今夜も千両箱っ!

作品集: 最新 投稿日時: 2006/10/28 09:00:38 更新日時: 2006/10/31 00:00:38 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
 目の前に置かれた木箱の中からあふれ出る山吹色の光に、あたしは歓声をあげた。
「やった……やったわ! ついに見つけたわー!」
 山奥のうらびれた廃屋の中で、あたしは独り狂喜乱舞していた。
 目の前に置かれた「千両」とかかれた大きい箱。これこそあたしが探していたものだ。
 ――事はは数日前にさかのぼる。
 ひょんなことから入り浸るようになった香霖堂という店。そこであたしは店主から『かへいけいざい』というものを教えてもらった。
「お金でもなくてもいい。なにか価値のあるものを持ってきたなら、それと本を交換してあげよう」
 本読みが趣味の妖怪としては、その提案は魅力的すぎた。これでもう落ちてる本を捜し歩いたりしなくて済むのだ。
 それからというもの、店主の言葉に従い、あたしは山や今居るような廃屋から、宝石やなにやらを持ち出しては香霖堂に持ち込み、本と交換するということを繰り返した。
 そして今日、たまたま入り込んだ山奥に打ち捨てられた廃屋で、この千両箱を発見したのだ。
 いくらあたしが宝石に疎いからって千両箱の価値くらいはわかる。この山吹色の輝きはきっと私の期待を裏切らない。
「んっく……結構重いわね」
 予想以上の箱の重さ。仕方なく縄を探してきて背中に背負う。ずしりとしたその感触は腰に来るが、これと交換できる本の事を考えると我慢できた。


 いつもよりも低い高度で空を飛ぶ。背中の箱は重いけど、すべては本の為。
 日が傾きかけているので急がなければ。
 必死で翼を羽ばたかせて飛ぶあたしにかけられる声。
「あー! 誰かと思えば読書妖怪! たまった店のツケ払えー!」
 まったく、こういう時に限って邪魔がはいる。ったく、ちょっと店の払いをツケにしたくらいでうるさいんだから、もう。
 いつもならなんやかやと誤魔化すところだが、今のあたしは違う。
 あたしは背中の箱から一掴みの小判を取り出すと、ミスティアに放り投げた。
 本音をいうと一枚たりとも渡したくはなかったのだが、変に勘ぐられるのも面倒だったので素直に渡す事にしたのだ。
「え? え? ちょっとこれどうしたのよ!?」
「別にいいでしょ。そんなこと。ツケはそれで充分よね。それじゃあたし急いでるから」
 まだ何かわめいてくるミスティアを無視してあたしは先を急いだ。


 空が赤く染まり始めたころ、湖の上にあたしはいた。
 この湖を越えれば香霖堂はすぐなのだが、こんなところで、こんなタイミングで最悪のやつに遭ってしまった。
「ちょっとそこの妖怪。その背中の箱はどうしたのよ。まさかどこからか盗んできたものじゃないでしょうね」
 赤と白の服に身を包んだ女。こいつは以前にも私の本を強奪していったという前科持ちだ。
「失礼ね! 捨てられていたのを拾っただけよ! あたし急いでるんだからそこをどきなさい!」
「盗んできたわけじゃないと。でも妖怪のあんたには必要ないわよね。というわけで私が預かっておくから、こっちに渡しなさい」
 にこやかに笑う紅白。
 この女の評判は聞いている。曰く最強。曰く無敵。曰く――貧乏。
 そんな女に、この箱を奪われるわけにはいかない!
 そうして弾幕ごっこが始まった。
 お札と針をかいくぐり、なんとかやり過ごそうとしてみるが、すぐに行く手を結界が阻む。
 こちらの弾幕はお世辞にも牽制にすらなっていない。なんとか逃げられる方向はないか。弾幕をかいくぐりながら必死になって探す。
 背中に衝撃。
 箱に針が一本刺さっていた。紅白は本気だ。
 このままじゃあたしはいつかやられてしまう。何とかこの状況を打破しないと……。
 いや何とかする方法はあるにはあるのだ。だがその方法を取るのには非常に躊躇われる。
「――づぅ!」
 舞い散る羽毛。巫女の針があたしの翼を貫いていた。――よかった。骨には当たってない。
 けど、翼がこれじゃ動きは制限される。これ以上逃げるのは無理だ。
 頭の中の天秤が傾いた。もったいないけどやるしかない!
 動かないあたしを見て好機と思ったのか、紅白が黒白の弾を投げてくる。
 それに向かって、あたしは、背中の箱を投げつけた。
「そ、そ、そんなに欲しけりゃくれてやるわよぉーーーーーー!」
 箱と弾が接触。箱は粉々に砕け散り、そしてあたり一面に黄金の雪が降注いだ。




「なるほどね。まったく霊夢も卑しいもんだ」
 あたしの羽の傷を治療してくれながら、店主は呆れたようにため息をつく。
 あの後、紅白が小判拾いに夢中になっている隙に、あたしは逃げ出してなんとか香霖堂までたどり着いた。
「……ほら。これでもう大丈夫だ」
 店主がまるで拾った小鳥に対するような態度なのが気になるが、治療されてる手前黙っておく。
 ためしに動かしてみる。少し痛みがあるが問題ない。
「それと……ほら、本だ」
「――え? え? 何で? あたしお金払ってないよ?」
 お金と交換でないと『かへいけいざい』は成り立たないのに。
「いや、霊夢は妹のようなものだからね、迷惑料さ。それに霊夢のツケはたんまりあるんだ。小金を手に入れたようだし、霊夢から頂くとするさ」
 そういって店主はウインクをした。
 その似合わないウインクがなんだか可笑しくって。千両箱のことなんかどうでもよくなって。
 しばらくの間、涙が出るほど笑っていた。









とっきゅん!とっきゅん!
特急じゃねぇよ!!
新角
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最新
投稿日時:
2006/10/28 09:00:38
更新日時:
2006/10/31 00:00:38
評価:
0/0
POINT:
0
Rate:
5.00
1. 3 じーにょ ■2006/10/29 18:20:51
最後まで「あたし」が誰なのか判らなかった。ごめん
2. 4 VENI ■2006/10/30 00:28:59
間違った楽しみ方かもしれないですけど、こーりんのウインクで噴いてしまった……w
読みやすかったです、でももうちょっとボリュームがあればもっと面白くなったんじゃないかな、と。
3. フリーレス 復路鵜 ■2006/10/30 09:17:07
悪くは無いと思いますが、如何せん長さが………
4. 4 復路鵜 ■2006/10/30 09:17:34
そして点数を入れ忘れました。
がっくり。
5. 3 らくがん屋 ■2006/10/30 17:11:43
相当練り足りないんじゃないかなあ。千両箱巡って大弾幕戦になるくらいじゃないと物足りん。
6. 4 ひな ■2006/10/30 19:41:39
読みやすい文体と起承転結の四段落構成が良いと思います。
ただ自分もやらかすんですが、短編としては指示語、指示代名詞の数が若干多いです。
すっきりとした文章なのでほとんど気になりませんが。
7. 5 as capable as a NAMELESS ■2006/11/01 14:59:26
ていうか世の中金だろ。
8. 5 ABYSS ■2006/11/01 19:57:59
朱鷺子を使ったのは目から鱗。
でも、この冒頭と小道具なら、もっと話を膨らませられると思います。
小粒でも十分面白いんですけどね。もったいないなあ、ということで。
9. 4 椒良徳 ■2006/11/03 16:57:36
霊夢マジ外道w
それにしても、朱鷺子が主人公の話ははじめて読みました。
ナイスです。
10. 8 アティラリ ■2006/11/03 19:35:02
この感情の高ぶりは抑えられない!
とっきゅん!とっきゅん!
11. 9 ■2006/11/05 01:32:41
…くっ、とっきゅんのこと名前しか知らなかったんですが…一生懸命なとっきゅん可愛いじゃねえか!ちくしょう!最後の和みムードもいい!
12. 4 PQ ■2006/11/06 17:44:07
現状では見つけた取られたで終わってしまっています。味付けのためにミスティアが登場しますが、ちょっと薄い。もう一山欲しかったところ。
13. 5 銀の夢 ■2006/11/07 13:54:03
香霖が粋だぜ!
14. 1 箱根細工 ■2006/11/07 21:36:21
今一。
15. 2 反魂 ■2006/11/08 22:19:45
名無しの本読み妖怪……これを使ってきましたか。出来ればもう少し、長いお話で楽しみたかったですが。それが出来るタイプのお話だったと思いますし。
それにしても普段が質素な幻想郷だけに、千両箱って言われるとさながら小国の国家予算くらいの衝撃。向こう20年くらいは博麗神社も安泰なんじゃ?
16. 7 74 ■2006/11/09 19:59:07
貧乏ネタはキライだがなんか朱鷺子がかわいいので
17. 4 爪影 ■2006/11/10 22:26:59
 霖之助、お前良い奴だな。
18. -1 匿名 ■2006/11/12 17:52:53
これ主人公はだれですか?よくわかりませんでした。
19. 4 たくじ ■2006/11/12 21:36:08
すみません、香霖堂読んでいないので。
霖之助さんいい人だなぁ。
20. フリーレス サカタ ■2006/11/13 00:11:40
とっきゅん?がよくわからないので…
香霖堂は、すみません読んでないんです。
21. 4 藤村うー ■2006/11/13 03:02:37
 特急じゃねえよ!
 タイトル好きです。
 朱鷺子はこんなキャラクターだったんだろうなあ、と思わせてくれたのでそれだけでいいような気も致しますが、締めのあたりがいまいち締まってないように感じられたのが残念でした。
22. 3 いむぜん ■2006/11/15 21:35:34
うおー、本読み朱鷺子のキャラがわかんないからにんともかんとも。
巫女が追いはぎするなよ……落ちてる本を探したりしてる朱鷺子が不憫だ。
23. 6 blankii ■2006/11/16 21:22:02
香霖堂も途中参入故に、実は朱鷺子さんのことを良く知らんのです……申し訳ない。ていうか、その言い方は「○○をブチマケロ」?
24. フリーレス 蒼刻 ■2006/11/17 01:32:29
千両箱の価値が分かるなら、小判だけちょっとづつ小出しにして交換した方がいいような。
そこに気付かない朱鷺子のアホ可愛さが、個人的にちょっと加点要素でした。
しかし、まずあたし、私という人称のズレが気になったのが一点。
後、ミスティアを出した部分が、あまり重要な意味を感じないので……
ストーリー全体を見ると妙な間を作ってしまっている事。
最後に、香霖のウィンクが泣くほど大爆笑されるのか?
という違和感があり、無理やり終わらせた感が出てしまった事がマイナスでした。
ワケ合って点数は入れられないのですが、自己採点では4でした。
25. 5 Fimeria ■2006/11/17 06:25:50
香霖……動物には優しいのかな。
短いながらもほのぼのとしたオチに楽しませていただきました。
お疲れ様です。
26. 2 翔菜 ■2006/11/17 13:07:17
失礼ながら。

どうみても特急で書いた感じです、本当に(ry
27. 4 人比良 ■2006/11/17 20:00:48

本文で名前が出ないのにあとがきで自己主張している慎ましやかさが素敵。 
28. 4 2:23am ■2006/11/17 20:22:44
時間がなかったんでしょうがもうちょっと尺が欲しかった。
29. 6 つくし ■2006/11/17 20:51:35
通称とっきゅん、オンリーワン賞おめでとうございます。巫女の容赦なさとかいろいろ、東方っぽくて楽しめました。
30. 6 K.M ■2006/11/17 21:12:47
霊夢、その……なんだ、君は外道かね(苦笑
31. 2 おやつ ■2006/11/17 21:25:32
頑張れとっきゅんw
霊夢に銭ばら撒いて逃げるって口裂け女の対処法みたいねw
32. 6 目問 ■2006/11/17 22:42:38
 短い話の中で、登場人物がいい味を出していたと思います。読後感も良かった。
 タイトルは勢いあっていいですけど意味分からんっ
33. 2 木村圭 ■2006/11/17 23:05:54
霖之助は大切なことを忘れている。いくら金を手に入れたからって、霊夢が霖之助にツケを払う可能性なんてこれっぽっちも無いってことだ! どれだけ追求されてものらりくらりと避わす霊夢が目に浮かびます。
34. 4 時計屋 ■2006/11/17 23:36:57
香霖のちょっといい話。
彼のこういう話は逆に珍しいですね。
ところで、とっきゅんって誰?
35. フリーレス 新角 ■2006/11/19 00:39:46
コメントレス
数が多いので、話題ごとに。

>長さ
このネタを思いついたのが締め切り1時間前でした!
時間ギリギリまで書いてここまで。うん、もうちょっと長く出来たと思うんだけどね……。
創想話でリメイクしたら怒られるかしら。

>題材が朱鷺子
ものめずらしさゆえの加点も狙いました!俺アコギ!
いや朱鷺子も大好きですけどね!

>誰てめぇ
一人称の弊害。容姿の描写を入れ損ねた。朱鷺子という名前が二次設定の極みなので不用意にも使えず、考え出したのが一人称だった。
それでも朱鷺子の知名度の低さに愕然とした!香霖堂単行本化しろよ!!

>オチ
香霖×朱鷺子を意識しました。別にカップリング信者じゃありませんが。むしろ朱鷺子は俺の嫁の一人だ!

>タイトル
深夜のパチンコ番組からそのままもらいました。
千両箱と書いてドル箱と読む。

>とっきゅん可愛い
実質小悪魔スレと化している名無し娘スレへようこそ!

>あとがき
もう俺SS界のとっきゅんの偉い人を目指すよ!目指すだけ!
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