探し続けていた男

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/11 08:53:00 更新日時: 2008/02/13 23:53:00 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00



 ……おや、随分と雨に打たれたようですね。外は大変だったでしょう。
 ……さあ、どうぞお上がりになって、体を暖めてください。
 それにしても、こんなに急に天気が崩れるとは思いませんでした。山の天気は変わりやすいと言いますが、本当にそうですね。
 あ、私もほんの一刻ほど前にこの小屋を見つけたばっかりなんですよ。山の中ですが、しっかりした小屋があって助かりました。けっこう丁寧な造りですよね。
 ……災難でしたね、その外套びしょ濡れです。
 しかし、いったいどうしたのでしょうか……。
 随分若い方ですよね。あなたのような若い娘さんが、一人旅とは珍しい。このあたりは、人食い妖怪も出るそうですし、物騒じゃありませんか。
 ……なんと、この近くに家があるのですか。
 この辺りは迷いの竹林にも近いし、人家があるとは驚きました。
 ああ、シャツまで濡れてしまっているようですね、今、囲炉裏の火を強くしますから。少しお待ちください。
 ……ちょうどよかった。粥を作っていたところなんです、薬味を聞かせてありますし、温まれるはずです。こう見えても、私、料理には少し自信があるんですよ。
 ……え? 私ですか? 私はですね、知人を訪ねてきたんですよ。えっと、知人と言うのは私の生き別れになった娘のことなんですが。
 ……ええ、不思議に思われるのも当然です。私は娘がいるような年齢には見えませんからね。
 というのも、これは随分前からの話なんですが……私はとある事情によって、外見どおりの年齢ではいられなくなってしまったのです――

 あ、粥ができあがりましたよ。今よそいますね。丁度良く、茶碗が二つあって助かりました。ここを管理している人が置いていったんでしょうね。几帳面な性格の人なんでしょうね。私が入ったときにも、部屋の様子が良く整理されていたので感心しました。
 はい、どうぞ。熱いですから、気を付けて召し上がってくださいね。
 ふふふ、よっぽどお腹がすいていたんですね。慌てて食べなくても、まだおかわりがありますよ。
 おっと、こんな美しいお嬢さんには少し失礼な言い草でしたでしょうか。申し訳ない。

 ――それにしても、雨はいっこうにやむ気配がありませんね。
 ……あ、話の途中でしたね。
 そう、私は外見通りの年齢ではないんですよ。
 といっても、別に妖怪の類ではありませんから、安心してくださいね。
 まあ、あまり長く生きていると、人間も幻想の存在に近くなってきますけどね。
 そうなってしまうと、妖怪とさほど変わらないかもしれませんね。
 ……え? 歳をとらなくなったいきさつですか?
 そうですね……お話をしてもかまわないのですが。いえいえ、秘密にしているというわけではないのです。ただまあ、けっこう長い話になりそうですから。
 ――そうですね、まあ服が渇くまでにも時間がありますし。私の思い出話、暇つぶしに一つ、聞いてみますか? 
 そんなに話し方に自信はありませんが。人前でお話をするというのも、あまり経験したことがありませんし。でも、退屈させないようにしますよ。頑張ります。それに……おそらく……これから私がする話は、あなたのような方にとっては興味をそそられるお話だと思いますよ。
 なぜそう思うのかって? というのも、それは私と、私の娘にまつわるお話でもあるからなんですよ。今の娘はたぶん、あなたと同じぐらいの歳になるはずです。歳のころが近い人の話は、やっぱり気になるでしょう?

 ……それにしても、運命というのは不思議なものですね。
 偶然降り出した夕立ちのせいで、こうやってあなたのような美しい女性と二人でお話する機会が得られたわけですから。
 ……いえいえ、決してお世辞なんかじゃありませんよ。
 ……まあ、それは置いておいて、本筋に入りましょうか。私の身の上のことです。
 そうですね、あれは、まだ私が外の世界に居た頃の話です――


 当時、私には妻がいました。その時にはもう、娘とは生き別れになっていましたけど。
 え? 何年前の話かですって? それはちょっとまだ言えませんね。たぶん、おいおい解ってくると思いますよ。

 ある時、私と妻は事情があって、富士山へと旅行することになったのです。
 私と、私の妻と親友の三人での小旅行です。
 まだ交通機関が発達していないころのお話ですから――ああ、あなたは外の世界が今どうなっているのかご存じないのでしたね。私の話している時代は、たぶんあなたがこの郷へ入った頃とそう変わりのないころだと思いますよ。だからあまり時代背景については詳しく説明しなくてよいでしょう。
 さて、私たちは日の本の道なき道を歩き、いくつかの宿を転々とし、数日がかりで富士山の麓へとたどり着きました。
 丁度麓に着いた頃に、太陽が地平線の端に沈み始めました。
 旅の疲れもたまってきていましたし、翌日は富士の山への登頂を計画していましたから、よく休んで体力を蓄えておく必要があります。
 私たち夫婦と、同行した友人は麓で一泊することに決めました。
 やがて辺りが暗くなり始め、ちょうど中秋の名月のころ、空には丸い月が顔を出し始めました。
 私たちが宿泊地に選んだ場所は森と沢の真ん中あたりの、ひらけた場所でした。
 当時はまだあたりも開発されていませんから、高い山である富士の麓などには、森が鬱蒼と茂っています。
 人家もまばらですから、あたりもおどろおどろしい、いかにも何か出そうな雰囲気が漂っていました。
 恐ろしいことには違いないのですが、と言ってもこれ以上無理して先へ進むわけにはいきません。
 ともかく火を焚いて、野の獣や物の怪が近寄ってこないようにしようと思いました。
 私は完全に暗くなる前に、薪を集めてこようと考え、その旨を妻と親友に言い残して森の中に入りました。妻と友人には、夕餉の支度と寝床の準備をお願いしました。

 森の中に入り、夕暮れ時の草をかきわけて、私は地面に落ちている乾いた薪を求めました。
 そうすると、地面を探ろうとした手のひらに、ぽつぽつと冷たい粒が当たりました。
 雨が降ってきたのです。
 私は急がなければならないと思い、片端から落ちている木切れを掻き集めました。厳選していないので、多少質が落ちますが、濡れているよりは良い。
 先ほど、沢の近くの崖にほら穴を見つけていましたので、そこにみんなで逃げ込めば雨露をしのげるだろう、そうも思いつきました。とにかく今は早く薪を拾って二人の待っている場所へ急ごう。
 そうしていくつかの薪を抱えて元来た場所、妻と友人が待っている場所に帰って行きました。

 ……沢へ行くと、妻と親友の姿が見あたりませんでした。
 大分日が陰ってきて、夕焼けが終わりかけている頃の時刻です。沢の辺りにも影が強くなってきていて、周囲を確認するのが難しくなってきていました。それでもぐるぐると見まわして、二人の姿を探していると、沢の岩陰から白い手の先が見えているのがかろうじて見分けられました。
 私はその岩のところまで行ってみました。
 腕の根元が伸びている方角……岩の陰に倒れていたのは、私の妻でした。
 ……妻は仰向けになっていて、力なく横たわっていました。目は薄く開き、口は半開きになっていましたが、奇妙な感じがしました。
 私は彼女の体を抱き起そうとしました。手を彼女の背中に回すと、湿った感触がしました。その手の平を覗いてみると、赤黒い湿り気を見つけたのです。
 私は妻の名を呼び、必死で彼女の体をゆすりました。
 ……返事はありませんでした。
 大きくなり始めた雨が、ぽつぽつと私の背中と、妻の顔に当たり始めました。
 ふと視線を右横にやると、男が一人倒れていました。
 目を見開いて、苦悶の表情を浮かべたままで固まっている男――同行してくれていた、私の親友でした。

 ……ええ、そうです。妻と親友は、なにものかに殺されてしまっていたのです。
 私は事態が把握できませんでした。こんなことが唐突に起こるはずがないと思い、妻の体を抱き上げてゆすってみました。そうすると、妻の青い顔の口元から、だらりと赤黒い液体が垂れてきて、私をまたいっそう絶望的な気分にさせました。

 私は妻の体を河原におろしたあと、頭を抱え、地に伏せって嘆きました。
 もう完全にざあざあ降りになった雨が、私の背中を濡らしていくのを感じましたが、それどころではありません。
 するとその時、その背中に鋭い衝撃を感じたのです。
 やがて、鈍い痛みがじわじわと、体の内側に広がっていく様子も感じました。
 誰かが、私の背中に刃物を突きたてたのです。
 身をよじらせながら振り返ったとき、満月を背後にした、人の形が見えました。
 黒い影の中心に、紅い、紅い、まるで血のように紅く光る目。
 恐ろしい目。まるでこの世のものとは思えぬ、幽鬼のような、血に飢えた獣のような目でした。
 その目を持った影が顔をひるがえし、手に持っていた武器と思われるものを掲げると、月の光に照らされて、どこまでも透き通る白い肌と髪が見えました。
 私は妖怪が現れたのだと思いました。良く見ると、人の形であることはわかりましたが、表情までは読み取ることができませんでした。ただ紅く光る目だけが印象的で――だけど、顔の形は覚えていますよ。
 ええ、私は私を殺した人物の顔を見ました。
 その影が私の胸に、再び刃物を突きたてるまで、私はどこか現実感のない光景に、震えるほどの恐怖を感じながら、ただ何をするでもなく突っ立っていました。そうしていると、ゆっくりと、私の胸に刃先が入って行きました。
 ちょうど遠くの空でまたたきがありました。
 稲光に映し出された、その影の持つ、夜空にひるがえった波のように揺らめく長く白い髪が、私の最後に見た光景でした。遅れてきた雷鳴の音を聞いたあとすぐに、私の意識は途絶えました。
 殺されるときに、私は不思議でしょうがなかったのです。不可解ですらありました。それもあって、とっさに身動きがとれなかったのだと思います。
 私は命を奪われる刹那、考えていました。
 なぜ、私たちがこのような目に会わなければならないのか。
 妻と、富士までの旅に同行してくれた気の良い親切な友人は、なぜ殺されなければならなかったのか。
 私たちが一体何をしたというのか…………


 ……おや、大丈夫ですか? 先ほどから随分と顔色が悪いようですが。手が震えているじゃないですか。雨に打たれて、風邪でもひいたんじゃないですか? 私の上着を貸しましょうか? それにしても、あなたの肌は白いですね。まるであのときのように、白い肌…………。
 ……変ですね、どこか見覚えがあります。
 ……まるで、私を殺したあの影が持っていた、月明かりに照らされていた、あの私を刺した白い腕とそっくり……。

 ……。
 ……。
 …………。

 ……そう、もうおわかりですよね。
 私はあなたのことを、最初から知っていてこの小屋に招き入れたのですよ。

 ……藤原不比等娘、今は自らのことを妹紅と呼んでいるそうですね。

 改めてご挨拶をさせていただきます。お久しぶりですね、藤原妹紅さん。
 ずっとあなたを探し続けていました。千と二百年の間ずっと。
 私を殺したあなたと、このような形で再会できるとは思ってもみませんでした。本当は、あなたがこの部屋に入ってきて以来、ずっと冷や冷やし通しだったんですよ、ばれやしないかって。でも、あなたは完全に私のことを忘れていたみたいですね。
 まあ無理もない。あなたは、私の年老いた頃の顔しか見ていないだろうし、長い長い時間の果てに、自分が殺した人間のことなんて意にも介さなくなってしまったのかもしれませんね。薄情な話ではありますねえ。でもねえ、殺された方はちゃんと覚えていたんですよ……忘れることができなかったんですよ……。

 あなたと再会し、絶好の機会を得て、私がどんなに嬉しかったかわかりますか? あなたに気づかれないように、喜びを押さえるのに苦労しましたよ。
 あの時、富士の裾野で殺された時、私はあなたが誰だかわからなかった。私たちは、物捕りか野伏せりに殺されたものだと思っていました。
 でも、年端もいかない娘が野伏せりの仲間をやっているというのも不自然だ。
 生きながらえて都に帰り情報を集めてみて、あなたがあの子の件から、私たちに恨みを抱いていたという話を聞いて、ようやく納得がいきました。あなたは、私の娘に復讐するために、あの子の一番大切なものを奪おうとしたのですね。でもよくよく考えてみると、それって逆恨みじゃないですかね?

 誰なんだ、誰なんだ、私が誰かですって? ……もうわかっているでしょうに。
 私が彼女を、竹林から拾い上げて育てたのです。
 なよ竹の輝夜、その名前も私が名付けたのですよ。私が、あの子とあなたの因果を作った張本人であるとも言えますね。

 ……竹取の翁、さかきのみやつこ。
 それが、私の名前です。

 ……なぜ私が生きているか不思議ですか? 確かに殺したはずだ?
 あなたはご自分であれを一つ持ち去ったから、もうそれで終わりだと思っていたのでしょうね。
 考えてもみてください。なよ竹は、私たち夫婦のために、あの薬を作ってくれていたのですよ。父と母、二人分の薬があるのが自然ではありませんか?
 そうです、私は飲んだのです。ふしのくすりを。蓬莱の薬、その効果で私は生きながらえ、また若返った。
 ……私が薬を飲んでいた理由を知りたいですか? 
 生きてさえいれば、もしかしたら娘に会えるかもしれない。そう思って、不死の薬を飲んだのです。
 既に不死の薬を富士の火口に捨てる旅の半ばまで来ていたものの、あとで妻にも打ち明けるつもりでした。私と一緒に、永遠を生きてほしいと。永遠に長い年月がたてば、人もやがて月へと赴く手立てを見つけるかもしれないではないかと。そうしたら、二人であの子を探しだそうじゃないかと。ところが、それを伝える前に妻は、妻は――

 それ以来、あなたをずっと探していました。二人の無念を晴らすために。私の妻……長年連れ添った、かけがえのない私の伴侶……それに無二の親友である月のいはさか……良い男でした。若いころから、ずっと親しくしてきた幼馴染でもありました。私のことを誰よりも理解してくれていて、不死の薬を捨てに行くという旅にも、年老いた私の体を心配して自らついてきてくれた。私にとっては、二人とも命と同じくらい大事な人たちでした。
 私は娘とあなたを、なかなか見つけられなかった。このような隠し里があるとは知りませんでしたから、求めるものを探して、世界中を旅しました。
 娘が月へ帰ったというので、私はずっと月へ行く手立てを考えていました。実際に、私は月へも行ったのですよ。身分を偽ってロケット……ああ、乗り物のことです。地上から月へと行くためのね。文明が発達して、人間が月へ行く手段を整えるまでに、どれだけの時間がかかったと思います? 私はずっとその間中、待ち続けていました。とにかくやっとのことで出来上がったその乗り物に乗りこんで、私は月の都があるという月の裏側へ行きました。
 ……ところが、そこには無辺の荒野が広がっているだけだった。建物一つ、人っこ一人いなかった。伝え聞いた、幻想の月の都などは、影も形もなかった。無論、そんなところにあの子がいようはずもない。絶望して月の大地に伏せっていた私を、一緒に月へ行った仲間が拘束して、地上に連れ戻しました。
 そのすぐあとです。娘とあなたがこの郷にいるという噂を耳にしたのは。それからまた、この郷に張られた結界の力が弱まるまでに、さらに六十年待ちました。

 ……この郷に入って驚きましたよ。なんでも月から来た姫は、自分の仇である藤原の娘と友達付き合いをしていて、仲良く酒を酌み交わしたりすることもあるというではないですか。
 私は憤慨しました。なよ竹はなぜ、あなたを生かしておくのか? 父母を殺した仇ですよ? そのままにしておいては、忠孝、義理、人情、いずれにももとるじゃないですか。
 でも、よくよく考えたらなよ竹は知らないのかもしれませんね……。知っていたら、私の復讐に協力してくれたのかも。あの子は月の使者と一緒に旅立ってしまったから、その後私たちが、あなたに殺されたなんてことは、当の犯人から言われない限り、知らないのかもしれませんね。……あなた、あの子に言いましたか? 自分が私たちを、あの子の両親を殺したって……。


 おっと、逃げようとしたり抗おうとしても無駄ですよ。
 体の自由がきかないでしょう? 一服盛らせていただきました。
 さっきの粥、そうです。
 ……なぜ自分に毒が効くか不思議ですか? 蓬莱の薬を飲んだから、自分にはどんな毒も効かないはず?
 ……私には時間がありました。そう、途方もないくらい長い時間が。私には、時間しかなかったと言ってもいい……私はずっとあの子を探し続けていました。気の遠くなるぐらいの長い年月を、あの子に再会したい想いで一杯で。生きてさえいれば、再びあの子に会うことができる、それだけを夢見て……。
 ……同時に、あなたに復讐する機会も探していました。妻と親友の無念を晴らすために。でも、あなたも蓬莱の薬を飲んで不死になっているだろうから、あなたを殺して恨みを晴らすのは容易ではない。蓬莱の薬の効果がある限り、私の悲願は達成できない。だから、研究したんですよ。途方もない時間を使って、自分の体を使って、薬そのものを。
 残念ながら、薬の効果を打ち消す方法は見つかりませんでしたが、ある程度効果を押さえて、再生能力を制御する方法は見つけたのです。だからその薬、あなたが飲んだ薬は蓬莱の薬の効果を半分だけ打ち消します。同時に飲ませた痺れ薬が効くぐらいにはね。
 ……術が使えないのも不思議ですか? 偶然この小屋に辿りついたというの、アレ、嘘です。
 あなたはこの郷で、随分と勇名を馳せているようですね? 人間達の間でも評判でしたよ。私も長生きしてそこそこは術を覚えましたが、やはりあなたの徐福の神仙術や、不死鳥の力は厄介だ。だから前もって準備をしていたんですよ。
 この小屋の周りには幾重にも結界が張り巡らされていて、それがあなたの力を阻害しているのです。
 あなたは確かに並ぶものが無いくらいお強い方だ。でも、私もあなたと同様に永遠に近い歳月を生きてきた人間なんですよ。術の知識も同じくらい持っています。罠にはめて地の利を得れば、あなたの術を封じることができるぐらいにはね。
 実は里で情報を集めて、一日前からあなたのことを追跡していたんです。
 山地に入り、遠くの尾根からあなたの姿を確認したとき、私は狂喜にむせびました。
 あなたは空が飛べるのに、なぜか里とご自分の庵を行き来するときは徒歩で赴くらしい。何か思い入れがあるのですかね? その道に。例えばその道で、大切な人物に初めて出会ったとか。そういえば、里には半妖だか半獣だかの女性がいまして、あなたのことを詳しく話してくれましたよ。随分と親しくしている間柄みたいですね……まあそれはよい。
 とにかく、私はあなたの行動を調べました。あなたが時折、雨宿りにこの小屋を使うことも、前もって知っていました。私は遠くからあなたを観察し、あなたを陥れる算段を練っていました。そしたら都合良く、雨雲がやってきてくれたではありませんか。私は先回りして小屋に入り、何くわぬ顔をして、偶然たどり着いた旅行者の体を装って、粥の準備をしながらあなたを待っていたというわけです。

 ……これですべて経緯をお話できました。いやあ、おかげですっきりしましたよ。
 あなたの驚きようも期待以上で、大変満足しています。お付き合いいただいて、本当にありがとうございました。

 ……さて、これからのことですが。あなたをどうしたらよいでしょうか?
 どうするのが一番良いでしょうか……。あなたをどうすれば、罪もなく殺された妻と、親友の無念を晴らすことができるでしょうか。
 薬の効果を完全に消すことができないので、残念ながらあなたの命を奪うことはできない。でも、その方が良かったのかもしれませんね…………生きながら、苦しめるという方法もいろいろありますし。
 そういった方法を想像するのも、永遠を生きる身となった私の、楽しみのひとつだったんですよ。
 私は自分の大切な人間を奪われたのですから、あなたの大切な人間を代わりに奪うというのが順当かもしれませんね。例えばあの半妖……おや? はっとしましたね?
 ……安心してください。確かにあなたのことは憎いですが、関係のない人間まで巻き込んでしまっては、どこかの卑劣な誰かさんと同じになってしまう。私はそんなことはしません。そんなことをしてしまっては、妻と友人の二人の魂を汚すことになってしまいますからね。私の復讐は、あなた一人に対してのみ行われてこそ完結し、意味をもつのです。
 ……そうですね、例えば……この薬で再生能力を奪ったあと、手足を斬り落として、身動きができないようにする。
 その上で、皮膚をはぎとり、目耳鼻をくりぬいて。
 あるいは、あなたの術を封じて、人買いに売り飛ばしてしまうというのはどうでしょうか。
 舌を抜いてしまえば、真言も唱えられないだろうし、指を落としてしまえば札も使えないし、印も組めないでしょうからね。
 あるいは、そうしておいて、あなたに恨みを抱いているであろう妖怪の群れの中に放り込む。
 もしくは首から下をすべて取り除いて……妹紅さん、ホルマリン漬けというのを見たことがありますか? 動物の標本などを作るときに使う手法なんですけどね。透明な瓶の中に、腐敗を防ぐための液体を入れて、そこに動物の体のかけらを浸すんです。ぷかぷかと肉片が浮いている様は、どことなく滑稽で、また生き物の生の無機質さを思わせて、どこか感慨深いものがあります……まあ、人間のホルマリン漬けっていうのは、私は見たことがありませんけどね。でも、見たことのないものを見たくなるっていうのも、人の心情の一つじゃないですかね? そう思いません?
 ……楽しみですねえ。私はこの楽しみのために、生きながらえてきたといってもよい。
 ……おや、そんなにおびえることはないじゃないですか。本当に楽しいのはこれからじゃないですか。
 さあ、……一緒に楽しみましょうよ………………

 





 *


 迷いの竹林と呼ばれるその原生林は、この世の光景とは思えない美しさをたたえながら延々と続いていた。
 隙間なく生い茂っている竹の一つ一つが、ところどころ発光しているのだ。また、半透明で先が透けて見える竹もある。おそらくは、この竹の一本一本も、この郷の多くの事物と同じく、外の世界で幻想となった物が入りこんで形成されたものなのだろう。これらの竹のいくつかは、私が大昔に、あの子を発見した場所に生えていた数本の不思議な竹と驚くほどそっくりだった。月の姫と呼ばれるあの子が隠れ住むのに、これほど相応しい場所が他にあるだろうか。

 私は竹林の中の道を、屋敷の方角を目指して歩いていた。
 迷いの竹林といわれるだけあって、訪問者を迷わせるための、それなりの術が施してあった。だが、私だって千年以上生きているし、術の知識もいくらかある。この程度の迷いのまじないならば、無効化できる妖力を持っているのだ。
 
 ……あの後、私は震える妹紅を痛めつけた。
 持っていたクナイを彼女の手足に刺して、小屋の壁と床にくくりつけ、侮蔑の言葉を浴びせかけながら、私は身動きできない妹紅の体を小刀で切りつけた。

 ……だけど、そこまでだった。
 急に、すべてがひどく虚しく感じられた。
 ……予想はしていたことだったが。

 妹紅は泣いていた。
 そこには私が切りつけたい、負の感情をまき散らしてぶつけたい相手などいなかった。
 自らの悪名を顧みず、千二百年の間生き続けた勇ましい太古の英霊。そんなものはどこにもいなかった。
 目の前にいるのは、過去の罪を思い出し、追いかけてきた亡霊におびえ、涙を垂れ流している一人の人間の少女だった。彼女が本当に、私たちにしたことを悔いているのか、その場の雰囲気に流されているだけなのかどうかはわからないが、余りにも弱々しいその姿を見て、私はこんなにも矮小なもののために、虚しい行くあてのない感情のために、苔の蒸すほどの長の歳月を生き続けていたのだろうかと考えたのだ。
 ……私は復讐という幻想が覚めたような気分を味わった。
 ……長く生きている間に、私の心も無常観に支配されてしまっていたのかもしれない。私の心からは、妻と親友を失った時の、あの焦がれるように熱く、猛り狂う憎悪の熱量が冷えて、霧散してしまっていたのだ。

 私は新たに二三度妹紅を斬りつけた後、彼女の髪をつかみ、嗚咽をもらす彼女の頭を小屋の壁に叩きつけた。衝撃で、彼女の腕に刺していたクナイが外れた。そしてその後私は、
「生きて、おまえが殺した人たちに詫び続けろ」
 そう吐き捨てて彼女を床にうちおろし、一発腹に蹴りを入れた。

 ……しゃがみこみながら嗚咽を漏らし続ける彼女を後に、私はただ黙って、部屋を出ることにした。
 ……じきに彼女の体の自由を奪っていた薬の効果もきれるだろう。どちらにしろ、蓬莱の薬を飲んだ妹紅を殺すことはできない。この女にとっては、私という罪の象徴のような存在が、永遠に生き続けているということ自体が、何よりも精神的な責苦となるだろう……そう考えたのだ。

 ……ともかくもあの女に灸を添えてやるという仕事は終えた。
 ……もう、それで十分だろうと私は考えた。




 …………。
 さて次は、いよいよ本命の番だ。やっと娘に会える。私は嬉しさでいてもたってもいられなかった。
 私にとっては、妹紅の件などは、娘に会うついでにすぎなかったのだ。
 確かに、妻と親友を殺してくれたあの女は憎くてしょうがないが、もう千年以上も時間が過ぎている。
 さすがに当時ほどの復讐心は持続していなかった。時間とともに、憎しみが風化してしまったのだ。妻も親友も、今頃は転生して新しい人生を歩んでいるだろうし、娘も妹紅のことをそれほど重く見ていないという。
 それならば私も、深くこだわる必要はないだろう。
 それよりも、これからの未来のことを考えよう。ちょっと悪趣味かもしれないが、時折あの女の元を訪れて、嫌味を言ってやるというのも、楽しみの一つとして持つことができるだろうし。

 竹林の上の空では、雨が晴れ上がり雲が一つもなく、まるで私の再会を祝福してくれているかのようだった。
 足取りは軽く、心がはずんでいくのがわかる。
 私は希望に満ちあふれた気分で竹林の中を進んで行った。千二百年生きてきて、また再び、ここから私の人生が始まるかのようにも思えた。
 どこか懐かしい雰囲気すら覚える藪をかきわけて、里で聞いた伝承の屋敷を目指す。
 永遠亭、そういう名前だと聞いている。娘も蓬莱の薬を飲んでいると聞く。無限の住人となった私たち親娘にとっては、なかなか因果のある名前だと思う。
 薄暗い林の中。丁度、私がなよ竹を見つけた場所に似ている一角があり、そこにその屋敷はあった。
 外観を眺めてみれば、とても清楚で質素で、純和風の清々しい作りの建物だった。まるであの子のようだと思った。
 ああ、ここに娘がいるんだ。私は門の前で大きく息を吸いこんで背伸びをした。わずかに竹の葉の切れ間から、太陽の光が差し込んでいて、その下の地面が陰影を吸いこんでいた。
 近くでびくっと震える生き物の気配を感じた。
 門の前を見ると、一匹の妖怪兎が茅葺きの門にもたれかかっていた。
 どうやら、門番をしながら居眠りをしていたらしい。
「こんにちは」
 私が話しかけると、その兎はびっくりして振り向き、目を見開いて耳をとんがらせた。
 迷いの竹林を通って屋敷を訪ねてくる人間なんて珍しいらしい。
 私は警戒して後ずさる門番の兎をなだめながら、用件を伝えた。自分は、この屋敷に住む主の親類のものだ。信用してくれなさそうだったので、自分とあの子しか知らない思い出のことを話した。もし私が誰かわからなかったら、あなたが柿の木に登っていたずらをしていた時のことを思い出してください。そう伝えるように言った。
 兎はすぐに屋敷の中に引っ込んでいった。



 ……。
 しばらくして、数人が屋敷の中から出てきた。
 私にはすぐに彼女が分かった。

「なよ竹?」
 私は昔どおりの名前で彼女を呼んだ。屋敷から出てきた一団の中心に、彼女がいた。
「ああ、やっぱり……昔のままの姿だ……おお、おお、なんと懐かしい」
 なよ竹は、別れた時の美しい姿のままだった。
 黒く艶やかな真珠のような長く美しい髪。少女のみずみずしさにあふれている肌。整った顔立ち。
 あのとき、みかどの前でなよ竹が吹いた笛の拍子が、竹林の中に響き渡ったような気がした。
 一瞬時が止まったように感じた。
 私たちの間には、確かに永遠が存在したのだ。私はそう確信した。
 私は湧きあがってくる感情を押さえながら、また彼女に話しかけた。
「お久しぶりですね。もう私のことなんか、忘れてしまいましたか? 無理もない……姿かたちも随分変わってしまったし……なによりあれから千二百年になる。あなたが地上にいると聞いてからはいてもたってもいられなくなって」
 そこまで言ったところで、なよ竹の、彼女の目がうるみ、顔がぶわっとなった。
「とと様……」
 なよ竹が、両手を広げて私の胸にとびこんできた。
 私は娘の体を抱きしめた。着物に焚き込めた香の匂いがして、そして、私は妻と娘と私の三人で一緒に暮らしていた時のことを思い出した。
 今は妻がいないけど、これからは親娘二人、ずっと仲良く暮らしていこう。肉親と呼べるものは、この地上に私たち二人だけしかいないのだから。私は抱いた腕にそういう想いをこめ、彼女の美しい髪を撫でながら、無言で彼女に語りかけたのだ。

 …………?

 その時だった。私は不思議な印象を覚えた。
 いつの間にか、彼女の顔が私の視線の上のほうに来ていた。
 いつの間にか、私が彼女を見上げる形になってしまっている。
 これはいったいどうしたことだろうか? わたしの方がだいぶ娘より身長が高かったはず……。
 だんだんと、はっきりしてきた。
 体がおかしい。明らかに、私は自分の体に変調を感じていた。私の、私の体が崩れていく?
 私の体は指先から足もとから、まるで砂のようにぼろぼろと崩れていっていたのだ。
「こ、これはいったい……?」
 私は自分の崩れていく指先を目に入れてうめいた。
「とと様……?」
 なよ竹の美しい眉がゆがむ。何が起こったのかわからないと言った様子。
 私にも分からなかった。確かなのは、私の命が尽きようとしているということだけだった。
 なよ竹が、砂になって崩れていく私の体を、必死で掻き集めようとしている様子がわかった。
 彼女は半狂乱になって、隣に控えていた、おそらく従者と思われる女性に問いかけた。見覚えがある。なよ竹が私たちの元を去る日に、月の使者としてやってきた女性だ。なよ竹と一緒に暮らしていたのか……。
 ……蓬莱の薬の効果が切れたのではないか。地上人に対しては永遠ではなかったのかもしれない。そんな声が聞こえてきた。

 ということはもしかしたら、あの娘も、妹紅も今頃は私と同じように? ……薬を飲んだ時期が違っていれば、時間差があるかもしれない。あるいはもしかしたら。
 ……私は蓬莱の薬の効果を無効にする研究をしていた。それは成功していないと思っていたが、実は……いや、そんなことは、これから死んでいく私にとってはどうでもよいことだ。
 やがて、だんだんと私の意識は薄れていった。最後に視界に移ったのは、大粒の涙を流しながら父の死を必死で防ごうとしてくれているなよ竹の綺麗な顔だった……。

 そこで私は自分の愚かさに気づいた。
 なんということだ。妹紅に復讐するなどと言う、あんなどうでもいいいたずらにかかわっていないで、まっすぐこの屋敷に来ていれば、せめて丸一日の間は娘と一緒に過ごすことができたというのに……。


 私は後悔したが、悔いても既に遅かった。そのうち、私の体は全て灰となるのだろう。跡には何も残らないはずだ。まるで風の前の塵と同じように……成す術もなく、霧消するのだろう。私はそう考えた。
 ……そうして、私の意識はやがて、深い深い、永遠の闇の底へと沈んでいった――






あふことも 涙にうかぶ わが身には しなぬくすりも 何にかはせむ
(あなたに再会することがかなわないのであれば、不死の薬があったとしても何になりましょうか)

  『竹取物語』より翁の詠んだ歌
乳脂固形分
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最新
投稿日時:
2008/02/11 08:53:00
更新日時:
2008/02/13 23:53:00
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1. 6 俄雨 ■2008/02/11 21:27:00
良い感じに胸糞が悪いです(伝わってくれると嬉しいです)
蓬莱の薬についての解釈は首を傾げますが、間違って長く生きてしまった人間の悲しみと愚かさは十分伝わってきました。
2. 2 小山田 ■2008/02/13 17:50:44
妹紅が蓬莱の薬を入手する経緯は曖昧されているものの、輝夜と妹紅の関係に触れる上で欠かせない要素ですね。その部分を正面から書ききった、読み応えのある内容でした。
ただ、残念だったのがとってつけたような展開と、独白がクドく独り善がりなせいでラストシーンまでに気持ちが冷めてしまった点です。
3. 4 あまぎ ■2008/02/14 00:49:40
翁が妹紅に復讐をする絶好の機会。
それが仇となったこの悲しいお話に、素直に上手だなあ、と感心しました。
特に、研究の成果による皮肉な結果、という終わり方が良かったです。

自分の感情を入れて点をつけるのはどうか、とは思いますが、
少し、違和感を感じたのでこの点数にさせてもらいました。
やっぱり、翁に復讐は似合わないと思うのです。
術の研究についても同じ。自分の想像する翁ならば輝夜を探しこそすれ、
……いや、それ以前に不死を望むようには思えません。
なら妹紅にただ殺されるだけなのか? と聞かれると、それもまた違う気がする優柔不断な自分ですが……。
見苦しい感想を長々とすみませんでした。
4. 9 mizu ■2008/02/19 16:46:46
 感動しました。
 文章の上手さ、ストーリー展開の巧みさ、アイデア、いずれも素晴らしいと、素人ながらに思いました。

 もし、彼の推測通り、妹紅が絶命しており、且つそれが彼の薬ゆえであったなら。
 この一件の最大の犠牲者は、それこそ何の罪もない慧音なのかもしれない。そして、悪意は全く無かったにせよ、彼は「卑劣な誰かさんと同じ」結果をつくってしまったのかもしれない。
 そんなことを妄想したりしました。
5. 7 飛び入り魚 ■2008/02/20 05:02:20
短いながら見事に濃縮しきってて巧い。
「機会」をより活かせていれば私は文句一つ言えなくなってしまう。
残された慧音の気持ちを思うと心が痛んじゃう。じじいめ、ちくしょー!
6. 6 カシス ■2008/02/27 12:01:07
救われないなぁ……と思いながらも、生きていたらどうなるだろうかと考えます。ところで、お題は「機会」と「毀壊」といったところでしょうか?
7. 8 ■2008/02/27 22:24:36
読み進めていくうちに背後から忍び寄ってくる恐怖感にドキドキしていました。
みやつこの丁寧な語り口が逆に怖かったです。
怖かったけどいい話ですね。
でもみやつこの話を聞いた妹紅の反応がちょっとあっさりというか、
ちょっと曖昧な気がしました。少し物足りないとか。
8. 3 ■2008/02/28 20:41:30
んー……昔話にある、余計な事をしたために本来の目的を達成できないENDか。
蓬莱の薬関係がちょっとムリがあるような……
蓬莱の薬のブラックボックスがまだ明らかになってないから、どうして中和できるのかとかどうして効果が切れるのかとか、時間をかけて研究しましただけで説明出来るとも思えないし。なにせ材料がなさそうだ。
これをどうにかできるのは永琳か輝夜だからなぁ。むしろそういう黒い終わりの方が
9. 5 たくじ ■2008/02/28 22:39:54
翁も輝夜もあまりにいたたまれない。こうも悲しい話はどうしても苦手です。
よく出来ている作品だと思います。
10. 5 椒良徳 ■2008/02/29 00:03:19
若干輝夜パパの台詞がくどい気がしますが、とても印象に残る話でした。
印象には残ったのだが。
11. 5 時計屋 ■2008/02/29 00:54:47
人を呪わば穴二つとはまさにこのことですね。
お話自体は古典的でしたが、オチが効いていて面白いと思いました。
12. 6 ZID ■2008/02/29 01:41:07
まったく予想していなかった解釈に、心底感心。富士山へ旅行のくだりで、もしやとは思いましたが……そうか、そりゃ二つあるよなぁ。ラストシーンに若干推敲しきれていない印象を受けたので、点数はちょい低め。話自体は興味深く、楽しめました。
13. フリーレス 床間たろひ ■2008/02/29 01:48:11
んーーーーーー
よく調べてるし、よく書けてるし、よく練られていると思うのだけれど。
好きになれない――結局はその一言になるのかな。
うん、この話を好きになることはできませんでした。
別にグロが嫌いとか設定が納得いかないとかそういうことじゃありませんので。
14. 6 木村圭 ■2008/02/29 05:02:52
世にも奇妙な物語みたいだな、とぼんやり。幻想郷に入った後でまっすぐに輝夜の所に向かえば1日なんてものじゃなかったでしょうに。誰も幸せになれない後味最悪な物語、たまにならこんなものも。
15. 5 とら ■2008/02/29 09:25:10
文に引き込む力があり、先を読むにつれ展開が気になっていきました。
ただ、それだけに、最後の展開には少々肩透かしを食らった印象があります。蓬莱の薬の設定に関しても、少し無理矢理な気がします。
後、個人的な所感として、「さあ、……一緒に楽しみましょうよ………………」あたりで締めていれば、適度に余韻が残って良かったのではと思います。
16. 7 らくがん屋 ■2008/02/29 11:16:32
悪くは無い、むしろ良い。けれど、楽しくない。楽しさを求めるSSではないのだから妥当か? うーん、これだからコンペは奥が深い。
17. 4 つくし ■2008/02/29 12:00:40
志村ー! それ帝の歌ー! 志村ー! (この時代の貧民層であるところの翁には歌を詠ずるほどの教養は無いはず(劇中で文字が読めない描写あり)なので、竹取物語の異解釈としても根拠的に弱いです。ついでに言うと、貧民層の人間と、間接的にせよ帝に仕える人間=貴族の血筋の者、調岩笠(つきのいはかさ。永夜抄の「月の」は神主のシャレであり当て字)が幼馴染というのも可能性としては限りなくゼロに近いですが……この解釈は俺的にはセーフです。)
さておき、非常に面白い解釈で、楽しんで読ませて頂いたんですが、ラストシーンがどうにも致命的な瑕です。一人称小説で語り手が自分の今わの際を冷静に実況する、という不可能描写をすることが、細かいことかもしれませんが俺には許せません。「私の意識はやがて、深い深い、永遠の闇の底へと沈んでいった」と言われても、そんなことを言ってる暇があったら死なないように努力しろと思いますし、じゃあ消えた後で語ってるお前は誰だと言いたくなります(この小説の語りが途中で回想体になるのも致命的です)。このラストシーンに持って行きたいなら、 * 以降を主観的な三人称(一人称視点で書いた三人称文体)にすべきでした。ああ、惜しい。
18. 7 as capable as a NAMELESS ■2008/02/29 13:31:33
鬱憤も晴らしたし、最後輝夜に会えたし、永遠の苦しみも終わったし。
何気にかなり幸せな蓬莱人だったような気が。
19. 1 中沢良一 ■2008/02/29 15:22:21
読み物として評価でき無かったです。好みだと思いますが、この書き方だと想像する余地が無いというか、主人公になりきった書き方に私は面白みを見出せないのです。後半は一人称書きでよかったのですけど。
20. 5 名無しの37番 ■2008/02/29 16:20:05
ああ、勿体無い。「不死の薬を飲み妹紅に復讐を願う竹取の翁」という、何重にも美味しいキャラクターを使っているのに、それがうまく活かせていないように思えました。
物語全体が彼一人の自己完結で終わってしまっているせいで、妹紅や輝夜らがほとんどハブられているのです。彼女らともっと絡ませられたなら、もっともっと厚みのある物語になったんじゃないでしょうか?
彼一人の物語としては、この作品は確かに秀逸です。ですが、読み終わったあと、「だから何だったんだろう」と思えてしまうのです。失礼かも知れませんが、それが正直な感想です。
ですが、小説としての完成度は高いと思いました。今回の感想としては残念でしたが、次に作者氏の作品を読む機会があれば、期待したいと思います。
21. 10 K.M ■2008/02/29 18:39:35
機会を追い求め続け、機会を逸した男。過去の罪に追われる蓬莱の人の形。そして救いの見えない結末……圧巻でした。
22. 1 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:55:52
よく出来た話だと思います。
でも、もこたんが…。
23. 6 つくね ■2008/02/29 20:19:23
思えば殺されていますもんね。この人を主題として取り上げるものは初めて読んだと思いますが、実に上手い。さらに後書きでグッと来ました。
24. 9 レグルス ■2008/02/29 20:25:35
地方伝奇物といった感じの雰囲気がとても良かったです。
どこか教育的で淡々とした辺りとかが深く印象に残りました。
素直に上手いなぁ と。
25. 4 八重結界 ■2008/02/29 20:55:29
妹紅への恨みが風化してしまったという割には、随分と執着していたように思えます。
最後のオチに絡めてとのことなのでしょうが、どうにも男の行動が矛盾しているようにしか思えません。
それと三点リーダーを多用しすぎているので、少しテンポが悪かったです。
26. 3 O−81 ■2008/02/29 21:38:22
 最後、もうちょっと何かあっても面白かったかも。
 あのまま死んじゃうと拍子抜けというか報われないというか、読後感があまり感じられなくなってしまうので。
27. 4 只野 亜峰 ■2008/02/29 21:41:37
とりあえず文体。
「」を使わない話し言葉だけで書き綴るというのもなかなか難しいのですが。

 ――おや、随分と雨に打たれたようですね。外は大変だったでしょう。
    さあ、どうぞお上がりになって、体を暖めてください。
 ――それにしても、こんなに急に天気が崩れるとは思いませんでした。
    山の天気は変わりやすいと言いますが、本当にそうですね。
    あ、私もほんの一刻ほど前にこの小屋を見つけたばっかりなんですよ。
    山の中ですが、しっかりした小屋があって助かりました。けっこう丁寧な造りですよね。

みたいな感じにするとすっきりすると思います。
この文体でいくのであればある程度改行は多くなってもいいかなと。

お題のほうは機会という解釈で良いのかな。
話自体は良かったのだけれども、ちょっと調理が甘かったかなと。
28. 5 BYK ■2008/02/29 22:15:40
業の深い翁だ。輝夜に会えただけまだ救われた方かもしれない。誰かを恨み続けるような生き方、したくないものですね。
29. 5 moki ■2008/02/29 23:26:47
永夜抄は重たいですね。どうか妹紅にも幸あらんことを。
30. 5 冬生まれ ■2008/02/29 23:29:19
普段のゲーム内では描かれない東方世界のダークな設定部分。
ちょっと考えさせられました。
31. 6 織村 紅羅璃 ■2008/02/29 23:30:57
前半、すべてがさかきのみやつこの台詞というのはなかなか斬新な発想で面白かったのですが、少々読みにくかったような気も。
それにしても、彼もなかなか悲しい運命でしたな。結局、彼と、なよ竹のかぐや姫と、藤原不比等の娘、全員が悲しむことになるとは。
32. 7 カミルキ ■2008/02/29 23:52:02
ごめんなさい。ラストが受け入れられませんでした……
でも文もオリジナリティもかなり良かったですよ。
33. 6 blankii ■2008/02/29 23:54:30
一人称凄い。そこはかとなくインセスト言うと作者さんには怒鳴られそうですが、明らかに単なる父娘の感情とは違うようなー。なんというかモノクロームっぽい感情のあり方に恐怖しました。

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