさせ、恐怖にそまるその瞳と姿を見てみたいと考えてしまった。
それが――フランが最後に見せた、わずかな隙だった。

『 拳は握れなくてもいい、ただ前に動けっ!!』

萃香は五体が引きちぎられそうな激痛を抑えて、身体を前に、そして後ろに大きく揺らした。
熱で溶けた髪がバサバサと空中に舞い、力無く垂れた両手が前に突き出される。
その手には、一枚のスペルカードが握られていた。

「 酔夢――施餓鬼縛りの術!!」

萃香の声に応えるようにして、両手につけられていた鎖が飛翔する。

「 こ、この状況で――しかもスペルカードッ!!」

完全に虚をつかれたフランは片方の鎖はかわすが、もう一本の鎖までは避けきれなかった。

「 くぅっ―――うぁああああっ!!」

鎖がフランを締め上げ、その身体の奥から魔力を吸い出していく。
その魔力は鎖を通じて、萃香の中に流れ込んでいった。
ほんのわずかだが、その力が萃香の身体を回復させる。
だが、それはたった一時の事、瞬間的なモノでしかない。
この程度ではフランは倒せない。
だからこそ、萃香はもう一つの鎖にあるモノを引き寄せた。

「 こいっ! 伊吹瓢っ!!」

勢いよく腕を引くと、栓の開いていた伊吹瓢が放物線を描いて萃香の元に飛んでくる。
そして、萃香はそこから溢れ出る酒を、頭からかぶった。

「 うっ――ぐぁあああああっ!!」

萃香の苦痛の声が上がる。
それも当然の事……傷や火傷で覆われている身体に酒をかけたのだ。
並みの神経ならば即倒しかねない激痛が、萃香の身体中を駆け巡る。
誰もがそれを気が狂った行為だと思うだろう……
しかし、その激痛が死んでいたはずの神経を瞬間的に生き返らせ―――


萃香はただ一度だけの拳を握り締めた。


「 鬼が本気で固めた拳――!」


フランを縛り上げた鎖を引くと同時に、萃香は大きく踏み込んだ。
その足を起点にして、腰を後ろに捻り込む。

「 くっ、うぅぅうっ――!!」

フランは何とか抵抗しようとするが……
鎖によって魔力を瞬間的に吸い取られたせいもあり、踏ん張る事が出来ない。

「 しっかり歯を食いしばって――受け止めてみろっ!!」

身体全体を竜巻のように回転させ、反動をつけて思い切り拳を突き出す。
何のタネも仕掛けも無い、ただの拳。
だが、萃香にとってそれは何百、何千と言う激戦を戦い抜き、鍛え上げられた最強の武器。

これで砕けないモノは存在しない―――!!


――――ドンッッッ!!


渾身の力を持って、萃香の拳はフランの顔面を捉えた。
ゴキゴキゴキッとフランの頚椎と首の骨が悲鳴を上げ、脳が頭蓋の壁に叩きつけられる。

「 うぉおぉおおおおおっっ!!」

身体の全ての力を投げ打ち、萃香が拳を振り切った。
フランはそのまま床に全身を叩きつけられる―――
萃香の闘気が爆発し、粉塵を巻き上げながら天へと昇って行く。
二人の姿は、まるで舞台のどん帳が下りるようにして……
灰燼の舞う砂煙の中に消えていった。



――――――――――――――――――紅魔館 廃墟



夜空に白みがかった光が差し込んでいた。
今まで騒動が嘘のように、辺りは静寂に包まれ……
ようやく去った狂乱の嵐を喜ぶようにして、空に鳥が旋回してやがて地平戦の彼方に飛んでいった。
その光景を飽きる事無く、見続けながら……
二人の少女は大の字になって、寝転がっていた。

「 お〜い……生きてる?」
「 頭が尋常じゃないほど痛い……もう死にそう……」
「 情けない事言うね。私なんか全身が痛くて泣き出しそうよ」

さっきまで殺し合いをしていたのが嘘のように、二人は気軽に声を掛け合っていた。
狂気も、殺意も、戦闘意欲も何もかもが空になった。
彼女達の間にあるものは、激戦を戦い抜いたという疲れと満足感だけだった。

「 どうでもいいけど、お腹減ったなぁ……霊夢のところに帰ろう」
「 貴方、霊夢の所に住んでるの?」
「 うんにゃ? ただ居着いてるだけ。あそこが一番気楽にいれる場所なの」
「 そう、なんだ……」

フランは、最近しきりに出かけていく姉の様子を思い浮かべていた。
咲夜を傍に従え、時には自分一人で博麗神社に出かけていく。
その時のレミリアは、いつも楽しそうだった。
姉の裏表のない笑顔なんて、フランはこの495年間で一度も見た事がない。
フランにとって、その感情は到底理解できないモノだった。
だが、それは確実にフランの心にある感情を芽生えさせ……
そして、またここに自分と同じほど強いクセに、弱い生き物である人間の所に好んでいく者が現れた。

「 ……霊夢は、元気? 最近、全然来てくれないから心配してたの」
「 うなだれるほど元気だよ。少しは病気にでもなって、しおらしくなってくれるといいんだけど」

萃香は上半身だけを起こすと、震える手で伊吹瓢を掴んだ。
だが、力の無くなった手は傾ける事すら出来ず……
伊吹瓢は鎖を鳴らしながら、萃香の手から零れ落ちていった。

「 ふぅ……満足したから、私は帰るよ」

お酒も飲めないしと付け加えると、萃香はゆっくりと身体を起こした。
それをジッとフランは見つめていたが……やがて、ぽつりと呟いた。

「 ねえ……外の世界は、貴方みたいなヤツが一杯いる?」
「 ん? それは、私より強いヤツがいるかって事??」
「 うん、そう。最近はお姉様もパチュリーもろくに遊んでくれないの……だから少しだけ……」
「 少しだけ?」
「 外が、見てみたくなったの……」

消え入りそうな声で、フランはそう呟いた。
それがどんな気持ちで出た言葉かは、萃香には想像も出来ない。
だから、彼女は……そっと手を差し出した。

「 だったら、一緒に来る?」
「 へ……?」
「 私は、私のやりたいと思ったヤツしか喧嘩はしないの。
  だから、私より強いヤツはいるかもしれないし、ひょっとしたらいないかもしれない。
  でも、フランドールが戦ってみたいと思うヤツは一杯いるかもしれないよ」
「 でも、私は……」
「 こんな屋敷に引き篭もっていても、幻想郷は見渡せない。
  幻想郷は面白いヤツが一杯いて、すごく楽しいよ。
  フランドールの実力があれば、きっと面白い事になる。
  だから……一緒に来ない?」

萃香の胸に去来するのは……ここに来る前の自分。
異端児として扱われ、規則正しい毎日を退屈だと感じていた。
自分の居場所など、あの鬼の里にはなかったのだ。
しかし、自分自身の力では外に出る事も出来ない。
あの里は……小さな監獄、いや箱庭に他ならなかった。

しかし、そんな里に面白いヤツが現れた。
そいつは箱庭の壁にちょっとした隙間を作り、萃香だけを外に連れ出してくれた。
たどり着いた場所は、やはり小さな箱庭だったが……
この箱庭は多くの自然と、生き物で溢れ返っていた。
それからの萃香は、退屈だとは感じてもつまらないとは思わない。
思う暇すらないほど、楽しい日々を送っている。

「 一度、自分自身の目で周りを見渡してごらん。
  幻想郷は、あんたの知る小さな箱庭なんかより……よっぽど広いはずだよ」

萃香は満面の笑みを浮かべながら、倒れたフランに手を差し出し続ける。
フランは迷うような、しかし少し嬉しそうな表情で……
その小さな手を、そっと掴んできた。



――――――――――――――――――紅魔館 中庭


「 そぉ〜っと、そ〜っと……」

萃香は霧になりながら、その中にフランを抱えて飛んでいた。
日が当たる事を避けたのもあるが、誰かに見つかれば間違いなく止められる。
だからこそ、萃香は細心の注意を配って、紅魔館を逃げようとしたのだが……

「 そこな鬼っ! 何をコソコソとしているの」

その努力も空しく、萃香は鋭い声で呼び止められた。
そこには、テラスでチェスを興じているパチュリーと……
この館の主であり、フランの姉であるレミリア・スカーレットがいた。
あれだけの騒動があったにも関わらず、それでも逃げずにチェスで遊んでいる二人を見て……
萃香は少しだけ、この二人の認識を改める事にした。

「 あんた、いたんだ? てっきり寝てるか、逃げるかしたと思ってたけど」
「 人の屋敷であれだけドタバタ騒げば嫌でも起きるわよ。それに、逃げるほどの事でもなかったでしょう」

レミリアは退屈そうに肘をつきながら、チェスのコマを動かす。
その盤上を見つめていたパチュリーは顔を上げて、萃香の方に視線を向けた。

「 ふ〜ん……どうやらフランドールに勝てたようね。満足した?」
「 うん、したした。だから、もう帰るね」

早々にその場を去ろうとする萃香だったが……

「 ちょっと待ちなさい」

レミリアは幾分、低い声を出しながら再び萃香を呼び止めた。

「 ねえ、こんな話を知っているかしら?
  とある子供が道端で子猫を拾うの。
  でも、家では飼ってもらえないだろうから、懐に入れて自分の部屋に持ち帰ろうとする。
  バカよね。そんな事をしても母親達にはバレバレなのに」
「 ……健気でいいじゃない。その子供」
「 認識の違いね。
  でも、ここで考えてみなさい。
  母親だって慈悲の心があるし、その子猫に同情もするかもしれない。
  ずっと飼うとなれば大きな決断が必要だけど、二、三日となれば頷くかもしれないわ」

レミリアはそこで言葉を切ると、テーブルに立てかけていた日傘を萃香に向かって放り投げてきた。
それは放物線を描いて、霧の中に消えていく。

「 おっと……何よ、この日傘?」
「 世間話は終わりよ。
  今日は雨が降るかもしれないから、傘を特別に貸してあげる。
  良い事? 貴方が責任を持って、その傘を返しに来なさい。
  そうね……二日か三日後くらいに」
「 なるほど……そういうワケか。じゃあ、ありがたく借りていくとするよ」
「 それは私が独断で貸したのだから、直接返しに来なさいよ。
  間違っても、咲夜達に見つかってはダメ。
  あの子達も貸して欲しいなんて言ってきたら、面倒になるんだから」

紅魔館の主として許可は出来ないが、姉として外出を許可する。
これはきっとそういう意味だと、萃香は感じ取った。

「 さすがは運命を操る吸血鬼。この結末までお見通しだったという事かい?」
「 おだてても何も出ないわよ。さっさと行きなさい」
「 ありがとう、お姉様……」
「 ん? 今、何か聞こえたかしら??」
「 あ、あわわわっ!! じゃ、じゃあねっ!」

萃香は慌ててフランの口を塞ぐと、そのまま紅魔館から離れていった。
その姿をレミリアとパチュリーは苦笑交じりに見つめ続け……
やがて見えなくなると、再びチェスのコマを動かし始めた。

「 良かったの、レミィ? あの子達を行かせて……」
「 大丈夫だよ。萃香がいれば、フランが暴走しても止められる。
  色々あったけど、結局はパチェの思惑通りになったという所かな」

コツッと硬質な音を鳴らして、レミリアは自分のコマの下にあったパチュリーの兵を外に弾き出す。
紅魔館という、決して小さくない館で激戦が行われていた近くで……
二人はチェスという盤上の上で、戦いを繰り広げていた。

「 私はただ、最近うるさかった鬼達をぶつけただけよ」

負けじとパチュリーもレミリアのコマを外に弾き出す。
だが、それを予期していたかのようにして、レミリアは間髪あけずにビショップのコマを動かした。
戦況を見る限り、均衡してはいるが……
パチュリーは盤上を睨みつけて、さっきよりも幾分険しい表情を浮かべていた。

「 いいや、違うね。パチェは試したかったんだろう? 萃香の底力を。
  フラン自身が、この館から出たいと思うほどの興味を引かせられる相手かどうかを」
「 ……じゃあ、その理由までレミィには分かっているのかしら?」
「 理由は決まってるじゃない。
  あの子が、紅魔館から出たいと思った時の道しるべを作ってあげる事……でしょう?」

レミリアは静かにクィーンの駒を動かして盤上に置くと、椅子に深くもたれかかった。
パチュリーはその盤上を見つめながら、眉を潜めて渋い表情になる。
この小さな箱庭で行われていた戦いも……もうすぐ終わろうとしていた。

「 この幻想郷はそう遠くない未来に、きっと無くなるわ。
  幻想郷が最後には幻想となる。
  それは多分……夢から醒めるように、ある日ぱっと消えてなくなってしまう。
  もしそうなった時に、私とフランが一緒にいなければならない理由はないわ。
  あの子はあの子の道を行けばいい。姉妹がいつまでも一緒にいるなんて居心地悪いし」
「 その時になって、私達が一緒にいてあげられない可能性もあるしね」
「 そう。そんな時に……あの子が私達以外の一人でも頼れるヤツがいればいい。
  あの子が自分自身の幸せを壊さないように、引き止めてくれるモノが。
  親友とは特別なモノ……そうよね、パチェ?」

レミリアは頬杖をつくと、満面の微笑みを浮かべてパチュリーを見つめた。
パチュリーは盤上から視線を上げると、レミリアの赤い瞳を真正面から受け止める。

「 私がもし、フランのように狂気によって暴走した時にはパチェがいる……
  血の衝動に駆られ、いつか吸血鬼という本能に理性が負けるかもしれない。
  だからこそ、私は貴方のパチュリーという名前に楔を打った。
  スカーレットデビルを討つ者としての運命の楔……
  その楔がある限り、私は自分の幸せを自分の手で壊す事はない。
  私がパチェと言う名前を忘れた時……その約束は果たされる」
「 分かっているわ、レミィ……だから、私は貴方の唯一決まっている運命、名前。
  レミリアの操る運命の先を行く者として、アをイに変えて呼ぶ。
  私がレミィを本当の名で呼ぶ時、約定を果たす。
  その為に、私はこの紅魔館で貴方を見続け、殺す為に知識を蓄えているのだから」

スカーレット・デビル……その恐怖の片鱗は、今でも幻想郷で語り草になっている。
血の味とむせ返るほどの鉄錆の匂いに酔いしれ、身も心も満足するまで生物を襲っていた頃のレミリア・スカーレット。
吸血衝動のままに血を啜り、それでも満たされぬ乾きに気を狂わせていた。
そう……レミリアもこの幻想郷に来た当時は、フランドールと変わらない狂気を抱えていたのだ。

その心に変化をもたらしたのは、目の前にいるパチュリー・ノーレッジとの出会い。
そして、十六夜咲夜、博麗霊夢達との出会いだった。
そしてそれは……幻想郷という舞台の上で起こった、必然の出会いでもある。
あの赤い満月の日にフラリと外に出たからこそ、レミリアは忌み嫌っていた自分の一面を捨てるチャンスを得た。
もし、あのまま紅魔館と言う自分だけの箱庭に閉じ篭もっていたならば……
自分は未だに、満たされぬ喉の渇きに苛立ちを募らせ、ただ一瞬の快楽を得る為に血を求める哀れな吸血鬼でしかなかっただろう。

「 そう言えば……萃香も私をレミィと呼んでたね。
  こりゃあ、うかうかしていられないよ……パチェ?
  あの鬼の実力は……確かなモノだったわ」
「 そうね……それじゃあ、私も少しだけ慌てる事にするわ」

パチュリーはテーブルに置いていた魔道書を手に取ると、音も無く席を立った。

「 パチェ? まだチェスは終わってないよ。もっとも、後一回でチェックメイトだけど」
「 そう。だから、その勝負は終わり。
  貴方にはチェスで勝った事はないけれど、絶対に負けもしない。
  例え、99,9%の確率で負けようとも、私はその0,1%を引き寄せるまでチェスをする。
  それが来ないなら、終わりの一歩手前で退散するだけよ」
「 ふっ……ふふふっ……面白いね、パチェは。
  私が操る運命をよしとせず、何度でも抗おうとするその姿勢……すごく面白い。
  霊夢や魔理沙とはまた違った、本気を感じ取れるよ。
  でも、決着のつかないチェスはつまらない」
「 だったら、私が見えない運命を引き寄せる事ね……レミィ」

現実とは違い、チェスは何度でも最初からやり直せる。
この盤上に散りばめられた駒は、ただの遊び道具ではない。
一つ一つが意思があるものとして動かす箱庭。
それは紛れも無く彼女達の戦場であり……
パチュリー・ノーレッジとレミリア・スカーレットの戦いだった。

チェスで繰り返して遊びながらも、勝つ方法を何度でも模索するパチュリーの姿勢。
それは、いつもレミリアの心を歓喜に震わせる。
運命を操ってなお負ける……
自分の能力を上回る可能性を、パチュリーなら本当に引き寄せるかもしれない。
だからこそ、レミリアはパチュリーに自分の最後を委ねた。
今度、スカーレットデビルという哀れな吸血鬼の面を曝け出すのは、この愛すべき親友の前でだけと……
あの赤い満月の日に約束したのだから。

「 じゃあね、レミィ。また明日にでもやりましょう」
「 いいね。明日は咲夜のお茶でも飲んでゆっくりとやろうか」

レミリアは残骸と化した館に消えていくパチュリーの後ろ姿を見送る。
そして、その後ろ姿が見えなくなると同時に……
残り一手だったチェスの盤をひっくり返した。

「 決まりきった毎日……決まりきった運命……つまらなすぎるんだよ。
  だから、パチェがいなくなった箱庭は、これでおさらばだ」

派手な音を立ててテーブルから、いくつも駒がこぼれていく。
それには見向きもせずに、レミリアはフラン達が消えていった先に視線を向けた。

「 フラン、楽しんで来なさい。貴方が引き篭もっていた495年が……
  多分、三日で霞んでしまうほどに、バカらしい年月だったと分かるはずだから」

彼女の目には、この三日間で幻想郷中が震えるほどの大騒動が映っていた。
事実、この後三日間は……幻想郷、今年一番熱かった炎の三日間と呼ばれる事になる。

「 後で、咲夜には内緒で博麗神社に行ってみようかな。面白い事になっていそうだから……」

クスクスと小さく笑うと、レミリアは椅子に沈み込むようにして身体を休め……
これから起こる出来事に夢を馳せながら、今しばらくの眠りについた。
本当にギリギリでした。
少しだけ補足すると、角のある方の鬼にだけスペルカードについての設定を多少変えています。
物語の進行上、そっちの方がテンポもスピードも出ると考えたからです。
では、言い訳はこれくらいにして……
鬼と鬼のぶつかり合いを少しでも楽しんでいただける事を願いつつ、投稿すると致します。
蒼刻
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2006/10/28 08:56:22
更新日時:
2006/11/22 02:35:56
評価:
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1. 8 ■2006/10/28 11:53:35
戦い自体は熱く、丁寧に書かれていていいんですが、もうちょっと両鬼の心に余裕が欲しかったですね。あと、鬼の生命力と再生力、霧化やコウモリ化もあるだけに、決め技以外の攻撃に対して「殴られても殴る」のもあってもよかったかもです。
しかし、「怪物」同士のぶつかり合いとしては、押えるところはきっちり押えられていて非常によかったと思います。
2. 4 読むだけの人 ■2006/10/30 02:17:25
萃香がレミリアを愛称で呼んでるのに違和感がありました
3. 5 as capable as a NAMELESS ■2006/10/30 15:03:25
熱いっす。かなり。
4. 6 らくがん屋 ■2006/10/30 17:17:20
箱ほとんど関係ねェー……。
バトル描写は秀逸だけど、箱がオマケってかモロ後付け? は言い過ぎか。
文章も大袈裟過ぎて二回は読みたくないし、あんま評価出来ないかなァ、って感じ。嫌いじゃないんだけど。
5. 4 VENI ■2006/10/31 00:55:32
バトルもの、というやつなのかな? 
自分としてはほとんど読んだことのないジャンルだったので、
どう評価すべきかよくわからないですが……文章は読みやすかったと思います。
6. 4 椒良徳 ■2006/11/03 16:09:00
 萃香とフランのガチバトルだというのに、全然熱くありません。魂が沸き立ちません。全体を通してテンポが良くなく、冗長な感じを受けます。以下、個人的に気になったところをいくつか指摘してみたいと思います。
 まずしょっぱなに
>石床を砕かないほど力強く踏み込むと
という誤字をやらかしているのが萎えます。石が砕けるほど踏み込んだんですよね? 投稿するまえにもう一度チェックをしましょう。こういった初歩的なミスは、テンポ以前の問題です。とにかく萎えます。
 次に、
>「 こ、この状況で――しかもスペルカードッ!!」
このフランの台詞などは失笑ものです。驚いている暇があったらなにかしろよと。どこかの兄貴じゃありませんが、危ないと思ったときには防御行動なり反撃なりに移らないと間に合いません。戦いの時に無駄口を叩く奴は舌を噛み、歯が折れ、顎の骨が外れます。どうしてもこの台詞が書きたいのでしたら、カギカッコを外して心の中で思ったことにしてください。
 次に、
>「 鬼が本気で固めた拳――!」
この台詞がまた萎えます。冷静に考えてください。「私の必殺の右ハイキックをくらえー!」などとわざわざ宣言してから、右ハイキックを繰り出す阿呆がいますか? そんな頓馬は一足お先に床にお寝んねさせられます。弾幕ごっこの際には、スペルを使う前に宣言をする必要があったかとおもいますが、貴方が書いていらっしゃるのは肉弾戦です。宣言などというものは削ってしまうか、カギカッコを外して下さい。萎えます。
 あと、最初の方はそうでもないのですが、文章の後ろの方にいくにしたがって目障りな擬音語が多用されており、これがまた萎えさせます。後書きに書いているようにテンポを重視なさったのでしょうか、いうほどテンポ良く有りません。擬音語に逃げず、もう少し地の文で勝負した方がよいのではないかと思います。
 最後に、この作品を最後まで読んで、私はもったいないなと思いました。これだけの長さの文章を書く力があり、個々の文章にも光る表現が散見されるのに、以上で述べたようなことが気になってしまい、高く評価できません。投稿する前に、もう一度なり二度なり推敲してあればなとおもうのです。実にもったいない。
 長々と書いてきましたが、以上で終わりです。貴方の次回作に期待しております。
7. 2 反魂 ■2006/11/04 01:09:11
話としては5点。しかし、「箱」というテーマが薄すぎます。取って付けたように最後「箱庭」という単語が使ってありますが、これでお題を充足したとは到底思えません。

また技術面でも、バトルのスピード感が致命的に足りないと感じました。あくまで読者視点としてですが、やたらに比喩表現や語るような表現が多く、叙述に徹しきれていないという印象があります。絶叫や擬音も多すぎて、それがまた文章のリズムを失する一因にも感じました。
……と、それだけなら正直まだ良かったのです。が、最後のオチはどうしてもいただけない。クライマックスの大立ち回りから一転碌な描写もせず、煙が晴れたら焼け野原に大の字になってて仲直り、というオチは、もう最高級に陳腐なやり方です。元鞘に収めるにしても、もう少しやり方があるでしょう。一番やってはならないオチの一つで、完全に興が醒めました。

厳しいことを連ねましたが、衒い無くバトルを書ききった能力は、それなりに武器にしうる力だと思います。こと幻想郷でも最強という二人を戦わせる、それだけの迫力は出せていたと思います。それだけに返す返す、オチの拙さが惜しいとしか言いようがありません。ちょっともったいない作品でした。
8. 1 箱根細工 ■2006/11/07 04:36:07
描写と捻りが足りないように感じました。
9. 5 nn ■2006/11/10 00:42:31
バトルものは苦手です
10. 3 爪影 ■2006/11/10 15:01:02
 フランちゃんは元気だなぁ。
11. 5 匿名 ■2006/11/12 17:51:19
バトル物は珍しくてよかったんですが。なんか台詞がいまいちでした。
12. 3 たくじ ■2006/11/12 21:54:22
ひたすら戦うだけ、というのが退屈でした。
どうして戦うのかもよくわからなかったし。
13. フリーレス サカタ ■2006/11/12 22:12:35
フランってこんなに好戦的でしたっけ?ちょっと気がふれているって感じでバトラーって感じではないと思うんですが。
『殴り合いの才能はレミィより上だ、こいつ』とありますが、公式ではフランは「吸血鬼にして魔法少女」だそうなので格闘が得意とは思えないです。
あと会話文の最初にスペースが入っているのはなんででしょう?
14. 2 2:23am ■2006/11/12 23:43:12
何か後半ボクシング漫画みたいな雰囲気に……。戦闘描写は読む方に展開が読ませないようでなきゃダメですよ。段々だれているようにも感じられましたし。
15. 3 藤村うー ■2006/11/13 02:48:40
 ガチバトルだなあ……。
 楽しんで書かれたんだなあという気はしましたが。萃夢想のイメージのままでしたので、もう少し弾幕の描写があっても深みが増したような気が致しました。殴り合いだけだと、あまりにも本気すぎて余裕がなくてちょっと引き気味に見てしまいます。
 あと、箱もあんまり関係ないです。
16. 7 ABYSS ■2006/11/13 07:04:47
総量としては長いのにすらすらと読めてしまうこの力に脱帽。
バトル物に一番必要だと思うスピード感があって、すごく楽しく読めました。
テーマにも沿っていたと思うんですが、むしろそれが足かせになっていたような気がします。無理矢理感、みたいな…いや贅沢な感想だと思いますが、そう思ったので。
17. 4 Fimeria ■2006/11/14 07:22:05
長い戦闘描写、お疲れ様です。
戦闘描写が苦手な身として、尊敬しますね。
ただ、中盤に挟まれた咲夜と美鈴の会話は何かの複線かと思いましたが、結局物語りに影響を与えておらず、省いてもいいのではないかと思いました。
18. 2 いむぜん ■2006/11/15 21:18:57
長々と続く必殺技絶叫バトルは読んでると辛いなぁ。 あれか? テンプレ台詞だけで組んでみる実験とかなのか?
あとレーヴァティンにこだわりすぎ。
萃香が霊夢と魔理沙を選ばないにしても……んー。
19. 4 おやつ ■2006/11/16 00:21:00
なんの遺恨もなく殴り合って喧嘩して、また仲良くなれるってもう幻想なのかなぁ……(ほろり

ほぼ全編をバトルで構成するとは凄い。
この二人は実際に戦ってみて欲しいです。
黄昏さんパッチマダー
20. 5 翔菜 ■2006/11/16 05:52:04
ああ、熱かった熱かった、熱い戦いだった!!

個人的には序盤の話の展開もあって、ここぞと言うところで本気のレミ様が2人を止めに……というかどつきに来るんじゃないかと期待してただけにそこが少し残念。
本気で格好良いレミ様が好きだったりするもので。
うん、まぁ、こんな形もありかなw
21. フリーレス 翔菜 ■2006/11/16 12:23:41
と、大分遅れながらに少し。
箱が薄い感じがするかなー、と。失礼。
22. 7 blankii ■2006/11/16 21:13:33
ガチバトル堪能致しました〜幻想郷二大怪獣超決戦(酔ロリ V.S. 狂ロリ)。
23. 2 つくし ■2006/11/16 22:11:00
できれば漫画で読みたかったです。文章だけでこのガチバトルを読むというのはさすがに疲労がのしかかりました。テンションが常にトップギアというのも、疲れを促進してしまったように思われます。あとちょっと箱が弱いような。
24. 5 雨虎 ■2006/11/17 16:58:27
本気で戦うとやばい組み合わせの一つですね。
たまにはこういうバトル物も良いものです。楽しませていただきました。
25. 2 人比良 ■2006/11/17 20:06:32

長さに見合うだけの濃い内容だったと思います。
ただし緩急がないため、読んでいて少しだけ疲れました。
26. 3 目問 ■2006/11/17 22:35:16
 戦闘がメインの話であることは承知で、それをもう少し短くまとめて欲しかったかなあと。
 独自の工夫も見られるのですが、どうしても交互に技を出し合っているだけという印象を受けてしまいました。
27. 8 K.M ■2006/11/17 22:42:35
凄まじきガチンコバトル、堪能させていただきました。
28. 4 時計屋 ■2006/11/17 23:27:35
力作だと思います。
ただこれだけの長文を読ませるには、ストーリーも文章も平坦なように思えました。
29. フリーレス 蒼刻 ■2006/11/19 02:33:10
>翼さん
喜んでもらえて嬉しい限りです。
心の余裕の持たせ方ですか……確かにあまり考えていませんでした。
参考にさせていただきます。

>読むだけの人さん
これは一応、萃夢想で萃香が言っているのですよ。
私的にもちょっと違和感があるのですが……
一応、神主監修の公式なのでそれに沿う形にしました。

>as capable as a NAMELESSさん
楽しんでもらえたのならば幸いです。
次も精進するようにします。

>らくがん屋さん
すみません……時間内に収める為に切った部分でもう一つ箱を重ねるつもりでした。
全て私の力不足が原因です。
もしよろしかったら、次も期待しておいてください。

>VENIさん
あまり見ないバトルモノを読んでもらって、感謝いたします。
どう評価していいモノではなく、今度は楽しいと言ってくれるようなモノを書きたいと思います。

>椒良徳さん
厳しい目で見ていただいて、ありがとうございます。
まず指摘の誤字ですが、これは石床を踏み付けたという意味なので、正確には誤字ではありません。
ですが、誤字に見えてしまったのは私の文の拙さだと思います。
きちんと直しておきます。
接近戦を書くのは初めての試みで、色々と試行錯誤してみたのですが……
その結果、拙い表現だらけになってしまったのは、明らかに私の力不足です。
申し訳ありません。
この結果を踏まえて、次回作に活かそうと思います。

>反魂さん
テーマ消化不良は本当に私のミスであり、怠慢です。
深く反省します。
比喩表現や擬音に頼りすぎたり、戦闘描写での緩急が少ないのがスピード感の消失に繋がっているのだと思っています。
オチに関しても、あの時はそれしか思い浮かびませんでした。
私の構想力不足です、これも次の課題にします。
厳しい意見でしたがとても参考になります。ご指摘、ありがとうございました。

>箱根細工さん
一重に私の力不足です。申し訳ありません。
もしよろしかったら、次に期待してください。

>nnさん
苦手なバトルモノを読んでいただき、感謝いたします。
ですが、私は戦闘描写の練習を課題としているので……
多分、次もバトルモノです。
それでもよろしければ、次も見てやってください。

>爪影さん
萃香も元気ですよ……きっと。

>匿名さん
台詞ですか……
東方らしさを上手く引き出せなかった感じがあるのと、
やはり、擬音や叫びが多く入ってしまったのが原因だと思います。
次は、しっかりと気をつけて書こうと思います。

>たくじさん
バトル面での緩急を上手くつけれなかったのが、平坦な感じを出してしまったのだと思います。
闘う理由は萃香は暇つぶし、フランは玩具が来たから程度の事しか考えていませんでした。
次は、もう少し考えて書いてみようと思います。

>サカタさん
萃夢想では、レミリアが一応接近戦を得意としているのです。
ですから、姉妹であるフランもそういうキャラクター付けにしました。
好戦的なのは……私のイメージですね。
もし違っていたのなら、申し訳ありません。
後、空白を入れるのはクセみたいなものです。
今回はそうしたのですが、次はきちんと直そうと思います。

>2:23amさん
だれた感じが出たのは、他の皆さんもご指摘していますね。
本当に謝る事しか出来ません。
後、展開が単調になったのも構成力不足が原因です。
もっと練りこむようにいたします。

>藤村うーさん
緩急の無さと、遊びの無さがマイナスに働いたんだと思います。
言われる通り、弾幕も入れようかなと思いもしたのですが……
時間の無さと間延びするような感じがしたので、書きませんでした。
テーマの薄さは私の力不足です、申し訳ありません。
もし興味が湧いたら、次も読んでやってください。

>ABYSSさん
楽しんでいただけたのなら、それが一番の喜びです。
テーマは皆さんも叩いていらっしゃる通り、薄かったですね。
精進いたします。

>Fimeriaさん
あれは一応、戦闘の息抜き。
そして、二人が暴れている様子を、第三者視点で見せるというのが目的でした。
あの二人は今回からませるのが難しい立場の者だったので……
次は組み込めるような伏線にしたいと思います。

>いむぜんさん
一応、戦闘描写の物語を書く練習としてやってます。
拙い感じが出てしまったのは、私の力不足です……
レーヴァティンが多いと言うのは、私自身も投稿した後くらいに思いました。
せめて、前半の一回と最後の一回の二回程度にしておくべきでしたね。

>おやつさん
私もフランパッチ期待しているのですが……出ませんね。
美鈴パッチすらまだ仮ですから当分というか、もう無いかも……
出来れば、実機でプレイしてみたいものですね。

>翔菜さん
レミリアはこうなる結果を分かっていたという、達観した感じを出したかったのと……
別の物語でこのSSが活きるようなモノを書きたいので、敢えて登場させませんでした。
グングニルとレーヴァティンの打ち合いも捨てがたかったのですが……
次に期待してください。お願いします。

>blankiiさん
少しでも楽しんでいただけて嬉しい限りです。
次もガチバトルで行こうと思ってるので、よろしかったら読んでください。

>つくしさん
やはり、みなさん同じ欠点を感じていたようです。
もう少し時間があればと言うのは言いワケでしょうけれど……
見せ方の問題もあるのだろうと、今思っています。
次回にきっちりと昇華させようと思います。
貴重なご意見、ありがとうございました。

>雨虎さん
欠点も拙い部分も多く出てしまう作品でしたが、
私の中にあった熱さが少しでも伝わったのなら、書いた価値があると言うモノ。
楽しんでもらえて幸いです。

>人比良さん
戦闘描写での緩急は必須事項だと痛感しています。
そのお言葉、肝に銘じておきます。

>目問さん
展開が単調になったのは、私の構成力不足ですね。
もう少し練る必要があったのを実感します。
接近戦で長くやる、と言うのも確かに緊張感の欠如に繋がったのかも……
次は気をつけて書くようにします。

>K.Mさん
面白かったという言葉は、次の製作意欲に繋がるほど嬉しいものです。
次の話も良ければ見てください。

>時計屋 さん
パッと見た時はどうしようもないじゃないかと、思ったのですが……
今は私の至らなかった欠点が見えてきたので、その言葉の意味が何となくですが分かります。
次には、少しくらい唸らせるような作品を書きたいと思います。
ありがとうございました。
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