現実と幻想の戦

作品集: 最新 投稿日時: 2007/05/13 07:45:25 更新日時: 2007/05/15 22:45:25 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
 今から少し先の未来、人類は宇宙進出に成功した。

 そこに至るまで様々な障害があった。しかしその困難をすべて乗り越えて、人類はやっとの事で月面に小さい規模ながら、都市と呼べるものを完成させたのだ。
 この大いなる一歩に人々は歓喜し、未来は明るい事を確かめ合った。

 しかしそれも唐突に終わりを告げる。

 月面都市完成の記念式典の最中、正体不明の敵性存在に襲撃を受けたのだ。
 必死の抵抗を試みたのだが敵の攻撃はあまりにも強力。結局、十年以上を掛けて完成させた月面都市の半分以上が壊滅してしまった。

 圧倒的な敵の存在に、一度は月の開発をあきらめようかという意見さえも出た。しかしそうしてしまうには、今まで投資したものが余りにも多すぎたのである。それに、たとえ今、月面を放棄したとして、この先人類が先に進むためにはいつかは通らなければいけない道なのは確実。
 様々な事柄を考慮した末に人類側が出した答えは……戦争である。

 その決断を下してから、人類側の行動は迅速だった。まず各国の研究者たちを集結し、残された映像データから敵の戦力を解析。数ヶ月の間に試作型の兵器を作り上げた。
 しかし兵器と銘は打たれているが、最初から全面戦争という訳にも行かないので、完成したそれは兵装などの類は皆無で機動力だけを優先した月面における敵性存在探査用の物である。

 正直な所、この試作機には余り大きな期待をしていなかった研究者たちだったが、彼らの考えは良い意味で裏切られる事となった。何故なら大方の予想とは違い、撃墜されるまでの間に敵の本拠地らしき場所を発見したのだ。
 ……だが研究者たちの表情は芳しくなかった。普通ならこの結果に喜ぶ所だろうが、試作機が収集してきたものを解析するにつれ、とんでもない事実が浮き彫りにされていったためである。

 あまり認めたくは無い事実を再確認するために新たに数機の試作機が開発され、更なる探索と撃墜を繰り返していき……そしてその都度得られる情報が、人類を更に追い詰めていった。

 幾度もの探査の結果、最終的に得られた情報を大まかにまとめるとこうである。

 まず第一に、敵はこちらに対して徹底抗戦の態度を崩さない。次に、敵は人類を遥かに上回る技術力を持っている。そして最後に、敵の本拠地と思われる場所は、人類の科学力では解析不可能は障壁の向こう側に存在している。

 これだけ見れば絶望的に思えるかもしれない情報だったが、実際のところはそれほど困難な状況でもない。もともと人類側の考えも敵対である訳だし、技術に関して向こうに軍配が上がるといっても、元々の理論は同じ土台の上にあるには変わりない。そう考えてしまえばいくらでも対処出来るだろう。
 つまり問題は、現在の科学力では対処の出来ない最後の事柄だけなのである。


 幾度かの小競り合いを繰り返し、それから数年の時が流れた頃。
 ついに障壁を無効化する兵装が完成した。


 そしてそれを、兵装が完成することを信じて、同時に開発を進めていた完全自立型機動兵器の隊長機に積み込み、試験的な稼動実験のために起動した直後。

 その隊長機は地下格納庫の壁を突き破り、何処かへと飛び去ってしまった。

 茫然自失になる開発者たち。しかしさらに最悪な事に、その機体を守るために開発した機動兵器群も、後を追って次々に飛び立って行ったのである。
 
 結局、その際の騒ぎで研究所は壊滅的な打撃を受け、何年にも渡る研究の成果は紛失。世界中から集まっていた研究者たち……言ってみれば人類最高の頭脳集団に幾人もの死傷者を出し、戦争での勝利は絶望的なものとなったため、最終的に月面からの撤退を余儀なくされたのである。


 そして研究所壊滅の原因となった人類の切り札とも言える機動兵器群は、日本のとある山奥で消息を絶ったという報告が残されただけであった。




 舞台は幻想郷へと移る。




 ゴゴン!

「うっわ」

 突然、霧雨魔理沙の家を轟音と激震が襲った。そのせいで彼女は床に尻餅をつき、更には机の上の試験管が次々に倒れ、不可解な匂いの煙が室内に充満していく。

「いてて……何だ今のは」

 魔法薬の研究を台無しにされた彼女は、その原因を調べるべく家を飛びだした。

「……ってなんなんだこりゃ」

 勢いのままに飛び上がってはみたものの、目標の物はさしたる苦労も無く見つけることができた。というよりは探す必要すらないほど堂々と眼下に見えていたのである。

「馬鹿みたいにでかい穴だな」

 そんな魔理沙の言葉どおり、迷いの森の一角には巨大な穴が出現していた。

「一体どこの誰がやったのか知らないが……」

 自分の家の近くに突如そんなものが現れれば、普通の常識を持った人間ならばまず退避するだろう。しかしここは幻想郷、そんな常識など通じない自分勝手な性格の者ばかりが住んでいる場所である。そしてさらにその中でも、進んで危険に飛び込んでいく好奇心の塊のような人物が、この霧雨魔理沙嬢なのだ。
 その彼女が、こんなあからさまな異常事態を黙って見過ごすはずも無い。

「とりあえずは行ってみるか」

 そう口にすると、なんの躊躇いも無く箒に乗ったまま、その穴の中へと急降下を始めた。




「思ったよりも深いな」

 穴は魔理沙の予想以上に巨大だった。それはしばらくのあいだ降下を続けても底に着かない事からもわかるだろう。

「……おっと?」

 などと考えている彼女の視線の先にようやく何かが映った。地上から大分離れているためほぼ真っ暗闇なので、魔法によって生み出した光を頼りにその何かを探る。
 とその時、不意に彼女の目の前に彼女の数倍はあろうかという大きさの物体が飛来した。

「うわっ!?」

 視界の悪さと何よりかなりの高速のため、それが何であるかは分からなかったが咄嗟に魔理沙は回避する。

「いきなり何なんだ」

 通り過ぎていった方を振り向くと、反対方向にて旋回を終えたそれが滞空していた。止まったことによりようやく姿を確認できた魔理沙。だがその外見は、彼女の知識の中には存在しない不可解なものだった。
 なぜならそれは明らかに金属質な素材で出来ていたのである。ここまで巨大な金属を高速で飛ばすとなれば、それ相応の力が必要である。それにそもそも形からして見慣れない。

「……いや、なんか見覚えがあるな」

 ふと彼女の脳裏に掠めるものがあった。

「ああそうだ、香霖のとこにあった変な模型だった。確かヘリコプターとかなんとか」

 外の世界にある空を飛ぶための道具だと説明されたはずだが、その時の彼女は信じようとしなかった。それはそうだろう、自分の身ひとつで空を飛ぶ知り合いなど彼女の周りには無数に居るのだし、自身も箒が一本あれば事足りるのだ。なので魔理沙にしてみれば、そんな大掛かりなものを作ってどうするんだという思いと、なによりそれが飛ぶ原理というのが頭に付いている馬鹿でかい扇風機によるものだという理由から、また香霖の法螺話かと笑い飛ばしたのである。

「……むう、こりゃ後で香霖に謝らなきゃな」

 流石の彼女も目の前で実際に扇風機を回しながら飛んでいる物体を見ては、信じざるを得ないのだろう。
 などと考えていると、その物体は下部に取り付けられている筒状の部分を魔理沙のほうに向けた。嫌な予感を覚えた彼女は、再び回避行動に移る。

 直後、激しい連射音と共に一直線の弾幕が撃ち出される。

「うわ」

 魔理沙は筒の先から吐き出された弾幕を避けると、鳴り響きつづける音に顔を顰め耳を塞ぐ。しかし穴の中に反響して更なる大きさとなった音は、手の隙間からも聞こえてくるほどだった。

「あー、煩いぜ」

 箒に跨ったまま両手を放した状態で器用に飛び回り、ある程度敵の動きを把握すると、弾幕の範囲から上手く外れるように飛行し始める。

「さてと、それじゃあいい加減に煩い羽虫を潰すとするか」

 そう言うと彼女は今までの弾幕を引き付ける動きから急上昇し敵の真上に陣取る。そして真下に向かってマジックミサイルを放った。
 魔理沙の撃ち出したその一撃は、対象を一瞬見失って硬直していた敵機の真上、つまり飛行機関であるローターに直撃する。

「おおー、やっぱりあれで飛んでたんだなあ」

 彼女は感心したような声を上げながら、自分で撃ち落したそれが落下していくのを眺める。そしてそれが墜落すると同時に、小さくは無い爆発が起こった。

「あん?」

 少々困惑したような表情でそこへ向かおうと箒を向けようとするが、それを阻むかのように再び下から何かが飛んで来る。

「なんだ、もう復活したのか。せっかちな奴だな……って」

 言葉の途中で驚きの声を上げる魔理沙。飛んできたのは先ほどと全く同じ敵――――が複数。

「おいおい、一度負けたからって今度は数で攻めるっていうのか?」

 などと軽口を叩いているその合い間にも次々と敵機は増えていく。

「あー」

 ぽりぽりと頭を掻く。
 
「うー」

 増援は止まらない。

「…………よし」

 決断する魔理沙。既に彼女の前、というか全方位には、悠に三桁に届くであろう敵機の集団があった。
 それらを睨みつけると箒を両手でしっかりと握り締める。そしてその動きに反応して一斉に銃口を向ける敵機達。

「三十六計逃ぐるにしかずだ。それじゃあ行くぜ……ブレイジングスター!!」

 箒の先を天に向け、魔法の光を纏いながら突撃を始める魔理沙。今まさに弾幕を撃ち出そうとしていた敵機を、質量の差など物ともせずに弾き飛ばしながらさらに加速する。そして見事に包囲網を抜けた彼女はトップスピードまで達すると、一気に地上へと姿を現す。そしてまるで地上から撃ち出された流星かのように天高く飛び上がって行った。




「ふう、なんとか振り切ったみたいだな」

 追手が居ない事を確認すると魔理沙は一息つく。

「しかしなんだったんだありゃ」

 首を捻って考えるが、だからといって答えが出るわけでもない。

「まあ、考えるのは柄じゃないな……まあ、あいつなら知ってるだろ」

 わからなかったら人に聞く、とばかりに彼女は箒を目的地へ向ける。
 目指すのは香霖堂。




 そして数分もしないうちに、魔理沙は香霖堂へと降り立った。

「おい香霖、居るか」
「あら、そんなに急いでどうしたのよ」

 中に入った彼女の言葉に返って来た声は、店主である森近霖之助のものではなく博麗霊夢のものであった。

「霊夢か、お前が居るならちょうどいいぜ」
「ちょうどいい? ……それってもしかして、あんたの後ろに居るやつの事?」
「あん?」

 彼女の言葉に怪訝な顔で振り向く魔理沙。その視線の先に映るのは、先ほど撃ち落したものより鋭角的な作りをしている機体だった。

「……」

 振り向きなおし、再度確認をする。
 そうして溜め息。

「あー、まあそうだな」
「またへんなの引っ張ってきたのねえ」
「私は巻き込まれただけだぜ」
「はいはいそうね」

 今にも動き出そうとしているそれからの攻撃を防ぐため、霊夢はとりあえず香霖堂の周囲に結界を張った。直後、機体中央部に取り付けられている筒――つまるところ砲門――から、勢いよく弾幕が撃ち出される。

「随分と礼儀がなってないわね」
「だろ?」

 そんな会話をしているとようやく奥から霖之助が顔をあらわした。

「おいおい魔理沙、僕の店にへんなのを連れてくるんじゃない」
「私じゃないぜ」
「それじゃあなんなんだ?」
「この店がへんなのを吸い寄せてるんじゃないのか?」

 言われ、魔理沙と霊夢を交互に見る。

「確かにまあ、逸れは否定できないが」
「魔理沙はともかくなんでこっちまで見るのよ」

 あからさまな視線を向けられた霊夢が文句を言う。

「いや、私は普通だぜ……って随分と話がずれてるな」

 当初の目的を思い出した彼女は、霖之助へと問い掛ける。

「なあ香霖、お前あのへんなのが何か知ってるか?」
「ああ知ってるよ」
「へえ、何なんだ?」
「そう急かさなくても教えるさ。あれはね、外の世界の空飛ぶ道具だよ。単純に飛行機と言うんだ」

 彼の言葉に魔理沙は軽く頷いた。

「あー、やっぱりか。じゃあこの前に言ってたヘリコプターとかいうへんなのと同じって事だよな」
「おや、魔理沙にしては随分と物分りがいいじゃないか。というかよくヘリコプターなんで覚えてたな。興味の無い君の事だから、どうせすぐに忘れたんだと思っていたよ」
「確かに忘れてたんだけどな。流石に実物を見れば思い出しもするさ」

 先ほどの穴の中での駅ごとを思い出しながら話し続ける。

「ん、ということはヘリコプターの方もどこかで見かけたのかい」
「まあな、撃ち落してやったぜ」
「そりゃ勿体無いな。回収は出来そうだったかい」
「いや、なんか爆発したっぽいから無理じゃないのか」
「ふむ、なるほどな。たしか飛行機全般は、ストーブと同じようなものを使って飛んでいるらしいから、下手な事をすれば爆発するというのも頷けるか」

 そうこう話ているうちに敵機の数は先ほどと同じように増加している。

「というか早めに手を打たないとまずいんじゃないのか」
「そうだな、僕の店が被害を受けるのはあまり望ましくない」
「霖之助さんの店がどうなろうと知った事じゃないけど、ここから出られないのは嫌ね」
「あら、外に出ても余り変わらないわよ」

 三人の会話に割り込むようにして、新しい声が掛けられる。そちらを見てみると、何時の間にか売り物の壷の上に腰掛けている八雲紫が居た。

「……まあ、あんたの唐突さにはいい加減なれたからいいけど……どういうことなの紫」
「言葉どおりの意味よ。どこもかしこもあいつらで一杯だから、ここから出たとしても同じという事ね」
「ってことはなんだ、こんな無駄にでかい奴らがうじゃうじゃ居るってのか」

 呆れたように答える魔理沙。

「ええ、見たところ数百はくだらないわね。それどころかあれよりも大きなものが数機、そしてそれを更に上回る巨大なものが四機ほど居たわ」
「はあ? あれより大きいってどれだけなんだよ」

 彼女は先ほどよりも更に呆れた声で呟く。

「そうねえ、まあこんな店程度じゃ比較にもならないくらい大きいのは確実ね」
「あー、ならこんな店じゃ一たまりも無いな」
「そうね、こんな店じゃね」
「……お前たちな……まあそれほどのものなら確かにこんな店扱いされても仕方が無いのかもしれないが」

 むむう、と唸る霖之助。

「にしても、いったいどうしろっていうのよ、もう」

 そんな彼を無視して霊夢が嘆息する。なにか思う所があるのか、随分と憂鬱そうな表情である。

「あら、霊夢は気づいている見たいね」
「あたりまえでしょ、私を誰だと思ってるのよ」

 心外だと言わんばかりの顔で言う。

「それもそうね。でも本当にどうするのかしら。正面突破でもする?」
「それは魔理沙の仕事でしょ。私は流石にこんなの全部を相手には出来ないわよ」
「あー、なんの話だ?」

 会話についていけない魔理沙が問い掛ける。 

「察するに、この状況の原因を二人は理解しているって所じゃないかな」

 二人の代わりに霖之助が推察を述べる。その内容に間違いは無いようで、彼女達は揃って頷いた。

「そうなのか、なら話は簡単じゃないか」

 今にもさあ行こうと言わんばかりの魔理沙に制止の声が掛かる。

「いや、ちっとも簡単じゃないわよ」
「なんだ?」
「あのねえ……まあいいわ、仕方ないから説明するけど……」

 霊夢の説明はこうである。
 彼女は先ほどここから少し離れた場所にて博麗大結界の異常を察知したらしい。その異常――というか正直なところ異常なんてレベルのものではない――を一言でわかりやすく言ってしまうと……結界に大穴が開いたのである。

「前代未聞よね」
「何事も最初はすべて前代未聞だよ……なんて軽口で凌げるほど簡単な問題じゃないねこれは」
「それならなおさら迅速に行動するべきじゃないのか?」
「そうは言ってもねえ」

 正直な所、現在この場にいる面々では力不足感が否めない。そういったわけで霊夢はどうしたものかと頭を悩ませているのだ。

「心配しなくても、もうしばらくすれば状況も変化すえうんじゃないかしら……まあ状況というよりは戦況というのが適切かもしれないけれど」

 そんな彼女に対して、紫はまるで全てを理解しているかのように微笑むのだった。




 霊夢たちが相談をしている間に、紫が言っていた巨大な数機の中でも速度のある機体が、とある大きな屋敷へと到着していた。彼らは本来、月での運用――つまりは低重力下での戦闘を主軸に開発されているのだが、だからといって大気圏内での行動を想定されていない訳ではない。行動は制限されるが十分な作業が可能なのである。
 そしてこの機体がここを目指した理由はただ一つ。自分たちの仇敵として設定してある月の敵性存在と同じ波長のものを確認したからだ。
 彼はその建造物を攻撃するために、追従してきた地域制圧用の爆撃機に待機指示を出し、確認のためにもう一度、建物内部の生体反応を調べる。そうすると眼下の建物内部には、敵性存在のほかにも複数の生命反応が確認された。
 
「――――」

 一見人間の形をしていたため、作戦行動に支障をきたしそうになる。彼らにとって人間とは創造主であり、その神にも等しい存在を攻撃

する事は最大級の禁忌だからだ。

「――――?」

 しかし詳しいスキャンの結果が出ると、彼はその思考を切り替え攻撃の指示を下した。なぜならその人型の生命体は生物学上は人間とは違う哺乳類――平たく言えば兎という結果がでたのである。
 それならば躊躇う必要など全く無い。その程度の犠牲は許容範囲内、だからこそ彼は容赦なく殲滅の号令を出した。


 数秒の後、


 ――――爆音。


 そうして制圧の対象となった建造物。
 永遠亭は炎に包まれた。




 パチパチという小さな音と、風が唸るような大きな音を響かせて、木造家屋が燃えている。

「なん……なのよ一体……っ!」

 永遠亭の主である蓬莱山輝夜は気が動転していた。

「ここまでやるなんて……許せない」

 余りにも唐突な敵襲、なんの予告も無い爆撃。その爆風で吹き飛ばされ、家の壁の下敷きになりながら彼女は悪態をつく。

「姫!」

 そこへ聞きなれた声が飛んでくる。

「……永琳」
「ご無事ですかっ」
「ええ、なんとかね」

 自分の身を案じて飛んできた八意永琳に少しだけ頬が緩む。しかし周囲の惨状を目にすると、再び怒りが込み上げてきた。

「あいつ、よくもまあこんなことをしてくれたわね」

 普段から自分を目の敵にしている少女を思い浮かべる輝夜。

「姫、それなのですが」
「……なに」
「これは彼女の仕業ではないようです」
「どうして?」

 永琳の言葉に疑問の声を上げる。

「冷静になって考えてみてください。今回のこれは姫だけでなく住人の被害すらも省みないものです。あの方にそこまで酷い事が出来るでしょうか」
「……それは、確かにそうかもしれないわね」

 混乱気味だった頭を軽く振って思考を切り替える。

「それならいったい誰の仕業だというの」
「……先ほどの攻撃は爆弾か何かではないかと思われます」

 不機嫌な表情になる輝夜。どうやら理解したようである。

「……なるほど、つまり月からの追手が来たってことなのね」
「ええ……可能性を考えるならそうでしょうが」

 しかしそう言う永琳の口調は、どこか納得していないようなものを含んでいた。

「なにか疑問でもあるの?」
「そうですね……二つほど」
「なんなの?」
「まず一つ目ですが、追手とはいえ何の確認も忠告も無しにこんなことをするのでしょうか」
「よほど焦っていたんじゃないのかしら」
「確かに千年も過ぎてますから、可能性は否定できませんが……」
「まあいいわ、次は?」

 とりあえずは保留として輝夜は先を促す。

「はい、それで二つ目なのですが……そもそもこの爆撃は月の技術から言えば随分と旧式の物のようなのです」
「……どういうこと? いえ、いいわ。どうせ永琳には予想がついてるんでしょう」

 主の言葉に頷く永琳。月の頭脳と賞されるほどの天才は伊達ではないのだろう。

「あくまでおそらくですが、この幻想郷の外からやって来た何者かの手によるものではないか、と思われます」
「ふうん、まあ貴女が言うんだからそうなんでしょうね……でもまあ、なんにしろ」

 周囲を見渡し惨状を確認。

「犯人を許すつもりなんて毛頭無いけれどね」
「そうですね……あら」

 そんな風に元凶に対して怒りを燃やしていた輝夜と永琳のところへ向かってくる気配が複数。

「師匠! 姫!」

 その集団の先頭にいた少女、鈴仙・優曇華院・イナバから声が掛けられた。

「貴女たちも無事だったのね」
「はい、何名か負傷していますが、幸いな事に全員軽症です」
「そう、良かったわ」

 鈴仙の後ろについて来ている数十匹の兎をみて、ほっとしたように息を吐く永琳。

「とりあえず怪我をしている子は来なさい」

 うさぎたちの前に屈み込み、持っていた救急箱から道具を取り出そうとする永琳。

 その時、

「っ! 全員伏せなさい!」

 彼女達へ向けて多数の弾幕が高速で飛来した。
 射線を辿ると廊下の先に砲塔が見える。どうやら会話をしている間に、既に永遠邸内は占拠され始めているようである。

「くっ」

 屈んでいたために一瞬反応の遅れた永琳とは違い、輝夜の対応はいつもの彼女からは考えられないほど俊敏で的確だった。咄嗟に自らも弾幕を張り第一波を防ぐ。
 しかしそれが着弾したと同時に爆発、膨大な量の爆炎が襲って来た。

「っまだ!」

 だが更に彼女はそれを防ぐために火鼠の皮衣を展開。同時に襲ってきた第二波も迎撃する。

「きゃぁ!」

 その時、背後から聞こえる悲鳴。背後を振り向くとイナバ達が何人か吹き飛ばされていた。たとえ炎は防げても、爆発によって生じる爆風は防げなかったのだろう。
 そしてその振り向いた一瞬が隙となった。

「まずいっ」

 先ほどよりも一回り大きな弾幕が撃ち出される。

(迎撃が間に合わない……ならっ!)

「姫!」

 心中で決断すると永琳の制止の言葉を振り切り、なんの躊躇いも無く輝夜は弾幕の前に身を躍らせた。




「……またか」
「気になるなら見てきたらどうだ」
「いや、いい」

 先ほどから同じようなやり取りを繰り返しているのは、藤原妹紅と上白沢慧音である。

「よっと」

 彼女達は人里の周囲にて、飛び回る敵機達の撃破に勤しんでいた。

「ならいいんだが……と、まただな」

 何機もの敵を撃ち落しつつも二人が気にしているのは、遠くの竹林から聞こえる爆発音と何かが燃えるような赤。
 特に妹紅は爆音が聞こえてくるたびに振り返って確認している。

「……ふん」

 あからさまな態度をとりながらも、妹紅はここを離れようとはしない。それは慧音に対する義理という面もあるだろうが、やはり彼女にとっても人里は大事な場所というのが大きいのだろう。

「ああもう、いい加減にしろ。気になるなら行けと言ってるだろう」

 煮え切らない妹紅の態度に慧音は文句を言う。

「でも」
「でもも何もない。横でそんな不機嫌そうな顔をされちゃ、こっちだってたまったもんじゃない」
「けどもし慧音や里の人になにかあったら」
「そっちは気にするな。さっきから見ている限り、こいつらは人間を襲わないようにしているみたいだからな」
「それじゃ慧音は危ないじゃない」
「あのな」

 呆れたように言いながら、背後に迫った敵機を撃墜する慧音。

「私がこの程度の奴らに負けると思ってるのか?」
「いやそれは」
「ならいいだろ、さっさと行って来い」
「……わかった」

 彼女に背中を押される形で、妹紅はやっと永遠亭へと向かう事にしたようである。

「なるべくすぐに戻るから」
「気にせずゆっくりして来い」

 そう言い残して妹紅はこの場から去っていった。

「まったく、素直じゃない奴だ」

 よほど気にしていたのであろう、一気に加速した彼女は既に視界の中には見当たらない。

「ふう……さて、後はこっちに集中するか」

 一応は人間である妹紅が居なくなった事によって弾幕が増加する。

「今夜が満月じゃないのは残念だが……お前ら程度なら問題は無いな」

 そうして慧音は人里を背にし、改めて敵へと弾幕を放つのだった。




 永遠亭の一角は跡形も無く吹き飛んでいた。

「……ぐ……ぅ」

 だが輝夜の身体を張った行動の結果、彼女に守られたイナバ達は皆、なんとか一命をとりとめている。そしてぶつかる瞬間に放った弾幕によって、敵機も大半が破壊されていた。

「がっ……!」

 とはいえ、最悪の結果だけは防げたものの、爆発を目の前で受けた輝夜の身体は酷いものだった。前面はほぼ炭化し、愛らしい顔は見る影も無い。なんとか人としての原形を止めているだけでも奇跡だろう。

「……姫っ」
「止まりなさい永琳……っく……私よりも、その子達が先よ」

 駆け寄ろうとする薬師に制止の声を掛ける。

「ですがっ」
「いいから……どうせっ……ぐ……私は、死にはしない、から」

 全身を支配する狂いそうなまでの激痛に耐えながら彼女は言葉を紡ぐ。

「……はあっ!」

 言いながら、既に死に体となった輝夜は更にその身に鞭を打って、残っていた爆撃機へ向けて弾幕を放つ。

「……は、ふ」

 誰が見ても息も絶え絶え、という言葉が相応しいほどに限界となっている。しかしその瞳に宿る意思は、決して衰えてはいない。

「…………姫……」
「さあ、行きなさい。こんな場所じゃいつあいつらに襲われるか判ったものじゃないわ」

 多少は回復してきたのか、言葉自体はハッキリしたものになってきている。だがそれとは反対に、未だ生々しい肉が顔を覗かせているのも事実である。

「……」
「その子達を治療できるのは貴女だけよ。だから私はここで食い止めるわ」
「……ですがっ」
「いいから行きなさい……これは命令よ」

 その主としての威厳に満ちた言葉を耳にし、永琳は一抹の寂しさを感じる。だがそれ以上に輝夜の成長に対して、大きな喜びも感じていた。

「それにね、永琳。今のこの状況、私は結構嬉しいのよ」
「……え?」

 一瞬耳を疑う永琳だったが、次の瞬間その疑問は氷解した。

「だってそうじゃない? ここで私があいつの攻撃を耐えれば耐えるだけ――――大事な家族のことを守れるんだから」

 その時、輝夜の焼け爛れた顔に浮かんだ凄絶な笑みを、永琳はこの先ずっと忘れる事は無いだろう。

「主というのはただそこにいて堂々としていればいい、そんなことはわかってるわ。けどね、それでも前に立ちたい時があるのよ」
「…………わかりました」
「よろしい。それじゃ、行きなさい」

 深く、深く頷く永琳。

「みんな、無事な者は動けない子を抱えなさい……行くわよ」

 彼女は背後で痛みに呻き声を上げているイナバ達に指示を出す。

「でも師匠、姫は!」
「貴女も聞いていたでしょう……姫はここで敵を食い止めるわ。それに……その子を放って置くつもり?」

 大怪我を負い、腕の中で苦しむてゐに視線を向ける。

「わかったわね」
「……はい」

 そう言われては彼女に返す言葉などあるはずも無い。

「何をもたもたしてるの。早く行きなさい!」

 ゴウンゴウンという聞きなれない音があたりに響き始める。見れば焼け野原となった一角に、空を駆けていた凄絶なまでに巨大な指揮官機が舞い降りて来ていた。

「……はい!」

 永琳に続いて一斉に飛び立つイナバ達。その集団に向けて指揮官機は、機体中央部に設置された巨大な砲口を多数束ねた物――俗に言うガトリング砲を発射しようとする。

「させるわけ、ないでしょう!」

 輝夜は射線に再び立ち塞がり、人の頭ほどもあろうかという砲弾を全身全霊でもって弾き返す。

「これ以上、私の家族には傷一つたりともつけさせないわ」

 その言葉に呼応するかのように、撃ち出される弾幕は勢いを増していく。
 だが一撃でも喰らえば人の身体など一瞬で粉々になるだけの威力を秘めているそのことごとくを、彼女は防ぎ、弾き、逸らし、撃墜する。更にそれだけでなく輝夜の放つ五色の弾丸は、敵機のそれを押し返し始めてすらいた。

「ぁぁあぁあ!」

 純粋なまでの破壊の塊。普段なら既に何度死んでいるかは判らないだろう。
 しかしその程度では、今の彼女には届かない。


 家族を守ろうとする、蓬莱山輝夜の意思は砕けない。


「……いい加減に……落ちなさい!」

 ついに彼女の弾幕が敵機に達した。

「――――――!」

 敵機の無言の悲鳴が聞こえてくる。

「……っ!」

 徐々に装甲に傷がつき始めたことを確認し、さらに弾幕の濃度を深める輝夜。
 そして敵の周囲にまで展開した弾幕が一斉に襲い掛かった。

「――――――」

 回避する余裕も無いそれをまともに喰らい、機体の各所で爆発が起きる。同時にガトリング砲からの攻撃も止まった。

「………………」

 目の前で崩れ落ちていく敵機。

「……ふぅ」

 肉体的にも精神的にもギリギリな彼女は、ほっと一息つき脱力する。

(終わったの、かしら)

 だがしかし、彼女がそう思った次の瞬間。

「――――」

 倒したと思った敵機は唐突に持ち直し、

「――――――――!!!」

 先ほどの倍以上の弾幕を放って来たのである。

「っ! まだ!?」

 咄嗟に体制を立て直そうとするも、限界まで酷使した身体は上手く動いてくれない。目前まで迫り来る弾幕の奔流を視認しながら、輝夜は為す術も無くその身を晒す。

(間に合わない……!)

 訪れるであろう衝撃に目を閉じ身を硬くする……しかし、

(…………?)

 何時までたってもそれは訪れなかった。
 そしてその代わりといっては何なのだろうが、目の前から味わい慣れた熱風が押し寄せて来たのである。

「…………何やってるのよ」

 耳を打つ聞きなれた声に目を開ける。

「……妹紅」

 目の前には自分を撃ち落そうとする暴力などではなく、千年来の仇敵兼悪友である藤原妹紅が威風堂々と佇んでいた。
 敵機の放つ弾幕は全て、彼女がその背に迸らせる極炎の翼によって阻まれている。

「お前を燃やしていいのはこの私だけなのよ。その辺のこと理解してる?」
「……なに言ってるの? 貴女程度に燃やされるはず無いじゃない」
「はは、言うじゃないの」

 ごう、と妹紅の背中の炎が一段と勢いを増す。

「あら、当然のことを言ったまでよ」

 輝夜自身も彼女の言葉に合わせ、萎えかけていた気力がふつふつと沸いてくるのを感じている。

「そう? ならあいつの相手は一人で十分か」
「当たり前じゃないの」

 不敵に微笑みあう二人。

「わかった、なら私は――――自分の分だけで我慢しておくわね」

 言うや否や、妹紅は転身して突撃する。敵機も先ほどから自分の攻撃を防ぎつづけている彼女を最大の脅威対象として設定したのか、弾幕を逸らそうとはしない。

 そして、衝突。

「――――!」

 敵機は咄嗟に側面を向け、飛行ユニットの片方を盾にする。そして被害を受けた部分を切り離し被害を食い止めた。切り離された一角と一緒に妹紅は落下して行き……地表に墜落すると同時に爆発した。

「――――」

 最大脅威の排除を確認すると、先ほどまで撃ち合っていたもう片方を探す。

「どこを見てるの」

 そんな敵機に対して向けられた言葉は、上空から聞こえてきた。

「――――――!!」

 カメラや各種センサーを一斉に向けると、そこには輝夜を中心とした夜空を埋め尽くすほどの弾幕がひしめいていた。

「あなた相手にいつものルールは関係ない」

 それはまさに回避不可能。一部の隙間も無い一枚天井が下へ向かって迫っていく。

「その通り」

 回避行動を取るために地表まで降下しようとする彼に、追い討ちを掛けるように更なる声が向けられる。同時に下からの巨大な熱源反応。見れば先ほど排除したはずの脅威が再び復活していたのである。
 そして更にその体から計り知れないほどの炎を吹き出し続け、既に燃えるものの存在しないはずの地面一体を包んでいるではないか。

「――――――!!!!」

 白熱する電子頭脳。現状からの逃走方法を試行するも――――結果は全て否。


「――――」


 上から全てを押しつぶさんと、徐々に迫り来る真難題の天井。
 下から全てを焼き尽くさんと、吹き上げて来る大鳳翼の轟炎。


「――」


 そうして二人の不死人による圧倒的なまでの攻撃を受けた敵機は、爆発を起こすことすらも無く消滅したのであった。




 同時刻、マヨヒガにて。
 ここでも戦端は開かれていた。

「うあぁっ!」

 大型の砲台から撃ち出される弾幕を受け、橙の体が弾き飛ばされる。

「ぁう!」

 更に彼女は受身を取る暇もなく地面へと叩き付けられてしまう。そこへ追い討ちを掛けるべく飛来する巨大な砲弾。

「くっ」

 橙は必死に転がってそれを回避するが、砲弾によって抉られた石畳の破片を全身に受ける。だが止まってしまえばいい的でしかないため、彼女はそこから逃げると石段の影へと身を隠す。

「うう……酷いよ。なんでこんなことするの」

 言いながらも橙は本能で理解していた。眼前に迫るこの相手はこちらの理屈が通る相手ではないと。

「……ひっく」

 そしてそれ以上に、自分が敵うような相手ではないことも。

(でも)

 彼女とて式である。式としても属性としても上の相手に打ち克つ事など出来ない事はわかっているのだ。

「ここで頑張らなきゃ」

 それでもやらなければいけない時がある。なぜなら彼女の後ろには最愛の主とその主が帰って来るべき家があるのだ。
 彼女はただの化け猫でしかなく、明らかに実力不足だろう。だがしかし、たとえ相手が百の虎だろうと、彼女は引く訳にはいかないのである。

「でも、ちょっと辛いかなぁ」

 本人の言う通り、橙の身体は既にボロボロだった。普段なら易々と獲物を引き裂くはずの爪は折れてひび割れ、指先からは血が滴っている。そして普段なら口の端から覗いているはずの牙も砕けてしまった、口を開ける時にそのなれの果てが見える程度である。
 だがそんな彼女に容赦なく、再び弾幕が襲い掛かる。

「うにゃぁ!」

 身を潜めていた石段ごと吹き飛ばされる橙。その勢いのままに近くにあった木の幹に全身を打ち付けられ、彼女は意識を失いかける。

「……あ」

 最早これは戦闘などではなく、一方的な虐待でしかない。だがそうだとしても、敵の攻撃は一切の緩みを見せない。
 朦朧とし始めた意識の中で、再び敵の砲門がこちらを向くのを橙は目にする。しかし彼女の体がまるで石にでもなったかのように動かな

い。

「……藍様……ぁ」

 まさに絶体絶命。
 このままでは当然の如く敵の砲弾に貫かれるだろうと、自身の最後を悟った彼女は無意識の内に最愛の主の名を口にする。


 そして、これも当然のことなのだが。


「誰だ、私の可愛い橙を苛めたのは」


 最愛の式が危機の時に、その主である八雲藍が現れないはずなど無いのである。


「――――――!!??」

 彼女が打ち出した攻撃の威力はいったいどれほどのものだったのだろうか。着弾と共に轟音を響かせた一撃は、その巨大な機体を傾かせ
た。
 それを受けた敵機はすぐさま被害状況を確認し始める。

「橙!」

 その隙に藍は倒れこんだままの橙を助け起こす。

「ら、らんさまぁ!」

 既に全身が傷だらけの少女は、助けに来てくれた主に抱きついた。

「よく頑張ったね橙」

 傷ついた式の頭を優しく撫でる藍。今まで堪えてきたものが一気に溢れ出し、橙は涙を流し始める。

「ここからは私の番だ。だからお前は先に帰って休んでいなさい」
「うんっ!」

 自分の髪の毛を何度も撫でつける優しい掌を感じながら、橙は一片の疑いすら含まない声で頷く。当然だろう、彼女は藍の勝利を信じているのだから。

「……」

 痛みを堪えながら自分向けて手を振り去っていく橙の後姿を見送ると、藍は滾る怒りを抑えようともしない表情で敵へと向き直った。

「ふん、外の世界の式か」

 損害状況を確認し終えた敵機は、使い物にならなくなった巨大な砲塔を切り離す。そしてその奥から出てきた新たな銃身を藍へと向けた。

「図体がでかいだけの三流が……貴様には小細工など必要ない。橙の受けた痛みを思い知れ!」

 そういうと彼女の身体は高速で回転を始める。その様子を気にも止めず、躊躇い無く弾幕を撃ち放つ。

「――――!?」

 だがしかし、その全ては藍の身体に届く前に、その身に纏い始めた弾幕によってかき消されてしまう。

「残念ながら、その程度では通じないよ。私は橙とは桁が違う……まあ最も、今更そんなことを知った所でもう遅いがね」

 如何なセンサーを持ってしても捉える事は出来ないほどの速度で一瞬にして消えた藍は、何時の間にか機体を挟んで反対側に存在していた。

「――?」


 当然、機体のど真ん中を突き抜けてである。


「――――」

 動きを止めた敵機を尻目に、藍は我が家を目指して飛び立つ。

「さて、橙を手当てしに行かないと」

 背後で起こった爆発など、当然のように気にしない。


 彼女にとって今いちばん大事なのは、最愛の式の事なのだから。




 永遠亭から逃げてきた永琳たちは、大分離れた森の中に居た。

「……ふう、これで全員の治療は終わったわね」
「はい」

 敵の気配の無い場所で重傷者の手当てを終え、一息つく永琳と鈴仙。彼女達の周りには数十匹のイナバ達が横たわっている。
 これだけの怪我人を治療するのは一苦労だったのか、流石に永琳の顔には疲れが見える。これだけの人数が居ても大半が負傷者のため手伝って貰う訳にも行かず、そのうえ実際に薬を扱えるのは彼女だけということから、一気に負担が集中してしまったのだ。

「ごめんなさい師匠、私がもっと上手くやれれば」
「気にしなくていいわ、貴女なりに出来る限りの事をしたのだから」
「……はい」

 そう言うと永琳は気の根元に座り込む。先ほど主を助けられなかったことに対する贖罪とでも言うかのように、誰一人として欠けさせることはないという意志で、一時も集中を切らさずに必死に治療をしていたのだ。
 ここで休んでも誰も文句はいわないだろう。

「……師匠はしっかり休んでいてください。あとは私が見ていますから」
「そう? ……それじゃ、お願いね鈴仙」
「はい!」

 師に任せられた事が嬉しかったのだろう、彼女は張り切って頷くと、イナバたちの場所へと向かった。

「さてと……うーん、特にする事がないわね」

 意気揚揚と来ては見たものの、実際の所は永琳の治療のおかげで、今すぐどうにかしなければいけないという者は一人も居ない。とはいえ急に症状が悪化するという可能性も無くは無いので、鈴仙は真面目に見回ることにする。
 そうして歩いていると、無意識の内にある一匹のイナバの元へとやって来た。

(……寝てるわね)

 彼女の目の前で眠っているのは因幡てゐである。

「……ぅう」

 眠っているとはいえ、たびたびうなされているようで、苦しそうに呻き声を上げている。
 いくら永琳の薬で治療をしたとはいえ、決して即効性のものなどではない。当然治るまでには時間がかかるし痛みも伴うのだ。

(……てゐ……)

 普段は上手いように扱われてばかりだが、なんだかんだ言っても仲のいい少女が苦しそうにしているのを見るのは、鈴仙にとっても愉快な事ではない。しかしそんなものよりも、どうにかしてあげたいという想いのほうが先に立つ。

(あ……そうだ)

 ふと思いつく。自分の力は狂気を操る程度の能力である。ならばそれの応用で痛覚を感じる神経を狂わせる事は出来ないだろうかと。

(試してみる価値は……あるわね)

 行ってみれば暗示による麻酔のようなものだ。

「……よし」

 一言、気合を入れると、ゆっくり、ゆっくり力を調節していく。

(あんまり極端にやると大変な症状が出たときに気が付かないかもしれないから……ある程度、和らげるだけ)

 とはいえそのある程度が怪我人にとってどれだけありがたいものかは、試してみている彼女自身わかっていない。そして更には医療面でも、後遺症の無い麻酔としてかなりの利便性を誇るものであると言うことも。

「…………すぅ」

(……よかった、成功したみたい)

 先ほどより遥かに落ち着いた寝息を立て始めたてゐの様子を確認し、鈴仙は胸を撫で下ろす。

(それじゃ他の子達も)

 そうして彼女は辺りのイナバ達を見渡すと、順番に同じ事を繰り返していった。 




 一通り麻酔を終えると、鈴仙は師の元へと戻ってきていた。

「ししょ……あ」

 彼女の視線の先では、永琳が木の幹にもたれて静かに寝息を立てている。
 やはりよほど疲れたのだろう。

「……ふふ」

 自分の師である女性の寝顔を見ながら、どこか立場が逆になったような錯覚を覚え、つい鈴仙は笑みをこぼしてしまう。

(でもこれでなんとか……あとは姫が戻ってくるのを待つだけね)

 燃え盛る屋敷に残してきた主を思い浮かべ、少しの焦燥感を覚える。だが彼女の主は師と同じく蓬莱人、つまるところ不死の存在だ。どんなに最悪な状況になろうとも、死ぬ事だけは無いので一応は安心だろう。

「ふう」

 無駄に体力を消耗するのもなんなので、彼女は自分も休もうと座り込もうとし、

「……っ!」

 どこかから聞きなれない音が聞こえたような気がした。

「………………まずい!」

 静かにその長い両耳立て音を探ると、やはり空耳などではない事を確信した。そして木々の隙間から上を覗き見ると、遥か上空にて旋回する、巨大な緑色の飛行物体を発見した。
 大体の場所は把握しているようだが、深い森という場所が幸いしたのか、向こうはこちらの場所を未だ正確には発見していないようである。

「…………ほっ」

 咄嗟に周囲にも耳を済ませる。しかし不幸中の幸いか、他に敵機は見当たらなかった。とはいってもあの巨大な敵にこちらが見つかるのは時間の問題である。
 そして見つかってしまえば、怪我人ばかりの自分たちに為す術は無い。

「………………やるしか……ないか」

 怪我をして寝込んでいるイナバ達、そして極度の疲れから眠り込んでいる自分の師匠と順番に視線を向ける鈴仙。

(みんなを助けられるのは……私しか居ない)

 決意を固める。上空に居る敵機は永遠亭を襲った物と同クラスのサイズである。

(姫があそこまで苦戦していたのに……私程度がどこまでやれるのか……ううん、やれるか、じゃなくてやらなきゃ)

 もう一度、彼女は皆を見渡した。
 そして唇をかみ締めると、一気に上空へと飛び上がった。




(大丈夫、別に正面から相手にする必要なんて無い……私はあいつをひきつけて、ここから引き離せばいいだけ)

 あまりにも巨大な機体が近づくにつれ、怯えがの覗き始める心を奮い立たせる。
 そして、亀のような円形状の巨体を旋回させ、敵機が鈴仙へとカメラを向けた。

「くっ……来なさい!!!」

 出会い頭に鈴仙から弾幕の一斉射撃。回避する間もないそれは敵機のいたるところに命中する。
 しかし、

「うそ……効いてないの!?」

 彼女の放った弾幕は、全てがその巌のような装甲に阻まれてしまっていた。そして次は反撃とばかりに、その外面の両先端に取り付けられている武装から、同時に砲撃が開始される。

「きゃっ!」

 かすりでもすればミンチになるであろうこと必至な砲弾を、何とか鈴仙は回避する。

「あ、あんなの……!」

 師や主と違って彼女は一度死んでしまえばそれまでである。自分が以下に無謀な相手に勝負を挑んだか、今更ながらに実感し後悔が込み上げてくる。

「でも、退けない!!」

 そう、だからといってここで逃げる事は許されない。一度死んでしまえばお終いなのは、遥か下の森の中にて寝込んでいるイナバ達とて同じなのだ。そして彼女はともかく、イナバ達は抵抗する事すら出来ない。

「ええいっ!」

 砲塔の射角の範囲外へ逃げながら弾幕を張り続ける。

「っ、あそこ!」

 そして完全に砲弾の届かない場所、つまりは敵機の装甲面に辿り付いた。

「はぁ、はぁ……ここなら……っ!?」

 一息つこうとしたのも束の間、装甲の中央部に取り付けられていた六つの穴、小型の銃口から一斉に弾丸の雨が降ってくる。

「ああもう!」

 装甲面から飛び立ち、再び空へと身を躍らせる。小さな銃口とはいえあくまで機体からの比較であり、人間サイズで見てみればまだまだ必殺の砲弾に変わりは無いのだ。
 そしてまた飛んでくる巨大な砲弾を交わしながら高速で飛び回る。

「……よし」

 だがそんな絶体絶命の危機だというのに、鈴仙の表情は決して暗いものではなかった。

「そろそろね……ここまで粘れば……!」

 そう、彼女の目的は元々この敵機の撃破などではなく、あくまでも囮役なのである。
 そして今までの攻防で鈴仙を一応の障害と認めた敵機は、踵を返して逃走しようとする彼女を追うために移動し始めたのだ。

「さすがにあれだけ大きいときついわね」

 サイズの差ゆえに、彼女がどんなに必死で逃げたとしても即座に追いつかれてしまう。だがそれでも上下前後左右と縦横無尽に飛び回り、なんとかかく乱しながらひきつけて逃げていく。

「……こんなの、月から逃げる時以来かも」

 ふとそんなことを思い出し苦笑する。

「って、そう考えてみれば……随分と楽じゃない」

 鈴仙は思い至ったように頷く。それはそうだろう、彼女が逃げてきた月からの追ってと違い、今相手にしているのはただ図体がでかく頑丈なだけの存在である。決して自動で追尾してくる弾丸を放つ訳ではないし、避ける間もないほど一瞬で到達する工学兵器を連射してくる訳でもない。
 言ってしまえばただただ頑丈なだけの亀である。

「それなら話は簡単ね」

 兎と亀、昔話で勝つのは亀の方だ。しかしそれは兎が自分の力を過信したためである。

「残念ながら、私は気を抜くほど甘くないわよ……というかそんな余裕なんて無いだけなんだけどね」

 とはいえそんな軽口が出てくる辺り、先ほどまでの必死さとはかけ離れているのだろうが。

「さあて、それじゃあ行きましょうか?」

 そうして鈍間な亀に向かって挑戦的な笑みを向ける鈴仙だった。




 かなりの長距離を引き付けつづけた鈴仙は、冥界までその足を伸ばしていた。ここならどんなに暴れられようと、命に関わる相手などほぼ皆無だからだ。
 そして辺りに幽霊の気配だけになると頃合を見計らって飛行を止める。そこは西行寺幽々子自慢の桜の庭の上空だった。

「……? あれは?」

 その様子を下にいた魂魄妖夢が目ざとく発見する。まああれだけの巨体が空を飛んでいればいやでも目に入るだろうが。

「なんだ?」

 不思議に思い眺めていると徐々にその形が大きくなっていく……つまりは落下してきているという事である。

「ちょっ!」

 先ほどまでは豆粒大、とまで小さくはなくとも握り拳大だったその影は、今や座布団程度までの大きさとなっている。

「まずい!」

 このままでは下敷きにされてしまうと駆け出す妖夢。普通の幽霊ならそうなっても無事だろうが、生憎と彼女は冥界でも半分命があり危険もある例外的な存在なのである。

「と、ああーー!」

 背後に落下してくる巨影。考えてみればあれが落ちてしまえばいつも世話をしている桜が、大量にへし折られてしまうのは想像に難くない。そう思って振り返る妖夢だったが。

「ああうん、無理」

 自分が巻き込まれそうな現状を再認識し、さっさと飛び去った。


 そして桜の木々が薙ぎ倒される音と、激しすぎる振動。


 空を飛んでいる彼女が見ても判るほど地面が揺れ動いている事から、どれだけのものかが予想できる。

「あああー」

 次々に枝も幹も関係無しに粉砕されていく桜を目にし、妖夢は悲哀の声を上げる。
 幽々子からの叱責やこれから後の始末の事もあるだろうが、やはり丹精こめて世話してきた桜が失われていくのは辛いのだろう。

「あうう」

 そうして数百本もの桜を薙ぎ倒し、落下してきた飛行物体は不時着した。

「なんで、こんなものが……うう」

 途方にくれる妖夢、そんな彼女の元へ降りてくる人影が一つ。

「……はぁ、はぁ……あら、大丈夫?」

 一発でも貰えば終わりという状況の中、長々と逃げつづけたために息も絶え絶えな鈴仙である。

「大丈夫な訳……って随分と疲れてるみたいですけど、何かあったんですか」
「何かって、こいつを見て判らないの?」
「いや確かにこれは大事ですが……」

 今一話の通じていない雰囲気に鈴仙は戸惑った。そしてふと思い至る。

「ああそっか、ここには生物が居ないから制圧の対象にならないのね」
「というと?」
「ええと、こいつの小さい奴みたいなのってここに来たりしなかった」
「いえ特には、最近はいたって平和でしたよ……さっきまでは」
「ああうん、それは、ごめん」

 この巨大な物体をここへ落下させたのは彼女である。そのため反射的に謝罪をする。

「っとそうじゃない、それは置いておいて
「置かないでくださ……」
「いいから聞いて。このことは後でどうにかするから」

 鈴仙の真剣な表情に気圧されたのか、妖夢は押し黙る。

「あのね……今、幻想郷は大変な事になってるのよ」

 そうして話し出された内容は、妖夢を驚かせるには十分な破壊力を持っていた。




「なるほど、たしかにそれは大事ですね……それでこいつはどうしたんですか」
「ああこいつ? こいつは私が引っ張ってきたのよ。冥界ならどんなに暴れられても死人は出ないでしょ」
「まあ確かに」
「それでここまで引っ張ってきて……あとは思いっきり狂わせて見たってわけよ」

 先ほどまで手も足も出なかった彼女が、この敵機を墜落させた種はこうだ。
 まず彼女の持つ力は『狂気を操る程度の能力』である。この能力は詳細を省いて端的に言えば、物事の波長を操る力なのだ。
 そして相手は精密機器を山ほど積み込んだ最新鋭の機械の塊。様々なセンサーを活用して周囲の物を情報として取り入れている。
 つまりそのセンサーが捕らえる波を全て操作してやればいいのだ。
 センサーに波が返って来なければ情報は反映されない。それどころか内部機械の波長ごと弄繰り回してしまえば、先ほどのように飛行不可能な状態まで持っていけるのである。

「とはいっても、あいつを落とすのに全力を使っちゃったから、もう一度やれって言われても難しいわね」
「ふむ、つまるところあれですね。やはりこの庭を荒らした真犯人は貴女と」
「いや、それはそうだけど」

 妖夢としてはあくまでもこの惨状の原因を追求したいようである。

「さて、ということは……っと、そんな話をしている場合じゃなくなったみたいですね」
「……はぁ、そうね」

 会話をしていた二人は、唐突に揃って一点を見つめる。その先にあるのは……当然、巨大な戦闘機械だ。

「――――」

 先ほど鈴仙の力によって落とされたが、自己修復プログラムによって内部の電子頭脳を回復させたようである。
 とはいえ飛行ユニットは落下の衝撃で全壊しているし、砲塔の向きは彼女達とは正反対である。

「――――!」

 背後に居る敵に対して、なんら有効な攻撃手段を持たないために、敵機は声無き怒号を上げる。

「……あの」
「……なに?」
「なんというか……亀、みたいですね」
「あ、やっぱりそう思う?

 二人の少女の馬鹿にしたような会話を理解した訳ではないだろうが、それに反論するかのように敵機の左右装甲部分が剥がれ落ちる。

「あれ、壊れた?」
「……でしょうか」

 などと暢気に会話をしている二人の目の前で、敵機の剥がれ落ちた装甲の内部から二機の浮遊砲台が姿を表した。

「これはご丁寧に、私たちに大きさを合わせてくれるなんて」
「ありがた――」

 何となく、流れで会話を続けながらも二人は一斉に反対方向へと飛び退る。そこへ突き刺さる二筋の弾幕。

「――くもないわね」

 穿たれた地面に視線を向ける。残念ながらいくら小型といっても人間サイズにとって凶悪なのは変わらない。

「硬っ!」

 それに、装甲の硬さにも変化はないようで、斬りかかった妖夢が声を上げる。

「でも一応傷はつけれてるじゃない。やれるんじゃないの」

 鈴仙の言う通り、浮遊砲台の装甲に少しばかりの傷がついていた。しかし誰がどう見てもかすり傷にしか思えない程度だ。

「あんなの何回も斬ってたら私の剣の方が大変な事になりますよ」

 刃こぼれがないかと妖夢は楼観剣を調べる。

「でもそれの剣って斬れない物はちょっとしか無いんじゃなかったの?」
「斬れたじゃないですか」

 鈴仙のその言葉にむっとした表情で反論する。

「かすり傷だけどね」
「かすりだろうと何だろうと切り傷は切り傷です……おっと」

 会話しながらも飛んでくる砲撃を華麗に回避する。疲れている鈴仙とは違い、妖夢の動きは軽快である。

「わっ!」

 対する鈴仙はかなり辛そうだ。軽口を叩いているのもやせ我慢に近い。というかそもそも彼女はこのような戦闘が得意な訳ではないのだから、剣術の達人である妖夢と比べるのは酷な事かもしれない。
 手も足も出ない状況で、徐々に体力が削られていく。

「……まずっ!」

 そしてついに砲弾の一発が、鈴仙の身体を捉えた……かに見えたが、

「大丈夫ですか?」

 高速で飛んできた妖夢によって助け出される。

「あ、ありがとう」
「いえ、気にしないでください。あなたに死なれるとここの後始末を任せる相手が居なくなるので」
「うあ……そ、そう」

 がくりと肩を落とす鈴仙だったが、そんな事をしている場合ではないと考え直した。

「しかしどうしましょうか」
「そうよね、こっちの攻撃は通らないってのに、向こうの攻撃は一発でも喰らえばお終いなんだから」
「まったくです。あれだけ威力があるんなら、一つくらいこっちに貸してくれても良いのに……って」

 何か思いついたように妖夢は言葉を区切る。

「どうかした……あ、そういうことか」
「ええ、そうです」

 なるほど、と頷く鈴仙。

「あの攻撃なら分厚い装甲も打ち抜けます……多分」
「つまりは同士討ちを狙えば良いってわけね」
「まあ確実に上手くいくという保証は無いですけど」
「いいんじゃない、どうせ私たちに出来るのはそれくらいしか残ってないだろうし」
「ですね」

 二人の周囲を狙いを定めながら旋回している二機の浮遊砲台を、妖夢は睨みつける。

「……ではやりましょうか」
「了解。合図をしたらすれ違うってことで……それじゃ」

 言葉と同時に二方向に分かれる。そしてその動きに瞬時に反応し、それぞれに狙いを定め砲撃を開始する砲台。

「ああー、また……」

 その攻撃を避ければ避けるほど、背後にある桜の木が薙ぎ倒されていき、妖夢はうめきをあげる。だからといって自分があたるわけにも行かないので、今に見てろと苛立ちを抱きながら回避し続ける。
 そんなことを考えているうちに彼女の相手と鈴仙の相手が対角線上に並ぶ。そして向こうもこのタイミングを逃すことなく合図をしてきた。

「よし……今っ!」

 二機と二人が一直線に並んだ瞬間、彼女達はお互いに向けて一気に距離を縮める。そして好機とばかりに撃ち出される砲弾。

「……………っ!」

 それを認識すると彼女達は限界まで接近し、ギリギリのタイミングで左右へと弾けるように分かれる。


 そして二つの破砕音。


 少女達が振り返ると、バチバチと火花を散らしながら落下していく浮遊砲台。

「よし」
「大成功」

 墜落の衝撃でまた何本かの桜が折れて行く。

「ああ……あああ!」

 更に追い討ちをかけるかのように、爆散して周囲にも被害を広げた。

「…………はぁ」
「お疲れ……なんか暗いわね」
「まあ、それは……いいですよ後で。ともあれ見事に上手くいきましたね」
「ん、一応センサーを狂わせたしね。そうでもしなきゃ同士討ちなんて起きないわよ」

 味方の機体同士が射線に入ったならば、警告が出て普通なら撃って来る事は無いのである。

「……もう力を使い果たしていたのでは?」
「切り札は取っておくものよ」
「…………あの兎に似てきたんじゃ」
「ちょ、私はあの子ほど嘘つきじゃないわよ」

 それで思い出したのか、彼女はイナバ達のことが心配になって来た。

「……そろそろ戻るわね。みんなが無事か確認してくるわ」
「少し休んでいったらどうでしょう。ほら、こいつらはの始末もありますし」
「あ、あはは、まあそれは置いておくとして」
「置いておけません」

 頑なな態度の妖夢に困っていると、上からふわふわと降りてくる人影が目に付いた。

「あ、ほら、貴女のお嬢様が来たみたいよ」
「え? ああ本当だ、幽々子様」
「もうなんなのよ。うるさくてゆっくり昼寝も出来やしないじゃない」

 二人の下にやって来た西行寺幽々子は、見た目は少しも迷惑そうじゃない表情でぷんぷんと怒っている。

「すみません、ですが一応騒音の元の処分は終わりましたので。あとは騒音の元の元の処分だけです」
「ってまさか私のこと言ってるんじゃないでしょうね」
「おや、鋭い」
「あのねえ……それよりもこれをどうにかするほうが先なんじゃないの」

 指を向ける先には最後の攻撃手段を封じられ、本格的に何も出来ない鈍間な亀になってしまった巨大な物体が一つ。

「それはそうですけど……流石にこれだけの大きさだとどうしようも……」
「あらあら妖夢、心配する事は無いわよ」

 のんびりとした笑顔のまま、幽々子はどこかから扇を取り出す。そしてそれをパシリと開くと、鋼鉄の物体へとばさりと振るった。
 すると彼女の元から極彩色の蝶が飛び立ち、鉄塊に纏わりつき始める。

「――――?」

 不可解な力を感じるそれにセンサーを向けるが、敵機は大きな支障にはならないと判断する。
 しかし、

「――――!?」

 体に群がる蝶々は徐々に数を増し、巨体を隙間無く埋め尽くし始める。同時に機体各部から発生する警告音。

「あれ、でも幽々子様、あれって生き物なんでしょうか」

 その反応を見て妖夢は疑問の声を上げた。

「生きていなくとも関係ないわ。物には全て等しく死というものが存在するのだから」

 従者への答えの変わりとでも言うのだろうか、その美しさとは裏腹に死を纏った蝶が舞い踊る。

「――――――――!!!」

 次々とエラーを吐き出し始める機械群。だがそれを止める術は存在しない。

「……すご」

 鈴仙が呆然と呟く中、激しい振動と共についに巨体が崩壊を始める。

「――――」

 最後の抵抗とばかりに、自爆を試みようとする敵機。しかしそれすらも既に手遅れである。
 警告音が鳴り響く中、電子頭脳は完全にブラックアウトしてしまった。

「流石です幽々子様」
「まあ、これくらいは当然ね……でも自然に優しくない素材ねえ」

 パシリと再び音を立て、扇が閉じられる。そしてそれに合わせるように、一気に機体が崩れ落ちる。
 だが崩壊の音は全く聞こえない。

「うわあ……」
「はい、お終い」

 地に伏し、断末魔の悲鳴すらも死滅させられてしまった巨大なそれは、完全に原形を止めていなかった。




「なんというか、私の苦労はいったい……」
「力の差っていうのは如何ともしがたいのよ」
「うう」

 落ち込む鈴仙。

「なんにしても、すみません幽々子様。わざわざお手を煩わせてしまって」
「別にいいわよ、それよしもせっかくのお客様なんだし、お茶でも出したら?」
「もうへとへとだし、お言葉に甘えたい所だけど……みんなが心配だから遠慮しとくわ」
「そう? なら仕方ないわね」

 少しばかり残念そうな幽々子と、大荒れに荒れた庭と鈴仙を交互に見比べる妖夢。

「ああもう、きちんと後で掃除しに来るから、とりあえずは行かせてよ」
「……ふう、仕方ないですね、約束ですよ」

 厄介事を持ち込んだのは自分のため、断る事も出来ない鈴仙は苦い顔のままに頷いた。

「はいはい……それじゃあ、また後で」

 既に気力体力共に限界なはずの彼女は、急加速してその場を飛び去っていった。

「さてと」

 ああは言ったもののある程度はこちらで片付けて置くために彼女は動き始める。

「熱心ねえ」
「これが仕事ですから」

 惚けたような幽々子の台詞に、苦笑しながら答える妖夢だった。




「師匠、みんな!」

 息を切らせて戻ってきた鈴仙が見たものは、先ほどと何ら変わりない光景だった。

「……はは、よかったぁ」

 一気に力が抜けてへたり込む。

「…………ん」

 その声に反応したのか、永琳が目を覚ましたようである。

「……おはよう、何か変わったことは――」

 あったかしら、そう言おうとして固まる永琳。それはそうだろう、視線の先で座り込む彼女の弟子は、まさに満身創痍に近い。
 顔にはあからさまな疲労が見て取れるし、いくら命中しなかったとはいえ弾幕の雨を避けつづけていたのだ。既に衣服の各部は裂けてボロボロである。

「鈴仙……! 何が……!?」
「あ、師匠……おはようございます……えへへ、実はですね」

 どこか達成感を含んだ表情で彼女は先ほどまでの出来事を語った。

「という訳なんですよ……あれ、師匠……っ?」

 強張った顔で話を聞いていた永琳は、いきなり鈴仙を抱きしめた。

「何を……」
「この子はもう……どうしてそんな無茶をっ」

 柔らかな腕に抱きしめられ、幸福感に支配される鈴仙。しかし師の悲しそうな声に焦りを見せる。

「そんなの私を起こせば済んだ事でしょう? 貴女がここまでする必要はなかったじゃないの」
「で、でも、疲れて眠ってる師匠を起こすのは忍びなくて」

 その言葉に感極まって抱きしめる腕の力を強める。

「……もう、この子ったら……!」
「し、師匠、苦しいですよ」
「あ、ごめんなさい…………でも本当に、貴女が無事でよかったわ」
「えへへ、頑張りましたから」

 疲れの見える笑顔を見せる鈴仙。

「そうね、頑張ったわね……だから、少し眠っていなさい」
「え…………ふあ」

 唐突に彼女は、懐から取り出した薬を鈴仙に嗅がせる。すると一瞬にして少女は意識を失い、静かに寝息を立て始めた。

「…………大丈夫みたいね……さて」

 先ほど弟子が飛んできたであろう上空を見据える。

「あとは私が始末しておくわね……貴女が起きる頃には終わっているから」

 隊長機を落とした鈴仙の情報は既に各機体へと送信されていたらしく、彼女の後を追って無数の敵機が飛来してきていたのだ。だが疲労困憊だった本人は気が付いていなかったために、ここまで連れて来てしまったのである。

「まったく……姫を守れなかった汚名を返上なんて考えていた矢先にこれだもの……千年の間に私も随分と鈍ったみたいね……でも」

 敵機の群れが集結し始めた上空へ、彼女は一気に飛び出す。

「やらせない」

 その顔に湛えているのは微笑み。
 だが全身から発しているのは明確なる殺気。

「これ以上うちの子達を傷つけようとするのなら……容赦はしないわよ」

 主と同じ思いの言葉を口に乗せ、彼女は敵機の前へと立ち塞がる。

「――」
「――――」
「――――――」

 突如現れた人物に一瞬だけ戸惑う敵機達だったが、それが彼らの仇敵だということを判断すると即座に発砲してきた。
 数百以上の砲門から一斉に放たれた砲弾は、たかだか2メートルもない小さな標的へと集中する。

「……ふっ」

 しかしその破壊の嵐は、永琳の一歩手前で全てが弾かれる。

「火薬による爆発力を元にして弾を撃ち出すだけの単純な力学兵器なんて……そんな時代遅れの物で私を倒せると思って?」

 科学者たちの知識を集結して作り上げた兵器程度では、全ての知恵を秘めた神の名を持つ彼女に通じるはずも無い。
 そうして腕を一薙ぎすると、次々に崩壊していく敵機。

「脆いわね……そんなんじゃまだまだよ」

 その間にも次々と爆発四散していく鋼鉄の群れ。いくら隊長機ではないとはいえ、並みの相手では手も足も出ないような機体を、まるで赤子の手を捻るが如く破壊していく様は、まさに圧倒的である。
 だがそれも当然かもしれない。
 当初はただの人間でしかなかった妹紅が、千年の時の間にあそこまでの力を得たのだとすれば……元々月人で不死の妙薬を作ることが出来るほどの天才だった永琳が、それを遥かに凌ぐ力を秘めていたとしても何ら不思議は無いのだから。

「はっ」

 再び振るわれる彼女の腕によって、既に先ほどまで居た数百の機体は半分以下にまで減少していた。




 そんな彼女の戦闘を遠くから眺める影が二つ。

「へえ、なかなかやるねえ」
「ですねえ。彼女があそこまでやるとは思っても見ませんでしたよ」
「あんたのそう言う発言は信用ならないなあ」
「いえいえ、そんな」

 空中で器用に寝転がり瓢箪から酒を飲みながら話している伊吹萃香と、その彼女の隣でカメラを構えている射命丸文である。

「それでどうするんですか?」
「はん、判っているくせに……というか本当、無駄に鋭いねえ」
「無駄でもないですよ。察しがいいのは取材のためですから」
「はいはい、っと」

 彼女は立ち上がり伸びをする。

「ここしばらくは本気の戦いってのをやってなかったからね」
「鬼に本気を出されては、誰であろうと手も足も出ませんよ」
「そう? やってみる?」
「いえいえ、遠慮しておきますよ」

 大げさに手を振る鴉天狗に鬼の少女は苦笑する。

「それじゃ、行こうか」
「お供します」

 加勢という名目で暴れまわるために、萃香は未だ戦闘を続ける永琳の元へと向かう。そしてそれを写真に収めるために、文は続くのだった。




 無数の雑魚を大方排除した辺りで、上空から大型の機体が何機か姿を現した。とはいえ、永遠亭を襲った隊長機とまでは行かないサイズである。

「まあそれでも大きい事には変わりないわね」

 多少気を引き締めてそちらに視線を向ける。
 が、その時、


「………りゃぁぁあああああ!」


 可愛らしい叫び声と共に飛来した少女――――伊吹萃香が、そのうちの一機、蟹のような鋏を持った機体に拳を叩き付けたのである。月すらも砕くその豪撃に耐えられるものなど皆無だろう。
 激しい激突音と共に吹き飛ばされる敵機。くるくると空中で回転しながら落下していく。

「なんだ、随分弱いんだ。一応手加減はしたんだけど」
「あら、随分珍しいわね」

 いきなり現れた少女にも、永琳はうろたえることなく接する。

「ああ、なにやら楽しそうだと思ってね」
「楽しそう……ね、私としてはそんなつもりは無いのだけれど。でも丁度良かったわ」
「ん、何がだい」
「ちょっとお願いがあるの」
「ふむ、聞こうか」
「有り難う。実はねあそこの森の中にうちのイナバ達か居るんだけど、怪我をして動けないのよ。一応さっきから被害が及ばないように撃ち落してはいるけれど、万が一ってこともありうるわ」
「ふう、なるほどね……わかった」

 笑顔で快諾する萃香。

「あら、言った私が聞くのもなんだけど、本当にいいの? 貴女は戦いたがってたみたいだけれど」
「うん、大丈夫。その役目は私じゃなくて……こっちがやるから」

 シャッターを切りながらやっと追いついてきた文を指差す。

「え、何の話ですか?」
「ええと、実はね」

 話を聞いた文はたいした反論も無く引き受けてくれたようである。

「まあ私自身は別に戦いたいわけじゃないですしね」

 そう言うとさっそく森へと下降して行った。ただアングルがローに偏るのだけは微妙、と溢してはいたようだが。

「よし、これで大丈夫かな」
「ええ、本当に有り難う」

 永琳は深々と頭を下げた。

「鬼にお礼なんて変わった奴だね」
「感謝したのなら礼をするのは当然でしょう?」
「まあ、違いない……さて」

 くるりと、視線を敵機へと向ける。先ほどの一撃に警戒していたのか、未だ攻撃をしてこない。

「ほら、どうした。仲間がやられたってのに何もしてこない臆病ものなのか?」

 そんな少女の言葉に反応した訳ではないだろうが、巨大なローターを持った一機が前後左右にあるハッチを開き、その中の砲門から一斉に射撃を開始した。
 それを咄嗟に回避する永琳とは反対に、萃香はその場から動かない。

「――――」

 命中を確信した敵機の電子頭脳だったが、次の瞬間捉えた映像に混乱しかける。
 確実に射線上にいたはずの少女が、忽然と消え去ったのだ。

「――――?」

 そして同じタイミングで背後に頭上に現れる反応。

「遅いなぁ」

 もちろん伊吹萃香である。
 彼女は一瞬にして存在を薄めて敵弾を回避すると、空間に遍在させた自身を敵機の頭上にて実体化させたのだ。

「えいっ!」

 そして何のためらいも無く高速回転をする長大なローターを両手で掴む。

「――――!?」

 自分より遥かに小さい存在に、あっさりと動力部を固定された敵機は、動きの原理として当然のように本体が回転を始める。

「うわ、あはは、面白いなぁ」

 回りながら砲弾を無差別に撃ち出すが、真上に居る彼女にはあたるはずも無い。
 それどころか周囲の味方の機体に被害が出始める。

「――――!」

 流石にそれはまずいと思ったのか敵機は砲撃を停止した。

「あれ、もうお終い?」

 彼女は拍子抜けした表情である。

「なんだ、じゃあこっちから行くよ」

 言うなり彼女は自分の数十倍、いや数百倍はあろうかという巨体をぐるりと持ち上げる。回転していることによって生じているであろう力すらも意に介さない。

「さあて、どれくらい頑丈かな」

 そして、投げ捨てる。
 その先には先ほど撃ち落した蟹のような機体が、地面に深々と突き立っていた。

「おー、よく飛ぶなぁ……っと命中」

 巨大な質量同士がぶつかり合えばどうなるかは明白だろう。萃香はそちらにはもう興味なしと、振り向き次の目標を定める。

「っとあれ」

 だがすでにそこには小型の機体しか残っていなかった。

「なんだ、もうおわりかぁ」
「残念そうね、何なら譲ればよかったかしら」

 少し離れた場所から戻ってくる永琳。彼女は彼女で中型機を撃破してきたようである。彼女が戻ってきた方を見ると、一度は制圧されたであろう一帯に設置されていた巨大な円形状の砲台が煙を上げていた。
 ……いや、あそこまで破壊されては頭に「元」とつけるしかないだろうが。

「まぁ別にいいよ。でも暴れたり無いな……そうだ、なんなら相手してくれる?」

 片手間に雑魚を片付けながら冗談半分本気半分で永琳に問い掛ける。

「遠慮しておくわ、あの子達も待ってるだろうし」
「そりゃ残念だ。じゃあ私は私でやってるから、早く戻るといい」
「お願いしてもいいの?」
「勿論。あ、でもちょいと騒がしくなるだろうけど、気にせずにね」
「? わかったわ」

 そして永琳は何時の間にかほぼ殲滅完了している周囲を見回し、安全を確認してから鈴仙たちの下へと戻って行った。

「よっし、それじゃあまだまだやろうか」

 ようやく誰に迷惑をかけなくてもいい状況になった彼女は、遺憾なく力を使い始める。

「…………お、来た来た」

 程なくして遠くの空から無数の影が姿を現した。
 そう、彼女の持つ力で敵機を幻想郷中から萃めたのである。

「って、考えてみればあれだけ居ると下の連中の所まで行かれるかもしれないなぁ……ま、あっちにはあいつが居るから大丈夫か。普段やる気を出さないんだから、こういう時くらい頑張って貰わないとね」




 などという一方的に信頼と言うか押し付けをされた彼女――射命丸文はうんざりした顔で飛び回っていた。

「ああもう、楽しむのなら人に迷惑をかけないで貰いたいですよ」

 言いながら神風一閃、その手に持った扇から撃ち出される豪風によって、次々と墜落していく敵機達。
 ちなみにそうなった元凶は、左右砲門から交互に光学兵器を撃ち出す機体と、ミサイルを発射する機体を上空にて同時に相手取っている。

「ごめんなさい、手伝って貰ってしまって」
「いえいえ、それはいいんですよ。怪我人を放って置くなんて事は流石に出来ませんし」

 文の攻撃によって撃ち落された機体のうち、こちらに向かってきたものだけを永琳は確実に破壊していく。

「後で何かお礼しますね」
「おや、それは結構な事ですね。ならば何かいいネタでもお願いします」

 二人のコンビネーションによって一定以上に近づけない敵機達。
 ちなみに文の攻撃は巨大な質量ごと吹き飛ばしている訳ではなく、周囲の気流を乱しているだけなのだが、それだけとはいえ飛行機械にとっては致命的なものである。
 最小限の力で最大限の効率を出すその戦い方は、やはり彼女が本気ではないことを示している。

「まあ、気長にのんびりと行きましょうか」

 などと全力で撃墜しに来ている敵機達が憤慨しそうな事を言う文。
 そんな彼女達の戦いは、もうしばらく続くのだった。




 場所は離れて、霧の湖畔にて。

「ふぅっっ……はぁっ!」

 ここでも激戦が繰り広げられていた。

「美鈴、後ろ!」
「大丈夫です、咲夜さん!」

 縦横無尽に飛び回っている人影は、十六夜咲夜と紅美鈴の二人――

「二人とも早すぎよ」

 ではなく、パチュリー・ノーレッジを含めた三人である。
 彼女達は敵機が背後に建つ紅魔館へ侵入するのを防ぐために必死なのだ。

「というかなんで私までこんなことをしてるのよ」
「そう言わないでくださいよパチュリー様。流石にこの数は私一人じゃ無理なんですから」
「あら、それは私が役立たずとでも言いたいのかしら?」
「いや、そんな、ちがいますよう」

 実のところ最初はいつも通りに門番である美鈴が、一人で敵を相手にしていたのだが、巨大な地上兵器が突っ込んできて門を半壊させた辺りで咲夜が参戦。
 しかし咲夜の扱うナイフ程度では、鋼鉄の身体を持つ相手には全くと言っていいほど効果が無い。そうこうしているうちに門が突破されそうになったので、慌てて彼女はパチュリーを呼んできたと言う訳である。

「せぃ……やっ!」

 編隊を組んで飛んできた左右に砲門のついた小型機を、美鈴が連続蹴りで次々と撃ち落す。彼女の攻撃は弾幕だけだとさほどでもないのだが、気を篭めた直接打撃ならば内部の精密機器に甚大な損害を与える事が出来るのだ。

「ああ、残りがそっち行きました!」

 とはいえそれは、一機ごとに近づかなければいけないということであり、数が多いと素通りを許してしまうのである。

「もう、面倒ね」

 手に魔道書を抱えたまま、パチュリーは接近してきた数機に向かって弾幕を放つ。
 先頭の機体に命中、爆発し周囲を巻き込んだ。彼女の放つ弾幕ごっこ用ではない純粋な攻撃用の魔法の威力は絶大である。

「また行きましたっ!」
「ちょっと、無理よ」

 惜しむらくはそれが連続で撃てないと言う事だけだろうか。

「もうっ」

 絶好の的になっていた彼女を、咲夜が時間を止めて回収し、そのついでに敵機の砲口奥にナイフを仕掛けでおく。

「悪いわね」
「そう思うならもっときちんと避けてください」
「出来るならそうするわよ」

 その後ろで墜落していく敵機。見失った目標に向けて発砲した瞬間に、砲口内部で砲弾が暴発したのである。

「咲夜さん! パチュリー様!」
「今度はなに!」
「来ました、さっきの奴です!」

 美鈴の指差すその先には巨大な敵機が地上を爆走していた。
 そしてその後ろからは、

「なによあれ」
「私に聞かないでくださいよ」

 それよりも更に巨大な機体が接近してきていたのである。

「ま、拙いですよ」
「そんなの見れば判るじゃないの……ほら、だからってそいつらの相手を疎かにしない」
「すす、すみません……ていっ!」

 牽制として投げたナイフにより一瞬だけ隙を作った敵機は、近づいた美鈴の拳打よって撃ち落された。

「パチュリー様、あいつらはどうにかなりませんか」
「一応試してはみるけど……あまり期待しないほうが良いわね」

 徐々に近づいてくる二機を見ながら、困ったようにパチュリーは言う。いくらなんでもあそこまでのサイズ差は如何ともしがたい。

「……わかりました。私がまず突っ込みますから、お二人は後からお願いします」

 微妙に暢気な二人とは違い、悲壮な顔で決意を固める美鈴。

「そうするしかないわね……でも大丈夫なの?」
「心配してくれて有り難うございます。でもここで止めないと館が大変な事になりますから」
「そうね、でも門がこれだけ酷い事になってる時点で、レミィは怒ると思うんだけど」
「……あう」

 パチュリーの言葉に、美鈴は一気に気力が萎えていくのを感じる。

「あらパチェ、私がどうかしたのかしら」
「ひ、お嬢様っ」

 そんな彼女の背後、つまりは紅魔館の入り口から、レミリア・スカーレットがやって来た。騒がしいのが気に障ったようである。

「なに、まるで鬼でも見たような顔をして」
「間違っては居ないわね」
「それもそうね、ならいいわ」
「……いいんですか……ってそうじゃなくて」

 二人の会話に翻弄される美鈴だったが、すぐに現状を再認識する。

「今は危ないですよ!」
「あら、貴女は私に危害を加える事が出来る輩がいるとでも言うの?」
「ああ、ええと」

 意地の悪い問いかけに彼女はしどろもどろになる。

「ですがレミリアお嬢様」

 そんな美鈴の言葉を咲夜が続ける。

「お嬢様が負ける事など万に一つも無いでしょうが、それでも危険なことには変わりありません」

 視線を向ける先には大分近くまで接近してきている巨大兵器。

「なるほどね……咲夜、他のメイドたちは?」
「さっさと逃げました」
「使えないわね」
「ですが、あんなのが居なくても私が居れば十分です……といいたい所ですが」
「まあ貴女でも流石にあれは無理ね」
「すみません」

 美鈴同様、咲夜も落ち込み始める。

「パチェも無理なんでしょ?」
「調子が良くて時間があれば何とかなったかもしれないけど、今は無理ね」
「そう、なら仕方ないわね」

 そう言うとレミリアは三人の前へ出る。

「まったく、主の手を煩わせるなんて……とんだ使用人ね」
「はい……」
「……申し訳ありません」

 頭を下げる二人。関係の無いパチュリーは素知らぬ顔である。

「でも、あんなの相手に良くここまで頑張ったわね。誉めてあげるわ、咲夜、美鈴」
「え」
「あの」

 唐突な賛辞に目を丸くする彼女達。

「何を驚いているの。辺りを見れば貴女達がどれだけ善戦したのかくらいわかるわ……ならば頑張った従者を誉めるのは、主としては当然の事よ……とはいえ、パチェを引っ張り出したのは減点だけど」
「あ、有り難うございます」
「身に余る光栄です」

 頭を垂れる二人に笑みを向けると、反対へ向き直る

「さてそれじゃ、あれをどうにかしようかしら」

 いよいよ間近まで距離を縮めた敵へ向け大きく右腕を振りかぶる。

「足止めはしてあげるわ。だからその後は貴女達でなんとかしなさい」

 そしてその手から放たれたのは、彼女の魔力で編まれた神槍という名の魔槍。

「……逝くがいいわ……スピア・ザ・グングニル」

 流れる言葉は呪文となり魔槍に力を与えると、爆発的に勢いを増し一直線に敵へ肉薄する。

「――――!」

 相対的な加速度で飛来したその槍を避ける事など不可能。
 即ち、必中に他ならない。

 そして轟音と共に土煙が上がる。

「さ、後はお願いね」
「お任せください」
「全力で当たります!」

 そしてくるりと振り返ったレミリアの向こうの土煙の晴れた場所には、巨大な身体に比べてもなお巨大な槍を機体のど真ん中に突き刺され、地面へと縫い止められた敵機が停止していた。
 そのあまりに強大すぎる魔槍は、僅かな身じろぎすらも許さない

「戻るの?」
「ええ、ここに居ても仕方ないもの」
「じゃあ私も行くわ」

 一仕事終えたレミリアは館へと帰っていく。たいした運動もしていない筈だが、疲れた顔でそれに続くパチュリー。
 二人の姿が見えなくなると、メイド長と門番は視線を合わせる。

「行きましょうか」
「はいっ」

 そう言ってまるで虫ピンで止められた昆虫標本のような敵機へと近づく。

「…………あれ」
「どうしたの?」
「いえ、あの、最初に走り回っていた方が居ないんですけど」
「……本当ね」

 見てみると縫い付けられているのは大きい方だけである。最初に門を打ち壊した中型の姿はどこにも無い。

「いったいどこへ…………あ」
「……あっちね」

 視線を彷徨わせていた二人はその機体を発見することは出来たのだが、どうやら既にかなり遠くまで逃げてしまっているようだった。

「随分と豪快ね」

 それは逃走のために薙ぎ倒された周辺の木々が証明している。

「まあ、とりあえずは目の前のこいつを片付けましょうか」
「そうですね」

 とりあえず、という見も蓋も無いほど適当な態度で、一切のまともな活躍も見せずに、その巨大な敵機は為す術なく破壊されたのだった。




 紅魔館から逃走した地上兵器は、何時の間にか一面が黄金色の広大な土地へと来ていた。
 よく見てみるとその黄金はすべて向日葵である。

「――――」

 しかし一般的な価値観を持った相手ならば、踏み入るのすら躊躇うであろうほど見事な向日葵たちが咲き誇るその場所へ、その敵機は遠慮なく踏み入り、走破していく。
 路肩に転がる石を蹴り飛ばすかのような気軽さで、何の躊躇いも無く引きちぎり突き進むその姿は、見るものが見ればあまりにも無慈悲なものだっただろう。

「……………………」

 そしてその姿を、空中から見つめる人影が一つ。

「……そう、つまりは死にに来た、と判断してもいいのかしらね」

 ここ、太陽の畑の主とも言える風見幽香である。

「花だって生きている。それを貴方みたいに生きていないものが蹂躙する事は許さないわ……なにより」

 無残に抉り取られ続ける向日葵畑。轟音を響かせながら突き進む敵機を彼女は睨みつける。

「私の領域を侵した罪は重いわよ」

 怒り心頭の彼女を止める事が出来るものなど、幻想郷に何人も居ない。ならば外界の機動兵器程度がどうなってしまうかは自明の理である。

「…………」

 無言のまま、日傘に添えていた右腕を振るう。直後、金属の軋む音が鳴り響く。

「――――!?」

 今まで蹂躙されるだけだった向日葵たちが、まるで意志を持ったかのように、一斉に蔓や茎という名の牙を剥いたのだ。一本一本はそれほど頑丈ではないため、相手の動きにすぐに千切れていくが、すぐに再びそれを伸ばし絡め取ろうと纏わりつかせる。
 そしてしばらくの後、ついに脚部走行機構を完全に封じられ徐々に減速し、ついには地上の建造物と化した敵機がそこに居た。

「――――――!!!」

 身動きの取れない現状に、機体を軋ませて抵抗する。
 そんな敵機の前に幽香は舞い降りる。

「さ、終わりね」

 言って右手を今度は上にかざす。
 すると、彼女の上空に徐々に力が集まり始める。

「……さあ、手折られた花の恨みは怖いわよ」

 そして、号令のように振り下ろされる彼女の腕。撃ち下ろされる余りにも強大な力の塊……それは向日葵の形をしていた。

「――!」

 だが相手とてただ拘束されているだけではない。唯一使用可能な正面の巨大な砲塔から、光学兵器を発射するため先ほどからエネルギーを充填していたのだ。
 その準備は既に完了している。

「――――!!」

 正面の向日葵型をしたエネルギー塊とそれを放った最大の脅威へ射線を重ねる。


 そして、発射。


 膨大な熱量による破壊のエネルギーと幽香は真正面から向き合う。流石にまともに喰らえば蒸発してしまうであろうそれに対して、彼女は焦るでもなく差していた日傘を向けた。
 直後、熱線に飲み込まれる幽香。その光は直線状に並び咲く向日葵を、全て巻き込んだあとに収まった。

「――――」

 発射の勢いで絡み付いていた蔓を引きちぎった敵機は、脅威を排除したと判断し再び加速を始めようとする。
 しかし残念ながら、

「せっかちね、どこへ行こうっていうのかしら」

 目の前の光が収まった空間から現れた彼女には、傷一つ無いのである。
 どうやら妖力を篭められた日傘によって全てが防がれてしまったらしい。いったいどれほど頑丈だというのだろうか。

「――――!」

 脅威の健在に再び充填を開始する地上兵器。

「気が変わったからそんなに怯えなくても良いわよ」

 だがそんな敵機をなだめるかのように、幽香は先ほどまでの態度とは正反対の事を言い始める。そしてそれを証明するかのように上空へと飛び上がった。

「――」

 彼女の言葉が理解できた訳ではないだろうが、脅威存在の撤退という事実を好機と判断し、一気に急加速。
 そして自分の攻撃により邪魔する向日葵が全て焼き払われ、一本の道のようになった畑を走り去って行った。

「ふふ」

 許す気など毛頭無いという態度だった幽香は、上空で微笑みながら呟く。

「あっちにはあの子が居る…………人が昔に捨てた道具が、今作り出した道具を蹂躙する。そんな皮肉も悪くないわ」

 悪意を秘めた笑みを隠そうともせずに、彼女は妖艶に微笑むのだった。




 命からがら、という言葉が相応しい状態で逃げ出した敵機は、今度は真っ白な丘へと行き着いていた。そしてその白い場所――鈴蘭畑を走破し始める。

「――――?」

 だがそこに足を踏み入れた途端に、機体各所が警告音を発し始め、唐突に動きが遅くなる。

「ねえドーさん、なにか見慣れない変なのが来たわよ」

 その敵機を見て鈴蘭へ話し掛けるのはメディスン・メランコリーである。

「前に比べて随分とここから離れる事も多くなったと思ってたけど、まだまだ外には知らないものが一杯あるのね」

 先ほどの太陽の畑では激しい抵抗を見せた敵機だというのに、ここではそれらしい動きすら見せずに完全に停止してしまっていた。

「捨てられたのかしら、それとも自殺しに来たのかしら……でもまあ、どっちにしてもドーさんに酷い事した奴なんて許さないけどね」

 たとえ相手が自分と同じ人間に作られたものだとしても、彼女は加減などしない。
 というより彼女の辞書には未だ加減という言葉が記載されていないだけなのかもしれないが。

「――――!?」

 ともあれ、メディスンから放たれた、文字通り毒々しい色をした毒霧は、敵機の巨体を全て包み込んでしまう。

「随分硬いみたいだけど、毒の中には金属でさえ腐食させるものがざらにあるのよ」

 彼女の毒により、徐々に装甲が剥がれ落ちていく。そしてそれどころか、僅かに開いた隙間から微細な霧となった毒素が内部に入り込み、精密機器をも腐食させていく。
 この敵機にとっては、まさに彼女は天敵とも言える存在なのかもしれなかった。

「――――!!!」

 どうにかしようと全力で砲塔のエネルギーを充填しようとする。
 だがその内部バッテリーすらも腐食を始めており、まさに時既に遅しである。

「なかなかしぶといなぁ…………あ、死んだかな」

 彼女の言葉どおり、ついに敵機は完全に機能を停止してしまったようだった。

「にしても……うふふ、随分不細工なオブジェねぇ」

 今なお腐食されつづける巨大な鉄塊を、メディスンは笑い飛ばす。

「まぁいっか。ここにもそろそろ新しい目玉が必要だって思ってたしね」

 まるで客寄せの道具のように言われようとも、沈黙した敵機には文句を言う術など存在しない。ここまで行くといっそ哀れとすら思えない程だろう。

「さて、もうこんなのに用はないわ」

 あっさりと興味を失った彼女は、さっさとその場を去っていく。
 後にはまるで墓標のように佇むそれだけが残されているだけだった。




 そして場所は香霖堂へと戻る。

「おや、随分と静かになってきたようだね」
「みたいだな」

 見れば先ほどまで上空を飛び交っていた戦闘兵器達は、殆ど姿を見せなくなっていた。

「あらほんとね」
「今が狙い目なんじゃない?」
「んー、まだいいんじゃないか」

 霊夢の言葉に魔理沙はお茶を啜りながらぼーっと答える。

「ていうかなんか来てるわよ」
「あん? ……あー、ほんとだな」

 視線の先には香霖堂の入り口に張られた結界にぶつかり、鼻を抑えて蹲っているアリス・マーガトロイドの姿があった。

「お客様かもしれないし、入れてあげたらどうだい」
「いいけど……めんどくさいわね」

 そう言いながらも結界を解除する。

「っああもう、痛いじゃない」

 そして入ってくるなり文句を言うアリス。

「知らないわよ、あんたが勝手にぶつかったんでしょ」
「確かにそうね」
「そうだね」
「だな」
「あ、うう……ってそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

 四人に一方的に攻められアリスはたじろぐ。が、すぐに気を取り直してここに来た用件を述べ始めた。

「なにがだ」
「あんたの家、大変な事になってるわよ」

 聞いてくる魔理沙に返答する。

「あん、どういうことだ?」
「いえね、さっきからへんなのが飛んでるじゃない。私はそいつらが居なくなるまで家で待ってようと思ってたんだけど……いつまでたっても居なくならない。で、しばらくたつと地面が揺れ始めて、家の周辺の地形が隆起し始めたのよ。それで慌てて飛び出したんだけど、何時の間にかへんなのが居なくなってたのはいいとしても、あんたの家の近くにはでかい穴があいてるし、その家自体は今にも倒れそうだし……」

 先程まで一人だったのがよほど寂しかったのか、一気に捲くし立てるアリス。

「ってちょっと待て、倒れそうって何だ倒れそうって」
「言葉どおりよ。地面の隆起でぐしゃっと行きそうになってるわ」

 なるほどな、と魔理沙は意味ありげに頷く。

「よし、行くぞ霊夢。幻想郷の一大事だぜ」
「あのねえ……まったく」

 自分に害が降りかかって来たとなると、途端に重い腰を上げた魔理沙に苦笑しつつ、霊夢も後に続く。

「それじゃあ私もついていこうかしら」
「僕も行こうか」

 後ろから掛かる声。

「いや、紫はともかくとして、霖之助さんは来る必要ないんじゃない」
「そうだそうだ、お前荒事は苦手だろ。足手まといだぜ」

 多少は遠慮しつつ言う霊夢と、歯に衣着せずに率直に言う魔理沙。どちらにしろ意味的には変わらない。

「僕もそうは思うんだけど、でも魔理沙の家にはここから持っていったものが沢山あるんだ。それごとつぶされちゃ堪ったもんじゃないからね……まあ君達が戦っている間に回収させてもらうよ」
「そういうことね、まあせいぜい邪魔にならない程度に頑張って頂戴」
「だな、あとついでに私の荷物も運び出してくれるとありがたいが」
「出来る限りは善処するよ……よし、準備は完了だ」

 いつの間にやら取り出してきたらしい剣を腰に括り付ける。

「なんだそれ、そんなぼろっちい剣で何しようってんだ」
「一応は護身用にね」
「にしたってもっとまともなのがあるんじゃない?」
「だよなあ……っと待て、なんか見覚えがあるなそれ」
「気のせいじゃないか」
「そうか? なら気のせいかな」

 そんな会話を続けている三人に、いい加減痺れを切らしたのかアリスが急かして来た。

「ちょっと、早く行かないとまずいんじゃないの」
「っと、そうだった。それじゃあ急ごうぜ」
「そうね」

 素早い切り替えで香霖堂から飛び立つ魔理沙達。

「ちょ、ちょっと待ってよ」

 置いて行かれそうになったアリスは、焦りながらその後を追った。




「これは……随分と大げさな穴ね」
「だろ」

 現場に到着した霊夢達は、その穴の大きさに呆然としていた。

「ちょっと、貴女達も少しは手伝いなさいよ」

 先ほどまでとは言わないが、今も散発的に穴の内部から小型機が飛び出していている。アリスはそれを一人で相手にしているのだ。

「ああ、すまんすまん」

 謝りながら加勢する魔理沙。

「しかしあれだ、ここまで来ておいてから聞くのもなんだが、結局あいつらは何なんだ」
「そうね……判りやすく言うとすれば、店主の店に転がっているパソコンの上位に当たる式、ってところかしら」

 紫のその発言になぜか胸を張る霖之助。

「だから言ったろう、外の世界の式もなかなか侮れないって」
「あー?」
「あれだけの数の式を同時にうつなんて事、幻想郷でも出来るものは居ないんじゃないかな。それに魔理沙を退けたって事はそれなりに強いんだろう?」
「あー、まあな。でも今度は負けないぜ」
「そう出来るのならいいのだけれどね」
「どういうことよ」

 紫の言葉に霊夢は疑問を挟む。

「魔理沙が相手にしたという小型機、言わばあれらは只の先兵よ。将棋で言えば歩兵ね」
「飛んでるなら飛兵じゃないのか」

 魔理沙の突込みをさらりと無視して話は続けられる。

「で、あいつらよりもあとに出てきた大きいのが香車や桂馬にあたるわけね」
「そういうこと」
「なら飛車角はどこいったんだ?」
「さっきどこかへ飛んでいった更に巨大な四機がそうなんじゃないかしら」
「んじゃ私たちはそいつらが帰ってこないうちに王手をかければいいって事だな」
「そうね……でもそれも」

 巨大な穴の深淵を覗き込む。

「上手くいけば、だけど」
「あら、紫にしては随分と弱気じゃない」
「そうみえるかしら? ならそうなのかもしれないわね」
「珍しいな」
「まあ、ね。今回の事件はいつもと違ってやり直しが効かないのよ。つまりは負けたらそこでお終いと言う訳」

 彼女のその言葉を魔理沙は鼻で笑い飛ばす。

「はん、そんなの失敗しなければいいってことだろ」
「それはそうなんだけれど……」
「……ねえ紫、もしかして貴女、私たちのこと心配してるの?」

 ありえないとは思いつつ、霊夢は問い掛ける。

「ふふ、正直に言えばそうね」

 しかし帰ってきたのは肯定だった。

「はー、こりゃ槍でも降るな」
「まったくね」
「あら、随分な言われようね」

 然も心外だ、と言わんばかりの紫。

「あたりまえだろ、お前がそんな態度だと気味が悪い」
「そうよ、それにそもそも私が負けるはず無いじゃない」
「そうだぜ、私も負けないぜ」

 そんな二人の言葉を聞いて彼女は微笑む。

「ふふ、それもそうね。いらぬ心配だったわ……さあ、ここでこうして居ても始まらない、行きましょうか」




 彼女達四人が穴に潜ってからも、敵の攻撃は散発的なままだった。ちなみに霖之助はさっさと魔理沙の家へ向かったらしい。

「なんだ、打ち止めなのか?」
「確かにあれだけ出せばいい加減に無くなりそうなものだけど」

 警戒しながら侵入してきたのだが、そんな調子のままで少々拍子抜けしてしまったのだ。

「とか言いながら気を抜くんじゃないわよ」
「言われなくてもわかってるぜ」

 アリスの警告に魔理沙は頷く。

「で、まだ着かないの?」

 大分下ってきたあたりで霊夢が魔理沙へ問い掛けた。

「そろそろのはず…………お」

 すると計ったかのように下方に巨大な物体が見えて来る。

「うわあ…………」
「これは大きすぎじゃない?」

 絶句する霊夢とアリスを尻目に、魔理沙はさっそく接近する。

「ちょっと、危ないわよ」
「大丈夫、こいつ動かないぜ」
「……ほんとに?」

 彼女の言葉にいぶかしみながらもアリスは近づいた。

「……ほんとね」
「だろ」
「なら絶好のチャンスじゃない? やっちゃいましょう」

 霊夢の提案に一同は頷く。

「それじゃあ、一番、霧雨魔理沙。いっくぜえ!」

 早速やる気満々で、彼女は取り出したミニ八卦炉に魔力を篭める。

「あんたね、近くにいる人間の事考えなさいよ」
「じゃあ人間以外ならいいんだな?」
「人間以外も!」

 霊夢とアリスから批難の声を受けながら、魔理沙は臨界点に達した魔力を破壊の力へと変換して撃ち出す。

「よっし、喰らえ……マスタァースパアァァク!!」

 全く動かない敵に、彼女の放った光の束が突き刺さる。

「おお、効いてる効いてる」

 流石に普段から戦いは火力と言ってるだけのことはあるらしく、巨大な物体の外壁が徐々に崩壊していく。

「もいっちょ、マスタースパーク!」

 相手の抵抗が無いのをいい事に、調子に乗ってもう一本追加する。

「うーん、これは私たちの出番はないかもねえ」

 呆れ顔で霊夢は呟く。

「……さあ、そう上手くいくかしら」

 だがそんな彼女とは対照的に、紫は油断を怠っていないようだった。

「…………さて、そろそろいい感じに焼きあがった頃か」

 二本の光が収まると、ジリジリという音を上げながら崩れ落ちていく物体があった。

「よし、これで終わりか……っ!?」
「いえ、まだよ」


 紫の否定の言葉にあわせるかのように、崩壊した外壁の内部から飛び上がってくる巨大な機体が一つ。


「――――――!!!」


「うわ、なによあれ!」
「流石に反則じゃない?」
「今までの奴らは全部露払い、ってことかしら」
「こいつのための前座って訳か」

 それはあまりに巨大だった。幻想郷の各所で撃破された隊長機よりも更に一回り大きいほどである。

「うう、なんだか気色悪いわね」

 アリスの言葉も頷けるだろう。その外見は今までのものとは違い、どこか有機的なものを思わせるフォルムだったのだ――――例えて言うならそう、まるで膜翅目のような。
 先ほどまでシルエットでしかなかった敵機が淡い光を放ち始める。機体各部を良く見てみれば、確かに鋼鉄の機械群の集合体である。しかしそれが合わさり蠢く姿は正に生物。

「こいつが王将ってわけね」
「さすが王様だけあってもの凄い威圧感ねえ」
「でもあれだぜ、これだけでかけりゃどこに撃っても当たるだろ」

 大穴の横幅を半ばまで占めようかと言うほどの大型機だ。下手な鉄砲でも皆中だろう。
 ……とはいえ、鉄砲程度ではどうにもならなそうではあるが。
 そんな会話をしていると上昇を続けている敵機のカメラ、つまりは頭部の複眼に当たる部分が彼女達を捉える。

「あ、まずい」

 そして敵機の三対の脚部が一斉に蠢き出す。

「だから気色悪いんだってばぁ!」

 その先端から無数に放たれる弾幕を、必死に回避しながらアリスは悲鳴を上げる。

「叫んでる暇があったら攻撃しなさいよ」

 脚部の動きに翻弄されながら、霊夢は弾幕を放つ。

「んー、だめねこれは」

 しかし彼女のお札程度ではびくともしない。というかそもそも鋼鉄の機動兵器に対して、彼女の力は相性が悪すぎる。

「諦めるのが早すぎやしないか? ったく、使えない奴だな」
「うるさいわね、あんたこそ、こういう時くらい頑張りなさいよ」
「あー? 私はいつも全力投球だぜ」

 打ち出されるマジックミサイル。だがそれも一応は効いているようだが、軽微な損傷でしかない。

「なによ、あんたも対して変わりないじゃないの」
「そんなことないぜ……ていっ!」

 先ほどのように魔理沙は再びマスタースパークを放った。収束された光が全ての脚部を包み込む。

「よし、これで……ってなんだありゃ」

 撃破を確信した彼女だったが、目の前では不可解な事が起こっていた。魔理沙の必殺の一撃が、敵機の目前で防がれているのである。

「なんで効いてなのよ!」
「察するに……一定以上の火力で攻撃すると無効化する障壁のようなものを展開するみたいね」

 アリスの疑問に紫が答える。とはいえそんなものは到底納得できるようなものではない。

「さすがに反則じゃないそれ」
「だよなあ」

 呆れた声を上げる人間二人。

「ていうかつまりは何、あの障壁が発動しない範囲の攻撃で、ちまちまと削らないといけないってこと?」
「そういうことじゃないかしら」
「……はぁ」

 深々とアリスは溜め息をつく。だがそんなことをしている場合ではなく、マスタースパークが収まった直後に、再び脚部砲塔から弾幕が撃ち出され始める。

「ああもうなんなのよ!」
「はいはい、喋っている暇があったら少しでも攻撃する」
「判ってるわよ!」

 半ば自棄になりながらアリスは人形を躍らせる。

「行きなさい!」

 彼女の手から離れた人形達は、それぞれが俊敏な動作で複雑な軌道を描き敵機に肉薄する。そして、攻撃開始。

「おお、効いてるぜ」
「人形達もやるわね」

 複数の人形から放たれる光線は、確実に敵機の各部を傷つけていく。

「動かしてるのは私なんだけど……ねえ」
「ん、何か言ったか?」
「なんでもないわよ。いいからあんたもやりなさい」
「言われなくてもな」

 魔理沙とアリスは協力して攻撃を始めた。
 そしてそこから少し離れた場所に、霊夢と紫は避難している。

「ねえ、私の攻撃は効かないけど、あんたならいけるんじゃないの?」
「そうねえ、いけるかもしれないわね」
「……あのねえ」
「あら、霊夢ったら私が無為にこんな場所で待機してるなんて思ってるのかしら」
「違ったの?」
「流石に今回はね。そんな風に気を抜いてる場合じゃないもの」

 何時に無く真面目な口調に霊夢は驚く。

「あんたもそんな殊勝な態度が取れたのね……まあそれはいいとして、どうするのよ」
「正直このままだと埒が開かないと思うのよ」
「まあ、ねえ」

 まるで蟻と象の戦いを見るかのような心境で、魔理沙達の奮戦を眺める。

「だからね」

 紫の考えた作戦。それはこの敵機を丸ごと隙間に放り込んで幻想郷の外に捨てるというものだった。

「確かにそれなら壊す必要は無いだろうけど……下手すればまた戻ってくるんじゃないの?」
「その辺は抜かりないわ」
「……ならいいんだけど……魔理沙!」

 作戦を伝えるために呼びかける。
 それを聞き取った彼女は急加速してこちらへやって来る。

「今取り込み中だから、後にして貰えるとありがたいんだが」
「うん、あんた達はそのまま牽制を続けてて、この穴から出た瞬間に私たちがなんとかするから」
「あー……よくわからんがわかったぜ」

 魔理沙は首を傾げながら戦線に復帰していった。

「なんて言ってたの?」
「とりあえず穴から出せとさ」
「? わかったわ、どうせこのまま行けば外に出るでしょ」

 敵機のせいで広さが半分ほどになってしまった穴の中を、縦横無尽に飛び回る金髪の魔法使い達を眺めながら霊夢達も準備を始める。

「私はあいつを飲み込める大きさの隙間を一瞬だけ開くから、貴女はそのときに暴れられないようにするための、強力な結界の準備をしてもらえるかしら」
「わかった……でもなんで一瞬なのよ」
「あまり大きいのを長く開いていると色々と悪影響が出るのよ」
「ふうん、ま、いいけどね」

 そう言うと霊夢は今までで一番巨大な結界を作り上げるために集中を始めた。




 そうして彼女達は特に何の変化も無いまま、順調に穴の縁まで到着した。

「ねえ、そろそろよ」
「大丈夫、こっちの準備は万端よ」
「よし、それじゃあもうひと踏ん張りだな」

 魔理沙は穴の中から敵機を押し出すように、多数の弾幕を連射する。アリスもそれに重ねるようにして人形達の攻撃を集中させる。
 そしてついに、超大型機動兵器が地上へと姿を現した。

「――――!!」

 まるで解放された獣の様に、声無き咆哮を上げる。
 だがその瞬間、

「はいそこまで」
「――!?」

 巨大な敵機の周囲を取り囲むように、更に巨大な力場が形成される。それは二重螺旋を描き動きを拘束していく。

「――――!!!」
「うー、流石にきついわね……それなら!」

 二重の大結界の上から再度結界を重ねる。

「もう一つ!」

 だがまだ終わらない。容赦なくその周囲に複数の結界を張り巡らせる。そのたびに敵機は動きが制限され、機体がギリギリと軋んでいく。

「これで……最後!」

 そしておまけとばかりに追い討ちの結界を張る。
 結果、合計八重の巨大結界が機動兵器を捕縛した。

「よし、紫、早く!」
「…………」
「何やってるのよ!」
「霊夢……まだよ」

 完全に動きを封じられた敵機には、既に何が出来るはずも無い。結界を維持するのもかなり大変なので、霊夢は紫の発言を無視して急かす。

「んなわけないでしょう。良いから早く…………っ!!」

 そう言って結界の締め付けを強めた瞬間だった。


 パリィィィイン!!! 


 彼女が張り巡らせた人生で最大の結界群が、その内側から粉砕されたのである。


「――――ィィギィイ――――ィィィイ!!!!!」


 そして、咆哮。


「うあ、耳がっ」

 それは今までの様なものではなく、金属が軋む耳障りな音にも似た正真正銘の咆哮だった。

「――ィイイイ――キィイイ――!!」
「あー! うるさい!」
「何とかしなさいよあれ!」
「なんだって!? 聞こえない!」
「だからあ!」

 大声で会話をする魔理沙とアリス。そうしているうちにその耳障りな音が止んだ。

「おっと」
「あら」

 そうしてその元凶へ視線を向ける。

「…………うぁ」
「…………ぅく」

 そこに居たのは敵機からはたった一つの意思が放たれていた。
 全身から放出されるそれは、紛れも無い殺意。
 そう、無機質な殺意である。

「っ! 来るわよ!」

 霊夢の声に一斉に構える少女達。
 そして、撃ち出される豪雨のような弾幕。

「なんだこりゃ!!」

 先ほどまでの主武装だった脚部砲塔は結界のおかげで全て破壊されていた。しかし今度は口部と触覚から更に強力な攻撃が繰り出されているのである。

「詐欺臭いわよそんなの!」

 全ての人形を前面に押し出し、収束させた光線で敵の弾幕を防ぐアリスだが、徐々にその人形達も数を減らしていく。

「おい霊夢、もう一度やれないのか!?」
「無理! さっきのが私の精一杯だったのよ?」
「じゃあ紫!」
「待ちなさい、今何とかしてみるわ」

 凶悪な弾幕の支配領域を、紫は高速で駆け巡る。

「流石にこだわっている場合じゃなさそうだもの……ふっ!」

 呼気と共に放たれる濃紺の弾幕群、それは先ほどの結界のように巨大な敵機の周囲を取り囲んでいる。

「霊夢のとは違って、こっちはそれなりに威力があるわよ」

 群れ集う弾幕結界。それは敵の巨体に全て命中する。

「よし、効いてるぜっ」
「だけどやっぱり軽いわよ」

 アリスの言うとおり、紫の攻撃も致命傷には程遠いものだった。

「っておいアリス!」

 そんな風に着弾地点へ目をそらした隙に、彼女へと紅蒼の弾幕が集中する。

「な、きゃあっ!」

 激しい破砕音が鳴り響く。

「っ、アリス!」

 ついに敵の攻撃が命中し、大きく吹き飛ばされるアリス。

「くそっ!!」

 彼女が落ちていくその先へ、魔理沙は箒を飛ばし先回りする。

「っと」

 そしてなんとか抱きとめるが、アリスの両腕は無残なほどに血塗れだった。

「おい、大丈夫か!?」
「……っぐぅ! ……はぁ、なんとか、ね」
「でもお前……」
「大丈夫よ、人形達がクッションになってくれたから、なんとか、動くわ」

 魔理沙の腕から抜け出し、空に浮いて手を振るう。彼女の言う通り傷自体は深いものではなかったようだ。ただ皮膚が何箇所も避けており、流れる血の量だけは多い。

「っ!」
「馬鹿、無理するな」
「でも……っ、魔理沙後ろ!」

 そんな会話をしていられる場所ではない事を一瞬忘れていた二人に、再び二色の弾幕が襲い来る。

「ったく! 馬鹿はどっちよ!」

 言葉と共に二人の魔法使いの前に霊夢が立ち塞がり結界を発動。

「早く何とかしなさい、延々と持つわけじゃないわ」

 彼女は結界の維持に集中し始める。

「有り難い……で、どうだ、やれそうか」
「ええ、ここまで来て逃げるってのは納得行かないわ」
「よく言った」

 魔理沙は懐から取り出したハンカチを、アリスの右手へ巻きつける。

「ちょっと、汚れるわよ」
「そんなの気にするな。それよりもう片方も巻くから、お前のハンカチ出せよ」
「え、ええ」

 アリスは言われるままにすと、器用に巻かれていくハンカチを見つめる。

「よし、これで良いな」
「……ありがとう」
「だから気にするなって……霊夢、もういいぞ」
「わかった。じゃあ一二の三で分かれるわよ」
「おう」

 構える三人。

「一」
「二の」
「三!!」

 声を揃えて一斉に飛び立つ少女達。先ほどと同じく魔理沙とアリスはコンビを組んで敵機を攻撃し始め、霊夢は紫の元へと向かった。

「紫!」
「あら霊夢、あっちは大丈夫だったの?」
「なんとかね。こっちは」
「一応さっきから攻撃し続けてはいるけれど……ねえ」

 殺意の雨を掻い潜り、魔理沙達も合流する。

「こっちも対して効果無しよ。良くて雀の涙程度ね」
「霊夢のとこの賽銭程度だぜ」
「ぶん殴るわよ」
「あら魔理沙、もしそうなら全く効果なしってことじゃない」
「だからぶん殴るわよってば」

 絶望的に近い状況の中、軽口を叩き合いお互いを鼓舞する。

「っ、散開!」

 まとまった所へ飛んできた弾幕を飛び退り回避。

「もう、八方塞じゃないのよ」

 諦めの混じり始めた声で呟くアリス。

「でも、ここで諦めるてもどうにもならないわよ」

 そろそろ疲労が見え始めた霊夢が言う。

「そうね、でも何か打つ手が無いと……」

 だがその時、そう呟く紫に対して唐突にどこかから声が届く。


「紫、隙間開いてー!」


「!? …………判ったわ」

 声の主の意図を即座に理解すると、一瞬にして長大な隙間が、敵機背後の空間に現れる。


「よっし、それじゃ行くよぉ! せえい!!」


 掛け声一つ。同時に超高速で飛来する巨大な何か。
 それは狙い違うことなく敵機の中心へと命中する。

「――――ィギィイイ!!??」

 悲鳴上げる機動兵器。だがしかし彼はその勢いのままに、背後に口を開けた隙間へと突っ込んでいく。

「おお!?」
「なに!?」

 突然の急展開に驚きを隠せない少女達。

「なんだか判らないけど、紫! 早く閉じて!」
「今やってるわ。でも閉じるのに時間がかかるのよ」
「……むう、なら仕方ないわね……それで、今のは何?」

 疑問に思った霊夢が問い掛けると答えは目の前にやって来た。

「へへ、この私さ」
「って萃香じゃない」

 そう、それは遠くの森の上空で、小型の機動兵器たちと戦闘を繰り広げていた伊吹萃香だった。

「なんだったのあれ」
「いやぁ、久々に本気の戦いが出来るかと思ってさ、あいつらを一箇所に萃めてたんだけど、思ったより全然弱かったから途中で飽きちゃって」
「……はぁ」
「だから幻想郷中の奴らを全部一点に萃めたってわけよ」

 あきれた声を上げる霊夢とは対照的に、萃香はなんだかんだで楽しそうである。

「それで今投げつけて来たのがそれ?」
「そういうこと。ちなみに質量を一点に凝縮したから、馬鹿みたいに熱を持ってるはずよ」
「……つまりはひとたまりも無いって事ね」

 先ほどまでの劣勢はどこへやら。突然の事態解決に気が抜けて肩を落とす霊夢。

「なんだかなあ」
「なんだかねえ」

 それに続くように、魔理沙とアリスも苦笑する。
 全員限界まで身体を酷使したため、疲労困憊状況である。

「……はぁ、つかれたわ」
「でもまだ後片付けが残ってるぜ」
「めんどくさいわねえ」

 などと暢気に話し始める彼女達。しかしその中で、たった一人だけ表情を硬化させたままの存在が居た。

「…………っ……!」

 隙間を閉じていた八雲紫である。

「……なに紫……まさか」
「……ふふ、そのまさかよ。まったく……外の人間はどうしてこんな厄介なものを作ったのかしら……ね!」

 九割方閉じられた隙間が異変を見せる。内側から煌々とした明かりが漏れ始めたのだ。

「ちょ、踏ん張りなさいよ」
「そうしたいのは山々だけど…………無理ね」

 諦めの言葉を発した直後。


「ギィイィッィィイイイ!!!!!」


 極炎を身に纏った物体が姿を現した。

「なんか随分小さくなってるな」
「そうね、でも」
「ええ、あれはさっきの奴よ」

 先程までの巨大な外殻は見る影も無く、今では小型機以下にまでその大きさを縮めている。だがしかし、その矮躯から発せられる殺気は、いっそ物理的な作用を及ぼしそうなほどに強烈。

「おお、なかなかやるじゃない」

 そんな中一人だけ楽しそうな態度なのは萃香である。

「なら手伝いなさいよ」
「いいの? ならやるよ」

 言うなり彼女は飛び出していく。

「ギイイィィイイィ!!!」

 その少女に向けて、苛烈にして鮮烈な弾幕が撃ち出される。

「うわ、すごいなぁ」

 最強たる鬼すらも怯ませるそれは、敵機を中心としてまるで防波堤のように――いや、結界のように張り巡らされていた。

「真似されてるんじゃない紫?」
「そんなわけでもないでしょうけど……やっかいねあれ」
「やられてみて始めて判ったの?」
「ええ、今度からは控えようかしら」
「そうするといいわ……でもとりあえず今は」

 ぐ、っと全身に力を漲らせる。

「あれを倒すのが先決、という事ね」
「そういうこと」

 すでに鬼と魔法使い達は攻撃を開始している。だが小さな身体に似合わず、先程よりも更に頑強な甲殻をしているらしい。そのうえ高速で飛び回るために、いくら狙っても一向にダメージを与えられずにいる。

「おい萃香、お前ならやれるだろ」
「うーん、でもちょこまか動くから当たらないんだよねぇ」

 弾幕を弾き飛ばしながら敵機の進行方面に飛び出る萃香。そして近づいてきた所へ豪腕一閃。
 しかし、

「ほらねぇ」

 急速な方向転換により真横へと避けられてしまう。

「いててて」

 その上おまけとばかりに弾幕に襲われる。頑丈な鬼の彼女だから出来る事であって、その辺の妖怪では決して耐え切ることなど出来ないだろう。

「肉を切らせても骨を立てないなんてのはなぁ」

 下がった萃香に興味を失ったのか、次は魔理沙へと突撃する。

「よっし、来い!」

 好機とばかりに魔理沙は両掌を敵機へ向ける。

「わざわざそっちから当たりに来てくれるなんてな!」

 収束する魔力。接近する機動兵器。

「こっちもそろそろ限界だ。これで決めるぜ……ファイナルマスタースパァーーーーク!!!」
「――ィィギィギギィィイイイ!!!」

 極太の光線が彼女から撃ち放たれる。そして当然敵機はそのど真ん中に突撃する。

「バーカ」

 勝利を確信した魔理沙はニヤリと笑みを浮かべる。
 だがそれもすぐに驚愕へと変化した。


「――――ィィィギイィ――――ィイイ!!!」


「……んだってぇ!?」

 破壊の塊へと突っ込んだ敵機は健在だった。
 それどころか彼女の放つファイナルマスタースパークの中心を突っ切って進んで来る。

「う……そ」

 惚けるように溢すアリス。それも当然だろう、魔理沙の放つ一撃は彼女が持つ攻撃の中でも随一の破壊力なのだ。それを防ぐどころか喰らいながらも突っ込んでくるなど常識外れも甚だしい。

「っ、魔理沙!」

 あのままではいずれ魔理沙へと激突するのは必至である。
 アリスは構えると、怪我をした両手から限界まで弾幕を放ち始めた。

「霊夢」
「わかってる」

 結界組も黙っては居られない。
 光線の周囲から敵機に対して結界での捕縛を試みる。

「それじゃ私も」

 萃香も自分の力を使い援護に回る。すると徐々に魔理沙の放つそれが、次第に直径を狭めていく。

「あん?」
「その魔法を密にしたんだよ」
「おお、ありがたいぜ」

 出力はそのままに、飛躍的な威力の向上がなされる。それにより一瞬だけ押し返した――かに見えたが、すぐさま再び侵攻が開始される。


「――ギギィイィィィイ!!!!」


 少女達の奮闘を意に介さないとでも言うように、敵機の速度は更に増していく。

「くっそ、これは拙いぜ!!」

 もう目と鼻の先とも言える距離にまで接近した敵機を眼前にし、魔理沙の額から一筋汗が落ちる。

「ああー! もうこれ以上手の開いてる奴は居ないのか!?」

 彼女は切羽詰った悲鳴を上げる。
 そこへ、


「おや、なにか入用かい」


 かけられる男性の声。

「ってお前香霖!! 今まで何やってたんだ!?」
「危ないからね、下から見てたよ。でも、随分と押されてるみたいじゃないか」
「あのな……! 見てたんなら助けろってんだ」
「だからこうして助けに来たんじゃないか……でも僕みたいな足手まといが手を出した所で、どうにかなるものかな」

 不敵な笑みを浮かべる霖之助。

「ああもう……わかったわかった、さっきの発言は撤回するからどうにかしろ!」
「はいはい」

 落ち着いた口調で霖之助は言うと、腰に刺した剣を引き抜いた。

「おい、まさかそんななまくらでどうにかしようってのか? 冗談きついぜ」
「まあそう見えるだろうね……でも大丈夫。あのくらいの素材ならこれでやれる」

 彼の目は敵機を構成する素材が何かを正確に見抜いていた。伊達に外の世界の道具に毎日触れているわけではないのである。
 そして手に持ったそれは、以前魔理沙にガラクタと一緒に譲って貰った神剣、天叢雲剣であるらしい。その真贋はともかくとして、素材自体は力を秘めた本物のヒヒイロカネである。多少硬いだけの合金など容易く貫くだろう。

「それじゃ、合図したら魔理沙は逃げてくれ」
「……大丈夫なのか?」
「これでも半分妖怪だからね、君よりは頑丈なつもりだよ」
「なら……信じるぜ」

 多分に不安のにじみ出る表情で、後を霖之助に託す。

「全員聞こえてたかい」
「ええ」
「大丈夫よ」

 少女達から返答が来る。
 それを確認すると、霖之助は腰溜めに剣を構える。

「よし、じゃあ行くぞ…………今だっ!!」

 合図と共に一斉に攻撃が止む。

「――ギィィ? ――――ギィィイイィイイ――――!!!」

 一瞬だけ戸惑いを見せるが、敵機は構うことなくそのまま突っ込んで来た。


 そして、激しい衝突音。

「ぐ…………ぅ……う、ああ!!!」
「――――――ギィィギギギィィィィィィイイイ!!!???」

 霖之助と機動兵器の悲鳴が重なる。

「香霖っ!!」
「霖之助さん!」

 敵機の体当たりを真正面から受けた彼は、慣性を殺しきれるはずも無く激しい勢いで吹き飛ばされていた。

「ギ、ギギィ!?」

 だがしかし、攻撃した機動兵器もただでは済んでいない。その脳天に深々と天叢雲剣が突き刺さっている。

「く、ふ、はぁ!」

 空中でなんとか体制を立て直し、こちらへと戻ってくる霖之助。
 その姿は普段の彼とは比べ物にならないほど精悍で凛々しいものだった。

「紫、早くそいつを!」
「ええ」

 的確に隙間を開くと、火花と放電を繰り返している敵機を今度こそ隙間に取り込む。

「閉じて!」
「ええ!」

 そうして、一切の音を立てずに、彼女の隙間は閉じられた。
 



「やれやれ、まいった」

 胸を抑えながら霖之助は呟く。

「獲物が幾ら凄くても、使い手がそれじゃ意味が無いぜ」
「まったくね。普段の運動不足が祟ったんじゃないの」

 必死の活躍だったと言うのに、彼は人間の少女二人に随分な事を言われている。これも日ごろの行いのせいだろうか。

「でもまあ、よくやってくれたわね」
「そうだな、お前にしては頑張ったんじゃないか」
「はは、お褒めに預かり恐悦至極、とでも言えばいいのかい……っつ!」

 笑った拍子に胸を抑える。

「なんだ、どこか痛むのか。というかさっきから胸を抑えてるみたいだが」
「ああ、ちょっとアバラがね」
「あーあ、格好つけようとして慣れないことするからだぜ……でもまあ」

 自分を守るための名誉の負傷だということはわかっているので、これ以上魔理沙は何も言わない。

「いいか、んじゃ手当てしてやるから家に……と、そうだった」

 視線の先に見える我が家の状況を思い出す。

「半壊してるな」
「……うるさい、良いから行くぞ」
「魔理沙の家かい」
「お前の店だよ。包帯くらいあるだろ……ほら、アリスも」
「へ、私?」

 聞くともなしに会話を聞いていた彼女は、唐突に矛先を向けられ焦りを見せる。

「お前の手だってまともな治療が必要だろ」
「ええと、うん、まあそうね」
「なら良いだろ」
「……そうね」

 そうして話をまとめると、三人は霊夢達に別れを告げてさっさと帰っていった。

「ちょっと、これどうするのよ……」

 眼下に見える大穴と、荒れ果てた迷いの森を見回す。

「怪我人なんだからしかたないでしょう……それより霊夢、貴女もしかして忘れてないかしら」
「何をよ」
「後始末」
「だからそれに悩んでるんでしょ」

 紫を睨みつける霊夢。

「やっぱり忘れてるわね。博麗の巫女としてそれはどうなのよ」
「なに、どういう意味……あ、そうだった」

 そう言って彼女は空を仰ぐ。

「ふう、思い出したみたいね」

 呆れ顔の紫を無視し、霊夢は再び肩を落とす。


「ほんと、最後まで厄介な事件ね……はぁ」


 渋々と、彼女は上空――天蓋に大きく開いた穴――へ向かい昇り始める。
 彼女の仕事はまだ終わらないのだった。




 さて、こんな大事件が起こったわけだが、一月もすると幻想郷は変わらぬ姿を取り戻していた。
 まあ変わらぬと言っても多少は変化があったようである。

 例えば、

 今まで従者たちに軽く見られがちだった永遠亭の主が威厳を取り戻したり、
 月の兎が白玉楼で庭師の手伝いをして居たり、
 自分の式を甲斐甲斐しく世話する式の姿が見られたり、
 薬師の元に鬼が頻繁に訪れるようになったり、
 紅魔館の主が門番を頻繁に頼るようになったり、
 無名の丘に遠くからでも見える巨大な目印が出来たり、
 今までよりも更に香霖堂に入り浸る魔法使い達が見られたり、

 そんな感じである。

 ともあれ、幻想郷は今日も平和に続いているのだ。




 そして外の世界では。

 結局どこへとも無く消え去った兵器軍。
 各国の総力を結集したそれの消失により、決して少なくない被害を被ったのだったが、長い目で見れば月面の開発が一時的に遅滞しただけでしかないということに、気が付いているものは少なくない。
 それよりむしろ一部では、その失踪となった原因の究明の方こそが重要という判断が下される事もあったようである。

 再び幻想郷に危機が訪れる日も、そう遠くは無いのかもしれない。
 だがしかし、そのたびに住人たちは一致団結して外敵を打ち破るに違いない。


 いつの時代になろうと、それはきっと、変わらない事実なのだろうから。
灰次郎
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2007/05/13 07:45:25
更新日時:
2007/05/15 22:45:25
評価:
0/0
POINT:
0
Rate:
5.00
1. 1 A・D・R ■2007/05/13 20:59:05
これだけの長さのお話を完成させたのは凄いと思います。
ただ、失礼ながら、いささか冗長な印象を受け、ひたすら同じような戦闘を繰り返しているように感じました。
もうちょっと短く、そしてもう一ひねりあった方がいいかなぁ…と。
2. -2 ■2007/05/14 00:45:19

100kb超の大作、お疲れ様でした。

とりあえず誤字が目立ちます。
長いから、というのはあまり言い訳にはなりませんので、もう少し見直しをしっかりと。

台詞が入ってくると、途端に地の文が単調になって台本のような状態になるのもマイナス。
少し古めの文章を目指されたのかもしれませんが、あの文体はそれを彩るだけの語彙があって初めて成り立つもの。
作者さんの中ではきちんと映像として再生されているかもしれませんが、読者は台本を見せられてもそれを読み、考え、そしてやっと映像として出せるかどうかというところです。
無理に間に何か入れてテンポを崩してしまうよりかは、台詞だけで続けてしまうのもいいかもしれません。
長い割には全体的に単調なまま進んでいるので、そうなると中々に読むのもシンドクなってしまいます。
特に後半に行くにつれて文章のネタが切れたのか、それとも時間がなかったのか。
元々単調だった文章が尚更単調になってしまっています。
後半にかけて盛り上がっていく場面であるにも関わらず、前半以上に単調になってしまった文章では盛り上がる場面も盛り上がらず。残念です、と言うしかありません。
展開や台詞だけに頼らず、地の文でも流れを作ってメリハリをつけていくと、もっと読みやすくなると思います。

あと、オールスターでキャラを出すのはいい試みではあるのですが、それを活かせていません。
折角色々な場面、キャラクターを出したのですから、もっとそれらを絡み合わせた展開も見てみたかったです。
そういう意味では、この話はまだまだ尺が足りていないと思います。
今のままでは中盤は丸々なくてもいい気もするのですが。

長編を書くというのも立派な技術だと思いますし、そういった意味で今回この作品を書き上げた作者さんの技量、根気というものは素晴らしいものだと思います。
ただ、結局全てが取ってつけたような話にいなってしまっているので、もし次にまた作品を書かれる時には、その辺りの事も心の隅に留めておいていただければ。

長々と申し訳ありません。点数は点数欄のコメントにしたがって、もうちょっと……という事で。
3. 4 詩所 ■2007/05/16 19:38:51
長いためか戦闘シーンがどうも単調に感じてしまいます。
もう少し短くするか、途中で展開を変えておけば……
4. 3 反魂 ■2007/05/16 23:57:23
超大作お疲れ様でした。
と大変長い物語なんですが、物語全体に少々起伏が少なすぎて、読んでいてかなりだれる面がありました。有力キャラを全員それなり以上に事件へ絡めたのは手抜かりの無さを感じ好印象なのですが、これだけの大がかりな事件を描いた割には導入部、つまり戦闘機の類が出現するまでの描写が些か淡泊すぎる印象です。いきなり飛行機が現れました、ではなかなか入り込みづらいものがあります。
また敵役である戦闘機の強さや東方キャラ陣との勢力関係が今ひとつ整理されておらず、目一杯強かったと思ったらあっさり破壊される――となって拍子抜けする場面もありました。漠然と相手を倒していった感じで、もう少し統一的なイメージが固まっていればというところです。

やや東方の舞台から離れた展開でありながら事の始まりが座談的な列記に留まったため、やはりどうにも引き込まれにくかったのが正直な感想です。そもそも戦闘機との対決というのが東方の舞台と親和性に欠け、なかなかこの畑では苦しい面もあるのですが、それだけにその辺をしっかり作っておいて欲しかったという印象でした。穴、という御題も上手く取り込まれてはいるのですが、穴そのものが物語の構成や雰囲気に寄与している訳でないことを考えると、さほど大きな印象には残っていません。

と……色々マイナス面ばかりを書き連ねましたが、長編を構成されるにあたって、文章術の面では大きな破綻が無かったように思われます。物語の筋や場面展開を見失わない程度には充分完成されていて、戦闘機と弾幕の対決という点でも見応えがありました。こういった展開で弾幕をきっちり生かしてくる、これも一つ立派な東方の要素だと思います。
何はともあれ、大長編お疲れ様でした。
5. フリーレス 反魂 ■2007/05/17 03:51:48
忘れていましたが、気付いた限りで誤字を。
今回5つ以下の誤字については完全に採点外としておりますので、評価に関係ないことはあらかじめお断りしておきます。

逸れは否定できないが→それは否定できないが
拳打よって→拳打によって
見も蓋も無いほど→身も蓋もないほど
ドーさん→スーさんなら分かるのですが……意図的なのかどうなのか、ちょっと測りかねます。
6. フリーレス 爪影 ■2007/05/17 17:04:29
 随分と、安っぽい人類の切り札ですね。
7. 9 ■2007/05/26 01:16:59
何だか、ゼ●ウス時代のSFシューティングとのクロスオーバーのような感覚を覚えました。

…ところで。スーさんがドーさんになってるのは、その。
鈴蘭畑がドクダミ畑になってしまいそうな…w
8. 5 流砂 ■2007/05/26 22:00:09
SS書きなら一度はやってみたい超大作『近代兵器VS幻想郷』
残念な所は、カッコイイシーンが過分に過ぎて逆に冷めてしまう所。
なんだか有名な漫画から引っ張って来たのでは? と思うほどのキザ具合が逆に問題。
ともなるとこの長さ、途中で読むのが苦痛にもなるというそんな罠。
ともあれ、私はこの作品一つを読むのに全霊を使うほどに集中させて頂きました。
超大作御疲れ様でした。
9. 5 deso ■2007/05/26 23:36:37
長さのわりには一気に読めてしまいました。
良くも悪くも少年マンガ的というか。熱くてカッコイイのですが、薄いです。
いかんせん敵の描写が少なすぎます。どんな形をしてるのかよくわからないし、大きさもわからない。飛んでるのか地面を走ってるのかすらよくわかりません。
多分元ネタであろう蜂を知ってる自分でもそうなので、知らない人なら絵のイメージがさっぱり出てこないのでは。
会話などの東方キャラはちゃんと描けてると思います。
10. 6 blankii ■2007/05/27 11:32:16
100kb超、力作であったと思います。が、やっぱり途中で少し「長い」と感じてしまいました。無人兵器は設定上便利ですけれど、ある意味『殺される』カタルシスには欠けるかなぁ、と思います。
11. 1 椒良徳 ■2007/05/27 20:09:58
 しょっぱなから幻想郷と関係ない描写があまりに長く続くと、私みたいな短気な人間は冒頭で読むのを止めてしまいます。私達は東方のSSが読みたいのです。SFではありません。いや、SF大好きですが。
 誤字脱字も多すぎる。
「そうこう話ているうちに」は「そうこう話しているうちに」
「もうしばらくすれば状況も変化すえうんじゃないかしら」は「もうしばらくすれば状況も変化するんじゃないかしら」
「永琳は気の根元に座り込む」は「永琳は木の根元に座り込む」
「自分が以下に無謀な相手に勝負を挑んだか」は「自分がいかに無謀な相手に勝負を挑んだか」
「彼女が逃げてきた月からの追って」は「彼女が逃げてきた月からの追っ手」
「なによ、あんたも対して変わりないじゃないの」は「なによ、あんたも大して変わりないじゃないの」
「なんで効いてなのよ!」は「なんで効いてないのよ!」
「正直このままだと埒が開かないと思うのよ」は「正直このままだと埒が明かないと思うのよ」
「ただ皮膚が何箇所も避けており」は「ただ皮膚が何箇所も裂けており」
「こっちも対して効果無しよ」は「こっちも大して効果無しよ」
「でも、ここで諦めるてもどうにもならないわよ」は「でも、ここで諦めてもどうにもならないわよ」
「肉を切らせても骨を立てないなんてのはなぁ」は「肉を切らせても骨を断てないなんてのはなぁ」
「ねえドーさん、なにか見慣れない変なのが来たわよ」ドーさんって誰ですか? 「っとそうじゃない、それは置いておいて 
「あ、やっぱりそう思う? 
かぎ括弧忘れてますよ。誤字脱字はマイナスです。変なところで改行しているのもマイナスです。

 これだけの長さの作品を仕上げる能力は凄いと思いますが、それだけです。本当に長いだけの作品です。書いてる本人しか楽しんでないでしょう、これ。もっと読者にうけるような作品を書かないとコンペで上位入賞は難しいですよ。
 幻想郷の少女達と近代兵器をガチンコバトルさせようという気持ちが判らない。そもそも、近代兵器がなぜ幻想郷に来たのかなんの説明もない。理由も無い。あなたが兵器マニアということは判りますが、それだけです。その近代兵器に少女達が勝利するというのもいただけない。「はいはい、みんなつおいつおい」と醒めてしまいます。何が楽しくてそんなものを書いたのか判らない。判りたくも無い。ギャグだったら良いですよ。ガチンコバトルなんてなんて無粋な。本当に貴方、東方シリーズが好きなんですか?
12. -1 乳脂固形分 ■2007/05/27 21:00:07
かなり失礼になるかもしれませんが、読んでいた時に思ったことを包み隠さず書きます。

冒頭部。若干幼稚な表現が目立つが、読み物としてはこの設定はかなり楽しめるかも。
宇宙空間の戦闘用に作られた兵器にヘリコプターはない、そんな無駄なものはつけない
キャラ登場時の演出など、けっこう燃える要素はあるかも…
おいおい、巨大な砲弾て……
多数の誤字脱字、ぎりぎりまで書いていた感があります。
別に兵器や工学に詳しくなれとは言わないが……いや、それにしても
戦闘が長すぎると、白ける、疲れる。描写にスピードを感じない。贅肉が多すぎるかも。
おいおい、ずっと戦闘かよ……。これじゃ長すぎる。途中で読むのをやめる。ダレる。
展開に読者を引き付けるものがない。ずっと同じことの繰り返し。
最初は期待したんだけどなあ。オチも別に面白くもなんとも。
お題の意味も弱い。
そもそも、ただ進入してきた兵器と戦うだけなんて、何のひねりもないじゃないですか。
この舞台設定だったら、もっと面白いものが書けるはず。
費やした時間や練りが足りないとしか言えない。
13. 2 木村圭 ■2007/05/27 23:46:23
幽々子とメディスンの無敵っぷりが凄まじいです。相手の規模なんて関係ないや。
おおよそフルキャストだから仕方ないのかもしれませんが、冗長で中だるみしていた感は否めません。簡略化するなり出番自体を削るなりしてでももう少しスマートに纏めた方が良いと思います。
14. 7 shinsokku ■2007/05/28 01:26:28
輝夜の活躍ぶりは異常。
は置いといて、かなりの分量でちょっとびびってしまいました。
読んでみるとサクサク進めたので安心することしきりです。
橙&藍のシーンだけ浮いてる気がしますが、藍さまが格好いいのでいいと思います。
15. 2 らくがん屋 ■2007/05/29 10:39:55
本来なら3点レベルですが、無駄な改行の多さが長さに拍車をかけているのでマイナス1点です。5,60kbの長さならまだ影響少ないんですけど、今回はさすがにちょっと。
延々と起伏のない冗長かつ退屈な戦闘描写が続き、普通そこに付随するはずの各人の心理描写や人間関係を絡めたドラマは最低限に抑えられている。これを読んで、一体何を楽しめと。作者は読者に何を伝えたいのでしょうか。というか、感動(単純に感情を動かすという意味で)させようとしているのかすら疑います。あ、怒りは覚えました。こんなもん読ませやがってという意味で。
肝心の戦闘シーンは、キャラと場面が二転三転し、一シーンが短く盛り上がりようがありません。意味もなく多数のキャラを出すより、キャラを絞って描写を深め、一シーンずつを長く中身のあるものにした方が効果的だったのではと思います。
また、戦闘シーンに至るまでの導入が不自然です。御都合主義にもほどがあります。上に書いたこととも関連しますが、結界を壊すということは外部の人間と幻想郷の人妖の“絡み”というかなりおいしいネタにつながります。戦闘シーンばかりのSSの導入としては、下の下もいいところです。普通に幻想郷の住民同士の弾幕ごっこを書いていたなら、何十倍マシだったことでしょうか。
文章は、長ければ長いほど作者の特徴が浮き出てきます。その特徴が良ければ作品は傑作になり、悪ければ駄作となるのみです。今回私は後者と判断しました。以上です。
16. 2 鼠@石景山 ■2007/05/30 01:53:30
よくもこれだけ戦闘シーンを書けたものだと驚く事しきり。
ただ、勝つのが前提で書かれているのか、展開の緩急が乏しいと言いますか、片方が「殺す機械」だからうっかり負けられないというのがあるとは思いますが…… 誤字やお題の消化にも気を配ってください。
17. 2 いむぜん ■2007/05/30 02:38:16
緊張感の欠ける間延びした戦闘。説明の無い敵機。起承転結の承で終わった感じ。
異変全体、というよりは、全6面の内2面くらいでって感じか。むしろ体験版。
時間が無かったにせよ、書き連ねていたらこうなったという感じが否めない。
行間が空いているのもダレる一因かもな。
18. 9 ■2007/05/30 03:45:27

 単純に面白かったです!
 全作品中No.1の100KBオーバーという分量にも関わらず、最後までだらけることなく読めました。これは本当に凄いことだと思います。無駄を省き必要最小限の描写でガンガンスピード感を出すセンスは特筆モノです。
 ここからさらにバトルモノとしてステップアップを目指すとなると、やはり敵キャラにもっと個性が欲しいところです。
 ラスボスはかなり粘り強くていい感じだったのですが、中ボスの隊長機がなんとも没個性で噛ませ犬です。どいつもこいつも重装甲で身を固めつつ銃弾ばら撒くだけというのはなんとも芸がないです。
 人によって倒し方に違いがあるのでそれでもそこそこ面白いのですが、やはりせっかく4機もいるのですから、それぞれに固有の特殊装備や超兵器の類が欲しいところです。
 そういう「えーそんなのアリ!?」な敵を、各人がそれぞれの能力を駆使して「おーその手があったか!」みたいな倒し方をしていくようにすると、良作から名作へとステップアップできると思います。
 現状だと、噛ませ犬のオリジナルキャラを東方キャラがひたすら蹂躙する逆U−1SSになっています。東方ファンにとってはそれが痛快なので面白いのですが、いつまでもそういった二次創作ゆえの安易さに甘んじていては、実力の向上は無いでしょう。
 とはいえ、私もそんな東方ファンの一人であるため、やっぱり東方キャラが大暴れして大勝利するだけでお腹いっぱいなわけでして(笑)、この作品は読んでいて本当に楽しかったです。よって今は難しいこと抜きで素直に絶賛いたします。いいものをありがとうございました。
19. 4 リコーダー ■2007/05/30 16:02:28
とっぴな設定が出てきた割にはバトルオンリー。
鈴仙の月がらみの設定をもう少し活かして欲しかったと思います。
20. 7 眼帯因幡 ■2007/05/30 18:05:41
>状況も変化すえうんじゃないかしら/自分向けて手を/工学兵器を/ドーさん(?)
流石に長いだけあって、予期せぬ誤字もあったのではないでしょうか。
ともかく、最初にお疲れ様と言わせていただきます。テキストサイズは今回のコンペ最大ですね。
読み応えのある戦闘描写に満足させていただきました。
お疲れ様です
21. 4 秦稜乃 ■2007/05/30 20:44:22
幻想の者達の本気の『喧嘩』楽しませてもらいました。
こーりんかっこいいよこーりん。
22. 9 K.M ■2007/05/30 21:19:29
外の世界の兵器と幻想郷の面々の戦い・・・まさに戦争ですね。
人の幻想は果てがないゆえに、事実の範疇にしかない現実はそれを超える事ができない・・・結論はそのあたりでしょうか。
ちょっと気になった点が2つ。「触覚」「骨を立つ」
23. 1 二俣 ■2007/05/30 21:35:50
これだけの分量を期間内に書き切った、各キャラに見せ場を作ろうとした、という点は評価できます。
が、戦闘シーンがあまりに長すぎて間延びしている印象。出だしも唐突で正直話に入っていけませんでした。
24. 4 たくじ ■2007/05/30 22:16:26
なんであの機械は幻想郷にやってきたんでしょうか。設定が都合よすぎてなかなか受け入れられませんでした。いくつも描かれる戦闘シーンに途中で飽きてしまいました。
25. 1 時計屋 ■2007/05/30 23:50:28
色々と指摘したいことはあるのですが、
一番私が問題と思った点は、あまりに冗長すぎるということです。

戦争ということでオールキャストを出演させたかったのはわかりますが、
何の工夫もなく次々と出されても途中で飽きがくるだけです。

まずは書く前に十分にプロット練って、
そこで本筋に関係の無い部分や省略できる部分は切り落としてみてください。
26. 4 藤村る ■2007/05/30 23:50:53
 ドーさんって誰やねん……。
 それはともかく、途中まではわりとだらだら進んでたわりには、最後はしっかりと盛り上がってよかったかなあと思います。式神と幽香メディスンあたりは別に書かなくてもいいんじゃないかとは思いましたが、書きたいから書いたんだろうなあというところに落ち着きました。その意味では詰め込みすぎかも。かといって、全キャラが登場するわけでもなし。主軸の霊夢魔理沙あたりの話だけならこれほど長くなることもなかったでしょうしね。
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