とある事情で名乗れません

作品集: 最新 投稿日時: 2008/09/15 00:01:45 更新日時: 2008/11/06 05:15:35 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
 


   (一)大妖精は万物流転


 とある事情で名乗れない大妖精です。事情は皆さんご存じですよね?
 先日、神社の側の池でおっきなカメを見ました。見たというより、お話をしまして。それは余りにも偶然の出会いだったので、
夢見がちでありたい私としてはすわボーイ・ミーツ・ガールかと、ここから私達の世界が始まるのかと思いを馳せたりもしましたが、
カメは妖怪でもカメです。亀生経験にも程というものがあり、リードして貰うにはダンディズムが溢れすぎ、あしながおじさんとしては
表情に憂いを持ちすぎです。私に年上趣味があったとしても、いかんせんこれはどうなのかと……。
 そもそもカメという生き物は扱いがややこしいこと極まりありません。ふん、このカメめ、いくらにんじんを丸かじりできる
口があるからって(私はにんじんが嫌いなのかもしれません)のろまにいいことなんてないんだからね(空を結構な速さで飛べるとは
この時思いもよりませんでした)といってもいいし、私達全ての儚いいのちをその知性あふるる目で見通し、悟りを開かれた御亀様
(少女のしりを乗せて喜ぶ変態野郎だったとは!)と尊称してもいいのです。とはいっても私は自分というものがあんまりないので、
両極端に過ぎるというのはよくないでしょう。なので、まあ人権的なものを尊重してカメさんと呼ぶことにしました。
では、月並みな一文から。
 私は先日、カメさんと出会いました。


 何故私が神社の側の池にいたのかという点についてはお答えしかねますが、強いていうならば、設定に縛られない私という
存在の薄さ故のフリーダムだったのではないかと。私の設定といえばチルノ(さて、私は彼女をなんと呼ぶのでしょう?)の
ステージで中ボスとして出てくる妖精ということ位でしょうか。もっとある?自分捜しなんて寂しさで胸が詰まるじゃないですか。
 まあ、出会いは突然に。私がカメさんと見、カメさんが私を見ます。
 「こんにちわ」
 わたしから挨拶をしました。私の外見から推測されるであろう少し控え目な声量。相手に敵意を与えない割合三アルカイック
スマイル。パーフェクトな無個性であったと自負しております。
 「おや珍しいのぅ」
 対するカメさん。若輩に対する礼儀は持ち合わせていないのか、自分の感想などを述べやがります。
 「そうしかめっ面をするものではないよ。こんにちわ、わしは玄爺じゃ」
 しかめっ面など断じてしておりませんし、敵は名前持ちでやがりました。
 「カメさんは何をしているんですか?」
 「玄爺で構わんよ。何もしておらん、ただ時間がすぎるのを眺めておる」
 「カメさんは老成されてますね」
 「玄爺だというに……」
 「いやー、凄いなぁ、カメさんは!」
 「何が……あと玄爺……」
 「素晴らしいッスよ、カメさん!」
 「……もういいわい」
 年甲斐もなくいじけるカメというものを一度見たかったので、我ながら良い嫌がらせになったと思います。少し満ち足りるという
言葉の矛盾に立ち向かいながら、ふてくされたカメさん(名前など知りません)を観察することにしました。
 万年という歳月の全てを刻み込んだかのような甲羅、原生の森林から明るい色とかとったらこんな色なんじゃないかというような
緑色の体躯、動くということを忘れたように投げ出された手足、とっくに見飽きてるけどまあ見ててやるよといっているような
だらだらとした光のない目。全て年を感じさせるような気がします。
 さて私は「ような」という例え方が大好きなのでしょう。言葉の響きなのでしょうね。一字付け足すと物凄い嫌いらしき言葉に
なります。その言葉に足りない感じが私を安心させてくれましょう。ところで私は洋梨を食べますが、食べると何とも言えない
焦燥感にかられます。
 「……何を涙ぐんでおるんじゃ」
 「皆さん、紅い魔の郷の湖のステージ、忘れないでください……」
 「苦労しておるんじゃのう……」
 「いたわって頂いて、ありがとうございます……」
 しみじみとカメさんは言ってくれました。あったかいです。いいカメです。ですが名前は知りません。


 「しかし変に畏まった言葉使いじゃな。妖精らしくもない」
 普通の年長者に敬意を払うのは普通に考えて一般的な常識であると普通な大妖精の私は考えるのですが。皆様にも私如きのつまらない
話をお聴きして頂いているのですから、語り部として礼儀は尽くさなければなりませんしね。
 「アンタは、変な妖精じゃな」
 「私は普通すぎて名乗れないただの大妖精です」
 「そういうところが面白いんじゃが」
 「私はそういうところが普通なただの大妖精です」
 「しつこいのぅ……」
 私は適度にしつこいただの大妖精です。次の言葉は胸の内で呟きました(何せ適度ですから)。そういった塩梅を確かにすること
こそ無個性な妖精なのだなぁと感慨を覚えます。その事を私が嘆いているのか、誇っているのかわかりはしませんが。


 さて、しつこさを売りにしているなどと世間に吹聴されては大の一文字が泣いてしまいます。
 「なかなか素晴らしい池ですね」
 無難な話題を提供することにしました。カメさんがいる池は、とても生物が住みやすそうな環境に形成されています。何よりも緑。
露出した岩肌には苔を始めとする植物が密生し、池の表面にも多種多様の水草が群生している様はやはり歳月を感じさせます。
水の色も経た年月に恥じず濃緑、栄養豊富で生物満点なのでヒトならお腹を壊しそうです。全く、歳月は人を待ってくれませんね。
 「池がカメさんなのか、カメさんが池なのか分からなくなりそうです」
 「……それはけなしておるのでは」
 「違いますよ、だってここでは物が生きてるじゃないですか」
 ここは時間と共に生き物が育まれ死に生まれ変わり、日々形が変わりながらもこの場として変わらないのです。
 「生きているのを実感出来るって、一般的に凄いですよ」
 「……そうかい、ありがとよ」
 どうやら私の適当な言葉を真に受けたようです。アオミドロくせーな(青臭いをプレパラートに包んだ感です)
 「それはけなしとる……」
 言葉とは得てして思いもよらず口からこぼれるものですね。
 「どうやらこの池の歳月を誉めて貰っとるようじゃが」
 「年長物に対する敬意です」
 「ワシがここに住み着いたのは、ここ数年のことじゃよ。この池は前からあったものじゃ」
 むう、たかが数年ではこのわんさか生き物祭りは難しい気もします。カメさんの功績ではないようですね。
 「では何故この池に?」
 「ふむ……」
 少し考えるような仕草をして、カメさんは死に別れた妻の墓前に立ったかのようなニヒルな顔付きになりました。


   眠そうな青空の下。
   その少女は、つまらなそうに竹トンボを飛ばしていた。
   くるくる、彼女の手の平によって扁平な羽は目まぐるしく動く。
   ふっと飛んで、肌色トンボは空を掻いて浮かび、じたばたと
   風に流され、ポトリと落ちた。
   少女はもう竹トンボを拾おうとしない。
   ただ落ちたモノに目を向けていた。
   「私はアカトンボが好き」
   少女はポツリと呟いた。そして私に顔を向ける。
   私が見ていることに気づいていたようだ。
   「だってオニヤンマはいかついもの」
   「顔はいつも怒ってるし」
   「シオカラトンボは絶対塩辛くなさそうだし」
   「あれだけ甘いものばかりとってるアリだって食べると辛いし」
   「アカトンボに唐辛子の代わりを求めてるわけじゃないけど」
   少女のつまらなそうな顔は変わることなく、ただ口元だけが
   コトコトと言葉を紡ぐ。
   どこか地に足が着いていない少女の雰囲気に、私は飲み込まれて
   いた。私を射抜くというには少し弱い、少女の視線から目を
   逸らすことが出来なかった。
   うん、と少女は一人呟く。
   「飛んでみようかな」
   気が付いた時には、少女の手によって私の首はギリギリと締めあげられていた。


 「……という話があってじゃな」
 「捕獲されてるじゃないですか!」
 「当時から浮ついた娘じゃったからのう」
 「意味が違うし!何かはしたない!」
 「ふん、自分で飛べるようになったらワシなんてすぐにポイッじゃ。ワシとは遊びだったんじゃよ……」
 「スネちゃった!」
 「ワシがどれだけあの蜜月を楽しんでおったかも知らずに……」
 「少女のしりの感触を楽しんでいたのですね絶倫エロガメめ」
 「何が悪い!」
 「開き直ったし倫理的に最悪!ていうか何ですかその少女も!普段から虫食べてるんですか!」
 「現代っ子は好奇心を躾られ過ぎじゃと思うんじゃよ。虫の一つも口に入れてみるのが風の子じゃろう」
 「食中毒になってたまりますか!」
 まあ神社の側であることだし、あの巫女の事でしょう。いや以前あっさりやられたものですよ。こちとら現代っ子です。あんな
ボクサー顔負けのハングリー精神(お賽銭)に適う訳がないじゃないですか。
 にしても私はこのカメさんを見誤っていました。こやつ、ツッコミが弱いのぅとさっきから思っておればボケであったとは。
勢い弱いから自分のネタ回収するの大変だったんですよ。そんなことを頭の中で掘り下げていれば、カメさんはいじけたロリコンと化して
いたその風貌を改め、ニヒルな私語りの顔付きになりました(ていうか何ですか私口調って。どのカメが格好つけやがりましたか)。

 「まぁ、若い者には適わんということじゃよ。アンタにもな」

 そうのたまうニヒルなカメさんは、どこまでも変態にしか見えませんでした。
 エロは偉大であると。その内自分の事を我輩とかいいながら私の尻を撫でて来そうです。ぶるっ
 「……じゃあ時間も遅いのでお暇させて頂きますね」
 「真っ昼間もいいところじゃが……なんでじりじりと後ずさっておるんじゃ」
 「はははそんなことありませんよロリコンさん」
 性犯罪者の動向が気になって空も飛べませんから。訴えようにも閻魔様とのご縁はほど遠そうだし。
  「またおいで。今度は茶の一つもご馳走せねばな」
 「いやもう自分の半生を省みて下されば結構ですので」
 池の水が出てきそうで恐ろしいです。


 勿論、あれから今日に至るまであの池には足を踏み入れていません。更に言えば神社周辺を飛んでいません。飛べません。
 あの巫女はどうやってプライバシーを確保しているのだろうと思った、そんな一日でした。
 



   (二)大妖精は千変万化


 こんばんわ(三割スマイル)。とある事情で名乗れない大妖精です。
 本日の湖はなにやらピリピリしています。余り見かけることのない人形遣いの魔法使いさんが先ほど館の方へ飛んでいくのを見かけ
まして、それからでしょうか。私は水面に立って、館の正門を何と無く眺めています。ムッツリとした月明かりによって私の姿は四方に
晒され、湖に像が浮かび上がりますが、決してスカートの中身は見えません(世界は良く出来ているものです)。いえ私とて自然の
セクハラを悦ぶ訳ではないのですが、さっきから森のあちこちからガサガサと何やら蠢いていて、森に近寄れないのです。一体全体
何なんでしょうか。
 見て見ぬふりを決め込みたかったのですが、音がします。草木が蠢きます。空気の震えが伝わってきます。鳥っぽい匂いがします。
うっすら塩味でした。ここまで五感でもって正体・意図不明なアピールを受け止めてしまえば、気付かないというのは最早無粋で
あると罵られても仕方がありません。端役は人との繋がりによってしか舞台に立てないのです。仕方なく繁みに近づき、蠢くブツに
話しかけることにしました。
 「変質者さん、こんばんわ」
 「誰が変質者か!」
 そういって繁みからイエーッと飛び出してきたのは、どこぞの鴉天狗でした。黒い羽は夜だと見え辛いですね。
 「だってさっきから変質的な動きを見せているじゃないですか。黒い羽がイヤらしさを隠そうともしてませんよ」
 「アングルを探していただけですよ!ええぃ、こっちに来て下さい!」
 何故か服を掴まれ、繁みに監禁されました。これからおいしく頂かれてしまうのでしょうか。私は妖生を儚む気はないので、
逃げようとしました。しかしながら鴉天狗の変質的なコンビネーションには適うはずもなく、すぐに捕まえられてしまいます。
 「私、食べられちゃいますか」
 「そんな事の為に来たわけではありません」
 「では、アングル的なものですか?」
 「そうです」
 言ってみただけで私にはさっぱりわかりません。


 天狗さん(食べられなかったのでさん付けです)はここでもない、と繁みの中をうろうろさまよいます。私はその後を黙って
ついて行くだけなのですが、さてアングル的なものとはいったい何なんでしょうか。天狗さんをみていますと、さっきから空を
見上げては溜め息を吐かれています。はてアングルとは空的なものなのかと。
 「空を見たいんですか」
 「その通りです」
 「いっつも飛び回ってるじゃないですか」
 「後から飛び回ります」
 「後から?」
 「まず地上からの絵が欲しいんです」
 「絵?」
 池の側に生えている木の枝に立っていた天狗さんは、ようやく私の方を向きました。アングルとやらが落ち着いたようです。
何となしに私も横に腰掛けると、天狗さんはカメラを私に向けて掲げました。
 「写真ですよ」
 どうやら私にも話してくれる気になったようです。
 「私は紅魔館を張り込み、とあるメイドの生活を秘密裏に調査する事によって今回の情報を得る事が出来ました」
 「ヒトはそれをストーカーと呼び、蔑むのです」
 「違いますよ、格好いい探偵だって尾行術を身につけているじゃないですか」
 むう。確かに、かつてコ○ン君に心惹かれる私がいたことも事実です。しかし近年私は気付いてしまった……コ○ン君がいる限り、
週一で知能犯が殺人を犯すのだと。(奴はサボらない分、そこいらの死神よりも死神です)
 「つまりあなたはツバを吐きつけるべき存在であるということですね。ペェッ」
 「酷っ!」
 最近、陽の下を歩けない人たちとの面識が多いですね。


 天狗さんの話によると、これからここで弾幕ごっこが始まるのだとか。
 「先ほど人形遣いが飛んで行ったのはご存じですね」
 ご存じです。
 「あれは紅魔館の面々が何やらをけしかけたのです」
 何やらですか。
 「そう、事の発端は館の主が言い出した我が儘なのです。『花火がみたい』と」
 もう秋の夜長なんですがねぇ。
 「館のメイドはそれでも各種花火を用意しました。打ち上げ手持ちロケットヘリコプターネズミヘビ線香と」
 これまたソウシャですね。
 「しかし館の主は不満たらたらです。『もう秋よ。火薬がしけった花火なんて風流じゃないわ』」
 ボークンですね。
 「レミリアさんは続けます。『花火がないなら弾幕を見ればいいじゃない』。メイドさんは頑張って弾幕を花火風にしてみせました。
 しかし館の主は『白なんてつまんない』と」
 モノトーンは大人の味ですか。
 「メイドさんは胃をキリキリさせながら『門番の弾幕は彩り豊かではないでしょうか』と提案します。しかし館の主は
 『小粒の弾幕を見ても面白くない』と」
 顔色で体調を診たわけですね。
 「そこで我らがメイドさん、『あの人形遣いと門番の弾幕ごっこは如何でしょうか』」
 つまり今から始まるわけですか。
 「人形遣いの家の壁はナイフまみれになりました」
 そんなところでやりきれないものを発散させたわけですね。
 「そして私は秋の名物として記事にしようかなと」
 被害者の為に戦うのが筆の力だとは思いません?
 「部数とれませんから」
 まぁ私も読みませんね。
 「あなたも変な妖精ですね」
 私もまた名乗れない程普通な大妖精です。
 「『大』がつくと皆こうなっちゃうんでしょうか」
 さあ?あなた方は私以外の大妖精を見たことがありませんので。
 「今度特集組みたいんですけど名前教えてくれません?」
 こんな場末でたむろしてる大妖精なんて放っておいて下さいよ。そうだ、カメさんのお話なんてどうです?
 少々オイボレですが、イキのいいのが一匹いるんですよ。


 たまったものではないので、この前知り合ったオイボレの性犯罪について話を向けました。二人で星空を眺めながらカメさんの話
(カメさん、若い娘の話題を独占出来てよかったですね)などをしていれば時間が経つのが当たり前というものです。ふ、と星空に一筋の
光が見えたと思えば、二つの点から鮮やかな光の波が零れ始めました。館の主様ご所望の出し物が始まったようです。そうなれば
天狗さんの動きは速く、私が天狗さんに顔を向けた時には、もうバシャバシャと光を焚いて写真を撮っていました。フラッシュって
近隣の方々の迷惑ですから、夜間は生物のいないところでやって頂きたいんですがねぇ。いや、上空の方が派手でうるさいんでそんなに
気にはなりませんが。
 それにしても、写真を撮りたいなら勝手に取ればいいのに、なんで私を引っ張り込んだのでしょうか。暇つぶしの話相手?それとも、
 「ププッこーわがりぃ?」
 「何の事ですか」
 煩わしそうな返事です。いよいよ怪しいですね。弾幕ごっこも盛り上がっており、もう夜空は一面虹色の粒で覆われていました。個人的
には少々ケバケバしいかなと思わないでもないですが、館の主さんならば喜ぶのでしょう。メイドさんに幸あらんことを。そんなことを
考えていると、天狗さんがその黒い翼を拡げました。どんな色の光も取り込む、鈍い黒翼はこんな明るい夜でもぽっかりと浮かび、
なんとも似合いません。
 「空から撮るんですか」
 うーん、と天狗さんは頭をかきかき。
 「そうですね。あとで新聞と一緒に写真を送りますよ」
 「?」
 天狗さんはあっという間に空の色にとけ込みました。とはいっても、相変わらず空は虹色で、そんなに光の中に黒い点がポツンと
浮かんで目立ちます。あ、溶け込んでいませんね。それでも途中から見えなくなりました。色は相変わらず飛び回ります。
 どちらかが勝つまで弾幕は続いたんでしょうけれど、どっちも色々した弾幕なのでどっちが勝ったかはわかりません。ただ、近隣の皆様
が次の日皆眠そうな顔をしていたことをここにお伝えしておきます。私は二度寝です。くー。


 数日後、あの時腰掛けた木の根本に新聞が置いてあるのを見つけました。特に面白くもない記事を読んでいると、一枚の紙切れが
ヒラヒラと落ちました。それも拾ってみれば、写真でした。

  光の粒です。
  赤青緑黄紫朱藍白、うーん、足りませんね。色々色々とした弾幕が写真の空を埋め尽くしています。
  それは世界がこの時生まれたかのような光景といえば良いのでしょうか。
  これはもう変わることのない、この時だけに封じ込まれた世界。
  そして映された地上。湖によって色鮮やかな光は和らぎ、水面は全てを淡くまとめた白を抱き留めます。
  左右に広がる樹木は黒に薄い藍が翳り、周りの鮮やかさとは真逆の静かさ、落ち着きを。
  生まれたばかりの世界は有りもしない重力によって、この地に包まれました。
  どうしてあの場に居合わせた私は、今感じているモノを。

 天狗さんはこの時の湖を切り取りたかったのだと気づきました。なかなか芸術家ですね。私は青空の下にある、今の湖を端から
ゆっくりと見渡します。色んな生物がゆったりと過ごす、緩やかな空間。素晴らしいでしょう。
 少し不満があったので、一筆したためることにしました。「アサヒ○メラに投稿したら、いいセン行くのでは?」
 後日「私はアマじゃない!」とツッコミが来ることは分かっていましたが、仕方がないじゃないですか。


 だって私の写真がないんですもん。あの時私が湖に立っていたとしても、きっと綺麗な絵が取れましたよ?
 こう見えても私、顔立ちは可愛らしいんですから。



   (三)大妖精は無色透明


 こんにちわ(仏の微笑)。とある事情で名乗れない大妖精です。中ボスの代用性とか言うな!いえ、代用で良いんで出番を……。
 本題がズレました。本日はいつもの通り、紅魔館の側の池で優雅に生息しています。紅魔館の池というのはなかなかの広さを誇って
おりまして、以前性犯罪カメの居住地を誉めたこともございましたが、私としてはやはりここが一番落ち着きますね。薄い青色の水が
どこまでも澄み渡り(紅い霧で覆われたりもしますが)、多種多様の生物が適度なリラックススペースを保って生活している様は、
見る者全ての心を和ませる癒し空間としてアピールせざるを得ません。
 いつもの場所で、いつもの光景が広がっています。八雲さんちの狐さんが一本の尻尾と八貫の稲荷寿司で成り立っていることが
言うまでもないことと同じように、チルノ○○がカエルを凍らせて遊ぶ当たり前が流れます。凍ったカエルはそこら中に放置してあり、
ボールのように固まったカエルが幾つか、木の根本にいる私の元へ転がってきます。
 しかし生物を氷漬けとは不思議なものです。これは生き物という次元を昇華したおぶじぇとやらなのでしょうか。いや、ただの
動物虐待ですよねー。
 以前、私はチルノ○○のこの行動に疑問を持ったことがあります。


 「なんでいっつもカエルを凍らせるの?」
 「そこにカエルがあるからよ!」
 その時私はハンマーで頭を殴られたかのような衝撃を受けました。何と威厳に溢れ、迫力のある言葉なのでしょうか。これはひょっと
して世界の真理の一つを、いえ、チルノという名の世界そのもの表現してしまっているのではないでしょうか。(ちょっと頭が足りない
感じがまた見事だという感想を覚えました)これは私が冠させて頂いている「大」の称号を彼女に贈るしかありません。
 大チルノ。
 ……。これでは彼女の功績を表現できていない気がします。
 チルノ大。
 …………。何かの計量の基準みたいですね。卵大の大きさ、チルノ大のおつむ?
 チルノ(大)。
 ……………………………………注文、したくないなぁ。海の家においてそう。
 奴に漢字は似合わない、という事に気付いたのは後日のことです。


 それにしてもチルノ○○です。チルノ○○はカエルを凍らせることに純粋な喜びを覚え、何の疑問も覚えないように見られます。
それはチルノ○○がチルノ○○である証明であり、ヒトは凍ったカエルを通してチルノ○○を感じます。それは何者にも変えられらない
ということでしょうか。何者でもないというものでいられないということでしょうか。以前知り合った天狗さんも、それはそれは写真に
夢中でした。いや、新聞を作ることに夢中なのかも知れませんが、それらは一つのことに縛られ、自分を見失わないということでしょうか。
私はそれが羨ましいのか、妬ましいのか、また憐れんでいるのか、誇らしいのか、何を感じているかは私を見て下さるヒト次第です。
 私はどのような者にもなれますが、私だから私のまま?
 さてね。
 まあ今回語り部としての問題は、私はチルノ○○を普段何と呼んでいるのか、知らないということです。


 疑問は素直に聞くのが心の成長のコツですね。
 「ねぇ、チルノ……私、あなたの事何て呼べばいいか分かんないの」
 「私は最強よ!」
 最強と呼べと?
 「……じゃあ、最強は私を何て呼んでた?」
 「私が最強よ!」
 「…………チルノは私を何て呼ぶの?」
 チルノ○○は悩み始めました。
 「……。名前、なんだっけ?」
 私一番近くで凍っていたカエルをそっと持ち上げると、湖に向かって全力で放り投げました。遠くでポチャッと涼しげに
水を打つ音が聞こえてきます。氷は流れている水の中だと溶けやすいですから、立派な蛙命救助です。ストレス解消なんて
とんでもありません。いつものいつもが当たり前のように流れていきます。
 「普通の妖精はそんなこと気にしないわよ!」
 いや、自分のアイデンティティを気にしなくなったら知的生命体としてはなかなかどうでしょう。

 「――ってやっぱり変わってるわ!」

 チルノ○○はやっぱりと言いました。――?今、何と?
 「今、私の名前を呼ばなかった?」
 「……。なんだっけ?」
 私は再びカエル氷(新しいスイーツではございません)を次々と湖に投げ始めました。
 勿論蛙命救助です。
 決して話をぶん投げた訳ではありません。
 ましてや水に流そうなどと。




   こんな三つのとある日の出来事をつらつらと語らせて頂きました。ご静聴、ありがとうございます。
   まぁ何が言いたかったかと申しますと何ということはなく。
   こんなところで頑張ってますよと。出番、こないかな、なんて……。

 

  こんなの大妖精じゃない!→ではどんなのが大妖精だと
(※1)カメさんは限りなくうさんくさいです。
(※2)ご利用は計画的になアレです。
(※3)チルノ(並)でごはん三杯軽いです。
  皆様の作品の箸休めにでも読んで頂けたら幸いです。

※皆様より丁寧な感想を頂き、本当に嬉しいです。ありがとうございました!
 >神鋼様
  大妖精は儚げな影の薄い名無しさんである。
  そんなこと思ってたまるかー!
 >小山田様
  今回は言葉に遊ばれてばかりで、話の流れなんてろくに考えてなかったように
  思います。こんな後悔も見当違いかもしれません。
  ご指摘ありがとうございます。
 >佐藤 厚志様
  ペーソスとな!屈折したくもなるじゃないですか。
  無個性に自己主張したいんです!出番ー。
 >twin様
  本音の部分が作者の自慰になってしまっているので、というか全体的に。
  ギャグに水を差すような真似をしてしまっているかな、と不安でした。
  受け入れられて貰えたようで、とても嬉しいです。 
 >大崎屋平蔵様
  クドさが読み辛さに直結しているのが情けないところ。
  好きだと言って頂いて嬉しいです。
 >77号様
  いえ、性器崇拝のシンボルにしたかったわけじゃありませんよ!?
  ホホ、ホントだよ!ちょっとなんかいけないものが頭に流れてきただけで。
 >三文字様
  単なるレイアウトのミス……で終わってたり終わらなかったり。
  ホント作者の自慰です。玄爺はホントうさんくさいんで、
  どうか寛容な心で……。
 >つくね様
  どサドのあの方にマシュマロ届けてきます。
  ちょっと気持ちいいかも
 >yus様
  ぶん投げ過ぎなんですが、気に入って頂ければ幸いです。
 >カテジナ様
  作者が卑屈だからこんなんになっちゃったのかなぁ……。
  読みやすいと言って頂けて、ホント嬉しいです。
 >deso様
  大妖精って水っぽくね?と思ったのをこじつけちゃったもので。
  創想話で賑わって欲しいです。
 >詩所様
  すいませんホントレイアウトのミスです!ご指摘ありがとうございます!
  大妖精を、未熟な腕ながら光るように磨けていたでしょうか。
  でしたらホント嬉しいです。
 >ミスターブシドー様
  レイアウトのミスはホントすいません。勿体ない。
  ご指摘ありがとうございます。
  自慰的な情景を入れてしまっているのは、
  別作品の名残が消化できていないからです。情けない。
 >PNS様
  リリー黒はホントは優しいんだと思いこむ!
  笑えたのであれば幸いです。
 >つくし様
  お題なんてフリーダム!はいけませんね。散漫はホントすいません。
  レイアウトの問題もホントすいません!
  ご指摘ありがとうございます。
 >眼帯つけた兎さん様
  頭にいけないものが(ry
  とにかく好きにやったらこうなったとしか。
  素敵と言って頂いて嬉しいです。
  チャットで作品取り上げて頂いてありがとうございました。
 >今回は感想のみ様
  なんというギャグに対する殺し文句。精進させて頂きます。
 >藤ゅ村様
  これがぼくのかんがえた大妖精
  オチへの流れが弱いなとただただ感じています。恥ずかしい。
  オチ自体も弱いか……。ご指摘ありがとうございます。
 >じらふ様
  食となっ!?箸休めになって頂けたなら、マジ嬉しいです。
 >tukuwan様
  ちかごーろのわたしーたーちはあー
  嬉しいです。
 >八重結界様
  ホント繋がり無かったッスね。その辺後悔ばかりでなく、
  反省しなきゃなかなか先に進めませんね。
  ご指摘ありがとうございます。
 >名乗る名前がない様
  とても大妖精です。もちろんのこと
  亀はどうなんだろう……。
 >blankii様
  メッタメタにしてやんよ!
  それっぽくなってますかね。嬉しいです。
 >木村圭様
  やはり大妖精擁護委員会を立ち上げるべきでしょうか。
  メディスンには負けたくない。
 >リコーダー様
  どのようなことがあっても大妖精の布の内側を見せることは出来ませんな。
  何故ならそれは世界の法則だからです。
  アリですか、めっさ嬉しいです!
 >時計屋様
  しっかり、と言って下さって嬉しいです。
  やはり読み辛い部分もあったと思いますので。

 ※未熟で無知な身ではありますが、今回は運営様を始め多くの方々、
  なんかもう本当にありがとうございました。
  チャットでは空気も読めず、申し訳なく思います。
  謝るくらいならといわれても、うーむ。
  反省に繋げたいです。
慶賀
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/09/15 00:01:45
更新日時:
2008/11/06 05:15:35
評価:
0/0
POINT:
0
Rate:
5.00
1. 6 神鋼 ■2008/10/06 19:56:53
こんなビッチな大妖精なんか大ちゃんじゃない!!

そう思っていた時期が私にもありました。
2. 1 小山田 ■2008/10/06 22:22:55
ユニークなストーリーテリングでしたが、その方向でどれだけがんばっても、それは作品の面白さとはちょっと違いましたね。
3. 6 佐藤 厚志 ■2008/10/07 01:30:58
ここの大妖精は屈折気味ですが、嫌いになれないです。
最後の3行に、我々市井の人間が抱くペーソスが現れていると私は確信しました。背伸びのような、羨望のような感情。普通に生きるということはこういうことなんでしょうか。
4. 5 twin ■2008/10/12 00:27:15
 玄爺への毒舌酷過ぎるw
 大妖精の日常を垣間見たような気になりました。
 そして笑わせて貰いましたw

 それにしても大妖精はチルノをなんて呼ぶんでしょうね。
 そしてまた大妖精をチルノがなんて呼ぶのか。謎です。
 穏やかな文体に加えられたギャグが面白かったです。
 あと、所々で出る大妖精の本音が特に。

 そして最後に大妖精の切実な願いに泣かされましたw
5. 9 大崎屋平蔵 ■2008/10/12 17:56:16
くどい! 言い回しが一々くどい! そこが大好き!
とても良かった。ボケ役の玄爺からツボでした〜♪
6. 7 77号 ■2008/10/12 18:46:32
カメって、淫猥ですよね。
アオミドロは素晴らしい表現と思いました。
吐き気がするほどの青臭さと腐臭をよく表現されてますね。
7. 7 三文字 ■2008/10/13 22:48:50
妙な位置で改行されてるのは何だろう……と考えると大ちゃんのアルカイックスマイルが頭全体に広がって、それによって人間は人間足りうる、なんて言ってみる。
なんというかカオスですねぇ。色々と付いていけねえや。
その付いていけなさが面白いんでまあ良し。

にしても、玄爺がまともに話に加わっているシーンを初めて見た気がするw
8. 2 つくね ■2008/10/17 18:03:32
おい誰かこの亀天日干しにしろわははは。やけに黒さを感じる大妖精ですねコンニチハ。
さて、なんだか不思議なものです。言うなれば平坦でしかしマシュマロかなんかでできている道を歩んでいるような。晴天の向日葵畑で微笑んだ緑髪に出会ったような、そんな感じで。
9. 4 yuz ■2008/10/18 19:43:43
うん。3つ目が特にいい。
10. 8 カテジナ ■2008/10/19 15:48:09
大ちゃん卑屈すぎっ!でもこんな大ちゃんも悪くないと思う自分がいるのも確か。チルノに存在感を喰われるから大ちゃんにも色々ストレスがあるんだろうな〜。いつか大ちゃんがチルノに対して「あの世で詫び続づけろーっ!!」と言いそうで恐いです。面白くて、とても読みやすかったでした。
11. 7 deso ■2008/10/23 23:42:53
お題がやや弱い気もしますが、面白かったです。
彼女は地味にクールにこっそりとツッコミを入れる日々を送っていると信じています。
12. 6 詩所 ■2008/10/26 20:09:53
誰かが指摘するかと思いますが、改行は意図的でしょうか?
読みづらくなっていると思いますよ。

通称大ちゃんは名乗らなくていいんです。
そのほうがこの作品のように彼女は輝きますから。
13. 3 ミスターブシドー ■2008/10/26 23:58:28
なんだこの読み難さ。
改行? あと()による註釈が多くてテンポが悪い
とにかく読みにくさが勿体ないというかなんというか。
少し毒味のある大ちゃんはそれなりに面白かったのに、とにかく改行や段落、()註釈のせいでテンポが悪い。
左右で大きさの違う靴を履いているような気持ち悪さがある。
話としては、文の写真の件はちょっと面白かった、けど、逆にギャグ主体のこの話からは浮いているようにも。
14. 6 PNS ■2008/10/28 13:52:56
黒! この大妖精、なんか黒いです! 
でも笑っちゃいました。
15. 2 つくし ■2008/10/29 16:50:20
 なんかもうフリーダムすぎる大ちゃんにアタマぐわんぐわんにいてこまされてなにがなんだかよくわかりませんでした。なんだこの話の散漫ぐあいは。前衛芸術かなにかか。あと1024×768のウチのモニタだと変なところで改行されるこのレイアウトは限りなく読みにくいです……。そのへんもリーダビリティを阻害します。
16. 4 眼帯つけた兎さん ■2008/10/30 06:59:47
最初から色々とブレイクしているな、と。
それにしても妖精らしく少しは悪戯好きの大妖精。無個性妖精の名を欲しいままにしていますね。
今までの二次設定を全て水に流した大妖精、素敵でした。
17. 3 今回は感想のみ ■2008/10/31 13:31:01
軽妙な語り口。なのに、話すネタに面白さがまるでないのが残念。
18. 6 藤ゅ村 ■2008/10/31 17:22:58
 なんか すごい 大妖精
 序盤から中盤にかけての勢いのわりに、最後が尻すぼみしてしまって少し残念でした。というかもうちょっと大妖精の勢いに呑まれていたかったという思いがありましたので。
19. 4 じらふ ■2008/10/31 21:27:43
私はチルノ(並)で三食いけそうですっ!

お題を使っての締め方がお見事でした…「誰が上手い事言えと!?」と叫びながら思わず裸締めで絞め落としたくなるくらいに。
良い箸休めありがとーございます。
20. 8 takuwan ■2008/11/01 15:31:06
いい感じ
21. 5 八重結界 ■2008/11/01 18:27:10
一つ一つのお話は面白かったんですが、オチが少し弱かったです。
それに、各話の繋がりがさほど無かったのも残念。
22. 4 名乗る名前がない ■2008/11/01 21:10:42
まさかの大妖精。
まさかの亀。
すごく大妖精でした。ええ、すごく。
23. 6 blankii ■2008/11/01 21:13:36
すごいよ○○さん。
なんというか匿名性を最大限に活かした話で新感覚。メタっぽさを醸し出す一方で、やはり大妖精がそれっぽいのがお見事です。
24. 4 木村圭 ■2008/11/01 21:42:34
こんなところで頑張ってるとますます出番が来なくなる気がしてならない。
やっぱり語り部は毒持ちがちょうどいい。
25. 9 リコーダー ■2008/11/01 22:40:10
最近、大ちゃんのスカートの中というものにものすごい探究心を感じるんです。
自分一人だけ異常なのかと思ってたのですが、玄爺やぶんぶんに執拗につけ狙わせるあたりどうやら作者殿も同類のようで、自分はここにいても良いんだという気持ちが湧いてきました。
ちなみにこの大ちゃんはアリです。

26. 6 時計屋 ■2008/11/01 23:02:32
名も無い妖精がこんなふうに暢気な日常を過ごしているというのは、いかにも幻想郷らしい気がします。
流れるようでいてしっかりとした文章は読んでいて疲れを感じさせませんでした。
箸休めなどととんでもない。十分堪能させていただきました。
27. フリーレス 慶賀 ■2008/11/04 19:59:55
 今改めて思うとって言えばキリがないんですが、
やっぱり池だの湖だのは出さない方が良かったですね。
名前 メール
評価 パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード