神様は助けない。

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/11 07:29:04 更新日時: 2008/02/13 22:29:04 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00


 1. 押し掛け問答は食卓の華


 ――ちょっと、話を聴いて欲しい。

 そんなことを八坂神奈子という神様が言い出したのは、長月も晦日、出張への出立を明日へと控えた守矢神社の夕飯時であった。
 着替えは入れた土産も持たせた上納金すら厳しい財政から捻出した、これ以上何の用意が必要か、とは神奈子に仕える巫女的な東風谷早苗の判断である。もしやまた我侭言い出すんじゃあるまいな、と懸念すら通り越した危機感に血圧がうなぎ昇ぼる。いや色々とブチ切れたら八坂様の責ですから、主に私の頭の血管とか精神の抑制帯とか。
 
 そうしてニッコリと笑う早苗の口角の隅、年齢に相応しくない一本の縦皺を見つけたのは対面の席に腰掛ける洩矢諏訪子である。怖っ、と瞬間に空気が冷めていくのを知覚する。整然と並んだ晩のオカズも端から冷えていく。からあげからあげっ、とか膨らんでいた期待が急速に萎む。きっと、この哀れなオカズ達はその生涯で最も甘美で幸福な一瞬を賞味されることもなく、ガチガチと石のような噛み応えを口中に響かせることとなるのだろう。

 ああ、なんて哀れな鶏唐、そしてケロちゃん的な私。そんなことを考えて、諏訪子は食卓の隅へとにじり逃げながら滂沱の涙を流す。
 
 そもそもフロッグがチキンに味ライクなのを彼女は知らない。だけれども今更に指摘するのもカワイソウ、とは食事の一切を取り仕切る早苗の談である。世の中には知らない方が幸せなことが多いのよぅ、と冷静な顔して最後には堪らず爆笑したのは神奈子の本性を表している。まさに藪からスティックは避けるべきと共通認識する食卓管理者の不作為により、今日も惨劇は日々として進行していた。
 ともかくふたりの諍いを調停するのが最良の策ではあるのだが、諏訪子にはそれだけの発言権がない。存在感とか声の大きさとか諸々に問題はあるのだが、何よりも圧倒的物理的に身長が足らない。自分の頭上遥かで交わされる言葉の遣り取りなんぞ、あーとかうーとか呻きながらヤキモキするのがカエル幼女たる諏訪子の宿命。かなこ空気よめー、とか心中で叫ぶのがせめてもの抵抗なのである。ともあれ今は、神奈子の『話』とやらを待つ以外には術がないのだが。

 「私、明日から出雲行くのやめとくわ。めどい」
 
 言った。随分と事も無げに言い切りやがった。
 
 そんでね、と続ける神奈子の言葉は、えええええぇぇぇぇ、と非難罵声の轟々たる怒号に掻き消される。それも当然、神無月に出雲へ行かぬ、とは大和系の神様にとってはそれなりに一大事なのだ。下手を踏めば一昔前など、反逆とか反体制とか(神様)治安維持法反対とかいうレッテル貼りでパージされかねなかった不始末なのだ。いくら最近の上層部が腑抜けてるからとて、無難に参加するのが吉となるのは間違いない。
 毎年夏の盛りには本庁から各個の神様宛に、『本年の神様大会のお知らせ』とか迷惑メール詐欺商法もかくやという胡散臭い葉書が送られてくる。守矢神社においても例年の通り、早苗が『参加』の方に○をつけて(なぜだか『不参加』の文字は不自然に小さい。)返信した訳なのだが、つまり八坂神奈子という神様はその前日になって急に『不参加』を表明する暴挙に打って出たのである。
 別段と今日明日にも神様の軍勢が攻めてくる、などという事態が起きる訳ではない。それはいささか時代錯誤が過ぎるというものだ。けれどもこの手のサボタージュというものは、徐々にボディブローの如き反撃に合うのが常である。早苗が瞬時に想起した不安のひとつに、年度末に期限が迫った神社免許の更新手続がある。そもそも免許の更新は難事、庭が荒れているとか瓦が古いとか格式が無いとか、派遣されてくる審査官のイチャモンに逐一対応せねばならない。それだけでも血圧が10は上昇しかねないというのに、おまけに嫌がらせまで加えられたら撲殺モノに間違いない。血飛沫を上げる審査官の後頭部を頭中で想像してしまう早苗であったが、いやいやいけない犯罪者困るヨ、と懸命に首を振った。ともかくも神奈子には是非に旅立って貰わねば仕方がない。

 「こ、こまりますよ八坂様! もしも神社から追い出されたりとかしたら三人仲良くホームレスですよ? 八坂様とか老い先短い身はともかく、私みたいな前途洋々の若い身空はどうすればいいんですか。だれも生産的な能力なんて持ってないNEET寸前、あ、でもケロちゃんだったらロリとかペドとかで生産的に云々」

 焦った早苗の言葉は墓穴しか掘らず、ぼろぼろと普段は封じている本音が零れる。年増超過と言われた神奈子の額には血管が浮き、ロリペド言われたカエル幼女は悲嘆に暮れる。失言だった、とそう気付いた一瞬の後には既に遅く、早苗の発言権は地に堕ちていた。何時とても、周囲世間の反感を買う発言の結果は権威の失墜に他ならない。すらわち今や守矢の食卓における発言権とは、八坂神奈子ひとりの手中へと帰したのである。

 「それじゃあ諏訪子も早苗も静かになった所で、ひとつ、大事な話をしましょうか」

 ニコヤカに余裕の笑みを浮かべて神奈子が言う。食卓四面の上座に座す神奈子は、両脇に従えた諏訪子と早苗を見回してから告げる。ウーンと油物調理の名残である換気扇が空回り、不愉快な羽虫の風切り音にも似た印象を抱かせる。今まで神奈子の大事な話なんて、ロクな結果になったことないじゃないかー、とは諏訪子の弁。不安という名の重圧が、諏訪子と早苗両名の双肩におもくおもく圧し掛かっていた。
 ニッと再び一点の曇りなく神奈子は莞爾と笑顔をつくりながら、後ろ手に隠し持っていた『それ』を食卓にドンと置く。

 「心配ない心配ない、なんせ失敗するハズない話だから。そんな訳でまずは乾杯の音頭からかしらね〜〜」

 一抱えほどもある巨大な瓶が、場の空気を支配する。正面こちらを威圧するように貼られたラベル、そこには『大・吟・醸』と文字内容に不釣合いなポップい字体が並んでいる。

 「あ、免許とかも心配無用よ早苗。あの頭ガチガチ爺婆どもに気を遣う必要ももうないわ、なんせ、そのうち消えてなくなるんだからね」

 左腕で瓶全体を抱きしめながら、神奈子は右手をキュッと器用に回転させて栓を抜く。漂い来る香りは案外に柔らかい鼻触り、お子様向けに今回は甘口で、との神奈子の発言を裏付けている。透明な液体はトクトクと音を立てながら3つのコップへと注がれていき、諏訪子などはそれを、おーっとか口走って眺めている。お子様な外見に似合わず長年を生きてきた彼女である、酒の1杯2杯など造作もなく飲み干すだけだ。むしろ随分とイケる口なのは間違いない。ならば神奈子の言う『お子様』とは、誰のことを指しているのかは明白であろう。
 
 あまりの光景に呆然と事態の推移を見守ってしまった早苗であるが、いよいよと状況が抜き差しならない場面に至ったのは感知できた。諏訪子までが酒の魔力に懐柔されているのだ、今や神奈子の暴挙へと立ち向かい神社の存続を死守できるのは自分しかない。
 一体全体、八坂様は何をとち狂ってしまったのか、と思う。誰よりも神様という立場に真摯であるのが、他ならない神奈子という存在であることを早苗は知っている。彼女が神の勤めと義務とを疎かにすることなどないハズなのだ。そんな彼女が、出雲へは行かぬと、そう言う。神社の存続を危うくするかもしれない事態を看過すると、そう言う。
 ならば、そこには理由があると知ることが己の務めだ、八坂神奈子を信仰する人間の務めだ。そして何より普段の諍い事はともかくとして、ふたりの間には一本の紐帯が、今は遠くなったあの日より結ばれているのだ。

 だから、すべては八坂様の言う通りで良いではないか、と早苗は思い為した。ふたりを繋ぐ紐帯をある人間は信頼と呼ぶ、ある人間は信仰とも呼ぶ。

 「ありゃ、早苗がなんだか納得できないって顔をしてるね。残念だけども諏訪子、乾杯は有り難い事情解説の後ってコトにしようか。なにごとも納得ずくってのが大切なのよ、詰まらない隠し事とかアレとか無しってのが大事さね。ほら、あーなんだ……早苗は、大切だから、ね」

 神奈子の言葉に、早苗の記憶は遠い遠い『あの日』へ駆ける。出会いを大事と言う人がいれば、積み重ねこそ大切と言う人もいる。だけれど自分にとっての唯一は、結局は『あの日』の神奈子の存在へと帰着するのだ。だからこそ、早苗は思う。願わくは何度同じ『といかけ』をしようとも、再びあの『こたえ』に辿り着けますように、と。


 ――えり、えり、らまさばくたに。


 2. 原典回帰のそら

 
 東風谷早苗の頼りない足取りと風にも浮きそうな軽い体重とは、寒風に身を震わす枯木の細さだけを思わせた。
 
 守矢の社への階段は心臓破り、と評する人間は多い。山腹の中ほどに建つ社へは、くるくると左右しながら斜面に貼り付いている石階段だけが唯一の通路である。登坂角にして40度近い急傾斜、片側には山の緑を迫らせ他側には切り立つ崖との端に手摺りを並べ、延々と伸びる段差列は憂鬱に見上げるしか道がない。
 冬の陽も既に沈みゆく今、ひとりの少女がその階段を登ってくるのが見て取れた。他には人影など、誰も見えない。
 吐き出す息が白い。熱を宿した紅い頬は何度も膨らんで萎んでと繰り返す風船のように、白地に所々墨を摺ったように黒の混じった煤け気味の防寒着、その隙間から覗く緑色の内着の胸元を忙しなく上下させる運動と同期する。ハァハァと荒い息を吐く。落ち着こうと必死なのか、上体を屈めて両膝に裸の手のひらを乗せて、そのままの姿勢で縮こまっている。
 ちぐはぐだなぁ、というのが第一印象。これだけ寒い冬の日に相応しい厚手のコートを身に着ける、その一方で手袋もせずに外出なんて。高地なめんなー、お山はこわいんだぞー、と思念しながら凝視する。東風谷早苗の手は真っ赤にかじかんでしまっており、さぞ痛かろうにな、と思う。
 
 東風谷早苗は少しの間休んでいたが、キッと階段の上方を――こちらを睨むと再び両足を動かし始めた。その両眼に秘められていた、まるでショボクレタ捨犬みたいな気配。気にかからない、と言ってしまえば嘘になる。縁深き家の娘である、何かあったのかと勘繰りたい心地も嘘ではない。
 しかしな、と思い直す。所詮人間は人間の懊悩を、短かな人間の人生で謳歌して死んでいくものである。イマドキ神様人生相談なんて流行らんしなー、とぼんやりと考えながら中空を見上げる。東風谷早苗にしてみれば上方の更に上に相当するだろう、鳥居笠木に腰掛けながらの景色である。視線の先、ゆるやかに鳴動する蒼みを捉えつつ思う――ままならないねぇ、何事も、と。

 ――なんもなかった。あおかった。

 馬鹿みたいな感想だ、と自嘲をしつつ、他に表現の仕様もないと満足する。喫水線一杯に紺青を湛えた空一面、ぐるりと囲む山麓は鋭角鈍角を交錯させながらプカプカと浮かんでいる。上下逆様の愉悦、見上げるという行為を許された動物だけが知る、何もないという空虚の満足感。自分の裡のなにもなさ、それをそのまま認めて貰えたかのような安心感。ぽっかりと空いた穴ぼこを埋めるためには、質量が要る密度が要る。そんな埋め切れない隙間から進入してくる、透明な空気の蒼さだけが心地良かった。
 けれど、と考えながら手を伸ばす。水かくヒレを模倣する指先の動き、やがてそれはもがくように強度と速度を高めていき、そのまま歪んだ形でピタリと静止した。そらにはなにもない、先程知覚した通りの認知の芽生えがあるだけだ。
 けれども今度心を染め上げたのは、悲しみと怒りの混濁であった。頭の中が黒くなる、重力のままに落下してかち割れれば幸福であると脳味噌の襞一本一本が訴える。自殺願望とは洒落にならんがな――そのように理性が告げた瞬間には掻き消えたが、覚えているのは腹の底にしっかりと座り込んだ『衝動』の甘い味である。
 埋めるものがなくてはならない、探さなくてはならない。このまま掻き消えるわけにはいかぬ、それは、あまりに無責任が過ぎるというものだ。だから、と自分に言い訳をしながら下へと降りる準備をする。これで人間に期待するは最後だ、駄目なら他を当たれば良い、諏訪子ならば良い方法を知っているだろう。

 それだけの思考過程を経て、八坂神奈子は鳥居から地面へと飛び降りたのだった。

「「「「「」」」」」

 東風谷早苗は逃げていた、闘っていた、そして立ち止まっていた。
 
 逃げるというのは居心地の悪い空間から、だ。毎夜布団の中で眠れないままに聞かなければならないのは、怒声と罵声と細い泣き声と時折の物が割れる音、であった。いつの頃からか無音の食卓が日常となった、口に含む食物は冷たく味気なくなんだか少ししょっぱい。少しずつ間延びする洗濯物の間隔は、薄汚れた衣服への抵抗感を早苗から奪った。砂を噛むように繰り返すビデオテープの再生を、なすすべもなく見ている聞いている傍観しているだけ。その先にあったのが諦念ならば、早苗は何処か大事なものを麻痺させたまま幸福を夢想するような、うすぼんやりとした多幸症の子供になれただろう。
 闘うというのは、早苗がそんな誘惑に屈しなかったことの証拠である。守矢の社と縁深き家柄、と周囲は早苗の家をそう呼ぶ。街に住みながらも神社までの道程は遠くない。だから何度も参拝には行ったことがあるし、神社は初詣からお祭りまで楽しい思い出の常連となる場所であった。その通りで『あった』が故に、自宅にあった一際大きな神棚だけが彼女の最後のヨスガとなった。
 祈る。学校から帰ってからの数時間、夕方暗くなる部屋で手を合わせて身体を縮込ませて、神様に祈る。

「かみさまかみさま、助けてください。あのふたりを助けてください。変なんです、おかしいんです、恐いんです。だって昔は、もっと……」

 呼び掛けに答える者は何処にもない。暗闇で蠢く気配は、ふと動いてしまう自分のものだったり、階下この部屋で聞く、二階の母親が踏み鳴らす天井の音であったりした。故に、それは孤独な闘いであったのだ。斬りつけられ撃たれ殴られて殺される訳ではない。しかし彼女は恐怖していた。自分の寄る辺、しっかりと立てるハズの足元がグラグラと崩れていく様子に呆然と恐れ慄いていた。
 ……だから、たたかう。恐くても最後まで闘う。純粋な決意が実行させる強固な自己規定を伴う『祈り』という儀式行為、それだけに「裏切られた」と思った早苗の怒りの矛先は神社へと、祈りの唯一の対象である神へと向く他はなかったのである。
 立ち止まるというのは、もう、何処にも進めなくなったからだ。その日学校から帰った早苗を待っていたのは、並んで椅子に座った両親の姿であった。めずらしいな、というのが最初の感想。しかしすぐに、やっと神様が叶えてくれたんだ、と後に思い返せば虚しくなるだけのことを考えた。
 両親の向かいに座らされた早苗が理解できたのは、破局は既に過ぎたのだということ。その現場に居合わせなかったのは幸福か、それとも最大限の努力さえ実行できなかったことへの慙愧の念を覚えるべきか。ともかくそれから聞きたくもないことだけを、しっかりと言い含められるように際限なく聞かされた。ふたりの言葉は次第にエスカレートし始め、途中からは互いに罵り合い、最後には早苗のことなど忘れたように口論となった。
 嵐は過ぎ去るのを待つしかない。耳を塞ぎたくなる暴風に翻弄されるだけの早苗は、昔、こんな風に並んで仲良く食事をしていたな、と反芻する思考ばかりを名残惜しそうな様子で噛み締める。すこしも悲しくないのに目からは涙だけがぼろぼろと零れる。
 もうここにはいたくない。無力には過ぎる――けれど仄かなる灯も点けずにいれば、暗闇は何処にでも容易に侵入してくるのだ。傾く陽も速い冬の夕暮れのさなか、薄暗い食卓の風景を拒否したいだけの一念で、早苗はその場所から逃げ出す他には術がなかったのである。そして当てもない行き先は怒りの向く先、守矢の社なのだと最初から決まっていた。

 そうして今、早苗は見上げていた。呆然とするしか術はない。

 守矢神社本殿へと続くながいながい階段を上り切ったその先、朱塗り見事な鳥居を荒い息のままに通り抜けた先。不意に空気が変わった、と早苗は感じた。何が、と具体的な記述をすることができない。見えるものは変わらない、見廻した視線の先の社務所、歯抜け瓦の本殿、朽ちかけた賽銭箱、うらびれた境内の有様。記憶にあるのと何も変わらない、見飽きたほどの懐かしい光景。敢えて言うならば人影は見えない。しかしながらそれも、普段は無人管理に捨て置かれている場末の神社の様子として珍しいものではない。それならば何が変わったか?
 
 風が、吹いた。

 顔にあたる風圧、吹き上げる一瞬のモーメントに身体が浮かんだと錯覚する。舞い上がる砂埃、掃除の足りていない石畳を掃き清めるように側方へパラパラと散る。眼に入った塵が痛くて瞼を閉じてしまう。しまった、とすぐに思った。視覚情報の途絶に脳髄が危険信号を鳴らす。これでは何も見えない対処できない、とにかく恐い。懸命に腕で顔を擦って回復に努めるけれど埒が明かない。回復率25%との判断、ぼやけたままの視線の先には無かったはずの何かがある。目を瞑る前には何もなかった、早苗の立つ正面、その先。傾いた夕陽を背負い、早苗に向かって影を落とす黒く塗り潰された大きな塊。ザラつく粒子が眼球表面を不快に舐めていく。意思に反して誘発される涙を透見してかろうじて認識できたのは、その大きな何かが人型である、というおぼろげな事実だけだった。ならば今はただその『彼女』を、呆然と見上げるしかない。

「「「「「」」」」」

 「東風谷、早苗か?」

 影が言う。肩まで伸ばした髪の毛のシルエット、柔らかな鈴の音を思わせる玉音。おんなの人だ、と早苗は思った。
 徐々に視界が回復してくる。『彼女』の顔が見える、色白な肌に薄く紅を刺した口唇が艶めかしく蠢く。小さな唇の僅かな動き、けれども発せられた声は凛と響く。風も静まりシンと無音が聞こえ出し、『彼女』の声だけが耳へと届く。

 「八坂神奈子と言う。見知り置くが良い人の子よ――なんて仰々しいのは好きじゃないが、一応、神様だ」

 フフンと少し威張るように腕を組んで神奈子が見下ろす。身長差があるから仕方ないことではあるのだが、早苗はそれが気に食わない。さっきまでの周囲を威圧するような雰囲気もフランクな口調の前に掻き消えて、今や早苗の認識は『自分で神様言ってる変な人』くらいに下降した。

 「……かみさま? あなたが、やくにたたない神社のかみさま?」
 「出会い頭に神様を役立たず呼ばわりとは、現代っ子の悲劇ここに極まれりってかんじねぇ。まぁ、さっぱり否定も出来ないけれど」

 これまた本当にねぇ、と言って両手のひらを天に差し出すポーズを神奈子はとる。
 それがなんだか馬鹿にされている気がして早苗は余計に腹が立った。けれども神奈子の顔を、その細眉の下にパクリと空いた眼裂の内を、早苗を射すくめるよう瞳孔深くから見詰める鋭い眼光を見てしまい、うっと息が詰まるのを感じる。まるで肉食獣にねめつけられる小鹿の非力、自分の立場をわきまえなければならない、この女はホンモノなのだ、と早苗の奥で本能が囁く。それは生物として当然の恐怖であったし、本物の神様相手に喧嘩売るなんて馬鹿げているのは知っている。
 だけれど、だ。これは良いチャンスじゃないか。――あれほど祈った、来る日来る日それだけ考えて過ごしていた。それなのにそれなのにそれなのにっ、なぜかみさまは助けてくれない? こんな、ちっぽけな願い事さえ叶えてくれない? わたしが悪いことをしたイケナイ子だから何もかも真っ黒に塗り潰されて仕方ないような馬鹿な子だからっ、だから欲しいものそれだけも取り上げられてしまわければならないのか。気にくわない納得できない何もかもが馬鹿げてる! だから聴いてやろう、コイツに聴いてやろう。きっと怒って捕らわれて喰われるだろうが、これだけは聴かなければならない。
 それはわたしの大切なことなのだ、と決意する。だから必死に振り絞るような小さな声音、けれども意味を違えぬよう音節をはっきりと区切りながら、早苗は神奈子へと問いかけた。

 「かみさまは、どうして、わたしを助けてくれなかったの?」

「「「「「」」」」」

 不意を突かれたからだ、と神奈子は自己弁護する。とにもかくにも急に泣き出すものだから、他に手の打ちようなんて何もなかったんだ、と。
 
 神奈子の腕に抱かれて、早苗が啼いている。言葉にならない嗚咽を上げて、全身を震わせながら唯一悲しみを表現する。神奈子の腹に合わせられた早苗の背中が、ビクンと一際大きく揺れた。地面にストンと胡坐をかいた神奈子に体重を預けるように、すっぽりと包まれている早苗の小さい体躯が一層に縮こまる。ヒグヒグと鼻を鳴らして顔を伏せ、神奈子からは早苗の表情を伺うことができない。
 ないているのだな、と何処かぼんやりした頭で神奈子は思う。私が悪いんじゃないぞ、と連なる思考で言い訳してみる。神奈子の面前では、頭冠に縁取り流れる黒髪がサワサワと揺れているのだけ見下ろせた。ふたりの体格差は大人と子供のそれであり、外から見れば早苗の姿はすっかりと隠れてしまっている。

 捨て台詞を吐いて脱兎の如く逃げ出そうとした早苗を、神奈子が捕まえて背後から抱きすくめるような格好となったのだ。他意はない、と誰にともなく再度言い訳する。泣いてたんだ様子がおかしかったんだ、いくらなんでも放っとくのも無責任じゃないか? だからといって小さな女の子を抱きすくめてるなんて犯罪的であうあうあ。
 慣れない状況に最上の混乱をする脳髄が白熱して湯気を噴き出す。冷静明晰な思考を常とする神奈子であったが故に、余計とエラー信号が間断なく発信するこんな状況には戸惑うしかない。やがて心の混乱は身体にまで影響し始め、顔が熱く紅くなるのを自覚して緊張に手が汗ばんで、なんだか頭までぐるぐると廻る。早苗が細かに身動ぐ度、鼻先を掠めて揺れるふわふわの毛先、香る石?の白さを連想する鈍い刺激がジンジンと頭の底に響く。
 
 だからだろうか、やわらかそうだな、なんて不謹慎な悪戯心が不意に沸いた。

 早苗を腕の内へと押し留める手の枷が弛む、手のひらがワキワキと蠢く。撫でたいな、とそう思うのは神たる優越、傲慢さの表れでしかないのだろうか。
 神奈子は常に思い悩む、神たる此の身は万物万人に平等であるべきだ、と普段から己を戒めてきた。ならば特定の何物かを特別扱いなどできない。今回声を掛けたのだって、己の勝手な目的が先にあったからだ。なにもこの娘を――東風谷早苗という特別を気に掛けたからなのでは、ない……ハズなのだ。
 
 だけれど、と躊躇する。神とは己とは眼の前で泣く何者かへと手を差し伸べることさえ許されぬ、そんな、ちっぽけな存在だったか? 自己撞着ではないか、と嘆息する。思考思索する迷宮の果てには行き止まり、一度到ってしまっては二度とは引き返せぬ地獄の底。
 信仰なき世に『神』に許されるのは何か、できることは何か。その問いへの答えは何処にも見出せない、ただ、ここにはその『答え』を心底から欲するだけ必要とするだけの少女がいる。幾ら考えても埒は明かぬ、答えなど存在しない。だが、いま、己は――八坂神奈子は何かを成さねばならぬのではないか。そうでなければ結局、全ては動かぬまま腐るまま融けるまま、断末魔さえ掻き消す静寂の内に終わるだろうから。

 ――どうして、助けてくれなかったの?

 繰り返された問いだ、聞き飽きた愚かな祈りと絶望の所産だ。誰もが自分こそ特別と思いたがる、自分は救われるに価する人間だと思いたがる。大きな希望があれば小さな絶望もある。そうして結局、世界には人が増え過ぎていたのだ。神話時代の小さなコミュニティを思い起こすが良い、全ては神聖なコントロールの内にあった、神はささやかに過ぎる人の願いを叶えていた。
 神の見せる指導と理想の下、人は緩やかに緩やかに坂を登る。結果として人は増える、その希望と絶望の総量は二次曲線を描く。そしていつしか、人の望みは神の手に余るようになった。誰かに何かを与えることは、その他の誰かに対する裏切りともなる。信仰を受ける身とは、そんな不公平を許してはならぬ。
 ならば解決策とは何か――それは、誰にも、何も、与えぬことだ。それは高貴なる者の義務である、そう神々の誰かが言い出した。すべての願いを叶えることと、すべての願いを叶えぬことは同一である、と。目の前で苦しむ特定の誰かに手を差し伸べるのは、形而上の誰かに対する裏切り行為であるのだ、とも。
 愚鈍な答えだ、と今此処に在る神奈子は判断する。だけれどその答えが正しいと思ったこともあった、否、今もこうして縛られ続けているではないか。習慣へと到った思想は強固である。慣性に流され続ける思考は自身を疑うことを止める。故に、必然であったのだ。神が人からの信仰を失ったことは、自ら招いた必然でもあったのだ。
 益を寄こさぬだけの厄介者をいつまでもいつまでも心底から敬うなどと思うな、それこそ棚上げしていつしか忘れ去られるのを待てば良い。人が表層に見せる『信仰』の裏ではそのように思ったのを責めることはできない。神という名が威力を地に貶められたのは、自らの無為にこそ原因があると神奈子は結論していた。

 それならば、神が消えるのは、むしろ合理的と言える。

 繁殖の本能とは無縁だしな、と神奈子は自嘲する。古き思考のままに消え去るのを待つのは美しいのかもしれぬ、そう思ってしまうことがある。だが、それではこの愚かな小さな娘に、自分に与えられたかもしれない最後のチャンスに、何も答えを出すことなど出来やしないじゃないか。それは嫌だ、と腹の底で何かが呻いた。胸の奥に煙る蝋燭の火は、消え去る運命を見据えながらも未だ小さく燃えてくれている。
 
 結局、何か物事を為すために必要なのは少しの勇気でしかない。いつから自分は臆病になったか、誰かに何かを与えることを不安にしか思わなくなったか。そして、かつて自分が受け取ったハズの『見返り』とは何であったのか。そんなことを考えつつ、神奈子は早苗を抱く腕にギュッと力を込めた。

「「「「「」」」」」

 「そらを、つくる。お前のために、空を創ろう」 
 
 頭上からは、そんな優しい声音が響いた。
 
 俯いたままに早苗は目元を袖で擦る。もう涙は出ない。泣きたいだけ泣き尽くしたとでも言いたいのか、赤く腫れた瞼が熱を持つ。重みに細まる眼裂が嗜好するのは、自己憐憫と惰弱な睡眠欲求。そんなことじゃいけないんだ、とせめて意識を手放すまいと抵抗する。
 けれど頭はぐちゃぐちゃに混乱して上手に思考することができない。黒い靄が渦巻くようにこびり付く頭蓋、意思を振るい削ぎ落とそうと試みても無駄に終わる。四肢はなんだか痺れたように感覚が薄く間延びして動きにくい。体育座りに膝の前で組んだ両手、その指先をクイクイと取り戻すよう不器用な動作を繰り返した。
 
 あたたかいな、と今更のように知覚する。神様に抱き締められているのだ、と温もりの理由を頭の表層だけで理解する。けれどもそんな神様の行動の意味理由を掴もうとしてみても、何故だかつるつると横滑りするばかりでままならない。どうして父親でもない母親でもない、ましてや神様なんて異形の存在が自分を優しく抱きしめているのか、それが理解できない。成り行きなんて言葉では不十分だろう、説明がつかない。たぶんそこには神様自身の――たしか、八坂神奈子と名乗っていたハズだ――その意志が働いているようにしか思えないのだ。
 なぜどうしてと考えても詮がない。けれど現に、今、自分は抱き締められている。まるで赤ん坊みたいじゃないか? そんな思考にようやく至って、不意と急速に頬が熱を帯びていく。でもでもでも、と言い訳が積もる。はずかしいハズカシイ、神様には非道いことを言ってしまったじゃないか。今更どんな顔を見せたら良いのかなんて分からない。
 
 それでも何故だろう、ここはとても安心するのだ。体重を乗せて存在すべてを預けて、一切の重力から断ち切られた感覚が浮遊感の構成となる。やわらかに固定された身体は、ニコゴリ泳ぐ羊水中の心地を思い起こさせる。神奈子の心音に同期するツーという耳鳴り音が微かに響き、唯一世界との離れ切れない糸を結んでいる。ここは、こんなにも安心で安全なのだ、と隔離された先に待つ本能が告げていた。

 だから、紅い花が咲いたのだ。くるりと捩れた朝顔がゆっくり綻ぶように、菱の花弁が八枚、その重層が先端から螺旋に開く。咲いた花の名は唯一、早苗のみが知る。彼女の心に宿った新奇な感情の所在には戸惑うように対処するしか術がない。

 トクトクとゆっくり鼓動が打つ。それに合わせるようにスーハーと呼吸を繰り返し、ようやく落ち着いた頭で考える。さっき、神様はなんと言ったのだったか。虚憶える海馬から残響する音の記録を引き出し、再認識の道程を辿りながら韻をなぞる。そうだ、たしか。そらをつくる、なんて不可思議なことを、八坂神奈子という神様は言ったのではなかったか。

 「……おそらを、つくる?」

「「「「「」」」」」
 
 早苗が神奈子の顔を見上げてくる。泣き腫らした結膜は赤く充血、千々に乱れた前髪が額にぺたりと張り付く。そんな酷い有様ではあったが、表情からは先程までの翳りを薄くしているのが見て取れる。
 今浮かぶのは、思ってもみないことを言われたのだ、という驚きの色。そして何より子供である彼女に相応しい、希望と期待を宿す真っ直ぐなまなざし。そんな早苗の顔を見据えて神奈子は呵々と笑う。少しだけの誇らしさが胸をくすぐる。

 ――ああそうだ、この表情だ。欲しかったのは、自分が受け取るべきものは。

 答えの見つからぬ自問への回答、そのための鍵。それを手繰り寄せるように二度とは手放さぬように、神奈子は再び言葉を紡ぐ。

 「ああ、空を創る。お前には、東風谷早苗という童にはそれが必要なのさ。そうでなければ」

 お前は壊れてしまうから――と発音に至らぬ言葉を神奈子は飲み込む。澱り固まった悲しみと苦しみとを掃き出すための通風孔、固質化した黒の絵具をゆっくりと溶出する水の流れ。そうして、それら膿んで痛む汚泥をドレナージする先には、吸引する陰圧としての虚無が必要となるのだ。そのための、『空』。早苗の心深くに溜め込まれた、撞着し無為な回転を繰り返し果てた先に生じる暗い祈り。圧倒的密度を誇るそれを溶かし出すのに必要なのは、希薄化した心象としての蒼天の広がり。どこまでも解体されて粒子の一ヶとなって拡散する、そのための虚無とは空。

 相応しいものが、ココに、あるから。

 そう考えると神奈子の胸は、トンと己を嘲るように一個の不整脈を吐き出した。身勝手な結論かもしれぬ、とは勿論思う。だけれど採るべき手段は既に明白となっている。ならばその責任とは、神である自己を強欲貪欲に嗜好した、この八坂神奈子という存在に帰すべきだろう。それだけを決意してギュッと手のひらの内の温度を握り締めて、神奈子は早苗を受け取るための準備を始めた。

「「「「「」」」」」

 そら。
 
 夕刻、山緑の端を線状に着色する赤帯は空へと滲むように浸蝕していく。赤、黄、薄緑と徐々に移ろう色の勾配が層状に積み重なり、やがて天頂へと蒼みを残した虚無の黒へと吸い込まれる。冬晴れの名残を落とす薄い陽照の傾きは、ひとつの方向性を示唆しながら地面へとながいながい影を引かせている。
 神奈子は夕陽をその背中に負い、彼女のつくる影が優しく早苗を覆う。世界と隔絶された境界の内、見上げる早苗の瞳にはやさしく微笑む神奈子の顔と、それを透かしながら差し込む柔らかな光の束だけが映っていた。すべてが混じりゆく空の面影、あらゆる彩色は混沌としながら、やがてひとつだけの優しい景色へと辿り着く。

 だから早苗は、この人がわたしのそらなのだ、とそう思った。わたしの心に繋がる空は、この優しすぎる神様のものなのだ、とそう思った。

 この空は光に満ちた蒼みを偽るだけの寂しげな粒子の織布、あまりにも矛盾と嘘を吐き過ぎた哀れな神の零した色彩。だからこそ愛しいと思うのは、きっと世界と神々に対する冒涜でさえあるのだろう。

 ――だけれど、いとしい。

 それだけは間違いのないことなのだ、と早苗は小さな心に決意する。楽しいとか悲しいとか痛いとか寂しいとか、そんなことは自分自身で決めれば良い。それならば残る問題は、自分が神様のために何ができるのか、ということだろう。祈れば与えられるとは虚しい結果でしか有り得ない。愛しいと思えることは、相互の関係性の上にこそ成り立つのだから。

 そうして風が、再び吹いた。

 地面から巻き上がるように、四方からの流速を集中した風柱が立ち上がる。ゴゥゴゥと唸りが聞こえ、その中心にある神奈子と早苗は目を見張る。ひとりは何が起こったのかと訝るように、もうひとりは何処までも往けと念じるように。
 ならばこの風とは東風谷早苗の所業である。流れる血を思えば素質持ちの早苗であるが、この信仰無き世に人の身の起こす奇跡、それを『有り得ない』と評さずして何と言えば良い? それはつまり、早苗の為した契約の証明であった。神のために人ができることはあるか、その問いに対する早苗なりの答えでもあった。
 風速に乗る砂埃は螺旋を描いて回旋する。風は本来目に見えぬ現象であるが、今、この時だけは異なる。ふたりの両眼が捉えたのは光柱としての風、包まれ迅回する竜巻へと差し込む斜陽、それが砂を巻く密度層へと乱反射する。ふたりが目撃したのは昇る光輝の渦、聞こえたのは空気裂く轟音、触ったのは肌を撫ぜる優しい圧力。ベクトルを解消して風が霧散するまで僅かに10を数えるばかり、思えば虚しいだけの奇跡である。 
 けれども風とは疎密のうねり、濃密から希薄へと流れる重層した波。故にこの風は、ふたりの心に穿たれた瘻孔の証明ともなる。神と人――神奈子と早苗の関係の証とも呼べるのだ。

 なぜだかそれが随分と気恥ずかしいことに思えて、早苗はポゥと顔を紅くする。見上げる視線を合わせてみれば、神奈子は慌てて視線をずらす。その様子が可笑しくて、早苗はついクスクスと笑ってしまった。

 ああ、なんて不器用な神様なんだ。だけれども、それが八坂神奈子という神様なのだから仕方ないじゃないか。
 
 そんなことを考えていると、不意と後頭部に柔らかな圧を感じる。撫でられているのだ、という認識までは一寸も時間がかからない。今度は早苗が顔を俯けてしまい、仕返しとばかりに神奈子はニタニタと余裕の笑みを浮かべ始めた。それはなんとも、不器用なふたりの光景であったのだ。

 
 だから夕闇へと世界が落ちるその間際、誰にも分からぬようにそっと早苗が浮かべたのは、花咲くような馥郁とした笑顔だったに違いない。


 3. 回答は乾杯に相応しく


 早苗が、顔を上げる。追想追憶の繰り返しを経て刻み込んだ、一ヶの泣きたいような懐かしい光景だけが胸には残る。だから今は答えなければならないのだ、と早苗にはもう分かっていた。今度は神奈子の問い掛けに対して、早苗が答える。
 瞳には神奈子の表情が映る。余裕綽綽といった様子で、フフンと自信たっぷりに笑んでいる。それだけの有様なのに、神奈子の真情は不安に震えているのだ、などと想像することが早苗以外の誰に出来ようか。だから、自然と口元が綻んでしまう。不謹慎かな、と右手で口元を隠しながらもクスクスと笑い声は止まらない。

 ――それじゃあ、なるべく早くに私の愛しい神様を、安心させることにしようか。




 「だいじょうぶですよ、八坂様。東風谷早苗というモノは、神奈子様を信仰するだけの人間ですから」

 だからそんな台詞のあとには、ちりんちりんちりんと、乾杯音が3つ静かに響いた。




 神の恩恵に人が浴するだけの古き世は終わりを告げる。多くの神々は老衰の果てに消え去って、今やその名残を抜殻だけに留めている。信仰なき世を生きていく神と人とは、何処までも果てしなく互いに手を携えていくより他にはない。そこに生まれるのは新しい関係、すなわちは『信仰』の新しい形であるのだろう。だから神様は、もう神様は人間を、二度とは助けはしないのだ。
 ギリセーフ(盗用)。どうにも早苗さんとキャノ子様が好き過ぎて意味不明なものを書いたような気がします。すみませんすみませんすみません、だが後悔は(あまり)していない。
 
Q. 何処にお題使ってんだバカヤロー!?

A. きかい → き・かい → きゅ・解 → Q・Answer → Q&A

 って、どこまで曲解してんだバカヤロー。一応questionとanswerを主題として書いてみましたが、結果はにんともかんとも。とりあえず書き上げられたことにセルフ拍手、パチパチパチパチパチパチ……って、なんて、むなしい。

 ともかく最後まで読んでくださった方がいるなら有難うございました。他の方がお題をどう料理したのかが楽しみだなー。
blankii
作品情報
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最新
投稿日時:
2008/02/11 07:29:04
更新日時:
2008/02/13 22:29:04
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5.00
1. 3 小山田 ■2008/02/13 02:11:55
出だしのテンションのまま突き抜けて欲しかったかも。シリアスを基調とするなら、構成の再考が必要かと思いましたが、書きたいものを書ききった感は強く感じました。
2. 8 名無しの37番 ■2008/02/13 12:57:28
独特の文体でとても味わい深く読ませていただきました。
が、それだけに序盤と過去回想以降が合ってない気がします。
また、神奈子の「出雲行かない」の理由が語られてないのが、読んでるほうとしてはすっきりしませんでした(早苗的にOKなのはいいんですが)。「どうせ他の神様消えるし」というのは、理由としては弱い気もしますし(というかそこは神奈子が早苗に説明しようとする前に言ってしまってるから、他の理由があるように思えてしまう)。

個人的に、神奈子がそらをつくった後、早苗がそれに答えるように風を起こすまでの一連の流れがお気に入りです。
3. 4 俄雨 ■2008/02/21 18:20:19
虚空を掴むというか掴む事を薦められているような、そんな感じです。
4. 5 織村 紅羅璃 ■2008/02/24 23:46:14
どうせならシリアス要素だけで書いていただきたかった、というのが正直なところ。
文のタッチというか、底流がギャグっぽかったので、途中でシリアスな展開になったときに違和感を感じてしまいました。
あと、神道であるところの神社の話で、キリスト教の聖典であるところの聖書の一節を引用するのには、発想は面白いと思いましたが、やはり少々違和感が。
全体のストーリーは気に入っただけに、そこら辺が残念でした。
5. 8 床間たろひ ■2008/02/25 01:20:06
いや、これは凄ぇ。
ベラボーに高い表現力と、煙に巻くような会話。
そしてそこからこういう話に繋げるとは――

この神奈子は好みすぎるw
6. -1 飛び入り魚 ■2008/02/27 19:14:38
マイナス点ですが、私の採点基準点自体が低いために起きたことです。
まずそれだけ強く気にされないことを祈って留意点。

ひとつ、語彙の豊富さというハンマー投げ選手に振り回されている感。
ふたつ、上記のような要るのかな? と思えるほどの比喩、特に隠喩の乱用。
みっつ、何があったからこうなった、っていう強い理由付けが見えないこと。
この三点のお陰で君の伝えたいハートの解読がハードな私。

一点目具体例。鳴動という言葉が比較的静的なシーンで使われているけれど、
鳴動って地震レベルにでかいものの意味であったような。
自分の扱える言葉の範囲でのびのびなスタイルが素敵に思えるのに。
二点目具体例。服装に至るまで濃い比喩表現されてしまうと、
一番伝えたいところが隠れてしまうでしょう。
ここぞというポイントで垢抜けさせたい文で使わなければ、
その比喩はまるで肉だらけのすき焼き鍋のようになるでしょう。
そう、貴方は少し言い回しがくどすぎる。
もっと野菜の文を増やすこと。 これが今の貴方が積める善行よ。
三点目具体例。出雲大社にいっかなーいって思うにしても
それまでの習慣を変えるほど、そして騒ぎを起こしたほどの一大事。
それなりの理由がないと、あっれこれ何だったのさと肩透かし。
これは取捨選択すれば大丈夫そう。

凡人がスーパー長コメント本当ごめんなさい
よくもわるくも惹きつけられるものほど長くなっていくの私
7. 7 ■2008/02/27 22:06:18
お題の説明で、『そーなのかー』。まあそれはともかく。
設定・物語・情景描写がとても好きです、しかも主役はこのお二人でもう最高ですね。
ただメインの2.が、各キャラクターの心理描写・過去描写などが交錯しすぎで、
テンポが悪いというか、ちょっと読みにくかった(理解しづらかった)です。
逆に1.の文章は勢いがあって、もう笑うしかなかった。
8. 7 つくし ■2008/02/28 18:51:37
神よ、神よ、なぜ私をお見捨てになったのですか。他宗教までご存知とは博識ですな風祝。
さておき、グイグイ読ませる力のある文章でした。面白かったです。正直高得点をつけたいんですが、
1.――なんもなかった。あおかった。あたりの神奈子様の感傷があんまり人間臭すぎて違和感があったこと。
2.さすがにそのお題解釈はうわぁ。
ということで、この点数で勘弁してつかーさい。
9. 6 ■2008/02/28 20:27:51
変に力を持っちゃった子だから、それなりに苦労してそうだけど。
文章が硬めなので多少の読みにくさはあるが、それが神奈子の諦観と早苗の絶望を表していると思う。
物語はテーマに即した硬さを持って進行していて、短いながらも密度の高い話となっている。
神奈子は早苗と絡むと途端にお母さんになるな。
なにげに、早苗サーガEP1みたいな話
10. 3 たくじ ■2008/02/28 22:30:41
とにかく疲れました。地の文のせいだとは思うのですが、くどいというか説明的というか。もっと台詞を入れられなかったのかなぁと。
早苗さんの家庭の事情は都合よく作られた感じがしました。
神奈子様はいい感じにフランクで好きだけど。
11. 4 椒良徳 ■2008/02/28 23:54:54
>フロッグがチキンに味ライク 
うん、たしかにチキンに味ライクだった。
まるで長嶋監督のように英語をちりばめる作風は独特ですね。
いや、私からすると文章が冗長で読みづらかったのですが。
このていどのkbの作品が冗長というのも変な話だ。
最後まで読んだが意味不明だったところもなんだかかんだか。
12. 7 時計屋 ■2008/02/29 00:42:02
難解なSSです。
何度か読み返してみましたが、分かったようなまるで分からないような。
ただ非常に神奈子らしい話だなぁ、とそれだけは感じ取れました。

文体は独特ですが、非常に味のある巧みなものだと思います。
まるで酔わされるような文章。堪能させていただきました。
13. 4 カシス ■2008/02/29 01:21:44
なんだか詰め込みすぎた感があります。ちょっと読みづらいです。行間や間を開けてもらうともう少し読みやすくなるかな?と思います。
私的には若かりし神奈子にとっての「一期一会」→「期会」みたいなものかと思っていました。読み方変えたら「いっきいっかい」ですし。
14. 4 ZID ■2008/02/29 01:31:15
描写を書き連ねる事に気をとられすぎている印象を受けました。綿密に練りこまれ、実に優れた描写であっても、数が多くなってくれば、ノイズになります。物語の本質を見失わないよう、もっと全体像を意識しながら描写を絞り込んでいくと、もっとすっきりとした作品にしあがるんじゃないかなぁ、と。
15. 8 あまぎ ■2008/02/29 02:04:04
今の自分、中身の濃い小説を読んだ後にも似た充実感でいっぱいです。
まだ全ての作品を読んではいませんが、もし今、BEST文章力賞はどの作品?
と聞かれたなら、真っ先にこの作品を挙げさせて貰います。
いやまあ、文章力といっても分かりやすさとか細かさとか、ジャンルは色々あると思いますがその辺りは、はい。気合で。

それで、この作品のように濃い文章を読むといつも思うのですが、同じ空を眺めていても、自分とは違う空が作者様の目に映っているんじゃないかな、と。
なんて言いますか、物事の捉え方、見えてる世界が自分と全く違うのではないかと。
それがどうした当然だろと言われると、そうだけど自分ももっと良い世界が見えるようになりたいなあ、とか思うばかりです。

……恥ずかしい話を長々としてしまいました。それでは、最後になりましたが。
奇跡を奇跡らしく描くことの出来る作者様に、憧れます。
素晴らしい作品をありがとうございました。
16. 3 つくね ■2008/02/29 02:46:58
ちょいお題が強引ですが、良い話だと思いました。
17. 6 とら ■2008/02/29 09:10:24
雰囲気はとても好きです。タイトルの付け方も非常に上手いと思いました。ただ、地の文にかなりクセがあり、表現にもクドサを感じます。そういう文体なのだとは思いますが、もう少しだけすっきりと書いて欲しかったです。
18. 6 らくがん屋 ■2008/02/29 11:07:35
きゅ・かいはちと、いやかなり厳しい。でもこの文章センスは好きだ。
19. フリーレス 中沢良一 ■2008/02/29 15:15:54
読解力の乏しい私には、何を言っているのかさっぱりでした。綺麗な表現を目指して書いたのでしょうが、私にはごちゃごちゃした文章としか思えませんでした。
地の文で感情を表してしまっていて、あまり物語りを読んでいる感じがしません。お題の使い方もちょっと強引かなぁと。
20. 5 K.M ■2008/02/29 19:43:34
公平と不公平の微妙な問題ゆえに、神様は手を貸さない…
「世界がよりよいものでありますように」みたいな抽象的かつ誰も不幸にしないような願いも誰かを裏切ることになってしまうのでしょうか?
それにしてもお題解釈が強引だw
21. 3 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:49:47
Hなんで分かりませんでした。
何も伝わってこなかった、っていう訳でもないんですけどね…。
22. 10 レグルス ■2008/02/29 20:20:13
第一印象は多重奏。
素人目の感想で申し訳ないですが、何かすげーとしか形容しがたかったです。
いや 本当に凄いな と。
密度が凄いというか描写が凄いというか。
こういうのを見ると自分の作品がいかに中身スッカスカか思い知りますね。
脱帽です 平伏しときます OTL
23. 4 八重結界 ■2008/02/29 20:47:47
回りくどい文章とテーマの消化方法でこの点数に。
回りくどい文章も一つの技法ではありますが、長く続けているとそれもだれてしまうものです。その辺の対処法も無かったので、後半は少し読むのに疲れました。
24. 3 O−81 ■2008/02/29 21:44:55
 なんだか長いわりにはこれといった結論は出ていなかったような。文章遊びが過ぎて、要点がうまく飲み込めませんでした。
 ごくたまに難解な単語(英語含む)が出てきて、ちょっと読むのに詰まったところもありますが、そのへんはどうにも私の勉強不足です。
 すわこ空気。
25. 4 只野 亜峰 ■2008/02/29 21:48:20
、と。の使い方が微妙だったり視点がころころ変わったりで場面を把握するのにちょいと苦労。
「「「「「」」」」」    驚きを表しているのはわかりますが、どうなのかと。
地の文章も決して下手というわけではないんですが、いかんせんテンションが独りよがりなようにも思えます。
肝心なところで目が流れてしまうので、もうちょい読者を意識して使い分けれれば良いかなと。
「「「「「」」」」」   がどうも目につきますな。お題としても東方SSとしても、うーんどうにも。
26. 8 12 ■2008/02/29 21:59:50
神奈子寄りの地の文と、早苗のそれが入り混じって、早苗が子供のくせにすごく難しい思考をしてしまっているように読めるのが難点でしょうか。それ以外は、小気味良いギャグも展開も、結末後の明るい展開を予想させる点も、とてもいいです。
27. 5 BYK ■2008/02/29 22:07:30
随分と捻られたお題の使い方。その発想はなかった(ぉ
28. 3 綺羅 ■2008/02/29 23:00:39
若干冗長です。文章は大変上手ではあるのですが、まるで神奈子と早苗が思ったこと全てを書き連ねているようで、本当に伝えたい情報の存在感が薄れ、表現の回りくどさが読者を疲れさせてしまいます。お題の使い方も無理が。
29. 4 moki ■2008/02/29 23:21:26
最初は読みづらかったけど、読み返すうちに味が出てくる文章だと感じました。
お題は……流石にそれはなしではないかと。その分減点してます。
30. 4 冬生まれ ■2008/02/29 23:35:39
お題の強引すぎる解釈にほれたw
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