『Alice』

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/02 20:05:11 更新日時: 2008/02/05 11:05:11 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00


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 私と霧雨・魔理沙とを繋ぐのは、友情とはまた少し違った、腐れ縁と呼ばれるもの。そんな事を思う。決して仲良しではないし、しかし知り合いという言葉で片付けるには少々互いを知り過ぎている。かといってライバルという程でもない以上――腐れ縁、なのだろうと思うのだ。
 そしてそれは彼女だけに留まらない話でもあった。あの日魔界で出逢った者達とは、望む望まざるに拘らず何らかの形で再会を果たしている。恐らくあの瞬間から、私と彼女達は見えない糸で繋がれていたのだろう。
 だからそれが切れてしまいそうになった瞬間、私は手を伸ばさずにはいられなかった。
「魔理沙!」
 瓦礫を頭に受けた魔法使いが箒から落下する。脳震盪でも起こしたのだろうか、その体はぐったりと弛緩して動かない。
 柔らかな金髪が風に踊る。あと少しでそれを抱きかかえてあげられるのに、その数センチにも満たない距離が果てしなく遠い。
 制止の声が聞こえる。でも、無意識に動き出した体はもう理性では止められない。
 奇妙な程ゆっくりに感じる時間の中、地面が、迫って――

■ 

 ――目を覚ますと、一人仰向けで横たわっていた。周囲には誰も居らず、停滞した冷たい空気だけが私を包む。上半身を起こし、近くに転がった人形達を回収していると、自分の行為が猛烈に恥ずかしくなってきた。
「……何やってるんだろう、私」
 溜め息と共に顔を覆う。多分真っ赤になっているのだろう頬は熱くて、冷えてしまった手が妙に気持ち良かった。
 ああ、本当に何をやっているんだろう。旅は道連れだとか訳の解らない事を言って私を引っ張り出した魔理沙に付いて来てしまったのが、そもそもの間違いだったのかもしれない。
 思い出す。
 旅の目的は妖怪退治だった。場所は山の麓にある小さな谷で、そこには清流が流れていた。
 魔理沙曰く、この川の水はとても綺麗で、生活用水として人間達の暮らしに欠かせないものなのだそうだ。しかし最近になって、この場所で何かをやっている妖怪が現れた。ただの休息ならまだしも何か悪さを企んでいるとなると大問題になる。話を聞いて、もし悪巧みを考えているようなら退治してくれ、とまぁそう頼まれたらしい。
 一体誰に、とまでは聞かなかったけれど、恐らくは酒屋にだろう。あれは上質な水や米を必要とする商売だし……それに、最近良い日本酒が手に入ったと魔理沙が騒いでいたから、恐らくそうに違いない。
 そうして私達はこの場所へとやって来て、件の妖怪を探し始め――そこで遭遇したのが、妖艶に笑う八雲・紫だった。
 どうやらこの場所で何かやっている妖怪とは彼女の事らしい。「何をやっていたんだ?」と問い詰める魔理沙に、紫は珍しく少し困ったように微笑んで、
「この場所は結界が維持し難い場所なのよ。だから、定期的に見て廻らないといけないの」
 幻想郷には、そういった場所――つまり、博麗大結界が本来の強度を保つ事が出来ない場所がいくつか存在するのだという。それは外界の影響や土地の霊力・魔力に依存するらしく、紫の力を持ってしても完全に除去する事は出来ないらしい。
「まぁ、本来ならこれは、巫女である霊夢の役目なんだけどね」
 毎日のんびりまったりお茶を飲んでばかりいる霊夢だけれど、そういった仕事もあったようだ。
 でも、最近の霊夢はお茶ばかり飲んでいられない状況にあった。神社に山の神様の分社が出来た事で人間の参拝客が現れ始め、彼等を相手にした本来の神社らしい行い――例えば札を売ったり、御神籤を売ったり、お祓いをしたり、などという事を行わざるを得なくなった。大繁盛とまではいかないものの、それは霊夢にとっては慣れない事で、思わぬ時間を取られていた。
「その間に何かあっては大変。だから私が見回りをしていたのよ。まぁ、てんやわんやになってる霊夢は珍しいから、このまま放っておくのも面白いんだけど……もし何かあったら私が怒られてしまうから」
 そう言って紫が苦笑する。それは、世話の焼ける妹の話をする姉の表情にも見えた。
 まぁ、見えただけで多分気のせいだろう。それよりも重要なのは、これが事件でも何でもなかったという事だ。
 骨は折っていないけれど、無駄な移動でくたびれたのは確か。でも、戦闘にならずに済んだのだから良しとしよう。そう思いながら帰ろうとする私を他所に、一歩前に立った白黒は何故か楽しそうに、
「だが、形式の上だ。ちょっくらオシオキさせてもらうぜ」
「そう? じゃあ、私もオシオキし直してあげるわ」
 そう言葉を交わして、魔理沙と紫が意気揚々と臨戦態勢に入っていく。どうやらこのまま帰るつもりでいたのは私だけだったらしい。
 谷の間を冷たい風が吹きぬけていく。思わず「寒いのに元気ねぇ……」と呟くと、二人の視線が同時に私を貫いた。
 嫌な予感がする。
「まさか……私も?」
「「アリスも」」
「……聞くんじゃなかったわ」
 そうして弾幕ごっことなった。
 久しぶりに戦った八雲・紫の力はやっぱり強く、それでも二対一という状況では彼女を押す事が出来た。
 そんな中、無数に飛び交っていた弾幕の一つが私達の背後にある岩壁を崩した。前方から放たれる弾幕に意識を取られていた私達は対処が遅れ、体に瓦礫を受けてしまった。そして運悪く、魔理沙は頭にそれを受けてしまったのだ。
 気が動転した私は落下する魔理沙へと手を伸ばした。無意識に、自分でも恥ずかしくなるくらいに焦りながら。でも、この場所には紫が居たのだ。私が行動を起こさずとも、魔理沙は確実に助かっただろう。
 けれど、この体は動いてしまった。
 魔理沙を抱き止めようとした私は、あと数センチという距離を詰める事が出来なかった。そして彼女の体が地面に衝突する瞬間、私は魔理沙へと魔法を放った。その落下軌道を無理矢理にずらして衝撃を緩和させようとしたのだ。途中で紫の制止が聞こえていたけれど、止められなかった。
 そして、魔法が発動する瞬間、紫がスキマを開いた。地面へとダイブしていた魔理沙は、まるで落とし穴に落ちるかのようにその中へ吸い込まれて行き、彼女へと向かい加速していた私もその中へと突っ込んだ。その時点で魔法の発動を取り消す事は出来なかったから、スキマの中で派手にぶちまけてしまったに違いない。もしかすると、この場に一人残されたのはそれに対するささやかな嫌がらせかもしれない。
 とはいえ、妖怪である彼女をそこまで信じて良いものだろうか? なんて今更な事を考えて、自分自身で否定する。何せ相手はあの八雲・紫なのだ。彼女が魔理沙を助けようとしていた以上、それは確実に成功する。
 何故ならば彼女はそういう存在だから。森羅万象有象無象、ありとあらゆるものに境界を見出す八雲・紫という妖怪に不可能は無い。そう、式というプログラムを操る彼女にとって、世界は全て数式で表す事が出来る。そして発生した全ての事象に対し適切な答えを一瞬で計算し算出し、それに見合った行動を自己に化す。それは誰かを助けようとする時も同様。相手の状況、自身の状況、周囲の状況、その全てを一瞬で把握し判断し、適切で万全なプロセスで救出の手段を実行する。彼女はその答えを迷わない。躊躇わない。後悔しない。だからこそ彼女は大妖怪と成り得た。残酷な程に世界を判断する事が出来るから。『幻想郷は全てを受け入れる』なんて言葉は、その全てを許容し受諾し、そしてその上で迷わぬ答えを生み出す事が出来る彼女だから言える言葉。私は彼女が恐ろしい。だってこの言葉ですら、彼女が生み出した計算の上なのかもしれないのだから――なんて事を阿求が言っていた事を思い出す。だからまぁ、心配は要らなかったのだ。うん。
 しかし、制止の声が聞こえていたにも拘らず体は動いていた。それは目の前で見知った相手が大怪我をするかもしれない、という瞬間だったからで、それでもあの魔理沙相手にここまで純粋に体が動くとは思わなかった。
「……まぁ、もう付き合いも長いしね」
 相容れない事も多いけれど、決して嫌いではないのだ。
 だからこその、腐れ縁。馴れ馴れしくなく、かといって離れ過ぎない。この微妙な距離感が、一番心地良いのだと思う。
「――さて」
 立ち上がり、衣服に付いた汚れを払う。同じように人形達の汚れも落とし、ほつれた部分がないか確認して、いつものように周囲に配置。なんとなしに辺りを確認してからその場を後にした。

 一瞬何かが気になったけれど、何が気になったのかは解らなかった。


1

 魔法の森にある自宅に戻る道すがら、魔理沙の様子を見に行く事にした。紫が助けに入っている以上、頭に受けた傷以外に外傷は無いと思うけれど、その傷の程度がどんなものかも解らないのだ。あの場に私一人が取り残されていたのには何か別の理由があるのかもしれないし、まだ楽観は出来ない。それに、背後でフォローをしていた私が彼女の怪我を止められなかった、という負い目もあった。
 歩き慣れた薄暗い森の中、軽い怪我だったら良いけれど、と思いながら歩を進め――不意に、強烈な違和感に襲われて足を止めた。
「…………」
 まるで騙し絵を見せられているようだ。目に入っている現実の違和感が強烈過ぎて、脳がそれを理解する事を拒んでいる感覚。一瞬にして何も考えられなくなる。
 それでも、呆然と声が出た。
「嘘、でしょう?」
 誰かに確認するようなその呟きは、誰にも届かず消えていく。
 無い。
 無いのだ。
 霧雨邸が、無い。
 破壊されている訳でも、魔法で見えなくなっている訳でもない。
 私の正面に広がる土地は、まるで初めからそこに何もなかったかのように、人の手が入った形跡すら存在しない自然のままの姿を晒していた。
「……なによ、これ……」
 場所を間違えたかと、思わず周囲を見渡す。
 ここで間違いないと思うけれど、魔理沙の家が無いのなら、間違えてしまったという事なのだろうか。
 解らない。
 理解出来ない。
 誰か、教えてよ。
 そのままゆっくりと歩き出し、行っては返し、行っては返し……ぐるぐると、何も考えられない頭で歩数だけを重ねていく。
 けれど、そんなミスを犯す訳がなかった。この森が昼夜問わず暗いといえど、一軒の屋敷を見逃すほど複雑ではないのだ。
「……」
 恐る恐る、霧雨邸の玄関があった筈の場所へと近付いていく。真っ白になった頭は、突然襲い掛かってきた現実を理解するどころか、ここには何も無いという事実を受け入れようとしない。あと一歩踏み出せば全てが元通りになるような気がして、そうっとそうっと一歩を踏み出し――何も変化が起こらず、今度こそと期待を籠めて、もう一歩を踏み出す。
 そうして、一歩、一歩、本来なら廊下があった筈の場所を、叫び出したい程の恐怖を感じながら歩いていく。
「……」
 理解したくないと叫ぶ自分が居る。でも、魔法使いとしての自分が、この場所には何も無いと酷く冷静な声で告げてくる。
 そう、この場所には何も無い。魔法で何かを偽造した形跡もなければ、私本人が錯覚を起こしている可能性も無い。これでも私は魔法使いであり、だからこそ自分の観測するものに間違いはないと断言が出来る。
 それでも、狐につままれたにしてもタチが悪いこの状況を理性が認めたがらない。呆然と歩き続けて、ここ何十年と踏まれる事が無かったのだろう柔らかな土と雑草を踏み固めていく。
 何がどうなっているのだろう。
 魔理沙はどこへ消えてしまったのだろう。
「……まり、さ?」
 問い掛ければ答えがあるような気がして、小さく呟く。
 けれど、答えは返ってこない。
 あの太い木々の間から、「驚いたか?」なんて笑う魔理沙の登場を待っているのに、いつまでたっても彼女は出てこない。
 怖い。
 心地良くもあった森の静寂が、今はとても恐ろしい。
 冷えた空気が世界を満たす。寒くてたまらない。何がどうなっているのか解らなくて、それでも足を止める事が出来ない。
 そうして同じ場所をぐるぐると回り続け、不意にある事を思い出した。
 視野に入った人形の一体。その体に使用した布は、ある店で購入したものだった。それは魔理沙や霊夢が良く利用している、やる気の無い古道具屋、
「香霖、堂……」
 その考えに至った瞬間、限界にまで高まっていた不安から逃げるように、私は香霖堂へと駆け出していた。
 薄暗い森を一直線に走る古びた道を人里方面へと駆け抜けていく。途中にある自宅に目もくれず、見えてきた店の扉を思い切り開け放った。
「こ、香霖堂さん!」
 勢い良く開けた扉が商品の一部へと激突し、激しい音を上げる。同時に何かが崩れたような気がしたけれど、それに意識を向けている余裕も無い。狭い店内に積み上げられた商品に体がぶつかる事すら厭わずに奥へと進んだ。
 そうして辿り着いた店の奥には、いつものように椅子に腰掛ける森近・霖之助の姿。そして、彼を相手に商品を見ている影があった。
 瞬間、思考が止まる。
 それは予想外の姿で、私は心に浮かんだ言葉をそのまま口に出してしまっていた。
「……なんで、貴女がここに……」
 呟いた声は絶対零度。叫び出さなかっただけ上出来だ。走ってきた事で生まれた熱が急速に冷えていくのが解る。それは理解不能な現実へと向けて放つ無意識の言葉だった。
 でも、 
「ん? どうしたんだいアリス?」
 彼女はそんな私の様子に気付かず、当たり前のような微笑みを浮かべてきた。
 魅魔。
 青色のドレスを纏ったその美しい人は、過去に魔界で戦った彼女と瓜二つに見えた。
 でも、目の前に居る女性と、私の記憶に残っている彼女とでは、決定的に違う部位があった。それは脚だ。今の彼女には、しっかりと地面を踏みしめる足がある。更にその表情は生き生きとしていて、かつて博麗神社の祟り神として存在していた悪霊のそれではなかった。
 一体何がどうなっているのか。
 どうにか平素を装ってみるものの、内心の動揺を抑える事など出来ない。
 解らない事が多過ぎて、何が正常なのか、何が異常なのかの判断が付かなくなっている。不味い。取り敢えずこの場を離れて冷静にならないといけない。と、そう考えた所で、店主が私へと心配げに、
「慌ててやって来たように見えたけれど、何かあったのかい?」
「あ、えっと、その……」
 そうだ、魅魔らしき人物が居た事で思考停止に陥ってしまったけれど、そもそも私は霧雨邸が消失してしまっていた理由を確認しに来たのだ。
 どうにか心と体を落ち着かせてから、
「私も上手く理解出来ていないんだけど……実は、森にあった筈の霧雨邸が無くなっているの。壊されていたとかじゃなくて、元から建っていなかったみたいな感じで……」
「……霧雨邸?」
 私の言葉に、店主が何故か不思議そうに繰り返し、
「それは霧雨家が立てた屋敷という事かい?」
「ええ、その筈だけど……」
 何か妙だ。
 何か変だ。
 凄く、嫌な予感がする。
 そう思う私へと、彼は耳を疑うような一言を口にした。
「残念だけど、魔法の森に霧雨家が建てた屋敷なんて存在しない。……アリス、キミは一体何を見たんだい?」
「――なん、ですって?」
 聞くんじゃなかった、なんていうレベルじゃ済まされない返答に、思わず返す声が硬くなった。
 彼はそんな私へ言い聞かせるように、
「前に言ったかもしれないけれど、僕はあの家で修行を積んでいたからね。だから、間違いないよ」
「……」
 店主の、森近・霖之助の言う言葉の意味が解らない。
 解らないけれど、でも、嫌な想像が脳裏に浮かんだ。

 もしかして、この世界には霧雨・魔理沙という人間が存在していないのだろうか。 
 
 魔理沙。霧雨・魔理沙。この香霖堂へと良く足を運んでいた魔法使い。人間で、女の子で、金髪で、ちょっと言葉遣いが男っぽくて、それでもスペルカードに恋符なんて付けてしまうようなヤツで。黒いドレスに白いエプロン、リボンを付けた帽子を被り、空を駆るその姿は一度見たら忘れられないくらいに輝いていて。その上誰が相手でも怖気づかないようなヤツで、平気で弾幕ごっこを挑んできて。馬鹿みたいな火力を持ってる癖に他人の技を盗んで、それを自分の力とする為に影で頑張る努力家で。それなのに人の話を聞かないし、自分勝手だし、盗んだ物を返さないし――でも、誰よりも真っ直ぐで。どう考えたってウザいだけなのに、居なかったら居なかったで不安にさせるような不思議な魅力があって。
 そんな彼女が、存在していないのではないだろうか。
 だから彼女の屋敷が無くて――その代わりと言わんばかりに、魅魔が現れたのだろうか。
 そんな馬鹿な。
「そんな馬鹿な」
 取り乱してはいけない。
 叫び出してはいけない。
 そんな事は解っているから、呟いた声は酷く冷たかった。
「じゃあ、魔理沙は何処に居るのよ」
 と、その言葉を放ってから、自分が馬鹿な質問をしてしまったと後悔した。それを聞いてしまったら、この状況で最も聞きたくない言葉が返ってくるかもしれないのだ。今の言葉を取り消したくなった。
 でも、一度放ってしまった言葉は、もう誰にも止める事は出来なくて。
「魔理沙?」
 不思議そうに、店主が、森近・霖之助が聞き返してくる。
 恐らくは生まれる以前から魔理沙を知っていて、そして誰よりも魔理沙の身近に居ただろう彼が聞き返して来る。
 駄目だ。
 駄目だ駄目だ駄目だ。
 お願いだからもうこれ以上何も言わないで。
 そんな風に不思議そうな顔をしないで。
 そう、強く強く願うのに、
   
「それは一体、誰の事だい?」

 もう、嫌だ。




 気付くと、外に居た。
 どんな言葉を告げて香霖堂を出たのか良く思い出せない。でも、異常に動転していたのは確かで、むしろ無事に店外へと出る事が出来た自分を褒めたくなった。
 大きく深呼吸を繰り返して、冷たい空気を肺に満たし、重く積もった不安を少しずつ外へと吐き出していく。
「……ん」
 本調子には程遠いものの、少しは落ち着いた。これならある程度は冷静な思考が出来るだろう。私はそのまま自宅へと歩きながら、この状況についての考えを纏める事にした。
 ――さて。
 見知った人間が一人、その存在から何から全て消滅していた。その異常で奇怪な事実を今更ながらに受け止める。そして、思考する。
 まず、前提として、霧雨・魔理沙という人間の存在は否定しない。彼女を否定する事は、今の私を――魔界での戦いや、あの永夜事変などを経て成長したアリス・マーガトロイドという魔法使いを否定する事になるからだ。
 それを踏まえた上で、この世界に魔理沙が存在しないという事実を受け入れなければならない。幻想郷中を探し回った訳ではない以上まだ断言は出来ないけれど、霧雨邸が存在せず、霧雨家で修行していた森近・霖之助が彼女の事を知らなかった。恐らくこれ以上の証拠はないだろう。
 彼が嘘を吐いている可能性もあるけれど、私相手にそんな嘘を吐く理由が無い上に、あの男はそういった嘘を好まないだろうという勝手な憶測が――いや、勝手な期待があった。せめて彼だけは、と。
 ……絶望が心を蝕んでいくのが良く解る。あの二人の関係は家族に似たものだと勝手に思っていたから、その分反動が大きい。でも、提示された答えは受け止めなければ。そしてその上で、霧雨・魔理沙という存在が消えてしまった理由を考えていかなければ。
「……でも、なんで魔理沙が消えてしまったんだろう」 
 状況から見れば、八雲・紫が何かをした可能性が一番高いのだろうけれど……彼女がそんな事をする理由が見当たらない。もし私の知らない所で紫と魔理沙がいがみ合っていたとしても、何故私だけが魔理沙の事を覚えているのだろう。その理由が解らない。
 では、もし八雲・紫が関わっていないとしたら、一体誰に、何の目的で彼女は消されたのだろう。
 いや、そもそも、一人の人間が存在していたという記憶の全てが消え失せていたのだ。更には霧雨家の人間があの土地に屋敷を建てたという過去すら書き変わっていた。それは最早異変などというレベルを超えた歴史の変化だ。記憶の境界すら操る事が出来るのだろう紫以外に、そんな事が出来る存在なんて――一人、居たか。
 上白沢・慧音。
 でも、
「……まぁ、それは無いわね」
 小さく首を振る。彼女が歴史を喰らい、創りだす力を持っているとしても、例えば稗田の一族が管理する歴史のように、その能力の干渉を逃れる場所が確実に存在している。霧雨・魔理沙という人間の影響力は結構大きいし、こんな変化が起きれば確実に誰かが気付くだろう。
 それに、ここまで世界が変化するような歴史改竄をあの慧音が行う筈が無い。もしそんな事を考えるような危険人物なら里の守護者などやっていられないだろう。例え里の人々を上手く騙していたとしても、霊夢の勘がそれを嗅ぎ付けない筈が無い。あれでも彼女は幻想郷の規律である博麗の巫女なのだから。今まで数多くの異変を解決してきたあの『勘』を侮る事は出来ない。
 まぁ、もし犯人が慧音だったとしても、私の記憶に変化が無い理由は解らないままなのだけれど。
 そんな風に考えていって、ふと、香霖堂に居たあの女性の事を思い出す。
「魅魔、か」
 魅魔。過去に戦った悪霊の名前。
 でも、香霖堂で出逢ったあの女性が本当に魅魔だったのか、冷静になった今では断言出来ない。
 その姿が似ているように感じたから彼女を魅魔だと思ったけれど、そもそも私は魅魔という悪霊と親しい訳ではない。彼女とは数回しか逢った事がなく、後は魔理沙から話を聞くぐらいだった。だから彼女が本当に魅魔だったのかは解らない。
 でも、今から確認に戻る勇気も無かった。魔理沙が消えてしまった謎を解明した後、店主にでも聞けば良いだろう。
 とはいえ、この状況を打破する方法がさっぱり解らない上に、解決の糸口も見当たらない。
「参ったわね……」
 ただ魔理沙が消えてしまっただけだというのなら、色々と推理は出来るのに。妖怪が跋扈するこの幻想郷という世界で、一人の人間が消えるのはそうそう珍しい事ではないのだから。昔に比べて減ったらしいけれど、今でもそういった事は――って、ちょっと待て。
 幻想郷という世界。
 幻想郷という世界から魔理沙が消えた。
 魔理沙が消えた世界。
 世界から消えた魔理沙。
 世界から。
 世界。
 世界?
「……」
 もしかして、謎も何も無く、ただ単純に……ここは魔理沙が存在していない世界、なのだろうか。
「まさか」
 馬鹿馬鹿しい仮定だ。
 でも、そう考えれば魔理沙が消え、更には霧雨邸すら存在していない事への説明が付く気がする――というか、例え極端な仮定でも、何かしらの理由付けをしないと再び心が恐怖に喰われてしまいそうで恐かった。
 だから取り敢えず、何も解らない今の内は、ここが他世界だと考えて行動する事にしよう。もし違ったらその時はその時。何事も臨機応変に、だ。
 では考えよう。
 まず、この世界に迷い込んでしまった原因は、紫のスキマで間違いないだろう。でも、流石にその出口がこの世界だったとは考えられない。恐らく、スキマに飲み込まれた瞬間に放った私の魔法が元の世界とこの世界との境界を歪ませ、スキマの出口をこの世界に繋げてしまったのだろう。
 一魔法使いである私の力で紫の能力を狂わせる事が出来るとは思えないけれど、あの時は緊急時だった。向こうも咄嗟だっただろうし、少しぐらいは可能性があるかもしれない。それに、彼女と戦った場所は結界が不安定になるような所だった。そこに溢れる魔力や霊力が何らかの影響を与えた可能性もあるだろう。
 ……まぁ、仮定でしかないけれど。
 でも、その仮定で話を進める以上、ある問題が発生する。
 それは、この世界にも『アリス』が存在しているという事実だ。霖之助達が『アリス』を知っていた以上、これは間違いない。それに、彼等は私を相手にしても動揺が無く、衣服や髪型に関する質問も無かった。つまり、この世界に存在している『アリス』は私と似た存在なのだろうと想像出来た。
 出来たのは良いけれど……それは少々面倒な状況になってしまった事を意味する。
 この世界にも『アリス』が存在しているという事は、つまり、私――アリス・マーガトロイドの行動を怪しむ人物が現れる確率が高くなるのだ。その場合、私は『アリス』の偽者として扱われ、下手をすれば霊夢辺りに追われる可能性も出てきてしまうだろう。
 この世界の『アリス』がどんな少女に育っているのかは解らないけれど、霧雨・魔理沙という魔法使いが存在していないと思われる以上、あの日魔界で起こった戦いの内容は確実に変化している筈。もしかしたらこの世界の『アリス』はただの人間のままで、魔法使いですらないかもしれない。そうなれば『アリス』は究極の魔道書を持ち出してリベンジを果たそうとし、負けてしまう事も無いのだ。その場合、無様に敗北した私の行動理念と『アリス』の行動理念は確実に違ったものになっているだろう。
「嫌になるわね……」
 思わず溜め息が出る。自分とは違う可能性を歩んでいる相手を恨む気にはなれないけれど、釈然としないのは確かだ。もし『アリス』と出逢う機会があったとしても、恐らく打ち解ける事は出来ないだろう。
 とはいえ、例え相手が誰であろうと、私は他者に助けを求めるつもりは無かった。
 当然、不安は多い。迷いも多い。混乱も多い。そしてそれ以上に、私の事を誰も知らないという状況がとても怖く、恐ろしい。
 でも、それでも、
「『私』なら、こんな程度の状況、自分で解決してみせるもの」
 そうだ。
 どれだけ不安でも、迷っても、混乱していても――そしてそれ以上に強く恐怖を感じていても、こんな状況、すぐに打破してみせる。
 あの日から、私はずっと一人で頑張ってきたのだから。

 そう意気込んで、私は強く歩き出し――見えてきた自宅が廃墟だった時、思わずその場に崩れ落ちた。


2
 
 妙に重たい体で人里まで辿り着いた時、『隠れて行動する』なんて言葉は脳裏に浮かばなかった。渇いた笑みを浮かべながら、少しだけ店の配置が違う里の中をゆっくりと歩いていく。
 すると、周囲の人々から奇異の目を向けられている事に気付いた。……目が合った子供が逃げていく。私は幽霊か何かか。
 流石にこのままでは不味い。曲がっていた背を気力で伸ばし、笑顔を浮かべる。……目が合った子供が涙を浮かべて逃げていく。私は妖怪か何かか。
 って、そういえば妖怪だった。 
 とはいえ、顔を見ただけで泣かれたり逃げられたりなんて事は経験したくなかった。恐らく、相当にヤバイ顔を晒しているのだろう。私は少し早足で里の中心部へと向かい、逃げるようにカフェへと入った。
 見た事の無い店員に珈琲を頼み、棚に入れられた新聞を数部手にとって奥の席へ。運が良いのか悪いのか、店内には誰も居なかった。
 席に着き、小さく流れるBGMをぼんやり聞いていると、「ごゆっくり」という言葉と共に珈琲が運ばれて来た。……その声とカップが少し震えていたのは気のせいだと思おう。
 湯気を上げる黒い液体を一口。熱く舌を焼きそうなそれが空っぽの胃に染み込んでいく。
「……はぁ」
 なんかもう本当に嫌になってきた。自宅に誰か別の人物が住んでいる可能性は予測していたけれど、完全に廃墟と化していたのは流石に心に来た。ここを別世界だと定義したとしても、それを納得出来ているかと言われれば別問題だ。霧雨邸が無かった時と同じように、今度は私、アリス・マーガトロイドという存在を否定されてしまったかのようで、どうしようもない絶望を感じるのを止められなかった。
「……はぁ」
 溜め息が止まらない。
 自宅が人の住める状況だったならまだ良かった。しかし、実際にはかなり良い感じに半壊していて、夜には自然のプラネタリウムでも眺められそうな状況だった。それを片付けてでも家で休もうとする気力は湧かず、私は里へとやって来たという訳だ。
 私以外にも『アリス』が存在している以上、これが自分の立場を危なくする行為だと理解しているけれど、一度休まないとやってられない。弱音を吐かずにいこうにも、これ以上はちょっと無理だった。
 ぼけっと外を眺めつつ、珈琲を飲む。ブラックのまま半分程楽しんだ所で、角砂糖数個とミルクを投入。黒と白が混ざり合って行く所をゆっくり眺め――スプーンで数回掻き混ぜ。
 一気に飲んだ。
 溶け残った砂糖を噛んで飲み干して、小さく気合を入れる。疲れた顔を晒すのはここまでだ。
「――読むか」
 カップを隣のテーブルへと置いて、新聞を広げる。これからどう動くにしろ、まずはこの世界についての情報を手に入れなくては。
 ゆっくりと、文字を読み進める。
 新聞の内容は普段読んでいるそれと変わっていないように見えた。どうやらこの世界と元居た世界では、そこまで大きな違いは生まれていないらしい。
 記事の内容も、プリズムリバー三姉妹のライブ情報や、ミスティアの屋台の商品が増えたというものや、幽香などのインタビューなど、普段目にしているとそれと殆ど変わりが無かった。
 同時に、そこには見知った名前が少なからず存在していて、それが自分の知っている彼女達では無いと解っているのに、なぜかほっとした。
 そうして新聞をチェックしていき、ふと、何か違和感を感じた。
 確実に目に入っているはずなのに、何か見落としているような、そんな違和感。まるで一瞬前に見ていた夢の内容を思い出せないかのようで、もどかしい。
 一体何なのだろう。私は何を見落としているんだろうか。
 見終わった新聞を再び読み直し、その違和感をどうにか掴もうとして――視界の端、カフェの窓越しに見える里の風景の中に、メイド服の女性が見えた。
「――ッ」
 瞬間、掴めなかった違和感の正体に辿り着く。どうして気付かなかったのか解らない程、気付いてみれば納得出来る答え。
 もう見えなくなってしまった女性の姿を脳裏に思い浮かべながら、新聞をたたみ、
「……何にせよ、確認が先ね」
 人形へと小さく呟いて、席を立つ。
 百聞は一見に如かず。その一見も、文字情報だけでは全体像を掴めない。何せここは見知らぬ世界。私の知る幻想郷ではないのだから。
 


 向かった先には、紅くない屋敷が建っていた。
「……夢幻館、か」
 それは風見・幽香を館主とする屋敷。元居た世界では現在も存在しているのか解らない巨大な屋敷。新聞で取り上げられていたし、間違いはないだろう。
 先程感じた違和感の正体は、新聞に――あの文々。新聞に紅魔館の記事が存在していなかった事だった。他の記事を読む限り、この世界に存在する射命丸・文と私の知る文に殆ど違いは無いように思える。だからこそ、その両者が作る新聞に違いが無かったからこそ、普段当たり前に目にしている紅魔館の記事が存在していなかった事に違和感を感じたのだ。
 ここを異世界だと定義した以上、そういった錯覚は危険を伴う可能性が高い。そう自身を戒め直す。
 けれど、視線の先に建つ屋敷はその錯覚すら起こりそうになかった。
 その大きな原因は、夢幻館の建つ位置と紅魔館の建つ位置の違いだ。双方の位置はかなり離れていて、本来あるべき場所にあるべき物が無いというのは強い違和感を感じさせた。
 まぁ、もし紅魔館が存在していたとしても、立ち寄る事は無かったけれど。例えレミリア達が『アリス』を知っていたとしても、私は彼女達を知らないのだから。
 とはいえ、この幻想郷に紅魔館が――レミリア達が存在しないという事実が、にわかには信じられない。彼女達のような存在が、この幻想郷へと引き寄せられていないなんて。
 でも、現に幻想郷にやって来ていないという事は……もしや、彼女達は外の世界で討伐されてしまったのだろうか。
「……考えたくないわね」
 あの傍若無人でお子様で、それでいて誰をも魅了してしまうカリスマを持つ吸血鬼がそう簡単に討伐される訳が無い。恐らくはまだ外の世界で、幻想郷に導かれずひっそりと暮らしているに違いない。
 そうでないなら、そもそもこの世界に存在していないでほしい。奇妙な願いだけれど――例えここが他世界だとしても――見知った者達が死んでしまっていると考えるのは気持ちの良いものではないから。
 だから、霧雨・魔理沙もそもそも生まれていないのだと思いたい。
「確かめる勇気も無いけど……」
 小さく呟く。
 そう、確かめる事は出来る。里にある霧雨家へと赴いて問い質せは良いだけだ。そこへ直接尋ねる事は出来なくても、周囲の住民から話を聞く事は出来る。香霖堂の店主は『魔理沙』を知らないと言っていたけれど、もしかしたら違う名前を持って生まれている可能性だってあるのだから。
 けれどそれは、魔界で出逢ったあの日から、決して短くない時間を共有してきた魔理沙とは違う少女の情報だ。紅魔館の住民達と同じように、この世界の彼女が『アリス』を知っていようと、私はその少女の事を知らないのだ。
「……独りぼっち、か」
 思わず呟いた声は、誰に聞かれる事無く消えていく。自分で思っている以上に、私は参っているのかもしれない。 
 
 だから、だろうか。
 どこへ向かうつもりは無かったのに、足は博麗神社へと向かっていた。
 


 神社に巫女が居た。
「……なにぼさっと突っ立ってるの?」
 博麗の巫女が居る。
 でも彼女が『霊夢』なのか、私には解らない。
 目の前に立つ少女は掃き掃除の途中だったのか、箒を手にした姿で私へと視線を向けている。しかし、その服装は見慣れぬ巫女服なのだ。いや、解りやすく言うなら、腋が出ていない。白衣に緋袴を穿いたその姿は、初めて霊夢と相対した時の格好に似ている。しかし、この世界で『アリス』と彼女が戦っているのか解らない以上、迂闊な事は言わない方が良いだろう。
 怪訝そうな顔をする巫女へ「なんでもないわ」と誤魔化しつつ境内を進み、その奥へと。止められるのではないかと不安が高まったけれど、しかし巫女は気にしていないのか、そもそも関心が無いのか、私には何も言わずに掃き掃除へと戻っていた。
 少し淋しさを感じるのは、積み重ねた月日の違いがあるからか。
 そんな風に思いながら歩いて行き、見えてきた神社の奥。
「……あった」
 魔界へと繋がる洞窟は、封印される事無くその口を開いていた。
 瞬間、過去の記憶が蘇る。
 それはもう五年以上前の話。故郷へと戻る手段を失ってしまった小さなアリスのお話。
 胸が締め付けられるようで、それなのに何かが爆発してしまいそうな程熱い。最早二度と見る事は無いと諦めていたその闇に誘われるように、足はゆっくりと前へ進んでいった。
 幻想郷と魔界とを繋ぐ通路――魔空間と呼ばれるこの場所は、まるで沈み込んで行きそうなほど深い闇が拡がっていて、幽霊達の住処にもなっていた。それはこの世界でも同じなのか、闇の中に幽かな気配を感じつつも、しかし敵意を向けられる事は無かった。それは私が『アリス』だと思われているからなのか、それとも外からの住民に対してオープンなだけなのかは解らない。解らないけれど、少しだけ安堵している自分が居た。
 魔法使いと成った今ではこの程度の闇で視力を失う事は無いけれど、まだ人間だった頃はこの闇を恐ろしく感じた。そんな古い記憶を思い出しながら、懐かしむように周囲に向けていた視線を戻し――息を呑んだ。
 前方に、里で見たメイド服姿の女性が居たのだ。あれから何か買い物をしたのか手には二つの袋を提げ、私の存在に気付かず進んでいく。
 深い深い闇の中、黒に喰われる事無く、まるで自己主張するかのように映える赤色のメイド服が進んでいく。
 鮮やかで、艶やかな、赤。
 瞬間、
「――ッ、ぁ」
 感情をコントロールするスイッチが壊れたんじゃないかと思う程に様々な感情が渦巻き、混ざり合い、消える事無く増え続け、溢れそうになる。それが爆発しないように必死に耐えて、駆け出してしまいそうになる足を無理矢理抑えた。
『アリス』が魔法の森に住居を構えていなかった時点で、魔界への入り口が開かれている可能性があるのではないかという考えはあった。もし魔界での戦いが起こっていないのであれば、『アリス』が魔界を出る理由は無いのだから。
 そして里で赤色のメイド服を見た時、確信した。あの時は紅魔館の事を考えて意識を逸らしたけれど、今はそうはいかない。このまま進めば魔界に着くという誘惑は何よりも強く私を惑わし、冷静で居なければという思考と判断能力を失わせ、ここが別世界なのだという事実から目を逸らさせる。
 この先へ進めば、失ってしまった故郷を取り戻せるのではないか。そんな幻想が心を急速に蝕んでいく。
 一人で何とかしてやると、徹頭徹尾を誓った筈の気持ちが揺らいでいく。
「――でも、駄目」
 私と彼女達は赤の他人。それを忘れてしまう訳にはいかない。辛かろうが悲しかろうが、それは揺るぎのない事実だ。これ以上先に進む事は、自分の首を絞めるだけでしかない。
 それに、魔界の空気に少しでも触れる事が出来たのだ。それだけでも十分過ぎる。
「……」
 だから引き返そうと思うのに、どうしてか足を止める事が出来ない。駆け出さないようにしながら、それでも体は前へと進んでいく。周囲の闇がその深さを薄れさている事から、もう魔界へ入っていると気付いているのに。
 思考と行動が一致しない。止められるのに止まらない。そんな状況に妙な不安が高まってきて――不意に、全身が冷気に包まれた。
「ッ?!」
 突然のそれに冷静な反応を返す事が出来ず、思わず口から悲鳴が漏れる。同時に自分の悲鳴に自分で驚いて、慌てて周囲を確認。こちらを嘲笑うかのように遠ざかっていく幽霊の姿を見つけた。恐らくあの幽霊が私の体をすり抜けたのだろう。ただでさえ冷えているというのに、幽霊に触れられれば心臓も止まりそうになる。思わず我を忘れ、人形で斬り付けようとして――
「……アリス?」
 懐かしい声が、聞こえて来た。ゆっくりと視線を戻すと、メイド服の女性が足を止めていた。
 射抜かれたように動けなくなってしまった私へと向かい、その姿が少しずつ近付いて来る。これ以上ここに居ては駄目だと脳が激しく警鐘を鳴らしているのに、まるで大地に根を張ってしまったかのように、二本の足は動かない。
 手を伸ばせば届きそうな位置にまで来て、彼女の体が止まる。それが自分の知る存在ではないとしても――胸の中で暴れるこの熱い想いは、抗いようがない程に強かった。
「……夢子、さん」
 嗚呼、今の私はどんな顔をしているだろう。思考も感情も滅茶苦茶で、嬉しいのか悲しいのか、それとも辛いのか、もう良く解らない。
 そんな私へと、夢子が不思議そうに、
「どうしてアリスがここに? 今日は部屋で魔法の勉強をしていると、そう言っていたのに」
 決心がぐらぐらと揺らいでいるのが解る。誰にも助けを求めないと誓ったのに、それを訂正したくなる。今すぐ彼女に抱きついて、泣き言を言ってしまいたくなる。
 でも、それは出来ないのだ。
 彼女にとっての『アリス』が自分ではないと、どれだけ感情が揺らいでも、それだけは理解しているから。
「ちょっと、ね」
 苦笑と共にそう呟いて、崩れそうになる体を必死に立たせて、なんでもない風を装って見せる。夢子が疑問符を浮かべたけれど、もうこれ以上の干渉をする事は出来ない。この世界にも『アリス』が居る事と確定した以上、この先に待つのは混乱と――苦しみだけだ。
 それでも、もしかしたら、なんて甘い事を考えてしまって、動かそうとする足に力が入らない。もしかしたら、こんな状況の私でも理解してくれるんじゃないだろうか、と。
 けれど、それは弱い心が生み出した幻想に過ぎない。現実はそんなに優しくなくて、だからこそ私は一人でこの状況を打破してみせると決めたのだ。
 そうだ。
 幻想郷で暮らし始めた時から、私は誰にも甘える事が出来なくなった。それなのに、今更助けを求める事なんて出来ない。
 だから、
「……少し外へ出てくるわ」
 そう夢子へと告げて、逃げるように背を向ける。もう限界だ。これ以上、ここに留まり続ける事は出来ない。
 夢子が何かを呟いたけれど、それを無視して歩き出す。こんな機会は二度とないと思っていたのだ。出来れば懐かしい魔界の風景をもう少し眺めていたかったけれど、諦めるしか――
 
 ――不意に、背後から声が聞こえた。

 それが誰のものなのか、確認しなくても解った。解ってしまったからこそ、私の体は幻想郷へと向けて駆け出していた。
 駄目だ。もう本当に駄目だ。振り向く事も立ち止まる事も出来ない。ただ何も考えず、ここから逃げ出すしかない。
 あの日、魔界に戻る事が出来ないと解った時、もう二度と逢えないと諦めたのだ。地獄の底に突き落とされたかのような絶望の中、何日も掛けて、その状況を受け入れた。故郷はもう戻らないのだと、そう自分に言い聞かせ続けた。そんな私が、もう一度その空気に触れる事が出来たのだ。それだけで十分じゃないか。これ以上何も望まない。望めない。望んじゃいけない。しっかりと封じ込めた感情の鍵を開けてしまう訳にはいかないのだから。
 何重にも何重にも鍵をした。誰かに出生を問われても、魔理沙の家であの魔道書を見付けても、平静を保てるぐらいにまで厳重に。
 大げさかもしれないけれど、そこまでしなければ笑う事も出来なかった。生まれ育った故郷と、愛してくれた人々を全て失った悲しみは大き過ぎたから。
 もう一度それを味わうような事があったら、今度こそ私は立ち直れない。
 だからこそ、私は逃げるしかない。心が求める全ての感情を押し殺して、幻想郷へと逃げるしかない。
 もし彼女に捕まってしまったら、あっけなく鍵が壊れてしまう事は目に見えているから。
 それに――それ以上に恐ろしい。
 もし彼女の口から「貴女は誰」なんて言葉が出たら、もう立ち上がる事すら出来なくなってしまう。ここまで必死に耐えてきた心が砕けてしまう。例え他人だとしても、全く同じ顔で同じ声を持つ存在にそんな事を言われたら――
「っと、捕まえた」
「ッ?!」
 楽しそうな言葉と共に、背後から抱き締められた。全速力で走っていた筈なのに、一瞬で距離を詰められた事が理解出来ず、思考が止まる。
 それでもすぐに冷静さを取り戻し、背後から抱き締めて来た彼女を振り解こうと必死に足掻く。
 必死に、必死に――足掻かなければ、いけないのに、
「ッ、ぅ……」
 駄目、だ。
 出来、ない。
 どうやっても、体に力が入らない。
 段々と、逃がさないとばかりに強くなる抱擁に、頭が真っ白になっていく。何も、考えられなくなっていく。
 恐くてたまらない。それなのに、何も出来ない。
 暖かな体温と、懐かしい匂いに包まれる。
 何もかも見抜かれているのかもしれない。
 何もかも見抜かれていないのかもしれない。
 相手の心を読む魔法を知らない私には、その心の内は解らない。
「……ッ」
 思考が流れる。抵抗が途切れる。もう、逃げようとする意思が生まれない。
 嗚呼。自分自身に課した想いが、心の奥底に掛けていた鍵が、砕けてしまった。
 逃げ出そうとしていた体は完全に止まって、手は縋るように彼女の腕を掴んで、色んな感情が入り混じってぐちゃぐちゃになった頭からは言葉が出なくて、どうしようもなく流れ出す涙を止める事すら出来ない。
 解ってる。解っているのだ。
 彼女は私を、『アリス・マーガトロイド』を知らない。だからこの感情は全て偽者で、今すぐ逃げ出さなきゃいけないのに――

「おかえりなさい、アリスちゃん」

 ――もう、体は動かない。
 答える声は嗚咽に消えて、言葉にする事すら出来なかった。


3

 私、アリス・マーガトロイドは魔界人だ。魔界で生まれ育ち、人間から魔法使いと成った。学ぶべき事は沢山あったし、受け継いでいくべき事も沢山あった。毎日が勉強や研究、そして辛い鍛練や訓練の繰り返しだったけれど――幸せだった。
 そんなある日、魔界に巫女と魔法使いと悪霊と妖怪が現れた。彼女達の動機は様々で、その切っ掛けは民間の旅行会社だったのだけれど……その頃の私はただ魔界を防衛する為だけに戦いを挑み、あっさりと負けてしまった。 
 それでも生半可にプライドだけは高かった私は、皆の反対を押し切って究極の魔道書を持ち出し、愚かにもリベンジに向かってしまった。そう、愚かな選択だった。その魔道書に記された魔法が究極だとしても、私自身に扱いこなせる技量が無ければ意味が無い。結果、私は彼女達に勝つ事が出来ず、しかも魔道書まで奪われてしまった。
 今度こそ、完膚なきまでの完敗だった。それはどうしようもなく悔しくて……そしてそれ以上に、大切な大切な私だけの魔道書が、もう二度とこの手には戻らないのだという現実が、酷く悲しく辛かった。
 そうして私は全力を出す事を止めた。この先、未熟な自分が愚かな死を迎えない為に。
 それから暫くの間、私は意気消沈としていた。その時宿の代わりに使っていたのが、今の家でもあった。すぐに魔界に戻りたかったけれど、皆の反対を押し切ってまで出てきてしまったという負い目と、傷の治療、そして小さなプライドがそれを躊躇わせた。
 でも、いつまでもそんな生活を続けていられなくて、私は魔界へと戻ろうとして――しかしその時には、魔界へと続く洞窟は完全に塞がれていた。
 誰がそれを行ったのかは解らない。恐らく霊夢か紫だろうけれど、正確な所は今も解らないままだ。
 そうして、私は魔界に戻る事が出来なくなった。いともあっけなく、家族と故郷を失ったのだ。その時の絶望は筆舌に尽くし難いものだった。……他世界の存在とはいえ、成し得た再会で泣いてしまうぐらいに。

 ふと、私が人形を作り始めた理由はそこにあるのかもしれないと、そんな事を思う。
 独りの時間、どうしようもなく襲ってくる孤独を紛らわせる為には、何かに没頭するのが一番だったのだ。



 通されたのは、彼女――神綺が暮らしている屋敷だった。
 何も言っていないのに、目の前に出されたのは子供の頃良く作ってもらったミルクティーだった。一口飲むと味付けが殆ど変わらず、治まった筈の涙がまた溢れてしまいそうになって、慌てて目元を押さえた。
 そうしてゆっくりとミルクティーを飲んでいると、正面の席に魔界の神様が座った。
「美味しい?」
「……うん」
 小さく答えて、次に何を言えば良いのか解らなくなった。いや、というよりも、神綺が何を考えているのかが解らない。この世界にも『アリス』は存在している筈だ。それなのに、突然現れた私に何の疑いの目も向けないというのは、一体どういった事なのだろう。
 恐い。
 拒絶されなかったから大丈夫だと、素直に喜べない。そう思っていると、
「……私が何も言わないのが、不思議なのかしら」
 顔に出ていたらしい。小さく頷くと、神綺は優しく微笑んで、
「ここは私の世界だもの。誰かがやってくればそれに気付くし、怪しい人達がやってきたら迎撃もする。でも、アリスちゃんにそんな事はしないわ」
「……でも、私、は、」
 言いたくない。言いたくない! 言いたくない!!
 でも、言わなくてはいけない。言わなくては、いけない。この場所に足を踏み入れてしまった以上、どれだけ辛くても、告げなければならない。
 私が、『私』である為に。
 だから、
 私は、
「私は――アリス。アリス・マーガトロイド。……貴女の『娘』ではないわ」
 告げた声はどうしても震えて、最後は消え入るようになってしまった。
 でも、それが事実だった。この世界は神綺の世界。そして彼女は神様であり、全てを生み出した母親でもある。だから、それを否定しなくてはいけない。例え目の前に座っているのが神綺だとしても、私の知る神綺とは別人なのだから。
 辛い。
 それでも、説明を始める。私がこの世界の住民ではない事。そして戻る方法を探している事。でも、それは自分一人で行うから手伝いはいらないという事など……アリス・マーガトロイドという、この世界に在らざる者が陥った状況と、行おうとしている事の全てを。
 神綺は何も言わずに全てを聞き終えると、話し終えた私へと暖かく微笑んで、
「アリスちゃんがこの世界の人ではないという事は解ったわ。でもね、アリスちゃん。例え貴女が私の娘ではないとしても、貴女が『アリス』である事には変わりないの」
 何故、なんて愚か過ぎる質問は出来ない。だって彼女は神様だから。全知全能なる者だから。
 私の手の中にあるミルクティーの味付けが元居た世界の物と殆ど変わらなかったのも、つまりそういう事だ。何も言わなくても彼女は全てを理解し、把握する。それでも私がアリス・マーガトロイドであると告げたのは、ある種の意思表明みたいなものだ。これ以上、彼女に甘えてしまわない為の、自戒のようなものだ。
 でも、そんな事なんて関係ないと言わんばかりに、神綺は優しく、
「それにね、例え世界が違うとしても、私はアリスちゃんの事を大切に思うわ。アリスちゃんの世界に住む私が、貴女を想うように」
 それは無条件の許容。決して裏切らない愛情。まるで許しのような、大いなるものに包まれる感覚。
 彼女は馬鹿だ。甘過ぎる。もしそんな事で寝首を掛かれるような事態に陥ったらどうするのだろう?
 ……答えは解りきっている。その瞬間になったって、彼女は微笑むに違いないのだ。
 だから、だろうか。
 この世界に迷い込んで良かったと思ってしまった。他世界の存在だとしても、彼女に逢えて良かったと思ってしまった。
 いや、違う。本当は里で夢子の姿を見掛けた時から、こうなる事を望んでいたのだ。でも、不安と恐怖で素直になる事が出来なかった。
 心の奥底に仕舞いこんでいたものが、優しく修復されていく感覚。
 嗚呼、ここは何もかも違うけれど、何もかも同じだ。でも、胸に浮かんだ一言を告げる事は出来なくて、代わりにミルクティーを飲む。暖かくて優しくて、甘かった。

■ 

 ぼんやりと、まるで心地よい夢の中に居るような感覚を感じながら休んでいると、部屋に夢子がやって来た。
 神綺に『私はアリス・マーガトロイドである』と伝えた後、様子を見にやって来た夢子へと同じ説明をしたのが三十分ほど前。彼女も私を好意的に迎え入れてくれて、それがとても嬉しかった。
 その後、夢子は夕飯の支度をしてくると言って台所へと向かったのだけれど、どうやら何かあったらしい。彼女は何かを訴えるような視線を私と神綺に注いで来た。
 彼女にそんな表情をさせるのは、この状況を考えるに一人しか居ない。恐らくは夢子から情報が伝わり、私の元へ姿を現す気になったのだろう。夢子が何も言わないのは、もう既にここまでやって来ているからか。
 だから私は軽く身なりを整え、深呼吸をして心を落ち着かせ、テーブルの上で遊ばせていた人形達の居住まいを正せて相手を待つ。

 そして――彼女が現れた。

 漆黒のブラウスに紅のスカート。日に焼けていない白い肌はまるで人形のようで、しかしそれは紛れも無く自分自身だった。
「――初めまして、アリス」
「……初めまして、アリス・マーガトロイド」
 答える声も同じもの。だからこそ、そこに明らかな断絶があるのが良く解る。神綺から話を聞いて、その生まれ育ちが私のそれと殆ど同一だという事を知ったからこそ、それを強く実感した。
 彼女はあの戦いを経験していない。彼女はあの挫折を、後悔を、孤独を経験していない。彼女は『アリス』であり、アリス・マーガトロイドではない。その違いは大きく、同じ顔をしているのに相手の考えている事がまるで解らない。だからこそ、ある一つの感情が際立ってしまう。
 だから私達はまるで挨拶の延長のように、その言葉を口にした。
「「気持ち悪い」」
 自分と同じであり、しかし絶対に違う生物が目の前にいるという事実が何とも言えない嫌悪感を生み出して止らない。鏡を相手にするのとは違うからこそ生じる、どうしようもなさ。
 それでも同時に漏らした呟きは、互いの印象を少しだけ和らげる力を持っていたらしい。黒い少女へと視線を向け、私は自分が本調子に戻りつつある事を感じながら、
「素敵な黒い服ね。まるで似合って無いわ」
 思わず本音が出てしまった。そんな私の言葉に、アリスは哀れむような視線を向けてくると、
「あら、私にはそんな愛らしいドレスを着る神経が解らないわ」
「センスが無いのね」
 言い捨てる。すると彼女は、嘲笑うかのように冷笑を浮かべ、
「いつまでも人形を手放せないようなお子様がセンス? 笑わせるわね」
「道具で実力を推し量るような未熟者に言われたくないわ」
「甘えを棄て切れなかっただけでしょう? だからのこのこ現れて」
「あら、私がどこへ向かおうと勝手だわ」
「強がり?」
「引き籠もりよりマシね」
「研究に時間を費やせない半人前に言われたくはないわ。何、魔道書までしっかり抱えて。恥ずかしくないの?」
「自分の力を効率良く発揮する為のファクターを見下すなんて知識が無いのね。貴女こそ、恥ずかしくないの?」
 どうやらお互い性格も似通っているようだ。だとするなら、次のタイミングで彼女はこう言うだろう。
「「可愛げのない女」」
 だから同じタイミングで言い放つ。同時に、彼女に感じている嫌悪感は、即ち自分に感じているコンプレックスだという事に気付いて嫌になる。相手が鏡ではないからこそ、それが際立って見えてしまうのだ。それはアリスも同じだったのか、彼女は小さく咳払いをすると、
「まぁ良いわ。取り敢えず、家に来なさい。どうせ寝る場所も無いんでしょう?」
「……え?」
「……何、その間の抜けまくった返事は。もしかして、意外だった、とか言い出すんじゃないでしょうね」
「いや、その……」
 もしかしなくても意外だった。確実に拒絶されると思っていたのに。
 そんな私へとアリスは小さく溜め息を吐き、
「別に部屋を貸すぐらいの事なら構わないわ。――もしかして貴女、自分自身を部屋に招けないほど独りが好きなの?」
「……自分の胸に聞いてみなさい」
 畜生、一本取られた気分だ。それでも、寝床を確保出来たのは良かっ――
「え、アリスちゃんは私と一緒に寝るんじゃないの?」
「え?」 
「あ、アリスちゃんじゃなくて、アリスちゃんの方ね」
「いや、解らないから」
 黒い方に突っ込まれて、神綺がきょとんとする。それから漸く言葉が足りなかった事に気付いたのか、
「貴女」
 と、白い細く指で私を差し、優しく微笑んで、
「アリスちゃんの世界の私が……あと、その世界の魔界がどんな様子なのかお話して欲しくて」
 そんな事聞かなくても全て理解して把握しているだろうに。アリスがそんなような視線を一度神綺へと向け、そのまま私へと視線をずらし、
「……って言ってるけど、どうするの、『アリス』」
 アリスの言葉にはどうしようもなく棘がある。でも、刺さった棘は抜いてしまえば良いだけの話だ。
 別に断る理由も無いし、今晩は神綺を独占させてもらう事にした。



 夜の闇が広がる魔界の空の下をアリスと共に歩いていく。周囲には魔法による灯りが幾つも灯り、暗さを感じる事は無い。 
 結局、アリスも一緒に神綺の屋敷に泊まる事になった。とは言っても、屋敷には客人用の着替えなどが常備されていなかった為、私達はアリスの家へと就寝道具に取りに向かっていた。
「素直じゃないわね」
「……五月蝿い」
 つっけんどんに答えるアリスの頬は少し赤い。私と同じように、彼女も神綺に甘えたいのだろう。例え他人同士といえど、一応は同じ『アリス』だ。そのくらいは予測出来る。
 そうして少し急ぎ足のアリスに連れられてやって来た彼女の家は、私が幼い頃暮らしていた家に酷似していて、しかし所々相違点があるように見えた。
 奇妙な感慨深さを感じながら、敷居を跨ぐ。
 当然のように使用している家具は違っていたけれど、部屋の間取りに変化は無いらしく、私は懐かしさを感じながらアリスの自室へと入った。
「……へぇ」
 予想通りとはいえ、通された部屋の様子は私の自室と全く違っていた。人形遣いとしての力を磨いた私とは違い、アリスは道具を使わずに魔法や魔術を駆使するらしい。部屋の中には数多くの書籍が積み上げられ、机の上には実験用の道具が雑多に片付けられていた。
 それはどこか既視感を感じる風景。何だろうと思っていると、アリスがこちらを軽く睨みつつ、
「何?」
「別に。貴女にも蒐集癖があるのね、と思って」
 開いたスペースに取り敢えず積んでみた、と思われる魔道書やマジックアイテムの数々を見ながら告げると、アリスはほんの少し表情を和らげ、
「あら、貴女もなの?」
「ええ、私もなの。……まぁ、希少な本を手に入れても、すぐに魔理沙が――」
 と、その名前を口に出した瞬間気が付いた。この部屋の、『家主にはどこに何があるのか解っているけれど、他人から見たら散らかっているようにしか見えない』部屋の様相は、あの霧雨・魔理沙の部屋によく似ているのだ。
「……変なの」
 彼女が居ない世界なのに、よりにもよってアリスの――違う可能性を持った自分自身の部屋に魔理沙の影を見るなんて。
 変な話。だからちょっと、悲しくなった。
「変なのは貴女よ。それに、魔理沙って誰?」
「え? ……ああ、やっぱり貴女は知らないのね」
 アリスの言葉に、私は暗くなってしまった表情を見られぬよう、何気ない風を装って視線を逸らし、
「魔理沙っていうのは――」
 霧雨・魔理沙というのは、人間で、女の子で、金髪で、魔法使いで、ちょっと言葉遣いが男っぽくて、白黒な服装で、空を駆るその姿は一度見たら忘れられないくらいに輝いていて――そして、私の人生を変えた存在で。
「彼女と最初に出逢ったのはもう五年以上も前。その時は敵同士だったけどね」
「……敵?」
 聞きなれない単語を聞いたかのように聞き返してくるアリスに、私は小さく頷き、
「……当時、私の住んでいた世界である事件――というか、戦いがあったの」
 切っ掛けは、旅行会社が勝手に組んだツアーだった。
 観光目的であった筈のそれは、しかし人間界側からすれば――いや、妖怪退治を行っている巫女から見れば、魔界からコンスタントに魔物が送られてきているようなものだった。
 巫女はその原因を突き止める為に動き出し、更には魔法使いや悪霊、妖怪までもが魔界へとやって来た。私は防衛の為に彼女達と戦い……最終的には魔界神までもを巻き込んだその戦いは、魔界側の敗北に終わった。神である神綺ですら、彼女達には敵わなかったのだ。
 当然、私も負けてしまった。でも、幼かった私は諦める事が出来なくて、 
「究極の魔法が記された魔道書を持って彼女達に再戦を挑んだの。けど、それを使っても私は彼女達に勝つ事が出来なくて、その上その魔道書すら奪われて……。そうして私は、全力を出す事を止めるようになった」
 別にここまで言う必要は無かったかな。そう思いながらも、「ともかく、それが魔理沙との出逢いね」そう言葉を切った私へと、アリスは不可思議そうな顔をして、 
「魔理沙って相手については解ったけれど……なによ、その『全力を出す事を止めるようになった』って。全力で戦わなかったら、勝てる勝負にも勝てなくなってしまうじゃない」
「違う、そういう意味じゃないわ。相手の力量を判断して、無茶をしないというだけの話よ。それに……もし全力を出して負けてしまったら、今度こそ本当に後が無くなってしまうじゃない。大切な魔道書と故郷、それに家族を失って、私はそれに気付いたの」
「故郷と、家族も?」
 どういう事? そう聞いてくるアリスへと、
「私が幻想郷へとリベンジに出ている間に、魔界へと続く洞窟を封印されてしまったの。だから今の私は、魔界で暮らしている訳ではないのよ」
 そう、出来るだけ普通に答えたつもりだったけれど、どうやら上手く表情を作れていなかったらしい。
 アリスはばつが悪そうに、
「……ごめんなさい、不躾な事を聞いたわ」
 そう言って彼女はベッドに腰掛けると、「貴女も座りなさいよ」と小さく呟いてから、少し躊躇いがちに、
「……答えたくなかったら別に良いけど……その、自分の家に戻れなくなった気分って、どんな感じだったの?」
 アリスの言葉を聞きながら、床に積まれた魔道書を少し片付け、出来たスペースに座る。そうして見上げた先にある窓からは、魔界の暗い空が見えた。
 まるで、 
「まるでこの魔界の空のような、真っ暗な穴に突き落とされたような感じだったわ。右も左も何もかもが解らなくなって、暫くの間、目の前の現実を受け入れる事が出来なかった」
 まだ幼かった私には、幻想郷で生きて行く術が解らなかった。その当時には既に食べなくても死なない体にはなっていたけれど、人間であった頃の常識はそう簡単には抜けてくれない。喉は渇きを覚えて、腹は空腹に鳴いて、体を動かす力すら出なくなった。
 そんな時、唯一話し相手になってくれたのは――話し相手としたのは、神綺から貰った二体の人形だった。
 負け続きでボロボロになったそれを心の支えにして、ぽっかりと開いた心を持ちながら日々を暮らしていくしかなかったのだ。
「当然、魔界への道を再び開けようと、毎日のように神社に向かったわ。でも、どうやっても、どんなに繰り返しても、その封印を壊す事が出来なかった」
 もしかしたら今の自分なら――とは思うけれど、過去の私にはそこまでの力がなかった。究極の魔道書があれば、と何度も何度も思って、それを失ったのは自分の責任だという事に気付いて悲しくなった。
 でも、それを奪った相手を恨む事はなかった。自分の力が及ばなかったにも拘らず、それを棚に上げて相手を恨むというのは、愚か者がする事だと理解していたから。
「そうして時間が過ぎて行って、強過ぎる絶望は諦めへと変化していったわ。もう幻想郷で暮らしていくしかないって、認めるしかなかったの」
 そして私はアリス・マーガトロイドと名乗り始めた。言うなればそれは、新しい生活を始める為の儀式のようなものだった。魔界で幸せに暮らしていた『アリス』にはもう戻れないのだと、自分自身に認めさせる為の。
「幻想郷の暮らしは、蓋を開けてみればそこまで辛いものじゃあ無かった。いつの間にか私はそれに順応して……アリス・マーガトロイドとしての生活が日常になった頃には、知り合いや友人も出来て、幻想郷での暮らしが当たり前になっていた」
 でも、だからこそ、故郷がどんどんと記憶の産物になっていく事が辛かった。悲しかった。戻れないと理解していても、胸の痛みだけは続いた。
 容赦無く過ぎていく時間の中、私はそれらを必死に抑え込み続け、胸の奥に仕舞いこんでどうにか鍵をした。
 アリス・マーガトロイドとして、明日も笑えるように。
 だから、
「だから、本当はここに来る予定じゃなかった。世界が違う以上、ここは私が知る魔界じゃないし……ここに来れば、胸が痛むのは目に見えていたから」
「……」
 それなのに、私は魔界へと足を運んでしまった。その結果夢子に出逢い、そして神綺に抱き締められて――胸の奥に掛けていた鍵は呆気なく壊れ、更には受け入れられてしまった。偽者だと呼ばれる事も無く、非難される事も無く、『アリス』として。
 アリス・マーガトロイドとして受け入れられたのなら、まだマシだったかもしれない。でも、今、私は『アリス』としてこの魔界に居る。
 だからもう、元の世界に戻ったところで、待っているのは苦痛だけ。魔界には戻れず、神綺にも逢えないという、どうしようもない現実だけがある。
「……私は馬鹿ね」
 呟きは小さく消えて、後には何も残らない。こんな話は今まで誰にもした事が無かったから、余計にそれを感じた。
 と、部屋に充満してしまった暗い空気を払拭するように、アリスが強い意志のある瞳を私に向け、
「でも、封印されただけで、魔界への道は残っているんでしょう?」
「それは……そうだけれど」
 だったら。彼女はそう強く言う。
「だったら、どうしてそんな暗い顔をしているのよ。もし私が貴女と同じ状況に陥ったとしたら、絶対に諦めたりしないわ。それを成し得る力が、この体にあると信じているもの」
「成し得る、力……」 
 魔法。
 アリスは言葉を続ける。
「過去に挑戦した時には無理だった。でも、今の貴女ならどう? 例え今の貴女にも無理だったとしても、未来の貴女ならそれを可能に出来るかもしれない。
 魔法の鍛練に終わりは無いわ。日々を積み重ねていけば、過去に起こせなかった奇跡を生み出す事だって出来る。だから私は生きている限り諦めず、抗い続けるわ。ここでの生活が、家族が、何よりも大切だもの」
 強く、言い切る。
 自分と同じ顔で、同じ声を持つ存在が、自分が諦めた事を諦めないと断言する。
 それは何よりも強く、自分自身の言葉よりも確かに心を打った。
「……そうね。まだ、私は生きているんだものね」
 なんだか、憑き物が落ちたような気分だ。たった一言でこんなにも気の持ちようが変化するとは思わなかった。
 そうだ。まだ私は生きている。幼かった私が無理だった事でも、今の私になら出来るという事は沢山ある。
 アリスの言う通りだ。もしあの封印を今の私が解く事が出来なかったとしても、更に未来の自分なら不可能では無いかもしれない。
 下がり気味だったテンションが再び上昇するのが解る。「ありがとう」とアリスに告げると、彼女は少し照れたように視線を外しつつ、
「……で、やる気が出たのは良いけど、どうやって元の世界に帰るつもり?」 
「それは、その……まだ、考えて無い」 
 里を出て、夢幻館を見て、そこから誘われるように魔界へとやって来てしまった為に、その方法を模索してすらいなかった。
 なので、少し考えてみた。
「確実に世界を越え、的確に元の世界へと戻る方法、か……」
 魔法による転移を行うにしても、そう簡単にぽんぽん成功するようだったら、今頃他世界からの住民がごまんと押し寄せているだろう。しかし、そういった状況になっていないという事は、それがどこまでも不可能に近い事を意味する。例え魔界に住む魔法使いや神様である神綺の手を借りたとしても、絶対に戻れるという保証はないだろう。本来世界は一つで完結するものであり、他からは不可侵であるものなのだから。
 八雲・紫のように世界と世界の境界を操る事が出来るのならば別だろうけれど、私にはそんな力は無いし―― 
「――って、紫よ!」
 そうだ、紫だ。八雲・紫が居るじゃないか。
 そもそも私は彼女のスキマに飲まれてこの世界にやって来たのだ。彼女の力を持ってすれば、確実に世界を越え、的確に元の世界へと戻る事が出来るだろう。
 と、名案とばかりに叫んだ私に、しかしアリスはかなり怪訝そうな顔で、
「紫って、誰? ……もしかして、あの八雲・紫?」
「そうよ。って、彼女はこの世界にも存在しているのね?」
「まぁ、してるけど……貴女、あんなのと知り合いなの?」
 嫌なものを見た、と言わんばかりの表情でアリスが告げる。どうやらこの世界の彼女はあまり良く思われていないらしい。……まぁ、私の世界の八雲・紫が良く思われているかと問われれば、首を捻る所でもあるのだけれど。
 でもまぁ、それでも彼女の事は嫌いじゃないから、アリスの言葉に頷き返しつつ、少し嫌な気分になった。一緒にお酒を飲んで、同じ皿の肴を食べて、他愛の無い話をするぐらいの関係ではある以上、あんなの呼ばわりは無いと思ったからだ。
 それに八雲・紫はどんな妖怪よりも聡明だ。詳しい事情を説明すれば、何も知らない状況からでも理解を働かせてくれるだろう。
 けれど、理解してくれたとしても、協力してくれるかどうかは別問題だ。

 何せこの世界の彼女は、私の事を知らないのだから。
 

4
 
 そうして、気付けば三週間程経っていた。
「ここは居心地が良過ぎるのよ!」
 神綺の書斎から借りてきた本をテーブルの上に置きながら、誰にとも無く愚痴る。すると、部屋に戻ってきたアリスが明らかに呆れのある溜め息を吐き、
「何その言い訳」
「……五月蝿い」
 アリスが淹れてくれた珈琲を受け取り、少し濃い目のそれを飲みながら椅子に腰掛けた。
 そう、居心地が良いのだ。多少の変化はあれど魔界の空気は元居た世界と同じものだし、住民達からも好意的に受け入れられていて、生活に不便は無い。
 そして何より、魔界は魔法のメッカだ。今までに様々な書籍や魔道書を読み、多種多様な魔法や魔術、妖術、奇術、その他諸々を見てきたけれど、やはりこの場所にある知識の量は規模が違う。そして、その質も違う。
 幻想郷にある魔法は、様々な魔法系統が混ざり合った複雑なものだ。例えば、水の精霊であるウンディーネを呼び出せる癖に、火の魔法を使う際にサラマンダーを呼び出さず、火神アグニの力を借りる魔女が居たりするように。
 しかし、魔界の魔法は違う。他の魔法系統を受け入れる事無く、延々と受け継がれ、幾千幾億の淘汰と進化を経て成り立った一つの系統だ。私の人形操作術もその魔法技術があった故に得られたもの。つまり私は、長い長い時間を重ねて生み出された魔法の最先端に居る事になる。
 そして世界が違うという事は、その最先端も違ったものになっている事を意味する。私は新たな知識を得る為、魔道書の解読や読書に没頭し、『気が付いたらいつの間にか一日が終わっている』という生活を続けてしまっていた。人間の頃と時間の感覚が違ってきているのもそれに拍車を掛けたらしい。
 とはいえ、ただそれだけに時間を使っていた訳ではない。
 この世界の八雲・紫についての情報収集を行い、それを踏まえた上での交渉方法の模索は当然の事、交渉が失敗してしまった時の為に他世界転移魔法の情報も掻き集め、更には第三、第四の方法も探し始めていた。
 でも、どれだけ方法を模索したところで、私は紫の力を知ってしまっている。彼女が頷いてくれれば大丈夫だろうと、無意識に思ってしまっている。だから確実に、私は彼女の力を頼ってしまうだろう。一度断られようと、十度断られようと、百度断られようと……頼ろうとしてしまうだろう。理由は簡単だ。便利な道具があれば、人は怠惰を覚える。それだけの話。例え他に方法があっても、命を落とす可能性があっては意味が無い。意味が無いのだ――なんて事を考えて、『嗚呼、自分はこんなにも弱くなってしまったのか』、と思いっきり凹んで逃げるように読書に没頭して時間を浪費する事三週間、でもあった。何やってんだろう。
 それ以外には、神綺と過ごす時間が多かった。私から彼女の元へ行く事と、彼女が私の所へやって来るのと、どちらが多かったのかは解らないけれど、時間があれば彼女と過ごした。
 そう、過ごしていただけ。話をしている時間よりも、一緒の時間を過ごしている事が多かった。凹みながら本を読んでいる時も、食事の時も、時には寝る時にさえ。
 過去を共有していない以上、初日の夜に語った事以外に話す事は無くて、でも話し始めれば自然に言葉は続いて、二人きりでいても緊張する事も違和感を感じる事も無くて。まるでそれが普通であるかのように、当たり前であるかのように時間を過ごす事が出来ていた。まるで、存在しない過去を積み重ねていくかのように、自然に時間を消費した。
 私はそれが心地よくて、自分と彼女との間に何の繋がりも無いという事実を忘れそうに――いや、時には忘れていた。
 神綺と二人で居る時や、アリスや夢子達と過ごしている時、私はその事実を忘れていた。意識的にではなく、完全に無意識に。
 ある日、独り暮らしの間に鍛えた料理の腕を披露して、神綺やアリスを驚かせた。
 ある日、魔道書に記された魔法の解釈についてアリスと口論して、夢子に止められ、ケンカは駄目だと怒られた。
 ある日、アリスと魔法を競い合って、家を一軒吹き飛ばしかけた。
 ある日、神綺と買い物に出かけて、アリスと間違われ続けて、訂正する度に驚かれた。
 ある日、アリスと服を交換して、でも神綺は全く騙されなくて、逆に驚かされた。
 ある日、ある日、ある日――思い返してみれば、読書以外にも色々やっていた。
 そういった時、私は『アリス』になっていた。
 夢が叶った気がしたのだ。
 過去を取り戻した気がしたのだ。
 費やした時間の分だけ、元の世界に戻った時の反動が大きくなる事は解っているのに。
 それでも、まぁ、なんというか、
「……得たものは沢山あったし」
 そうやって自分に言い聞かせるように呟いていると、テーブルを挟んで対面に腰掛けていたアリスが私へと鋭い視線を向け、
「あらそう。じゃあ、私の部屋から持っていった魔道書は置いていきなさいね」
「あら、気付いてたの」
「当たり前よ。自分の部屋から物が無くなれば誰だって気付くわ」
「良いじゃない、一冊ぐらい」
「馬鹿言わないで。戻ってくる当ても無いのに」
「それは大丈夫よ」
 だって、
「『死ぬまで借りておくだけ』だから」
 言ってから驚いた。
 何言ってんだ私。
「何言ってんのアンタ」
「……なんだろうね」
 沢山の選択肢の一つに、このまま甘え続け、この世界の住人になってしまう、というものもある。何せ魔界の神様がOKを出しているのだから。
 正直、その誘いは魅力的過ぎた。だってここには、失った私の全てが――例え細部が違ったとしても、存在しているのだから。
 でも、どれだけそれが魅力的でも……ここは私が生まれ育った世界ではないのだ。どれだけ懐かしくても、どれだけ愛しくても、全て別物でしかない。そもそも誘いが魅力的に思えるのも、奇跡的に受け入れて貰えたからこそで、これは本来想定外の出来事だったのだ。
 まぁ、それが言い訳だという事には気付いているのだけれど。
 例え他人同士だろうと『家族』になれる。『親子』にだって、なれる。そんな事、初めから解っていた事だ。けれど、もう二度とあの孤独を味わいたくない私は、もう独りに戻りたくなかった私は、それを受け入れたくなかっただけなのだ。
 だからこうして、目の前の現実から逃避するように時間を費やした。元の世界へと戻る選択を行えば、待っているのが苦痛だけだと解っているから。
 嗚呼、本当に私は弱くなってしまった。この世界に迷い込んだ当初は、『こんな程度の状況、自分で解決してみせる』と息巻いていたぐらいだったのに。
 でも、
 でも。
 霧雨・魔理沙を思い出した。
 彼女が居ないともう一度気付き直した。
 あの、魔法の森で味わった絶望がフラッシュバックした。
 嗚呼。
 アイツは、こんな所でまで、私を苦しめるのか――
「――なんて、ね」
 悔しいけれど、魔理沙が居ない世界は少し静かで、物足りないのだ。彼女の言葉が自然に出てきた瞬間、それに気付いた。実感した。良くも悪くも、その影響力が大きいという事を再確認した気分だ。
 それこそ、腐れ縁という奴か。
 だから、出来るとか出来ないとかそういったもの関係無しに、
「帰ろう」
 そう思えた。



「――だから、私は私の居るべき世界に帰る事にする」
 数日後、元の世界へと戻る為の準備を整えた私は、神綺の屋敷へと足を運んでいた。
 夢子達にはもう別れを済ませて、最後に訪れたのが彼女の所だった。いっそ何も言わずに行ってしまおうかとも思ったけれど、やっぱりそんな事は出来なくて、最後の別れを告げに来た。
 溢れそうになる感情を必死に抑えて、決意を告げる。
 私を『アリス』として受け入れてくれた魔界の神様は、突然の言葉に悲しそうに表情を曇らせ、
「そう……」
 と小さく呟いた。彼女にそんな表情をさせたくはなかったけれど、もう決めた事だ。決めていた事だ。私は、この世界に居続ける事は無い。
 そんな私へと、神綺はどうにか微笑んで、
「アリスちゃんがそう決めたのなら、私は止めないわ」
「ごめんなさい……。そして、ありがとう。貴女に逢えて、本当に良かった」
 違う世界に迷い込んで、それでも私という存在を受け止めてくれる人が居てくれた事は大きかった。もしあのまま一人さ迷い続ける事になれば、ここまでの精神的な余裕を取り戻す事は出来なかっただろう。
 心の余裕。それが無ければ八雲・紫相手に頼み事をすることなんて出来ない。彼女は気紛れな妖怪の一人で、誰にでも手を差し伸べてくれる神様ではないのだから。
 そんな風に思って、ふと、幻想郷に新しい神様がやって来た事を思い出す。八百万に何人プラスしようと変わりない、という認識でしかなかった私には何の変化もないけれど、例えば霊夢にとっては神社の集客が増えたり、山の妖怪にとっては神徳を授かったりと、大きく変化が起こっている。
 その違いは恐らく信仰の有無があるのだろう。でも、これからもこの先も、私は幻想郷の神々に信仰を捧げる事はないだろう。私が信じる『神様』は、ただ一人だけなのだから。
「じゃあ、『いってらっしゃい』、アリスちゃん」
 最後の抱擁と共に、浮かぶ涙を拭う事もせずに神綺が言う。
 それは別れの言葉ではなく再開の言葉だった。だから、抑えていた筈の涙が勝手に浮かんできてしまって、それを誤魔化すように強く抱き返す。愛しい人と離れる事への本能的な『嫌さ』が一気に膨れ上がって、無意識に抱き締める腕に力が籠った。
 嗚呼、私はこの人の愛情を裏切るのだ。彼女にとって私は『アリス』であって――『神綺』の娘なのであって、そこに世界の違いなど関係無い。神綺の言葉を聞いて、それを今更ながらに思い知った。
 私は馬鹿だ。これが最後だなんてどうして思ってしまったのだろう。
 神綺にとって、私は元の世界へ帰る訳じゃない。ただ、外へと出掛けて来るだけなのだ。私がそう思っていなかったとしても、彼女はそう信じて、私を送り出そうとしてくれている。
 その優しさを、愛情を一心に受けた今……もう彼女達に、『神綺』に違いなんて無くなった。
 だから、告げる言葉は一つ。
「……いってきます、『お母さん』」
「うん……。気を付けてね、アリスちゃん」
 優しく、言葉は続く。
 
「私は――私達は、貴方の帰りを待っているから」



 ゆっくりと、幻想郷へと向けて歩を進めていく。
 遠ざかっていく魔界に想いを馳せつつ、一歩先を行くアリスの姿をそれとなく眺めていると、私の視線に気付いたのか、彼女は不思議そうに、
「何?」
「え、あ……その、見送りに出て来てくれるとは思わなかったから」
 真っ白になっていた頭を動かし、少し動揺しながら言葉を返す。そんな私へと小さく苦笑してから、アリスは足を止めて振り返り、
「別に深い意味なんて無いわ。ただ――」
 少し、悲しそうに微笑み、
「これは別れじゃないんでしょう? でも、すぐには戻って来られないだろうし……私が相手なら、変に感傷的になる事も無いと思って」
「……確かに、そうね」
 この世界に再び戻る事がどれ程難しいか、私もアリスも理解している。八雲・紫のような特殊な力を持っている訳ではない私にとって、他世界へと渡る事は、生涯成し得られるかどうか解らない程に難しいのだ。でも、それを不可能だとは思わなかった。
 神綺達がそれを望んでくれていて、私もそれを望んでいるのだ。出来ないとは決して言わない。言わせない。確実に世界を越え、またここに戻ってくる。
 その為にも、私は元の世界でやらなければならない事がある。何よりも大切なものを取り戻す為に。
 だからこそ、私は戻る。望まずともやって来てしまったこの世界で得たものを、無駄にしない為に。
 それにこれは別れではないのだから――淋しくて辛く、悲しくて苦しいけれど――笑顔を浮かべた。
「ありがとう、アリス」
「別に気にしなくていいわ。もし逆の状況だったら、貴女もそうしたでしょう? アリス・マーガトロイド」
 歩き出しながら、アリスが告げる。
 逆の状況。私が魔界に居て、アリスが他世界からやって来て。色々あって――『家族』になって。
 アリスとも長い時間を共有した。色んな事を話して、口論して、でもすぐに和解して。双子とはこんな感じだろうかと、そんな風に思った事もあった。
 そのくらい私達は似ていて、違っていて、同じだった。
「……確かに、私も同じ事をしていたに違いないわ」
 そう答えてから、今更のように、アリスに嫌悪感を感じていた時期があった事を思い出した。
 私と様々な点が違っているといっても、その本質は同じもの。自分という存在を心の底から嫌悪している訳では無い以上、こうなるのも必然だったのかもしれない。
 いや、違うか。赤の他人だなんて思っていたぐらいなのに、この三週間という時間の中で、そう思える程に心情が変化したという事だ。三週間前の私がそれを望んでいたのか否かは判らないけれど、決して悪い変化じゃないと思えた。
 そして、決して短くない道を二人で歩き、外へと出た。
 鉛色の雲に覆われた空は暗く、吹き抜ける風は皮膚を裂くように冷たい。この三週間程で、冬は一気に進んだようだった。
 今から一緒にレティを殴りにいこうかしらねぇ、なんて話ながら境内を進んでいくと、以前と同じように掃き掃除をしている巫女と出くわした。
「あら――って、アンタ、双子だったの?」
「違うわ」
 アリスが言葉を返す。そのつっけんどんな態度を見るに、あまり仲良しという訳でもないらしい。
 取り敢えず、巫女をどう呼べば良いか迷って……結局当たり障りの無い、だからこそ妙にも感じる名称で呼んだ。
「あの、博麗の巫女さん」
「何?」
「八雲・紫の居場所を教えてくれないかしら」
「……紫の?」
 良かった、どうやらこちらの世界でも巫女と紫に関係はあったようだ。と、安堵を得る私を他所に、巫女はあっさりと、
「残念だけど、アイツの居場所なんて知らないわ。必要な時には居なくて、不必要な時には居るようなヤツなんだから」
 と、そもそも興味が無い、といった風に教えてくれた。
 てっきり知っているかと思っていたのに、少し拍子抜けした感じだ。霊夢にも直接聞いた事は無かったけれど、もしかしたら彼女も知らないのかもしれない。
 さて、どうしようか。
 私の知る中で、霊夢以外に紫と知り合いだと思われるのは幽々子と阿求ぐらいだ。冥界に行けるかは解らないから、取り敢えず次は里に向かって阿求に話を聞こう。もし逢う事が叶わないなら慧音を頼る。それでも駄目なら――
 と、色々と考えつつ、もしかしたら今日は神社にやってくるかもしれないし、私はアリスと一緒に少し待つ事にした。
 巫女に一言断って、住居の縁側に腰掛ける。流石に中へ入り込んでコタツに入ろうとは思わなかった。寒いけれど、これでも妖怪だ。季節変化による気温の上下ぐらいならどうにでも出来る。
 しかし、待ち時間を一瞬で消費する事なんて出来る訳が無く、アリスと取り留めのない話を始め――暫くすると巫女が見回りに行き、アリスと二人きりになった。
 神妙な空気を持つ境内で、自然に会話は消えて行って、いつの間にか無言になる。
 そのまま、まるで変化の無いように見える博麗神社境内を眺め……一体この三週間の間に何回宴会が開かれたのかしら、なんて思って、
「そういえば、萃香は居ないのね」
 神社に居付いた酒飲みの姿が見えず、思わず口に出た。するとアリスは不思議そうに、
「誰?」
「あれ、アリスは知らないのか。となると、この世界に彼女は居ないのかしら」
 もし居たとしたら魔界の住民だろうと関係なく萃めようとするに違いないから、幻想郷にやって来ていない可能性が高いのかもしれない。
 萃香の事だ。どこか見知らぬ場所で今も酒盛りをしているのだろう、きっと。
 そんな風に思いつつ、説明を始める事にする。
「えっとね、萃香っていうのは――」
 その刹那、何の前触れも無く、
「――私の古い友人よ。でも、どうして貴女がそれを知っているのかしら」
 瞬きの間に、八雲・紫が現れていた。
 紫色のドレスに卍傘を差し、スキマから上半身だけをのぞかせている彼女の表情はこちらを試すようで、その真意は伺えない。現れたこのタイミングが偶然なのか作為なのかも解らない。そもそも彼女の真意を見抜くなんて不可能だ。だから出来るだけ驚きを隠し、隣で驚いているアリスを制して事実を話す事にした。
「彼女と知り合い――というか、定期的に宴会に巻き込まれるからよ」
「嘘」
「嘘じゃないわ。萃香。伊吹・萃香。彼女の力は密と疎を操る力。百鬼夜行を生み出す鬼の力。身長は私より低くて、角が二本。酒飲みの宴会好きで、酔ってない時が無いぐらいで、その上中身の減らない瓢箪を持っていて――」
 みるみる内に、紫の表情が変化する。
 純粋に驚いているのだろう彼女を見るのは初めてかもしれないと思いながら、私は萃香について知りうる限りの情報を全て提示していく。この世界の萃香との相違点がどれ程のものか解らないけれど、それを勘繰っていたら話が進まない。私とアリスのように、殆ど違いはないと信じながら話し続け、
「――とまぁ、こんな感じかしら。信じてもらえた? あと、一応貴女の事も知っているから、八雲・紫についても少しは説明出来るけど」
「いえ、良いわ。それよりも……貴女は一体何者なの?」
 戸惑いと、そしてそれ以上に強い疑いの色を持つ表情で聞いてくる紫へと、私は気圧されないように注意しながら、
「私はアリス・マーガトロイド。こことは違う幻想郷から、この世界に迷い込んでしまったの」
「……外からやって来たのではなく?」
「ええ、そうよ。でも、それは自分の意思じゃなくて、事故に巻き込まれた結果なのよ。だから、私には帰りたくても帰る手段が無い。一応方法はあるけれど、確実に戻れる保障がまるで無い」
 まぁ、出来ないとは言わないけどね。
「でも貴女なら、貴女の力なら、それが可能な筈。境界を操る、その力なら」
「……」
「私は貴女の力を借りたいの。元の世界に帰る為に」
 私の言葉に一瞬だけ逡巡した後、紫はスキマから完全に姿を現しながら、
「貴女が萃香を知っていた事は認めるわ。でも、だからといって、私が力を貸す理由にはならない。貴女の知る八雲・紫がどんな存在であれ、私が貴女と逢うのは今日が初めてだもの。無理を言わないで」
 それは当然の話だ。だから、どうにか説得を始めようとして――私が考えを纏める前に、アリスが口を開いていた。
「待ちなさい」
「何かしら」
「貴女にはそれを為し得る力があるんでしょう? なら、力を貸してあげれば良いじゃない」
 射抜くような視線を向けながら告げるアリスに対し、紫は表情を変える事無く、
「――幻想郷に災厄を招く種になるかもしれないのに?」
「……なんですって?」
 そうだ、その通りだ。紫からしてみれば、私の世界に居る八雲・紫が他世界への侵略を目論んでいる可能性も考慮しなければいけないのだ。私は斥候として、こちらの世界に送り込まれた人材なのかもしれないのだから。
 でも、そんな事は有り得ない。貴女が幻想郷を愛するように、私の知る紫も幻想郷を愛しているのだから。
 そう伝えようとするよりも早く、紫が言葉を紡ぐ。
「それに、魔界の住民を信じろというのも、無理な話。アリス、それは貴女も解っている事でしょう?」
「ッ!」
 アリスの頬に朱が差す。それは魔界の住民を少なからず危険視しているという事。あの暖かな世界を否定しているという事だ。
 一応は予測していた状況ではあったけれど、どうしようもない怒りが込み上げて止まらない。その瞬間、アリスは紫へと動き出していて――彼女を止めなければいけないのに、その判断が遅れてしまった。
 だから、
「私達を理解しようともしない癖に!」
「アリス!」
 制止の声は届かず、戦いの始まりを告げるように、アリスが魔法を発動させてしまった。
 冷え切っていた周囲の温度が更に下がり、一瞬で生み出された氷弾が紫を包囲するように展開し、増殖を繰り返しながら高速で放たれる。しかし紫はそれを踊るように回避しながら、何気ない動作で私達へと光を放った。
 それはあらぬ場所から放たれる無限の超高速飛行体。明らかにこちらを殺す勢いで生み出されたそれはまるで豪雨のよう。暗黒色の光が、一瞬にして視界を埋め尽くしていく。
「ッ!」
 もし断られたらもう一度頼み込みに来よう、なんて気持ちは一瞬で吹っ飛んだ。高速で飛来するそれを紙一重で回避しながら、詠唱へと入るアリスを守護するように人形を飛ばす。到底防ぎ切れる数ではないけれど、無いよりはマシだ。続くように予備の人形を周囲に配置しようとして――こちらからは攻撃出来ない事に気付いた。
 魔界を侮辱するようなあの態度には怒りを感じるけれど、だからといってアリスの攻撃を手伝えば、八雲・紫の力を借りようとしている自分の立場が危うくなる。自己の利益だけを考えたくは無いけれど、彼女の力は何よりも強く確実なのだ。耐えるしかない。
 でも、黒衣のアリスは違った。激昂してしまったのだろう彼女は盾による防御で生まれた時間を使い自身の魔法を発動させ、直後背後に現れた紫へと蹴りを放つ。紫はそれを手にした傘で軽く防ぎ、アリスの顔面へと向け魔法陣を展開。その魔方陣を打ち消そうとアリスが腕を上げた瞬間、横薙ぎに傘が振るわれた。人形達の盾は呆気なく打ち壊され、その一撃がアリスの細い体を捉えようとした瞬間、紫が立っていた場所へと火柱が吹き上がった。それが先程アリスが発動させた魔法なのだと気付いた時、視界一面に傘が開いていた。
「しまッ――」
 車輪のように高速回転する卍傘に吹き飛ばされ、息が止まる。それでもどうにか体勢を戻そうとした瞬間、九尾の狐の追撃が来た。
 そういえば式神が居たんだっけ。そんな事を今更ながらに思い出しながら、境内に植わっている大木へと激突した。
 痛い。凄く痛い。
「アリス?!」
 遠く、アリスの上げた悲痛な声が聞こえた。全く、私を心配する余裕なんてないだろうに。なんたって相手はあの八雲・紫なのだから。
 でもまぁ、このまま殺される訳にもいかない。咄嗟に受身を取る事が出来た自分を褒めつつ体を起こし――上空に気配。反射的に盾で防御するも、硬質な音と共に盾が破壊され、成す術も無く三体の人形が消し炭へと変わる。
 不味い。
 そのまま転がるようにしてどうにか距離を取り、しかし、停止した体を狙うように再び八雲・藍が現れる。高速回転する彼女の一撃を既の所で回避すると、彼女はそのままスキマに消えず、私へと向けて大量のクナイを投擲してきた。刺さったらただでは済まないそれに血の気が引くのを感じながら、残り少ない人形達に盾を展開させつつ必死に逃げ回り――
「橙」
 嗚呼、こっちの世界でも八雲一家は揃っているのか。
 刹那、鬼神の一撃が人形達を消し飛ばし、私の身体を容赦なく打ち付ける。一瞬の浮遊感と共に体が舞い上がり――次の瞬間、まるで蝿でも叩くかのように下方向への加速が追加された。
「――ッ」
 衝撃に声も出ない。一応これでも妖怪をやっている以上、物理的な衝撃にはある程度強いけれど、如何せん相手が悪過ぎる。
 どうしよう、左腕の感覚が無い。繋がってはいるのだろうけれど、もし無くなっていたら最悪だ。人形を作るのに倍の時間が掛かってしまう。嗚呼、最悪だ。
 でも、まだ死んではいないから、立ち上がる。  
 息を整える。一応左腕は有ったけれど、次の瞬間には消えてしまいそうなほど攻撃に容赦が無い。どうしようもない。誰だよ八雲・紫に協力を頼むとか言い出したのは。
 私か。
 でも、このままじゃあ本当に不味い。魔法で防壁を生み出すにしたって、呪文を唱え上げる余裕すら無い。人形達の数も少なく、しかもこちらから積極的に攻撃する事は出来ない。もしスペルカードを使うにしたって、これじゃあカード宣言も何も――
「って、別に宣言する必要は無いわよね」
 気を抜いた瞬間には首が飛ぶ。心臓が止まる。存在が消滅する。そんな状況下で悠長に宣言なんてしていたら、命が幾つあっても足りやしない。
 でも、それでも、普段はそれが当たり前で――って、そうだ。それが当たり前だったのだ。私の場合は、私達の世界の場合は。
 なんだ、あるじゃないか。この状況で、私の世界がこの世界を脅かすものではないと示す方法が一つだけ。信じて貰えるかは解らないけれど、それでも行わない訳にはいかない。殺されてしまってからじゃあ、何もかもが遅いのだから。
 そうして、懐から一枚のカードを取り出した瞬間、
「やはり、信じる事なんて出来ないわね」
 アリスが放つ魔法を回避しながら、しかし私をしっかりと見て紫が言う。
 それは当然の事だろう。そもそも信頼の値が低く、突然攻撃までされてしまえば、信じろというのが無理な話だ。それでも、私はここで諦める訳にはいかない。
 だから、言葉を放つ。
「――いいえ、信じてもらうわ」
 貴女達の戦いとは違う、私達の世界に存在するルールを持って。

 さぁ、『弾幕ごっこ』を始めよう。


 
 操る糸は複雑な意図。
 繰り出す攻撃は七色の光劇(こうげき)。
 魔彩光に染まるステージの上、吊られた人形達が動き出す。
 踊れ、
「蓬莱人形」
 光を、放つ。 
 途端、紫が驚きを浮かべた。そこにあるのは困惑の色。何故こんな攻撃を行うのかと、彼女はそう考えているに違いない。その困惑はアリスも同様のようで、『何やってるの?!』と言わんばかりの顔をしている。そんな彼女に大丈夫だと笑みを浮かべて、くるりと廻りながら光を操る。
 打ち付けた部位は痛むけれど、それ以上に懐かしさを感じる。三週間という時間は思っていた以上に長かったみたいだ。そんな風に思いながら、相手を倒そうとする目的が低く、当たっても然程痛くない、煌びやかで美しい弾幕を生み出していく。
 そうして六十秒にも満たないダンスが終わり、一瞬にして弾幕は消え失せる。残された私は、静まり返った境内の中で言葉を紡ぐ。 
「これが私の世界にある『ルール』よ。貴女達とは違って、私達の勝負はスポーツのようなものなの。そしてこれは、博麗の巫女と共に妖怪達が定めたもの。そんな世界の住民が、この世界に悪影響を与えると思う?」
 まぁ、実際にはこれが幻想郷の勝負の全てではないけれど、そこまで告げる必要は無い。紫ならそのぐらいの事は予測出来てしまうだろう。
 でも、これは証明出来る事では無いけれど、私達が他世界に悪影響を与えられる訳がないのだ。何せあの幻想郷には『勘』なんてもので異変を解決してしまう巫女さんが居るのだから。
 とはいえ、心の中を相手に伝える魔法を知らない以上、これは賭けだ。もしスペルカードルールを、弾幕ごっこというものを否定されたら、現状を好転させるような手段が無くなる事になる。祈るような気持ちで、しかしそれを表面に出さないように毅然と立ちながら、紫の言葉を待つ。
 彼女は困惑の残る表情のまま、私へと一歩近付くと、
「……その札を貸してもらえる?」
 差し出された手へと、少し警戒しつつもスペルカードを手渡す。私には当たり前のものでも、彼女には初めて見るものだ。気になる事があるのかもしれない。
 紫はそれをじっくりと眺めてから、無言のままカードを私に返し、
「……負けても死なず、怪我をする程度で済む勝負、ね。でも、勝負である以上は真剣になる……。確かに、スポーツのような感じね」
 ちょっと派手だけど。そう言って、八雲・紫は初めて微笑みを見せて、
「解ったわ。貴女を――そして貴女の世界の私を信じる事にするわ」
 その言葉と共に紫の体から警戒が抜ける。どうやら私の世界が脅威になる事は無いと理解して貰えたらしい。
 一気に緊張感が抜け、座り込んでしまいそうになるのを耐えながら頭を下げ、「ありがとう」と告げる。そして安堵と共にアリスへと視線を向けると、彼女は呆然とこちらを見ていた。
「なに、それ」
 何が起きたのか理解出来ないといった表情で聞いてくるアリスへと、私は少し自慢げに、
「これも私の扱う魔法よ」
「……あんな攻撃を、詠唱も無しに?」
「そう。それがスペルカードの力。まぁ、賑やかだけどね」
「……呆れたわ」
 そう言ってアリスは全身から力を抜くと、大きく息を吐き、私を睨むようにして、
「そんな隠し玉があるのなら、最初から出しなさいよ」
「減るものだから駄目なの」
「知らないわ、そんなの」
 そう不貞腐れるように言って、アリスがぷぃと顔を逸らす。それはまるで子供みたいで、自然と笑みが浮かんだ。
 と、そんな私へと紫が不思議そうに、
「でも、貴女はどうしてこの世界に? 事故だと言っていたからには、何かがあったのでしょう?」
「それは、その……」
 三週間前、私が陥った状況を説明していく。
 説明しながら、ふと、ここが異世界であるというのは完全に仮説の粋を出ていなかった事に改めて気が付いた。今回の戦闘でこの世界にスペルカードルールが無い事を知ったから、それを証拠にする事が出来るけれど……もしこの世界にスペルカードルールが存在していたら、その仮説を立証する証拠がない上に、私が他世界から来たという事を証明する手段も無くなってしまっていた。
 途端、自分がどれだけ細い綱を渡っていたかに気付いて、今更ながらに恐ろしくなった。
 それが表情に出ていたのか、紫は私を落ち着かせるように、
「大丈夫よ。この世界に、貴女という人物は存在していなかった。もし魔界へと向かっていなかったら、私から貴女の元へ出向いていたわ」
「出向いてって……なら、私がこの世界に来た事に気付いていたの?」
「すぐに気付けた訳ではないけれど、一応ね」
 どのような形であれ、妖怪が一人増えれば幻想郷のバランスが僅かに狂う。彼女はそれを把握して、私へと接触しようとしていたらしい。
 しかし、私が魔界へと向かった為にそのチャンスを失った。どうやらこの世界において魔界と幻想郷は相互不可侵が成り立っているらしく、自由に行き来する事は出来ても、何か揉め事を持ち込むような事は禁止されているのだという。
 けれど、それとは別に、紫とアリスは何度か衝突していたらしい。
「……色々あるのよ、私達にもね」
 そう、少しばつが悪そうに紫が言う。アリスが彼女の事を『あんなの』呼ばわりしていたのには、そういった理由があったのだ。
「だから私の方から動く事は出来なくて、貴女が魔界から出てくるのをずっと待っていたの。萃香の話を始めた時に現れたのはただの偶然ね」
 でも、その偶然のお蔭で、私はアリスと勘違いされる事が無く話を進める事が出来た。もし一対一で出逢っていたら確実に勘違いが起こり、取り付く島もなかっただろう。
 とはいえ、結果的には戦闘になってしまったけれど、激昂してしまったアリスをしっかりと止めていれば、話し合いだけで紫を説得する事が出来たかもしれなかった。その為に、私は魔界で準備をしてきたのだから。
 しかし……私は神隠しにあった訳でも、住居ごと幻想郷にやって来た訳でもなく、スキマを通ってこの世界にやって来た。そしてこの世界には『アリス』が存在していて、流石の紫でも幻想郷に住まう住民の全てを把握している訳ではない。
 つまり、最悪の場合、紫が私を見付けられなかった可能性もあった。幻想郷のバランスが狂ったと言っても、例えばそれは人間が一人死んだだけでも変化する不安定なものだ。もし魔界に向かっていなかったら、今もどこかで元の世界に戻る方法を探していたかもしれなかった。
 心身を休める事が出来ず、ボロボロになりながら。
「……」
 今更ながらに嫌な想像が膨らんでいく。過去に感じたものよりも強く苦しい孤独に苛まれながら、延々と彷徨い続けるアリス・マーガトロイドを幻視する。駄目だ駄目だと思いながらも魔界へ向かって良かったと、心の底から思えた。
 小さく息を吐き、気分を切り替える。周囲に展開させていた人形達を集めてから、改めて紫に向かい直し、
「お願い、私を元の世界に戻してくれるかしら」
「解ったわ。……でも、すぐに元の世界へ?」
 アリスと、そして魔界への入り口がある方向を見てから紫が言う。私はその言葉に頷きを返し、
「ええ。お願い」
「じゃあ、ちょっと良いかしら」
 言葉と共に、紫の手が私の頭へとそっと置かれた。瞬間、アリスが何かを言おうとしたけれど、視線で止める。
 その一瞬の間に二つの世界の境界を見出したのか、紫は私の頭に手を置いた状態で空に一本線を引くと、
「っと、こんな感じかしらね」
 すっと引かれた一本線に亀裂が走り、まるで口を開くように音も無く開かれていく。その先に見えるのは、ここと変わらぬ、しかし落ち葉が一枚も落ちていない博麗神社の境内だった。
 少し視線をずらすと、落ち葉がまだ沢山落ちているのが見える。まるで神社の一部を切り取ったかように感じる奇妙な光景を眺めながら、私はそっと手を離した紫へと、
「ありがとう」
「別に良いわ。……それよりも、ごめんなさい」
 言って、彼女はすまなそうに、
「あの子の、萃香の宴会に萃められた相手を疑ってしまうなんて……私も、少し余裕を持たなければいけないわね」
 いや、あの鬼は酒が飲めれば誰でも良いんじゃ……と、そう言おうとして流石に止める。もしかしたらこちらの世界の萃香は、何らかの基準に乗っ取って宴会を開いていたのかもしれないからだ。
 代わりに、私は気になった事を聞いてみた。
「……ちょっと思ったんだけど、萃香を幻想郷に呼んでみないの?」
 彼女達の過去に何があったのかは解らない。でも、私の世界にいる萃香は幻想郷へとやって来た。だったら、こちらの世界でもその可能性はあるのではないかと思ったのだ。
「だからその、案外普通に居つくかもしれないわよ?」
「……それもそうね。貴女の言う通り、彼女を招くのも良いかもしれない」
 そう言って、紫が微笑みを浮かべる。それは今までに見た事の無い、素の微笑みに見えた。
 それに少し驚きつつも、周囲を確認して忘れ物が無いか確かめる。その途中、アリスの手の中にあるものに気付いて、
「ねぇ、アリス」
「何よ、アリス」
「その子、貸しておくわ」
 アリスの手には、ボロボロになった盾の欠片を持ったままでいる人形があった。私は壊れる事無く彼女を護りきったその人形を心の中で褒めてから、
「後で取りに来るから」
「いらない」
 即答かよ。
 そう突っ込みそうになる私へと、アリスは畳み掛けるように、
「その代わり、勝手に持っていった本を返して」
「……やっぱり気付いてた?」
「当たり前よ! 私にはもう不必要だって言った途端に目を輝かせて……。その日の夜中に鞄へ入れたところ、ちゃんと見ていたんだから」
「なんだ、起きてたの……」
 我ながら完璧に作戦を遂行したつもりだったのに、どうやら見られていたらしい。でも、この本はどうしても借りていきたい理由があった。それはこの世界の誰にも告げていない事で、だからこそこの場をどう誤魔化そうかと頭を捻る。どうせアリスの事だから私の思惑には気付いているだろうし、言ってしまっても良いのだけれど、ここは黙って行きたいというちょっとしたプライドみたいなものが、素直に答えようと思う私の気持ちを邪魔をする。
 うーん。
 すると、アリスがこれ見よがしに溜め息を吐きながら、手にした人形の汚れを優しく落とし、
「……まぁ良いわ。この子は借りといてあげる。だから必ず、必ず返しに来なさい。……死ぬまでとか、無しだからね」
「解ってる」
 それがどんなに難しくても、可能性が低くても、出来ないなんて言わない。
 だって、これはさよならなんかじゃ無いんだから。
「じゃあ、行って来るね。アリス」
「ええ、行ってらっしゃい。アリス・マーガトロイド」
 笑顔の『私』に見送られて、

 私は、スキマを――世界を越えた。


5

 全ては一瞬。
 スキマを通り抜け、振り向いた時、そこにはもう何も存在していなかった。
「……戻って来れた、のよね」
 境内を見回してみても、タイミングが良いのか悪いのか誰も居ない。神社に参拝客が増えたと喜んでいた霊夢も、普段なら縁側に腰掛けて酒を飲んでいるだろう萃香の姿も無かった。
 どんな世界だろうとも八雲・紫の力は恐らく絶対で、不安になる事はないのだろう。それでも一瞬前まで違う世界に居たのは確かで、早鐘を打つ心臓を治める事は出来ない。
 なんて事を思っていたら、何の前触れも無く、今までの全てが白昼夢だったかのような、そんな不安に襲われた。
 結局、世界が違うというのも終始予測の粋を出なかった。それを裏付ける証拠はあったけれど、私自身が狂っていた可能性だってあるのだ。極端な話、今この瞬間に正気に戻った可能性だって、ない訳じゃあない。
 でも、
「あの世界を否定するのは、結構無理ね」
 胸の中に残る暖かさと痛み、そして戦闘でボロボロになってしまった人形達などは否定出来ない現実だ。アリスに貸してきた分も含めて、結構な数を作り直さなければいけないだろう。
 だから、まずは確認をしに行こう。ここが私の居た世界で――魔理沙が存在する世界だという事を。
「じゃあ、行こうか」
 人形達へと小さく告げて、少々急ぎ足で境内を通り抜け、そこに真新しい小さな社が建っているのを確認してから、神社の外へ。魔法の森へと続く道を進み、道の先に見えてきた香霖堂の脇を通って森へと。
 薄暗い道の途中で見えてきた自宅はしっかりと建っていて、その窓には自作の人形達の姿があった。
 それに安堵しながらも、少し早足で歩いていた体がどんどんとスピードダウンしていく。そうして、その木々を抜ければ霧雨邸が視界に入る、という所で足が止まってしまった。
「……」
 怖い。
 凄く恐い。
 もしそこに霧雨邸が無かったら、という想像が脳裏に浮かんで消えてくれない。或いは屋敷があったとして、そこに私の知る霧雨・魔理沙が本当に居るのだろうか。
 紫の力を頼った以上、大丈夫だとは思っても、溢れ出す不安を止める事は出来ない。
「……もど、ろう」
 一度家に戻り、心を落ち着かせよう。そう決めて、霧雨邸の目の前で回れ右をして、元来た道を引き返す。
 以前だったらここまで臆病になる事も無かっただろう。でも今は、感じる不安や恐怖、孤独を耐え抜く為の鎧を脱ぎ捨ててしまっている。魔界で暮らしている間は、そんな物不要なだけだったから。 
 そうして戻ってきた自宅の前で深呼吸をし、どうしてか震えてしまう手で玄関の鍵を開ける。
「……」
 もし鍵が一致しなかったらどうしよう。そんな不安を感じたものの、小さな音を上げて鍵は開いてくれて、感じなくて良い筈の安堵を感じながら、私は玄関の扉を開いて中へと入った。
 一部屋一部屋、確認するように廻っていく。その間取りや家具には変化は無く、誰が侵入した形跡もない。三週間前、魔理沙に連れられて家を出た時のままだった。
 少し、落ち着く。
 取り敢えず、紫との一戦で消耗した人形などを補充し、部屋にあったウイスキーを気付けとばかりに一口呷って、
「――よし」
 小さく気合を入れてから、今度こそ霧雨邸へと向かった。
 一時間も経たない間に同じ道を往復し、そして先程と同じ場所で足を止める。それでも今度は引き返す事無く、ゆっくりと前に進んだ。
 木々を抜け、思わず瞑ってしまっていた目を恐る恐る開いて、
「あっ、た」
 そこには確かに、見慣れた霧雨邸が建っていた。
 でも、そこに私の知る霧雨・魔理沙がいるのかどうかは解らない。馬鹿みたいに心臓が高鳴り、不安と緊張を混ぜ合わせた感覚に胃が痛くなる。大丈夫だと何度も自分に言い聞かせながら玄関へと近付き、扉を数回ノック。
 すると、少し慌ただしい音と共に誰かが玄関の向こうへと現れ、そして開錠する音と共に扉が開き――
「どちら様――って、アリス?!」
 そこには、三週間前と変わらない霧雨・魔理沙の姿があった。
「一体今まで何処に居たんだよ――って、どうしたんだよその怪我! ボロボロじゃないか!」
 心配してくれる魔理沙に何か言葉を返そうと思うのだけれど、全身から力が抜けてどうにも上手くいかない。
 でも、どうやら私は本当に戻ってくる事が出来たらしい。それだけは、確かに感じる事が出来た。



 通された魔理沙の部屋で、紫との戦闘で出来た怪我の治療を受けながら、私は今日までの話を聞いた。
 三週間前のあの瞬間、魔理沙は永遠亭へと移され、すぐに永琳の応急処置を受けた。とはいえ、意識は失っていたものの怪我らしい怪我は無かったのだという。帽子を被っていた事で、ある程度衝撃が緩和されていたらしい。
 髪を剃らずに済んで良かったぜ、と魔理沙は笑ってから、
「で、お前はどこに飛ばされてたんだ? いくら探しても見付からないから、心配してたんだぜ?」
 どうやら予想通り、私がスキマに飛び込んだ直後、その出口が狂ってしまっていたらしい。しかもそれは私の魔法が原因で生じた状況の為、紫にもどこへ繋がってしまったのかが判断出来なかった。その為、この三週間、彼女達は私を探し続けていてくれたのだという。
「ごめん、心配掛けたわ……」
「いや、こうして戻って来たんだから良いさ。でも、一体どこに居たんだよ? まさか、外の世界にまで飛ばされてたのか?」
「……いいえ、幻想郷の中よ」
 そう、幻想郷の中だったのは確かだ。
 淹れてもらった紅茶を一口飲んで心を落ち着かせてから、魔理沙に問う。
「少しショッキングだけど、詳しく聞きたい?」
「まぁ、出来ればな」
 空気の違いを感じたのか、魔理沙が居住まいを正し、表情を真剣なものへと変える。
 そんな彼女へと、私も同じように真剣な表情で、
「私はね、霧雨・魔理沙が存在しない世界に迷い込んだの」
 この霧雨邸すら存在せず、誰も彼もが霧雨・魔理沙という存在を知らない世界。そこで起こった顛末を、出来るだけ端的に説明していく。……魔界での話は、大分省略したけれど。
 話を聞き終わった魔理沙は紅茶を一口飲み、息を吐いてから、自分の存在を確認するように両手を何度か握り、
「……私の存在しない世界、か」
 嘘だろ、と一笑されると思っていたけれど、やはり彼女も魔法使いか。少なからず、他世界についての知識は持ち合わせていたらしい。
 何かを考えるように暫し無言になってから、魔理沙は私へと視線を戻すと、
「でもまぁ……そうか。大変な事になってたんだな」
「でも、こうして戻って来れたから」
 そう言って微笑むと、彼女も笑みを取り戻し、
「しっかし、その世界じゃ魅魔様が普通の人間だったのか」
「ええ。でも、彼女が本当に魅魔だったのかどうかは解らなかったけどね」
 でも、過去に魔界で出逢った彼女達との繋がりが今も続いているのなら――例え世界が違うといえど、彼女は魅魔であったのかもしれない。
 そう思う私へと、魔理沙は少し過去を懐かしむように、
「でもまぁ、私はその人が魅魔様だと思いたいけどな。悪霊に成っていないのなら、それは幸せな事なんだろうから」
「確かにそうね」
 死んでも尚恨みに取り込まれ続けるというのは、やはり良いものではないのだろうから。
 そうして、紅茶のお代わりを貰いつつ魔理沙と取り留めのない話をして――一時間ほど経った頃、私は腰を上げた。  
「さて、魔理沙が無事だって解ったし、今日はこれで失礼するわ」
「おいおい、怪我の治療をしたばっかりなんだ。もっとゆっくりしていけよ」
 純粋に心配してくれているのだろう魔理沙に微笑み、私は痛みの引いた左腕を軽く回し、
「心配しなくても大丈夫よ。私はアンタと違って妖怪だから、このぐらいの怪我なんて何ともないの」
 魔法での治癒も効いてきているし、全快とまではいかないまでも、もう殆ど回復している。こういう時は、人間を辞めて良かったと正直に思う。
「それにね、少しやる事があるのよ。だからまた後で……そうね、前に言ってた日本酒、頂きに来るわ」
 そう言って立ち上がり、鞄を手に取った所で、一度深呼吸。
「どうした?」
 緊張で胃が痛い。
 魔理沙に対して『怖い』と思うのはこれが初めてかもしれない。
 でも、言わなきゃ始まらないのだ。
 だから。
「一つ、言い忘れてた」
 大事な大事な、ずっと言う事が出来なかった言葉を、告げる。
 彼女の目を見て、真っ直ぐに。

「魔理沙に、返して貰いたい物があるの」



 霧雨邸から出た私は、一度自宅に戻って着替えを済ませてから、確認の為に紫と戦った谷へと向かった。
 そこに拡がっていたものを見て、思わず呟きが漏れる。
「……あの時の違和感は、これだったのね」
 谷の一部が崩れ、散乱していたのだろう瓦礫が一ヵ所に集められていた。しかし私が目覚めた時、あの場所には崩れた様子も、瓦礫も無かったのだ。まさか他世界に飛んでいるとは思わなかったし、そもそも魔理沙が瓦礫の餌食になった瞬間に飛び出したから、瓦礫の散乱具合も解っていなかった。だからあの時、違和感を感じつつも、その違いに気付けなかったのだろう。
 心の中でくすぶっていた何かが氷解するのを感じながら、私はその場を後にする事にした。
 次の目的地は、魔法の森のすぐ近くにある一軒の古道具屋だ。
 霧雨邸に向かった時ほどではないにしろ、軽い緊張を持ちながら道を進み、重く軋む店の扉を押し開き、
「……香霖堂さん?」
 雑多に商品が積み上げられた狭い店内を進んでいくと、予想通り、店の奥には森近・霖之助が居た。
「いらっしゃい、アリス」
 当然そこには魅魔の姿は無く、代わりに、カウンターの上に乗せられた商品を眺める十六夜・咲夜の姿があった。
 彼女は私の姿に気付くと、柔らかく微笑んで、
「あら、アリスじゃない。久しぶりね」
「咲夜」
 その懐かしい姿に、戻ってきたという実感が増すのが解る。でも、突然だとは思いつつも、少しだけ残っている不安を拭う為に問い掛けた。
「……ねぇ、その、紅魔館の様子はどう?」
「様子?」
 私の言葉に、咲夜は一瞬きょとんとした後、
「そうねぇ、最近は寒くなってきたから、お嬢様も部屋に籠りがちで然程忙しくは無いわね。でも、突然どうしたの?」
「えっ、あー、ほら、紅魔館が何かイベントを始めると、図書館にも寄り辛くなるから」
「そういう事ね」
 最近はパチュリーに邪魔者扱いされる事もなくなったから、美鈴と一戦交える事も、咲夜に撃退される事もない。しかしそれも、彼女達が幻想郷に居るからこそ起こる日常なのだ。
 これで紅魔館の存在は証明された。戻って来れたという実感が更に増す。
 魔理沙が存在していた時点で、ここが元居た世界であるともう殆ど確信しているけれど、完璧ではない。まだ確認する事がある。
 軽く話をしてから店を出て、深呼吸。
 次の目的地は博麗神社だ。



 神社へと向かうと、腋を出した見慣れたスタイルの巫女が居た。
「良かった……」
「……何よ突然」
 奇妙なものでも見たかのような反応をする霊夢に笑みを返し、
「霊夢はその格好が似合ってるって意味」
「はい? ……アンタ、なにか悪いものでも食べたの? なんだか気持ち悪いわね……」
 怪訝そうな顔をする彼女に今は怒りも湧いてこない。あるのはただ強い懐かしさと安堵だった。
 それでも、彼女にこれから行う事の許可を取らなければ。
「まぁ、気にしないで。それと……今から少し騒がしくなるけど、放っておいてね」
「騒がしくって、一体何をするつもり?」
 どう言ったものだろうかと一瞬考え、霊夢に回りくどく言う必要は無いと気付いた。だからその目をしっかりと見つめて、告げる。
「魔界の封印を解かせてもらうわ」
「……なんですって?」
「だから、魔界の封印。神社の裏手にある、あれの事よ」
 途端、霊夢を中心に空気が一瞬で変化する。こういう時、私は彼女が博麗の巫女である事を強く実感する。まぁ、こんなシリアスな空気を纏う霊夢と鉢合わせする事なんて殆ど無いし、今後も願い下げだけれど。
 そんな風に思いながら、私は睨んでくる霊夢をなだめるように、
「そんな恐い顔しないでよ。大丈夫、今度は前みたいに、旅行会社が馬鹿をやるような事はさせないわ。折角参拝客が増えたんだしね」
 霊夢の背後にある、新しく出来た小さな社へと視線を向ける。
 その視線に気付いたのか、彼女は暫し逡巡してから、
「……何かあったら、その時は解ってるわね?」
「当たり前よ」
 笑顔で告げる。
 この瞬間、問答無用で退治されたりしない分だけ、彼女と私の間に信頼的なものが出来上がっているのだろう。……多分。
「……って、あー、そうだ」
「何?」
 まだ棘が抜けていない霊夢へと、全く関係の無い話だと思いながらも問い掛ける。
「……幽香、居るじゃない」
「幽香? アイツがどうしたの?」
「彼女って、花が咲く場所を廻って移動してるんでしょ? ……定住場所とかないの?」
「そんなの私が知る訳無いじゃない」
 霊夢の言葉に嘘は無い。というか、この娘は恐らく嘘なんて吐かないだろう。私は『コイツ大丈夫か?』という顔をしてこちらを見る霊夢へと誤魔化すように手を振って、
「何でもない。ちょっと気になったの。だから気にしないで」
 なんなのよ一体、と霊夢が疑問符を浮かべる。まぁ、突然幽香の話題を出されたのだから仕方ないだろう。でもこの時点で『夢幻館』という単語が出なかっただけで、私的には十分満足だ。
 妙な印象を持たれてしまった感がありつつも、今はそれを訂正する事なく霊夢と別れて歩き出だし――
「あー」
「今度は何?!」
「紫の居場所って、知ってる?」
「紫の?」
「紫の」
「残念だけど知らないわ。でもまぁ、呼べばひょっこり出てくるんじゃない?」
 向こう側の巫女とは反応が違う事に少し驚きつつ、霊夢の言葉には紫を邪険にしているような空気が感じられなくて、何故かちょっと嬉しかった。
 そんな風に思いながら、じゃあ試しにと呼んでみようとして、霊夢の声が来た。
「あ、でも無理だ」
「何で?」
「この前『もう限界だ、冬眠する』って言ってたから。……って、そういえばアンタを探してたわね」
 どうやら睡眠欲の限界に達するまで私を探していてくれたらしい。その事にすまなさを感じつつ、それ以上に嬉しさを感じる。春が来たら、真っ先に彼女へと「ありがとう」を告げようと心に決めた。
 そうして今度こそ霊夢と別れ、神社の奥へと歩き出す。  
 でも……時折思う事がある。彼女は本当に、あの日魔界で戦った巫女なのだろうかと。何故だかは解らないけれど、以前の彼女と今の彼女はどこか違うような気がしてならないのだ。服装だけではなく、その在り方まで違っているように思えてしまう。
 まぁ、多分ただの錯覚だろうけれど。二度目と三度目の勝負までに結構な期間があったし、その間彼女はレミリアを打ち倒したりしている。互いに成長し、見えない部分が変化したに違いない。
 そんな事を考えながら、湧き上がる不安を紛らわせつつ進んで行き、私は神社の裏手にある洞窟へゆっくりと近付いてく。
 そして――見えて来たそれの、正面に立った。
 太陽神が天岩戸に隠れてしまったという神話を再現するかのように、その入り口は巨大な岩で塞がれている。 
 ただの岩では無い。様々な魔法が施され、簡単に移動や破壊が出来ないようにしてある、ある意味でマジックアイテムとも言える物だ。この博麗神社という場所は外の世界と繋がっている唯一の場所である為に、境内で張る結界は役目をなさない。その為に、こうやって物理的に道を塞いでしまったのだろう。
「……」
 この場所に立つのは何年ぶりだろうか。でもこれで、ここが元の世界だと完全に信じる事が出来た。
 そうして理解するのは、魔界へは帰れない、という事実のみ。
 その事実はどうしようもないぐらいに辛くて、悲しくて、淋しくて、痛い。それは幻想郷での生活で常に付き纏っていたものだった。
 忘れようにも忘れる事なんて出来ないそれを、以前より強く感じているのが解る。
 嗚呼、間違いなく、ここは私が生まれ育った世界だ。
 それを理解した以上、やる事は一つだけ。
「邪魔な物を、退かす」
 もう私は独りの孤独に耐えられない。失ってしまった故郷を、家族を、もう一度手に入れる事が出来たから。
 だから今度は、本当の故郷を、家族を取り戻す。時間と共に成長し、積み重ねて来た魔法使いとしての力でそれを成し遂げてみせる。
 もう、諦めたりするものか。



 深く深呼吸をして心を落ち着かせてから、周囲に人形を配置。一点へと攻撃を集中出来る場所を探り、人形の位置を修正しながら、威力を倍化する為に人形達にも魔力を注いでいく。
 そうして準備を進めながら、持参した鞄から更に二体の人形を取り出した。純白のそれは過去に神綺から貰い受けた物で、家にある人形の中で最も扱い易く――だからこそ壊してしまうのが恐ろしくて、ずっと仕舞い込んでいた物だった。
 私はそれを左右に従えるように配置し、
「……久しぶり」
「「久しぶり」」
 声を揃えて人形達に答えさせる。でも、まるで彼女達は生きているかのように、無意識の言葉を紡ぎ出す。
「ねぇ」「アリス」「過去に向き合う」「準備は出来た?」
「ええ、ようやっとね」
「それは」「良かった」
「だから貴女達にも、頑張ってもらわないといけないわ」
 言葉と共に、胸に抱えていた二冊の本を空中に固定する。人形を操るのと同じ要領で表紙を開くと、そこに封じられていた魔力が空に舞い、七色の煌きを作り出した。
 嗚呼、懐かしい。
 懐かし過ぎて涙が出そうだ。
「ようやく、戻ってきたんだもの」
 私の為の『究極の魔道書』。もう二度と戻らないと思っていたそれが、再び私の手元に戻ってきた。その事実が何よりも嬉しくて堪らない。
 そしてもう一冊は、アリスから借りてきた彼女の為の『Grimoire of Alice』。奪われてしまっていた私のそれとは違い、アリスの魔道書は少し前まで追記され続けていた最新版。その内容は酷似しているようで違いが多く、だからこそ生み出す魔法は違ったものになる。
 アリスから魔道書を借りてきたのはこの瞬間の為だ。二冊の魔道書を同時に操る事が出来るのならば、威力を倍以上に上げる事が出来る。何よりも火力を必要とするこの状況で、それを有効利用しない手はなかった。例え魔理沙がすんなり魔道書を返してくれなかったとしても、どうにかして返して貰っていただろう。昔のように力ずくではなく、言葉を使って。
 私と彼女は、もう敵同士ではないのだから。
「……さぁ、始めましょうか」 
 自分自身に言い聞かせるように呟いて、深く深く深呼吸。
 もう二度と唱える事が無いと思っていた呪文を歌うように詠唱し、人形達にはアリスが追記して行った新たな小節を読み上げさせていく。
 悔しいけれど、スペルカードルールが存在しない世界だった為か、魔法使いとしての技量はアリスの方が上だった。それに負けてしまわぬよう、狂いそうになる呪文を無理矢理に矯正し、新たな究極を生み出していく。
 下手をすれば魔法が暴走し、大怪我を負う可能性だってある。それでも、私に躊躇いや迷いは無かった。
 諦める訳にはいかない。もう、諦めるなんて事はしたくない。
 当然、全力を出したにも拘らずこの封印を壊せなかったら……という恐怖はある。それはどうやっても拭い切れないものだ。でも、大切な家族と故郷を失う以上の恐怖なんてありはしない。
 そう。例え魔力の全てが尽き、用意した人形達が全て砕け、体に過大な負荷が掛かろうと、全力を出さなければならない時は必ずある。
 私は、全力を出さなければならない時に、それを出し渋ってしまうような魔法使いにはなりたくない。それこそ、後も未来も無くなってしまうというものだ。
 だから、
 だから!
「絶対に、壊してみせる!」
 限界にまで引き絞った弓を放つかのように、完成した魔法を解き放つ。 
 その瞬間、過去に封印に挑んだ時の記憶がフラッシュバックし、脳裏に様々な記憶が蘇っていく。
 悲しかった事。
 淋しかった事。
 苦しかった事。
「それだけじゃない」
 楽しかった事。
 嬉しかった事。
 幸せだった事。
 色んな事を思い出す。
 魔界での記憶。
 家族との記憶。
 大切な、記憶。
 一度は失ってしまった。
 でも、新しく得る事が出来た。
 私は幸せだろうか。
 私は不幸だろうか。
 解らない。
 解らないけれど、でも、今の私は孤独じゃない。
 だから、頑張れる。
 本気を。
 全力を。
 持てる力の全てを出し切って魔法を放つ。
 何度でも、何度でも。
『アリス』として、諦め続けていた自分自身に――アリス・マーガトロイドに負けない為に。

 
 そして何よりも――
「ただいま」
 その一言を、告げる為に。
 


 










end



宵闇むつき
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投稿日時:
2008/02/02 20:05:11
更新日時:
2008/02/05 11:05:11
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1. 10 俄雨 ■2008/02/12 19:58:47
――なんという面白さ。旧作との融合という難題をクリアし、見事な物語を作り上げたその技量とセンスに感服。読み心地、読了感共に、文句など一つもつけようがないです。すげぇ。間違いなくお気に入りSS……。神綺ママ優しいよ優しいよ神綺ママ。有難う御座いました。
2. 5 小山田 ■2008/02/13 01:30:50
中盤までが非常によかっただけに惜しかったです。藍のスペルカードへの反応があまりにアリスの意図どおりに都合のいい解釈で、「こう話を展開させたい」という意図ありきの不自然さが残りました。そうなると、ただ配置されただけのキャラクターに感じてしまって……もっと違和感なく没頭させてもらいたかったです。ラストのくどさにもマイナス点です。上記の部分がなければ10点でした。
3. 10 ne ■2008/02/13 02:04:49
構成力・文章力共に素晴らしかったです。
あまりにも直球な題名ですが、読み終わるとこれ以上にしっくりくる題名は無いように思われます。今まで見た中でも屈指の魅力的なアリスでした。

4. 10 レグルス ■2008/02/13 03:38:02
帰界…かな? 二重の意味で。
次点で奇界か。
日常→非日常→日常ていうサイクルが好きな私にはツボでした。
正直私のザル頭にゃ文学的な難しいことは良くわからないので、
好みだけの参考にならない感想で申し訳ないです… orz

あえていうならアリスがパラレル気付くのが早いかなって気もしますが、
でも案外無意識記憶との差異って結構簡単に気付くから、
こんなものかもしれませんね。

そして神綺様の「いってらっしゃい」の言葉に、
「貴方はどうせここから出られない。 
 私の元に帰って来る運命なのよ! アリスちゃーん!」
な展開を考えた私はアレですね。

とにかくとても面白かったです。
5. 6 名無しの37番 ■2008/02/14 20:55:45
セカイ系は大好きな自分ですが、これはちょっと引っかかりました。アリス一人の成長を書くのに、ここまで壮大かつ謎に満ちた舞台が果たして必要だったんでしょうか?
また、異世界の謎(魔理沙がいない、魅魔がいる、などなど)を意味ありげに演出しすぎです。アリスの視点に忠実に書いた結果だというのはわかりますが、これらが物語上で解明されないため、宙ぶらりんな気がして仕方ありません。
それと、この書き方では「紅魔館と夢幻館が同じ場所に建っている」というのがわかりにくいと思います……と言いつつ、自分が誤読してるのかもしれませんが。

このように難点はあるのですが、一つ一つの演出はとても光っていたと思います。
『アリス』や神綺との心温まるやりとりやスペルカードを有効に使った紫の説得など、随所で引き込まれたのは確かでした。
アリスの心理描写もとても丁寧に書かれていました。ラストは彼女の成長が上手く表されていて、とても爽快で良かったと思いました。
6. 10 nanasi ■2008/02/15 17:14:02
全俺が泣いた
7. 9 織村 紅羅璃 ■2008/02/16 02:05:46
文句の付け所の殆どない傑作。
ただ惜しむらくは、お題がうまくこめられていなかったような気のするところ。なので-1。

それにしても、これくらいの規模のものなら、電子ではなく紙媒体で読みたいものです。w
8. 7 あまぎ ■2008/02/23 14:00:01
まるで、映画を見ているようでした。
リアリティも、迫力も、人間ドラマも、その全てが丁寧に、壮大に造り込まれた、映画。

序盤ではアリスの挙動に、「さすがに驚きすぎではないか」と思ってしまう部分もありましたが、明確に示されていく異世界幻想郷の姿は、その驚きも納得のいくものでした。
どの場面にしろ、その説得力に思わず頷いてしまいました。

ラストシーンもまさに映画のようで、自分的に最高の締めでした。
あとは、八雲一家との戦闘シーン。熱い、実に熱い。
蘭の高速回転の描写(叩きつけとか)、橙を鬼神と表現したあたりがもうステキです。
9. 10 #15 ■2008/02/24 21:54:14
申し訳ない。うまく感想がまとまらない。とても良かった。
10. 10 もろへいや ■2008/02/26 21:56:55
冒頭部分を読んだ辺りで想像したのとは全く別の展開が待っていて、
飽きることなくグイグイと物語に惹きこまれました。
目から汗が出るほどに。 面白かったです。
11. 8 ■2008/02/27 21:32:59
紅魔以前を知らないのですが、魔界の皆さんも素敵ですね。
お母さんな神綺さまの優しさに触れて、ほろりときてるアリスが可愛かったです。
ラストも最高の盛り上がりだったと思います。
ただ(これは個人的なよみですが)話の主軸っぽいものに、
導入部では魔理沙がいる世界への帰還、ラストでは家族のいる魔界への帰還との二つがあって、
その二つがちょっと揺れている感じがしました。
(個人的にマリアリが好きなので、ちょっと偏った読みをしてしまったのかもしれませんが)
12. 10 つくね ■2008/02/27 23:37:58
これだけの長さにも関わらず……あっという間とはまさにこの事です。文句なし。
13. 9 つくし ■2008/02/28 14:55:48
100KBを超える長編を飽きずに読めましたスゲェ。スペルカードという東方の根幹に関わるアイテムの登場の仕方がドラマチックすぎて鳥肌立った。アリスの心情描写も丁寧でした。すごい佳作。
14. 7 ■2008/02/28 20:04:12
もう100キロオーバーが出てきたのかよとうんざり気味でしたが、丁寧な構成で疲れを感じる事無く読み終える事ができました。
冒頭の説明がちょっと長い所とか、
「あー、ここで説明しちゃいたいんだろうなー」と。
夢時空勢の使い方と、努力家アリスの書き方から筆者の実力というかアリスへの愛が感じられる。
(新角さんのような。近藤さんかも?)
始めに二人のアリスがありきの設計っぽいので、そこに至る説明が長く感じる。
とはいえ、アリスなら理詰めで情報を集めていくだろうから、この流れは長くても違和感は無かった。
「死ぬまで借りておく」のセリフで、実はこれがアリスと思わせた魔理沙の話じゃないかと勘繰ったりした。
ラストで真相が明らかになって、どっちかが死んでるような。
弾幕の定義と使い方が面白い。確かにスペカの定義は結構後になってから生まれたらしいので、違う紫が思いついていない事もあるかもしれない。一応、巫女との協議で生まれたそうだし。
説明の多い部分があるが、それが有るゆえに躓く事がなくて、総じて読みやすく読後の感触も良かったです。
ラスト、自分の意思確認のところで人形を喋らせるというシーンがいい。
人形遣いとして帰る、というプライドを感じる。
長文失礼。
15. 4 たくじ ■2008/02/28 22:15:48
あまりアリスに感情移入できませんでした。なんでかなぁ…旧作を知らないからというのもあるのかもしれませんが。
こんなにも故郷を恋焦がれるのなら、恥をしのんででも封印を解いてくれるように頼むんじゃないかと思いました。それから序盤では在った魔理沙への想いのようなものが、魔界へ行ってからはあまり出てこない気がして、ちょっと消化不良な感じです。
黒アリスと関係を深めていく様子は読んでいて楽しかったです。
16. 6 椒良徳 ■2008/02/28 23:33:28
うん、まあそこそこ面白かったですよ。アリスが異世界に飛ばされたところがちょっとわかりづらかったですが。
17. 4 時計屋 ■2008/02/29 00:10:53
文章が丁寧に書かれており、私の目からは誤字や文法上の誤りも少ないものに見えました。
アリスの過去を主軸に据えたお話も分かりやすいものであったと思います。

ですが、これだけの長文を読ませるには、文章・構成共に練りこみ不足のように感じました。
プロットはもっと省けたように思えますし、読者に先を読ませるだけの引きも足りないように見えます。
私見で恐縮ですが、もう少し文章量を減らしたほうが、お話全体がまとまって見えるのではないでしょうか?
18. 10 木村圭 ■2008/02/29 04:44:06
読み終えた後、しばらく何も手につきませんでした。呆然としたまま流れていく時間がとても気持ち良い。感無量です。
MVPは「ここは居心地が良過ぎるのよ!」で。シリアスの合間にこういったものを挟めるセンスに脱帽。
19. 7 とら ■2008/02/29 09:28:02
プロットがしっかりしており、全体的に安定している印象でした。最後まで破綻なくお話が進んでいると思います。
ただ、旧作品を扱っている部分があるためか、少し設定を理解するのに時間がかかりました(これは、私の責任なのですが……)。
また、引っ張りの割には、意外にあっさり元の世界に帰ることができたなという印象もあります。
20. 8 ZID ■2008/02/29 09:28:11
文の量からは考えられないぐらい読みやすく、よく練られた、実に良い作品でした。余りにもすいすいと読み進められるので、50kb程度の作品より、読み終えるまでの時間がかからなかったかも。
21. 8 らくがん屋 ■2008/02/29 10:51:46
「きかい」というお題から、どうやったらこんな作品が作り出されるのか。作者の脳味噌はきっと美味に違いあるまい。
冗談はともかく、読みやすい・話が上手い・面白いの三拍子が揃っておりました。良作です。
22. 6 as capable as a NAMELESS ■2008/02/29 13:36:14
力作……なんですが、ちょっとスリル不足というか。
例えば目を覚ましてから自分が異世界に居る事に気付くまでの過程も、やった事はといえばチラチラ見回っただけでしたし。
23. 4 中沢良一 ■2008/02/29 15:01:04
こういう少年誌っぽい感じ、大好きです。お題は奇怪?
もう少し文章を絞り込んでいくと読みやすかったと思います。アリスの心情を書き出すのは簡単ですがその分文章量が増えます。だからといってスカスカにしすぎるとまったく伝わらない。その辺りのバランスを取りながら、読者に読み取ってもらえるような文章を書くというのが1番難しいけれども、それが出来たときに書き手として1番の快感を得られると私は思っています。
あと、時々妥協した文章があり、それが目に付いてしまいました。例えば帰ってきて霊夢との会話の後の『信頼的なもの』→『信頼のようなもの』とか、そういったものを気をつけると、全体のクオリティがググッと上がると思います。
24. 10 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:39:32
大作すぎる。正直10点で足りない。
どうしても気になった部分はあったけど、それを気にさせないほどいい作品でした。
違う世界の幻想郷も上手いこと描写してたし、序盤での伏線もきっちり回収。
好きな場面は、魔界でのアリスマーガトロイドとアリスとの会話、神綺との会話ですね。
でも、1番カッコいいとおもった場所は「さぁ、『弾幕ごっこ』を始めよう」の部分からです。
アリスかっこよすぎ。
そして落ちでは、がっちり読者のハートをキャッチ!!

と、ここまでアリスを持ち上げておいて、それでも最後に突っ込みたい。
「アリスさん、紫の存在に気づくの遅いw」
「火神アグニって、パチュリーのことかぁww」
25. 8 K.M ■2008/02/29 20:15:00
アリス・イン・アナザーワールドといったところでしょうか。
「違う世界」のアリスの話、楽しく読ませていただきました。
26. 6 12 ■2008/02/29 21:17:21
なかなかの大作だけれど、この作品の大部分はツンデレアリスの懊悩で占められてねぇ?
よくマンガなんかで、ツンデレキャラがデレを指摘されて慌てふためき、コマいっぱいに、言い訳の台詞がびっしり書き込まれた吹き出しを展開
したりする(何言ってんのよこれは義理よ義理チョコなのよ何よ勘違いしないでねアンタちょっと自意識過剰なんじゃ(略、みたいな)
けども、このSSはそんな言い訳を逐一文章化したような感じ。
これを文章で一字一句読まされるのは、正直つらい。
展開も面白いし、話の〆方もかっこいいのに、この冗長さがしんどい、と思ってしまいます。
27. 6 BYK ■2008/02/29 21:53:58
奇怪な機会をありがとう。このアリスなら、きっと魔界への封を解けるはずさ!
28. 6 O−81 ■2008/02/29 22:00:30
 うむ。
 なんだか途中で主題が変わっているような気がしないでもないんですけど、まあ冒頭の魔理沙に対する依存度というか好意的なものが若干薄れ気味になって、魔界に関することが台頭してきて全体的に独りぼっちは嫌だみたいなニュアンスになったと思えば、そのあたりも許容範囲なのかもしれないです。
 最後はやっぱりああいう展開で締めざるを得ないと思われます。
29. 2 飛び入り魚 ■2008/02/29 22:04:19
そのまま魔界に行ったきりアリスが帰ってこなくなることが心配で困っちゃう
30. 10 只野 亜峰 ■2008/02/29 22:04:33
10点でもよかたとですが、強いて減点要素を言うのであればお題の因果が少々弱かったかなと。
ヴォリュームも高く、スケールも大きく、文章も高いレベルで安定してて、何よりもお話自体がかなり面白かったのでちょいと残念。
と、思ったらもしや主題は『毀壊』なのか。奇怪な体験を得て毀壊へと繋げるとな。これはおじさん一本取られた。
気づかれないかもなぁ。ひょっとしたら俺の思い込みかもしれんし。でもいいや、おじさん満点あげちゃう。
31. 6 反魂 ■2008/02/29 22:25:44
 終盤に至るまでの盛り上げ方は素晴らしいものがありましたが、いかんせんそこにいたるまでの腰がちょっと重いです。頽廃を思わせる文章感で、恐らくは作者さまが狙われた通りの雰囲気は伝わってきたのですが、やはりちょっと難しいテーマに振り回されてしまった印象があります。読み物として、惹き付けられるほどの力を感じられませんでした。
 あと御題も、生かし切れたとは言い切れない気がします。
32. 9 カミルキ ■2008/02/29 22:38:25
これはいいパラレルワールド。これでまた1つアリスは成長したのか。
やはりスペルカードというものは画期的ですねぇ…
33. 7 moki ■2008/02/29 23:07:55
パラレルワールドは外から見れば喜劇にしか見えないもんですね。当事者にとっては悲劇でしかないけども。
34. 8 赤灯篭 ■2008/02/29 23:16:01
 アリスの心理描写部分は凄いとしか言いようがないです。神綺との再会シーンでは思わず目頭が熱くなりました。
 最後の方、帰ってきてからの描写が少し冗長にも思えましたが、無ければ無いで物足りなく思うでしょうし、評価しづらいところです。
35. 9 名無し読者 ■2008/02/29 23:40:58
少女が奇怪な世界で故郷を取り返す機会を得るお話。素晴らしい作品でした。
でも確か魔界人は魔・幻直通ワープ穴を開けるようになって…いや些事ですねこれは。

こうした家族愛的要素を含む作品は私の好みですので大変楽しめました。
旧作要素に触れるというチャレンジ精神自体も大いに評価できます。
「魔界人」という語の意味の解釈も適切だと思いました。

ところで「仮初めでも故郷は大事か」などという誰かのセリフを
読んでて思い出しましたが実にどうでもいいですねw
別世界の自分に会うってどんな感じなんでしょうね…
「私が信じる『神様』は、ただ一人だけ」はぐっときました。私のもつイメージもそんな感じなので。

こういう場ですから何か欠点も指摘したいところなんですが。
どうにも言葉が出てまいりません。良作をありがとうございました。

今後の活躍を期待したいので敢えて10点は入れないでおきます。
36. 7 blankii ■2008/02/29 23:43:21
実は、一体全体いつ曲調がひっくり返って何もかもが暗転するのかとビクビクしていました。勘違いかもしれないけれど、もしかしたら前回こんぺのトラウマ? 今でも『岩を崩した先には何もなかった。全部アリスの妄想でした』みたいな未来が頭を離れません。素直な読み方をできなかった俺を殴ってください。だって、ホラーだと思ったんです……魔理沙がいない理由とか分からなかったことも多いですし(もしかして暗示とかされていたでしょうか……)。ともあれ、これだけは言いたい。アリスかわいいよアリス。

37. フリーレス 宵闇むつき ■2008/03/04 17:54:32
やっぱりハッピーエンドに到る作品が好きです。宵闇むつきと申します。
限られた時間の中、100kbを超えるこの作品を読んで頂き、本当に有り難う御座います。



blankii様
前回『この青い空の下〜』でバッドエンドをやったので、今回はハッピーエンドへ向かう感じで終わりました。
魔理沙が居なかったのは、あの世界が異世界だという事を強調させたかったからなのです。なんていうか、ごめんなさい……。

名無し読者様
お褒め頂き、有り難う御座います。アリスは魔界の出、というか神綺の娘であって欲しかったので、こんな感じになりました。
その期待に添えられるよう、これからも頑張っていきます。
でも、ワープ穴とかは、えっと、その、霊夢が塞いだとかそんな感じでお願いします……。

赤灯篭様
有り難う御座います。凄い嬉しいです。
瓦礫を確認する所などは不要かとも思ったのですが、異世界から戻ったと確認する作業は必要不可欠だと思ったのであのような感じになりました。丁度良さ、というのは難しいものです……。

moki様
本人はてんてこ舞いになってしまいますからね。
でも、悲観ばかりせずに行動していけば、いつか悲劇も喜劇に変わっていくのではないかと思うんです。

カミルキ様
有り難う御座います。
どれだけ激しくてもお遊びになってしまう、という考え方は、本当に凄いアイディアだと思います。

反魂様
ご指摘、痛み入ります。まだまだ力量が足りないという事を痛感……。
雰囲気だけでなく、作品の内容で惹き付けられるよう、努力していきたいと思います。

只野 亜峰様
すみません、『奇怪』な状況と再会の『機会』を主題に書いていました……。というか、『毀壊』に繋がるとは思ってもいなかったです。
満点、有り難う御座います。

飛び入り魚様
魔理沙達が居るから大丈夫だと思います。多分。
むしろ神綺様がアリスを放さないような気がしてきました。

O−81様
途中から魔理沙完全放置ですし、主題が変わってしまったのは言い訳出来ない事実です……。反省。
ラスト、出来ればもう少し盛り上げて終わらせたかったのですが……難しいです、本当に。

BYK様
こちらこそ、有り難う御座います。
アリスならやってくれる。私もそう信じています。

12様
すみません、確かに独白を長々と羅列し過ぎました。
というか、私は無駄な独白を多く書いてしまう性質なようです。これからは気を付けていきたいと思います。

K.M様
有り難う御座います。
長い話でしたが、楽しんで頂けたなら幸いです。

☆月柳☆様
満点、有り難う御座います。あの台詞は最後の最後で思いついた一言だったのですが、組み込んで正解でした。
アリスがすぐに紫に気付けなかったのは、混乱していたから……という事で一つ。そしてパチュリーの事でした。そういえばサラマンダー使わないなぁ、と書いてて気付いて追加しました。
楽しんで頂けたなら幸いです。

中沢良一様
ご指摘、有り難う御座います。
これでも結構削ったつもりだったのですが、推敲が足りなかったようです。妥協してしまった点を含め、改善していこうと思います。

as capable as a NAMELESS様
すみません、正直それ以外の方法を思いつきませんでした。全く同じで、しかしどこか違う世界から明確な違いを見つけ出すのは難しいだろうという考えがあったので……。
頑張っていかねば。

らくがん屋様
有り難う御座います。長い話でしたが、そう言って頂けると凄く嬉しいです。
あ、脳には嘘しか詰まってませんが、それでも宜しければ(脳内メーカーの結果を思い出しながら)

ZID様
有り難う御座います。
推敲している最中は『この長さ、ありえん』とか思いながら直していたのですが、そう言って頂けると頑張ったかいがありました。

とら様
有り難う御座います。そしてすみません。旧作のキャラに関しては、もう少し説明を行った方が良かったですね……。
あっさり元の世界に戻れたのは……その、ゆかりんすげぇ、って事でお願いします。

木村圭様
長い話でしたが、楽しんで頂けたならとても嬉しいです。
あと、自分にはセンスなんてないと思っているので、そう言って頂けると舞い上がります。満点、有り難う御座いました。

時計屋様
ご指摘、有り難う御座います。確かに、長くなり過ぎてしまったと思います。ですが、元々のプロットが更に長いものだったので、これで満足してしまったようです。
短調にならないよう、もっとプロットを練り込むようにしていきたいと思います。

椒良徳様
有り難う御座います。そしてすみません、描写不足だったようです。
説明で補足出来ていたと思っていたのですが、詰めが甘かったようです。気を付けます。

たくじ様
説明不足、申し訳ありません。
旧作に関しては完全に説明不足でした。故郷に関しては、アリスのプライドがそれを許さなかった、という感じで。そして魔理沙に関しては、家族への想いの方が高まったから、という事で……というか、それらを作中で説明出来なかったのは完全に失敗でした……。

鼠様
長い話になってしまいましたが、アリスなら、と言って頂けると救われます。あと、バッドエンドは想定していませんでした。というか、言われて『そんな結末もアリか』と思えたほど。まさに想定外。そして、読みやすい作品になっていたのなら何よりです。
ラストの流れは少し自信が無かったので、凄く嬉しいです。有り難う御座いました。

つくし様
お褒め頂き、有り難う御座います。
プロットの時点ではもっとあっさりとスペカを使用していたのですが、盛り上げて正解だったようです。頑張ってよかった……。

つくね様
満点、有り難う御座います。
長い話でしたが、退屈にならず、楽しんで頂けたなら幸いです。

畦様
有り難う御座います。そして、旧作の説明不足、申し訳ありません。
いっそ魔理沙を絡ませなければ、もっとすんなり物語が進行したのかもしれません(私もマリアリは嫌いではないのですが、今回はそういった空気をあまり出さずに行きたかったので)。

もろへいや様
楽しんで頂けたなら何よりです。
そして、その汗は私にとって何物にも変え難い宝です。満点、有り難う御座いました。

#15様
いえ、その一言を頂けただけで凄く嬉しいです。満点、有り難う御座います。
長い話でしたが、楽しんで頂けたなら幸いです。

あまぎ様
映画だなんて、そんな、凄く嬉しくて舞い上がってしまいます。
個人的に戦闘シーンは苦手なので、熱いと言って頂けて何よりです。本当に有り難う御座います。

織村 紅羅璃様
有り難う御座います。でも、確かに『奇怪』な状況と再会の『機会』だけではお題が弱かったようです。
って、紙媒体ですか……。いつか同人誌を出したりとか、やってみたいものです。

nanasi様
有り難う御座います。頂いた満点に私も嬉し泣きです。

名無しの37番様
お言葉通り、異世界側についての説明が足りなかったようです。あと、紅魔館と夢幻館の場所は別、という風に書いていました。紛らわしくて申し訳ありません。
出来れば演出だけでは無く、その全てで魅せる事が出来れば一番だったのですが……まだまだ努力が足りないようです。ご指摘、有り難う御座います。

レグルス様
満点、有り難う御座います。そしてすみません、『奇怪』な状況と再会の『機会』だけで書いていました。というか、『帰界』や『奇界』は思いつかず。その発想力を私にください。あと、アリスが違いに気付くのを遅らせる事は出来たとは思います。でも、更に長くなりそうで恐いですね……。
そして、あの神綺様は異世界の神綺様なので、そういった展開もアリだったのかもしれません。元居た世界の神綺様が黙って無さそうですが……w 

ne様
満点、有り難う御座います。
お褒め頂き、そして何よりも「魅力的なアリスだった」と言って貰えた。それだけでこれを書き上げて良かったと思えます。

小山田様
ご指摘、有り難う御座います。
長い話だったので、どうしても自分のやりやすい流れに話を持って行ってしまったようです。これからは気を付けたいと思います。

俄雨様
こちらこそ、お褒め頂き本当に有り難う御座います。満点も頂く事が出来て、本当に嬉しいです。
……嗚呼、この嬉しさを上手く言葉に出来ない語彙の無さが憎い。これからも頑張っていこうと思います。



最後になりましたが、皆様に心からの感謝と愛を。そして、レス返しというものに慣れていないので不快な点があるかもしれませんが、お許し下さい。
今回は本当に有難う御座いました。
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