風の吹くままに

作品集: 最新 投稿日時: 2007/05/13 08:57:23 更新日時: 2007/05/15 23:57:23 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00

「ふぅ……ここもようやく終わりっと」

ようやく綺麗になった階段を見下ろして、妖夢は満足したように軽く息を吐きだした。
ここ白玉楼の庭師である彼女は、庭木の剪定から掃除までをきっちりとこなさなければならない。
だが、一口に白玉楼と言っても、その大きさは地平線が霞むほど広く……
しかも、剪定する者が妖夢一人しかいないのであれば、毎日コツコツと綺麗にしていくしかない。

「ようやく中腹という所まで来たか。残りは明日にしよう」

竹箒を手に持ったまま思いきり背を伸ばすと、妖夢は屋敷に向かって階段を上がり始めた。
彼女がしなければいけない仕事は庭の剪定だけではなく、まだまだいくらでも残っている。
頭の中で時間の配分とペースを考えながら歩いていると……
ふと何かを感じ取り、その足を止めた。

「なんだ……?」

妖夢は首だけを後ろに向けて、霧によって朧に揺れる石段の先を見つめる。
その手は自然と、竹箒から腰と背中に携えてある刀の柄に伸びていく。
殺気を含んだ何者かの気配を、その霧の先に感じ取っていた。

「侵入者か……? いや、その割りには霊達が静か過ぎる」

白玉楼は冥界なので、周りには無数の浮遊霊が漂っている。
この辺りに漂っている霊達は、白玉楼に無断で入り込む敵を襲うように指示されているのだが……
しかし、周りの霊達は不気味なほど沈黙していて、妖夢が感じている気配に気付いてもいない。
妖夢は訝しがりながらも素早く刀を抜き、身体を後ろに向けた。

コッ……コッ……

霧の中から石段を踏む音が確かに聞こえ、こちらにゆっくりと近づいてくる。
妖夢はすぐに刀を構えると、神経を前面に集中させた。

「何者だ!! そこで止まらなければ……容赦なく斬る!」

鋭い声が響くと同時に、妖夢の身体から溢れ出る闘気によって空気が張り詰めていく。
だが、妖夢の呼びかけにも応えず、足音だけが近づき……
白い霞の中で、黒い人影が浮かび上がった。

「警告は、したぞ――!!」

妖夢は白楼剣と楼観剣を振り被ると、その場で勢いよく振り下ろした。
白刃が空気を斬り裂いて走り、軌跡の形を残して妖気が凝縮していく。
そして、集まった妖気が弾丸の形状に変わり、妖夢の振った勢いのままに撃ち出された。
数にして二十をゆうに超える、白い流線形の弾が列を成して前方の人影に迫っていく。
牽制と脅しの意味を込めた一撃を放ち、それに合わせて次の行動を取ろうと妖夢は体勢を整えるが……

「なっ――!?」

今、目の前で起こった現象を目にして、驚愕の声を上げた。
試しとはいえ妖夢が撃った本気の一撃を、人影は避ける動作もなく全弾受けたのだ。
周りの霊達に気配を読ませず、しかも穴だらけとはいえ冥界の結界を音も無く抜けてきた。
それだけで相当の実力者だと思っていただけに、拍子抜けしてしまう。

「もう、終わり……?」

相変わらず霧が深く立ち込めて、目標が確認できないだけに、妖夢も確かめるべきかどうか迷ってしまう。
だが、いつまでも構えているワケにもいかず、仕方なく石段を降りようとした所で……
妖夢の背筋を、悪寒が走り抜けた。

「っ――!?」

とっさに……身の危険を感じた身体が後ろに反射的に移動する。
その瞬間、霧の中から矢のような弾丸が疾走してきた。

「くっ!!」

小さく舌打ちをすると、妖夢は身体が流れるままに後方に飛んだ。
チッという小さな音を立てて、妖夢の翻ったスカートの端が焼け焦げる。
それと同時に、さっきまで彼女が立っていた場所の石段が破裂音と共に砕け散った。
妖夢は素早く体勢を整えると、今の弾が飛んできた方向を見据えた。
その場所は石段の上ではなく、自分の横手から飛んできた一撃だった。

『なかなか素早いな……一瞬してあそこまで移動する、なんて!?』

頭で思考していた妖夢の中に、再び危険の予感が走る。
それを横目で追うと、石段の方向から津波のような大量の弾が押し寄せてきていた。
美しい、白の花弁を称えた華のような弾幕。
しかし、そこに殺意という名の確かな威力を込められた波状攻撃に、妖夢は攻撃に移る機会を逸してしまう。

『もう移動したのか!? いや、違う――!!』

妖夢は白い弾を素早くかわしながら、横手と前の両方に意識を向ける。

『移動したのではなく、二人いる……?』

横の方からは心臓が押し潰されそうな殺気だけが放たれ、前方からは変わらず何者かの気配だけがする。
通常ならば、絶対に有り得ない状況に妖夢の中に焦りだけが募っていく。
息をすれば酸素と二酸化炭素が出てくるように、気配と殺気を完全に分離させる事など不可能に近い。
だが、現実は殺気のある方からも、気配がする方からも攻撃が放たれている。
そんな芸当が出来る妖怪に、一人だけ心当たりがあったが……

『紫様なら、もっと幅の広い弾幕を撃ってくる』

避けきれない弾を白楼剣で切り落としながら、妖夢は弾の飛んでくる方向に鋭い視線を向けた。
紫の弾幕は力押しの場合もあれば、緻密な計算による場合もある。
基本的には本気を出さず、敵の力を試すような弾幕が多いのだ。
しかし、この相手にはそれがない。

「てぇえっ!!」

攻撃が止んだ一瞬の隙をついて、妖夢は白楼剣を横に振る。
キンッと澄んだ音を立てて空間が切り裂かれ、その隙間からあふれ出るように緑と黄の弾幕が放たれた。
先ほどの攻撃とは違い、直線ではなく蜘蛛の巣のように全面に弾が張り巡らされる。
しかし、それに敵が当たる事は無く、逆に隙間を縫ってさらなる弾幕が迫ってくる。
美学でもあると言わないばかりに、華やかで多彩な模様を描く弾幕。
その中に秘めた薔薇の棘のような鋭い攻撃に、妖夢は防戦一方の展開を強いられる。

「くぅううっ……!!」

次から次に押し寄せてくる弾幕を前にして、妖夢は悔しさに歯軋りをする。

『弾幕勝負では敗北必至か……』

このままではジリ貧になると考えた妖夢は、懐から一枚のカードを取り出した。
指先に妖気を送り込み、そのカードに描かれた術式を紐解いていく。

「人符――現世斬――」

妖夢が高々とカードを掲げて、凛とした声でそう宣言する。
指先に挟んだカードが炎上して、空気に溶けていくと同時に――
妖夢の身体を高密度の妖気が包み込んだ。
弾幕合戦で相手にならないのなら、渾身の一撃で持って勝負をつける。
不意の強襲だったので、それほど強力なカードを持っていなかった事が悔やまれるが……
それでも妖夢は二刀を構えると、前方の敵の気配に意識を向ける。
霧の向こう側で、朧な人影が浮んでは消える。
次々に迫る弾が髪先を焼き、服をわずかに掠めていくのにも構わず、妖夢はその場を動かない。
そして、再び霧に人影が浮かんだ瞬間に――彼女は駆けた。

「うぉおおおおおっ!!」

裂帛の気合と共に、妖夢の身体から妖気が放たれ、眼前に迫っていた弾を霧散させる。
高濃度の妖気が弾ける乾いた音が耳奥を叩き、まぶしいほどの光で視界が白く染まっていく。
一歩間違えれば、集中砲火を受ける弾幕の中を一直線に突き破り――
霧の中ではっきりと輪郭を浮かばせた相手に向かい、刀を振る。

「―――はぁああっ!!」

一陣の風の如く、妖夢は相手の横を駆け抜けていった。
愚直なまでにまっすぐ最短距離を走り、全力の一刀を喰らわせる現世斬。
二つの手にずっしりとした重みと共に、モノを裂く感触が伝わってくる。
相手のがら空きだったわき腹に一閃。
知り合いの可能性が捨てきれない為、わずかに手心は加えていた。
だが、どんな妖怪もすぐには動けなくなるはずの深手を負わせたはずだった。

「誰かは知らないが、これで決着……」

振り返った妖夢の目が大きく見開く。
斬ったと思った相手の傷口から、咲き乱れるようにして色鮮やかな花が飛来する。
予想もしていなかった光景に、動きが止まってしまった妖夢は避ける事が出来ない。

「な、なんとっ!」

殺気もなく、目を奪われるほど鮮やかな花の洪水に戸惑いながら、妖夢は刀を交差させて防御姿勢を取る。
飛んできた花は残らず、それに当たって散っていく。
一瞬、目くらましかと思い立ち、周りを警戒するが……
すでにそれ自体が罠であった事に、妖夢はすぐに気付いた。

『な、なんだ……花が、纏わりついてくる……!?』

散らせた花と、横を流れていったはずの花が揺らめきながら妖夢の前を舞う。
滲み出る妖気が感覚を、揺れる様々な花の色が視界を奪い去っていく。

「この程度で、私を捕らえたつもりか……?」

攻撃は見せるクセに一向に姿を現さず、そして本気の一撃も出さない相手に対して苛立ちが募る。
妖夢はもう一枚のスペルカードに手をかけた。
断命剣『冥想斬』を使えば、纏わりつく花も飛んでくる花も吹き飛ばす事ができる。
そう考えた瞬間―――
一際強い風が吹き抜けていった。

「なっ!?」

一気に視界が広がり、周りに立ち込めていた霧すらも吹き飛ばされる。
風が去った後には、さっきまでの弾幕合戦が嘘のような静寂に包まれ……
上空から、桜吹雪を思わせる花びらの花弁がいくつも落ちてくる。
狐につままれたような幕切れに、妖夢は懐に手を入れたまま呆気に取られていた。

「剣士ともあろう者が、簡単に背中を取られてどうするの?」
「は……?」

不意に後ろから声が聞こえたかと思うと、背中に鋭い何かが押し当てられる。
静かな声の中に秘められた殺意に、妖夢は微動だに出来なくなった。

「心理戦があまり得意じゃないみたいね。実戦の経験不足という所かしら」
「その声にこの弾幕……以前も来た、花の妖怪か?」
「あら、名前を言ってなかったかしら。風見幽香よ」

クスクスと鈴の音のような声で笑いながら、グッと妖夢の背中に傘の先端を押し付けてくる。
まるで、隙を窺って斬ろうとする心を見透かされたような気になり……
妖夢は悔しさに下唇を強く噛み締めた。

「何をしに来た……」
「幽々子にちょっと用事があってね。ついでにあんたのとぼけ顔が見えたから、つい手を出したくなっちゃって」
「……私は、ついでで敗れたのか……」

がっくりと肩を落とす妖夢を見て、幽香は背中に当てていた傘を離した。

「蟻の穴から堤も崩れる。普段から切り札は持ち歩く事をお勧めするわ」
「敵に助言するとは……余裕なんだな」
「お望みならもっと言ってあげるけど? 殺気と気配が何で別だったかとか、相手の虚をつくやり方とか」
「いや、いい……それを聞いたら私が立ち直れなくなりそう」

何が悲しくて、敵である幽香から助言めいた事を聞かなければいけないのか。
情けなさに涙してしまいそうになるのを堪えて、妖夢は頭を左右に振った。

「あらそう。じゃあ、私はここを通るけどいいわよね」
「もう……好きにすればいいでしょう」

盛大なため息をつくと、妖夢は二刀を鞘に収めた。
喰らったダメージ以上に、心をいたぶられた事に彼女は疲れ果てていた。
元々、それが幽香が妖夢を襲った最大の目的でもあったのだが……
敢えて明かさずに、幽香は石段を登り始めた。

「ああ、最後にもう一つだけ忠告してあげる」
「今度はなに……?」
「こういう見逃しも、些細な油断に繋がるかもしれないと覚えておきなさい」
「うっ……」

さっきの諺を指して言っている事に気付いた妖夢は、何とも言えない微妙な表情を浮かべる。
幽香は満足したように微笑むと、弾むような足取りで階段を上がっていく。
緑の髪がふわふわと揺れ、チェック柄のスカートが優雅に舞う。
その背中を黙って見つめていた妖夢の目に、奇妙なモノが映った。
服の隙間から零れでるようにして現れたそれは、幽香の楽しそうな雰囲気を引き立てるようにして周りを回る。

「あれは……浮遊霊?」

まるで主である幽々子のように、幽香の周りに引っ付いて離れない幽霊。
意外な組み合わせに呆然としながら、妖夢は後ろ姿が見えなくなるまで見送っていた。







夏のまぶしい日差しが幻想郷に降り注いでいた。
春に花を咲かせたものは青々しい葉を茂らせ、そうでないモノは生命力に溢れた花をつける。
多くの命が、四季を通じてもっとも多彩な色を見せながら咲き誇る季節。
空気が澄んで透き通るような青い空を、タンポポの綿毛のような白い傘が飛んでいた。

「今日も暑いわね。この暑い中、せっせと仕事なんて人間もご苦労様だわ」

白い傘が作り上げる日陰に入りながら、風見幽香は地上を眺めていた。
遮るモノがない幻想郷の風を受けて、空の上を一枚の木の葉のようにゆったりと舞い踊る。
命に限りあるモノが謳歌する季節においても、大半の妖怪達は気にも止めない。
何故なら、彼女達の命は数百、数千年にも及ぶ長いモノであり……
そのうちのたった一年の出来事で、一喜一憂できるモノはそう多くない。
妖精や季節ごとに現れる妖怪を除けば、今が夏だという事にすら気付いていないかもしれない。
しかし、風見幽香にとって夏は、宝石箱の中を覗いているような期待感を湧かせる季節だった。

「ん〜……良い匂いを、風が運んできてくれる……」

フリルのついたスカートをはためかせ、幽香は風が吹く方向にそのまま流されていく。
その眼前には、黄色と茶色の草原が広がっていた。

「元気にしてた、貴方達?」

向日葵だけが咲き乱れる草原に立ち、幽香は友人に話し掛けるような口調で声をかける。
すると、風に揺れていた向日葵達がそれに逆らい、一斉に頷くようにして花を何度か揺らす。
それを見届けた幽香は、微笑みながら傘を閉じた。

「じゃあ、いつも通り楽しませてもらうわね」

そう告げると、彼女は背丈よりも大きな向日葵の間をすり抜けるようにして歩いていく。
向日葵は熱い日差しを一身に受け止めているので、その下になっている影はひんやりとした清涼感に包まれていた。
まるで主人を迎え入れる従者のように、幽香の歩く場所を開けていく向日葵の道は壮観の一言に尽きる。
花を愛し、花に愛された四季のフラワーマスターの二つ名に恥じない、優雅な行進。

「ん……?」

わずかに薫る匂いと、頭を垂れる向日葵に気を良くしていた幽香の足が不意に止まった。
何人足りとも邪魔が出来ない彼女達の行進の前に、小さな白い花が咲いていた。
いや、正確にいえば……それは花ではなかった。

「魂魄……幽霊? なんでこんな所に幽霊がいるのよ」

魂の大きさは重ねた年月に比例する。
そこから察するに、産まれて間もない乳児だろうとすぐに判断できる。
しかし、今の時期はちょうどお盆が過ぎた辺り……
死んだ者達が冥界より一日だけ地上に戻る日。
魂は輪廻転生を繰り返す。
生きている時は天に上り続け、死すれば穴に篭り、そしてまた天に上る。
太陽とまったく同じ周期で魂は巡ると考えられてきた。
それは原点に刻まれた命令であり、お盆とは周期を忘れさせないようにする為の神聖な日なのだ。
当然、その日が過ぎれば、魂たちは穴に篭らなければならない。
迷い出て来たモノ、その土地に縛り付けられたモノ以外は……

「この前、ここに来た時……貴方はいなかったはずよね。という事は、迷子なのかしら」

幽香は手を伸ばして、小さな魂魄に触れた。
綿毛のような柔らかさと、白い雲を思わせる艶色が手触りの良さを引き立たせる。

「あら、意外と悪くないわね」

少しだけ力を入れると、掌に確かな弾力が返ってくる。
しばらくは物珍しさに触れていた幽香だったが……
相手は乳児の幽霊であり、意思の疎通が出来るはずもない。
すぐに飽きてしまった幽香は、小さな魂から手を離した。

「それじゃあ、さようなら。小さな迷い子さん」

幽香はスカートの端を持って仰々しく頭を下げると、また向日葵畑の中を歩き始めた。
しかし、また50歩も歩かないうちに、幽香の足が止まる。
無言で顔だけを後ろに向けると……
そこには必死に、幽香の後を追いかけてくる魂魄の姿があった。

「なんで追いかけてくるの、貴方……」

呆れたようにため息をつく幽香の前に、魂魄がふわふわと寄って来る。
別に幽香が待つ必要も無いのだが……
親に捨てられた子犬が必死に追いかけてくる様子にも似て、何となく去りづらかった。
魂魄は追いつくと、じゃれるように幽香の身体を回り始める。

「私なんかの後に付いてきてはダメよ」

回る魂魄を掌に乗せて、声にわずかな殺気を混ぜる。
いくら赤ん坊とは言え、生命の危機を感じ取れば泣きじゃくる。
そうすれば離れるだろうと思ったのだが……
その小さな魂魄は幽香の掌の上で揺れるだけで、離れようとしない。

「もう……どうしたいのよ。従者にでもなる気?」

握ればそのまま潰れそうな魂魄を持て余しながら、幽香は冗談っぽく微笑む。
すると、小さな魂魄はまるで頷くように掌の上を踊りながら、また身体に纏わり付いてくる。
ほんの少しだが……幽香は西行寺幽々子の気持ちを理解した。

「仕方ないわね。迷子の間だけ、私の従者でいる事を許してあげる」

自分で発言して相手がそれに答えた以上、それを反故には出来ない。
その場その場の雰囲気と流れを楽しむ……花鳥風月の心が彼女の美徳でもあった。

「ま、たまにはこんなのも悪くないかもね……」

幽香は纏わりつく幽霊をそのままに、また向日葵畑を歩き始めた。
彼女のゆっくりした歩幅でも魂魄には早いのか……
ずっと引っ付いたり、追いかけてきたりとせわしない動きを見せる。
それを横目で見つめながら、幽香は苦笑を浮かべるしかなかった。






「それで私の所に来たのね。いきなり貴方から尋ねてきたから、びっくりしたわ」
「ま、そういう事」

白玉楼にある古びた大きな屋敷、その縁側に幽香と西行寺幽々子が隣り合って座っていた。
その周りを大小、異なった浮遊霊が舞っている姿は妙に微笑ましい。

「今更遅いかもしれないけど、あんまり妖夢を虐めちゃダメよ。へこみやすい子なんだから」
「あんなの精神修行の一環でしょう。それに虐めるつもりなら、もっと徹底的にするわよ」
「あの子は鞭で叩かれるより、口で攻撃された方が傷つきやすいって事」
「知っててやったけどね」
「まったく変わりないようで安心したわ」

幽々子は傍に置いてあった湯飲みを取ると、ゆっくりとした動作でお茶を啜る。

「小さい子を連れて現れた時は、一体何が起こったのかと思ったけど」
「成り行きでこうなっちゃったのよ」
「随分とらしくない事をするわね。あの幽香が……ふふっ、可愛らしい従者さんを連れてるなんて」

口元に手を当てて、幽々子はクスクスと忍び笑いをする。
それをどことなく不機嫌そうな顔で睨みつけると、幽香はじゃれついていた魂魄を手に取った。

「で?」
「で?」
「この子、返してあげるから早く取ってよ」
「ん〜………」

幽々子は曖昧な返事をすると、小首を傾げて唸り始める。
それを見て、幽香の心に嫌な予感がよぎった。

「もしかして、ダメなの?」
「そう」

実にあっさりとした答えに、幽香はちょっとした目眩を覚えて眉間を押さえた。

「餅は餅屋って言わない? どうしてダメなのよ」
「ここが米屋だから、かしら……その幽霊は残念ながらうちの子じゃないわ」
「幽霊にうちの子も何もないと思うんだけど」
「正確にはまだ裁きを受けてない魂って事」

幽々子は手を伸ばすと、幽香の肩に乗っていた魂魄を指先で突いた。
つき立ての餅のように弾む幽霊に、ふっと表情を綻ばせる。

「ここは裁かれた幽霊が眠る場所。生前に犯した罪や悔恨を綺麗に、時間という悠久不変の水で洗い流す場所なのよ」
「浮遊霊はおいて置けないって事?」
「特にその子は別の未練も抱えているみたい。そういう子は……ちょっと困るわね」
「この子が未練? まだ子供も子供でしょう」
「そんな事、私に言われても分からないわよ。でも未練の思いがあるのは確かね」

幽々子の言葉に、幽香は少し困ったような表情で肩の魂魄を見つめる。
これでお別れだと思っていただけに、何とも複雑な気持ちが胸の中で渦巻いている。

「とにかく、ここではダメって事ね」

小さくため息をつくと、幽香は腰を上げた。
何故、自分がこんな事をしなければいけないのかという思いと共に……
どうもこの小さな幽霊に、自分が振り回されている気がしてならないという気持ちが、彼女の心を重たくする。

「もう行っちゃうの、幽香?」
「用事が済めば、貴方と話す事もないしね」
「別に急ぐ旅でもないんでしょう。お茶くらい飲んでいきなさいよ」

今まで自分だけ飲んでいたクセに……という言葉を飲み込み、幽香は縁側にどっかりと腰を下ろした。

「あら、今日は随分と素直ね」
「せっかくここまで来たのに、徒労で終わるというのがシャクなだけよ」
「ふ〜ん……ま、いいけど。妖夢〜、来なさい、妖夢〜!」

間延びした声が屋敷内に響くと同時に、廊下の方から軽快な足音が近づいてくる。
今まで近くに控えていたのか、呼んで数秒もしないうちに妖夢が幽々子の前にひざまずいていた。
ちらりと横目で幽香の様子を窺う妖夢に、彼女は小さく手を振って応える。
しかし、妖夢は憮然とした表情で目を反らすと、幽々子の方に視線を戻した。

「なんでしょうか、幽々子様」
「お茶を二つに、お団子を作ってきて。小さいやつがいいわね」

幽々子の視線が、幽香の肩辺りに止まっていた魂魄に向けられる。
何故、小さな団子を選んだのか……二人はその理由がいやというほど分かってしまった。





幻想郷の空を、乾いた風と雲がのんびりと流れていた。
時刻は夕刻に差し掛かり、昼間の熱い空気にひんやりとした夜気が混じり始めている。
その中を、傘をささずにゆったりと飛びながら……
幽香は一つの神社の前に降り立った。
目の前には長い階段が続いていて、その両脇にある木々が揺れて葉が擦れる音が心地良く響いている。
その階段の前に、朱色の大きな鳥居が立っていて『博麗神社』という文字が掲げられていた。

「逢魔が時には少し早いんじゃなくて?」

幽香は鳥居の上を見上げながら、何者かに向かって声をかける。
すると、その呼び声に応えるようにして、影が盛り上がり……
とんがり帽子を被った一人の少女の姿を形作った。

「久しぶりに会ったというのに、つれないじゃない……幽香」

口端から鋭利な八重歯を覗かせて、少女は屈託の無い笑みを浮かべる。

「久しぶり、だったかしら……? ちょっと前にも会わなかった」
「そうだっけ? まあ全然覚えてないから、それでいいじゃん」
「そういういい加減な所は弟子そっくりね、魅魔」
「ちょっと待て。あいつが私に似たんだよ」
「そんな卵が先か、鶏が先かなんて話をしに来たんじゃないわよ」

罰当たりにも神社の鳥居に腰をかけながら、魅魔と呼ばれた少女が幽香を見下ろしていた。
少女と言ってもそれは外見だけで、彼女もまた幻想郷に住む妖怪に他ならない。
先が尖った帽子に腰まである艶やかな黒髪。
漆黒のローブとマントを羽織った姿は、まさに魔女というに相応しい容姿をしていた。

「おや、随分と可愛らしい従者をつけてるね。らしくない」
「幽々子にも言われたわ、それ……まあ、私もらしくないと思ってるけど」

魅魔に指を指された魂魄は、怯えたように揺れて幽香の背中に隠れてしまう。
幽々子とは違い、魅魔は元々悪霊と言われる類の妖怪であり、常に禍々しい気を発している。
博麗神社への恨みを忘れて以来、幾分か和らいだとはいえ……
その圧倒されるほどの雰囲気と気配は少しも衰えていなかった。

「それで? 何の用で博麗神社に来たのさ。もしかしてお礼参り?」
「まさか……別に参るような事なんかしてないし、されてもいないわ」
「じゃあ、何用だい?」
「霊夢はいるかしら。ちょっと払ってもらいたい奴がいるんだけど」
「巫女はお払いなんて出来ないぞ。それに、霊夢は外出中でお留守だよ」

魅魔の言葉に、幽香は小さくため息をついて顔に落胆の色を滲ませる。

「そうなの? 相変わらずフラフラしてるのね」
「幽香に言われたくないと思うがな……その幽霊を払いたいなら、死神の所に持っていったらどう」
「……そういえば、貴方も幽霊の一種でしょう? 餅は餅屋らしく、この子を引き取ってくれない」
「正確に言うなら、あたしは鏡餅って所なんだけど……」
「一緒よ、一緒。はい、どうぞ」

幽香は背中に引っ付いていた魂魄を手に取った。
その時……わずかだが、掌の感触に違和感を覚えた。

「この子……重くなった」
「ああ……そりゃそうさね。そいつ、私と同じだよ」
「同じ? この子が悪霊って事」
「いや違う……そうじゃないんだよ」
「一体、どういう事よ?」

禅問答のような魅魔の言葉に、幽香は不機嫌そうに眉を潜める。
魅魔は小さく苦笑すると、幽香ではなく……
どこか遠くを見つめるようにして視線を上げた。

「私が博麗神社に恨みを持って、輪廻という円環から抜け出したのは知ってるね」
「ええ、聞いた覚えがあるわね」
「でも、私は長い間生きて、すっかり目的を忘れちまった。
 もうこうなったら、死神ですら私に死を与えられないのさ」
「死神でも死を与えられない? 初耳ね、それ」

幽香は軽く音を立てて飛び上がると、魅魔と同じように鳥居の上に立った。
地平線の向こう側に太陽が触れ、空が徐々に茜色に染まっていく。
その眩しい日差しに目を細めて、また魅魔が口を開いた。

「死神は生前の未練を断ち切り、死と再生を与えてくれる……それは知ってるね」
「バカにしないでよ」
「でも、私達は未練を糧にして生き返っておきながら、その根源を忘れちまったんだ。
 言うなれば、未練という名の糸に絡め取られちまった状態さ。
 死神がいくら糸を切っても、私という自我が再び切れた糸を勝手に繋いじまう。
 未練が無くなったと誰かに言われても、魂が納得しないのさ」

一陣の強い風が吹き付け、幽香と魅魔の髪を揺らす。
長い髪の間から見える魅魔の横顔は……どこか寂しそうにも見えた。

「死神に見捨てられた霊は、もう輪廻転生の枠には戻れない。
 時間が経って、何もかもが洗い流された時……私達は幻想郷の風になって散るのさ。
 人を呪えば穴が二つ……よくいうだろう?
 何があっても死にたくないという念が、ありえない命を呼び込み……
 その結果、魂に刻み込まれた命令すら否定した事になっちまう。
 それが、悪霊の末路さね」
「大変ね。じゃあ、これから先……どんな事があっても魅魔という魂には二度と逢えないという事ね」
「そういう事。今、あんたが持ってるのは……私の卵みたいなものさ」

魅魔と幽香の視線を受けて、魂魄がユラユラと揺れる。
出会った頃より、一回りほど大きくなった魂魄を……幽香は瞳を細めて見つめていた。

「じゃあ、この子……私の妖気を吸ってるんだ?」
「というか、取り付いてる」
「あら、そうだったんだ。私に取り付く幽霊なんていたのね」

どこか楽しそうに笑うと、幽香は掌の上で魂魄を転がす。

「誰に求められたのなんて……何百年ぶりかしら」
「こらこら。本当は良くない事なんだから喜ぶな」
「でも、そういう事なら仕方ないわね……」

幽香は鳥居から地面に飛び降りると、たたんでいた傘を広げた。
純白の花のように丸い花弁が広がり、縁についているレースがはためく。

「またね、魅魔」
「その子どうする気だい? しばらくほっとけば、幽香の僕くらいには……」
「冗談。私は雑草に取りつかれたくらいで枯れるほどヤワでも、それを許すほど安くもない」

ほがらかな微笑みを浮かべるその奥で、幽香の赤い瞳が魅魔を映し出す。

「貴方、さっき人を呪わば穴二つとか言ったわよね。
 でも、人が掘れる穴の深さなんてたかが知れているわ。
 カニのように自分の甲羅がぴったりと入る穴を掘って、篭ればいいのよ。
 人間風情が、身の程をわきまえない思いを抱いてはいけないわ」
「耳が痛いね……」
「だから、その思い違いを妖怪が正してあげるのも……また幻想郷の自然というモノじゃないかしら」

開いた傘をクルクルと回して、幽香は口端をわずかに緩める。
その表情自体は傘の影に隠れて見えなかったが……
声色は実に穏やかで、慈愛に満ちているような響きに聞こえた。

「帰して、あげるつもりかい?」
「邪魔だからね。元々、迷子の間だけという約束だったし……帰る場所があるなら帰してあげるわ」
「……あんた、昔と比べてちょっと優しくなったね」
「優しい? 今から私、この子を殺そうとしてるのよ」
「殺してやる事が慈悲になる事もある。少なくても、私達はそういう類の妖怪さ」
「そうなの……? じゃあ、今度来た時にでも……殺してあげましょうか?」

冗談とも、本気とも分からない事を口にして、幽香が魅魔を見上げる。
それに対して、魅魔は小さく肩を竦めると、ふわりと浮かび上がった。

「遠慮するわ。私は博麗霊夢の最後ってやつも興味があるんでね。
 私の事を誰一人覚えてなくて、存在すらも幻想になるその日まで……
 私は博麗に取り付く悪霊、魅魔を消す気はない」

そう告げると、魅魔の身体が夕闇に消えるようにして博麗神社に消えていく。
幽香は黙って彼女を見送ると……風を受けて空に舞い上がった。





夏の太陽が地平線に消えて、空には小さな弧を描いた月が浮かんでいた。
日差しを受け続けた地面から地熱が沸き立ち、夜気をはらんで肌に纏わり付いてくる。
夏という季節、独特の空気を一身に受けて……
白い小さな蕾をつけた花達が一斉に揺れていた。
夏のある日、たった一夜だけ咲き誇る花、月下美人。
菊のような大輪の花びらを持ち、その甘い匂いと豊富な花粉が夜の生き物を魅了する。
現代においては養殖化され、この儚くも美しい花は普通に見れるようになった。
だが、ここは幻想郷……
新月の夜にしか咲かないといわれた幻の野生種が、この野原には咲き乱れていた。

「んっ……良い匂いね。甘ったるくて、酔ってしまいそう」

その草原の中に、短い蒼色の髪を風になびかせている少女がいた。
切れ長の赤い瞳に、唇から鋭い犬歯が顔を覗かせている。
乳白色の帽子と衣装に身を包み、コウモリの羽を持つ妖怪。
紅魔館の主、レミリア・スカーレット。
いつも連れている十六夜咲夜の目を盗み、彼女は一人で月下美人の草原に立っていた。

「もう一時という所かしら。実に楽しみね」

強い芳香を匂わせ始めた月下美人を見下ろし、レミリアは満面の笑みを浮かべる。
砂糖菓子や小麦を焼いた匂いとはまったく別の、生き物を魅了して離さない甘い香り。
そして夜が明ければ、花はまたとろけるほどに甘い果実をつける。
一夏の幻が作り出す、麻薬のような甘さをもたらしてくれる一時。
それを独占できるとなれば、誰であろうと心が躍るだろう。

「この前、散歩してる時に見つけたのよね……咲夜に言ったらきっと悔しがるわ」

レミリアの頭の中で、瀟洒なメイドたる十六夜咲夜が少し拗ねているような顔が思い浮かぶ。
しかし、これだけの月下美人が放つ香りは、普通の人間なら失神しかねないほど強烈なのだ。

「ごめんね、咲夜……」

口の中で軽く詫びると、レミリアは羽を広げて胸一杯に息を吸い込む。
身体の中を甘い空気が駆け巡り、ジーンと脳裏を痺れさせる。
多幸感を覚えたレミリアはもう一度、深呼吸をしようとして……
その動きを止めた。

「こういう時に限って……邪魔が入るものなのよね」

レミリアは腰に両手を当てると、星が瞬く夜空を仰いだ。
そこには、チェック柄の衣装を身にまとった少女が、にこやかな笑顔を向けながら浮かんでいた。

「こんばんは、吸血鬼さん。月下美人に誘われてやってきたのかしら」
「その格好……咲夜から聞いた事がある。風見、幽香とか言ったっけ」
「正解。なんか妙な場所で有名人みたいね、私」

幽香はゆっくりと降下すると、開いていた傘を閉じた。
それを横目で見つめながら、レミリアは小さくため息をつく。
彼女からすれば、楽しかった雰囲気に水を差されたような気分だった。

「月下美人は昆虫とかではなく、小型のコウモリなんかを引き付けるって話だけど……
 まさか吸血鬼が現れるなんて、誰も予想してなかったでしょうね」
「私の中にいる無数のコウモリ達が騒いだって所かしらね……
 そういう貴方はどうなのよ。
 月下美人に誘われたクチじゃないの?」
「私? 私は……色々とあってね」

それだけを言うと、幽香はレミリアから視線を外した。
レミリアもそれ以上、何も話す事はなく……
二人は近くにいながら、どこまでも続く白い野原を黙って見つめる。
その沈黙を先に破ったのは、幽香の方だった。

「綺麗よね、この幻想郷の自然は」
「そうね。少しばかり小さいけれど……その中で溢れるほどの命があるわ」
「ここに生を受けたというのに、それを知らないというのは……もったいないわよね」

幽香の質問の意図が分からず、レミリア眉間にシワを寄せる。
その時、彼女達の視界を、一枚の白い花びらが通り過ぎた。

「あっ……」

どちらともなく小さな声を上げる。
まるで、それが合図だったかのようにして、一斉に月下美人が揺れた。
青白い月光を受けて、真っ白な大輪を開かせる花、花、花……
風に煽られて一枚、また一枚と夜空に花びらが舞い、そして消えていく。
二人の少女はそれを見ながら、まぶしそうに瞳を細めた。

「この子達は、全員が一本の野生種……月下美人から産まれたそうよ」
「へぇ……それはロマンチックね」
「ええ、まったくよね。この子達は、産まれた瞬間に母親から引き離されようと……
 本能で繋がりあっている。
 例え、暗い地面の穴に潜ろうと……また新月の元で会おうと誓い、みんなで咲いて散るのよ」

幽香は背中に隠れていた魂魄を手に取った。
また大きくなった魂魄は、じゃれるように幽香の掌の上で踊る。
それを見つめながら……幽香はそっと一輪の月下美人に魂魄を乗せた。
すると、その花の中に魂魄が吸い込まれるようにして入っていく。

「未練が分からないのなら、死ぬ事も消える事もできない。
 それなら他のモノの死によって、貴方の魂も死を自覚し……
 また輪廻転生の輪に戻っていく。
 そこが、貴方の帰る場所よ」

魂魄を入れた月下美人から手を離すと、その一輪だけが幽香の方に頭を垂れる。
何の知識もない赤子が、初めて触れた暖かな手、そして優しい花の香り。
自分を育んでくれるものとして認めたモノとの別れ……
母との別れに、必死であがらおうと動く。
しかし、妖怪にも幽霊にもなれなかった魂魄に、生きている花からの脱出など出来るはずがない。

「戻ってきて、それでも私の事を覚えていたら……また逢いましょう」

幽香はふっと表情をほころばせると、目の前にある月下美人の花を指で軽く弾いた。
ぱっと花びらが散り、風に煽られて他の白い花に溶け込んでいく。

「さようなら、私の可愛い従者さん……」

幽香も魅魔と変わらない……
仲間など存在しない彼女もまた、長い悠久の時を経て幻想に還る定め。
しかし、それを悲しいなどと思った事は無い。
妖怪らしく唯一孤高に、そして自由に生きる事。
それが当たり前だし、疑問に思った事も無い。

「でも、もし私が消えても……覚えている魂がいれば、それは面白いかもしれないわね」

自分の手で多くの種は残せないけれど、生まれくる種に記憶を乗せる事は出来るかもしれない。
この月下美人のように……

「さて、吸血鬼さん……そろそろ始めましょうか」
「始める?」
「こんなにもいい月夜に、二人の妖怪が出会ったのよ……
 それにここ、私のお気に入りの場所なの。
 誰に断りを受けて入ってきたのかしら」
「分ける気はないってワケ? まあ、私も……ここを独占したいとは思っていたけどね」
「なら、やる事は一つでしょう」
「随分と好戦的な妖怪もいたものね。でも嫌いじゃないよ、そういうの」

クスクスとおたがいに笑いあいながら、少しずつ間合いを広げていく。
美しい月下美人が舞う野原であろうと、彼女達の生き方は変わらない。

「咲夜がお世話になったお礼をしたいと思ってたんだ。手加減はしないよ」
「貴方なら、私の胸に空いた満たされない思い……埋めてくれるかしら」

幽香は傘を開き、レミリアはコウモリの羽を一度だけ大きく羽ばたかせる。
二人の戦いを見守るようにして、月下美人が一斉に揺れる。
その中で、二人の妖怪の、幻想郷では日常になった弾幕合戦が始まろうとしていた。



またもやギリギリ…
でも言い訳はしません!
読んでくれた皆さんの心に、少しでも響いたのなら幸いです。
蒼刻
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2007/05/13 08:57:23
更新日時:
2007/05/15 23:57:23
評価:
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0
Rate:
5.00
1. 4 秦稜乃 ■2007/05/13 12:02:22
永過ぎる時を生きる幽香の心を、なんとなく知った気がしました。
綺麗な文体、良かったと思います。ただ、若干説明文章が多いのが気になった、というところでしょうか。
偉そうに言える立場じゃありませんが、これからも頑張ってください。
2. 3 反魂 ■2007/05/14 03:04:40
全てがちぐはぐな印象を受けます。端的に言えば、物語の主題がどこにあるのかが分かりません。魂魄の輪廻云々をテーマにするのであれば妖夢とのバトルパートは要りませんし、最後にレミリアが出てきた意味も今ひとつ掴めません。最終的に花へ霊を移して解決、というのも伏線が無い分唐突に過ぎ、また「穴」というテーマ処理についても充分とは言い切れない気がします。

幽香の書き方については、非常に私好みで魅力的でした。幽香に憑依した浮遊霊、飄々としながらもそれを解決せんと奔走する紆余曲折物語――という形で徹底されていれば、梁のしっかりした物語になったと思います。物語のテーマをきっちり定めた上で、幽香というキャラクターを作者様の筆力で彫り込んで欲しかった、と思うところです。
3. 5 A・D・R ■2007/05/14 03:40:18
悲しい…悲しいけど綺麗な、そして優しいお話でした、とてもよかったです。
ただ、お題が少し薄かったように思いました。
4. 6 詩所 ■2007/05/14 20:52:24
風見幽香の持つ妖怪性(人間性)が顕著に表れている作品に感じました。
子供霊の経緯の曖昧さが気になったかな。
5. 5 爪影 ■2007/05/19 13:35:28
 去りぬ。
6. 7 どくしゃ ■2007/05/21 03:33:18
幽香の好感度がUPしましたw
流れるような展開で、読みやすく、良かったです。
7. 10 ■2007/05/23 11:01:54
良い。何が良いって、大物妖怪の大物っぷりが実に良いです。
少し甘めになることはあっても、けして普通の人間並みにはならない。
そのくらいの距離があってこその大物妖怪だと思うのです。
それと、死の自覚のさせ方として選んだ手法も素晴らしかったですね。ビジュアル的にも、概念的にも救いがあって。
8. 5 流砂 ■2007/05/26 22:07:24
雰囲気が心地良く、幽香らしさが良く出た作品。
全体的にレベルが高いけれど、特に特筆するべき所が無いのが残念。 強いて言えば雰囲気。
もう少しお題の成分が強ければ嬉しかったなぁ。
9. 5 deso ■2007/05/26 23:24:50
出だしの妖夢のバトルは必要ないと思います。
以降、悪くないのですが、お題に沿っているかというとやや微妙な気がします。
10. 5 blankii ■2007/05/27 11:47:42
幽香さん実は優しいのね。幻想郷『最強』の一角として話題になることが多いだけに、時折気まぐれのように見せるこうした優しさが際立つのかもしれません。
11. 7 椒良徳 ■2007/05/27 20:26:32
 いや、この作品は面白かったです。
ふわふわ浮かぶ魂もかわいらしいし、なにより幽香りんがまじ良い女。
たまらん。
ただ、折角ならばレミリアとのガチバトルを見てみたかったと言う気もします。
いや、私がバトルが好きってだけなんですが。
 そこから一歩退いて冷静にこの作品を見るならば、冒頭のバトルシーンはちょっと唐突に始まりすぎですし、冒頭のバトルシーンを削ってもこの作品名は成り立ちます。
何故闘うのか、どう闘うのか、そして闘った結果何が得られ、何が残るのか、闘いの最中、心がどう動くのかをもう少し丁寧に書いたほうが、この小説はもっと良くなるのではと思います。
12. 4 木村圭 ■2007/05/27 23:56:32
お姉さん全開な幽香もいいものですな。違和感を感じさせない悪霊の設定が見事でした。
13. 5 らくがん屋 ■2007/05/29 10:21:30
ちょっとよく判らなかったです。旧作未プレイだからでしょうかね。ただ、それでも「あ、いいかも」と感じるものはありました。
14. 4 shinsokku ■2007/05/29 22:16:28
うーん、ちょっと薄味気味に思います。
登場人物の数にあまり必然性が感じられず、また視点の所在が不安定な為没入しづらく感じました。
偉そうな言い方ですみません。
15. 4 鼠@石景山 ■2007/05/30 02:02:47
優しい幽香。
細かい事ですけど、漢字の使い方に華がない感じ。逢魔が刻、とか最期のほうがそれっぽいと思いました。難しい漢字を使えばいいのか、という話もありますが、雰囲気が出るのも事実ですし。
でも、花を散らしたら魂って出てこない? それも出来ないくらい弱い魂(未練)なのかしら。
16. 4 いむぜん ■2007/05/30 02:47:29
霊魂と花の関係を使ったお話。悪霊への道、とでも。
でもレミリアが居る理由がイマイチ分からん。
練りきれてないのかしらん? 冒頭の妖夢との戦闘も冗長な気が。
17. 2 ■2007/05/30 04:18:04

始まり方がいささか唐突です。バトル描写のセンスは悪くないのですが、未確認人物との戦いだと、のれんに腕押しでイマイチ盛り上がりません。物語構成を素直に時系列順にして、第二シーン(幽香が幽霊を拾う場面)を冒頭に持ってきた方がいいでしょう。
18. 6 リコーダー ■2007/05/30 15:55:24
もう1シーンくらい、幽霊と幽香の絡みがあってもいいな、と思いました。
19. 5 眼帯因幡 ■2007/05/30 18:19:11
大妖怪の中でも、幽香は一番分かりやすい性格をしているような気がします。
この作品を読んで、それを強く感じました。
ただ、前半の妖夢との弾幕は正直、削れたようにも思えます。三分の一くらいを占めていて、前置きにしては長いかも?
未熟者が偉そうにすみません。お疲れ様です。
20. 6 K.M ■2007/05/30 20:39:24
幽香さんの気まぐれ。困惑してる幽香さんもいいものですねぇ。
紆余曲折あっても、やはり物事は「あるべき風に」なっていくんですかね。
21. 4 たくじ ■2007/05/30 22:11:13
話の筋は好きです。冒頭の妖夢との戦いが余計だったように思います。正体のわからない相手との戦闘はあまりのめりこめませんでした。それがけっこう長く続くものだから読み飛ばし気味になってしまいました。
22. 6 二俣 ■2007/05/30 22:39:01
花鳥風月+火力。正しい幽香をありがとう。
23. 4 時計屋 ■2007/05/30 23:57:33
オチも含めて綺麗にまとまっています。
ただ前半、特に弾幕勝負の部分がやや冗長に感じました。
シーン自体不要じゃなかったのかな、と個人的には思います。
また全体的に淡々としていましたので、もう少し情景や情緒の描写が細かくても良かったかと思います。

あと最後になりますが、
お題に沿った内容とは言い難いため、次回以降参加されるときは気をつけてください。
24. 5 藤村る ■2007/05/31 00:00:07
 ちょっと穴弱いかなあ。
 それと妖夢との弾幕戦はあんまり本筋と関係ないわけで。
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