ぜんまい

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/11 05:10:35 更新日時: 2008/02/13 20:10:35 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
・グロ要素が僅かながら入っています。



 そのとき彼女は写真を見た。一冊の本、その僅か一ページ、しかもその端。その写真は、なるほど想像力を、いや創造力を喚起せしめるものだった。これは使えると判断し、早速研究に取り組んだ。
 それはぜんまい式人形の写真であった。機械要素としては最も単純な部類に入るそれを、彼女は利用することにした。
『ぜんまいばね(発条)は、弾性の高い素材を渦巻状に巻いた機械要素で、巻かれた渦巻きが直線状に伸びようとする力を機械装置の動力源として利用する。』
『伸びようとする力が動力源』という言葉が印象に残った。動力は足だろうか? 頭脳だろうか? それとも手だろうか?
 研究は進んで行った。
 そして、彼女らの行為が終端に差し掛かろうとしたとき――。





















 自室の気品溢れるテーブルで十六夜咲夜が入れた紅茶を飲み、優雅な午後の一時を過ごしていた紅魔館当主レミリア・スカーレットは、名も知らぬメイドの言葉に驚いた。
「フランがいない?」
 紅魔館は吸血鬼であるレミリアのためにどの部屋でも日光を入れないが、無論、暗闇に包まれていることはない。まるで月明かりのような室内、どこまでも紅い室内、今、この場には二人がいる。
 いや、三人だった。咲夜がどこで聞いていたのやら、ノックもせずに部屋に入って来た。レミリアも咎めない。
「説明を」
 咲夜は事務的に言った。
 メイドはひどい息切れをしている。表情には焦燥と恐怖が混じっていた。彼女にとって問題なのは、あの娘がどこでどうしているのかではなく、この問題について、この館を取り仕切っている二人にどこまで言及されるのか、ということである。殺害されることは已む無しと思えど、やはりどうにか生き延びたい。
 さて、彼女の説明はこういうものであった。
 食事の時間になりましたので、我々はキッチンで料理を受け取り、あの方の所へ持っていくはずでした。しかし――この際ですので申し上げますが、いつも誰が持ってゆくのか、ということで軽い揉め事が起こるのです。死にたくありませんからね。結局いつもはジャンケンで決めることにしていました。ところが、今日はあの娘たちが、自分たちから持ってゆくと言ったのです。
 それで、あの娘たちに任せて、私は部屋に待機していました。ところが、あの娘たちは一向に帰って来ません。最悪のケースも頭に浮かびましたが、いや大丈夫だと自分に言い聞かせて、部屋へと向かいました。すると……。
「フランがいなかった、ということね」
 メイドは黙っていた。
「あの娘たちっていうのは?」
「入ったばかりの、二人組みの新人ですわ」咲夜が言った。「先日、お嬢様の所にも挨拶に行っていたはずですが」
「ああ、そんなこともあったかしら」
 咲夜は視線で話の続きを求める。
「それで、確かに妹様はいらっしゃらなかったのですが……二人が、死んでいて……私、もう慌てて……」
 最後の方は滂沱として流れる涙と嗚咽に潰されて、およそ聞き取れる声ではなかった。咲夜はなにも言わず、レミリアはため息を吐いた。この前にフランドールを見たのはいつだろう? ひょっとしたら、紅い霧の事件のときくらいかもしれない。
 あの事件より前は、フランドールも気性が荒く、レミリアか咲夜か美鈴、稀にパチュリーが持ってゆくことになっていた。並の者がゆけば、あっさりと殺されるに決まっていた。ところが件の事件以来フランドールが多少は丸くなったということで一般兵(少し意味は違う)に任せていたのだが、それが仇となったようだ。
 ついにネジが緩んだか。そういう意味のため息であった。
 メイドの様子が少し落ち着いてきたのを見て、レミリアは質問した。
「ねえ、さっきのはどういう意味?」
 レミリアは怖いくらいに優しい顔をしている。
「え?」
「死体を見て、それで慌てて……ねえ。あなたはフランがいなくなったことより、たかだか一端のメイドが二匹死んだことの方が重要なのかしら?」
「い、いえ! 失言でした、申し訳ありません!」
「お嬢様、いじめすぎですわ」
 レミリアはまたため息を吐いた。
「とにかく、妹様を探して参ります」
「そうしてちょうだい。私も出た方が良い?」
「いえ、お嬢様にご迷惑はかけられませんわ」
 これは嫌味であった。もちろんレミリアへのではない。
「さあ」
 咲夜は床に伏したメイドに手を伸ばし、起立を促す。彼女は恐る恐るその手を取って、潤んだ瞳で咲夜を見た。
「大丈夫、すぐに見つかるわ」
 部屋を出ると、二人はゆっくりと廊下を歩いた。メイドを慰めているのである。人間が妖怪を慰めているというのは、今更ながら不思議な光景ではないか。咲夜は笑いそうになる。
「あの」
 メイドが言った。
「妹様の場所、予測は付きますか?」
「さあ。そればっかりは分からないわね。色々調査してみないと……。それより、部屋を一度見たいわ。一緒に来る?」
 メイドが断ったので、咲夜は一人で現場を見に行った。
 件の部屋は、先程の妖怪メイドらが待機している部屋を過ぎて、もう少し直進したところにある。この部屋で待機することになっているのは、その日フランドールの部屋へ食事を持っていく係に任命された者たちだけである。それ以外の者がいれば、いわゆるサボりだ。

 フランドールの部屋は空っぽだった。当然である。隠れる場所もない。やはり彼女は、この館から姿を消したことになる。
 二人の死体は部屋の中にあった。
 一人は見るも無残な身体になってしまっていた。四肢は断裂し、部屋の色々な箇所に飛び散っている。顔は傷だらけでぐちゃぐちゃだ。首に至っては、半分まで切断されている。かろうじて胴体と繋がっているところが、かえって生々しい。咲夜は冷静に部屋を見回し、腕が二本と脚が二本あるのを確かめた。切断面と照らし合わせたりはしなかったが、十中八九彼女のものであろう。これは扉の近くの死体である。
 もう一人は鮮やかな死体であった。不謹慎ながら、咲夜にはそう思えた。右肩から左の腰にかけて一閃(一線と言うべきか)、彼女の身体を二つに分けている。その他は衣服に多少の汚れや糸くずが見えていたくらいで、目立った点はなかった。これは室内の奥の死体である。
 そして二人とも裸であった。これはフランドールが傘代わりに持って行ったのではないかと考えられる。というよりは、咲夜には事実としか思えなかった。そうでなければ自ら死ににゆくようなものだからだ。
 咲夜は儀礼的な合掌をした。さして憐憫の情は湧いて来なかった。このくらいは覚悟の上である。
 もう少し部屋を見回す。
 が、なにもない。なにもないというのもおかしいとはその通りで、床や壁は真っ赤に染まっている。咲夜だから平気なのである。慣れているというわけではなく、心を鬼にすることくらい、彼女には容易なのである。
 もう一度合掌し、外へ。よく見れば、血は扉の外にもあった。遠くまで続いているわけでもなく、室内ぎりぎりのラインにある。逃げようとして間に合わなかったのだろうか。それも推測に過ぎない。
 咲夜は二人が殺されたときのことを考えてみた。
 食事を持ってくる。扉を開ける。食事を置く。ここで忘れてはならない事項がある。フランドールが丸くなったとはいえども、警戒すべきということは自明であるので、中には入らずに食事を床に置いて、急いで扉を閉める、このように指導は徹底されていたはずである。にもかかわらず、二人は室内で死んでいた。特に、鮮やかな死体の方は奥にあった。明らかに彼女は室内に入っている。もう一人は異変に気付いて入ったところを殺されたのであろう。
(ふむ)
 口元に手を当てた。なにかが足りないと思う。
 それはなんだろう?
 もう一度、彼女は部屋に入った。さて――。
(食事だ)
 食事がなかった。盆もないし皿もないし料理の欠片もない。今日の料理はステーキとサラダであった。実に美味かったのを覚えている。
 血の海、とは比喩である。実際は海のように、いやそれどころか川ほどの深さもない。それらが沈んでいるはずもないし、見えないはずもない。
 しかし推理のしようもない。探偵ではないのである。
 保留。
 他に足りないものはあるだろうか?
 あるいは不審な点はあるだろうか?
(……特にはないか)
 身内の粗を探しているようで、まったく気持ちは高揚して来なかった。
 咲夜はその場を後にした。
 リビングでは、あのメイドが沈鬱な表情で椅子に座っていた。咲夜に気付き、
「えと……どうでしたか?」
 咲夜はくすりと笑った。
「お見舞いみたいな聞き方ね」
「……」
「……ごめんなさい、迂闊な冗談だったわ」
 メイドは、いやそんなことはない、と必死で言った。
「とにかく、捜索に行きましょうか」
 二人で紅魔館を出た。

 レミリアは図書館にいた。
 入口を開けても、パチュリー・ノーレッジの姿はなかった。カツカツと大げさに靴音を鳴らすと、小悪魔が気付いた。
「お嬢様。どうされましたか?」
「パチェは?」
「パチュリー様は」
 小悪魔は広大な図書館で一人書物を読み耽るパチュリーの現在地を、見知らぬ土地で地図も持たない観光客の質問に対し地元民しか知らないような目印を立て続けに並べて答えるような説明でレミリアに教えた。
 生まれたのはため息である。
「全然分からないわ。連れて行ってもらえる?」
「分かりましたー」
 果たしてパチュリーはそこにいた。小悪魔は空気を察してか、案内を終えると早々にどこかへ消えた。
「パチェ」
「なに?」
「フランが消えたそうよ」
 パチュリーはここで彼女の方を見た。
「消えた? どういう意味?」
 レミリアは事の顛末を簡単に話した。
「なんだ、消失とかじゃなくて、脱走ね」
「似たようなものよ」
「全然違う」
 パチュリーはぱたんと本を閉じた。表紙に『自動人形』と書いてある。
「なんの本?」
「人形の本。最近アリスが来ているでしょう? 私もちょっと影響されちゃってね」
 一人で考え、一人で行動する。そんな自立人形をアリスは作ろうとしている。研究に行き詰っているのか、近頃はこの図書館に訪れることが多くなった。パチュリーに相談することもある。
「で、私になにをしてほしいの?」
 パチュリーが切り出した。
「別に。報告よ、ほうこく」
「あっそ。まあ頑張ってちょうだい。大暴れしてないといいわね」
 本を持って去ろうとする。
 レミリアも後ろについて行く。小悪魔がアリスをつれて来た。
「来たわね」
「どうも。あら、レミリアもいるのね」
「毎日のように、ご苦労なことだわ」
「趣味よ、趣味」
 アリスとパチュリーは専門的な話を始めてしまった。レミリアもまるで分からないことはないが、さして興味があるというわけでもない。観光地を眺め歩くように、ゆっくりと歩いて行った。
 入口に戻ると、レミリアはフランドールのことを考えた。
(どうして私や咲夜が気付かなかったのだろう?)
 紅魔館には裏口がない。つまり正門から出てゆくしかないのだが、そのためには広間に出なくてはいけない。広間には我々がいるし、正門には美鈴がいる。また、美鈴が加担しているということは考えにくい。これは彼女の性格上の問題である。仮に彼女らが組んでいたとして、美鈴は門番をやっていなくてはいけないのだから、フランドールをそこまで手引きするいわば仲介役が必要となる。そのような規模の事件には思えない。
 すると別の場所から出たことになる。が、それは窓から出たことを意味する。窓が割れる音は聞いていない。
 どこかの窓が開いていたのだろうか? しかし換気はレミリアが寝ている間にすることになっている。たとえ部屋にいても、起きていたらいつ出てくるか分からないからである。
(……パチェの言う通りなのかもしれない)
 フランドールは消えてしまった。
「お嬢様?」
 小悪魔である。
「深刻な顔をしていらっしゃいますが……」
「ああ。あなたは知らないのね」
 事情を説明した。図書館に来てから二度目である。
「というわけよ」
「それは心配ですねぇ。うーん、しかし私もまったく気が付きませんでした」
「そうでしょう? あの娘のことだから、家の中をどかどかと潰して回ると思うのだけれど」
「あはは」
 小悪魔の困ったような笑顔は、私もそう思いますと言っていることを意味していた。
「怪しい人はいなかった?」
 レミリアは身体を伸ばして聞いた。無駄だと分かって聞いているのである。
「さあ。図書館にはいつもの人しかいませんでしたよ。私とパチュリー様、今はアリスさん、ちょっと前には魔理沙さんもいました」
「魔理沙? ……ふぅん、魔理沙ねぇ」









 真冬の寒さが二人に襲い掛かって来る。咲夜は防寒具完備であった。毛糸の帽子に毛糸のマフラー、毛糸の手袋。それに羊毛のぶ厚い上着も着ていた。風もきつい。しかも向かい風だったので、顔が凍ってしまったのではないかと錯覚する。目をしっかり開くことも出来なかった。風で乾いてしまう。
 妖怪メイドはいつもの格好であった。
「寒くないの?」
 見ているだけで鳥肌が増えて来るので、咲夜は聞いた。
「はい、大丈夫です」
「こういうところまで、人間と妖怪って違うのかしら」
「私は妖怪というか、獣に近いですから」
 確かに彼女は毛深い。それこそ羊のようであった。爪も研いだように鋭いし、牙だってある。子どもたちの夢見る妖怪を、そのまま具象化したような人物だった。
 そういえば。
「そうそう、聞きたいことがあったのよ」
「……なんでしょう」
 少し強張った声に聞こえた。
「妹様の部屋、食事がなかったのだけれど?」
「え……それは、どういう?」
「さあ。私にもさっぱり。確かに二人は持って行ったのでしょう?」
「はい、それは確かです!」
「怒鳴らないでよ」
「す、すみません」
「あのねぇ、誰も怒ったりはしないわよ。妹様に関しては、不測の事態が起こることさえ想像の範疇なんだから」
「ほ、本当ですか?」
 哀願するようなメイドの問いに対しては、咲夜は黙殺した。なぜならただ一つ、例外が存在するからである。いわゆる母性であるとか庇護欲であるとか、甘い考えが引き起こす事態。
「手分けしましょう」
 咲夜が言った。
「じゃあ私が向こうに行きますので、メイド長は」
「オーケー」
 妖怪メイドは魔法の森の方へ、咲夜は博麗神社の方へ行った。

 霊夢は居間で茶を啜っていた。湯飲みからは銭湯のように湯気が立ち上っていて、霊夢は湯飲みから口を離すとおもむろに顔を湯気の中へと突っ込んだ。実に幸せそうな表情をしている。
 少し申し訳ない気持ちがあったが、咲夜は声を掛けた。
「霊夢」
「んー?」
 特に動じることはなかった。気付いていたのかもしれない。
「妹様は来てない?」
 霊夢は返事をしなかった。
 湯飲みを卓に置き、ゆっくりと振り返る。戦闘するときの、真剣な眼差し。
「いないの?」
「ええ。いなくなった」
 そしていつもの霊夢に戻る。
「困ったものね」
「私にもお茶をいただけないかしら?」
「はいはい。そこに座ってなさい」
 霊夢が茶を入れに行っている間、咲夜は冷え切った顔を手袋で包むように触った。手袋の中の手もすっかり冷たくなっていて、全身が冷え切っている。ひょっとしたら凍死も有り得るかもしれない。咲夜には大げさには思えなかった。今日はそれくらいの寒さだった。
 庭を見た。雪は積もってもいなければ降ってもいない。しかし咲夜にはこの景色が白っぽく見えた。寒波のにおいが外を支配していた。うなる風は自己主張をしているようにも感じる。幻想的な冬であった。
 霊夢が戻ってくると、咲夜は事態を簡潔に説明した。
「いなくなった上に、二人も死んじゃったか。大変ね」
「そう思うなら一緒に探してくれない? あなたの勘は頼りになるのよ」
「やだ。寒いし」
 霊夢は可愛らしくそっぽを向いた。
「けちねえ……。ああ、温まる。いい仕事してるわ、霊夢」
「茶葉を売ってくれている人に感謝しなさい」
 二人は無言で茶を飲み合った。
 咲夜は、手分けすることになるとは思ってもみなかった。
 なぜならフランドールは外に出て暴れ回り、ありとあらゆる所に被害を及ぼすと考えていたからである。どうせどこか騒ぎが起きているだろうと思っていた。しかし現実は静かなものであった。外に出てみても風の音と風に揺れた葉音がするくらいで、静かなものだった。あるいは、その静けさこそが怪しいのかもしれない。
 我々は妹様を警戒しすぎているのかもしれないという気持ちが湧いてくる。
 飲み終わった。湯飲みを置いて、立ち上がる。
「ありがとう。それじゃ」
「頑張ってね」
 霊夢は手を振る。まったく動く気配はない。
「来ないなら、なにか言ってみてくれない? 勘で」
「んー、そうねぇ」
 霊夢は下を向いて考え込む。
 やがて、
「大した問題じゃないと思う」
 と言った。

 レミリアはばったり遭遇したメイドに質問してみた。そして一発で当てた。
「ええ、魔理沙さんは妹様の部屋に行かれましたよ」
 やっぱり、と思った。
 魔理沙なら手引きしてもおかしくない。それに図書館から本を借りる(パクる)ため、大きな袋を持ってくることもしばしばあった。今日がどうだったか、という質問に対しては、メイドも答えあぐねていたが、しかしレミリアは確信を持っていた。
(魔理沙がフランを連れ出したということは、大した問題にはならないわね)
 メイドを解放し、リビングに行って、別のメイドに紅茶を入れるように頼んだ。そのままリビングのテーブルに着席。
 外から激しい音が聞こえてくることもない。魔理沙の家にでもいるのだろうと思った。厄介事ではなさそうだ。レミリアは安堵し、運ばれてきた紅茶を飲んだ。咲夜が入れる紅茶の数倍は美味しくなかったが、元が良いので我慢して飲んだ。
 大好きな紅茶を飲んでいると、頭が冴えてくる。
(……いや、その場合だと)
 レミリアは紅茶を急いで飲み干し、フランドールの部屋へ向かった。
 数人のメイドが掃除をしようとしていたが、まだ始まっていないらしい。現場は当時のまま保存されている。
 掃除を後にするよう命令し、レミリアは部屋に入る。入る前に、扉付近に飛び散った血が目に入った。
 室内。
 入った瞬間、足元にはズタズタの死体があった。しかしレミリアの興味はすぐに消えてしまった。もう一つ死体を見る。こちらは興味を持ったようだ。近寄る。見る。触ってみる。
(レーヴァテイン、か)
 フランドールのスペルである。刀で切ったというには線は細いし、怪力でひきちぎったというには傷口が綺麗すぎた。故に、レミリアのこの判断である。
 一つであろうと二つであろうと、完全な死体があることをレミリアは確かめたかった。
(魔理沙は潔白ね。残念ながら)
 魔理沙が連れ出した場合、誰も死ぬ必要はない。どうせ魔理沙しか入らないし、フランドールが暴走しても彼女が止めるだろう。第一、暴走したフランドールを連れ出すわけがない。黙っている必要もない。
 死体を見た限り、確実に彼女は殺している。フランドールが。
(自然な流れで考えると。
 食事を持って来る。フランが寂しがっている。あやすために中に入る。遊ぶ。フランが暴走、さようなら――かな)
 扉付近の死体を見る。
(逃げ遅れた? そんなわけないわ。レーヴァテインの射程を考えなさい。それに……)
 二つの死体を見比べた。
 レミリアはなるべく血が付いていない壁と床を探して、だらしなく地面に座った。座ってから蝙蝠を出せば良かったと思ったが、面倒なのでそのままでいた。
 彼女は外に出て、なにをしたかったのだろう?
 それだけが、どうしても分からない。

「だから……」
「つまり……」
 パチュリーとアリスはまだ話し合っていた。小悪魔はどこかで座って話せばいいのにと思っていた。声を掛けようとしたが、ぴりぴりとした空気が漂っていたので出来なかった。
 パチュリーの机には上海人形と蓬莱人形が仲良く座っていた。やることもないのだろう、ただ座っているだけである。
 この二つの人形は、実によく動いていると小悪魔は思う。弾幕ごっこのときだって使っているし、個人の能力だって中々のものだと聞いているし、雑用だってするという話だ。ひょっとしたら私より強いのか。アイデンティティーが。
 少々打ちのめされた。まさか人形に負けてしまうとは。
「小悪魔」
「あ、はい」
 いつの間にかパチュリーとアリスが来ていた。
「ちょっと出てくるから、後はよろしく」
「借りるわね」
 そうして二人は出て行った。
 小悪魔は呆然として、彼女らが消えた後もずっと扉の方を見ていた。
(パチュリー様が外出した!)
 衝撃であった。


 夕飯も終わり、メイドらが雑務に追われている頃、レミリアの部屋には三人の人影が見える。まずは部屋の主、レミリア・スカーレット。そしてメイド長十六夜咲夜。さらに、動かない大図書館、パチュリー・ノーレッジ。アリスの家から帰宅したばかりだが、そんなことはお構いなしにレミリアが連れて来た。
 紅魔館の三大頭脳が一部屋に集まっている。
「なぜ私まで呼ばれているの?」
 パチュリーはあからさまに不服そうな表情をしている。
「知識人なら、話を聞くだけで突飛な考えが思いつくかもしれないでしょう?」
「お願いします、パチュリー様」
 やれやれと言いながら、彼女は部屋に残った。
「さて、咲夜」
「はい」
 咲夜は居住まいを正す。
「帰宅した際にお伝えした通り、妹様は見つかりませんでした。目撃情報もありません」
「どこを探したのかしら?」
「私は博麗神社や人里の方へ。彼女は魔法の森の方へ行きました」
 彼女とは妖怪メイドのことだ。
「ということは、顔見知りの所にはいないということね」
 パチュリーもなんだかんだ言いながら会話に加わってきた。レミリアが頼りにしているのはこのあたりである。
「でも、それも妙な話ね」
 レミリアが言った。
「あの娘が一日なんの騒ぎも起こさず過ごせるなんて、有り得ないでしょう? 多少丸くなったとは言っても、性格の本質はそう簡単に変わるものじゃないわ」
「……そうかもしれません」
「かくまっているのではなくて?」
「その可能性は否定しません」
 正直な態度に、レミリアは好感を持つ。
「まあいいわ。いなくなったとは言っても死んでいるわけはないでしょう。どうせ見つかる。それよりも」
 レミリアは目を細めた。
「なぜ二人死んだのか、分からない」
「それは私も思っていました」
 パチュリーの疑問の視線を感じ、レミリアは説明した。
「死体は二つ。一つは真っ二つの死体。これは部屋の中央にあった。もう一つはバラバラ死体。これは扉の近くにあった。どちらも部屋の中の死体だけど、扉の外にも血はべったりだったわ。ただ、扉付近以外には血はなかった。ここまではいい?」
 パチュリーが頷く。
「単純に考えるわ。扉付近の血は、扉近くの死体のものだと思う。死体の血なんて飲みたくないから確かめてないけど、十中八九当たっているでしょう。
 ということは、あれは外で殺されたことになる――別に有り得ないことではない。でも、どうして部屋の中に入れたのかしら? 外にあろうと内にあろうと関係ないじゃない。フランなら、外で殺してそのままにすると思う」
 道理であった。
 パチュリーは話の部分部分で相槌を打ち聞き入っていた。咲夜も自らの考えを整理するよう、真剣に耳を傾けている。
 話は続く。
「これは勘違いだったとしましょう。二人とも内で殺されて、外に出て助けを求めようと思ったけれど、間に合わなくて絶命。バラバラ死体がどうやって動くんだという疑問はあると思うけど、流してちょうだい(ここでレミリアは笑った。自分で言いながらおかしくなったのだ)。
 それで問題になるのは、死に方が大きく異なっている点。真っ二つの死体は、確実にレーヴァテインで死んでいる。そうよね、咲夜?(咲夜は無言で頷く)
 でもパチェも知っている通り、レーヴァテインの射程はとんでもないわ。あの部屋で逃げ場なんかない。二人とも内で死んだなら、同じ死に方でないと不自然。よって、彼女らは別々の場所で殺されている」
 ここでレミリアは紅茶を飲んだ。目を咲夜の方に向ける。咲夜は咳払いを一つ、後任を務めた。
「血の付着した場所から、もう一人の殺害現場は扉付近、そして室外になると考えられます。仮に、先程お嬢様が挙げられた矛盾点である『室内に入れる意味がない』ということを、本当は理由があったとしましょう。
 しかし妹様はあんな汚い殺し方は致しません。いや、もっと汚い殺し方をするかもしれません。あの方は手加減など出来ないからです。もっとえげつない死に様になるでしょう。また、断裂した四肢が四方八方に散らばっていることもおかしいです。妹様はちぎってどこかに投げ捨てたりするほど、サドではありませんから」
 咲夜はさらりと言ってのけたが、内容は非常に過激なものだった。
 が、誰一人そのことについては触れなかった。確かにフランドールは戦闘に関して手加減というものを、文字通りの意味で知らない。彼女の弾をまともに受けたなら、四肢断裂などでは済まなかったはずである。胴体そのものも、それこそ言葉に出来ないほどになっているに違いなかった。
「つまりあなたたちは、二人は別々に、しかも別人に殺されたと言いたいわけね」
 パチュリーの声に、二人の首が縦に振られる。
「で、そのうち一人はフラン、と……。でも、そうしたら――状況しか聞いていない私でさえ、もう一人の犯人が分かるわよ」
「そうなのよねぇ。合っているとは思うんだけど……」
「ですねぇ」
 三人の声が重なる。
「動機が分からない」
「それと」
 レミリアだけが続けた。
「結局、フランはどこから逃げたのか?」
「それですね。まったく、探偵というのは案外難しいですわ」
「案外って……」
 咲夜の、推理家を小馬鹿にしたような発言にうろたえながらも、レミリアはパチュリーに質問した。
「こほん……。パチェ、魔理沙が来ていたそうだけど」
「毎日来ているわよ」
「なにか不審な様子は?」
「なかったわね。それに、あいつは隠し事が下手ではないわ」
「いつもおしゃべりだから、大事な点が埋もれてしまうんですよね」
「しかも気付きにくい」
「お嬢様は、魔理沙が一枚噛んでいると?」
「ちょっと考えて、すぐに却下した可能性よ。でも、それが理想的でしょう? 我々も安心して放っておけるわ。でもそうすると、二人が死ぬ必要性がないのよねぇ」
 沈黙。
「ま、ほぼ解決してるみたいだし」
 パチュリーは立ち上がる。
「もう帰るわよ、私は」
「アリスと、どんな研究をされているのですか?」
「アリスと、というのは間違いね。アリスの研究に、私が手を貸しているだけ。
 たぶん彼女は話したことあると思うけれど、自立人形について、よ」
「自分で考え、自分で行動する人形か……。そんなものが出来るの?」
 レミリアは嘲るように笑った。
 しかしパチュリーは、対抗するように口の端を吊り上げた。不敵な笑みは、勝利は絶対的なものであると言っているようにも見えた。
「面白いことになりそうよ」
 パチュリーが出て行った後の室内。
 主人の目の前だが、咲夜は床に転んだ。
「疲れました」
「この部屋で寝る?」
「よろしいのですか?」
 レミリアはにやりとした。子どものような体躯には似合わない、壮絶に妖艶な笑みだった。
「血を吸わせてくれたら、許可してあげる」
「ご冗談を。お嬢様はそんなに食用旺盛な方ではありません」
「つまり?」
「自分の部屋で寝ます」
「分かればよろしい」
 咲夜は起き上がって、三人分の紅茶のカップを片付けた。パチュリーは一口も付けていなかった。勿体無いので少し飲む。すっかり冷めてしまっていた。
「そうそう、食事がありませんでした」
 唐突な発言に、レミリアは戸惑う。
「なんの話?」
「妹様の部屋です。食事がありませんでした。運んで行ったらしいのに」
「ああ……言われてみればそうだったかしら」
 小さい疑問だと思った。













 私は籠の中。
 未だ出られない籠の中。
 二人の影。
 二人が来た。
 ねえ、出たいの。ここから出たいの。
 ダメ?
 ちぇっ。
 おや、あれは?
 女の子。小さな女の子。
 いらっしゃい!
 遊びましょう!
「なにこれー?」
 さあ、それを触って――。













 妖怪メイドはいなくなっていた。
 今日も二人で捜索する予定だった咲夜が、約束の時間になってもリビングに現れない彼女に苛立ちを覚え始めた頃である。一人のメイドがリビングの掃除にやって来たので、
「ねえ、あの娘はどうなってるの?」
 と尋ねた。すると朝からいないということだった。皆が起きたときには部屋の中は空っぽで、既に調査をしに出たと思っていた、ということをメイドは言った(二人がフランドール捜索のために外に出ていることは周知の事実であった)。
 さて、どうしたものだろう。
 咲夜は昨晩の会合の記憶を引きずり出し、また新たな考えを生み出そうとしていた。
 三人の話し合いが終わり、部屋に帰った後、咲夜は動機足り得るものを思い付いていた。それは昨日の面子(咲夜・パチュリー・レミリア)だったから、かえって分かりにくかった事実である。もし美鈴が参加していたら、あの時点で判明していたかもしれない。
 そしてフランドールの脱走経路も分かった。これも同様の理由により、昨日は分からなかった。
 しかし咲夜には、どうしても消えた食事のことが分からなかった。あれはどこに行ってしまったのだろう? 隠すほどのことだろうか? なにか引っかかるものがある。
 いずれにせよ、彼女に会って確かめねばなるまい。咲夜は椅子を丁寧に直し、彼女を待っている間に脱いだ防寒具をもう一度着た。
 そこにパチュリーがやって来た。
「おはようございます。どうされました?」
「今日も出かけるわ」
「二日連続とは……。明日は雪ですかね?」
「……」
「冗談ですわ」
 パチュリーも防寒具を付けていた。
「転移魔法では行かないのですか?」
「ちょっとね。魔力は温存しておきたいの」
 咲夜にはよく分からなかった。
 二人で玄関に行き、靴を履いた。パチュリーのマフラーが長すぎたので、咲夜は進言してそれを結んだ。扉を開けると雪だった。
「明日も雪、が正解ね」
 パチュリーは皮肉を言った。
 雪は結構な量が降っている。
 地域によっては積もるかもしれないと、咲夜は空を見ながら思った。門に佇む美鈴の頭も、片栗粉を載せたようになっている。それでも地面に着いた雪はすぐに溶けて水となり、ワックスをかけたみたいに滑りやすくなっている。門までの道のり、パチュリーはあまり外に出ないからか、何度も何度も転びそうになった。咲夜は彼女と手を繋いで、ゆっくりと歩いた。パチュリーが外に出たことに、美鈴が驚いたことは言うまでもない。美鈴の、行ってらっしゃいませ、という言葉に咲夜は手を振って応えた。パチュリーはなにもしなかったが、横目で美鈴を見ていた。
 風が吹かない日だった。雪は段々と勢いを増してきた。二人の足元も、徐々に白の侵攻に押されて来ている。二人は時折頭を振ったり手で衣服を叩いたりして、積もった雪を落とした。
「咲夜はどこへ?」
「そうですね。今日は人里の方へ行こうと思います」
「あの知識人には言わない方がいいわ。色々と説教されたくなければ」
「そのつもりです」
 咲夜はにっこりと笑った。適当なところで二人は分かれた。咲夜にはパチュリーの白肌が雪に重なって今にも消えてしまいそうだと思えたし、パチュリーも咲夜の肌について同様のことを思っていた。
 さて。
 咲夜は気合を入れ直し、人里へずんずんと進んで行った。
 人里は、外に出ている人間が少なかった。天候のせいだろうと咲夜は考えた。
 大声でフランドールの名を呼ぶことも出来ないので、地道に歩いて行くしかないのだが、この雪の中を歩いていると、上白沢慧音に「なにをしているのか?」と声を掛けられるかもしれない。そのときの言い訳のために、金は持参して来た。半紙を買いに来たとでも言えば良いだろう。
 それにしても、寒い。昨日も相当な寒波だったが、今日はそれ以上ではないか? 咲夜はこれだけで、すっかり家に帰りたくなってしまった。温かい紅茶を飲んで、のんびりと過ごしたい。
 そこに。
「なにをしている?」
 上白沢慧音だった。

 レミリアは妹のことなどすっかり忘れていた。騒ぎもないし、放っておいても良いとさえ考え始めていた。昨日の推理は正解していると思ったし、分からないところは咲夜が上手く立ち回ってくれるだろうと考えていた。
 昨日のパチュリーの顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え、やがて消えなくなった。レミリアは人形のことを考えている。
 自立人形――。そんなものは本当に出来るのだろうか? 本物の人形師、アリス・マーガトロイドでさえ成し得なかったことだ。たかだか一人の魔女が介在したところで、結果が易々と変わるはずはないだろう。ところが昨日の彼女の表情に宿った自信は、確かに……。
(いったいどうやるつもりなのかしら?)
 それで彼女は今、図書館にいるのだが、残念なことにパチュリーは出払っていた。小悪魔に尋ね、昨日パチュリーと話をした場所へ行った。
 うろ覚えの記憶を手繰り寄せ、彼女が昨日読んでいた本を探す。発見。『自動人形』と書いてあった。
(ネジ巻き人形。からくり人形。ロボット。なるほど、自動人形ね)
 機械の力を使い、人の力を借りずに動く人形。すなわち自動人形である。パチュリーはこれを応用することを思いついたのだろうか。しかしそれならアリスが考えていてもおかしくはない話である。
 やはり自分には分からないな。専門外だ。
 彼女はそうやって切り上げようとした。が。
(……ひょっとして、私は先入観にとらわれているのでは?)
 昨日の去り際のパチュリーの言葉を思い出す。
「面白いことになりそうよ」
 小悪魔に、パチュリーとアリスが最近読んだ本のことを聞くと、あっさりと判明した。リストが作られていたのである。レミリアはそれをなるべくゆっくりと読んだ。

『藁人形の呪い』
『単純機械』
『からくり人形の仕組み』
『機械要素』
『魔力』
『人体の奇跡』
『幻想郷地図』
『世にも奇妙な話』
『自分とはなにか?』

 レミリアは関係がなさそうな本を除外し、あらん限りの知識を絞って考えてみた。パチュリーの成そうとすることを。
 なぜこんなにむきになって考えているのか?
 まったく、友人を持つとこうなってしまうから困る。



「こんな雪の中、半紙なんぞ買いに来たのか」
 慧音は呆れ顔で言った。
 咲夜が凍えそうなので家に入れてくれないかと頼むと、慧音は渋々ながら招き入れた。人間好きの彼女だから、頼みを無下にすることは出来ない。それに、こうやって咲夜が嬉しそうな顔で温もっているところを見ていると、入れてやって良かったなと、先程の渋々という気持ちも外の降雪に混じってどこかへ飛んで行ったような気持ちさえする。
「半紙なら私が持っているから、それをやる。持って帰りなさい」
「はーい」
 まるで教師と生徒の会話だった。
「ところで」
 慧音は疑問の表情を隠さず聞いた。
「最近、紅魔館でなにかあったのか?」
「え、きゅ、急になによ」
「なにをどぎまぎしている……。まあ良い。パチュリー・ノーレッジとアリス・マーガトロイドが三日連続で人里に来ているんだ。私の歴史では、パチュリー・ノーレッジはあんなに活動的ではなかったはずだが」
「へえ、パチュリー様が?」
「その口ぶり、知らなかったのか?」
「ええ。最近、よく出歩いているのは知っていたけど」
「良からぬことを考えているのではなかろうな」
「人を疑うのやめてよ」
 慧音はまだ訝しんでいる様子であった。最初の問いの際、咲夜が僅かながら動揺したのが引っ掛かっているようだ。咲夜は、慧音が知っているはずはないと分かりながらも、まさかと思いうろたえた。心理とは嫌なものである。
 歴史でも見られるのかと警戒した。しかし慧音はそんなことはせず、家の奥に引っ込んだ。何かと思えば半紙である。しかも二袋も持ってきた。
「かばんは?」
「ないわ」
「お前は本当に半紙を買いに来たのか? (慧音はまた奥に引っ込んだ)ほら、これを使え。これはやらんから、必ず返しに来いよ」
「助かる、ありがとう」
 咲夜は受け取ろうと手を伸ばした――ドン!


 外から強烈な音がした。家屋全体も揺れたようだ、茶が湯飲みから飛び出して机の上に浸っている。二人は急いで窓の側に寄り、警戒しながら外を見た。誰もいない。気配もない。気配がないというのは不気味であった。先程まで人がいたはずなのである。明らかに人為的な破壊音だったからだ。それも、彼女らには聞き慣れた……。誰もいないと分かるや、慧音は窓を壁から抜き出すように力強く開き、身を乗り出す。二秒経ってもなにも起こらない。咲夜はこういうときにも徹底したリスク回避をしていた。五秒経っても変化がない。それで安全だと思い、慧音の横に立ち、並んだ。
 外は雪が降っているだけだった。近くの木々に被害が及んだ形跡もない。咲夜が来たときよりも人間の影が増えているが、それは音にびっくりして出て来た野次馬であろう。
 慧音が大声を出して家にこもっているように言う。ここからはまるで被害が見えないのに、あの豪快な音。それが指し示す破壊力は計り知れない。
 咲夜は飛び降りようとした。
「待て!」
 慧音が呼び止める。
「お前、今の行動はどういうことだ?」
「……」
 慧音が言っているのは、咲夜がギリギリまで立ち上がらなかったことである。
「なぜあんなに警戒したのだ?」
「あんな音がしたら、誰だって警戒するでしょう?」
「そういうものとは違った」
 実に良く見ていた。
「なにか知って――」
 時間を止める。
 あの音は弾幕で自然物を破壊してしまったときのものと酷似していた。魔理沙と戦うときによくある。マスタースパークだ。
 つまりマスタースパークと同レベルの、あるいはマスタースパークそのものの発射があったわけだ。咲夜はフランドールの可能性が極めて高いと思った。それゆえの、徹底したリスク回避である。
「ごめんなさいね」
 咲夜はかちこちに固まった慧音にウインクし、窓から颯爽と飛び降りた。慧音が動き出すようになったのは、それから三分後のことである。

 紅魔館のレミリアも音を聞いていた。
「今のは……」
 フラン?
 レミリアは腰を上げ、自室に帰った。
 出て来た彼女は、愛用の傘を握っていた。



 音のした方角には魔法の森があった。咲夜は空を走り続けた。足が疲れないのは良いことだ。場違いな考えが頭をよぎった。
 人の影。
 フランドールのものではない。もっと小さな。
 誰だろう?
 咲夜は降りた。そこにはあの妖怪メイドがいた。
 死んでいた。
 時間はほどほどに経過しているように思えた。が、あまり見ていられない。
 咲夜をして、吐き気を催すほどの姿だったからだ。なによりも胴体が悲惨だった。ぐちゃぐちゃになっている。それ以上、彼女を見ることは出来なかった。咲夜は見ぬふりを決め込んで先を急いだ。

 彼女がいかに自分やレミリアを恐れていたのか? 咲夜には知る由もない。
 しかしフランドールが逃げたことによる罰則を極度に恐れていたことは確かであった。振り返ってみれば、彼女は我々に怯えきっていたではないか。一人が殺され、フランドールはもう一人を殺さずに逃げたのだろう。フランドールも知恵が働くようになっている。二人よりは一人の方が与し易いと思い、一人だけを招き入れたのだろう。
 しかし新人ながらフランドールの部屋に行くことを自分から言い出すくらいの豪胆な性格の人物を、簡単に崩せるわけもない。仕方がないので弾幕ごっこ。いきなりレーヴァテイン。あっさり終了。フランドールは部屋を出る。奥の死体を見たもう一人は、立ち竦み反撃不可。フランドールは脱走。
 逃げ出したフランドールは、最初に見つけた部屋に入った。それは彼女らの待機していた部屋だった。妖怪メイドはさぞ驚いたことであろう、まさかこんなやつが来るなんて――。
 外に出たがっていたのは分かっている。部屋の窓を開け、逃走幇助。
 慌てて彼女はフランドールの部屋に向かった。そこには呆然としたメイドが一人、既に事切れたメイドが一人。
 自分はいかなる罰を受けるのだろう? それを考えると恐怖に震えた。こいつらが迂闊なことをしたせいで、私まで!
 恐怖は怒りとなり、生存したメイドにぶつけられた。気が醒めるまで、否、気が狂れるまでズタズタにした。
 やがて彼女は狂気に似た正気となり、死体二人を部屋の中に入れ、フランドールの仕業とし、レミリアの部屋へ駆け込んだ――。

 これが咲夜の推理であった。
 咲夜はレミリアを主と認めているが、恐怖はしていない。彼女の感情を、咲夜が理解することは出来ない。しかし現実問題として有り得ることなのではなかろうか。そのように思ったのである。
 いずれにせよ、真実は闇の中である。彼女は死んでしまったのだから。

 木々が倒れているのが見えた。現場である。咲夜がたどり着いたとき、アリスが倒れていた。
「アリス!」
「くっ……」
 意識ははっきりしているが立てないようだ。ふくらはぎに赤いものがとめどなく流れている。一刻も早い処置が必要なのは明白だった。
 咲夜は迷った。まだフランドールはこの近くにいるはず、追うべきか。
 それともアリスを治療するべきか。
 ひどい怪我ではあるが、死ぬほどではない。死ぬほどではないということは、死なないだけで人体には甚大な被害があるということである。
 逡巡。躊躇。
 アリスが言った。
「早く、フランを探して」
「でも」
「フランじゃないと、止められないのよ!」
 止められない?
 咲夜の論理に狂いが生じた。










 パチュリーは人形と対峙していた。
 頭には回り続けるぜんまい。元はただの藁人形だ。
 二重の魔力による結合だった。ネジのような役割だ。藁人形とからくり人形を混ぜ合わせるための。
 アリス自身言っていた。藁人形は呪術に使える、と。呪術的であることは魔力的であることと類似している。パチュリーはそこに着目し、同時にぜんまい人形のことを考えた。
 ぜんまい人形(ネジ巻き人形とも言うが)の仕組みとは?
 渦巻き状の線が、直線に戻る力を利用し動かす。それが内部の機械だ。
 では糸が直線に戻り「続けれ」ば?
 これが二重の魔力の、もう一つの点であった。魔力の糸――魔糸とも言うべきか――故に戻りきることはない。そしてそれは頭のネジをを基点として回り続ける。自立人形のプロトタイプだ。今後はこれをアイデアの中心に据えてゆく。
 後はネジに多少の魔力さえ込めてしまえば、内部の魔力と結合し回り続けることが可能だった。魔力を入れるだけ……。そのために人形はアリスの家に置かれていたのだが、時期と運が悪かった。
 フランドールが巻いてしまったのである。
 ネジに込められた魔力はフランドールのものだ。フランドールの力が存分に込められている。また内部の機械的役割を担っている糸には、パチュリーとアリスの力が入っているが、人形を支配しているのはフランドールの力。
 フランドールはネジを巻いただけで飽きてしまい、どこかへ行ったようだが……。人形にはそんなことは関係がない。今、このネジ巻き人形にはフランドールと同等の力がある。しかもパチュリーとアリスのような自制心を兼ね備えた!
 正直なところ、パチュリーは勝てないと思っていた。フランドールには勝てるのだ、彼女は勢いで行動して来るから。
 しかし、自身を過大評価しているわけではないが、フランドールが自分の知能を持っているとしたら……。
「困ったわね」
 心底どうしようもなくなると、人は笑ってしまうものである。
 パチュリーもその例に漏れなかった。


「自立人形って言わないんじゃないの?」
「だから、プロトタイプだって言ってるじゃない」
 咲夜はアリスを背中に乗せて走っていた。スピードは落ちるものの、放っておくわけにはいかない。それに製作者がいた方が心強いということもある。今、パチュリーが人形の元にいることを彼女らは知らない。
(確かに面白いことになりそうとは言ったけど、完成するとは言ってないものね……)
 些か早計であった。咲夜は自らを恥じる。恐らくレミリアも同じことを思っているだろう。
 そこに爆音。
「下ろして。飛ぶわ」
「集中出来るの?」
「呼吸するのと同レベルよ、飛ぶのなんて」
 アリスは笑みを見せたが、額には汗が滲んでいた。言葉通り彼女を下ろし、見届ける。なるほど、いつものアリスそのものだ。優雅に可憐に浮いている。しかし、スピードがいつもとは段違いに遅い。傷が痛むからだ。咲夜は彼女に合わせながらも、先を急ぐ。
「人の心配なんかいらないわ。さっさと行きなさいよ」
「……分かった」
 咲夜は先に行った。
 アリスは更にスピードを落とした。今の速度もかなり無理をしていたのだ。結局、飛ぶのも歩くのも大差ない速度になってしまった。目的地に真っ直ぐ行けるなら、蟻の方が速いかもしれない。
 ――まさかフランが絡んで来るとはね。
 どうしようもなかったことだ。不運という他ない。誰も責める気はなかったし、自分が悪いとも思わない。それはフランドールも対象に入っている。彼女も悪くないのだ……。たとえ自分の家が悲惨なことになっていても。
「誰か、修理してくれないかな」
 苦笑い。奇しくもそれは、パチュリーが笑ったときと同じ時刻であった。




「ねえ、私と遊ばない?」
 慧音は度肝を抜かれていた。
 フランドール・スカーレットが目の前に現れたからだ。
(なぜ悪魔の妹がここにいる? 待て、そんなことよりもここから離れなければ。人里に被害を与えてはならん!)
 慧音は言葉巧みに彼女を誘導した。
 魔法の森、その上空なら被害も少ないか――?
 唐突すぎる邂逅に、歴史を変えるという方法も思いつかなかった。



 目的地に着いた。
 パチュリーは負傷していた。が、軽い。右腕の衣服が焼け焦げ、また右腕そのものにも擦過傷が見られたが、その程度だった。
 咲夜はここに来て初めて人形を目にした。赤いものがべったりと付着している。血だろう。藁人形をモチーフにしたらしいそれは、確かに言われてみればその名残があるが、傍目には気が付かないだろう。脳天にはねじが差し込まれており、そこが機械的役割を担っていると分かる。あれを破壊することで、彼女の仕事は終焉を迎えるわけだが……近付く術が思い付かなかった。それは幻想郷の暗黙のルールそのものだ。弾幕勝負を仕掛けてくる相手に、アンフェアな行為をしてはならない。時間を止めて破壊するだけなら容易であったが、人形がフランドールを投影してしまったことにより、その邪道とも言える戦法を取ることは憚られた。しかし真っ向から行っても叩き潰される自分がそこにいるだけで、歯が立たないであろう。八方塞がりだ。
「咲夜。メイドは捕まえたの?」
 パチュリーは冷静だった。少なくとも表面的には。
「すみません、死んでいましたわ。これが推理小説なら、連続殺人でいよいよ謎が深まってくるところですけれど」
「この子に殺されたのね。同情しないけど」
「私もしてません」
 刹那、人形が発射した弾幕は――やはりフランドールのものと酷似している!
 二人の背後にあった木々は紙のように潰れてゆき、障害物をなくす。それは隠れ場所を消すことと同義である。しかし、この戦闘に参加している者は誰一人としてかくれんぼをするつもりはない。
 咲夜は時間を止める。無数のナイフを人形に向けて配置、自身も更なる弾幕を撃つ構え。
 時間を進めると同時、彼女はナイフの後ろから猛烈な弾を発射する。
 アンフェアに近い弾幕だった。
 ひょっとすればアンフェアの域に到達しているかもしれなかった。
 隙間がまるでない、不可避の弾幕。
 殺す気で撃ったかと聞かれれば、そうだと答える弾幕。
 だが相手は人形であった。
 修理をすれば直るものだった。
 それに、彼女には直させる気などさらさらなかった。
 パチュリーも同意見だろう。
 だが。
 人形は僅かの隙間を確実にかすりながらかいくぐり、咲夜に肉薄する。
 その芸術的妙技は、かすらざるを得なかったというよりは、敢えてかすってみたという余裕さえ感じられた。
 ――マジで?
 いつもの気品も掻き消えて、咲夜は若者らしい言葉を以って驚きを表現する。胸の中で。
 近距離……いや、零距離。
(殴れ!)
 咲夜は動かない。殴ってくれた方がありがたかった。弾幕勝負の概念から逸脱出来るからだった。
 人形はそれすらも見越していたのだろうか?
 この距離で通常弾幕を放つ。
 圧倒的に最適化された動き。
 正に。
(……機械!)
 人形ではない。
 これは機械だ。ロボットだ。
 咲夜は認識を改めた。
 そのときにはもう、咲夜は直撃を受けていた。
 パチュリーがなにか叫んだような気がしたが、彼女には聞き取れなかった。
 聞こえなかったのではなく、聞き取れなかったのである。
 まだ聴覚が生きている証拠だ。
 死んでいない。
 死んでいないということはどういうことだろう?
 まだ戦えるということだ。
 腹部が痛い。今日の朝食はトーストだった。腐っていたのだろうか、賞味期限、確認してなかったし。はは、失敗したな。さすって気持ち分だけましにしよう……。うわあ、なんかヌルってするし。汚いなあ。
 頭だけは妙に冴えている。
 弾幕の隙間――貰った!
 咲夜の銀のナイフは的確に獲物を捉えている。
 獲物の視線、身体の向き、そして意識。すべてが今、パチュリーに注ぎ込まれている。
 これをどう防ぐというのか。
 フランドールなら……フランドールなら?
 フランドールならきっとこうだった。


 甘んじて受ける!


 人形にナイフは刺さった。
 致命傷にはならない。致命傷とは機械の精密部分の破壊を指す。機械の精密部分とは魔糸を指す。
 届かなかったらしい。
 注意がこちらに変わる。
 まずい、かも。

 咲夜も例に漏れなかった。
 くすりと、
 笑みがこぼれた。



「咲夜ぁ」
 上空から、場にそぐわない声がした。
 それは語弊だ。
 上空から、場に最も則した声がした。
「……妹様?」
 フランドール・スカーレットだ。
 メイド服を着ていた。
 傘を差していた。
 笑顔だった。
 楽しんでいた。
 昨日から、笑顔ばかり見ているな。
 ふと咲夜はそんなことを思った。
 フランドールの笑顔を見るのは気持ち良かった。屈託のない笑みは、作り笑いの何倍もの清涼を与えてくれるからだ。
 だがそれも、いつもはあの暗く狭い密室でのみの話。
 今は……。
 雪はいつ止んだのだろう?
 あんな豪雪が消えたことにも気が付かなかった。
 フランドールの笑顔は、太陽の横にあった。
 太陽が二つあるように感じた。
 三つだった。
「死にそうね、咲夜」
「お嬢様!」
 それは微笑ではあったが、咲夜にはとびっきりの笑顔に見えた。
「あら、お姉様」
「相変わらず嘘臭い敬称を……」
「そんなことはありませんわ、私はいつだってお姉様のことをお姉様と呼びお姉様としてお慕いしてますもの」
「この間、烏天狗が来たときに『あいつ』って言ってたじゃないの」
「読者サービスだったり」
「いや、あれは記事になってないから」
 レミリアは人形を見た。
「汚い人形だこと。藁人形とからくり人形を混ぜ合わせたみたいね、パチェ?」
「へえ、詳しいじゃない」
「私に隠し事なんてすっごく早いわ。そりゃもう、すっごく」
「あー、あれ見たことあるー」
 咲夜の側に、誰かが降りてきた。視界が霞んでいる。今にも眠りそうだった。それでも、この人は誰なのだろうと気になった。応急手当をしてくれているこの人は。
「動くな。傷に触るぞ」
 声はついさっき、聞いたばかりだった。
「ほら」
 視界が真っ白になった。
 咲夜は焦った。脈拍が速くなる。目がダメになってしまったのかと思う。しかしそれは勘違いだ。
「半紙。ちゃんと持って帰れよ?」
 慧音も笑った。
 本当に昨日から笑顔ばかりだ。
 咲夜の表情は、朝から夜になると風景ががらりと変化するのと同様に、曇天から快晴に変わった。

「とにかく人形は、妹様と似たような思考の持ち主なの。詳細は後で話すわ」
「なるほど、フランのコピーね。ということは、ただ遊びたがってるわけか」
「ええ、あれ私なの? パチェってば、工作下手なんだね」
「妹様ってそんな天然キャラでしたっけ?」
「時間経過なんて早いものなのよ、パチェ。フランだって変わるわ」
「さっすがお姉様!」
「そんなことより」
「ええ。遊んであげましょうか」
「オッケー」










 目を覚ましたとき、咲夜は自室にいた。
 最初に見えたのは天井だった。深い睡眠から覚めるのに似た心持ち。まだ頭はぼんやりしていた。
 こういうとき、お話の中の人物なら(ここはどこだろう?)などと思ったりするものだが、咲夜は違う。見えた天井と起き始めの感覚、それに昨日の出来事からの推察で、自分の部屋にいるのだと分かった。ベッドはいつもよりふわふわとしているように思えて、いつまでも沈んでいたかった。枕に頭を乗せて、大の字に寝転んでいたかった。でも私はメイド長であり、レミリアお嬢様に仕える身であり、人間であり……。起きなければならなかった。しかし、もう少し寝ていようと思った。自分は機械のように定まった動きしか出来ないものではない。
 多少、わがままだってしてみたくなるものだ。
 次に起きたとき、二時間が経過していた。
(寝すぎた……)
 慌てて起き上がると、風景がぐにゃりと歪曲して見え、咲夜は倒れた。ぼすん、という音がして、また肉体が柔らかなシーツに入り込む。もう一度寝たい気分。
 だがこれ以上は怠慢であると、今度はゆっくりと起き上がり、よろめきながらもクローゼットにしまっている予備の服を取り出す。昨日の服はもうダメだろうし、この姿のまま出るのはまずい。なにせパジャマなのだ。
 咲夜にとって、着替えというのは事務的な行為だった。
 脱衣。着衣。ただそれだけだった。
 昨日の自立人形を思い出すと、着替えるのも億劫になる。
 アレはプロトタイプといえど、自立人形になるはずだったものである。
 からくり人形の機械要素であるネジ(ぜんまい)を活用し、魔力を込め、永久に回り続ける。動き続ける。
 あれが自立というならば、研究など一切進まなくて良いと、咲夜は思う。
 正確無比で無駄がない……。それが我々の理想であろうか?
 いつもとは脱衣の順序を変えて、咲夜は気分転換をした。

 リビングには紅魔館主要メンバーに加え、アリス・マーガトロイド、フランドール・スカーレット、更には上白沢慧音まで集まり、いつもの静かな雰囲気ではなかった。それは談笑の喧騒だった。
 咲夜は時間を止めて、すっとレミリアの横に腰掛けた。
 そして時は動き出す。
「あら、咲夜」
「おはようございます」
 誰も驚かなかった。咲夜はがっかりした。
「食事の謎は解けなかったわ」
「そうでしたか……。ああいう状況になると、なんでも疑ってかかってしまいますね」
「ごめんね咲夜、怪我は大丈夫?」と、アリスが聞いてきたので、咲夜は「おかげさまで重症よ」と答えた。
 どうやら上白沢慧音も昨日の事実を知ったらしい。咲夜に向けて、まるでいたずらっ子をたしなめるような視線を送った。
 パチュリーは紅茶を飲んでいた。
 レミリアも紅茶を飲んでいた。
 フランドールは小悪魔と戯れていた。
 美鈴はこの面子の中では影が薄いため、誰も注目していなかった。
 皆、思い思いの行動をしていた。
 最適化された人形の行動――機械に通ずるものがあった。
 なぜ機械という存在を、我々は求めたのか?
 利便性だ。それらは能率的な作業だ。
 だが、昨日のネジ巻き人形は濃縮されたものがあったろうかと、咲夜は思うのだ。
 中身がない。意思という名の効率性しか持たない、冷たい方程式。
 パチュリーとアリスの頭脳を併せ持っていたと聞いていたが、結果的にその要素を咲夜は見ることがなかった。いや、取り込まれたはずの無邪気さ(フランドールのものだ)さえ見なかったように思えた。パターンが増えただけだったからだ。いかに雑学が増えようと、いかに数字に強くなろうとも、いかに人形への知識があろうとも、ネジ巻き人形にそれらは一切必要なかったのである。なぜなら利便性とは無縁のものだから。
 そうだ、ナイフが当たったのは、なにも妹様ならああいう行動をするからではなかったのだ!
 極めて論理的且つ無駄な労力をしないためにあの行動を取ったのだ。壊れはしない、当たっても致命傷にならないどころか影響もない。実に機械的な判断だったではないか。
 本物のフランドールなら、きっと……。
 そうこうしているうちに、アリスとパチュリーは話し合い始めていた。
「それにしても、見事な失敗作だったわね」
「やっぱり自立人形を作るには、今までにない発想をしなきゃダメだわ」
「模倣から始めるのが適切だと思ったんだけど」
「良い教訓になった、と思えばいいじゃない。次よ、次!」
 アリスはまだまだ研究するようだ。それもそうだ、これが彼女の夢なのだ。人形師としての使命というよりは、アリス・マーガトロイドの信念なのだ、完成させることは。
 誰かが笑った。誰かが見たが、誰もが笑っていた。
 無駄なことをし、無駄なことで笑えれば良いではないか。そんな余裕がある生き物は、私たちだけなのだ。咲夜だけではない、皆が感じていることだ。証左として、フランドールがここにいる。
 彼女は機械に為り得た。生後、五百年近い歳月をたった一つの部屋で過ごして来たのだ。壊れても無理はない。だが自我があり、彼女はありのままのフランドールでいる。
 感情のある者はバグを恐れる。恐怖や孤独に耐え切れなくなったとき、呆気なく死んでしまう生き物だから……。
 結局はそういうことなのだった。機械にはなれない。機械を作ることは、生き物を作ることではない。魔女と人形師の計画は、本質が少しずれてしまったのかもしれない。
 咲夜はアリスの肩を見てふと思ったことがあったので、発言させてもらうことにした。
「次は人形を作ってね。それも、可愛らしい愛玩用の」
 アリスの右肩の上で首を傾げる上海人形が、自立人形のプロトタイプに相応しいのではないかと思えた。誰かには。あるいは、全員かもしれない。





ゲームに責任を取らせる世間に捧ぐ。
s
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/02/11 05:10:35
更新日時:
2008/02/13 20:10:35
評価:
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1. 5 小山田 ■2008/02/13 02:01:35
冗長な部分と、肝心の真相部分がわかりづらかったことで、少し点数を下げました。舞台とした紅魔館の構築は巧みだと感じました。
2. 5 俄雨 ■2008/02/14 11:41:25
>妖怪メイド
妖精メイドでなくて……?
妖精は死んでも直ぐに転生するので、大騒ぎするのは違和感ありました。
(チルノや三月精など、知性のありそうな者はどうかわかりませんが、咲夜たちもゲーム中でおそいくる妖精ポロポロ落としてますし)

自律人形に関してはなるほどと感心するものがありました。
文章中、たびたび突っ掛かる部分はありましたが、面白く読めました。

>ゲームに責任
ここで主張してもwゲームのSS祭りなのにw
3. 5 名無しの37番 ■2008/02/16 20:56:15
別にミステリ仕立てにしなくても良かった気がします。というかミステリ仕立てにしたせいで、違和感がより大きくなってます。
消えた食事はまだ置いておくとしても、フランは二日間も誰にも見つからず騒ぎも起こさず、結局どこで何をしてたんでしょうか。人形もぜんまい巻いただけで放っておいたようだし。
要所要所の雰囲気は良かったと思います。
4. 3 #15 ■2008/02/18 12:51:42
ストーリーはとても良いですが、もう少し内容をまとめた方が良い様に思います。今のままだと、少々分かりにくいです。
5. 9 織村 紅羅璃 ■2008/02/21 00:15:36
流れるような展開が読んでいて心地よかったです。
推理小説風のタッチもなかなか。
6. 9 もろへいや ■2008/02/26 00:14:55
アリスあたりがメイドを殺して…などと見当違いなことを考えてました。
楽しませていただきました。面白かったです。
7. -1 赤灯篭 ■2008/02/26 20:22:47
 文章がわかりにくく、途中で何度も読み返さないと意図していることが理解できない箇所がいくつかありました。私の読解力不足という可能性もありますが、この手の娯楽作品では読みやすさも重要だと思いますし、何より肝心のストーリーを楽しむ弊害となっているため、今回は辛めの点をつけさせて頂きます。
8. 6 ■2008/02/27 21:46:16
緻密に絡まるサスペンス調の展開にドキドキしながら読ませていただきました。
推理していく咲夜さんとお嬢様が格好良かったです。
ただ展開が複雑な分、ちょっと読みにくかったかなと思います。
9. 5 つくし ■2008/02/28 15:48:58
なんとも、メフィスト系作家とかにありそうな「探偵小説の形式を借りた小説(良い意味での似非ミステリ)」ですね。しかしそれを作るために意図的に妖精メイドを妖怪メイドに改変したり、妖怪が死ににくいという設定をあっさりスルーしてエグい死体を作ったりしてる感じがするので、「作者の意図」に読書を阻害される感じがします。(文花帖や求聞史紀の設定が絶対のものではない、と言われればそれまでですが、少なくとも俺の幻想郷像とはブレが生じます。)
探偵小説要素を清々しいほどにブン投げてエンタメに走った点は評価できますが、文体が論理に傾きすぎて俺の好みに合わなかったというか。
10. 5 つくね ■2008/02/28 19:44:18
途中で魔理沙の一文が出てきたものの、単にミスリード役だけで終わってしまったのが残念。推理的要素を混ぜるならもう一捻りが欲しかった、というのが正直なところです。
11. 5 ■2008/02/28 20:13:18
んー、食べにくい話だ。よく噛んで、疑いながら飲み込む。骨が刺さる。そんな感じ。
材料は分かるが、煮込みが足りない気がする。美味しくないけどもう一度食べたい。
12. 7 反魂 ■2008/02/28 21:39:07
 よく練られた作品だとは思いますが、私個人の感覚から言えば、各キャラの動きに不自然さを感じます。機械というテーマ、物語の中には上手く取り込まれてるとは思うのですが、紅魔館の面々を始めすべてのキャラが妙に人間っぽい行動をとるので結局機械のイメージから遠ざかった感じです。全体的なイメージのかみ合わせの悪さが、物語への没入を今一歩阻みました。

 文章の方では、それなりに精緻な描写がなされているのですが微妙にだぶついてもいるようで、ちょっと洗練さが無いような気も。裸の死体に対し「衣服の汚れ」と矛盾した描写を残したり、部分部分で推敲不足を感じました。他方で枝葉末節にまで気を配られた世界観構築は、非常に良かったと思います。
13. 5 たくじ ■2008/02/28 22:21:47
サスペンスな雰囲気。あまり見ないので新鮮でした。
ただ、紅魔館のメイドはほとんど妖精だと思っていたので、こんな風に恐れるということがそもそも無さそうな気がします。読みながらずっとそれを引きずっていたので、殺伐とした雰囲気になじめませんでした。
14. 4 椒良徳 ■2008/02/28 23:45:22
ト書きじゃないんだから、(ここでレミリアは笑った。自分で言いながらおかしくなったのだ)とか(咲夜は無言で頷く)とか書かないの。
そういうことは地の文で説明する事であって、括弧書きにすることじゃないのです。
うん、まあ良いんだけど。内容についてですが正直微妙。つまらんミステリといったところでお開き。
15. 5 時計屋 ■2008/02/29 00:23:26
推理小説のような、ホラー小説のような。
東方SSとしては珍しい部類なので新鮮な感じで読めました。

ただ伏線が多かったにもかかわず、謎解きや結末への運びかたがやや唐突な感じを受けました。
私見で恐縮ですが、構成等もう少し練りこみが欲しかった。
16. 5 ZID ■2008/02/29 01:21:04
風呂敷を広げ、広げて、しかし畳み切れていないような消化不良感が。推敲しきれていないような印象を受けました。
17. 4 木村圭 ■2008/02/29 04:48:27
ミステリもどきが落とし所を間違えたわけではなく、食事が気になって仕方ない私の見方が間違ってるのでしょうけれど。どうにもすっきりしません。ううむ。
18. 3 とら ■2008/02/29 09:31:02
ところどころ台本のような文が挿入されているのは誤植でしょうか? 読みながら少し違和感を覚えました。また、ミステリー仕立てのお話でしたが、伏線が少しあざといような印象を受けます。
19. 7 らくがん屋 ■2008/02/29 10:57:54
包丁に罪は無い、って言いますしね。とはいえ、事件が起きればどこかに責任の所在を求めるのが世間の理屈。幻想郷の理屈は、うーむどうだろう? 幻想の世界でくらいは、責任を放り投げて許されてもいいのかね。 
20. 6 as capable as a NAMELESS ■2008/02/29 14:30:32
前半が緻密な謎解きだったのに対し、後半が大味で途中で投げられたかのような感じをうけました。
21. 1 中沢良一 ■2008/02/29 15:07:06
後半になればなるほどなんですが、何を言っているのか分からなくなりました。雰囲気重視の文章だからだとは思いますが、作者想いが走りすぎている印象も持ちました。
この長さですので、読者に分かりやすい文章を書いたほうがいいと思います。長い文章は読むだけで疲れます。さらに読解力を求められると、もうわからなくてもいいやという気に、私はなってしまうので。
22. 3 飛び入り魚 ■2008/02/29 15:13:04
どうしても消化不足感に思えてしまう。
もっともっと練り上げることができるはず。がんばれ。
理性や知的面は割りといいように思えるけれど、感情面や表現を重視してみてもいいかもしれない
23. 3 あまぎ ■2008/02/29 19:09:23
ミステリー風味、という感じの「機械」のお話でしたが、
なんだかテーマ、物語の軸がぶれている気がします。
終盤の「笑っていた」だとか、「最適化」だとかいう表現が少し唐突に出てきたせいでしょうか。これらを締めにもってくるのなら、もう一押しの工夫が欲しいなと思いました。

また説明不足、描写不足を感じる場面も幾つかみられ、その結果全体的に印象が薄いように感じられます。
一つ挙げてみると、人形がフランと同等の力、そしてパチュリーとアリスの自制心を手に入れて……というところ。
一応軽くは説明がされていますが、自分にはちょっと納得しにくいものでした。仮にも物語における最大の敵なのですから、人形の描写をいくらか増やしてもらえると分かりやすかったと思います。

色々書かせてもらいましたが、本筋をキッチリ抑えて、必要な部分をもう少し凝って描かれていたなら、自分はこの作品に高得点をつけていたことと思います。
24. 6 カシス ■2008/02/29 19:15:13
中盤、お嬢様の推理の所で、()で表現するのはどうかと思いました。どうせなら統一したほうが良かったかもしれません。
25. 5 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:43:22
素直に探偵物として見たら面白いかも。
機械の使い方もよかったし、話しの進め方もよかったので、楽しんで読むことができました。
ただ、グロが苦手って訳でもないけど、やっぱり死人?が出ている以上、最後の場面に違和感を感じられずにはいられなかった。
まあ幻想郷での出来事、しかも妖怪だし、たかがメイドの1人や2人って感じなんでしょうけどね。
でも、咲夜のおちゃめな部分はよかったよ!
26. 8 K.M ■2008/02/29 20:01:47
自律する人形……いや、それを作ることを悪いとは言いませんが、
作るにしても使ったらヤバい物ってのはあるような……(苦笑
とりあえず、亡くなられたメイドの3名には合掌。
27. 8 レグルス ■2008/02/29 20:03:23
個人的事情ですが、殺人の推理物を読んだ事がなかったのでとても新鮮でした。
28. 8 12 ■2008/02/29 21:24:07
なぜ人形はメイドを殺したのだろうか。
29. 7 O−81 ■2008/02/29 21:52:27
 食事の話はなんだったんだろう。ミスリードかしら。
 なんだかすごく引き込まれるものがありました。推理物としても。
 人形が暴走して咲夜と戦うくだりから、若干失速したような。それまで頭脳戦で進めてきたのが、急にバトルに移ったからかも。
30. 4 只野 亜峰 ■2008/02/29 21:57:25
通常描写を「」内に入れるのはどうだろ。一回台詞切って〜レミリアは続けた。とかにしたほうが無難な希ガス。
他の場面では()を使う意図がよくわからない。というかいらないと思われ。
31. 5 BYK ■2008/02/29 21:59:27
出来損ないの人形と、それによって引き起こされた悲劇。これだけのことが起きても、幻想郷的には日常なのでしょうか。
最後の一文には、私も同意したい。
32. 5 綺羅 ■2008/02/29 22:46:21
紅魔館にいるのは妖怪メイドではなく妖精メイドだったと思います。死というものがない妖精(メイド)の話と考えると話が根本からおかしくなってしまうような……とりあえず妖精メイドのほかに妖怪メイドもいると此処では考えておくということで。話としては、何度も予想を崩されミステリーとしてはいいと思います。だけど最後で色々と力技だった気がしなくもない。
33. 6 moki ■2008/02/29 23:12:25
森博嗣風ですね。興味深い内容でした。
轟音がしたとき気配がないというのは、機械だったからですか?人里で音がしたのか、メイドが殺された際なのか、後者なら魔力を探ってみたが、みたいな文章ないとわかりにくいです。それに、結局食事の謎は……?
34. 5 blankii ■2008/02/29 23:46:27
ゲーム = 無駄 って解釈で良いのでしょうか。ぜんまいから機械人形へと至る発想と、正確無比な文章が心地良かったです。でも、食事の件とか一言で片付けられたのが少し残念。(きちんと処理されていたらゴメンナサイ。)

35. フリーレス sdsd ■2008/03/02 13:21:46
名前、後ろの「dsd」を本気で付け忘れてました、sdsdです。投稿した後に気づいて、どうでもいいミスやけどどんなミスやねんと、PCを前に笑っていました。
書き手の方々、読み手の方々、双方欠かさずおやりになった方々、皆々様本当にお疲れ様でした。

はじめに。

×妖怪メイド→○妖精メイド

本当にこれは申し訳ありませんでした。何を言おうが、申し訳なかったと頭を下げる他ありません。すみませんでした。


・小山田さん
構成がぬるかったですね。よって冗長にならざるを得なかった、緩急がなかったです。


・俄雨さん
人形のくだりは無理があるかなと緊張しましたが、そう言って頂ければ幸いです。文章は精進します。まだまだですね。


・名無しの37番さん
視点は主に咲夜・レミリアの立ち位置を使っており、二人からは見えないフランをいかに描写するか、私も考えました。結果、何とか盛り込もうとするよりかは、完全に「置いておく」方が良いのではないか。そう考えた結果、彼女の動向は一切書かなかった次第です。
何をしていたかと言われれば、ぶらぶらしていたとお答えするしかありません。練り不足でした。


・#15さん
広げるだけ広げて、畳みきれませんでした。猛省。


・織村 紅羅璃さん
このジャンルは初めて挑戦しましたので、些か不安を隠せませんでした。そこにきて貴公のお言葉は大変励みになります、ありがとうございました。


・もろへいやさん
ミスリードでどこまで読者様を惹きつけられるかが焦点だと思っていましたので、そう言って頂けるとありがたいです。


・赤灯篭さん
読む人間のことを考えねばならない。書き手の基本を忘れていた自分への戒めとなります。辛めなどとはとんでもない、おっしゃる通りです。


・畦さん
優れた物語ほど、必要最低限のこと以外は極限まで省かれていますものね。未熟でした。


・つくしさん
正直に言いますと、この時期は確かにメフィスト作家の本ばかり読んでいました。少なからず、ではなく大いに影響を受けていたと思います。
書き手の都合に合わせたキャラ扱いは、世界観を壊してしまいますね。キャラを大切にする、その事を改めて認識致しました。


・つくねさん
物語の構造上、曲線部分と直線部分との繋ぎを綺麗に挿入しなければなりませんでした。タイミング(というのもおかしな話ですが)の計りが甘かったです。


・鼠さん
早く食べたくて、さっさとお皿に移してしまいました。単純に強火にすればいいものではないと、身に染みて感じます。


・反魂さん
人間らしい行動はさせようと思っていました。機械的にしか動かない人形との対比のつもりです。彼女らが人間らしい行動をいくつも取ることで、人形という存在を浮かせようという魂胆でした。
しかし「イメージのかみ合わせのずれ」が起きると言うことは、描写が足りなかったということでしょう。精進します。

・たくじさん
頭にも書きましたが、妖怪と妖精を間違えてしまいました。致命です。


・椒良徳さん
申し訳ないがそこだけは譲れない。地の文を挟むことは流れを切ります。それを切らんがために()を使用しているのです。個々の描写は絶対に必要ですが、そのためにテンポを悪くしては元も子もありませんので。


・時計屋さん
やはり構成の練り不足が目立ってしまいますね。
繋ぎ目が甘かったのも反省です。プロットの重要性を分かっていませんでした。


・ZIDさん
畳むことこそが真髄であるのに、これでは笑い草ですね。返す言葉もございません。


・木村圭さん
食事はあざといほどのミスリードのつもりでしたが、するりと流せないのでは、上手く活用したなどと、とても言うこと出来ませんね。今後の糧と出来るよう、頑張ります。


・とらさん
それとなく組み込ませるということが出来ずに、あざとくなってしまいました。台本のような、とは()のことだと思うのですが、あれは趣味です。こだわりです。


・らくがん屋さん
しかし責任を与えられるほど大きな存在であるのだと、プラス思考で考えることも出来ます。どうにもこの言葉が軽視されているように思えてなりません。


・as capable as a NAMELESSさん
物語を考えた際、先に大味な部分、つまり後半部分を作ったのですね。それで、そこに至るまでの過程をどうするか、どう入り込ませるかを思索した結果このようになってしまったわけです。場面転換の如才が浮き彫りになってしまいました。


・中沢良一さん
書き手の私自身が落ち着けていなかったかもしれません。後半部分は若干勢い任せにした部分がありましたので、もっと冷静になるべきでした。ご指摘ありがとうございます。


・飛び入り魚さん
既に述べてしまったことになりますが、構成不足、推敲不足でした。頑張れという激励の言葉、感謝致します。


・あまぎさん
「書きたいこと」と「書くべきこと」をしっかり整理出来ていませんでした。
人形描写は意図的に薄くしました。機械は個人個人でイメージが違って来るものなので、そのはっきりしない部分を表現したつもりでしたが、甘かったようです。


・カシスさん
好きな表現方法なのですが、こだわりすぎた感も否めませんね。


・☆月柳☆さん
咲夜さん可愛いよ咲夜さん。


・K.Mさん
お題が発表された瞬間に、アリスを使おうと思いました。私は人形よりぬいぐるみの方が好きですが。


・レグルスさん
ミステリーは殺人が好ましい、これ以上に読者を惹きつける物はないだろう
というニュアンスの言葉を聞いたことがあります。正確な言葉は忘れてしまいましたが。
推理物も面白いですよ、機会があれば書店で探してみてください。


・12さん
こちらの考えとしては、捕まえて汚名返上→やったー怒られずに済んだ!
と、やろうとして返り討ちに遭った。こういうものです。


・O−81さん
食事はミスリードでした。徹底して書くことによって、意識させようとしたのです。


・只野 亜峰さん
「」内の()は、流れを切らないようにするためでした。
その他の部分では、確かにやりすぎたかもしれません。


・BYKさん
何が起きてもさらっと流してしまう、そんな世界だ。私はそう考えています。


・綺羅さん
1位おめでとうございます。
妖精と妖怪は、どうしようもないミスでした。本当に申し訳ありません。そのように優しい解釈をして頂けるとありがたいです。


・mokiさん
遠かったから、近くに気配がない、という意味です。文意を取りづらくしてしまったようで、推敲不足でした。食事はミスリードです。何度も出しておいたのですが、しつこすぎました。
余談ですが、森博嗣は大好きです。


・blankiiさん
いえ、確かに一言で流してはいけなかったと、今になって思います。何せあれだけ引っ張ったのですから。何らかの形で、綺麗におさめるべきでした。


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