百文は一見に如かず

作品集: 最新 投稿日時: 2007/05/13 08:37:27 更新日時: 2007/05/15 23:37:27 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
 ティーカップから立ち上る白い湯気がゆらゆらと揺れている。
 時が止まったかのような静かな暗室。変容を拒否し、ただ知識を積み上げる事のみを目的とした巨大な器。
 紅魔館内にある大図書館である。
 密閉された館内には、初夏の強い陽光は決して届くことなく、また風が入り込むこともない。
 累積した古い匂いが満たす心地よい空間。

 そのはずだったのだが。

「……まさか、ここまでやるとは思わなかったわ」

 吹き込んできた朝の風が、揺れていた湯気を飛ばす。
 この図書館の主たるパチュリーは、陽光差し込む図書館を見渡してから、巨大な穴の開いた天井を見上げ、溜息をついた。


 話は1時間ほど前に遡る。


 その日、紅魔館はいつも通りの朝を迎えていた。
 日勤組のメイド達が朝食を作り、夜勤組の者たちが持ち場の交代に伴い業務報告を行う。
 暦はまもなく夏を迎えるとはいえまだまだ朝は涼しく、門番組の何人かは、鍛錬に勤しむ。
 代わり映えのしない、日常の朝。

 そんな朝の空気をやぶったのは一人の襲撃者だった。

 まぁ、今更誰とは言うまい。
 いつも通りに、箒で超高速で襲来してきた白黒の魔女は。
 いつも通りに、正門で朝の体操をしていた門番長を通りすがりにはたき倒し。
 いつも通りに、図書館に侵入を果たした。
 それは紅魔館においては、最早日常の1ページと化した特別でも何でも無い出来事。
 かつては非常事態であった何者かの侵入を許すという事も、毎日続けば普通の事となる。
 今更、そんなことでは誰も騒ぎ出したりはしない。
 だが、その日はいつもとは少しだけ違っていた。
 その侵入者がたどり着いたその時点で、図書館には誰一人としていなかったのである。
 図書館の住人たるパチュリーが、館の主の吸血鬼の友人に呼ばれて席をはずしていたのは偶然だし。
 館外に主が出ていることに気づかないまま、司書の小悪魔が朝食作りに厨房に行ってしまったのも偶然。
 そして、何十と襲撃に成功していた侵入者が、初の『お宝を前に咎めてくる番人が誰も居ない』という状況に浮かれまくったのも、偶然と呼んでしまっていいだろう。

「……で、今の結果がある、と」

 パチュリーは、吹っ飛ばされた天井の瓦礫を除けながら、改めて溜息をついた。

「小悪魔、どう? 持っていかれた書物の確認は終わった?」
『えーと、おおよそ8割というとこでしょうか。前回の襲撃が終わった後に確認した蔵書状況と差異は今のところ確認できません』

 館内をまわって、書物の状態を確認していた小悪魔に念話で呼びかける。
 普通に考えれば、万の単位を超えそうなぐらいの蔵書数を誇るこの大図書館の蔵書状況を、たかだか1時間程度で調べられるわけはないのだが、そこは仮にも悪魔たるこの娘の能力の見せ所という奴である。
 悪魔とは『ある事象を成し得る架空存在』の実存である。
 司書。すなわち図書の管理という属性を持たされたこの娘は、この図書館内における全書物の把握という割ととんでもない能力を持っている。
 ……とはいえ、所詮は小悪魔。時折、間違った書棚に戻したり、歯抜けしている巻に気づかなかったりと、はっきり言えば、結構抜けてはいるのだが。
 それでも、こういう状況下においてはかなり頼りになる能力だ。

『物色した様子も見られないですし、ここを無人にしていた時間から考えても、被害は例の棚だけの可能性が高そうですねー』
「そう……。なら、いいわ。適当なとこで切り上げて戻ってきて頂戴」
『わかりました』

 パチュリーが図書館に戻ってきてまず目にしたのは、わたわたと両手をバタつかせ、意味も無く走り回る小悪魔と、今まさに作ってきたのであろう2人分の朝食とティーセット。
 そして、いつも利用している机の横にできた空白だった。

「数が少なければ良いというわけではないのだけれど……。まさか本棚ごと持っていくとは」
『魔理沙さんにも困ったものですねぇ』

 困ったなんて言葉では済まないぐらい本気で困るんだけどね、とパチュリーは内心つぶやき返す。

 今回の襲撃で持ち出されたのは、どうやら愛用の書棚のようだった。
 蔵書数よりも、本の出し入れのしやすさを重視して造られた、書棚としてはやや小さめの物である。
 今進めている研究の参考資料や、頻繁に読み返す愛読書。そういった使用頻度の高い本ばかりが収めてあった書棚である。
 見られて困るような物は、これと言って無い……はずだが、現在行っている研究資料が持っていかれたのは、正直痛い。
 
「小悪魔。あの本棚に納めていた物を貴女把握しているかしら? 研究資料については私も把握しているのだけれど」
『少し前までやっていた研究をまとめた書物がいくつか。あと私が趣味で作っていた絵本とかも収めておいたんですけど』
「貴女、そんなことしてたの? それで、少し前までやってたのって具体的に?」
「えーと、確か『割箸の袋で、割箸を割る方法』と『手品で消すことには成功したコインを、いかにして元の次元に持ってくるか』ですね」
「本気でどうでもいいわね」
「確か宴会芸で使えそうなものを作れとか、レミリアお嬢様に頼まれて始めたんでしたっけ」

 書棚の奥からてくてくと歩いてきた小悪魔に向かって肩をすくめて見せる。

「まぁ、これまでの研究結果については良しとしましょう。問題は……」

 普段からここの本を持ち出しては返しに来ない魔理沙ではるが、それでもこれまでは、膨大な書物から特に法則性無くランダムに持ち出すものだから、自分の研究に大きな障害が出る、ということはなかった。
 ところが、今回のケースでは現在解読を進めている魔道書や、進行中の研究資料などを収めるための棚を丸ごと持っていかれてしまった。
 これでは研究が進まない。
 知識の蓄積という自分の生命活動そのものと言える行動が阻害されることへの不快感。
 秘蔵の愛読書も奪われてしまった。
 あの愛しい書物達は、己が知識を分け与えた写し身にして、我が身を満たすに不可欠の半身。

 ポッカリと穴の開いた天井を見上げ、自分の心にも穴が開いてしまったかのような空虚感が沸いてくる。
 そして、同時に湧いて来た一つの決心。

「今度の今度は勘弁ならない。そうね決めたわ」
「どうしますか?」
「取り返しにいくわ。小悪魔、外出用の礼装を用意なさい」







 こう書くと以外と思われるかもしれないが、紅魔館の朝は早い。
 主が夜の王たる吸血鬼とはいえ、ここで働くメイド達の大部分は、陽光の下で生きる妖精達だ。
 もちろん夜の闇や、月光の下に生きる者達も少なくはないが、妖怪の住居としては、かなり昼に生きる者の比率が高い。

 そして、その際たる例が彼女であった。

 両足を浅く開いて立ち、開手のままゆっくりと流麗な動作で、重心を移し、構えを変える。
 身体の正中線は天地を貫いたまま、足首から生み出した捻りを、膝へ、腰へ、上体へと徐々に連ね、引き絞る。
 ゆっくり、ゆっくり。それは、ひどく緩慢な動作であったが、同時に華麗な舞を連想させる洗練された動きだった。
 引き絞った身体を固定して、数秒。それはほんのわずかな時間ではあったが、まるで世界が停止したかのようで、体感的にはずっと長く感じられる。
 鋭く放たれた呼気と共に踏み込み、突きを繰り出す。
 動作はそこで終わらない。
 踏み出した一歩を軸に身を反転、さらに踏み込み逆の手を、肘を、時に両手を次々と繰り出す。
 一歩一歩の踏み込みが鋭く、地面を揺るがすような重みがあった。
 繰り出した技が5を超えた時点で、今までの踏み込みを遥かに越える震脚。
 音速の壁を穿つかのような鋭い崩拳を放った瞬間、確かに拳が空気を打ち抜く音が聞こえたような気がした。

 拳を放ったままの姿勢で5秒。
 頬を流れる汗が日光に輝く。

「ふぅ」
「……なかなか大したものね」
「あ、パチュリー様。おはようございます」

 紅魔館正門。
 通りかかったついでに、横から見ていたパチュリーが話しかけると、我らが門番長、美鈴は笑顔で挨拶を返した。

「演舞っていうのかしら?」
「はは、そこまで大したものじゃないですよ。まぁ、毎朝の日課の鍛錬です」

 そう話しながら、近くの木の枝にかけておいたタオルを手に取った。
 汗を拭きながら、続ける。

「この時間にパチュリー様と会うのは珍しい……というより初めてのような気がします」
「もともと生活時間は夜がほとんどだし。私の場合特に、用が無ければ図書館から出ることも無いしね。貴女、図書館には来ないでしょう?」
「いや、ははは。どうにも図書館の空気は眠気を誘うといいますか。私にはやはり外の空気のほうがあってるようでして。勿論、門からあまり離れられないってのもあるんですが」
 
 ふと気づいたように。

「そして、そんなパチュリー様がこうして表に出てきて、しかも正門で会うということは、どこかへお出かけですか?」
「ええ。今朝の事件のことはわかるかしら? いえ、知らないわけないよね。というか知らないとか言ったら張ったおすわ」
「えっと、その・・・・あの。えと。」

 そもそも、として。
 侵入者を撃退するのが、門番たる美鈴の仕事なのである。
 言い換えれば、毎度毎度魔理沙の図書館への侵入を許しているのは、美鈴の責任とも言える。
 特に今朝の件で言えば、襲撃に気づいてパチュリーが図書館に戻るだけの時間だけでも稼げれば、本棚ごと持っていかれるという事態は防げたはずなのである。

「まぁ、そんなわけで。解読を進めていた魔道書も、研究に不可欠な本も、お気に入りの愛読書も全部持っていかれちゃったからね。さすがに今回は見逃すせないわ」
「それで、パチュリー様自ら御出陣というわけですね」
「ええ。……そういえば貴女、怪我は大丈夫なの? それ相応の負傷をしたと聞いたのだけど?」
「えーと、その。お恥ずかしながら、交戦開始から一瞬で向こうの山までぶっ飛ばされてしまって、怪我自体はそれほどひどくなかったので……」
「山までって……。それで大した怪我じゃないってどういう身体構造をしているのよ、貴女は」

 思わず呆れてしまう。
 まぁ、確かにこの娘は、紅魔館の中でも色々と浮いている。
 この館では他に身体能力が優れた人材というのは少ない。門番隊には腕っ節の強いのが何人かいるが、それでも他の妖精達に比べれば、というレベルだ。
 美鈴とは比べるべくも無い。
 あと、胸。
 どう考えてもこの娘は紅魔館という規格を超えている。

 パチュリーは今朝からつきっ放しの溜息をさらに一つ。

「それにしても……。貴女の実力を知らないわけではないのよ。知っているからこそ、いつもいつも魔理沙を通しちゃうのかが疑問なのよね。真面目にやってる?」
「それはもう真面目も真面目、大真面目ですよ!」

 美鈴は強い。
 紅魔館の門番長の肩書きは決して伊達ではないのだ。
 その戦闘力、とりわけ身体能力と体術だけを見れば、この幻想郷でも美鈴に匹敵するものなど、そうはいまい。

「なら、なんでいつも負けるのよ。私の目算では貴方の腕前ならば、魔理沙との勝負は低く見積もっても3割は勝率があってよさそうに思うのだけど」
「んー・・・そうですねぇ。私自身も不思議と言えば不思議なんですけど」

 美鈴は考え込むようにうなってから、

「きっとあの人は力が強いとか弱いとか、そういう次元とは別のところで決して負けない人なんだと思います」
「なに、それ?」
「うーん、うまく言葉にできる自信がないのですけど・・・。それは例えるなら、そういう運命というか結果を導く力?」
「疑問系なのね。というかもう少し語学力も身につけなさいな。貴方に欠けたものを身に着けたなら、勝てるようになるかもしれないわよ?」
「耳が痛いお話です」

 そう言って、あははと苦笑を浮かべる。

「さて、先を急ぐから、もう行くわ」
「いってらっしゃいませ。ああ、そうだ、パチュリー様も外に出られるのは久しぶりですよね? どうせなら、あちこち回ってみてはいかがですか?」
「気が乗らないわね。こんな日差しの強い日、魔理沙の件がなければ、とてもじゃないけど外に出ようなんて思わないわよ」
「だからこそ、ですよ。パチュリー様は図書館にこもりすぎですよ」
「言うわね」
「外の空気や、心地よい陽光。私に語学力が欠けているように、パチュリー様にはそういうのが欠けています」
「耳が痛い話ね」
「欠けたものが埋まれば、新しい知識が手に入るかもしれませんよ?」
「そうね。でも、今私に欠けているのは、己が半身たる愛しい書物たちなの。まずはそれを取り戻さないとね」

 そうして、パチュリーは久方ぶりに紅魔館の門を潜り抜けた。







 そこを一言で表現するならば、雑多、とでもいうのだろうか。
 ぐっと蒸すような高い湿度の空間には、これでもかというぐらい様々な植物が規則性無く乱雑に生息している。
 きのこがあれば、シダ類の食物、人間より大きな化け物花。
 ここの生態系は、いまだ謎が多く、そのうち研究して見るのも面白いかなと考えている。
 魔法の森のど真ん中。
 仇敵にして親愛なる友人。今回の事件の犯人、霧雨魔理沙の邸宅が見えてきたところで、パチュリーは地面に降りた。

「……ま、そんなわけで何の滞りも無く魔理沙の家に着いたのはいいんだけれど」

 正直に言えば、若干拍子抜けだった、と言える。
 道中何やかんやとトラブルに巻き込まれたり、誰かに絡まれたりして、簡単には辿り着けないかと思っていたのだけれど。
 心当たりがあったわけじゃないけど、まぁ、その。お約束として。

「本人不在ってのは、考えていなかったわね」

 我ながら抜けた話だとは思う。
 魔理沙と言えば、どれだけ傍迷惑な大事件を起こしても、1時間後には「別に、普通だぜ?」の言葉と共に日常生活に戻る。
 てっきり、今朝持ち出した書物を、家で読み漁っているかと思っていたのだが。
 いざ、着てみればどうやら留守のようだ。
 呼び鈴を押しても、庭に弾幕を撃ち込んでみても、家の中からは何の気配も感じられない。
 居留守の可能性も考えたが、魔理沙の性格から考えて、家に弾幕に撃ち込まれて、だんまりを決め込むのは考えにくい。

「いっそ、不在のうちに侵入いて、これまでに奪われたものを取り返すべきかしら……」

 略奪された書物の奪還に来たパチュリーではあったが、まずは魔理沙に返却を促すことから行うつもりであった。
 力ずくというのは趣味ではないし、勝つつもりで弾幕を挑むとなると間違いなく全力で挑まねばならぬ相手だ。
 そういう身体に負担の大きい行動は彼女としても避けたいところである。

「どうしたものかしらね?」
「あら、珍しい顔ね」

 思案にふけるパチュリーに話しかける影ひとつ。
 少女趣味な服装に身を包み、バスケットを抱えた人形を2体連れている。

「アリス・マーガトロイド」
「動かない大図書館。それがこうして、こんな所に居るという事は、いよいよ痺れを切らして、魔理沙に奪われた魔道書を取り戻しに着たってとこかしら?」
「ご明察ね。7色の魔法使い」

 アリスとは面識の数は少なくない。
 時折、図書館に資料を閲覧しに襲撃に来るし。やはり侵入者には違いないのだが、彼女の場合魔理沙に比べれば礼節をわきまえていると言える。
 何度となく図書の持ち出しの交渉で話をしたことがある。
 パチュリーとしては、決して嫌うような相手ではないのだが、何故か向こうからはあまり良く思われていないようだった。
 こうして向かい合っているだけなのだが、アリスはいつでも動き出せるよう、自然体のまま身構えているような気配がある。
 連れの2体の人形からも、緊張した気配と、香ばしい良い匂いが漂ってくる。

 ……良い匂い?

「この香りは、クッキーでも焼いたのかしら? それで魔理沙とお茶会というわけ?」
「な、なによ悪い?」
「……別に」
「ちょっと多く作りすぎたから、お裾分けでもしようかと思っただけよ! 別に魔理沙がどうとかそういうんじゃないんだからねっ!」

 なんだか、一気に場の空気が和んだ気がする。

「いや、だから別にいいのだけれど。……そうか、コレが外の世界の書物に記載されていたアレなのね」
「何の話よ?」
「ツンデレって言うらしいわよ?」
「だから、何の話なのよ!?」

 肩で息してまで怒鳴らなくてもいいと思うのだけれど。
 とまれ、相手の目的はわかった。
 私の障害とならないなら、あえて対立的な立場を取ることもあるまい。
 まずは、話しかけて見るとする。

「魔理沙なら留守みたいよ。庭に弾幕撃ち込んでも応答ないし」
「何をしてるのよ、貴女は……」

 呆られてしまった。

「この時間から出かけてるとすると……ひょっとしたら、今日はもう夜まで帰ってこないかもしれないわね」
「そうなの?」
「私の魔理沙の行動パターン分析は完璧よ」
「誇られてもねぇ」 

 彼女は力の入れるところを多分に間違ってると思うのだが。

「ま、いないのならしょうがないわね。私は帰るとするわ」
「そう」
「ああ、あと一つアドバイスしておいてあげるわ。魔理沙の家に侵入しようと思っているのなら、やめておいたほうがいいわよ?」
「あら、なんで? 防犯用の魔術トラップぐらい、私にかかれば……」

 魔法使いの住居には、ほとんどの場合不在時に外敵から守るための防犯設備が備わっている。
 紅魔館の図書館にもそれはあったのだが、魔理沙の魔砲の前に無惨にも散ってしまったけど。
 私ならそんな力技に頼らなくても、解呪は可能だろう。

「意図的な防犯設備ってのは、せいぜい施錠の魔術ぐらいなんだけどね。中がなんというか・・・・すごいのよ」

 戦々恐々とした様子でアリスが続ける。

「御存知のとおり魔理沙は極度の蒐集家なんだけどね。とにもかくにも整理ってものができないのよ」
「私も話には聞いてるけど……」
「それでまぁ、家の中は呪術的なマジックアイテムから、魔法を用いてない外の世界の機械までところ狭しとおかれていて、足の踏み場も無い状態。以前、わたしも持っていかれたグリモワールの一冊を取り戻そうと中に入って、死ぬほど後悔したわ。というか死にそうになったわ。崩れてきたガラクタのせいで」

 施錠の魔術を解呪して、魔理沙の家に入る光景をイメージしてみる。
 扉を開けてみれば、中には聳え立つ用途不明のガラクタの山。書物も儀式的なアイテムもすべて混ぜこぜで積み上げられ数多の塔となっている。
 慎重に足を進め内部への侵入を試みるが、状態が最悪な足場にバランスを崩し、瓦礫の塔にぶつかってしまう。
 かくて、塔は崩れ落ち、瓦礫に埋まる少女一人。

「……中に入るのはやめておくとするわ」
「それが無難な選択ってやつね。さて、魔理沙がいないのなら、私は帰るとするわ」
「ちょっと待って。さっき魔理沙の行動パターンを良く知っているような事を言っていたけど、立ち寄りそうな場所に心当たりはないかしら?」
「ん。そうね、実際いるかどうかはともかく、立ち寄りそうな場所なら心当たりはあるわね」
「教えてくれないからしら? 今朝、奪われた本の中にはわたしのお気に入りも多数あるの。……中の様子を聞く限り保管状態なんて期待できそうにないし。一刻も早く取り戻さなきゃならないわ」
「確かに魔理沙なら本棚に納めるのすら怪しいわね……。教えるのは勿論構わないんだけど、いなかったからって私を恨まないでね?」
「勿論」

 それは当然だろう、と私は思うのだけれども。
 アリスはその言葉を聞いて、満足したように頷いてから、話し始めた。

「えーと、まず1つ目は霊夢のいる博麗神社。私の分析によると1日1度は立ち寄ってるみたいね。場所はわかるでしょ?」

 ストーキングの間違いじゃないかしら? というのはひとまずおいておく。

「ええ、あそこには何度か立ち入ったことがあるし」
「もう一つが『香霖堂』という道具屋よ」
「『こうりんどう』? …何度か聞いたことがある名前ね。確か咲夜が仕入れ来たうちの備品の幾つかはそこから買った物だったはず」
「ここから、人里の方向にまっすぐ森を抜けてすぐのところよ。ここもかなりの割合で立ち寄ってるみたい。近くに他に建物はないから、すぐわかると思うわ」
「向こうね……。ありがとう、行ってみるわ」

 さて、魔理沙の蒐集物の保管状況を考えると、一刻も早く取り戻さなければならない。
 ……以前に持ち出され、家の中にあるであろう書物達を思うと心が痛い。
 まったく、あの子達は私の半身と言って良いものだというのに。

「ああ、ちょっと待って」
「?」
「これ、あげるわ」

 アリスが連れていた人形の一体……確か、銘は上海人形だったか? こちらに近づき、抱えていたバスケットを渡してきた。
 意外な行動に、少し驚く。

「いいの? 魔理沙のために作ったんでしょうに」
「な、なっ……!」

 言った瞬間、ボッと音を立てて赤くなる。
 今更、恥ずかしがることでもないように思うのだけれど。
 ……からかってみると、ちょっと面白いかもしれない。
 アリスは、ほんのわずかな時間、わたわたとしていたが、照れるような相手でも無いと認識したのか、すぐに落ち着いた声に戻った。

「多く作りすぎたってのは本当なの。持って帰っても余らせるだけだしね。捨てるぐらいなら誰かに食べてもらいし」
「そう……なら、ありがたくもらっておくわ」

 空間容積をいじって、上着の裾のあたりに収容スペースをでっちあげ、綺麗にラッピングされたクッキーをしまいこむ。

「この分だと長丁場になるかもしれないしね。道中いただくとするわ」
「いずれ感想を聞かせてほしいんだけどいいかしら? 魔理沙は『うまい』か『まずい』かでしかしゃべらないから、工夫を凝らしてみても、うまくいってるのかわからなくて……」

 他に食べてもらう友達はいないのか、という突っ込みは野暮だろうか。
 それにしても、魔理沙らしい感想ね。

「ええ。そうね、近いうちに、紅魔館のお茶会にでも招待させてもらうわ」
「楽しみにしておくわね」

 そんなに嬉しそうにされると、こちらとしても悪い気分ではない。
 そして、パチュリーはアリスに別れをつげ、香霖堂という道具屋を目指して、飛び立った。







 とりあえず、香霖堂を目指しながら、先ほどアリスからもらったクッキーを試しに一つ食べてみたのだが、なかなかに美味であった。
 紅茶で味付けした生地に、オレンジピールで香りを添える。
 通常クッキーといえば、香気の強いものは互いに邪魔しあうため、ひとつしか使わないものだが、この組み合わせはなかなかに面白い。
 それに、言われても気づかないレベルだけど、生地のほうにわずかにレモンの果汁を入れてあるわね。
 なるほど、紅茶とレモンの組み合わせの良さは有名だ。紅茶と柑橘類との香りの調和性を上げるため、繋ぎとしてほんのちょっと加えてあるのか。
 なかなかに工夫しているじゃない。
 食べてもらう宛てが無いまま、もくもくとお菓子作りの工夫だけし続けるってのは、どことなく哀愁を誘うけど。

 ちなみに、私が詳しいのはうちの司書がお菓子作りが趣味で、お茶請けとして私の元に持ってきては感想をねだるからだ。
 アリスにあの小悪魔を紹介してみるのも面白いかもしれない。
 案外、気が合うかもね。

 さて、そうこうしてるうちに目的の建物が見えてきた。

「……ずいぶん面白い建物ね」

 印象は、言葉にすれば先程の森と同様『雑多』が適切に思う。
 だが、同じ雑多でも種類が若干異なる。
 森は、生物の多様性と奇怪さに満ちていたが、この建物は極めてマテリアルに不可解だ。
 おそらくは何らかの道具なのだろうとは思うが、とにもかくにも使用用途や意味がわからない物品があふれ返っている。
 なんなのだろう、ここは。
 少なくとも、彼女の図書館にある物品のうち、ここで仕入れてきたと聞いている物を扱っているようには思えないのだが。

「まずは中に入ってみますか」

 パチュリーはつぶやいて、重い扉を開け、まずは驚嘆した。
 どこからか重厚な奏楽が聞こえてくる。
 何十という楽器を用いた一大交響曲。
 なぜ、そんなものがこんな狭い店の中で聞こえるのか。
 どう考えても、この曲を演奏するための楽団が入るようなスペースはこの店にはない。空間容積を拡張している?
 そんな魔術を使っていれば、パチュリーには気配でわかるはずなのだが。
 歩を進める。
 ひとまず、奏楽は置いておいて良い。
 ここに来たのは、買い物でも謎解きでもなく、魔理沙がいるかもしれないからだ。

 立ち並ぶ商品を書き分けるようにして進むと、奥には椅子に腰掛けを書を開いている男が一人。

「お邪魔するわ」
「……これは、珍しい顔だね。いらっしゃいませ、香霖堂へようこそ」

 男は笑みを浮かべ、こちらを出迎えてきた。
 魔理沙が来ているか尋ねようとして、その前に、今の一言に引っかかりを覚え、先に問いかける。

「貴方、どこかで会ったことあったかしら? 私の顔を知ってるようだけど」
「こうして会話するのは初めてだよ。以前、神社の宴会に呼ばれた時にね。一度、顔だけは見かけていたんだけど」
「たいした記憶力じゃない。遠目に見かけた相手の顔を覚えておくなんて、そうそうできることじゃないわ」
「ん。いや、いずれ貴方には会いに行こうと思っていてね。顔と名前だけは覚えていたというだけだよ。パチュリー・ノーレッジさん」
「私に?」

 見ず知らずの男性に、会いに行こうと思っていた、なんて言われたら、普通の女性ならドキリとするところなのかしらね。
 あいにく、私は色恋沙汰にはまるで興味が無いのだけれど。

「ああ、それは後で話させてもらうよ。それで、かの動かない大図書館とまで呼ばれた貴女がこんなとこに来るとは。何か探し物でも?」
「探しているのは物ではなく人よ。魔理沙が来なかったかしら? よくここに立ち寄ると聞いたのだけど」
「魔理沙なら、先ほど来てたよ。もうどこかへ行ってしまったけど。なんかえらく上機嫌で本を抱えていたな」
「……そう。十中八九、今朝持ち出した書ね」

 溜息を一つ。
 朝からずっとしてるせいで、癖になりそうだ。

「ああ、やはり君のところから持ち出したものだったのか」
「ええ、今日の朝、愛用の書棚ごと持って行かれちゃってね」
「……それはなんとも魔理沙らしいね」

 なるほどなるほど、と苦笑を浮かべてしきりに頷いてみせる男。
 さて、そうなると、もう魔理沙はここを離れてしまったのか。
 ならば、次の候補地である博麗神社に向かうとしよう。

「ああ、ところで」

 踵を返し、出て行こうとしたところで、男に呼び止められた。

「君は、その魔理沙が持ってきた本がここにある、と知ったらどうするかな?」
「え?」

 近くの書棚から一冊の本を取り出す。

「先程魔理沙が来たときにね。うちの商品と物々交換で譲ってもらったんだよ」
 
 外の世界の書物。
 奪われた本棚の中に収めておいた書のひとつに違いなかった。
 男は立ち上がり、近くの棚の上に置いてあった、管楽器と箱を組み合わせたような珍妙な装置をいじりだした。

「これは外の世界の書物だよね。僕は外の世界のアイテムや知識に目が無くてね」
「・・・それはもともと私のものなんだけど。返してもらえるのかしら?」
「残念ながら、これは僕が対価を支払って手に入れたものだ。もはや僕の所有物だよ」
「欲しければ、見合うだけの対価を持て、と?」
「まぁ、そんなとこかな。そこで、初めの話に戻るわけだよ」


 疑問符を浮かべるパチュリーに、微笑みかけながら、男が装置から黒い円盤状の物を取り出した。
 同時に先程まで、店内を満たしていた荘厳な奏楽が消える。
 そこで、同時に思い至る。

「蓄音機……名前は知っていたけど、実物ははじめて見るわ」
「ああ、確かに幻想郷では珍しいものかもしれないね」

 どこからか取り出した別の黒盤を装置に収める。
 すると先程とは別の曲が流れ始めた。

「さて、話を戻そうか。初めに言っただろう、貴女には会いに行くつもりだった、と」
「どういうことよ」
「先程言ったように、僕は外の世界の知識に興味がある。そして、君の図書館には外の世界の書物も多数蔵書していると聞いている」
「それを欲しいと?」
「そこまでは言わないよ。僕は読みたいだけなんだ。図書館での書物の閲覧と、あわよくば持ち出しの許可がもらえないかと思ってね」
「……あまり気は進まないわね。あそこは図書館といっても私の私室のようなもの。外来の者が出入りするというのは好ましくないわ」
「だろうね。だからこそ今まで僕はその交渉に紅魔館を訪ねることもなかった。貴女への取次ぎを頼んでも受け入れてもらえるかどうかすら怪しかったし」

 その意見は正しい。
 おそらく、図書の閲覧の希望者が来ている、と門番から取り次がれても私は追い返せ、としか言わないだろう。

「しかし、今こうして偶然ながら、交渉の場を持つことができた。さらにはこうして交渉の材料もある」
「……うまいわね」
「まぁ、伊達に交渉力頼みの客商売をしていないよ」

 男は微笑を浮かべ答えた。
 ……なんか妙に胡散臭く感じるわ。

「さて、そんなわけで紅魔館内、大図書館管理者パチュリー・ノーレッジに願い申し上げたい。貴女の書物の閲覧と、持ち出しの許可をいただけないだろうか?」
「見返りは、その本というわけね……」

 失われた私の欠片。
 例えば、ここでこの男の交渉を跳ね除けてしまえば、あの書はもう戻ってこないだろう。
 それは決して埋まることのない穴となる。
 なんとしても取り戻したい。
 だがしかし。
 相手の要望を鵜呑みにするというのは面白くない。

 話法というのはあまり得意というわけではないのだけれど……。

「……その書だけでは足りないわね」
「ふむ?」
「それは確かに、私が取り戻したい物の一つである。しかし、同時に数多ある中の一つでしかないわ」
「なるほど。あくまで全の中の一。多数の書物の閲覧を希望する僕の希望とは釣り合いが取れない、というわけか」
「ええ。貴方が希望する書は数百にも及ぶ。それの閲覧の権限と、1冊の書ではこの取引は成立しない」

 そう、対等ではない。
 これがこちらに有利な内容、あるいはこちらの益が十分なものであるならまた話は変わるのだが。

 相手としてもこの交渉は、偶然が重なって舞い込んできた千載一遇の機会なのだ。
 こちらのレートの吊り上げにも間違いなく乗ってくる。
 問題となるのは、相手の希望がどれくらい強いのか、だ。
 それほど強い願望ではないのなら、レートを上げすぎれば相手は降りてしまう。
 レートの限界はどこなのか。相手はどんな手札を見せてくるのか。
 その見極めが重要となる。

 わずかな空白と沈黙。
 蓄音機が鳴らす奏楽だけが店内を満たす。

「……確かにおっしゃるとおりだ。では、どうだろう」

 乗ってきたっ!

「貴女の図書館には及ばないが、ここにも少なからず貴重な外の世界の書物がある。貴女に同様の閲覧と持ち出しの権限を、というのは」
「悪くはないわね。私も貴方の持つという書には興味はある」

 だが、それは私にとって交渉の材料としては弱い。

「でもね、私はあまり外を出歩く趣味はないの。こうしてここを訪れたのも限りなく偶然に近い。書を読もうという度にここに来ようという気はないわね」
「なるほど」
「それに、ここは元々店屋なのでしょう? 閲覧だけであれば、客として来たなら行えるような気がするのだけど?」
「……確かに、売る売らないは別として、商品として見たい、と言われてしまえば僕には拒否権はないかな」


 これまでに挙げた条件というのは「元々は他人の書物の進呈」と「見ようと思えば見れる書物の閲覧権限」。
 まだまだ重要度の低いものだ。
 おそらくは、この男はまだ何か交渉の材料を持っている。
 それを提示するまでは、こうしてレートをゆっくりあげていく形でいいだろう。

「さて、そうなると僕から出せる提示できる条件といえば、この辺りの商品から見合うだけの物を出すことぐらいしかないわけだけど」

 手札切れ?
 いや、こちらの出方を見ているのか。

「そうね、先程から見ているけど、ここには悪くないものが多数あるわね。・・・・用途がわからないものは多いけど」
「気に入ったものがあるのならば、それを付けるよ。まぁ、全部が全部というわけにはいかないけど」

 やはり、か。
 こちらの要望の規模を見ている。自分からは取って置きの手札は見せず、相手がどの程度で満足するかを見極めようとしている。
 本当に、交渉のうまいことだ。

「ティーカップ……はお気に入りのがあるから不要かしらね。これは投光機? 私の図書館にはいらないわね」

 ひとまず、近くにあるものをひとつひとつ手に取って見て歩く。
 この男からは、動揺の気配はまるで感じられない。
 なるほど、この辺りにあるものについては、持って行かれても痛くない普通の商品、というわけだ。  
 価値のあるもの、となると表には置いてないのかもしれない。
 これ以上続けてもジリ貧か……。
 少し高そうなものを選んでみる。

「その蓄音機は?」
「コレかい? これは元々売り物ではないんだけどね……。そうだね、図書の閲覧権限との交換というのなら、これを差し上げても良い」

 男から同様の気配はなかった。こちらが蓄音機に目をつけるのは予想済みってわけか。
 むしろ、交渉開始前にこれ見よがしに黒盤の交換をして見せた事を考えると、元々交換材料になるかもしれない、と考えて用意していたものかもしれない。

「なるほどね」

 元々代価として使うつもりだった物をもらっても、あまり面白くはないわね。
 もう一歩踏み込んで見るとする。
 
「……私にとって書物以上の価値があるもの、となると無いわね」
「気に入ったものは見つからなかったわけかな」
「そうね……後は貴方の蔵書というのに少し興味があるのだけれど?」
「残念だけど、商品価値を下げる前出しはできないよ。僕の本を読むならば、君の図書の閲覧権限と引き換えになる」

 そういって苦笑を浮かべた。

 あくまで、手札は伏せ続けるか。
 このまま交渉を続けて、相手の切り札を暴くのも面白いかもしれないが、あいにく私には他にやるべきこともある。
 ここらで、こちらから折れるのが無難だろうか。

「と、すると物品では、見合うだけのものはちょっと無さそうね」
「そうするとこの書は諦めるかい?」

 ここに来て、初めて男から同様の気配が伝わる。
 私の予想より、この男にとって図書の閲覧権限というのは重要だったのかしらね。

「いえ、私は物品での代価ではなく、貴方の能力を希望するわ」
「?」
「その書物。魔理沙と交渉し、譲ってもらったと言ったわね」
「ああ」
「なまじ交渉力に長けるから貴方は気づいていないのかもしれないけどね、魔理沙は自分が手に入れたものは決して手放さないの。自分にとって使用する機会があるなしとか、価値があるとかないとかそういうのは全ておいておいてね」
「ふむ、そうなのかい」
「ましてや、その書は魔理沙本人に言わせて見れば私からの『借物』らしいわよ? 所有物ではなく借物。この差は大きいわ」
「……」
「魔理沙と言えど、人からの借物としている物を代価として別の誰かに引き渡すのには、心理的ブレーキがかかる。そのブレーキすら振り切って、相手を乗せてしまう貴方の交渉能力。私はそれが欲しい」
「……なるほど。と、言われても欲しいと言われて渡せるものでもないしねぇ」
「別にその交渉力を私の物にしたいって意味で言ってるわけじゃないわ。貴方、この先魔理沙から書を取り戻す時の交渉に協力してくれないかしら? 私一人では全て取り戻すのは無理だけど、貴方の協力が得られたら行けるかもしれない」
「ははは、そういうことか」

 男は軽快にひとしきり笑うと、満足そうに一度頷いた。

「いいだろう、その交渉の際には協力させてもらうよ。面白そうだしね」

 まるで交渉に区切りがついたことに合わせるかのように、蓄音機が奏でる曲がまた変わる。
 勝利の凱歌だ。

「さすがは知識の徒、パチュリー・ノーレッジと言ったところか。久しぶりにやりがいのある楽しい交渉だったよ」
「会話が得意というわけではないのだけれどね……。えーと、そういえば、貴方の名前、まだ聞いていなかったわ」
「ああ、そういえば名乗っていなかったか。僕は森近霖之助。知り合いは皆、香霖と呼ぶよ」
「では、香霖。よろしくね。ああ、あと」
「?」
「物品の代価は要らないと先程言ったけど、やっぱりあの蓄音機もらっていいかしら? 気に入ってしまったわ」

 その言葉に香霖は苦笑を浮かべて、いいだろうと、頷いた。







 書の記述では保管が難しいものがある。
 楽曲はその一つであった。
 譜面という形で残すことはできる。
 だが、それでは曲の情報を形式的に残すことはできても、例えばそう、優れた演奏者による記述には残せないレベルの息遣い、微細な工夫、些細な変化。
 そういったものを完全に残すのは困難を極める。
 例えば、ミクロ視点の領域でその時の楽曲を完全に記述に起こしたとしよう。
 それを参考に演奏したとして、果たしてかつて奏でられた楽を完全に再現できるものだろうか?
 可能とするだけの技量をもった演奏者、というのはいるかもしれない。しかし、果たしてそれはどれだけの人数だというのか。
 ほんの数名では意味がない。
 いざ必要になった時に、正確に取り出せない情報では書として記述する意味がない。
 人妖の手では不可能な領域。
 それこそ、そういう能力を持った仮想存在にしか到達し得ない世界。
 古の人々は、きっとそこへの到達を夢見、工夫し続けたのだろう。

 「技能では到達不能でも、それが可能なアイテムを作り出してしまうというのが人間のすごいところよね」

 蓄音。
 音を音として記録し保管する。
 人間の発想の柔軟性、大胆さ、そしてそれを実現してしまうだけの求心。
 彼らは少なからず、魔に属する妖を驚かす。

 「音を記述するアイテム・・・・・・なかなか面白いものが手に入ったわ」

 書に記述しきれない知識。
 知識の集積そのものである図書館の片隅に、こういうものがあってもいいだろう。







「……暑いわ」

 太陽が高く昇り、気温が上がってくると、パチュリーはタレはじめていた。
 季節はまだ初夏。
 本格的に暑くなるのはまだ先とはいえ、暑いものは暑い。
 ましてや、パチュリーはこれまで年中気温の変化がほとんど無い紅魔館の図書館に居たのだ。
 この気温はなかなかに堪えるものがある。

「博麗神社まであと20分ってとこかしら。体力が持つかしらね……」

 すでに意識は朦朧としはじめているし、飛行もふらついている気がする。
 燦々と輝く太陽に理不尽な怒りを覚え、意味も無く眼下にスペルをぶち込みたくなってくる。

 ここらで一度休憩を取るべきかもしれない。
 この身はもとより日向で生活できるようにはできていない。こうして長時間陽光の下に身をさらしているだけで、体調を急降下を続けている。
 一度、地上に降りて休もう。
 そうパチュリーが決断し、高度を落とそうとしたその瞬間だった。

「……っ!! な、何なの、この馬鹿げた魔力の迸りはっ!」

 前方から、とてつもない魔力の奔流を感じる。
 規模で言えば、パチュリーのスペルの中でも切り札に類するものに匹敵する。
 これだけの魔力を法則性無く撒き散らす輩がいるとはっ!
 パチュリーは戦慄した。
 そして、戦慄しかできなかった。
 これが万全の体調だったのであれば、もう少し何かできたのだろう。
 だがしかし、意識すらすでに判然としなくなっていたパチュリーには、前方から迫り来るソレをかわすことすらできなかった。

 凄まじい衝撃がその身を駆け抜け、パチュリーの意識は一瞬で刈り取られた。







「う……く……。どうやら、生きてはいるみたいね……」

 意識が覚醒すると同時、感じたのは途方もない激痛だった。
 例えば、魔理沙の最大出力の彗星「ブレイジングスター」に跳ね飛ばされれば、こんな痛みになるかもしれない。

「あ、目が覚めた? 大丈夫? あんた、魔理沙の限界突破して暴走しかけてるブレイジングスターに跳ね飛ばされたんだけど、覚えてる?」
「……覚えてはいないけど、なんとなく頭に浮かんだ予想が的中して、実に妙な気分よ」

 ひとまず、身体の状態を確認する。
 どうやら、草の上に仰向けで寝ているらしい。ひとまず全身余すことなく痛みを訴えているということは、肉体的な損失は一応ないということか。
 目を開けてみると、こちらをのぞきこんで来る顔一つ。

「貴女……いつぞやの……」
「お久しぶり〜」
「伊吹……萃香だったかしら。古き鬼よ」
「おー、さすが知識人は記憶力もいいのね。そ、私は萃香。あんたはパチュリー・ノーレッジでよかったよね?」

 目の前に居たのは、一見すると幼い少女だが、幻想郷の中でもかなりの古き者。
 鬼の萃香だった。

「だいじょぶ? 立てる?」
「あまり大丈夫とは言いがたいわね……。なんというか。すごく。痛いわ」

 苦労して、なんとか上体を起こす。
 見回してみると、ここは人里近くを流れる小川の堤防だった。ちょうど寝転ぶのにいい草むらが広がっている。

「一応、外傷は手当てしたんだけどねぇ。やっぱりマッハの世界の体当たりだと、損傷より受けた衝撃のほうが堪えるかぁ」
「……しみじみよく生きてたわね、私」
「じゃ、適当に治療していくから。あとは、ここで少し休んでいくといいよ」
「え?」

 萃香がこちらに手をかざした瞬間、先程までの激痛が嘘みたいに引いていく。
 それと同時に、全身が熱くなったみるみるうちに活力に満ちていく。

「痛みを散らして、周囲の活力をあんたに萃めたわ。20分もすれば普通に動けると思う」
「……萃と疎。鬼の能力ね」
「そ、便利でしょ? ああ、あと何か熱中症も起こしてるっぽかったから、余分な熱も取っ払っておいたから」
「本当便利ね……。ありがとう、貴女が助けてくれなかったら、危なかったわ」
「んー、気にしない気にしない。あ、後暑いの苦手ならコレあげる」

 萃香がそう言って差し出したのは、小さな指先大の包み。

「これは……飴玉?」
「さっき紫にもらったんだけどね。外の世界の『涼を感じられる飴』だってさ」
「涼を感じる?」
「さっき食べて見たけど、なかなか面白いよ。今、涼を必要としてるのはあんたみたいだからね。あげるわ」

 萃香は飴玉を押し付けるようにこちらに渡すと、立ち上がった。
 
「さて、そいじゃ私は魔理沙を追いかけなきゃなんないから、行くわ」
「え?」
「またね〜」
「ちょっと、貴女……!」

 呼び止める間もなく、目の前の少女は霧となって消えてしまった。
 鬼の力である萃と疎。
 あの鬼は、自身を広域に散らすことで、その気になれば幻想郷全土を観察できるという。
 
「魔理沙を追っていた? どういうことかしら……。というか、ひょっとして私、萃香に追われていた魔理沙にはねられたのかしら……?」

 事態が混乱している。
 いや、混乱しているのは私の頭か。

 まずは整理しよう。
 私は魔理沙を追っている。それは奪われた書物を取り戻すため。
 ここまでは間違いない、大丈夫。
 霧雨邸、香霖堂とまわって、残る魔理沙の立ち寄りそうな所として、博麗神社を目指して飛んでいたが、暑さにやられ体調を崩し始めていた。
 そして、休息を取ることに決め、地上に降りようとしたら、魔理沙にはねられた。

「……わけわかんないわよ」

 溜息をまた一つ。

「とりあえず、萃香を捕まえるのは簡単ではないでしょうし。保護者のところまで行ってみますか」

 そうつぶやいて、パチュリーはもらった飴玉を口に放り込んだ。

 ……確かに冷たい。
 不思議だ。






「あら、珍しい顔ね」 
「なんだか、今日はどこへ行ってもそういわれてる気がするわ……」
「あんたの場合、年中図書館にこもりっぱなしだもの。会う機会なんてそうそうないわ」

 ようやく辿り着いた博麗神社は、すごい様相になっていた。
 境内の地面はあちこちえぐれてクレーターができており、周囲の林は一部が根こそぎ吹っ飛んでいた。
 そんな状況で、縁側で茶をすすってられる、この巫女は一体なにものだ。

「霊夢。何があったのよ、この有様は」
「さっき遊びに来ていた魔理沙が、萃香と弾幕ごっこ始めちゃってね。煩いから両方どつき倒したけど」
「すごいことをさらっと言うわね」

 魔理沙も萃香も、幻想郷においては屈指の実力者だ。
 彼女の友人にして夜の王たる吸血鬼も魔理沙の前に一度敗れているし、幻想郷でも最も古い萃香はその魔理沙に匹敵、あるいは上回るほどの力をもっているといわれる。
 博麗の巫女はさらにその上を行くというのか。

「どうでもいいわ。力の強い弱いなんて。ま、そんなわけで周りに迷惑だから、他のことで勝負しろって言ったんだけどね」
「ええ」
「魔理沙が、ならば鬼ごっこで勝負だーって言い出して」
「……なんとなく話が見えてきたわ」
「お前は鬼だから、鬼役だぜって一方的に宣言して、ものすごい勢いで飛び去ったわ。萃香は萃香で一方的な物言いに腹立ててとびだしちゃったし」

 それで、その鬼ごっこに轢かれたのが私というわけか。

「横、座っていいかしら? なんかどっと疲れちゃったわ」
「どうぞ。お茶でも飲む?」
「熱中症気味なのよ。冷たいお茶があるのなら頂きたいけど」
「温くなった麦茶ならあるわね」
「それでいいわ」

 霊夢から渡された湯飲みをぐっと飲み干す。

「やっと人心地ついたわ……。ありがとう」
「お礼なら言葉より、現物支給がありがたいわね。ちなみに素敵な賽銭箱はあそこよ」
「あいにく、持ち合わせがないわ」

 これ見よがしに舌打ちされたが、まぁ、気にはするまい。
 お金を出し渋っているのではなく、本当に持っていないのだし。
 それに代わりのものを出せばいいだろう。

「お賽銭は出せないけど。お茶請けぐらいなら提供できるわよ」
「あら、何か手土産持参?」
「道中もらったものなんだけどね」

 空間拡張で作っておいたポケットから、アリスのクッキーを取り出す。
 魔理沙に跳ね飛ばされた衝撃で、つぶれてないかちょっと不安だったけど、幸い無事だった。
 この分なら、一緒に放り込んである蓄音機と萃香からもらった飴玉も大丈夫だろう。

「クッキー? ずいぶん似合わないものをもってるわね」
「アリスからもらったのよ。色んな感想を聞きたがってたから、一人で食べるよりは喜んでくれるでしょう」
「あら、なかなか美味しいじゃない」

 霊夢も魔理沙と同じく、美味い不味いでしか語らないタイプの人間だろうか?
 まぁ、一人でも多くに美味しいと言ってもらえれば、アリスも喜んでくれるだろうから、良しとしよう。

「後はそうね……。音楽を提供できるけど、いるかしら?」
「音楽?」
「香霖堂は知ってる? そこで手に入れてきたのよ」

 そう言って、横に蓄音機を取り出して、置く。

「あら、霖之助さんのレコードプレーヤーじゃない。あの人、それ結構気に入ってて、売りに出すつもりはないとか言ってたのに」
「そうなの?」

 霊夢の言葉を聞きながら、蓄音機のゼンマイを巻き、黒盤をセットする。

「どんだけ大枚はたいたのよ。何、ひょっとして今お金ないのはソレを買ったせい?」
「まさか。うちの図書の閲覧と持ち出しの許可が欲しいって交渉されてね。コレはそれの代価」
「へぇ……。そういえば今更だけど、あんた何でこうして外出歩いてるの? 今まで図書館から離れることなんてなかったでしょうに」
「ああ、そうだったわ。その件でここにも来たのだけど」

 霊夢に今日の出来事を一通り説明する。
 魔理沙の襲撃で大切な本を書棚ごと持っていかれたこと。

「へぇ……魔理沙らしいわ」

 ついでに、雑談がてらアリスが作ったお菓子の感想を欲しがっていたことを話してやる。

「アリスがねぇ。ま、あいつ友達少ないしねぇ」

 香霖との交渉劇を語って聞かせる。

「それで、あのレコードプレーヤーを譲り受けた、と。やるじゃない、霖乃助さんと口八丁でやりあえる人なんて、そうそういるものじゃないわよ」

 萃香がくれた飴玉について。

「ああ、アレね。私ももらったわ。不思議よね」

 霊夢との雑談にふける一方で、パチュリーは胸を満たす不思議な感覚に首をかしげていた。
 不思議な昂揚感。
 彼女が覚えている限りでは、こういった感覚は初めてかもしれない。

「ところでパチュリー」
「何?」
「貴女、少し見ない間にずいぶんしゃべり上手になったわね」
「……そうかもしれない。これだけ一日に話のネタになることを経験したのはずいぶん久しぶりだと思う」
「今、楽しいでしょう?」
「……ええ」
「たまには外に出るのも悪くないでしょう」
「否定はしないわ」
「図書館にこもって本を読み漁るだけが知識を高める術じゃないわ。今日みたいに外を歩き、実際見聞きして初めて手に入るものもある」
「そうね」
「こういうの、何て言ったかしら」
「?」
「百聞は一見に如かず?」
「意味は近いけど、厳密な定義には微妙に当てはまらないわね」
「でも、一文字変えて見ると、そのものずばり貴女の今日の経験に当てはまると思わない?」

 霊夢はそう言って、クッキーの一欠けらを口に放り込んだ。







 結論から言えば、博麗神社へ行った事は無駄にならずに済んだ。
 あの後、疲れきった萃香が帰ってきて、魔理沙の居場所を教えてくれたのだ。
 そうして、パチュリーはその場所を目指して飛んでいる。
 時刻はまもなく夕刻。
 紅くそまった太陽が沈んでいく。


『そこはねー、私もちょっと話を聞いただけなんだけど、魔理沙のとっておきの場所なんだって』


 博麗神社から見て、西へまっすぐ。
 人里を越え、鈴蘭咲き乱れる丘の手前にそれはあるらしい。


『自分の物を片付けられない性質を理解したうえで、考案した苦肉の策みたいなんだけど』


 萃香の話だと、隠れ家に近いものらしく、認識阻害の魔術がかけられており、上空から見ただけではわからない、とのこと。
 近くまで行ったら降りて探さねばなるまい。


『家に置いておくと、どうしてもそれまでに蒐集したものに埋もれ、壊れたり無くなったりしてしまう』


 ひとまず聞いていた座標には辿り着いた。
 ここから先は、自分の目と足だけが頼りだ。


『だから、散らかしたくない自分のお気に入りの場所を作って、本当に大切なものだけそこに持ち込んで、そこだけはちゃんと整理するんだって』


 アレか。
 さすがは幻想郷全土を見渡せるという萃香の能力である。
 聞いていたポイントにずばりそれはあった。
 こんぢまりとした、決して大きくはないログハウスである。
 鈴蘭の丘を望む山の中腹。
 人里を一望でき、遠くには紅魔館の立つ湖が見える。
 眼に映るものは違うが、それはどこか博麗神社からの景観に似ていた。
 夕焼けに染まる幻想郷が一望できる絶好の場所。

 ログハウスの扉を叩く。

「魔理沙、いるかしら?」

 呼びかけて見るが、中から返事はない。
 だが、パチュリーは中に人の気配を確かに捉えていた。
 居留守か? と一瞬いぶかしみ、魔理沙が今日自分にしたことを考えれば、これぐらい許されるだろうと、扉に掛かっていた施錠の魔術を解いて、扉を開けた。

 中は予想していたよりずっと綺麗だった。
 アンティーク調の家具一式と、小屋の規模から見れば少し大きすぎる感のある暖炉。
 後はたくさんの棚が立ち並び、遠目に見てもマジックアイテムとして、あるいはアクセサリーとして価値のありそうなものが並べられている。
 展望台としても設計されているのだろう。
 鈴蘭の丘を望む側に大きな窓が取り付けられていて、その窓辺に置いた椅子で眠りこける少女が一人。

「ようやく見つけたと思ったら。寝てるのね」

 すっかり癖になった溜息を一息つき、魔理沙の眠る椅子に近づく。
 夕焼けの紅に頬を染めて、少女は幸せそうに眠っている。

「これは……」

 椅子の横に見覚えのある棚を見つけ苦笑する。
 なるほど、あまり広くないこの小屋にはこれぐらいの棚がちょうどいい大きさとなる。
 なんだか可笑しくなって、思わず吹き出してしまった。
 きっと魔理沙は中の本より、この棚のほうが欲しかったのだろう。
 中に収められた本については、手がつけられていない。

「不思議な感覚ね。朝の段階ではぽっかりと抜け落ちたような、喪失感があったというのに、今は消えている」

 霊夢の言葉通りかもしれない。

 私は知識の徒。パチュリー・ノーレッジ。
 その知識の集積体である書物は我が半身とも言えるものだ。
 だが、こうして今我が身を満たすものはなんだ。
 それはきっと今日得てきた経験。会話。
 そういったものから得られた新しい知識。
 新しい自分。

「貴女が直接満たしたわけではないんだけど」

 もう一度苦笑を浮かべてから。

「そうね。何かが抜け落ちるということは、新しい何かで満たされる切欠になるのかもね」

 パチュリーは、魔理沙のずれかかった毛布をかけなおしてあげてから、穏やかな微笑を浮かべた。
 穴。中身が抜けたもの。からっぽ。
 頭空っぽのほうが夢詰め込める。と、えらい人が言ってたたなぁ、という連想の元にこんな話になりました。

 タイトルは色々悩んだんですが、霊夢との会話シーンで浮かんできたフレーズが気に入り、そこから採用。
 内容がある程度想像できて、しかしどんな内容なのかは、実際読まないとわからない。
 そんなラインで選んだつもりですが、はてさて。

 それでは、読了いただきました全ての方に感謝を。
 ありがとうございました。
ZID
http://etsnow.bufsiz.jp/
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2007/05/13 08:37:27
更新日時:
2007/05/15 23:37:27
評価:
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5.00
1. 5 A・D・R ■2007/05/13 22:50:10
お話は意外性もあり、それでいてしっかりまとまっていたのでとても楽しめました。特に、香霖堂での交渉のくだりがとてもよかったと思いました。
ただ、連想と図書館の穴を足したとしても、お題の意味が薄かったように感じてしまいました。
2. 9 秦稜乃 ■2007/05/14 17:04:24
なんか、指の流れるままにすらっと読んでいけて不思議な感覚。
ああ、幻想郷だなー、って思ったこのいい雰囲気。かなり好きかもです。
3. 7 板チョコ ■2007/05/14 20:13:56
途中の交渉部分が長かったような気がしてちょっとイライラ。
でも、序盤と終盤はスラスラと頭の中に入ってきました。うん。おk。
以上で7点です。
4. 5 詩所 ■2007/05/15 21:11:05
小悪魔の本の内容が気になる
5. 6 爪影 ■2007/05/17 20:03:33
 動き回ったパチュリーに、お疲れ様の言葉をひとつ。
6. 7 どくしゃ ■2007/05/24 09:38:02
おぉ〜これは面白かった!
パチェが外出する話って珍しいですね。ちゃんと意味もあるし。
お題も上手く使われていて。 霖之助との交渉が特に楽しめました。
7. 10 ■2007/05/24 11:07:33
何でもない日常(幻想郷では)ながらも飽きることなく、それでいてあくまでのんびりとした展開。最後まで楽しく読みきれました。
外の世界のアイテムとの付き合いかたが、個人的には一番心に残ってます。
「わけのわからないもんだけど、面白いからいっか」「ああ、こいつぁ便利だ」な感じの適当っぷりがいかにも幻想の住人らしくていい感じです。
8. 3 人比良 ■2007/05/26 21:07:55
お題から少しずれている感じ。話としてはそこそこにプリティ
9. 8 流砂 ■2007/05/26 22:03:33
登場人物が文を読んでいるだけで顔が想像でき、どのように振舞っているかが
幻視できてしまう程に文章が上手い。 というかキャラが活き活きしている。
すげぇー。 芸術をここに見た。
パチュリーがミントやハッカを知らない筈なんて無いとは思うけど、きっとそれも
百文していようが一験してみなければ分からない事なのでしょう。 うむ、なんか良い。
あと胡散臭いこーりんがカッコイイ。 ……こーりんってこんな格好良かったんだ。
いやしかし『パチュリーが知識の穴を埋める』作品なんて想像だにしていなかったわー。
最後に、繰り返しになるけどキャラが活き活きしてる、さいこー。
10. 6 deso ■2007/05/26 23:31:12
面白かったです。香霖堂の会話が良かった。
11. 9 あああ ■2007/05/27 02:27:12
これはいいパチュリー
子供に初めてのおつかいをさせる親の気分になりました。
タイトルも興味をひかれて一番最初に読まさせてもらいました。
12. 7 blankii ■2007/05/27 11:37:19
 題名の違和感に本文読んでから気付いた俺はH。
 パチュリーさんの比類なきもやし振りは羨ましい限り、私も図書館に住みたいなー、とか思わされました。埋められない穴の話も良いですが、こうして少しずつ埋められていく穴も好きです。
13. 6 椒良徳 ■2007/05/27 20:16:41
いやいや、誤字脱字もなく読みやすい文章で丁寧に仕上げられた作品だと思います。
霖之助とパチュリーのやりとりも面白かった。
ただ、なんと言いますか、ちょっと良い話で終わってます。いや、悪い事じゃないんですがね。
個人的にはもう一ひねりほしかった。
14. 5 木村圭 ■2007/05/27 23:51:02
シルバニアファミリーの類を連想させる隠れ家がえらい素敵。細かいツッコミどころが結構あった気がするんですがラストでどうでもよくなってしまいました。こういうのを負けたって言うのでしょうか。
15. 6 shinsokku ■2007/05/28 22:45:39
百両は一文に如かず。
駄洒落は兎も角、適度にごっすりとパチェパチェしておりますな。
サイレントパチュリー。
16. 4 らくがん屋 ■2007/05/29 10:32:37
一見にしかず。まさにその言葉通りの内容でしたが、正直どこを楽しめばいいのか戸惑ってしまいました。
17. 4 反魂 ■2007/05/29 18:54:19
全体的にやや構成が悪いというか、テンポが悪い気がします。
総じて肉厚な描写を重ねネタを詰め込んだ割に、それらが後半生ききっていないように思われました。話の筋に関わらない部分に関しては、適度に力を抜いてすっ飛ばしてしまった方がテンポが良くなりますし、主題もより明確になると思います。
良いお話ではあったのですが、情景描写に対して心理描写が手薄だったことも合わせ、ちょっと消化不良感が。或いは時間が足りずきっちり纏めきれなかったとすれば、惜しいなあという印象です。
18. 5 鼠@石景山 ■2007/05/30 01:57:45
面白かったです。
でも、天候制御とか出来るんだから、その辺はどうにでも出来そうな感じがあるけど。
香霖堂の交渉がちょっと長く感じました。といっても他と比べてのものなので、大した事では無いですが。
どっかの歯車パチェだと間違いなく魔理沙の家を斬ろうとするな。で、アリスが泣きながら止めるの。
19. 6 いむぜん ■2007/05/30 02:42:12
ノゥレッジ先生の大冒険。たらい回しにされるパチェだがダレない所で収まっている、と思う。
ツンデレとか胸ネタとか脱線しそうなところで踏みとどまってる感じを受ける。
香霖との交渉も面白い。不自然な所がないが、ふっかけてもいいんじゃなかろうか。
でも、魔女との契約なんか真面目に交わして良いのか。
萃香がちょっと親切に過ぎる気がする? 勝負に巻き込んだっていう負い目があるのかもしれないが。
茹りながらぶつぶつ文句いって飛んでるパチェ萌。
20. 7 ■2007/05/30 03:54:22

面白かったです〜。特に交渉シーンが新鮮でした。
強いて言うならラストシーンにもう少しボリュームが欲しかったです。なんだか唐突に終わったような感じを受けたので。
21. 7 リコーダー ■2007/05/30 15:58:54
みんなが日常を生きてる感じがして良いです。
22. 6 眼帯因幡 ■2007/05/30 18:13:33
>体調を急降下を続けている
「を」が連続して使われていますね(誤字?
さて、パチュリーが外に出る話というのは、某WEBコミでも有名でですが、やはり魔理沙絡みですね。
外の空気に直接触れて、楽しむようなパチュリーの姿が微笑ましく、楽しめました。
お疲れ様です。
23. 9 K.M ■2007/05/30 21:43:27
パチュリー様の小さな冒険譚。
色々な場所で話が繋がっていて、楽しく読むことができました。
24. 8 二俣 ■2007/05/30 22:13:41
綺麗に広げて綺麗にまとめた質の高い作。最後までダレずに読めました。
構成、文章には文句をつけるところがありません。特に軽く流しているようでしっかり考えられた地の文には大変好感を持ちます。
ですがお題ぶんの加点はぎりぎりのところで付けられないのでこの点でご容赦を。
25. 6 たくじ ■2007/05/30 22:13:57
一つ一つの出会いと会話にそのキャラらしさが出てて、すらすら読めました。面白かったです。
26. 6 時計屋 ■2007/05/30 23:53:50
魔理沙は実際やってることは酷いんだけど、
それでも憎めないのはやっぱりラストのような
間の抜けたところがあるからでしょうね。

さて批評です。
文章は丁寧に書かれていて、疲れを感じることなく読むことが出来ました。
お話も日常の延長にある出来事が柔らかく書かれた、良いお話だったと思います。
ただ、お題がちょっと薄かったのが残念でした。
27. 9 藤村る ■2007/05/30 23:55:16
 あー。
 面白かったなあ……。穴は弱いと感じたけど。それだけ。
 霊夢がパチュリーにあれこれ言うところは、何か、すごくいい。
 全体のテンポもよく、すいすいと読み進められた。霖之助との交渉もいい。
28. フリーレス ZID ■2007/06/02 15:01:15
 こういった表舞台で作品を書くという経験が皆無だったため、いただいたコメントの一字一句、心に染み入ります。
 面白い、と。そう言葉にしてもらえる事が、こんなに嬉しいことだとは。
 初めて筆を執った時の感動が蘇る思いでした。
 機会を作ってくれた主催者様、共に同じテーマに挑んだ同好の諸氏、そして読了いただきました全ての方へ。
 改めて感謝を。

 できることなら、私も感想者としてほかの方の作品にコメントつけてまわりたかったのですが、感想期間中、PCが不調でろくに時間がとれませんでした(涙
 次回があるならば、今度こそ感想者としても参加し、チャットでROMとして眺めるだけに終える事はなくしたいものです。

 実を言えば、東方の二次を書いたのは、初めてだったりします。
 何よりも『らしさ』を出そうと心がけて書いたので、頂いた感想の中に「キャラが活きている」や「幻想卿っぽい」といったコメントを見るたびに、喜びがこみあげてきました。
 ……そっちに気をとられすぎて、肝心のテーマがおろそかになったのは、完全に私の実力不足ですねぇ(涙

 賛否あった、中盤の交渉劇についてですが。
 この作品を書くにあたって、一つ決めていた事がありまして。それが『戦闘シーンを使わない』ということ。
 どうにも、私には安易に戦闘シーンを持ち込んで、山場をでっちあげるという悪癖がありまして。
 そういうのに頼らず、あくまで、東方のキャラクターを、幻想卿の風景を、登場人物達の意思のやり取りを書こう、と。
 で、締りのないダルい作品にならないよう、代わり入れた「ある程度、緊張感のあるシーン」がこの交渉劇だったのです。
 山場としては、盛り上がりにも、緊張感にも欠ける内容だったので、まだまだ工夫の余地があったなぁ、と反省。
 もう少し短くまとめて、緊張感ある感じに仕上げられればよかったんですけどねぇ。


 楽屋ネタは以上。
 個別レスでーす。

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■藤村る さん
 テーマの弱さは完全に、私の実力不足でした。
 後半、もっとテーマに触れたシーンを入れる予定だったのですが、話のテンポが悪くなるのと、時間切れとが重なって、結局断念。
 もうちょい上手く書ければよかったんですけどねぇ(涙
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■時計屋 さん
 ラストシーンは、幸せそうに眠る魔理沙を見て、まぁ良いか、となるパチュリー、と決めていました。
 この2人は、こういうシーンが一番似合う気がするのです。 
 お題の弱さは、猛反省。もっと掘り下げていけるシーンを書ければよかったんですがー(涙
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■たくじ さん
 東方作品書くの初めてだったので、「らしさ」が出てるって感想が一番嬉しいです。
 ありがとうございます。
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■二俣 さん
 掘り下げていくべきとこなのか、流すとこなのかの判別は結構悩みながら書いたので、うまくいっているようであれば嬉しい限りです。
 もうちょっとお題に触れていけるシーンを描ければ良かったんですがねぇ(涙
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■K.M さん
 パチュリーが「魔理沙に奪われた本を取り返しに行く話」ではなく「その過程でいろんなものを手に入れる話」を書きたかったものでして。
 シーンごとの連結がうまくいってたと感じていただけたのならば、何よりです。
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■眼帯因幡 さん
 誤字ですねぇ(涙  そして、やはり某WEBコミを連想されましたか。
 今作、件の某WEBコミに引きずられないように、と苦心した作品だったりします。
 どうしても、スタートコンセプトが一緒だと、同じ流れになりやすいですからね。
 紅魔館を出た後、簡単に霧雨邸まで着いて、そこから話が展開するようにしたのは、アンチテーゼ的な苦肉の策。
 結果発表時、「パクリ乙」って感想だらけかもしれんなぁ、覚悟してたほどでした。
 とまれ、楽しんで頂けたのなら幸いです。
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■リコーダー さん
 そういう作品を書こうとしていたので、そう言っていただけるのが何より嬉しいです。
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■執 さん
 当初の予定では、博麗神社以降のシーンはもっと容量のあるものになるはずでした。
 時間がなかったのと、掘り下げていくとそれまでのシーンとテンポが変わりすぎて、ダレそうだったので、まとめてカット。
 上手くまとめきれなかった、完全に私の実力不足です(涙
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■いむぜん さん
 ほのぼの系の作品にサラっと紛れ込んでるギャグってのが好きなもんでして。そういう作風を出そうとした結果でしたw
 香霖とのシーンは、確かにまだまだ工夫の余地があったように思います。
>魔女との契約なんか真面目に交わして〜
 そのネタで一本SSが書けますね(待て
 私の中では、香霖は「狡猾だけど、詰めが甘く、結局尻にしかれるキャラ」なんですが。
 引き受けたは良いけど、ついでに無理難題ふっかけられて、四苦八苦する香霖萌え。
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■鼠 さん
 周囲に多大な影響を与える行為は、腋巫女に張っ倒される行為って事にしておいてください(涙
 いや、実際はそういうことできるってのを知らなかっただけなんですがね。
 むぅ、まだまだ資料が足りてなかったか・・・。
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■反魂 さん
 通常、私が作品を書く場合「とりあえず思いついたまま書き殴って最後まで通した後、推敲しながら表現を取捨選択する」といった流れになるのですが。
 今回、推敲にあまり時間がかけられず、テンポの悪いシーンがそのまま残る形になってしまいました。
 完全に実力不足です(涙
 心理描写が足りてないのは、私自身感じてはいたのですが、作品のテンポを崩さないまま掘り下げていくことがうまくいかず、まとめて全部カット。
 しみじみ、自分の実力不足を感じます。
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■らくがん屋 さん
 盛り上がりに欠けるのは、私も頭抱えてました。
 もっと良い山場を書ければよかったのですが・・・。
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■shinsokku さん
 パチュリーには、こういうシーンが似合うだろう、と思いつくまま書いたらこうなりました。
 パチェパチェ。
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■木村圭 さん
 色々あったけど、最後の最後、隠れ家で幸せそうに眠りこける魔理沙を見て、どうでもよくなったパチュリー。
 というのが、当初から決めていたラストだったものでして。
 ひょっとしたら、貴方が感じた物が、作中パチュリーが感じた物に一番近いのかもしれません。
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■椒良徳 さん
 盛り上がり、山場、緊張感。
 そういったものを、こういったほのぼの作品に組み込めるようになるのが、当面の私の目標です。
 まったりするだけじゃ、一味足りないってのは、わかってはいるんですが、組み込むとなるとなかなか難しい(涙
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■blankii さん
 穴が開いてしまって、物語が始まる作品ってのがおそらく今回のこんぺの主流になるだろうと、踏んで、こういう穴を埋めていく話を書こうと思いました。
 ……まぁ、結局。避けようとしていた「穴を空けられることで話が始まる」という展開は回避できなかったんですけどね(涙
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■あああ さん
 名称は、どこかで聞いたことがあるようなチープさがあったほうが良いようなことを、どこぞの生徒会長が言ってたので、こんなタイトルに。
 中身もちゃんと楽しんでいただけたのなら、幸いです。
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■deso さん
 東方で戦闘シーンというと、弾幕か、あるいは口喧嘩的な舌戦かが主流。
 なので、こういう交渉劇は新鮮かな? と思い導入してみました。
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■流砂 さん
 活きたキャラというのは、私が一番に目標としてきた事なので、うまくいっていると感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。
 パチュリーは、ミントが吸熱反応的なものを起こす事は知ってても、それを食品に流用するってことは思いつかないんじゃないかなぁ、と。
 知識を蓄えることをしても、それを用いて新しい何かを起こす事には関心がない、というのが私の中のキャラクター像。
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■人比良 さん
 もっとお題部分に踏み込んでいければよかったのですが……。
 実力不足をひしと感じます。
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■翼 さん
 今、こうして目の前にあるものを、幻想卿の住人が手に入れたらどう感じるだろう。
 そう考えるのはなかなかに楽しいですよね。
 作中の冷たく感じる飴とか、そういう空想からうまれたシーンだったり。
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■どくしゃ さん
 東方作品だと、口喧嘩的な舌戦は多くても、駆引き重視の交渉劇ってのは珍しいかな? と思い採用しました。
 楽しんでいただけたのなら幸いです。
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■爪影 さん
 これほど労いの言葉が似合うパチュリーも珍しいのではないでしょうか、とw
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■詩所 さん
 えー、個人的には心温まる童話か、突き詰めたシュール作品のどちらかと思うのですが。
 子猫の一生、みたいな。走る速さはマッハ5。
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■板チョコ さん
 中盤の交渉劇は、まだまだ工夫の余地があったなぁ、と反省。
 もっとスパッと短く、かつ緊迫感のある感じにできればっよかったんですが・・・。
 まだまだ、精進が足りません(涙
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■秦稜乃 さん
 幻想卿「らしさ」を出すってのは、今作の一つのテーマでしたので、うまくいってると感じていただけたなら何よりです。
 私自身、この空気もった作品に惚れて、東方の作品を書いてみようと思ったぐらいですしねぇ。
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■A・D・R さん
 ああいう言葉の駆引きは東方作品では珍しいかな、と思いやってみました。……幻想卿だと口より先に弾幕でしょうしねぇ。
 お題の弱さは、完全に実力不足故。
 もっとお題に踏み込んだシーンが描ければよかったのですが(涙
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