妖精と、やさしいきかい。

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/11 06:37:09 更新日時: 2008/03/11 00:30:50 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00




 人間の里のとある一軒屋。
 そこではいつも、のんびりとした時間が流れています。

 まあるい振り子がいったり、きたり。
 時計の針が、ゆっくりと動いていきます。

 太陽の光がたっぷりと差し込む、どこか懐かしい部屋があります。
 そこにはいつも、綺麗な絵画たちが大切に飾られています。
 四季の風景が描かれたもの、優しく笑う人々が描かれたもの、動物たちの生活が描かれたもの……。
 みんながみんな、幸せそうな表情をしています。

 きら、きら。
 この部屋にいるだれもが、名前の書かれた紙をつけています。
 彼らが誇らしげにしているその名札が、太陽の光にきらりと輝きました。

 最近、この部屋に新しくお友達がやってきました。
 窓際で、丁寧に磨かれた四角いオルゴールと一緒に並んでいる彼のことです。
 彼はみんなにとっても気に入られているようで、やっぱり幸せそうな表情をしています。
 そんな人気者の彼も、きらりと輝く名札を誇らしげにしています。

 そこに書かれている、彼の立派な名前は…………






<0>






 あるお山のふもとに大きな湖があります。
 いつもはしろい霧が立ち込めているその場所ですが、
 今日は珍しくぽかぽかとした好天です。
 春先のうららかな陽が射し込み、水面がきらきらと輝いています。

「あはっ、あははははっ!」

 見晴らしのいい、透き通った水の上。
 こんな雲ひとつない快晴にぴったりとあてはまるような、やっぱり晴れ晴れとした大きな声が湖に響きます。

 だけど、だけど。

 その声はだんだんと小さくなっていき、最後には消えてしまいました。
 そして声を出していた本人も、湖からどこかへいってしまいました。
 後に残った小さな波が、水面をゆらゆらと揺らしています。





<1>





 春に出遅れ、今もまだ冬の名残をとどめるそよ風があります。
 そんな間の抜けた風さんが通り抜ける、この湖の空気はちょっと冷たいです。
 けど、そのぶん一層、いえそれどころか二層、三層ほどもお日様のあたたかい陽射しを満喫できるので、
 たくさんの動物たちや、元気な妖精さんたちが湖に集まってきています。

 水辺の背の高い木々からは、小鳥さんによる美しいさえずりが聞こえてきます。
 ちちち、ぴぴぴっ、と、なんとも可愛らしい合唱です。
 それは、樹木の芽吹きを喜んでいるのかもしれませんし、甘くてみずみずしい、美味しい木の実がなるのを待ち焦がれているのかもしれません。

 ひらひらと蝶々さんの飛び交う湖を眺めていると、どこかで水の跳ねる音がしました。
 きっとお魚さんが、水の中の心地よさに思わずはしゃいでしまったのでしょう。
 湖のあちらこちらから、小さな波が広がっていくのがみえました。


 ばしゃっ、ばしゃっ。


 水面に大きな波が立ちました。
 今度の波はお魚さんによるものではないみたいです。
 波の中心に目をやると、そこにはさっきまで笑っていたあの子がいます。
 いつの間に戻ってきたのでしょう、背中の小さな羽根で水上を飛び回っては、湖に両手を突き入れています。

 小さな、羽根。
 どうやらその子は、妖精さんのようです。
 一体、何をしているのでしょうか。


 ばしゃばしゃっ、じゃば。


 妖精さんが、一際大きく波をたてると、その手をゆっくり引き上げました。
 そして、にまりと笑います。
 手には小さなコイくらいの、ひらべったいお魚さんが掴まれていて、お魚さんはびちびちと必死に逃げようとしています。


 ひゅう。


 そのとき一瞬、冷たい空気が妖精さんのもとへ流れていった気がしました。
 妖精さんの手の中で、お魚さんがぴしぴしと音を立てて白くなっていきます。
 そしてあっという間に、お魚さんは氷付けになってしまいました。
 うすくてのっぺりとしていて、まるでメンコみたいです。
 妖精さんはきれいに固まったお魚さんを見て満足したのか、またにまりと笑うと、それを湖の水面に向かって、ぴっ、と回転をかけるように投げました。
 水の石切り遊びをしているようです。


 ぴっ、ぴっ、ぴぴぴっ
 ぽちゃん。


 お魚さんは何度かうまく跳ねて水面を滑っていき、最後にちょっと大きく跳ねたかと思うと、そのまま湖に沈んでいってしまいました。
 それを見て妖精さんは高らかに声をあげます。

「やった! 最長記録っ! にゅーれこおどってやつね!!」

 水の石切りって、何段跳ねたか数えるあそびだったと思います。
 なんだか沈んでいったお魚さんが可哀想です。

「…………」

 妖精さんは、ひとしきりはしゃぎ終えると、すごく退屈そうな顔をしました。
 そしてまた、ふよふよとどこかへいってしまいました。
 後に残った小さな波が、少しのあいだ水面を揺らしていました。







 しばらくして妖精さん、今度は凍った蛙さんを三匹ほど両手に抱えて戻ってきました。
 蛙さん、冬の間の長い長いお休みあけなのに、また凍らされてしまって大変です。

「かえる、久しぶりっ!」

 妖精さんは蛙さんの入っているまあるい氷の玉を嬉しそうにみてから、それをひょいと真上に放り投げました。

「よっ、……ほっ」

 そのまま、お手玉のようなものを始めました。
 どうやら妖精さんは、湖の上であそぶことが好きみたい。

「っと、えいっ、……ほっ、と」

 妖精さんはお手玉に慣れているようで、ときたま、ぐらつきはするものの落としたりはしないようです。
 空中で不安定なのに、上手、上手。

「……よ、しっ、……えいやっ」

 おや、今日は調子がいいのでしょうか。
 どうやら、よっつに挑戦するみたいです。
 妖精さんは蛙さんたちを一際高く放り投げると、そのあいだにさらにもう一匹、凍った蛙さんをどこからか取り出しました。

 よっつめの玉をぽい、と放り投げます。
 すぐに、妖精さんの声があわただしいものに変わりました。

「っ、〜〜〜ッ!」

 小さな手が忙しなく動きます。
 あっち、と思えばこっちが落ちそう。
 とと、今度はそっちがあぶない。

 あ、でも、落ちそうになった手玉を、妖精さん自身が降下して拾うのは……ちょっとだけ、ずるかもしれません。
 だけどずるをしても、いちど崩れたバランスはなかなかもとに戻りません。
 見ていてなんだかあぶなっかしくなってきました。

 あ。

 ぽろっ。

「あっ、あっあっあっ!!!」

 妖精さんは、取りこぼした蛙さんを掴もうと必死に手をのばします。
 そうです、急降下です。
 湖に向かって急降下。

「あ。」

 ざっぱあぁぁん!!

 これでもか、というほどのスピードで。
 これでもか、というほどの音を立てて、勢いよく顔から湖に突っ込みました。
 水しぶきがきれいです。
 あ、ちいさな虹がでてきました。
 それは七色に輝いていて、とってもとっても幻想的できれいな虹でしたが、ぶくぶくと沈んでいく妖精さんには知る由もありません。
 なんだか妖精さんも可哀想です。





<2>





「あ、あぶなかったわ……!」

 派手にダイブして、水を飲んで、溺れかけていた妖精さんはなんとか無事に生還です。
 びちょびちょのまま、氷をはった湖の上に座って考え事をしています。

「今度からはこうして足元に氷をはっておこうかしら」

 うん。きっと、もっと悲惨です。
 顔面強打で気絶する妖精さんの姿が、はっきり想像できます。

「うんうん、それなら完璧ね!」

 普通に地面に立ってやればいいのに。






「さて、次は何して遊ぼうかな」

 妖精さんはまた、湖の上をふよふよと漂い始めました。

 すると今度は、どこからか楽しそうな話し声が聞こえてきました。
 きっと、他の妖精さんたちでしょう。
 この湖の付近はとても居心地がいいので、他の妖精さんも沢山あつまってきます。
 でも他の妖精さんたちはみんなでまとまって遊んでいるみたい。
 一人ぼっちなのはこの妖精さんだけのようです。

 妖精さんは、声のする方を少しの間見つめていましたが、突然にぷいと顔を背けてしまいました。
 そしてまた、お魚さん掴みに勤しみ始めます。

 ざぶざぶ、じゃばっ。
 ばしゃばしゃ、どぼん。

 一生懸命に手を突き入れる妖精さんの耳に、良く通る笑い声が届いてきます。
 それがちょっと、妖精さんの気を散らします。

「……うるさいなあ」

 おかげでお魚さんが、なかなかうまくとれません。

 じゃばっ、じゃばっ。
 がしっ、つるん、どぼん。

「…………」

 残念。
 せっかく掴めたのに、手がすべって逃げられてしまいました。

 じゃばっ! じゃばっ!

「…………」

 心なしか、いえ、本当に妖精さんはご機嫌ナナメのようです。
 今お魚さんを捕まえたら、そのまま力いっぱい握りしめてしまいそうで、とても心配です。
 そんな妖精さんのことを知ってかしらずか、楽しそうな声は辺りから聞こえてきて止みません。

 一瞬、妖精さんの頭にイヤな考えが浮かびました。
 とたんに、おおきな不安におそわれます。


(もしかして、あたいが、笑われてる?)

(一人ぼっちのあたいを、笑ってるの?)


 ああ、ダメです。
 一度でもそう思うと、イヤな考えはなかなか消えてくれません。
 気分も機嫌も、わるくなる一方です。
 怒っちゃダメです、妖精さん。
 けんかしちゃったら、大変なことになります。

「……ううん、そんなはずない。そんなはずないよ!」

 そうそう、その調子。

「あたい、大人だもん。だいじょうぶ」

 妖精さん、大人です。
 それじゃあ妖精さん。
 きっとみんなと仲良くなれるから、勇気をだしてみんなに話しかけてみましょう。

「…………」

 がんばって、みんなのところへ行きましょう。
 大丈夫、友達になれます。

「…………どっか、いこ」

 あれれ。
 妖精さんは、ちょっと落ち込んじゃったのでしょうか。
 ちからなく肩を落として、湖から離れていきます。
 ……うん、妖精さんたちはいつも、いつでも湖にいます。
 元気が出たら、今度こそ仲良しになろうね。





<3>





 きらきらまぶしいお日さまが、中天を少し通り過ぎたころ。
 人がたくさん住んでいる里へと続く細道を、妖精さんがやっぱり一人でふよふよ飛んでいます。
 道の周りは見渡す限りの林がずうっと続いていて、木々が風にゆられるたび、地面のまだら模様も一緒にゆられて動きます。

「なんか、ないかなー」

 まだちょっと元気が出ない妖精さんは、おもしろいもの、おもしろいもの……、と呟き続けています。

「レティがいないと、退屈だなぁ…………あ!」

 そんな妖精さんの目に、人影がうつりました。
 ちょっと遠めでわかりづらいですけど、たぶん人間です。
 妖精さんはちょっと驚いて警戒しましたが、すぐにそれが紅白や黒白の人間でないことが分かり、ため息をついて安心しました。

 近づいて様子を見てみると、人影の正体はすぐに分かりました。
 それなりに歳をとったおじいさんです。
 道のほとりの、ちょっとひらけた場所に座ってなにかしているようです。

 妖精さんはおじいさんがこちらに気がついていないのを知ると、さっきまでの退屈そうな顔から一転、さらにもう一転くわえた大回転というくらいにはりきりだしました。
 頭の中はきっと、おじいさんにどんなイタズラをするかで一杯です。
 だけど、お願いだから危ないことはしないでね。







 妖精さんはさっきまでふよふよ飛んでいたのに、今はてくてくと、大きく手を振って歩いていきます。

「こんにちはっ!」

 にこにことした笑顔で、きらきら輝くはっきりとした声で、おじいさんにあいさつしました。
 おじいさんは何か絵でも描いていたのでしょうか。
 手には紙を挟みとめた板、そして鉛筆を持っています。
 
 そのとき妖精さんは、おじいさんの足元に鞄が置いてあることに気がつきました。
 人間の持っているそれには、面白いものがたくさん詰まっていることを知っています。

「おや、こんにちは」

 顔を上げて返事をしてくれたおじいさんは、とっても優しそうな顔をしていました。
 声は静かであたたかくて、こげ茶色の眼鏡をかけていて、ほんのり赤いほっぺをしています。
 まるで絵本にでてくるおじいさんみたいです。
 そしてなにより、

「わあ、立派なおひげ!」

 お鼻の下の、きれいに整えられた白いおひげ。
 妖精さんはそのあまりに立派なおひげを見て、思わずそう言ってしまいました。

「あっ、わ、わ」

 ちょっと失敗だったかな、と思って妖精さんは慌てましたが、
 おじいさんはやっぱり、にこりと笑って言いました。

「ありがとうね、可愛い妖精さん」
「あ……うんっ!」

 大きく頷いてから妖精さんは、はっと我にかえります。
 おじいさんのあまりに優しそうな雰囲気に、イタズラするのを忘れてしまいそうな妖精さんでした。

「じゃなくて……ええと、あのね! さっきそこでね!」
「うん、どうしたのかな」
「……えーと……」

 …………。
 妖精さん、どんな嘘をつくか考えてなかったみたいです。
 固まっている妖精さんを気遣ってか、親切なおじいさんは助け船を出してくれました。
 
「もしかして、何か面白いことでもあったのかな?」
「え、あ、そう! さっきそこでね――――こんな大っきい蛙を、あたいが倒して来たの!!」

 ふふーん、と妖精さんは小さな胸を精一杯張っていいます。

「へえ、それはすごいね。手ごわかったかい?」
「ううん、ぜんっぜん! こうやって、いちげきよ!!」

 妖精さんは両手をいっぱいに広げて、その空中に握りこぶしを振りぬいてみせます。
 そして満面の笑顔で言います。

「ね、あたいが最強ってしょーめーするために確認してきて! いますぐ!!」

 でも、嘘なんだから証明できないのじゃないかなあ。

「かばんはあたいが見ててあげる!」
「……うん、ありがとうね。それじゃあちょっと見てくるよ」

 対するおじいさんは、孫の相手をするような面持ちをして妖精さんの指差す方へ行ってしまいました。
 知らない妖精さんの嘘に付き合ってくれるなんて、一体どうしてでしょうか?

「……あたいの頭脳っておそろしい!」

 おじいさんが見えなくなったのを確認してから、妖精さんは一人喜びました。
 ふんふんとご機嫌で、さっそくおじいさんの鞄をひっくり返すようにあさりだします。

「これは、えんぴつ。……かみ、えのぐ……、…………?」

 面白いものへの期待いっぱいで鞄の中身を広げる妖精さんでしたが、どうも様子が違います。
 中にあったのは、妖精さんでもよく知ったものばかり。なので、ちょっと首を傾げてしまいます。
 そのとき

「あ!」

 妖精さんは、ある透明な小瓶を見つけました。
 中には美味しそうなクッキーが詰まっています。

「……ふふ!」

 妖精さんはすばやく瓶のふたをあけてクッキーを一枚、口に放り込みます。
 さくさくっ。
 そのあまさに、んーっ、と幸せそうな声がもれました。

 妖精さんは一枚目をあっという間に食べ終えると、二枚目をくわえてから瓶にふたをして鞄に戻しました。
 おじいさんが帰ってきたときにばれないようにするためです。
 もうちょっと食べていたいとは思いましたが、小瓶ごと持っていったりするのはやめておきました。

(あたい、大人だもんね!)

 妖精さんは満足げにうなずくと、次はどんなイタズラをしようかと考えはじめました。
 そんな妖精さんの目に、おじいさんが何か描いていたあの紙が映ります。


「……? わ、きれいっ」

 そこには、妖精さんの正面に生い茂る、冬を乗り越えてきた鮮やかな木々が描かれていました。
 線の一本一本がとても細くてきれいで、白と黒の濃淡だけでも葉っぱの色まで分かります。
 地面にのびた真っ黒な木影は、それだけで今日の見事なまでの快晴を伝えてくれます。
 木々から空に向かってのびている枝の先には、春がもう少し必要そうな小さな新芽。

 すぐ目の前、そこにある木と同じものが紙に描かれているだけのはずなのに、妖精さんにはその芽がとても可愛らしく見えました。
 どうしてだろう、と思って木の方をもう一度みてみると、今度は本物の芽も可愛らしく見えるようになっていました。

 なんだか不思議ね。
 まるで、魔法みたい。

 そんなことを思いながら、何度も何度も見比べます。 
 まだ描きかけなのか、ちょっとしろい部分があるけどそれがまた穏やかに感じられました。
 そうして妖精さんは絵に夢中になって、おじいさんにイタズラすることをすっかり忘れてしまったようです。

(もっとおじちゃんとお話したいな)

 いつしかそう思うようになっている妖精さんがいました。
 やがておじいさんが戻ってきて、『ごめんね、見つけられなかったよ』と言ってくれたので、妖精さんは笑って誤魔化すのでした。
 ほら、勇気をだして、言ってみましょう。

「ね、おじちゃん。ちょっとお話しよっ」






<4>





「これかい? ……これはね」

 おじいさんの優しい声が、静かな小道に響きます。
 妖精さんは、おじいさんの声は何だかそよ風に似ているな、なんて思いました。

「わたしはわたしの好きなものを、自由に描いているんだよ」
「自由に?」

 おじいさんはうん、と頷きます。

「やっぱり好きなことをするときは、うんと自由にやってみるとね、もっと楽しいんだよ」
「ふうん……?」

 分かったような、分からないような。
 おじいさんが持っている、あの魔法みたいにきれいな絵。
 妖精さんはそれに興味津々で、質問が途切れることなくでてきます。
 そんな妖精さんにも、常に笑顔で楽しそうにお話をしてくれるおじいさん。
 自然、いつの間にか仲良しになっていました。

「なんでこのちっちゃな木が真ん中なの?」

 次に、妖精さんはそんな疑問を投げかけました。
 木がいっぱい書かれている絵ですが、その真ん中には、他のよりもかなり小さい木が描かれていました。
 そしてその周りに、大きな樹木が生い茂っています。
 これでは、正面の風景とちょっと違ってしまいます。

「ああ、この子は、ほら、あそこをごらん」

 おじいさんが指差したのは、ここから見える木々の中でも一際立派な樹木、その根元。
 そこに、草に隠れてしまいそうなくらい小さな若木がいました。
 それを見て、妖精さんは納得半分、疑問半分。
 なので疑問をそのままおじいさんにぶつけてみます。

「なんでこの木なの? どうせなら、こっちにした方が格好いいよ!」

 今度は妖精さんが、その大樹を指差します。
 ついでだから『あのね』と、その木になる実はすごく甘くて美味しいことをおじいさんに教えてあげました。
 今の季節だと、妖精さんが好きな種類の木の実がなっていなくてちょっと残念です。
 それを聞いたおじいさんは妖精さんに、物知りさんなんだね、と微笑みました。
 妖精さんは、ちょっと得意になりました。

「そうだね、格好いいね。じゃあ妖精さん、この子の傍にお兄さん木も描いてみよう」

 ほら、とおじいさんは嬉しそうに言って、妖精さんに描きかけの紙と鉛筆を手渡しました。

「え? え、え??」

 どうしたらいいのか、と戸惑う妖精さんをみて、おじいさんは微笑みました。
 おじいさんは足元に置いてあった鞄に手を伸ばし、あの小瓶を取り出します。
 そして、

「はい、どうぞ」

 やっぱり微笑んで、中に入っていたクッキーを妖精さんに手渡しました。

「……あ、ありがとうっ」

 妖精さんは戸惑いましたが、お礼をいってクッキーを口に放り込みます。

「好きなものを、自由に描いてみなさい。わたしはこうやって、色んな人と一緒にお話して、絵を描くのが好きなんだよ。ほら、誰だって、美味しいお菓子はみんなで、楽しく食べたいでしょう?」
「……うん」

 それで、おじいさんの言いたいことがなんとなく分かった気がしました。

 さく、さく。
 だけど、あまいあまいクッキーを食べているはずなのに、どこか苦い気持ちになりました。

(なんでだろ……?)

 それは、妖精さんが嘘をついているからかもしれません。
 勝手にクッキーを食べたことがばれていないか、心配でたまらないから。
 いつかそれに気付けるといいね。

「――――美味しいよ!」

 妖精さんは、精一杯の笑顔を浮かべてみせました。










「うん、妖精さんはお絵かきが上手なんだね」

 紙には、要請さんが一生懸命に描いた大きな樹木の絵。
 ちょっと曲がってしまったけど、おじいさんは褒めてくれました。

「えへへー、そうかなっ」
「うん、元気があって、格好いいね」
「でしょー? でも、おじちゃんの方が上手だよ!」
「はは、ありがとうね。うん、ほんのすこしだけ、ね。でも、妖精さんも……」
「だめ。あたい、まけは素直に認めるんだから」

 妖精さんはおじいさんの絵がすごく気に入ったみたいです。
 おじいさんの方が上手、と言ってゆずりません。

「……うん、おしかったね」

 少し間を置いてからそう言って、おじいさんは妖精さんの頭をなでてあげました。
 たぶん、妖精さんの体は冷たいのでしょうが、おじいさんは気にしませんでした。
 妖精さんは気持ちよさそうに、しばらくそのままでいました。




「また、一緒にお絵かきしようね」

 妖精さんはそれを聞いて、大きく頷きました。
 おじいさんは満足そうに微笑むと、ゆっくり腰をあげました。

「それじゃあ、そろそろわたしは帰ろうかな」
「え……」

 と、とたんに、妖精さんは悲しそうな顔をしました。
 いえ、悲しいというよりは、そう、寂しい。
 きっと、妖精さんは寂しいのです。
 短い間でしたが、もうすっかりおじいさんが大好きになっていたから。

 でも、おじいさんを引き止めるわけにはいけません。
 妖精さんだって、もう大人です。
 分かっています。
 人間は、日が暮れるまでに里へかえらなくてはなりません。
 危ないのです。
 分かっています。
 だから妖精さんは、元気をだして、別れのあいさつをしなきゃ――――。

「おや……」

 おじいさんは、ちょっと涙ぐんでいる妖精さんに気がつきました。
 その姿から何かを感じ取ったおじいさんは、わざと困ったように言いました。

「そうそう、そうだった……。妖精さん、わたしはこの辺りに初めて来たものだから、道を忘れてしまって困っていたんだよ。だからもし、妖精さんがよかったなら、道案内してくれないかな……?」
「……え?」

 どうやら妖精さんには予想外の言葉だったようで、ちょっと戸惑っていました。
 けど、少し考えてみるとすぐにおじいさんと一緒にいられることが分かって、
 ほら、あっという間。
 妖精さんは、ぱあ、と満面の笑みを浮かべました。

「うんっ!!」

 やっぱり妖精さんは、笑顔でなくちゃ。






「それでね、あっちにはこーんな大きな岩があって……」

 妖精さんが、夕日で黄色に染まっている林の、その向こうを指差して言います。
 一生懸命に、だけど楽しそうに道案内をがんばっています。
 森の中をおじいさんに合わせてゆっくり歩いている妖精さんですが、その間も話題は尽きません。
 妖精さんが話し上手……というわけではなさそうですが、ひょっとすると、おじいさんがすごく聞き上手なのかもしれません。

 お話の内容は次から次へと移り変わっていきます。
 好きな遊びのこと、嫌いな季節のこと、見たことのない場所の話、怖かった夢の話……。
 おじいさんのお話は、どれも妖精さんにとって新鮮で、心惹かれるものばかりでした。
 なので、妖精さんもお返しにと、とっておきのお話をたくさんひろうしてあげました。

「あれ?」

 お話に夢中になっているうちに、分かれ道にでていました。
 妖精さんがそのことに気がつくまでに、どれくらいの時間がかかったのかは分かりませんが、その間おじいさんは、ずっとお話を聞いて待ってくれていたようです。
 ちょっとだけ恥ずかしくて、妖精さんはやっぱりちょっとだけ、顔を赤くしました。

「えーと、次は……」

 分かれ道の片方は、今までの道よりも広々としていて歩きやすそうです。
 もう片方の道は、逆に今までの道よりもせまくて、ちょっと歩きにくそう。
 ここに来るまでにも似たような分かれ道はいくつかありましたが、この辺りに詳しい妖精さんには、一目見ただけでそれぞれの道がどこに通じているのかすぐに思い出すことが出来ました。

 せまいほうの道は湖へ、もう片方の広々とした道は里へ、続いています。
 なので、おじいさんと妖精さんが一緒に歩くのはこっちの広い道です。
 だけどそこで妖精さんは、とってもいいことを思いつきました。


 大好なおじいさんを、自慢の湖に招待してびっくりさせてあげよう。


 妖精さんはおじいさんに、今日のお礼とお返しをちゃんとしたいのです。
 おじいさんと話しているあいだは、とっても楽しかったから。
 だからそのために、少なくとも自分が知っている景色の中で一番きれいで、一番大好きな湖を、思う存分に見せてあげたいと思ったのでした。

 ……夜の森はちょっとあぶないけど、あたいが一緒にいれば大丈夫よね。
 なんてったって、あたいは最強なんだから!

 そうやって妖精さんは自分を言い聞かせました。
 一度思いついたイタズラを、実行せずにはいられないのが妖精さんの困ったところです。
 今からもう、おじいさんの喜ぶ姿をみたくてたまらない妖精さんは、
 活き活きとした笑顔で言いました。

「次はね、こっちだよ!」

 得意になって、せまいほうの道へ進んでいきます。
 おじいさんはそれが嘘だと知ってか知らずか――――
 いえ、きっとぜんぶ知っているのでしょう。
 たとえ違う道だと分かっていても、おじいさんは妖精さんの道案内を信じてついていきました。

「うん、妖精さん、ありがとうね」

 でもね、妖精さん。
 嘘はあんまり良くないよ。
 湖についたら、ちゃんと謝ろうね。






<5>






 夕日と一緒に沈むことを忘れていた、お日さまののこり火が森を黄色く染めています。
 そんな間の抜けた夕明かりが静かに映し出すのは、この湖の神秘さ、そして、春の訪れです。
 日一日とお昼の時間は長くなり、夜の冷たさも和らいでいくので、元気な妖精さんたちはちょっとしたパーティー気分で湖に集まってきています。

 水辺の背の高い木々からは、うっすらとした影が伸びています。
 朝はそこかしこから聞こえてきた、あの可愛らしい合唱は聞こえません。
 小鳥さんたちはもう眠る準備でもしているのでしょうか。
 何人かの妖精さんたちの声と、そよ風が木々を揺らすなんだか切ない音だけが、時間と共にゆっくりと流れていきます。

「ついた」

 湖に、少し含みのある声が響きます。
そ れはどこかに切なさや、寂しさや……色々な感情を含んだ静かな声。

「おや……これは、すごい」

 おじいさんは、大きな湖を見て思わず、だけど穏やかに喜びの声をあげました。
 ちょっとせまい道から、一気に視界が開けたからでしょうか。
 なんだかそこは清々しいくらいに見晴らしがよくて、広い湖の周囲に並びつづく青々とした林と、その足元に生えている柔らかそうな草本が風にやさしくゆられているのが見えます。
 水草がきれいに澄んだ水の上にてんてんと浮かび、青い湖に緑の色付けをしています。
 少し視線を上げてみれば、ずっと向こうまで続く緑の森のそのさらに向こうの空に、ちょっと早めのお星さま。

 ふと、おじいさんは気がつきます。
 それは、ここに並んでる木はみんながみんな、あのとき妖精さんが指差した大樹と同じ種類だということ。
 あの、甘くて美味しい実がなるという大樹。
 すると、あの大樹の根元に隠れていた若木も、成長すればいつか同じ実をつけるのでしょうか。
 大好きな木の実に囲まれて喜ぶ妖精さんの姿を想像してみると、おじいさんも嬉しくなりました。

「あたいの、いちばん大好きな場所」

 妖精さんが言いました。
 だけど、あまり嬉しそうではありません。
 さっきから元気がないのはなぜでしょうか。

 今度もその理由を知ってか知らずか、おじいさんは微笑んで、うん、と頷くと、ゆっくり地面に腰を下ろしました。
 次に、紙と鉛筆を取り出して妖精さんに聞きます。

「描いても、いいかな?」

 妖精さんは、おじいさんが絵を描くのはどんなときかをちゃんと知っています。
 自分の大好きな場所が、大好きなおじいさんに描いてもらえるのは嬉しいことです。
 なので妖精さんも、うん、と頷きました。
 おじいさんはおひげをひとなでして、あらためて湖を見渡しました。
 と、そこで楽しそうにはしゃいでいる小さな妖精さんたちに気がつきます。

「おや、あそこにいるのは友達かな?」
「……ううん、あそんだこと、ない」
「おや……、」

 妖精さんの元気がみるみる無くなっていく妖精さんをみて、またその返答を聞いて、何か思ったおじいさんは口を開きました。
 だけど妖精さんは素早くおじいさんに振り返り、おじいさんの言葉を遮るように言いました。

「ごめんなさいっ、嘘ついててごめんなさい!」

 妖精さんは、ぺこりと、謝りました。
 嘘をついて、湖まで連れてきてしまったことを、ちゃんと謝りました。

「クッキーも、勝手に食べちゃいましたごめんなさいっ!」

 続けて何度も、ごめんなさい、ごめんなさい、と小さな頭を下げます。
 クッキーのことも、ちゃんと謝りました。
 妖精さんは湖につくまでの間に、大好きなおじいさんに嘘をついている、そんなイヤな自分に耐えられなくなっていたのです。
 自分以外のことを、大切に考える。
 それは、イタズラ好きな妖精さんにとって生まれて初めて知る感覚でした。






 それからしばらくおじいさんは、妖精さんが落ち着くまで待っていてくれました。
 目の前には、ちょっと落ち込んでいる妖精さん。
 おじいさんは少し考えるようにひげをなでて、

「妖精さん、嘘は好き?」

 と、はっきり聞きました。

「……う…うん、……すき」

 それに対して答える妖精さんの声は、どこか不安そうです。
 そうです、不安です。

 きっと怒られる。
 嘘ついてたことを、叱られる。

 妖精さんは、そう思っていたから。
 嘘がわるいってことくらい、知ってるから。
 だけど、知っていても。
 怒られると分かっていても、妖精さんはおじいさんの質問に、正直に答えました。
 もうこれ以上、おじいさんに嘘をつきたくなかったから。

 でも、いくら優しいおじいさんでも、もうダメ。
 今度こそ、ぜったい、怒られる……っ!

「ごめんなさっ、」
「そう、好きなんだね」
「…………え?」

 きっと、あたいを嫌いになって――――
 とか、むつかしいことを考えていた妖精さんは、予想外の言葉をかけられ驚きます。
 そして今度はおじいさんの、ちょっとしたイタズラが始まりました。

「妖精さん?」

 にっこりと笑って、おじいさんは言います。
 そして次の言葉に、妖精さんはびっくりしてしまいます。

「あのね、『わたしいま嘘をついています』っていってごらん」
「えっ、えっ??」
「いいから、ほら、いってごらん」
「う、うん……? わ、『わたしはいま嘘を、……ついています』……?」

 おじいさんは、よく言えました、と妖精さんをほめて、続けます。

「それじゃ、ちょっと考えてみよう。もし、妖精さんが本当のことを言っているとすれば……どうなるかな?」
「……? え、えーっと……。……どういうこと……?」

 おじいさんは首をかしげる妖精さんに、ゆっくりでいいよ、といってくれました。
 それを聞いた妖精さんは安心して、考えてみます。

「……『嘘をついてる』のがほんとう、だから……?」

 おじいさんが出した問題の意味は、
 妖精さんが本当に『嘘』をついている、ということ。

「………………?」

 妖精さんが、嘘を、ついているのが本当。
 つまり、いまの妖精さんが、『嘘をついている』ことになります。

「………………え、……あれ、あれれ? あたい嘘、ついてる? あれ?」

 本当のことを言っているのに、嘘をついています。
 不思議なことに、本当が嘘になってしまいました。

「うん、そこまででいいよ。妖精さんはかしこいね」
「むー……?」
「よしよし」

 混乱しそうになった妖精さんを、おじいさんがなだめてあげます。
 そうしてまた妖精さんが落ち着くまでまってくれて、落ち着いたところへ――――さらに質問しました。

「今度は妖精さんが確かに嘘をついているとすると、どう?」
「……あ、ぅ……?」

 おじいさん、つよいです。
 追い討ちです。
 妖精さんも負けないで、頑張って。

「……あーと、『嘘をついてる』、のが、嘘……よね……」

 『嘘』が、嘘。
 だから、『本当』ということ。
 ……またまた、不思議。
 今度は、嘘が本当になってしまいました。

「だから……そのー……嘘が、ほんと……?」
「うん。よく、できました」

 言って、おじいさんは今までよりもさらに優しく妖精さんをなでてあげました。

「? ……えへへーっ」

 よく分からないけど、妖精さんはほめられて嬉しくなりました。

「嘘が好きなら、うーんと嘘をついてみよう」

 おじいさんは言います。

「妖精さんはみんなに、本当のことを教えてあげる。するとそれは、不思議と嘘になる」
「……えーと……?」
「これで妖精さんは、みんなに感謝される嘘を言えるようになったんだよ。すごいでしょう?」

 少し分かってきた、と、こくこくと頷く妖精さん。
 だんだん元気が出てきたみたいです。
 そこへおじいさんが、とっておきの言葉をかけてあげます。

「――――どうかな? そんなイタズラって、なんだか素敵じゃないかな?」
「……あは、あははっ、うん、ステキねっ! もしかしてあたい、すっごい秘密知っちゃった!?」

 妖精さんはついに、いつもの大きな晴れ晴れとした声で言いました。
 さっきまでの落ち込みようはどこへやら、まぶしいくらいの笑顔です。
 きっと、おじいさんのおかげです。
 そのことに妖精さん本人は気がついているのか、いないのか、どちらにせよ、嬉しそうに目を細めて愛くるしい笑みをこぼす妖精さんをみておじいさんも笑顔になりました。


 やっぱり、魔法みたい。


 誰にも聞こえないように言った妖精さんの呟きが、湖に溶け込んでいきました。






<6>





 湖に、夜の少し冷たい風が戻ってきています。
 周囲に立ち並ぶ木々の色はだんだんと黒く染まっていき、今では輪郭程度しか分かりません。
 さっきまではしゃいでいた妖精さんたちはどこへやら、静かな風の音だけが、響きます。
 黒い森の奥、遠い空を見てみると、今はもうお星様がたくさん輝いていました。


「おや、もう暗くなってきたね」

 おじいさんは、空を見上げて言いました。
 見えるのは、雲がひとつもない、きれいな星空です。

「ごめんね、今日はもう描けないから……また来て、一緒に描こうね」
「……うん、絶対だよ。だって、ここは……」

 妖精さんはそこでおじいさんの方に向き直ります。
 そして、大きく手を広げて言いました。

「あたいの、いっちばん大好きな場所だからっ!」

 さっき、ちゃんと言えなかった言葉。
 今度は気持ちよく笑って言えました。
 妖精さんは手を広げたまま、くるくると回りました。

「わっ……とと」

 ちょっと回りすぎて目が回ったのか、少しふらふらとした妖精さんでしたが、
 気持ちいいの笑顔のまま、言います。

「おじちゃん、今日はありがとう」
「こちらこそ、ありがとうね」

 おじいさんも、にっこり笑って言いました。
 澄んだ心地のいい風が、二人をつつみます。

「それじゃあ、帰ろうかな」
「あ、おじちゃん」
「うん。妖精さん、案内してくれるかな?」
「……うんっ!!」

 春先の夜の湖、そのほとり。
 楽しそうに頷きあう二人の姿があります。
 妖精さんは、はにかんで笑いながらおじいさんに手を伸ばしました。
 おじいさんのやさしい手が、その小さな手を握り返してくれました。

「えへへ」

 そんな声が妖精さんから思わずもれました。
 手を繋いだままぶんぶんと、嬉しそうに大きく揺らします。

 春先の夜の湖、そのほとり。
 仲良く笑いあう二つの影がありました。





 うっすらくらい、もりのなか。
 お星さまのひかりを頼りに、二人は歩きます。
 二人の話し声が、穏やかに流れていきます。


 うっすらくらい、もりのなか。
 途中、二人でクッキーを食べました。
 さくさくという音が、あまさを奏でてくれました。





 うっすらくらい、もりのなか。

 小鳥さんも蛙さんも、

 なんにも言いません。

 風の音すら、ありません。

 こんな静かな森に、

 とても、不相応な、

 とても、似つかわしくない歌声が、

 ただ、ただ軽快で、甘美な歌声が、

 遠く、遠く――――響きました。






<7−1>






「――――あれ?」

 急に妖精さんが立ち止まり、振り返ります。
 振り返って、それからさらに、辺りを何度も見回します。

「あ、れ? おじちゃん……?」

 妖精さんは、途切れ途切れに、言います。
 だけど、だけど。
 何も、音はしません。
 返事は一切、返ってきません。
 あの優しい声は、もうしません。
 おじいさんの姿が、ありません。

「っ、え――? ねぇ、おじちゃん? おじちゃん……? ね、どこ?」

 いやです。
 いやな気分です。
 いやな予感がします。
 いやなことを考えてしまいます。
 ああ、駄目です。
 また、いやな考えが廻り始めました。

「…………、ぁ……」

 妖精さんは、
 おじいさんが、
 怪我をしているところを、
 想像しました。
 想像、してしまいました。

「――――あたいの、せい?」

 もしも、自分がしっかりしていたら?
 もしも、嘘をついておじいさんを湖に連れてこなかったら?

 頭がいたいです。
 背筋がきもちわるいです。
 とてもとても、こわいです。

「あたい……は……」

 妖精さんは、がくがくと震える声で、言いました。

「最強なん、かじゃ、……ない」

 とすん、と尻餅をつきました。

「ちが、ちがう……、ちがうよぅ……」

 泣きそうです。
 泣きたいです。
 でも、泣いていいの?
 おじいさんを放って、泣いていても、いいの?
 大好きなおじいさんが、怪我をしているかも、知れないのに?
 泣いていて、本当に、いいの?

「……いい、っ、わけ、ない」

 妖精さんは、こぼれそうだった涙をぬぐって、立ち上がりました。
 強い眼差しで、立ち上がりました。

「――――いいわけ、ないよ!」

 そうです。
 妖精さんは、案内役です。
 おじいさんを探しましょう。
 大丈夫、あのおじいさんならきっと、大丈夫。

 ぜったい、大丈夫。






<7−2>






 まっくらくらい、もりのなか。

 お星さまの光も、届きません。

 ふかいふかい、もりのなか。

 おじいさんは、ひとりで歩きます。

 風はなく、音もなく、光さえない、さみしいもりのなか。

 おじいさんは、迷うことなく歩きます。

 陽気な歌声だけが、だんだんおおきくなっていきます。


「あれ、もう来たの」


 その声が聞こえるとほぼ同時。
 おじいさんが一歩進むと、明るみに出ました。
 そこは森の屋根が途切れていて、星空がのぞける、本当に小さな広場のようでした。
 夜の濃さの違いで、木々やおじいさんから薄い影が伸びています。

「おや、こんばんは」

 おじいさんは少し見上げていいました。
 視線の先は、大きな樹木の丈夫そうな枝の上。
 そこに、ぱたぱたと足をゆらしている夜雀さんを見つけました。
 夜雀さんはおじいさんを見て、ちょっと驚いた顔をしました。

「おぉー、立派なお髭ね! ……あ、これは失礼しました」
「いえいえ、ありがとうね。えーと……、」
「夜雀です」
「はい、夜雀さん。初めまして、宜しくお願いしますね」
「あ、どうも初めましてー。こちらこそ、宜しくお願いします」

 ぺこり、とお辞儀し合う二人。
 なんだか平和です。

「挨拶はその辺で……と、おじさま。さっき、途中からは自分で歩いてきたでしょ。あれ、なんでですか?」
「うん? ……そうだね、とてもいい歌声だったものだから、つい……かな?」
「あはは。おじさま、変わってるね。大抵の人間は必死で逃げようとするのに」
「おや、それはちょっと残念だね……、ほら、こんなに可愛い夜雀さんに出会えるのに」

 おじいさんがそう言うと、夜雀さんが高らかに笑いました。
 声をだして、手を叩いて、その全身で素直に喜びを表すような、気持ちのいい笑い方でした。

「あはははっ! おじさまってすごく変わってるけど、いい人だね」
「そう言ってもらえると嬉しいね、うん、本当に。ところで夜雀さん、こんなの、好きかな?」
「……? あ、と。これはこれはクッキーですか、大好きです、頂きます。私たち鳥類はタンパクも好きですが炭水化物にはもっと目がなくて。鳥目鳥目って言いますけど、好物くらいは暗くてもちゃんと見えるんですよ? あ、目ぇちゃんとありましたね、よかった」

 夜雀さん、どうやらおしゃべりさんみたいです。
 ちょっと過剰気味に話しつつ、枝から飛び降りたかと思うと、
 その背中の翼ではばいて、おじいさんの前に降り立ちました。

「はい、どうぞ。夜雀さんは元気だね」
「ありがとうございます。あ、こっちはクッキーのお礼です。ですから褒めていただいた分のお礼もしますね。ありがとうございますーっと。えと、それで、立ち食いってのもなんですからほら、一緒に座って食べません?」

 私が言うのもなんですけどね、と無邪気に笑って、夜雀さんは樹木の根元を指差します。
 そこは、星空の淡い光が降り注いでいてとても神秘的です。

「もしかして、ここが夜雀さんの好きな場所なのかな?」
「あ、分かりました?」
「うん、静かでいい場所だね」
「そうなんですよー。歌の練習にも丁度良くって」

 妖精さんは湖がお気に入りの場所だったように、夜雀さんはこの場所がお気に入りなのでしょう。
 そのお気に入りの場所の、さらにとっておきのスポットに、二人並んで座ります。

「それじゃ、いただきます」
「はい、どうぞ」

 さく。

「わ、美味しいねこれ」
「でしょう?」

 さくさく、さくさく。

「ねえ、夜雀さんは、いつも一人なのかな?」

 さく。

「なんですか? 藪から棒に。あ、棒ならまだ良いんですけどね。同じ意味でも、寝ている私の耳に水だけは勘弁してください。どうしてってほら、耳が聞こえづらいと音程ずれるじゃないですかー」
「それなら大丈夫。棒だから、安心して答えてね」
「あ、はいどうもです。……んー、まあそうですね、大体一人でいますよ。何といってもうるさいのはきらいですし。私はよくしゃべりますけどね。そういう意味ではおじいさんは優しいし静かで大好きの二乗です」
「二乗ですか」
「二乗です」
「それはそれは、ありがとう」
「いやいやお礼なんて……(クッキーのおかわりで十分です、ってのはちょっと失礼かなぁ……)」

 さくさく、ごくん。

「……ねえ、おじさま。今度は私から質問」
「なにかな? あ、ほらもう一枚どうぞ」
「え、ホント? やったぁ! ……じゃなくて、ああいやクッキーはありがたく頂きますけど、はむ」

 さくさくさくさくさくっ、ごくん。

「で……おじさまは、私が怖くないの?」
「おやおや、どうしてそう思うのかな」
「そりゃあだって私は妖怪だし、おじさまは人間だし。もしかしたら私、おじさまを襲うかもしれないよ?」
「うん、でもまだ襲っていないでしょう?」
「そりゃそうなんだけど……でも元々襲うつもりで呼んだんだけどなぁ……」
「襲うのかな?」
「う〜ん……春先だし、ほら。食料とか……妖怪にも色々あるんですよねー。でもおじさま、良い人だしなぁ……お菓子ももらっちゃたし……」
「うん……」

 むう、と考え込んでしまった夜雀さん同様、
 おじいさんも何か考え事をしだしました。
 実はおじいさん、気にかかっていることがありました。
 夜雀さんのこともそうですが、一番は妖精さんのことについて、です。
 だけどおじいさんはそのことに触れず、夜雀さんとの会話を続けます。

「そういえば、さっきの歌は一体何かな?」
「ああ、あれ? あれは魔除けの歌です」
「おや、魔除けなんだ。……それにしてはずいぶんと明るい歌だったね」
「明るいですよー、なんたって私の十八番ですし。魔除けだと、邪魔者は来ないし人間は寄って来るし、良いことずくめなんです」
「なるほど……なるほど。それじゃもう一つ質問させてもらって……春の歌なんかも、あるのかな?」
「もちろんありますよ〜。そりゃあもう飛び切りノリのいいやつが。あ、聴きます? 聴きますか?」
「うん、そうだね……出来るならそうしたいんだけど……、少し、用事があってね」

 ざあ。
 と、か細い風が木々の間を通り抜けて、寂しさを落としていきます。
 風が止んだあとの森には、新しい静寂。
 そしてまた、風が木々の葉を揺らして音を立てて……。
 それが何度か繰り返されます。
 夜雀さんは通り抜けていく風を最後まで見送ってから、尋ねました。

「用事……ですか?」
「うん、大切な用事がね。……それで、その用事についてなんだけど――――夜雀さん」

 そう言って向き直ったおじいさんの目は、いつになく真剣なものになっていました。
 顔は笑っていても、どこか迫力を感じます。
 その雰囲気の変化を感じ取った夜雀さんも、少し身を硬くします。

「わたしのお願い、きいてくれないかな」
「お願い? ……何でしょう」
「近くの湖って、分かるかな。率直に言うと、そこまで一緒に来て欲しいんだけど」
「はあ、分かりますけど……一緒に、っていうのはそこまでの道案内ですか?」

 ううん、とおじいさんは首を振ります。

「そこで歌って欲しいんだよ」
「……はい? …………すいません、今、なんと?」
「うん、湖で、夜雀さんの歌声を聞かせて欲しいなって」

 ぴく、と夜雀さんのまゆが上がります。
 そこでまた、風が木々を揺らしました。

 夜雀さんは、風が通るのをゆっくり、たっぷり時間をかけて待ちました。
 それから、おじいさんに返事をしました。
 それはひどく冷たく、ひどく悲しく。
 まるで大事な何かを突き放すように、返事を、しました。

「いやだよ、面倒くさい」

 ここに、おしゃべりな夜雀さんはもう居ません。
 今の夜雀さんは、沈黙とその余韻をもって、最小の言葉で最大の威圧をします。

「……どうしてまた、わざわざ、そんなところで……?」
「そんなに嫌かい?」
「もしかして、あの、うるさい妖精のために?」

 うるさい妖精。
 その言葉が夜雀さんの不機嫌を痛いほどに表しています。
 空気はぴりぴりと、際限なく張り詰めていきます。
 その中、おじいさんは射抜くような鋭い視線を受けますが、決してひるみません。

「実は、ね」

 と静かに前置いて、だけど次の瞬間には力強く言い放ちます。

「もしかしたらいま、友達が泣いているかもしれないんだ。もしかしたら、友達がまだわたしを探しているかもしれない。もしかしたら、友達が怪我をしたかもしれない……そう考えるとね、もう、わたしは――――」

笑顔は崩さずに、きっぱりと言います。
夜雀さんから目を逸らさずに、断言します。

「――――黙って、いられないんだ」
「…………それで?」
「正直に言うよ。わたしは、今すぐにでも妖精さんを探しに行きたいんだ。心配なんだ。何より、ちゃんと里まで道案内して貰わないといけない。だけど生憎わたしは歳でね、歩き回るのはつらい。そこで、夜雀さんに協力して欲しい」
「……聞いておいて何だけど、おじいさんも……よく、しゃべるね。私はうるさいのが嫌いって、ちゃんと聞いてなかったの……?」

 おじいさんは、夜雀さんの限界まで低くなった声にすら少しも揺らがずに続けます。

「その良く通る声で、歌ってくれないかな? 手伝ってくれないかな? 無責任な話だと思うだろうけど、湖で、他の妖精さんたちの前で歌ってみれば――――必ず、友達ができるよ。このわたしが約束する。そう、一人ぼっちだった妖精さんにも、そして、夜雀さんにも」
「……はっ。ははっ、私に、友達? それも、妖精の?」
「いや、わたしもいるよ」
「……へえ、それはそれはご丁寧に」

 ざあ。

 その言葉を境に、しばしの沈黙が訪れました。
 時が立つにつれ闇はより濃く、時間はより長く、空気はどんどんと沈みこんで重くなっていき、限界点までいったその時、冷やかな風がその沈殿を洗い流していきます。
 そしてすぐさまに張りなおされる、緊張の糸。
 それを何度繰り返す間も二人の視線はぶつかったまま、動きませんでした。





 いつの間にか二人は立ち上がり、対峙するように向き合っていました。
 一体どれくらい風が吹きぬけた頃か、夜雀さんが口を開きました。
 しかしその言葉はすぐにでも闇に沈んで同化していくほど、重苦しい空気を孕んでいます。

「さっきの、本気で言ってる?」

 夜雀さんは明らかに、機嫌が悪くなっています。
 それも、猛烈に。
 機嫌が悪いというよりももう不機嫌の塊のごとく、表情を少しも隠さずおじいさんを睨みつけます。
 鋭い爪をみせて凄み、『私を怒らせると取り返しのつかないことになる』、そう示しています。
 だけどおじいさんはそんなこと、十分過ぎるほど分かっています。
 夜雀さんがその気になれば、脆い人間なんかすぐだってことくらい。

「あれは、妖精なんだよ? おじさま、分かってないでしょ?」

 それでもおじいさんは決して負けません。
 視線は少しも揺らがず、真直ぐに夜雀さんを見つめ続けます。

「っ……!」

 視線に耐え切れずに夜雀さんは、ぎり、と音がするほど歯を噛み締めて。
 その手を横に大きく薙いで。
 目の前の人間に向かい、叫び、怒鳴ります。

「……教えてあげる。教えてあげるよ! 私ら妖怪が! 貴方たち人間のことをどんな目で見てるか知ってる? 知ってるよね? ……たべもの、だよ? 貴方たちを、そこらの牛や豚と同じように見てるんだよ? 妖精だって一緒。人間なんて、ただの暇つぶしのおもちゃでしかないんだよ!?」

 夜の鳥、森の獣が、大気を震わせ力の限りに吼えます。
 眼前の人間を、叩き潰すように。
 自らの悲愴を、掻き消すように。

「……そうだね」

 だけどか弱き人間はそれを真っ向から受け止めて。
 受け止め、相手が反論すら出来ないほどひたすらに、正々堂々に。
 そして勇猛果敢に、仮初《かりそめ》の強者をたやすく突き崩します。

「悲しいけどわたしなんて、ただの道具なのかもしれない」

 いくら力があっても。
 どれだけ長生きでも。

「それならまだしも、ひょっとするとわたしのことなんかすっかり忘れて、今はもう寝ているかもしれないね」

 他人を知ろうともせず、ただ否定するだけの。
 自らの弱さすらも認められない、そんなちっぽけな。
 どこまでも孤独な妖怪如きに、万が一にも億が一にも、勝ち目なんて。
 決して絶対確実に、聡明なる彼には――――敵いません。

「うん、それならそれでいい。妖精さんが困っていないのなら、それで構わない」

 一点の曇りも。
 一片の迷いも。

「だけど」

 一抹の不安も。
 一縷《いちる》の偽りもなく。
 自信と誇りをもって、今ここで宣言します。

「――――だけど、だけどね。少なくとも、わたしは妖精さんを友達だと思っている。夜雀さん、わたしはね。妖精さんをたくさん、たくさん笑わせてあげたいんだ」

 だから。
 みんなに話しかけるための、ほんの少しの勇気を。
 与えてあげたい。

「妖精さんのことも、もちろんきみのことだって、わたしは大好きだからね。きみが何と言おうと、そう簡単には諦めてあげないよ」

 きっと、話しかけられたなら、そのときは。
 そのときは、きっと――――

「ね、夜雀さん」
「…………」
「あの子はとても素直で優しい子だよ。話してみればすぐ分かる。きっと、夜雀さんは驚くよ」
「…………」
「だから、ね」

 星空の淡い光が差し込む、小さな広場。
 おじいさんは自分よりも小さな夜雀さんに向かい、深々と頭を下げました。
 にっこりと優しい笑顔で、お願いします、と。

「――――わたしのお願い、きいてくれないかな――――」






<8−1>





 聞こえた。

「――――はっ、はっ」

 聞こえる。
 こっち、だ。

「はぁっ、はっ」

 こっちから、聞こえる。
 湖。湖の、方から。
 歌が、聞こえる。

「おじ、ちゃん」

 もう、湖はすぐ、そこ。
 大丈夫、きっと大丈夫。

「あっ……」

 どざ。
 気がついたら、転んでいました。
 木の根に足を引っ掛けたのでしょう。

「だいじょう、ぶ」

 飛びつかれて羽はもうくたくたで。
 走りつかれて足ももうくたくた。
 おまけに身体中、擦り傷切り傷ができています。
 それでも起き上がり、また走ります。
 湖はもうそこだから。
 おじいさんは、きっともうすぐそこだから。
 歌だってうるさいくらいに聞こえてきて――――
 その時。
 木々の隙間に、ちらり、と湖の端っこが覗けました。

「――――おじちゃんっ!」

 全速力で森を駆け抜け、湖のほとりに飛び出ます。
 視界はいっきに開けて、妖精さんのその目に映ったのは――――

「おや、妖精さん。おかえりなさい」
「……あれ?」

 元気なおじいさんの姿でした。

「………………」
「………………」

 思考が追いつくまで、まじまじと見つめあいます。

「…………ほんもの?」
「うん、本物だよ」
「………………」

 もう少しだけ、そのままでいました。

「………………」

 今度は、ぺたぺたとおじいさんを触ったりしてみます。
 最後におじいさんの立派なおひげを確認して、妖精さんはへたりと地面に座り込みました。
 そして、安堵のため息ひとつ。

「よ……よかったあ……」
「……心配かけて、ごめんね」

 そういっておじいさんは、妖精さんをなでてくれました。

「おじちゃんが、怪我してたら……どうしようかと」
「ありがとう、わたしは大丈夫。それよりも妖精さんが」
「あ、あたいは大丈夫。すぐ、治るから。それより……」

 言って妖精さんは息を整えつつ、周りを見渡しました。
 満天の星空が照らしてくれるので、見えなくはありません。
 歌声の主は、大きな湖の真ん中、その上空にいました。
 妖精さんが初めてみる妖怪さんです。
 その妖怪さん……夜雀さんが、おじいさんに何をしたのか妖精さんは分かりません。
 だけど、悪い事をしようとしたことくらい分かります。
 妖精さんは夜雀さんに何か言ってやろうと、キッと睨みつけました。

「ららら〜〜♪」
「…………?」

 夜雀さんは妖精さんのことなんていざ知らず、とびっきり陽気で明るい歌を熱唱しています。
 それもノリノリです。すっごく楽しそうです。満面の笑顔です。
 妖精さんが力強く見れば見るほど、夜雀さんの楽しそうな笑顔が分かりました。
 そこまで楽しそうに歌われると、なんだか、怒る気分にはなれません。

「夜雀さんは良い子だったよ。それも、妖精さんと同じくらいに、ね」

 隣でおじいさんが笑って言います。
 それを聞いて妖精さんは悩みましたが、しばらくしてまたため息ひとつ、つきました。

「……おじちゃんは無事だったんだし、まあ……いっか」

 夜雀さんのこと、許してあげました。
 そんなことより、今はきれいな歌声を思う存分楽しむことにしよう。
 妖精さんはそう思ったのでした。





「ねえ、そこのあなた」
「え?」

 妖精さんは、突然かけられた聞きなれない声に驚きます。
 振り返ってみれば、そこにはいつも湖で見かける三人組の妖精さんたちが、やっぱり三人でいました。
 そのうちの一人が妖精さんに話しかけました。

「これ、あなたが描いたんですって?」

 お月さまみたいな金色の、くるくるとした髪型をした妖精さんです。
 羽はうすくて真っ白で、お星さまの明かりを反射して輝いています。
 高い声でしたが、それは余分な音が一切ない聞き取りやすいものでした。

 その手には、一枚の紙。
 おじいさんと妖精さんで、一緒に描いたあの大樹の絵です。
 妖精さんはどうしてそんな事を聞くのだろう、とはてなを頭に浮かべます。

「そうだけど……?」
「全部?」
「えっと……その、おっきな木だけ」

 戸惑いながら、自分の描いた大きな木の絵を指差します。
 妖精さんが自信なさげなのは、おじいさんが描いた部分とくらべてみると、
 線がふにゃふにゃで、曲がっていて、のっぺりと薄っぺらいことが分かっていたからです。

「へぇー」
「わぁ、すごいね!」

 それでも、くるくる髪の妖精さんと、
 もう一人、太陽みたいな黄色の髪をした元気な妖精さんが口を揃えて、すごいすごーい、とおどろいてくれました。
 とくに黄色の妖精さんは、手を叩いて大げさなくらいに喜んでくれました。

「え、ほんとう?」

 褒められて、ちょっと妖精さんは元気付きます。

「私たち嘘は…………んー、……結構つくけど。まあ本当だから安心しなさいよ」
「うんうん。このダイナミックさがいいんだよね! ちょー強そー!」
「それ褒めるとこ違うくない? ……ま、いっか。それで、アンタはどう思う?」

 くるくる髪の妖精さんが、静かにこっちを眺めていたもう一人の妖精さんに声をかけました。
 その妖精さんは青のような黒のような、深い色の長い髪をしていて、背中には蝶々みたいに大きな羽がついています。

「んー、あたし? そうね……あたしはこっちの方が好きかな」

 蝶々羽の妖精さんは、おじいさんの描いた部分を指差して言いました。
 それを聞いた妖精さんがちょっと肩を落としたのをみて、くすりと笑って指を動かしました。

「まあ、こっちもきらいじゃないから安心して」
「……うん、ありがとう!」

 みんなに褒められたこともそうですが、何よりもみんなと話が出来たことが嬉しくて、笑顔になった妖精さんは思わずおじいさんの方へ振り向きます。
 だけどおじいさんは、いつの間にか少し離れた木の根元に座っていました。
 その姿は、なんだか妖精さんたちを見守ってくれているみたいで――――

「あ……」

 妖精さんは、確かに聞きました。
 微笑むおじいさんが、『妖精さん、がんばって』と、言ってくれたのを。

「……うん」

 今なら大丈夫な気がします。
 おじいさんがくれた勇気をだして、みんなに声をかけてみましょう。
 妖精さんなら、大丈夫。

 話しかけられたなら、そのときは。
 そのときは、きっと――――友達に、なれるから。
 きっかけは、いつでもどこでも、そこにあります。

「ねえ――――」

 みんなが大好きな遊びの話。

「うんうん」

 嫌いな季節のこと。

「それでね」

 わくわくするような、見たことのない場所の話をして。

「わあ……」

 それから、怖かった夢の話はどれもやっぱり怖くて。
 それから、それから……。

 不思議と話題は途切れず、するすると話すことが出来ました。
 おじいさんから教えてもらった面白い話も、みんなに教えてあげました。

「――――あははっ」

 もう、楽しくて仕方がありません。
 妖精さんは、おじいさんや夜雀さんの陽気な歌のおかげね、と笑いました。
 もしかすると、これも魔法なのかも、知れません。

 そして……。

 友達になって欲しい。
 これからは一緒に遊んで欲しい。
 そんな、妖精さん一番の願いを伝えるころには、
 もうすっかり皆と仲良くなっていたのでした。

「友達? 私は構わないわよ」
「もちろんいいよ! そだ、握手しよ、あくしゅ!」
「…………あれ? もしかしてあたし、この二人の友達に見られてたの?」
「「え゛、違ったの!?」」
「え、そうだったの?」
「「ひどいっ!」」

 高音の二重奏が響きます。
 それが何だかおかしくて、妖精さんはくすくす笑いました。
 するとみんなも一緒に笑ってくれます。

「くす、冗談。仲良くしましょうね」
「またアンタは〜……それは置いといて、まあ、宜しくお願いするわ」
「アハハ、よろしくね〜!」

 みんなの笑顔が何だか夢みたいに思えて、また妖精さんはおじいさんに振り返ります。
 おじいさんはやっぱり、いつものように微笑んでいました。



 それからしばらく、みんなで遊びました。
 湖の水でお手玉をしました。
 辺りの石を拾って、水切り遊びも教えてあげました。
 湖の上で競争したりもしました。
 みんなで、一緒に笑いました。

「あははっ、あはははっ!!」

 今度の笑い声は、以前のものとは違い決して小さくなったりしません。
 寂しくなったり、悲しくなったりしません。

 嬉しいっ!
 楽しいっ!
 大好きっ!
 みんなみんな、大好きっ!

 それは妖精さんの――――本当の、心からの笑い声でした。






<8−2>






 夜雀さんによる春の歌は今も続いています。
 その透き通るような歌声は、湖を渡る風と一緒に森のどこまでも駆け抜けていきます。

 楽しげな歌声に惹かれて、眠っていただろう妖精さんたちもどんどんと集まってきています。
 あちこちから話し声、笑い声が聞こえてきて、湖付近はもうすっかりお祭気分です。
 集まってきた妖精さんたちはみんな好奇心旺盛で、おじいさんの周りでさわいでいます。

 そんな妖精さんたちの中でも大人しい子は、夜雀さんの歌に合わせて体を揺らしていたり、空のお星様の数を数人で数え合っていたり、相当眠いのか木に持たれて目をつむったりしています。
 当然、イタズラ好きで元気あふれる妖精さんもたくさんいます。
 その子たちは次から次へと、おじいさんに自慢のトリックを仕掛けます。
 だけどそのたび完膚無きまで見破られて、落ち込んでしまう妖精さんもいっぱいいました。
 そんなへこんだ状態の妖精さんを、黄色い妖精さんたちみたいにもっと元気な子たちが『えいやー!』と湖に突き落として遊んでいます。
 おじいさんもおじいさんで、たくさんの妖精さんたちに囲まれるという初めての体験を楽しんでいるようでした。
 

「絵、描いてみせてー?」

 そんな賑やかな湖で、だれかが言いました。

「うん、そうだね。それがいい」

 おじいさんが、頷きます。
 ちょっと退屈していた妖精さんたちも、こぞって頷きます。

「ほら、妖精さん。みんなに見せてあげようよ」
「え、あたいが? おじちゃんじゃだめなの?」
「わたしが描くにはちょっと暗くてね。……いやかい?」

 おじいさんがそう聞くと、周りの妖精さんたちも一斉に静かになりました。
 夜雀さんはというと相変わらずの熱唱ぶりでしたが、今は間奏中みたいです。
 ぱたぱたと羽を揺らしながら、リズムを取っていて、やっぱり楽しそう。
 ……と、いうことで。
 湖は静かになり、ほとんどすべての視線が妖精さんに注がれます。

「……ううん、いやじゃないよ。いやじゃないけど……」
「大丈夫。みんな、妖精さんの絵がみたいんだから」
「そう……?」

 妖精さんが問いかけるように見渡すと、他の妖精さんたちはまた、こぞって大きく頷きます。
 みんなの背中にある、様々な色と形の羽がちらりと見えて、きれいだな、と妖精さんは思いました。

「……ん、分かった!」

 妖精さんも大きく頷きました。
 わぁっ、とみんなの声があがります。
 どの声が誰の声か、ほとんど分からないくらいに賑やかです。
 なので妖精さんはおじいさんに近づいて、大きな声で話しかけました。

「じゃあっ、紙と鉛筆っ、かしてくださいっ」

 ですがおじいさんは優しい笑顔のまま、首を横に振りました。

「え?」

 妖精さんは聞こえていないのかと思い、もう一度大きな声で言ってみましたが、おじいさんはやはり首を横に振ります。
 はてなを浮かべている妖精さんに、おじいさんは顔を近付けて、

「妖精さん」

 と、耳元で言いました。
 そして夕方のときみたいに、ちょっとした問いかけをします。

「楽しいことをするときは、『好きなことを……』、……どうするのだったかな?」

 それは、妖精さんとおじいさんが出合ったばかりの頃、聞いた覚えがあるものでした。
 何だっけ、と少し考えてから、妖精さんもおじいさんの耳元に返します。

「えと、…………うんと自由に……だっけ?」
「そう、うんと自由に、だよ」

 うんと、自由に。
 妖精さんはうつむいて、何度か繰り返して言ってみます。
 少しして何か思いついたのか、静かに顔をあげました。

「……うん、分かった。けど、何を描けばいいのかなぁ?」
「おや? そんなの、妖精さんの書きたいものでいいんだよ」
「書きたいもの……?」

 書きたいもの、書きたいもの。
 また妖精さんはうつむいて、何度か呟いてみました。

「…………書きたいもの?」

 だけど今度は中々思いつきそうにありません。

「ほら、妖精さん、言ったでしょう? 『どうせなら……』、どんなのがいいんだったかな」

 そこでおじいさんがいつかと同じように助け舟を出してくれました。
 今度の言葉は、妖精さん自身が言ったものです。

「……どうせなら……???」

 どういう意味だろう。
 妖精さんの頭に、はてながみっつ。
 首をかしげて、はてなと一緒に妖精さんもくるくる回ってみたりします。
 もうちょっとで目が回る……というところで、ぴん! とひらめきました。

「あ……そっか……そうだよ! そうだよねっ!!」
「分かった?」
「うんっ! ありがと、おじちゃん!」

 妖精さんは、にぱっと笑うとぴょんと跳ねて湖の前まで移動します。
 それからまっすぐ片手をあげて、みんなの方へと振り返ります。
 そして夜雀さんにも負けないくらいの、晴れ晴れとした声で言いました。


「――――どうせなら、大きいほうが格好いいよ!!」


 みんなが見守る中。
 妖精さんはスカートの裾を手で持ち上げて、ぺこりと頭を下げました。
 それが舞台開幕の合図です。
 妖精さんたちは、ぱちぱちと拍手を送ります。
 その様子に気がついた夜雀さんの歌声は、より澄んで、より美しいものになっていきます。


 春のお祭は、まだまだ始まったばかりです。
 空気は清々しくて、身体をなでる風がとても心地いい。
 この場にいるだれもが、そう思っていることでしょう。





「おっきな紙に」

 妖精さんが口ずさみながら、ゆっくりと湖に足を運びます。

「おっきな木を」

 そのつま先が水面に触れると、すう、と白い光が波を立てるように広がっていきました。

「やさしく」

 湖は不思議と音を一切立てず、ただ静かに透明な輝きを増していきます。

「えがきましょう」

 妖精さんはガラスの湖上を優雅な足取りでわたっていきます。
 すらりとした手足がゆれるたび、新たなガラスがきらきらと生まれます。
 その静けさ、美しさ、そして妖精さんの神秘さに、みんなは感動の声を上げました。
 たくさんの妖精さんたちはもちろん、
 おじいさんも、おじいさんと一緒にいる三人組の妖精さんたちも。
 歌っている最中の夜雀さんでさえ、です。
 みんなみんな、湖で舞う妖精さんに釘づけになりました。
 それはもう、うっとりするような光景でした。



――……――……――……――


「優しいのね」

 蝶々羽の妖精さんが、湖を眺めたまま小さく言いました。
 すると隣にいた、くるくる髪の妖精さんがびくりと反応しました。

「な、何のことかしら?」
「音よ、お・と。手伝ってあげてるんでしょう?」
「私はべつに……」
「正直言いなさい」
「……分かってるんだったら言わせないでよもう……恥ずかしいんだから」
「分かってもらえて嬉しいくせに」
「…………」
「嬉しいんでしょ? んー? 正直に言ってみなさい?」
「はいはい。…………しっかし、なんでバレるかなあ……」
「ま、長い付き合いだしね。このくらいは」
「アンタ時々怖いわ……」
「ん、ありがと」
「褒めてない!」
「こっちには飛びつくのね、嬉しかったくせに」
「…………」

「お? なになに? 何のハナシ?」

 ひそかに火花を散らせている二人の間に、黄色の妖精さんが入ってきました。
 その顔をみて、くるくる髪の妖精さんが何か思いついたような顔をしました。

「……そうね、うん。……丁度良いわ。どうせならアンタらも手伝いなさいよ」

 言って、くるくる髪の妖精さんが二人を指さしました。
 その時おじいさんが、なんだか変な方向で盛り上がっている三人に気が付きました。

「おや。手伝うって、どういうことかな? 良かったら、教えてくれないかな」
「ああ、おじいさんは知らないですよね。この子、音を消せるんです。陰湿ですよね」
「へあっ!?」
「ほう、陰湿ですか」
「陰湿です」
「ちょ、こらなに言ってんの!? お、おじさんも素直に頷かないっ!」
「アハハ! 確かにインシツよね!」
「アンタもうるさい!」

 一人ばたばたと騒ぐ、くるくる髪の妖精さん。
 それを黄色の妖精さんがインシツ、インシツー、とはやし立てています。

「陰湿な子は放って置いて続けますね。次にこの子は、光を屈折されられるんですよ」
「……陰湿言うな……」
「はーい! わたしはインシツじゃないよー!」
「…………しくしく…………」

 おじいさんは、くるくる髪の妖精さんの頭に手をおいて、よしよし、となでてあげました。
 するとちょっとだけ、元気になったみたいでした。

「それで、妖精さん? あなたも何か出来るのかな」

 くるくる髪の妖精さんをなだめつつ、おじいさんは蝶々羽の妖精さんに尋ねました。

「あたし? あたしはまあ……特にこれといって」
「ぐすっ……嘘つきなさい。アンタだって……気配まさぐったりするの……ぐす、得意じゃない」
「やぁね、人聞き悪いこと言わないの」
「人聞きワルいー!」
「もういや……」

 よよよ、とおじいさん泣きつく、くるくる髪の妖精さんでしたが、蝶々羽の妖精さんの、

「あ、ちょっとまって。森から誰かこっちに来るわ」

 という声に首を傾げます。

「誰か来るって、……ぐす。……もうさんざん集まってきてるでしょ? 今更……」

 涙目ながらも、ちょっと呆れたように言いました。
 くるくる髪の妖精さん、実は見た目ほど落ち込んでいなかったのかも知れません。
 もしかするとこれくらい、日常茶飯事だったりして。

「いやまあ、あたしの能力をおじいさんにアピールしておこうかなーって」
「……え、それだけ?」
「うん」
「……はあ……アンタはもう……」

 と思ったら、また落ち込んでしまいました。
 その表情はころころと変わります。
 怒ったり、落ち込んだり、驚いたり、笑ったり。
 それをみておじいさんは穏やかに笑いました。



「それで、一体だれが来るのかな?」

 おじいさんのその声で、みんなが森の方へ目を向けました。
 それとほぼ同時に、がさりと音がしてまた一人、妖精さんが現れました。

「あれれー? なんだか楽しそうですねー?」

 間の抜けた声。
 その妖精さんは、どこを見ても白いと言えるような格好をしています。
 茶色に近いきれいな髪をしていて、背中には夜雀さんと似た翼……のような羽があります。

「おやおや、こんばんは」
「こんばんはー。春の空気を感じて、ついつい来ちゃいましたー」
「へえ? あなたってもしかして、いつも春呼んでくれる子?」
「はい、そうですねー。わたしもこれに混ざっていいですかー?」

 白い妖精さんがそう言うと、何故か妖精さん三人組が顔を見合わせました。

「……ねえ、これって」
「そう、チャンスよ」
「うんうん!」
「あのー? どうかしましたー?」
「わたしが指示ね、それで、あなたたちはその通りに働く」
「「えー?」」
「……あの―?」

 白い妖精さん、置いてきぼりです。
 なので湖を眺めながら、おじいさんとのんびり世間話でもしようかなと思い、
 おじいさんの隣にちょこんと座りました。

「ね、あなた」

 だけど急に、蝶々羽の妖精さんが声をかけてきました。
 白い妖精さんは目をぱちくりさせながら見上げます。
 すると蝶々羽の妖精さんは、なかなか意味深で素敵な笑顔をふりまきながら、言いました。

「折角だし、この湖を――――みんなで盛り上げてみたいと思わない?」


――……――……――……――






<8−3>






 妖精さんが、湖の中央で佇んでいます。
 水辺からはその足元まで伸びている氷の道の先端。
 そこで妖精さんは、夜雀さんを見上げました。
 空中で歌っていた夜雀さんも視線に気がつき、妖精さんを見返しました。

 交わした言葉は、ありません。
 お互いに、初めての出会い。
 だけどそれでも、分かります。
 夜雀さんはみんなと歌いたい。
 妖精さんはみんなと遊びたい。
 二人とも、みんなと仲良くなりたいのです。

 だから、二人は頷き合って――――
 と、その時。



「それじゃあ、始めましょうか」



 そんな声が、湖に響きました。


「リョーカイ、いっくよー!」


 続いて、元気な声が。
 そのすぐあと、声の余韻がまだ残っているくらいに直後のこと。

 夜空に瞬くお星さまが、きらりと――増えました。

 さあ、と湖の周囲、その見渡す限りに満天の星空が広がっていきます。
 白いお星さまに青いお星さま、大きなお星さまにいくつも並んだお星さま。
 ほんのりと明るかっただけの湖が、その水面が、空いっぱいにちりばめられたお星さまできらめきだします。

 上を見れば満天の星空。
 だけど今は右にも、左にも、前だって後ろだって、どこをみてもそれが輝いています。
 この一帯の森のかおりも、湖の風も、妖精さんたちもみんなそのままに、まるで真昼のようにまばゆい、星に覆われた美しい世界へと羽ばたきました。


「次は、わたしの番ですねー?」


 その世界でさらに間の抜けた声が続きます。
 白い妖精さんが、すう、と小さく息を吸い込み。

「――――みなさん。春ですよ――――」

 やさしく微笑み、告げました。
 それは、不思議な声でした。
 今までにこの湖に響いた、晴れ晴れとした声でも、良く通る声でも、
 元気な声でも、静かな声でも、あの間の抜けた声でさえなく。
 透明に澄んだ声が、全てに染み入るようにゆっくりと森全体を包み込んでいき――――。


 一時の、静寂。

 そして、柔らかな一陣の風がこの光の世界を吹き抜け。


 瞬間、湖の周囲のあの背の高い木々から小鳥さんの美しいさえずりが聞こえてきました。
 それも、朝よりずっとずっと、たくさんの声。
 それはあちこちの木々から聞こえてきて、やがて合唱となって湖に響きわたります。
 水の中のお魚さんたちは元気に飛び跳ねはじめ、また蛙さんたちの声もどこからか聞こえてきます。
 よくよく見てみると、小鳥さんのいる木々にも変化がありました。
 ぽつりぽつりと、小さな花が咲いているのです。
 あまい木の実も、きっとすぐにみのることでしょう。

「ちょっとだけ、フライングですけどね」

 春を告げる白い妖精さんが、にこりと微笑みました。




 湖の中心にいた妖精さんと、夜雀さん。
 突然の出来事に、二人は顔を見合わせたまま止まっていました。
 だけど、それも一瞬。

「……ぷっ」
「あはは、あははははっ! 最高ねっ!」
「そうね、最高だね!」

 はじけるように、二人して笑い合います。
 だって、面白いんです。
 楽しいんです。
 綺麗なんです。

 妖精さんは手を大きく広げて、辺りをぐるりと見渡しました。
 やっぱり何度見ても、そこには見惚れるほどの星の海。
 思わずため息をついてしまいます。
 耳を澄ませば鳥さんと蛙さんたちの歌声が聞こえます。
 そして二人の周りではお魚さんたちが、元気にはしゃいでいて。
 向こうの岸辺では、仲良くなったみんなが手を振ってくれたり、声をかけてくれたりしているのです。
 これが楽しくないはず、ありません。

「じゃあ、私達も続きやろうか」
「うん、あたいも頑張るよっ!」

 今度こそ二人は頷き合いました。
 夜雀さんはまた空高くへと飛び上がると、大きく息を吸い込み。
 そして夜雀さん自身が驚くほどに気持ちよく、これ以上ないほどの声で、高らかに春の歌を歌い上げました。
 それに呼応するように、小鳥さんたちの合唱もさらに壮大なものになっていきます。

 その歌声を聞き届けながら、妖精さんは湖に一歩、踏み出しました。
 一歩、また一歩。
 音もなく水の上を渡っていくその歩みは、次第に早くなっていきます。
 それは歌声に乗るように。
 今を精一杯楽しむために。
 気がつけば、妖精さんは駆け出していました。
 春の訪れを、その喜びを、その小さな全身であらわすように。




 優雅に軽やかに、

 どこまでも自由に、

 妖精さんは走ります。

 お星さまの映った大好きな湖で、

 妖精さんは思うまま、描きあげます。

 しとやかに真っ直ぐに、

 ときには滑らかに、

 放物線を描くように奔《はし》ります。

 お星さまにつつまれた煌びやかな舞台で、

 妖精さんの思うまま、描き上げます。



 たんっ、と妖精さんが跳ねました。
 とんっ、と着地。
 そしてまた、たんっ、と飛び跳ねていきます。
 着地点には、まあるい氷。

 たんっ、たんっ。
 きらきらと輝く湖を、妖精さんが飾ります。
 大樹が、あまいあまい果実の実を結んでいきます。

 たんっ、たたんっ。
 あちらこちらで妖精さんが花となって咲き誇って。
 あっという間に、大樹は木の実でいっぱいになっていきました。

 たぁんっ!
 妖精さんが、一際大きく跳ねました。
 それが最後のひとっ跳び。

 とんっ、と行き着く先は――――そう、とっても賑やかな岸辺です。
 みんながそこで、待っていてくれました。

 妖精さんは笑顔のまま、スカートのすそを持ち上げぺこりと頭を下げました。
 終わりはいつも、きれいさっぱりさわやかに。

 これにて舞台は、閉幕です。
 
 そして響くのは、たくさんの拍手。

 聞こえてくるのは、たくさんの歓声。

 友達みんなが、そうして妖精さんを迎えてくれました。

 そうしてそれは、いつまでも。

 いつまでも、夜の湖に残っていました――――。
















「きれいだね」

 湖から少しだけ離れた、背の高い木の根元。
 おじいさんが小さくいいました。
 視線の先には、湖に立派に根付いた大樹と、そこで遊ぶたくさんの妖精さんの姿。
 そしてあかるいお星さま。
 歌声や笑い声がわずかに遠く聞こえます。

「上手に描けたかな?」

 舞台の余韻に身を任せて幸せ気分。
 そんな妖精さんが、おじいさんにすりよりながら言いました。
 おじいさんは妖精さんの頭をなでて応えます。

「うん、上手。今度はわたしの負けかもしれないね」
「……ううん、引き分けだよ」

 妖精さんが小さく笑いました。
 おじいさんも、そうだね、と笑いました。

 それからしばらく二人で星空を眺めていました。
 ゆっくりと、飽きることなく、眺め続けていました。





「ねえ、妖精さん。ここはまるで――オルゴールの中、みたいだね」

 おじいさんが、澄んだ夜空を見上げたまま、言いました。

「おるごおる……?」

 妖精さんはおじいさんの横顔に一度目を向けて、
 それからまた、星空へと視線を戻しました。

「そう、オルゴール。オルゴールっていうのはね……」

 半球状に広がる、満天の星空の下。きらきらひかる箱の中。
 素敵な音色につつまれて聞いた、おじいさんの優しい言葉。
 妖精さんはそれを胸にしまうと、まるで魔法にかかったみたいに、ここにある全てが大切なものに感じられました。







 それはね、


 きらきら光るたくさんのお星さまたちや、


 元気で素直な妖精さん、


 きれいな声の夜雀さん、


 とっても仲良しなあの子たち、


 湖でくるくる遊ぶみんな、

 
 あたたかい春をよろこぶ小鳥さん、


 しあわせそうに泳ぐお魚さん、


 立派に育ったお兄さん木、


 ほのかな土の香りを運んでくれる風も、

 
 そしてわたしだって、


 みんなみんな、つつみこんでくれる。


 そんな、おおきなおおきな――――






「やさしいきかいなんだよ」















<9>







 春真っ只中のお山のふもと、うららかな朝陽が射し込む大きな湖。
 いつもはしろい霧が立ち込めているその場所ですが、春のおかげか今日もぽかぽかとした好天です。

「あはっ、あははははっ!」

 見晴らしのいい、透き通った水の上。
 こんな雲ひとつない快晴にぴったりとあてはまるような、やっぱり晴れ晴れとした大きな声が湖に響きます。

「あははっ、へたっぴ! あたいが一番上手だもんね!」

 湖の真ん中で、何人かの妖精が集まって遊んでいます。
 そのうちの二人の手には平べったい氷がいくつか握られています。

「くうぅ……! もう一回、もう一回勝負よ!!」
「ガンバレ、へたっぴー!」
「もうやめたら? 勝ったって何にもならないんだし」
「アンタらうるさい! なに、どっちの味方なの!?」
「「そりゃ、あっち」」
「…………」
「当然でしょ」
「よね! だって上手だもん」
「…………しくしく」
「平和ですねー、春ですねー」


 ぴっ、ぴぴぴっ、ぴっ、
 ぽちゃん。


 妖精さんが平べったい氷を投げて、水面を上手に滑らせました。
 最近はお魚さんを凍らせたりなんか、しません。
 妖精さんと同じようにお魚さんだって、この湖が大好きなのです。
 いじめたり、しません。
 蛙さんを凍らせる遊びを卒業するには、もうすこし時間がかかるみたいだけど……。


 ぱちゃっ、
 とぷん。


 今度はくるくる髪の妖精さんが、氷を投げました。
 だけど氷は水面につくと同時に沈んでいってしまいました。
 それをみた妖精さんが、高らかに勝利を宣言します。

「ふふーん。またあたいの勝ちね!」
「だ、駄目だわ……、どうして……?」
「もう、しょーがないなあ」

 口ではそういいながらも、妖精さんは笑顔のままで、とっておきの言葉を教えてあげることにしました。

「むつかしく考えすぎてるんじゃないの? ほら、コツはね」

 きらきらと、眩しい笑顔で。
 大好きな友達に教えてあげましょう。
 とっておきの言葉、そう、それは……


「うーんと自由にやってみることっ!」













 人間の里のとある一軒屋。
 そこではいつも、のんびりとした時間が流れています。

 まあるい振り子がいったり、きたり。
 時計の針が、ゆっくりと動いていきます。

 太陽の光がたっぷりと差し込む、どこか懐かしい部屋があります。
 そこにはいつも、綺麗な絵画たちが大切に飾られています。
 四季の風景が描かれたもの、優しく笑う人々が描かれたもの、動物たちの生活が描かれたもの……。
 みんながみんな、幸せそうな表情をしています。

 今日はこの部屋に、絵画たちの主人がやってきています。
 ほんのり赤いほっぺをしていて、こげ茶色の眼鏡をかけていて、
 そしてなにより立派なおひげをしている――――おじいさんです。


 ことり。


 おじいさんが、一つの紙を手に取りました。
 そこには新しくお友達になった子の名前が書かれています。
 おじいさんは彼の名札を布で、優しく、丁寧になでてあげました。


 ことり。


 おじいさんは小さな名札を拭き終えると、
 それをそっと、彼の前に戻してあげました。


 まあるい振り子がいったり、きたり。
 かわいい鳩が、何度か顔をだしました。


 おじいさんは、オルゴールと一緒に並ぶ彼の姿をみて静かに微笑むと、どこかへと出掛けていきました。
 いつものように、紙と鉛筆、そして甘い甘いクッキーの入った小瓶を持って。
 もしかすると、彼らにまた新しい友達がふえるのかも、知れません。



 彼らは今日も、主人の帰りを楽しみにして待っています。

 きら、きらり。

 つやつやになった名札が、太陽の光に輝きました。

 ――――そこに書かれている、彼の立派な名前は――――





      『 妖精と、やさしいきかい 』


 最後までお読み頂き、ありがとうございました。
 もしお時間がありましたら、あとがきもご覧ください。


■お祭後のあとがき
 
 皆さま、こんぺお疲れさまでした。
 作品は作品内で語るべきだと思い修正を行いましたが、自分の力量では全てを語りつくせなかったため、ご指摘を頂いた「お題への結びつき」についての補足説明をここでさせてください。
 祭のあとの一興としてお読みいただければ幸いです。

 この作品のお題とは、言うまでもなくオルゴールであり、イコール「やさしいきかい」を意識したものです。
 ところでオルゴールと一言にいっても、色々ありますよね。
 シンプルな箱型のものやぬいぐるみの形をしたもの、壁掛けオルゴール、などなど。
 どれも魅力的ですがこの作品では、カラクリオルゴールを題材として扱っています。
 ぜんまいをまいてやると、舞台にいる人形がくるくる回ったり、
 まるで人形自身が音楽を奏でているように動き出すオルゴールがありますよね。それです。
 そんなカラクリオルゴールを想像してもらえると、以下の補足が分かりやすいかもしれません。

■やさしいきかいを構成する要素

 まずは半球状に広がる星の海。これが、オルゴールの外箱を表しています。
 次に、夜雀さんがメロディー担当なのは当然として、湖に描かれた氷の大樹、これがいわゆる舞台にあたります。
 そしてその上に乗っかっている妖精さんたちみんなが、くるくる回るお人形さんを演じているのです。
 その全ての要素が合わさったあたたかい風景をみておじいさんは、「やさしいきかいなんだね」と思った、というわけです。
「どこがオルゴールなんだ?」と思われた方すみません、自分の表現不足でした。

■やさしいきかいという情景が描かれた絵画

 冒頭と結末における登場人物である絵画たち、その彼らに出来た「新しい友達」ですが、これ実は、三月精含む妖精たちに出来た「新しい友達」=妖精さん(チルノ)とかけています。

……えっと、正直に言います。言いますよ。
>チルノとミスティアと妖精と絵描き、絵と友達というテーマ、絵本を思わせる構成と文体、それらを包括する「やさしいきかい」という表現。
名無しの37番さまにこのご指摘を頂くまで、自分でも気がつきませんでした。果てしなく恥ずかしい。
ご指摘ありがとうございました。


以上で、補足説明を終わります。
お題への結びつき、説明不足にも程がありました。申し訳ないです。
こんなあやふやな文章だけで自分の書きたいものを理解して下さった方、本当にありがとうございました。




■ご指摘頂いた箇所の修正を行いました。
 3/7
 一部オノマトペの削除、描写過不足だった点の添削、チルノによるおじいさんへのイタズラの追加 ⇒ <3>、その他の妖精たちによるおじいさんへのイタズラの追加 ⇒ <8−2>、ミスティアとおじいさんの真っ向勝負における言い回しの修正、改行などなど。
 また、冗長というご指摘を参考にして、後日談についてはホームページの方で公開することにしました。
ありがとうございました。
あまぎ
http://homutsuki.web.fc2.com/
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/02/11 06:37:09
更新日時:
2008/03/11 00:30:50
評価:
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0
Rate:
5.00
1. 7 小山田 ■2008/02/13 02:07:12
童話調の文章の効果を最大限に使い、中盤まで心に響くような内容に仕上がっていました。ただ、途中から展開が強引になり、冗長に感じて世界観に浸れなくなりました。中だるみを抑えて、登場人物の行動を自然に受け止められる構成になっていれば、文句なく満点です。
2. 8 名無しの37番 ■2008/02/19 13:37:42
素晴らしい、だからこそ非常に惜しいです。
チルノとミスティアと妖精と絵描き、絵と友達というテーマ、絵本を思わせる構成と文体、それらを包括する「やさしいきかい」という表現。
これほどまでに噛み合った組み合わせの題材を用意できたのに、それをご自分で壊してしまっている気がしました。
具体的には、ミスティアとおじいさんとの殺伐としたやりとりと、それを修飾する「真っ向勝負!」と言わんばかりの強い表現です。こういう会話が後の展開のために必要だったことはわかるのですが、それでもここまで「開き直る」必要も無かったと思います。
一度そこが気になると、以後、たまに出てくる固い表現や、説明的なキャラ同士のやりとりに、どうしても違和感を感じてしまいました。
とはいえ、違和感といっても些細なものでしたし、クライマックスで感動できたのも勿論でした。
好きか嫌いかで言えば、間違いなく好きといえる作品でした。だからこそ、勿体無いなぁ、と思ってしまいました。
3. 6 俄雨 ■2008/02/21 22:12:50
児童文学と絵本と東方を足して3で割った試みはよかったと思います。しかし、雰囲気だそうと努力した跡が見えてきて力を感じるのですが、如何せんオノマトペが多すぎる。どうしても突っ掛かってしまいます。幼い感じを表現するのに、他の手立てはなかったのかと惜しまれました。
激しい山やオチがある訳でもありませんが、全体として纏まっていて良かったと思います。
4. 6 織村 紅羅璃 ■2008/02/23 20:12:41
絵本みたいな、きらきらの、綺麗なお話でした。
5. 7 ■2008/02/27 21:57:16
とてもほんわかするお話でした。
物語の最初と最後でのチルノの違いが微笑ましいです。
ただ描写が、書き方が丁寧すぎるというか、優しすぎるというか。
それが不思議な雰囲気を醸しているのですが、一方でちょっと情景が分かりにくくなっていると思います。
6. 1 つくし ■2008/02/28 16:55:18
善良すぎてひどく退屈でした。特に序盤の描写などはひたすら環境映像を眺めているだけのような心地がします。小説は時間芸術ですから、文章に緩急がつくといいと思います。
7. 6 ■2008/02/28 20:23:00
おおー。絵本を読んでいるような気分だ……
ちょっとお題に「繋げた」感があるのが残念。でもそれを忘れる話。
8. 8 飛び入り魚 ■2008/02/28 22:01:31
震度5強の地震が起こりました。震源地、私の心。
絵本を読んでいるようで、
どこまでも優しくてどこまでも美しくてどこまでも幸せ。
きかいをもっと強く活かせられていたら。ただ、それすらどうでもよく思えるほどに素薔薇しい。
良い本に、たくさん出会ってるんだろうなぁ……
あんまり美しい情景が見えたから涙さえ浮かんじゃいました。
余震が、もとい余韻がなくなるまで数十分かかりそう。どうしてくれるんだ。
9. 5 たくじ ■2008/02/28 22:26:17
チルノが湖の上で踊る姿が目に浮かびます。このシーン、きれいで好きだなぁ。それからキレそうになると怖いミスティが、いかにも気まぐれな妖怪って感じでいいですね。
おじいさんの存在はあまりに人が良すぎるので、冷めてしまいました。ここまでいい人いないよなーって。ちょっと嘘っぽい感じだなぁというか。上手く言えないのですが。
10. 7 椒良徳 ■2008/02/28 23:50:45
全体を通して童話調ですね。おもしろい文体だ。
>「もしかしたらいま、友達<、、>が泣いているかもしれないんだ。
うん? <、、>とか《、、、、、》は一体…… 
まあ、そんなことは置いておいて、いい作品ですね。
心が暖かになる。素敵な作風ですね。
あなたのほかの作品もまた読んでみたいなあと思える作品でした。
11. 5 時計屋 ■2008/02/29 00:36:53
妖精たちの微笑ましい話が、
童話調で柔らかに語られているのが印象的でした。

ただ文体のせいか、全体的に話が間延びしているようにも感じました。
少々冗長だったこともあり、読んでいる途中で飽きがきてしまったのが残念です。
12. 6 ZID ■2008/02/29 01:23:56
綺麗にまとまってて、実に好感を持てる作品なんですが・・・・。テーマとの結びつきの無理矢理感が多少。
13. 4 つくね ■2008/02/29 01:34:53
ポターの絵本にでも登場するような、優しい情景が目に浮かびました。
14. 6 とら ■2008/02/29 09:35:42
雰囲気は嫌いじゃないです。ただ、話の流れが少しご都合主義のような気がしました。展開にももう一捻り欲しかったです。
15. 7 らくがん屋 ■2008/02/29 11:04:03
コンペの作品群を読んでいると、自分の趣味ではない作品に出会うことが多くある。この作品もその一つなのだけど、どこか突き抜けたモノがある。極致の一つを見せてもらった気分なので、自分の中のボーダー越え点数を送ります。
16. 7 as capable as a NAMELESS ■2008/02/29 14:46:40
ちょっとオリキャラが出張りすぎてるかなって感じはありますが。
みんな可愛くて良かったのではないでしょうか。
17. 3 中沢良一 ■2008/02/29 15:13:19
じんわり暖かい気持ちになりました。いいお話ですね。チルノが1人で寂しそうにしているところなど胸が痛くなりました。地の文の絵本のような優しい語り口調が良かったと思います。
おじいさんが少し完璧すぎるのが、ちょっと違和感でしたね。何者? みたいな感じでした。
意図したものかは分かりませんが、改行後は1文字字下げしたほうが読みやすかったかと思います。
18. 3 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:47:21
ちょっと独特な書き方?で冗長的な感じがしました。
読むのが疲れたっていうか、読みにくかったような…。
序盤疲れて、中盤は結構楽しくて、終盤の妖精が追加された部分から置いていかれた。
誰が話してるか分からない部分もあったし…。
でも、それはね〜「やさしいきかいなんだよ」っていう部分はよかったかな。
全体的に見たら物語り自体は良い話しだと思うんで、今度はHにも分かるように、そして楽しめるようにお願いします!
19. 8 K.M ■2008/02/29 19:51:34
チルノの成長物語……でいいのかな?とても空気の優しい作品に感じました。
20. 9 レグルス ■2008/02/29 20:16:41
ノスタルジックで絵本のような不思議な魅力に満ちたお話ですね。
童心に変えるような懐かしい気持ちでとても楽しめました。
21. 7 12 ■2008/02/29 21:44:41
ほのぼのしてるけれど、ミスチーが垣間見せた妖怪らしさは、らしさが出ててすごく良かった。やっぱりこういうアクセントがあると、雰囲気がしまるね。スイカに塩みたいなものです。
22. 6 O−81 ■2008/02/29 21:48:33
 お見事。
 きれいなお話でした。ちょっと詩的にすぎるところがあって冗長にも感じましたが。
23. 10 只野 亜峰 ■2008/02/29 21:54:24
一体何食ったらこんなSSが書けるんだYO。
とまぁ、個人的な絶叫はともかくとして素晴らしい作品でした。えーと、ドーナツの人かな。
途中までは何処に"きかい"が出てくるのかドギマギしてましたが「そうきたか!」と思わずやられました。
雰囲気も優しく、内容も素晴らしく、お題の絡め方も奇抜かつ秀逸で、こうずっと読んでいたいような気分になりました。
上手く言葉にできませんが、ごちそうさまでした。
24. 5 BYK ■2008/02/29 22:03:40
幻想郷で遊ぶ少女たちの風景。それに歌声がついてオルゴール、か。なかなか言い得て妙な喩え。
25. 3 綺羅 ■2008/02/29 22:56:20
童話のような優しい文章を書かれますね。ただ、残念ながら御題への結びつけが強引だった気がします。オルゴールに例えるのはまだぎりぎりわからないでもないのですが、それを更にやさしいきかいとまで言い換えてしまうと無理矢理な感じがしてしまいました。妖精たちが素直すぎるようなという違和感も。
26. 5 反魂 ■2008/02/29 23:07:30
 徹頭徹尾柔和な雰囲気が貫かれていて好印象です。ただそれだけに、意外性には欠けた部分もあります。おじいさんありきの物語ですし、チルノをただお子様的に扱っただけでは、今ひとつ東方SSとしての面白味に通じません。もう少しチルノに「らしさ」を感じられれば、また違ったような気もするのですが。
 そこに至るまでの物語にのめり込めなかった分、御題の消化もやや強引に映りました。
 一つの物語としては、綺麗にまとまっていると思うのですが――
 
27. 7 moki ■2008/02/29 23:19:09
おじいさんと妖精たちのほのぼのとした雰囲気がとてもいいです。ミスチーも設定的にはこんなもんなんでしょうね。人間を襲う妖怪ですし。新鮮で良かったです。口調が文に思えましたが。
あと一言だけ。スター黒いよ!
28. 6 blankii ■2008/02/29 23:48:36
チルノ、みすちー、三月精そしてリリーと、あるべき部品が過不足なく充填されて完成された一枚の絵。機会が器械のオルゴールへと転じる様が、余りに美しく優しく描かれていたように思います。

29. フリーレス あまぎ ■2008/03/03 00:04:03

沢山のコメント、指摘を頂きまして本当にありがとうございました。
コメント返信は、少し飛ばして下の方へどうぞ。


■お礼と反省

いきなりですが、自分は今までほとんどSSというものを読んだことがありませんでした。
なので今回は、時間の許す限り皆さまの作品を読ませて頂きました。
(間に合わなかった方すみません、後で絶対読ませていただきます)

すると、皆さまの東方に対する愛と世界観がひしひしと伝わってきてもう。
自分のSSのあやふやなこと、中途半端なこと。カルチャーショックを受けました。

ですが、今回のこんぺを通してSSの面白さってものがやっと分かったような気がします。
読めば読むほど、上手な表現方法と自分の文章の欠陥が見えてくるのですね。
沢山の方々の幻想郷に触れることが出来たことを糧にして、次に活かしたいと思います。

自分のような新参が恐れ多くも投稿、そして評価までさせて頂いきましたこのこんぺ。
その「機会」に対するお礼を、もう一度、心から申し上げたいと思います。
皆さま、楽しい時間をありがとうございました。

あまぎ。


……機会とか恥ずかしいこと言っちゃっいました。

■以下、コメント返信です。
ご指摘、ご感想、などなど。
皆さま、本当にありがとうございました。

>blankiiさま
自分の想像した絵が分かって貰えたようでなによりです。
やっぱり、美化しすぎでしたか……。
自分でもある程度の覚悟はしていましたが、絵本の美しさを意識しすぎたかも知れません。

>mokiさま
お喋り&目上の人には丁寧口調というミスチーを想像して書くと、文っぽくなってしまいました。
書き分けが出来るようになりたいです。
あ、黒いスターでよければどうぞどうぞ。ルナは自分が貰っておきますので。

>反魂さま
ご指摘ありがとうございます。
確かに、チルノがちょっと大人しすぎますね。
今回、「東方」というよりも「絵本」のイメージで書いてしまったからかも知れないです。
次はもっと東方っぽいSSに仕上げるつもりで頑張ります。

>綺羅さま
ご指摘ありがとうございます。もっと自然にお題表現出来ないかを良く考えてみます。
妖精たちについても確かに、おじいさんへのイラズラ含めてもう一山作ってみても良かったかも知れないですね。

>BYKさま
ちょっと分かり辛いかな、と不安でしたが伝わったみたいで安心しました。
ありがとうございます。

>只野亜峰さま
和食です。割と日本ひいきしてます。煮物ウマウマ。
お褒め頂いて本当に感謝感激です。
SSを書き始めてから、「素晴らしい」といわれるのが夢だったんです。
もちろん、今もまだ夢見ています。もっと言われるようになりたいと思います。
ありがとうございます。

>O−81さま
まだSSを書き慣れていないためか、書きたいことを詰め込むのに必死になってしまったようです。
もう少し最適化できるように努力します。

>12さま
実はミスチーの怒りの場面と、湖上の大樹の表現の2つが指摘されないか心配でたまりませんでした。
気に入ってもらえて本当に良かったです。

>レグルスさま
楽しんでもらえて嬉しいです。
不思議な魅力があるなんて言われてニヤニヤが止まらない。
ありがとうございます。

>K.Mさま
はい、チルノがまだ独りでいて、偉ぶってもいない、初々しい時期を描いたつもりです。
いやチルノはいつまで経っても初々しいですが。

>☆月柳☆さま
言われてみれば、序盤はちょっと不必要な部分が多かったかも知れません。
後半は、もっと深く推敲するべきだったと反省しています。
同人漫画とか他の方のSSを読んで、キャラの味を出せるように研究しようと思います。
Hだなんてとんでもない。こちらこそ宜しくお願いします。

>中沢良一さま
鋭い指摘ありがとうございます。
おじいさんが完璧すぎる、これが一番悩みのタネでした。
そのため、「このおじいさん本当は○○だったんだ!」という続きみたいなものも考えました。
ですが、どうもこのSSの雰囲気とはズレてしまうために没になりました。
没にして諦めるだけでなく、他の方法も無いか考えてみるべきでした。
改行後の1文字字下げ、以後気をつけます。

>as capable as a NAMELESSさま
おじいさん強すぎました。
個人的にはもっとサニーを可愛く書きたかったのですが、気に入って貰えて何よりです。

>らくがん屋さま
何だかすごい評価いただいたみたいで、ありがとうございます。
次は、気に入ってもらったその上でこの点数を頂けるように頑張ります。

>とらさま
妖精たちによるおじいさんへのイタズラ、それに対するチルノの反応なんて場面などでもう一つ山場を作るべきかも知れなかったです。
本家東方のように自然に収束していく物語を目指します。

>つくねさま
ありがとうございます。
もっともっと想像しやすい描写を追求していきます。

>ZIDさま
もっと「オルゴールらしい」ところをゆっくり詳しく説明するべきだったかな、と反省しています。
星の箱、流れる歌、くるくる動く妖精たちを上手く表現して、無理矢理感を少しでも消すためにはどうすればいいか考えてみます。

>時計屋さま
ご指摘ありがとうございます。
もっと推敲を重ね、必要な場面を選び不必要な表現を削るべきだったかも知れません。
正直に言いますと、このSSは時計屋さまの「ドーナツの美味しい食べ方」の影響を少なからず受けています。
そのお話の高い完成度に驚き、尊敬の念をこめて書かせて頂いたのですが、もし不快に感じられましたなら申し訳ありませんでした。
初めての挨拶がこれでは失礼だと重々承知していますが、これからもどうか宜しくお願いします。

>椒良徳さま
<、、>はルビのつもりで書いたのですが、一部見落としていてタグを忘れていました。
ただの強調のためにつけたルビですので、お気になさらずー。
他の作品まで興味を持っていただいてありがとうございます。
ですが、まだ見せられるような作品が他に無いので……、
もしよければ、これから宜しくお願い致します。

>たくじさま
チルノとミスチーを気に入ってもらえて本当に良かったです。
おじいさんは……中沢良一さまのコメント返信にも書かせてもらいましたが、やっぱりちょっといい人過ぎました。
もっとリアリティのある文章を書けるように努力します。

>飛び入り魚さま
自分の夢その1「素晴らしいと言ってもらうこと」
自分の夢その2「誰かを感動させたい」
自分の夢その3「皆さんと仲良くなりたい」
うわあああ、自分の夢を2つも叶えてもらいましてうああああ!
あ、あの、良ければ自分の夢その3も……うわあああ!
……げふんげふん。
お褒め頂き、本当にありがとうございました。
だけど本はまだ太宰治さんのくらいしか出会っていな……いえ何でもないです。

>鼠さま
お題は東方原作のようにどんどん収束していくイメージで書いたのですが、
確かに、少し無理矢理なところもありました。
不思議な気分を感じていただけたのなら、それは自分にとって最高の褒め言葉です。
ありがとうございます。

>つくしさま
ご指摘ありがとうございます。
仰る通りすぎてぐうの音も出ません。
もっと動きを表現できるよう試行錯誤してみます。
また、読者様の貴重な時間を頂いていることを肝に銘じておきます。

>畦さま
出来るだけ、必要な部分のみで構成しているつもりでしたが、
やはり不必要な所もあったかも知れません。
同様に、もっと描写の必要なところなど、自分で見極められるよう気をつけてみます。
ありがとうございます。

>織村紅羅璃さま
綺麗すぎたかな、と心配していましたが、気に入ってもらえた様で良かったです。

>俄雨さま
ご指摘、ありがとうございます。
仰るとおり、オノマトペを多用してしまいました。
書くのは簡単なのでつい、手を抜いてしまったようです。
読者様が自由に想像してくれるだろう、なんて甘えもあったかも知れません。

>名無しの37番さま
ご指摘を受けてから見直してみれば、なるほど……。
見直せば見直すほど、ミスチーとおじいさんの場面はやりすぎ感がしてきました。
ちょっと見せ場を作ろうとして、意地になってしまったのが原因ですね。
自分が今まで書いてきた数少ないSS、その全てが型月だったということ原因の一つかも知れないです。
東方SSを書くときは、肩の力を抜かなければいけないみたいですね。
ありがとうございます。

>小山田さま
ご指摘ありがとうございます。
思えば、終盤はチルノたちの視点になって考えず、自分視点で考えていたような気がします。
少し頭冷やしたくらいで丁度いいみたいですね。
次は満点をいただけるよう、精進します。
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