頼むから誰かこの子たち出してやってくれよ!

作品集: 最新 投稿日時: 2007/05/13 08:40:41 更新日時: 2007/05/15 23:40:41 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
 天気の良い日だった。
 燦々と太陽が空にかかっていた。お日さまが地上を見ていた。空から地平を照らしていた。
 晴れである。
 まっこうもって暖かな幻想郷だった。小春日和とはこのことを言うのだろう。
 空気がぽかぽかとしていて、誰もが眠くなるような気候だった。
 春であり、晴れである。
 頭の中に花が咲きそうなほどに、春である。
 その春の中で、穏やかな春の中で、えっさほいさと働いているものがいた。似つかわしくない。春ならば、もっとゆったりしていればいいのに、その三人組はむしろ夏のような元気のよさで働いていた。

「サニー、もっと深く掘りなさいよ!」
「ルナこそ、手が遅いわよ!」
「二人とも頑張って〜」
「「あんたもやりなさいよ!!」

 一人は月の妖精。スコップを片手に、えっちらほっちらと穴を掘っている。
 一人は陽の妖精。スコップを片手に、よいさこらしょと穴を掘っている。
 一人は星の妖精。スコップを手離して、穴の縁に腰掛けて二人を応援している。
 言うまでもなく――三月精である。
 ルナチャイルド、サニーミルク、スターサファイア。悪戯好きな三月精だ。
 何をしているのかといえば、それこそ見ての通りである。
 穴。
 穴だ。
 穴を掘っている。
 深い深い――深い穴である。小さな三月精は、すでにすっぽりと全身が収まるほどに入っている。三人入ってもまだ足りない。
 あきらかに、小さな妖精ではなく、それ以上のサイズを落とすためのものだった。
 つまりは――
 落とし穴である。
 古典的な、悪戯だった。

「意外と大変なのよこれ!」
「誰よ、落とし穴掘ろうなんていったの!」
「サニーの能力をつかえば、穴に落ちやすいからでしょ?」
「掘るのが面倒なのよ掘るのが!」

 ぺちゃりくちゃりと喋りながら、三妖精は穴を掘る。
 確かに――サニーミルクの光を操る能力を使えば、人間は穴の存在に気付けないだろう。気付く暇もなく、穴に落ちるに違いない。
 悪戯としては、完璧だった。
 ただ一つ。
 問題があるとすれば。
 妖精である彼女たちの頭が、たどり着いていない、致命的な問題が一つだけ――――――あった。

「とにかく! あの黒白とか!」
「紅白にぎゃふんと言わせるためには!」
「落とし穴を完成させることね!」

 三人は一致団結し、再び穴を掘り始める。
 その、三人の。
 真上を。
 暖かな春の日差しの中を――


「空は良い……あったかい空は最高だぜ!」


 魔理沙が歓声と共に、彼方から此方へと飛んでいった。
 飛ぶ。
 箒に乗って――あっという間に、飛び去っていった。


「………………」
「………………」
「………………」


 沈黙。
 三者三様に、沈黙。
 声につられて上を見て、飛ぶ魔理沙の姿を見た三妖精は沈黙した。無理もない。飛んでいたのだ。それはつまり。
 落とし穴に落ちても、飛んで逃げれるということに、他ならない。
 普通ならば、自分たちが飛んで穴の外に出てる時点で、気付くべきなのだろうが――哀しいかな、彼女もまた妖精なのだ。
 つまりは、馬鹿なのである。


「………………」
「………………」
「………………」

 さらに、沈黙。
 ずっと、沈黙。
 どうしようもないほどに、沈黙して――

「「「魔理沙のアホ――!」」」

 穴に向かって、声をそろえて叫んだのだった。
 


 その後。
チルノ「うわー! なにこの落とし穴! 誰か! たっすけてー!」

 どっとはらい。




三月精について。
前回の登場回数:零
今回の登場回数:(恐らく)1

 全米が泣いた

人比良
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投稿日時:
2007/05/13 08:40:41
更新日時:
2007/05/15 23:40:41
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1. 2 A・D・R ■2007/05/13 23:54:21
短いながら、三月精の『いたずら妖精』の雰囲気がよく出ていたかと。
2. 4 秦稜乃 ■2007/05/14 08:12:44
全俺が泣いた
3. 3 詩所 ■2007/05/14 22:19:32
三月精への愛が伝わったぜ……
4. 5 爪影 ■2007/05/17 20:05:06
 駄目だこりゃ。
5. 4 名前を名乗れない程度の能力 ■2007/05/19 12:08:57
ちょ、チルノw

おもしろかったです。確かに空飛んでるわなぁ……
6. 1 どくしゃ ■2007/05/24 08:52:05
チルノ…。
落とし穴っていうのはありがちっぽいけど、良かったと思う。
7. 8 ■2007/05/24 11:21:08
チルノが引っ掛かってくれても、お約束として、興味を失った落とし穴の確認になぞ行っていないであろう三月精。全英が泣いた。
8. 4 反魂 ■2007/05/25 01:41:29
のっけですが、小春日和は春の天気を表す言葉ではありませんよー。秋の天気を表します。
結構間違えられがちですが。

本編。
短編ですが、過不足のない情報の出し方、明瞭なオチ、短編としては非常に優れているように思います。なかなかに実力を感じさせる作品でありました。
というかタイトル掛詞なんですかこれは。

それにしても三月精の不人気っぷりは異常ですね!

不憫だよ……もっと書いてあげて……(←自分は書かない
9. 5 流砂 ■2007/05/26 22:04:23
題名で吹いた。
軽いテンポで短い作品ながらもウェットに富んでいて非常に良い作品だと思います。
しかし……まさか4つ前の作品とリンクしているのかこれは!?
10. 4 deso ■2007/05/26 23:29:58
うん、自分も書こうと思ったんですけどね、三月精…(伏し目
それはともかく。
オチが弱いと思います。もっと弾けた方が。
11. 4 blankii ■2007/05/27 11:38:54
だってだって、掲載紙が〜〜っっ。確かに三月精、今まで70編余り読んできて出番0、作者様の予想が大当たり。あ、そういえば自分だって出してあげてない……サニーミルクかわいいよサニーミルク!(死
12. 4 椒良徳 ■2007/05/27 20:17:56
おお、三月精を出すとは勇者だ。しかし、それだけでは点数は取れませんぞ。三月精をもっと動かさないと。もったいない。しかし、本当に貴方しか三月精を作品に登場させる人は居なかった。それは凄いと思う。
13. 3 木村圭 ■2007/05/27 23:52:49
落とし穴って落とすことに意味があるんじゃなかったのですかい? つか三妖精、頭の良い参謀でも付けば無敵集団ですよねぇ……。
14. 3 shinsokku ■2007/05/28 23:51:32
まほー。
穴に落ちたら土をかければいいじゃない、とマリーが言ったとか言わないとか。
15. 2 らくがん屋 ■2007/05/29 10:31:02
率直に言うけど、そんなに出したかったならもっとちゃんとした話用意した方が良かったと思う。
16. 3 鼠@石景山 ■2007/05/30 01:58:54
……俺も泣こう。

確かに落とし穴のカモフラージュには最適な能力かも。でも、穴を掘ったりとか面倒な真似するんですかね。
サ「穴を掘るのよ!」
ル「いやよ疲れるもの」
ス「そうよ、やるならサニー1人でお願いね」
サ「友達甲斐のない奴らめ!」
ありあわせの物で済ませそう。既にある穴とか。三月精だけに3点。なんちて
17. 3 いむぜん ■2007/05/30 02:43:16
予知能力者がここに。でも、占有率100%だよ!
18. 3 リコーダー ■2007/05/30 15:58:23
何も考えず読めました。
当たり前か。
19. 3 眼帯因幡 ■2007/05/30 18:14:48

とても微笑ましい物語でした。主にあとがき。
しかし、どうにも短く、物足りないと感じてしまいますね。
三月精は巧く扱えるかどうかが不安なところですが、いつか書いてみたいものです。
ともかく、お疲れ様でした。
20. 6 K.M ■2007/05/30 20:38:11
清々しいまでに馬鹿の勢ぞろいに思わず笑っちゃいました。
21. 3 たくじ ■2007/05/30 22:13:20
もっとふくらませた方が良かったかなぁと思いました。
22. 4 二俣 ■2007/05/30 22:17:12
見え見えのはずのストレートがかわせなかった…
チルノ率が高かったので、ああHが穴落ちる話かなーと、タイトルで油断したのが敗因。三月精という単語がカケラほども頭になかったことに俺も泣いた。
23. 2 時計屋 ■2007/05/30 23:54:20
>今回の登場回数:(恐らく)1
ホントに1だし。
全俺も泣いた。
24. フリーレス 藤村る ■2007/06/03 02:16:11
 嫌いじゃない……嫌いじゃないぜ……。
 飛べばいいのになあ……と思ったら、本当に飛びました。
 妖精加減が絶妙で好きです。
 もうちょっと読んでいたかった気持ちもありますが、三月精……。
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