風の巡る先

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/11 08:47:23 更新日時: 2008/03/11 19:31:53 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00




 私が外出から戻ると、神社が半分くらい無くなっていた。

「え?」
 妖怪の山、その山頂付近にある守矢の神社。
 本殿があるはずの場所には瓦礫が山になっている。
 私は守矢の巫女であり、そこで暮らしているわけで、その建物が崩壊しているというのはかなり困る。
「いったい何が……」
 私たちを心良く思わない妖怪の攻撃?
 引越しをした時の影響?
 慌てて駆け付けてみて、私はそこで倒れそうになった。
 壊れた本殿とその周辺には、見覚えのある柱や輪が散乱している。
 破壊の原因は一目瞭然であった。
 犯人はこれ以上ないほどに明らかだったが、当人の口から事情を聞きたかった。聞かなければ気が済まなかった。
「これは何事ですかっ!? 出てきてください! 八坂様! 洩矢様!」
 私の大声で、この神社に住んでいる二人の神が姿を現した。
 八坂様は、普段なら威厳に満ちている貌に、いたずらの見つかった子供のような表情を浮かべている。
「いやぁ〜、諏訪子と遊んでたら、ちょっと熱くなっちゃって」
「何よ、私のせいにするつもり!?」
 洩矢様にしては珍しく、少し怒った口調だった。
「だいたい、神奈子があんな事言い出すから悪いだからね!」
「あたし一人の責任にしようってのかい。あんたが大人しくやられてれば、こんな事にはならなかったんだ」
 出て来るや否や口喧嘩を始める二人。
 よく見ると、お二方の服はあちこちが破れていた。辺りに残っている神気からも、二人が暴れたのはついさっきだと判った。
 本当は仲がいいはずなのに、と嘆息しながら私は理由を聞いてみる。
「一体、どうしたっていうんですか」
「神奈子が」
「諏訪子が」
 ちっとも要領を得ない二人の言葉に、私はもう一度ため息をつく。
 ちょくちょく喧嘩はするけれど、お二方が本当は仲が良いことくらい長く暮らしていれば判る。
 多分、事の発端は些細なことなんだろう。
 八坂様がおやつを横取りしたとか、そんな程度の。
「お二方とも、ご自身の力を自覚して遊んでください。以前よりも自在になる力が増したのは判りますが、それで神社を壊していたら世話がありません」
「おっしゃるとおりです」
「ごめんなさい」
 私の言葉に素直に謝る神二人の姿は、とてもかつて一国を統べた力の持ち主とは思えなかった。


 もともと古い建物で、痛んでいた部分もあったので、折角だからと天狗や河童の助力で建て直す事になった。


「じゃ、そういう事だから」
 建て直しの間の住まいとして、私は博麗神社に世話になる事になったらしい。
八坂様が霊夢に説明をしているのを、私はどこか他人事のように眺めていた。
「なによそれ、聞いてないわよ」
 うん、私も今聞いた。
「いま聞いたでしょ」
「屁理屈いうな」
「いいじゃない、ここなら私らも出入りできるしさ」
 八坂様はそう言って、神社の隅にある小さな社を指差す。
「それに早苗はまだ友達少ないから、霊夢くらいしか頼める人がいないのよねぇ」
「そ、そんな事今言わなくていいじゃないですか! それにやっぱり迷惑ですよっ」
「いいのかいそんな事言って。ここがダメだと天狗の里に世話になるんだよ?」
「う」
「ヤツら、一日でも酒呑んでるからね。珍しい客人なんか来たら、一週間くらい宴会やってんじゃないかしら」
 硬直した私の顔を覗き込む八坂様。細めた目は、どこか蛇を思わせる。
「あいつら、簡単によそ者を里に入れたりするかし、あいたっ!?」
 横で霊夢が何か言っていたが、洩矢様のローキックで黙らされた。
「どうかしら、早苗が家事を手伝うという条件で」
「早苗は働き者だよー、お買い得だよー」
 ぴょんこぴょんこと跳ねながら、洩矢様まで私の代わりにアピールしている。
「……まあ、困ってるみたいだし、別にいいけど」
「すみません。御世話になります、ほら、八坂様たちもっ、こうなったのは御二人のせいなんですから」
 私は脛をさすっていた霊夢に頭を下げ、下手人たちにも促す。
「あー、うん。早苗をよろしくね、霊夢」
「早苗と仲良くしてやっとくれ。この子、引っ込み思案でさぁ」
「あんたら……とくに神奈子……」
 苦虫を噛んだような霊夢を洩矢様が「まぁまぁ」と宥めている。蹴ったり宥めたりで忙しい方だ。
「棟梁の話だと材木の選定とかで少しかかるみたいだから」
「仮にも神社だしねぇ」
「ちょっと、それってどのくらいの期間なのよ」
「んー連中、やる気はあるみたいだけど、半年はかかるんじゃない?」
「は」
 半年。
 八坂様、建て直しに半年ということは、私はその間、霊夢のところにお世話になるという事では……?
「建物を作るんなら、それでも早いほうと思うべきなんでしょうね……」
 ため息をつく霊夢の顔には「仕方ない」と書いてある気がした。
「今更ダメとも言えないし……んじゃ、暫くの間よろしくね」
「あ、あの、じゃあ、よろしくお願いします……」
「あー、そんなに畏まらないでよ。これから暫く一緒なんだから、そんなんじゃ疲れるわ」
「あ、はい」
「……」
 私の返答に霊夢の口元がへの字になり、それを見ていた八坂様と洩矢様が笑いをこらえている。

 こうして私の博麗神社暮らしが始まった。



■◇●◇■



「ただいま戻りましたー」
 用事を済ませて帰ってくると、昼下がりの博麗神社は珍しく人気が無く、とても静かだった。
 霊夢も留守かと思ったが、裏手に回ると縁側で昼寝をしていた。
 私も縁側に腰掛ける。
 霊夢は板の床の上だというのに寝苦しそうな様子は無かった。
 座布団を枕代わりにして、無防備に眠りこけている。
 すぐ近くに空の湯飲みと小皿あるところをみるに、
「午後の日差しに負けたわけですか」
 若干早いとは言え、確かに春の陽気は眠気を誘う。
 でも、呆れと共に溜息が出た。
 こちらの神社に住むようになって分かった事は、霊夢はとにかくマイペースだということ。
 決して怠け者という訳ではないが、のんびりしすぎている気がする。
 私も修行だ祈祷だと頑張っているつもりはないが、それでももう少ししゃきっとしてもらいたい。
「……私に勝った人なわけですし……」
 こうもだらけている姿を見ていると、こんなのに負けたのかとすら思う。
 一体どこにあんな力があったのか。
 自分とて妖怪にちょっかいを出されても軽くあしらう程度の力はあったし、そもそも八坂様に挑んでくる妖怪は多かったが、自分が戦う事は殆ど無かった。
「平和な顔をして……」
 起こさない程度に頬を突付く。

 あの日。
 境内で暴れていた霊夢を咎め、そのまま戦いになった。
 山の上の神社まで来た時点で相手の実力の程を知る事は出来たのに、私はそれを見誤った。
 排他的な山の妖怪の妨害を越えてまで来たのだから、その実力はかなりのものと見て然るべしだったのだ。
 奇跡、秘術は次々と打ち破られ、まさかと思う頃には神気を纏った札の波に攫われ、石畳の上に転がる事になった。
 大した傷も負わずこちらを見下ろす紅白の巫女と目が合った時、私は確かに思ったのだ。
 化け物か、と。
 私とて、バケモノの住処とも言える妖怪の山に居を構えている身だから、人の事を言えた義理でないと思う。
 でも、信じられないという思いの方が強かった。
 最終的には八坂様の力まで借りたというのに負けた。
 そう、妖怪退治をしていた現人神が敗れたのだ。



 昼寝をする猫のように平和な寝顔を見ていると、次第に眠気が移ってきた。
「……はぁ〜……ふ」
 思いがけず大きな欠伸が出てしまい、私は辺りを見回してしまう。
「確かに、この陽気でここに座ってたら眠くなるわ……」
 喩えるなら、5限目の窓際のよう。
 風の音もなく、目を閉じると霊夢の寝息だけがかすかに聞こえる。
「特に急ぎの用もないし……」
 自分に言い訳をしてから、私は目を閉じてみた。







 霊夢は目を覚ました。
 庭掃除の途中の一休みのつもりだったが、しっかり昼寝をしてしまったらしい。
「こんなにいい天気なんだもの、掃除よりも昼寝の方が有意義よ」
 まだ寝ぼけた頭で言い訳を口にして、それが誰に向けた言い訳なのかと思い返した。
「あら」
 隣で居眠りをしている人物に気付いた。
 縁側に座っている早苗は、うつらうつらと船を漕いでいる。
「あ」
 早苗の頭がふらりと揺れ、霊夢が何をする間も無く寄りかかってきた。
「ちょっと……これどうするのよ」
 咄嗟に受け止めてしまった霊夢は、自分の胸の中ですやすやと寝ている早苗を見下ろし、軽く途方に暮れた。
 脱力した身体は、支えていてもずるずると下りていってしまう。
 手で支えていても疲れるだけだと思った霊夢は、諦め半分で早苗の頭を太ももの上へと移した。
「んもう、こういうときに限って誰も来ないのよね」
 頭の向きを直し、居住まいを直した霊夢は早苗の髪を撫でながら愚痴る。







「ねぇ、そろそろ起きてくれないかしら」
「はいっ!? 起きてますっ!」
 突然かけられた声で私は目を覚ました。
 聞き覚えのない声に、一瞬授業中に寝てしまったのかと慌てて身を起こす。
 しかし、目に映るのは神社の庭先。
「え……、ここ、は?」
「ちょっと大丈夫? 疲れてるんじゃないの?」
「あれ……霊夢」
「おはよう、って言うにはちょっと遅いわね」
 はふ、と欠伸を噛み殺した霊夢は立ち上がると「お茶淹れてくるから」と奥に引っ込んだ。
 昼寝をしていた霊夢につられて、私も眠ってしまったらしい。
 左の頬にはまだ温もりが残っていて、それが霊夢に膝枕されていたからだと気づくと、いきなり頬が熱くなった。
「……寝顔、見られた」
 深い意味は無いのだが、無防備な自分を見られたことが気恥ずかしかった。
「でも、おあいこかしら」
 霊夢の柔らかい寝顔を思い出すと、訳も無く頬が熱くなるのを感じた。

 お茶は相変わらず薄めだった。

「薬?」
「あれだけじゃんじゃん飲んでも平気なようなので、さぞや強力な薬をおもちかと」
「じゃんじゃんってあんた……そんなもん無いわよ?」
 化物だ。正真正銘の化物がいる。
 霊夢の血潮はきっとアルコールで出来ているに違いない。
 博麗神社は酒の神を奉っているに違いない。



 二神に引き摺られるようにして宴会に参加するうちに、私の身体に異変が生じていた。
 朝拝がツライ。
 炊事洗濯がツライ。
 そして昨日も宴会だった。
 眩暈がし、身体が思うように動かない。食欲も涌かず、活力を取り込むことが出来ない。
 瑞々しく輝いていた自慢の髪もハリツヤを失っている気がする。
 胸焼けに呻き、掃除の時など箒にもたれかかる事もある。
 自信と気高さに満ちた守矢の巫女の姿は其処には無かった。
 重くもたれた胃の辺りをさすり、前よりも丸みを帯びた我が身を自覚する。
 肩の出る服を着ているので何となく二の腕を触ってみて、その柔らかさに戦慄した。

 原因は宴会だった。

 天狗も河童もその他の妖怪も、みんな底が抜けたように飲む。
 麓の宴会なら他の人間も居るかと思ったが、こちらでも、誰も彼もがバカみたいに飲む。そして食べる。
 特に霊夢なんかは、バッカスとかその辺の巫女なんじゃなかろうかと思うほど飲んだ。
 私は初めて博麗神社の宴会に呼ばれた時の事を思い出す。
 前に住んでいた所ならピッチャーとして使われるような大きさのジョッキが当たり前に出てくる上に、儀式と称して二つも前に置かれたのだ。
 幻想郷にビールがある事は驚きだったが、太鼓の醸造法を再現しているとかで一部で作られているらしい。
 囃し立てられ、場の雰囲気に飲まれて飲んだが、予想をはるかに上回るアルコールの強さに目を回し、気が付いたら八坂様の膝枕の上だった。
 未成年というバリアに守られていた私にとっては、アルコールとは間違ってもリットル単位の摂取を強要されるような代物ではない。
 飲むことを避けるために、料理を口にすることが増え、それが私の身体に正しく蓄えられていたのだ。



「まさかこの歳で肝臓の心配をすることになるとは思いませんでした……」
「慣れよ慣れ。そのうち気にならなくなるわ」
「慣れとかそういう問題でも……」
 同年代の女の子にこんな事で気を遣われるのも勿論初めてだ。
「そうねぇ、お酒飲む前に卵の白身を飲んでおくといいわね、次の日が楽よ」
 給料日のサラリーマンのようなアドバイスをされても困る。
「呑めないとつらいわよー、特に天狗とか鬼は呆れるくらいに呑むから」
「ええ……思い知りました」
 気楽に笑う霊夢とは裏腹に、私の気持ちは重くなっていく。
 宴会で不思議でならないのは、どうしてあんなに大量の水分を摂取できるのかということ。
 お腹とか、たぽんたぽんにならないのだろうかとか、そんことを考えてしまう。
「ああでも、薬が欲しいなら腕利きの医者を知ってるわ」
「お医者さん、ですか?」
「そ、宴会で顔を見てるだろうから、向こうはあんたの事を知ってるはずよ」
 せっかくの霊夢の提案だったが、あまり魅力を感じなかった。
 私にとって医者とは、清潔な白い診察室と近代科学の粋をそれなりに集めた医療機関で、失礼ながらこんな特級の田舎にそんな設備が望めないのも承知している。
 だから、健康には気をつけようと思っていたし、実際、できる範囲の事はしていたのだ。
 そこまで考えて、はたと思い直す。
 しかし、魔法や医術など、近代科学とは別の技術もあるかもしれない。
「そうですね。一度行っておきたいです」
 これから先、無病息災というわけにもいかないだろうし、お医者さんが相手なら相談できることもある。
「竹林の奥なんだけど、案内してあげようか?」
「いえ、ご心配なく」
 す、と手で遮る。
 相談したいことは肝臓のことだけじゃない。
 太ったとかその辺はの事は出来れば霊夢にも知られたくない。そう思うのは乙女心として正常だろう。
 私は少し硬い表情のまま微笑む。
「いや、あそこの竹林って普通に進むと迷うんだってば」
「でも、霊夢には仕事があるでしょう」
 少しは巫女の仕事をしとけ、と目でけん制する。お願いだから一人で行かせてほしい。
「まあいいわ、じゃ、ちょっと待ってて」
 霊夢はなにやら新聞を取り出すと、余白の部分に何か書いて寄越した。
「里は知ってるでしょ? そこにいる上白沢っていうのに訊けば永遠亭……あ、医者の事ね、教えてもらえるわ」
「いきなり行っても大丈夫でしょうか」
「大丈夫よ、別に争うわけでもないし。早苗は人間だから追い払われる事もないわ。もし駄目そうなら、私の名前を出せばいい」
「危ないんですか? その上白沢さんって」
「頭が固いのよ。物理的にも」
「はあ」
 どういうことだろう。まさか頭突きをしてくるとか、そんな野蛮人は居ないだろうと思うし。
 私の疑念が読み取れたのか、霊夢が苦笑しながら続ける。
「堅物でね。里に妖怪が近付くのを嫌うのよ」
「私は」
「早苗は人間だから平気よ」
 私に先んじて、霊夢が人間と口にする。
 黒い瞳に見つめられ、思わず口を噤んでしまった。



◇●◇



 里に行き上白沢さんに事情を話すと、あっさりとお医者さん(永遠亭というらしい)の場所を教えてくれた。
 上白沢さんは私が説明するまでもなく事情を知っていて、それは自身の能力によるものらしい。

「私が普通の人間と違っていても、問題はないのですか?」
「確かに、君は山の神社の巫女かもしれないが、それ以前に人間だろう」
「公平なのですね。里の守護者は」
「む、その物言いは霊夢の入れ知恵だな」
 眉根を寄せる上白沢さんは、仕方なさそうに笑った。

 竹林を進んで暫く。

 上白沢さんの話だと、ここの竹林は筍が採れるそうだ。
 山もそうだけど自然に生えている植物から収穫出来るなんて、あちらにいた時では考えられない事だ。
 もう少しすれば筍のシーズンだそうだから、今度また来てみよう。
 そんな事を考えながら歩いていると声をかけられた。
「そこのお嬢さん、もしかして道に迷ってたりするのかしら?」
 声の主は兎だった。
 ピンクのワンピースを着た、子供くらいの背丈の子。
 しかし、その黒髪からは白い長い耳が生えている。
 これ以上なく判りやすいウサ耳少女だった。
「え、バニーガール?」
「何のこと?」
「いえ、すみません。永遠亭の方ですか?」
「ありゃ、もしかしてお客さんなの?」
 ひょこひょこと耳を動かす仕草が可愛いかった。

 そのウサ耳少女は、因幡てゐと名乗った。
 永遠亭に住む兎のひとりらしい。
「あんた……幸薄そうだね」
 その子は私の顔を見て失礼な事を言ってきた。
 内心ではムっとしたが、確かにそうだった。
「最近よく言われるようになりました……」
「うへぇ」
「なにか?」
「そんな口調で話す人間、ココ暫くお目にかかってなかったからさ」
 じんましんが出そうだよ、てゐさんがと笑う。

「れいせーん、患者いっちょうお待ち〜」
 門をくぐると、そこは見事な日本家屋だった。
「広い……」
「古いけど、それだけが取り柄だからねぇ」
 かかか、と闊達に笑うてゐさん。
 ここまで来る間にもよく笑っていた。なんでもそういう健康法なんだそうだ。
「あ、いらっしゃいませ」
 白衣姿に眼鏡の……こちらもウサ耳少女。
 宴会で見かけたバニーガールその2だ。
 すごい、ストレートロングが腰よりも下まである。手入れが大変そうだ。
「お邪魔します。ええと、お医者様はこちらで?」
「ええ、大丈夫ですよ」
 以前軽く説明された幻想郷の基本法則によれば、外の世界で失われたモノがこちらに流れ着くらしい。
 ウサギ耳のギャルというモノは引越し前でも見かけたから、まだ幻想入りはしていないはず。
「つまり……これは別物なのかしら」
「ん?」
「あ、いえ」
 不遠慮な視線で見ていたらしい。
 その事に気付き、私は赤面する。

 病院というよりは、昔のお屋敷のような建物はやたらと広く、そこかしこにウサ耳少女がいた。
 山とは違う賑やかさがあり、ここの雰囲気は好きになれそうだった。

「で、どうされました?」
 診察室に通された。
 ここは見慣れた感じの部屋だ、薬品棚と思われる戸棚や簡易の寝台があり、私の知っている病院の診察室に近い。
「あの……」
 目の前の兎耳の娘が医者なのだろうか。
「ああ。ええ、そうですね、師匠は奥です。私は問診だけですよ」
「え、あ、はい」
 あっさりと不審を見抜かれ動揺する。
 気安い雰囲気に油断していたが、やはり一筋縄では行かない場所なのだと再確認。
「ええと……その、酔い覚ましの薬などがありましたら……」
 顔を紅に染め、ぼそぼそと告げる。
「では、ちょっと手を失礼」
 手の平を重ね合わせ目を閉じる。これは何かの儀式だったりするのだろうか。
 手を合わせたままで数秒が経過し、兎さんの片方の眉があがる。
「ああ、そうですねぇ。消化器系がちょっとくたびれてます、この調子だと確かに肝臓にもよくないかも」
 直感でわかった、今のは聴診器の代わりなんだ。
「じゃあもう少し検査するんで、上を脱いでそこに横になってもらえますか?」
 促されるままに袖を外し、上着を脱ぐ。
 女の子同士とはいえ、私だけ諸肌脱ぎはちょっと恥ずかしい。ましてや最近は余分な肉がつき始めているし……
 寝台に仰向けになると、
「はい、ちょっと失礼しますねー」
 いきなり触れてきた。
「ひゃ」
 人差し指と中指の指先が鳩尾の辺りをなぞり、ひんやりとした感触に声が出てしまう。
 強く押され、内臓をさぐられているいう意識になる。
 お腹を撫でられ、スカートのウエストラインを腰下あたりまで下げられた。
 下腹部を指が這うと、くすぐったさに妙な声が出てしまう。
「んー、ちょっと荒れてきてますねー。あと、お通じもちょっと滞ってる感じ」
「う」
 うう、この兎さんの手はソナーかスキャナの効果があるらしい。
 私は体の中を見透かされているわけだ。
 確かに便秘気味だけど。
 お医者さんに隠しても良くないことだけど!

「はい結構です。じゃあ、服を着て少々お待ちくださいね」
 結局、胴体をくまなく撫で回されて、ようやく検査は終わった。
 ウサギさんはさらさらと何事かをメモすると、奥の部屋へと消えていった。
「ふう、」
 見回す。
 古い、映像の中でしか見たことの無い光景。
 守矢の神社も古い建物だが、ここの雰囲気はまた違う感じがする。
 まるで時間から切り離されたかのように、古い物がそのまま残っている。
 ウサギ達の賑やかさもここまでは届かないらしく、静寂のみがある。
 神社もそうだけど、幻想郷は自然の音が自然に聞こえる場所が多いと思った。

 血液検査はないんだろうか、とか考えていたらお医者さんが入ってきた。
 この人が八意先生だろうか。
「お待たせしました。えーと、消化器系が弱ってる、と」
 ぱらぱらとカルテらしきものを捲りながら椅子に座る。
 先程のウサ耳の子も髪が長かったけど、この人はさらに長い。編んであるけど、解いたら足まで行くんじゃないかしら。
「宴会続きで胃腸が参っている、といったところかしら?」
「はい、概ねその通りです」
「まあ、貴方くらいの歳だと、精神的なものもあるでしょうしね」
 そういう先生はお幾つなんでしょうか。
 見る限り、二十かそこらにしか見えない。院生と言われても誰も疑わないだろう。
 もっとも腕は確からしいので、見た目と実年齢が異なっていても不思議ではない。
 ここはそういう場所だ。
「で、お薬なんだけどね」
「はい」
「とりあえず薬は出しておきます。今の弱った胃腸に効く薬ね。ただ、これは回復を助ける薬だから、無理をしたら意味がないの。言ってる意味は分かるわね?」
「はい。労わります」
 極力ですが、と内心で付け加える。
「よろしい。近所付き合いも大事だけど、それで倒れるなんていうのは論外よ。あなたの場合、宴会の頻度とか大変だと思うけど、しっかり自己管理してちょうだい」
 設備や立地に問題はあるけど、八意さんは普通にお医者さんのようだ。
 説明の内容や部屋の雰囲気から、私は幻想郷にいることを忘れそうになった。

「ありがとうございます、あの、それでお代はいかほどでしょうか」
 八意先生は私の言葉を聞くと、少しだけ考え、そして柔らかく笑った。
「お代は……そうね、今の薬の材料になる薬草が無くなりそうなの。ちょっとまとめて欲しいから、貴方に採ってきてもらおうかしら」
「はい、それでよろしいのでしたら」
「あら、じゃあよろしくお願いしちゃおうかしら」
 八意さんは手早くメモを書くと、私に手渡してくれた。
「はい。植物に詳しい妖怪の所に行ってもらう事になるけど、ちょっと気難しいから注意してね」
「は、はあ」
 妖怪? と少し首を傾げる私に、
「大丈夫よ、少し弾幕で遊んであげれば満足するだろうから。あまり出歩かないから退屈してるのよ」
 と付け加えた。
「判りました。それでは行って来ます」
 手元のメモを見る。簡易の地図によると、山とは反対方向らしい。
「太陽の丘、ですか?」
「ええ。この季節でも向日葵の咲き乱れる、素敵なところよ」



◇●◇



 八意先生から貰ったメモを片手に南へ向かう事数十分。
「う……わぁ……!!」
 丘の向こう側の少し低くなっている一帯が、山吹色に染まっていた。
 季節外れの向日葵が咲き乱れている。
 花が大きく茎が太い、夏に咲く花の力強さを感じる。
「すごい……でも、なんでこんなに?」
 小春日和の日差しは暖かいけど、やっぱり肌寒い。
「こんな季節に咲いているのは、やっぱり……」
「わっ!」
「ひゃ!?」
 いきなり後ろから声を掛けられて慌てて振り向くと、そこには一人の女の子が浮かんでいた。
 少しクセのある若草色の髪をショートのボブにしていて、それがすごく似合っている。
 ギンガムのベストとスカート。高そうな、実用性よりもファッションの一部として選んだような日傘。
 ……うわ、美人……
 街ですれ違えば同姓であっても振り向いてしまうだろう、整った顔、そしてどこか猫を思わせる瞳。
 でも人間では、なさそう。
 幻想郷の住人は割と普通に空を飛んだりするらしいけど、目の前の相手からは肌で感じられるほどの妖気を感じる。
「こんな所に何か用かしら?」
 顔は笑っているけど、どうしてか笑っている感じがしない。
 棘のある花、そんな印象。
「え、ええと、ここに植物に詳しい妖怪がいると訊いてきたのですが」
「あらそうでしたの、私がその妖怪ですわ。もっとも専門は花ですけどね」
 そういってにっこりと微笑む。
「そうでしたか、私は東風谷早苗と申します、はじめまして」
 私が挨拶をするとと、妖怪の少女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたが、くつくつと笑い始めた。
「くくくっ、うふふ、あ、ごめんなさいね。まさか初対面とはいえ妖怪相手に正直に名乗るとは思わなかったから、あはははっ」
 可愛らしく笑っていた少女だったが、すーはーと深呼吸したあと私に向き直る。
「そうね、名乗られた以上は応えないと失礼になるわね。私は幽香、風見幽香と申します、風の巫女よ」
「え、私のことを?」
 優雅に一礼する幽香と名乗った花の妖怪は、どういうわけか私の事を知っているみたいだった。
「ええ、存じ上げておりますわ。何でも最近こちらに引っ越してこられたとか」
 山暮らしは何かと大変でしょう? と、こちらが見とれてしまうような笑みを浮かべる。
 妖怪とは人を惑わす者。彼女を見ているとそれがとてもよく分かる。
「それで? ここにはどういった用事で?」
「あ、はい。実は風見さんに少々お願いがありまして」
「か、風見さんって……、まあいいわ、何か御用?」
 私は事情を話し、薬草を分けてもらえないかお願いしてみた。
 相手が妖怪なら、力で押し切るしかないかと思っていたが、風見さんは話の分かりそうな人、いや妖怪だったからだ。

「ふぅん……薬草ねぇ」
 私の説明を聞いた風見さんは、口元に指を当てて考える素振りをする。
 やはり何か代償を要求されるのだろうか。私がそんな事を考えていると、風見さんは、ついと顔を上げた。
「そうね、分けてあげてもいいですわよ」
「本当ですか、ありがとうございますっ」
 よかった、変に荒事にならなくて。
 妖怪と会話が成立するという点では、幻想郷は本当に素晴らしい所だと思う。
「でも、そうねぇ」
 何か面白いことを思いついたのか、楽しそうに目を細めて風見さんは言葉を続ける。
「タダっていうのもアレですから、少し私と遊んでもらえるかしら?」
 風見さんはそう言うと、どこからともなくカードを取り出した。
 繊細な指に挟まれたカードには、美しい花の絵が書き込まれている。
 とても強い力を感じる。
「やっぱり、そうなりますか……」
「それは勿論。ここでは我を通そうと思ったらある程度の力が必要になるの、まだ慣れてないのかもしれないけど、早く覚えた方が宜しいですわよ」
「は、はい」
「ああもう……いつもの連中と勝手が違うから、調子が狂うわぁ」
 私の返事に風見さんは額に手を当て天を仰いだ。
 芝居がかった仕草だけどいちいち決まっていて絵になる。美人は得だと思う。ずるい。
「まあいいわ。じゃあ、始めましょうか」
 風見さんは傘を回しながらそう言った。薄く日陰になった笑顔に剣呑な物な気配が混じったように感じた。



◇●◇



 永琳が書類を纏めていると、鈴仙が入ってきた。
「師匠、さっきの人の診断結果をまとめました」
「ご苦労様、そこに置いておいてもらえるかしら」
「あれ? 患者さんはどうしたんですか?」
 薬を処方するにしても、少し時間がかかるはず。
 立地の都合で何度も足を運ぶのが面倒な永遠亭は、薬を作っている間は患者を待たせるのが常であった。
「ああ、東風谷さん? 代金のかわりに薬草を採ってきてもらう事にしたのよ」
「はあ」
 たしかに消化器系に効果のある薬草はいつも在庫が少ない。
 酒飲みが多いのでウコンなどの調達は面倒だが欠かせないのだ。
 自分が行くはずだった仕事がなくなったので、鈴仙は興味本位で尋ねてみた。
「メディのところ……じゃないですよね。紅魔館の花壇ですか?」
 薬を扱うのは自分たちだが、近所付き合いの中には薬毒に通じている者もいる。その辺をあたれば薬草が手に入る事もあるのだ。
 しかし永琳の答えは鈴仙の予想とは違った。
「違うわ、植物の専門家のところよ」
「ええーー!!?」
 サラリと出てきた内容に鈴仙は驚き、手にしていた書類を落としてしまった。
「そんなに驚く事じゃないでしょう」
「だって風見幽香の所ですよね!? 下手すれば帰って来ませんよ!?」
 狭い幻想郷は妖怪の縄張りの方が広いが、師はその中でも屈指の危険地帯を紹介したのだという。驚かされる事には慣れていたが、これは度を越していると思った。
「大丈夫よ、東風谷さんも結構な力の持ち主だし、保険もかかってるみたいだったし」
「保険?」
 意味深な笑みを浮かべる永琳に、鈴仙は?マークを浮かべる。
「ほんと、回りくどいというか、何と言うか……」
 呆れ混じりにくすくすと笑う永琳は、窓の外へと視線を向けた。
 はるか彼方の向日葵の丘を見通すかのように。



◇●◇



「んー、ちょっと硬さがあるけど、結構楽しかったわ貴女の弾幕。よかったらまた遊んでくれるかしら?」
 笑顔でそれだけ言うと、風見幽香は立ち去った。

 負けた。
 むき出しの地面に仰向けに転がったまま、私は空を見上げる。
 被弾した身体は熱をもっていて、土の冷たはむしろ心地よかった。
「……」
 風見さんはとんでもなく強かった。
 交互にカードを出し合いながらの戦闘だったが、風見さんは殆ど被弾しなかった。
 奇跡も、秘術も、その尽くが躱されるか、正面から潰された。
 手を抜いたつもりは無かった。
 思うように行かない戦闘に焦りを感じ、そんな状態に風見さんの攻撃が来た。
 渦を巻き、龍のように向かってくる花びらの波や、まるで大玉の花火のように破裂する弾幕。
 どの攻撃も息を飲むほど美しく、優雅で、そして圧倒的だった。
 負けた。
 だけど私は生きている。
 妖怪に、負けたというのに。
 風見さんの去り際の笑顔を思い出す。
 まるで、明日また会う友達に向けるような、そんな気安い笑顔だった。
「これが……弾幕遊び……」
 目尻に感じる冷たさは、傷の痛みのせいだと思う事にした。



◇●◇



 山と積まれていたウコンを抱え永遠亭に行ったあと、私は博麗神社に戻ってきた。

「あ、お帰りなさ……って、どうしたのそれ!?」
 風見さんとの戦いで、巫女装束はぼろぼろになっていて、それを見た霊夢が驚いた。
「それがですね……」

 破れた服を着替え、霊夢の淹れてくれたお茶を飲みつつ事情を説明する。
 私が永遠亭で薬草を採りに行く事を承諾したところまで説明すると、霊夢が疲れたように項垂れた。
「あー、どこに行ったのか分かった気がするわ……」
「霊夢は風見さんの事を?」
「うん、時々ここにも来るしね。それにしてもあの宇宙人め、よりにもよって幽香の所だなんて」
「でも風見さん、いい人でしたよ。妖怪だけど」
「いい人って……あんたはアレをよく知らないからそんな事言えるのよ、ここいらの中じゃ指折りのワルよ」
 呆れた、と霊夢はお茶をすする。
「あんな強い妖怪もいるんですね……」
「そうねぇ、アレはあんまり出歩かないからまだマシなんだけどね」
 風見さんはあの向日葵畑のあたりで暮らしているのだという。
 まれに里にも来るそうだが、力を持たない普通の人間は相手にしないのだそうだ。
「でも、怪我とかないの? その様子からすると平気みたいだけど」
「あ、怪我はお医者さんのところで手当てしてもらって……あれ?」
「どしたの?」
「い、いえ、もう傷がなくなってて……」
 体中、打ち身や軽い火傷だらけだったのに、もう痛みがなくなっていた。
 正直、これは奇跡のレベルだ。
 私が驚きに固まっていると、
「あー、あそこの薬は効き目がすごいから。死んでなければ治すって豪語するだけあるわ」
「あの人って何者なんですか? 薬の妖怪とか?」
「な、なによその妖怪っ、あはははっ」
 私の質問が変だったのか、霊夢は笑い転げた。
 人間離れした能力だから妖怪かといったのに、そんなに笑うなんて。
「だって、人間とは思えないから。ひょっとしたらすごく長く生きてる妖怪なのかと思ってっ」
「あー、そういう意味なら大体あってるわね、永琳に歳を訊いても答えてくれないけど。輝夜もそうだけど、おそろしく長生きしてるわ」
 事も無げに言う。

 その日の風呂で全身を確かめると、霊夢の言葉に偽りはなく、私の怪我は跡形もなく完治していた。
 私はその事に驚き、幻想郷の底の見えなさに微かに震えた。



■◇●◇■



「守矢の神社の修復にはまだかかるらしい、か」

 天狗も河童もよくしてくれるらしく、私が思っていたよりも早く建て直しが終りそうだった。
 相変わらず八坂様は天狗達と遊んでおり、洩矢様は寝てばかりだった。
 平和といえばそれまでだけど、こっちはそのおかげで慣れない生活をしているのに。
 だめだ、最近愚痴っぽくなってきている。
 自分でもそれを分かっているので、溜息が出た。
「ダメだなぁ……っと?」
 急に辺りが暗くなった。
 夜になったわけではなく、日が翳ったわけでもない。
 周囲の空気に墨でも流したかのように、暗く、黒く、見通せなくなっていく。
「これは……」
 妖怪の気配が、する。

「ねえ」

 そう思ったと同時に声を掛けられた。
 いや、私が気が付いた事に気付いたから声を掛けたのか。
 どこか無邪気さを感じさせる妖気が、この闇の中に潜んでいる。
 その声が問う。
「あなたは人間?」
 質問に私は反射的に答えそうになり、そこで思い留まった。
 妖怪退治をしていた現人神はもういらない。
 人間でいいんだ。この私は。
「私は……、ええ、人間よ。人間の東風谷 早苗」
 それに、この妖怪は質問をしてきた。
 風見さんの時の様に、話し合い出でやり過ごせるだろうか。
 それとも……
「はじめまして人間さん。あなたは食べてもいい人間?」
 やはり、力は必要らしい。
 私がどうあろうと、妖怪は妖怪であり、お腹が減れば人を襲う。
 質問自体は恐ろしいけど、私にとってはむしろ馴染みのある反応だった。
 私は奇妙な懐かしさを感じつつ、薙鎌を抜き、姿の見えない相手に答える。
「食べられるかもしれません。でも、美味しいかどうかは保障しませんよ」
 自分でもどうしてこんな事を言ったのか分からない。
 でも、自分で人間と名乗ったとき、確かに心の中で何かが外れた気がした。
 戦いは嫌いなはずなのに、別の感情で頬が紅潮しているのが分かる。
 奥歯を噛むと、自然に口の端が上がった。
「じゃあ、試してみるねー」
 妖気の中に血の気配が混じり、妖怪が私を敵として認めたらしいことが分かった。
 闇が濃くなる。
 さあ、人間対妖怪の戦いの始まりだ。



 黒い濃霧のようなものに包まれたまま、戦いは始まった。
 僅かに日を透かす闇の中、相手の妖怪の姿が微かに見えている。
 金の髪に赤いリボン、白い長袖が見える。
 ……子供……?
 背丈は小さく感じるけど、相手は妖怪。身体の大きさはあまり関係ない。
 そして何より、闇の中でも炯炯と輝く真紅の瞳は、目で見るよりもはっきりとその敵意を感じる。
 怨念めいたものは感じないけど、人間とは相容れない類のものだ。
「そーれっ」
 気合が入っているのかよく分からない掛け声とともに、蛍光色に輝く妖気の塊が飛んできた。
 私はそれを素直に危険であると認め、警戒のレベルを上げていく。
「確かに視認はし辛いけど……風見さんの弾幕に比べれば大した事ないわ」
 すぐ近くを妖弾が通る気配があった、けど、当たる気はしない。
「これなら、いける」
 私は確信を込めて霊弾を放った。

 闇の中に巫女が舞う。
 白の袖を翻し。
 風を薙ぎ。
 力を揮う。

 手にした薙鎌を振る。
 神気を含んだ風が刃となり闇を切り裂く。
 放たれる弾丸と激突し、闇の中に霊気の火花が散る。
 弾幕の弾ける音が連続し、まるで夏の通り雨の中にいるような気分になる。
 妖弾が掠る。熱い。
 弾が行き過ぎてもその熱が残っているかのように、私の身体の中が熱くなってくる。
 闇に潜む相手は捉えられない。
 でも、意識を凝らせば相手は視えた。
 身体と意識の両方が熱を持ち、それに呼応するように闇が鳴動する。
 差し伸べる弾幕は届かず、相手の踏み込むような攻撃を弧を描いて避ける。
 届かない。届かせない。
 撃つ。
 避ける。
 飛ぶ。
 追う。
 回る。
 それは戦いと呼ぶよりは、どこか舞踏のように思えた。
 見えないが故に相手の事を強く意識し、相手の考えている事を読もうとする。
 私は戦いの最中、相手の顔がみたいな、と思った。

 ルーミアは見かけない人間がいたのでちょっと齧ってみたくなり、声をかけただけだった。
 空を飛んでいたので神社の紅白かと思ったが、よく見ると色も形も違う。
 しかしそんな事はあまり関係ない。勝てば齧れる。それだけだった。
「今日はご馳走なのか〜」
 人間は闇を見通す力を持っていない。
 だから、先手を打って闇で包んだのに、何故だか攻撃が当たらない。
 さっきから、ひらりひらりと避けられてばかりだった。
「うわぁっ!」
 おかしいな、と思ったところにレーザーが飛んできた。相手のスペルカードらしい。
 ルーミアは咄嗟に避けたが、太い針のような光線はスカートに穴を開けていった。
 こちらが見えていないはずなのに、相手の攻撃はまるでルーミアの姿が見えているかのように正確だった。
 まぐれかと思ったが、続けざまに飛んできた星の形に並んだ弾が真っ直ぐ自分に向かってくるのを見て、その考えを捨てた。
 慌てて妖気を集中して障壁を張る。
 目の前でバチバチという音が弾け、星型の弾幕が過ぎ去った。
「いたたた……って、あぁっ!?」
 顔を上げると既に弾に囲まれていた。当たらなかった星型がほどけて周囲に散らばっていたのだ。
 続けざまに飛んできた霊弾が直撃する。
 身体のあちこちに痛みが走り、着弾の衝撃に吹き飛ばされた。
 霊弾一発あたりの威力は大きくなかったが、星型が崩れて拡散する弾幕は非常に避けにくく、ルーミアは立て続けに被弾する。
「このっ!」
 ルーミアは懸命に体勢を立て直すと、両手を鳥の翼のように広げ、反撃の妖弾を放つ。
 鞭のように唸る妖弾を相手が躱すのを見送り、そしてルーミアは力を叫ぶ。
「月の光を刃と変えて 我打ち下ろすは 断闇の双剣! 月符 ムーンライトレイ!!」
 叫声に闇が震え、力の波動が駆け巡る。
 力を解放する感触に従って、ルーミアの口からは歌のような叫びが出た。
 広げたままのルーミアの両腕から、月光の白さを持った光線が放たれた。

「来るッ!」
 相手の妖気が高まると同時、二条の銀光が現れる。
 闇の中に輝く光線は、真冬に見上げる満月のように美しい光だった。
 光の基点に妖怪の姿が見える。
 両腕を大きく広げ、何事かを訴えるように開かれた口。
 その姿は、まるで磔刑に処された聖者を思わせる。
 光が布を勢いよく裂くような音と共に、左右から挟みこむように来る。
 光線の他にも弾が飛んできて、私の服や髪を掠めていく。
「……!」
 光源が生まれた事で、闇はその色をいっそう濃くしている。
「たとえ視界が閉ざされようと……」
 ……私は風を読む……!
 意識はクリアに。
 肉眼ではなく、感覚の目と風の流れで周囲を把握する事を強く意識する。
 閉じてくる光線のプレッシャーを無視して、私は正面の弾幕に飛び込んだ。

 無邪気な敵意が風の唸りと共に向かってくる。
 右、左、身体を捻って上へ、もぐり込むように下。
 ……前へ……!
 それを強く意識し、妖気の塊へと突き進む。
 破壊の雨の中、ダンスのパートナーを目掛けてまっしぐらに。
「……はっ」
 感情が昂ぶり、声が漏れた。
 心が疾る。
 思うように動ける。
 風が読める。
 久しく忘れていた、空の中にいる感覚。
 ああ、ここは。
 幻想郷は、こんなにも風が――濃い。
 抜けた。
 弾幕を突破すると真夏の風を通り抜けたような爽快感があることを知った。
「ええっ!?」
 相手の驚く声が聞こえる。
 見通せない闇の中、妖怪の位置がハッキリ分かる。感じられる。
 左右の光線はすぐ近くまで迫っていたが、
 ……閉じるより先に討つ!
 突破の速度をそのままに意気を込め、渾身の薙鎌を一直線に振り抜く。
「やあっ!」
 手応え……あった。
 速度と霊気を纏った一撃は一瞬だけ抵抗があり、その直後に破裂音があった。
 妖気の塊が不規則に弱まり、ふらふらと落ちていくのが判る。
 私は手に残る衝撃と、昂ぶる感情に押されるままに叫んだ。
「遍く満ちたる風の気よ! 刃となって我が敵を討て!」
 言霊に呼び覚まされ、大気が鳴動する。
 神の大風を呼ぶ為の準備は、それだけで弾幕になる。
 闇の中で弾幕が妖怪を追い詰めていくのが分かる。
 これで、とどめ……っ!
「神の!」

 その時、風が読めなくなった。

「!?」
 相手が見えなくなった。
 突然変わった風の流れは、まるで意思があるかのようにうねり、私の読めない言葉で話し始める。
 二重に目隠しをされた私は、思わず儀式を中断してしまった。
 失策に気付いて声をあげそうになったその時、妖怪の声が聞こえる。
「なんだかわかんないけどチャーンス!」
 本能的に危機を感じ、身を竦ませる。
 直後。
 すぐ近くで、ばちんという強い音がして、目の前が明るくなった。
「はい、そこまで」
 声に振り向くと、闇は晴れ、不機嫌な顔をした霊夢がいた。
「あ、あれ? え?」
「危なかったわね、性悪天狗のおかげで大怪我するところだったわよ」
 霊夢が玉串で指し示す方向には、鴉天狗の射命丸が浮かんでいた。
「あー、やははは、ばれちゃいましたか」
「2対1は卑怯なんじゃないかしら?」
 ギロリと音のしそうな視線で睨むと、射命丸は逃げるように飛んでいった。
 事情を飲み込めない私が目を白黒させている間にも、霊夢は近くの木に引っかかっていた女の子を引っ張り出している。
「その娘は……?」
「あんた、相手の姿も知らないで戦ってたの?」
 また呆れられた。
 霊夢がぶら下げている子を見る。
 たしかに金髪に黒い服。白のブラウスにはなんとなく見覚えがあった。
 でも、あの妖気の持ち主がこんな女の子だなんて。
 闇の中に輝く瞳を思い出し、人間と妖怪の差を再認する。
「ん、ううー」
 妖怪の子が目を覚ました。
 状況が分からないのか少し目をぱちくちとさせていたが、ふわりと霊夢の手から離れる。
 私の方を恨めしそうに見つめている。
「うー、また食べられない人間がふえたー」
 人差し指を唇にあてて、上目遣いでこちらを見る仕草は可愛かったけど、言ってる事は物騒だ。
「柿でも甘いのと渋いのがあるでしょ、この人間は渋いのよ」
「そーなのかー……」
 霊夢の説明に納得したのかよくわからない返答をし、闇の妖怪は飛び去っていった。

 神社に向かう途中、私は思っていたことを口にした。

「さっきの事?」
「はい」
「あー。意地の悪い鴉がいたでしょ? あれがルーミアに助太刀したのよ」
 ルーミア、とはあの闇妖怪のことだろうか。
「大方、あんたが負けるところでも記事にしようって腹だったんでしょう」
 と、霊夢は詰まらなそうに言う。
 射命丸は割りと顔見知りの天狗だったので、その言葉は少しショックだった。
「なんでそんな事を?」
「珍しいから、とかそんな程度よ。アレの書く新聞は話半分で読んでて丁度いいし」
「そうですか……」
「それにしても、あんたってルーミアは初めてだったっけ?」
「え、あ、はい。危険なんですか? あの妖怪」
「んー、危険じゃないって言うと嘘になるけど、あんまり知恵の働く奴じゃないから」
「退治は……しないんですか」
「そうスパっと割り切れればいいんだけどね」
 煮え切らない表情で笑う霊夢。

 まただ。
 風見さんと戦い、負けても生きている自分。
 妖怪にとどめを刺さない霊夢。
 かつての私の常識からは考えられない話だ。
 怪異は人に牙を剥いた時点で滅ぼさなければならない存在で、そうでなければ自分の命が失われるのだ。
 そこには命のやり取りしかなく、決着はすべてどちらかの死であった。
 私はその全てに勝利し、数多の妖怪を滅ぼしてきた。
 そうして生きてきた。
 それが当たり前だった。
 幻想郷に越してきてすぐに、自らを賢者を名乗る妖怪から受けた説明。
 姿を見せず、チェシャ猫のように笑みを含んだ言葉で告げたのは、ここでは妖怪と人間の間に一定のルールがあると言うこと。
 弾幕。
 妖怪同士、或いは力を持った人間と妖怪の間で交わされる、ルールに守られた戦い。
 勝っても滅ぼさず。辱めず。ただ決着があるだけの戦い。
 それ以上でもそれ以下でもない、スポーツのような闘争。
 それは、戦う力を持たぬ人々の為にこの身を剣と変え、夜の闇を払ってきた私にとってはままごとに見えた。
 命のやり取りを否定するくせに、戦いを肯定する。
 それは、奇妙な戒め。

「早苗」
 霊夢に声をかけられ、私は思考の海から引き上げられた。
 顔を向けると、夕日に染まった空を背に、霊夢がうっすら微笑んでいる。
「どうだった?」
「は?」
 唐突な質問の意図が読めなくて、私は間抜けな返答をしてしまった。
「だから、弾幕ごっこよ。ルーミアとやったでしょ」
「あ……」
 そう。
 さっきの戦い。
 現人神としてではなく、ただの人間を自覚して戦った一戦。
 あの時、たしかに私の心は自由だったと思う。
 何かを守るためではなく、誰かのためではなく。
 ただ自分のみを守るためだけの戦い。
 胸に手を当てて、思い出してみる。
 頭の中が真っ白になり、体と心が熱くなったのを覚えている。
 生死をかけた死闘では得られなかった感覚。
 飛んでくる弾幕は確かに危険だったが、それと等しく美しさも備えていた。
 風見さんの弾幕に感動したのも、それが「殺し合いの手段」ではなく魅せることを意識した「技」だったからだ。
 技巧を凝らした弾道は相手を排斥する事よりも、むしろ挑ませる事を主眼において編まれており、見栄えにも気を使ったそれは、まるでレース模様かステンドグラスのような美しさだった。
 それは勇壮かつ壮麗、猛々しさと流麗さが両立する奇跡の芸術。
 戦いの最中、私はあの時確かに思ったのだ。
 この弾幕は打ち砕くのではなく、突破することでこそ勝ったことになるのだ、と。
 だからこそ、ルーミアの放ったムーンライトレイという攻撃に、真っ向から挑んだのだ。
「それは、私が戦いを楽しんでいたという事……?」
「そんなもんよ、それでいいの。それが弾幕、それが幻想郷。」
 思わず口にした自問に、霊夢が答えた。
「私は、人間でいいのでしょうか」
 縋るように問う。
「何言ってんの、早苗は早苗でしょうに」
 時を止める人間や、神にすら喧嘩をふっかける人間が居るこの幻想郷では、風祝の少女程度では特別足りえないのだ。
「はい」
 それがどうしてか、とても嬉しく思えた。
 私が頷くと、霊夢は微笑む。
「そう、よかっ……た」
 霊夢の言葉は、そこで途切れた。
「霊夢?」
 あまりに自然に高度を下げたので、私は霊夢が何か見つけたのかと思った。
 しかし見送る背中、その紅い服に裂け目があり、周りが黒っぽく変色している事に気付いて――
「霊夢ッ!?」
 着陸する気球のような穏やかさで降りていく霊夢を、私は全速力で追いかけた。
 回りこんで背面飛行になり、ゆっくり降りてくる霊夢を自分の上に乗せるようにして抱き止める。
「しっかりしてください!」
 霊夢は自分でも飛んでいるらしく、あまり重さを感じなかった。
「はは、気が抜けたら力まで抜けちゃったみたいね」
 力なく笑う霊夢は、悪戯が見つかった子供のような顔でそんな事を言う。
「なんで黙ってたんですかっ!」
 間違いなく、私とルーミアの戦いに割って入った時に受けた傷だろう。
 そんなの、私が受けるはずの傷じゃないか。
「あー、ごめん、大きな声は勘弁して、傷に響くわぁ……」
 それだけ言うと霊夢は瞳を閉じ、次の瞬間、抱えていた体が一気に重くなった。
「うわっ!?」
 一瞬、悪い予感がしたが耳元に霊夢の吐息を感じる。最悪の想像をした自分を恥じる。
 意識が途絶えて、飛んでいられなくなったのだろう。
「もう……、どうしてこんな事に……!」



◇●◇



「傷はふさがったから、もう大丈夫。ただ、少し血が流れたから、安静と滋養のあるものを摂るように」
「はい、有り難うございました……」

 距離的に神社の方が近かったので、私は霊夢を神社に残し永遠亭へと向かった。
 こんなに急いで飛んだのは初めてかもしれない。
 八意先生に事情を説明し、一緒に戻ってきたのが二時間前。
 先生は手持ちの救急箱からさまざまな道具を取り出し、あっという間に怪我の手当て済ませてしまった。
「先生が来てくださって本当に助かりました、私、動転して何も出来なくて……」
「患者を診るのは医者の仕事。貴方は患者の存在を私に知らせてくれた時点で役割を済ませていたわ」
 そう言って微笑む。
 余裕を感じさせる笑みに私は八坂様を思い出し、不意に神社が恋しくなった。

 容態の安定した霊夢を寝かせたところで、私は八意さんにお茶も出していない事に気がついた。

「私の不注意が原因なんです……」
「そうだったの。霊夢が大怪我するなんてあんまりないから、妙だとは思ったけど」
 湯気を揺らす湯のみを両手で包み、八意さんは困ったように笑った。
 今、私は話しても仕方のないことを口にしているのかもしれない。
 失敗を誰かに告げる事で、裁かれたいと思っているのかもしれない。
 幻想郷を支える結界、その要たる巫女に命に関わる怪我を負わせてしまった。
 一歩間違えば、取り返しの付かないことになっていたかもしれない。
「私なんかを庇って……」
「霊夢と暮らしていると、いろいろ思うところがあるでしょうけど、貴方は貴方よ。気にしない事ね」
「……っ」
 八意さんはそういうと私の肩に手を乗せる。
 添えられた手は暖かく、思い遣りが伝わってくる気がした。
 お医者さんの手は、それだけで人を癒す力があるのかもしれない。
 顔を上げた私が何か言うよりも早く、八意さんの手が離れる。
「じゃあ、私はこれで帰るわ。後でうちの子に薬と換えの包帯を持たせるから」
「あ……」
 お大事に、とだけ告げて、八意さんは行ってしまった。
 一人残された居間は、とても広く感じた。

 様子を見に行くと、薬が効いているのか霊夢は静かに眠っていた。
 安らかな寝顔に安堵する。八意さんにはいくら感謝しても足りないだろう。
 額にうっすらと掻いている汗を拭うと、霊夢の寝顔が和らいだ。
「……」
 乗せた手ぬぐいを交換しようと伸ばした手は、なぜか霊夢の頬に触れている。
「……霊夢」
 名前を呟く。
「ん……」
 触れていたのはほんの僅かな時間だったが、それでも霊夢は目を覚ました。
「あ、ダメですよ、まだ寝てないと」
「うつ伏せになってると苦しいのよ……」
 寝苦しくて目が覚めたらしい。少しばかり不機嫌そうだった。
「背中に傷があるんです、我慢してください」
「もう大丈夫よ、この程度なら起きてた方がまだ楽だわ」
 ほら、と霊夢は寝巻きを肌蹴ると私に背を向けた。
 傷に当てていたガーゼを取ると、刀傷のようだった怪我はもう塞がっていた。
 完治すれば、うっすらと痕が残る程度だろう。
 その事を理解したら、急に力が抜けた。
「よかっ……た」
「そんな大げさな……でも、ありがとね」
 霊夢が振り向き、私の目尻に浮かんだ涙を拭ってくれる。
 漆のような瞳に自分が映っているのが見える。
 頭の中は空っぽだったが、ゆっくりと身を寄せる自分に違和感を感じなかった。

 触れる。

 至近で霊夢と目が合い、私は身を離す。
「……ごめんなさい」
「いや。まぁ、うん」
 泰然としているように見えた霊夢だが、間近で見ればその頬が紅い事に気が付いた。
 今まで余裕のある姿しか見ていなかった私には、霊夢の年相応の反応が珍しく見えた。



「本当に、八意先生の薬はすごいですね……」
 自分でも体験した事があるが、つくづく劇的な効果だと思う。
 傷が塞がるというレベルの話ではない。
 現代の医療で霊夢の怪我を治すなら、傷口の縫合や皮膚の癒着に時間がかかる。輸血やリハビリだって必要になるだろう。
 幻想郷には幻想郷の医療というものがあるのだと思い知った。
 霊夢の腹がくぅ、と鳴った。回復の度合いが知れる。
「やだわ、健康ね」
「今、ご飯の支度の最中なんです。雑炊作りますから、もう少し待っててくださいね」

 卵を落とした雑炊は会心の出来だった。

「はい、あーん」
「じ、自分で食べられるわよ、寝たきりの病人じゃあるまいし」
「ダメです。私のせいで怪我をしたんですから、私が食べさせて差し上げます」
 はい、とレンゲを向ける。
「言う事を聞かないと口移しででも食べさせますよ?」
「あんた……もの凄い事を言ってるわよ」
 冗談を言ったつもりだったが、そうは取られなかったらしい。
 霊夢は少し困ったような顔をしていたが、そのあとゆっくりと口を開けた。
「はい、どうぞ」
「ん……」
 ひと口分を掬いを、ゆっくりと口に運ぶ。
 飲み込んだ霊夢は、ほう、と息をつくと、
「おいし……」
 ふにゃ、と頬を綻ばせた。

 小鉢の中身は空になり、小腹の膨れた霊夢は横向きになって寝ていた。

「本当に、心配しました」
「ごめんね、咄嗟の回避って得意なんだけど、ちょっと油断してたみたいだわ」
「いえ、元はと言えば私の不注意が原因ですし……でも、貴方の身体は貴方だけの身体じゃないんですよ」
 失敗の許されない身なのに、軽率だと思った。
「何でかしらね……人を守ることくらいは、普通にこなしたいと思ったのかもしれないわ」
「貴方は幻想郷に無くてはならない人なのに……」
 自分のことを何でもないように語る霊夢に、私は自分の胸の内に蟠る感情を意識する。

 現人神。
 人と条理の外の存在との間に立ち、人をの営みを護る。
 そうであった。
 そうであり続けた。
 その力ゆえに求められ、敬われ。
 その力ゆえに畏れられ、疎まれ。
 そうである事に疑問を持つこともなかった。
 自分が人とは違うという自覚はあった。
 むしろ、人と違う事に誇りを持っていたとすら言える。
 だからこそ孤高であることにも耐えられたのだ。
 しかし。
 八坂様に導かれ辿り着いた幻想郷という地には、既に人間の守護者が居た。
 博麗霊夢。
 幻想郷の要石とも言われる博麗の巫女。
 人の守護者でありながら、妖怪に囲まれて暮らす少女。

「人の価値なんて、物差しや秤では測れない、それは博麗だって一緒……私はすべき事をしたまでよ」
「そんな事……」

 自分の為したことに価値を見出さず、しかし周囲は霊夢を慕う者が集まる。
 それは。
 それは、東風谷早苗がかつて求めていたことではないのだろうか。
 賽銭が入らないと嘆く少女は、自分の周りにあるものが、どれ程尊いモノなのかを理解しているのだろうか。

「別に、私一人しか居ないわけじゃないわ。魔理沙だってそうだし、里には慧音がいる。異変が起これば、誰かれ構わず動き出す……それに早苗が加わっても、何もおかしなことは無いわ。ここではそれが普通。難しく考えることなんかないのよ」
 幻想郷は全てを受け入れるのよ、と霊夢が言葉を締めくくった。

――そんなもんよ、それでいいの。それが弾幕、それが幻想郷――

 夕刻に告げられた霊夢の言葉が思い出され、私の意識に染み込んでいく。
 幻想郷。
 人と妖怪の楽園。
 弾幕ごっこという奇妙なルール。
 しかし、それに縛られることで得られる充実もあるという事を、私は遂に知った。
 得体の知れない安堵に総身が震え、昂ぶる感情に涙が出そうになる。
 だが俯かない。涙は流さない。
 ああ。
「ただ、在るがままでいいんですね」
 独り言を言った。
 きっとこれからは、当たり前に弾幕で勝負し、勝つこともあれば負けることもあるのだろう。
 宴会でお酒を飲み、何か異変が起こればそれに向かってもいい。
 今日を行き、明日も生きる。
「私は幻想郷にいるのだから」







「で、だ」
 霊夢はおもむろにお札を投げた。
 すると、天井あたりで風船が割れるような音が響き、
「「っわ!!」」
 悲鳴と共に見慣れた神様が二人、落ちてきた。
「いたたた、無茶するねこの娘は」
「……やさか、さま?」
 早苗の唇から、変な声が漏れる。
「あ、ヤバ……」
「こいつらはあんたが心配で、影でちょろちょろしてたのよ」
「いやぁ、あははは」
 神奈子と諏訪子は早苗に見つかりバツの悪そうな顔をしている。
「それと、お前らもだ」
 つかつかと歩いた霊夢が襖を勢いよく開けると、妖怪が団体で出てきた。
「「あ……」」
 先ほど帰ったはずの永琳の他に、いつの間に来たのか幽香やレミリア、慧音の姿まである。
 隣の部屋で様子を見ていたらしい。
「なんなのよアンタらは! どっから沸いて出たのよ!」
「またライバルの登場かと思うとねぇ? やぁねぇ、競争率だけ上がって」
「ふん、あんな小娘なんか、霊夢と釣り合うものか」
「だが巫女同士でしかも人間だ。これは一番近いんじゃないのか?」
「むしろ霊夢の近くにいる人間って少ないから、珍しいくらいね」
「霊夢ほどじゃないけど、あの娘も結構腕が立つわ。一生懸命な所とかも可愛いし」
 突然現れた妖怪達は、姿を隠す必要がなくなると見るや否や、好き放題に喋り始めた。
「まったく……どこまで暇なのよ」
「えー、いやー、霊夢が随分ご執心みたいだから、どんな子かなーって、ねぇ?」
「ちょっと馬鹿、いま言う事ないでしょ!?」
 その言葉に霊夢が焦る。
「おや、そうなのかい?」
「そーよー、普段の霊夢ってば冷たいんだから」
 神奈子に答える永琳の言葉に、霊夢は耳まで赤く染まった。
 急に賑やかになった茶の間に戸惑っていた早苗だが、その言葉に顔を上げる。
「そ、それを言うなら、幽香だって随分手加減してたみたいじゃない」
「だってぇ、博麗の加護がついてるんですものぉ。下手に怪我なんかさせたら後でどんなオシオキが待ってることやら」
 反論する霊夢を幽香は軽くいなす。
「貴方が永遠亭に行くと言って来たときね、背中に霊夢の符がついていたのだよ」
 そして密告する慧音。
「え」
「それにしてもひどいわ、私に面倒を押し付けるんですもの」
「あら、貴女ならきちんと出来ると判断したから任せたのに」
 幽香が非難し、白々しく返す永琳。
「え、え?」
「なんだいなんだい、自分のことを棚にあげて」
「な、なによ、あんたらが神社壊したのだって、元はといえば早苗のことで喧嘩になったからでしょ!」
 呆れ気味の神奈子の追求に、場の勢いに押された霊夢はうっかり口を滑らせた。

「え?」
 なに、今のはどういうこと?
「私の事って……?」
「あ! ばかっ」
「今それを言うか!」
 八坂様と洩矢様の顔色が変わった。隠していた事なのだろう。
「大体なんで霊夢がそれを知ってるのよ」
「あら? あんた達は自分がどういうところに住んでいるかもう忘れたの?」
「あ! 射命丸!」
「はーい、ご明察でーす」
 縁側の方から声が聞こえた。今、この神社にはどれだけの妖怪が集まっているのだろう。
 一気に入ってきた情報に混乱気味の私は、そんなどうでもいいことを考えた。
「ただ私共としましても、自分とこの神様が痴話喧嘩で神社を半壊させたとか、外に知られて気分のいい話題でもないので」
 苦笑する声を聞き、そして何となく判ってきた。
「つまり、ここ最近の出来事って……」
「そう、この二人が原因。もっと言うなら」
「霊夢」
 言葉を遮る八坂様を睨み返し、霊夢は続ける。
「心配してるくらいだから知ってるんでしょう、早苗の不調」
 八坂様が視線を逸らす。
「……!?」
 その言葉には、むしろ私が驚いた。
 知られていた……? 霊夢にも、八坂様たちにも?
「こんな回りくどい事をして。今日なんか、一歩間違えば大怪我するところだったのよ?」
 実際に大怪我をした人間のセリフとも思えなかったが、八坂様たちは答えない。
 賑やかだった場が、霊夢の言葉で静まり返る。
 あ、そうか、霊夢が怒るとこんな感じになるんだ。場違いだが唐突に理解した。
 でも私には、霊夢が何に対して怒っているのか分からない。
「答えろ。あんたらにとって早苗ってなんだ」
「霊夢!」
「こたえろ」
「……」
 私の声を無視し、一言ずつ区切って再び問う霊夢。
 その言葉に、無言で睨み返す八坂様と洩矢様。
「ここまで来て、ただの巫女だとか言うつもりじゃないでしょうね? いや、案外そうなのかしら? あんた達からすれば自分の声が届く人間を手放す道理はないでしょうよ」
「早苗は……」
 私は八坂様の横顔を見つめる。
 眉根を寄せる八坂様の顔は、困ったようにも怒ったようにも見える。
 そんな顔を私は初めて見た気がした。
「早苗は確かに風雨の巫女。……でも、私たちにとっては娘も同然」
 八坂様は、はっきりと、正面から霊夢を見据えてそう言った。
「!!」
 その言葉を理解した途端、意識に空白が出来たように何も考えられなくなった。
 気付くと畳に座り込んでいる。
「八坂、さま?」
 今まで、神と巫女という関係だと思っていた。
 畏れ多い話だが、私が小さい頃から一緒だったから、信仰の対象というよりも家族みたいな感じだった。
 しかし、それは私の主観で、どんなに身近に感じてもそれ以上はないと思っていた。
「早苗はどう思ってるか知らないけど、私らは早苗が生まれた時からずっと見てきたんだ。早苗が無理をしてる事くらい、分からないわけないでしょ」
 こちらを向いた八坂様は、とても穏やかな顔をしていた。
「でもごめんね。早苗が辛い想いをしてるのに、なかなか気付けなかった」
 申し訳なさそうな洩矢様の顔を見て、私のほうが申し訳なる。
 二人は私を抱き締めてくれた。
「で、でも」
「ここは……これからは、今までと違うんだ。早苗はさ、もっと好きに生きていいんだよ」
 暖かく抱きしめられ、その一言で今まで堪えていたものが溢れ出した。
「あぅ……ぅぅっ……ぐっ……」
 黙っていたこと、隠していたこと。
 望んでいたこと、諦めていたこと。
 様々な想いが猛烈な勢いで流れていく。
 なんでもっと早く言わなかったのだろう、と思う。
 しかしそれは過去の東風谷早苗が、自分を守る為に押し隠していたことでもある。
 遣り切れなかった想いが、熱い雫となって流れ続ける。
「あ……っ、うぅ、……ごめ……なさ……」
 ごめんなさい、ありがとう、という言葉は声にならなかった。
 ただ、湧き上がる感情を抑えきれず、私は子供のように泣いた。
「ばかな子だよ……まったく……」
「早苗はいい子すぎるんだよ」







 少し離れた所で早苗たちを見ていた霊夢の背後に、ゆらりと気配が現れた。
「いつから博麗の巫女は家庭の問題にまで力を貸すようになったのかしら。態々悪役まで買って出て」
「……覗き見だなんて、相変わらずいい趣味してるじゃないの」
「霊夢、」
 霊夢が一瞥する。それだけで紫は口を噤んだ。
「……まさか。私の周りはいつでも賑やかよ」
それはいつもと変わらない表情で。
「紫」
「はいはい」
「今夜、宴会にしない?」
「あら素敵、ねぇ萃香?」
「呼んでいいのかね」
 いつの間にか紫の帽子の上に、小さな萃香が立っていた。
「今日は許す」
「よしきた」
 承認に萃香は心底嬉しそうに笑うと、霧になって散った。







 一時間後、私は宴の中にいた。
 霊夢の計らいらしい。

 今まで、無理に飲まされていたお酒。
 しかし、今日は味が違って感じられる。
 ただ辛いだけだと思っていた液体は、得も言われぬ味わいがあった。
 ただ居るのではなく、自分らの意思で参加する宴会。
 人の笑顔と談笑が、そして場の雰囲気が酒の味を変えているのだと知った。
「ほーら、早苗ももっと飲みなさいよー」
 病み上がりのはず霊夢は、もう随分と出来上がっていた。
「あ、はい、すみません」
 紅い顔で瓢箪を傾ける笑顔につられ、私も頬が緩む。
 促されるままに杯を傾けた。
 体が温かくなり、頭の中がふわふわする。
 私はそれを素直に受け入れる。
 音楽が聞こえ始め、それに合わせて調子の外れた歌声も聞こえてきた。
 魔理沙や霊夢、他の名前を良く覚えていない人たちが、次に歌う順番をジャンケンで決めている。
 見慣れた宴会の景色が、気持ちひとつでこんなにも違って見えるとは。

 私は、ふと気付いた。戒めは自分にもあったのだと。
 今日起きた出来事を思い返し、これまでの自分が様々なものに縛られていた事を知った。
 だけど、その奇戒はもうない。
「……さようなら」
 口の中で小さく、現人神の東風谷早苗に別れを告げる。
 しかし、その別れは悲しいものであってはならない。
 過去は変わらない。
 大事な記憶として私の奥底に大切に仕舞い込まれるだろう。
 亡くすことはない。
 風は、いつだって巡っているのだから。
 私は頷くと、挙手をする。

「はい! 東風谷早苗、歌います!」







――了――





その一歩を恐れるな。







■あとがき
 読了、お疲れ様でした。
 長くてごめんなさい。
 読みにくくてごめんなさい。
 早苗さんをいじめてごめんなさい。
 早苗さんを泣かせてごめんなさい。

 でも、早苗さんは実は歌が下手、とかどうよ?


◆●◆

はい、お疲れ様でした。
急ごしらえの話にも拘らず過分な評価、本当にありがとうございます。
この話を読んで、早苗さんを少しでも好きになって貰えれば幸いです。

簡単にコメント返しなどを。

>Blankiiさま
お題の消化については「機械」「機会」「奇怪」の三種を使わない事を目的にしていたので、造語である「奇戒」になりました。
予定調和による平和を、外部の目で見たらどのように映るのか。
我々も東方に馴染んでしまっていて、この辺に違和感が無くなっていると思ったので敢えて選択してみました。

>冬生まれさま
数少ない力を持った人間である早苗さん。
外の世界での彼女の役割などは捏造ですが、幻想郷内の妖怪と人間の関係は、事情を知らない者が目にしたら奇妙に映ると思います。
その点を書こうと思い、この「奇戒」と相成りました。
まあ、郷に入らば郷に従え、ですね。

>mokiさま
東方における謎のひとつに、先代の博麗の巫女、というものがあります。
世襲制なのか? 先代はどうしたのか? 諸説ありますが、決定打はありません(当然です)、なので、今回は霊夢の孤独にも若干ですが話を振っています。
没稿にはラストの紫との会話がもう少しありまして。

>綺羅さま
この話は早苗さんありきです。
まあ、これまでのコンペを振り返るに、感動の超大作は絶対に出てきますから、別にそこを狙わなくてもいいかなー、と。
お題は、根幹にある「ここが変だよ幻想郷@早苗EYE」と密接に絡んでいるのですが、筆力が足りず、いまいち消化できませんでした。反省。

>BYKさま
作中、霊夢も言っていますが、神として自分の声の届く存在を手放したくないという建前があって、その裏には才能故に悩んだりしている姿を申し訳なく、愛しく思っている親心があると信じたい。
むしろ信じさせて。

>織村 紅羅璃さま
霊夢は二次創作だと割と冷たい印象で書かれて(描かれて)いるのを見受けますが、設定を見返すと、異変以外の時はのんびり陽気、よく笑う子だというのが。
没稿では霊夢はもう少し女の子してるのですが、正直「誰てめぇ」のレベルなのでこの程度にw
お粗末さまでした。

>只野 亜峰さま
太鼓→太古
ぎゃー、今回最大の誤字が!
霊夢の瞳。あんまり深く考えないで黒にしました。底の見えなさとかそんな感じで。
粗さは……突貫工事だったのと、短くする事をかなり意識していたので、描写などをガリガリ削りまして。

>O−81@藤村さま
幸せになってもらいたいものです。

>レグルスさま
守矢さん家は、あっという間に家族という括りで認知されましたね。
うどんげの触診は、割と普通な感じです。この話を書く少し前に健康診断を受けまして、お医者さんってば結構強く腹とか押すんですよ、これがまた。

>☆月柳☆さま
お口に合ったようで何よりです。
早苗さんは登場初期、地味とか無個性とか散々な評判だったんですけどね。
皆の愛が早苗さんをより魅力的にしていきます。

>ルドルフとトラ猫さま
新天地での一歩目に躓いた事で、第二歩目をしっかりと踏むことができました。
霊夢は浮いているけど、早苗さんは歩いていく印象。

>つくねさま
各自の思惑はいろいろあります。
打算なんかも含まれていますが、概ねいい奴等です。

>K.Mさま
霊夢がガキ大将的な中心人物。早苗さんが転校生。
みんな引っ越してきた子と早く遊びたくて仕方ない、そんな感じです。
早苗さん、声は綺麗だけど、音階がダメ、とか。

>中沢良一さま
馴染まない、というよりは、馴染む所を書きたかったという感じでしょうか。
書きたかった事のほとんどが俄雨さんの「少如群像」の方で書かれていたので死にそうでしたが。
長い話なので、途中にスローテンポなシーンを入れるのは賭けでした。
お口に合ったようでなによりです。

>つくしさま
早苗さんは外の子だから進んでるんですよ!
取捨選択。そうですねぇ、目に付く端から書いた感じがあります。調整する余裕が無かったのが敗因です。
ルーミアの件は天狗側からの横槍ですが、細かい事は闇の中。
知らぬは当人ばかりなり。

>らくがん屋さま
あらら、そうでしたか。
最近とんと創想話読んでませんで。
急ごしらえの話です。惜しいという評価だけでも有難いです。

>とらさま
少しどころではなくありがちです。
いえね、いつもコンペの度に変化球(むしろ殺人魔球)ばかりだったので、今回はストレートで、とまっすぐ投げてみまして。
存外まっすぐ飛ばないものです。

>木村圭さま
ニヤニヤは正しい楽しみ方です。
テンポは少し意識して書きました。シーンを幾つもまたぐので、足踏みしないように、と。
満足いただけて何よりです。

> ZIDさま
テーマを示す言葉、これが問題でして、造語である為にあんまり目立つとそこだけ浮いてしまうという。
基本的に「察してくれ」という書き方なのでこうなります。
お口に合ったようでなによりです。

>時計屋さま
若いうちはそれでもいいんですけどねぇ。
しかし妖怪と呑まないといけない分、早苗さんの負担は大きいでしょう。
途中までは、魔理沙が居て早苗さんを仲間(霊夢をライバル視する者)として受け入れる、とか予定してました。上手く纏まらなかったのと、長くなるので今の形になりました。
俄雨さんの「少如群像」の前半がモロにソレで、死にそうになりました。

>床間たろひさま
良い人、というか、みんなそれなりに思惑があったりなかったり。
まあ基本的には都会からの転校生と遊びたい田舎の小学生、みたいな感じです。

>椒良徳さま
太鼓。超誤字。
傑作……かぁ、いつか書いてみたいものです。
書こうと思って書けたら苦労しませんが。

>たくじさま
実はこの話、その部分が抜いてあります。
霊夢に負けた事を発端に、早苗さんは微妙にストレスを溜め込み始めます。
その辺が原因で情緒不安定になっているのですが、そこら辺を書いていないので唐突感があります。

>畦さま
環境が激変したから戸惑いとかもあったと思います。風神録おまけテキストによれば楽しみしている部分もあったそうですが。
話のペース的には、前半部分に切り落とした所が多く後半が割りとそのまま残したのでこんな感じに。

>カシスさま
なにせ普通の人間とは違いましたしね。
力があるだけでも十分な戒律があったと思います。
守矢さん家は両神(親)の貫禄でしょうか、とても平和な気がします。

>もろへいやさま
早苗さん視点を意識して書いたので、そういっていただけると嬉しいです。
霊夢はなんだかんだいって面倒見のいい子だと思います。

>飛び入り魚さま
書きたい事、というか、明確なテーマが欠如しがちなのでとにかく詰め込んでしまう癖があります。
たぶんね、早苗さんの歌はみすちーとかに怒られるんですよ。で、神妙な顔をして説教を聞くんです。

>反魂さま
捻りはないですが捻くれています。
暗い話は書いていてツラいので自分か書く範囲ではキライです。
最近、霊夢が可愛く見えてきました。

>#15さま
ありがとうございます。
そう言われると返す言葉が出てきません。

>名無しの37番さま
お疲れ様でした。
短い話を書けないので、どうしても50kbの壁を越せません。
ウサ耳の件は、すり合わせしてる時間がなくてそのまま残った部分です……

>小山田さま
そうですね、ちょっと流されすぎでした。
予定としては魔理沙があれこれ吹き込んだり、早苗さんがもう少し悩むシーンとかあったんですが、調整が間に合わずバッサリときりまして。
この話の基点が「幻想郷における妖怪と人間の関係の奇妙さを部外者がみたらどう見える?」という点なので、早苗さんの視点で進めました。一人称って難しい。

>名前のない程度の能力?さま
満点の評価ありがとうございます。
死語も幻想入りしているんじゃないですかね。


作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/02/11 08:47:23
更新日時:
2008/03/11 19:31:53
評価:
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POINT:
0
Rate:
5.00
1. 10     ■2008/02/12 03:37:23
SUGEEEEE!!! としか言いようがない。
ところで、
>指折りのワル
この表現にワロタww たしかに、最近はこんな言い回しも聞かないですね。幻想入り?
2. 5 小山田 ■2008/02/13 08:23:50
前半のただ状況に流されている早苗が、予定しているシーンへ都合よく動かされているかのようで、ちょっと気になりました。ですが、早苗視点で誠実に書ききられた内容に好感をもてました。
3. 8 名無しの37番 ■2008/02/13 11:08:45
早苗の成長物語、堪能させていただきました。
やや長いながらも、丁寧に書かれていたと思います。バトルも心理描写も、詰まることなくすらすらと読めました。
ただ、宴会で鈴仙を見ているにも関わらず、てゐのウサ耳に疑問を抱いてるのがちょっと引っかかりました。
早苗さんの愛されっぷりはイイな。
4. 10 #15 ■2008/02/14 15:22:02
もはや何も言うことはありません。
5. 9 反魂 ■2008/02/16 17:41:06
 霊夢と早苗、双方が可愛らしく描けていて良かったと思います。
 捻りや妙味はあまり感じられなかったのですがその分まっすぐであり、すとんと理解に落ちてくるお話でした。あまり暗くなりすぎなかったのも好印象です。
 他のキャラのエピソードがやや傍系的になりすぎているところだけ、若干マイナス。
6. 2 飛び入り魚 ■2008/02/20 10:57:07
もっと伝えたいこと一本に絞って詳しくしても良いかも。
書きたいことが多かったかな。
ああ、音痴な早苗さんが絵になって仕方が無い
7. 9 もろへいや ■2008/02/26 21:55:31
早苗のまともな現代人らしさが良かった。
霊夢優しいですね。話も面白かったです。メッセージにぐっときた。
8. 7 カシス ■2008/02/27 14:31:42
守矢家は暖かいイメージがあります。この話はとても心に来ました。
生きていると戒めって多くなりますね。
9. 7 ■2008/02/27 22:20:28
一行目でまず吹きました。まあそれはそれとして。
早苗さんがいじめられて泣かされて、でもちゃんと成長していたので良かったです。
彼女は転んでも自力で起き上がるコですよね。
長いというか、出だしに比べて途中から話しの流れがゆっくりになったのが気になりました。
ちょっと回りくどくなったというか。
あと、早苗さんはお掃除しながらの鼻歌は上手いけど、
酔ってマイクを握るとジャイ○ンとかどうですか。
10. 5 たくじ ■2008/02/28 22:38:07
テンポよくすらすら読めました。気に入ったのは霊夢です。ひざまくらでほのぼのドキドキ。あとは微妙に女の子っぽい感じのところが何だか好き。
気になったのも霊夢です。ちょっとお説教臭いところ鼻につくというか。そこは早苗、お前が自分で気づけよっていうか。
それから最後の全員集合の場面。早苗が泣いちゃったのに違和感がありました。そんなに思いつめている様に見えなかったので、唐突な感じがして。早苗さんの感情がたかぶってるのに、読んでる私は逆に白けてしまいました。
『太鼓の醸造法』はギャグとして受け入れることにします。
11. 6 椒良徳 ■2008/02/29 00:01:41
早苗さんが歌が下手だなんて僕は認めないよ。
>太鼓の醸造法を再現している 
太鼓の醸造法を再現しても酒はできませんよ。
>永琳に歳を訊いても答えてくれないけど。 
霊夢! なんて残酷な! 
ううん、不思議な作品だなあ。
文章力はきっとおありだし、個々の場面もそれなりに面白かったのですが、傑作と言うには程遠い。
まあほのぼの作品といったところですか。
いや、バトルあるけど。ううん、不思議な作品だなあ。
12. 7 床間たろひ ■2008/02/29 00:48:25
早苗さんの幻想郷行脚、楽しませて頂きました。
会話も軽妙で、文体も読みやすく、素直に話を楽しめました。
ただまぁ、俺の心が穢れているせいか、あんま良い人ばっかの幻想郷ってのにも微妙な違和感を感じてしまったり。なんというか人間的価値観における良い人って、ある意味他人にとって都合の良い人になっちゃいますしね。
個人的な好みの問題なんですが、そのせいで少し安っぽいと感じてしまいました。いやその価値観を押し付ける気はないのですが、展開とか会話とかでもう少し深みを出して欲しかったなぁと。
まぁ、面白いからこそ出てくる我が侭なんですけどねw
13. 5 時計屋 ■2008/02/29 00:53:15
幻想郷初心者の早苗さんらしいお話でした。
お酒の話はなんだかとても身につまされますね。
二・三年目くらい社会人が社内の健康診断で肝臓の数値を見て真っ青になるのはあれです、通過儀礼みたいなもんです。

それはさておき、批評ですが。
文章がとても読みやすく、長さもそれほど気になりませんでした。
ただ、お話が淡々と進んでしまっているため、いまいち盛り上がりに欠けた気がします。
14. 8 ZID ■2008/02/29 01:39:42
でも、一度掴んだマイクを離さないタイプですね?  さておいて。ん、こういう話が読みたかった、と。ものの見事に好みに合致した作品でした。テーマをもって書く作品である以上、所々に露骨にテーマを示唆する言葉を挟んでもよかったかもしんないですね。
15. 8 木村圭 ■2008/02/29 04:59:53
だめー! 何故かびっくりするくらい上手くて褒められて赤面するのー!
これは良い東方SS。ドキドキしたりワクワクしたりしましたが、多分六割くらいはニヤニヤしてたと思います。ああもう可愛いなあこいつら。ひょいひょいとテンポの良い文章でスピード感のある弾幕合戦を堪能させていただきました。大満足。
16. 5 とら ■2008/02/29 09:36:25
弾幕ごっこに関する早苗さんの考察は良かったです。ただ、展開としては少しありがちなような気がしました。
17. 6 らくがん屋 ■2008/02/29 11:14:28
勝手な言い草だけど、自分が過去に書いたSSと似た匂いを感じた。けど、自分の中の採点境界線を越えるポイントが無かった。それが、たまらなく惜しい。面白かったです。
18. 4 つくし ■2008/02/29 11:49:04
>触れる。
ってあんたwwwなんという早苗×霊夢wwwwwあなたのリビドーに敬意を表する。
さて、どうも早苗を通じた幻想郷キャラクターファイル、という感じです。早苗にとっては目新しくても、読者にとってはそうでもない感じの情報も多いため、退屈なところがわりとあります。その辺の取捨選択をして欲しかったです。あとルーミアとの戦闘突入もなんか唐突で一瞬何が起こったのかわかりませんでした。
19. 4 中沢良一 ■2008/02/29 15:21:18
早苗はこういった感じのSSが多いですね。そんなに馴染まないのかなぁ、なんて疑問に思ってましたけど、これはなんだか早苗の気持ちが伝わったのか、疑問に思いませんでした。
後半のベタベタな展開も私は大好きです。
20. 9 K.M ■2008/02/29 18:47:33
なんだかんだで愛されている霊夢と、新人な雰囲気の抜け切っていない早苗が可愛かったです。
そして雰囲気を奇戒ごと取り払った早苗も可愛かったです……あとがきについては、「それもよし!」派にならせていただきますw
21. 3 つくね ■2008/02/29 18:53:18
まさか全部謀とは……早苗がうち解けられたようでなにより。
22. 10 ルドルフとトラ猫 ■2008/02/29 19:08:25
そうして道は拓かれた 風祝が踏み出した一歩を、私は拍手と微笑で祝福しよう
23. 10 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:54:33
ぴょこんぴょこん跳ねる諏訪子様…か、可愛い。
ていうか、これなんていう霊夢×早苗SSなんですか!
いやぁ、このSSみて早苗のこともっと好きになったかも。
霊夢もやたらかっこいいし、デレるし、モテるし、霊夢ってやっぱすごいなって思ったです。
最後も、あれだけ沢山の登場キャラ出してるのに、きっちりまとまっていたかと。
後は、ニヤニヤする場所もよかったけど、幽香やルーミアとの弾幕ごっこも見所が沢山あって良かった。
読みやすかったし、面白かったから長くても楽しめました。
24. 8 レグルス ■2008/02/29 20:23:29
しっとりした家族愛ですね。
うどんげの診察が地味に卑猥な所を除けば。
全体的にまったりとした空気が幻想郷らしくて魅力的でした。
25. 4 O−81 ■2008/02/29 21:40:07
 いい話。
 早苗さんに幸あれ。
26. 6 只野 亜峰 ■2008/02/29 21:42:43
太鼓は太古の打ち間違えかな。
そういえば巫女の目って赤かったり青かったり黒かったり意味がわからないですな。一応黒で良いのかな。
○○のような○○な瞳に見つめられ、――ってするとより深く早苗の動揺を描けるんじゃないかと思ったり。
「風の巫女よ」のとこがちょい違和感感じましたな。
早苗に呼びかけてるんでしょうが、自分の事を言ってるように見えてしまいます。
ここは「よろしくね。風祝りさん」あたりにしておくと良いかと。
いや、まぁ俺ならなんですが。
中盤からの妖怪と人間の構図に戸惑う早苗の心境の描写はちょっと荒っぽさを感じなくもありませんでした。
終盤はすごくほのかに漂う百合臭g(ry
27. 8 織村 紅羅璃 ■2008/02/29 22:02:28
全体的な流れは好きです。世話を焼く霊夢もかわいいものでしたw
ただ、戦闘の描写などが多少粗かったかな、という気がしました。
28. 5 BYK ■2008/02/29 22:13:40
何と言う親ばか神様。だがそれが良いと思った!
29. 6 綺羅 ■2008/02/29 23:15:39
御題が後付けな感じが。ストーリーは読み手の心に訴えかけるとまで強烈なものは感じませんでしたが、純粋に娯楽作品としては上々だと思います。早苗が可愛らしくていいですね。
30. 7 moki ■2008/02/29 23:25:42
霊夢が気にかけるのは、自分の幼い頃と被るからなのか。可愛い早苗さんをご馳走様でした。
31. 6 冬生まれ ■2008/02/29 23:32:18
幻想郷でも独特な立ち位置にいる早苗さん。
彼女に目に幻想郷がどう写ったのか・・・その述懐が共感でき引き込まれました。
ただ、テーマである「きかい」の使い方が弱ったのが残念です。
32. 8 blankii ■2008/02/29 23:53:39
これは良い弾幕ごっこと幻想郷。『新参者』である早苗さんの眼を通して描かれるの入門編。お題そこかー、と少しツッコミますが、面白かったのだからそれで良いのだと思います。

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