ドーナツの美味しい食べ方

作品集: 最新 投稿日時: 2007/05/13 08:58:14 更新日時: 2007/06/05 20:11:09 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00


お月様が完全に隠れてしまう、そんな日の夕方は、ルーミアはいつも人間の住んでいるところにお出かけします。
この日の夜はお月様の光もないから本当に真っ暗で、闇が幻想郷中を包みます。
まるで世界中がルーミアの闇に包まれて、自分のものになったかのようです。
そんな夜がルーミアはとっても好きだから、とっておきのとっておきでお祝いすることに決めてます。

「くださいなー」

ルーミアは店先で大きな声で叫びました。
おばあさんは耳が遠くて、ルーミアが大きな声で言わないと聴こえないのです。
少し待つと、腰が曲がったおばあさんはお店の奥からカタツムリみたいにゆっくり歩いてきました。

「あら、今日は来るのが遅かったのね」
「私が遅いんじゃないわ。お日様が沈むのが遅いのよ」
「ふふ……じゃあお日様もきっと年をとりすぎたのよ、おばあちゃんみたいに」
「へーそーなのかー」

そういえばお日様はルーミアよりもずっとずっと昔から幻想郷に住んでるみたいです。
ルーミアが頷いてると、おばあさんはゆっくりとお菓子を作る準備を始めました。

「欲しいお菓子はいつものやつね?」
「うん」
「じゃあちょっと待っていてね。火を落としてしまったから、時間がかかるわ」
「わかった、待ってるわ」

人間の里ではルーミアも大人しくしています。
ここで暴れると怖い人間やもっと怖い妖怪にとても怒られるのです。
でも待っているだけではとても退屈なので、ルーミアは村の中を散歩することにしました。

人間の里には、いろんな人間がいました。
広場ではルーミアと同じくらいの背格好の子供たちが、何人も輪になって、なにやら歌ったり走ったりして遊んでいます。
あっちこっちの家の中で、家族がみんなで釜や鍋の中のご飯を分けあっています。
村の外からは、重そうな荷台をおじいさんとおばあさんが二人して汗を流しながら転がしてきます。

「……変なの」

ルーミアはとても不思議でした。
どうして人間たちはあんなにいっぱい集まるのかしら。
みんなで遊ぶより一人で遊んだほうが、自由で気ままで楽しいのに。
ご飯だって、みんなに分けずにすんで、独り占めできちゃうのに。
荷台だって今は二人いるから運べるけど、どっちか片方が死んじゃったらどうするつもりなんだろう。

「きっと人間はすごく弱いからね」

人間がばらばらだと妖怪にすぐ食べられちゃうから、この里に集まっているみたいに。
一人だとすぐ退屈しちゃうから。
一人だとご飯が上手に作れないから。
一人だとちゃんと働けないから。

でも妖怪は違う。
妖怪は一人でも全然退屈しない。
妖怪は一人でもご飯をおいしく食べられる。
妖怪は一人でなんでもできる。
そして妖怪の中でもルーミアは特に強いから。
だからルーミアは今までずっと一人で、とても楽しい毎日を過ごしています。

「人間ってかわいそう」
「あら、どうして?」

考え事をしながら歩いていたら、いつの間にか村を一周してお店まで戻ってきちゃったみたいです。
おばあさんが不思議そうな顔をしてルーミアを見ていました。

「だっていつも誰かといなきゃいけないもの。そんなのとっても不自由よ」
「……そうね、たしかにそのとおりだわ」

おばあさんはちょっと悲しそうな顔をしました。
ルーミアはそこで気が付きました。
おばあさんもいつも家で一人です。他の人間みたいに家族とかいうのがいません。
ルーミアはちょっと考えて、ぽんっと手を打ちます。

「そっか。強いんだな、お前」
「え?」
「きっと強いから一人なんだよ。一人だから強いんだよ」
「…………そうかい」

ルーミアがそう言うとおばあさんはなぜか目を瞑ってうつむきました。

「そうだね。私も昔、そう信じていたよ。とてもかしこいのね、あなたは」
「へへー」

ほめられてルーミアは嬉しそう。
でもおばあさんはますます悲しそうな顔です。

「でもおばあちゃんは弱くなっちゃったからね。もうどうやってそれを信じていたのかもわからなくなっちゃったわ」
「弱くなったのは年とったからかー。人間は大変だなー」
「本当に。あなたたち妖怪がうらやましいわ」

おばあさんはそう言うと、思い出したみたいにお鍋に向かいました。
お鍋からはいい匂いの湯気がたくさん出ています。

「お話している間にお菓子ができたみたいだよ。さぁ、もっていくかい?」
「おー、いいにおいー。じゃあ、はい、これー」

ルーミアは急いでお財布から変な絵が描いてあるお札を取り出します。
人間はこのお札を大変ありがたがっていて、これを渡すと色々なものと交換してくれるのです。
ちなみにお財布はルーミアに驚いて逃げた人間が落としていったものです。
おばあちゃんはお札を確認すると、袋にいっぱいお菓子を詰めだします。

「さぁ、どうぞ」

袋に入れて渡されたお菓子を、ルーミアは確認します。
中には小麦色の手のひらにのっかるくらいのお菓子がたくさんあります。
外側はぱりぱり香ばしくて、中はさくさく甘くて、ふわふわと口の中で溶けるみたいに柔らかなお菓子です。
ルーミアの最近一番のお気に入りなんだけど……一つだけ我慢できないことがありました。

「あー、やっぱり穴があいてるー!」

ルーミアはあつあつで湯気が立っているそれを取り上げて、穴を確認するみたいに覗き込みます。
穴の中からは、困ったような顔をしたおばあさんが見えました。

「何度も言ってるでしょ。穴が空いたらそのぶんお菓子が減っちゃうじゃない。穴なんか空けないでよー」
「そう言われてもそれはそういうお菓子だからねぇ。穴を空けないとうまく中まで焼けないんだよ」
「穴が嫌いなの。なんだかとっても損した気分になるわ。私は全然食べてないのに、もうお菓子に穴が空いてるんだよ」

ルーミアは頬を膨らませて文句をいいますが、もうできちゃったものはしかたありません。
しぶしぶあきらめて、それでも袋の中から伝わってくる熱さと香りに胸を膨らませながら、
ルーミアはいつもの住処である妖怪の山の奥に帰っていきました。







山の一番てっぺんに、王様みたいにどでんと生えているとても大きな木。
その木のそのまたてっぺんにあるベンチみたいな枝。
そこが新月の晩のルーミアの特等席。
一番お空に近くて、一番眺めがいいところ。
お星様に見せびらかしながら、とっておきのお菓子を食べるのがルーミアのお気に入りです。
袋の中からお菓子を一つ取り出して、ルーミアは口元に運びます。

「いただきまーす」

そのとき、ルーミアはお洋服の袖のところに、黒い染みがついているのに気がつきました。
ううん、これは染みなんかじゃありません。

「あー、服に穴が空いてる」

どうしてでしょう?
周りを真っ暗にして飛んだとき、いろんなところにぶつかるから?
それともこの前人間と喧嘩したときにつけられたのでしょうか?

「あれ、でもこれ、なんかへん」

穴ぼこをみているうちに、ルーミアはとってもおかしなことに気づきました。
だって服に穴ぼこが空いたってことは、その中を覗いたらルーミアの体が見えるはずです。
でもその中には、何もないのです。見えないんじゃなくて何にもない。
人間は鳥目だからわかりません。
普通の妖怪でもただ暗いだけで見えないだけだと思うかも知れません。
でもルーミアは宵闇の妖怪だからわかるのです。
この中にあるのは闇じゃない。
……じゃあ、なんなんだろう?
ルーミアは穴ぼこの中に恐る恐る――、

「ううん。私は妖怪なんだから怖いものなんてあるはずないわ」

自分にそう言い聞かせて深呼吸すると、ルーミアはいきなり穴ぼこの中に指を突っ込みました。
指は穴ぼこを、そしてその先にあるはずのルーミアの体も突き抜けてどこまでも潜っていきました。

「うわあ!」

ルーミアはびっくりしました。
穴ぼこの中が深かったからではありません。
ルーミアの指から逃げるように……穴ぼこがすごいスピードでルーミアの服の上を動いたのです。

「うわ、うわ……」

あわててつぶそうとしますが、穴ぼこは最初からつぶれているから叩いても無駄です。
穴ぼこはするするとルーミアの腕を走っていくと、その先にあるお菓子のところにたどり着きました。

「あー、とるな! それは私の――」

ルーミアは追い払おうとしますが、そのときとても不思議なことがおきました。
ルーミアの体の上を動いていた穴ぼこが、お菓子の真ん中に空いている穴と合わさって一つになってしまったのです。

「え……、あれ、あれー?」

ルーミアは目をごしごしと擦りますが穴は相変わらず一つのままです。
いえ、それどころか穴は明らかにさっきより大きくなっています。
念のため、自分の体を見渡してみたけれど、穴ぼこは何処にも隠れていません。

「えーと、お菓子を食べて逃げたのかな?」

ルーミアは首を傾げます。
お菓子を食べられて残念という気持ちより、今は不思議な気持ちでいっぱいです。
ところが突然もっと不思議なことが起こりました。

――するする、と。
なんと今度はお菓子の穴のほうが動き出したのです。

「うわあ……」

今度はさっきのびっくりとは違って、とても嬉しいびっくりでした。
穴ぼこが移動した後には、穴の空いていない完全な形のお菓子があったのです。
ルーミアがずっと欲しがっていた穴のないお菓子です。

「すごい、すごいわ!」

ルーミアは喜んでお菓子にかぶりつきます。
当然、お菓子は偽物なんかじゃありません。
穴がなくなった場所も、甘くてふわふわして美味しいお菓子で詰まっています。
いっぽう穴ぼこのほうは、まるで怒られることを怖がるみたいに、ルーミアには見えない背中のほうに回りこんでいます。

「ねえ、もう一回やってみせて」

ルーミアはそう言うと、別のお菓子を袋から取り出して、手のひらに持ちます。
穴ぼこは最初は恐る恐る、でも最後には飛びつくように、お菓子の穴に合わさりました。
するとさっきと同じことが起きます。
お菓子の穴は消えて、変な穴ぼこだけが少し大きくなって残るのです。

「もしかして……、あなた、穴を食べているの?」

ルーミアは穴がなくなったお菓子を満足そうに食べながら尋ねます。
聴いてから気がつきました。
穴ぼこはきっとお口がないので、言葉を話せません。

「えっとー、じゃあ「はい」ならマルと書くみたいに動いてね。「いいえ」ならジグザグに動くのよ」

言いながら、ルーミアは耳もないみたいだから聴こえてなかったらどうしようと思いました。
でも穴ぼこはルーミアの言葉が聴こえたみたいにお腹の上あたりでくるくると円を書くように回りはじめました。

「おー、やっぱりー」

人間を食べる妖怪はたくさんいるけど、穴ぼこを食べる妖怪なんて初めてみました。
この変わった妖怪のことがもっともっと知りたくなって、ルーミアは続けて質問をします。

「食べられるのはお菓子の穴だけ?」

穴ぼこはぶるぶる震えるみたいに左右に動きました。
違うみたいです。

「じゃあ、どんな穴でも食べられるの?」

穴ぼこはまたぶるぶる左右に揺れました。
じゃあどんな穴なら大丈夫なんだろう、と質問しようと思いましたが、
穴ぼこは「はい」か「いいえ」しか答えられないのでうまく訊けそうにありません。

「えっと……、じゃあねー……」

ルーミアはあたりをきょろきょろと見渡します。
するとちょうど近くの木の幹にいいものをみつけました。

「あれ! あの木の穴は食べられる?」

ルーミアが指差した先には、リスかなにかが空けたみたいな手のひらほどの大きさの穴があります。
穴ぼこはくるりとルーミアの前で一度マルを書いてみせると、滑るように地面に向かって走っていきました。
どうやら穴ぼこはいつも地面にひっついてないとだめみたいです。飛んだり跳ねたりできないのはちょっと可哀相。
でも穴ぼこはそんなことは気にしないかのように木の幹をするすると登っていくと、まるで一飲みにするかのように木の穴を消してしました。
後には傷一つない、つるつるの木の幹だけが残ります。

「すごい、本当に食べた!」

ルーミアはなんだか嬉しくなって、他にも穴ぼこが食べれそうな穴がないか探します。
このあたりの森は真っ暗だけど、ルーミアはずっと遠くまで見渡せます。

「あ、あった。あれなんかはどう?」

ルーミアが指差したのはさっきより大きな木の幹にある、さっきより大きな穴です。
でも穴ぼこは食べにはいかず、その場でイヤイヤをするみたいに震えています。

「あれー? 同じ木の穴なのに今度はどうして駄目なの?」

どうしてだろう、とルーミアは考えます。
そしてすぐに思いつきました。さっきの穴は大きかったのです。
穴ぼこよりもずっと大きな穴でした。
きっと穴ぼこは自分より大きな穴は食べられないのです。
ルーミアだって自分より大きなものは食べられないから、考えてみれば当たり前でした。

それからルーミアと穴ぼこは森の中を探検していろんな穴を食べました。
モグラの穴、啄木鳥の突いた穴……。
森の中からすっかり穴が無くなるころには、穴ぼこの大きさはルーミアが両手をいっぱいに広げるより大きくなっていました。

「うーん、森の中にあるのはみんな似たような穴ばかりだから飽きちゃったね」

ルーミアがそう言うと穴ぼこも賛成するようにくるくると回りました。
やっぱり同じ食べ物ばかりだと飽きちゃうのはみんな同じです。

「じゃあ森の外に探検に行こう! きっと珍しいものや大きなものがたくさんあるよ」

こうして、ルーミアと穴ぼこは、いろんな穴を探して、いろんなところに行ってみることにしました。







ここは魔法の森の奥にある人形使いさんの家。
いつもは中には人形使いさんが一人っきりで静かなのに、今日はとても騒がしいです。

「とぼけないでよ。こんな悪質で陰湿で暇なことするの魔理沙以外にいるわけないでしょう」
「いやー、私以外にも結構いると思うが。お前とか割と該当してるんじゃないか」
「私が自分でこんなことするわけ無いでしょう!」

お人形さんみたいな服を着た人形使いさんが、裁縫針の束をもう一人の黒い魔法使いさんに突きつけながら、すごく怒っています。
でもその裁縫針はとっても変です。何故なら頭に穴が空いてないからです。これじゃあただの針です。

「どうしてくれるのよ、これじゃ人形を繕えないじゃない。針って貴重なのよ!」
「穴が塞がったんならもう一度空ければいいだろう。ほら、こうやって――」

ペキ……

「きゃああああ! なにするのよ、針が折れたじゃない!」
「あー、耳元できゃんきゃん喚くなよ、うるさいやつだなぁ」
「誰がうるさくさせてるのよ!」

黒い魔法使いさんと七色の魔法使いさんはいつも喧嘩ばかりしています。
でも喧嘩するのは仲のいい証拠だよね……?







ここは妖怪の山にある、幻想郷でもちょっと有名な大蝦蟇の池。
もちろん有名なのは池じゃなくて、池に住んでいる大蝦蟇さんです。
大蝦蟇さんは、池でいたずらしたり悪さしたりする人間や妖怪を時々懲らしめています。
今日も今日とて、いくら懲らしめられてもまったく懲りない妖精さんが何かたくらんでいるようです。

「ふん。いつもいつも大蝦蟇にただ食べられてばかりだといたら大間違い。今日の私は一味違うのよ」
「今日は大蝦蟇さんに喜んでもらうために自分の味を変えてきたということですね。自らの食材としての価値にこだわるとは殊勝な心がけです」

この池には何故か天狗の新聞屋さんがよくうろついていて、今日みたいに新聞に書ける出来事があると文字通り空から飛んで来るんです。
特に氷の妖精さんがいるときは、いつも一緒にいる気がします。

「誰がそんなこと言ってるのよ。いい?私はついに大蝦蟇の弱点に気が付いたのよ」
「なるほど。敵の弱点を突くのは兵法の初歩の初歩です。チルノさんにしてはきわめてまともな着眼点といえましょう。で、なんなんですか、その弱点というのは?」
「いい? 聴いて驚かないで。あの大蝦蟇のやろうはねぇ、空を飛べないのよ!」

ばばーん、と雷が背後に落ちてきそうなほどふんぞり返って、妖精さんが勝ち誇ります。
一方、天狗さんはなんだか気まずいというか、可哀想な目で妖精さんを見ています。

「あの、まぁ、普通は飛ばないと思いますが。だって、飛んだら怖いですし…………」
「何言ってるの? 蛙のくせに飛ばないなんて変じゃない?」
「あー……。うまいこと言ったつもりなのか、素で勘違いしてるのか。明らかに後者っぽいですが、可哀想なので微妙だということにしておきましょう」

天狗さんは持っていた紙になにやら書き込みながら、インタビューを続けます。

「で、どうやってその弱点を突くつもりですか? 空が飛べなくてもあなたの弾幕が通じないのは変わらないと思いますが」
「そこが素人の浅はかなところ。いい、弾幕は頭脳なのよ!」
「おお! 神々しいまでの説得力の無さです!」
「よく見なさい。私はあのあたりに落とし穴を掘ったの」
「落とし穴……ですか?」
「そう。作戦はこうよ。まず大蝦蟇をあの落とし穴のあたりにおびき寄せる。次に落とし穴におちて大蝦蟇が身動きをとれなくなったところであたいの正義の鉄槌が炸裂する。そしてあたいの勝利!」
「極めてシンプルですね」
「三日寝ないで考えたわ」
「ところで落とし穴までどうやっておびき寄せるのですか?」
「ふふ。みなさい、これを。無用心にも池の外まで遊びに出ていた子供の蝦蟇を捕まえて氷付けにしておいたの」

そういう妖精さんの片手には、氷に包まれてかちんこちんになって動けない蛙さんの姿があります。
なんだかとても可哀想。

「さぁ大蝦蟇。こいつらの命が惜しかったら、あたいのところに姿を現しなさい!」
「ええと……、さっき正義がどうとか言ってましたか」

やがて大蝦蟇さんが、怒ってなのかどうかは無表情なのでわかりませんが、のっそりと池から出てきました。
とても大きい体です。妖精さんと天狗さんを足してもまだ足りないくらいです。

「ふふふ……まんまとでてきたわね。すでに私の勝利は決まっているものとも知らずに」
「なんでしょうか。むしろ今の台詞でチルノさんの敗北が決定してしまったかのような予感は」

大蝦蟇さんは妖精さんを見つけても相変わらずのそのそとそちらに歩み寄ります。
妖精さんが穴を掘ったところまであと三歩……、二歩……、一歩……、

「勝った……」

妖精さんがにやりと笑ったそのとき、
それまでゆっくり進んでいた大蝦蟇さんが立ち止まって、口を開きます。
そこから先はまばたきする間の出来事でした。
しゅぱ、っと大蝦蟇さんの口からなにやら長いものが飛び出して、妖精さんの体に巻きつきました。

「あ」

それが妖精さんの最後の声でした。
あっという間に舌が巻き取られ、妖精さんは大蝦蟇さんの口の中に吸い込まれるように消えてしまいました。
後には妖精さんが落とした氷付けの蛙だけが残っています。

……お空のカラスが、何羽かアー、アーと鳴きながら夕暮れの空に消えていきます。

いつの間にかカメラを構えていた天狗さんと、大蝦蟇さんの目が合いました。
とたんに天狗さんはかしこまってぺこんと頭を下げます。

「お勤めご苦労様です。では、この氷付けの蛙は私が責任を持って戻しておきますので。いえ、良い絵を撮らせていただいたほんのお礼です」

天狗さんの言葉が聴こえたのでしょうか。
大蝦蟇さんはゆっくり背を向けると、出てきたときと同じようにのそのそと池に消えていきました。
それを見送って、天狗さんは長い長いため息をつきます。

「しかしよく大蝦蟇を落とすほどの大きさの穴をよくあの体で掘れたもの――おや?」

妖精さんが落とし穴だといっていた場所を、天狗さんはどかどかと踏んでみます。しかし穴があるはずの場所はびくともしません。

「……穴なんて掘れていないじゃないですか。まぁどうせチルノさんのことだから間違って違うところにしかけたか、落とし穴というもの自体を何かと勘違いしていたのでしょう。それより見出しを何にしましょうか。『決定的瞬間! 妖精が捕食された瞬間を記者が激写』。うーん、幻想郷だといまいちインパクトに欠ける見出しですねぇ……」





ここは大きな池のそばにある、いつも真っ赤で大きなお屋敷。
紅魔館ってみんなに呼ばれているところ……からはちょっと離れた森の中でした。
ひっそりとした場所で、いつも門のところにいるはずの妖怪さんがかがみこんで何やら呟いています。

「うう……。最近、館に侵入者が多いのは私がさぼっているからじゃないのに……。弾丸みたいに突っ込んでくる魔法使いの泥棒やら、疾風みたいに通り過ぎていく新聞の押し売りやら、妙な催眠術を使う宇宙人の薬売りやら、いったいどうやって止めろって言うのよ。自分は彼女らを止めるどころかむしろ匿ったりしているくせに……咲夜さんの馬鹿ぁ……」

呟きながら、門番さんは地面に何度も指で「の」の字を書いています。
でも「の」の字って、いじけたときに書くものじゃなくて、女の子が好きな人の前にでて恥ずかしいときに書くものじゃなかったっけ?

「この前もお嬢様が突然『外の世界には青い薔薇があるっていうじゃない。是非見てみたいわ。庭はあなたの担当でしょう。なんとかしてみせなさい』って無茶苦茶言うから、やけになって庭に咲いてた薔薇に青いペンキをぶちまけたら、全部一晩で枯れちゃったのも、私のせいじゃないわよ……たぶん」

門番さんはますますうつむいていくので、背中がどんどん丸くなっていきます。
その背中を押したら、ダンゴムシみたいにごろごろ転がっていきそうです。

「それにパチュリー様が『最近ねずみが多いわ。貴女、門番として役に立たないのなら、せめてねずみの侵入くらい防ぎなさい。猫にだってできることよ』ってまた嫌味を言うから、大図書館の隙間という隙間を塞いで、鼠どころか蟻の這い出る隙も無いくらい完全に密閉したら、パチュリー様が酸欠で死にかけたのも……そりゃ半分くらいは私のせいかもしれないけどさ……」

なにやら呟いているうちに涙がにじんできたみたいです。
ごしごしと腕で目の辺りをこすっている姿はとても妖怪とは思えません。

「うぅ……、だからってみんなあんなに怒んなくても、怒んなくても……」

そこまで呟いて、門番さんはなにか思いついてみたいに立ち上がると、ふらふらと森のさらに奥に歩いていきます。
そこには、両手を思いっきり広げたくらい幅のある、大きな穴がありました。
門番さんはそこに向かって顔を突き出すと、おへそが破裂するんじゃないかっていうくらい、大きく息を吸い込みました。

「咲夜さんの年増小姑ーーー! お嬢様のちんちくりんーーー! パチュリー様の根暗チビモグラーーー!」

大きな声で、門番さんが穴に向かって叫びます。
声は穴の中で、何度も何度もぐわんぐわん響き渡ります。

「はぁ……はぁ……。うう……こんなことでストレスを発散している自分が情けない……。もうお屋敷に帰ろう」

それでも門番さんはちょっと元気が出たみたいです。
言いたいことを自分の中に閉じ込めてばかりだと、たしかに元気がなくなるよね。
でも「本当に言いたいこと」はちゃんとはっきり本人に言わなくちゃ。




今度こそ、ここは大きな紅いお家の紅魔館。
今日はお日様がずっと雲に隠れてて天気がいいので、みんなテラスにでてお茶やお菓子を楽しんでいます。
いつもはお昼寝している吸血鬼さんも、いつも図書館からでてこない魔女さんも、いつもお仕事で忙しいメイドさんもみんな一緒です。
そんな和やかな雰囲気のなか、門番さんが肩を落としてとぼとぼと庭を歩いてきます。
メイドさんがそれを最初に見つけて、テラスから声をかけました。

「美鈴、姿を見ないと思ってたら何をしていたの」
「あ、さ、咲夜さん。いえ、別に何ってわけでもないのですが……」

門番さんはなにやら口でもごもごと言いにくそうにしています。
メイドさんはそれを見て、しょうがないわね、というふうにため息をつきます。

「どうせどこかでいじけてたんでしょう。いいからあなたもこっちにきてお茶でも飲みなさい」
「え……わ、私がですか?」
「あなた以外に誰がいるの」

門番さんは最初びっくりしたみたいに、でもそのあとはすごく嬉しそうな顔になって、お屋敷に向かって駆け出します。

「咲夜さん、ごめんなさい。私は咲夜さんのこと誤解していました。咲夜さんって本当は――、本当は――」

『咲夜さんの年増小姑ーーー!』

何処からとも無く飛んできた声と同時に、ぴたりと、門番さんの足が止まりました。
ついでにメイドさんの笑顔も凍りつきました。
すうっと細められたその眼光は磨き続けたナイフみたいでとても怖いです。

「………………美鈴、今、あなた……」
「ち、ちちち違います。今のは私の声ではありません。あ、いや、確かに私の声なんですが、そそそそそうではなくてですね」
「私が最近老けてきたと、その口が言ったの?」
「言ってません、言ってません!それにですね、最近咲夜さんの外見年齢が私より大きく見えるのは、人間なんだから仕方の無いことで……って、いや違う、そういうことを言いたいんじゃなくて……」
「見苦しいわよ、おちつきなさい咲夜。ちょっと最近気にしていることを言われたからって」

吸血鬼さんが微笑を浮かべながら、紅茶のカップを口元に運んだそのときです。

『お嬢様のちんちくりんーーー!』

またもや門番さんそっくりの声が響き渡ります。
吸血鬼さんの表情は変わらなかったけど、その代わり、持っていたカップにぴしっとクモの巣みたいなひびがはいりました。

「………………これは驚いたわ。役に立たないだけならともかく、主に向かって罵倒しだすなんて」
「お、落ち着いてください。後生ですから落ち着いてください、お嬢様。あの声は私が出したんじゃありません。それにちょっと最近気にしていることを言われたからって――あわわ……私また何を言って……」
「さっきので再教育した気になっていた自分が恥ずかしいわ。今度こそ、その五体の隅々、魂の一分に至るまで、自分の立場というものを刻み付けてあげないと」
「待って、レミィ。よく聴いてみるとたしかに違う方角から声がしているように思えるわ。良く調べて――」
「そ、そうです。そのとおりですよ、さすが――」

『パチュリー様の根暗チビモグラーーー!』

「――みる必要なんて金輪際無いから。迅速に処罰しましょう。とりあえず枯れてしまった薔薇の代わりに庭に埋めてみるのなんてどうかしら」
「いいわね。その後は完全密閉した部屋で何日間生存できるか試してみましょう」
「ぎゃあああああ! 違う、これは違うんですーーーー!」

門番さんは必死で叫んでますが、テラスの三人は微笑んだまま、無言でおいでおいでをしています。
なんだかさっきより仲良くなってるみたいです。
良かったね。やっぱり言いたいことははっきり言わなくちゃ。




「あー、楽しかったーーー!」

幻想郷中を飛び回って、穴という穴を食べてきたルーミアと穴ぼこは、それでも元気いっぱいです。
穴ぼこはとてもすばしっこいし、みんなまさか影みたいなものが生き物だとは思わないので誰にも気づかれる心配はありませんでした。

「みんな、大慌てですごく面白かったね。それに穴ぼこは食べるだけじゃなくて、食べた穴の能力を自分のものにもできるんだ。すごいわねー」

ほめられたのが嬉しかったのか、穴ぼこはぐるぐるとルーミアの周りを走り回ります。
色んな穴を食べた穴ぼこは、もうルーミアの何倍も何倍も大きくなっています、

「よし、それじゃあ、今日も気分が良いから村のお菓子屋さんに行って、穴が空いたお菓子を買ってくるわ。一緒に食べようね」

穴ぼこもあのお菓子が気に入ったみたいです。
くるくると、自分の尻尾を追いかける子犬みたいに、ますます早く回りだします。
そんなとき――、

「あれ? あんなのところに穴があるよ?」

道の真ん中に大きな穴が空いているのが見えました。
穴の大きさはちょうど穴ぼこが食べやすいくらいの大きさです。
こんなところに穴が空いているなんて変だとルーミアは思いましたが、まぁいいか、と思い直して穴ぼこに教えてあげます。

「あれも食べちゃえー」

掛け声とともに穴ぼこは走り出して――、その寸前でぴたりと止まりました。
その後、まるで怖がるみたいに、ルーミアのところまで逃げてきます。

「どうしたの? あの穴、あなたより小さいから大丈夫だよ」

それでも穴ぼこはルーミアに張り付いて動こうとしません。
そのとき――、

「あら、残念。うまく釣れると思ったのに。もうそんなに余分な知恵をつけてしまったのね」

穴の中から声がしました。
とても静かで、とても深い声。
まるで怖い夢の中にでてくるお化けみたいに。
深い湖の底で眠る名前も知らない怪物みたいに。

声に釣られるように、穴から何かが姿を現します。
流れるような金色の髪。やさしげな微笑。そして、とても派手な紫色のお洋服を着た綺麗な女の人です。
間違いなく妖怪だけど……でもルーミアとは何もかもが違いすぎる妖怪です。

「お久しぶりね、饕餮(トウテツ)。といっても今回の貴方が私のことなんて覚えているはずがないのだけれど」
「トウテツ……?」

穴ぼこの名前でしょうか?
ルーミアが不思議そうに首を傾げますが、紫の妖怪はまるでルーミアが目に入っていないかのように穴ぼこに向かって語りかけます。

「でも贅沢はいえないわね。前回の貴方にはずいぶん手を焼かされたものだけど、今回の貴方はまだ赤子のようなもの。幸運には素直に感謝しなくては」

そこで初めて紫色の妖怪は、ルーミアに見つめます。
もしルーミア一人だったらとっくに逃げ出していました。
それくらい、この妖怪は強くて怖いのだとわかります。
そんなルーミアをあやすかのように、妖怪はにっこりと笑って話しかけます。

「ねえ、貴女。これは妖怪じゃないの。ただの現象……。それも幻想郷にとって危険な現象なの。貴女はその危険をまるでわかっていない。それはただ穴を食べるだけの存在ではないわ」

突然、穴ぼこがルーミアの前に進み出たかと思うと、穴の中から真っ白な糸の束を吐き出しました。
まるで白い滝のようです。その滝はあっというまに目の前の妖怪を飲み込んで、ぐるぐる巻きついて蚕のまゆみたいになってしまいました。
ルーミアがびっくりして声も出せないなか、まゆからは相変わらずのんびりとした言葉が聴こえてきます。

「ほら、このとおり――」

ぱんっとまゆが中から弾けて、再び妖怪が姿を現しました。
妖怪が手に持っていた傘を空に向けて開いた、それだけの動作で糸は全部ちぎれてしまったのです。

「こいつはいつも腹をすかしてに穴を食べ続ける。しかも食べた穴は欲張りにも全部自分のものにしてしまう。消えた穴はなくなるわけじゃなく、こいつに取り込まれただけ。そうやって色んな穴の能力を自分に取り込んでしまうの」
「それの何がいけないの? 別にいいじゃない」
「そういうわけにはいかない。ここには決して食べられてはいけない穴がある。博麗大結界の穴という大きな穴が。もしそれまで食べられたら、穴は永遠に塞がらないどころかどんどん大きくなってしまう。そうなったら――、わかるでしょう、貴女にも」
「だ、大丈夫だよ。そんなもの食べない。食べさせないようにする」
「時間の問題よ。良いとか悪いとか、トウテツはそんな考えで行動しているわけではないわ。それにはとにかく穴を食べたいという欲しかない。貴女と一緒にいるのも、それが穴を食べるのに便利だから。それだけの理由よ」

そんなことは言われなくてもルーミアはわかっています。
ルーミアだって一緒にいるのはお菓子の穴を消してもらえるからです。だからお互い様。
それなのに……どうしてでしょうか?
それを聞かされてルーミアは少し胸の辺りが苦しくなりました。

「さて、ここで貴方を消してしまいたいところだけど――、やはり異変はできる限り人間が片付けるのが幻想郷のルール。ここはあの人間達に任せることにしますわ」

妖怪はそう言うと、また出てきたときみたいに、穴に沈んでいきました。
ルーミアはそこで初めて気がつきました。穴からは無数の目みたいなものがぎょろりとこちらのぞいているのです。
あれは穴なんかじゃありません。この世のものではない、何かです。

「では、御機嫌よう。お互いのために再会が無いことを祈りましょう。いよいよとなれば、私、一切容赦できませんから」

紫の妖怪は消える最後のときまで、にこにこと笑ったままでした。
でも、どうしてでしょうか?
ルーミアはそれがとっても怖くて、妖怪が消えた後もいつまでも、ぎゅっとお洋服の端を握っていました。







もうすっかり太陽が沈んで、あたりはルーミアが好きな夜の闇に包まれています。
でもルーミアはなんだかとても落ち込んでいます。買って来たばかりのお菓子も袋の中で冷めていきます。

「さっきの妖怪、とっても怖かったね」

ルーミアが言うと、穴ぼこは小さく頷くみたいに、ルーミアの側で小さくくるりと円を描きました。

「トウテツ……。お前、トウテツっていうのか?」

穴ぼこはまるで黙り込んだみたいに動きませんでした。
名前……、考えてみたらルーミアは穴ぼこがなんなのか考えてみたことがありません。
だって名前を聴くなんて今まで必要だったことがないからです。
ルーミアの側に他の誰かがいたことなんてないし、必要としたこともありません。
食べるときも、遊ぶときも、寝るときも。
世界はとても単純で、毎日はとても単調なことの繰り返し。
つらいことも悲しいこともなにも無い、ただ楽しいだけの生活です。
だから誰かが他にいる必要なんてありません。
穴ぼこがいくらお菓子の穴を無くしてくれるからといって、あんな怖い妖怪ににらまれてまで一緒にいることは全然無いはずです。
ここでお別れしちゃえば、ルーミアが怖いことはもうなくなるはずです。
だから、何故だかとても言いづらかったことだけど、ルーミアは思い切って訊いてみました。

「ねえ…………もう、一緒に遊ぶの、やめようか?」

穴ぼこはイヤイヤをするようにジグザグに動きました。

「どうして? 私はきっとあなたの助けにはならないわ」

何度も何度も、穴ぼこは泣いている子供が首を振るみたいに、必死で動きます。

「お菓子が欲しいの? それならこれ全部あげるよ」

穴ぼこはただ、違う、違う、と繰り返します。
すごく怖くて、悲しくて、でもどうしたらいいか全然わからなくて……。
まるで、今のルーミアみたい――

「あ……」

ルーミアは気がつきました。
ルーミアが怖かったのは、穴ぼこが怖がっていたから。
ルーミアが悲しかったのは、穴ぼこが悲しがっていたから。

「そっか。だからお前が一緒だったんだ」

穴が減ったのも嬉しかったけど、それ以上に、穴ぼこが美味しそうだとルーミアも美味しい気持ちになるから。
二人で食べると、美味しさも二倍になるみたいだから。
二人で一緒に遊ぶと、楽しさも二倍になるから。

「お前もそう? ルーミアが楽しいとお前も楽しいの?」

怒られているかと思ってしょんぼりしていた穴ぼこは、はっとしたようにくるくると回りだします。
自分の思っていることが通じて、楽しくて嬉しくて仕方ないみたいに。

「そーなのかー。ルーミアと同じなんだー」

嬉しくなってルーミアも穴ぼこの周りを回ります。
お互いがお互いの周りを回りあって、二人でくるくるとダンスみたいに、あちこち回って、木にぶつかって、根っこにつまづいて、転んで泥だらけになって、笑いあって。
気がついたら、ルーミアは地面に寝転んで、夜空を見上げていました。
星の光と、月の光が、今日はとても綺麗に見えます。

誰かと一緒にいるとなんでも二倍になる。
でも今は、怖さも二倍になっています。
あの妖怪が言っていたように、きっと人間達がやってきます。
あの紅い霧の夜にやってきた人間たちが。
たとえ狙われるのが穴ぼこだけでも。
きっと穴ぼこが消えたら、ルーミアはとても悲しくなります。
じゃあ、どうしたらいいんだろう。
ルーミアは一生懸命考えます。

穴ぼこは穴だから「穴を埋める何か」が弱点です。
穴の部分になにかはいってくるとすごく嫌がります。
あの人間のお札や結界は穴を塞ぐものだから、きっと穴ぼこは弱ってしまいます。
穴ぼこは体が大きいから、敵の弾幕もきっとよけきれません。
ルーミアの宵闇で隠しても、きっとすぐ見つかってしまいます。

「どうしようかー」

穴ぼこは今まで食べた穴の能力を使えます。
今までたくさんの穴を食べてきました。
何か戦いに役立つものは無いでしょうか。
お菓子の穴、木の穴、鍵の穴、笛の穴、針の穴、落とし穴、井戸の穴、動物の巣穴、洞窟、悪口をいっぱい叫んでいた穴……

「あ、そうだ! あのね……」

ルーミアは穴ぼこにこしょこしょと話しかけます。
大丈夫。きっと勝てるはず。
だってルーミアは一人のときでもとっても強かったんだから。
二人一緒なら誰にも負けないほど強くなれるはずです。







「――というわけです。事情はお分かりいただけたかしら」
「なんだか気が進まない」

博麗神社の巫女さんはとっても不機嫌そうでした。
それもお話を聴いたからではなく、この紫の妖怪を目にしたときからです。
何故ならこの妖怪が姿を現すときは、いつも厄介ごとが一緒だからです。
もっと言うなら、この妖怪自体が厄介ごとの大親分みたいなものなのです。

「それが貴女の仕事でしょう?」
「この前、閻魔様に仕事だからって妖怪を退治していいことにならないって怒られたばかりだし」
「大丈夫よ、今回のは妖怪じゃないから。どちらかというと神様に近いわ」
「そっちのほうがより重罪なんじゃないかなぁ。だいたい異変っていってもまだ何も起こっていないんでしょう。まだ何もしてない奴を退治するってのは……」
「おーい、霊夢。井戸が枯れてるぞ。いや枯れてるっていうか埋まってるって感じだな。いやいや、これはもう井戸の穴だけどこかに逃げていったとしか思えない有様だな。なにか罰当たりなことでもやらかしたのか」

庭から聞こえてきた元気な声に、巫女さんの眉がぴくりと跳ね上がります。
紫の妖怪はその顔を見て、にんまりと笑いました。

「今はまだ小さいから悪戯程度の被害ですんでいるけど、放っておけば取り返しのつかないことが起きるわよ。トウテツの弱点は穴を埋めるもの。そこらにある土でも石でもなんでもいいわ。でも弾幕としてなら結界が一番効果があるでしょう。貴女がもっとも適任なの」
「私の魔砲じゃ駄目なのか?」

さっきまで向こうにいた黒い魔法使いさんが、ひょっこりと縁側から顔を出します。

「お呼びでないわね。トウテツが恐れるものは、自分の穴を埋めてしまうもの。あとは自分より大きな穴くらい。破壊するだけの貴女の魔法では逆に相手を強めてしまう危険すらあるわ」
「そういうわけにはいかないぜ。私はたぶんそいつに借りがあるからな。それにそのトウテツとやらを見てみたいな。穴が動くなんてどういう幻想なんだ?」
「穴が動くこと自体、幻想でもなんでもないわ。何かを築き上げれば、どこか綻びができる。物が移動すれば、その後に空白ができるでしょう。何かを得れば、何かを失う。トウテツは得たものを奪うものではなく、失ったものを奪うものよ」
「そうなると何が困るんだ?」
「失ったもの、というのは、得たもの以上に、とても大切で有難いものなのよ。貴方達人間の視点からは解りにくいかもしれないけれど」
「わかりたいとも思わんな。私は何が嫌いかって、物を失くしたり捨てたりするのが一番嫌いなんだ」
「あー、いまのでなんとなくわかった。幻想郷中が魔理沙の部屋みたいになったらそれは大変な事態でしょうね」
「さしあたって、幻想郷でもっとも憂慮すべきことは大結界の穴が食べられてしまうことね。それがトウテツと一体化してしまえば、穴は際限なく広がる。しかも塞ごうとしても穴自体が意思をもって逃げ回るのですから、どれだけ厄介なことかお分かりでしょう」
「どこかの巫女がさっさと結界の穴を直していたら、心配しなくてすんだことだけどな」
「それ以前にどこかの妖怪が結界に穴を空けていなければ、そもそも必要すらなかったことだけどね」

黒い魔法使いさんと巫女さんがじとっとした目で妖怪を睨みましたが、本人は蛙の顔に水滴が当たった程度も表情を変えません。

「ではご理解いただけたところで今夜、早速お願いしますわ。そうそう、言い忘れていたけれど――」

なんだか突然思い出したような、でもどこかわざとらしい妖怪の言い方に、
巫女さんの全身の毛が、猫が警戒するときのように逆立ちました。

「小さな妖怪がトウテツに懐かれているわ。多分一緒に邪魔してくると思うけど、貴女なら問題ないわよね」







その夜は大きな三日月がでていました。
それは、まるで童話に出てくる意地悪な悪魔の口みたい。
きっとあの奥には紅い舌が隠れていて、地上で起きる出来事を見透かして今から笑っているのです。

「よりによってあいつなのか」

大結界近くの深い山の中。
偶然にもそこは、巫女さんとルーミアが初めてであったその場所の近くでした。
巫女さんはあの日と同じ紅白の衣装を着て、側にはあの日と同じ黒い魔法使いさんを引き連れている。
なにもかもがまるであの夜と同じです。
ただ一つ違うのは。
今夜はルーミアが独りじゃないこと。

ルーミアは山の開けたところの真ん中にでんと腕を組んで、空にいる二人を待ち受けています。
その周りには黒い闇がもやのように漂っています。
普段はルーミアの周囲を覆っているそれは、地上にのっぺりと広がって、絨毯みたいに大地を覆っています。

「あいつの闇が邪魔でトウテツってやつが全然見えないな。闇夜に鴉どころの話じゃないぜ。大丈夫なのか?」
「なんとかなるでしょ。わかんないけど」

巫女さんは懐から道具を取り出します。
右手にお札、左手に陰陽玉。
その格好だけみたら巫女さんじゃなくて芸人さんみたいです。
その様子を見て、ルーミアも懐からカードを取り出します。
スペルカード。
それは幻想郷では絶対に破ってはいけないルール。
どんな争いごとも想いも願いも、全部これ一枚に賭けなければいけない。
ルーミアはそれらの全てを込めて、そのスペルカードの名前を叫びます。

「闇符『ディマーケイション』!!」

辺りに広がった闇から、弾幕が泡みたいにたくさん浮かび上がって、一直前に空へと撃ちあがります。
でも、巫女さんはゆらりゆらりと、魔法使いさんはびゅんびゅんと飛び回り、弾幕を次々とかわしていきます。

「どうする? とりあえず辺り一帯なぎ払うことを提案するぜ」
「却下に決まってるでしょ。あんたは黙ってみてなさい。……霊符『夢想封印 散』!」

ぱっと、空に巫女さんがお札と陰陽玉をばら撒くと、その一つ一つが大きな光る玉になって空に浮かびます。

「……『寂』」

巫女さんが両手を左右に広げ、静かに宣言します。
それは、木々にしみいるように深い声でした。
さっきまでのどこかふわふわした感じとは別の人の声みたいです。
光る玉は巫女さんの声に応えるように、まるで雪のようにふわふわと、そしてどんどん地上に降りていきます。

「『集』!!」

ぱあんと、巫女さんが打つ拍手が、夜のしじまに木霊しました。
それを合図に地上に降りていた玉は、中央を目指すかのように渦を巻いて地面を走り出します。
その中央にはルーミアが、そしてその途中には必ず穴ぼこが。

「いけない、穴ぼこ逃げよう!」

ルーミアは急いでそこから逃げ出します。
でも回りは弾幕に囲まれているのです。
ルーミアは小さくて素早いからなんとかよけられますが、穴ぼこはきっとそうはいきません。
周囲を回る玉はどんどん多く、早くなっていきます。
とうとうルーミアは逃げることをあきらめて、うつむき小さなため息をつきます。

「あなたは勘が鋭いわね」
「そうかしら。私に言わせれば他の人が鈍いのだけど」
「そうなのかー。うん、そうだよね。あなたはそれほど勘が鋭くない。だってあなたは――」

ルーミアが笑います。
でもうつむいていたので、巫女さんと魔法使いさんは、気づきませんでした。

「あの大蝦蟇より鈍かったんだもの」

突然、空気を切り裂く音がしても、ルーミアばかり見ていた巫女さんはそれを避けることなんてできませんでした。
闇も穴ぼこもなにもない地面から、突然そんなものが向かってくるなんて思いもしなかったからです。

ぐるぐると巫女さんの体に縄のようなものが巻きつきます。
それは黒い蛇のように、とぐろをまいて一瞬で巫女さんの自由を奪ってしまいます。

「何よ、これ!?」

最後にぽこんと頭に桶が落ちてきて、巫女さんは目を見張りました。
桶は釣瓶で、縄は釣瓶を落とすのに使っていたもの。
どちらもとても見覚えのあるものだったからです。

もう隠れる必要なんてありません。
かぶさった木々や土を払いのけて、穴ぼこが姿を現します。
もっともそれは本物の土や木ではないけれど。
だっていくら夜だからって、こんな大きな穴を隠しきれるわけはありません。
全ては幻想。
穴ぼこが食べた落とし穴がもっていた、人の目から隠れられるという幻想。

「擬態! ルーミアの闇のほうがおとりか」

黒い魔法使いが悔しそうに叫びます。
でも、もう全ては手遅れです。

「いけー。穴ぼこ!」

ルーミアの掛け声に応えるかのように、穴ぼこから水の塊がいくつも飛び出します。
言うまでも無くそれは、穴ぼこが食べた井戸の水です。
巫女さんはかわそうとしますが、縄に巻きつかれた状態では動くことはできません。

「ぐっ……!」

いくつもの弾が、巫女さんの体に当たってはじけました。
巫女さんが苦しそうに体を折り曲げます。

「やった! すごい、博麗の巫女を倒した!」

ルーミアが歓声をあげますが、巫女さんは汗を流しながら、
それでもまるで平気だというみたいに、にやりと笑います。

「……まさか我が家の井戸にこんな目に合わされる日がくるとは思わなかった」
「減らず口を叩いている場合かよ」

ひゅっと黒い魔法使いさんが巫女さんの前をよぎると、ぱらぱらと千切れた縄が、そして少し遅れて巫女さんの体が落ちていきます。
黒い魔法使いがそれをがっちりと受け止めました。

「手を貸せなんて言ってない……わ」
「そういうな。向こうが二人ならこっちも二人だ。前みたいに一人で二回なんて状態じゃないだろ」

黒い魔法使いの言葉にルーミアははっとします。
そう、向こうも二人。ルーミアたちと同じ二人です。
でも大丈夫。同じ二人でもこっちのほうが強い。
それは一人一人の力が強いからじゃなくて、……なんだろう?
ルーミアにはうまく言えないなかったけれど、それはきっと一人ではありえない力で、
そして絶対に相手には負けられないもの。

「どっちにしろ穴ぼこには普通の弾幕は通用しないわ。あなた達の負けよ!」

巫女さんも真顔で頷きます。

「そうよ、あんたの負けよ」
「いやいや。お前が相手に同意してどうするんだ」

呆れ顔で黒い魔法使いさんは、なんとか立ち直った様子の巫女さんを離します。

「忘れっぽい奴だな、お前は。あいつには結界以外に弱点があるって紫が言ってただろう」
「……弱点って……何をやらかすつもりなのよ」
「愚問だな。私がやることなんていつも一つしかないぜ!」

黒い魔法使いさんがとりだすのはミニ八卦炉。
とりだすやいなやぎゅるぎゅると回りだすそれは、まるであの魔法使いさんそっくりに、
落ち着きが無くて、加減を知らなくて、まっすぐで、まぶしいくらいにキラキラ光る。

相手を想って呪文をつぶやき、闇夜を切り裂く熱い眼差しで狙いを定め、そして放つは恋の魔砲――

「恋符『マスタースパーク』!!」

まるで流れ星がそのまま落ちてきたかのような光。
それはなんの遠慮もなく地面に突き刺さって、音と光と風と土と、とにかく色んなものを辺りに撒き散らします。

「きゃーーーーー!」

台風と雷が一度に来た様な衝撃に、ルーミアは目と耳を閉じて叫びます。
でもそれが当たったところはルーミアでも穴ぼこでもありませんでした。
それは本当に何も無い場所に当たったのです。

「外したの……?」

ルーミアが薄目を開けて様子を見て、ほっとした息を吐いたそのとき、

「いくぜ! ここからだ!」

黒い魔法使いさんが叫びます。
すると魔法使いさんの光の柱が動き始めました。
始めはゆっくりと、でも次第に早く。
辺りのものを薙ぎ払いながら、それは地面を走っていきます。

「なんのつもり?」

そんなことをしたって、後に残るのは魔法が当たった跡だけ――。
はっとして、ルーミアは目を見張ります。
魔法が当たった跡、そこには――、

「いけない、穴ぼこ。逃げてーーー!」

今度は本気でルーミアは叫びます。
穴ぼこも危険なのがわかったのか、必死でルーミアのほうに走ってきました。

「逃がすか!」

轟音を立てながら光の魔法が追っていきます。
そしてその後には、魔法が造った巨大な穴が。
魔法が当たっても穴ぼこには効かないけれど、そうなれば魔法が空けた穴とつながることになってしまいます。
穴ぼこが自分より大きな穴に落ちるとどうなるのか、ルーミアは穴ぼこには訊いていないからわかりません。
でも訊いてないから余計に心配です。もしかしたら、穴ぼこは逆に穴に食べられて消えてしまうのかもしれない。

動きながら落とし穴みたいに隠れることはさすがの穴ぼこもできません。
ルーミアは必死で宵闇を使って穴ぼこを隠しますが、巫女さんがうまく黒い魔法使いを誘導します。

「ううー。絶対負けるものかー。穴ぼこ、頑張ってー」

でも魔法使いさんの魔法の方が、穴ぼこのスピードより明らかに速いのです。
ルーミアの心臓がうるさいくらい鳴りだします。
こんなに怖いことは今までありませんでした。こんなに――、こんなに――。

「――あっ、まず――」

魔法使いさんがいきなり気の抜けたような声を出しました。
そのとたん、魔法が止みました。
穴ぼこを追っていた穴も当然、動きが止まります。

「すまん、霊夢。燃料切れだ……」
「え? まさか?」
「後はまかせた……」
「ちょっと、あんたここまでやらかしておいて!」

まるで糸が切れた人形みたいに、魔法使いさんはがっくりと力が抜けて、地面へとひょろひょろと落ちていきました。
巫女さんがあわてて、魔法使いさんの腕を捕まえます。

「やった――」

ルーミアが胸を撫で下ろしかけたそのとき、ごごご、と急に地震みたいな音がなりだした。
いいえ、みたいな、ではなく、本当に揺れているのです。

「な、何?」

まるでこんな夜中に大騒ぎをする悪い子を、山が怒っているかのよう。
そう、それはきっと間違いなく天罰だったのです。
木が、土が、石が、岩が、そして山そのものが。
自分達がいるその場所に崩れかかってきました。

「嘘でしょ。魔理沙の加減知らず……!」

巫女さんが呆然として崩れていく山肌を見ています。
でもルーミア達は呆然としているわけにはいけません。
ルーミア達は地面にいるので、まともに土砂が降ってくるのです。このままでは埋まってしまいます。

「逃げて――」

ルーミアの声が、山崩れの大きな音にかき消されました。
穴ぼこの姿も、ルーミアも一瞬で、まるで巨大な動物に一飲みされたみたいに消えてしまったのです。

(私……やっぱり弱くなってたのか……)

いつものルーミアなら空を飛んでいるからこんなものに巻き込まれることはありません。
でも、今日は穴ぼこと一緒にいたから。穴ぼこを守るために、地面の近くにいたから。

(なんでだろ、一人のほうが強いってわかってたはずなのに……。なんでそうじゃないって思い始めたんだろう)

暗い……真っ暗闇の中。
ここはきっと土の下。
ルーミアが創った宵闇じゃなくて、本当の真っ暗闇です。
ここには誰もいません。
ここには誰も来ません。
いつもと同じです。
ルーミアのいつもと同じ。
今までも一人。
これからもきっと一人。
それが一番楽しかった。
だけど、なんでだろう。
今は、怖くて悲しくて、しかたがない…………。







光が射し込んできます。
月の光が、まるでお空から剣が降ってきたみたいに。
ルーミアの胸と月を刺しつらぬいて結んでいます。

月はいつもよりずっと遠いところに見えて、
ずっとずっと小さくて、まるで暗闇にぽっかりと空いた穴のよう。

「生きてたか。悪運が強いわね」

穴から巫女さんがひょこんと顔を出しました。
まるで自分が覗かれているみたいでとても嫌だったので、
ルーミアは無理やり体を動かして、穴を出ました。
穴をでて眺めてみると、それは小さな、とても小さな穴で、ルーミア一人がやっとおさまるくらいの大きさでした。

「あれ、穴ぼこ?」

ルーミアはきょろきょろと不安げに周りを見渡します。
あたりはでこぼこになった地面と、なぎ倒された木と、流されてきた岩があるだけです。

「あいつなら」

巫女さんが指差した先は、ルーミアが今でてきたばかりの穴でした。

「そーなのかー。穴ぼこが助けてくれたのかー」

ルーミアは嬉しくなって駆け寄ります。
でも、穴ぼこは小さくなって元気がなくなったのか、全然動く気配がありません。

「つかれたのかー? じゃあお菓子食べよー」

ルーミアは持っていたとっておきのお菓子を取り出します。
もう冷めちゃっているけど、それは穴が大きめで、戦いに勝った後、穴ぼこにあげようと思ってとっておいた、とっておきのお菓子でした。
ルーミアはそれを穴ぼこの中に差し出します。でも穴ぼこは全然動きません。お菓子の穴も消えて無くなりません。
まるで――、

「あれー? どうしたー、穴ぼこー」
「無駄よ」

巫女さんが冷たく言いますが、ルーミアは聴く耳をもちません。

「あなたは知らないだけよ。だって穴ぼこは穴を食べるんだよ。いつもこうやって――」
「あのときそいつはあなたを助けるために、降りかかってくる土砂を全部その穴で受け止めたの。あなたを助けられたのは奇跡とも言えることだったけど……、それでも穴が全て埋まれば、そいつは消えるしかない」
「でも穴はここに残って――」
「それはあなたが出てきたから出来た穴よ」
「あ――」

ぽとりと、ルーミアは持っていたお菓子を穴に落とします。
それを拾おうともしないルーミアを、巫女さんは無表情でしばらく見つめると、やがてぷいっと後ろを向きました。

「じゃあ仕事が終わったから私は帰るわ」
「……馬鹿。……人間の馬鹿! 人間なんて嫌い、大嫌い!」
「それでいいわ。それが一番正しいことだもの」

巫女さんは振り返らずにそう言って、魔力を使い果たして地面に倒れている黒い魔法使いを担ぎ上げました。
その光景がなんだかとても悔しくて、羨ましくて、悲しくて、ルーミアは噛み付くように巫女さんに訊きました。

「なんでわざわざそいつを助けるの? あなただって怪我してるんでしょう?」
「友達だからね。当たり前でしょう」

ルーミアははっとしたように呟きます。

「友……達……? 助けるのは、友達だから……?」

巫女さんはルーミアの言葉には答えず、そのまま明方の空に消えていきました。

それを見送ると、ルーミアは穴ぼこの中に戻って、目が覚めたときのようにうずくまりました。
こんなときはどうすればいいかわからなかったから。
ルーミアは元通り、一人でも強い自分に戻れるまで、ずっとずっとそこにいました。
覚えているのは、ただぼんやりと、いつまでも空を見ていたことだけ。
そしてその空が、何度も何度も滲んで見えたことだけでした。







それから月日が経って、それでもルーミアは以前と変わりありませんでした。
ルーミアはやっぱりいつも一人で、目的も無く、でも楽しげに、闇に包まれてふよふよと夜の空を飛びまわっています。

唯一つの変化は、お菓子の好みがちょっと変わったことです。
お菓子を売ってくれるおばあさんが、穴の無いお菓子もあるわよ、と言ってもルーミアは首を振って、穴の空いたほうのお菓子を選ぶのです。
理由を訊くと、おばあさんはとても嬉しそうな顔をしました。

山の一番てっぺんに、王様みたいにどでんと生えているとても大きな木の上で。
ルーミアは今日も穴の空いたお菓子を美味しそうに食べています。

食べているときにいつの間にか消えてしまったお菓子の穴は、きっと穴ぼこが知らない間に食べてしまったのでしょう。


本編とはあんまり関係のなさそうな後日談

『博麗神社裏の深山で謎の大崩落』

○月○日
昨夜未明、山奥から鳴り響いた轟音が遠雷のごとく幻想郷に木霊した。
近くを通りがかった記者が現場に急行すると、なんとそこには見事に一角を切り崩された山が無残な姿を晒していた。
幸い住んでいた妖怪たちはいち早く逃げ出して無事だったようだが、目撃証言からこれは自然現象などではなく、
なんと人為的もしくは怪異的に起こされた事件である可能性が高いということだ。
発生時刻の少し前に、高らかに響くスペルカード宣言の声と、後に続く弾幕勝負の音を聴いたというものがいるのだ。
もしこれが事件だとすれば決して許されないことである。
山は人間よりも妖怪よりも遥かに長寿で遥かに大きな力を持つ。いわば山はそれ自体が一個の神といってもいい。
その神様に対してこのような暴虐、断じて許されることではない。
ひいては山の妖怪の代表たるわれわれ天狗たちへの挑戦といってもいいだろう。

外の世界ではその昔「環境破壊」とかというものがブームになったらしい。
しかし最近ではもう破壊するような環境がなくなっていまったということで、そのブームは収束してしまったということだ。
なんとも信じがたい話だが、すでに幻想となった「環境破壊」とやらが外の世界から幻想郷に流れ込んでしまったとしたらなんとも恐ろしい話だ。

当「文々。新聞」は、この恐るべき「環境破壊ブーム」の先触れと思われるこの事件をいち早く取り上げ、幻想郷に対して警鐘を鳴らすものである。
願わくば、この不届きものに速やかに天罰やら人誅やらが訪れることを祈りながら。



「ひどい話もあったものね」
「まったくです。できることならこの手で犯人を突き止めて、当「文々。新聞」で告発したいものです」
「そうなれば部数も跳ね上がるわね」
「失礼な! そのようなことは考えていませんよ。しかし結果としてそのようになるのであれば、これは私の記者としての真摯な態度が報われたということに他ならないでしょう。……いえ、決してですね――」
「で、見つかりそうなの? 犯人」
「それがさっぱり。なにせ事件が起こった夜は月明かりも乏しい真っ暗な夜でしたらから、目撃証言も曖昧なのです」
「それは残念ね。いったい何処の黒い魔法使いの仕業なのかしら」
「………………あの、なんで魔法使いの仕業って限定されてるんですか」
「え? ……そんなの、ただの勘よ」
「でも今、色まで黒って……」
「その程度、あなたが撮ってきたこの現場写真を見れば一発よ」
「すごいです。そのような人智を超越した推理力があればどんな異変も一発で片がつきそうなものですが」
「でもまぁ、そいつも私やら紫やらに怒られたりで一応反省らしきものはしているようだし、多分こんなこともしばらくはしないんじゃないかな。……と、あくまで私の勘が言うんだけど」
「すでに勘ではなくて妄想になっているような気がしますが。…………わかりました。他ならぬ博麗の巫女が言うのですから、そういうことにしておきましょう」
「借りじゃないからね」
「心得てますよ。もしかしたら貸しになったかもしれないことですからね。――それでは、また」

時計屋弐号店
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2007/05/13 08:58:14
更新日時:
2007/06/05 20:11:09
評価:
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POINT:
0
Rate:
5.00
1. 9 卯月由羽 ■2007/05/13 10:50:45
よい話でした。
そして、
やっぱり
ルーミアは
かわいい
2. 8 詩所 ■2007/05/13 11:10:38
オリキャラがでてきていますが、でしゃばることなくルーミアを引き立てています。
穴分も十分にあり、テンポよく読めました。
問題は霊夢が来た時点で饕餮の死亡フラグがたったと、先が読めてしまったことくらいですかね?
3. 8 秦稜乃 ■2007/05/13 11:49:32
涙腺がやばいかも。
この落ち着いた雰囲気の中で出される、御伽噺のような雰囲気、好きです。
4. 9 A・D・R ■2007/05/14 03:57:47
最初から最後まで目が離せませんでした。最初はギャグかと思ったのですが…
ギャグの部分とシリアスの部分がお互いを引き立てあい、優しげな語り口と相まって、よい意味で特徴あるお話になっていたと思います。
突拍子がないアイデアに引き込まれ、ギャグも楽しめ、シリアスで感動し、優しい気持ちになれる…とてもよかったです。
5. 7 名無し ■2007/05/14 18:38:16
面白かったです
6. 10 名無し妖怪 ■2007/05/17 02:48:03
魔理沙自重しろ。るーみゃかわいいよるーみゃ。
しかしこのトウテツ、人間の口や鼻の穴を食べたら最強なんじゃね?と思うと少し怖いね。
7. 7 スミス ■2007/05/19 06:56:31
タイトルに使われたドーナツはネタ被りが少なく、
読みたくなる印象を受けます。
8. 7 爪影 ■2007/05/19 22:54:42
 大した、お調子者ですね。
9. 8 どくしゃ ■2007/05/21 05:02:23
お題の使い方に拍手を贈りたいです。
こんな話が大好きです。
10. 10 ■2007/05/23 10:49:39
実にすっきり、綺麗にまとまっていますね。
お見事でした。
11. 7 反魂 ■2007/05/25 01:50:01
少し竜頭蛇尾な印象もありましたが、総じて面白かったです。
かなり異質な雰囲気を持つ作品でしたが、ただ単純に奇をてらうだけではなく、物語としての根幹を疎かにしない丁寧なストーリーテリングは非常に好感でした。なかなかイメージしづらい展開の中に温かみを失わせず、物語の主題がよく伝わってきました。ほんわか良いお話だったと思います。
穴という御題を巧く使っているという点も含め、印象的な良作でした。
ありがとうございました。
 
12. 8 名も無き一読者 ■2007/05/26 16:00:55
無邪気なルーミアがたまらなくかわいいです。
ルーミアかわいいよルーミア
出会いと別れを知ってちょっとだけ成長したルーミアに幸あれ。
13. 4 人比良 ■2007/05/26 21:09:41
素敵。
14. 7 流砂 ■2007/05/26 22:07:47
穴を基礎とする妖怪、多重の意味を持つ題名、加えて一人の強さについてなど。
良く練られていて非常に楽しめる作品でした。 あと、トウテツがなんか可愛い。
最後の方は霊夢や魔理沙が敵に見えてしまうくらいに。
15. 8 deso ■2007/05/26 23:24:04
面白かったです。こんな料理の仕方があるのか。上手いなぁ。
16. 10 風見鶏 ■2007/05/27 03:25:50
タイトルでコメディかと思いきや良い意味で裏切られました。
17. 8 blankii ■2007/05/27 11:48:04
絵本のような口調で語られる、ルーミアと『穴ぼこ』のお話。もしゃもしゃとドーナツを齧るルーミアの顔が浮かんできます。何処か無表情で、何処か寂しそうで、ども少しだけ嬉しそうな――。
18. 7 椒良徳 ■2007/05/27 20:27:09
「今日は大蝦蟇さんに喜んでもらうために自分の味を変えてきたということですね。自らの食材としての価値にこだわるとは殊勝な心がけです」この文の台詞が良すぎる。
 童話調で紡がれるちょっと不思議なストーリー。いや、良いですな。貴方の発想には脱帽しました。この特徴的な文体柊一さんかな? また、貴方の作品を読んでみたいですね。
19. 7 木村圭 ■2007/05/27 23:56:56
ちょっとだけ悲しくて、とっても優しい素敵な話。知識は不足気味でも頭の回転は悪くないルーミアが輝いてました。
お題の使い方も見事。よくもまあこんなこと思いつくもんだ。
20. 10 らくがん屋 ■2007/05/29 10:20:01
テーマが穴なのに、作品に穴が無いとはこれいかに(うまいこと略
いやもう、完璧の一語に尽きますわ。テーマである『穴』と、東方の構成要素の一つである『妖怪』をダイレクトに結びつけているのがグッド。さらに起承でほのぼのとした二人(二匹?)のふれあいを見せ、転で弾幕、結で感動+オチという完璧な構成。正直、ちょっと涙ぐみました。
個人的には慧音が出てくると尚良しでしたが、よくよく読むと人里では穴の騒ぎを起こしていないんですよね。ここまで考えての構成だとしたら、もはや脱帽するほかありません。
コンペにおいて、こんなにもすばらしい良作に出会えたことを幸いと感じます。ありがとうございました。
21. 8 shinsokku ■2007/05/29 22:41:39
これはツボに嵌りました。幻想分とオリジナリティで満ち足りました。
そしてドーナツが食べたくなりました。
あんまり食べるとカロリーと下腹の蜜月的関係が気になるお年頃ですが、ルーミアが可愛いので良いと思います。
22. 8 鼠@石景山 ■2007/05/30 02:03:10
丁寧な文章。
途中に入るイタズラもほのぼのとしてて、話の根っこにある重くなりやすい部分を緩和していると思います。
語り口が丁寧語なのも、話を柔らかくする上手いやり方だと思います。
ラストから後書きもいい感じ。柔らかくて頭のいい話という印象。
23. 8 いむぜん ■2007/05/30 02:48:00
足りないけど「そーなのかー」だけじゃないルーミアは非常に貴重だ。
ルーミアの友情話。お菓子屋のおばあちゃんが良いアクセントというか、話の肝になっている。
これの有無で話は格段に違ってくるだろう。ルーミアがどこまで覚えてるか疑問だけどな。
24. 6 ■2007/05/30 04:18:48

お題のアプローチは面白かったです。
童話的な話の作り方もなかなか好みでした。
25. 7 リコーダー ■2007/05/30 15:54:57
大惨事の伏線があっただけに、ちょい拍子抜けの感を禁じ得ませんが。
全体的には良い話だったと思います。
26. 7 眼帯因幡 ■2007/05/30 18:19:32
一人の方が強い人は、孤独な子。
二人だと弱くなってしまう人は、親しいものが居ない子。
違う意味で強くなれる人は、親しいものが出来てしまった子。
ルーミアに赤子や動物の友達が出来る話はよく聞きますが、とてもすばらしい物語でした。
ルーミアはドーナッツを食べる度に、穴ぼこを身近に感じているのでしょうね。
お疲れ様です。
27. 9 K.M ■2007/05/30 21:22:37
ほのぼのしたタイトルと文体に似合わぬハードなお話、楽しませていただきました。
トウテツは確か中国由来でしたっけかね。物言わぬ「穴」と宵闇妖怪の交流が素晴らしかったと思います。
♪楽しい事は二人分 悲しい事は半分
28. 7 たくじ ■2007/05/30 22:10:53
うわー切ない。最後の流れは王道なんだろうけど、やられました。ドーナツ食べながらルーミアは穴ぼこといっしょにいるんだね…
29. 7 二俣 ■2007/05/30 22:40:21
『穴』をこう使ってきたかと関心。力技ですがいいガジェットになっています。
ラストがとても好きですなのですが、それだけにあとがきがやや蛇足かな、と。
30. 6 藤村る ■2007/05/30 23:58:39
 あー、最後の台詞いいなあ。
 ていうか時間ぎりぎりなのによくここまでまとめられるな……。
31. フリーレス 時計屋 ■2007/06/02 20:09:20
この作品に目を通して下さった全ての方々に感謝を。
感想を残してくださった方々にさらなる感謝を。
また、主催者様、このコンペを盛り上げてくださっている方々……感謝は尽きることがありません。

このような良い評価と感想を残していただくとは、正直夢にも思ってませんでした。
SSを書くのは基本的には楽しい作業ですが、やっぱり煮詰まって投げ出したくなることがあります。
そんなときは以前いただいた感想を励みに頑張っています。そのときうけた指摘をもう一度心に刻むこともあります。
このSSが出来上がったのは、そうしたこれまでの皆様の言葉と、発表したときにいただく感想への期待が胸の内にあればこそです。

では、最後にもう一度お礼を。

皆様、本当にありがとうございました。



以下にコメントをお返しします。


■卯月由羽さん
同感です。
しかし求聞史紀によるとそのお姿を直に拝むことは難しいようです。
きっとこの先の東方シリーズでも姿を見ることは少ないでしょうねぇ……。


■詩所さん
ちゃんとしたオリキャラを前面にだしたのはこれが初めてでしたので、
うまく受け入れられるか不安でした。
とりあえずあくまでルーミアが主、オリキャラが従の姿勢は守るようにしました。
ですのでそういっていただけると救われます。

初めからこれは饕餮が消える前提で創られたお話でしたので、
死亡フラグ立ちまくりなのはやむをえませんでした。


■秦稜乃さん
童話風の語り口はラストの文章が浮かんだときに決定した方針です。
普段はそんなもの読んでないので、書いている途中何度も躓いたのですが、
そう言っていただけると報われます。


■A・D・Rさん
ギャグとシリアスの両立は難しい。
以前それで失敗したので、今回はその徹を踏まないように気をつけたつもりです。
特に終盤はギャグを入れたくてたまりませんでしたが、なんとか我慢しました。
こうした皆さんの感想を読んで、入れなくて良かったと今は心底思います。


■名無しさん
その一言がSSを書く幻想力の源です。


■名無し妖怪さん
>魔理沙自重しろ。
きっと無理です。
止まったら死ぬような気すらします。どっかの回遊魚みたいに。

あとご指摘どおり、饕餮は人の目、鼻、耳、口のいわゆる七孔を食べることも可能という設定でした。
登場時、聴覚や視覚があって口が利けなかったのは、小動物や昆虫を食べて目・鼻は取り込んだが
人語を発する声帯だけがなかったというどうでもいい設定がありました。


■スミスさん
最初に穴といわれて思いついたのは、チーズの穴、そしてドーナツの穴でした。
あとはちくわの穴とかも思いつきました。
しかしラストのシーンでチーズをかじるルーミアはちょっと絵にならない。
ましてや、ちくわをしゃぶるルーミアは……なんかもう台無しです。色々と。


■爪影さん
妖怪ですから。
人間側視点で見ると彼女らは完全に悪役ですね。
その視点の一部は巫女に託したつもりです。


■どくしゃさん
ありがとうございます。
それでも穴の妖怪化というのは色々とかぶるんじゃないかなぁ、と不安でした。


■翼さん
最初はどうなることかと思ったのですがなんとかまとめられました。
書いてみると文章量がやたらと多くなってしまったというのはあまりに良くあること。
今回も予定を遥かにオーバーしていまい、どうなることかと思いました。


■反魂さん
今回は説教くさい場面や暗い場面を極力出さないように気をつけました。
童話調の文体もその苦肉の策の一つといえます。
しかしそれでもトウテツを何故退治しなくてはならないか、読者に納得してもらえるように、
前半ではったりを利かせすぎた感もあります。
逆に結界の穴を飲み込んで幻想郷が大騒動、というパターンも考えたのですが、
私の筆力ではそこまで大きくなった話に収拾をつけるのは到底無理そうでした。
どちらも私の力量不足故、この点は大きな課題になりました。


■名も無き一読者さん
ルーミアはかわいいねぇ。
何も考えずにふよふよと飛び回っている文化帖での姿を見て、書こうと決めました。


■人比良さん
光栄です。


■流砂さん
トウテツは妖怪というより犬、猫っぽいのをイメージ。
巫女たちは今回憎まれ役です。
そして重々承知でその役を押し付けた紫が一番悪い子です。


■desoさん
正直最初はどうしたものかと思いましたが、自分でも予想外なものができました。
穴というお題が無ければ、きっと生まれることはなかった発想でした。
自分の中の未知の引き出しを開けてくれたコンペという場に感謝を。


■風見鶏さん
タイトルは今回すんなり決まりました。
ただ「美味しい」はひらがなにすればよかったと、投稿後に悔やみました。
SSの看板なのだからもうちょっと考えれば良かった……。


■blankiiさん
最後のシーンは自分でも気に入っています。
しかしSSの終わり方がワンパターンだな……と反省も。


■椒良徳さん
文とチルノのコンビはお気に入りです。
当初はそこの漫才だけ小ネタとして切り落とし、別のSSとして投稿するつもりでした。
しかし開けてみればネタがかぶりまくっており、やらなくて良かったと胸を撫で下ろしてます。


■木村圭さん
ルーミアって割と理知的な話し方をしているので、頭は決して悪くないんじゃないかなぁ、と。
いや、「わはー」な幼女なのも好きですが。


■らくがん屋さん
ありがたい評価をいただき感激の極みです。
慧音先生の登場は正直考えてませんでしたが、人間の里を襲わないのはルーミアがいたからですね。
人間の里を襲うと人間や妖怪を敵に回してしまうため、ルーミアが躾けていました。
どのみち紫に目をつけられてしまうわけですが。


■shinsokkuさん
こんなSS書いておいてなんですが、実は私、ドーナツってあんまり食べないです。
しかし人が買ってきたものは喜んで食べます。
なんて奴だ。


■鼠@石景山さん
とにかく重い話なのでどうやって書いていこうか悩みました。
中盤の漫才や童話調の文体は苦肉の策です。
そんな小技に頼らずにストレートにいければ一番よかったのですが、まだまだ精進です。


■いむぜんさん
菓子屋といえばおばあちゃんですね。勝手なイメージで。
ルーミアは……きっと人間の顔なんて覚えないですね。
霊夢達もなんか紅いのと黒いのぐらいにしか認識してない気が……。


■執さん
正直童話風の文体は受け入れてもらえるかどうか不安でしたが、
楽しんでいただけて何よりです。


■リコーダーさん
大惨事だと話に収拾がつかなくなってしまうと思ったので。
あとオリキャラをあんまり暴れさせるのも抵抗がありました。
今回は大火を未然に防いだということで。


■眼帯因幡さん
東方キャラでもルーミアは珍しく誰とも絡んでいないキャラですね。
でもだからといってそれで全然困るわけでも寂しいわけでもない。
そういうルーミアを基点として書きました。


■K.Mさん
東方SSでこういうハードな話はどうかとも思ったので、
せめてあまり落ち込むような話にならないように気をつけました。
トウテツは中国の邪神ですね。
わりと有名でゲームにもいくつか登場しています。


■たくじさん
王道です。
「俺、この任務が終わったら結婚するんだ」級の死亡フラグ。
今回、話の筋だけはストレート勝負でいきました。
得点偏差とかを見ると、幅広く受け入れてもらったようで何よりでした。


■二俣さん
力技です。細かい矛盾とかでてきてもなりふりかまわず。
おかげでよく突っ込まれますが、未熟者ゆえ表現したいことを書くだけでいっぱいいっぱいでした。
後日談は本編にくっつけられなかったので、あとがきならどうかと思ったのですが、
あとで読み返すとやっぱり蛇足でした。
まだまだ思い切りが足りません……。


■藤村るさん
小説は冒頭の一文が決まれば8割完成している、なんて言葉をどこかで聴いた気がしますが、
このSSは最後の一文がまず決まって、そこからSSが組みあがっていきました。
ラストの一行は自分でも気に入っています。

時間はぎりぎり、でもやりたいことは詰め込んだ……と思っていたら、後から読み返して後悔の連続。
自分では時間に負けていないつもりでしたが、それでもやはりどこか精神的に負けていたのかも……。
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