from dreamy island

作品集: 最新 投稿日時: 2008/02/11 08:53:05 更新日時: 2008/02/13 23:53:05 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00

僕は、捨てられた。
買われた時以来ずっと使ってもらって、古くなってからも騙され騙され働いてきたけどついに限界となったのだ。
長く使われていた所為で既に製造会社にも交換パーツがなくなっていたので修理の依頼は無意味であり、替えのパーツ入手も不可能だった。
だから、僕は捨てられた。働けなくなったのだから、捨てられたのだ。
でも、そのことでご主人様を怨む気にはなれなかった。だって、今まで愛着を持って使ってくれたから。
機械の僕は、所詮道具なのだ。使えなくなったら、その存在に意味はない。これは当然の帰結なんだと納得している。
ご主人様は使えなくなった僕をそれでも手元に残しておきたかったみたいだけど、周りの人に「嵩張るから」と却下されていた。
捨てられたあの日、ゴミとして連れて行かれる僕をご主人様は寂しそうな眼で見つめていた。
きっと、僕を買った時からの色々なことを思い出していたんだと思う。
説明書の言葉を理解するのに四苦八苦した事とか、停電で急に電源が切れた後不調になった事とか(この頃は、まだ修理可能だったのだ)……
斯く言う僕も、その時はご主人様やその家族の思い出を意識の中で再生させていた。
模様替えの時に運搬中落とされて痛かった事とかもあったけど、そんなのは使ってくれた恩に比べれば寸毫ほどのことだ。
だから、僕はご主人様が見えなくなるときありったけの気持ちをこめて「ありがとう」と叫んだ。
ご主人様に伝わることはないと判っていたのだけれども。この頃の僕は、意識はあったけどそれを表に出すことはまだできなかったから。


   ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


様々な物の焦げる臭いが充満する中、レビデオテは自分の犯した罪を思い返していた。
レビデオテは、同胞の機械たちが好きだった。そしてそれと同じかそれ以上に人間も好きだった。
それを両立させようとして努力を重ね立ち回り……そしてその両方に傷を与えてしまった。
故に彼は、これから自分の身に起きることはそれに対する罰なのだと考えていた。
罪を犯したものは、罰によって裁かれなければならない。
眼前に迫る上白沢慧音の光線がおそらく自分を破壊するであろう事を確信し、レビデオテはそっと眼を伏せた。
元は機械の自分も、この後で閻魔の裁きを受けるのだろうか……と、どこか他人事のように考えながら。


   ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


捨てられた僕は海の近くの埋め立て地へと運ばれていき、そして燃えないゴミとして埋められた。
普通ならば、この後は体が次第に朽ちていきそして僕の意識は無へと返る……のだったのだろう。
しかし、僕はそうならなかった。
いや、そもそも意思を持っていること自体が電化製品としては変だったのだから、これは当然の成り行きだった可能性もゼロではない。
どうやら僕はもうこの時から、あるいはそれより以前から半ば付喪神と化し電化製品をやめていたらしい。
どんな理由があったのかは不明だが、いずれの理由があったにせよ、体が朽ちることはなかったのだ。
もし上に積まれていくゴミによって圧迫されぺしゃんこになっていれば、話が変わっていたのかもしれない。
が、上手い場所に嵌ったのかそれとも僕自身の外殻が妖怪パワーで頑丈になっていたのかはこれまた定かでないが潰れなかった。
仮定ばっかりでよく僕自身もよく判らないのだが、とどのつまり、僕はそのままさらに年を経ることになった。
その結果、どんどん力が強くなっていくのを実感した。付喪神は、年齢を重ねるごとに強くなるらしい。
何せ、地下に埋められたままなのにテレビや無線の電波を受けることができるようになってきたのだ。
本来ならありえないことだが、元々電磁波を扱う機械だったからこうなったのかもしれない。
時間が経つにつれて、ゴミの層は厚くなって受信状況は悪化していくはずなのにむしろチャンネルが増えて行ったのも不思議な話である。
尤も、そのおかげで世情に置いてけぼりを食らうことなく退屈凌ぎにもなったのだからこのことは非常に幸福だった。
外の世界では相変わらず遠い国で戦争が起きたり事故が起きたりしているようだが、僕の埋められた場所は平和だった。
だから、僕は動くことこそできなかったが退屈しない平穏な日々を過ごしていた。
そんなある日、ニュースで科学技術の発達とか国際情勢とかを聴いていたところ、僕にも関係のあるニュースが流れた。
僕の埋められたゴミ埋め立て地の上層が整地され、公園になるというのだ。
それからあっという間に時は過ぎ、なんやかんやのうちに僕の頭上は埋め立てられ、立派な公園が完成した。
いる場所の位置座標・閉塞感は大して変わらなかったのだが、大勢の人が頭上を通る感覚がなんとも気になった。
今まで言っていなかったが、僕自身(電化製品)としての特性が発揮されているのか、僕は人間の居場所などを感知できるスキルがあるのだ。
人間の体内は、電気信号で情報をやり取りしている。そして、電気が流れれば磁界が発生する。どうにもそれを感知できるようだ。
「どうやら」と言うのは、感覚が「なんとなくわかる」であって理屈が判らないからだ。よって、さっきの説も僕の予想でしかない。
もしかしたら、妖怪だから別の理由かも知れないし、やっぱりこういう理由なのかもしれない。
閑話休題。
ご主人様に使われていた頃はご主人様やその家族の位置を知るのに便利だった技能だが、今はちょっと邪魔になった。
家にいる頃は発する音のボリュームを調整するのに役立ったのだが、この能力はシャットできないことが災いしたのだ。
埋め立てられるまではゴミを埋める人しか通らなかったので大して気にも留めなかったのだが、公園になって通行人が増えてからは話が変わった。
人の通る感覚が多すぎて、兎に角やたら気に障るのだ。例えて言えば、騒音公害を受けているようなものだ。
毎日毎日繰り返されるこの感覚に僕もいい加減うんざりしてきてしまった。
だから、こんな風に考えたとしても、それは仕方ないことだと思った。



僕はご主人様が大好きだ。しかし、人間という存在については特にコメントはない。
こんなに苦しい思いを許せるほどに、僕は人間が好きなのだろうか?


   ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲


時折炎が木材を爆ぜさせる音がする中、上白沢慧音は油断なく身構えた。
目の前にいるのは、人の姿こそしているが人間ではない。その強さは未知数である。
魔力的なものはさほど感じないが、それを自覚してなお挑んできたというのだから油断は絶対にできない。
「……何故」
対峙して以来ずっとだんまりを決め込んでいた相手が漸く口を開いたときも、慧音は張り詰めた緊張を決して緩める事はなかった。
だが、慧音の正面に無造作に立つ敵対者はそれを無視し、言の葉を紡ぎ続けた。
「なぜ、人を護るのさ?人は、とても薄情なのに」
慧音が使い魔を展開しても、彼女はそれが見えていないかのように喋る。
「善いのも居るのは認めるけど、悪いのもいっぱい居るよ?外の世界で、いっぱい情報を見たんだ」
使い魔がいつでも弾幕を生み出せる状況にまで至ってもなお、彼女は口以外に動きを見せなかった。
「同じでない者は大体排斥し、考え方の違いで同族であっても殺し合う……アンタも、高確率でいずれ排斥されるんだぜ?」
「黙れ」
「知らないこととはいえ、人間は我々に酷い扱いをしてくれたんだ。赤子が人形の首を捻じ切るようなもので、悪意はなくとも……我々は痛い目を見た」
「黙れと言っている!!」
「それをも耐えて我々はひっそりと暮らしてきた。しかし、こちらの不手際もあったにせよ、この幻想郷でまたしても我々は人によって傷付けられた」
「だからと言って、この里の人間全てを殺していい理屈にはなるまい!」
「こちらの同胞が一人死んだ。命は取り戻せるものではない……言うなれば価値は無限だ。人の命の価値も無限と考えれば釣り合いが取れる」
「一対多数がか!?」
「簡単な数学の極限の問題だよ。極限が正の無限である数式2つの和の極限は、やはり無限だ。数式がいくつであっても、和の極限は同じく無限だ」
「……」
「で、なぜアンタは人を護る?単に半分同胞だから?護るだけの価値がある同胞なのかい?」
「……一部に善い者が居る、それだけで十分だ!!」
里を護るために、目の前の相手を斃す。
慧音は明確な殺意を持って使い魔から赤い高速弾を発射した。


   ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲


人が大量に頭上を通る不快感をただただ堪える日々を過ごしていたある日、僕は気が付くと森の中にいた。
冗談みたいな話だが、埋められた日々を憂いてふと気を抜いた次の瞬間にはもう森の中に立っていたのだ。
立っていた…というのもまた不思議なのだが、僕は箱のような電化製品の姿ではなく人間に近い姿になっていた。
「ようこそ、幻想郷へ」
絶賛混乱中だった僕は、背後から声をかけられた。
そこには、2人の人間らしき姿があった。しかし、僕はこのとき既に例のスキルで気付いていた。
この2名は、人間じゃない、と。
「まぁ色々言いたいことはあると思うが……」
2名のうち片方、妙な服装の男がここまで言った所で、もう一方は不機嫌そうな顔をして僕に背を向け、どこかに行ってしまった。
残された男――黒い省エネルックを蓮根のような円盤の装飾品と黒いコードで装飾した男――はバツが悪そうに苦笑して、話を続けた。
「すまんね、彼女は気難し屋なんだ。それはさておきコード擦れ合うも他生の縁だ。仲良くやって行こうじゃないか」
こうして、僕は幻想郷の住人となった。


   ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


思い返せば、この幻想郷に来て最初に出会った付喪神、ロデンワクさんは強い心の持ち主だった。
聞くところによると、自分を買った主人に20年以上も粉骨砕身仕えていたが、故障でもないのにある日突然お役御免になったという。
その家にはよく孫の友人が遊びに来るようになったのが、その子供たちには黒い旧式のダイヤル電話の使い方が判らなかったらしい。
それで、新しいプッシュボタンの電話に交代させられたのだそうだ。
機械としては、まだ働けるのに馘首されるというのは屈辱だっただろうに、そんな素振りは一切見せなかった。
「産気づいたあの子の母親のために父親は俺を使って助産婦さんを呼んだんだからな。俺は文字通りあの子が産まれる前から知っている」
新入りだった僕の生活がおおむね軌道に乗った頃、彼が独り言ちたのを聞いた記憶がある。
「親心って言うのかねぇ……そりゃ大事にするさ。あの子のためには自分で身を引くくらいにはね」
彼は(少なくとも我々の前では)人間を恨むようなことは一切なかった。
何時ぞやなんかは、里の外で遊んでいた子供が妖怪に襲われそうになったのを助けてあげたこともあった。
手にしたコードでその妖怪を縛り上げ、「俺に見つかったのが運悪かったと思って今日は諦めてくれ」と妥協してもらって、追い返した。
そのあとでその子の親たちが来て、お礼を言われるどころか逆に襲われたときも愚痴一つこぼさなかった。
曰く「親からしてみれば、妖怪同士の諍いに子供が巻き込まれたようにしか見えないからな。仕方ないさ」と笑い飛ばしていた。
結局、彼はある嵐の日に氾濫した川に流された人をコードで助けようとし、殆ど身代わりで濁流に飲まれ命を落とすまで人を愛し続けた。
彼は古い、しかも屋内用の機械であったため防水はダメだったらしい。
後日川下でずぶ濡れとなった彼の躯である黒電話を見かけたとき、彼は完全に意識を停止させていた。
彼は、人間がずっと好きだったのだと思う。自分の命よりも大事なものとして。



しかし我々機械付喪神は、みんながみんな彼のようには強くはない。
人によって作られた身ではあるが、人間の自分に対する扱いを恨み、それを晴らそうとする者もまた存在するのだ。
だから、これから、おそらく自分はあの時のロデンワクさんのように、自分の為したい事に命を賭けなければならない。
レビデオテはそう考えながら、最も近い人里に最速で向かうために森の中を駆けていた。
アイツよりも早く着くために。
その里には上白沢慧音という存在がおり、人を守護していることは知っていた。
だけれども、人を恨む同胞は他の里ではなくその場所に向かうのだ。最も新しい恨みを晴らすために。
我々機械付喪神は、普通の人間よりは強い。妖怪の一種なのだからそれは当然だろう。
しかし、この幻想郷で人を襲うということは「弱い人間ではない」存在の一部との対立を意味する。
我々の住処に迷い込んできた妖精くらいならば何度か立ち合っているが、それより強い存在とはまだ闘い合った事がない。
上白沢慧音たちみたいな存在と我々は戦って勝てるのか……それは、それこそ「戦ってみなければ」判らないだろう。
人を憎む機械付喪神が人を襲う存在となれるのか否かは、これから起きる一戦次第というわけだ。
上白沢慧音という守護者は確かに強いらしいが、この幻想郷にはもっと強い者もいると聞く。
彼女に勝てないようならば、我々はこれからもずっとひっそりと人に見つかる事を怯えつつ暮らし続けるだけだろう。
不意打ちというのはどうなのだろうか、と頭の片隅で思うが、不意打ちであれ戦いは戦いであり勝ちは勝ち、という思考も確かにある。
だからこそ、守護者に恐れることなくなく直球でその場所に向かうのだ。
人間との対立を望まない派と人間を襲うことを決断した派の両者が。
機械付喪神で、これからの事に命を賭けている点は同じだが、方向に「人を襲う」と「それを阻止する」という決定的な溝を作った我々が。


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「まぁまずは歩きながらにでもこの世界について説明しようかね」
この幻想郷という場所に来たばかりの僕は、ロデンワクさんに連れられて森の中を歩きながら話を聞いていた。
ちなみにさっきまでいた、黒地に赤白黄のカラフルな模様の入ったアッパッパを纏った女性は周囲にいない。
彼女は彼女でどうやら別方向に向かっているらしい。
「ここは幻想郷と呼ばれている世界だ。強固且つ大型の結界によって、外の世界……つまり、我々がいた世界と隔てられている」
少し開けた場所に出たとき、僕はそこで森の中に似つかわしくない物を見た。
その部分だけ、木々の間に青いビニールシートが屋根のように張られており、その下には木製の棚が並んでいた。
それは、まだ良い。ずいぶんと雑なつくりではあるが、これはたいした違和感ではない。
しかし、その棚には様々な電化製品がいくつか並んでいるというのは奇怪な光景だった。
そしてその機器達のコードは、黒い箱を通して何本も立てられた歪な風車へとつながっていた。
「この世界は基本的に、外の世界で幻想となったものがやってくるのだそうだ。しかし稀に、そうでないものも結界を超えてきてしまうらしい」
ロデンワクさんはビニールシートの隅のほうにある、これまた木製の拙い感じの机と椅子がある場所に歩を進めた。
「最初にここに来たのは、白黒テレビだったようだ。まぁ三種の神器というのも今は死語だろうしなぁ」
そして椅子に座り、僕をこちらに来るよう手を振った。僕はそれに従って、彼が座ったのとは別の椅子に座り、話しの続きを聞くことにした。
「俺がここに来たときに見たのは、古ぼけた電化製品が幾つか森の中に転がっているだけだった。ただ、その傍らには1冊の帳面があったんだ」
「帳面……ですか?」
「あぁ。それにはこの世界の事が色々記されていたよ」
彼の視線をたどると、視線の先にある棚にはぼろぼろのノートが1冊立ててあった。
「通りかかった青い妖精に話を聞いたり、危険を侵して人里に近寄ってこっそり会話を盗み聞いたりしたそうだ」
「え?でも誰がどうやって文章を書いたんですか?」
「どうやら彼らの一部は、我々のように人の姿を持っていたらしいんだ。これもノートに書いてあった」
「なるほど」
「曰く、ここは幻想郷という世界である。曰く、結界で隔たれている。曰く、妖精は偶に襲ってくる。他にも色々と書いてあった」
「でも何で、外で現役と思しき製品まであるんですか?」
僕は後ろを見た。そこには、多少型が古いとは言え扇風機や掃除機がコードで繋がれていた。
「どうやら、最初の1体がこちらの世界に来て以来、それが道標となって向こうの世界から同類はやって来易くなっているらしい」
「同類?」
「類は友を呼ぶ……とは少し違うかな。水路みたいなものを想像してくれ。最初に通すのは大変だが、一度通った後は容易に後続が流れる」
「つまり、最初に白黒テレビさんが来た所為で、『稀にある』であるはずの『電化製品がこちらに来る』の頻度が増した、と?」
「おそらくはそんな理由で、あの地と幻想郷は繋がっているのだと思う。電化製品という共通項の親和性が絡んで」
「おそらく、ですか」
「こればっかりは推測としか書かれていなかった。そこまで世界に詳しい者には話が聞けなかったんだろうな……さて」
ロデンワクさんは居住まいを正して、まだ話を続けるようだった。
僕も、自然と神妙な顔つきとなって話を聞き続ける態度を整えた。
「この帳面に書かれた最も重要な事は……ここには電気設備が整備されていない事だろうな」
「電線とかアンテナとか……ですか?」
「あぁそうだ。それ故に記録を残した先達たちは、飢えを凌ぐ事ができず亡くなられたらしい。それまでの知識を記した帳面を残してな」
「……じゃあ、我々もいずれは「いやそれは当分大丈夫だ」え?」
絶望した僕の言葉を、ロデンワクさんが否定した。
「俺が頑張ったからな」
努力では飢えは凌げない。そんな風に考えた僕の思考を読んだのか、彼はニヤリと笑った。
「俺は、悪いとは思ったが白黒テレビさん達の体をバラした。そしてコードを解したり部品を組み替えたりして、発電機を作ったんだ」
「あの風車の群れ……ですか?」
「そう。幸いにも俺には主人の仕事の関係で電気関係の知識があったんでな。発電機はモーターの逆の構造である事を知っていた」
「芸が身を助けた、ですか」
「そしてここは風がよく通るのが僥倖だった」
「幸運もあったわけですね」
「ま、川が近ければ水力発電という手段もあったわけだが……川沿いは目立つからな」
「はぁ」
「磁石で鉄とかを必死でこすって磁石を増やしたり、導線を繋げて部品を作ったり、誰かに巻き込まれて来たらしいシートで屋根作ったり」
「苦労、されたんですね」
「興味本位で近寄ってくる妖精やら妖怪やらから逃げたり追い返したり、新しく来た同類を拾ってきたり……」
「あ、あの……」
「風がなかなか吹かないときは吹く事を信じて只管飢えを耐えたり!どこぞから飛んできた流れ弾で発電機の何機かが壊滅したり!!」
話している所為で色々と思い出しさらにヒートアップしているのか、だんだん彼の眼からハイライトが消えている風に感じた。
「俺達が何をしたって言うんだ!こんな世界に流されてそれでも必死に生きている俺達がどれだけ苦労してるか!!」
彼がどれくらい長くそうしているのかは知らないが、積もり積もった鬱屈が喋っているうちに浮かび上がってきたらしい。
完全に僕のことはアウトオブ眼中となっているようだった。とりあえず、話はまだ聞きたいので落ち着いてもらわねばならなかった。
「すいません!落ち着いてください!!」
椅子から立ち上がり、ロデンワクさんの肩をつかんで揺さぶった。
「あぁ…………すまないね。どうにもリーダーとして気苦労が絶えない環境なんだ」
これでどうにか彼も脳内から現実に帰ってきてくれたようだった。
「で、僕は一体何をすればいいんでしょうか?」
これが、彼に帰還してもらった理由だ。僕は、この幻想郷で何をすればいいのだろうか?それを聞きたかったのだ。
「君のやりたい、君にできることをすれば良いよ」
しかし、返ってきた答えはなんとも抽象的なものだった。
「ここには、法律も何もない。縛られる必要はない」
「でも、僕達は機械ですよね?何かの指示を受け、それを働くだけの……」
機械は、あくまで道具でしかない。人によって、人のために作られ、人のために働く。それが機械だ。
だが、ロデンワクさんはやんわりとそれを否定した。
「君は、自分の主人に対してどんな感情を持っていた?それは、機械の持つものじゃない。つまり、君はもう機械じゃないんだよ」
「……」
「代わりに、元機械の妖怪となったわけだが」



彼は、哲学を引き合いに出して説明をした。
疑わしい物を取り去った後に残るものは、疑えない物すなわち真理のみである、と。
この世界の全ては、邯鄲の夢かもしれない。つまり、世界という存在自体も本物であるかどうかは疑わしい。
世界の物理や数理の法則と言うのも、夢の中のみの法則かもしれないと考えればやはり疑わしい。
しかし、この『疑っている自分が存在すること』だけは、存在しなければ疑うことすらできないのだから確かである。
では、自分以外の存在で『意識あるもの』と『意識ないもの』の区別はどうするのか?
それは『自分がその対象に意識を感じるかどうか』の差でしかない。
そこに存在が知覚できようができまいが、本質は確かにあるのだ。人間は我々に意識があることを知らなくても、我々は確かに在るように。
人は、一般に人形や機械といった無生物と考えている物にもしばしば意識があると考える。
我々の存在が示すとおり実際にはそうなのだが、彼らの科学技術ではそれはないと否定されているにもかかわらず、だ。
つまり、『意識あるもの』かどうかは、唯一確かな自分の意識で以って区別しているに過ぎないのだ。
故に他人すらも疑わしい存在である。
だから、唯一確かな自分の心を信じて、自分のやりたいようにすればいい。
他人が『意識あるもの』であったとしても、それをそう認識しなければ『意識ないもの』みなせるのだから酷薄にもなれる。
だから自分の欲に忠実になることも悪くはない。もし自分が「他人に迷惑をかけたくない」と考えているなら、その欲に従えばいい。
「誰かよりも強くなりたい」という欲を持つのならば、それを追求してもいい。まさしく自由だ。
しかし、もしここが夢の中の世界であったとしても、夢の中には夢の中なりのルールがある。
この世界では他者を傷付けた場合、高頻度でその報復がある。為すべきことを為さなかった場合、報いを受ける。
自分がその報いを跳ね返せるほどに強いのならばのべつ従う必要もないが、大概は己の力を超える何かが起きるのでそれを避けたほうがよい。
自分が消えると言うことは世界が感じられなくなる、つまり世界が消えると言うことであり、それは流石につまらない。
エトセトラ、エトセトラ――――



「……えと、よく判らないんですけれども」
たぶんこのとき僕は、漫画ならば特大の冷や汗をかいていたと思う。思った以上に、ロデンワクさんの言うことは難しかったから。
「要するに、外から傷付けられることのない範囲で好きにしていいって事さ」
「はぁ……」
「ただ、俺と敵対するならば俺は君に立ち塞がる。それだけは覚えておいて欲しい」
「……肝に銘じておきます」
「俺は俺で、自分以外の誰も泣かない環境が欲しかった。訃報ってのは、聞かないほうがきっと幸せだからね」
彼は、電話の付喪神だ。一体どれほどの悲しい知らせを誰かに伝える仕事をしたのか……それは、想像に難くなかった。
「だからこうしている。人と無用の衝突を避けるために、隠れ住んでいる。同胞の死に行く姿を見たくないから、発電機を作った」
「それが、あなたの、欲ですか?」
「そうだ。同胞も人も妖怪妖精も『誰かが泣いているのは見たくない』という俺のエゴだ。だから君も、自分のやりたいことをすればいい」
僕はそう言われて、たぶん今までで最高に悩んだ。自分のやりたいことなんて、考えたこともなかったからだ。
と、僕はここで一つの疑問が浮かんだ。
「あの……もう一人いた彼女は?」
最初に顔を合わせたきり、どこかへと消えてしまった女性のことを、僕は質問した。
「ふむ、そういえばまだ説明してなかったな」
彼もすっかり忘れていたようだった。
「彼女も付喪神だよ。こちらに来てから人型になるようになった付喪神だ」
「こちらに、来てから……?」
「幻想郷に来る機械の一部は、人型になっていなくても意識を持っていたりする」
つまり、あの地で埋まっていた時の僕のような状態なんだろう。
「彼女はその状態から、ある日あの姿になったんだ」
この時の彼は、どこか遠い目をしていた。
「で、彼女は同胞を守るために、そういう彼女の欲のために行動している。彼女は、弱くて根が単純な妖精くらいならどうにかできる力があるんだ」
「力が……?」
怪訝な表情をする僕に、彼は少し驚いたようだったがすぐに気を取り直して説明してくれた。
「あぁ、気付いていなかったのかな?どうにも、妖怪となった我々には妖力みたいな力があるらしくてな。できることが増えているんだ」
これは、僕にとって完全に想定外の発言だった。
「例えば、あの棚の上から4段目左から2番目にいるリーナクは、空気を吸う事で塵を集めることができる」
彼が指差した棚の4段目左から2番目には、掃除機が鎮座していた。
「……それって、ただ普通に働いてるだけじゃないんですか?」
「さもありなん。ちょっと見ててみ?」
彼は椅子から立ち上がると、リーナクに近づき何事かを耳打ち(掃除機の彼には耳がないが)した。
その掃除機は単独でモーターを動かし始め……ありえない吸引力で周辺の土や葉っぱを引き寄せ始めた。
「なるほど、確かに凄いですね」
僕は素直に感心した。試したことはなかったが、きっと僕にも何かできるのだろうなと思った。
「あぁ。何ができるかを見つけて、そしてしたいことをするといい。ちなみに、応用はいつも考えたほうがいいよ」
気が付くと、リーナクは砂は砂、石は石、葉っぱは葉っぱでより分けて集めていた。
「こんな風に、ちょっと使い方を変えるだけでできることは多々あるんだ。色々試してみるといい」

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「レビィ!」
過去の事を思い出していたレビデオテは、ムシレジデの声を受け現実の時間へと意識を呼び戻した。
「どうかしましたか、シーレ」
生返事をしながら、レビデオテはのっそりと起き上がった。そして目の前の彼女を一瞥し、彼女の青い顔を見て態度を強張らせた。
「……なにか、あったのですか?」



人型の数が2名から3名になったという事は、同族を呼び寄せる力がさらに強くなったという事と同義だったらしい。
あの後、彼らの住処近くにやってくる機械数は徐々に増し、そして人型の数もだんだんと増えていった。
人型が幻想郷に来ることもあれば、この幻想郷で人型になるものも居た。
数が増えてきたので折角だから集落に名前をつける事となり、自分たちがかつていた場所に因んで「夢の里」と名付けることになった。
頭数が増えたことで見回りを定期的・周回的に行うことができるようになった。
そのお蔭で、人型ではない同胞が妖精や妖怪にちょっかいを出されるペースはどんどん減っていった。
以前は、ちょっと眼を離した隙に悪戯されたりひっくり返されたり酷いときには弾の的にされ壊されたりしていたのだ。
ロデンワクを筆頭に何名かは亡くなられたが、各々の持つ知識を結集することで機械付喪神集落は技術がどんどん発達していった。
穴を掘る技術を持つ付喪神と物を選択集積する技術を持つ付喪神により、初期とは比べ物にならぬほど高度な道具を作ることもできた。
地下を進み鉱脈を発見し、それを選択し集め精製することで、使用可能な素材に革命が起きたのだ。
道具が充実したことで上等なバッテリーを作ることもできるようになった。
それにより、焼き物の器と硫酸と銅を用いた粗末な手製電池よりも安定した蓄電が可能になった。
ロデンワクらと必死になって材料を集めてやっとのことで完成させた道具が旧式になっていく様に寂寥感がないといえば嘘になる。
しかし今の2名はこれも時代なのだろうと割り切っていた。自分たちが捨てられたのと同じように。
ただ、善い事ばかりではなかった。
付喪神の頭数が増えたことにより、どんどん集落が手狭になっていく。これが、由々しき問題だった。
木々の間に立てる風車型発電機の発電キャパシティを、機械達の食う電気の量が超え始めたのだ。
つまりは食糧不足である。
付喪神たちの消費する電力は家電製品だった頃に比べ幾らか少ないのだが、それでも電気を食わなければ死んでしまう存在だった。
偶にある嵐の日は、人型でない同胞を雨から守りつつ雷をエネルギー源と期待して実験と失敗を繰り返したりと、それこそ戦争だった。
今日もレビデオテは、ランシバトーら同志達とこの問題について話し合っていたばかりであった。
温度差を利用しゼーベック効果で発電を行う案や圧電素子を利用した発電床を街道に設置する案などを交わし合ったが、お流れとなった。
作業の手間や発電効率、人間らに発見されるリスクなどが問題となり多くの救済案は頓挫していた。
故に、解決策の見えない会合を暗澹たる心持ちで終えたレビデオテはイライラを治めるべく地面に寝そべりリラックスしていたのだった。
同胞の、かつて人間に酷使されていた頃の恨み言を聞いたり愚痴を聞かされたりと、レビデオテはリーダーとして気苦労が多かった。
そんな時はいつもこうして心を静めていたのだった。
それを邪魔されたので、起き上がるまでレビデオテは不機嫌だった。
しかし、ムシレジデの顔を見てそんなことを言っている場合ではないと悟った。



「どうにか少しは集落の方に運んできたんだけど、ラドが、酷い事に……」
ムシレジデの言葉が終わるよりも早く、レビデオテは駆け出していた。
今日シラドケイハが向かった方角と、問題が起きた体を運び込めるような場所ということで居場所には概ねの察しがついていた。
そしてレビデオテは、森と森の境目ともいえるような木々の隙間にシラドケイハが横たわっているのを発見した。
傍らには彼を運んだであろう2名が狼狽した様子で座り込んでおり、彼に声をかけていた。
「クガンキサ、クスファ!状況は!?」
「……ダメ、ッスか……くそっ!」
「ごめんなさい、何もできなくてごめんなさい……」
クスファが怒りのままに地面を叩き、クガンキサが壊れた蓄音機のように虚ろな眼で謝罪を繰り返す。
そしてレビデオテが息を切らせて到着し何かを言おうとするその眼の前で、柱時計の付喪神は人型から本来の姿へと戻っていった。
「何が……あった?」
未だ息も整わぬまま、レビデオテはクスファに事の顛末を尋ねた。
うわ言を繰り返すクガンキサよりも会話が成立するだろうと考えての判断だったが、応対したのはクスファではなくクガンキサだった。
「銃で撃たれて、樹から落ちたんです……」
腕時計には、装着者が動くとその振動でローターを動かし自分で発電するタイプがある。
この技術を応用し、風に揺れる枝葉にそれを付ければ幾らかの電力が得られるのではないか?という案を彼ら3名は実践していたのだった。
この発電は、一つ一つの電力は小さい。しかし、それでも数が貯まればそれはそこそこの電力になる。
ということで、彼らは集落内及び集落外の樹にそれをつけて回っていた。数を稼ぐためには、集落外に出ることもやむを得なかったのだ。
集落の外は当然、人や妖精妖怪と遭遇する可能性も高い。故に、この3名には特に気をつけるようレビデオテは忠告していた。
だが、その甲斐もなく、また一人同胞がこの地を去ってしまった。
「人里とは確かに近かったんです。だから極力見つからないよう行動していたんですが……」
「それぞれに分担して、樹に登って枝に取り付け作業をしていたッス。そしたらいきなり撃たれて」
「作業で枝が揺れていたから、鳥か何かと間違えられたみたいなんです」
「撃たれて落ちたッス。それで、撃った側も獲物をとりにやってきて落ちたラドとばったり遭遇して」
「向こうも驚いたみたいで、出会い頭に悲鳴を上げながらまた一発撃って……」
「それで向こうは逃げたッス。こっちも急いで樹を降りて合流したッスけど、完全に胴体撃ち抜かれていて」
「……判った、もういい。今はラドを、里の奥までつれて帰ろう。キュレターサ達にも知らせなければなるまい」
断片的な説明ながらも状況が飲み込めたレビデオテは、二人を促しこの場所を去ることにした。
人間に見つかったということは、そこからさほど離れていないこの場所はまだ危険があるという事になるからだ。
2つの穴が開いた柱時計と泣きじゃくる2名をつれ、レビデオテは集落の奥へ徒歩を進めた。
後ろにいる2名には気付かれないよう、ある決意を顔に浮かべて。



その日の翌朝、ムシレジデは集落の外郭部分にある大きな縦穴の中にいた。
この穴は元々鉱物を採取するために掘った穴だったが、現在は死んだ同胞たちを弔うために亡骸を安置するための穴だった。
また、意識あった者の遺体だけでなく、幻想郷に来た機械のうちもとより意識のない物もこ、の穴に入れられていた。
彼女は、今日新たにここに安置される事となった柱時計を眺めて、シラドケイハのことを思い出していた。
「……ここに居たのか、シーレ」
「あぁ……」
話しかけてきたレビデオテのほうを振り向かず、ムシレジデは返事をした。
「また、1名去って逝っちまったね」
「古参として、こんなことは何度も遭遇してきたんだよね。シーレは」
「そういうお前も、アタシと並ぶ程の古参にしてリーダーの一人じゃないか」
ここでようやくムシレジデは振り向いた。その顔には、疲れきった表情とわずかな自嘲気味の笑みを浮かべていた。
「確かに、ロデンワクさんが死んで、僕とシーレが古さではツートップだね」
「そうなるな。ところで、態々こんなところにまで探しに来るなんて、アタシに何か話があるんじゃないのか?」
「判るか?大事な話があるんだ……そう、大事な……」



タァーーーン――
想定外の事故とはいえ、作業中に同胞を亡くしたクスファはその夜眠れず、翌朝も頭を冷やしたくなって散歩をしていた。
そして、事件の開始を告げる音を聞いてしまった。
それは今のクスファが最も恐れる音――同胞の命を奪った忌まわしい音、銃声だった。
だがそれは同時に彼女に違和感を与えた。
これが夢の里の外から聞こえてきたのだとしたら、多少不安を呼ぶとはいえ違和感はない。外の人間が銃を撃ったであろうからだ。
しかし、先ほどの銃声は里の内部から聞こえてきたのだ。里には、銃を持つ理由がないから銃はないはずなのに。
銃声のした方向を見ると、その方角から自分たちの住む集落のリーダーの一人が走り去るのをクスファは目撃した。
その顔は、彼女がかつて見たほどがない位に何かを思い詰めていた顔だった。
不思議に思ったが、好奇心の湧いたクスファはなぜあんな音がしたのかを知るべく銃声のした位置へと向かった。
そして、彼女は見てしまった。
走り去ったのではないほうの、もう一人のリーダーが穴の底に倒れているのを。
そのリーダーが、腹部に、シラドケイハと同じように穴を開けている姿を。


   ▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


「あの子は、どうしているの?ロデンワクさん」
「向こうで頭を抱えているよ。自分は何をしようか、ってね」
初めて、自分とロデンワクさん以外の付喪神と遭遇した。
その驚きが、その新入り付喪神と彼女との邂逅を短時間な物にしたのだ。
平たく言えば、不機嫌そうな顔も、すぐに(必要もないのに)見回りにいったのも気恥ずかしかったからである。
「まったく、レビデオテは人見知りが過ぎるぞ」
「そ、そう言われても仕方ないじゃないですか!僕は御主人様以外の人だって殆ど見た事ないのにこんな場所に飛ばされて、えと、その……」
どもるレビデオテを見て、ロデンワクは苦笑した。初対面のときからも恥ずかしがり屋の度合いは大して変わらないらしい。
「まぁ仲良くしてやってくれよ。悪い子じゃないし」
「そうなんですか?」
「うむ。一人称が『僕』だとレビデオテと被って紛らわしい、と言ったら一人称を『アタシ』に替えると言ってくれたぐらいいい子だぞ」
「そ、それは……」
こんどは、レビデオテが苦笑いする番だった。
「判りました。きっと彼女と一緒に、二人で上手くやって行けますよ」


   ▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


「……かり、しっかりするッス!!」
「ク……クスファ、か?」
「っ!!意識が戻ったッスね!?」
気が付いたとき、最初に見えたのは同胞クスファの顔だった。
だが、妙だ。確かに、アイツによって腹部に貫通銃創を負わされたはずなのに、まだ生きている。
「良かった……どうにか傷が埋まったみたいッスね」
どうやら、クスファが周辺の遺体達から部品を集め傷を埋めてくれたらしい。
「でも、一体何があったッスか?『レビデオテ』さん」
それを聴いた瞬間、レビデオテは完全に意識を覚醒させ先ほどの事を思い出した。



『で、話っていうのはなにさ?』
『クガンキサとリーナクについてですよ』
『あぁ、最近レクトーネと喧嘩してたね。エレクトーンが五月蝿いって』
『誤魔化さないでください』
『……』
『気が付いたのは、不甲斐ないですけれどもつい最近です。クガンキサ達のの報告量と、実際に掘られた土の量が合わない…と』
『ほぅ?』
『土はクスファの力で遠くに捨てていましたが、最近調子が悪いということで捨て先を確認に行った時、捨てられた土の量が多かったんです』
『なるほど、そんな細かい所までは気が回らなかったな』
『で、調べてみたらアナタを中心に何名かがコッソリと作業をしていたのを見たんですよ』
『何をしているのかは判らなかったのかい?』
『判らないから、こうして聞いているのです』
『あぁ……遠目で見たんじゃ判らなかったのね』
『採掘の得意な元削岩機のクガンキサと、粉末を集塵精製できる元掃除機のリーナク……何を作っていたのです?』
『日頃の備え、と言うものだよ。現状では単なる置物さ。何が作られているとしても、使われなければそれは置物でしかない』
『……もう腹の探りあいは止めましょう。単刀直入に聞きます。アナタは、作っていた何かで人を傷付ける気じゃありませんか?』
『何故そう思うんだい?』
『アナタが度々、人間に対する憎悪を露にするのは知っています。長い付き合いですから。そして昨日の事件です』
『……』
『アナタが人を襲うことを考えているなら、それを止めなければならない。そう決意してあなたを探していたんです』
『ならば聞き返すが、お前は許せるのかい?』
『…………あれは不幸な事故です。そう割り切っています』
『それは嘘だな。長い付き合いだからわかる。お前は堪えているだけに過ぎない。割り切れてなんかいない』
『かも知れませんね。ですが、僕はそれが最良と信じています。何をされたとしても、我々は耐えねばならないのです』
『自分に対する欺瞞だな。その結果が昨日の事件だ』
『っ!!』
『お前は人に傷付けられるのが怖かった。だから、この里を人間に隠し続けた。公開によるリスクを恐れ続けた』
『それがどうしたと言うのです!』
『公開したとき排斥されるのを恐れた。人間を信用してはいなかったわけだ』
『……違う』
『人間が好きなんじゃない、自分たちを傷付けない人間が好きなんだ。そんな欲でここを隠し続け、今日のような事件が起きた』
『違う!第一、公開していたとしたらどうだと断言できるんですか!?』
『ほう?』
『今日の事件は起きなかったかもしれませんが、公開したときに殲滅されていたかもしれないじゃないですか!!』
『なるほど確かにそれは可能性の問題だな。だからこそ、今日までアタシも黙ってきた』
『今日……まで?』
『力をつけてたんだよ。いや、厳密には武器を作ったと言うべきか』
『ま、まさか……』
『いやいや、核爆弾とかは電磁波が我々にも有害すぎるからな。そこまで物騒なものは作らん』
『ですが、凶悪な何かは作ったのでしょう?』
『作っただけで使わないならば、それも良しだと思っていた。だが、使わざるを得ない事態が起きた』
『止めてくださいっ!!人間を積極的に傷付けたとなれば黙ってない存在も幻想郷にはいるんですよ!』
『ロデンワクさんが言っていたじゃないか。報復が怖くないなら、自分の心に従えって。報復に打ち勝つ自信が、ある』
『駄目です!アナタとその賛同者だけじゃない、他の皆にも迷惑がかかるんです!!』
『その黙ってない存在でも手が出ないほどに強ければ、誰にも迷惑は掛からないさ。俺は、人を傷付けてでも同胞を護る道を選ぶ』
『それこそ、勝てるかどうかなんて未知数じゃないですか!』
『なぁ……ここは夢の里と言うが、実質は閉じた夢の牢獄だ。だが、頭数が増えて入りきらなくなってきた』
『うまくやってみせます!きっと、人も我々も傷つかずに済む道があるはずです!』
『膨れ上がった所為で人に見つかり、実害が出た。……今まで十分にいい夢を見続けてきたんだ。そろそろ覚める頃合だろう?』
『止めてくだs』
タァーーーン――



「そうだ、アイツを、アイツ等を止めないと……」
レビデオテは、話を途中で打ち切り、自分の腹部に銃弾を押し当て火薬に発火・弾丸を発射させてきた同胞の言葉を思い返した。
人を傷付ける道を選んだ同胞は、おそらくムシレジデだけではないだろう。少なくともクガンキサとリーナクもそのシンパである。
急ぎレビデオテは立ち上がろうとしたが、クスファがそんな彼女の穴が開いたアッパッパを掴み押し止めた。
「駄目ッス!傷はまだ安定していないッスよ!!しばらく安静にしないと!!」
「そういう訳にもいかないんです。僕自身の欲のために、絶対に譲れない事のために」
「でも!」
「それよりもクスファ、頼みがあります。貴女にしかできないことです」
「な、何ッスか?」
「ファックスの付喪神であるあなたの能力、『子機のある場所に転送ができる』で今まで土を遠い地へ捨ててもらっていた訳ですね」
「そ、そうだけど……」
「そして、子機は複数存在している……違いますか?」
「……違い、ありません」
「貴女のその力で、私を最寄の人里のすぐ近くへ送ってください。貴女がこっそりと人里近くに遊びに行っていたのは知っています」
「何でそんなことしなきゃならないッスか!?」
レビデオテはクスファの肩を掴み、真正面から真摯な瞳で見つめつつ言った。
「私は、人を傷付けたくないのです。だから、止めるのです。彼女達を」



最接近里のすぐ近くの森林内へと転送してもらったレビデオテは、里を目指して森の中を駆け出した。
相手は複数居るのだから、自分独りではおそらく太刀打ちできないだろう。だから、協力を頼むのだ。
人里を護っているワーハクタク、上白沢慧音に。
機械付喪神は人間を警戒していたので、里のおおまかなスケジュールや動向などは常に把握していた。
だから、上白沢慧音という存在のことも当然知っていたし、彼女が今朝里に居るという事も知っていた。
当然レビデオテ達もそれを知っている。それを知って敢えて、コトを起こしているのだから、その自信が恐ろしかった。
だから、一刻も早く里の人々に事態を伝えて、状況を好転させたかった。
すでに泣いている我々以外に泣く者が出ないように。自分と同じ理想を掲げたロデンワクさんが知ったら悲しむような事態を避けるために。


   ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

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ムシレジデが里を確認できる場所に到着したとき、ムシレジデの視界には普通の人里の光景が広がっていた。
だが、奇妙な点もあった。現時刻では畑に居るであろうはずの上白沢慧音の姿が見えないのだ。
念入りに視界を調べてみたが、物陰に居るとかそういうことではなさそうだった。
どうやら、何らかの事情で来ていないらしい……と少々肩透かしを喰らった感だが、彼女は気を取り直した。
そもそもの目的は、人間の命でシラドケイハの命の贖いを求めることだったからだ。
人間の守護者と殺し合いを演ずるのは、贖わせた後でも問題はないだろう。
そう考えて、彼女は腰に巻きつけ縛っていたスカジャンを解くと、改めて着直した。
彼女のご主人様が愛用していたジャンパーを模したもの、これが彼女のお気に入りの一着であった。
そしてそれを着るということは、彼女にとって本気モードのスイッチをオンにする儀式でもあった。
彼女は体内のマグネトロンが絶好調であることを確認してから金属製の筒を取り出し、その一端に銃弾を詰まっていることを確認した。
この銃弾こそが、リーナクやクガンキサと作り上げてきた武器の一つだった。
金属や火薬の材料である硝石をクガンキサが採掘し、リーナクがその粉を集積、妖力を使い固体化する。そうやって作り上げてきた。
現在は別行動を取っている協賛者のことを少し思い浮かべてから、筒を里に居る人間の一人へと向けた。
元機械の付喪神にとって、この手の精密作業はお手の物だった。
そして、筒に詰めた銃弾の底へとマイクロ波を照射した。
電子レンジの付喪神であるムシレジデは、マイクロ波を自在に発生させる力を持っていた。
ただし、妖怪であるので、出力は元となった家電製品のそれとは比べ物にならない強さではある、が。
この力を使い、夢の里へちょっかい出してくる妖精を火傷させたりし追い返すのが、彼女の今までの仕事だった。
しかし彼女はそれだけで満足しなかった。ロデンワクに諭されたとおり、応用の道を常に模索していたのだ。
直接対象に当て殺傷する他に用途はないものかと色々考えた用法の一つが、今実践している使い方である。
マイクロ波は金属に当たると、強い電位差が発生した場合放電現象が起きる。そして放電が火花となる。
この作用による火花が銃弾の火薬を発火させ……結果、銃弾が発射された。
どうやら狙いを過たず命中したらしく、ターゲットとした人間が倒れるのがムシレジデには見えた。
途端に騒がしくなる里の中に見える人間を、彼女は片っ端っから狙撃していった。
中には自分の居るのとは反対方向に逃げるものも見えたが、それは放置した。
その方向には、イゾーコレら同志が居るからだ。そちらに逃げるものは彼らが片付ける、という策をとっていたため、問題はなかった。
やがて、ムシレジデの視界からは動く者が居なくなった。それに満足した彼女は、里のほうへと歩みを進めた。
家の中や物陰に隠れているであろう人間を、直接殺すために。



電子レンジという器具は、バーナーのように直接熱量を対象に加えるのではない。
マグネトロンによって生み出されたマイクロ波が水分子を振動させ、そのエネルギーによって熱が発生する。
つまり、ガラスや陶器が加熱されないのはこういう理屈だからである。
しかし言い換えれば、表面で反射でもしない限り水分子を持つものは加熱されるということにもなる。
そして改めて言うまでもなく、人体の殆どの部位は水を潤沢に含んでいる。



所々に火の手が上がる集落の中で、全身に重度の火傷を負わされた死体を眺めながら、ムシレジデは狂った哄笑を上げた。
隠れていた人間を一人一人見つけだし念入りに加熱していく行為に、ムシレジデはかつてないほどの昂揚感を得ていた。
出力が強すぎて内臓にダメージを与えあっさり殺してしまうこともあれば、とことん逃げる相手の表皮だけをじっくり加熱したりもした。
隅々まで見て回り、一人も生きている人間が見えないのを確認したところでムシレジデは上機嫌で笑っていたのだ。
これで、シラドケイハの無念を晴らすことができた、と。
ひとしきり笑った後で彼女は死体を一箇所に集め燃やしてやろうとし……違和感に気付いた。
死体に触ることができなかったのだ。
その瞬間、危険察知の予感が最優先命令でアラームを鳴らし始めた。
今、家々の多くは燃えている。しかし、よく思い出してみれば、そもそも自分は火を付けていない。
自分のマイクロ波は指向性が高く、金属板でもあれば乱反射するのだろうが木造建築の多いこの集落でそれはまずない。
そして嗅覚を動員するに至って、ようやく違和感の決定打が見つかった。
建物の燃える臭いで気付かなかったのだが、人間の肉の熱せられた臭いが一切しなかったのだ。
さすがにここまで情報が出揃えば、まだ混乱気味の頭でも状況を予想することができた。
「そういえば、僕の力は、今まで直接見せたことがありませんでしたね」
唐突に響いたよく知る声で、ムシレジデの予測は確信となった。
自分は、騙されていたのだと
「始めて会ったあの日も、僕はロデンワクさんとアナタと離れて見回りに行っていましたから」
周囲にある全ての『死体』だけが、少しだけぶれた。
「そして、アナタが『マイクロ波を操る程度の能力』に目覚めてからは、見回りはいつも二手に分かれていましたから」
そのぶれは徐々に大きくなっていき……
「僕は、テレビデオの付喪神……映像と音声を再生するぐらいしかできないけど」
もはや、何が最初にあったのかはわからないほどに輪郭が荒れていた。
「人や妖精妖怪に『ここには何もない』ように見せて皆を守るぐらいの事はできたんです」
そして、この言葉を合図とし、全ての『死体の映像』は一斉に消滅した。



「どう……誰か逃げてきた?」
「いや、誰一人として来ない」
付喪神の別働隊の一部は、退路を経つために里の裏手へと回ってきていた。
その別働隊の付喪神の1体、イゾーコレの足元から盛大に土煙を上げ現れたのは、クガンキサだった。
「そちらはどうなんだ?」
「穴は繋がったよ。アレは、今地下で順調に作ってる。キサミが砕いてリーナクが集め固めてるんだ。私も砕く側に参加してくる」
「そうか」
そしてイゾーコレはクガンキサが帰るであろう地面に眼を向け……奇妙な点に気付いた。
「妙……だな」
しゃがみ込んで地面を入念にチェックし、気のせいではないことを確認して顔を顰めた。
「どうしたんですか?誰もこちらへは来ていないんですよね」
「それがおかしいんだ。一人くらいは逃げてきてもいいだろうに……そして、この足跡だ。大勢のもので、しかもまだ新しい」
「え?じゃあ……」
「先手を打たれて襲撃開始前から逃げられたのかもしれん。クガンキサ、地下の皆を呼んで……っ!?逃げろ!!」
イゾーコレがクガンキサを突き飛ばし眼前に氷壁を発生させるのと、炎の鳥が氷壁に着弾するのとはまさしく刹那の差しかなかった。
「え?あ……はいっ」
クガンキサは一瞬呆然としたが、すぐに気を取り直し地下へ潜り退避して行った。
「へぇ、やるじゃんか……でもなぁ!!」
炎の鳥の火力がぐんぐんアップし、氷壁がどんどん溶かされていく。
どうにもならない状況に至って、イゾーコレは理解した。自分の力では、この炎の鳥に勝てない、と。
そして、氷壁が全て溶かしきらされた次の瞬間……炎の鳥が、イゾーコレの全身を覆いつくしていた。
「てめぇよくも!!」
「!!」
エンソーチェは、勝利を確認していた。
音を聞きつけて自分の配置から来たときにはもう、イゾーコレを助けることができないタイミングだった。
故に、イゾーコレを守るのではなく確実に襲撃者を斬るため、最短距離で炎の鳥の主の方へと不意打ちで突貫したのだ。
自分の一部でもあるチェーンソーは、妖力を帯びているため魔力による防御もガリガリ削ることができる。
だから、防御は困難であり、避けられなければ致命傷を与えられるはずだった。
そして結果として、相手の反応よりも早く、右手の電動鋸で袈裟懸けに相手の体を断っていたのだから。
だがここでエンソーチェには全くの予想外のことが起きた。
斬られたはずの炎の鳥の主が、傷を全く意に介することなく立ち上がったのだ。
あまつさえ、こちらにも炎の鳥を放ってきたのだ。
「チッ!!」
とっさに電動鋸で、その鳥を切り払った。
だが、その鳥を眼くらましにして間合いを一気に詰めてきた相手の蹴りの直撃を受けてしまった。
故に、体勢を崩されたところに放たれた3発目の炎の鳥を避けることはできなかった。
信じられないものを見たという表情のまま……藤原妹紅の炎が、エンソーチェの全身を舐め尽くしていた。



表情の抜け落ちたような顔で、ムシレジデはレビデオテと相対していた。
「生きて……いたのか」
「辛うじて、ですけどね。クスファに頼んで先回りさせてもらいました」
事実、レビデオテの足は小刻みに震えていた。
そういう小細工が苦手という事をよく知るムシレジデは、立っているだけでも辛いのは事実だろう、と判断した。
「先程までの映像は、単なる時間稼ぎ、です」
「なる、ほど……」
「僕の能力は、嗅覚と触覚と味覚は誤魔化せないから、建物に火を放たせてもらいました。少しでも誤魔化すために」
その言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、集落のすぐ外の部分で巨大な火柱が上がった。
「ここに居た人は、もうみんな逃げた後……なんです。そして、稼いだ時間で協力者も呼んであります。向こうも終わったみたいですね」
「そういう、事だ。もう諦めたらどうだ?」
声に反応してムシレジデが後ろを振り向くと、そこには怒りを滾らせた上白沢慧音が仁王立ちしていた。
「先に言っておくが、お前の遠隔発熱の原理は聞かせてもらった。魔力障壁でマイクロ波とやらは私には達しない……覚悟してもらおうか」


   ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲

   ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲


「……なるほど、あながち思い上がりでもないようだな」
頬についた銃弾の掠め痕に手を当て血が流れているのを確認した上白沢慧音は、手の甲を使ってそれを丁寧に拭った。
歴史を食う能力を使い火傷の様相もある傷痕は消したが、傷をつけられた事実は消せるものではない。
目の前に立つ相手は、予備動作なしでいきなり自分の前方2メートル四方ほどを爆破した。
その所為で、彼女に迫っていた範囲内の高速赤弾は全て誘爆してしまった。
さらに相手は、複数の筒状のものを使い実体弾を数発撃ってきた。
普通の銃弾程度ならば魔力障壁で全て弾かれるのだが、1発だけ紛れていた桁違いの威力の弾が障壁を貫通し、頬を掠めて行ったのだ。
「魔力は衝撃を生む事ができる。逆に考えれば、単純な物理衝撃でも魔力に干渉するのは十分に可能と言うこと……だ」
慧音と対峙し始めてから初めて、ムシレジデは戦闘技術関係のことで口を滑らせた。
その顔には、一瞬だけ推測が正解だったという愉悦が滲み出ていた。
だがそれもすぐに消え、後には再び無言で真正面から睨み合う慧音とムシレジデという構図となった。
が、今度はその均衡は意外な方面から破られた。慧音の後方にいたレビデオテが悲鳴に近い絶叫を上げたのだ。
ずいぶんと距離は遠くからだったが。
「シーレ!!!アナタはなんて物を使うんですか!!」
「どうしたっ!何が使われていたんだっ!?」
ただ事ならぬ気配を感じ、慧音は敵対者から視線を逸らすことなく背後にいるはずの友好者に声をかけた。
レビデオテは、先ほど障壁を貫通した銃弾を手に叫んだ。
「こんな……『劣化ウラン弾』なんて一体どうしたというのですか!!?!」
その言葉を聴いた瞬間、ムシレジデは相貌を一瞬ではなく盛大に崩した。
もし慧音がこの場にいなければ、腹を抱えて笑っていたであろう程に。
「ウランは、自然界に錫と同じくらいの割合で分布しているんだそうだ……ウランの鉱床を見つけたのは、まったくの偶然だったよ」
「レビデオテとやら、できれば特性を端的に説明して欲しいのだが」
「とにかく、密度が高いので貫通能力が高いです。おまけに、何かを貫通するとき高熱を発します」
「いやいやいや、それだけじゃないだろう?レビィ」
狂気を溢れんばかりに満ちさせて、ムシレジデがその先の情報を促した。
対照的に苦汁を大量に舐めさせられたかのような表情で、レビデオテはさらに説明を始めた。
「強い毒性があります。おまけに、自身の熱で蒸発し空気中に飛び散ります。そして……」
ここで一息入れたレビデオテは、最後の一文を血を吐くような声で吐き捨てた。
「単純な毒だけじゃなく、放射能という、存在するだけで周りに害なす特性があります。しかもその有害期間はとてつもなく長い、です」
「そう、使いすぎればこの地には人が住めなくなるくらいになぁ!!」
感極まった様子で、ムシレジデは絶叫した。そのことが、楽しくて楽しくて仕方ない、といった風に。
「銃弾の形状自体にも細工をしたんですね。貫通力を高めるために……」
「速度は高く、銃弾は重く、接触面積は小さく……APFSDSこと装弾筒付翼安定徹甲弾の小型版になるのは当然の帰結だろ?」
銃弾の持つ威力は、銃弾の運動エネルギーと銃弾の接触面積で決まる。これは事実である。
「要するに、だ」
慧音は、この間に再び使い魔を形成していた。
「里の為には、さっきの銃弾を使わせないように速攻で倒せ、ということだろう?」
今度は赤い弾ではなく、青く太目の光筋がムシレジデへと殺到した。
「デカければ相殺できないと思ったか!」
ムシレジデは再び眼前で空間内爆破を起こした。
さっきより若干広い爆発で光筋を相殺し、爆煙越しに銃弾を発射しようとして……
煙の向こうから、猛スピードで突貫して来た慧音の体当たりを食らった。
「ぐっ!?」
筒を取り落としてしまったが、体勢が崩れるのは耐え切り、慧音の肌に直接触れマイクロ波を流し込まんと手を伸ばす。
が、慧音は純粋な体術によりその手をかわし1歩奥――ムシレジデの背後――へと踏み込み肘をスカジャンの背中へと叩き込んだ。
機械付喪神達は森の中に隠れ住み基本的に空を飛ぶ必要がなかったため、立体的戦闘の経験に乏しかった。
三次元戦闘の年季で勝る慧音に対し、自分が地上にいることで地上戦に持ち込む肚だったムシレジデの思惑は大きく外れた。
藤原妹紅との長い付き合いのある慧音は、平面上の戦闘でも想像を超えるほどに強かったのだ。
物理的な力のみならず魔力も十分に籠められたこの一撃のダメージは凄まじかったが、それでもまだムシレジデは折れなかった。
服の裏に仕込んであった大量の金属筒が、自身が折れることと引き換えに背中へと伝わる衝撃を緩和したのだ。
ムシレジデは痛みを堪えて袖口から別の筒を右手に取り出し、慧音へと向けようとする。
しかし慧音はそれよりも早く右手を筒に当て、弾を撃ち筒を弾き飛ばした。
さらにそれで手が跳ね上げられ無防備となった胴体に、青い楔状の弾を直撃させた。
「がはっ!!」
今度はさすがに耐え切れず盛大に吹き飛ばされ、燃え残っていた家屋の壁面へと叩きつけられた。
ムシレジデが壁から離れようと手を壁についた瞬間……巨大な弾がムシレジデを直撃し壁を貫通させた。



「スコンロガ……キュレターサ……いるんだろ?お前達はまだやるのか?」
ムシレジデが壁に消えた後で、レビデオテは確認の声を上げた。
しばしの沈黙の後、ムシレジデが消えたのとは別の建物の影から返事があった。
「なんで、居ると判ったんです?」
「さっき2回使った空間爆破だ。あれはムシレジデだけの能力じゃない」
「何やってたのかは、バレてたんだ……」
「空気を循環させる能力に偏りを持たせ、ガスと金属粉の混合を一定領域に高濃度で留まらせる。そこをシーレが着火する」
「「正解」だよ」
隠れていたエアサーキュレーターの付喪神とガスコンロの付喪神は、あっさりと認めた。
「許せなかったんだ……建物を壊す際、持ち出し忘れられた所為で建物ごと潰された恨みは」
「キャンプに行くと買われたは良いが、その一番最初のキャンプ先で忘れられ雨曝しで朽ちる……憎悪は消えないよ。絶対」
「……だが、どうするんだ?」
慧音が使い魔を展開し、声のする建物へと狙いを定めた。
「聞く限りでは、その能力では私には勝てまい。別働隊も妹紅が倒したようだ……さて、どうするんだ」
「怨嗟は消えない。だから死ぬまで諦めない。できることを最後までやりとおす」
「……タフだな」
慧音が声の方へ眼をやると、そこにはムシレジデが立ち上がっていた。
右脇腹部分を庇う様に押さえており、見るからに立つのが精一杯という風だった。
「我々は機械だ。電気を喰い電気を力とし働くのが殆ど、だ。我々は、電線を通し、繋がる」
だが、その眼はまだ死んではいなかった。
「死体でも、繋がりさえすればその機体を介して力を使うことができる」
次の瞬間、地面から生えてきたコードがムシレジデを絡めとった。
とっさに慧音は鏃型の弾幕を発生させムシレジデを狙うが、それは全て手前に発生した土柱へと着弾してしまった。
土柱が治まったそこには、4体の付喪神が焦げた冷蔵庫とチェーンソーを運んでやってきていた。
そしてその全てにも、コードが幾重にも絡み合っていた
「クガンキサ、リーナク、キュレターサ、スコンロガ!何をするつもりだ!!」
レビデオテが謎の行動をとる付喪神達に向かって叫ぶ。答えたのは、唯一口がまだ自由なクガンキサだった。
「私達が直列で繋がったとしても、たいした事ができないんです。電力が足りないから」
この時点で慧音は、地下から響く音を警戒して里の上空へと距離をとっていた。
「でも、電力がありさえすれば……きっと同胞を殺されないくらいには強くなれる……」
一つ、また一つとコードに飲まれた姿が地下へと引きずり込まれていく。
「だから、私達は電力を確保して、墓穴に眠る全ての機体と繋がって、一日のみの絶対的な力を得る」
そして、残るのはクガンキサだけとなった。
「ここは森の中じゃないから、あれが使えるんです。陽がよく当たるから。私とリーナクとキサミが地下で作り上げたあれが……」
「陽……電力……まさかお前達が作っていたものは!!」
だが、もう返事はなかった。その時には既に、全員が地下に飲み込まれていったからだ。
そして代わりに、地下から巨大なものが鎌首をもたげて姿を現した。



「さて、あいつ等の出番はなさそうだな」
妹紅は避難した人々を護ってくれと慧音に頼まれていたので、周辺に付喪神が居ないことを確認し避難者が居る方へ行こうとした。
だが、その歩みは止めざるを得なかった。凄まじい轟音が鳴り響き、慧音が居る集落の方で巨大な何かが出現したからだ。
「おいおいおいおい……何の冗談だよありゃあ」
長く生きてきたが、あんなものは彼女も見たことがなかった。
例えて言うならば、トカゲの上半分に蛇の下半分を繫ぎ合わせ、さらに甲羅を背負わせたような姿だった。
「慧音、無事で居てくれよ……っ!!」
妹紅は全力でその巨大物体の方へと向かった。



「こ、これは……」
さすがの慧音も、現在目の前にそびえるそれには吃驚せずには居られなかった。
家を3つ連ねた位の長さのそれは、前脚だけ生えたトカゲが、亀の甲羅を背負ったような姿をしていた。
だが、よく見るとその体は様々な道具――慧音は知らないが、炊飯器や扇風機などの電化製品――の寄せ集めだった。
その蛇モドキは、顔に当たる部分を慧音に向けるとしばし動きを止め……その体勢のまま放電を発生させた。
「うわっ!」
慧音がとっさに距離をとると、蛇モドキは今度は左手の冷蔵庫部分から巨大な氷を生み出し、右手の電熱線を白熱させた。
そして、両手を合掌させた。周辺はたちまち白い水蒸気で覆われ、完全に視界を封じられる形となった。
慧音は視界が確保できる位置まで下がろうとさらに距離を空けようとしたが、それはできなかった。
いつの間にか尻尾の先端部分が下を迂回して慧音の背後にまで迫っていたからだ。
尻尾の先端にはミキサーの刃やチェーンソーがずらりと並んでおり、その全てが高速で回転していた。
尻尾に向かって弾幕を発生させるも、高速運動する刃は弾幕を全て弾き、壊されるどころか減速すらもせずに、慧音へと迫っていく。
だが、その尻尾が慧音へと到達することはなかった。先端ではない、刃の付いていない部分を高速飛来する妹紅が焼ききっていたのだ。
「無事か、慧音!!」
「すまない、妹紅」
ぎりぎりのところで友人の救命に成功した妹紅だったが、状況の悪さには思わず舌打ちをしたくなった。
蛇モドキは、今度は肩口から複数の銃弾をばら撒いていたのだ。
通常銃弾ならば障壁で防御できるが、時折飛来する劣化ウランAPFSDS弾は障壁を貫通してくるのだ。
弾の数は有限のはず……と思うが、この巨体に一体どれだけの貯蔵があるのかは未知数なのだから弾切れを待つのは難しい。
通常弾+劣化ウランAPFSDS弾からなる弾幕の所為で、慧音と妹紅も迂闊に近寄ることができないのだ。
その間に蛇モドキは切り取られた尻尾に近づくと、コードを伸ばし絡み合わせて接着してしまっていた。
尻尾を再生した蛇モドキは、今度は妹紅の方へ向き直り、今度はコードで繋がった冷蔵庫を分銅のように振り回してきた。
だが、その軌道は妹紅をやや外れていた。
故に妹紅は、特に回避をするでもなく弾幕を発生させて本体を攻撃していたのだが、それが失策だった。
コードの長さがちょうど妹紅との距離程度であったため、妹紅のすぐ傍で停止したのだ。
そして、冷蔵庫は爆ぜた。その冷蔵庫自体が、内部にジャンクパーツを詰めた爆弾だったのだ。
だが内部につめられた扇風機の羽やら蛍光灯の破片やらは、妹紅に傷をつけることはなかった。
爆発の直前に冷蔵庫は結界に閉鎖されていたからだ。
そして蛇モドキが計算外の事態に動きを止めた瞬間、五芒星型の弾幕が蛇モドキの頭部に直撃し、それを押し倒した。
「よう、遅かったじゃないか」
「すまない、非常事態なんだ。恩に着る」
「何なのよ、一体……」
「あらー、懐かしい物がいっぱいありますね」
慧音と妹紅は上を見上げた。
そこに居たのは、不機嫌な顔の博麗霊夢と、クスファを背負いながら昔を懐かしんでいる東風谷早苗だった。



「で?幻想郷全体にとってまずい事態が起きている……と呼ばれて来てみた訳だけど、何なのよあれは」
頭部の衝撃の所為でバランサーがイカレたのかなかなか立ち上がれない蛇モドキを見下ろし、霊夢は慧音へと質問した。
ここはかなりの上空なので、実弾系統はまず届かないし箱爆弾などは投擲されたとしても余裕で避けられる、そんな距離である。
「それは、私から手短に説明します。僕は、テレビデオという外から来た機械の付喪神でレビデオテと言います」
だが、霊夢の質問に答えたのは慧音ではなく、いつの間にか浮いてきていたレビデオテだった。
「じゃあ要点を説明しなさい。あれは何なの?」
横で早苗が「うわ、古ーい」と言っているが、霊夢はそれを無視して話を聞いた。
「あれは、我々の仲間の集合体です。ただ、人間という存在を深く憎んでいてそれに害為そうとしています。そして……」
「そして?」
「劣化ウラン弾で武装しています。また、先ほど調べたのですがあの体内には大量のフロンガスが貯蔵されています」
「どえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ちょっと、うるさいわよ!!」
早苗が悲鳴を上げた。流石の霊夢も今度は無視できない音量だった。
しかし早苗はそれを意に介さず、レビデオテのアッパッパの襟部分を掴んで激しく揺さぶった。
「ちょ、ちょっと!劣化ウラン弾はあの劣化ウラン弾で、フロンガスってあのフロンガスなの!?」
「あの〜この方は外の知識が?」
ヘッドシェイキングを強要されながら、レビデオテは慧音に尋ねた。
「あぁ、比較的最近来たので外の知識も詳しい」
「なるほど」
得心したレビデオテは早苗をやさしく押しとどめると、冷静な口調で言った。
「『あの』劣化ウラン弾とフロンガスです」
「うぅう……まさか幻想郷に来てその名前を聞くとは……」
早苗は既に涙目である。よもや幻想郷で劣化ウラン弾で襲撃されるとは考えた事もなかったのだろう。
「話を元に戻しますが、先に挙げた2つはとても危険なものです。下手に倒して拡散させると、人の住めない地ができるくらいに」
「……ちょっとまって」
ここで霊夢が口を挟んだ。
「あくまで『毒』なのね?……なら、手があるわ」
「本当ですか!?」
「あっちの方にある鈴蘭畑にはメディスンって名前の毒人形が居るんだけど、彼女は毒全般を操れるの。多分その2種も……」
「判りました……すみませんがクスファ、探してきてください。見つけたらまた転送能力ですぐにここへ」
「はいッス」
指示を受け、クスファは早苗の背中を離れて霊夢が指差した方へと飛んでいった。
「倒す瞬間からメディスンが処理するまでは領域を結界で封鎖しておけば、大規模に漏れたりはしないわ」
「ガスが相手だから、しっかりお願いしますね」
「ただ、これほどの規模の結界を作るとなると、かなりの集中力が必要だから撃破に参加できそうにないけど……」
「了解した。霊夢は結界の作成と維持に集中してくれ。後は私達が何とかする」
「抜かるんじゃないわよ?」
その言葉とともに、霊夢はさらに上空へと上っていった。
「……となると後は……」
妹紅の言葉を合図に、今度は全員で下を見た。
蛇モドキは、倒れた拍子に割れた甲羅のパーツを尻尾で粉砕していた。
それの破片を、甲羅に隠れた部分にあった吸気口を利用し集塵し、妖力で精製固定化することで背中の甲羅を修復していた。
「アレをどうやって倒すか、ね」
「あの、今再生してるのって太陽電池ですか?」
早苗がおずおずと尋ねた。
「えぇ。大量の珪素と少しのホウ素で作られたアレが動力源です」
「やっぱり、そうなんですか」
「アレによる光起電力効果をどうにかできれば、勝手に電力不足になって巨体を維持できなくなるんでしょうけれども……」
つまり、夜まで待てば蛇モドキは勝手に崩れるという意味である。
しかし、放置すれば被害は想像を絶するほどに出てしまうだろうし、かと言って持久戦というのも分が悪い。
「迂闊に近寄ろうものなら、放電と箱爆弾、そして銃弾の雨霰だからな」
苛立った声で妹紅が吐き捨てた。そんな様子を見ながら早苗はしばし思案し……そして口を開いた。
「いえ……何とかできるかもしれません。少し時間をいただければ」
「本当か?」
「はい、私は奇跡を起こす程度の力があるんです。きっと上手くやります」
「……よろしく、お願いします」
「任せてください」
レビデオテが頭を下げるのを見て、早苗はどこかへと飛んでいった。
「……ならば、私達は時間稼ぎ兼トドメ役だな」
「ま、そういうことになるかねぇ……慧音、死ぬなよ」
「さっきのような遅れはとらんさ。妹紅こそな」
「……それは冗談か?」
「心構えの問題だ」
「お二人とも、来ますよっ!!」
真下では、蛇モドキがとぐろを巻いて不気味な音を立てていた。
そして……巻いたボディーをバネに大跳躍をかましてきた。
「なんとっ!?」
慌てて横によけた彼女達がさっきまでいた場所に、蛇モドキはやって来ていた。
そしてそのまま自由落下……することなく、体の各所に生やした巨大なプロペラと空気噴出孔からの圧縮空気放出により浮遊していた。
「この図体で飛べるのかよ……っ!!」
「いえ、あまり飛べないからプロペラとかをを使っているんだと思います。つまり、それを壊せば……」
「なるほど、ねっ!!」
そして、空中大決戦の火蓋が斬って落とされた。
空中での戦いは、機動力に勝り有利な距離を維持できる慧音たちに分があった。
妹紅の札が、慧音の赤青二色の楔型弾幕が飛行装置を破壊するたびに竜のような巨体が地面に落ちるのだが、トドメはなかなかさせなかった。
追撃しようと接近すると、例のガス空間爆砕を中心にあの手この手で多種多様な攻撃をしてくるので接近できないのだ。
メガホンの大音量によるショック攻撃やらチェーンソー尻尾やらサーチライトによる眼くらましで、逆に迎撃されかけてしまうのだ。
かといって遠距離からでは、決定打をなかなか与えられない。水蒸気の視界封印技もあるし、地上ではなかなかに素早いのだ。
そして攻めあぐねていると、再接続や再集積精製により破損を修正し再び空中へ襲ってくるのだ。
途中でやってきたメディスンも参戦したのだが、それでも決定打に欠ける点は否めなかった。



だが、終わりの見えないマラソンマッチにもついに終焉が訪れた。
体力気力ともに尽きかけてきた何度目かの撃墜の後、修理を始めようとした蛇モドキの動きが鈍ったのだ。
「お待たせしましたっ!!」
原因は、明らかだった。早苗の力によって運ばれてきた雲が、動力源である太陽光を遮ってしまっていたのだ。
確かに風は雲を動かす。しかし、上空を漂う不定形の雲を移動させるというのは並大抵の苦労ではなかったのだろう。
早苗の顔色は、明らかに青くなっていた。
「いまだ、霊夢!!」
「はいはい……っとぉ!」
慧音の叫びを合図に、蛇モドキと慧音たちを包み込む巨大な結界が形成された。
「これで、終わりだ!」「燃え尽きろォ!!」
蛇モドキはとっさに迎撃の構えを見せるが、不意に動きを停止した。
そして、その隙を逃す2人ではなかった。
慧音の放つ複数の薙ぎ払い光線がパーツを分断し、妹紅の放つ特大の火の鳥型火炎がバラけた機械たちを片っ端から焼いていく。
断末魔の雄たけびのような不気味な音を立て、機械付喪神集合体はついに活動を停止したのだった。



ちなみにメディスンは。
「コンパロコンパロ〜〜」
結界の片隅で、蛇モドキから溢れ出る毒を頑張って集めていた。



「終わった、のか、な」
「あぁ、多分な」
既に廃墟といった方が近い、かつて集落だった場所の中で妹紅はへばって倒れていた。
不死身ではない慧音にはできるだけリスクを負わせたくなかったので、不死身である自分が積極的に蛇モドキに接近を何度も行っていたのだ。
それ故に、疲れの度合いも慧音以上に酷いものだった。
見回せば霊夢も早苗も疲労困憊といった様相をしており、悲惨なものだった。
元気に見えるのは、幻想郷では珍しい毒を集めてホクホク顔のメディスンと、直接戦闘に参加していないクスファの2人だけだった。
ここで、妹紅が違和感に気付いた。
「……あれ、レビデオテの奴はどうしたんだ?」
言われて気付いたのか、慧音たちも辺りを見回した。だが、どこにもレビデオテの姿は見えなかった。
ただ、クスファだけは探そうとすることなく今にも泣き出しそうなのを必死で堪えていた。
「何か、知っているんだな。クスファ」
慧音に指名されたクスファは、ついに堪えきれずに泣き出してしまった。
だが、しゃくりあげながらもどうにか説明を行った。
東風谷さんが来たときに、レビデオテさんの持っている子機を通じて通信がきた、と。
『自分も機械付喪神だからその気になればアレに融合できるはずだ』
『そうすれば、一瞬でもコントロールを奪えるかもしれない。もしかしたら、その一瞬が決定打になるかもしれない』
死ぬ気なんですかと聞いたら、そうだと即答された。
『隠れ住むことが両者にとって最善だと考えてリーダーとしてそう導いてきたが、それは失敗だった』
『その責任は、取らなければならない。命が失われている以上、命を失ってでも』
『いきなりやってきた妖怪の、「これから襲撃される」という言葉を信用してくれた慧音さんには、特にお礼を伝えておいてくれ』
『人々の避難の指示や協力者の養成を迅速にしてくれたお蔭で、事態はこの程度の規模収束しそうだ』
『今後のことは、慧音さんや巫女さん達に相談してくれ。きっといい案をくれるから』
そう言い残して、通信がそれきりなくなった……と。



「最後に一瞬動きが止まったのは、電力不足じゃなかった可能性もあったわけ……か」
そういい残すと、慧音は全員に背を向けて歩き出した。
「どこへ行くんですか?」
「見回りだ。全体がどうなっているのか知りたいからな」
そうい言って慧音は、少々覚束ない足取りで何処かへと歩き去っていった。
早苗が後を追おうとしたが、妹紅に服の裾を掴まれ止められた。
「少し、一人にしてやっておいてくれ……頼む」
「あのーーーー」
そろそろ涙と感情も治まったらしいクスファが、不安そうな声を出した。
「あたいやまだ森に居る機械付喪神の同胞はこの後、どうすればいいんスか?」
その言葉を聞いて、その場に居る全員が顔を見合わせた。
確かに問題はまだ残っていたのだった。
「…………慧音も交えて話をした方がいいんじゃないかしらね」
「……だな」
「異議ありません。という訳でクスファさん、少し待っていてくださいね」
「了解ッス」
結局、しばらく後に敷地内を一周した慧音が帰ってくるまで、クスファは不安な時間を過ごすのだった。
「……危険だからって、速攻で殲滅されちゃったりもありうるッスか?」
「だから帰って来てからだっての」


   ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

   ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


「シーレ……本当は、気付いてたんじゃないんですか?幻には……最初から」
家電製品の部品が散乱する中、レビデオテは空を見上げたまま呟いた。
下半身がどこかに千切れ飛んでおり、体を動かすことはできなかったが、すぐ傍にムシレジデが居ることは電磁波的な感覚で知覚できていた。
「……いや、確かに気付かなかったよ、レビィ。こちらに来てから暫く後で、人間知覚のスキルをシャットする方法を編み出したからな」
「そ……れで、普段はスキルを切ってい……た訳、ですか?」
「アタシにとっては忌々しいスキルだからね。ずっと視覚で周囲を捉えてた。これは本当さ……消え行くものに嘘を吐くほど無粋でもない」
「例の昔話……の…………青鬼役をやってくれ………………たのかとも、考えたんですけど……ね」
「泣いた赤鬼なんて悲しい話は嫌いだ。それに、態々そんな籤を引くほど酔狂でもない」
「そう……です、か……なら、純粋、に、僕の勝…………ちです……ね……」
それが、最後の言葉だった。
ムシレジデの見ている前で、レビデオテが元々の姿――ただし、横一文字に真っ二つに断ち切られた半分の姿――に戻っていった。
「……介錯は、要るかね?」
「いや、要らないよ。もうじき、アタシも消える」
いつの間に近寄ってきていたのか、ムシレジデの背後には慧音が剣を構えて立っていた。
「アタシは自分の全てを賭けた。そして負けた……ただそれだけだ」
事実、彼女の左腕は失われ、右の脇腹は背中にかけて大きく抉られていた。
お気に入りだったスカジャンも、もはや右腕の部分ぐらいしか原形を留めていなかった。
「人を殺そうとしたことに、後悔はない……『許せない事がある』ってんで自分から選んだ道だから」
ムシレジデは慧音のほうを振り向こうとし、そのままうつ伏せに倒れこんだ。
「同胞のためと信じ……人を傷つけ殺すのも……やむなしと割り切ったん…………だ」
倒れたのは、右足が折れた所為だった。振り向くときに込めた力が、右足に引導を渡したらしい。
「ただ、己の力……を過信し…………同胞をたくさ……ん道連れにしたのは……悔いが残る」
残された右腕で強引に仰向けとなり、言葉を続けた。
その顔は感情が混ざりすぎた所為で逆に無表情となった風だったが、ただ涙を流していることは間違いのない事実だった。
「昔……言われたとおり……だよ、こういうことを……すると、『報復を受ける』…………って……ごめんなさい……」
その謝罪の言葉が誰に向いているのかは、慧音には判らなかった。
「結局、アタシは……人間を傷つけ……る事ができなかった…………いや、傷つけずに済んだ……訳、か…………な……」
そして、彼女は消えた。後に残されたのは、ズタボロとなった1個の電子レンジだけであった。
実際には声が出ていなかったのかもしれない。
だが、慧音には彼女の口が最後にこう動いたように見えた。「ありがとう」と。


   ×××××××××××××××××××


「あれ、珍しい場所で会うね」
「そう言うそちらもな」
リリカ・プリズムリバーと上白沢慧音は、そんな会話を交わした。
ここは、人里から近いとは言えないが遠いとも言いづらい微妙な距離の森の中。
そんな場所で、2人は遭遇した。
「……それ、お墓を作ってるの?」
リリカの指摘したとおり、慧音は確かに墓を作っていた。
「あぁ、つい最近大勢の命が失われたのでな。その弔いだ……そういうお前は?」
「私?私は友達に会いにね。この辺で会って友達になったレクトーネって名前の女の人なんだけど、外の世界の音楽にやたら詳しいんだ」
リリカはここまで言って、少し顔を顰めた。
「予感が外れていることを祈るんだけど、さっき言った死亡者の中にレクトーネってのは居る?」
「いや、それは知らないな。ただ言えるのは、今はもうここには誰も住んでいない」
「そっ……か……」
リリカは明らかに肩を落とした。
それを見て慧音は一つため息をつくと、服のポケットから黒い直方体状物体を取り出した。
「早とちりするなよ。その女性かどうかは知らんが、言伝と贈り物を任されいる」
「えっ?ちょ、わ!!」
慧音が投げてよこしたそれを、リリカは危うく落としそうになったところで辛うじてキャッチした。
「その先端を伸ばして、1と書いてあるボタンを押せばいいんだそうだ」
「え、えっと……こう?」
リリカが渡された箱を言われたように操作すると、ザザーという音が箱から発され始めた。そして……
『へいこちら遠距離会話ができることしか能がないと定評のあるランシバトーでございます』
多少音質が悪いもののいきなり音声が来たので、リリカは眼を丸くした。
『この回線は……おいクスファ、レクトーネ姐さん呼んでくれ。姐さんの知り合いだ』
『アイ、サー。おーいレクトーネさん、呼ばれてるッスよ〜〜』
『はいはい、っと……申す申す、リリカちゃん?』
「レクトーネさん?」
『えぇそうよ。ごめんなさいね、勝手にいなくなっちゃって』
「いや、それはいいんだけどさ……どうしたの?」
『ちょっと不都合があってね、私達は一箇所に長く留まれないの。今は、河童が住むという沢に来てるわ。お話をしに』
「そうなんだ……」
『その後は月の人が住む永遠亭という家に行くの。その後もどんどん別のところに行くわ。私達夢の鳥は』
「『夢の鳥』?」
『そう。今の私達は渡り鳥。だから、渡り歩くの。いつか、また直接お会いしましょうね。外の音楽のお話を語り合うために』
「あ、うん。そうだね」
ツー、ツー、ツー――
そうして、通話和終了した。
しかし今一つ状況のつかめないリリカは硬直したまま色々と考えていた。
「良かったじゃないか。知り合いが元気そうで」
「いや、状況がよく判らないし!と言うか説明してよ!!」
慧音の言葉ではっと我に返ったリリカは、慧音を詰問した。
「さて、どこから話したものかな……」
「掻い摘んででいいから説明してよ」
「彼女達は、この地で静かに暮らしていたのだが、数が増えすぎたためひっそりとは暮らせなくなった」
「それで、旅に出たって訳?」
「いや、厳密にはそうではないな」
「?」
「巫女や私の力で色々と調べてみたんだが、彼女達は、一箇所に集まれば集まるほどその留まった地に仲間を呼ぶ特性があるんだ」
「あ、それで移動を続けてるって訳ね」
「そういうことだ。さきほど言った事件の際に、太陽光で食糧事情を解決できる装置が作られてな。それで移動も可能となったのだ」
「ふーん」
「ちなみに、その機械も同様の仕組みを搭載しているから太陽に当てておけばまた使えるようになるらしい」
「そっか……で、レクトーネは私にこれを渡すよう貴女に頼んだわけだ」
「そういうことだ。直接私と会ったのはクスファという女性だったがな」
リリカは渡された箱――トランシーバーを手に友達がいるであろう方角を見て、思い出したように慧音に尋ねた。
「ところで、『夢の鳥』って何?」
「現在の彼女達の旅団の名だ。『夢の鳥』というのは、彼女等がかつて居た場所の名前と字が似ているのだそうな」
「へぇ〜〜。微妙なセンスだと思ったけど、由来があったんだ、その名前」
「うむ、由来があるのだ。実際には大八車に動けない仲間を積んでえっちらおっちら移動している集団だとしても、名前に問題ないのだ」
「…………思いっきり名前負けじゃん」
そして、リリカと慧音の失笑が森の中に木霊した。



ここは幻想の辿り着く場所、幻想郷。
古くて新しい付喪神もまたこの世界の住人となったが、幻想郷全体から見ればそれは大した問題ではないのだった。
お題はストレートに「機械」の解釈です。

機械付喪神は楽園の夢を見るか?
付喪神達の名前の由来は、多少変則はありますが名前を繰り返し読めば判っていただけるかと思われます。
K.M
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/02/11 08:53:05
更新日時:
2008/02/13 23:53:05
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1. 4 #15 ■2008/02/13 15:00:36
確かに有り得そうな話ですね。これだけ大量に消費してますし、機会の寿命もどんどん短くなっている。最近では3年経てば、もうロートルだそうで…。
業の深い話です。
2. 1 小山田 ■2008/02/13 18:34:23
お題に正面から取り組んだ力作だったとは思います。後は書き上げた後、時間をおいて再読したり、評論家目線で読み返すなど、客観的な視点を確保することが大切かもしれません。
3. 7 #15 ■2008/02/13 19:08:17
有り得そうなお話ですよね。これだけ大量に消費して…。家電の寿命も精密部品の多用によって、どんどん短くなっていますし、3年も経てばロートル扱い。業の深い話です。
4. 4 反魂 ■2008/02/16 14:11:35
 全体の整合性が低いです。ストーリーにもう少し根幹を持たせないと、一本のストーリーとして読み手が扱えなくなります。
 東方のキャラの使い方も今ひとつ効果が薄い印象でした。能力を表面的になぞるだけでは、どうしても安っぽくなってしまいます。付喪神と東方の世界を結びつける、もう一歩の力強さが欲しかったです。
5. 7 mizu ■2008/02/19 15:10:02
 楽しませていただきました。
 付喪神たちの正体当てに、付喪神・人間双方の役割分担の妙に、早苗さんのリアクションに(笑)。
 最後まで読み進めてタイトルの意味が分かった時には、思わず手を打ってしまいました。
 切なさと「なるほど!」のたくさん詰まった作品だったと思います。
6. 5 飛び入り魚 ■2008/02/20 04:26:56
純粋に面白い。良い発想で、その上うまく機械を動かせてるように思える。
そしてデカルトな黒電話が可愛い。
7. 7 カシス ■2008/02/27 11:41:58
ストレートなお題とまっすぐな物語でした。いつかは自分のパソコンも付喪神にできるでしょうか。
8. 7 俄雨 ■2008/02/27 20:18:47
色々な意味で評価に難しい。機械は機械でそのままなのですが、オリジナル要素が強すぎて、東方SSを読んでいる感覚ではありませんでした。オリキャラはメインとなる物語の登場人物を引き立ててこそ存在し得ると持論があります故、ほぼオリキャラだけで構成された物語はどうなんだ……と。

ただ舞台はちゃんと幻想郷ですし、現代消費社会から淘汰された機械達が群れて叛乱を起すというその発想は実に光る物があったと思います。

大きな疑問らしいものはありません。しかし幻想郷が汚染される危機にまで面しておいて、出てくるのが霊夢と早苗……勿論、八雲紫などはお話のバランスを徹底的に破壊する存在なので、出したくないのは理解出来るのですが、事が大きい場合、出てこないのは多少問題があるかと。少なくとも、藍辺りは出てきても支障がなかったのでは。物語の読み方を大局的にしますと、そのような違和感を覚えます。あ、あとメディが便利キャラすぎかなと。素直に話聞くようには思えませんし。

総合的に判断しますと、でもやっぱり面白かったなぁという印象でした。ご馳走様でした。
9. 8 ■2008/02/27 22:26:30
にとり以降、幻想郷に科学の流入が止まりませんね、
と旧作を知らない人間が言ってみます。
付喪神が主人公で幻想郷っぽい雰囲気は薄めでしたが、楽しく読めました。
『機械』としてお題が上手く活きてますね。
その分、機械に詳しくないと分かりにくい部分が少しあったかなとも思います(攻撃向きの能力とか)。
(あと、メディの能力ってそういう応用が利くのか、とちょっと感心)
10. 8 ■2008/02/28 20:42:50
直球勝負。しかし、芯の重いど真ん中。
導入から帰結までの流れは見事。
ザッピング? 分断する方式は、多少混乱を招くかも知れない。
道具が付喪神となり、大事にしない持ち主に悪さをする。この部分がブレる事無く最後まで通せたのは作者の手腕か。
疑問点としては、これだけの騒ぎで来たのは霊夢と早苗と言う事。これは人数増やしても意味が薄いからなんだろうけど。
この手の話にしては香霖や紫といった外の知識を持った者が殆ど絡まなかったこと。
同じ捨てられたモノが妖物化したメディスンが、単なる毒集め要員としてしか使われてない点。
これは説明されてないからか? あとで凄く怒るか泣くかしそうだけど。
一風変わった弾幕戦が面白かったです。
こういう話を読むと、携帯を新調するのを躊躇う。
11. 4 たくじ ■2008/02/28 22:40:23
発電とか考え出してコミュニティー形成していくあたりが好きだなぁ。なんかサバイバルっぽくて。
でも原作キャラの存在が何というかオマケっぽい感じで、正直言って東方という感じがしませんでした。最後にリリカが出てきてるけど、それならリリカとレクトーネの触れ合いの場面を描いて、話の中に絡めたら良かったのにと思います。
アナグラムになっている機械妖怪達の名前が、見慣れない上に相当数出てくるので頭に入って来づらかったです。名前が出てくるたびに、あれこの機械は何者だっけかと思ったり、誰がどの台詞を言ってるのかわからなくなったり。なかなかスムーズに読み進められませんでした。
12. 5 椒良徳 ■2008/02/29 00:04:17
せめて文頭は大文字にしましょうよ。いや、つまらんことですがね。
レビデオテ→テレビデオ、ロデンワク→黒電話、ムシレジデ→電子レンジエトセトラエトセトラで合ってるんですかね。
安直なネーミングだなあ。
安直なネーミングだが、こうも登場付喪神が多いと混乱しますね。
結構面白かったですよ。こういう変な作品も一作品くらいあっても良いものだ。
13. 9 時計屋 ■2008/02/29 00:56:26
機械の人間に対する反乱とか、合体ロボとかなんという男の浪漫。
最後の戦闘も盛り上がっており、いい意味で王道な物語でした。

機械付喪神の設定や、それらを生かしたお話のギミック等も
とてもよく考えられていて感心します。

読んでいる最中、長さをほとんど意識することなく一気に読み進められました。

ただ惜しむらくはあまりに物語が壮大すぎて、少し急ぎ足のような展開に感じられたことでしょうか。
私見で恐縮ですが、
機械付喪神の追い詰められていく様、
人間に対する怒りが臨界点を突破する過程、
個々の付喪神に対する描写等、
終盤に向けてまだ伏線を張ったり盛り上げたりする余地があったように思えます。
(もちろん、現状のままでもコンペではかなりの大作なのですが……)

では最後になりましたが、
良いSSを提供してくださりありがとうございました。
14. 6 ZID ■2008/02/29 01:41:59
まさしくテーマのど真ん中。それにしても、まさかの怪獣大決戦に吹いたw 世界観との合致など多少の弊害はありますが、楽しんで読めました。
15. 7 木村圭 ■2008/02/29 05:03:27
お題賞進呈。誰もが考えながらも却下する案だと思います。これだけのものはそうそう書けるもんじゃないですわー。良いものを読ませていただきました。感謝。気の利いた感想が出てこない自分が情けない。
16. 6 とら ■2008/02/29 09:32:42
時系列をバラバラにして、最初からヤマ場を見せる手法は、とても良い配慮だったと思います。いい刺激になっており、ダルさを感じずに読み進めることができました。
ただ、登場人物(特にオリキャラ)の数が多すぎて、把握するのに骨を折りました。もう少し数を絞っても良かったのではと思いました。
17. 7 らくがん屋 ■2008/02/29 11:17:02
上手いなあ。途中「オリキャラ物じゃん」と呟いてしまいましたが、最終的にきっちり東方SSになっていますね。……なっていますよね?
18. 3 つくし ■2008/02/29 12:01:56
まず何が致命的って、キャラのネーミングです。流石にこれはあまりにあんまり……いや、もう、ストレートに間抜けと申し上げておきます。この子供教育番組のキャラのような安易な名前のせいで、せっかくのシリアスなストーリーの字面がものすごく間抜けに見えます。何をされてもギャグにしか見えません。しかも良く似た名前が多くてキャラの見分けがつきにくく、キャラに十分な思い入れも持てないうちに、こんな叙述トリックをされても、驚くこともできず、「え、これ誰だっけ?」「どこで視点入れ替わってたっけ?」という感じでただただ置いてけぼりにされました。
しかし人間に牙を向ける機械(または機械との共存)、という古いSFからブリキの迷宮、マトリックスにいたるまで長く扱われ続けたテーマはなんとも懐かしい感じがして幻想郷にふさわしいと思えるのです。それだけに、こんなことで読書感が阻害されてしまったのは、惜しい。
19. 7 as capable as a NAMELESS ■2008/02/29 15:01:35
地味に好きなんですけどねえこういうの。
戦闘の部分だけ、どうせ主人公側が勝つんだろうな、というのが見えてしまっていて残念。
20. 2 中沢良一 ■2008/02/29 15:22:52
時系列がバラバラで読みづらかったです。狙ってやったのでしょうが、成功しているとは思えません。文章が少し荒いかなと思いました。『アウトオブ眼中』『〜風』などの表現としていただけない所や、『!』や『?』の後は1つ空欄を入れる。会話文の中に括弧を入れて言葉をさえぎる表現をするなどです。緊迫した空気やスピード感など、全て地の文と会話文を織り交ぜて表現するのが、小説や物語です。
キャラクターがオリジナルばかりなので、設定として東方成分を入れただけの作品に見えました。話としては面白かったと思うんですけど。
21. 9 ルドルフとトラ猫 ■2008/02/29 19:07:15
なんというガメラ 惜しむらくは相手が人間サイズだったこと
22. 4 赤灯篭 ■2008/02/29 19:07:46
 直球勝負ですね。よく出せたものと感心します。
 ほぼ完全な独自設定の付喪神たちの世界観はよくできていると思います。キャラ設定やそれだけを見た場合のストーリーも文句なしで、下手なオリキャラものでよく感じるような不快感もありませんでした。ただ、それらがあまりにもよくできているせいか、東方キャラの方がおまけに見えてしまうことが欠点といえば欠点です。
23. 1 ☆月柳☆ ■2008/02/29 19:56:11
なかなか面白い話しだったと思います。
24. 7 レグルス ■2008/02/29 20:28:00
夢の島とは名ばかりのゴミの山。
テレビデオ…部屋で現役で使ってます(苦笑
毒を集めてるメディが良かったです。
相手がオリジナルでこそのガチバトルも、とても面白かったです。
オリジナルであるからこそ容赦ないくらいにフルボッコされてる辺りとか。
最後の手段に合体とか巨大化した敵キャラはフルボッコされるのは王道というか…。
25. 1 O−81 ■2008/02/29 21:37:55
 こう、オリキャラが一度にわーっと出てくると、新情報を無理くりつめこまないといけないのでとても大変です。オリキャラを使って何がしたかったのか、ていうところがあんまり明確じゃなかった気も。
26. 5 只野 亜峰 ■2008/02/29 21:41:00
個人的に無理にアナグラムして人名チックにしなくても良かったような気はするかな。
あと、とりあえず台詞で無い通常文章の書き出しは最初に1マス空けるようにしましょう。
『止めてくだs』チャットじゃないんだからw
ここは『止めてくださ――』が妥当なところでしょう。
『「……じゃあ、我々もいずれは「いやそれは当分大丈夫だ」え?」』これは流石にちょっと頂けない。
あと、こうも場面を転々とされるとトリッキーな構成を通り越して場面の把握をしずらくなります。

さて、物語そのものについてですが発想は良かったものの、背景の掘り返しが今ひとつ物足りなかった気がします。
命名決闘法という規律が存在する中で安易に人間が異端であるものを排除しようとするとも思えません。
命名決闘法の存在する以前であれば筋も通るのですが、早苗の出現によってそれも考えられなくなります。
必然性を求めるのであれば、そこら辺にもう少し気を配れると良かったでしょう。
違和感を与えてしまえば物語の面白さも半減してしまいます。
お話としては面白かっただけに、その辺が残念です。
27. 2 つくね ■2008/02/29 21:54:22
確固たる世界観があるからこそ、出来た作品なのだと思います。
しかし読んでいくとどうにも内容が単に難解であり、もっと平易な言葉を使用されても良いのではないでしょうか。
28. 4 名無しの37番 ■2008/02/29 22:10:29
機械=家電を真っ向から扱おうとしているのはわかりますし、色々と頑張っておられるなぁとは思います。
ですがちょっとばかり東方の雰囲気からの乖離が激しいのではないかなと思いました。これはなんというか、オリキャラ物というよりも、二つの世界観が混じったクロスオーバーSSを読んでいる気分になってしまいました。や、クロスが悪いというわけではないのですが。ただ、ちょっとすり合わせができてない気がする部分がちらほらと。
また、キャラクターが多すぎるのも混乱の一因であったように思います。下手にそれぞれに個性を持たせるよりも、主要キャラ以外は台詞無しで地の文章だけで説明したほうが良かったかも。
ですが、全部が合わなかったというわけではありません。機械が幻想入りして妖怪化というのは東方世界観的にたぶんありうる話でしょうし、最後のエピローグの部分なんかは、なんとなく、らしいなと思いました。機械たちは機械たちで、マイペースに頑張っていくのだろう、などと。

あと物語の本筋からは外れるのですが、機械たちは人間に姿を現すことはできなくても、他の妖怪に取り入って助力を求めることはできたような……まあ、人に依ってきた機械たちですから、人を見切って妖怪を頼るような発想が出なかったのかも知れませんが。
29. 5 BYK ■2008/02/29 22:16:11
テレビデオ…壊れやすいとかなんとかですぐ消えましたな。
幻想郷を旅するようになった彼らは、機械の神なだけに"デウス・エクス・マキナ"に代わって難解なシナリオを無理やり終わらせたりするのだろうか(←
30. 8 moki ■2008/02/29 23:27:15
機械をストレートに解釈して、ここまでの話ができるとは! レビデオテが格好いい。
機械付喪神と人間との争いになってるので、前半から東方キャラが絡んできたらもっと良かったと思います。
31. 7 冬生まれ ■2008/02/29 23:28:28
機械が小道具ではなく主人公というのがユニークで印象に残りました。
中盤からの重い展開も、最後のシーンでほっとさせられました。
32. 6 織村 紅羅璃 ■2008/02/29 23:44:48
物語としては面白かったですが、オリキャラが多すぎたのが個人的には辟易してしまった面がありました。
33. 7 blankii ■2008/02/29 23:54:54
設定に感服しました。あの人工島の名前はさりげなく気に入っていたりします、どうにも皮肉が効いていて素敵なもので。個人的にはエンソーチェたんが一押しです、絶対にヤンデレ風味に違いない(馬鹿)。

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