行きましょう、レミィ

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/11 08:21:48 更新日時: 2008/02/13 23:21:48 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00

 人であれば夕食を終えて、思い思いの時間を過ごしている時間だが
たとえ人間であっても紅魔館の住人ならこれからが活動時間となる。
 その唯一の人間、メイド長の十六夜咲夜は主人であるレミリアに側に控えていた。
 銀髪が美しく所作の一つをとっても瀟洒だ。メイド服という実務的な制服を着ていても匂いたつような
美しさは覆い隠せない。これがもし煌びやかなドレスを纏えばこの紅魔館の主人、はたまた一国の姫君と
言われても疑いはしないだろう。
 これほどまでに美しいメイドを近くに侍らすと、その女主人が気の毒に思われるがそうではなかった。
 咲夜が正統派な美しさならば、レミリアは魔性の美しさだ。
 見た目の幼さとは裏腹に500年近くを生きている。そのため幼さと深慮、可憐と威厳、繊細と豪気、
相容れない単語がその小さな体に同居していた。

 レミリアが窓の外を指差して言う。
「庭園にある四阿を、特に湖の見晴らしがいい場所を念入りに掃除してちょうだい」
 紅魔館の庭園はかくれんぼをすれば大捜索になりそうなぐらいに広大だ。そのため散策するときに
休憩ができるように四阿が点在している。
 レミリアにある程度指定されたと言われても、該当する場所は思いつくだけで3箇所はくだらない。
結局のところ庭園の大掃除となりそうだった。
「咲夜は残ってちょうだい、これからパチェ達を呼んでお茶にするから給仕をお願いするわ」
「かしこまりましたわ。今夜はお茶会の予定であったのですね。庭園の掃除が済み次第でよろしいで
しょうか」
「今からお願いするわ。掃除は別件だから気にしなくていいわ」
「かしこまりました」
 それだけ答えると静かに扉の外に消えていく咲夜だった。
 咲夜が出て行ったばかりの扉を見つめながらレミリアは
「4人分なら十分かな?」とつぶやいた。


ノックの音がする。
「入るわよ」
声の主はパチュリーだった。普段から抑揚の少ない声は扉を通すとずいぶんくぐもって聞こえる。
「どうぞ」
短く答えたのはもちろんレミリアだ。
パチュリーが手に触れるノブをはじめ扉全体にも装飾が広がっている、その精緻さのためか実用品より美術品
という印象を与えかねない扉である。
その扉だけで恐縮してしまいそうなものだが、パチュリーにとっては慣れた紅魔館なのでごく自然に
開かれた。
 室内に最初に足を踏み入れたのは魔理沙ついでアリス、そしてパチュリーが扉を慎重に閉めながら
入ってきた。
「まぁ堅苦しい挨拶は抜きにして座りなさいな」
 レミリアがすらりと腕を伸ばし手招きして各自を座らせた。 
「今日はお招きありがとうございますお嬢様」
 貴族の娘のように礼を言ったのは魔理沙だが、もちろんふざけて言っている。つまり「分かってやってる」
の部類だ。
「どうしたのよ。あなたの方から持ちかけるなんて珍しいわね。まぁここの紅茶は美味しいから
お言葉に甘えますけどね」
 アリスは素直に述べた。
「なにか厄介ごとでも起きたか?私の予想では近いところでフラン関係と見るけどな」
「別に何もないわよ。本当にただの暇つぶしに付き合って欲しいだけよ」
 これだけの美少女たちが集まってティーパーティーをしている光景はなかなか拝めない。もし絵心に
知れたものがいればすぐさま筆を取ったかもしれない。

 そこにもう一つの華がやってきた。茶器をトレイに載せてやってきた咲夜だ。
 咲夜はあくまでも邪魔にならないように、会話の合間を縫って紅茶を淹れていく。
 気をつけていないと、まるでティーカップの底から勝手に湧き出ているかのように錯覚させるぐらい
静かに立ち回っている。
「咲夜も大変だな。休みもなし、感謝もなしの主人に仕えちゃって」
 魔理沙は微笑しながら言ったのは、少なくともレミリアが感謝はしていることを知っているからだ。
 単に話のタネを蒔いただけだ。
「そんなことはありませんわ、毎日楽しく過ごさせてもらっていますから」
 本人にここまで言わせているレミリアが恐ろしくも感じたりもする魔理沙だった。
「年季の差よ」
 ティーカップを口元に運び香りを楽しみながらパチュリーが言った。
 風をはらんだスカートが踊るようにゆらしながら、テーブルから少し離れた位置に戻る咲夜。
 今では誰も言わなくなったが咲夜に「知らない仲ではないから一緒にお茶をしたらいい」と同席を
薦めたことがあるが素気無く断られていた。
 レミリアも無理に言わないことにしている。レミリアの立場では口にするだけで命令に
聞こえるからだ。


「私が礼を言わないのは分かりやすく言えば、毎回ありがとうって言うと価値が減るからよ」
「それは私も実に薦めている考え方だ」
「あなたの場合は方便でしょ」
 アリスが白々しい目を向けたが、魔理沙は一向に意に介さない。
「少し言い方が悪いわね、価値が下がるというより価値を上げたいかしらね。なにより相手への敬意かしら」
「ほぉ、これは新説だな。ぜひともお聞かせ願いたい」
「どこぞの先生気取りしてるんじゃないわよ」
 アリスが力なく肩を落とした。
「いちいち言葉にして礼をしていたら相手の気を悪くさせる。なぜなら相手にとっては当然だから礼を
されるほどではないと思っているから。それなのに礼をしてくるということは、それだけ人を安く見てる。
そんなところかしらね」
 一気にしゃべり終えたレミリアはここで初めてティーカップに口をつけた。
 口元が自然とほころんだ。
「それだけに礼を言ったときは重みがあるということね。それよりも実行する勇気のほうが必要よね。無礼な
やつと思われても仕方ないと思うもの」
 紅茶がアリスの唇を大理石のように艶やかに光らせていた。
「なかなか分かっているじゃない。だから年季の差なのよ」
「あぁ、そうなんだよ。まさにそれが言いたかったんだパチュリー。必ず快く貸してくれると思うからこそ
黙っているんだ」
 思い出したかのように魔理沙がつっかかる。ここまでくると反応を愉しむだけにわざと言ってるようなものだ
「いいんだけど。来てるのは知ってるわよ。いつも爆発音が聞こえるから」
ただ爆発音と一緒に悲鳴が混じっていることもあるのが、言及しないことに決めていたパチュリーだった。
「じゃあ、たまに気遣って静かにあがらしてもらおう」
 軽く眩暈が起きそうなパチュリーだったが茶目っ気たっぷりに言うものだから憎めないものである。
 唯一の救いはこのぐらいの苦悩を流せる紅茶が目の前にあることか。
 話題も魔法関係の話になり、魔法となると少しお門違いとなるレミリアの発言が少なくなった。
 レミリアはラジオのような感覚で聞き手に回るがそれだけが理由ではなかった。なぜなら丁寧に
紅茶を淹れていく咲夜を目で追っていたのだ。
 咲夜は不思議に思いはしたが、それでも普段どおり給仕にあたっていた。
 穏やかな時間は香りだけを残して紅茶とともに流れていった。


「さて、私はそろそろ帰るぜ」
「そうね。ここにいるとなんだが時差ボケしちゃいそうなのよ」
アリスが同意して言葉を引き継いだ。
「これから活動しだすから錯覚しそうになる」
「咲夜も大変ね、昼夜が逆転してるでしょ。まぁ慣れているでしょうけど」
最後の一口分の紅茶を流し込んでからアリスは言った。
「案外、居眠りとかしてたりな」
「万が一眠くなっても時間を止めて寝るから支障がなくってよ」
「パーフェクトすぎるわね・・・」
「だからこそ攻略しがいがあるな・・・」
 頬が引きつるアリスと咲夜、パチュリーは軽く咽ていた。
 呆れたようにレミリアは手で払うような仕草をしながら
「ほら、そろそろ帰るんじゃなかったの?」
と帰るよう促す。いつまでも続きそうな気がしたからだ。
「かしこまりましたわ、お嬢様」
と魔理沙は笑いながら大げさに礼をした。
 苦心しながら良い点を上げれば元気がいいということだけで、レミリアが今まで見てきたなかで最低点の
お辞儀だった。
 手の払う速度が幾分増す。つまり「もういいから帰れ」である。
「それじゃあ、またな。今度はこっちから誘うぜ」
「今度はお菓子ぐらい用意してくるわ」
 それだけ言い残して魔理沙とアリスは退場した。

 茶器の後片付けのため咲夜は出て行き、紅茶がまだ香る部屋にはレミリアとパチュリーだけが残っていた。
「どう十分見学できた?レミィ」
「えぇ、ありがとう。わざわざ友達まで呼んでおいてもらって」
 友達という言葉にやや語弊があったかパチュリーの秀麗な眉がピクリと反応した。
「いいのよ、こちらから呼ばないと本が戻ってこないんだもの。しかも魔理沙に関しては貸した覚えもない」
 それほど困った様子はないが憂いの吐息を漏らしていた。危惧すべきはこれからは黒ネズミにこっそり侵入
してくるということだ。
「どう?やれそうかしら」
「そうね、あらためて見ると難しいわね。もうあとは心意気かしらね」
本人も似合わないことを言っているのが自覚できて微笑んでいる。
「じゃああとで私がテストしに行くわよ」
「お待ちしており・・・くっくっますわ」
 咲夜を真似して言って見たがどうしても可笑しく、最後のほうは笑いをかみ殺しながらなんとか言い終えた。
 パチュリーは魔理沙の悪い影響がここにもかと考えながら、つられて笑うしかなかった。


 軽く眠っていたレミリアが目を覚ますとカーテンの隙間からは、まるで輝くレイピアのように細く陽光が
差し込んでいた。
 その陽光を睨みつけるようにするとレミリアは口を開いた。
「今日はあなたの思い通りにならないわ」
 レミリアは誰に聞こえるでも無くそうつぶやき、一堂が会する部屋に移動した。

「レミィ、そろそろいいかしら?あと一時間もすれば時間よ」
 紅魔館でレミリアのことを愛称で呼ぶのはパチュリーしかいない
「じゃあ、そろそろ準備しますか。咲夜、行くわよ」
「どこまで出かけられます?」
「昨日、掃除させた四阿までよ。後から行くから先に行って座ってなさいな」
 風変わりな指示、それ以上に風変わりな命令に咲夜は戸惑いはしたがすぐに応じた。
「かしこまりましたわ。それではお待ちしております」
 咲夜が去ったあとに残ったレミリアとパチュリーがこれからとっておきの悪戯でも始めそうな意地の
悪い笑顔を作っていた。

 作戦の最終確認だ。
「欠け初めから終わるまで2時間以上はあるけど、レミィが無理なく過ごせるのは1時間もないんだから気を
つけてね」
「何度もしたことあるじゃない、もう慣れたものよ」
「それもそうね。じゃあ私は適当に遅れて行くわ」
 パチュリーの声が心なしか上ずっている。
「えぇ、手筈通りにお願いするわ。じゃあ私は行くわ」
 レミリアの三桁の年を生きてきた精神年齢でも、これからの出来事に胸を躍らせている。
 夢見る少女のような足取りで咲夜を追って庭園へ向かっていった。


 庭園に咲く花々は従者たちにより手入れがされており、その努力を称えるかのように咲き誇っていた。
 レミリアの手にはいつもの日傘に、二人分のティーセットを抱えながらやって来た。
「お待たせ咲夜」
 咲夜が振り向く視線の先にはあってはならない姿をした主人がいた。
 なぜならば咲夜の目からすれば、決して持ってはならない物を手にしているように映るからだ。
 これが十字架ならまだしも、まさか銀の盆にティーカップとポットを載せているとは思いもしなかっただろう。
「お、お、お嬢様!何を!!」
 絶叫に近い声が響き渡ったと思ったら、手を組んで祈りの言葉をささやいている。
 もしこの場を魔理沙が見ていればどれだけ囃されたことか。もしこの場に射命丸がいれば号外が出ただろう。
それほど咲夜がかわいそうなくらい取り乱していた。
「警戒しなくてもいいわ、今日だけ特別。本当に特別な日なんですから」
 屋根のある四阿に入ると銀の盆をテーブルに置いてから、愛用の日傘をたたんだ。
「えっと、その。手伝いますよ。あっいえ、私がやります」
幾分調子を取り戻したところで、まだまだ動揺を隠せないでいる。
『おもしろいからこのままにさせようかな』とそんなことを本気で考えているとパチュリーが水が入った
ポットを持って現れた。
 咲夜もパチュリーに気がつくと申し訳なさそうに頭を下げてから席を立とうとしたが、レミリアが「そのままで
いいのよ」とやめさせた。

 はっきり言って咲夜には居心地が悪かった。まるで適温になっていない湯船に浸かっているような、そんな
居心地の悪さを味わっていた。
 咲夜の心境を見透かしたのかパチュリーが話しかける。
「今までは私がレミィと楽しんでいたけど今回は咲夜に譲るわ」
 パチュリーの台詞は咲夜が求める答えにはまだ程遠い。
「私は吸血鬼じゃないから、咲夜と同じように普段は昼に活動する生き物」
「でも吸血鬼の私は夜の住人、最近は生活リズムが崩れているときがあるけどね」
 生活リズムを崩す連中の顔が脳裏を横切るとレミリアが相好を崩れた。
「でも、咲夜は立場上どうしても私に合わせてる。だから、私は咲夜の為に生活リズムを崩させてくれない。
それはそれで嬉しいけど少し悔しくなったのよ」
 他の連中は昼間にわざわざ会うことがあるのに、それが咲夜にはない。だから咲夜のために時間を割きたい。
それも陽が出ている時間にだ。と考えているレミリアだった。

「それで今日は咲夜のために気兼ねなく楽しんで貰おうと頑張ってみたわけ」
 パチュリーはオーブンで使うような手袋を左手にはめてポットを掴みなおした。そして右手がポットに
触れそうなぐらいな位置のところで止めた。
 詩の一節をささやくように呪文を唱えたと思ったら、突然ポットの中からゴポゴポとけたたましい合唱が
聞こえる。
 よく見ると手に近い部分のポットは赤熱している
「それではごゆっくりどうぞ」
 そう言うとパチュリーは合唱の余韻が残るポットと手袋をテーブルに置いたらそそくさと館に戻っていった。
「パチェったら、あれじゃあなんだが茶店のウェイトレスみたいよ」
 微笑みながら、咲夜に向き直る。
「それでは今日はあなたをおもてなしするわ。咲夜」
 決してレミリアに悪意はないのだが、思いもよらない立場に追いやられた咲夜に今のレミリアの瞳が
まるで猛禽類が獲物を見つけた時のようにギラリと光ったように見える。
――――観念するしかない。と思ったものの何に対して観念するかは自分自身でもよくわからない咲夜だった。


「では、お湯が冷めないうちに始めましょうか」
 紅茶を淹れる際、なるだけ熱湯であることが望ましいので早速パチュリーが沸かしてくれた熱湯を
ティーポットに移して、紅茶を淹れる一連の動作を始めた。
 手元はしっかりしているが、いかんせん自信がない。見よう見真似もいいところだ。
 咲夜もレミリアが作業している間はなるべく視線を外し緊張させないように努めようとするが、やはり無理な
ようでまじまじと見入ってしまう。
 茶器と紅茶が流れる音だけが二人の間を支配する。
「これでも咲夜を手本にしてるんだけどどうかしら?」
と紅茶を注がれたカップを咲夜のほうへ差し出す。
「それでは・・・頂きます」
 咲夜にとってはお神酒に等しいものだから固くなっても仕方が無い。
 ただあまりにも神妙に言うのでレミリアも緊張が伝播しているようだった。それもそのはずでこれほど
緊張するのは経験したことがない。咲夜には異変の核心に迫ったとき以上の緊張が襲っているかもしれない。

 咲夜は壊れ物を扱うかのような手つきで慎重にティーカップを口元に運び香りを楽しむ。
 庭園の花の香りと相まってハチミツを溶かした時のような甘い香りだ。
 次いで紅い液体を口に流し込むと、さっきまでの緊張が嘘のように消えていった。
 いつの間にか閉じていた目蓋を開くと、ようやく人心地がついていた。いつもの自分に戻っていることが分かる。
 開いた目蓋の先にいる主人がじっとこちらを見ている。
「・・・・私にとってこれより美味しい紅茶はありません。自分で淹れる紅茶よりも誰かが淹れてくれる
ほうがやはり美味しいですもの。それがお嬢様であればなお更です」
 淀みなく言う咲夜に珍しく気恥ずかしい気分になるレミリア
「霊夢も気持ちさえこもっていれば番茶も玉露に負けない言ってましたわ」
「お茶と比べられてもね・・・ふふっ」
 力なく苦笑するしかないレミリアだが、その表情は妙に晴れ晴れしい。
「それにメイドである私には望外の喜びですわ」
 その言葉に満足したようで、レミリアも自身が淹れた紅茶に口をつける。
「うーん、咲夜にはやっぱり適わないわね」
 それがレミリアの正直な感想だった。


 互いの緊張も解け、二口、三口とレミリアの紅茶を味わいながら会話していると辺りが暗くなってきた。
「あら曇ってきましたわ」
 屋根があるとはいえ、レミリアにとっては日光は苦手であることに違いない。だから曇りや雨は好都合といえる。
 雨の庭園も趣があっていいかもしれないと考える咲夜だった。
 座ったままで見える範囲の空には雲などない。それに館を出るときに見た空は快晴そのものであったはずだ。
 咲夜は席から立ち上がり太陽を探す。俄かに信じがたい光景が目に飛び込んできた。
 静かに答えるようレミリアの眼差しは決して直視することができない太陽に向けた。
「残念、曇りでも異変でもない。もっと大きな自然現象。月が太陽を隠す日」

 月が太陽に寄り添うように重なり合う。
 紺碧の夜が訪れた。
 景色をそのまま海の底に沈めこんだ圧倒的な静寂。
 四阿から欲しいままに望むことが出来る湖も今はインクを流し込んだように暗澹たる雰囲気だ。
 取り囲むように咲いている花々も怯えているかのように粛々とした存在に見える。
 レミリアだけが対照的に落ち着き払っていた。さも当然としている姿は絶対者と呼んでも差し支えなさそうだ。
「この時間だけなら日傘はいらないわ。だから今だけは咲夜に付き合える」
 それは夜の住人が人間に対しての精一杯の誠意だ。
「今頃、霊夢たちは大騒ぎしてるのかしらね?」
 普段の陽光だと敵意むき出しだが、今の弱々しい光はむしろレミリアを優しくいたわっているように見える。
不名誉なこともかもしれないが紅い天使のように見える。
「時間を止めてでも、この光景を目に焼き付けておいたら?」
「いいえ、お嬢様。貴重な時間だからこそ一瞬、一瞬を過ごそうと思います」
 傲慢な台詞だが時間を止めることができる咲夜にとっては最上級の賞賛なのかもしれない。
「そう」
 とレミリアは短く切って頬杖をつきながらティーカップを傾ける。
 二人の間に風が駆ける。夜風と違ってどこかやさしい。
「すこし散歩しません?折角ですので」
 薄暗いとは言え、庭園を散歩するぐらいには何ら難しいことはない。
「えぇ、いいわ。それとね、今だけ愛称で呼んで欲しいわ」
 その願いに、咲夜の頭中でさまざまな思惑が逡巡する。


二人は席を立った。
レミリアは日傘を置いたまま。
咲夜は仕事着のエプロンを外した。
二人はそろって四阿の外へ歩き出す。
いつもなら日傘を持っている手が今は空手で落ち着かない。
そんなレミリアの手を咲夜の手が触れ合い恐る恐る握ってきた。
「ありがとう」
千言尽くしたところで語りつくせない。万金の感謝より重いレミリアの感謝の言葉。
それは咲夜が従者から一歩を踏み出した勇気への感謝。
「行きましょう、レミィ」
月と太陽の逢瀬はまだはじまったばかり。
ぱるせる
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/02/11 08:21:48
更新日時:
2008/02/13 23:21:48
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5.00
1. 4 あまぎ ■2008/02/13 00:17:32
興味深く最後まで読ませていただきました。
この作品のレミリアと咲夜さんはまさに、自分のイメージとピッタリ合っています。
特にレミリアが紅茶を入れるところ、そして頬杖をつくところ……
この辺りは鮮明に想像することが出来ました。
心理描写も上手で、文句は無し……と、言いたいのですけれど。
「きかい」はどの意味で使われていたのか、確信を持てません。
また、全体的に穏やかで滑らかな雰囲気は大好きなのですが、
少し平坦すぎる気がしました。
もう少しだけ、見せ場があっても良かったかなあ、と。
だけどやっぱり穏やかなのは好きなので、またそれこそ機会があれば、
他の作品も読ませていただきたいと思います。

……あ、タイトルのセンスにちょっとだけ嫉妬。
それの無い自分には羨ましいです。
2. 10 読者 ■2008/02/13 04:56:07
さわやかな感動をありがとう!!
3. 2 小山田 ■2008/02/13 08:19:45
輝くレイピア等、表現を凝りすぎて一度読むを止めて悩まないと情景が想像できなかった部分が多々見受けられました。自分の満足できる言葉の選択もちろんですが、さらに読み手に伝えるには何が必要かという言葉の選択もしていただけましたら、話の内容もレミリアと咲夜の絆も伝わっていたと思います。
4. 9 名無しの37番 ■2008/02/19 13:12:35
あぁー。いい意味で惜しい。一番綺麗なところで締めましたね。もっと読んでいたくなる作品でした。
短いながらも過不足無く表現できていたと思います。難を挙げるとすれば、誤字や改行の不安定さなどが目立ったせいで少しテンポが悪くなったくらいかな。
5. 3 飛び入り魚 ■2008/02/21 05:54:47
機会かな。
日食とかける発想はなかなかないなあ
6. 5 織村 紅羅璃 ■2008/02/26 23:06:32
彼女たちの美しさの表現に作者のこだわりを見た。w

できればこのあとのことを書いてほしかったです。そうすれば作者の世界をもう少し見ることができたのになぁ、と思いました。
7. 5 ■2008/02/27 22:12:30
タイトルからお嬢様とパチェだな、と勝手に想像していい意味で裏切られました。
こんな二人もいいものですね。
ただ皆既日蝕関連の説明が説明不足のような気がします。
(それまで、日蝕の機会が全くなかったのかとか)
そこだけがちょっと違和感でした。
8. 5 床間たろひ ■2008/02/27 22:51:28
ほむ。なるほど、それでこのタイトル。
確かにこんな機会、下手すれば一生に一度しかないですしね。
それぞれのキャラ付けなどは実に好みだったのですが、まだ筆力が追いついてない、かな?
台詞に頼っている部分が多すぎて、その分安っぽく見えてしまいます。
こういう情感を重視する話においては、文体もそれに合わせて欲しかったところ。
まぁ、良い話だからこそ出る我が侭なんですけどねw
頑張ってください。次も期待しています。
9. 6 カシス ■2008/02/28 17:20:15
一歩を踏み出す「機会」がお題でしょうか?題名はてっきりパチェが言ったかと思っていました。いい意味で裏切られました。
10. 1 つくし ■2008/02/28 19:59:49
「あずまや」はさすがにルビをつけたほうが良いですわー 読者層をそれが読める人たちという風に想定されてるんでしたら何も言えませんが。
さて、それぞれのエピソードとそのつながりを読者に理解させようという意志が希薄なように思えます。そして、咲夜とレミリアをらぶらぶさせるまでに少し紙面を大きく取りすぎてしまっている感じがするので、そこはもっとスマートに流して、メインディッシュをガッツリ頂きたいところでした。
あと、ところどころ敬語の使い方に違和感を覚えます。
「かしこまりましたわ」→「かしこまりました」
「どこまで出かけられます?」→「どちらへおいでですか」or「どちらへお出かけになりますか」
他のキャラならあまり気にしないんですが、咲夜さんの場合「完全で瀟洒」という看板を背負ってるだけに、こういう言葉遣いの瑕は致命的です、というのは俺の勝手なイメージですがー。
あと、きかいがどこにあるのかわからなかったです。
11. 3 ■2008/02/28 20:33:30
この愛称を使うのはパチェだけだという先入観を逆手に取られた。
ちょっといい話。
つくづくこの二人は主従というか恋人というか。
12. 6 たくじ ■2008/02/28 22:33:28
この話好きだなぁ。レミリアのアプローチの仕方が面白いですね。日食を利用していつもと違う関係に踏み出す。うん、なんかいい。
ただ、余計なところで改行が入っているのが読み辛かったです。
13. 3 椒良徳 ■2008/02/28 23:57:17
・・・ではなく……(三点リーダー)を使いましょう。
つまらんことですがね。正直つまらない作品でした。
14. 1 時計屋 ■2008/02/29 00:45:33
文章が読みづらいものになっています。

文法の誤り(特に助詞)、常用漢字への未変換、誤字・脱字、一人称と三人称の混在、似たような文末の連続、前後の文章で重複もしくは矛盾している描写がないかどうか。
この辺りからチェックしてみてはどうでしょうか。
(自分で言ってて耳が痛いですが……)
15. 3 ZID ■2008/02/29 01:33:20
えー、ぶっちゃけて言うと、一番残った印象が「読みにくい」でした。改行の仕方が不均一なのが一番の原因なのでしょうが。綿密な描写が長く続くシーンがある反面、「○○は△△だ」といった、行動描写とセリフが交互に続くシーンがあったり。 扱っているテーマや、イベントなどがどれだけ魅力的でも、読みにくさを感じる文章は、それらを全て半減させます。読み手のリズムを意識して、文面を考えると読みやすい文章が書きやすいですよ。
16. 2 木村圭 ■2008/02/29 04:56:27
確かに日食ならお嬢様も自由に歩き回れますね。いくらなんでもレミィは無いんじゃないかとか思ったりもしましたが、お嬢様ならたまにはありそう、とも思ったり。お嬢様の良き君主っぷりが素敵でした。
17. 4 とら ■2008/02/29 09:12:24
パチュリーとレミリアの話かと思ったら……少し意表を突かれました。全体的に詩的な表現が散見されるように思います。それが、文章の中で少し浮いているような印象を受けました。
18. 6 らくがん屋 ■2008/02/29 11:09:56
この発想は無かったわ、と自分の発想力の貧困さを露呈させてみる。
19. 1 中沢良一 ■2008/02/29 15:18:07
お題はどこなんでしょう? わかりませんでした。
表現は綺麗にまとめようとしていますが、所々日本語としておかしかったりするところがあります。綺麗で手の込んだ表現よりは、しっかりと読みやすく、おかしくない文章を書くほうが実力のある作家さんだと、私は思っています。
20. 3 つくね ■2008/02/29 16:10:30
この系統は好みの話なのですが、少々インパクトに欠けるのが惜しいです。
21. 4 K.M ■2008/02/29 18:57:51
いいお話とは思うのですが、「きかい」分が薄すぎる気がするのでこの点数で。
22. 7 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:51:17
何時もと違うレミリア様と咲夜さんが見れて良かったです。
これだけうろたえる咲夜さんも珍しいですしね。
最後のシーン、笑顔で手を繋ぐ2人を想像して思わずニヤリ。
23. 6 八重結界 ■2008/02/29 20:49:40
お題の消化方法が少し分かりづらいのが難でしょうか。
日食は滅多に起こらない現象であり、この機会に散歩を楽しむ二人という風に解釈したのですが。
しかしながら、このお嬢様は風格たっぷり。咲夜が仕えたくなるのもわかります。
24. 4 O−81 ■2008/02/29 21:43:16
 いい感じの。
 さりげなく、今まで語られてきたどんな関係よりも新しいレミリアと咲夜の関係なのかもしれないなあ、とか思ったりしました。個人的に。
25. 4 只野 亜峰 ■2008/02/29 21:46:22
レミリアに側に→レミリアの側に 誤字?
変なところで改行されてるのはCGIの不調かコピペミスか。
メモ帳から貼り付けるときは右端で折り返すのチェックをはずすと良いんだぜ。
ところどころ謎い文章があるのは推敲する暇が無かったのかな。
お題の解釈は奇怪なのか機械なのか。皆既日食のゴロ合わせなのか。いずれにしても消化不足なような気も。
地の文に関しても制限時間を考慮してもやはり荒さを感じなくもありません。
いや、まぁ。こういったほのぼのは好きなんですがね。
レミィかわいいよレミィ
26. 7 12 ■2008/02/29 22:09:47
優しそうな話が、優しく展開して優しく終わる。
キャラ萌えの人にはたまらないかもしれないけれど、やっぱりアクセントもほしいなー、と思ってしまうのです。
読ませる文章とキャラの会話は面白いですね。
27. 5 BYK ■2008/02/29 22:09:51
しかし日食はほんの一瞬の出来事。このあとだんだん外が明るくなって、慌てて館内へ戻る二人を想像して微笑ましくなった(ゎ
28. 3 綺羅 ■2008/02/29 23:11:34
きかいというのは機会ととらえて日食という意味でしょうか。なんだか少々とってつけたような感じがしてしまいました。それとキャラを大げさに称える言葉が何度も何度も出てきて鼻についてしまったり。
29. 3 moki ■2008/02/29 23:22:58
咲夜の最後の科白の余韻がいいですね。
ただ、科白の口調にところどころ違和感あったり、表現ももっとこなれたものにできると思います。
30. 5 blankii ■2008/02/29 23:51:27
万感こもった言葉、なのでしょう。咲夜さんがレミリアを「レミィ」と呼ぶのは普段を思えば考えられないことにも感じられますが、だからこその万感。愛称とは、近接の証明でもあるのでしょうし。

31. 5 反魂 ■2008/02/29 23:56:04
 多少読みにくさがあったのですが、柔らかい日向のような雰囲気の文章で、よいムードが味わえました。
 欲を言えばもう少し、ストーリーテリングに丁寧さがあったならとも思いますが、それは柔らかさとのトレードオフでしょうか。
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