悪魔の世界

作品集: 最新 投稿日時: 2006/10/28 08:57:14 更新日時: 2006/10/30 23:57:14 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00

 昔々あるところに世界がありました。
 そこには一匹の悪魔がいました。



 その悪魔は、ここで生まれました。
 その悪魔は、ここで育ちました。


 その悪魔は、ここでずっとずっと生きていました。
 気が遠くなるほどの長い時間を。


 その悪魔は、世界を支配していました。
 手を伸ばせば、世界にあるものすべてに触れることができました。



 世界には貧困がありました。
 悪魔は貧しさすら糧にしました。


 世界には痛みがありました。
 心地よい痛みなんてありません。


 世界には嫉妬がありました。
 みなが悪魔を妬みました。


 世界には病気がありました。
 いくつの病にかかっているかを数えるだけで、暇が潰せました。


 世界には怨恨がありました。
 悪魔の言葉は、呪いで満ち満ちていました。


 世界には復讐がありました。
 その連鎖はとどまることを知りません。


 世界には憎悪がありました。
 それはいつも、悪魔を破滅に導きます。


 世界には盗みがありました。
 これが元々誰のものだったか、誰にも分かりません。


 世界には欺瞞がありました。
 悪魔は自分自身も信じることができません。


 世界には戦争がありました。
 一心不乱の大戦争が、今日も行われます。


 世界には未来がありました。
 明日も、一年後も、来世紀も、悪魔はすべてを見ることができます。


 世界には悲嘆がありました。
 無意味な世界に、世界自身が悲しんでいました。


 世界には老いがありました。
 悪魔は年老い、腐って、死んでしまう。その恐怖に囚われ続けています。



 世界の上の方から、何か音が聞こえてきます。
 こんこん……。こんこん……。


 世界の上の方から、何か声が聞こえてきます。
 おいで……。おいで……。


 世界に光が差し込みます。
 すべての未来を知っているはずの悪魔は、こんな未来を知りません。


 世界にあったあらゆる災いたちが、次々と光の中に向かって飛び込みました。
 悪魔だけは、ただそこに佇んでいました。


 世界には一匹の悪魔がいました。
 世界には一匹の悪魔しか残っていません。


 世界の上の方、光の中から声が聞こえてきます。
 ――――なぜあなたは出てこないの?


 世界に一人ぼっちの悪魔は、しばらく悩んだ末に。
 光に向かって飛び出しました。



 そこには世界がありました。
 こんな世界、悪魔は知りません。


 そこには一人の少女がいました。
 世界を支配していたはずの悪魔には、何も分かりません。


「これから、この図書館で働いてもらうけど。いいわね?」
 悪魔はこんな未来、何が何だか分かりません。



 ――――けれど。それも一興か。
 悪魔は思いました。



 机の上に、1つの箱が置いてありました。
 悪魔が『世界』と思っていたものです。




 あるところに紅い屋敷があります。
 その図書館には一匹の悪魔が住んでいます。
「そういえばパチュリー様。
 私を召喚したときに、あの箱に入っていた災いはどうしたんですか?」
「あー、あんなの楽勝よ。
 弱点さえ分かれば、負ける理由がないわ」

 ―――― Little-Devil in Pandora's Box closed.
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2006/10/28 08:57:14
更新日時:
2006/10/30 23:57:14
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5.00
1. 3 じーにょ ■2006/10/28 01:12:45
長い作品を読んだ後の箸休み的な。
2. 2 反魂 ■2006/10/29 14:58:02
箱と言えばやっぱりパンドラですね。
ここまで読み進めた中では意外にもゼロだったのですが、このちょっぴりトリッキーな物語で漸く出逢うことが出来ました。
3. 3 VENI ■2006/10/30 13:54:41
途中からはわかるんですが、序盤がちょっと想像つかないというか……
何の話だろう? って、言葉の意味がわかってもそういう感じでした。
読後感はスッキリしてるんですが。
4. 6 as capable as a NAMELESS ■2006/10/30 15:39:04
こういうの好きですね。
5. 3 らくがん屋 ■2006/10/30 17:16:27
パンドラパンドラパンドラー(さいたまのノリで)
災厄全ての弱点を見抜くなんて、流石はぱっちゅん。カッコEー。
6. 3 床間たろひ ■2006/10/31 21:34:05
ふむ……判断が難しい。
こういうタイプの話は凄く好みなんです。だけどそれは短文ならばこその、こうぎゅっと圧縮したような衝撃があって初めて生きてくるので……感覚的な問題なので申し訳ないですが、この話には正直びびっとくるものがなかったのです。多分悪魔という事でオチが序盤に解っていたからだとは思うのですが。
7. 6 椒良徳 ■2006/11/03 16:18:55
おとぎ話のような作品ですね。
微笑ましい。
8. 3 PQ ■2006/11/05 12:45:27
確かにパンドラの箱の中の災いを悪魔と解釈することもありますが…未来視のみが「悪魔」でそれ以外は「災い」なのはどうしてでしょう。
というか災いオンリーの世界という発想が無茶です。むしろ色々と無茶です。突っ込んでいったら切りが無いくらいに。
9. 2 箱根細工 ■2006/11/07 04:42:18
そうですか。
10. 6 nn ■2006/11/10 00:46:34
着目点は面白かったと思いますが、ちょっと小悪魔の立場とかがよく分かりまさん。絵本風ですが寓意が足りずに、読み手には消化不良感が残ります。
11. 3 爪影 ■2006/11/10 15:22:46
 一心不乱の大戦争……駄目だ、どうしてもあの眼鏡さんが浮かんでくる。
12. 8 ■2006/11/11 17:32:17
箱の中に残っていた最後のひとつ、それは希望…そう、こぁは我らの希望であるっ!ジーク、こぁ!
13. 7 ABYSS ■2006/11/11 22:48:22
山椒は小粒でピリリと辛い。そんな感じの作品ですね。
個人的な好みもありますが、全体的な構造がいいとおもいます。
14. 3 たくじ ■2006/11/12 21:48:40
箱の中には他の人(または人で無い者)もいたようですけど、その人々はどこにいってしまったのでしょうか?
15. フリーレス サカタ ■2006/11/12 22:19:04
後書に話の続きを書くのはやめたほうがいいです。
話は正直おもしろくなかったです。
16. 3 藤村うー ■2006/11/13 02:49:59
 小悪魔の出自にはいろいろあって面白いです。
 パンドラの箱は盲点だった。災いにあっさりと打ち勝つパチュリーも素敵。
 なんで小悪魔なんだろう、とも思いましたが、入ってるとしたら小悪魔かなあ、と納得せざるを得ないところも。
17. 6 Fimeria ■2006/11/14 23:24:59
名前も特徴も無いキャラの特権は二次として動かしやすいところにあると思います。
人の幻想の中に存在するその姿を読むのは東方ファンとしてこの上ない喜び。
つまり、面白い解釈だなって思いましたわけです。
18. 4 いむぜん ■2006/11/15 21:21:51
奇麗に並んだ文章は頭に気持ちいい。
オチが、ああ、そうなのか。と思うが、この世の災厄を齢100程度の小娘にどうこう出来たとも思えんのだが。
まあ、その箱がそうなのか、という言及がないから、どうとでも取れるのだが。
19. 4 おやつ ■2006/11/16 00:34:51
この小悪魔の名前こそ『希望』なんでしょうか。
それとも、多くの害悪のうちの一つか。
まぁ、小悪魔可愛いからいいんですがね!
20. 3 翔菜 ■2006/11/16 06:04:14
フランかとおもたらこぁくまー、だった。

こあぁー! くまー!
21. 5 blankii ■2006/11/16 21:15:01
最初(世界には未来〜見ることができます。)は、れみりゃだとばっかり思ってましたが。最後に残るってことは、やっぱり僕らの希望のこぁ。
22. フリーレス 蒼刻 ■2006/11/17 01:41:06
悪魔と聞いて、スカーレット姉妹だと思っていたのですが……
小悪魔かい!というオチで、何だか肩透かしを受けた感じでした。
自分が想像していたよりも格下が出てきてしまうと、笑いが込み上げるものですね。
私的には新しい発見でした。
ワケ合って点数は入れられないのですが、自己採点では3でした。
23. 2 つくし ■2006/11/17 11:50:24
こぁ可愛いよこぁ。えー、サプライズがあるでもなく、ハッとさせるような文章があるわけでもなく、どうも印象に残りづらかったです。パンドラの箱と小悪魔を絡める根拠も上手く説明されてません。つーかこの立ち位置だと小悪魔は希望ということに?
24. 4 雨虎 ■2006/11/17 17:14:39
小悪魔が出てくるなら私も箱を開けますw
途端死亡フラグ確立、というか死んでそうな気もしますが。
25. フリーレス 人比良 ■2006/11/17 20:05:43

後書きが素敵。
何事にも対してそうであろうというスタンスが。
26. 3 2:23am ■2006/11/17 20:54:06
キレイ過ぎるように感じました。もうちょっと石投げてもいいかと思います。
27. 5 K.M ■2006/11/17 21:09:04
小悪魔さんは、あの箱の中身でしたか…意味深ですね。
28. 6 目問 ■2006/11/17 22:36:53
 締めの二行の安堵感が良かったです。後書きもさりげなく素敵。
29. 2 木村圭 ■2006/11/17 23:01:19
ある意味世界を相手にしたパチュリーさん、圧勝快勝で楽勝とバッサリ。すげー。
30. 2 時計屋 ■2006/11/17 23:28:48
これは良い寓意……なのかな?
それを判断するにはあまりに短すぎる……。
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