長め:霊夢と魔理沙の物語

作品集: 最新 投稿日時: 2007/05/12 18:53:09 更新日時: 2007/05/15 09:53:09 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00

 最初に、本編の内容を書き出しておきます。

 魅魔、霊夢、魔理沙と三人連れだって魔法の森へ行くこと。
 霊夢、火の精霊を迷いの竹林で見つけること。
 霊夢、火の精霊を神社に住まわせること。火の精霊にヒューペと名付けること。
 萃香、魔理沙と鬼ごっこをして負けること。
 レミリア、神社でフルートを演奏すること。
 霊夢、魔理沙、ヒューペと三人連れだって魔法の森へ行くこと。
 ヒューペ、魔剣を手に入れること。
 霊夢、ヒューペと争うこと。ヒューペ死ぬこと。

 ではどうぞ。


・・・序章

 ――それはいつのことだったろうか。冬風が枯れ葉を吹き散らし、春に生まれる新芽たちのため、土を積んでいく寒い日のこと。神社の台所に取り憑く悪霊、緑の髪の魅魔は、いざ、温(ぬく)きこたつを己が居城とし、黄金色にかがやく熊本の辛子レンコンを食べながら、小麦の酒で唇を濡らしつつ、テレビに見入っていた。
 冬風よ、あなたの指先は、駆ける馬の、栗毛のまばゆいたてがみに触れ、「さあ急いで」と励ましている。冬の有馬記念の模様を、まるで、夫の浮気相手に対するかのように、荒々しく語る、アナウンサーの低い声。競馬場にいる人々の喚声に混ざって、さあ、さあ、嵐のようにスピーカーを揺らす。
 しかし、魅魔は声には注意を払わず、走る馬たちの姿だけを目で追う。視線は鷹のように鋭い。目の光に知性がゆらめくが、それは黒い執着に彩られ、けして良いものではなかった。いったい大穴に、いくら賭けたのだろう、この醜い野心家は? そのかげり森のような目の奥を、怒りの火で明るくさせ、レースを走る馬たちの脚を凝視している。博打のもたらす昂揚に、口は締まり、白い歯は強く噛まれている。心の中は、自分が賭けた大穴を追い越す馬たちへの呪いが渦巻いている。
 馬はいっせいにゴールへ向かう。大穴は追いすがろうと最後のスパートにかけた。魅魔は酒を飲むことさえ忘れ、唇をきりりと噛みつつ注視した。やがて最後の一歩が近づき、魅魔は目を塞ぐ。ああ!
 まるで見当違いの馬、レースが始まる前はけしてゴールするとは思えなかった馬、ようするに単勝買いを外れさせるところの馬が、みごとゴールをくぐった。瞬間、魅魔の心は闇に包まれる。呆然とし、小麦の酒を飲み下すが、それは苦かった。
 さて――魅魔の頭は磨き立ての歯のように、ずっと真っ白になっていたので、それがレースの終了からどの程度経ったのか、それは分からないのだが――、勝手口の開く音に、魅魔は敗北のショックから我を取り戻す。はてと身を廊下へ乗りだして誰が入ってきたのか見れば、まだ幼い人間の少女、博麗霊夢が帰ってきたところだった。
 開いた扉から吹くそよ風に、薄茶色の短髪が揺れると、少女はそれを手で抑え、もう片方の手で扉を閉めていく。その赤い夕焼けのような目は、すこし寂しげで、まだ扉の奥に何か置いてきた、というような印象を受ける。魅魔は、その霊夢に明るく声をかけてみた。
「おかえり」
「ただいま。って、魅魔お姉さん、また昼間からいるの」
 霊夢は年相応の甘い声で文句をいう。この悪霊が、自分の家である靈魔殿を出、神社の台所に上がり込むのは珍しいことではない。しかし酒の匂いをあちらこちらに振りまき、座布団にシワをつけてごろ寝する姿はいかにも太々しいどら猫といった風情、呆れるしかないものだ。
 楽しげに魅魔は口笛を吹き、霊夢に答えていった。
「何か問題でもあったかい。昼間でおかしなことは何もないだろう。夜に神社に来るのは丑の刻参りがせいぜいさ」
「でも、家の人間が了承してないのに、その人の家へ勝手に上がり込むのは、問題よ」
「そうだね、問題だ。私も、問題がないとは一言も言ってないし」
「言ったわよ。『何か問題でもあったかい』って。まったく、こんな前の言葉も忘れるんだから、やんなっちゃう。私は自分の部屋へ帰ってるわ。すぐに考えたいこともあるし」
 このときの魅魔の驚いた顔は、いやはや、我々の想像どおり、じつにわざとらしいものだった。意地悪く笑い、出て行こうとする霊夢の手をつかんで引き留め、魅魔は次のように答える。
「その言葉は、『霊夢、外で何か問題があったのかい』って、意味だよ。二言目からが答えさ。私は、何となく聞いてみただけなんだけど、その様子だと何かあったみたいだね? さ、お姉さんに話してごらん」
 そういって、小さな手を強引に引き寄せ、霊夢の体を自分の胸元へ落としていく。霊夢は驚き、目をぎゅっと瞑って衝突のショックを待ちかまえる。けれども魅魔は、やさしく両手を広げ、キャベツ畑が雨雲を受け止めるように、幼い少女の体と心を、じつに穏やかに抱きとめた。温かな魅魔の匂いが霊夢を包む。霊夢はふとんに包まれるような感覚に、安堵して目を開く。その、トマトのように潤む目が、レタスのように大きなやさしさをたたえる魅魔の瞳と交わった。まなざしに心を撫でられ、霊夢の心は穏やかな気持ちとなる。
 いまや魅魔は、霊夢にとって、頼りがいのある姉となり、心は少女への愛にあふれ、冬のさなかに芽を蓄える鬱金香(チューリップ)のように清らかだった。魅魔の手が霊夢の髪にそっと触れると、霊夢は魅魔の胸の肌に、貝のようにかわいらしい耳を押しつけて、心地よい鼓動の音を静聴する。それから少し心を静め、魅魔が、言いにくいことに気づいてくれるのでは、と期待して待った。
 魅魔は霊夢のことだけを考えた。なぜ期待に背くことが出来よう? 魅魔は、霊夢の様子から、すぐ、自分からは言いにくいことなのだ、と気付く。話そうとして話せずに戸惑う唇を、なだめるように指でなぞる。霊夢は恥ずかしげに俯いた。魅魔は悪戯な森の妖精のように明るい微笑を捧げ、指を離す。それから、霊夢が今日、どこへ行ったのかを思い出し始め、人間の里だったことを思い出すと、これと思えるようなことを考えついた。
「私と一緒にいることで、何か言われたんだね? お嬢ちゃん」
「うん」
 霊夢はそれから、魅魔お姉さんはとても私に良くしてくれるし、私も魅魔お姉さんに良くしているわけで、それを普通は友達と呼ぶわけだけれど、巫女と悪霊という立場があるならそれを友達とは考えないと云う人たちから、色々言われた、ということを語った。
 すべて聞き終えると、魅魔は熱い血の色をした唇を開き、霊夢の心に言う。
「そう云う人もいるだろうさ。それはその人の心の中で決めたことだ。本当に大事なことはね、自分で考えて、自分で決めなきゃならないんだよ。本当に大事なことは、誰であれ、正しいか間違っているかなんて決められない。自分の心の中で決めて、そして、――行動するものだ」
「分かってるわ。その人がおかしいとか、いや私が間違ってるとか、そんなふうに思う訳じゃないの」
「それならいいさ。さあ、今日は一緒に森の方まで遊びにいこう。いい場所を見つけたんだ」
 そういって、魅魔は霊夢の軽い体を抱き上げ、玄関へ向かった。


 青めく空へ、冬の寒さにすこし気の急ぐ夕暮れが訪れ、白い雲の体を摘む頃、魅魔と、霊夢と、それから魔法の森で出会って魔理沙は、三人連れだって、森の奥深くにある洞窟の中にきていた。湿っている反面、綺麗な風が絶え間なく吹いているこの洞窟に、森を満たす幻覚のキノコは生えておらず、それでいて壁はしっとりと濡れている。いやがおうにも人を高揚させる魔法の森の中にありながら、客人の心を静かにさせる珍しい所だった。
 三人は奥へ向かって歩く。霊夢は暗い洞窟の壁面を、不安げな表情で見つめている。
「奥の方まで行くと、だいぶ暗いわ。ちょっと怖いわね」
「何よ、霊夢は臆病ね」
「さ、二人とも、しっかり私に掴まっておいで」
 魅魔は二人の手を、両手でつかんで引き寄せた。霊夢と魔理沙の体がすこしだけ近寄る。けれど、お互いそれに気付くと、魅魔の手に逆らうように、別々の方へ離れた。二人はけして仲良しというわけでもなかったので。魅魔はすこし困ったような表情を浮かべ、それからまた三人、洞窟の奥へと進んでいく。
「こんなに暗いと、こんな薄いロウソクの色じゃ心細いわ、もっと赤いのがほしい。自分が本当に正しい道を進んでいるのか、不安になる」
「暗いのがいいんじゃないの。いっそ闇がロウソクを包み込んで、何もかも真っ黒にしてしまえばいいのに」
 二人の言葉を魅魔は聞き、優しい唇をひらりと開く。
「大丈夫さ。もっと自分の光を信じるんだ。人はどんなに長いトンネルでも、歩き続けることで抜けられる。光を持っているならね。」魅魔は云って、更に続ける。「たとえどんなに小さい光でも、闇がそれを隠すことはできないんだ。さあ、いよいよお待ちかねってとこだね」
 三人は長い洞窟を抜けると、赤い夕焼けに照らされる野原へ出てきた。洞窟の奥の温暖な気候の中では、冬なのに、薔薇が蕾をつけ、つくしが顔を出している。冬の寒さから逃げ込んできた蝶たちが、その上を飛び、あたりに鱗粉をひらめかせる。そのおしろいに、草がきらめいていく。
 いやはや、梅の木は、なんと見事に花を咲かせていることか。細い足のつま先を、母なる大地の乳房に絡ませ、その透き通った蜜を味わって生きる彼女らは、まるで処女の恥じらう頬のような、赤い花びらを一面に咲きあげて、子リスや小鳥たちを肩に載せつつ、夕べに吹く風たちにいくつもの美しい接吻をしている。
「まあ、なんてすてきなのかしら!」
 霊夢は小走りに、野原の奥へと向かった。それを見送り、魅魔は傍らの魔理沙に云う。
「夜になれば、もっと別の綺麗な光景が見られるよ。冬の星々が空を満たして、地上に光をふらせる。すると、風に揺らめく草花は、月と星の光に白い輝きを滑らせて、無数の宝石となる。真っ暗闇の中で見るその色合いは、いっそう綺麗で、星好きの人なら誰でもうっとりするだろうね」
「それ、ほんとに?」
 魔理沙は自分の目が星になってしまったみたいに、きらきらしたまなざしで魅魔を見つめた。
「ああ、本当だよ。それまで、霊夢と遊んでおいで。――大丈夫。意地をはらなくても、魔法使いだって、あの子は嫌いになったり、変な目で見たりしないよ」
「そうかもね。でも、あの子は将来、村の人間を救う、ヒーローになるんでしょ。変わり者の魔法使いが仲良くなったら、あとあと敵対することになるだろうし、そうなったら、気まずいだけよ」
 魔理沙は師匠の言葉に顔を逸らす。どこを見ているのかは、分からない。あるいは眼を閉じているだろうか。そして、未来にきっとくる別れの予感に、心を寂しさで満たしているのだろうか。誰が何と云うべきだろう。夕焼けは静かに少女たちを照らす。魅魔は少しの間、魔理沙の綺麗な頬、寂しげな横顔を見ていたが、向こうで遊ぶ霊夢の方を向くと、さかんに首を振りながら、魔理沙に答えた。
「ヒーローが、人を救うんだって? 違うよ。救われるのは、いつだってヒーローの方さ。」魅魔は肩をすくめる。「力ある者は、誰かに助けられなきゃ、ずっと寂しいままだ。強い力の持ち主は、悲しい宿命を負っている。暗い、深い穴の中にいる。人間が、もし彼らを助けて、その穴から救えるのなら、そのとき彼らは人を守るんだ」
「人間が救うの、強い者を。それで、ヒーローを生むの? そんなに人間は強いかな」
「強いさ。魔理沙は誰を好きになって、誰を暗い穴から救ったんだい? この私だよ」
「魅魔様?」
「そうとも。さあ、いっておいで。もちろん、将来別れることになるかもしれない。だけど、魔理沙、あんたはそのとき、お互いの救いを手にしているはずよ。この赤い夕焼けも、その一つになるはずさ」
 魔理沙はうなずき、まだ少し戸惑いながらも、花や蝶と戯れる霊夢の方へ向かう。
 それを見ながら魅魔は、二人がいずれ、親友になるという予感を覚えた。

・・・1


 植えたばかりの苗も、十年も経てば立派な若木になるものだ。まだ幼い頃、少女の肩ほどだった木は、いまでは背伸びしても届かないくらいの大きさになっている。その木の足下で、赤いリボンで黒髪を飾る少女、博麗の巫女である博麗霊夢は筍を摘んでいた。
 ここは迷いの竹林。春の風が、笹の芳醇な匂いを林中に広めている。栗鼠や牝鹿といった、森の獣たちが、草木を食べてくつろぐ姿があちらこちらに見える。また妖怪ウサギの探索チームが、筍を掘ってはそれを刺身にして食べている。その表情ほど甘い笑顔を見せるウサギを知らない。なるほど、人参も筍も硬いわけだが、妖怪ウサギたちにとって、筍も好物であるらしい。
 さて、しばらくウサギたちと掘っていると、ウサギの一人が急に声を張り上げる。
「あら。あれは何かしら」
「どれどれ、おや、あれはパンダじゃないのかな」
「そうね、パンダだわ」
 次々にウサギたちは声を上げる。霊夢もそちらを見たけれど、ここからでは太い竹が死角になり見えなかった。ウサギたちはそれきり興味をなくしたようで、また筍掘りを再開した。しかし霊夢は逆に、ふつふつと興味がわいてきて、パンダがいるという方向の方へ歩き出す。今まで噂には聞いていたが、本物のパンダを見たことがなかったのだ。
 さて、しばし竹林を進むと、なんだか白黒としたものの影が見えてきた。あれが話に聞くパンダではなかろうか。漢字で大熊猫と書くそうだが、くまーと挨拶しようか、それともにゃーとあいさつしようか。そんなことを考えながら近づいてみると、はたしてそれは、魔法使いの魔理沙その人。それで、「あらこんにちは」とあいさつすることになってしまった。
「こんにちは。お前も永琳の健康診断を受けにきたのか?」
「いいえ。何それ」
「いや、私も詳しくは知らないんだがな。今永遠亭では予防なんちゃらがあって、ワクチンがどうの、免疫がどうので、無料の注射を売られるらしい。私はせっかくだから、見学にいってみようと思ってな」
「なんだかぶっそうな話ね。私は筍掘りにきたんだけど、ちょっと今は別な捜しものをしててね」
「つまらないな。さっきあっち方でぼよんと太ったパンダを見たが、食べ物探しなんて、あいつとやってることが変わらないぜ」
 魔理沙が指さす方角を見て、霊夢はどうしたか。そちらの方へ駆けだした。今やパンダに対する興味はとても強いもの。ジョーンズ博士の宝を思うほども大きくなっている。草履で草を踏み、かろやかに跳びながら進んでいくと、竹の生い茂るところに出る。それを手でおしのけて進むと、いきなり開けた場所が、霊夢を待ちかまえていた。
 その場所に着いた時、霊夢の頭の中からパンダが消える。もっと驚くものが霊夢の目に飛び込んだからだ。そこに人間の少女らしき姿が倒れていた。目は閉じている。唇は開いているものの、舌には力がない。慌てて霊夢は、少女のそばに駆け寄った。見知らぬ顔だが、里の人間の一人かもしれない。どうしようかと迷ったが、先ほど、頼れないこともない乙女に出会ったことを思い出した。二本の指を唇にくわえる。九度口笛を吹く。三度は短く、三度は長く、そしてまた、三度短く。
 頼りがいのある乙女、どんな便りも聞きつける魔理沙は、霊夢のSOSを聞くや否や、箒に跨ろうとして――それを今日は家においてきたことを思い出し――すぐそばからさお竹をしっけいすると、それにまたがって、ただちに霊夢のところへやってきた。
「ヘーイ」
 それから、霊夢が竹藪に少女を連れ込んでいる(魔理沙にはそのように見えた。というのは、少女が気を失って迷いの竹林にいる理由を、それ以外では、とっさに思いつかなかったからだ)さまを見ると、驚き、何を言ったらいいか分からず、ハンカチで汗を拭き拭き、かろうじてこう云った。
「カトルストンパイ!」
 が、もちろんこの言葉はあまり意味がない。霊夢はすぐに事情を語り、永遠亭へ少女を連れて行くように云う。
「あんたの箒なら、一っ飛びでしょう」
「そりゃ、人っ飛ぶわけだからな。ところで、その子は人間なのか?」
「人間じゃなきゃ、放っておくの?」
 霊夢が細長い眉を顰めると、魔理沙はその端正な顔に、複雑な表情を浮かべる。それはちょうど、コウモリが、窖(あなぐら)の中を飛び回る時、薄暗い地裂に身体を入れて休もうとしたところ、眠る赤子の口の端からからこぼす水ほどの、かすかな湧き水に気付いて、新たな飲み水を喜びつつも身体を休めることができずに困っている、そんな顔立ちに似ているようだ。霊夢の赤い目と、魔理沙の金色の目が互いを映す。
 霊夢は魔理沙をじっと見据え、その真意を探る。魔理沙は何か云おうと唇を開き、黙ったままだったが、心は霊夢に開いて見せていた。霊夢は友情のまなざしで魔理沙を見つめると、その心に悪意がないことを確かめ、自分への好意を感じ取る。すると、霊夢の頭はふいに、永夜異変で妖怪の口車に乗り、手を組んで、夜を止めたことを思い出す。妖怪を助けて後々気まずい思いをしたことを思い出す。巫女の心から、悩みが火のように燃え上がった。魔理沙が何を云おうとしているのか悟った。目に憂いを浮かべつつ、魔理沙から顔を背けてしまう。
「でも、人間だったら大変だわ。とにかく、連れて行ってちょうだい」
「分かった。命(めい)優先だな」
「命(いのち)よね?」
「怒ったら不味いやつの命令優先だ。それじゃ、ゆっくり来いよ」
 そういうと、魔理沙は箒でひとっ飛び、もとい、ふたっ飛び。永遠亭の方へ向かう。緑を巧みに風で撫でつつ。風が笹の葉を吹き飛ばし、辺りに芳醇な緑の匂いを振りまく。竹林の獣たちは皆、魔法使いの後ろ姿を見送る。気性の荒い猪も熊も、また牝鹿も白山羊も、舞い踊る笹の葉吹雪を、頭の上にのせながら。
 霊夢も追うため、空へ向かってふわりと飛ぶ。枝に引っかからぬよう竹林よりも高いところを飛びながら、永遠亭の方へ向かうが、心は低いところをさ迷い、思いは過去に引っかかっていた。


 さて、魔理沙が永遠亭につく頃、永琳は、永遠亭にくる妖怪その他ものもろの人たちの身体に穴を空けていた。といっても注射針の細い穴だが。一人一人の腕に注射を打つというこの作業めは、名医を思った以上に手こずらせる。
 見よ、患者たちの暴れっぷり。電子レンジに入れた銀のフォークでさえ、こう荒々しくはあるまい。酒好きの妖怪は傷口のエタノールをわざわざ舐める、妖精たちは針が嫌で診療所を飛び回る。いやはや、その騒音のすさまじさ、激しさ。医者の引き締まった顔も、次第に呆れて緩んでくる。予防接種自体、幻想郷には必要ないし――ペストやコレラといったかつての好手敵も、いまでは分別がついて、おとなしいものだ――もう止めようか、と思っていたところ、魔理沙がさお竹に跨ってやってきた。やってくるなり、魔理沙は永琳へ声をはりあげた。
「急患だ」
「急患だ?」
 てっきり、見学にきたと思いこんでいた永琳は、九官鳥のように聞き返す。けれど、ぐったりと魔理沙の背中で具合悪そうにしている少女を見ると、すぐに医者の顔へ戻る。静寂が部屋中を包み込む。永琳は、魔理沙の手から少女の身体を受け取ると、やさしく抱え上げ、慎重な手つきで、さっそくベッドへと、その体を寝かす。柔らかなベッドは少女の身を、音も立てずに受け止めた。白いシーツに陰ができた。
 永琳の手は、それから、少女の肌に触れ、その熱と感触を確かめていく。さて、そして何をしたか。医者の秘術についてはとかく語ることはできないが、まず少女の身の無事を確かめる。更にその身の上が、ただものではないことを悟り、驚いた顔立ちで魔理沙を見る。
「まあ、まあ。いや、これは変わった急患ね。いやはや。こんなに変わった患者を診たのは、何百年ぶりになるかしら。ずいぶん昔に八百比丘尼という患者を診たことがあった。そうそう、あの時以来だわ。彼女は風邪を病んでいて、まあそのこと自体はさほど驚くこともなかったのだけれど、肉体は二百を優に超えつつも、顔はまるで年盛りの処女のよう、肌はみずみずしく、触れた指に心地よかった。声も綺麗、ちょうど、春のウグイスか、はては、羊飼いの鳴らす角笛に似ていて、夕焼けの指先がほんのかすかに色づける、秋の黄金の草原の、草花の間を駆けめぐり、岩下を流れる川へと降りて、やさしい水面をふわりと揺らす、その高らかな響きを聞けば、飼われる白い羊たちはどれだけ遠く離れていても、愛しのすみかへ帰るけれど、そんな具合に、今でも記憶に蘇ってくる。
 彼女は僧侶だった頃、人魚を救おうとしたけれど、人を守る僧侶の定めはそれを許さず、結局人に徒なす人魚を殺すことになってしまい、せめてもの情けとして、遺言で自分の肉を食べるようにと促した、人魚の願いに従った。そうして人魚の肉の魔力により、その肉体を手に入れたの。さて、その身体が病に罹った時、心ない人たちの間をさ迷っていたようで、神秘の身体というだけで、誰も診ようとしなかった。けれども彼女の幸運は、彼女を見捨てることなく、私へと行き着かせたの。私はすぐに薬を調合すると、彼女を助けたわ。ま、医者として当然ね。
 さて、ちょっと話がそれたわね。とにかく驚いたわ、実に変わった急患よ。久しぶりの族(やから)だわ」
「と、いうのは?」
「人間ではないし、妖怪でも、妖精でもないわ。ちょっと前の――あなた達から見れば、大昔か数十世紀前になるかもしれないけれど――錬金術から生み出された人工の火精霊(サラマンデル)よ。
 そうそう、錬金術師といえば、ヘルメスという昔の人は、私から見ても、随分腕の立つ人だったわ。太古の魔術師たちはその知識の代償として、ほとんど狂っていたけれど(テッサリアの魔女が何をしたかご存じ? 月を引き下ろそうとしたのよ)、その中で良識を保っていた数少ない人物ね。その人の作った火精霊は、それは素晴らしいもので、ちょっと近くから見ただけじゃ、太陽にもイブリースにも見えた。ファウスト博士とメフィストフェレスに一人のホムンクルスが付いていく話があるわね? そのホムンクルスより、なお明るく、美しい姿だったのよ。多くの火は、肉に美味しい味わいと香をつけるけれど、さあ、燃え立つ少女の若い目、力強い魂、歩くと輝く少女の細い足首は、町の女たちの欲情を燃やし、ことごとく他人の姿と身体の匂いとに美しい色合いをつけた。恋をするものは皆、艶めかしい視線で彼女を見、柘榴のように甘酸っぱい匂いを身体から放っていた。いや、まったく、一度失った姫を探し続ける名医、貞節においては大陸で並ぶ者がないと云われ、美貌と貞節との釣り合いを常に賞賛されてきた女でさえも、一夜お相手願いたい、と思うほど、たいそう美しいものだったわ。
 けれども、誰が彼女を愛したとしても、彼女自身の愛より激しいものではなかったわね。火をまとう身の上でありながら、薔薇の貴婦人を愛した火精霊は、貴婦人に憎まれつつも、冷たい冬の娘である魔物を襲い、やがて冬の訪れがくると、冬の呪いを受け、薔薇の貴婦人と共に命を落とした。私が思うに、火精霊の恋は激しく、報われないことが多い。それはロウソクに燃える火が、大きいほど早く燃え尽きるからでしょうね。
 ところでこの火精霊の話に戻るけれど、火分が足りてなくて、倒れていたみたいね。いったいどこで見つけたの」
「私じゃなくて、霊夢が見つけたんだ。竹林の中だと聞いたが、何か心辺りはあるか?」
「なるほど。」と永琳はうなずく。「きっと、竹林の地下にある、火山の地脈からやってきたのね。そういえば、そろそろあの辺りも休む頃だわ。さあ、このことをご存じかしら。あなたも知ってる幻想郷の山は、ずいぶん昔はたびたび噴火していたけれど、ちょっと前に(私の基準よ)死火山となった。それで火精霊はあちこちの地脈に引っ越したのだけれど、どこも次第に生きた熱をなくし、火精霊の族は運命が定めたとおり消えていった。つまり、この火精霊は数少ない生き残りというわけよ」
「なんで火山が死んだんだ?」
「山の妖怪たちの間では、色々云われているらしいけれど、外の世界の火力に使われるようになったからじゃないかしら。なんたって、火山の熱は完全に制御できれば、火打ち石や石油なんかよりも、ずっと効率良いですからね。月の歴史でも覚えがある。詳しいことは、あちこちふらふらしている隙間妖怪に聞けばいいわ。私は近代のことには興味がないの。年寄りはいつだって、昔話に自慢の花を咲かせて、最近の事は芽のうちから摘んでしまうものよ」
 こんな風に話しているところへ、霊夢が遅れてやってくる。魔理沙は事情を話し、どうするか尋ねた。
「妖怪じゃないなら、」霊夢はほっと安堵したように云う。「別に、助けても問題ないわね。一安心といったところ。さあ、どうしましょうか、」永琳は霊夢のぞんざいな言葉に首をかしげたが、魔理沙はかまわず応えて云った。「神社に置いたらどうだろう。悪い居場所じゃ、なかろうが」
「でも、神社の人が困らないかしら?」と、霊夢は唇を尖らせる。「魔法の森なんていいと思うわよ」
「なんてことを言うんだ。ちっともよくないぜ。木々に火が燃え移ったら大惨事だし、あの湿気った空気は火に悪い。それに比べると、神社は高いところにあるから、他に燃えるものがない、日当たりもいいし、風だって綺麗なもんだから、火がよく燃えるだろう」
「でも、長いこといたら、神社だって小火を起こすかもしれないわね。そしたら、大変よ。森みたいにどこかに水源があるわけでもなし、なかなか火を消せないもの」
「そんなに長いことはいないと思うわよ。きっと、戦場の前線に駆り出される若者や、床で死を待つ病人だって、長くないって思う程度に長くない。」二人のやりとりに肩をすくめ、ため息をこぼすのを堪えると、永琳はつとめて冷静な声で口を挟んだ。「火のないところじゃ、そうは生きてられないわ。愛人と離れて日々を過ごす、誠意の確認も艶めかしい肌の交わりもない、愛情のようなものよ。薬は調合しておくけれど、そうね、あと二ヶ月といったところかしら」
「二ヶ月、今生えている髪の先とお別れするくらいの時期だな。まあ、それくらいならいいだろう。なあ霊夢」
「二ヶ月もあったら、生姜の酢漬けだって出来るわよ」
「どうして地上の人は、生姜を漬け物にするのかしらね? 私はジンジャーエールが好きよ。もちろん、松の葉や、他の葉のサイダーも好きだけれどね。ジュースは高価で、あの砂糖より甘い味わいはもちろん美味しいけれど、やっぱり私は安くて口当たりの良いものを好ましく思うのよ。贅沢を知らない一昔前の人間ですからね。それはともかく、医者として、患者の健康を優先させてもらうと、私は神社に住ませるという意見へエールを送るわ」
 お年寄りの永琳は医者としてのまっとうな見解を述べていく。魔理沙は勝利を確信した笑みを浮かべる。かわいそうに、霊夢は悔しげに唇を噛み、魔理沙を睨みつけた。霊夢は穴熊で囲おうとしたが、ちょうど隅についたとき、王手がかけられてしまったのだ。
 さて、それでこの火精霊は、霊夢の家に住むことになった。とはいえ、しばらくは意識がなく、二日三日、神社で寝込んでいたのだから、そちらの話は置いておいて、診療所がどうなったのかを書いておくとしよう。
 我々の愛する氷の妖精、比類なき頭の持ち主、白く澄んだ肌のチルノ――この名のもとに幸と恵みあれ――が、月の頭脳の前へやってきた。順番を待っている間も余裕綽々といった風情。これほど堂々とした妖精は、今日始めてのことだ。待ちきれない様子で、椅子を上下に揺さぶり、「針をこわがる人の気持ちが分からないわ。あんなの、ちょっとチクっとするだけじゃない。」などと云っている。
 ところが、いざ注射針を前にすると、どうやら聞き分けのないハイドに変わってしまったようだ。針から逃げる、氷を放つ、診療所のあちこちに穴を空ける。これほど堂々と医者に刃向かう妖精は、今日始めてのことだ。「痛くないから」と云っても、だめ。「すぐに済むから」と云っても、だめ。しばし月の頭脳は考えて――永琳の考え事にしては長い時間が経ち――、それから云った。「それでは、チルノちゃん。こっそり秘密を打ち明けましょう。これはね。実はお薬じゃなく、濃厚なジュースなのよ」
 なんと素晴らしい方便だろう。チルノの耳には、その言葉が蜂蜜のように甘く聞こえた。なんともわくわくすることじゃないか、いつも舌の上でだけ味わえるジュースを、全身でたっぷり味わえるなんて! そこでチルノは、ようやくおとなしくなり、注射針を打たれたということだ。

 
 さて、チルノはそれからしばらく、なぜか満足した気持ちでいたのだが、夜がきて、わくわくして眠れないで居るとき、ふと不安な気持ちになった。
「あたいの血に、ジュースが流れているってことは、」そこで少し、顔を暗くして――「あたいは、果物の果実になってしまうんじゃないかしら? だって、ジュースの血を流すなんて、果物の果実だけなのだもの」
 それでチルノはまず、他にジュースを血の中に流す動物がいるかどうか考えてみた。もしいるのなら、妖精には戻れなくても、一生木にぶらさがっていることはなくなるわけだから。けれど、夜が明けるまでとうとう思いつかず、ひどく悲しい気持ちになった。いつもパパイヤのように明るい顔色は、バナナのように青くなったかと思えば、キウイフルーツのように暗くなったりもする。妖精ではなくなってしまうのか、何の木の実になってしまうのかと色々考えて、考えて、考えて、ついに注射を打ったお医者さまのところへ相談に行ったのが、なんだか良く分からない透明のジュースを打たれてから七日、つまり一週間後である今日。
 さて、永遠亭の妖怪兎、人の弱みに聞き耳立てる、かわいらしい耳のてゐはこの時、火精霊の薬を神社に届けに行っていて、永遠亭にはいなかった、それでチルノの相談事に耳を貸してやるわけにはいかなかったのだが、それはある意味では幸いだったろう。結局のところ、名医である永琳はチルノの悩みを簡単に晴らしてくれたのだ。どうやって? それにはちょっとした神秘があった。
 チルノの相談をすべて聞き終えると、永琳は呆れたしぐさで、しばらく物も言えずに口を開けていた。しばし後、落ち着きを取り戻すと、このかわいい妖精の肩をつかみ、「落ち着いて、よく聞いてね」と念を押した後、にっこり笑って、まず、こう云った。
「チルノちゃん、知らないの? 『食べると妖精になる神秘の果物』のことを」
 ――と。これがちょっとした神秘というわけで、それから、チルノがどうやって元気を回復したか、それはドーナツの穴の中にでもしまっておくとしよう。
 さて、この日は、チルノの悩みが解消された日であると同時に、珍しく神社が賑わった日でもあった。鬼と吸血鬼の二人が博麗神社にやってきたので。まだ夜のうちから、薔薇の指もつ曙の女神は、黄金にきらめく太陽夫人のため、白い雲たちをすっかり摘んでしまった。やがて曙の女神が退き、朝の乙女が天の階段を歩む夫人に傅いて、手をゆっくり引いていく、その頃、空には薄青いショールが咲き乱れ、夫人の光を幻想郷一面に降り注いでいる。
 こんな具合だから、春の暖気に気温も高く、何かにつけて酒を飲む萃香は一つ、神社の倉奥で熟成される「ひやむぎ」でもご馳走になろうかと、神社までやってきたのだった。
「だってさ、こんな暑い日は、」やってくる途中、萃香はこんな風にぼやく。「神社の境内の石が、すっかりまいっちまって、燃えてるかもしれないでしょ。」萃香はいかにもこれは不安なことだ、というように、明るい張り切った顔をし、酒の味を思い出しつつ舌なめずりする。「そしたら大変だ。つまりパトロールってわけ」
 神社に着くと、おおっと。その言葉通りだった。境内の中央あたりの石がいくつも燃え上がり、大きな火がまるで座る少女の姿のようだ。萃香は肩をすくめてから、驚き、よくよく眼を凝らした。自分の見間違いを知った。それはまだ少女ほどの火精霊が、小石を拾い集めているところだった。
 萃香は手を腰にかけてうなった。
「さて、はて。うむ。まったく、恋い慕う者にとっては鬼のような巫女だよ。霊夢め、またどこぞの無垢な女を引っかけたんだね。むくむくと嫉妬心がわき上がってくる。でもそんなものは脇によせて、神社に霊夢がいるかどうか、確かめなきゃ。しかめっ面の美しい人の熱は確かに感じるけれど、どこにいるだろう」
 萃香はにくらしい霊夢を探そうと、顔をめぐらし、明るい目を見開いて、神社をぐるぐる見回した。
 火の精霊である少女は萃香に気付かず、相変わらず小石拾いに精を出している。白い指は熱い小石に触れて薄赤らむ。指先には薔薇色の火が点っている、まるで花のつぼみのように。白い指の上を、小さな暁がそよいでいく。はて、火の少女よ、灰色の石は何か価値のある宝石なのだろうか、そんな楽しげに笑うとは? さあそれは、なんとかわいい娘の声。小石遊びに興じて、少女は喜びに身を満たしていた。
 年はどの程度なのだろう。正確な年は分からない。その姿は、女の髪が瑞々しく輝く年頃、ちょうど甘い春の頃合いだ。誰であれ、人が過ごす四つの時の中で、夏へとさしかかる前の、春の終わりほど輝かしい時はない。娘も、熱い青春の思いに心を突き動かされ、生き生きとした顔立ちをしている。頬は苺色に色づき、桜色の髪からは、甘酸っぱい匂いを放っている。
 娘よ、更にあなたは別の石を求めていく。草むらよ、草むらよ、大きな石はないか、珍しい形の石はないかと。そのとき蜜蜂が飛び出した。雄も雌も、蜜蜂はみな、薔薇のような乙女に惹かれて飛び出した。黄金の素早い鳥、岩陰に黄金の聖杯を建てる蜜蜂たちが。はばたく羽は蜜に濡れて、琥珀のように色づいている。そのとき乙女はおそれを覚えた。身をすくめ、驚いた顔で飛び退くと、袖でふりふり蜂を払い、ゆっくりと後ろ足に退いていく。
 そのとき、機よく神社から、霊夢が姿を現した。薬を届けに来たてゐと鈴仙の見送りに来たのだが、境内を見た時に飛び込んだ、この様子に声を張り上げる。
「まあ、蜂のやつ、火をおそれないくせに、間抜け面の鬼を刺そうとはしないのね。神々の使い、祝福の運び手のくせに、どちらが人間に害があるのかわからないのかしら。ヒューペよ、赤い髪の乙女、どうしてそんな風に逃げ回るの。さ、こちらへきなさい。そら、怖いことなんて何もないわ」
 そういって、自らヒューペと名付けた少女へ手をのばし、怯える少女の手をとると、パンをこねるようにやさしく掴む、楽器の琴を弾くように。それから少女を引き寄せた。風の音はふいに消えた、朝の光は暗くなった。霊夢の鼓動はなぜ優しいのか、霊夢の肌はなぜ美しいか。
 ヒューペはほっと安堵して、優しい胸元に寄りかかる。
「霊夢お姉さま、」ヒューペは霊夢の耳へ語る。「有り難うございます。」少し身震いし、ため息をこぼす。「蜂から助けて下さって」
「どこにも、けがはないかしら、蜂の一刺しを受けた肉は? せわしい客がちょうどきて、酒が入り用になるときに、それを取ってこれないような、そんなけがはないかしら」
「ありません」ヒューペは云った。萃香をみて、一礼した。「では、取って参ります」


 萃香はヒューペの後ろ姿を黙って見つめる。心は不安に荒れていた。恋をするものにとっては、些細なことが嫉妬の種となるもの。それは四季に関わりなく心へ根を張る、邪悪な植物だ。だが萃香とて、それを好ましく思う狂人ではない。なぜ片思いなのに、相手が誰に優しくすることで嫉妬しなくてはならないのか。とはいえ、感情は意志の思い通りになるものではなかった。
 片思いこそこの世でも、比類ない大きな災厄として神が創造したものに違いない。没薬の香は片思いの苦しさだ。黒い悪意に駆られる時に、互いが恋人同士なら、まだ相手の愛を求め安らぐこともできようが、片思いではそうもいかず、して、嫉妬を感じることが、道理外れと知りつつも、その恋から逃れることもできなければ、そういう暗い悪意から逃れることもできないために。
 さて、萃香はヒューペが去ると、じっと霊夢を眺める。霊夢は萃香のまなざしに気づく。愛する人の、瞳にきらめく、白い光が萃香の心を包みこむ。萃香はこの時、ふいに深い情感に打たれ、泣きそうな感動を覚えた。霊夢の顔は萃香の恋しく思う、いつものしかめ面だ。その霊夢をふかく思う萃香は、さて、喜びに笑みを堪えることができず、思いがけず恵みを与えられた未亡人か、あるいは、無邪気な子どもの、姉の口紅を内緒でかすめ、鏡の前で大人ぶり、こっそり塗る時のように、かわいらしい顔で微笑んだ。
「やあ巫女、本日もご機嫌麗しゅう。今日は暑いね。参拝の途中にも、ツバメがすっかりへばっちまって、唾も枯らしつつ、スズメやスズメ、涼ませておくれと木陰に逃げ込む姿が見えたよ。ま、神様にお参りするためなら、こんな暑さは屁でもげっぷでもなかったけどね。さ、五銭投げてと。ぱんぱん。
 いやあそれにしても暑い。こんなに暑いんじゃ、帰る途中で倒れてしまいそうだよ。せっかく参拝に来たのに、倒れたんじゃ、割りにあわない。神様だって倒れてまで拝まれることは望んじゃいないんだろうし。ね、巫女さん、一つ敬虔なこの信徒めに、『おなさけ』を恵んではくれないかな。安物の、そのまま捨てるような一杯だけでいいんだ。そうすれば、神様だってお喜びになるってもんでしょ」
「すぐに持ってくるわ。あの子がね、あなたのお望みの『おさなけ』を」と、霊夢はため息をこぼす。「ところで、あの子のことは知っているのかしら。私の見るかぎりでは、萃香、あなたはあの子を戸惑うように見ていたけれど。あの子のことについて、何か知りたいことはある?」
「何もないね。何も知らないから」
「無からは何も生まれないわ。あの子は、私が森で見つけた火精霊よ。竹が生い茂る処で、気を失って倒れているのを見つけたの。その時、素性も正体も知らず、医者に診せて、初めて火精霊だとわかった。私は彼女を自分の家へ住ませることを拒んだけれど、医者は無理矢理、私の神社で養生させるように取り計らった。
 あの子はその時から三日間寝込み、三日目の朝に目覚めた。太陽の光が頬を染め、寝顔が白く染まっていた時に。ふいに瞼は開け放たれ、若い乙女の目が、そこにいる二人を映した。湖が生い茂る木の姿を映し、風が吹くと、揺らめく水面に震える葉の影を宿すように、乙女の目は私たちのざわめきを受け、不安に揺らいだ。
 その時魔理沙が遊びにきていたから、ほんの一瞬私たちはざわめきを起こしたが、不安に揺らいだ乙女を見て、すぐ声をひそめた。乙女はどこにいるかわからないようだった。私もそれまでの看病に疲れ、一々説明する気は起きなかった、そんな私の代わりに、魔理沙はいろいろと説明して、気がつくと乙女はヒューペと名付けられていた。
 それから四日たつ。今では便利な小間使いよ」
「話はわかったわ。どんな素性であるのかも。もし、あんたの言葉がすべてなら、私は、それ以上のことを知らない。でも、どうしてお姉さまと呼ばせてるの。」萃香は意地悪く笑った。「妹タイプが好きなのかな。自分より年下で、甘えてくれるような、そんな女の子が? それとも誰か、すてきなお姉さまに憧れていて、そんな風になりたくて、それでお姉さまと呼ばせるの」
「私は知らないわ。魔理沙が云ったらしいのよ。霊夢のことを、お姉さまと呼ぶようにって」
 それから、霊夢は魔理沙の事を考える顔つきをした。
「まったく、とんだ意地悪ね。誰に似たのかしら。私の知っているあいつの師匠も意地悪だったけど、あんな風に子どもっぽいことはしなかったわ。もうちょっと大人になればいいのに」
 霊夢は静かにこういった。
 その時、魔理沙の箒は神社へ向かい、森の上を飛び、優雅に風を切りながら、操縦者を乗せていたが、ふいに操縦者がくしゃみをしたので、驚き、やや下の方へと降下する。それで危うく穴が開くところだった、もし小枝に買い物袋が引っかかったなら。魔理沙は箒の驚きに気づくと、すぐに体勢を立て直し、再び神社へまっすぐに向かっていった。
 さてその時、萃香の酒瓶は境内へ向かい、地酒独特の匂いを放ちながら進んでいたが、萃香はそれに気づくと、さっと飛び出し、酒瓶をかすめ取る。その手つきときたら、実に優雅であざやかなもの、それは落雷が一瞬、黒雲から空の支配権を奪い、地上へ降りるように、あるいは、よく熟れた無花果の実が、樹の上に実り、いつまでも落ちてこない時、いやしい人が登り、取ろうとしているうちに、空から小鳥がさっと飛んできてそれを食べてしまう、そんな様子に似ていた。目にもとまらぬ早業に、霊夢は呆れて肩をすくめる。
「誰も取ったりしないわよ。私もヒューペも、昼間っから酒を飲むほど呑兵衛じゃないわ。お酒なんてあっかんべーよ。いつもの泥棒も、昨日の件で懲りたみたい。というのは、昨日も、魔理沙とレミリアが来たけれど、その時一悶着あってね。なんでも、魔理沙がパチュリーの本を質屋に又貸ししたとか何とか。見ている方が悲しくなるくらい、とっちめられていたわ」
 ちょうど優しい北風が吹く時、萃香は薄赤い唇で、酒の瓶口に口づけた。風が肉体を涼ませ、酒が心を熱くする。なんと美味しい飲み物だろう。酒はそれだけでも美味しいのに、霊夢の手から作られた、愛しい人が自ら泡立てたこの酒は、萃香だけにしかわからない格別の味わいがある。どんなに強い酒も鬼の萃香を酔いつぶすには至らない。養老の滝ほどの酒を飲もうと、萃香の正気は失われない。けれど、ただ一杯、霊夢の酒を飲むだけで、萃香の心は恋に惑わされ、人前でうっとりと顔を赤らめて甘い吐息をこぼすほど、はかなく正気は失われる。
「やあ、なんて美味しいんだろ」
 美酒の味に酔う萃香がそういって、酒瓶の穴から唇を離し、霊夢に笑いかけると、霊夢もまんざらではないという顔つきをした。その時、ヒューペの耳に物音が聞こえる。聞き慣れた音だ。魔理沙の箒が風を切る音で、それは次第に神社へ近づいてきていた。
「霊夢お姉さま」ヒューペは霊夢の袖をひいた。「魔理沙さんがこられました」
「ええ、わかるわ。あいつ、いつもうるさい音鳴らして来るんだから。でも何をしにきたのかしら。確か、今日もレミリアは来るはずよ、昨日云っていたもの、私も来るなと云っていないし。もう忘れたのかしら、咲夜とレミリアの手で、さんざんな目に遭わされたことを」
 さて、そう話しているうちに、黒い影が境内の地に現れた。乙女は空に浮かんでいた、霊夢やヒューペや萃香たちの頭上に、箒にまたがる不敵な魔女は。魔女、霧雨魔理沙は、日光を隠しつつ現れる。たとえば岩手の高原の、春の豪雨が土に染み、草や花の赤子たちを澄んだ水で潤すように、魔理沙は陰をふりまいて神社の娘たちを涼しくさせる。さて、影が地の上で揺らめき、空から次第に、黒い帽子の魔理沙が降りてくる。
 霊夢は、魔理沙を見る時の仕草をした。
「あら、誰かと思ったら、昨夜さんざん、下手な手品を見せてくれた魔理沙じゃないの。咲夜の堂々とした態度に比べて、ずいぶんみっともない格好だったわね。痛がったり、わめいたりして。まったく、相方の咲夜がかわいそうだったわ。今度は買い物袋なんかぶらさげて、また私を、呆れさせたり、悲しませたりするつもり」
「ああ、昨日はすまなかったな。私も練習不足だった。だが、私が悪いんじゃないぜ。マジックってのは一日で身に付くもんじゃない。日々の鍛錬がものをいうんだ。特に大胆さと、勇気、この重要な二つはな。で、今日持ってきたのは、お菓子だぜ。お前も食うか? ま、食わんだろうな」
「何の菓子です?」ヒューペが尋ねた。
「ああ、洋菓子だよ。レミリアへのお詫びにってことで持ってきたんだ。チーズ・ケーキとか、オペラとか色々な。店で買ったのもあるが、レシピを見せてもらい自分で作ったのもあるぜ。シュークリームにエクレア、チョコレートは空気入りだ。普通のチョコは堅いが、穴の開いたチョコは柔らかく、美人の裸体のように魅力的になるんでな。他にはたとえば、カトルストンパイなんてのもある」
 ヒューペに答えた魔理沙の言葉を聞き、萃香は尋ねて云う。
「そのなかに、和菓子はないの、暑い日を涼しくさせるような、お酒に合ったりするような、そんなすばらしい和菓子は? あるなら欲しいよ、それ以外はいらない」
「ビワの蜂蜜漬けならあるが一人前きりだ。そしてこれは私のおやつだ。さっぱりしている上に甘く、舌の上で蕩けるビワ独特の味わいは、この暑い日に相応しい。素晴らしいお菓子はあるが、欲しい人はここにいて、それ以外にはあげないぜ」
 さて、萃香は怒りつつ魔理沙の言葉を聞き終える。それから敵意を剥き出しに云った。
「それじゃ、勝負しようよ。勝った方がすべてを手に入れる、それでどう? 勝負の方法はまかせるし、私が不利な条件でも構わない。美味しいものが欲しい人を目の前に、見せびらかすような悪意には、手痛い敗北を味わせてあげる」
 魔理沙は萃香の言葉を聞くと、しばし黙り、買い物袋を拝殿の赤い手すりにもたれさせて置く。霊夢は愛らしい顔をしかめて、いつも萃香に見せるのとは違う、魔理沙にだけする時のまなざしに、侮蔑の意図を含ませて魔理沙を見る。魔理沙は霊夢へ視線を投げかけ、それで自分の心を伝えた。萃香自身に対するより先に伝えた、今、萃香と勝負をすることを。霊夢は魔理沙から目を逸らし、上の息を吹いて、このはた迷惑な知人へパタパタと手など振った。
「まったく、ほんとにあなた達ったら、人の家で思うがままに振る舞うのね。ここは私の家かしら。それとも、私の店かしら。いいわ、好きにしなさい。でも、何か物を壊したりしたら、その物よりも酷い目に遭うことになる、ということは承知の上でしょうね」
「もちろんだとも」
 こうして、萃香と魔理沙は勝負することになったが、狡猾な魔理沙は自分が勝つため、すでに布石を打っている。誰が悪意を教えたか、父か母か、偉大な一族の血か? 父でも母でもない、また偉大な一族の血でも、自らの心が魔理沙を動かした。悪意は罠を生む行為を選んだ。砂利の上には細い糸が張り巡らされていた、魔法の糸が、そこに触れた者を絡め取る罠として。脚が早いほど効果を現すこの罠のため、魔理沙は萃香に「鬼ごっこをしようぜ」と提案する。
 萃香は応えて言う。
「鬼は誰だろう? それは私さ。今さら、云うまでもない。でもこれは『ごっこ』で、つまり本当の鬼がやると、名称的に具合が悪いんじゃなかろうか。そりゃあ鬼ごっこじゃない、リアル鬼ごっこだ。ということで、魔理沙、あんたに鬼をやってもらうとしよう。触れた者勝ちだ、その時私がどれだけ小さくても、触れたら良しとしよう。どう、少しあんたに有利でしょ」
 さあ、萃香は魔理沙の意図に絡め取られる。この時、萃香は魔理沙の企みに気づかない。人間相手なら、ふつうに駆けっこするだけで千里離しなお余裕がある、などと考えている。肉体に比べるとなんと無防備な心だろう。その無謀を美とは呼べない、人が鬼の真似をする時、油断を抱くなど。マネーを求め鬼ともなる、人の淀んだ策略は、さながら、油を断った鉄の中へ、赤錆がやすやす入り込むように、弱い相手の心へと忍び込むもの。人の悪意は千里を超え、長い鉤爪を引っかける。
 さて短い取り決めの後、勝負が始まったと萃香は考え、魔理沙に十秒、待つように云って走り出す。瞬間、罠に捕らわれる。細い糸は絡まって、萃香の腕を締め付けていく、腕の肉を、肉を支える骨を、骨を流れる血を、血の支配する心臓を、心臓の中で動く心を。萃香に何ができたろう、諦めを考えることのほかに? 十秒たって魔理佐は萃香を自らの手で捕らえる、ハムのように糸で縛られている可哀想な鬼を。勝負はそこで終わった。
 この勝負の一部始終眺めていた霊夢は、魔理沙を睨み付ける。
「やれ、やれ。ほんとうに、汚い手を使うものね、この卑しい魔法使いは。いったい誰が邪悪な手管を教えたのかしら。父か母か、偉大な一族の血か、それとも師匠かしら。いいえ、魅魔はあんたみたいじゃなかったわね。自信家ではあったけれど、そんな風に相手を騙すようなことはしなかったわ。本当に、あんたは魅魔と全然違う」
 魔理沙は小さく笑い、そして、霊夢に応えて云う。
 ――そうかもな。
 
 
 さて、西瓜の美味しい昼が終わり、夕焼けが雲に隠れ、涼しい夜の訪れとともに、吸血鬼が神社へやってくる。その色はラベンダーのように美しい、瑞々しさにあふれる髪のレミリアが。血のように赤い鳥居をくぐり、従者である咲夜とともに。レミリア、あなたは誰を思っているのか? 誰を恋しく思いつめ、誰を求めているのか。あなたは美しい、あでやかな頬の女性、葡萄の赤い果実よりなお。蔓が手を伸ばし、あちらこちらを絡め取るように、深いまなざしで多くの人々を従える。唇からのぞく歯は、冬の雪のように冷たいけれど、その唇は石榴のように甘いひと。あなたは霊夢を思いつめている。
 なんという変わりようだろう、神社へ向かう途中では、愛しい人に会える期待のため、ひどくうきうきとした明るい顔立ちであったが、いざ霊夢を前にすると、ああ、骨の髄までの愛しさに、血が高ぶり、気概はそがれ、生娘が突然の赤不浄を味わったかのように顔を赤らめる。そして力の抜けた身体で、霊夢の肩に寄りかかっていく。その様子はかわいらしい。森の白い牝鹿も、荒々しく吠えるオオカミも、あるいはハンガリーの王でも、何者でも魅了されずにいられまい。拝殿の入り口、賽銭箱の先にある階段に腰掛けて、霊夢とのお話を喜んでいる。
 春の甘い果実は、多くのつゆを含む。レミリアの、霊夢を見るまなざしは潤んでいた。トランシルヴァニアの清き流れ、ドナウの水のよう。その目は、やがてふと思い出したように咲夜を見る。咲夜は、すぐ主の意図に気づくと、ポケットから笛を取り出す。霊夢と魔理沙、萃香とヒューペの四人は物珍しい目でそれを眺めていく。
 魔理沙は好奇心を堪えきれず、レミリアに尋ねる。
「金属で作られているが、それは笛だな。草笛とか、オカリナとか、そういう私たちが使う簡素な笛じゃない。高貴な人に召し抱えられた職人がこしらえる、精巧な仕組みのものだ。だが、つくりが随分変わっている。一体なんだ?」
 レミリアは、その笛を自身の赤い唇に添え、一度離してから応えて云う。
「フルートっていうのよ。魔理沙、あなたの云うとおり、これは笛。あなたも知っての通り、私たち、吸血鬼は唇を開いて、吸う時に恐怖を与える。でも、吐く時には、享楽を与えることもできるのよ。こんなふうに、楽器を奏でることでね。騒ぎの好きな人のため、楽しい音を奏でることもできるし、誰か慰めて欲しい人がいるときには、もの寂しい曲を聴かせてあげることができるわ」
「それじゃあ、一つお願いしたいわね。何か、あなたの一番得意な曲を」と、霊夢。咲夜の煎れた紅茶を啜り、舌を紅茶の香で満たしつつ、この舌で霊夢はレミリアへ請う。「昔の唄歌いは、みんなそうやってお客になったものよ。誰か知らない人の家でも、日々忙しい人の家でも」
「もちろんよ。私だって、このために持ってきたのだから。それじゃ、私の好きな曲でも適当に弾くとするわ。そうね、『ツェペシュの幼き末裔』から『亡き王女の為のセプテット』、それと、『少女綺想曲』へ繋げていこうかしら。これは、二十一世紀初頭の日本人が作った曲よ」
 そういって、レミリアが弾き出すと、皆は静かに音楽を楽しんだ。レミリアは見事に弾いた、初曲から次曲へと、アレンジを加えて繋げ、また自然なアレンジにより、三曲目へと繋いでいった。その上、初曲に、『U.Nオーエンは彼女なのか?』を巧みに練り込んでいた。
 すべて聞き終え、皆は余韻に浸りつつ拍手する。ヒューペは云う。
「不思議ですね」
「一体、何がかしら。こんな吸血鬼が綺麗に笛を弾くのが? なんてね。レミリア、すてきだったわよ。そういえば、ヒューペ、あなたは笛を見るのは初めてだったのね。何が不思議だったの?」
 霊夢の言葉にヒューペは柔らかく頷く。
「色々、」それから、じっと笛を見つめる。穴が開くくらい。「音が出てきます。」フルートにはいくつかの穴が開いていて、それらを好奇心のまなざしで見つめている。そして、おそるおそる、笛の穴をちょんちょんと突いた。「この穴を塞ぐ度に」
 レミリアはくすりと笑い、いたずらっぽくヒューペに言う。
「それがどうしてか、分かる? 笛の中にね、音を出す精霊がいて、穴を塞いだ暗い中だと気分が落ち込み、低い音を出すの。それで、穴がたくさん開いて、あたりが明るくなると、気分が高揚し、高い音を出すのよ」
「そうなのか? てっきり私は、風の通りの具合でそうなると思っていたぜ。さすがだ。異国の楽器はひと味違うんだな」魔理沙のわざとらしく肩をすくめる様子に、霊夢は彼女の唇に指を当て、黙るようにというジェスチャーをしてみせた。「馬鹿ね、冗談に決まっているでしょう。そんなのも分からないのかしら?」霊夢の言葉を耳で聞き、魔理沙は綺麗に身を翻す。霊夢の白い指を二本の指でつまむと押しのける。そして不敵に笑い、帽子を深く被ってみせた。「馬鹿だな、冗談に決まっているだろう。そんなのも分からないのか?」
 霊夢は魔理沙を放っておくことにした。
「でも、どうしていきなり笛なんて持ってきたの、レミリア。私、いままであなたにそんな趣味があるなんて知らなかったわ。夜中に口笛を吹くと、蛇や熊、あるいは夜の鷹といった魔物を呼び寄せるということは知っているけれど、悪魔に笛を吹く趣味があるなんて」
「あら、霊夢、神秘の玉を操る巫女なのに、ミステリーをご存じないの? 悪魔来たりて笛を吹くものよ。そして、嵐を呼ぶの。轟々。
 でも、力ある者の人生は、フルートのようなものね。長い命の中で暗いことばかりだけれど、時々誰か、外から光を投げかけてくれる。すると、やさしい光が闇に差す、進むべき道を照らすように。恋。忠誠。暗闇を愛する吸血鬼も、そういう光は喜んで受け取るわ。誰だって、強い者ほど一人ぼっちの闇は嫌いですもの」
 レミリアは無邪気に笑う。ほころむ頬から何人もの妖精が飛び出す、羽もきらめく「美」の妖精たちが。そして咲夜は見とれた、レミリアに見とれ、胸を高鳴らせ、愛情の矢を胸に受けた。美しい表情、菊のような白い歯と、甘く涼しげな舌が、かすかにのぞき月明かりを映し輝く、レミリアのさまに。心地よい沈黙の中で、咲夜は今夜もあることに感謝する。
 さて、魔理沙はふいに、自分も何か宴会芸をするべきだと考えた。
「さあ、今日はレミリアのコンサートに皆集まってくれて有り難う。すてきな音楽だったな。主催:博麗神社。まさかみんな、ダフ屋から買ってないよね。大変恐縮だが、皆さんのために、私も何か宴会芸をするとするかな。では一つ、ご希望の歌でも歌おう。何がいい?」
「そんなのより、」ヒューペは既に食べられたお菓子の包み紙たちを見ていた。知っているお菓子はあったが、先に魔理沙の述べた、知らない名前のお菓子はどこにもない。そこで魔理沙に尋ねる。「何とかパイは?」怪訝な顔をして首をひねる。「それっぽいお菓子はないです」
「それじゃあ、『カトルストンパイ』をご馳走しよう」
 魔理沙はこう言うと、不気味な歌を歌い出す。
 
 カトルストン・パイ おかしなおかし
 顔の上には絵があって 鼻の隣に棚がある
 カトルストン・パイ 焼きたていかが?

 皆は魔理沙を見つめるが何も言わない。魔理沙は更に二番を歌い出した。
 
 カトルストン・パイ おかしなおかし
 坊やを抱いて 野望抱くパパ
 カトルストン・パイ お一つどうぞ

 皆は談笑し、魔理沙の方へ注意を払わないので、仕方なく三番を歌い出した。

 カトルストン・パイ おかしなおかし
 謎からひくのは かけたあと
 カトルストン・パイ カトルストン・パイ

 魔理沙の歌が終わる頃、そのとき中心の語り手、霊夢は、今度の日曜、皆で連れだってどこかへ遠足に行かないかしら、と提案する。辺りを見回し、それぞれの顔を確認した後、まず、魔理沙をとらえるまなざしを投げかけた。「ああ、歌い終わったのね。来たいなら、魔理沙も来てもいいわよ。魔法の森にいこうかな、と思っているし、あなたがいると退屈しないわ。ま、迷惑だけどね」
「迷惑かけるぜ。レミリアと咲夜と萃香はどうする? 私が迷惑をかける以上、人数割れはないと思うが」
「日曜。今度の日曜ね。その日は、赤い日の熱が、白い霧の漂う黒の森に立ちこめて、もっと暑くなりそうだし、遠慮しておくわ。三人でどうぞ。ねえ、咲夜、萃香」
 そういうことに決まった。
 さて、その時からしばし時が過ぎる。今は霊夢の眠る時間だ。レミリアは、別れの寂しさに、小さくため息をこぼし、立ち上がると、紅魔館へ帰ることにする。咲夜も続いて立ち上がる。その咲夜にだけ聞こえる声で、レミリアは囁いた。
「やれ、やれ。魔理沙が羨ましい。霊夢が彼女を見るときは、特別な目をしている。何をやるかどんな人間か、よく分かっているという目だ。本人は気づいているのかしら。萃香だってかわいいし、あの容姿は霊夢のお気に入りだ。手強い敵はむちゃくちゃいるんだね。ここにも、そこにも、あそこにも」
「ああ、お気を落とさずに。勇気を出すんです、戦いはこれから。いつかは、涙も風になりますわ。お嬢様」

 その晩、ヒューペは不思議な夢を見る。
 それは、ひょっとしたら、ヒューペの生まれた意味を教える夢だった。
 ヒューペはこう考えた。
「もうすぐ、私は。」「やるべきことをやるんですね」
 でもそれは、もうあと少し先の話だったけれど。


 子ウサギも逞しい魔法の森よ、あなたのところへ霊夢たちが来たのはいつだったか。古い大樹よ、あなたの懐で三人がお弁当を食べたのはいつだったか。空が灰色に染まり、霧雨の降る日曜日のことだったな。赤い苺の果実を霧が濡らしていた日。
 苺よ、雨に濡れたへたの葉は、妹のあなたにしずくを与える。あなたはそれを、肌の上で受け取り、潤いに喜ぶ。そしてこう思うのだ、もし、自分が獣につみ取られる運命であるなら、この献身の姉と共につみ取られて欲しい。そして大地へ置かれる時、同じ土になりたいと。
 さて、その日の朝の終わり頃、森の入り口で魔理沙が待っているところへ、霊夢とヒューペがやってきた。
 三人が向かったのは、白ウサギの穴の中だ。人が二人入れるほどの入り口から漂う、涼しい気温、ほどよい土の香。そこは昔、知恵のある妖怪兎が掘った隠し砦で、いまでは森の住人の憩いの場となっている。足下は荒れる岩肌、穴の底では透明色の湧き水があふれていて、あまたの鳥が羽をおさめ、身体を洗い、水を飲んでいる。
 チュッチュッチュ。鳥は鳴く。昼の眠気を誘う声。
 この鳥たちの様子を見ながら、森に詳しい霊夢は、あれがツグミ、あれがヒバリなどと、ヒューペに説明していく。ヒューペはそのごと、驚いたり喜んだりしながら、霊夢をあこがれのまなざしで見つめる。さあ、鳥の多くは人なつっこい鳥だ。しかし、人に見られるのをいやがる、恥ずかしがりがひゅんと素早く飛んだ時、霊夢は鳥を見上げ、それを追いかけようと立ち上がり、見えざる石に躓きかけた。
 どうしてそれを魔理沙が気づかずにいられよう。魔理沙は少女の身体を抱き留めて、霊夢に言う。
「どうしたんだ、あわてん坊さん。ちゃんと足下を見ないと危ないぞ。この辺りにはいくつも窪みがあるからな」
「大丈夫よ、私は自分の好きなように空をとべるもの。そんな簡単につまづいたりしないわ。それより、そんな風に強く抱くのはやめて。分かるでしょ、私は繊細なの。痛いわ」
 魔理沙は霊夢から手を離す。霊夢は魔理沙の身体から離れ、服を正していく。さて、魔理沙は魔法のように優しい声で、霊夢へ声をかける。この声色が、あまりに綺麗なので、鳥たちは黙り、そっと耳を傾けた。
「でも、お前が今、鳥を綺麗だと思うのは鳥を羨ましく思うからだろう。人間は自由じゃない。空を飛べても、どれだけ強い力を持っていても、いや、だからこそ、かならず躓くものだ。人間だからな」
「それ、どういうことかしら」
「何でもないってことさ。私は以前、自分の立場で悩んだことがある。それを今、たまたま思い出したんだ。さあ、霊夢、お弁当を食べよう。お前の弁当からキノコを頂いていくぜ。私のお弁当に欲しいものはあるか? お前の好きな団子もあるぞ」
 霊夢はそっと魔理沙の肩に寄りかかった。やや眠たげに欠伸すると「じゃあ、それ頂戴。もちろんみたらしよね。ゴマは邪道よ」とささやく。魔理沙は頷き、霊夢の唇へ、指で摘んだ団子を譲りわたす。霊夢はそれを心地よさそうに食べ、少し意地汚いかなと思いつつ、魔理沙の指を濡らすタレも味わった。
 鳥たちが昼の休息を終え、午後の狩りのために飛び立つ。羽だけが残される。魔理沙は霊夢に云った。
「眠いのか。寝るといい。ヒューペももう寝ている。三時ぐらいになったら、起こすけどな」
「ええ、お願いね。ねえ魔理沙、あんたは自分の立場で悩んだとき、どうしたの? 今後の参考に聞いてみたいわ、あなたとの口喧嘩の時とかの参考に」
「たとえば、誰かが好きなのに、自分の立場では嫌わなきゃいけないものだとする。それが自分の立場の正義。でも、本当に大事なことは、自分で考えて、自分で決めなきゃならない。本当に大事なことは、誰であれ、正しいか間違っているかなんて決められない。自分の心の中で決めて、そして、――行動するものだ」
 霊夢は小さく頷き、なんだかずっと前に聞いたことがある言葉だ、と考える。そしてそれがいつ聞いたのか、思い出そうとしているうちに深い眠りへ落ちていく。霊夢の見た夢は、知り合いの霊が出てくる夢だった。かつて自分の隣にいた霊。神になる修行のため幻想郷を出て行った霊の夢。


 ・・・2

 
 力のない者は他人に対して、何もしないものだろうか。だが、この世の理を守り続ける運命を前に、力ある者などいない。大きな定めがその身を取り囲む時、否応なしに他の者も巻き込まれる。さて、永遠亭では、ちょっとした事件があった。ことの起こりは春の夜、輝夜が夜風を浴びていた折り、突然、強い息吹が袖を大きく動かし、竜の首の玉を柔らかな地へ揺り落とす。
 玉はころころと転がって、ゴミを捨てるために掘った深い穴へと落ちてしまう。悪臭を放つ穴の中へ。さて、困り果てた輝夜は、永琳の助言を借りることにした。永琳は賢い言葉で輝夜に答えた。
「あれは随分と昔のことになります。ソロモン王が健在の折、彼が歯ブラシをなくしてしまったことがありました。指輪のあまねく力を宿す王は、さっそく七十二柱の悪魔を呼び出し、その行方を突き止めるよう命じましたが、業巧みな悪魔も王の大事なそれを探し当てることはかないませんでした。そこで、賢い王は、おふれを出し、妖精人間悪魔問わず、我が歯ブラシを見つけ出した者には褒美を授けよう、と人々の間へ広めたのです。
 ある人は、それを蜃気楼の一つにある幻の都市で見た、といいましたし、ある人は龍の住む山の山頂で見かけたと云いました。けれども、善良にして真に王を救おうと考える者がいる限り、このような真実は明らかになるものです。私は子猫のすみかへ行くと、その中から歯ブラシを見つけ出し、王の元へ戻しました。ほかの誰にも見つけられなかった歯ブラシを。こうして私は多大な恩赦と名誉を授かり、人々の羨む喜ばしい名声を与えられたものです。
 さあ、姫様、このような言葉を広めるといいでしょう。穴の中に玉を入れておく、もしそれを見つける者がいたなら、けして少なくない報酬を授けるだろうと。そうすれば、永遠亭の兎たちが、玉を取ってくるはずです。もし、あなたが金銭を惜しまず、玉を欲するというのなら」
 輝夜は永琳の助言を聞き、ただちに兎たちへそれを広めていく、その祭りを引き起こす言葉は、月の兎の鈴仙、知謀巧みなてゐから、ただの兎に至るまで、多くの者に伝えられる。期日を設ける。その日までに、穴の中に入っている玉を見つけること。真っ先に事の真相を探り当て、仲間たちと共にゴミ捨て穴へ潜ったのは、口元をスカーフで覆う姿もかわいらしいてゐだ。その考えは過たず真実を貫く。ゴミの中から竜の首の玉を探し出すと、てゐは直ちに仲間へ労いの言葉をかけ、相応の報酬を渡していった。
 また一方、黒兎のラピッドという、すばしっこい兎は、迷いの竹林の竹の中にそれがあるのではと思い、一つ一つ竹の節を叩きはじめた。音の違う竹を探していく。さて、その一つ、まだ若い竹をたたいた折、まったく音の違う竹を見つけ、それを切り開くと、蓬莱の玉の枝を見つけることができた。
 さて、永遠亭の片隅に、莫迦な兎、ラベントという者がいる。この兎は日がな眠り、祭りの時は遊び惚けることを生業としていたが、件の姫の言葉が人を通してそのうさ耳に入ってくると、ただちに空想の穴へ落ち込む。
「こりゃあ難題だぞ。きっと、普通の穴じゃないに違いない。穴とは見えない穴だ。でも、それは一体なんだろう。てゐ様に聞いてみよう」
 さて、てゐのところへいく途中、ラベントはふとあることを思いついた。
「大穴牟遅様の薬、きっとあの中の玉だ。弾が数珠繋ぎになっているし、あのたまの一つを持って行けばビンゴに違いない。そうと決まれば話は早い、てゐ様に相談して、もらい受けるとしよう」
 もう、てゐは玉を見つけていたので、ラベントが玉を懇願した折、いくらかの銭と引き替えにそれを渡す。というわけで、永遠亭のうち、三匹の兎が玉を見つけ、姫の云う期日にそれを持ってくることになったのだった。その日、兎たちを集めると、輝夜は云った。
「さあ、まず、竜の玉を見つけたのは誰かしら。ゴミの中から貴重な宝を得た兎は? この竜の玉を得た人には、それなりの賞品を差し出さないといけないわね。だって、分かっていても、入るのを躊躇する汚い穴の中にあったのですもの。さ、どの兎がこれを手に入れたの。どうか名乗りでなさいな」
「わたくしめにございます」
 てゐは輝夜の前に恭しく傅き、玉を差し出す。紛れもない竜の玉だ。少し汚れていたが、欠けているところはどこにもない。姫は満足げな表情で頷くと、それを受け取り、また元のように袖の中へ入れる。
「それじゃ、あなたには、私がネットで買い漁った通販セットをあげましょう。商品の中じゃ、一番価値があるはずよ。それにイナバ、あなたなら、きっと元手よりずっと高く売れるでしょうしね」
「まさに私に相応しい。喜んでお受けいたします」
 さて、てゐが下がると、輝夜は続けて云う。
「では次に、蓬莱の玉の枝を見つけた人はいるかしら。たくさんの竹の中から、一つ価値ある竹を見つけたひと、地道な作業でつらい思いをしたひと、すばしっこい手でいくつもの竹を叩いたひと。どうか名乗りでなさいな」
「はい、あたいです」
 ラピッドはおずおず前に出ると、蓬莱の玉の枝を差し出す。遊び好きな輝夜はにっこり笑って、ラピッドからそれを受け取る。それから、この緊張する兎の頭をなで、いくつかの人参を束にしたものを震える手へ渡す。
「イナバ、あなたにはこの人参セットをあげるわ。この人参の中には、柔らかいものも、堅いものも、栄養価満点の朝鮮人参もあるわよ。たくさんの竹を調べて疲れたでしょう。これで精をつけなさい」
「姫様、ありがとうございます」
 ラピッドは恥ずかしそうに、でも、うれしそうにふにゃと笑い、顔を赤らめて下がった。
 ラピッドが下がると、うれしや、竜の玉を得て満足している輝夜は悪戯っぽい微笑を浮かべ、更に云う。
「では最後に、イナバのスペルカード、大穴牟遅様の薬から玉を取った莫迦者はいるかしら。役にも立たない玉を手に入れたひと、空想好きで、無駄に知恵をはりめぐらせるひと、その人に相応しい賞品も用意してあるわよ」
「ぼくだ」
 と、ラベントは前に進み出る。輝夜は、そのイナバに、空想好きの人の一番大事なものを与えた。
「さ、あなたのような莫迦者に、一番ふさわしいものよ。どうか遠慮せず、受け取りなさいな」
「はい、謹んでお受けいたします」
 ラベントは心の底から喜び、それを受け取った。
 それからしばらく、黒兎のラピッド提供による兎たちのにんじん祭りが、永遠亭内で開かれた。この数日間の出来事は、普段何もしない輝夜が起こした事件で、特にこれといった力をふるったわけでもないけれど、永遠亭中の兎を巻き込んだのだった。

 
 春の終わる時がきた。春とは何か、春は喜ばしい生まれと死の季節。新たな芽が出ずる一方で、冬の蓄えを切らした人々が、食べ物を探しさまよう季節。古く年老いた飢餓の手が、人々の命を摘んでいく。春はさながら、痩せたる無垢な顔の少女、その春を、潤い涼しい果実の森が、そのやさしい手ですくい上げ、土を濡らす雨を呼び、春の少女に時の定めた、愛の手ほどきをしていくと、少女は装いも麗しい、熱い目の乙女へ姿を変える。
 誰が望んだからというわけでもなく、日は変わっていく。太陽は小麦色の肌に白いおしろいの化粧をほどこす。美しい雲は白い体を空に横たえさせ、暖かな日差しのもと、優雅な眠りについている。雲の胸元から日の光がこぼれ、土を明るく照らす、そのさまは、やさしい恋人の指先で、愛撫を受ける少女の汗が、女同士のよろこびに、人より熱い汗をこぼし、ベッドのシーツを甘く濡らす、そんな様子にも似ている。
 さて、その日、てゐはヒューペの薬を届けにいくついでに、姫からもらった通販セットの一つ、魔力のこもる包丁を誰か引き取ってもらえないかと探していた。他のものは大概さばけたが、この魔力のこもる包丁は、別段切れ味がいいというわけでもなし、ただ強い魔力がこもっているだけという代物で、どうにも使い道がない。チルノにでも売ろうか。素晴らしい力の包丁として? しかし、「あたいったら最強よ!」の一言で拒否されそうな気もする。
 そんなことを考えながら、神社の鳥居をくぐると、いつもの巫女の姿はなく、病弱な少女、ヒューペの姿だけがそこにあった。てゐは思わず口笛を吹く。それからヒューペの元へ脚をのばし、明るく黒い声であいさつする。その舌は糸車のように素早く回り、はかりごとを紡いでいく。
「やあお嬢さん。お薬を届けに来たわよ。見たところ、退屈なご様子ね。巫女はどこに行ったのかしら。食料でも、取りにいったのかしらね、賽銭箱への寄付もないのだし。
 ねえお嬢さん、一つ耳よりの情報だけど、ほら耳を貸して、ね、よく聞いて。あなた、料理に興味はない? 今、ちょうど包丁を持っているのよ。だって、神社はいつも食糧難ですし、私だってたびたび霊夢のところへ来るわけにはいかない。もちろん、あなたが霊夢のため働く義理はないのだけれどね、私としては、霊夢のことが好きだし、大事な友達だと思っているから、あなたの趣味がそのまま霊夢を助けることになるなら、やっぱりうれしくなるわ。
 ほら、料理って面白いものよ。自分で作る料理は格別の味だし。面倒に思うかもしれないけれど、この包丁を使ったことがないからそう思うのよ。これは輝夜様から借り受けた物で、魔力のこもった包丁なの。もらいものだから、あなたにあげるとなると、便宜のため、ちょっとだけ手間賃をもらうことになるけど、でも、趣味としては安い部類に入ると思うわ。どうかしら、一つもらってみない?」
 ヒューペはしばし、考え込んだが、やがててゐが奇妙に思うことを尋ね始めた。
「その刃物の柄には、」「蛇の文様がありますか。」
 てゐはおかしなことを聞くと思いつつも、包丁の柄に蛇の文様があるかどうか、とくと確認する。それは、はたして今この娘、のぞき見したのではと思うくらい、はっきりと刻まれてあり、てゐは思わずため息をこぼし、こんな不思議もあるものだと考えながら、ヒューペに答える。
「うん、あるわね。あなたの言う通り、包丁の柄に、蛇の文様が」
「それでは、」とヒューペは更に不思議なことを尋ねていく。――その刃物の腹には、稲妻のようなひっかき傷があり、それに上のぼりの横のひっかき傷が交差する形でありますか。――あるわ。――では、包丁の先が火のように、かすかにゆがんでいますか。――ええ。――その刃物の魔力は強いものですか。――そうよ。
 やがてすっかり聞き終えると、ヒューペは満足げに頷く。
「いただきます。」「代金をお支払いしますね」
 てゐはヒューペの払うお金を受け取り、心の中で大喜び。それは思いがけない大金だった。晴れ晴れとした気持ちのまま、取り返しに来ぬうちにと急いで帰路につく。てゐよ、知謀に長けた兎、あなたはなぜ知らずにいたのか、ヒューペがその包丁になにやら魔法をかけていたことを。なぜ知らずにいたのか、包丁と思っていたそれは、包丁ではなくて、もっと恐ろしい物、巡り回って持ち主の元に辿り着いた、人に徒なす魔剣だったということを。
 いまやヒューペの意志通り、魔剣はか細い刃物から、本来の大きな炎の刃へと姿を変える。切っ先が稲妻のように閃いた。アルマッスという名のこの刃は、死んだものを永遠の安息より、苦痛の現世へ呼び戻す呪いの力を持っている。神は二つと同じものを作らなかった。ヒューペは夢で知っていた、夢はヒューペに教えていた。この剣が火山を呼び覚ますことを、再び火を取り戻すことを。
 誰がヒューペを止められよう? 夢はヒューペにこう告げた。多くの火精霊が滅びようとしている。それを救うのが、お前の生まれた意味なのだと。恐ろしい呪文を教え、手順を教えた。だが教えなかった、滅びが少女の進む先に待つことは。その夢の意志に動かされ、ヒューペは定めを手に抱く。
 霊夢が外出から帰る。夏の獣道を踏み歩く。空に陰は落ちてはいない。道に陰を落とすものは何だろう、緑や黄緑、葉は海をおよぐ魚たちの群れのように生い茂る。どんなに古い木も葉をつけることは忘れない。どんなに新しい木も葉をつけることは知っている。良き木々たちの法として。
 して、木々は思い思いの衣を着ている。また雲の薄青い足首へと投げかけ、また地上へと降ろす。獣道にあるものは獣の脚を受けて散り散りに、そうでないものは共に重なり合っている。散り散りの葉くれたちはさながらザラメかヒナアラレ、誰も手をつけぬ濃い緑が重なれば、それはまるでミントのミルフィーユのよう、そのさま、じつに美しく、面白い。
 霊夢は獣道を歩いていた。否、暗く涼しい道を抜けて、暖かな太陽のきらめく神社へ辿り着く。瞬間、驚きを覚えた、養い子が恐ろしい剣を携えるのを見て。剣は炎となって燃え上がり、辺りに紅を投げかける。ヒューペの手は赤く染まっている。
 しばし霊夢はヒューペを見、我が身の不運を嘆いていった。
「ヒューペ、あなたは黒い企みで、人に害なそうというの。ヒューペ、あなたの魂がそう命じるの。夏には消える命なのに。私のことも思わずに? 誰があなたを奪うのか。私があなたを封印する。遠い昔に、あんな娘がいたものと、思い出しては悲しい思いをするのだわ」
「私はこのために生まれました。いっそ助けられなどしなければ良かった。そうすればこんな悲しい思いをせずに死ねたのに。生きることは悲しみばかり、生涯の中で生きることを後悔せずにいることは難しい。
 私の命はこのためのもの、火山の火を呼び起こすため、人里へ灰を降らせることのため。霊夢お姉さま、さようなら。白い石が私を覚えているでしょう。針をもつ蜂たちも。たとえ私が封印されたとしても」
 さて、娘たちは互いに札と剣を取り、はっしと打ち合う。火の花が咲き乱れ、お互いの身体から血が流れ出る。七つの海の水でさえ、今の娘らの争いを洗い流すことはできまい。霊夢は幾枚もの札を取り出して、砕けよとばかり、ヒューペに打ち付ける。ヒューペの額は卵の殻のように割れ、黒い血をこぼしつつ、大きく吠えて後ずさった。
 霊夢は追って前へと進む。だが、そのとき情に躓いた。娘の血を見てほんのわずか、ひるんだ霊夢の隙を打ち、一歩ヒューペは前に出て、腹に一筋刃を振るう。霊夢の服と腹は焦げ、煙を上げて土に落ちれば、痛みに霊夢は身を翻す。
 瞬間、動く土の揺らめきが、霊夢の身体を空へと跳ね上げた。ふいを打たれたことのため、霊夢はヒューペの姿を見失い、心は戸惑いの波に揺れ動く。慌てた心は何の考えもなく、空へ向かって手を伸ばすが、鳥が羽で天の梯子を掴むごときは人の身に余ること。身体が土にたたきつけられ、そこで霊夢はようやく平常心を取り戻す。
 霊夢はどこに落ちたのか。大地の下だ。辺りは暗い。風とは違う、土の匂いに満ちている。誰の声も聞こえない。ヒューペのけはいも感じない。砂の落ちる音がして、頭に砂の雨が降り注ぐ。どうやら、大きな地割れの中、突き出る不安定な岩の上へ落ち込んだようだった。少しでも身じろぎすれば、岩が崩れるかもしれない。
 霊夢は少し悩み、じっと考え込む、どうやって出たものか。だが答えは見つからない。
 地割れの中は暗く、空の光も小さな白が注ぐだけ。身体と心は深いところへ沈んでいる。ヒューペのことを思っては、自らの使命にため息をこぼす。いっそ、地の底まで沈んでいけばいいものを、中途半端に引っかかり、どうにもしようのないところにいる。
 一歩も動けずにいた霊夢の元へ。

 ふいに、空から。
 九度の口笛が届いた。

 三度は短く、三度は長く、さらに三度短く。霊夢はある人を見る時だけの、特別なまなざしで空を見上げた。否、暗い、何も見えないはずの空から黒い服をまとう霧雨魔理沙が箒に跨って降りてくるのを見上げていた。その牝牛のようにやさしい黄金のまなざしが、こちらを見るのを、赤い唇が静かに語りかけるのを。
「ヘーイ」
 と、魔理沙は云った。
「こんにちは、霊夢」
「こんにちは。みっともないところ見られているわね。……穴があったら入りたい気分よ」
「霊夢、そいつは笑えない冗談だ。今、入ってる」
「そうね」
 霧雨魔理沙は霊夢の手を取った。
「行こうぜ。あいつのところへ、倒しに」
「どこへ行けばいいのかしら。怖かったり、悲しくなったりするところは嫌よ」
「霊夢は臆病だな」
「魔理沙はいつも勇気があるわね」
「言ったろう。マジックに必要なものは、勇気と大胆さだ」
 響くはずの穴の中で、魔理沙の言葉ははっきりと聞こえる。
 ああ、この声は好きなんだと、霊夢は思った。
「自由をくれたっていいじゃない。私があの子をどれだけ大事にしてきたか。どれだけ一緒に遊んだか、よく分かっているでしょう。この道を、どうしてあの子もあなたも進ませてくれないの」
「云っただろう。人間は自由じゃない。空を飛べても、どれだけ強い力を持っていても、かならず躓くものだ。人間だからな」
 魔理沙はゆっくりと地割れの外へ向かい、上がっていく。光が二人の目の前へ、強く広がっていく。霊夢はそこから目を背け、魔理沙の服の袖を掴む。魔理沙は霊夢の心を感じ取り、そこで箒を制止した。霊夢の目は何を宿していたか。深い悲しみ、寂しさ。
 霊夢の唇に自身の心がこもり、魔理沙の心へと言い伝える。
「私がすべきことは分かっている。だけど、今のままで分からないこともあるの、たくさん。自分が本当に正しい道を進んでいるのか、不安になる。その道を進んでもいいのか。立ち止まってよく考えるべきなのか。今の私は分からずにいる。深い、暗い穴の中で、進むべき道が分からない……」
 親友の悩みは魔理沙の心を激しく揺さぶる。
 けれど、魔理沙の心はしかと聞き、優しい唇をひらりと開く。
「人は、どんなに長いトンネルでも、歩き続けることで抜けられる。光を持っているのなら」
 穏やかな魔理沙の声だけが聞こえるのは何故なのか。魔理沙の肌の匂いだけが、霊夢の目の間へ入ってくるのは何故なのか。砂の音も聞こえない。土の匂いも分からない。霧雨の森に包まれているような、心地よい感覚だけがある。霊夢は思わず、魔理沙の手を強く握った。魔理沙は続けて云う。
「もっと、自分の光を信じるんだ」
 そして、霊夢は深い穴から救われた。
 魔理沙の言葉はよどみなく、心の奥へと届いてくれた。
「魔理沙、お願いがあるんだけど」
「何だ?」
「あんたは火山から獣を遠ざけてね。私はあの子と二人きりのデートに勤しむから」
「オッケーだぜ」 


 空の薄黒く渦巻く、妖怪の山は辺りへ不安を降らしていく。大きな戦の前触れに、陽炎が火口をなで回す。火口の舌ほど大きいものを、また凶暴に荒れ狂うもの、激しく燃え上がるものを、誰も知らない。それは嵐の舌より禍々しい。詐欺師の唇、不実な夫の唇よりも。人妻を愛する義妹(いもうと)の、女同士からなる口づけは、じつに激しく燃え上がり、凶暴に荒れ狂いはするが、これほど大きいものではない。
 ヒューペの手に抱かれて、呪いを囁かれる剣は、役目をいざ始めようとしている。山の火は地脈に沿って熱を送り、脆い大地のあちらこちらへ罅を入れている。土よ、もっと自分の身体を固めろ、後の人々がお前たちを見たとき、これはガラスが変化したものか、それとも大亀の捨てた甲羅が汚れてこんな土みたいになったのか、こんなひび割れが入っていて、などと鼻で笑うかもしれないぞ。さあ、もっとふんばれ。
 鹿や山羊たちは逃げまどい、助けを求めて野の上を飛び回った。また木々は葉をざわめかせ、鮭は川下へと下っていく。水面は万華鏡のような模様に揺らめく。獣らよ、誰が助けにくると思うのか。博麗の巫女がやってくる。美しい紅白に飾られた乙女が。
 巫女はどこにいるのか? すぐ近くにいる。空を見て、耳をよく澄ませるといい。魔法使いの箒の音が聞こえる。稲妻のように早い箒から一人飛び立つと、巫女は自身の意志で空を舞う。風よ、雲よ、薄霧よ、巫女はお前たちの中をすり抜け、袖から白い手足を覗かせつつ、一直線に降りてくる。誰の処へ? 山頂に待つヒューペのところへ。ほら、そこだ!
 いざ、巫女は妖怪の山の頂に降り立つ。ヒューペの姿を巫女がとらえると、ヒューペのまなざしもまた、巫女の姿を捕らえた。娘は黙り、静かに巫女を見据えている。娘の胸は温かい。一度目を逸らし、ふたたび巫女を見つめる。悲しげだった瞳の色が、堪えきれず、うれしげな色を宿す。
「やっぱり来ましたね。霊夢お姉さま」
「ヒューペ。あなたを封印しに来たわ。それが、今の私のするべきこと」
「どうして、するべきことがあるんでしょうね。そんなのがなければ、もっと命は楽に失うことができるのに。人は命よりも命令を優先しなきゃならない。正しいことだと既に決まっていることを。自分を突き動かす、その正しい命令のために行動し、そして苦しみ死んでいく」
「違うわヒューペ。本当に大事なことは、自分で考えて、自分で決めなきゃならない。本当に大事なことは、誰であれ、正しいか間違っているかなんて決められない。自分の心の中で決めて、そして、――行動するものよ」
 ヒューペは穏やかに微笑む。恋慕う霊夢の声はやさしく、つらく燻る胸奥を甘い言葉で潤していく。夏だというのに、筍の育ちゆく春のような暖かみを感じた。初めて霊夢と出会った季節の、暖かさのようだった。そのやさしさに憧憬(あこがれ)を抱き、その強さに恋をした。その人の身に愛を。
「では、霊夢お姉さま、あなたの行動を見せてください」
 火の娘は手元から、火の剣を引き寄せて、封印の札もつ霊夢の前に立ちはだかる。剣を取り、それを愛する人へと向けた。さて、火口のかがり火が、戦いの狼煙となり、二人の間を取り巻いている。空も赤く焼けていた。夕焼けよ、あなたの薔薇が戦にて滅ぶ者にとっての、手向けの花となるのだろうか。やがてヒューペよ、あなたは足早に駆けだして、霊夢の左肩ををたたき割ろう、と振り下ろす。剣は山崩れに滑り落ちる岩達のよう、実に激しく攻め立てる。霊夢は一度呼吸し、それから荒ぶる剣を札で受け、更に一歩前へ出た。
 火の娘は身を引いて手を目の前にかざしたが、さながらそれは、祭りの日、祭祀の火にひるむ子どもか、はたまた、雷の音に驚いて、荒れ狂う牛を取り押さえようと、力込める手で角を掴み、必死に押しとどめる牛飼いにも似ていた。霊夢の脚は更に一歩抜きんでて、ヒューペの身体を火口へと追いつめる。
「さあ、後がないわよ」
「これは危険ですね。ま、足早のヘクトールもアイアースから逃げずに武勇を得た。何事もやってみろですよ」
 ヒューペは素早く脚を入れ替え、霊夢の身体を前に押す。そこから剣を両手で握り、今度は力一杯、めった打ちを繰り出すが、しかし霊夢は、麗しい果実の若木が、五月雨を受けてなお美しく養われるよう、ヒューペの攻撃にますます気勢を高めていき、いざ、強く振り下ろした剣を、札の力で貫き、その刃に穴をうがつ。これにはヒューペも驚いて、自らの刃をまじまじと見つめた。
 さて更に、霊夢がヒューペを激しく攻め立てると、互いの身体は血に染まり、なお目は白く燃えて、目も覆いたくなるほどの凄惨な争いが繰り広げられる。その争いは混迷を極め、とても語りは尽くせない。とはいえ、劣勢なのはヒューペであり、空に紫がかかる頃、霊夢はついにヒューペを火口の極限に追いつめた。
 満身創痍の出で立ちだったが勇ましく札を構えて、霊夢は愛しい養い子へ声をかける。
「最後に、言いたいことはあるかしら」
「――――ええと」
 霊夢に封印される前にと、ヒューペは言葉を探していく。けれども定めはヒューペの命を、霊夢に奪わせようとはしなかった。霊夢に何が許されていたか? その足場が崩れる中、立っていることだけだった。突然の地響きが霊夢とヒューペを分かつ。いつやこの、火山がこのように叫んだのは。火山は断末魔を上げるように、大きく震え、あちらこちらの土を割って炎を吹き出す。霊夢の足場も大きく震える。辛うじて、足下から袴の中の下着を覗こう、などという不埒な炎はいなかったものの、左右、上下とあまたの炎に取り囲まれ、いまや足場だけが霊夢の唯一の支えだ。
 ヒューペは霊夢の様子を不安げな、曇る表情で見ている。さて、この足場をも、やがて炎が飲んでいく。小川の岸辺を濡らすように、火は岩の上を燃え滑っていく。足場の岩はもはや支えとは呼べず、草履に火がつき、つま先に火が触れて、爪の焼ける匂いが辺りに漂う。
 足場の岩が軋んで揺れる。霊夢の身体が火口へ向けて投げ出された。巫女服が焦げ、黒く染まった。
 ヒューペは咄嗟に飛び出すと、霊夢の手を取り、その軽い肉体を、自由な空へと目がけて投げる。紫の優しい光が、月明かり涼しい灰色が、霊夢の肌を包み込んだ。霊夢は空を飛ぶ。風を全身に受けて立った。さればヒューペよ、あなた自らは、呪いの剣を持ったまま、火口の中へと落ちていく。
 これが少女の定めだった。最後に、ヒューペは霊夢へと、強い言葉を投げかけていく。
「さようなら、霊夢お姉さま。あなたが、私の救いでした」
 これが火の娘の滅びだった。


 ・・・エピローグ

 
 あれから、どれくらい時が過ぎたろう?
 いつの間にか花の異変が起こり、いつの間にか終わった。今日は暖かな秋の日。紫の貴婦人が空を満たす秋の季節、空の太陽は足早に梯子を渡り、一足早く彼女を迎え入れる準備をする。その太陽の下、迷いの竹林の中で、霊夢と魔理沙は二人きり、午後の散歩を楽しんでいる。古い竹皮の匂いが心地よい。秋の名月を楽しむため、兎たちはそろって永遠亭に集まり、夜の準備をしていく。竹林は静かだった。
 帽子を脱いだ魔理沙の、金木犀の髪が風に踊る。髪は百合のように艶めかしい。竹藪のパンダたちは、魔法使いの魅力にとらわれ、逞しい脚を留めていた。もっとも霊夢もあえてパンダを探そうとしていたわけではない。
 霊夢は足下で草が鳴るのを楽しい思いで聞いていた。ときおり魔理沙の顔を見て、同じように楽しんでいる様子に、なんだかうれしい思いを抱く。しばしその涼しげなメロディに心を奪われていたが、ふと、魔理沙から顔を逸らし、霊夢は前を見つめ、竹の匂いを思い切り吸ってから、その息を長く吹いて言った。
「結局私は、ヒューペを救えなかったのかしら」
「救いたかったのか? いいじゃないか、一人くらい。気にするな。お前はいつもがんばっている」
「そうね。でも私ね、誰も傷つけずに、誰かを助けた事って、ないのよ」
「そうか」
 魔理沙は少し考えたようだった。気の利いたことを考えているのか、夕食のことでも考えているのか、それは分からない。あるいはどっちもなのか。少し考え、何かの考えがまとまったような顔をして、魔理沙は云った。
「……お前も救われなかったか?」
 霊夢は前を見ることをやめ、魔理沙の顔を眺める。
「もし、霊夢、お前があの娘に会ったことを、そして共にいた日々を、後悔していないなら――きっとそれはお互いの救いになるんだと思うぜ。たとえあの娘が、最後にお前に恨み言を云ったとしても、きっと彼女は救われていたはずさ」
「最後の言葉ね」
 霊夢は小さく頷き、それから再び、前を向いて歩き出す。竹林に迷わずまっすぐと。
「どうした?」
「なんでもないわ。でも、きっとあんたの云う通りね。ねえ、魔理沙」
「なんだ?」
「あんた、やっぱり魅魔に似ているかもしれない」
 魔理沙は小さく笑い、そして、霊夢に応えて云った。
 ――そうかもな。
 


前回指摘されたところを直し書いてみましたが
はてさて手間がかかる。結局時間が足りなくて最後はグデグデに。

しかし、てるよはこれなんてムーミンパパの思い出に出てくる王様(ry
スミス
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2007/05/12 18:53:09
更新日時:
2007/05/15 09:53:09
評価:
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Rate:
5.00
1. フリーレス A・D・R ■2007/05/13 14:16:54
最初はずいぶん大仰で不自然な文章、会話だと思ったのですが、読み進んでいく内に、これはこれで独特の味があると思います。引き込まれました。
雰囲気としては、私の知る限り海外の創作童話の邦訳みたい…という表現が一番近いでしょうか、それこそついこないだ読んだばかりのムーミンとか。
ただ、最初であらすじを出されるのはどうかと…せっかくのよいお話の魅力が半減しているように思います。
そして、私が旧作を知らない、読解力不足というのもあるのかもしれませんが、東方SS?穴?という疑問が拝読中常にあり、東方SSコンペ、お題『穴』という制限の中においては、採点することができませんでした。申し訳ありません。
0点という意味ではなく、評価不能という意味においてのフリーレスを。
このような事を言った後で申し訳ありませんが、お話はとても魅力的でした。
2. 6 だおもん ■2007/05/14 00:13:39
個人的に思ったのですが、初めに筋書きを載せるのはやめて欲しかったです。が、独特な文章は素晴らしかったです。
3. 2 反魂 ■2007/05/14 14:49:23
まず第一、冒頭へ全あらすじを載せるというのは正直に言って理解に苦しみます。何かしらのミスリードや伏線的効果を狙ったものかと思いましたがそうでもないようですし。
面白さ半減どころではありません。冒頭に置かれては避けることも出来ませんし、そこはもう少し考えて欲しかったところです。

そのせいという訳ではないですが、本編の方も、申し訳ないですが私には致命的に合いませんでした。
作者様の意図の見えなかっただけかもしれませんが、どう考えても必要でないパートが多すぎるように思われます。ネタの継ぎ接ぎというか、その時その時頭に浮かんだことだけをただ羅列されたように統一感が無いです。意識的に語りを散らばらせてゆくという手法も理解できますが、それをやるには基本的に軸となる物語が見えていないと文字通り話になりません。

会話文でも地の文でもとにかくあらぬ方向へ流れることばかりが多く、忌憚なく言えば読んでいてイライラさせられるほどでした。その割にエンディングはあっさり風味ですし。
こういった文章回しそのものを味わう方には楽しめるのかもしれませんが、少なくとも私には面白味が分かりません。東方らしさも感じられず御題の消化もおまけ程度では、この評価に留まります。

色々辛辣なことを申し上げましたが、基本的に私には合わなかった、ということです。
あくまで一読者の感想として捉えて頂ければと思います。失礼しました。
4. 10 shinsokku ■2007/05/15 00:58:51
並々ならぬパワーに乗せられ続け、ちょっと疲れてしまいましたが、読み応え抜群です。
衒学的というか、もう徹底的にくどい。
毒々しいまでのくどくどしさに口説き落とされました。くど格好良い?
幻想っぽさも目に手に余り穴塞ぐほどで、自分からは文句のつけようが一切ございません。
再読に少々勇気がいるかな、ぐらいでしょうか。瑣末些少。
面白かったー。
5. 5 爪影 ■2007/05/16 13:39:14
 なんだか、絵本を思い出しました。
6. -1 名がない程度の能力 ■2007/05/21 13:42:20
読みにくい上に表現がイタイ
あと穴いらないじゃん
7. 7 復路鵜 ■2007/05/24 13:50:18
文章そのものでひとつの世界を作り出していたことに感動したのですが、オチを最初に出すのはどうだろーと思ったり。いやまあ、読んでいてわけがわからなくなるのを防ぐためでしょうが。
何にせよ、おいしくいただきました。
8. 2 人比良 ■2007/05/26 20:59:55
戯曲的。真上にあがってボールになる変化球。でもキャッチミ
スしたり。そんなイメージです。
9. -1 流砂 ■2007/05/26 21:49:14
……無理だ、俺には無理だ。
10. 9 deso ■2007/05/26 23:52:56
う〜ん、負けた。これは良い。なんというか、もう序盤から惹きこまれました。
ご馳走様です。満腹です。
11. 8 blankii ■2007/05/27 11:09:36
凄ぇ。とか下品な言葉を遣うのも憚られるかんじです。舶来の香が漂う文章の美しさが際立っていて面白い。もうこれ、SSというかんじではないのでは(敗北宣言)。
12. 4 椒良徳 ■2007/05/27 19:52:41
たいとるに「長め」と書くのはどうかと。いや、本当に長かったですが。
さて、冒頭から突っ込みどころ満載の作品でした。
なぜ、幻想郷に外界のものであるはずの辛子蓮根があるのかとか、
なぜ博麗神社にテレビがあって、魅魔様が有馬記念を見ているのかとか、
魅魔様を「お姉さん」とよぶ霊夢はレイプしたくなるが、
「けれども魅魔は、やさしく両手を広げ、キャベツ畑が雨雲を受け止めるように、幼い少女の体と心を、じつに穏やかに抱きとめた。温かな魅魔の匂いが霊夢を包む。霊夢はふとんに包まれるような感覚に、安堵して目を開く。その、トマトのように潤む目が、レタスのように大きなやさしさをたたえる魅魔の瞳と交わった。まなざしに心を撫でられ、霊夢の心は穏やかな気持ちとなる。」なんで野菜なんだよ、おいとか、
霊夢と魔理沙の仲があまりよくなかったりとか、
「大丈夫さ。もっと自分の光を信じるんだ。人はどんなに長いトンネルでも、歩き続けることで抜けられる。光を持っているならね。」という会話文の最後に句点は無いだろうとか、
「まあ、なんてすてきなのかしら!」と目を輝かせる霊夢はやっぱりレイプしたくなるが、
栗鼠とリスというように表記が統一されていなかったりだとか、
永琳、八百比丘尼見た事あるのかよとか、
永琳話し長えとか、
いやいや話が長いのは永琳だけじゃないのかとか、
「別に、助けても問題ないわね。一安心といったところ。さあ、どうしましょうか、」みたいに会話文の最後に読点と打つのはどうかとか、
会話文の途中で改行したり:を使ったりするのはどうかとか、
「お年寄りの永琳」ちょww殺されるぞあんたとか、
『おさなけ』ってなんやねんとか、
「もちろんよ。私だって、このために持ってきたのだから。それじゃ、私の好きな曲でも適当に弾くとするわ。そうね、『ツェペシュの幼き末裔』から『亡き王女の為のセプテット』、それと、『少女綺想曲』へ繋げていこうかしら。これは、二十一世紀初頭の日本人が作った曲よ」ちょwwおまww神主wwとか、
フルートを弾くのはおかしくないかとか、
「ミステリーをご存じないの? 悪魔来たりて笛を吹くものよ。」霊夢が知るわけ無いだろってばとか、
「――ここにも、そこにも、あそこにも」「――涙も風になりますわ」おいおい懐かしい歌だなとか、
輝夜はやっぱりネットやってんのかよとか、
突っこみたいところがいっぱいでした。
 さて、そんなことは置いておいて内容についてですが、比喩を山のように使っているせいで全体的に文章が冗長になっているように感じられました。無駄な表現は省いた方が良いと思います。一文一文が長くなってしまっている所為で、脳内にイメージが湧き辛く、読むのに苦労しました。最後まで一文も飛ばさずに読みましたが、長さに見合うだけのカタルシスが得られず、正直がっかりしたというところです。つっこみどころは満載でしたが。もう少し精進しましょう。
13. フリーレス らくがん屋 ■2007/05/29 10:55:30
穴から大分ズレているような。つーか、前半の妙に力入った文章(細かすぎて読みにくい)と後半の怒涛の展開(話がポンポン飛びすぎ&はしょりすぎ)のギャップについていけませんでした。
点数入れるなら3、4点ってとこなんですが、多分他の人が正当な評価してくださるでしょうし、そんな中3、4点があったらもしかすると失礼かもしれないのでフリーにいたします。あしからず。
14. 8 鼠@石景山 ■2007/05/30 00:56:41
独特の言い回しとちょっとくどめの文章。
いや、でもこういうの好きです。
永琳のすぐに脱線するズレっぷりとか、レミリアと萃香の乙女乙女してるところとか、良くある描写からさらに進んだところに踏み込んでいるのがいい味しています。あちこちに含まれる言葉遊びも、またなんとも。
話の肝であるヒューペの存在も違和感無く収まっていて良かったです。
しかし、最後が駆け足っぽいのが残念。実に惜しい。これだけ言葉に飾られた作品だからこそ、惜しく感じるのかもしれませんが。
15. 7 いむぜん ■2007/05/30 02:27:32
全体的に芝居がかっているというか。無駄の多い事を是とする幻想郷は、精神的に豊かな妖怪の天下だというのが見えた気がする。でも魅魔さま、競馬中継なんか観てんなw あと、輝夜、お前なんてモノを通販で。
面白かったけど、ラストがちょっとブツ切りっぽいのが残念か。
16. -1 ■2007/05/30 03:06:55

一言で評すれば、支離滅裂です。
洒落た言い回しに挑戦する前に、まず普通の文章を書けるようになりましょう(最初は文学作品よりも、ライトノベルを読んで参考にした方が手っ取り早いかと思います)。
キャラの口調もアレンジせずに、個性に沿った一般的な喋りをさせましょう。
プロットはわかりやすく一本道で作りましょう。
回収できなかった伏線は、潔くカットしましょう。
タイトルも少しはこだわりましょう。
私は本来加点しかしない主義なのですが、作品の長さともあいまって、さすがにどうかと思ったのでマイナスさせて頂きます。精進しましょう。
17. 6 ■2007/05/30 12:13:42
んー、さすがにちょっと言い回しの部分が多すぎて内容が読みづらくなっていると思います。せめて文章の配置を読みやすいよう考慮していれば幾分か防げたのでしょうが…。
それと何より、ギャグと言うわけでもないのにネット通販とか有馬記念が普通の感覚で出て来る辺りが、世界観的に違和感があり過ぎます。
18. 6 読むだけの名無し ■2007/05/30 13:54:12
読みにくかったけど面白かった
19. 5 リコーダー ■2007/05/30 16:10:11
なんかもう最初は真面目に読む気がしなかったのですが、
真面目に読んでみると中毒性があるっぽいっす。
20. 3 眼帯因幡 ■2007/05/30 17:37:40
先ず、何故最初に内容を書き出してしまうのかとorz
文体なのですが、何となく回りくどく、一文に状況を詰め込みすぎているように感じました。理由は、地の文に比喩を使いすぎているからだと、私は思います。比喩表現は何かを強調したいときだけに抑えてみてはどうでしょうか。
読む側を疲れさせるような、そういう印象を受けました。
しかし、ここまでオリジナル設定で書き込むのは、正直凄いと思いました。
未熟者が偉そうにすみません、お疲れ様です。
21. 4 二俣 ■2007/05/30 20:18:18
徹頭徹尾に翻訳調で突っ走ってくれればもう五点足してもいい、そう思わせるほどに部分的な描写はそれらしくカバーできている。感心しました。
…しかし途中でいろいろ混じったので読後感がやや悪酔い気味に。次作に激しく期待しています。
22. 6 K.M ■2007/05/30 20:37:52
これはSSというよりも小説…いや、戯曲のように思えました。
独特の文体の長文、しっかり読ませていただきました。
それぞれに相容れぬ道を選んだならば、きっちりと袂を分かたねばならない……悲しい話ですね。
23. 6 たくじ ■2007/05/30 22:26:11
切ない話だなぁ。霊夢と魔理沙の関係ぐらいヒューぺとの関係を丁寧に描いていたらもっと良かったのではと思います。独特の文体はけっこう好きです。
24. 8 時計屋 ■2007/05/30 23:41:05
いや、すごい大作でした。
まるでシェイクスピア戯曲のような情熱的かつ詩的な台詞と文章の羅列に圧倒されました。
文章は一つ一つが長く、レトリックが多用されているため、読みづらいといえば読みづらいのですが、
逆にそれが独特の味になっています。

お話も王道ですが、その王道さゆえに、テーマ処理がすっきりとしており、
さっぱりした読後感が得られました。

難点としては、特徴的な文体と戯曲風の台詞回しは素晴らしいのですが、
その完成度が高かった故、キャラが東方っぽさから離れてしまったこと。
(東方のキャラっぽくない、とは前回私が言われたことでもあるんであれなんですが)
あとは霊夢とヒューペの絡みがあまりに少ないため、終盤への繋ぎが弱くなっている点でしょうか。
(オリキャラを前面に出すことへの配慮があったのかも知れませんが)
25. フリーレス 藤村る ■2007/06/03 02:19:58
 まず最初に「世界の神話」みたいな本を思い出しました。ばりばり直訳している読み辛い感じの。
 あえてその作風を狙ったのか、素の文章なのかはっきりとはわかりませんが、読み辛さが先に立ってあまり中身に集中できなかったかなあというのが少し。文章も、硬いかと思えば急に緩くなったりしますし。
 あとは、いくらなんでも話が脇に逸れすぎのような。
26. フリーレス スミス ■2007/06/03 22:47:06
始めに、まずこの作品を書いた経緯について語らせて頂きます。

前回コンペの拙作「うさぎごろし」と「映姫様の夢オチな話♪」は、
日本の古典落語と最近のコントをイメージして書きました。
(といっても、どっちもあまり知らないんですけれど)

特に「映姫様〜」は、そのイメージ上、戯曲に書いたもので、
内容は会話文だけで構成され、表情や感情も顔文字を使用することにより、
不明瞭に留めておいたのです。とはいえこれらは地文がないということで
不評でした。
で、仕方ないから、今回は散文詩と劇の要素を含ませることで、
地文のある物語に仕上げてみました。

気づかれた人が何人かいるかは分かりませんが、今回は
「アメリカン」がイメージです。一見関係なさそうな場面から生じる言い回しが、
後で使われる、いわゆるB級映画的な展開はそのためです。また、各舞台では
その場所で起こる出来事よりも、語られることやキャラクター性を表現すること、
その立場や心情を重視して作られています。
(たとえば最初の競馬話は魅魔のキャラクターを、その後の魔理沙とSUICAの
鬼ごっこは、魅魔と対比される、用心深い魔理沙のキャラクターを表しています。)

さて、その上で、比喩の中に穴と百合(天気模様の擬人化とか)を取り入れました。
まあ確かに物語とまったく関係ない百合描写はどうかとも思いますが、百合書きとしては、
長編の中に一定以上の百合分がないとプライドに関わるので。


・・・


物語は本編と、まったく関係ない二編の笑話が組み合わさって出来ています。
これは言うまでもなく、チルノの話と輝夜の話。二つとも童話的なおもしろさを意識しました。

くどい描写は印刷のしやすさ、同人的な慣用のせいでもありますが、一部違和感の
出そうなところを防ぐ役割があります。一見関係なさそうな部分を後で絡ませる、
ということの条件には、関係なさそうな部分を他よりおざなりにするのでなく、
一つの場面として定着させる必要があり、そのための表現が多くなっています。

また、キャラクターの言動と感情の不一致が非常に多いため、それを表すための、
あからさまな説明は置いておいて、描写を増やしました。
(でも、それに気づかないままの人もいたかもしれません。霊夢が魔理沙を
嫌っているように感じた人もいたようです。さすがに、てゐが霊夢を好きだと
思っている、と感じた人はいなそうですが)

で、結果としてWEBで読むのには不適切な詰め方になってしまった気がします。
IEで文字の大きさ変えられなかったんですね。批評期間に入ってから気づいてびっくりー。

キャラの台詞についてですが、永琳が一番長く、重要な意味合いを持っています。
場面では単なる、おばあちゃんの若い頃の自慢話ですが、その言葉から出る出来事が、
そのままこの物語を形成する筋となっています。
初っぱなこれがあるし、最初にネタバレがあってもなくても変わらない……と個人的には
思うのですが、そうでもない人は多いのでしょうか。
ヒューペは一番短く、他のキャラに比べると自分の感情が出やすいです。これは存在の
希薄さを表しています。まぁオリキャラだし存在感もいらないと思って。

なお、こうした書き方は後半だと完全に放置されています。


・・・

コメント返し

>藤村る さん
詩文的な書き方で書くタイプなので、素ですね。慣れていないと難しいと思います。
緩急や作者的な意見へ逸れるのは緊張感を解したり、コメディアに仕立てる意味合いが
ありました。ただ私のコメディは滑りやすいようです。えーん。


>時計屋 さん
ナンセンスの連なるアリスなんかは好きな本の一つです。
でも、言葉遊びは多ければいいってもんじゃないんですねー。
読みづらいと言われて初めて気づきました。何回も読み返すことが少ない
コンペだと、素朴な言葉の方がいいのかもしれません。
この文体は、私も二次は向いてないと思います。オリキャラが出なかったらもっと
東方からずれていた気がする……。ぶるぶる。

霊夢とヒューペは似たもの同士なので、あんまり書かなくてもいいかなあ……と
思ったのですが、キャラクターと呼ぶほど表現されてはいなかったような気がします。
ある意味では魔理沙の次に分かりにくいキャラですね。
悪役だし好きになれない(ぉぃ


>たくじ さん
霊夢は魔理沙の嫁なので、
よその女とイチャつくなんて とんでもない!


>K.M さん
コンペでは四番目に長い拙作、読了どうもです。
最後に霊夢を救って死ぬヒューペは、何か中途半端なやつですが、
悲劇の主人公にしては話を明るくしてくれていますね。


>二俣 さん
後半はもうこれ以上繋げる必要ないやーということで完全に
糸を投げ出しました。ねむかった。今は反省している。


>眼帯因幡 さん
読者としての私は、パッと見て、だいたい内容を予測しつつ読んでいくので、
あんまりストーリーは気にとめないんですよねー。だから最初に内容を
書き出すことには抵抗ないんです。
なお、それ自体はわりとクラシックな悲劇の手法です。

回りくどいのは言葉遊び的な感覚もあり、何回か読んで分かっていくものですが、
コンペでは不適当かもしれませんね。反省。


>リコーダー さん
一読でとっつきにくいのは短所なのか長所なのか……。
人によって好みが分かれるところだと思います。


>読むだけの名無し さん
ありがとうございます。


>翼 さん
そうですねえ>世界観
ホットショット的な感覚は好きなんですが。

>執 さん
個人的な好みの問題ですが、ライトノベルや民話の、淡泊に事実だけを
挙げるテキストは好きになれないんです。同じ世界が誰にとっても
同じ世界として表現されるような書き方は。
それだと、登場人物のキャラクター性が出来事に振り回される印象もありますし。
やっぱり人物を重視したいのです。
なお、タイトルは分かりやすいのがいいなーと思ってつけました。
クラシックなタイトルですね。


>いむぜん さん
そうですね……>ラスト
わ、私が、私が悪いんじゃない!!ぜんぶFEZのせいなんだ!!あいつのせいで……!
(死亡フラグ)


>鼠@石景山 さん
ソードマスターヤマトみたいですねアハハ。
……どう考えても私が悪いです本当に(ry


>らくがん屋 さん
穴と考えて一番に思いついたのが火口の穴でした。
火口=噴火かなと思って、あとはだいたいの人物像を作って。
ストーリーの後半の不足は反省しています。

>椒良徳 さん

辛子レンコンは熊本の郷土料理です。
ギュムギュムって押しつけるだけで、簡単に自作できますよー。
一度おためしあれ。
野菜は緑=野菜かなと特に考えもなく。
会話文の最後に句読点をつけるのは出版社次第でしょうか。
「おさなけ」は「幼げ」が好きな作者の深層心理が出たんでしょう。
フルートを弾くのは間違いでしたね。楽器はミンナヒクトオモイコンデイタヨ
金田一耕助や悪魔くんはパロギャグです。えろひむえっさいむ。

長いのが良いという人と色々ですね……。


>blankii さん
そうですね。長いですし、ショートショートというには不適当。
 下品というのも憚られる>
 『やさしい恋人の指先で、愛撫を受ける少女の汗が、女同士のよろこびに、
 人より熱い汗をこぼし、ベッドのシーツを甘く濡らす』
こんなギリギリすぎるシモいネタもありますが(笑)
ありがとうございます。


>deso さん
ありがとうございます。ドーナツどぞー。


>流砂 さん
そのうち、創想話にもっと分かりやすいものを投稿してみます。


>人比良 さん
岩鬼にホームランされるわけですね。 
ゴワカャアアアン!!


>復路鵜 さん
ありがとうございます。ちくわどうぞー。


>名がない程度の能力 さん
女の子が出てくるのに 穴いらないとは とんでもない!
あなかしこ


>爪影 さん
絵本とエロ本はどっちがいいのか〜〜〜〜?!


>shinsokku さん
ありがとうございます〜。一気に読むのはすごいですね。
私としては、何回かに分けて読むことを意識しました。


>反魂 さん
そうですね……。分かりやすいように書いたのですが、
深読みすると逆に混乱しそうです。もう少し詳細に書くようにします。
箇条書きの書き出しは、ロビンフッドの冒険と同じようなものですが、
長いものならもっと筋道立てて書いた方がいいですね。


>だおもん さん
結局のところ、筋書きそのものがサブといえるかもしれません。


>A・D・R さん
レミリアが言うように、霊夢の人生そのものがトンネルなのですが、
人物像を重視するとそれが見えにくくなってしまうのがあります。
キャラクターは年齢や立場からテンプレートを借り受け、それに従う面もあります(えーりんとか)
結果として東方SSっぽくなくなっている感は否めません。

もともとはオリジナルで書く人間ですが、もう少し二次の書き方を意識して書きたいです。


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