東方埋騒夢

作品集: 最新 投稿日時: 2007/05/13 07:09:08 更新日時: 2007/06/05 01:05:13 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00



霊夢が布巾を除けると視界が白く隠された。
別に玉手箱ではない。
もうもうと湯気を上げているのは釜であり、その中に納まっているのは炊き立てのご飯である。
「わぁ……」
午前の博麗神社の台所には、普段着の上に割烹着を着た霊夢と魔理沙の姿がある。
「よーし、じゃあ一気にいくぜ」
「熱いわよ、気をつけてね」
「そっちこそな」
蒸らしを終え、釜から飯びつへと移したご飯にしゃもじを入れ、二人は取り掛かった。



■○■



快晴。
白詰草が咲き乱れる丘の上。
見上げる空には僅かに流れる雲。肌に感じるは心地よい風。
遠くには大蝦蟇の池が見え、青空を映しているのが実に味わい深い。
蝶々が飛び、ぴーよろろろろ、とどこからともなく聞こえてくる。
のどかだ。完膚なきまでにのどかだ。
田舎の野山を描けと言われて、これ以上の風景はそうそう出てくるまい。

春の田植えの折、豊作祈願の祈祷をした霊夢は里から謝礼として食料を貰い受けていた。
久々の白米。
五穀米どころか雑穀米を主食としている霊夢にとっては、その白い輝きはまさに宝。
すぐに食べてしまうのは勿体ないが、放って置けば宴会に訪れるならず者達に無為に消費されてしまう。
他人に食べられてしまう位なら、自分の手で引導を渡したい。
そして、どうせ食べるなら普段よりも美味しく頂きたい。
そんなわけで魔理沙と連れ立って、蝦蟇の大池の近くの小高い丘までピクニックに来ていた。
白と緑の絨毯に座り込む魔理沙の帽子には白詰草の花冠が飾られており、霊夢の襟元にも同様の輪がかけられている。
先程まで妖精と一緒になって作ったものである。
悪戯好きの妖精とはいえ、それ以前に楽しい事全般が好きなのだ。
楽しげに花飾りを作る二人を興味津々といった様子で見ていたので、霊夢は招き寄せ、作り方を教えてあげた。
普段はちょっかいを出したりこらしめられたりしている間柄ではあるが、偶にはこんな事もある。
精神的に満たされている霊夢は、今はどこまでも慈愛に満ちていた。
今も少し向こうで三、四人の妖精が花飾りを作っているのが見える。
霊夢はそれを優しく眺めていたが、魔理沙に振り向いた。
「そろそろお昼にしましょ」

小高い丘の頂き。
一等見晴らしの良い場所に陣取ると、霊夢達は小荷物を広げる。
竹の水筒と、小さな包みが二つ。
「はい、魔理沙の分」
霊夢と魔理沙は池で汲んでおいた水で手ぬぐいを絞り、軽く手を洗う。
包みを開ければ、現れるのは竹の皮で包んだおむすびだ。
小振りのそれは三角形で、数は四つ。
海苔を巻いてあるものが二つ、巻いていない白いままの物が二つ。
「しっとりとした海苔もいいんだが、やっぱり、パリパリしてるのも捨てがたいよなー」
並んだ四つの三角に、にへら、と表情を崩した魔理沙は八卦炉を取り出した。
「言わずもがなよ。じゃあこれ、お願いね」
短冊状に切られた海苔を渡す。
受け取った魔理沙は、炉にごく細い炎を灯すと海苔を炙り出す。
「おおー、いい感じだぜー」
ちりちり、と微かな音を立てて海苔が炙られる。ほどなくして香ばしい匂いが辺りに漂う。
「頃合だぜ」
期待に笑みを抑えきれない魔理沙は、熱を残す海苔をそのまま齧る。
ぱりっ、と小気味良い音が弾け、海苔の焼き上がりを知らせる。
「あ、ちょっと。全部食べたりしないでよね?」
「むぃー」
パリパリと海苔を齧る魔理沙は、霊夢の分を差し出す。焼きたての海苔はほんのりと熱を保っていた。
手早く巻き上げれば、しっとり海苔とぱりぱり海苔の二種のおむすびが揃う事になる。
もはや我慢ならない。いや、待つ必要はどこにもない。
合掌。
「「いただきます」」
満面の笑みを浮かべて、はしたなく大きく口を開けて。
二人はおむすびに齧り付いた。
誰が何と言おうと、おむすびは齧り付くものだ。
塩と海苔で身を飾るおむすびの供は漬物と梅干。いたってシンプルだが、ここでの主役は白米である。
「うあー、塩加減が絶妙だな、さすが霊夢だぜ」
「魔理沙の握ったのも結構いけるわよ、それに焼きたての海苔を巻くなんて贅沢……どうなのよ!?」
「霊夢は幸せのあまり、テンションがおかしな事になりつつあるらしい」
「その説明口調やめなさいよ。いいじゃない、美味しいんだから」
むくれる霊夢だったが、すぐに相好を崩した。この程度では霊夢の幸せインジケーターは下がらないらしい。
魔理沙も独り暮らしが板についているが、これでなかなか食生活には貧窮している。
魔法の森には食べられる木の実もあるし、アリスのところや紅魔館に食事をたかりに行くこともある。
それでも、やはり根は和食党。白米が恋しくなることもある。
白米百パーセントのおむすびを外で食べる醍醐味は、なかなか味わえる物ではないのは承知している。
飯そのものを楽しむなら、おむすびと言う選択は限りなくベストに近く、そしておむすびを食べるなら景色のよい所がいい。
行儀が悪いと咎める者もなく。
二人は大口を開けておむすびにかぶりつき、栗鼠のように頬を膨らませて、もぐもぐと味わう。
見た目は白と黒。
しかし、紫蘇で染められた梅干を添えれば、紅と白にもなる。
「たまにはこういうのもいいわねー」
「あー。たまにはこういうのもいいなー」

広がる景色を楽しむ。渡る風を愛でる。
幻想郷を彩る豊かな四季、その中でも霊夢は春が好きだ。
布団から出るのが難しい季節でもあるが、桜をはじめ様々な花が咲く芽吹きの季節。
暖かい日差し、生命の息吹を感じさせる始まりの季節。
常春の巫女と称されるのも、そんなに悪い事じゃないかも知れない、と思う。
噛み締める米の味はどこまでも芳醇で、酒でもないのに二人を酔わせる。
魔理沙の黒い服が日の光を受けて熱を帯びている。
ぽかぽか陽気は汗ばむ一歩手前。春の日差しは心地よい。
隣を見れば、おむすびを頬張る霊夢。
その平和に緩みきった顔を眺めていると、ふと、ある考えが浮かんだ。
どうして霊夢の周囲にあんな剣呑な連中が集まるのかとも思っていたが、春の様に穏やかな巫女は、春という季節と同じように、誰からも嫌われる事がないのかも知れない。
夏巫女って柄じゃないし、秋なんて乙女チックな季節も似合わない。冬は私が苦手だからダメ。
ほら、やっぱり春が一番しっくり来る。
「ん? なに?」
思わず見つめていたらしい。霊夢がこちらを向く。
「いやー、なんでもないぜ? ただ霊夢はやっぱり春だなーって思っただけだぜ」
「なぁに、それ」
よく使われるからかいの言葉にも霊夢は微笑んだまま。
「あ、魔理沙ご飯粒ついてる」
霊夢が小指を伸ばしてくる。
「む……まあ、気がつかないくらいに美味いおむすびだって事だぜ」
右の頬に付いていたらしい飯粒は、霊夢の小指に移り、
「あ」
霊夢はそのままそれを自分の口に運んだ。
「ん?」
小指の先を咥えたままの霊夢の仕草はどこか子供じみていて、しかし魔理沙の胸は高鳴った。
「あ、いや……なんでもないぜ」
「残さず味わいなさいよねー」
気にした風も無く微笑む霊夢。
なんだろう、何時も見ているはずの霊夢の顔が違って見える。
さっき霊夢の事を考えていたからだろうか。
考えていたらなんだか顔が熱くなって来た。
魔理沙は、それを誤魔化すようにおむすびを闇雲に頬張る。
「ぐ!」
詰まった。
「もう、やたらと頬張るからよ」
胸を叩いて呻く魔理沙に呆れつつ、霊夢は水筒に手を伸ばす。
傍らには水を汲んだ物とは別に、麦茶が入っている水筒がある。
その時、事件は起きた。
「あ」
膝の上に広げていた包みから、おむすびが一つ、転がり落ちたのである。
「あ!」
霊夢のおむすびが落ちる。
いや、落ちた。
「ちょっと!」
丘の上だったのが災いした。
地面に落下したおむすびは、そのまま斜面を転がり始めたのだ。
「ちょっと!!」
霊夢の制止などお構いなしに、白の三角は転がり去ろうとする。
霊夢は慌てて膝の上の荷物を下ろし、転がり去ろうとするおむすびを追いかける。
追走する霊夢の頭には、地面に落ちてしまえばもう食べられないなどと言う考えは無い。
既にあのおむすびは霊夢の中では食べ物の枠を超え、宝物の域にまで上り詰めているのだ。
どうあっても失う事は許されなかった。
しかし、適度に丸みを帯びた三角形は型崩れを起こす事無く転がっていく。
「ちょ……! 待ちなさいってば!!」
転がるように中腰で追う霊夢の脳裏を、『坂+おむすび=』と言う不吉な式がよぎる。
近所付き合いに御伽噺の世界の住人がいるのだ、ここでそれに近いシチュエーションが舞い込んでも不思議ではない。
果たして、悪い予感が的中した。
「のおおおおおおおおお!?」
穴である。
下り斜面の途中、あと五メートルくらい先に窪みがあるのが目に入る。
おにぎりの転がる勢いとその進路は、計算とかそんなもの必要が無いくらいに直行コースを示していた。
弾幕ごっこで偶に感じる「被弾する予感」と同質の冷たさが霊夢の胃の腑に忍び寄る。
咄嗟に、便利な能力を持つ友人知人が意識を掠めた。
だが、時間を止める事も、音よりも早く走る事も出来ない。あ、狂気に染まれば地に落ちたおむすびでも気にせず食べられるかも。
「ッ!!」
余計な思考で緩んだ速度を気合とガッツと根性で加速する。
決死の瞬間、霊夢は意を決し、頭からダイブした。
それは見事なヘッドダイビング。リボンを、黒髪を、改造巫女服をなびかせて霊夢は跳ぶ。
時間が引き延ばされたような感覚。
血中のアドレナリン濃度が上昇し、霊夢の周囲のあらゆる物がその動きを緩慢なものにしていく。
手を伸ばした。
(届く……!)
こういう時は懇願ではなく、確たる結果をイメージした方が良い結果が出る。霊夢は経験でそれを知っている。
しかし、覆せない現実がある事もまた、霊夢は知っている。
伸ばした霊夢の手、白魚のような指の先に確かにおむすびは乗ったが、砂をまぶされ変わり果てたそれは、手の平の上に留まる事をしなかった。
スローモーションの世界で、霊夢の視線の先。
「あっ、あ……!」
おむすびは一度弾み、穴の中に姿を消した。
「いやああああああああ!!」
そのままの勢いで滑り込んだ霊夢は、服が砂埃まみれになったのも構わず這い蹲り、穴を覗き込んだ。
霊夢の両の腕で輪を作ったくらいの大きさの穴は、底が見えないほどに深い。
「ッ!!」
覗き込んだ先には見通せぬ闇があるだけで、霊夢のリボンがふわりと揺れた。
「返して! 私の白米! 私のおむすびぃぃぃぃぃいいいい!!!」
春の野山に魂切る絶叫が響いた。
しかし、無重力の巫女の手から離れた白の三角は、闇の底から戻ってくることはない。
「う、うう……うううううぅぅぅ」
地面に仰臥し、咽び泣く少女。
その慟哭は、まるで目の前で最愛の人を失ったかのような哀切に満ちている。
一部始終を見ていた魔理沙は、言葉をかけるべきか悩んだ。
しかし、霊夢の苦しみが分かるのは自分ひとりだ。
辛いのは分かる、自分だって同じ事になれば相当に落ち込むだろう。
でも、落ち込んでいる霊夢を見ているのはもっと辛かった。
「霊夢、もう諦めろって……大地に落ちたものは地に帰そうぜ」
「いやよ! あの子は私の助けを待っているのよ!!」
髪を振り乱し、噛み付くように叫ぶ霊夢。零れた滴が舞う。
「いくら霊夢だって、砂まみれになったおむすびは食えないだろうに」
「洗うわ! ご飯粒のひとつひとつまで!!」
どんだけだ。
叫んだ霊夢はまた蹲り、呻くように泣き出す。
周囲からは音が失せていた。
いつの間にか鳥のさえずりは聞こえなくなり、妖精達も何かに怯えるように姿を消している。
「……」
魔理沙は屈みこむと、霊夢の背中を優しくさする。
「霊夢、元気だせって。私のおむすびを分けてあげるから、な?」
「ううぅ、ありがとう、魔理沙……」
泣きじゃくっていたれ霊夢はのろのろと体を起こすと、涙で濡れた顔を袖で顔を拭こうとする。
「あー、もー、しょうがないなー霊夢は」
本気で泣いてたんだ、と、先程の叫びに薄ら寒い物を感じたが、魔理沙は取り出したハンカチで霊夢の顔を拭いてやる。
柔らかいほっぺたに残る涙の跡を拭い、軽く髪も整える。
服についた砂埃を払う。
為すがままの霊夢はまるで幼子のようだった。

「こんな穴は私が塞いでやるぜ」
魔理沙は手頃な石を拾うと、三節ほどの呪文を唱え、そして放り投げた。
地に落ちた石は光を帯びると、むくむくと大きくなり、最終的に二メートルほどの大きさの石人形へと変化する。
顔もない石の人型は、造物主たる魔理沙に向き直ると動きを止めた。
魔理沙は、出来上がった即製のゴーレムに満足気に頷くと命令を下す。
石造りの従者は、一抱えはあろうかと言う大石を持ち上げると、揺ぎ無い足取りで穴まで歩いていき、そのまま無造作に石を穴に落とした。
鈍く篭った重音と共に穴は完全に塞がれ、穴の周囲に舞っている砂煙が石の落ちた衝撃を物語っていた。
「これで悪は潰えたぜ」
両手を腰に当て高らかに勝利を宣言する魔理沙。
横で様子を見ていた霊夢だが、そのまま戻ろうとする魔理沙を呼び止めた。
「ねえ、これってこのままでいいの?」
一仕事終えた石人形を指差す。
命令が無ければ自発的に動かないのかも知れないが、無人の丘に石の像が建ちっぱなしになっているのはどうかと思う。
「あー、そいつは放って置いて大丈夫だぜ。一時間程度で魔法が切れて元の石に戻るから」
「そ、そうなんだ」
霊夢は功労者を見上げる。
目どころか顔のない造型の簡素な作りの人形だが、なんだか見つめられている気がして、どこか気味が悪かった。
「さ、おむすびが待ってるぜ」
「うん……」
魔理沙に手を引かれ、坂を上っていく霊夢。
帽子があるとはいえ、本来の身長は霊夢の方が高く、しかしその光景は迷子の妹の手を引いていく姉の様でもあった。

「ほい」
魔理沙は残っていた自分のおむすびを半分に割り、霊夢に差し出す。
具は梅干。梅干の入っている方を霊夢に渡す。
これも半分に切った焼き海苔を巻く。
ご飯の白、海苔の黒、梅干の紅。
それはまるで――
「何にやけてるのよ」
「いや、やっぱり美味しいなってな」
「そうね」
ぱりりと音を弾かせて霊夢が肯定する。
アクシデントはあったが、これはこれで貴重な時間だったと魔理沙は思う事にした。
半分こにしたおむすびは、何かを結んでくれた気がしたし。



■○■



ピクニックから数日後。
魔理沙は空を飛んでいた。
それは別段珍しい事ではなく、小柄な魔女の背中に荷物を満載した大きな背負い袋があるのも珍しい事ではない。
今日は図書館からの「借り出し」ではなく、素材の調達に行った帰りだ。
野草の群生地から戻る最中だった魔理沙は、ふと気になってこの前の丘の上を通るコースを選んだ。
空はあの日と変わらないいい天気で、白詰草の絨毯は瑞々しい緑を湛えている。
飛びながら思う。あんな事さえなければ楽しい一日だったはずなのに。
霊夢の泣き顔を思い出して苦い顔になる。
しかし、おむすび一個であれだけ泣ける博麗神社の台所事情にも問題はあるのだろう、と思い直した。
高度を下げ、件の穴を探す。いや、既に塞いであるから探すべきは石か。
しかし魔理沙の目に入って来たのは、石によって塞がれていたはずの穴が前と変わらず口を開けている光景であった。
「……おいおい、ホントかよ」
地上五メートル程度の高さで滞空し、斜面を慎重に観察する。
……あった。
封印というには大仰だが、帰り際、霊夢が腹いせに封印符まで貼った石は、今は斜面の下の方に転がっている。
この光景を見て魔理沙は考える。
重さは結構あったはず。わざわざストーンサーバントに運ばせたくらいだ。
軽く見積もっても四、五十キロはあるだろう。何かの拍子に転がったとは考えにくい。
地震で転がった? ここ最近、大きな地震はない。
妖精の悪戯で? 確かに人にちょっかいを出す事の多い妖精なら悪戯の線も無い話ではないが、非力な妖精にこの重さの石をどうこう出来るとは、ちょっと考えにくい。
では妖怪か? 山寄りの地域であるこの場所なら、力の強い妖怪の所業という事も考えられる。
なるほど、何となくは説得力もある。
容疑が妖怪の気まぐれにまで波及するとなれば、原因など無いに等しい。つまり考えるだけ無駄という事だ。
「……」
箒に座ったまま腕組みする。
いずれにせよ、これを霊夢に知られるのは良くない気がする。
まだこの間の傷が癒えていないだろうから、もしこの事を知ったら、躍起になって穴を塞ぎにくるかもしれない。
ただの穴を封印する為に、封印札を山ほど持って再来するというのは考えにくいが、食べ物の恨みは恐ろしい。
こと、霊夢の米に対する執着は尋常ではないのだ。
「とりあえず穴を調べるか。何か分かるかも、だぜ」

「何が分かるっていうの?」

誰に言うでもなく漏れた言葉だったが、その言葉に答える声があった。
「!?」
独り言に返事をされた事に魔理沙は箒から落ちそうなくらいに驚き、そして声の主の姿を見てもう一度驚いた。
「れ、霊夢!?」
振り向いた魔理沙から五メートルと離れていないところに、霊夢は浮いていた。
いったい何時から? 何の目的で? 魔理沙は声をかけられる瞬間まで気配すら感じなかった。
動揺と疑問符で思考を埋め尽くされた魔女に、巫女は静かに問いかける。
「あれ、あんたの仕業ってわけじゃないでしょうね」
封印に使ったはずの石を玉串で示す。
「そ、そんなわけあるか、私だって今ここに来たところだぜ」
突然現れた霊夢の雰囲気に圧されていた魔理沙だったが、言葉を紡ぐ事でどうにか平静さを取り戻した。
霊夢の口調に詰問の色は無いが、それでも軽口を叩いていい場合ではない事くらいは魔理沙にも分かる。
霊夢からは炭が燻るような不機嫌さが漂っている。
宴会の後始末を押し付けられた時や、寝ている時に訪問した時に見られる、危険の前兆とも言える表情。
こういう時の霊夢に冗談は通用しないのだ。
「いいわ。信じてあげる」
霊夢の怒りの矛先は、あくまであの穴らしい。
自然の地形に怒りの炎を燃やす博麗の巫女というのもどうかと思ったが、確かに不可解ではある。
「まあいいや、これから調べようと思ってた所だぜ」
先に立って着陸する魔理沙。その姿は、逃走の意思が無いという魔理沙のメッセージであり、霊夢に対する身の潔白を示す意思でもある。
霊夢も、魔理沙が箒から降りた時点で犯人の線から外した。
こそこそと悪巧みをする事もある魔理沙だが、当人を前にした所で見苦しい言い訳はしないと知っている。
「それにしてもタイミング良すぎだぜ、なんだってこんな所まで来たんだ」
「なんとなくよ」
なんとなくで背後を取られてはたまったものではない。どう考えても神社からなんとなくで出かける距離ではないのだから尚更だ。
魔理沙は大石の前でしゃがみ込み、不自然な所が無いか調べ始めた。
「……気付いてないかもしれないが、お前、だんだん紫じみてきてるぞ?」
「……気付いてないかもしれないけど、今のであんたの容疑者度数が飛躍的に増加したわよ?」
そう告げる霊夢はにこやかなままだが、よく見れば額に青筋が浮かんでいる。
基本的に温厚極まりない霊夢だが、さすがに紫と似ていると言われるのは心中穏やかではないらしい。
「感情で下手人を挙げるな。それに、いきなり背後に現れるなんて人間離れした真似をしておいて、よく言えたもんだぜ」
「あれは人間じゃないから人間離れしてて当然でしょう」
「どこで聞いてるか知れたもんじゃないぜ?」
噂をすれば影が差すという奴か。霊夢は思わず振り返った。

やいのやいのと騒ぎながらも、魔理沙は石を調べていく。
「封印が解けているのか?」
蓋に使った石を調べていた魔理沙の問いに霊夢が頷く。
確かに簡易の封印で、少し強めの妖力でもぶつければ解けてしまうものだったが、自然石にそんな力はあるまい。
つまり、何者かの手によって解かれたことになる。
「そうね。何か、この穴が塞がってると都合の悪いのが居るみたい」
霊夢の視線を追えば、穴からここまでの地面にこの石が転がった時に出来たと思われる窪みが幾つか見受けられた。
「答えは穴の中ってことか」
「鼠浄土ってこと? ほんとにおとぎ話だったりして」
「正直者にはお宝が、という事だぜ」
しかし穴の入り口は狭く、小柄な霊夢や魔理沙でも入るには無理がある。
どうしたものかと思案する霊夢。
「こんな時は魔理沙さんにお任せだぜ!」
魔理沙は景気よく言い放つと、背負い袋から突き出している棒を掴み、一気に引き抜く。
ガラガラと中で物がぶつかる音がするが、魔理沙は気に留めた風も無い。
「これこそは、偉大なる英雄ギルガメスが愛用した伝説の宝具! っぽい何か!」
背負い袋に入っていたとは思えない長さと大きさのそれは、長い柄のついた道具。
「よくわかんないんだけど、それって凄いの?」
「なんだよ霊夢、ノリが悪いぜ……これでも結構な貴重品なんだぜ?」
掲げていたそれを下ろし、魔理沙がうなだれる。
自慢の道具だったのだろうが、相手がその価値を知らなければあまり意味が無い。
アリス辺りならノリよく「な、なんだってー!」くらいは返してくれるんだが。
見せびらかし甲斐の無い相手だ、と魔理沙は内心で愚痴る。
「でも、それってただのツルハシにしか見えないんだけど」
「あー、そうだろうよ……まあ、見た目は完膚なきまでにツルハシだがな」
魔理沙が取り出した「伝説の宝具」とやらは、土木作業に用いられるツルハシに見えた。
先の金属部分には皮のカバーが被せられているが、見たところ何の変哲もない。
「まあ、百聞は一見にしかずだぜ」
言うが早いか、魔理沙はカバーを外した。
「へぇー……!」
中から現れたのは、山吹色の金属光沢。
おおよそ土木作業に用いるような道具とは思えない、精緻な紋様の刻み込まれた「ツルハシの頭部」であった。
蔦が絡まるような流麗な装飾が施され、槍の穂先のように鋭い先端部は鏡の如くに磨き込まれ、一点の曇りも見えない。
出自は無骨な工具であるはずのそれは、芸術品の域に達していた。
目を丸くしていた霊夢だったが、得意げな顔をしている魔理沙に質問する。
「……確かにすごいんだけど、これって使えるの?」
「あー、大丈夫だぜ。普通の岩盤程度ならなんの問題も無い」
そう言うと、魔理沙は金色のツルハシを軽々と振り上げ、「そりゃ!」と穴の淵に振り下ろした。
先端が軽い音と共に地面に突き刺さり、そこから眩い光が放たれる。
霊夢が目を細めた時には光は収まっており、ツルハシが入った辺りの地面は跡形もなくなっていた。
「へぇー、便利な道具もあるものね、なんに使うかいまいち分かんないけど」
霊夢の的確なツッコミに魔理沙は内心で舌を巻く。
確かに穴を掘だけなら問題ないのだが、鉱石の採掘時にこれを用いると、欲しい物まで一緒に消し去ってしまうという欠点がある。
「魔力を籠めないと、ただの軽くて頑丈なだけのツルハシだけどな」
言いながらも、魔理沙は二撃、三撃と振り下ろす。
同じ数だけストロボのような光が瞬き、その都度穴が拡げられていった。



■○■



魔理沙ご自慢の宝具は、その出番をあっさりと失った。
穴を下り始めてすぐ、五メートルもしない内に縦穴は広がりを見せたのだ。
「結構深いんだな」
魔理沙が箒に乗ったままでも降りられるくらいに広くなった穴は、既にただの穴ではなく地下道の様相を呈している。
闇の底までは結構あった。
見上げる遥か上に入ってきた穴の光が見えるが、親指と人差し指で作れる程度の大きさの輪になっていた。
「暗いわよ」
「ちょっと待て、今明かりをだな」
魔理沙が魔法の短杖を振ると、先端に熱のない光が宿る。
星明りにも似た白光は僅かに闇を払い、二人はお互いの姿を確認できた。
「いよいよ怪しくなってきたぜ」
「ただの廃坑だったりしてね」
二人が降り立った場所は、洞窟というよりは坑道といった風情の地下通路の途中だった。
魔理沙の灯した明かりが照らす地面は、岩がむき出しの硬い岩盤。
木枠で補強された縦三メートル、幅五メートル程度の通路は、二人の左右の闇へと繋がっている。
湿り気を帯びた空気はかび臭く、僅かな空気の対流が他の出入り口の存在を告げていた。
歩くには困らない広さだが、飛ぶには狭い。
そして霊夢が足元を確認したが、そこには米粒ひとつ落ちていなかった。
「どっちに行く?」
「何かあるとしたら下ね」
根拠の無い霊夢の物言いに、魔理沙も根拠無く頷く。
こういう時にこそ霊夢の勘は頼るべきだ。
もっとも、いずれ正解に辿り着くだけで、これが最短でない可能性があることも承知の上だが。
僅かな地面の傾きから斜面を確認すると、二人は迷う事無く闇に踏み出していった。

僅かな明かりを頼りに歩く事、十五分。
「暗いー、狭いー」
「黙って歩けって、確かに暗くて狭いけど」
霊夢の愚痴を聞き流しながら思う。
自分は茸などの採取で洞窟に用事のある事もあるが、霊夢にはそういった用事は無いだろう。
見晴らしのいい所に建つ神社は、悲しい事に風通しもよい。
必然、梅雨時でもなければ湿気とはあまり縁が無く、現在二人が歩いているような暗くて狭くてジメジメした所などは、霊夢の生活圏にはまったくといって良いほど存在していなかった。
知人の住まいは薄暗い所が多いのだが、それでもおおよそ快適に保たれている。
辛うじてフランドールの部屋が地下深くに存在するので、そこまでの道のりは地下道と言えなくも無いが、そことて紅魔館の内部。掃除だって行き届いているし、こんなに湿っぽくは無い。
「慣れの問題なんだろうけどなー」
そう言ってみて、魔理沙は自宅のある森が、意外とワイルドな立地だと言うことに今更ながら思い至った。
都会派とか名乗っている癖にあんな密林に居を構えている奴もいるが、確かに長い事篭っていると人語を忘れてしまいそうになる。
徹夜続きで作業をしていると、大鍋や魔道書と会話を始める自分は意外とヤバいラインに立っているのかもしれない。
「そう言えば、レミリアの所で庭に穴が開いたって話、どうなったの?」
「あー、そんな事もあったなー」
言われて魔理沙は思い出す。

いつだったか、紅魔館の庭に似たような穴が開いた事があった。
調査してみると、中は奇妙で危険な生物の温床と化しており、それがゾロゾロと出てきたのだ。
原因はパチュリーの実験の影響で、魔術廃液で汚染された生物が二足歩をして人を襲う程度には進化していた。
ソレはなんでも食い荒らすからという理由で『イナゴ』と認定呼称され(by美鈴)、紅魔館の台所事情をそこはかとなく脅かした。
メイド長の命により直ちに討伐隊が編成され、その中には実験に加担した魔理沙も組み込まれていた。
地下は空気が澱んでいるからという理由で参加を拒否したパチュリーだったが、討伐隊が出発する時に現れ、
「貴方、箒で殴るでしょ。格闘戦を想定して強化しておいたわ」
魔理沙に箒を手渡した。
それは、尾の部分にチェーンソーを取り付けられ、変わり果てた姿になった相棒。
「ちょ!? お前なんてことを!」
「魔法の使えない状況でも諦めないで、頑張ってきてね」
『GYUWOOOOOOOOON!!!』
箒に装着されたミスリル製のブレードが、日陰の歯車魔女の言葉に応えるかのように元気に吠える。
ほんの少し目を離した隙に、愛用の箒に取り返しの付かない改造を施された魔理沙は大いに凹んだが、突撃戦仕様の箒は不本意ながら狭い坑道内で大活躍だった。
メイド隊と魔法使いは協力して『イナゴ』の巣の奥深くに駆除剤を設置しに行く。
その戦いは熾烈を極めた。
熱いドラマがあった。涙の別れもあった。帰ったら結婚すると言うメイドの死亡フラグを引っこ抜き、しかし極限状態で新たなカップルが誕生したりもした。
だが、固い友情に結ばれて進む一行の冒険は、中継を見ていたレミリアの「飽きたー」の一言であっけなく終焉を迎えた。
パチュリーが入り口から【エレメンタルハーベスター】を誘導設定で山のように送り込むという力技に訴えて強引に決着したのである。
紅魔館の愉快な歴史の一ページに『歯車戦争』として記された一件であり、魔理沙は箒を改造され損であった。

……あんな事にはならないといいなぁ。
魔理沙は思わず手元を見る。
大丈夫、普通の箒だ。

変化の無い通路にそろそろ飽きてきた頃、二人はおもむろに足を止めた。
「……何か聞こえるぜ」
「そうね」
息を潜ませた二人の先から、固いもの同士がぶつかる音が聞こえてくる。
甲高い金属音や、岩の崩れる音。他にも雑多な音が聞こえてくる。
何者か、それも複数で岩盤を掘削でもしているのだろうか。
「虎穴に入らずんば、だぜ」
魔理沙のタクトの先端に灯されていた光が絞られる。蛍灯のような明度になると、魔理沙の服装は白い部分だけ浮かび上がって見えた。
霊夢が僅かに浮かび上がる。足音を消す為だ。
「私が先に立つわ」
「この期に及んで鳥目だとか言わないでくれよな」
魔理沙がニヤリと笑うと、減衰した明かりの中で霊夢が頬を膨らませるのが見えた。
慎重に覗き込む。
下方に広がる空洞は、縦横二十メートル、高さ十メートル弱の空間。
壁には幾つか明かりが提げられており、岩壁を淡いオレンジ色に染めている。
光はランタンの明かりのようにも見えたが、何か魔法的な明かりらしく、空気の流れにも揺らぐ事は無い。
霊夢達が居る穴は通風孔なのか、風が流れ込んできている。
僅かに前髪を揺らしながら霊夢が小声で訊ねた。
「魔理沙、あれって見た事ある?」
「いんや、初めて見るぜ」
二人の視線の先では、岩盤にツルハシやスコップを打ち込み崩れた瓦礫を撤去するという、至極単純な作業を行っている集団があった。
その姿は二足歩行だが、人間とは思えない形をしている。
全身が、光沢の無い黒い人型をした何か。おそらくは妖怪なのだろうが、二人はこの種族を初めて見た。
背丈はまちまちだが、人間と大差ない大きさをしている。
「腰みの」だけを身に着けた全身は真っ黒で、細くて長い尻尾が揺れている。
身体には他に特徴らしい特徴は無かったが、頭部は少し個性的な形をしている。
体に対して不釣合いに大きい頭は、頭頂部の左右に二つの大きな丸いものが付いていた。
顔の部分は黒くなく、普通の肌色を晒しているが、その形状は人間のそれではない。
目や口、鼻といった部品を大きくした顔は、むしろ動物、それも土竜か鼠をコミカルにしたような外見だった。
妖獣、動物の化生。そう思って見れば頭の丸いのも耳と思えなくも無い。
獣耳を持つ知り合いも何人か居るこの二人なら、その認識もあっさりと受け入れられた。
霊夢は、数名(数匹?)の黒い妖怪を指差して魔理沙に問う。
「アレどう思う?」
「おむすびを追いかけて降りたんだから、鼠でいいんじゃないのか? 白くはないけどな」
「何をしてるのかしら?」
「住居の拡張とかじゃないのか?」
確かに住居なら、自分達が入ってきた穴は通風孔かも知れない。
それならば塞いでしまったのは悪い事をしたかもしれない、と霊夢は思った。
「どうしよう?」
「あー、確かになんか無害そうだしなー、ついでに言うと葛篭が出てくるようには見えないぜ」
軽めに答える魔理沙だったが、実はちょっとした懸念がある。
霊夢は、見かけた妖怪を大した理由も無く退治する癖があるのだ。
当人に言わせれば巫女の仕事らしいが、特に理由も無く喧嘩を売られた妖怪はたまったものではない。
なにせ相手は博麗の巫女、街でチンピラにからまれるよりも数段タチが悪い。
更に言うなら、おむすびの一件は霊夢にとって「大した理由」だ。
あの日の霊夢の慟哭を思い起こすと、この想像が決して荒唐無稽なものではないと確信できる。
ひどく原始的な工事風景を見る分には、現状、御伽噺のように歓待されてお土産まで貰えるという展開は望み薄だが、だからと言って無闇に喧嘩を売る事はない。
自分とて博愛をモットーに生きている訳ではないが、なにも彼らの平和な営みを破壊してまで、砂まみれになったおむすびの仇討ちをしようとは思わないのだ。
「まあいいわ」
そんな思考は、霊夢の諦め気味の言葉で中断された。
やれやれといった表情の霊夢は、玉串で肩を軽く叩きながら少し疲れたようしている。
面倒そうな雰囲気を隠そうともしない霊夢の姿に魔理沙は安堵する。
よかった、いつもの霊夢だ。
間違っても復讐に燃える執行者の雰囲気ではない。境内で面倒だと呟きながら掃除しているいつもの霊夢だ。
「ああ、面倒な事になる前にさっさ」
「どのみち退治するんだし」
と帰ろうぜ、と続けるまえに霊夢は断じた。
「へ?」
間の抜けた顔をしている魔理沙に構わず、豪、と霊気が膨れ上がり、霊夢の体が淡く輝き出す。
「ちょ、待てって霊夢!!」
思わず伸ばした魔理沙の手は、しかし霊夢の細い肩の残像を掠めるだけに留まった。
止める間があればこそ。
博麗の巫女は光輝を纏い、工事現場の空洞へと踊りこむ。
「おむすびの恨みーー!!」
巫女の叫びは狭い空間に大いに反響し、まるで雷のように響き渡った。
……ああ、確かに神鳴りかもな……
悄然と納得した魔理沙は、先程の「いつも通り」という自分の判断が正しかった事に今更ながら気が付いた。
霊夢は掃除をしたり、お茶を飲むのと同程度に妖怪退治を考えている。
博麗の巫女にとっては、妖怪退治は日常の一部だという。
魔理沙の思考を遮るかのように、閃光が通路を染め上げる。
影が反転する程の輝きに慌てて覗き込む魔理沙が目にしたのは、飛来する御札の群れだった。
「うわぁ!?」
【夢想封印 散】の発現。
全方位に飛散する御札は、魔理沙が隠れている横穴にも当然飛び込んでくる。
慌てて伏せる魔理沙を刃のような御札が掠め、逃げ遅れた帽子が岩壁に縫い止められた。
メイド長のナイフもかくやという速度だった。
霊夢を中心に花火のように拡散する御札が、作業中だった鼠妖怪たちに容赦なく襲い掛かる。
霊気の火花が踊り、蛇のようにうねる紫電の光は破魔と浄化の光とは思えないほどに禍々しい。
無警告で放たれたスペルカードに、鼠妖怪たちは何の対応も出来ずに討ち果たされていく。
甲高い叫びをあげて逃げ惑う彼らは、まさか限りなく濡れ衣同然の疑いで攻撃を受けているとは思うまい。
いや、そもそもこれを攻撃と認知する暇があったかどうか。
なんにせよ戦端は一方的に開かれ、魔理沙が念仏を唱えるべきか、アーメンと唱えるべきかを悩んでいる間にも、三発、四発と紅白の大花が咲き、豪雨のように御札が降り注ぐ。
爆音が轟き、悲鳴があがり、時に途切れる。そしてまた轟音。時折聞こえる鈍い打撃音は陰陽玉が当たる音だろうか。
伏せたままの魔理沙には、部屋の中の様子は見えない。しかし、見えないだけに効果音だけの世界は余計に情景を想像してしまう。

戦闘とも呼べぬ一方的な蹂躙は、始まった時と同様、唐突に終了した。
「終わったのか……」
安堵からか、思わず声に出ていた。
横穴から魔理沙が見下ろす先には、動くものは無かった。
唯の一人が行なったにしては、やり過ぎの感のある破壊の跡が残るだけ。
御札の着弾した跡は大きく抉られ、まるで猛牛の大群でも走り抜けたかのような有様だ。
平らだったはずの地面は、今は掘削したてのように荒れ果て、その上には哀れな犠牲者達が波打ち際の流木の風情を漂わせて転がっていた。
回避するスペースの限られる閉鎖空間では、生半可な誘導攻撃よりも逃げる場所そのものを奪う範囲攻撃の方が効果的だったらしい。
「……お前、やりすぎだろうに……」
誅戮の現場を足元に、無重力を体現する巫女は涼しい顔をして浮いていた。
「妖怪退治は巫女の仕事なのよ」
「さっき、おむすびがどうとかと聞こえたんだが」
「ああ魔理沙。残念だわ、耳まで森の湿気にやられたのね」
「お前の脳ミソは春で止まったままらしいがな。なんなら腕利きの医者を紹介するぜ? もっとも、全身麻酔から目が覚めたら性別が変わってる位の事は覚悟しとかないといけないらしいが」
ニタリ、と笑みを浮かべる魔理沙。
「偶然ね、私もとってもよく効く薬屋さんを知ってるわ。薬の形態にとっても偏りがある上に、成分の半分が「やさしさ」でもう半分が「開拓精神」で出来ているらしいけど」
くわりと笑みを浮かべる霊夢。
どちらの笑みも友好の意ではなく、肉食獣が威嚇する様相を呈している。
僅かな間睨み合っていた二人だが、どちらからともなく肩の力を抜いた。
「巣穴を丸ごと掃除する気かよ、サービスが過ぎるぜ……」
「妖怪退治は巫女の仕事なのよ……」
霊夢は少し気まずそうな顔をすると視線を逸らす。どうやら考え無しで喧嘩を売ったらしい。
魔理沙もおおよそ勢いで動くが、今日の霊夢はその魔理沙が舌を巻くほど無計画だ。
退治というよりは駆除の色の方が濃かったが、魔理沙は余計な事は言わなかった。
何故なら、複数の足音と思しき騒音が近付いて来ているからである。
「来るわよ」
「原因を作ったのはお前だろうに」
「手助け歓迎中よ」
「私は平和を愛するんだ」
皮肉な笑みを浮かべた魔理沙だが、箒に腰掛けて滑り出してきた。
「背中くらい預かってやるから、無差別の全方位攻撃はやめろよな」
「アンタに任せると、まとめて撃たれそうなのよね」
「お望みとあらばすぐにでも」
「よしなさい」
無駄口を叩いている間に、どやどやと鼠妖怪が押し入ってきた。
隊列を整えようとする今度の一団は、若干だが服装が異なった。
緑色の半ズボンに薄茶色の靴。それに白い手袋を填めて、手には質素な槍を持っている。
先ほどと同じく、甲高い裏声のような声で何事かを交わしている。
「兵隊?」
「よく分からんが、話して済む雰囲気じゃないのは確かだな」
二人揃って肩をすくめる。
ノリは紅魔館に二人してカチ込んだ時と似ているだろうか。
門番をブチのめしたら、館内から武装メイドが溢れ出してきた光景を思い出す。
二人がニヤリと笑ったのと同時。
一人だけ青いズボンを穿いている鼠妖怪の号令で攻撃が開始された。



■○■



名乗るべき名を与えられていない「彼」は、詰め所で休息中に緊急出動の要請を受けた。
日頃の働きが認められて、ようやく緑から青に昇格した矢先の騒動である。
労働中の「ズボン無し」がまた喧嘩でもして暴れているのかと思ったが、報告によると騒動の原因は侵入者らしい。
担当区画ではない地域への出動に首を傾げていると、既に何班もが出動しているとの事だった。
複数班の同時出動は珍しくないが、それでも解決していな所を見るに、どうやら今回の侵入者はかなりの厄介者らしいと判断する。
ここに迷い込む侵入者は多くないが、総じて友好的であった。
少なくともこちらが危害を加えなければ、そして意思の疎通が出来るのならば、大した騒動にはならないのがこれまでの常であった。
しかし、「彼」が急ぐ先からは、間違いなく戦闘の響きが聞こえる。
抗内を不気味に揺らす振動。時折強く響く衝撃。一体どんな妖怪が迷い込んだのだろうか。
以前、化けムカデの巣に穴を開けてしまった時には、多数の「ズボン無し」が食われるという大惨事になった。
あの事件で友と呼べる男を失って、「彼」は警護役に進む事を選んだのだ。
どんな事があろうと、仲間を、そしてこの「国」を護り抜く。
鋼の決意を胸に秘め、「彼」は侵入者の暴れている区画へと飛び込んだ。





【ふーまじーん】

やる気のない宣言だったが、術者の気合と術の効果は関係なく、容赦の無い一撃は新たに現れた一団を蹴散らした。
まるでボーリングのピンのようね、と霊夢はレミリアの所で覚えた遊びを思い出す。
「あー、お前また範囲攻撃使ったな、ずっこいぞ」
「何言ってるの、こんなの早い者勝ちよ。これで私が3ポイントリードだからね」
「くー、なんと卑怯極まりない! 折角助太刀してやってるのに!」
おむすび一つに端を発する報復戦は、いつの間にか撃墜スコア争いと化していた。
ちなみにスコアは霊夢が287、魔理沙が284であり、負けた方が今日の晩御飯の支度することになっている。
決着はもう出てこなくなるか、二人が飽きるまで。
「心配しなくても、なんだか幾らでも湧いてくるし」
「いくらでもって事はないだろ、蟻にしても鼠にしても、巣穴である以上中身は有限だぜ」
「なんで蟻なのよ」
「いや、なんか働きアリと兵隊アリみたいじゃん?」
それって蜂では? と霊夢は首を傾げる。
「よーし、次で挽回するぜー」
「あ、待ちなさいってば」
狭い坑道は可憐で苛烈な侵入者により戦場と変じた。
侵入者である巫女と魔法使いは、倒しても倒しても現れる鼠妖怪に最初こそ慎重に対応していたが、坑内が割合頑丈な事が分かると次第に遠慮が無くなってきていた。
鼠妖怪はタフさに欠けるものの、とにかく数が多い。
交差点に差し掛かる都度、どこからか追っ手が現れるのだ。
これといった策も無く数で押そうとする鼠妖怪達は、申し訳程度に妖弾を放つも、それを数倍にする攻撃を返されて一合と撃ち合う事無く吹き飛ばされていく。
幅の狭い直線通路では魔理沙のレーザーは効果覿面だし、広い部屋では霊夢が放つ、敵味方お構いなしの全包囲攻撃が荒れ狂った。
霊夢の背後を脅かす敵を魔理沙が狙い撃ち、魔理沙の死角に潜む敵をホーミング御札が打ちのめす。
阿吽の呼吸で放たれる攻撃は、ひたすらに数で押す鼠妖怪を押し返し、薙ぎ払っていく。
数で見れば二対多数だが、攻撃能力の差が凄まじい。
例えを挙げるなら「鉄砲水VS水鉄砲」、その位の差があった。
「はい、【陰陽玉〜】」
顕現した陰陽玉はLサイズで、この坑道にはいささか大きさが勝っていた。
床だけでなく、壁に天井にと激しくバウンドする陰陽玉は、現れた一団に襲い掛かる。
甲高い悲鳴をあげて逃げ惑う鼠妖怪は、幾つかの打撃音の後に静かになった。
「今ので295〜」
「いやいや霊夢、今のうち2匹は私のスコアだぜ?」
押し入られた側からすれば、これほど迷惑な話も無かった。
なお、紅魔館や、その他のお屋敷も同様の仕打ちを一度は受けている。
「さあ、次いくわよ」
「お前、おむすびとかどうでもよくなってないか?」



■○■



晩飯当番をかけたスコア争いは順調に続いていたが、唐突に二人の行く手に変化が訪れた。
『この先工事中に付き関係者以外の立ち入りを禁ず』の看板を裏側から通り過ぎれば、そこは整備された大通りへと繋がっている。
「おー、なんだかようやくって感じだぜ」
これまでに踏破してきた部屋の比ではなく、今度の空間は無闇に広かった。
天井までの高さは百メートルはあろうか。
空間を風が舞っているのか、低い振動にも似た音が聴こえる。
薄橙色の明かりを放つ球が天井から下げられており、明るさも保たれている。
道幅も同程度だが、奥行きがすごい。
見える限りで、端まで軽く1キロはありそうだ。
床も形を調えられた石畳が敷かれており、天井までがトンネル状に設えられている。
なるほど、これまで通過してきた区画は工事中と言うのも頷けた。
「魔理沙、あれ」
霊夢の指差す方向には、
「なに……あれは、城なのか?」
洋風の巨大な建造物は、霊夢達の知識が正しければ屋敷というカテゴリーの上位種である「城」のはずだ。
レミリアの館と比較してなお大きいそれは、天井からの弱い光を受け、薄闇の中に聳え立っていた。
白を基調としてまとめられた外観は、まるで宵闇に佇む貴婦人のような気品を感じさせる。
目を凝らせば、屋根や尖塔に独特の歪みが見受けられるが、それは御伽噺の挿絵に描かれるような愛嬌のある歪みであり、決して美観を損なう物ではなかった。
天井を閉ざされた地下の大空間。その中に静かに建つ白亜の城の威容に、二人は束の間、心を奪われた。

「とにかく進んでみるか、なんか居るとしたらあそこだろう」
「そうね、洞窟にも飽きてきた事だし、適当に退治してそろそろ帰りましょう」
責任者が居るとすればあの城だろうというのは、二人の共通の意見だった。
これだけ派手に暴れた以上、もはや歓待は有り得まい。
ならば苦情を申し立てて適当に金品を強奪して帰るまで。
悲しい事に、その程度にはこの二人の生活は貧窮していた。
進軍を再開してみると、城の周囲には他にも建造物があるのが見える。
「なんなのかしら、この辺の変な建物って」
「なんに使う物かなんて、使うヤツが知っていれば済むことだぜ」
霊夢にはそれが何だか分からなかったが、直感で外の技術に依るものだと判断できた。
魔理沙の目からは公園のように見えるそれらの設備は、どれもこれも規模が大きく大人数での使用を前提としているように見える。
駆ける馬の彫像らしきものが沢山固定されている物が薄闇のなかで影だけ見える。
巨人が用いるような大きなティーカップが大量に置かれているが、魔理沙は、これが遊具の類である事を香霖堂で見かけた本によって知っていた。
坑道では途絶える事の無かった鼠妖怪は、ここに来てからは姿を見せず、二人は順調に城へと歩を進めていく。
華奢な足音が石畳の上を弾む。
広い空間になったせいか、空気は坑道とは比較にならないくらい清澄である。
「真っ直ぐ歩きなさいよ」
「いやー、なんかこう、珍しくてなー」
魔理沙はくるくると黒のスカートを翻しながら、先ゆく霊夢に応える。
「先にいくわよ?」
「なんだよ、寄り道はお前の得意技だろうに」
「なんでよ」
「何か異変が起きても、結構関係ない奴らをのしてから進むじゃないか」
「魔理沙、いい言葉があるの。消去法って知ってる?」
「胸張っていうことじゃないがな」
実際、勘と消去法で異変を解決するのだから始末に終えない。魔理沙は内心で嘆息する。

城の全容が見上げなければ視界に入らなくなってきた頃、それは現れた。
「お、なんか偉そうなのが出てきたぜ」
「そうね、なんだか偉そうね」
城に繋がる大通り。
左右に花の無い花壇が並ぶ広場然とした一角に、鼠妖怪の一団が待ち構えていた。
これまでに比べ数が多い上に装備が整っている。
また、これまで見かけた緑ズボンと青ズボン以外に、黄色ズボンも居る。
それらはすべからく武装しており、最前列に並ぶ者は透明な楯を構えている
そして、兵隊鼠よりも少し前。
道路の中央に、唯一武装をしていない姿がある。
燕尾服と思われる漆黒のスーツに清潔さが伺える白のシャツ。
襟元には黄色の蝶ネクタイを隙なく締め、手には白の手袋。
洒脱な紅いズボンの上で輝く金のボタンと磨き上げられた靴は、魔理沙の掲げる光を反射している。
顔のつくりは相変わらず区別が付かないが、今までのして来た奴とは同じ種族とは思えないほどに、気品と風格が感じられる。
時折レミリアや幽々子、輝夜といった「そういう地位」にいる者が見せる独特の気風が伺える。
明らかに格が違うのが出てきた。
立ち止まった二人に、先頭の紅ズボンから声がかかる。
「そこの二人に告げる! どうか戦闘行為を停止してはくれまいか! 我々は平和的解決を望んでいる!」
声は相変わらずの裏声めいた甲高い声だったが、明確に停戦を申し出てきた。
これまでに無い反応に、魔理沙は正面を見たまま霊夢に問う。
「どうする? ああ言ってるぜ」
「あー。どうしたものかしらね、ちょっと飽きてきたってのもあるんだけど」
「同感だぜ」
他人の住処に押し入っておいてあんまりな物言いだが、さしたる理由も無く妖怪退治をする霊夢にとっては、別段珍しい事でもなかった。
ともあれ、相手が何を言うのかは何となくだが興味はある。
何せ初めて見る連中である。一体何が目的でこんな地下施設を作っているのかは訊いておきたい気がする。

二人が交戦の意思が無い胸を伝えると、紅ズボンは鼠軍団を引き上げさせた。
霊夢達がこの地下世界に紛れ込んだ理由を告げると、詫びとして持て成したいと申し出てきたのである。
にわかには信じ難い事だったが、相手は本当に話し合いによる解決を望んでいるらしい。

二人はあれよあれよという間に城内に通された。
城内は絢爛かつ豪華。
紅魔館と似た内装は出自の文明圏が似ているのか。
内部は明かりに満たされ、悪魔の館のような薄暗さは無い。
適度に広い廊下にも幽気の漂う独特の肌寒さは無い。
柔らかい絨毯を軽く踏みつつ歩く霊夢は、横の魔理沙を肘で小突く。
「ちょっと、これって期待できるんじゃない?」
「かもな、これはちょっと予想外だぜ」
そう応える魔理沙だが、袖で口元を隠しつつ含み笑いの気配を撒き散らす霊夢を見て、どうしてこんなにも飢える巫女になってしまったのだろうと思う。
こっそり溜息を吐こうとして、今日の自分は霊夢に振り回されっぱなしだなと苦笑する。
宴会の準備があるという広間までの廊下には、見た事の無い妖精や妖怪が沢山居るのが見られた。
様々な仕事を持って活動しているらしく、その様子は紅魔館や永遠亭と大差ない。
ここだけで一つのコミュニティを形成している感じだ。
幻想郷に幾つかあるお屋敷と似た賑やかさがあるが、ここはそれに輪を掛けて賑やかだった。

宴会、と言うかパーティーの会場に通された。
豪奢なシャンデリアが照らす広々としたフロアはダンスホールらしい。
大理石の紋様が美しい床は磨き上げられ、天井の明かりを映している。
眩しいほどに白いクロスの掛けられたロングテーブルの上では、明らかに貴金属製の燭台の明かりが揺れている。
背もたれの高い椅子に腰掛ければ、少し離れた対面に赤ズボンの姿があった。
「あらためてようこそ地上の人。私はこの城を預かる者。故あって名乗る事の出来ない身だが、ご理解頂けると助かる」
「私は博麗霊夢、巫女よ」
「霧雨魔理沙だ。魔法使いをやってるぜ」
挨拶が済むと、ゆったりめの音楽が控え目に流れ始めた。
会話を妨げる事の無いように配慮されたそれは、鼠妖怪の楽隊が奏でるクラシック。
楽隊はバイオリンだけで二十人を数える規模のものだ。
騒霊三姉妹の演奏くらいしか聴いた事の無い二人は、違いが分からないなりに感心する。
なにせ彼女らの演奏は宴会のBGMがメインで、しかも騒々しさが身上だから。
「しかし、貴方がたには我等の不手際でご迷惑をおかけしたようだ」
頭を下げる赤ズボン。
「あー、まあ事故みたいなもんだしな」
「そうね、運がなかったというか」
「誰かさんは大泣きしてた……いってぇ!」
テーブルの下で霊夢の蹴りが的確に決まった。
事の発端になったあの穴は、やはり通気口として開けられた穴だったらしい。
工事の都合で後回しになっていた区画なのだが、先行して通気口だけは開けられていたのが事故の原因になったようだ。
原因と犯人が分かったが、霊夢たちには既にどうでもよくなっていた。
何故なら、二人の目の前にはご馳走が運ばれて来ているからである。

「いやははは、ご馳走さまだぜ」
軽く酒が回り始め、表情の緩んできた魔理沙。
期待していなかった展開だが、楽しめるとあればそれに乗る。
自分でも神経の太さを疑ったが、敵が居ない上に目の前に宴があるとなれば楽しまなければ損と言うものだろう。
歓待の宴は続き、歌や踊りが途切れることなく演じられている、が。
隣を見る。
霊夢は歌や踊りを楽しむ余裕がないのか、ひたすらに食料を詰め込んでいた。
ザリガニの親玉のような奴を二つに折り、甲殻を物ともせずに噛み砕く。
湯気を上げるグラタンの皿を掴み、取り分け用の匙でかき込む。
切り分けられていないローストビーフを引き寄せ、ナイフを放り投げ噛り付く。
パスタの皿にフォークを突っ込み、糸巻き機の勢いで巻き上げるとそのまま口に運ぶ。
スープを鍋ごと傾け、返す刀でサラダを根こそぎにする。
果物を丸呑みにし、高そうなワインをラッパ飲みで空けていく。
悪食妖怪達もかくやという、凄まじい勢いだった。
それとも、ここで空腹を満たす事で、失われたおむすびへの供養になると考えているのだろうか。
魔理沙は隣から聞こえてくる、人の域を超えた食事の物音を無視して問う。
「地下にこんな大きな町があるなんて知らなかったぜ」
顔を上げる赤ズボンに視線を合わせる。
「ここは、一体なんなんだ?」
「ここかね」
少女の視線を受けた王鼠は、やはり表情を読み取れない。
「ここは夢を見る場所だよ」
タイルを打つ靴音を目で追えば、窓際に彼は立つ。
「人は、非日常を求めてここに来る。そうしなければ退屈な日常を越えられないとでも言うかのように」
窓の外。薄闇に眠る町は、今はまだ役を果たす事のない遊具たち。
寂しい話だがね、と彼は分かりにくく苦笑する。
「だが、ここが出来上がれば、少しは慰みなるだろう」
振り向き、腕を振り上げるとBGMのテンションが上向きになった。
「我々としても、地下暮らしが長くてね。そろそろ開園しないと本職が穴掘りだと勘違いする者も出かねない」
「……」
冗談めかして言う王鼠に、魔理沙は答えない。
「人ならざる者が人と共にあることが解せぬかね?」
「そうじゃないわ」
霊夢だ。
テーブルの上の料理を平らげたらしい巫女は、水が半分程に減ったグラスを置く。
十万キロカロリー相当の食糧は、何処かへと消えていた。
「なぁ霊夢……」
「ええ……そうね」
片方の眉を歪ませ、困ったような笑みを浮かべる魔理沙に、霊夢は気だるげに返す。
「どうされた?」
「まず確認ね。あんた達ってここから出た事はないの?」
「そうだが、それが何か?」
建設が続いているという事は、そうなのだろうと思っていたがやはりそうなのか。
霊夢が頷き、魔理沙が頷く。
「えーとね、この上の部分というか、ここも含めてなんだけど、今居る所は、大きな結界で閉じた世界なのよ」
歯切れ悪く、それでも噛み砕いて説明する霊夢。
魔理沙は息を詰めて様子を見ている。この情報は、彼らにとって致命的な問題となりうるからだ。
「……?」
「きっと、あんた達が元いた世界とは隔絶されているわ」
理解の色を示さない王鼠に、霊夢はゆっくりと、言い聞かせるように宣告する。
大きくも小さくもない声だったが不思議とホールに響き、そして静かになった。
「それは、本当……なのか?」
「こんな嘘ついてなんの得になるのよ、私、面倒なのは嫌いよ」
得にならないのはもっと嫌いね、と霊夢は残っていた水を飲み干す。

博麗大結界。
認識の境界たるこの仕切りを越える事は容易ではない。
結界の護り手であり、向こうとこちらの間に住む霊夢や、境界を自在にするアレなら話は別だが、基本的に事故か、結界そのものが持つ条件に左右されて飛ばされる以外には、まず自由に出入りは出来ない。
妖怪などが外から入り込むのは結界の仕様に則しているので比較的容易だが、出る場合に関しては至難と言っていい。

「なんであんた達がこっちに入り込んだかは知らないけど、ここに居る以上、もう出る事は出来ないわ」
霊夢の説明を聞いていた王鼠は確認するように魔理沙を見るが、黒衣の魔法使いも決まりが悪そうに頷いた。
気付けば曲が途絶えている。
ホール内の空気が変わった事に気が付いた霊夢は、
「自分で言っておいてアレだけど、まずかったかしら?」
「黙ってるのも悪いだろう、後になってダメでしたってのもアレだと思うぜ?」
「珍しく正論なんだけど、アンタが言うとなんか腹が立つわ」
「それを八つ当たりというんだ、勉強になったな霊夢」
いずれ分かる事ではあるが、今引導を渡さなくても良かったのでは、と思わなくもない。
「なんという事だ……」
王鼠は椅子に座り込んでいた。白い手袋に包まれた片手で目元を覆っている。
二人は黙っている。
かける言葉などないからだ。
「今の話が本当なら……」
ゆっくりと顔を上げる。
「我らは既に幻想の域に居るという事になるのか……」
溜息ともとれる、吐き出すような言葉には熱を感じない。
「そう、ね。むしろ人ならざる者が人と共にあった事が驚きだわ、それほどまでに外の世界は人間の天下なのね」










彼らは人の笑顔が好きだった。
夢幻の世界の住人でありながら、人と共にあらんと、人の笑顔の為に尽力してきた彼ら。
「夢の国」を作り上げ、そこに集まる人の笑顔を心の糧にして努力してきた。

初めは小さな「国」であった。訪れる人も少なかった。
しかし、「彼」は諦める事をせず、時間をかけて「国」を大きく豊かにしていった。
努力は実り、「国」を充実させればさせるほど、人は夢を求めてやってくるようになったのだ。

多くの笑顔が「彼」とその仲間を満たし、彼らはそれだけで幸せだった。

次第に評判が広まり、他の地でも「国」が求められるようになり、当然彼らは応じた。
確かに人員に限りはあり、無制限に領土を増やすわけにもいかなかった。
彼らだけでは手が足りない部分は、秘密を知るごく少数の人間と力を合わせて切り抜けた。
「彼」の力を宿した服を人間に貸し与えて、代役を立てたのだ。
「国」は人に夢を、笑顔をもたらし発展していく。
「国」は増え、次第に「彼」の代役も増えていく。

いつしか、仲間であった人間達は「彼」を忘れ、代役だけで成り立つ「国」を作り上げてしまった。
それでも「彼」は構わなかった。実際に自分が働く「国」はあったし、誰が自分に成り代わっていようと、結局は人の笑顔の為になっているのだから。
しかし、外界では「彼」の存在は大きくなりすぎ、「国」を求める声は広まる一方で、「彼」の偽者まで現れるようになっていた。

そこに到って、初めて「彼」は自分の存在意義を悩んだ。
しかし自分に出来る事を知る以上、出来る事をするしかない。
「彼」悩み、そして思い立つ。
新たな「国」を作ろう、距離すらも越えて誰も彼もが訪れる事の出来る「国」を、と。
皆の持てる力を総動員して、極秘裏に「国」の建設が始まった。
今まで使用を禁じていた魔法すらも利用し、距離を、時をも統べる「真の魔法の国」を目指したのだ。

だが、それは結果として「彼」と人の世界とを隔てる決定打になってしまった。
「国」作りに没頭している間にも「彼」の代役は増え、ついには偽者の作った「国」までもが現れたのだ。
拙い作りのそれは容易く偽者と見抜かれたが、それでも人々に必要とされた。
人が人の作った物を模倣し、それが広まっていく。

偽者は偽者であると知られるが故に、どこかに本物が存在しているという認識の裏返しに成り得た。
逆説的な考えだが、偽者が模倣する御手本こそが「本物」で「想像上の生き物である」と皆に広く広まったのだ。

幻想に生きる者たちが恐れる事に「認識されなくなる」という事象がある。
現象や概念に近い妖は、本質的に強い力を秘めるが、それ故に存在感という弱点を持っているのだ。
恐れられる事で、崇められる事で自己を固めていく。
無視されるとそれも出来なくなるのだ。
本質の問題でもある。
実在するはずの「彼ら」は、人々に「架空の存在と認識される」ことで幻想へと登りつめていく事になってしまったのだ。

人の望む「夢の国の住人」たらんと努力した結果、本当に夢幻になってしまうとは。
人の為の努力が人から離れる結果を招こうとは。
なんと皮肉な話だろうか。









「ここに招かれたという事は、我らが真に人の夢たる証か……」
顔を覆っていた手を下ろし、天井を仰ぐ。
「その事はむしろ誉れだが、やはり我らは人と共に在りたい」
背すじを正す。
「……それは」
「無理だ、と言いたいのだろう。楽園の巫女よ」
「やめておいた方がいいわ、今思っている事を口に出せば、あんたは幻想郷の敵になる」
王鼠の強い視線を受け、霊夢の気配が変わった。
「敵……敵か」
ふ、と自嘲の笑みを浮かべる。
「何よりも人の笑顔を望んだ我らが、人の笑顔を取り戻す為に、人の世の守護者と戦う」
椅子から立ち上がる。
「それは……」
「ただのエゴだよ、巫女よ」
断ずる声に、霊夢も応じるように静かに立ち上がる。
溜息。
「……どうしてこう、みんな馬鹿ばっかりなのかしらね」
「道化は愚かであってこそ、だろう?」
うんざりと肩を落とす霊夢に、王はさも楽しそうに告げる。
帽子で顔を隠した魔理沙は黙って聞いていたが、口元はたまらなく笑みの形で歪んでいた。

王鼠が指を鳴らすと、召使が薄いケースに載せられた玉串と箒を持ってきた。
霊夢達に恭しく捧げると、今まで沈黙していた楽隊が静かなイントロを奏で出す。
「これは私からの挑戦だ。武器を取ったならば、その瞬間から我らと君達は敵同士となる」
「あんたに意義はあるんでしょう?」
「無論だ。私は王、それ故に責は果たさねばならん」
「なら好きにするといいわ。幻想郷ってね、割となんでも受け入れるのよ」
王鼠は答えず、楽しそうに眉を上げる。笑顔なのだろうが、相変わらず分かりにくかった。
「好きにする代わりに、私が居る」
霊夢は静かに手を伸ばす。それを手にすれば、すぐにでも戦いが始まるだろう。
「お、おい霊夢っ」
「そんな焦った振りしなくてもいいわよ魔理沙。アンタもこういうの好きでしょ?」
平静に返された魔理沙は、へ、と照れる。
並び立ち、霊夢に先んじて箒を手に取った。
それを見た王鼠は満足気に頷く。
「我らの誇りと悲願成就の為、自由を勝ち取らせてもらう」
「残念ね。こんな世界だけど、私は案外と気に入ってるのに」
視線がかち合う。

「旅立ちの贄となれ! 結界の守り手!!」
「幻想の安息に眠りなさい! 夢の国の王!!」

叫びは戦闘の開始を告げ、楽隊の奏でる曲が猛々しい物へと転じる。
次の瞬間、ホールに居た全てが敵になった。
踊っていた者や給仕までもが向かってくる。
「……!」
別に驚く事はない。
こんな事は巫女の仕事の内では珍しい事ではない。
紅い少女の館や、桜の姫の庭、永遠を隠す竹林も、それ以外の沢山の出来事も。
妖が、人ならざる何者かがその力を振るう時、幻想の護り手はそれに立ち向かう力を発揮する。
そう、いつも通りでいいのだ。
強く微笑む霊夢は玉串を頭上に放り投げると、両の手を懐に突っ込んだ。
ありったけの御札を掴む。
【夢想! 封印……!!】
撃発の気配に魔理沙が伏せる。
引き抜いた手が御札を投じる。
霊気を受け紙から神へと変じた札は、一枚が二枚、二枚が四枚、四枚が十六枚と数を増やし、溢れるように途切れる事無く増殖する。
瞬く間に大河と化した御札の列は、まるで龍が如くにホールの天井近くでうねった。
【――散ッ!!!】
少女の大喝が城そのものを揺るがし、楽園に害なす者に襲い掛かった。
霊気が迸り、洪水のような御札は城内を縦走する。
ホールに近い部屋から順に窓が全て割れ、中に居た兵隊が叩き出された。
地面に落ちた者、降りた者それぞれだが、皆一様に宙を仰ぐ。
城を覆い隠すほどに乱れ飛ぶ御札が、巣を護る蜂の様に荒れ狂っている。
不意に御札が動きを止めた。
全てが下向きで固定され、鋭利に輝く。
「!?」
見上げていた者全てが、御札から明確な敵意を感じて息を呑むと同時、巫女の声が響く。
【集ッ!!!】
直後、降り注いだ。
御札が地面を乱打する轟音に混ざって、鼠兵士達の悲鳴が微かに聞こえる。
降り注ぐ御札はその間にも分裂を繰り返し、豪雨が途切れる事はない。
遠くからこの場を見れば、白く輝く滝が現れたと錯覚するだろう。

夕立のような勢いの御札は、夕立のように唐突に止んだ。
「霊夢」
「魔理沙、ごめん」
「事後承諾にも程があるだろうに……」
御札は魔理沙を排除対象にしなかったが、それでも猛烈な勢いに押し流された魔理沙は、今はテラスの先に浮いていた。
御札の嵐が過ぎ去ったホールは変わり果てていた。
テーブルやシャンデリアといった内装だけではなく、奥に控えていた楽隊も全てが押し流され、姿を消していた。
明かりを失い廃墟のようになった空間に小さく拍手が響く。
王鼠だ。
「素晴らしい。小さいとはいえ世界の守護者、見事な攻撃だ」
霊夢は答えない。
予想していたとはいえ、まるで無傷で立っている姿がある。
「少し整理したのよ、私、掃除はまめにする方だから」
肩を竦める。
「そうだな、掃除は行き届いている方がいい。私も園内の清掃は徹底させていたよ」
不敵に笑う王鼠に目を向けると、部屋の中のはずなのに周囲が明るくなっていく。
身構える二人に構わず、王鼠が告げる。
「巫女よ、君がこの幻想郷の代表として戦うならば、私もそれに相応しい力でお相手しよう」
言葉を続ける間にも明るさは増し、暗闇に慣れた二人は目を細める。
「いざ開かん……!」
裂帛の気合と共に闇が焼き払われ、魔力の疾風が吹き抜けた。

風に身構えた二人が顔を上げると風景が一変していた。
「これは……スペルカード!?」
世界に干渉し、自分の力を発揮できる結界を作り上げる力。
風景は各自の個性などに左右されるが、今、目の前に広がる光景は、
「空……」
蒼穹。
そして城だ。
この光景は見たことがある。先ほど見た地下の城、その中央通りとなんら変わりない。
ただ、空が開けており、抜けるような蒼さが天を埋め尽くしている。
呆然と見通す向こう、城の前に王鼠が居る。
そして、その背後に軍勢が居た。
犬が居た、アヒルが居た、人魚や妖精、熊や虎、小人も居る。虫すらも、失われたはずの古竜すらも。
他にも様々な種族が見える。
人の形をした者もある。本来の姿のままのモノも居る。
その誰もが夢の使者であり、王の配下で、そして仲間だ。
それらの視線は全て意志を持ち、二人の少女へと向けられている。
先ほどまで居た兵隊鼠とは比べ物にならない魔力を感じる。
いずれも一騎当千の兵(つわもの)だ。
カードアタックで分身を行う者は知己にも居るが、これはそんな生易しいレベルではない。
弾幕を構築するのに使役する使い魔、それが一個の術者として充分すぎる能力を持っているのだ。
つまり、今居並ぶ全てがそれぞれに使い魔を呼び、さらなる術を行使する可能性がある。
そうなると、もはやどのような規模の弾幕になるのか。
その予想と、それを支える魔力の総量に二人は言葉を失う。

「おー。これは楽しめそうだぜ……!」
先に口を開いたのは魔理沙だった。
軽口を叩いてみせるが、言うまでもなく虚勢だ。
だが、この普通の魔法使いは、いかなる困難に出会おうと決して弱みを見せない。
少なくとも隣に誰か居る時は。
泰然と立つ霊夢は、面倒臭そうに玉串の柄で肩を叩いている。
「見るがいい」
王鼠が誇らしげに振り示す一群。
「人に夢を、笑顔を与える為に生み出された幻想の具現! 我らが作り出すこの光景こそ、我と我らの総意の力!」

【賛歌 かくも小さき世界】

力ある言葉が響き渡り、今こそ幻想の軍勢が動き出す。
それは歌だった。
友愛と世界平和を願う歌は、ただそれだけで力を発揮する。
具現化した歌音が音符の形をした弾になった。プリズムリバーの弾幕も同じ音を媒体にするものだったが、これは規模が違う。違いすぎた。
立体構成の分子結合模型のようにも見えるそれは、もはや弾幕と呼ぶには巨大すぎる。
コミカライズされた音符の群が、歌に乗って飛び回る。
飛び回る音符が曲を奏で、歌を歌う。
音が響き、歌が轟き、カラフルな音符がドーム状に広がっていく。
膨張の速度こそ遅いが密度が尋常ではない。居並ぶ軍勢総ての歌なのだから当然だ。
多重奏の楽譜の譜面そのものが向かってくるかのような光景に、しかし二人は怯まなかった。
「遮り、隔てよ! 【二重結界】!!」
霊夢を中心に光の陣が二重に展開する。
一つは小さく、五メートル四方程度。
一つは大きく、歌が織り成す結界の内側に滑り込んだ。
「光よ、世界を穿て! 【マスタースパーク】!!」
霊夢の傍で八卦炉を待機させていた魔理沙は、合図も無しに力を開放する。
恋の魔砲は青白い励起光を灼熱させ、魔力の吼声は瞬時に最大出力へと駆け上がる。
轟音をあげ、光が大気を振動させる。砲撃の反動で靴底が滑り、魔理沙の小柄な身体が下がる。
踏ん張りなおして放つ極光は、二重結界の一層目に触れ、そこで遮断されたかのように途切れた。
光は消え失せたのか? いや違う。
出口はもう片方の結界。膨張しつづける音符の大竜巻の中にある。
それは即ち。
「本体狙いの直接射撃だぜ!!」
カラフルなオタマジャクシが乱れ飛んでいた歌の嵐に、閃光が立ち昇った。
歌が乱れ、飛び交う音符から秩序が失われる。
ガラスを纏めて割ったような音が響き、魔砲に穿たれた場所から魔力干渉のスパークが巻き起こる。
「消し飛べぇっ!!」
追加の魔力を叩き込んだ直後、魔理沙の叫びを掻き消す大爆発が巻き起こった。

爆発が収まると二人が立っていた場所には光の箱が出来ていた。
防御形態の【二重結界】である。
「打ち合わせ無しにしては上手く言ったな」
「アンタのやりそうな事なら、大体わかるしね」
油断なく構える霊夢の隣、不敵に笑う魔理沙もカードを展開していく。
二人とも、こんな程度で決着が付くとは思っていなかった。
「どう思う?」
「やるしかないだろ」
「そーよねー」
肩を落とす霊夢の目の前、爆発で舞い上がっていた土煙が晴れていく。
「たなびけ屑星、銀河を為せ……【スターダストレヴァリエ】」
待つ必要はない。
先手を打つべく結界を解いた霊夢に同期して、魔理沙は魔力の彗星を連続射出した。
しかし【レヴァリエ】の輝弾は、土煙を突き破って現れた光の塊によって轢き潰された。
「なにぃ!?」
慌てて回避する二人は、一瞬遅れて辺りが暗くなっている事に気付いた。
闇の中、流星を跳ね飛ばした光の塊が霊夢達に迫る。
「うおっ!?」
「眩しい!」
煌びやかなそれをやり過ごし、向き直る。
見れば夜闇の中、白亜の城は七色の光に照らされ、軍勢は変わらずそこに居た。
「先程の攻撃、真に見事であった少女達よ。我らの歌を凌いだ事は賞賛に値する」
王鼠だ。
「だが、この【絢爛たる行進】、受けきれるか」
魔理沙は己の目を疑った。
光の塊だと思っていたのは、魔力で編まれた山車だったのだ。
優にスペル数枚分の魔力はあろうかというそれ自体が物語の登場者を象り、由来を等しくする者を乗せている。
王鼠の言葉の間にも、山車、いや光の戦車は数を増やしていく。
列を成し、王の号令を待っている。
「済まぬが、勝たせてもらうぞ」
告げる言葉に、霊夢までもが硬い唾を飲み、











「どうやらお困りのようですわね?」











笑みを含んだ声と共に、空間に裂線が走る。
「!!」
それは、神隠しの主犯。
それは、幻想の境界。
最も危険な妖怪の呼び声も高い、
「紫!」
霊夢の声に応じるように虚空が裂け、中から妖艶な雰囲気を纏った少女が現れる。
丁寧に結い上げられた金砂の髪。八卦と対極、朱色と藍色。様々な要素を載せた服に、豪奢な日傘。
妖しく微笑んでいるであろう口元を隠す扇。
八雲紫がふわりと一歩踏み出すと、空間が華やかに揺らめく。
何が変わったわけではないが、紫の出現によって場の空気すらも変質していた。
日傘がくるりと回ると、夢の軍勢が僅かにたじろぐ。
「はぁい♪」
霊夢に微笑む紫。
「アンタ、なんでここに」
「だって霊夢のピンチですもの」
「ならさっさと来なさいよ!」
「あら、霊夢が私の助けを求めていただなんて、嬉しいわどうしましょう」
噛み付くように言う霊夢を物ともせず、頬に手を当ててはんなりと微笑む紫。
緊張感を微塵も感じさせないその様子に、魔理沙も呆れ返った。
しかし、相手はそうではなかったらしい。
「何者だ! この戦いは私と博麗のもの! 邪魔立ては許さん!」
王鼠の苛立った声にも、紫は構わず、
「霊夢、こちらの方は?」
「あー、紫。なんでも大結界に閉じ込められたのを知らなかったらしいのよ。で、どうにかして出たい、と」
「まあ、それはそれは」
わざとらしく驚いて見せた紫は、ゆらりと向き直り恭しく一礼して見せる。
「初めまして、わたくし八雲紫と申します、短い間かも知れませんが、以後お見知りおきを」
「ご丁寧な挨拶痛み入る。私はこの者たちの王、今は名乗る事を許されぬ身だが、ご容赦いただこう」
名乗らない相手を気にした風もなく紫は問う。
「ここはお気に召しません?」
「悪い所ではないと、素直に思うのだがね」
「ふふ?」
「だが、我等は知ってしまっている。己の役目と望みと、何よりも喜びを」
「そう、ですわね」
楽しげに目を細める紫。
「話が早くて助かる。聡明な女性なのだな、貴方は」
「貴方と同じですわ。護るべきものがあるならば、選択肢は存外少ないものです」
「なるほど。確かにそうだ」
苦笑。
「ならば分かるな賢き人よ、我らが退けぬ事を。そして分かるなら其処を退く事だ。私の相手は博麗の結界なのだから」
「なぁるほど。でもそれなら、私は霊夢に力添えする権利がありますわ」
目を弓のように細めたまま紫は告げた。
「それは、どういう意味か」
「何故って、私も大結界の成立に関わっておりますもの」
さらりと告白された内容に霊夢は驚いた様子は無かったが、直接本人の口から聞いた事に、魔理沙が思わず振り向いた。
「お前……!?」
「あら? 信じます?」
緊張した面持ちの魔理沙に、何時もの笑みを向ける、が続く言葉は紫の予想外だった。
「……歳、いくつだ……?」
「ゑ」
予想外の質問に、紫は妙な声を出して固まった。
その隙に魔理沙が無言で霊夢にサインを送る。
右手を親指と小指を折り曲げた状態で首を傾げる。
それを見て、霊夢が首を振り手を開いた状態で送り返す。
無音で「競り」のような数字のやり取りをしていた二人だが、揃って首を傾げると紫に向き直った。
見つめる無言は針のように鋭かった。
「えー……ゆかりん、わかんなーい」
言ってから自分でも最悪のリアクションだと、紫は心の中で舌打ちをする。
しかし時既に遅し。
霊夢と魔理沙の状態を一言で表すならば、絶句。
二人だけでなく、敵すらも凍りついていた。
「え? ちょっと、何ですの、この居心地の悪い空気は?」
まるで通夜だ。周囲の光景に変化はないが、城下の広場が真冬の山中の空気を帯びている。
何か取り返しの付かない気配が漂っていた。
「なんか言ってやれよ……」
「いやよそんな残酷な事」
「巫女の仕事なんだろ、妖怪退治は」
「いや……とどめまでは……ちょっと」
「ちょ、ちょっと、なんですのその気遣いは!」
ごにょごにょと相談する二人を咎める紫。出現した時に見せた余裕は消し飛んでいた。
紫の肩を、ぽむ、と優しく肩を叩く霊夢。
振り向くと霊夢は静かに首を振る。底知れぬ優しい瞳をしていた。
「え? な、霊夢?」
こんな優しい顔をした霊夢は初めて見る。頭一つ違う身長差のため、霊夢は紫を見上げる形になっていた。
「紫……無理しなくていいの……っていうか歳考えんかいーー!!」
優しく微笑んでいた霊夢は瞬き一つの時間で鬼の形相になると、紫を締め上げる。
「アンタみたいに面の皮が層になって三葉虫の化石でも出てきそうなくらいブ厚いならいいけどね! 一緒にいる方の身にもなりなさいよ! 見なさいこの空気! 盛り上がってた雰囲気が木っ端微塵よ! 芥粒子よ! 一体どうしてくれんのよ!!」
身長差があるはずなのに、霊夢は紫をネックハンギングで吊り上げ振り回す。洗濯物を干す時に、皺を取る為に強くはためかせる仕草に似ていなくも無い。
突然の仲間割れ(?)に、魔理沙はおろか王鼠までもが呆然としている。
「れ、霊夢! 私、お肌はぴちぴちよ!?」
「そんな事だからフランドールにおばちゃんとか言われて何も言い返せないのよ!」
言い訳に耳を傾けず、霊夢は紫を振り回す。
「な!? そんな事今言わなくてもいいじゃないの! 五百かそこらの小娘にはこの色香は出せないのよ!?」
「『YBC(ヤゴコロビューティークリニック)』に通ってるような奴が言う事かーー!」
叫んだ霊夢は勢いに任せて紫をぶん投げる。「室伏」と呼ばれる方式で、角度は四十五度だった。
盛大に宙に舞った紫は、ふわりと一回転するとわざわざ傘を開いて降りてくる。
靴底が床に小さな音をたてる。
その場の全ての視線を受けた紫は、僅かに頬を赤らめ、
「まあ、それはともかく」
わざとらしく咳払いなどしてみせる。

【どん滑りとリテイクの境界】

「はい、お待たせしました」
無理矢理引き締めた雰囲気は、それでも紫の出現前の緊張感を取り戻していた。
「今の力……なるほど、結界の成り立ちに関わったという話、俄かには信じられなかったが、貴女も只者ではないようだ」
二人の漫才をただ見ているしかなかった王鼠も、ようやく口を開いた。
「いえいえ、覗きが趣味のしがない妖怪ですよ」
ぱらりと扇を開き口元を隠す紫。目を細める。
「彼の忌まわしい結界の要とあれば、見過ごすわけにもいかん、か」
「だとしたら……どうします?」
「ならば貴女にも戦う資格はある。手助けでもなんでもするがいい」
王鼠の足元に居た犬が不服そうに主を伺うが、配下の不信を無視して王は続ける。
「背後を取られるなら、まとめて相手をした方が得策だというだけの事」。
その方便に霊夢は、噤んでいた口をヘの字にする。
紫から放たれる妖力を感じ取れないはずがない。
霊夢達だけが相手ならば掴み取れたかもしれない勝利を、危うくしてまで紫の参戦を認める理由はなんだ。
紫の助勢を容認するのは、いかなる目算があるのか。

それは誇りだ。
失われた地を取り戻す為の戦い、そこには過去の栄光が眩く光を放っている。
いかなる困難が待ち受けていようと、必ず取り戻してみせる。
その意気が、矜持が彼を困難な闘いにおいても奮い立たせるのだ。

「その気概、嫌いじゃないですわ」
扇をぱちりと閉じると、破願する紫。
まるで童女のように笑う。
その笑みに微笑み返し、王鼠は告げる。
「さあ、仕切り直しだ」
その言葉に、待たされていた光のパレードが輝きを増した。
「お、おい! 紫!」
魔理沙の焦った声にも動じず、紫は輝く軍勢を一瞥する。
「あらまあ、よくもこれだけの数を揃えたものですわね」
カードを一枚だけ取り出すと、
「ですが、足元がお留守ですわよ?」
高々と掲げる。

【式神 八雲藍+】

輝裂が走り、先ず金色の炎が現れた。
いや、炎ではない。燃え盛る炎に見えたのは九本の尻尾。
妖気を漲らせ顕現するは最高位の妖獣、天狐、八雲藍。
怜悧な美貌は感情を伺えず、居並ぶ敵を傲然と見つめ返す。
僅かに遅れ、天上から流星が落ちてきた。
これも流星ではない。高速度で回転していたそれは着地の瞬間に速度を消し去り、音も無く着地する。
揺れる漆黒の尾は二股。低く鋭く構えた猫の化生は、藍の式。橙。
増援は有難かったが、霊夢も魔理沙も紫の行動を疑った。
藍はともかくとして、橙はこの戦いにはいささか力不足だ。数の差は圧倒的なのだから、化猫が一匹いようが戦力差は殆ど変わるまい。
二人の疑念に答えず、紫は式を奔らせる。
【律:全能力・全術式・完全展開・超過駆動開始】
それはいきなりのリミッター解除。
紫から藍に式が渡り、その式が橙までを書き換える。
一つの式は二匹の獣を解き放った。
紫による藍の最大力は橙にも同様の効果を及ぼす。迸る妖気が立ち昇り、駆け巡る妖力に、藍が、橙が吠える。
「「――!!」」
響き渡る二匹の咆哮に、王鼠が焦りの声をあげた。
「しまった!?」
直後、湖面に張った氷がひび割れるような音が響いた。
まるで昼夜の境界がおかしくなったかのように空が明滅する。
どこからか大風が舞い込み、大気が鳴動する。
「なに? 何をしたの?」
事態を把握出来ていない霊夢が紫を振り返る。
「簡単よ、この世界の弱点を突いたの」
「弱点?」
そんな物があるようにも思えなかったが、王鼠の焦った様子と空間の突然の変調は、明らかに紫達の仕業だと分かった。
「鼠は猫が苦手でしょ? 史実にある通りよ」
紫はウィンクしてみせる。
加えて言うなら、狐も鼠の天敵だ。

猫の声真似だけでも壊れたとされるその世界は、本物の猫と狐の叫声によって引き裂かれようとしていた。
それは鼠浄土の概念的な弱点。「おむすびころりん」の伝承が持つ宿命。

「起源が知れているというのは、それだけで攻略の糸口を掴まれる事になるわけね」
「大・正・解♪」
霊夢の言葉に紫が微笑み、そして、世界が弾けた。

光りが収まると、元の暗闇の中に居た。
場所は変っていない。荒れ果てたホールの中に霊夢達は王鼠と対峙している。
「く……見事だ」
スペルをブレイクされた王鼠は片膝をついている。
肩で息をする姿は外傷こそないが、消耗しきっているのが見て取れた。
「やはり正体が知れていると、どうにもならんこともあるな」
苦しげに笑う。
むしろ、あれだけの規模のスペルの反動を受けても、なお意識を保っていられる方が驚きだとも言える。
驚異的な精神力だった。
震える脚を殴りつけ、ゆっくりと立ち上がる王鼠。
普段の弾幕戦であれば、ここで決着としてもよかった。
しかし、静かに見守る霊夢は降伏勧告をしない。
そして霊夢と紫が黙っている以上、他の者は口出し出来なかった。
「だが、私は……」
歯を食いしばり、身を起こす。
これは普段のルールに則った戦いでは無い。
しかし、双方の理念がぶつかり合い、どちらかが諦めるまで決着は付かないという点では変わりが無かった。
「紫」
「霊夢」
人と妖は一歩だけ踏み出した。
魔力を掻き集める王鼠を待つ。
向かい合うように立ち、霊夢は右手を、紫は左手を、それぞれ差し伸べる。
「それでも私は諦めるわけには……!」
二人はその言葉に頷き、静かに力を解放した。

【博麗 幻想多重結界】
【八雲紫の神隠し・リバース】

魔理沙の目には、二人の手の先から幾重にも折り重なった結界が、花が開くかのように展開するところまでしか視えなかった。



■○■



魔理沙が目を開けると空が見えた。
青空ではない。朱色が、藍色が混じりあい、僅かに流れる雲が金色に輝いている。
「あら、お目覚め?」
「!?」
「ちょうど良かったわ、そろそろ起こそうかと思っていたのよ」
思いのほか近くで紫の声がしたので、慌てて身を起こす。
どうやら紫の膝枕で寝ていたらしい。
「れ、霊夢は?」
「さっきその辺を見回るって言って、どこかへ行ったわ」
柔らかく微笑む紫に、なぜだか鼓動が早まった。
びっくりしただけではない鼓動。たぶん今の自分は紅い顔をしている。
見上げる紫の笑顔がいつもと違って見えたのは、日が沈みゆく薄暗さゆえ。
魔理沙は自分にそう言い聞かせた。
「そ、そうか」
遠い空に陽が落ちゆく。
朱に染まる丘の上には魔理沙達の姿しかなかった。
草原に座り込んだままの魔理沙は、最後に起きた異変を思い出して問う。
「なあ紫……」
「なにかしら」
「お前の力なら、こんな面倒な事をしなくてもよかったんじゃないのか?」
「それはもう」
笑顔で肯定する紫にげんなりする。
やっぱりか。こいつの底知れなさは今日に始まった事ではないが、何を考えているのかさっぱりだ。
「だって、あれだけ盛り上がっているのに何の苦労もなく外に送り出されたら、かえって興醒めでしょう?」
「そんな事だろうと思ってたが、お前はもう少し親切心を学んだほうが良いと思うぜ」
つまり、紫は初めから彼らを外に送り出すつもりで現れたという事になる。
その上であんな事を口走り、一戦やらかしたのか。
楽しげに微笑む紫を見ていると、あれだけ真剣に挑んできた彼らが不憫に思えた。
だが。
王鼠の姿を思い出す。
運命に抗い、己の手で未来を切り開かんとしたその意気。
敗北を悟りつつも、最後まで勝負を捨てなかったその精神。
彼の姿勢は、疑いようのない本物だった。
僅かに言葉を交わしただけだったが、悪い奴だとは思えなかった。
もう少し話してみたいと思ったが、もうそれも叶うまい。
彼には彼の明日が待っているのだから。
戦いの末に元の世界に戻ったとなれば、彼らの団結はさらに固くなることだろう。
結束は苦労があってこそ、だ。
いつぞやの『歯車戦争』でメイドたちと交わした友情を、自分は忘れない。

だが、それが分かっていても、この妖怪の性格の悪さには溜息しか出てこなかった。
「それに、なかなか味わえないスリルだったんじゃありませんこと?」
「程度によるだろ」
レミリアとフランの喧嘩に巻き込まれた時の方がまだマシだ。
今回ばかりはさすがにダメかと思った。
「でも、なんでなんだ?」
紫は、? という笑顔で魔理沙を見つめる。
「だってそうだろ。永遠亭の連中なんかは出たがらないが、外から来た奴らをそのまま帰すなんて聞いた事ないぜ」
「……」
少しだけ答えを考えた様子の紫は、
「……夢の世俗化という話が、ちょっと他人事に思えなくてね」
漂白されたような表情で言葉を零した。
「な、んだよ、それ……」
「さて、何のことでしょう」
そう答える紫はいつもの笑みに戻っていたが、魔理沙は今の紫の貌を忘れまいと思った。
きっと、今の言葉は秘められるべきものなのだ。
だから紫は、いずれ死ぬ自分に告げたのだろう。
妖の時間からすれば、自分の一生などそれこそ泡沫の如き儚さだから。
だが、なぜ自分なのだろう。霊夢にこそ言うべきではないのか。
霊夢なら、先の言葉を受けてなんと言ったろうか。
聞いてみたい気もするが、聞いてはいけない気もした。
「紫」
「あら霊夢、お帰りなさい」
夕暮れの風に玉串を靡かせ、幻想郷の守護者が立っていた。
「穴は埋まってた、もう妖気も感じない」
「あらそう、よかったじゃないの」
「なんで?」
「あら霊夢、もしかして怒った?」
「違う」
そこで言葉を切った霊夢は、溜息を吐きながら首を振った。
「後で結界の見回りをするから付き合いなさい」
山の稜線に沈みかけている夕日、その最後の輝きを背負った霊夢の表情は、逆光になっていて判然としない。
「今日はもう疲れたわ〜」
その言葉にいつのも霊夢を感じた魔理沙は、
「んじゃ、帰るかー」
立ち上がり、スカートに付いていた葉を払う。
「あ、そうそう、今日の晩御飯アンタが作るんだからね」
「な!?」
「忘れたわけじゃないでしょうね、っていうか私が忘れてないから」
「だって、お前」
「ちなみにスコアはアンタが427で私が37564よ」
「数えてたのか! ってかお前、最後のアレもカウントしたのかよ!」
「当然じゃない。あー今日の晩御飯はなにかしら、たーのしみー♪」
「霊夢、今日は私もお邪魔していいかしら?」
「いいんじゃなーい? 一人二人増えても一緒よきっと。材料とか準備するのは私じゃないけどー」
「まぁ素敵。 じゃあ彼らの旅立ちを祝して、今夜は宴会にしましょう」
「それなら賑やかな方がいいかしら? あれだけ派手好きな連中だったし」
とんとん拍子で話が進んでいくのを魔理沙は黙って聞いていたが。
「じゃ、萃香に頼んで萃めてもらいましょうか」
一挙に規模が拡大した事に目を剥いた。二、三人程度の食費とはまさに桁が違ってくる。
「ちょっと待てお前らーー!?」
しかし霊夢と紫は同時に振り返ると。
「「じゃ、よろしくね? 幹事さん」」
揃って空に浮かぶ三日月のように哂った。
「ちくしょー! こうなったらやってやらぁー!」
夕闇迫る白詰草の丘に、魔法少女の絶叫が響いた。





○■○■○





薄く雲が渡る初夏の空の下。
一人思ってみる。
私は、どうしてこんな所にいるのだろう。と。
ちょっとばかり哲学的な考えだが、実際はそんな洒落たものではない。
私、マエリベリー=ハーンは樹脂製のベンチに一人腰掛けて、今の状況を考察する。
今は午前。彼女のように星を視て時間を識る事は出来ないが、幸いにして文明の利器が手近にある。
時間は午前十時を少し回った所か。
午前の講義にも行かずにこんな所で何をしているのだろう。
あ、今日は日曜か。それならば溜り気味の洗濯物を片付けるという予定はどうした。
胡乱な頭脳を転がすと、なんとなく原因っぽい光景が湧いて出てきた。
ああそうだ、一週間前に蓮子が見せてくれた情報誌に起因するんだった。
あまり思い出したくも無いが、現状把握の為には必要な気がしたので記憶の井戸を覗いてみる事にする。



「ねえメリーこれを見て」
いつものカフェ。
私達の指定席となりつつあるお馴染みのテーブルの上に、蓮子はばさりと雑誌を広げた。
内容はテーマパーク開園の特集だった。
何世紀も前に失われたような建築様式の建物を前に、奇態なディフォルメのされた動物たちが手を振っている。
昔からある類の娯楽。人の手による「夢の国」
「こういう娯楽って、何回りかして帰ってくるものなのね」
この手のテーマパークは出来ては潰れ、潰れては開園する。
需要と供給のバランスが、長いスパンで釣り合っているのだろうか。
「わー、かっわいいー!」
写真を眺めていた蓮子が大声を出したが、特に注目を集めている様子は無い。
この程度では、店長を始め、他の常連客は動じなくなっている事実がそこはかとなく悲しかった。
「……そのセンスは私には理解できないわね」
先程見た等身大の鼠だのアヒルだのが、楽しそうに園内で踊り狂ったりするらしい。
電飾の塊のパレードカーが夜闇に列を成している写真を見て、私は深海生物を思い出した。
気の抜けたジンジャーエールにとどめを刺し、考える。
さて、どうしたものか。
この勢いを考えるまでもなく、こんな雑誌を持ち込む時点で蓮子の次の言葉は予測できる。
確率の問題ではない。
Aという原因があってBという結果が生じる。CやDではなく、Bで確定だ。
こういう考え方は自分らしくない。むしろ蓮子の分野だ。
「でも意外だわ、蓮子ってこういうの好きなのね」
「だいすきー」
「へ、へぇ……」
蓮子の緩い表情にたじろぐ。付き合いの短いこの親友の意外な一面を垣間見た気がする。
物理の信者たる蓮子にしては珍しく、こういうのが好きらしい。
「でね、こんなものがあるのよ」
そう言って二枚のパスをテーブルの上に――



思い出した。しかし思い出したくはなかった。
結局、蓮子の勢いに負けた私は、女二人で休日の朝っぱらからテーマパークに行くと言う、なかなかに泣ける状況の真っ只中にいるのだ。
なお宇佐見蓮子女史は、入場口の近くでスタンプラリーの受付をしている。
今日一日をせいぜい楽しめればいいな……せめて虚しさが紛れる程度には……
寂れた薄笑いを浮かべていると、不意に足元に影が落ちた。
「……?」
蓮子かと思い顔を上げると、そこには。
「……!」
小人……の着ぐるみか。
普通に人間よりも大きいそれは、小人というバランスで作られているので頭が大きく、ひどくアンバランスだった。
原作は知っている。
七人ひと揃えで出てくるやつだ。
一人でベンチに座っている私が目立ったのだろうか。
こんなエントランス付近まで見回っているとは、正直恐れ入る。
声を出さない彼は、大げさな身振りでこちらを伺っている。
私は、蓮子が来るまでの暇つぶしくらいにはなるだろうと、小人に視線を合わせ、そこで気がついた。
「え……!?」
思わず声を上げ、そして立ち上がってしまう。
だが仕方ない。
どうしたって声は出る。
何故なら。

『目の前の小人を縁取るように紫色の境界線が視える』のだから……!

思わず一歩下がる。
一度気が付いてしまうと、それ、いや「彼」が巧妙に「作り物の偽装」を施されているのが分かった。
間違いない。
「彼」は「本物」だ。
私の様子を不思議に思ったのか、「彼」は首を傾げる。
不用意だ。被り物ならそれなりの重さを持つはずの頭部は、迂闊に動かせないはず。
しかし、目の前に居る小人の頭は斜めになろうと、どうと言う事はない。
当然だ。そもそも「被って」などいないのだから!
悪い予感に押され、よせばいいと分かっているのに視線を周囲に向けてみる。
「……!!」
そこかしこに境界線が視えた。
いや、其処彼処などと言う生易しい物ではない。ここが丸ごと「違う」のだ。
巧妙に隠してある。普段の境界とは毛色が異なるのは視て分かった。
明らかに「隠れようと」している。
いつもの境界ならば、ただそこにあるだけ。
人の事などまったく意識せず、ただ不気味に口をあけているものだ。
しかし、今、この場を埋め尽くす有象無象の境界線は、あらゆる建造物やキャラクターを縁取り、しかし、蝋燭の炎のように儚げに揺らいでいる。
彫像のように硬直している私に、小人は首を傾げていたが、
「あ」
蓮子の姿が見えた。
ちょ、ちょっと待って蓮子、貴女のその姿勢にたまらない不吉さを感じるわ。
大きく開いたスタンス、腰を落とし重心を安定させたそのポーズは、まさに駆け出そうとするスプリンターのそれよ。
目が合った。というか、全力疾走する理由がわからない。
更に言うなら貴女のその笑顔に、寒気がするわ。
「逃げて!」
目の前の小人に思わず叫んでしまったが、時既に遅し。
三メートル程手前で跳躍した宇佐見蓮子は、助走の勢いをそのままに空中で横になった。
足を進行方向、即ち「彼」に向けて。
小人の「彼」は私の突然の大声に驚いたのか半歩下がった。それがいけなかった。
打音。
死角から襲い掛かった突然の悪意は、小人の左脇腹に直撃した。
「く」の字に折れた彼は一瞬だけその場に留まったが、蓮子から受け取った運動エネルギーによって盛大に吹き飛んだ。
身体に対して頭が大きいので、舗装された地面で転がると大変なことになった。
惨状に思わず目を背けてしまう。
「さあメリー! 走るわよ!」
私の手を取り走り出す下手人は、振り向かずに駆け出した。
「なんで後先考えないのよ!」
「メリーが襲われているように見えたのよ!」
「その割りにいい笑顔していたわよ!」
「夢だったの! ヒロインの危機に颯爽と駆けつけるヒーロー!」
普通の女の子はそんな勧善懲悪モノを見ないし、憧れるにしても救い出されるヒロインだろうに。
少し離れた所で足を止め、息を整えつつ犯行現場を振り返る。
不自然に捩れたまま転がっている小人の彼に、他の小人が声をかけている。その小人も「本物」だ。
「ここ、どう?」
「……貴女、知ってたの?」
「念写した写真も挟んでおいたのに、見なかったのはどこの誰よ」
「いや、まあ、その」
言葉尻を濁し、私はあらためて周囲を見回した。
「ここ、すごいわ……丸ごと異界になってる……」
「メリー、ここのウリって知ってる?」
「ごめんなさい、雑誌に書いてある事なのよね?」
走った事で乱れた帽子を直していた(先ほどの必殺キックでも落ちなかった事の方が私には驚きだ)蓮子は、私にこの前の雑誌を渡してくれる。
『まるで生きているような自然さ!』
『魔法に掛かったよな感動!』
『時を忘れて楽しんでしまいます』
……眩暈がしてきた。
「なによこれ、全部当たりって事?」
「自分の目が信じられない?」
「貴女こそどうなのよ」
「訊きたい?」
「……やめとく」
いつもなら異界との接点を視ると、視神経が灼けるような感覚があるので長時間は視ていられないのだが、ここはそれも薄い。
まるで「そういう目」にすら優しく作られているかのよう。
近くにあったベンチにへたりこむ。
少し先を熊の……いや、熊そのものが虎と歩いている。子豚らしきものも見える。
「それで、どうするつもりよ」
「どうしよっか」
「結界を暴くとかそういうレベルじゃないわよ? というか普通に人が入ってきてるし」
「そういう意味ではここは「こっち側」なのかもしれないわね」
冗談めかしていう蓮子だが、異界=境界の向こう側という認識ではここを測れないのは確かだ。
現在、集団神隠し状態のはずだが、入場者はすべて無事に帰っている。
これでは普通のテーマパークではないか。
「なんなのかしら……もう」
「あ、メリー、そこの大通りってもうじきパレードが始まるみたいよ」
先ほど目を通した情報が正しければ、そろそろ午前の部のパレードが始まる頃だろう。
正直あまり興味はなかったが、ここに居る限りはどこにいっても大差あるまい。
それに、子供のように目を輝かせている相方を引きずって立ち去ろうものなら、どんな呪い言を吐かれるやら。
「そうね、折角だから見に行きましょうか」
「やったー!」
なんだか引率の先生か母親にでもなった気分だ。ほらほら蓮子ちゃん、あんまりはしゃぐと転びますよ。
「あいたっ」
ほんとに転びやがった。

「蓮子、もうちょっとじっとしてなさいよ」
「だって! ほら! あれ!」
喜色を満面に浮かべた蓮子は、何時の間に買ってきたのか変な形のカチューシャを愛用の帽子に無理やり取り付けて、パレードに向かって手を振っている。
もう驚かなかったが、このパレードの「装飾された台座カー」すらも向こうの産物だった。
おそらく、この園内にあるものの殆どは向こうのものだろう。
もしここが迷い家なら、にわか長者がどれだけ誕生するか見当もつかない。
パレードは大半が行過ぎ、そろそろ終盤だった。
最前列ではしゃぐ蓮子を見るとは無く見ていると、どこからか視線を感じた。
「……?」
どこから、と視線を上げると果たして視線の主は見つかった。
一際大きなパレードカーの上、ステージ状になっている所に、このテーマパークの主であるマスコットキャラクターが居た。
愛想を振りまいているが、その視線はこちらを捉えて放さない。
顔の造形が表情のわかりにく形をしているが、
「……驚いている……?」
「きゃー! こっち見てるー! ねー! メリー!」
アレが普通に中身に人が入っているというなら、むしろ私を知っている誰かが入っていて、偶然見かけたから驚いた、という事もあるだろう。
しかし、「彼」もまた本物だし、あちら側の存在のはず。
多少個性的な目を持っているのは自覚があるが、あんなのは知り合いにいない。
「……?」
疑問に思う間に、その台車は過ぎていった。
分からない事だらけだが、我々の倶楽部活動は元来そういうものだ。
それにこれだけ幻想の大安売り状態だと、細かい事を考えられなくなってきていた。
「メーリーー! 次あれ! あれに乗りましょう!!」
人目を憚らず大声で呼ぶ相方に嘆息しつつ歩き出すと、昼を告げる鐘が鳴り始めた。





パレードカーから見える景色はひどくゆっくり流れていく。
「……どうされました、王よ」
周囲には聞き取れない程度の声が話しかける。
パレードカーの成りをしているだけで、これも一つの知性を持った仲間である。
「いや、大した事ではない。ただ……遠くに居る恩人に似た姿を見かけたのでな」
「左様でしたか。しかし御気をつけ下さい、奥方様の御耳に入ればタダでは済みますまい」
どこか楽しげに告げるソレの言葉に王も苦笑する。
確かに。
恩人に似ていたとはいえ、他の女性を見ていたなどと知られれば、気難し屋の彼女がなんと言うやら。
笑みを濃くして空を仰ぐ。
青い。
ようやく得られた青さ。
ようやく取り戻した人々の笑顔。
あの穴の底で焦がれ続けた物が、今ここにはある。
友よ。
この空の先のどこかにいる朋友よ――
貴女は、自分の夢の郷を護り抜いてください。
私も、迷わずにいけると、根拠は無いがそう思えるのです。

願わくば、美しき幻想の郷が、これからも豊かに穏やかなままであらん事を――




―了―



東方埋騒夢
副題:異聞 おむすびころりん





↓ここから楽屋オチ



















「藍さまー」
「おや、なんだい橙や」
「ちょっと疑問に思ったんですけど、私と藍さまって本編で台詞が無くないですか?」
「うん、いい所に気がついたね。実はその通りだ」
「なんでなんですか、私、もっと活躍したかったです……」
「ああ、そんな顔をしないでおくれ。そうだな、橙。この話を見てどう思う?」
「すごく……長いです」
「そうだね。実は80キロを越えているんだよ」
「うわぁ……」
「お前今、素で引いたね」
「すみません藍さま、でも、こんぺではあまり長い作品は……」
「うん、それは私が言うまでも無い事だね。そして、実はこの話がもう少し長かったと言ったら、どうだい?」
「それって、まさか……」
「橙は賢いな」
「えへへ、でも、わかりました、私と藍さまがちょこっとしか出ていない訳が」
「うん。つまりはそういう事だ。しかし橙や、この話には私達でなければ出来ない事があった事を忘れてはいけないよ」
「私達にしか、ですか?」
「そう。作品における重要度はこの話の「勝利の鍵」として先週の終わりに予告されるくらいだ」
「先週ですか? よく分かりません」
「よく分からなければそれでもいい。ただ覚えておいて欲しい事はひとつ」
「時間がなくて練り上げられない事と」
「時間が無くて削りきれなかった事は」
「「等しく書き手の力量不足」」
「あはは、やっぱりー」
「ははは、そういう事だな」
「らーん〜? ちぇーん〜? 早く来なさ〜い、そろそろ宴会がはじまるわよ〜」
「あ、紫さまだ」
「じゃあ行くとしようか、今夜は魔理沙が幹事で萃香が萃めたんだ、賑やかになるぞ」
「はーい!」

そして誰もいなくなる。






 








読了、御疲れ様でした。
大した内容も無いくせに長い話ですみません。時間が無くて削りきれませんでした……

「穴」という御題で出てくるであろう有名すぎる2つのモチーフ、その片方を自分なりに料理してみました。
彼らが本物でありながら人の間でこっそり暮らしている、そう思うと某浦安のアレが違った目で見えてきたりしませんか。
しませんか、そうですね。
投稿期間中にリアルで偽者が出てきたのは笑いましたが。
ちなみに小人に蹴りをかましたのは自分の友人です。
頭だけ転がり、体が後から引きずられるように捩れる様子は正視に堪えませんでした。



LAST−WORD

バッカ長ぇよ!(挨拶
はじめましての皆様初めまして。そうでない方お久しぶりです。そしてお疲れ様でした、コンペの敵、鼠でございます。

前回、沢山の方から「反則だ」との評を頂いたので、今回は明確に反則をしてみました。
鼠が鼠の話を書く。
感想期間中の情報の秘匿、とりわけ匿名の絶対性が声高に叫ばれるこのコンペにおいて、これだけ作中に作者名が入っている話があったでしょうか。
たぶん無い。これこそこのルールの穴、というかこの話の本当の「穴」です。
……いや、直接名乗っている訳ではないので、そんな大袈裟な事でも無いんですけどね。
この話は、私の他の話を知っている方なら容易に作者を特定出来る作りなんですが、そんな人はそうそう居るまいという知名度の低さを逆手に取った遊びです。
作者を容易に特定出来る書き方にも拘わらず、絶対匿名というルールがある事により、蓋を開けるまでは誰かが私の振りをしているだけの可能性が付いて回る。
これを取り締まる事が出来るのは主催者のみ。他の参加者は総括期間になるまでは疑いを持ちつつも確定出来ないのです。
指摘出来ないであろう事を見越しての所業。
まあ、ここで種明かしましたから、あんまり意味は無いですけどね。
本作の真意がこのネタバレで明かされ、それが元で削除されるかもしれません。
そうなった場合、私は今回お題を消化出来なかった事になりますか。
実はそれでも構いません。
そうなった場合、この後書きが墓穴になるので。

……ところでどうですか、この話。いやもう結果は出ているのですが、オリキャラが居て(しかも男)で、バトルありで、おまけに強くて。挙句の果てにそのキャラ名こそ秘匿しなければならない物ときたもんだ。
ここまで来ると危険球とかそういうレベルじゃないですね、もはやピッチャーマウンドにセパタクローの選手が立っているくらいの違和感が漂います。
こんぺスレのお題確定直後の期間、オリキャラが云々という書き込みが幾つかされていたんですが、あの流れを見ると、この話も削除対象になるかもしれません。
この後書きが使われているならそれも無いのでしょうけれど。

藍様が後書きで言っていますが、戦闘は大半を切りました。
もし戦闘シーンをフルサイズで入れていたなら、きっと今回最長の座に手が届いていた事でしょう。この状態でも前回最長作に匹敵する長さですけど。
魔理沙対○ナルドダックの空中戦。藍とグー○ィーの犬対決。紫とミ○ーマウス、変則で霊夢&橙のタッグと○ッキーマウス&○ルートが予定されていましたが、そこまでやったら間に合わなかった公算の方が高い、というか確実に落としていましたか。
……というか○ィズニーのキャラに戦闘させるのってどうなんだ? でも○ッキーの補助脳ネタは入れたかったなぁ。
ところでこの作中、○ッキーもどきが山ほど出てきます。
彼らは能力や役職に応じて、ズボンやそのボタンの色などで階級分けされています。
最上位が赤ズボン金ボタン。これと対象色になる緑が一般兵(兵役が義務付けられているので)です。赤と緑の間は、緑から青を挟んで赤に変わる色調のコースと、黄色を挟んで赤になるコースがあります。
それぞれ、軍務と政治に分かれており青が軍部、黄色が議会となっています。
青の上に紫と黄色の上にオレンジが上院として存在し、赤の直下で国の運営を司っています。
最下層民は色ズボンを剥奪された者で、主に犯罪者などがこの層に当てはまります。
麻袋のような物を与えられ、一定期間の労役などを経て、通常階級へと復帰します。
もともと狭いコミュニティなので大した犯罪も無く、全体の目的意識もはっきりしているので治安は割といいです。
その他のキャラクターは基本的に別次元の存在で、運休状態の国には存在しません。
王国が運営状態になると、王鼠を中心として大規模な儀式魔法が展開され、別次元に存在している彼らを召喚します。
これには莫大な魔力を消費するので、城の地下にある魔力炉の稼動が絶対条件です。
作中、王鼠が使用したのは事故対応などに用いられる緊急用の術式で、あくまで短時間限定のものです。
幻想郷における制限時間つきの魔法など(スペルカード)に良く似た仕様になっていますが、炉の支援が無い状態なので術者にかかる負荷は極めて大きいものでもあります(核融合炉で賄うべき物を自転車発電で補うくらいに無茶なものです)
なお、展開される各術式はどのキャラが中心に立つかで性質、属性などが変わってきます。
規模は違いますが、この辺は妖々夢アリスのスペルと似た感じだと思っていただければ。
ちなみに【かくも小さき世界】と【絢爛たる行進】は○ッキーが起点になる、軍団最大級の攻撃です。

……限られた期間の中でこんなの考えてるから練る時間が無くなるんですよ。
いろいろ消化不足なんですが、話が長くなった為に書き上げるだけで手一杯になってしまい、練り込む時間が殆ど取れませんでした。読み返すと直したいところが山のように出てきます。

今回のお題はドーナツを食いながら提案した物です(実話)
箱の時は「誰だよこんなの出したの」とか呪いましたが、まさかテメェの出したお題で苦しむ事になるとは。
いや、何が出ても苦しむ事には変わらないんですけどね?
よく言ったものです「人を呪わば穴二つ」って。
「なんでこんなお題出したかな俺」と、呪う相手が過去の自分なんで、呪い返しも含めて二倍の効果ですね。
『おむすびころりん』と『不思議の国のアリス』は絶対に被ると思ったんですけど、皆さん発想が豊かですね。
かすりもしませんでした。かすりも……

最後になりましたが、このような場を設けて戴いた主催者様、こんな本作を読んで下さった皆様、素晴らしい作品を織り上げた文士諸氏、そして我々を魅了してやまない東方の世界を今なお拡げ続ける幻想神主様に、篤く感謝と御礼申し上げます。ありがとうございました。
鼠@石景山
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2007/05/13 07:09:08
更新日時:
2007/06/05 01:05:13
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5.00
1. 8 A・D・R ■2007/05/13 18:54:12
オリキャラ、オリ設定をうまく使いこなせていたように感じます。最後まで先が読めず、のめり込みました。
こういった視点から捉えたお話は、私は大好きなので、とても楽しませて、そして考えさせて頂きました。
幻想からの脱出、譲れないもの…色々なテーマがうまくまとめられ、最初はありきたりかと思っていたお題も、読み終えたときには十分生かされていたと思いました。
ただ、地の文が若干堅いように感じました。
2. 9 爪影 ■2007/05/17 12:48:06
 ゆかりんオチは賛否両論があるかと思いますが、個人的には好みでした。
 まさに、夢のあるお話ですね。
3. 7 詩所 ■2007/05/17 21:29:09
穴の先には楽園がある、あったらどんなにいいことでしょうか?
穴とはそんな不思議な魅力を持っていると思います。
その魅力が十分に出ている作品、良作です。

それにしても霊夢のキャラが濃すぎるw
4. 5 あああ ■2007/05/23 19:54:46
読んでて退屈な場面がしばしば。
5. 2 人比良 ■2007/05/26 21:04:56
穴と箱の違いってふたの有無だけだとしても、その有無って決
定的なものなのでしょうね。
閉鎖されているか否かは。
6. 10 流砂 ■2007/05/26 21:58:24

くそう、ファンです。一回でファンになりました結婚して下さい。
あー、これの衝撃は圧倒的な気がする。
幻想だもんね、確かにその通りだ、流石ミッ○ー。
一瞬クロスオーバーかとも思ったけどんなこたぁ無い。 幻想幻想。
お題も存分過ぎるほど使用し、ノリや駆け引きも超一流。
するすると内容が入ってくる上にアツ過ぎる戦闘etc etc……
この作品に最大級の賛辞を添えて……御馳走様でしたー。
特に『ザ・リトルワールド』や『エレクトリカルパレード』には震えた。
これで存分に推敲とかしてたらどんなバケモノ作品になってた事やらガクブル。
7. 5 deso ■2007/05/26 23:41:14
狙いは上手いな、と思いました。なので序盤は面白かったです。
しかし、中盤以降のバトルは正直萎えました。途中の紫登場時の漫才も滑ってるように思います。
また、テーマ的に、どうしても猫を出したいというのがあったのでしょうが、どうにも無理矢理っぽいです。まあ、霊夢と魔理沙に橙を絡めるのは難しいでしょうが…。
8. 8 ■2007/05/27 01:06:15
夢の大本は変わらずとも、夢の伝承はゆがめられてしまう。わかる気もします。…それはそうとして、罪もない小人さんに蹴りをかましてはいけません。

それにしても、ある意味での際どさにおいては今回コンペの一位かも知れないな…w
9. 9 blankii ■2007/05/27 11:30:22
 もう何を凄いと言ったら良いのか。
 敢えてひとつだけ言うのなら、その発想力でしょうか。てか誰も思いませんよ、ギャグならともかくも『アレ』メインに持ってきて東方と混ぜてみよう、とか。
 ともあれ面白かったです。某戦争の某征服王じみた固有結界展開と、頭の中で浮かぶネズミ顔の対比といったら――最高です。ところで名乗れない理由ってやっぱり……。
10. 10 shinsokku ■2007/05/27 14:44:49
面白い。
とても、面白い。
物凄く、面白い。

自分、夢の国には生涯二度しか行った事がありませんが、王様と誕生日が同じだったりします。
11. 10 74 ■2007/05/27 18:25:18
グレイズ激しすぎ
12. 7 椒良徳 ■2007/05/27 20:04:26
「割烹着を着た霊夢と魔理沙」にうぎぎぎぎぎ。
妖精と花輪を作りあいっこする霊夢と魔理沙には勃起が止まらない。
海の無い幻想郷に海苔があるのか? という疑問も浮かぶがまあ良い。
おむすびにかじりつく二人は可愛らしい。
魔理沙についた米粒をとってあげる霊夢にもドキドキだ。
落としたおむすびを必死に追いかける霊夢も、追いつけなくて涙する霊夢も良い。
幼子のような霊夢はレイプしたくなるが、魔理沙の箒を改造するパチュリーは外道。
それ以上におむすびの恨みを晴らそうとする霊夢がマジ外道。
「彼」頑張れ、まじ頑張れ。
【陰陽玉〜】と会話文に【】を使うのはどうかと思うが、虐殺されていく鼠たちに涙が止まらない。
「ここは夢を見る場所だよ」ちwwおまwwミッ○ー!
著作権の番人かよ、法にひっかかるぞ。名乗る事を許されないはずだ。
「犬が居た、アヒルが居た、人魚や妖精、熊や虎、小人も居る。虫すらも、失われたはずの古竜すらも。」【賛歌 かくも小さき世界】うぇwうぇww。
「「だが、この【絢爛たる行進】、受けきれるか」魔理沙は己の目を疑った。光の塊だと思っていたのは、魔力で編まれた山車だったのだ。」キター! 
そんなとこに割り込んでくるYBC(ヤゴコロビューティークリニック)に通う年増妖怪には萎えさせられるが、「だいすきー」とテーマパークに行きたがる蓮子には勃起を押さえる事が出来ない。
「ほらほら蓮子ちゃん、あんまりはしゃぐと転びますよ。」転んで欲しいものだ。そしてレイプする。
 さて、内容に関してですが、気合を入れて書いたのだということは判ります。本文も誤字、脱字等なく丁寧に仕上げられており、読みやすくてよかったです。が、それだけです。後書きから察するに内容を大幅に削減したのでしょうが、その所為でバトルシーンが物足りなくなってしまっており、なんというか惜しいなと。いや、私がバトルが好きだと言うだけなんですが。まあそんなことはともかく楽しませてもらいました。貴方の書く中短編も読んでみたいですね。
13. 9 木村圭 ■2007/05/27 23:44:15
紫が現れてからの決着が唐突で肩透かしな感がありますが、その辺は創想話とかでどうにかしてくれると信じています。
その紫、機械仕掛けの神様は飽きたんだっつーのーと思ってたらまさかこんなラストを持ってくるなんて。意図素晴らし。
14. 10 秦稜乃 ■2007/05/28 22:45:52
幻想に生きる、夢の世界の存在せぬ妖ども。
ギャグ入り混じり。この話の展開に引き込まれました。
…でも言わせてください。これは危ない(色んな意味で
15. 6 らくがん屋 ■2007/05/29 10:44:11
ネズミーランド……連中、個人的には幻想入りしてもいいんですが、いまだに世界的人気者なンですよねぇ。
文章や描写が丁寧だからこその80kbオーバーなんでしょう。全体の構成を鑑みるに最初のピクニックパートや地下へ潜っていく場面なんかもうちょい削れそうなんですが、実際に出来るかどうかってと難しいかぁ。
何も考えずに楽しむことができました。面白かったです。
16. 7 反魂 ■2007/05/29 23:06:27

スコア37564、はミナゴロシ、と掛け合わせてあるのかしらとかなんとか。

仰るとおり、ということになるのですが、確かにやや冗長に過ぎる感じがありました。終盤になるにつれ主題が明確性を帯びてきたのは好印象だったのですが、それならば前半部、おにぎり云々の描写がさして重要でもなく。バトルパートを始め全ての場面であまりにも「手抜きが無さ過ぎる」ため、ストーリーの割に文章量が大きくなっていると思いますし、間延び感が生まれてしまったように思われました。

作品で伝えようとされたことは非常に私好みの題材で、楽しく読むことが出来ました。鼠というオリキャラの輪郭がやや掴みづらかったことも、最後に浦安のアレとダブらせることで強引ながら解像感を得ました。物語の展開が明確で見失うことがなかったのは、作者様の技量によるところだと思います。
力作お疲れ様でした。

※誤字誤用)
・完膚無きまでに→完璧なまでに
 「完膚無きまで」は、後続の表現に対し欠けたところしかない状態を言います。半ば造語的用法とは思いますが、まるきり逆の意味になるので注意。
・「彼」悩み
 →「彼」は悩み
17. 4 いむぜん ■2007/05/30 02:36:22
もう少し短くなりそうな感じがする。
息抜きの小ネタが浮いている部分もあるので、短くするなら切ってしまっても。時間が無いとの事だが。
王鼠(笑)との戦闘以降、魔理沙が微妙に傍観者になっている所はある意味正しいのかも知れんが、なんか一言あると良かったかも。でも、本当の異変に霊夢と紫が出張ったら魔理沙に出る幕はないのかも。
あと蓮子が元気よすぎw
18. 10 ■2007/05/30 03:35:43

ちょ、魔理沙って古代語魔法まで使えんのw
そして、故あって名乗る事の出来ないネズミバロスwwwやばいよ消されるよw
と笑い転げてたら、まさかあそこからシリアスにつなげるとは……まったく恐れいりました。
いやはや、秘封の二人のラストシーンなんか、正直感動して涙腺緩みましたよ。
時折入るZUN節の会話も、全然違和感なく良い味出してて、凄いです。
パロディネタが結構多めでしたが、元ネタ知らない人でも気にせず読めるように書かれているところに好感が持てました。
正直言うと、読み始める前は「4万字オーバーか……こりゃ骨が折れそうだなぁ」と身構えていたんですが、実際読み始めたらもう完全に話に引きこまれてしまって、全然長さが気になりませんでした。
ギャグもシリアスも、そして東方二次創作としても文句なく一級品です。ここまで盛りだくさんでしかも完璧に仕上げられると、「白旗」を揚げざるを得ない。
本来なら私はパロディは減点する主義なのですが、話のクオリティがあまりにも高くて点数限界突破してるので、満点つけちゃいます!
……って、あとがきの友人wwwちょwww
19. 6 リコーダー ■2007/05/30 16:03:55
なんかアミューズメントパークの割に、色々と漢が溢れまくってる気が。
20. 6 眼帯因幡 ■2007/05/30 17:52:54
ウォ○トさんのネズミの話ですか、セリフをあの声で言っていると思うと些か滑稽ですね。
紫の登場シーンの「どん滑りとリテイクの境界」で戦闘シーンで昂ぶっていたテンションが台無しになったのが残念。
あくまで私は、です。こういった展開を好む人も多いとは思いますが、私には合わなかったようでorz
奇抜な発想を練りこんだ、良い物語だと思いました。お疲れ様です。
21. 7 二俣 ■2007/05/30 21:16:22
ネタは極上、料理の仕方も相当上手い。
が、確かに長い。削れそうな部分が目に付いてしまうのでどうしてもマイナスが入ります。自分も書き手としては一度書いたもの削りたくない、という気持ちは死ぬほどよくわかるのですが(特に突発的に思いついた会話ギャグの部分とか!)断腸の思いでマイナス。
…あと正直楽屋オチはいらないかと。
22. 10 K.M ■2007/05/30 21:24:23
いやもう「そう持ってきたか!!」という感嘆の念しかありません。
おむすびころりんからまさかかの有名な夢の国を絡めるとは…想像すらしていませんでした。
投稿期間中の偽とは、狭いほうの海を挟んだ大陸の国にある『アレ』の事ですよね?
読んでる時にそれを見てこの話を考えたのかと思いましたが、そうでないとしたら…事実は小説より奇なり。
23. 5 たくじ ■2007/05/30 22:18:26
よく作りこまれてる話ですね。それにしても長くて疲れました。
24. 5 藤村る ■2007/05/30 23:47:54
 これ構成に難があるよなあ……てか、やりたいこと詰め過ぎ。
 成功してるのか失敗してるのか、読んでるときは混乱すると最後まで読むとあれこれ繋がってたのがわかるというか、まあ紫は空気読め。
 あと蓮子可愛いよ蓮子。
25. 9 時計屋 ■2007/05/30 23:49:04
ものすごい力作でした。
前半のまったりしたピクニックの情景も、後半の東方シリーズ本編を彷彿とさせる戦闘シーンも
描写はやや華美過ぎるところはありましたが、非常に読みやすく洗練された文章でした。
ストーリーも良く考えられており、おむすぎころりんの話から引用されたどんでん返しも、
読者の意表を突く優れたものに思えます。

しかし、ただ一点。
おむすびを落として号泣したり、ル○ィ並みに暴食する霊夢に代表されるような、
ギャグに傾倒したキャラが、終盤のシリアスな場面を演じるのはどうにも違和感がありました。
ギャグ単独では面白く、決して質が悪いものではありませんが、その存在がSSのシリアスな部分に溶け込んでいない気がします。
紫の登場シーンでそれがもっとも顕著になっており、
それまでの弾幕勝負で高揚していた気分がそこで萎えてしまいました。

SS自体は高レベルだっただけに、この点だけが非常に勿体無く感じました。

最後に、有名な誤字なので念のため指摘しておきますが、「すべからく」が誤用されています。
26. フリーレス 鼠@石景山 ■2007/06/02 01:09:47
さあ、泣き言の後は言い訳のコメント返しの時間です。

■時計屋さま
ご指摘の通り、東方本編の流れを少し意識しています。感覚的には4〜6面ですね。ゲームになるような大規模な異変以外にも霊夢は様々な異変を解決していると思っているので、こういう形式をとりました。
ギャグとの温度差が激しいというのは書いていて感じましたが、この話は真面目なフリをしているだけで、根幹はコメディというか、笑う話の……つもりだったんですけど……
紫の登場は戦闘シーンを書ききる余裕が無かった為の苦肉の策ですが、実際のところ、もし書いていたらあと30キロくらいは増えていたと思います。正直な話、そこまで長いと読み切れない人が出るだろうから、これでもいいのかな、と。
紫は水を差す為に出てきたので、あの漫才が滑るのは必然だったりします。
あ、霊夢の暴食は「アンチェイン(何者にも縛られない者)」からです。体脂肪率5%。

■藤村るさま
>やりたいこと詰め過ぎ
まったくもって仰るとおり。一度書くと削る勇気が持てない貧乏性なので、シーンが多いとこの体たらくです。
成功か失敗かと言えば、調整が碌に出来ないままに出さなければならなかったので、自分的には失敗です。
紫は邪魔をする為に出てきたので、漫才が滑るのはともかく、戦闘を中断させるという意味では正しく機能しています、が、作中にそれを匂わせる文が一切ないので、エスパーかキバヤシさんでもない限りは分かりません。
蓮子って一人で○ィズニーランドとか行っても、しっかり楽しんで帰ってきそうな印象があります。
蓮子かわいいよかわいいよ蓮子

■たくじさま
ありがとうございます、そしてお疲れ様でした。長さは……申し訳ないです。
長くても疲れない話を書けるよう、精進します。

■K.Mさま
穴→地面の穴→おむすびころりん→鼠→鼠の妖怪→○ッキー、です。
「おむすびころりん」は複数出てくると予想していましたが、「鼠」を名乗る以上鼠が出てくる話で遅れを取るわけには行くまい、と気合を入れてみました。他に誰も居なかったので盛大に空振りしたわけですが。
大陸のアレは奇跡的なタイミングで出てきました。あれがなければ「彼」の苦悩はもっと少なかったかもしれません。

■二俣さま
女々しい奴と笑ってください。
紫の漫才は弾幕を入れる余裕が無かったが為の物ですが、紫は戦いを邪魔するために現れたので、内容的には大差ありません。
決着の鍵を握っているのが橙藍なのですが、下手に戦いを長引かせた後に「なーーーーーおーーーーーーー!!」だと、さっさと鳴いておけば戦う必要ないじゃんよ、と言う事になりかねません。
つまり、戦っても違和感は拭えないのです。
その辺の齟齬は戦闘後の丘の所で読み取れます。碌に戦っていないはずなのに、激闘の後のような書き方がされているので。
それ以外の小ネタにしても、本来なら一本の短めの話として成立させるはずだったものを、無理矢理に組み込んでいるので歪さが出ています。
なんですかね、すごい大きな鍋に構わず具材を放り込んで煮たら意外と食えるものが出来た、そんな感じですか。

■眼帯因幡さま
明記する事の許されない名前を使う時点でかなりの危険球です。
紫の乱入は橙を出すために必要なのですが、要は「猫の鳴き声」なので戦闘を続行する意義があるのか、という話になります。
むしろ戦う意味は無いと判断したのと、やはり期限的な問題があり、あのような形になりました。
もし戦闘を書いた場合、あと30キロは上乗せされていたと思われます。
結果、お茶を濁すような漫才を入れるはめになったのですが、どっちに転んでもあのシーンは納得のいく結末にはならなかったと思います。
つまりは構造上の欠陥です。

■リコーダーさま
夢を護るには、それ相応の覚悟がいるのでしょう。まして自分の存在意義もかかっていますし。
あんな顔で真面目な台詞を言われても困りますがね。

■執さま
古代語かどうかはともかく、いろいろと勉強している魔理沙はいろいろなジャンルの魔法を知っていそうです。
なんといっても努力家ですし。
ZUN節かどうかは自信がありませんが、展開は、もしこれがゲームなら4〜6面に相当するように流れています。
大異変ではないにせよ、霊夢は妖怪と戦っているでしょうし。
ぶっちゃけると、パロディを抜けばもっと軽くなるんですけど、こういった書き方しか出来ないので、幾つものシーンをまたぐ話を書くと瞬く間に巨大化します。
お粗末さまでした。

■いむぜんさま
短くどころか、この1.5倍くらいの規模が最終形です。
弾幕戦をごっそり削った事と、ご指摘にある通り魔理沙の心情描写など、入りきらなかった要素が山ほどあります。
しかし、この場で100キロを越すような代物は、評価以前に読みきる事が出来るのかという疑問が生まれたので、この程度でまとまりました。
本音としては増やしたいけど、削らないと読んですら貰えないかもしれない、そんなジレンマ。

■反魂さま
城内に3万も居たのかと思うとちょっと多すぎかとも思ったり。
長いですよね。どう考えても。大きくなればどこかで締めないといけないのですが、その辺を怠ったのでこの体たらくです。
展開は一回限りのゲストを入れて「劇場版」っぽく、内容も起承転結の一本道なので、ボリュームに惑わされなければ中身は存外お粗末なものです。
誤字、誤用指摘、ありがとうございます。以後気をつけます。

■らくがん屋さま
丁寧というか、クドいというか。
簡素化すべきところを他と同じペースで書いたのが、このサイズになった原因ですか。
おむすびパートの緩さは、霊夢を炊き付ける材料なので意図的にスローテンポにしてあるのですが、それ以降にスピード感が無かったのがいけませんでした。

■秦稜乃
堅い話を書けないのと同じで、ギャグに徹する事も出来ません。
人間を見限り幻想郷に流れ着く妖怪が居る傍ら、それでも人間の世界に留まる事にこだわる者がいるということなのでしょう。
危ない? はははなんのことやら

■木村圭さま
紫は邪魔をしに出て来たのです。
ただ、これは紫にとっても本意ではありません。
人と妖、それぞれの意義を賭けた決闘に、「理念こそが美しい」と提唱する紫がそれでも水を差したのは、双方とも失うべきではないと考えたからかもしれません。
その程度には紫も人間味があると思います。
ほんとかな。

■椒良徳さま
バトルに関してはあとがきにある通りです。
これ以上大きくする度胸が無かった事と、いまいち戦闘する意義を見出せなかったので、バッサリと切り捨てました。
中、短編ですか……【金閣寺の一枚天井】並みの難題だ……

■74さま
著作権にかすりまくり。当たれば致命傷。

■shinsokkuさま
とてもありがとうございます。
物凄くありがとうございます。

■blankiiさま
発想ですか。これは最早狂人の域かと。
一応、穴→地面の穴→おむすびころりん→鼠→鼠の妖怪→○ッキー、なんですが。
軍勢は確かにそれを意識していますね。というか、アレを読んだ時にこのシーンが浮かんだのですが。
よく城の前で踊ってる写真とかCMあるじゃないですか、あんな感じです。

■翼さま
後書きにもありますが、前回「反則だ」と言われたので、今回は明確に危険球です。むしろ殺す気で投げています。自分を。
昔話は正体を暴くとロマンが失われたりします。
都合のよい夢の形の方がいいという事もあるのかも知れませんが。

■desoさま
基本の流れは 穴→地面の穴→おむすびころりん→鼠→鼠の妖怪→○ッキー、です。
ご指摘の通り、紫、というより橙に用があるのでどうしても紫を出さないといけないのですが、博麗&八雲のスーパータッグだと、力押しで勝ちそうな気がしてきたのでこういう形になりました。
紫の漫才は戦いに水を差す為に入れたので(容量や期限の都合、まともに戦闘はさせられませんでしたし)、萎えるのが正解です。
総力戦で勝利を勝ち取る少年マンガ的な展開は「ちょっと違うだろう」と。

■流砂さま
け、結婚はお互いの事をもっと知ってからにしたいとおもうんです……
それはともかく。
正直、今回の作品群の中では明らかに劇薬に属する本作。むしろ魔女の大鍋。
あとこの程度で一流判定をしていると、創想話の名作傑作を読んだら大変な事になりますよ。
私などまだまだです。

■人比良さま
!! 危惧していた事を指摘された!!
……これ、箱でも通じるよなー、とか考えながら書いていたのは確かにあります。
どちらも閉鎖的なお題だからかもしれませんが。

■あああさま
ああ、それでも読み抜いて下さった貴方に無上の感謝を。
お疲れ様でした。

■詩所さま
人は知る事を欲する生き物です。未知の領域に思いを馳せ、想像の翼をはためかせます。
我々が愛してやまない幻想郷も、どこかの穴の先にあるかもしれません。
あるといいなぁ。

■爪影さま
最も「なんでもあり」の近くに存在する紫を使うのは、二次創作に於いては勇気がいると思います。
しかし、今回の一件は紫の力が無ければ解決しなかったかも知れません。
彼の「夢の国」を見限らなかったゆかりんの優しさに乾杯。

■A・D・Rさま
思いつきで書き加えている部分も多々あるので、書いていても先が読めませんでした。
優しい幻想郷は妖怪の楽園ですが、それを受け入れる事を是としない者が居てもいいと思います。
妖怪は人を喰うとされますが、彼らは飢えを満たすのに「人よりも美味しい物」を知っているのでしょう。
地の文の堅さは……調整している時間がありませんでした。
読みにくさは、そのまま読者様への負荷になるので、気を配るべき所なのですが……
27. フリーレス no ■2007/06/23 19:57:04
終わってから感想。
一言だけ。最高。
名前 メール
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