重力井戸

作品集: 最新 投稿日時: 2007/05/13 00:48:19 更新日時: 2007/06/04 03:08:32 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00

 重力井戸は強い引力で私の体をとらえて離さなかった。
 私は愛用のほうきにまたがり、その奈落の回転と逆方向に最大加速をかけて、なんとか脱出しようと試みているが、充分な速度を得ることができず、しだいに井戸の中心へと引き寄せられている。
 中心に近付くにつれて、井戸の圧力は私の領域をすこしずつ確実に侵食していった。あの中心では、とても強い重力の作用によりすべての法則がばらばらになっているはずだ。私が学んだ魔術、法術のどれもが、あの中では通用しなくなる。もっとも、事象の地平と呼ばれるその深淵にいたるまえに、暴力的な圧力からかろうじて私の身を守っている魔法障壁の全てはくだけてしまい、中心に到達するその時には私はぺちゃんこに潰れたうえに、素子レベルで破壊されてしまっていて、大きさも長さも残っていないだろうが。

 これは、私と親友の巫女が、記念すべき三十回目の異変解決に乗り出した時のことだ。そのまの抜けた結末に起こったできごと。

 その異変の首謀者は、いままでのなかでも、かなり重い業を背負った部類だった。
 その業の重さゆえに、彼女は自分を救うために自分の存在を壊すしか道がなかった。
 そうして彼女は消え去り、あとには彼女の遺産だけが残った。
 いま、私はその負の遺産に吸い込まれようとしている。
 絶大な力を持った半妖が、散り際に行使していた術の産物。法力と魔法と妖怪の超常の力が生み出した、擬似ブラックホール。
 青空にぽっかりと空いて唸り声を轟かせながら、大気を根こそぎむしり取っていく暗黒の吹き溜まり、奈落の穴。超重力を伴った空間の特異点だ。
 彼女はこいつを使って、幻想郷自体を破滅させるつもりだったのだろうか。
 彼女にはそうさせるだけの背景があったし、大義も少なからず持っていたが。
 本人がこの世から去ってしまった以上、真意を聞くことはできない。それにしても物騒な代物を残していってくれたものだ。

 私は巫女と相談し、いくつかの対応策を考え出した。
 そのうちの一つ、最も効率と効果の面で優れていたのが、速度に優れた私が円軌道を描きながらぎりぎりまで接近し、魔法力をためこんだ水晶球を投げ込んで、その作用によって井戸を消滅させる、というものだった。井戸を維持している残留した魔法力と、爆縮した水晶球の魔法力の対消滅反応。それによって重力井戸はやがて自身を維持するためのエネルギーを失い、消え失せるはずだった。
 私は擬似ブラックホールの周りをぐるりと巡ったのち、中心部の万有引力を利用した重力ターン、いわゆるスウィングバイで脱出するてはずだった。
 回転している本物のブラックホールでも同様の方法が使える。
 それを模した物と思われる目の前の重力井戸も、吸い込まれていく大気の動きや力の向きを観測した結果、同様の回転力がかかっているようなので、この方法で問題なく脱出できるはずだった。
 途中まで、水晶球を放り込んでUターンにとりかかるところまでは計画どおり進んだ。
 ところが、重力井戸の中心を大きく迂回して、脱出のための最大加速をかける際に私はミスをおかした。
 目の前に強い引力の作用ではぎ取られた地面のかけらが飛んできて、それを避けようとした私は、加速をかける力の角度をごくわずかにそらしてしまったのだ。
 結果、脱出の機会を逸し、私は井戸の重力圏にとらわれたままになった。

 いま、私はかろうじて井戸の引力と、自分の持つ推進力との間で均衡を保っている。
 それでも、やはり井戸の力の方が強く、じわじわと中心の側に引き寄せられている。
 魔法のほうきは自身の持つ運動量と角速度を、徐々に重力井戸に奪われていっている。
 星の魔法使いの象徴たる護衛用の星弾も、つぎつぎとその底へとすいこまれ、命を刈り取られていく。ほんもののブラックホールが、これまたほんものの恒星の命を絶つように。
 その星たちの見せる断末魔は、私のすぐさきの運命を象徴しているのだ。

 眼前を見ると、私を見守っている親友の姿が見えた。
 彼女の像はぼやけていた。
 こちら側の空間がゆがみ、光が井戸の中心に吸い込まれていっているせいだ。

 起死回生の思いをこめて、私はありったけの魔法力を圧縮させる。
 私と愛用のほうきは、一すじの光の帯となる。
 彗星「ブレイジングスター」
 私の大好きなスペルで、かつひときわ強力な魔法だ。
 けれど、その彗星は自由軌道を得ることが叶わなかった。
 十分に予測していたことではあるが、単純に力負けしたのだ。
 それでちょうど私は手持ちの魔法力を使い果たした。もう大技は使えない。

 私は、もはや自らの命運が尽きたことを自覚した。
 私にはもう脱出のてだてがない。
 彼女のいるあちら側の世界、生の世界へと戻りたかったが、どうもそれは叶わないようだ。

 そうして、あいつがやってきた。


 いわゆる走馬灯ってやつだ。


 思い出す、思い出す。
 異変は二年おきに、時には一年おきに起こった。
 私はいつも彼女といっしょに、その都度空を駆けた。私たちはいつも一緒だった。
 長の年月を経て、あまたの異変を解決に導いたが、その間にもなぜか私と彼女は年老いることがなかった。
 妙な話だ。そんな術を自分にかけた覚えはないのに。あるいは、いくつかの異変のうちで、私たちにそんな効果を及ぼすものがあったのかもしれない。

 万華鏡を回転させたときのように、様々な、過去の私が眺めたであろう映像の数々が浮かんできた。
 私が見るはずのなかった視点、たとえば景色の中に私がいたり、まるで舞台の上の劇を見ているみたいな光景も見ることができた。映像の欠けた部分を、想像力が補ってくれているのだろうか。
 私の歩んできた道。私の生まれ育ったあの幻想の郷で過ごした風景が色鮮やかに浮かんできた。
 思えばなんとまあ、ノスタルジックな色合いにみちた世界であったことだろうか。
 生家で母親と一緒にいるところ。これはいつのことだ。ずいぶんと古い記憶だ。
 父親といさかいをして、家出した時のこと。私にはもう、あの時父がどんな顔をしていたのかが思い出せなかった。
 私が長年過ごした魔法の森の家、あのへんてこな格好をした家が見えてきた。
 いつもキノコを採りにいっていた森のお気に入りの場所を歩いている私が見えた。
 近所に住んでいたちょっと引きこもりがちの人形使いが居た。
 本を借りにいくと渋い顔をするけど、そのくせちゃんと紅茶を出してもてなしてくれる、いつも寝巻きのままの魔女が見えた。
 いつでも律儀に門を守っている中国風の衣装を着た妖怪や、大層年を食っている小さな吸血鬼とその妹、その吸血鬼に仕える少し年上のメイドが見えた。
 宴会を開けば、異変を通して知り合いになった郷中の人妖たちが集まり、私は彼女たちと飲み食いしてお酒を大いに飲んで酔っ払っては、一緒になって騒いだ。
 私は彼女たちのことを、結構気に入っていた。あっちはどう思っていたのかは、聞いたことがないからわからないけど。
 どうしたことだろうか。色あせたセピア色のアルバムをめくって昔なじみを思い返し、あの頃はよかったとつぶやくなんて、これじゃあまるで、センチメンタルな老人じゃないか。
 しかしてとめどなく溢れくる洪水のような想念は、私をとらえて離してくれなかった。
 そして、浮かんでくる映像のあちらこちらに、やはり彼女の姿が見えた。

 彼女と、私の親友と、博麗霊夢と出会ったのはいつごろのことだったろうか。
 ずいぶん子供のころから、私は彼女と一緒だった。 
 幼いときからお互いに保護者もおらず、基本的には一人で生活していた。
 でも、彼女を見つけてからは、彼女の住む神社へちょくちょく遊びに行くようになった。
 同い年の、似たような境遇の女の子だ。私は彼女を見つけてうれしかった。
 朝昼夕の食事を共にした回数は数えきれないくらいだ。
 週に二、三回は彼女の家に泊まっていたこともある。
 彼女が病気になったときに、看病をしたこともある。
 同じことをしてもらったこともある。
 私は、彼女と私は一種の互恵関係にあるのであって、さして特別な関係ではないという態度を崩さなかった。
 だけど、私は気づいていた。
 そういう自分の姿勢がいつわりに満ちたものでしかないということを。
 私は彼女のことが、たまらなく好きだったのだ。

 私は自分の感情が性愛に基づいたものだったのかどうかについては、自分でも良く分からない。
 私はたぶん同性愛者ではなかったと思う。
 性的な嗜好から言えば、ちゃんと男性に惹かれる人間だったと思う。
 だけど、愛というものの究極が、対象と全てを共有して、対象の全てを所有したいと願うように人を駆り立てるものだとするならば、突き詰めていけば、私はやがて彼女と関係を持ちたいと願っていたのかもしれない。


 霊夢はお茶が好きで、日向でのんびり昼寝をしたりするのが趣味という、なんとも年寄りくさい女の子だったが、私はそうしている彼女を見ているといつも心が温かくなった。
 私が神社を訪れると、私専用の湯呑みがあって、彼女はいつもそれにお茶を注いでくれた。
 私は縁側で素足をばたつかせながら、彼女とならんで飲んだ緑茶の味を思いだした。
 彼女のやっていた、境内の掃除をしようとして魔法を使ったら、暴走して落ち葉をまき散らしてしまったことがある。
 そのあと念いりにしぼられたけど。
 弾幕勝負という遊びに夢中になって、彼女とよく試合をした。
 たいてい、彼女にはかなわなかったが。
 出会ったころから、十歳ぐらいだったかな。そんなころから同じようなことばっかりやっていた気がする。
 なんだかそんなのんきな光景ばっかり思いだせてくる。
 
 霧の異変、春が来なかった異変。
 満月が欠けた異変、花の異変。
 その他数々の異変。
 幻想郷に毎年のように訪れる異変は、里に住む人々にとっては迷惑な自然災害にしか過ぎなかったのだろうけど、私たち二人にとっては実質イベントのようなものだった。
 不謹慎であることは重々承知なのだが、毎回けっこう楽しんでいた。
 彼女と一緒に空をさまよい、派手な魔法をぶちかまして、妖怪と戦ったり試合をしたりするのが楽しかった。
 時には協力し合い、時にはお互いに邪魔しあったりした。
 もちろん、異変解決に手を抜いたことなどはない。これは彼女も同様だ。
 異変の折々に知り合いが増え、私たちの交友関係も広くなっていった。
 増えたのはほとんど妖怪の知り合いばかりだったけど。
 彼女のおおらかさ、種族を問わず、誰に対しても分け隔てなく接する態度が私たちの世界を広げるのに一役買った。
 彼女は幻想郷そのものだった。
 全てを受け入れ、あるがままを認め、そしてすべての物に同様な情をそそぐ。
 彼女は幻想郷そのものだった。
 全てを受け入れる。
 そう、彼女は私も受け入れた。
 すべてのものごとと同じように。

 いつか知り合いの大妖怪が言っていた言葉を思い出す。
 『幻想郷はすべてを受け入れる。
 それはそれは、とてもとても、残酷なことだ』


 全員に平等であるということは、残酷なことだ。
 特に、彼女に特別視してもらいたいと思っている者にとっては――




 やがて成長して、私たちにも思春期が訪れた。
 彼女は私たちの外の世界から来た、ある同年代の男性と恋に落ちた。
 彼女が恋愛にのめりこむなんて、そしてその男を伴侶に選ぶなんて、私には想像できなかった。
 だが、態度から分かった。
 決して子孫や後継者を残さなければならないという、義務感から夫を選んだわけではなかった。
 私は彼女の結婚に反対した。
 あんなやつは霊夢にはふさわしくない。そんな言い草をした。
 要は嫉妬していたのだ。私は自分の感情をまき散らした。
「霊夢は私のことをどう思ってるんだよ!」
「どうって……その……あの、魔理沙? ……なにを……言ってるの?」
 彼女はうろたえていた。
 後にも先にも、彼女のうろたえる姿を見たのはあれが初めてのことだった。
 そんな感情をぶつけられても、彼女は困ってしまうだけだったのだろう。
 私は自分のことで精一杯だった。

 私は彼女の結納に出席しなかった。
 とてつもなく冷酷なしうちだったと、我ながら後悔している。
 たぶん、私に一番祝ってほしかったはずだ。
 私はあのとき彼女を。
 間違いなく。
 不思議なことに、そんな苦しくて痛い記憶も、今思い出の舞台に投じてみると、なんだかかけがえのない素晴らしく美しい情景のように思えてきた。
 人生にとっては、傷つけた思い出も温めた情交も、どちらも大切な宝というわけか。
 私はあの時、彼女の旦那に対する子供っぽい敵愾心を捨てることができなかったのだ。
 あとで、やはり古い付き合いになる友人の人形使いにひっぱたかれた。
 そのときにあいつの言った言葉「霊夢が叩かないから、私が代わりに叩いてあげる」そう言っていた。
 なんておせっかいなやつだ、と思った。でも、その行為のおかげで少し救われたことを私は知っていた。
 私はちゃんと霊夢に謝ることができた。

 そのあとすぐに私は結婚した。
 ひどい話だ。あれだけ霊夢の結婚には反対していたのに。
 あれだけ霊夢にはひどい扱いをしたのに、彼女はちゃんと私の結婚式に出席してくれた。
 そして、最高の笑顔で「おめでとう」と言ってくれたのだ。
 巫女は誰にも縛られることがない。実は冷たい性格なのかもしれないって?
 私の知っている彼女はそんな性格じゃなかった。
 彼女は誰よりも私のことを気遣ってくれた。
 誰よりも私のことを知っていた。
 誰よりも、私の幸せを願っていてくれたのだ。

 旦那にはもうしわけないが、親友の霊夢のことばかり思い出してしまった。
 そんなに一緒にいたのか。なんだかんだ言って、人生の八割がた彼女とともにいたからな。
 申し訳ないので、ちょっとは旦那のことや子供たちや弟子たちのことも思い出そうと思った。
 旦那は私と同じ魔法使いだった。私と違って、物を破壊する魔法はそれほどの腕前ではなかったが、その他の魔法は私の何倍も上手にやり遂げる、器用な人間だった。
 魔法以外のことでも料理や掃除がうまかったので、重宝した。
 私の蒐集癖にも理解を示してくれる、大らかな人柄だった。
 それなりに、どじで粗忽な面をいっぱい持っていたが、それもなんだか笑えて、一緒にいてなごめる人だった。
 ある異変を機会に知り合いになり、何度か交流した後に、彼は私の家にやってきた。
 そして腕に抱えていたいくらなんでも多すぎる量の百合の花束を私に突きつけて、いきなり求婚してきた。
 彼氏彼女の関係から始めるわけじゃなく、いきなり結婚だなんて、いくらなんでも先走りすぎじゃないかと思ったが、私は思わず「はい」と言ってしまった。
 あの時はやはり感動したことはまちがいないのだが、なにを考えてイエスなんて言ってしまったのかはあまり良く覚えていない。
 そうして彼は私の家にやってきてしばらく暮らした。
 やがて子供ができた。
 その頃には郷中に私たち魔法使い夫婦の名前は知れ渡っていて、弟子にしてほしいと言ってくる人間も何人かいた。
 といっても、そのへんの食い詰めた孤児とか、家出してきた思春期の少女とか、子供ばっかりだったけど。
 最初はもてあますかと思っていたけども、それでも弟子も子供も可愛かった。
 弟子たちはちゃんと教育したつもりだが、子育ては旦那にまかせきりだったかもしれない。私は魔法の研究をしたり、弟子たちを連れて暴れまわったりしてばかりだった。
 ちゃんと母親らしいことをしてやった自信は、あまりないな。
 私は長男の金髪を思い出した。あの私に似た癖っ毛をもうかき回してやれないことは、やはり悲しかった。長女の黒い髪を櫛で解いてやることもできなくなりそうだ。


 そこまで考えて私はあることを思いついた。
 その思いつきは、私が見ていた記憶の夢想の中から、現実世界へと引き戻す。
 砕けた地面の破片が、弾丸となって私のすぐ側を高速で通り過ぎていく。
 もう既に、結界のきしみが肌で感じられる。
 しかし、ふと疑問が浮かんだのだ。
 まだ結界がきしんでいるだけで済んでいるというのは、不自然ではないか。
 私が井戸の重力圏にとらわれてから、体感で数分は時間がたっている。
 そうだ。
 図書館で読んだ本に載っていた、ブラックホールとはこういったものではなかったはずだ。
 ブラックホールとは自己の強い重力のために、極限まで収縮した天体のことだった。
 そのシュヴァルッツシルト半径と呼ばれる一定の範囲内は、重力の強さが光の速度を超えるために、可視光さえ吸い取られて、肉眼で確認できなくなる。そのために、外から見ると暗黒の塊のように見える。
 光の速度。
 当然私は光の速度で飛んでいるはずなどない。せいぜい全力の速度で飛んで、音速の数倍程度の速さだ。
 その程度の速度なら、考えているひまもなく、事象の地平線には一瞬で吸い込まれてしまうはずだ。
 最初から、この井戸の重力が本物のブラックホールほど圧倒的であったならば、私もその領域をかすめるスウィングバイなどという危険な方法を試そうと思わなかったかもしれない。
 そもそもブラックホールを作るには、太陽のような高密度の膨大な質量を持った天体が、材料として必要なはずだ。
 もちろん、幻想郷にそれだけの質量があるはずがない。
 疑似だろうがなんだろうが、自壊してブラックホールになるだけの質量を地上でそろえられるだろうか。
 できるはずがない。
 ということは、これはそもそもブラックホールの原理を応用したものではない、ということになるのだろうか。
 ただ性質が似ているだけで……
 もしかしたら、あの中心にあいた穴もブラックホールの中心にあると言われる特異点などではなくて……
 そこまでだった。
 一瞬、暗い背景の向こうに霊夢の姿が見えた気がした。
 私は彼女の名前を呼んだ。だが、声にならなかっただろう。
 やはり強い重力に耐えられず、結界が崩壊したのだ。
 そうして、私の意識は途絶え、その後はきっと、引き寄せられるままに穴の中心に進んだのだろう。
 私の存在はこの幻想の世界から消失した。






 *





 異変を解決し、私は魔理沙と二人で神社へと戻ってきた。
 帰路の途中から、一連のできごとによって魔法力を使い果たしていた魔理沙は、様子がおかしかった。
 そして神社にたどり着いた時点で、地面に倒れこみ、そのまま気を失ってしまった。
 私は彼女を建物の中に運び込み、しばらく看病を続けた。
 彼女はずっと眠り続けていたが、命に別状はなく、三日たったのちに目を覚ました。
 彼女の親類縁者も駆けつけていたが、魔理沙はひとしきり家族をあしらうと、私に向かって相談があると言った。
 何事かと思えば、無縁仏を祭るので、神社の近くにある墓地をひとつ分けて欲しいというのだ。
 私の親しい人が葬られている墓場は、別段神社の土地ではない。
 そもそも共同の墓地で、所有者が明確に決まっているわけでもない。
 そして私には、彼女が何故墓を必要とするのか、その理由がわからなかった。
 今回の異変の首謀者だった少女をとむらう? それもかなり不自然な気がする。
 墓地なんてもらって、誰を葬るのか、そう聞いても教えてくれなかった。
 それでも、その森の中にある区画のひとつを、彼女の言うとおり墓を立てやすいように更地にしておいてあげた。
 しばらくして、快復し歩けるようになった魔理沙は、朝から墓場へ行くといって出かけて行った。
 私は彼女のあとを追って、森へと向かった。
 開けた場所にある墓場の一角、私が用意した場所に魔理沙はどこからか持ってきた石を墓石がわりにたてて、その前に花を幾輪か備えていた。
 そして神妙な面持ちで、目を閉じて静かにお祈りしている。
 私は彼女の背後に歩み寄る。
 魔理沙は私に気づいたようだが、振向きはしなかった。そのまま誰かに対しての黙祷を続けている。
 私はその場所からすでに墓石に刻まれていた、おそらくは彼女が手書きで刻み込んだ碑銘が見えたので、彼女が何をしているのかは大体見当がついたが、それでも彼女に直接尋ねた。
「これはだれの墓のつもり」
「おまえも知っているだろう。わたしの墓さ」
「わかるように説明してほしいわ」
「あの穴は単なる重力井戸じゃなかった」
 魔理沙は重そうに口を開いた。
「もともと、ブラックホールなんて代物を大気中に、自然にさほどの影響をもたらさないで作り出せるはずがないんだ。あの穴は、あの妖怪が持つ独自の能力で生み出した、次元の裂け目だった。一人一種族の、特異な力。いわば、重力と空間を操る程度の能力だな。たぶん、こっちの世界に絶望したあいつが、自分の夢見ていた理想郷に通じる穴をあけようとしたんだろう。吸い込む力は、大気圧の差か、それとも世界自身の存在の密度差から来ていたのかもしれないな。私たちが、中途半端なところで術を阻止したから、けっきょくどこへ通じるトンネルになっていたのかはわからないが」
「それがどうしたの」
 私が聞いていることは、そのことじゃないだろう。
 しばらく黙っていたが、私の言うことを察したらしく、魔理沙も言葉をつないだ。
「てっとりばやく戦力を倍増させるには、じぶんのコピーを作りだして戦いを手伝わせればよい。あの操影の術を編み出した魔導師はそう考えたんだ。わたしはそいつが残した禁呪の本を、ヴワルの地下室からみつけだして研究していた。凝り性なやつだったんだな、その魔導師は。影は単なるコピーじゃない。術者の全記憶を、全知性を完璧にトレースした、いわば分身なんだ」
 彼女の影。魔理沙はあの重力井戸をふさぐために、魔法で自分の影から造りだした分身を使うと説明した。
 そうして、普通の魔法使いに代って危険を負担した彼女そっくりのその幻影は、井戸からの脱出に失敗して飲み込まれていった。
 それは私も目にした。まばたきをする間もないほどの一瞬のできごとだった。
「あのシャドウ・サーバントはわたしと同じ思考、同じ力をもっていた。ほんとうは使うつもりはなかった。知性を持った存在を作りだすことは、とても危険なことだとわかっていたから。影は魔法素子で作られた魔法力のかたまりだが、ある種の補完措置、付随効果つきの術だったんだ。術者自体が消滅したときには、術者の存在を複製できるような」
 私は少し身ぶるいしたかもしれない。森の梢には鳥たちが止まって五月の歌を奏でていた。空が青かった。
「余計なオプションをつけてくれたもんだ。わたしが術をつかったときには、わたしはそのバックアップ機構を抜きにして発動するように、術を改良することができていなかった。術者が死んだときに、単なる魔法素子は大気中のマナを吸収して、術者の体を再構成するようになっていた。あくまで、それは術者の死に際して、術者のスペアとして働くためのフェイルセイフのはずだった。それが発動しなかったときのお互いの誤差は、術の終了時、戦闘が終わった後に影が本体に吸収されることによって保全されるはずだった。けど、もし影が異世界に飛ばされるような事態におちいった場合は。距離よりももっと遠い断絶によって、術者の魂を、マスター側の魔力を感知できない状態になった時は」
 そう言って、魔理沙はこちらを向いた。
「おそらくは影はマスターが死んだと捉える。コピーとして、自分の役目を果たそうとする。つまり、マスターの肉体の再生だ。そうして飛ばされた先の世界が、土も風も水もある世界ならば、その場所のマナを吸収して、受肉の機会を得るだろう。その場合は私とまったく同じ個性を持った、新しい、別個の自我、別個の生命が誕生するってわけだ」
 魔理沙はそう言った。抑揚を付けない静かな声だった。
「わかるかい、霊夢、わかるかい。あの影はわたしそのものだったんだ。わたしと同じように考え、わたしの未来を先に見て死んでいったんだよ」
「生きているかもしれないんでしょ」
「生きていくかもしれないさ。穴の向こう側でね。だがそこはこちら側とは決定的にちがう世界だ。そこにはきみがいないんだ」
 きみ、だなんて。いつもはおまえ、って呼ぶのに。なぜわざわざ言い換えたのだろうか。
 なぜこんな悲しそうな顔をしているのか。
「わたしのだんなも、こどもたちも、弟子たちも、ともだちも、見知った顔も、この愛着のある幻想の大地のなにもかもが、そこにはないんだ」
 私は、縁も所縁もない場所で、このさびしんぼうの魔法使いがどんな気持ちになるかを考えた。
 幻想郷を失った魔理沙は、魔理沙といえるだろうか。
 いえないのだろう。魔法の森に住んでいてこその魔理沙だ。帰る故郷を持つ、幻想郷にいるからこその魔理沙だ。わたしのともだちでいてくれるからこそのまりさなんだ。
 そうだ。私はわかっていた。彼女がこんなにも落ち込んでいるわけを。
 彼女は向こう側へと追いやってしまった、もう一人の自分に、その運命に自分自身を投影しているのだ。
 そうして、その落ち込みは少し私に移ったようだ。
「わたしは送ってしまった、追いやってしまった。もう一人のじぶんを、孤独と狂気の穴の底へと」
 そう言って、魔理沙はまた伏せ目がちになる。

 ……私は彼女の手をにぎった。両手をとった。
 私は何をしているのだろうか。
 親愛の情を示すためには、あるいはいっそ、抱きしめてあげたほうがよかったのかもしれない。
 さきの危険な異変を共に健闘し合い、生き残った戦友同士の抱擁。そんな意味でとらえても、それはごく普通のことだったのかもしれない。
 だけど、自分にはそれはふさわしくなく思えた。博麗の巫女、いやいや博麗霊夢にはそれはふさわしくないんじゃないか。せいぜい手を握ってあげること、そうすることが、自分らしく思えた。
 夏のように暑い春の日だったが、彼女の手は冷たかった。
 魔理沙はどうも恥ずかしいらしく、私の顔を直視できないようだ。
 そんなことをされると、私も恥ずかしくなってきた。
「あのさ。おまえがこういうことしてくれるなんて、その。とっても意外で嬉しいんだけど」
 実際、こいつにはどういう意味がこめられているんだい。
 そう魔理沙はうながしているのだろう。
「わかんないけど。こうしたら、あんたが失った何かを補充できるかもしれないと思って」
 手を通して力が伝わるんじゃないか。影を、半身を失ったことによって空いた欠落を埋めることができるんじゃないか。そういうふうに考えた。
 ばかばかしい、子供っぽい考えのようにも思う。思わずも、頬を赤らめてしまう。
 でも、まあ、たまにはこういうことがあってもいいじゃないの。
 それにしても、年をとってくるとしめっぽくなってくるものだ。
 もう、彼女も私も人間の人生の中盤に差し掛かっている。いくら外見が少女のままとはいえ、やはり精神は老いてきているのだろう。
 魔理沙はさらに顔を伏せていた。帽子のつばに隠れてその目線が見えなかった。
 私は彼女の帽子をそっと取った。
「帰ったら、旦那さんにあまえなさい」
 私はそう言って、彼女の頭をくしゃくしゃしてやった。
「うん」
 彼女はうなずいた。


 それにしても、ここで彼女を慰めてあげたとしても。
 一番の被害者には、あっちへ行ってしまった彼女にとっては何の慰みにもならないのだ。
 私は遠くへ去ってしまったというもう一人の魔理沙のことを考えた。
 あの時、井戸の入口が閉じる前に、魔理沙の影が吸い込まれた時に、私は彼女が私の名前を呼ぶ声を聞いた気がしたのだ。

 もし生きているのならば。
 親しい人々との関係性をすべて断たれたことによって、生まれ故郷へと帰る望みを絶たれたことによって、大きな空白を抱えたまま生きていかなければならない少女が、あの閉じてしまった門の向こう側にいるということになるのだろうか。
 そしてその心の隙間が再び閉じることはもうない。おそらく彼女がこの幻想の大地に帰ってくることは、二度とないだろう。

 私は彼女の声を聞いた気がしたのだ。





 *





 望楼とした砂の絨毯の上で私は目覚めた。
 うだるような熱気。だが、今まで味わったことのない感覚だ。
 舌がひりつく。この大気には水分がほとんどないのだ。
 四肢に力をこめられることに気づき、私は自分が生きていることを確認した。
 起き上がり半腰の姿勢になり、目を開いてみて、あたりを眺める。
 遠くにはかげろうがたちこめ、空には雲ひとつない。見渡す限りの砂の山が広がっていた。

 ふと、足もとの砂がうごめいているのに気づいた。
 突然、轟音とともに砂煙が舞い上がった。
 地面が爆発した。
 そして私の目の前に、七、八メートルはあろうかという、巨大なミミズのような化け物があらわれた。
 おそらくは、捕食行動に猛り狂った自生の獣なのだろう。
 姿かたちからして、のづちみたいなものか。
 私は条件反射で懐を探り、使い慣れたあいつを取り出す。八角形の金属質な手触りを確かに感じる。
 そいつをできる限りの素早さで目の前に向ける。
 化け物は不細工な口を広げて私を飲み込もうとしている寸前だ。
 だけど、一足遅かったね。
 言いなれた文句を唱える。
 恋符、マスタースパーク。


 耐えがたい臓物臭を放つ化け物が倒れた砂漠の上で、私はへたりこみ、ひとり途方にくれて物思いに沈んでいた。
 化け物の全身像を眺め見て、私はため息をつく。本当に生き物なのか疑ってしまう、今までに見たことのない形だ。グロテスクでいびつな上に、七色にぎらぎらと光る突起物が芋虫のような体にいくつもついているし、私がそいつのどてっぱらにあけた風穴からは、紫とどくだみを混ぜ合わせたような色の腐汁がどっぷりと流れ出てきている。
 やれやれ。このような気色の悪いとんちきな化け物が出てくる土地を、新たなすみかとしなければならないとは。 
 マスターは律儀にも、私の分の八卦炉までコピーしてくれていた。まあ、これがあるから護身には事欠かないが。
 それにしてもひどい話だ。無責任な話だ。もう一人の自分のやったことながら。あきれはててしまう。

 涙ぐんでしまって、鼻に水が溜まったが、必至でぬぐって顔を崩さないようにしようと思った。
 せめて、この先マスターの方が、私の代わりにあの郷で家族に囲まれて幸せに生きてくれれば、それが私にとってのなぐさめになるだろうか。

 そう考えたあとで、私は自分の帽子をひろいあげ、ついた砂を手ではらってから目深にかぶりなおした。
 そしてもう一度立ち上がることを決めたあと、砂礫の地平線の向こうに見える、ガラス色をしたきらきらと光る尖塔の群れのようなものを目がけて足を踏み出すことにした。
 白粒の大地は踏みしめると、虫の鳴き声のような音がし、沈み込んで歩きにくかった。

 太陽は熱く黄色く輝き、放射線が私の背に降り注いでいた。
 一陣の風が吹き、砂煙がもうもうと噴き上げた。
 私は風の歌を聴いた。
 私はまた一人になった。
 私はまた何かを求めて生きるだろう。



 自分の中では東方って、ノスタルジーを感じさせるシューティング(妖々夢ステージ2とか特に)なのですが、他の方にとってはどうなのでしょうか。

 それにしても、東方っぽいものを書こうと思っていたのに、気がつくとSFっぽいなにかになっていた。
 むう、斬るとこずっぱり斬っていただきたい。お願い申す。
NEW試固型文
作品情報
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最新
投稿日時:
2007/05/13 00:48:19
更新日時:
2007/06/04 03:08:32
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1. 3 A・D・R ■2007/05/13 15:31:27
心理描写が非常によくできていたように思います。
でも、導入が少し強引なように感じたのと、そちらの知識がないとよくわからないような箇所が見受けられたような…
2. 6 shinsokku ■2007/05/16 00:55:05
ShrineFantasyですね。東方的。

ちょいと回想が長かったような、気も。
3. 7 爪影 ■2007/05/16 14:25:11
 願わくば、彼女の進む先に――
4. 7 反魂 ■2007/05/17 03:16:26
実にSFです。
ちょっと序盤のモノローグが長すぎるというか似たような描写に終始しており、ちょっと冗長感がありました。他にも正直言って割と突っ込み所は多いのですが、しかしそれを跳ね返すくらいのパワーと巧さがありましたので割愛。
ただのSFで終わることなく、綺麗なテーマ性が物語に織り込まれているのは好印象です。霊夢と魔理沙を描いた作品として、直球ながらも抑揚に富んだ作品。丁寧な物語でした。

誤用)気だるような熱気→気だるいような熱気、若しくはうだるような熱気
   気だる、という単語はありません。
5. 5 詩所 ■2007/05/18 22:16:52
霊夢は本当は優しいんだぞっ、って慧音が言ってた。

魔理沙が哲学的な話をしているだけで不思議に感じる。
まあ、結婚したくらいだから普通か。
6. 3 秦稜乃 ■2007/05/24 09:24:28
まるで少年漫画のようだ。いや漫画じゃないですけど。
ストーリーは好きです。ちょっと説明が多かったのが気にかかったぐらいですかね。
ただ、こういう未来も悪くない。こういう彼女達も、悪くないと思いました。
7. 4 人比良 ■2007/05/26 21:02:07
素敵。
向こう側にいったのがどちらかだったのか思考で遊べば、特
に。
8. 2 流砂 ■2007/05/26 21:53:25
突拍子も無さ過ぎる展開に仕方無しと言えば仕方無しではありますが、
説明が、あまりにも、目を逸らしたくなるほどに、知識をひけらかしている。
説得力を持たせる為の知識ならまだしも、突拍子も無いシナリオを補強する
為だけにいちいち説明される現象の数々は、正直苦痛。
高いレベルを持った書き手であろうからこそ非常に残念。
あと、もっと推敲をして所々端折ってる部分を補強して欲しかった。
あまりに飛びぬけたシナリオなので今のままではただの子供の落書き帖。
9. 7 deso ■2007/05/26 23:48:21
SFは大好物です。東方でSF。面白かったです。
かなりオリジナル分が強いですが、個人的にはそこが気に入りました。
10. 8 ■2007/05/27 01:20:35
では、失礼ながら遠慮なく…件のブラックホール消滅作戦は、何か特定の理由がない限り霊夢が引き受けるものなんじゃないでしょうか?「無重力」の巫女なら、一切の危険なしに行えることなわけですから。その辺り、違和感がありました。ですから、ブラックホールと表現してしまうのはまずかったのではないかと思います。

ただ、それを置いておけばこれは霊夢と魔理沙の人生のifとしては面白かったです。
11. 7 blankii ■2007/05/27 11:13:55
 微妙に似たネタを使った私としては、ああ料理の仕方次第でこうも美味しくなるのね、と。
 走馬灯じみた何かの理解は、ブラックホール(じみた何か)に吸い込まれていく光子が、逆流する影魔理沙の目に入った、とかいうので良いのかしら。ともあれ、面白かったのは間違いない。
12. 6 椒良徳 ■2007/05/27 19:56:32
?の後に文章が続くときにはスペースを入れるものだと思います。
 さて、そんなことは置いておいて、内容に関してですが、ほんまにSFですな。角速度や運動量と言った言葉がさらさらとでてくるあたり、理系のかたかSFファンとお見受けする。ただ、手に汗にぎるというには力不足だし、切ない物語というにもちょっとなんか違うし、感動の、は関係ないし、どこか中途半端な印象が否めません。一人称なのにどこか淡々とした文章の所為かもしれません。折角の一人称なのですから、もっと情念をこめたほうが良いかも知れません。
13. 3 木村圭 ■2007/05/27 23:38:08
ブラックホールに関する科学的な話はもうちょっと端折っても良いと思うんですが、そんな些細なことより規則性の無い魔理沙の一人称が気になります。
「私」が影で「わたし」がオリジナルなのかと思えばそうでもないようですし、どうも理由がよく分かりません。
他の部分も妙に平仮名が多い変な文章になってますし、それに意味があるのかといえば無さそうだし、内容以外で酷く損をしている気がしました。
14. 7 らくがん屋 ■2007/05/29 10:50:51
斬新で面白い。ただ、数十年後の物語に重きが置かれることでもう一つの話の核である重力井戸の方の印象が薄くなっている気はします。まあ、それで良かったのかもしれません。そのへん判断するのは私以外の不特定多数殿に任せたいと思います。
15. 4 鼠@石景山 ■2007/05/30 01:46:14
業子力学とまで断じたくはないけど、ちょっとなー。東方はなんでもありとも言うものですが。
説明が長いのがちょっと。なんか「穴」ってよりは「影」って感じ。
16. 4 いむぜん ■2007/05/30 02:31:05
うん、SF。
スウィングハイとか、角度がどうとうか、知らないと分からんよなー。どれだけ致命的か。
平仮名混じりの文章は硬さを緩和できているのだろうか。個人的にはもうちょっと漢字が多くてもいいかも。
コンティニューした時のエンディングみたいな印象。
17. 1 ■2007/05/30 03:21:44

起承転結で言うところの転の部分から話が始まっているので、作品が物語の形をなしていません。
誰と、どんな理由で戦うことになったのか(起の部分に相当)と、
そいつとの具体的なバトル展開(承の部分)を描写する章が最低限必要です。
また、自己複製魔法やワームホールが出てくるくだりがもの凄いご都合主義展開なので、ここも事前に伏線を張っておいて、あらかじめそういうものが出てくることを匂わせておく必要があります。
書きたいところだけ書いてハイ完成、という作り方をした印象を受けましたので、次回はちゃんと頭から尻尾まで丁寧に描き上げるようにしましょう。
確かに小説で一番面白いのは「ヤマ場」ですが、そこに至るまでの平凡な序章があってはじめて、読者はヤマ場を堪能できるのです。
18. 8 リコーダー ■2007/05/30 16:08:01
寂寥感というのか、こういうの。
19. フリーレス 眼帯因幡 ■2007/05/30 17:43:19
SFは良いのですが、この作品はその……未完成のように思えます。
すみません、冒頭の展開が急すぎることに違和感を覚えてから、ラストの物足りなさがそう感じさせました。
例えるなら、書籍の上の後半からいきなり読まされて、下巻は無いんだと言われたような気持ちです。
ここからが面白いのに! と叫びたくなります。
申し訳ないのですが、評価することが出来ません。フリーレスにて失礼します。
20. 5 K.M ■2007/05/30 18:59:31
SFっぽいとのことですが、のべつ違和感を感じるほどではありませんでした。
願うことが許されるならば、「影」は強く生き延びてほしいものです。
21. 4 二俣 ■2007/05/30 20:45:18
テーマはホーキング輻射的による虚と実の発生、なるほどSFだと解釈しました…見当外れだったらごめんなさい。
SFテイストを取り入れるのはいい試みだと思うと同時に、今回の設定に関してはさすがにこれはちょっと違和感があるかなー、とも。
22. 4 たくじ ■2007/05/30 22:24:02
この話に出てくる異変やその首謀者というのがずいぶん都合のいい存在だなと思いました。魔理沙の家族や霊夢の結納の話も取ってつけたような感じでしっくりきませんでした。でも話の流れは好きです。新たな世界でとにかく生きていこうとする魔理沙は魔理沙らしいなぁ。
23. 5 藤村る ■2007/05/30 23:38:18
 最後の方、デモンベイン思い出しました。
 なんというか、いろいろ書こうとしたことが多すぎてまとまってなかった印象。
 魔理沙と霊夢のらぶらぶちゅっちゅなのか、さよならマリサなのか。
24. 7 時計屋 ■2007/05/30 23:44:58
最後のシーンが良いなぁ。
何もかも無くしてしまった主人公がそれでも一歩を踏み出していく。
そんなパターンが好きです。勇気づけられます。

説明が多かったのですが、丁寧に分かりやすく書いてあったため、
読むのは苦になりませんでした。
ただ、やはり全体に占める割合が大きすぎたため、
SSのバランスを崩してしまっているようにも見受けられました。

後はちょっと詰め込みすぎて、文章にも構成にも遊びがないかな、と感じました。
東方らしさが無いと言われるならば、そこにも原因があるかもしれません。
25. フリーレス 乳脂固形分 ■2007/06/10 19:54:06

>blankii様
好意的に解釈していただけて良かったです。
走馬灯についてはノスタルジーを感じてもらいたいがための演出で、実はあまりブラックホールと絡めて考えていませんでした。
しかし事象の地平線ではすべての物理法則が意味をなさなくなるのだから、何が起こっても不思議ではないでしょう。
Shadow魔理沙はタンホイザーゲートの近くで、闇の中に輝くCビームを見たのかもしれません。

>椒良徳様
セリフの疑問符の部分ですね。これは失念していました、気をつけます。
SFが三度の飯より大好きっ子で、説得力のあるSFをいつか書きたくて大学数学を独学でやっているぐらいです。
ちょっと情念をこめた文章というのは苦手です……人生というのは驚くほど淡々としている、というのが信条ですので。
ただ、そういうのが必要なときも必ず出てくるでしょう。練習したいと思います。

>木村圭様
魔理沙の一人称、「私」が影で「わたし」がオリジナルです。それで統一したつもりだったのですが。
たぶん、墓の前で魔理沙が影を思うところが問題の部分だと思います。ここで私にするかわたしにするかを非常に悩みました。
平仮名を多くしたのは、ノスタルジーを感じさせようと思ってそうしたのですが。どうも上手くできなかったようです。

>らくがん屋様
斬新と言っていただけたのは恐縮です。重力井戸の印象、薄くなってますか。
実際のところ自分の作品に落とし込みたいテーマはというか匂わせたいものは「郷愁」なので、数十年後の話に重きを置いてしまったのは
私の願望のあらわれかもしれません。

>鼠@石景山様
業子力学とは銃夢に出てくるノヴァ博士が主張しているアレですか? 説明が長いの良くないですね。
穴より影? うむむ、ちょっとおっしゃっていることが全部理解できませんでした。

>いむぜん様
興味のない奴は読むなと言う、SFの基本スタンスだけを守ってしまったこんぺとしては失敗作かもしれません。
はい、明らかにこの未来は失敗時のものですね。救われない人間が一人できてしまっています。
自分はこうやって不幸のシュミレートをあらかじめしておけるのもSFというジャンルの面白さだと思っています。

>執様
私は「物語は必ずしも起承転結の原則に従わなくともよい」と思っています。
ただ、「よほどの自信や技術がない限りは原則には従うべきである」とも考えています。
で、実際これを書いたときに起承転結を意識していたのかというと、正直意識していませんでした、ごめんなさい。
ブラックホールの描写とラストシーンの美しさだけにこだわりすぎて、後のことはおざなりになっていました。
反省しています、勉強になりました。

>リコーダー様
スティーブン・キングがレイ・ブラッドベリの文章を評するときに使った、
「郷愁に濁った油膜レンズを通して見たかのような文体と物語」という表現。それが今回の私のやりたかったことです。

>眼帯因幡様
冒頭の展開、急すぎますか。急な方が読者を引き込めるかと思ったのですが…勘違いだったようです。

>K.M様
東方感を若干でも感じていただけましたら幸いです。
「影」はきっと新しい幸せを見つけるかもしれません。
だけど失った故郷の面影は、今後の人生の折に触れて彼女の心に陰を落とすでしょう。

>二俣様
ホーキング放射は単なる熱量放射なので、不思議効果があるかどうかは謎ですが、いろいろミステリーがあると考えた方が宇宙は楽しく考えられますね。
ちょっと設定に無理があったかも知れませんね。でも東方SFには今後もチャレンジしていきたいと思います。

>たくじ様
たしかに取ってつけたかのような能力を持ったくろまく。うーん、全然気付きませんでした。
ちょい、回想については難ありですね。自分で読み返しても、紅魔館の連中には触れているのに、冥界や永遠亭の連中について触れていないのは
どういう薄情だと突っ込みたくなってきました。
魔理沙の姿勢については、自分でも気に入っています。なんとかして生き抜いていこうと考える本当の精神的強さを、女性には感じてしまいます。

>藤村る様
デモンベインという作品については余り存じ上げません。申し訳ない。
いろいろ書きたいこと多すぎですね。確かにまとまりがなく、散逸的です。
らぶらぶ、苦悩、さよならマリサ、ノスタルジー、どれも書きたくてどれも中途半端。
もう少し視点を絞ってみるべきでしたでしょうか。

>時計屋様
ラストシーン、気に行っていただけたら幸いです。
自分でも力を入れたところなので。
書きたいシーンが最初に合って、それをふくらませていくのが自分の書き方なので、気を付けないと構成がいい加減になりがちです。
文章は余り遊びたくないのですが、堅苦しい印象を持たれるのも嫌だしなあ。うーん、悩みどころです。


最後に、読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
いろいろと問題のある作品を最後まで読んでいただいて、本当に感謝しています。
参加した皆様、お疲れ様です。
またいつかお会いできる日を心待ちにしております。

26. フリーレス 乳脂固形分 ■2007/06/10 19:54:37

お読みいただきました皆様方、本当にありがとうございました。
コメントを頂いた皆様方にはなおさら感謝感激です。
今回が初参加ですが、この場に居られることを誇らしく思います。


>A・D・R様
おっしゃる通りでございます、趣味に走りすぎました。
だけど後悔はしていない……書きたいことは書きました……それがダメなんだけど。
反省はしました、次にいかしたいと思います。

>shinsokku様
東方的と言っていただけて、とても嬉しいです。
神社幻想物語、ちょっとSFとしても中途半端だったかもしれません。色々中途半端。
回想、短くまとめることができませんでした。うーん、難しいですねえ。不要、不必要の判断がいまいち。

>爪影様
――泣けてきました……。ありがとう。

>反魂様
突っ込みどころ満載ですね。SF的にも物語的にも。申し訳ない……。
テーマ性があると言っていただけたことにとても感激しました。
もっと物語のほうもきれいにまとめられればよかったのですが。
語彙力不足です…あまり本気で日本語を勉強したことのない経歴を恥ずかしく思います。精進します。

>詩所様
実は霊夢は友達思いの優しい少女。冷たい人間であるといくら書かれようがそう信じます。
「独身生活10年で悟り得ぬことが、一週間の結婚生活で悟れるものさ」との名言もありますし。
大きな節目を迎えて魔理沙も精神的に成長したのだと勝手に妄想しておりました。

>秦稜乃様
少年漫画、好きです。学生時代は漫画ライフでした。週刊誌はだいたい全紙読んでいます。
説明多いのが癖になってきています。気をつけようと思います。
彼女たちの親交はずっと深く続いていくだろうと信じています。

>人比良様
それはまさしくあなたの好みそうな展開です、としか言えませんねw
実は私も鬱展開や倒錯感のある話はかなり好きです。
あなたのいたずら屋さんな作風、いつも楽しませていただいています。
自分もいつかそういうのやってみたいと思ってます。

>流砂様
うーん、説明長すぎるとはみなさんに思われているようです。
どうも私は仕事や趣味の影響か、長い説明がそれほど苦にならない性質のようです。
実際好きな海外ハードSFだと1ページ以上丸々登場人物のセリフで種明かしという作品もごろごろあるので、
それが普通だと思っていました。
だけどこんぺの場でそれを認めてくれとは全く検討違いもはなはだしいですね…反省しています。
そういう感覚は世間一般から乖離してしまっているかもしれません。気をつけます。

>deso様
尊敬している方に面白いと言ってもらえることほど嬉しいことはありません。ありがとうございます。
いつもオリジナル分が強すぎてしまい、まいっています。
最近オリジナルじゃない東方SSというのはどんなものを指すのだろうと悩みがちです。

>翼様
「無重力の巫女」という表現は確かに見かけます。
ですが、これが本当に重力を無効化しているためにつけられた呼称なのか、それとも霊夢の力を比喩的に表現したものなのかが
わからなかったのです。あとは、重力を軽減できるとしても、どれくらいの量を軽減できるのかが問題になってくると思います。
霊夢の不明瞭な力にまかせるよりは、速力があっていざという時にも高速移動用のスペルを行使できる魔理沙が作戦を遂行するのが
最良であると考えました。
面白いと言っていただけて、とても嬉しいです。
こんな未来予報もあってもいいんじゃないかと思いました。できれば、こんな未来は回避したいですが。
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