きかいと読んで、何と書く?

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/07 14:04:00 更新日時: 2008/03/05 10:43:57 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00





 冬も深まったというのに、チルノとミスティアは湖で無邪気にはしゃぎ回っていた。
 見る者が見れば馬鹿だと罵り、見る者が見なくとも馬鹿だと罵られること請け合いである。
 そんな馬鹿二人の元へ、駆け寄るのは一匹の妖精。
 凍った蛙を投げつけたチルノと、それを額で受け止めて涙目のミスティアは、血相を変えた大妖精の様子に遊ぶ手を止める。
「どうしたの、そんなに慌てて?」
「あのね、いまさっきそこに変な機械が落ちてたの!」
 チルノとミスティアは顔を見合わせる。
「機会って落ちてるものなのかなあ?」
 尋ねるミスティアに無言の頷きを返し、チルノはどこかへ飛んでいった。
 意味はわからないが、理解したことにして先を進める。
「? 機械なんだから、落ちてても不思議じゃないよね」
「良いタイミングってこと?」
「え?」
「よくわかんないな。それって、どういう機会だったの?」
 大妖精は顎に指を添え、そこに答えが書いてあるかのように空を見た。
 しばらく考え込んだ後、おもむろに口を開く。
「まず、とっても変だったの」
「変な機会……有り得ないってこと? 例えば相手がロボットだとか」
「う〜ん、ロボットって感じじゃなかったよ。どっちかと言えば、人間の使う家電に近い形をしてた」
「そんなのと出会うなんて、そりゃ変だ」
 納得したように頷くミスティア。
 真似するように大妖精も頷く。
「とにかく、見に来てくれない?」
「見られるの!?」
「見られるよ、機械だもん」
「いや機会だからこそ……まあ、いいか」
 大妖精の顔は、とても嘘をついてるようには思えない。
 とすれば本当のことなのか。
 だとしたらミスティアとしても見てみたいものだ。
 出会いという機会が、如何にして妖怪や妖精の目に確固たる存在として映るのか。
 二人が飛び立とうとしたところで、何処かへ行っていたチルノが戻ってくる。
 重たそうな七輪を抱きかかえながら。
 何故に七輪と思ったが、何も言わなかった。
 つっこんだら、負けのような気がしたのだ。





 大妖精の案内の元、ミスティアとチルノは目的の変な「きかい」がある場所へとたどり着く。
 そこは紅魔館にほど近い、湖と川の境目だった。
「それで、どうやって機会を見るの?」
「どうやっても何も、あれだよ」
 大妖精が指さす先には、何とも形容したがい機械がぽつねんと落ちている。
 紅魔館で目撃したオーブントースターという機械に似ていながらも、いきなり変形合体して動き出そうなフォルム。
 四方に伸びる煙突のような物体は、思わず御柱と叫びたくなること間違いなしだ。
 それでいて、全体的に小さい。下手をすればミスティアの手でも握ることができそうだ。
 なるほど、変である。
 変であるが、
「これ、機械じゃない!」
「えっ、だから最初から変な機械があるって……」
「機会じゃないの?」
「機械だよ。機械に見えない?」
「機械ね」
「機械でしょ」
 事ここにいたって、ようやくミスティアは自分の間違いに気づいた。
 機会ではなく、機械。
 当たり前である。機会など見られるわけもないのに、何を勘違いしていたのか。
 肩を落としながら、気恥ずかしさで顔を伏せる。
 唯一の救いは、勘違いしたのが自分だけで無いということか。
 おそらく、チルノも同様の勘違いをしているはず。
 そう思ってチルノの方を見れば、何やら変な機械を七輪の上に乗せていた。
「何……してるの?」
 これには、さすがの大妖精も尋ねざるをえない。
 チルノは何処から取り出したのか、団扇をパタパタを扇ぎながら、七輪の中に墨をくべる。
 真剣な眼差しで爆ぜる墨を凝視しながら、これまた真剣な声色で答えた。
「決まってるじゃない。焼いてるのよ」
 さも当然のように言う。
 しかしながら、ミスティア達には何のことだかさっぱり理解不能であった。
「えっと、チルノちゃん。それ機械なんだけど……」
 恐る恐る尋ねる大妖精。
「わかってるわよ。だから、こうして焼いてるんじゃない」
 質問すればするほど理解し難いというのは、一体どうしたことなのか。
 七輪の墨は赤く染まり、温度を上げていくが、生憎とそれで溶けるほど柔い機械ではなかった。
 うんともすんとも言わない機械に呆れ果てたのか、チルノは団扇を投げ出し地面に座り込む。
 そして、疲れたような口調で言った。
「ところで、この貝はいつ開くのよ!」
 勘違いも、ここまでくれば芸術である。
 と、ミスティアは思ったという。
 寒い冬の一幕であった。




【機貝】
 南米の廃棄物処理場で発見された新種。
 その外見は機械のように見えるが、れっきとした生き物。
 だがその動く姿は殆ど確認されておらず、一説では一年で三十センチも動かないという。
 鉄鉱石が主食。その為か体表は鉄のように固く、金槌でも割れることはない。
 調理すれば食べることもできる。ネジのような貝柱は珍味として、マニア達の間で好まれている。
 2006年12月、絶滅。
八重決壊
http://makiqx.blog53.fc2.com/
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投稿日時:
2008/02/07 14:04:00
更新日時:
2008/03/05 10:43:57
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1. 6 あまぎ ■2008/02/13 00:32:02
まず、どのSSを読もうかな、という自分の目に興味深いタイトルが飛び込んで来た。
そしてこのページを開いてみると、お、結構短いな、と思った。
それで一行目にして、よし自分の作品と同じ主人公だ、とちょっと喜んだ。
さらに次の行で、馬鹿っぷりの表現の上手さに驚いた。
さらにさらに……(中略)。

そうこうして、笑いながら読んでいるとあっという間でした。
センスも、題材も、表現も、ネタも、その全てが上手いなあ、と感動です。
何より、これだけの文章でここまできれいに纏めることは自分には出来ないです。
すっごいなあ……。そう思いました。
2. 1 小山田 ■2008/02/13 01:45:52
作者が面白いと感じたことを読み手に伝える努力が、もう少し欲しかったです。
3. 2 頭痛 ■2008/02/15 00:17:20
すまんが物語自体には面白みがないんだ。
地の文がいいだけに勿体ないかなっと
4. 6 織村 紅羅璃 ■2008/02/17 17:39:22
じ、じわじわくる......
ほほえましいですなぁ。
5. 6 名無しの37番 ■2008/02/27 11:28:26
お題がひらがなの「きかい」であることを逆手にとった、各キャラにとっての「きかい」を問うた作品……というのは深読みしすぎかな?
チルノ先生は幻想入りしたばかりの生物まで知っているなんて、非常に物知りですね!
6. 10 ■2008/02/27 21:39:23
ある意味、今回のお題で作者さま方が最も悩んだ部分なわけですが、
それをそのままお話に持ってくる発想がスゴイです。
何よりチルノの『きかい』は最後まで予想できなかった、ああホント芸術。
お話自体は短かったですが過不足がないです。文句のつけようがありません。
お題を活かしたSSとして最高だったと思います。
7. 3 つくね ■2008/02/28 12:53:06
お題をそのまま使った素直な作品、というのが第一印象です。しっかしまぁチルノ馬鹿だなぁ(笑)
……えー私が馬鹿でなければ「機貝」というのは造語だと思うんですかどうでしょうか? なにしろ後書きの説明があり得そうで自分の知識に不安が……
8. 1 つくし ■2008/02/28 15:01:25
ついついググってしまった。機貝岩なるものが引っかかりました。
さておき、よくわかりません。シュールでもないし、ギャグだとすれば笑いどころが良く分かりません。きかいを機会って勘違いするのも微妙に強引な感があります。なによりもチルノが焼いていたもののフォルムが描写からまったく想像できないためその正体が気になって気になって夜もぐっすりです。
9. 3 ■2008/02/28 20:07:52
同じ音のとり違え。
トリビア系なのかしら。
チルノらしいというかなんというか。
10. 6 たくじ ■2008/02/28 22:17:49
こいつら、アホすぎる。和ませて頂きました。
11. 5 椒良徳 ■2008/02/28 23:34:46
「七輪の中に墨をくべる。」うぇwwwチルノマジH
12. 2 時計屋 ■2008/02/29 00:13:40
馬鹿な、チルノが火を……!?
13. 7 ZID ■2008/02/29 01:18:58
その発想は無かったw さすがチルノは発想の斜め上を行く。前半分のベタな展開に若干ダレ気味に後半読んでたからこそ、ラストのインパクトが大きかった。物語として6点、短い文量で綺麗にまとめてオトしている技巧点として+1。
14. 5 もろへいや ■2008/02/29 01:32:18
機貝ですか…ひとつかしこくなった。
味があって面白かった。
15. 4 木村圭 ■2008/02/29 04:45:25
知っているのか美鈴!?(以下略
ものすごいシュールな絵なんでしょうね。本人が真剣なだけに。ああ見たいわー。
16. 2 とら ■2008/02/29 09:01:30
今ひとつ話に脈絡を感じないです。お題に関しても、無理矢理思いつく限りの単語を並べたような印象を受けます。
17. 4 らくがん屋 ■2008/02/29 10:53:23
あるあるよくある。
18. 1 as capable as a NAMELESS ■2008/02/29 13:35:06
世の中にはもっと芸術的な勘違いが溢れていると思う。
19. 3 中沢良一 ■2008/02/29 15:02:25
なるほどいいネタですね。もうちょっとネタとして練りこんだらもっと面白かったかと思います。もしくは落語風に書くとか。アンジャッシュみたいな最後まですれ違いで終わっても面白かったかもしれないですね。
20. 3 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:40:55
なんというH
でも、そのHっぽさが気にいりました。
勘違いを使ったネタ、なかなか上手く書けていたかと。
っていうか、機貝って本当にいたの?
21. 1 飛び入り魚 ■2008/02/29 19:48:34
機貝が本当にあるかと思ってググっちまったぜ
技あり。
22. 6 K.M ■2008/02/29 20:12:19
うむ、なんという奇貝とHw
23. 6 カシス ■2008/02/29 20:57:28
読みが一緒だと間違えることもありますよね。
ところで機貝って本当にいるんでしょうか?
24. 3 12 ■2008/02/29 21:18:53
「きかい」には色々な捉え方がある……というテーマなんだろうけれど、それにしても。
「機会」と「機械」を横に並べてその勘違いを楽しむ、というのは難しいよなぁw
オチもまさしくオチのためだけに作られた言葉、と言う感じで苦しい。
結局チルノが正解だったんだよね?
25. 5 BYK ■2008/02/29 21:56:03
いやいやそれは機貝(はたご)岩って名勝ですから、というマジレスはさて置き(←
お題の解釈といい機貝の説明といい、その発想はなかった(褒め言葉
26. 6 O−81 ■2008/02/29 21:58:34
 よく考えた。
27. 4 只野 亜峰 ■2008/02/29 22:00:22
なんというH
28. 4 綺羅 ■2008/02/29 22:40:38
大変あっさりした話でした。それだけになかなか高評価をつけるというのは難しくもあるのですが……。
29. 6 カミルキ ■2008/02/29 23:02:15
書き手の悩みどころをそう料理したか。これはやられた。
そして、僕の知らないことをチルノが知ってたので、ちょっと勉強してきます。
30. 6 moki ■2008/02/29 23:09:07
ばかばかしいなぁ(褒め言葉)
31. 4 blankii ■2008/02/29 23:44:23
なにこのボケ倒しの文章わわわわ。さりげなくチルノが正解しているのがHの真骨頂なのか。

32. フリーレス 八重決壊 ■2008/03/03 20:48:52
評価して頂き、ありがとうございます。
作品に関しては別のところで語っているので、興味のある方はそちらも是非。

>あまぎ様
タイトルを考えるのは苦手なので、そこが目に止まったというのは嬉しい限りです。

>小山田様
もう少し時間を掛ければ良かったと痛感しています。

>頭痛様
私自身も少し強引な話だと思いました。

>織村 紅羅璃様
この三人は見ていて微笑ましいので好きです。

>名無しの37番
ひらがなである事を利用したのは間違いありませんが、そこまで深い考えは持っていませんでした。

>畦様
ラストのオチを予想できる人は、それこそチルノか神様ぐらいだと思います。

>つくね様
機貝は造語ですが、ひょっとしたらまだ見つかっていないだけかもしれません。

>つくし様
描写不足に関してはご指摘の通りだと思います。個人的にもどんな貝なのか気になるところ。

>鼠様
日本語は同じ言葉なのに意味が違ったりして、とても難しいですけどそこが面白い。

>たくじ様
純粋な妖精達は見ているだけで和みます。

>椒良徳
まあチルノですから

>時計屋様
七輪ぐらいの火力なら溶けないのではないかと。多分ですが。

>ZID様
ラストはほぼ力任せに殴っただけの話ですから。真正面から喰らえばインパクトがあるのかもしれません。

>もろへいや
ないですから。そんな貝、存在してませんから。

>木村圭
雷電なら知っているかもしれません。

>とら様
脈絡については殆どノープランでしたので、そう感じられるのも無理は無いと思います。

>らくがん屋様
言葉ってのは難しいですね。

>as capable as a NAMELESS様
その辺りのエピソードを芸術家の人に聞いてみたいところ。

>中沢良一様
落語は年に一回聞くか聞かないかぐらいですので書けないのですが、アンジャッシュ風にするというのは面白いかもしれませんね。

>☆月柳☆様
機貝なんて存在しませんよ、きっと。

>飛び入り魚様
私もググってみましたが無いようです。

>K.M様
それにしてもチルノはなんで機貝を知っていたのか。謎です。

>カシス様
機貝なんて妄想です。だから妄想郷にはいるんじゃないでしょうか。

>12様
まさしくオチのために作った話です。チルノは不正解ばかりなので、たまには正解しても良いんじゃないだろうかと思いまして。

>BYK様
ググって気づきました。機貝岩なんて岩があるんですね……

>O−81様
ありがとうございます

>只野 亜峰様
でも、それでこそのH

>綺羅様
長編や中編の合間に息抜きとして読まれては、というコンセプトの元で書き上げました。
だからあっさり風味に仕上げてみました。

>カミルキ様
馬鹿だと言われてるチルノですが英吉利牛は知ってるようですし、意外と博学なのかもしれませんよ。

>moki様
私もそう思います。

>blankii様
チルノは無知ではなく、発想が斜め上なだけだと個人的には思っています。
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