みずいらず

作品集: 最新 投稿日時: 2008/10/05 02:48:28 更新日時: 2008/11/06 19:19:49 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00





その日、私は妖怪の山に足を運んでいた。
我が主の紫様は相変わらず寝ているし、式の橙は氷精や蛍妖怪達と遊びに出かけている。
つまるところ、私は暇だったのだ。
家の仕事をするにも、今はまだ日が傾き始めた頃。
夕飯の支度にはまだ早いし、家の掃除はもう終わってしまった。
瞑想だの鍛錬だのは、出来れば夜の静かな闇の中でやりたい。
尤も、邪魔が入ることが多いのだが。邪魔と書いてなんて読むかは此処では伏せておこう。

とにかく、特にする事もなかったので、私はこうして1人で山に来ていた。
勿論、理由もなく来たわけではない。

私は、目の前を流れる川へと目を向ける。

「…むぅ…。」

靴を脱いで、片足だけちょこっと水の中に入れてみる。
…よし、まだ何も変化は起きない。

続いて、もう片方の足を水の中に入れ、川底に両足をつける。

…数分浸かった後、ぐらりと視界が揺らいだ。

「…っ!!」

慌てて私は川から上がる。
素早く反応できたために、式が落ちる事はなかった。

「…やっぱり、まだ駄目か…。」

私は紫様の式神。式神は須らく水に弱い。
どういう理屈なのかは私自身も良く知らないのだが、式神は水に濡れると式が剥がれてしまう。
私も結構長い事これには悩まされている。何せ、雨の中を歩いたり出来ないからだ。

いやまあ、別に式が落ちたところで死ぬわけではない。能力が落ちるだけだ。
自分で言うのも難ではあるが、私は九尾の狐。妖獣の中では最高峰の力を持っている。
式が剥がれた程度ではその辺の妖怪に遅れを取る事はない。

…ないのだが、昨今の幻想郷では、そう言っていられるのかが良く判らなくなってきた。
嘗て紫様の親友、西行寺幽々子様が異変を起こした事で、私も色々と幻想郷に深く関わるようになってきた。
…そして、私は幻想郷の色々な物を知った。
ある程度は紫様から聞いたりしていたものの、やはり自分の眼で見てみると、また違う世界観を持つ事が出来る。

…その中で、私は幻想郷には、強力な力を持つ者たちがいる事を知った。

博麗神社の巫女、博麗霊夢。

魔法の森の魔法使い、霧雨魔理沙。

時を操るメイド、十六夜咲夜。

七曜の魔女、パチュリー・ノーレッジ。

紅の館の主、レミリア・スカーレット。

七色の人形遣い、アリス・マーガトロイド。

狂気の月兎、鈴仙・優曇華院・イナバ。

月の頭脳、八意永琳。

月の姫君、蓬莱山輝夜。

…挙げ続けるとキリがないので、この辺で止めておこう。


私が何を言いたいかというと、最近は人間妖怪問わず、皆の力が強くなってきていると言う事。


勝負内容がスペルカードバトルとは言え、時には紫様すら敵わぬ相手も出てくる始末だ。
勿論、その強力な力を持つ者達が、わざわざ雨の日なんかに私を襲うとなどとは毛頭思っていない。

…ただ、妖怪達のレベルが上がっている事を考えると、一つだけ不安が…。

…そう、私の式の橙の事だ。

橙はまだ子供だし、式神だとは言えまだまだ未熟なところが沢山ある。
それに遊び盛りでもあるし、最近では結構色々なところにも出回っている。

…ただ、もし遊びに出ている時に、急に雨が降ってきたり、滑って川や池に落ちてしまったりしたら…。

そうして式が落ちてしまった時に、運悪く野良妖怪と遭遇してしまったら…。

…そう考えると、居ても立ってもいられない。


そういうわけで、今私は長時間水に入っても、自分の式が落ちないように特訓しているのだ。


全ては橙を護るために。


「…うーむ、どうすればいいものか…。」

先ほどの反応は多少極端だったとは言え、やっぱり私はまだ水には慣れていない。
両足を水に漬けているだけで、式が剥がれそうになってしまう。
これでは雨の中などもっての外である。5秒式が持てばいいほうだ。

そもそも、水に濡れても式が剥がれない、そんな事が出来るのかも良く判らない。
水に弱いと言うのは式神の宿命なのかもしれない。
果たして、私は水を克服する事が出来るのだろうか…。

「…考えても仕方がない。やらなくてはならないんだ。」

そうだ、私はやらなくてはならないんだ。
雨や水の中にも橙を助けにいけるように。
そして、最終的には橙も修行して、水に濡れても式が剥がれないようにしてあげたい。

これでも昔に比べれば少しは慣れているのだ。
料理に水を使うくらいなら全然出来るし、数分程度なら風呂にも浸かっていられる。
橙も、風呂にゆっくり浸かっていられるようにしてあげたい。あの子はまだ良くて数十秒位しか無理だから。
風呂にゆっくり浸かっていられないなんて、人生の半分は無駄していると思う。

「よし、頑張らなくては。」

そして、私はもう一度、水の中へと足を踏み入れた。









「…で、やり過ぎて式が剥がれてしまったと言うわけね。」

「…はい、申し訳ありません…。」

その日の夜、私は紫様に向かってひたすら謝り続けていた。

あの後、私は何度となく水に入り続けては上がってを繰り返していた。
しかし、ふとした事から足を滑らせてしまい、そのまま川の中へと倒れてしまう。
しかも運悪く、後頭部に尖った岩が直撃して、暫くの間気絶していた。
…気がついた頃には、式が何処かに飛んでいってしまっていたわけだ。
仕方が無いので家に帰って、紫様にもう一度式を張り直してもらったのだが…。

「…次にそんなくだらない事で私の眠りを妨げたら、あなたも地下世界に封じてあげるから覚えておきなさい。」

肝に銘じておきます。ただ、私が帰る時間まで寝ていたあなたもあなたなのですが。
言えば極刑が待っているとは判っているので、口には出さないが。

「それにしても紫様、どうして式神は水に弱いのでしょうか…。」

折角なので、私は紫様にその事を聞いてみる事にする。
何故水に弱いのかを知れば、ひょっとしたらそれなりの対策も取れるかもしれないし…。

「…そうねぇ、機械が水に弱いのと同じような物かしら?」

…はい?

「機械を水に入れると、ショートして動かなくなってしまう。
 機械と言うのは須らく水に弱いもの。コンピュータも、水に入れればそのまま壊れてしまうわ。
 自らが電気で動いているから、電気を通しやすい水の中では、殆ど無力と化してしまうのよ。」

…えーっと、出来れば専門用語(?)を使うのは止めていただきたいのですが…。

「…それはつまり、私も電気で動いているから、と言う事ですか?」

「そんなわけないじゃない。」

私の言葉に、間髪入れずにそう答える紫様。
…ああ、やっぱりこの人の言う事は良く判らない…。

「…じゃあどういう事なのでしょうか?」

「ふふふっ、自分で考えなさい。コンピュータは基本的に言われた事しか出来ない。
 しかしあなたは式神。コンピュータと式神の違い、よく考えて御覧なさい。」

そう言い残して、紫様の姿がパッと消えてしまう。
一瞬驚いたけれど、何の事はない。紫様のいた場所の真下に、スキマがぽっかりと口を開けていた。
恐らく幽々子様のところか、博麗神社にでも行ったのだろう。何時もの事だ。

「…全く、相変わらず読めないお方だ…。」

一人愚痴ってみるも、誰かが返答も賛同もしてくれるわけではない。
仕方がない。紫様が帰ってくる前に、夕飯の支度を済ませてしまうか…。

「ちぇーん!!ちょっと来てくれー!!」

はーい、と言う言葉と共に、私の式神はぱたぱたと駆けて来る。

「お呼びでしょうか?藍様。」

「そろそろ夕飯の支度をしよう。手伝ってくれるか?」

「はーい!」

そう言って、橙はまたぱたぱたと駆けて行く。恐らく手を洗いに行ったのだろう。
可愛いなぁ。そう思いつつ、私も手を洗っておかなくてはならないので、その後に続くことにした…。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





翌日、私は幻想郷の空をゆっくりと飛んでいた。
昨日の事を、とある者へと相談に行くためだ。
ただ、別段急ぐ用事と言うわけではない。ゆっくりと飛んで、昨日の紫様の言葉を反芻する。

「…コンピュータと式神の違い、か…。」

紫様にそう言われてから、色々と考えてみてはいる。
…ただ、考えれば考えるほど判らなくなる。
何故かって、そもそも式神とコンピュータでは、生物と非生物としての違いがある。
確かに、以前読んだ『幻想郷縁起』には、式神はコンピュータのような物とは書いてあったが…。
幾らなんでも、差がありすぎるのではないか…?

「それに、それが判った所で、果たして水に強くなるのかどうか…。」

それがもう一つの不安。
紫様の真意を見つけられたところで、果たして私の目標である「水の克服」に繋がるのかどうか…。

…とにかく、時間のある時にやっておける事はやっておこう。
だからこそ、今こうして空を飛んでいるわけなのだが。

「…っと、あそこか。」

此処に来るのは、彼女たちに月への侵入の手伝いをしてくれないか、と依頼した時以来か…。

眼前に広がる湖の向こう、紅き吸血鬼の館。

私と同じく水を…流水を、苦手とする者の所へ…。









「バッカじゃないの?」

私の前でソファーに足を組んで座る少女。
呆れた、と言う感情が言わずとも言葉から流れ出れいる。
…あれ?この場合は「言わずとも」は変じゃないか?言ってるじゃないか。
…自分でも意味が判らない疑問だ。捨て置こう。

とにかく、紅き館の主、幼き吸血鬼レミリア・スカーレットは、私の話を聞くなりそう吐き捨てる。
まあ、当たり前の反応と言えばそうなのかもしれないが…。

「…すまないが、本気だ。どうすれば水を克服出来るのだろうか…。」

改めて、それだけは言っておく。
確かに、用があると言われて急に「どうすれば水に強くなれるか」と聞けば、誰でも似たような反応をするだろう。
しかし、私も本気で質問しているのだ。
こうしてこの紅魔館に足を運んでいる以上、手ぶらで帰るわけにもいかない。
訊くのは一時の恥だ。此処はどう思われようとも、何か意見を貰っておかなくては…。

「…あのねぇ、スキマの式神さん?ちょっと考えて判らないかしらね?
 …そんな方法があるなら、私はとっくに水を克服しているわよ。」

レミリアの言葉が胸に刺さる。
ううっ、確かにその通りなのだ…。

「そ、それは判っているつもりだが…。お前は同じような事をしたことはないのか?
 何でも構わない。過去に失敗している方法でも構わないから、何かヒントを…。」

「無いわ、何も。」

私が言葉を言い切る前に、レミリアはあっさりと会話を切り捨てる。

「…狐さん、私の能力は知っているかしら?」

スキマの式神の次は狐か。まあどちらも確かに私なのだから、どうこう言い返すことも出来ないのだが…。

「運命を操る能力だったか?」

私は直接彼女と戦った事はない。紫様が私を式神として召喚した時、対峙した事はあるが。
彼女の能力については、本当にそれとなく知っている程度だ。

「そう、私は運命を操る能力を持っている。私には、運命を見る事が出来る。
 だから、私は知っている。吸血鬼には、決して水には抗う事が出来ない。
 それは吸血鬼として生まれた私に運命付けられた事。決して変える事は出来ないのよ。」

静かに、レミリアはそう語る。
その時の彼女の鋭い眼が、何処か儚い美しさを秘めていた気がしたのは、恐らく気のせいではなかっただろう…。

「私だって、水が苦手だなんてくだらない弱点は持ちたくはなかったわ。
 治せるならば治したい。だけどこれは定められた物。私には、それに抗う術は無いのよ。」

レミリアはそれだけ言って、紅茶のカップを手に取る。
…なんだろう。言ってる事は確かだ。
レミリアは水を克服出来ないのだろう。それが、彼女の言う「運命」に定められている以上。
ただ、運命だの何だのそう言っているわりには、話の内容は水が弱点だの何だのと言う事なのだから、今一パッとしない。

それでも、レミリアが何となく悲しんでいるのは判る。
こういうのを悲しんでいると定義するのが正しいのかは判らないが、それ以外に言葉もない。
レミリアにも、それなりに水に苦しめられた経験があるのだろう。
500年の歳月を生きていて、今まで一度も、と言う事は有り得ないと思う。
勿論、レミリア自身がそれを語るとも思えないので、勝手な想像でしかないのだが…。

「…そうか。判った。
 しかし、となると私はどうすれば…。」

頭を抱える。
レミリアが何も策を講じた事が無いというのであれば、私はこれからどうすれば良いのだろうか。
吸血鬼以外で水を嫌う種族などいるのだろうか?
…最近紫様…まあ、厳密には霊夢なのだが…が行ったと言う旧灼熱地獄の者くらいか?よくは聞かされていないが。
…いや、別に彼女らは水が嫌いなわけではないか。
それでも一人は橙と同じ猫…、…いや、あれは火車だと聞く。厳密には猫ではないか。
そんなくだらない事はどうでもいい。

「…レミリア、他に水を嫌う種族は知らないか?」

「知るわけないじゃない。」

聞くだけ聞いてみて、あっさりと一蹴された。
判ってはいたのだが、やっぱり少しだけ虚しくなる。

「そうだろうなぁ…。…はぁ…。」

ため息が自然に漏れる。
これで「判らなかったら人に聞く」作戦の糸が切れてしまった。

「…そんなに水に慣れたいなら、いっその事あのオバサンの式神辞めちゃえばいいじゃない。」

うーむ、流石レミリア。恐ろしい事を平気で言う。

「出来るわけないだろうそんな事。私は紫様に忠誠を誓った身、それ故の式神だ。」

確かに、私が紫様の式神でなくなれば、水が弱点である事はなくなるだろう。
しかしそれでは本末転倒だ。紫様の式神であるが故に、私は水を克服したいのだ。
紫様の式でなくなったら意味が無い。…と言うか、レミリアもそれぐらいは判っているだろうに…。

「ならそれ以外に方法は思いつかないわよ。
 パチェに聞いたって同じ事を言われるか、実験材料にされるかのどちらかよ。どっちがいいかしら?」

「少なくとも後半だけは絶対にお断りだ。」

何が悲しくてそれだけで実験材料にされなくてはならないのだろうか。
確かにあの魔法使いならば何か知っているかもしれないが、リスクが少々大きい。
…彼女の事を危険視しすぎかもしれないが、否定も出来ないから恐ろしいな…。

「それじゃあ、あなたが此処にいる意味はないと思うわ。
 帰って老人の介護でもしながら、他の方法でも考えなさい。」

「…お前は本当に怖いもの知らずだな…。」

何処かで紫様が聞いてる可能性があるだけに怖い。
あの方は何処にいたって人の会話を盗み聞き出来るから…。
…まあ、私が言ったわけじゃないから大丈夫だろうけど、とばっちりだけは勘弁して欲しい。

しかし、それもそうか…。
レミリアは私が欲しい答えを持っていないし、魔法使いに相談するという選択肢はまだ取りたくはない。
魔法使いに聞くのは最後の手段にとっておこう。

「…すまなかったなレミリア。こんなくだらない事で押しかけてしまって。」

とりあえず頭は下げておかなくてはならない。
自分でもくだらないと思うのに、プライドの高いレミリアは相当苛立っていると思う。
案の定、レミリアは露骨に不機嫌な顔をしながら…。

「全くよ。こんな事に時間を取らせるなんて、あのスキマに何を請求してやろうかしら。」

それは確実に流されて終わりだぞ。言葉には出さないでおくが。
私は出されていたカップを手に取り、残っていた紅茶を全て流し込む。
これ以上紅魔館にいる意味もない。レミリアの言うとおり、家に帰って考えを纏めよう。
…それに、レミリアもこれ以上こんな話題に付き合いたくはないだろうから。

「じゃあ私はこれで失礼する。…ああ、カップは私が序に持っていこうか?」

相談に乗ってくれた礼…どちらかと言うと詫びか…に、片付けくらいは私がやっておこうか…。
他人の家の台所に勝手に入る気はないから、その辺のメイドにでも預けて…。

「その必要はないわ。咲夜。」

「はい、ここに。」

…と、今まで席を外してもらっていたメイド長が、パッとレミリアの横に現れる。
そして、すぐに2人分のカップをトレーに乗せて…。
…そのトレーが、パッと消えてしまった。

「それじゃ、客を丁重にお見送りしなさい。」

「かしこまりました。それではこちらへ。」

…うん、流石は瀟洒なメイド。やる事なす事完璧だ。普通の物から見ればただのイリュージョンだが。

「それでは…。…ありがとう、レミリア。」

部屋を出る前に、それだけは伝えておく。彼女には本当に感謝している。
相談に乗ってくれた礼という意味でも、私に一つだけ光を残してくれた意味でも。
何故かぽかんとしたまま固まるレミリアを残し、私はメイドの後に続いて、彼女の部屋を後にした。
…礼も言わぬ奴とでも思っていたのだろうか。失礼だな。









「今日はすまなかった。急に押しかけてしまってな。」

紅魔館の門の前、私はもう一度頭を下げる。
咲夜にも迷惑だっただろう。こんな急な事は。
序に門の前だからこそいる彼女、紅美鈴にも。

「普通に尋ねてくる客人なら問題はありませんわ。何処かの白黒魔法使いとは違ってね。」

そう言って苦笑いを浮かべる咲夜。

「…そこの門番がちゃんと侵入者に対応出来れば、私の負担も減るんだろうけどねぇ…。」

…そして、それだけで妖怪一匹殺せそうなほどに鋭い目線を、隣にいた門番へと向ける。

「え…、…いえ、あの、私はちゃんと頑張ってるんですよ?
 だけど私が得意なのはあくまで近距離戦であってあの白黒みたいに遠距離から攻撃してくる奴とは相性が…はうっ!」

頑張って言い訳をしている門番の額に、すこーんといい音を立ててナイフが突き刺さる。
別に珍しい光景ではないらしいのだが、私は馴染みがないのでちょっと戸惑う。
うーむ、この門番も妖怪だからこの程度では死なないとは判ってはいるのだが…。
改めて、こうもあっさりと妖怪一人沈める人間と言うのは恐ろしいものだと思った。

「…とにかく、今日は本当に助かった。レミリアにも後でもう一度礼を言っておいて欲しい。」

「…さっきも思ったんだけど、そう感謝するほどお嬢様が良い事言ったとは思えないんだけど…。」

席を外してたと思うのだが、聴いていたのか?
やっぱり掴みどころのない人間だ。
だが、まだ主の事は完全には判りきっていないな。完全瀟洒なメイドでも、やはり人間は人間か。
長い間同じ主人に付き従い、主の事を少しずつ理解していった私だからこそ、レミリアが遠まわしに私に伝えてくれた事を理解できた。
…尤も、紫様の事は私自身まだまだ理解出来てないところの方が多いのだろうが。

「いや、充分にいい収穫があった。…レミリアは、素直に人の手助けをするタイプではないようだがな…。」

それだけ言い残して、私は咲夜と倒れている美鈴に背を向ける。
振り向き様、一瞬だけ咲夜が首をかしげる仕草を見せた。
…まあ、咲夜はまだまだ若いんだし、これからゆっくりとレミリアの事を知っていけばいい。
後は何も語らずに、私は紅魔館を後にした。



…レミリアは、最後に私にこう言っていた。
「紫様の手伝いをしながら、他の方法でも考えなさい」と。一部補正箇所あり。
この発言は、私にとってほんの少しの、小さな一つの光となってくれた。

レミリアは運命を見る事が出来る。
さっきの相談が本当にめんどくさいのであれば、私にこう言えば良かっただけだった。
「あんたは水を克服できない運命だから、さっさと諦めなさい」と。
運命なんて不確かな物を見る事が出来るレミリアの言葉ならば、仮に嘘でも、私は信じて諦めるしかなかっただろう。
それに、レミリアも自身は「水を克服出来ない運命にある」と言っていた。
プライドの高いレミリアが、自身のことをそう言えたというのに、私にそれを言えない理由は何処にもない。

だが、レミリアはそうは言わずに、私に「他の方法でも考えなさい」と言った。
それはつまり「私が水を克服できるか出来ないか」と言う事は、運命に縛られていないと。
私には、まだ水を克服出来る可能性が残っていると言う事だ。
勿論、その方法がなんなのかはまだ判らないが…。

「…よし!」

レミリアに相談したのは正解だった。これだけで、私には充分な収穫だ。
頑張ろう。私のためにも、橙のためにも、紫様のためにも…。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





その日の夜、私は夕食に使った食器を洗いながら、外へと目を向ける。
私がマヨヒガに帰って来た直後くらいから、急に天候が崩れて大雨が降り出した。
幸い橙は私より先に帰っていたので、雨の中で動けなくなったり…と言う事はなかったのだが…。

「…どうも最近、急な雨が多いな…。」

ざあざあと大きく音を立てる雨を見て、ため息が漏れる。
近頃急に、しかもかなりの量の雨が降る事が多い。
元々、山奥の幻想郷は天気が変わりやすいとは言え…。
水場の少ないマヨヒガ周辺では、そこまで困る事はないが…。
人間の里の方でも、作物への被害や家屋への浸水等が少なからず発生しているそうだ。

それに、こんな急に降られては、私だって数分と掛からずに式が落ちてしまうだろう。
私はまだ大丈夫だが…、…とことん水が苦手な橙だったら、色々と危ない目にあってしまうかもしれない。
全く、はた迷惑な話だ。

「とは言っても…。」

…雨の日は気が滅入るが、こういう時こそ色々と前向きに考えてみよう。
この雨なら、水場が近くにないマヨヒガにいながら、水に慣れる修行が出来るじゃないか。
そうだ、折角ちゃんと指導も出来る機会なんだから、橙も呼んで…。

「…何を考えてるんだ私は…。」

…再びため息が漏れた。
全く、幾ら雨で気が滅入るからって、訳の判らぬ事を考えてしまったものだ。
こんな冷たそうな雨を全身に浴びていたら、一発で風邪をひく自信がある。
体調管理は万全な心算だが、生き物である以上風邪ひくときは風邪をひく。妖怪とてそれは同じだ。
そんなのは御免蒙りたいし、橙にそんな事をさせるわけにはいかない。

ああ、つまらぬ事を考えているうちに片付けも終わってしまった。
さっさと部屋に帰って、今日は早めに寝るとしようか…。

「藍様ー。」

…と、私が部屋に戻ろうと縁側を歩いていると、正面から駆け足の音と共に、橙が私の名を呼ぶ。
普段着ではなく寝巻き姿でいるところを見ると、就寝前といったところか…?
何時もよりも時間は早い気がするのだが…。まだ亥の刻にもなっていないぞ…。

「どうしたんだ、橙?」

歩みを止めて、前かがみになって橙の目線に顔を併せる。
駆け足であったものの、それは橙にとってはいつものことだ。
普段と変わらぬ声質からしても、別に急な用事というわけではないだろう。

「…?…藍様、なんだかちょっと元気ないみたいですけど…?」

…おや、気付かれたとは少し意外だった。
元気が無い、とはまた少し違う気がするが…。

「ああ、すまない。どうもこの大雨を見ていると、気分まで暗くなってしまってな。」

外で大きく音を立てて落ちる雨を見ながら、私は三度ため息を吐く。

「そうですね…。此処のところ雨が多いから嫌です…。」

私の言葉を聞いた橙は、私以上に暗くなってしまう。
元々水が苦手な猫だと言うのに、そこに式神としての水の恐怖がプラスされるのだから、まあ当然なのだろうが…。
…聞いてきた側が暗くなってどうするんだ、橙よ。

「ほらほら、そう落ち込むと悪い夢を見てしまうぞ。
 …それはそうと、私に何か用事でもあるんじゃなかったのか?」

話題を変えるべく、私はその事を切り出す。

「あっ、そうでした。藍様、どうやったら水に強くなれるんですか?」

寧ろ私がそれを聞きたい、と思わず言ってしまいそうになった。
うーむ、なんとタイミングが良いと言うか、ある意味当たり前と言うか…。
…まあ、こんな雨を見ていれば、そう思いたくもなるか…。

「橙、その前にお前はまず“水嫌い”を治さなくてはいけないと思うのだが…?」

うっと、橙が一瞬唸る。
橙は式神としての“水が苦手”を治すよりは、猫としての“水嫌い”を治す方がどう考えても先決だ。

「…で、でも…。…わ、私は猫だから…。」

「…ほう、では水が嫌いなまま水に慣れるという事が出来ると思うか?」

多少厳しい言い方かもしれないが、ちゃんと言ってあげないと橙のためにならない。
私の言葉で、すっかりと肩を落としてしまう橙。
…だけど、私はそれが悪いといっているわけではないぞ。
沈んでしまった橙の肩に、私はそっと手を乗せる。

「…橙、まずは水を好きになる事から始めるんだ。
 私だって、元から水に強かったわけではない。長年ゆっくりと、時間を掛けて水に慣れていったんだ。」

私は紫様の式神となった頃の事を少し思い出す。
あの頃はちょっと濡れただけですぐに式が剥がれてしまって、しょっちゅう紫様に怒鳴られていた気がする。
あまり思い出したくない過去に、私は少しだけ苦笑した。

「橙は少し焦りすぎなんだ。苦手な物を、急に克服しようなんて事は出来ない。
 だから、最初は小さな事でいい。例えば水辺で遊んだり、足だけ水に浸かってみるとかでもいいんだ。
 まだまだ橙には沢山時間があるんだ。これから少しずつ、水を好きになっていけばいいさ。」

色々と偉そうな事を言っているが、実際は私もその方法を知らないだけなのだが。
しかし、橙の無垢な心にはちゃんと届いてくれたみたいで、次第に表情も明るくなっていく。

「何事も焦らず、だ。」

最後にそれだけ付け加える。
橙が自ら頑張って色々とやろうとするのは、主である私にとっては嬉しい事。
しかし、それで空回りして欲しくもない。
橙にはまだまだ時間は沢山あるんだ。一歩一歩、前に進んで行ってくれればそれでいい。
そうやって少しずつ成長していく橙の姿を見ているのも、私の楽しみの一つなのだから。

「…はい、判りました。じゃあ明日から早速頑張ってみます!」

…人の話を聞いていたのかこの子は…。
まあ、今すぐにこの大雨の下に出るとかしなかっただけ、橙にとっては我慢した方なのかもしれないが。
何もかも素早く行動する式神に、私は知らずのうちに苦笑していた。

「橙、焦らずだぞ。最初から水の中に飛び込むなんて危ない真似はするんじゃないぞ。」

それだけは念を押して注意しておく。
尤も、好奇心旺盛な橙が聞いてくれるかどうかは判らないが。
…これからは式が外れる度に、何かと説教だのしなくてはならないのだろうか。
今更になって、私が紫様に掛けていた迷惑を知る事になりそうだ…。

「はい!藍様、ありがとうございました!」

まあ、すっかり元気になったのだから良しとするか。
話したい事はそれだけだったようで、一礼すると共に私の横を駆け抜けて行く橙。
どうしてこうも走るのが好きなのだろうか…。…まあ、猫だからか…。

「…んっ?」

…と、橙が通り過ぎた後、一瞬だけ私の鼻を何かが擽るような感触が…。

「…橙。そう言えば風呂には入ったのか?」

…掛けていた橙の足がピタリと止まる。
この時点で既に質問の答えは判っていたのだが…。

「え、え〜っと、は、入りましたよ、大丈夫ですよ。」

首だけ振り向いて、苦しい笑顔を浮かべる橙。
…なんだかその表情がやけに可愛いので、ちょっとだけからかってみたくなってしまった。

「そうかそうか、私は今日はまだ風呂の支度をしていなかった気がするのだが、勘違いだったのかな?」

そう言えばまだ就寝には早い時間だと思った。
だったら私と話なぞせずに、さっさと寝てしまえばよかったものを…。
まあ、そのちょっと抜けてるところがまた可愛いのだが。

「え、え〜っと、あ、あの、じ、自分でやったんですよ!
 ら、藍様ばかりにやっていただくわけにも行かなく候でして、私が自分でやってみた次第でありまして…!!」

言葉が滅茶苦茶というレベルじゃないぞ。何を言っているのかも判らない。
世の中の人間が橙みたいなのばかりだったら、誰も嘘発見器の開発なんてしようとは思わなかっただろうに。

「なるほどなぁ。橙は偉いなぁ、もう自分でそんな事が出来るようになっていたのか。
 …じゃあ、私は橙が焚いてくれた暖かいお風呂に入ってくるとしようかな。」

私がそう言うと、橙の顔色が一瞬にして真っ青になる。

「だ、駄目です駄目です駄目です!!」

風呂場に向かおうとする私の腕を、しっかりと捕らえて離さない。
青い顔で必死に首を横に振る姿が、なんとも言えぬ可愛さを孕んでいた。

「おや、どうしたんだい橙。私は橙が、言われずともお風呂を焚いてくれるようになった事が嬉しくてなぁ。
 早くそのお風呂に入りたくて仕方が無いんだぞ?」

うむ、実にいやらしいなぁと自分でも思う。
だがまあ、たまにはこう言うのもいいだろう。橙に嫌われるかもしれないが…。

「えっと、その、と、とにかく駄目です!!わ、私が…その…。」

段々と言葉に詰まってきたようだ。
…そろそろ勘弁してあげようかな。幾らなんでも可愛そうになってきたし、好き好んで嫌われる必要もないだろう。

「…橙。」

「…ごめんなさい、藍様…。」

ようやく白状したか…。
またもやしゅんと沈んでしまった橙に、私は出来る限りの笑みを投げかける。

「大丈夫だよ橙、私は怒ってなぞいないさ。」

そんな私を見て、橙の顔が再び、ゆっくりと笑顔へと変わっていく。
それじゃあ、最後の一言をプレゼントしようか。

「…さあ、風呂で一緒に、水に濡れても式が剥がれない修行をしようか。」

「嫌ですうううううぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

そこから始まった私と橙とのマヨヒガ中追いかけっこは、四半刻後に紫様に「喧しい!!!!」とどやされるまで続いた…。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





日は明けて、翌日。
昨晩の雨はあがって、幻想郷を暖かな太陽の光が照らしていた。
とは言っても雲一つなく、というほどの快晴ではなく、所々に雲の塊が見える。
まあ、普通の晴れといった程度か。

「それじゃ行ってきまーす!」

今日も橙は、朝からその遊び盛りな身体を動かしていた。

「気をつけるんだぞー。」

私は走って行く橙の背中に、笑顔で手を振った。
今日は氷精だの蛍妖怪だのと遊びに行くらしい。まあ、いつものメンツだ。
今の所は雨の心配もなさそうだし、私は落ち着いた気持ちで、マヨヒガの中へと戻った。









「…さて、どうしようか…。」

…こういう時の暇は本当に対処に困る。
紫様はまだ寝ているだろうし、朝食の片付けはとっくに終わってしまったし…。
家でごろごろしているのは性に合わないし、水の修行も明確な解決法が見つからない以上、やる気が起きない。
ああ、本当にやる事がない。

「…はぁ…。」

ため息一つ吐いて、私は畳に寝転がる。
性に合わないとは言え、何もする事がないなら何もしない以外の選択肢は取れない。
まあ、何時も紫様に振り回されている身だ。たまには骨を休めないと。

「それにしても…。」

紫様の事を考えたら、またあの言葉が頭に浮かぶ。
「コンピュータと式神の違い」か…。…紫様は私に何を示したのだろう…。
コンピュータも式神も、水に弱いというところは共通している。
しかし、寧ろ共通しているのが、それと「主に言われた事のみを実行する物」という程度か…。
それ以外は違いがありすぎて判らない。生物と非生物という違いだけで、幾百もの違いがあるに等しいのだから。

「その幾百もの違いの中から、それを見つけろという事ですか…?」

恐らく寝ているであろう主に向けて、私は一人呟く。
紫様は何時も何時も、人を試すような言い方しかしない方だ。
決してすぐに答えを提示しようとはしないし、例え答えを教えるとしても、物凄く遠まわしにそれを言う。
そして悲しい事に、私は紫様の考えを即座に読み取れるほどの知能はない。

…あの方は頭が良すぎる。天才なんて、そんな言葉では表せないほどに。
それ故に、私のような者では、何百年程度の関係では、紫様の考えなんて、理解出来ないのだろう。
普段は寝てばかりで胡散臭い迷惑なスキマ妖怪だけれど、その力は、最強と言っても過言ではないからだ。

「…考えていても仕方がないか…。」

転がっていた身体をゆっくりと起こす。
とりあえず、紫様が本当に寝ているかどうかを確認しよう。
絶対にないが、もし万が一、有り得ない事だが、紫様が目覚めていたら、もう一度相談してみよう。
どうせ答えを教えてはくれないだろうけど、もう少し、ヒントが欲しいから…。










「………。」

…そして紫様の部屋の襖を開いて、私は絶句した。
確かに紫様は起きていた。これだけでも充分な奇跡だ。
紫様が午前中に目覚めているだなんて、年単位で見なかったことだ。

しかし、私は今すぐに紫様に例の事を相談する、その選択肢は取る事が出来なかった。
なにせ、紫様は部屋にいなかったからだ。
1日12時間共に過ごしている紫様の寝巻きが布団の上に放り出してあるところを見ると、何処かに出かけているのだろう…。

うむ、私の考えはやはり浅はかだった。
紫様が起きているか起きていないかと言う事だけを考えてしまい、出掛けているとの考えにまでは及ばなかった。

「…全く、どうして紫様は毎度毎度こう言う時に…。」

起きているなら朝食ぐらい取ればいいのに。
そもそも、起きているなら一声掛けてくれればいいのに…。
やっぱり紫様は特別だ。良い意味でも悪い意味でも。

「出掛けてるとなると、白玉楼かな…。」

紫様が出掛ける場所は、外の世界でないならば二つしかない。
博麗神社か、白玉楼のどちらかだ。
ただ、霊夢も紫様と同じく…と言うのは流石に可愛そうか…午前中にはあまり活動はしていないらしい。
その点幽々子様の方は、真面目な妖夢の存在もあってか、生活事態は規則正しい。
この時間に紫様が出掛けているならば、白玉楼の方が可能性は高い。

「…まあ、折角だからな…。」

私は紫様の寝巻きを畳んでから、身なりをしっかりと整える。
幽々子様や妖夢には迷惑かもしれないが、紫様が朝から起きている事は、再三言うが珍しい。
それに、幽々子様や妖夢に同じ質問をしてみるのもいいかもしれない。
ひょっとしたら、何かヒントをもらえるかもしれないし…。
そんな期待を胸に、私は白玉楼へと向かった。

…雲が、少しだけ厚くなっているような感じがした…。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





雲の上に続く白玉楼の階段。
うーむ、やはり雲の上と言うのは肌寒い。いや、普通に何時もより気温が低い気がする。
此処に来る度に思うのだが、どうしてわざわざこんな高いところに…。
…まあ、夥しい量の霊を集められる程に広い場所と言うのが、此処くらいしかないらしいが…。
飛んでいるので疲れるといった事はないのだが、とにかく時間が掛かってしょうがない。
マヨヒガから白玉楼に行くまでの半分の時間は、この階段に費やされるのだから物凄い。
距離的にはそう遠くはないはずなのに…。…紫様の能力が羨ましい…。

「…っと、やっと着いたか…。」

階段にやっと終わりが見える。
雲の上まで上った上に、さらにこの階段はやっぱり辛い。上ばかりだな。
長い長い階段を上り終えたところで、私は中へは入らずに、まずはその辺にいるであろう人物を探す。
…と、目的の人物はわりとすぐに見つかった。たまたま入り口近くの庭を掃いていたので。

「妖夢。」

私が声を掛けると、妖夢も気付いたらしく、身体をこちらに向ける。

「藍さん。今日はどうされたんですか?」

妖夢は庭を掃いていた手を止めて、私へと訊ねてきた。

「突然すまないが、紫様は来ていないか?朝から出かけているようだから、多分ここに居ると思うのだが…。」

私がそう言うと、妖夢は首を傾げて…。

「…紫様が?朝から起きているとは珍しいですね。」

そっちか。まあ、仕方ないと言えば仕方ないか…。
紫様が普段寝ていると言うのは周知の事実だ。

「そこは置いておいてくれ。とにかく、紫様が来ていないか?」

そんな事を議論しに来た訳ではないので、もう一度妖夢に訊ねる。
しかし、やっぱり妖夢は難しい顔をしたままだった。

「えっと、今日はずっとこの辺りの掃除をしていましたが、誰も…。」

「…妖夢。よもや紫様が玄関から入ってくると思っているんじゃないだろうな。」

「…すみません。幽々子様に聞いてみますので、どうぞこちらへ。」

やっぱり、妖夢も少し抜けているところがあるなぁ。










妖夢の後に続き、白玉楼の中へと歩を進める。
幽々子様はだいたい、何時も同じ場所でのんびりと過ごしている。
その場所がお気に入りらしい。紫様と呑んだりする時も、常に一定の場所にいるのが面白い。
今日も同じく、幽々子様は西行妖が見える白玉楼の縁側で、傍らに置かれた団子を摘んでいた。

「あら、藍ちゃんいらっしゃい。今日はどうしたのかしら?」

と、幽々子様は私を見るなりそう言ってきた。
…おや?この反応は、私が此処に来る事を予測していなかった…。
…つまり、紫様は此処には来ていないのか…?

「幽々子様、紫様は今日此処には来ていませんか?朝からいらっしゃらないので…。」

一応、確認のために聞いてみる事にする。
しかし、幽々子様はぽかんとした表情を浮かべて…。

「紫が?今日は来てないわよ?そもそも紫が朝に起きてるなんて事があるのかしら?」

やっぱり来ていないのか…。そして誰も感想は同じなのか…。
…ただ、此処に来ていないとなると…。

「…やっぱり博麗神社か…。」

紫様の居場所を絞れただけで充分な収穫だ。
残りはそこしか考えられない。外の世界に行ったりしていない限りは、だが。
ただ、別に急ぐ用事でもないから、今すぐ行く必要もないか…。
博麗神社へ行くのは後でいい。今は、幽々子様に聞きたいことを…。

「…あの、幽々子様、少しお時間よろしいでしょうか?」

見るからに暇そうだけれど、礼儀として一応聞いておかなくてはならない。
それに、万一時間がなかったら困る。

「あら、何か難しい話でもしたそうね。時間は空いてるから大丈夫よ。」

その言葉を聞いて、私はほっと胸を撫で下ろした。
幽々子様は立ち上がり、一番近くにあった部屋の襖をすっと開ける。
手招きしているので、そこで話そうと言う事なのだろう。

「では、私はお茶でも淹れてきますね。」

そう言って、妖夢は慌しく駆けて行く。
別にそんな急がなくても…とも思うが、真面目な妖夢ならば仕方がないか。
私も幽々子様に続いて、部屋の中へと足を踏み入れた。










「で、どんな話かしら?何か美味しいお店の話?」

正座して座るなり、いきなりそんな事を言い始める。
うーん、やっぱり幽々子様も判らない方だ。紫様ほどではないにしろ、何を考えているのかが全く読めない。
とりあえず、幽々子様にとっては美味しい物の話も難しい話のようだ。

「すみませんが、妖夢が来るまで待っていただけますか?あの子にも聞いてもらいたい話なので…。」

あらあら、と幽々子様がそれだけ言って、部屋の中は沈黙する。
…うん、何故か気まずい。人と向かい合っていると言うのに話題がないというのは、かくも苦しい事か…。

「お待たせしました。」

と、予想を遥かに上回るスピードで、妖夢が部屋へと戻ってきた。
どう考えてもお茶を淹れてからここに来たという時間ではない。予め用意していたのか?

「どうぞ。藍さんも。」

…出されたお茶を見て、納得した。
お茶はお茶でも、温かいお茶ではなく、氷が入った冷たい麦茶だった。
成る程、おおかた前もって作っておいた保存用、或いは食事用の麦茶といったところだろう。
真面目な妖夢にしては珍しい事だったが、早く帰ってきて欲しかったので、文句は言うまい。
そもそも、私は人様に出してもらったものに文句をつけるような妖怪ではない心算だ。

「ありがとう妖夢。」

「ありがとうございます。それでは私はこれで…。」

と、妖夢は席を外そうとする。
幽々子様にだけ用があると思っていたのだろう。だから、自分には関係ないとも。

「ああっと、ちょっと待ってくれ。すまないがお前にも聞いて欲しい話なんだ。」

呼び止められた妖夢は、多少驚いた表情で数秒固まる。

「は、はぁ…。」

驚いた表情のまま、妖夢も幽々子様の隣に腰を下ろした。

「さ、藍ちゃん。お話って何かしら?」

何か話したくてたまらなかったのか、幽々子様は即座に話を切り出した。

「はい、実は…。」

そうして、私は今までの経緯を話す。

私が水に強くなろうとしている事。
紫様に言われた事。
式神とコンピュータとの違い。
そして、どうすれば水に強くなれるだろうかという事まで、事細かに…。










「…はぁ…。」

八半刻ほどの私の話を聞き終えて、妖夢が相槌を打つ。
始終表情の変わらなかった幽々子様と違い、妖夢はまだ判りやすいな。
…尤も、読み取れる心情が「何言ってるんだろう」なのだから、少々物悲しいが…。

「…すまない妖夢。判らないのも無理はない。
 私だって、実際のところ何がしたいのかよく判らないんだ。」

判らないからこそ、こうして質問しているわけなのだが…。

「い、いえいえ、そんな事は…。
 …しかし、式神が水に強くなる事、ですか…。…幽々子様、判りますか?」

どうやら妖夢には回答は思い浮かばなかったようだ。
諦めるのが少々早い気もするが、まあ仕方がないか。こんな質問されて、すぐに答えを出せる方が…。

「くす、くすくす。あらあら藍ちゃん、そんなんじゃ紫の従者失格よ?」

…すぐに答えを出せる方がおかしい、と言えなくなってしまう。
鈴を転がしたような声で笑う幽々子様の姿に、私も妖夢も一瞬ぽかんとする。
…幽々子様、えっと、それは、どういうことですか…?

「紫は何時も遠回しに物を言うから判り辛いかもしれないけどね。
 長い間紫と一緒にいるんだから、それくらいすぐに判らないと駄目じゃない。」

にこにこと微笑みながらそう言葉を重ねる幽々子様。
…どうやら、幽々子様には紫様の真意が一瞬にして判ったようだ。

「えっと、幽々子様、それはどういう事なのですか…?」

駄目だ、全く判らない。
幽々子様が今の話だけで判ってしまったという事は、答えが出せるくらいのヒントは含まれているはずなのに…。

「あらあら、本当に判らないのかしら?だから紫に振り回されるのよぉ?」

ううっ、幽々子様もやっぱり意地悪だ…。
確かにその通りかもしれませんけど…。

「…幽々子様、申し訳ありません。せめて何かヒントを…。」

多少肩を落としつつ、恥も何もかなぐり捨てる。
どうせ聞くのは一時の恥。これから先、ずっと判らないよりは遥かにましだ。

「そうねぇ、紫の話だけでも充分に判ると思うけど…。」

幽々子様の言葉が痛い…。
見れば妖夢も肩を落としていた。…よかった、仲間がいて…。

「…藍ちゃん、あなたは難しく考えすぎなのよ。
 いくら紫でも、そんな沢山ある違いの中から答えを見つけろ、なんて事は言わないわよ。
 藍ちゃんはもう充分に答えを絞れている。後は、それがどういう事なのかを考えればいいだけ。」

…幽々子様の言葉のせいで、余計に頭がこんがらがってしまった。
私は既に答えに近いところにいるというのですか…?

「…あ、あー…。…成る程、そういう事ですか。」

何か閃いたとばかりに、妖夢が手を打った。
ううっ、妖夢のほうが先に気付いてしまったというのが何か悔しい…。
なんだろう。私自身で考えるのではなく、もっと客観的に見た方が判りやすいと言う事なのだろうか…?

「藍さん。答えは2つの内の1つにありますよ。
 それにさえ気付けば、ちゃんと違いが判るはずです。」

「あらあら妖夢、そんな事言ったら判っちゃうじゃない。」

終いには白玉楼主従で追い討ちをかけてくる。
駄目だ。こう、ある種のプレッシャーを掛けられると逆に判らなくなってくる。
なんなんだ。違いってなんなんだー!

「…藍さん、とりあえず落ち着かないと、出来る問題も出来なくなると思いますよ?」

妖夢の言葉が最早痛い。
言わんとする事は判るのだが、この場で相談を持ちかけた私だけが答えを出せないと言う状況が…。

「そうねぇ。落ち着かないと。下で雨に打たれて頭を冷やしてみるのもいいんじゃないかしら?」

頭を冷やしたのは山々ですが、そんな事したら一瞬で式が何処か行ってしまいます。
ああ、幽々子様や妖夢が判っていると言う「答え」を見つけられたら、そんな事もなくなるのだろうか…。
いっその事、本当に雨に打たれて…。







…えっ…?







「…幽々子様、今のはどういうことですか?」

外の様子を伺う限り、今は雨は降っていない。
だけど、なんだろう、この悪い予感は…。

「あらあら、藍ちゃん忘れたのかしら?白玉楼は雲よりも上にあるのよ?」

…!!

「以前の地震の異変の時は、気質の雲が此処より上に出ちゃったから雪が降ったけど…。
 基本的には、雲より高い位置にある白玉楼は何時でも晴れているのよ。」

皆まで言わずとも、幽々子様の言いたい事は判る。
雨を含んだ雲と言うのは、普通の雲より重いために地表近くに出来る。
失念していた…。…此処が、雲の上だということを…。

「そう言えば、最近下界では雨が多いみたいですね。
 この間も里に買い物に行った時に、あちこち水掃き作業で急がしそうでしたよ。」

…なんだか、嫌な予感がする。
何故だ、ただ雨が降っているという程度のことならば、昨日だって同じだったはず。
じゃあ何故、今はこんなに…!!

「幽々子様。今、地上では雨が降っているのですか…!?」

「そうねぇ。判らないけど、多分降ってるわよ。何時もより風が冷たいもの。」

そう言えば、確かに白玉楼に来た時、何時もに増して肌寒く感じたが…。
幽々子様もまた、紫様と同じく状況の分析力は物凄く高い。
つまり、幽々子様が「雨が降っている」と言う以上、今地上は雨が…。

…そう思った時、私の中に何かが入ってくるような感じが…。

…これは…。…ッ!!!!

「すみません幽々子様!!私はこれで失礼します!!また後で伺いますので!!」

その感覚が何かと気付いた時には、私は部屋を飛び出していた。
今のは、間違いない。橙に張った式神が私に戻ってきた感覚…。
つまり、橙が式が剥がれるくらいに水に濡れて…!!

白玉楼を飛び出した時に、私の下に広がっていた雲は、先ほどとは全く違って淀んでいた…。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





「行ったみたいね。」

藍が白玉楼を飛び出した後に、私は幽々子の頭の上に顔を出す。

「わっ!ゆ、紫様!!いらっしゃったんですか!?」

そんな私を見て、妖夢が声を上げる。
あらあら、気付かなかったみたいね。ずっとスキマの向こうで話を聞いてたって事に。

「紫、あれでよかったのかしら?」

勿論、幽々子は私が此処に来ている事を知っていた。
その上で、私が白玉楼に来ていないと嘘を吐いてもらったのだ。
…藍が私がいなければ、此処に来ると言うのも予想の範囲内。
白玉楼ならば、下界の天気の変化はすぐには気付かないからね…。

「ええ、ご協力感謝するわ幽々子。…こうでもしないと、あの子は“答え”を見つけられそうもないからね…。」

「あらあら、紫ったら優しいのねぇ。」

くすくすと笑みを零す幽々子。話に全くついていけない妖夢。
…藍。橙を守りたいというあなたのその気持ちが、あなたに答えを導くはずよ…。
式神とコンピュータの違い、それはとても簡単なことだから…。
…尤も、私としては本当は気付かれたくないのだけれどね。

…あなたがそれを知ってしまえば、あなたは私から離れてしまうかもしれないから…。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





激しく音を立てて降る大雨。
此処最近たびたび起こる豪雨は、今日も幻想郷を襲っていた。
これは、何時もの豪雨よりもまた一回り激しい雨だ…。
私はその雨の中を飛び続ける。

「橙…!!何処にいるんだ…!!」

あちこちを出来る限りの速度で飛び回りながら、私は思考を回転させる。

今日は橙は氷精たちと遊びに行くと言っていた。
勿論、彼女達と一緒に何処かに雨宿りに行っている可能性もある。
しかし、だとすると今の私を襲う悪い予感は、いったい何なのだろうか。
今、橙の式は私に戻ってきている。橙は今、ただの黒猫の妖怪。
…もし今、私の不安どおりに、たまたま氷精たちと離れていたりしたら…。

「…くっ!!」

私はさらに飛ぶスピードを上げる。
式が剥がれてしまった橙を探すのは困難だ。何せ、妖力の大きさが並の妖怪と大差なくなってしまう。
そうなると、妖精の中でもトップクラスに魔力が強い存在である、あの氷精をまず探すべきか…。

こういう時こそ、私は落ち着いて行動しなくてはいけない。
焦って思考を駄目にしてしまっては、大事な者を失ってしまうかもしれないから…。

「…よし!」

尻尾を立てて、あたりの魔力の場を探る。
妖獣の尻尾は魔力の象徴。魔力に反応して大きさや本数を変えるので、魔力には敏感なのだ。
そして氷精チルノの魔力は、他の妖精の陽気で明るい魔力とは違い、冷たい感じがするので比較的判りやすい。
…尻尾の先が、探していたその魔力を感じ取った。

「初めてあの妖精の変わった特性に感謝したな…。」

そんな事を呟きつつ、私は尻尾が感じ取った魔力の方へと、全速力で飛ぶ。
…ただ、その場所に行くにつれて、大きく気温が下がっていくのが…。
これはどういう事だと思いつつ、魔力の発信源、即ちチルノが肉眼で確認できるところまで飛び…。

「…なっ…!!」

…その異様な光景に、一瞬思考が止まってしまった。

チルノの魔力が感じられたのは、妖怪の山から流れる水が、静かに流れる川の上。
勿論、今はこの豪雨のために、何時ものその静かな流れとはまるで姿を変えている。
例えるならば、妖怪の山の九天の滝を、そのまま横倒しにしたような感じだった。

…ただ、一つだけ滝と違ったのは、さっきから何度も、一瞬水が凍り付いては崩れ、凍り付いては崩れ、と繰り返しているところだ。

…と、辺りをよく見回してみると、増水してだいぶ狭くなった川岸のあたりに、幾つかの影が見えた。

「チルノちゃん!!頑張って!!」

そう声を上げていたのは、チルノの一番近い存在と言えるだろう、緑髪の妖精。確か大妖精と呼ばれていたかな…。

「くっ!ルーミアはまだなの!?」

「落ち着いてリグル!今は待つしか出来ないんだから…!!」

他にいるのは、蛍の妖怪リグルと、夜雀のミスティアか…。…やはり、何時も橙と遊んでいるメンバー達だ。
言葉から判断するに、もう1人ルーミアもいたのだろうが、今は何処かに行っているという事か…?
とにかく、この異様な光景の説明を貰うために、私は大妖精の近くに降りる。

「大妖精!」

私がそう呼びかけると、そこにいた3人全員が私の方を振り向く。

「ら、藍さん!!」

大妖精が慌しく私の名を叫ぶ。
あまり数は多くないとは言え、彼女達は一応私とも面識はある。
特にミスティアはよくお世話になるのでな。
嫌な事を忘れるために彼女の屋台によく行くから。
…と、今はそんな事はどうでもいい。

「お前達、これは一体…。」

私がそう聞くなり、3人はいっせいにある一点を指差す。
…私はそのほうへ目を向けるなり…。

…言葉を失った…。

チルノは相変わらず、川の水を凍らせ続けている。
ただ、その少し先の小さな岩に…。

…今にも流されそうになりながら、必死に岩にしがみついている橙の姿が…。

「私たちがこの近くで遊んでたら、急に雨で川の水が増えて…!!」

大妖精のその言葉で、私は何となく状況を察する。
恐らく橙は、この大雨で一気に水嵩が増した川に足を取られて、流されてしまったのだろう。
式神の付いていない橙だったら、とっくに力尽きているくらいの激しい水の流れ。
それを必死で喰い止めているのが、チルノなのか…。
川の水を出来る限り凍らせる事で、少しでも水の勢いを弱めようと…。

「チルノがああして川の勢いを止めてるけど、それでも流れが激しくて…!!」

それはリグルの言葉。
3人がこうして川岸で傍観しているのは、今の自分達では何も出来ないと判っているからか…。
別に、彼女達を責めているのではない。
確かにチルノのお陰で幾らか流れは緩んでいるとは言え、下手に突っ込めば私だって一瞬で流されてしまうだろう。
勇敢と無謀の境が判っているだけ、寧ろこの子達は優秀だ。
となると、ルーミアは何処かに助けを求めに行っているのか…。

…だが…。

…それでは…間に合わない…。

「えっ…?ら、藍さん!?駄目…!!」

大妖精が私を止めようと声を掛けたのが、一瞬だけ聞こえたが…。


…どうやら、私はこの3人よりも馬鹿だったようだ。




「橙!!ちぇえええぇぇぇぇぇぇん!!!!!!」



ああ、きっと、こんなにも馬鹿なのだから、紫様の言葉を理解出来なかったのだろうと、後で思った。
無謀だの何だのと考えることもせず、何も考えずに、私は橙のしがみ付いている岩の上へと着地する。
そして、無意識のうちにその激流の中に突っ込んでいた…。
私は川に飛び込むと同時に、橙の身体をしっかりと抱える。

「橙!!もう大丈…ぐああっ…!!」

…ただ橙の身体を抱えた瞬間に、橙が岩から手を離してしまい、私は激流に飲み込まれ…。

その激しい水の流れに何度も何度も意識が飛びそうになったが…。

「くっ…うあっ…!!」

この程度の激流が何だ。この程度の水が何だ。
式神…、…いや、大切な娘に等しい存在を守れなくて…。
…何が、何が最強の妖獣だ。何が橙の主だ。
私は…私は…!!

…ただ、橙を守りたいだけだ…!!


「く…お…おおおああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


…全ての力を振り絞って、橙を抱えた私は、一気に水の外へと飛び出した…。










「はぁ、はぁ…!!」

一番近い川岸の木の下に着地し、橙を抱えたまま膝をつく。
私の手の中の橙は、身体も冷たく呼吸も弱く、顔を真っ青にしてぐったりと項垂れ、全く生気を感じさせていなかった…。

「橙!!しっかりするんだ!!」

私は九尾の尻尾を全て身体の前に寄せて、私ごと橙を包み込む。
傍から見れば金色の不気味な毛玉に見えるだろうが、そんな事を気にしている余裕もない。
今はただ、橙の身体を出来る限り暖めてあげることしか…。

「橙!!橙!!」

橙の身体を強く抱きしめ、必死にその名を叫び続ける。
…お願いだ、橙。目を開けてくれ…!!
もしお前に万が一の事があったら、私は…!!

「…う…ん…。」

…私の腕の中から、小さな声が聞こえた…。
私は慌てて橙の顔を覗き込むと、少しだけ目を開いていた…。

「橙…!!私だ!!判るか!?」

もう一度、私は橙に呼びかける。

「…らん…さま…?…わたし…どう…して…。」

小さく目を開けながら、戸惑ったような表情を浮かべる。

そんな橙の様子を見て、私は心の底から安堵した…。

「橙…!!よかった…本当によかった…!!」

ぽたり、と、私の目から一筋の涙が零れる…。

もう一度、私は橙の身体を強く抱きしめる。
先ほどよりも呼吸は安定してきているし、冷たかった身体も、少しずつ温かみを取り戻していく。
…もう、これで一安心だ…。

「らん…さま…。…あったかい…。」

それだけ言って、橙はまた目を閉じてしまう。
一瞬焦ったが、その後すぐに聞こえた軽い寝息によって、その焦りもすぐに消えうせる。
…あの激流の中、ずっと流されまいと岩にしがみ付いていたのだ。疲れて当然か…。
ゆっくり休んでくれ、橙…。

「藍さーん!!橙ちゃーん!!」

と、川の上流の方から、大妖精の声が聞こえてきた。
声の方を見てみると、此処に向かってくる大妖精、リグル、ミスティア…。
そして、大妖精に肩を貸してもらいながら一緒に飛んでいるチルノと、長いロープのようなものを持っているルーミアの姿もあった。
…ああ、助けを呼びに行ってたのではなく、橙を助けるためのロープのような物を探しに行っていたのか…。

「ら、藍さん!!大丈夫ですか!?橙ちゃんは!?」

息を切らしながら、私と橙を気遣う大妖精。
他の全員も心配そうな顔を浮かべている。
…ああ、橙、お前は良い友達を持っているな…。

「大丈夫だ。私も橙も。…ただ、橙のほうはちょっと疲れてしまったみたいだがな…。」

私の腕の中で、軽い寝息と共に安らかな寝顔を浮かべる橙。
大妖精たちにその姿を見せてあげると、その顔は見る見るうちに明るくなっていき…。

「…よ、良かった…。」

リグルはぱしゃりと音を立てて、雨でぬかるんだ川岸に尻餅をつく。

「ぐすっ…ひっく…。…良かったよぉ…。」

急に泣き出す大妖精。…それだけ、橙の事を心配してくれていたと言うことか…。

「…ああ、みんな、本当にありがとう…。
 …お前達がいなかったら、橙は…。」

私はみんなに頭を下げる。
この子達がいなかったら、私は橙の事を見つけられなかったかもしれない。
この子達がいなかったら、橙はとっくに流されてしまっていただろう。

「…あの、お礼なら私たちじゃなくて…。」

と、ミスティアがそう言い、そして全員が1人の氷精へと目を向ける。
…ああ、そうか。そうだったな。
5人の中で誰よりも疲弊しきった表情を浮かべるチルノ。
大妖精の肩を借りなければ、満足に動けないほどに疲れているのだろう。
こう、恩人たちに格を付けるのもどうかと思うが、一番頑張っていたのは、川を凍らせ続けて流れを弱めていたチルノだろう。

「…そう、だな…。チルノ、本当にありがとう…。」

私はチルノの頭を撫でる。
一瞬だけぽかんとした表情を浮かべたチルノは、しかしすぐに何時もの不遜な表情へと戻って…。

「あ、あたいは最強なんだからね!あれくらいどうって事ないわよ!
 ほ、ほら、大妖精!!あたいは1人で大丈夫だからもう…あれっ…。」

顔を少々赤らめながら、大妖精の肩から腕を解くチルノ。
しかし、そうして勇んでみたにも関わらず、すぐに足元がふらついて、ばしゃりと地面に横倒しになってしまった。
それだけ力を使いすぎたのだろう。満足に立てないなら、無理しなければいいのに…。

「う〜…。こ、こんなはずじゃ…。」

一回倒れただけで、身体の半分近くが泥水まみれになるチルノ。
力の入らない身体を頑張って押し上げている姿が、なんとも可愛らしかった。

「くすっ…あはははははっ…!!」

そんなチルノの姿を見て、堪え切れなかったのか、ルーミアが第一に笑い声を上げる。
…と、それに釣られて…。

「あははは!!チルノ、無茶しちゃ駄目だよ!!」

リグルも一緒になって笑い出し、大妖精もミスティアも、そして私も笑いが零れてしまう。

「わ、わ、笑うなー!!」

顔を真っ赤に染めるチルノ。この状況がよっぽど恥ずかしいのだろう。
しかし、笑うなと言われても、まだ足取りがふらふらなのに無理しようとする泥まみれのチルノの姿は、見ていてかなり可笑しい。
一番の恩人に対してこう、笑ってしまうのもどうかと思うが…。今だけは許して欲しい。

橙、お前は本当に良い友達を持っているな…。
私の手の中で眠る小さな猫に、私は声には出さないで、そう語りかけた…。

「さあみんな、今はひとまず此処を離れよう。また増水してきたら大変だ。」

さっきより幾分か弱まっているとは言え、まだ雨はかなりの強さだ。
彼女達をこのまま雨曝しにするわけにもいかないし、此処はひとまず解散させるべきだろう。
みんなも家に帰るんだ、そう言おうと思った時…。

「…あの、藍さん…。」

大妖精が、何かを言いよどむ。
その困ったような表情は、大妖精だけでなく、他の全員も同じで…。
…ああ、なるほど。何となく何を言いたいのかを理解した。

「…みんな、来たければマヨヒガに来てもいいぞ?
 礼もしなくてはならないし、橙もそっちのほうが安心するだろうからな。」

私がそう言うと、全員が花が開いたような笑みを浮かべる。
ああ良かった。これでみんなの心情を図り間違えていたら、恥ずかしくてしょうがない。

「そ、それじゃあ…。ほらチルノ、ちゃんと大妖精に捕まって。」

ミスティアがそう言うと、チルノはまた顔を赤くして…。

「だ、大丈夫だって言ってるじゃん!!あたいは最強なんだからね!!」

全くチルノは意地っ張りだな。
私はまたくすりと笑みを零し、身体を宙に浮かす。

「ほらほら、みんな早く行かないと風邪を引いてしまうぞ。」

はーい、と声を揃える大妖精たち。
チルノも仕方なしそうに、今一度大妖精の肩に腕を回す。

そんな何時もどおりの彼女達の姿を見て、私は何処か安心しながら、マヨヒガへ向けてゆっくりと飛び立った…。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





「ふぅ、今日は疲れたな…。」

その日の夜、私は一日の終わりを感じて、ほっと一息つく。
橙はもう布団で眠っているし、大妖精たちは全員帰宅した。
因みに雨はマヨヒガに帰ってきた時には殆ど上がり、今はもう星空が見えるくらいに雲もなくなっている。

それにしても、今日一日は長かった。
私も色々と疲れた事だし、今日は早く就寝しよう…。

「藍。」

…そうしたかったのだが、不意に背中に投げられた声は、どうも私に安息は与えてくれなさそうだ。
振り向いてみると、今まで行方が判らなかった紫様が、何時もの底が読めない微笑を浮かべて立っていた。

「紫様。今まで何処に行っていらしたんですか?」

結局朝から今まで姿を見せなかった紫様。
今日だけで色々あって、それっきり探すのを忘れていたのだが…。

「別に何処でもいいじゃない。…それより藍、話があるわ。」

…と、紫様の顔が、普段あまり見せない真剣な表情へと変わる。
どうも、あまりいい話ではなさそうだが、私に拒否権などあるはずもない。

「…なんでしょうか?」

どんな話であろうとも、私は紫様に逆らうことは出来ない。
大人しく聞く以外の選択肢は取れないのだ。

「…あなた、式はどうしたの?」

…一瞬、紫様が何を言っているのかが判らなかった。
式?…あ、ああ、橙の事か。
今日の出来事を、大妖精たちの誰かから聞いたのだろうか…?

「橙でしたら、今は眠っていますよ。
 今日ゆっくり休んで、一応明日にでも、永遠亭で診てもらおうと思って…。」

「違うわよ。私はあなたの式の事を言っているの。私があなたに張っている式神の事を。」

私の言葉をさえぎる紫様の言葉。
式って…。今私は、自分の中にちゃんと式が張られている事を確認する。
式は剥がれていないし、別にそれで紫様に叱られる事は…。

…あれっ?

「気付いたかしら?あなたの式が剥がれていない事に。」

紫様に言われて、私はようやくそれを理解する。
私の式は、今日一度も剥がれていない。それはどう考えてもおかしな事だ。
あれだけ雨に濡れて、川に飛び込んで、何故私の式は剥がれていない…?

「ゆ、紫様、これはどういう事ですか…?」

自分でもよく判らない。
橙の事に夢中になりすぎてて、今の今まで気にも留めなかったが…。

…ま、まさか私は、水を克服出来て…。

「調子に乗らないの。」

一瞬だけ、私の頭上にスキマが開いたのが視界の端に映り…。
ばしゃん、と言う水音と共に、私は一瞬にしてずぶ濡れに…。

「…は、はにゃ…?」

一気に力が抜けてしまい、その場にへたり込んでしまった。
今の感覚は、間違いなく式が剥がれた時の感覚。
あ、あれ…?…ぜ、全然水を克服出来てない…。

「たった一度上手くいったくらいで、すぐに調子に乗るからよ。」

紫様の厳しい一言に、何だか少し落ち込んでしまう。
結局、私はまだまだ水には弱いと言うことなのか…。

「…はい、申し訳ありません…。」

自分が情けなくなってしまい、素直に頭を下げる。

「全くよ。罰として、今日は私と呑み交わしなさい。」

…はい、何でもしますよ…。
一緒に酒を呑むのでも何でも…。

…って、あれ?

「ゆ、紫様?」

どう考えてもそれは罰ではないのでは?
いやまあ、確かに酔っ払った紫様ほど性質の悪いものも珍しいが…。

「あら、たまにはいいじゃない。」

さっきまでの真剣な表情はもう見えず、紫様は何時もの底の見えぬ微笑を浮かべている。


「たまにはあなたと“水入らず”な会話でも楽しみたいからね…。」


…紫様が何を言っているのかが、最初は判らなかった。
しかし、数十秒思考を巡らせた後、私はくすりと笑みを零す。
ああ、なるほど。久々に紫様の言っている事を理解出来た気がする。

つまり今、私は皮肉を言われたわけだ。
水入らず、それは2人だけで静かに、と言う意味だけでなく、水に弱い私を皮肉った言葉。
水に弱い私、即ち「水入らず」な私と、静かに「水入らず」の会話。

「…座布団には届きませんね。」

「つまらない事言ってないで、早くおつまみでも用意しなさい。」

率直な感想だけ言って、私は紫様に言われたとおり、台所につまみを取りに行く。
つまらない事を言ってないで、って、あなたに言われたくはありませんよ。
まあしかし、紫様の事をもっと知るために、たまにはこういうのもいいかもしれない。
少しでも紫様に近づく事が出来れば、紫様の言葉も、何時かきっと理解出来るだろう。

「式神とコンピュータの違い」か…。…今日の私は、きっとその答えに近づけたんだと思う。
だからこそ、幾ら水に濡れても式が剥がれなかった、そう信じたい。
私が近づいた「答え」がなんだったのかは、まだ判らないけれど…。
…いや、判らないからこそ、今はそんな事は考えずに…。

「お待たせしました、紫様。」

今は、この時を楽しむとしよう。


紫様との、この“水入らず”なひと時を…。



…藍、あなたが探している答え、それは本当に簡単な事。

レミリアも、随分と率直に答えを出していたのにねぇ…。

「式神である事を辞めればいい」とね…。

「式神」は意思を持っている。「コンピュータ」は意思を持たない。

あなたはその違いを、既に判っている。

式神が水に強くなる方法、それは「式神」である事を忘れる事…。

あなたは最近、自らも式を扱うようになり、自分が式である事への意識が薄れている。

あなたが昔に比べて水に強くなったと言うのは、つまりそういう事。

式神である事を意識しなければ、当然式神としての存在は薄くなり、水への耐性も上がっていく。

…勿論、その分式神としての力は弱くなるけれどね…。

意思を持っている式神だからこそ、あなたは式神である事を忘れる事が出来る。

手っ取り早く言うならば、式神である以上は決して水は克服出来ない。

克服出来るのは、式神としての存在。私があなたを縛り付ける、式契約と言う鎖の方…。

あなたが水を完全に克服できたその時とは、即ち私の式神でなくなる時という事…。


…だからこそ、私は今回、あなたがそれに気付かなかった事に安堵している。


私は…。…私はまだ、あなたに傍にいて欲しいから…。


あなたにまだ「八雲藍」でいて欲しいから…。


もう少し、もう少しだけ、私の式神でいて…。


…そう長くはない私の命の“火”が、消えて行くその時まで…。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


まずはここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。
端的に言うなら、水が苦手な式神である藍様が色々と頑張る話です。
それと、此処最近雨が凄かったので、その辺の事情も少々織り交ぜてみました。
ひとえに水と言っても、本当に沢山の種類が存在しますからね…。
この話では、川の水、雨の水、「水入らず」、そして…。
…まあ、そんな話です。

最後に今一度、此処までお読みいただき、真にありがとうございました。



* * * * * *
改めまして、皆様この話をお読みいただきありがとうございました。
こんぺには初投稿だったので、どういう話にすればいいのかと四苦八苦していたのですが…。
皆様のお陰で自分の弱い所が判りました。誠にありがとうございます。

それと一応、最後の「水」の答えについて少し書いておきます。

一つは「涙」。
本文中には2回しか出てきていませんが、藍と大妖精達の、橙を思う強い心として、それなりに重要視して使っていました。
涙は思いの弱さと強さ、両方の象徴です。ただ、人が流す涙は、いつも強き涙である事を望みます。

一つは「血」。
紫と藍、そして橙の「八雲」の血の強さ、思いの強さ、その辺から連想していただけましたら幸いです。
彼女たちは血の繋がった家族と言うわけではありませんが、それでも本当の家族のようにあって欲しいものです。

一つは「火を消す水」。
最後の紫の言葉の「火」を強調して使った理由です。自分が死ぬ時には、藍にその火を消して欲しい。
殺して欲しいと言う意味ではありませんが、最期に自分の死を見届けて(火を消して)欲しいと言う意味で。

…そんな感じです。答えは一つではありません。一つのように見せたのはわざとです。


>慶賀さん
3番目の意味を「死に水」と言い換えられるかもしれませんね。意味はちょっと変わってしまいますが。
面倒見自体はいいんだと思っています。きっと、紫は誰よりも母性に溢れているのでしょうから。

>小山田さん
個人的に長い心算は無かったんですが、皆様そう言っておられるのでやっぱり長いんですね…。
ありきたりだったのは、今回初めてという事もあって捻りは抜いていたので、その辺の結果だと思います…。
固くなりすぎたみたいですね、反省します。

>名無しさん
ありがとうございます。

>厚志さん
紫の言葉から、何かを感じ取っていただけたのであれば幸いです。

>神鋼さん
多少本設定でない部分があったせいかもしれません…。
或いは私の文章力の無さか。

>#15さん
ありがとうございます。

>twinさん
明るい話でないとリーダを大量使用してしまうのも治さなくちゃいけませんね。
独り言に関しても、言われてみれば確かに違和感が…。
そして文章を削らなかったというのが今回の一番の反省点のようです…。

>yuzさん
ありがとうございました。

>desoさん
…善処いたします…。

>詩所さん
正解の一つ、読み取っていただきありがとうございます。
紫は頭が良すぎる故に、意外とそういう心配をしてしまうのかと。

>ミスターブシドーさん
紫の思う「式神=コンピュータ」は役割的なものであって、内面的なものではないのだろうという私の解釈からです。
今更感についてはぐうの音も出ません。仰るとおりです。
確かに結界を張って、と言うのも考えたんですが、文中ではそれをやると若干必死さに欠けるような気がしたので…。
「察しろ」で済ませられなかったのは、「言い過ぎ」と言われても「判らない」と言われるよりはましかという私の弱さからだと思います…。

>PNSさん
文花帖で紫が藍に対して「式である事を忘れている」様な発言をしていたので、その辺から頂きました。

>眼帯をつけた兎さん(これじゃ呼び捨てになってしまいますか…?)
設定自体は多分出てないと思います。
ただ、紫自身結構長生きしているようなので、あまり長くないのではないかと言う推測から…。
…推測だけでネタを使わないほうが良かったですかね…。

>つくしさん
普段読み手に回らなかった弊害ですね…。これからは善処します。

>三文字さん
あとがきの答えは↑で。
藍サマらしさが表れていたのであれば、一人称で書いている身としてはありがたい一言です。

>じらふさん
「みずいらず」の掛詞を思いついた事が、今回この話を書いた一番の切欠です。
書きすぎ注意、ですね。これも善処しなくては…。

>今回は感想のみさん
自分の甘さが如実に表れていますね。
最後の紫については、その前に一度紫視点を挟んでワンクッション入れれば大丈夫かな、と思ったのですが…。
それでも唐突でしたか、やはり読み手側の意識に欠けているようです…。

>藤ゅ村さん
私の藍サマのイメージが相当いい人なので、その辺の表れだと思います。

>八重結界さん
一応どちらの意味でも漢字は「水入らず」になるので、平仮名とどっちにするか最後まで悩んでいました。
平仮名を選んで正解だったようです。ありがとうございました。

>つくねさん
藍サマも長く生きているでしょうから、簡単な方法だったら既に克服していると思ったので。

>木村圭さん
その辺は文花帖からの推測です。
そして一番気付かれたくなかった事に気付かれてしまいました。
まさしくその通りです。気付いたのは投稿した後だったので…。

>blankiiさん
香霖堂の15話にそんな話があるみたいですね。見た事は無いので詳しくは判りませんが。
藍サマの行いは紫の指示によるものかもしれませんけど、心は藍サマ自身の物だと思っています。

>時計屋さん
これからは文章を増やすことではなく、減らす事に意識を傾けるべきですね…。

>リコーダーさん
一応「命令された事をやる」と言う点では共通ですね。それ以外は確かに良く判りませんが。

>あずまやさん
平仮名が上手くいっていたのであれば幸いです。
八雲一家だけでなく、友達と言うのもまた、強い絆の一つだと思います。


お褒めの言葉、注意点、その他もろもろ、今後に役立てていこうと思います。
最後にもう一度、この話をお読みいただき、誠にありがとうございました。
酢烏賊楓
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/10/05 02:48:28
更新日時:
2008/11/06 19:19:49
評価:
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POINT:
0
Rate:
5.00
1. 6 慶賀 ■2008/10/05 13:33:06
テーマは水を強く意識していますね。作者様が
おっしゃるそして、とは個人的な意見としては
死に水でしょうか。紫さん面倒見いいねー!
2. 5 小山田 ■2008/10/07 01:18:17
誰もが自分の中にキャラクター像を持っていると思いますが、こちらの八雲藍はまさに私の中の八雲藍と一致しており、物語を読み進めることに熱中することができました。長さも気にならなかったですよ。
ただ、物語の筋書きがありきたりなところへ流れてしまったので、盛り上がることなく読みきってしまってちょっと物足りなかったです。
3. 8 名無し ■2008/10/08 21:52:27
すばらすぃ
4. 5 佐藤 厚志 ■2008/10/11 03:47:12
ほのぼのした作品でしたね。
最後の紫の独白は、琴線に触れるものがあります。
5. 2 神鋼 ■2008/10/12 11:52:22
全体的な違和感が大きく、どうにも納得がいきませんでした。
6. 3 #15 ■2008/10/12 20:25:35
良いお話だ…
7. 3 twin ■2008/10/13 19:30:49
 紫が口にした水入らずという言葉が印象に残ります。上手い事いうなあ、と思って、実に納得したのですが、わざわざ藍の説明を加えなかった方がよかったと思いました。もっと抽象的な表現で、皮肉を匂わせる程度でも、読者に充分伝わると思います。個人的な見方ですが、説明的な文章はあまり見ていて気持ちがよくないので。

 それと、三点リーダの多用がしつこく感じました。特に地の文での多用は、やめた方がいいかと思います。リズムが悪くなりますし、読んでいて一々つっかえてしまうので、読みにくく、理由が感じられません。間を取りたいのであれば、三点リーダばかりではなく、文章での表現の方がいいと思いました。

 それと、他に目立った点は、藍の独り言がものすごく多い事です。私の偏見かもしれませんが、頻繁に独り言を口にする人はあまり居ないと思うし、やはり事あるごとにぶつぶつと喋っている藍も、藍らしくないと思いました。どちらかというと、頭の中だけで悶々と悩んでそうな印象なので。この意見は人それぞれだとは思いますが。

 起承転結が上手くまとまっていただけに、リズムの悪さなどが目立ってしまったと思います。もう少し削れる所は削った方がいいのではないでしょうか。
8. 5 yuz ■2008/10/15 18:19:56
心あったまる話しでした。
9. 5 deso ■2008/10/23 23:06:12
個人的には、もう一声といったところです。
あと、三点リーダを使い過ぎかと思います。
10. 8 詩所 ■2008/10/26 20:30:32
この作品は人によって色々な水の解釈ができますね。
私が思い浮かんだのは血は水よりも濃いという言葉ですかね。
藍が橙を大切に思うくらい、藍は紫への忠誠と信頼を持ち、紫の心配すら杞憂に感じます。

紫と藍、藍と橙、彼女達が水魚之交であると私は信じます。

すこし注文をつけるとしたらテーマの”答え”が予想通りすぎたことですかね。
11. 3 ミスターブシドー ■2008/10/27 00:36:33
紫曰く、式神=コンピューターなんだそうだが。まあ本質の問題であって、材料がここまで違えばな。

人類支配を企む超コンピューターが人の愛を説かれ
「アイトハナンダ、リカイフノウ」ドカーン
というのを思い出した。

いい話ではあるのだが、今更感が漂うのは否めない。
あと、九尾の狐クラスなら雨くらい妖力でどうにかするような気がする。
曲がりなりにもEXボスだ。
あと後書きは読者に「察しろ」でも良かったのでは。紫の件は別として。
12. 8 PNS ■2008/10/29 21:45:15
むむ、どうしてだろう、と考えていましたが、最後のあとがきに「なるほど!」と納得しました。
これは良い解釈ですね。いい八雲一家をありがとうございます!
13. 3 眼帯つけた兎さん ■2008/10/30 06:47:27
後がきのオチがよく分からなかったかな。ゆかりの余命についてなにか原作で設定が出たのでしょか……ううむ。
ともあれ直球な水のお話。
藍様ちょっと馬鹿っぽいけど優しいお話でした。
14. 1 つくし ■2008/10/30 17:47:53
 話の長さの割りにお話の内容が見合っておらずちょっと薄味です。同じおはなしをするなら密度を濃く切れ味を鋭くしたほうが美味しく頂けます。あと、小説は余計に語りすぎることで余韻を損なうことがしばしばでありますが最後の紫の独白はまさにそれでありました。読者がこの文章を読んでどう反応するか、ということを常々想像しつつ書くことが必要であります。
15. 7 三文字 ■2008/10/30 21:11:04
あとがきで妙に気になる終わり方を……
まあ、それはいいとして悩む藍様が可愛らしかったです。
橙とのほのぼのとするやりとりだとか、他の人物の会話も、どこか藍様らしい。
なんだか優しいお話でした。
16. 5 じらふ ■2008/10/31 21:39:32
絆深き主従に思わずにっこりと。
水入らずの掛詞は良かったですね(ただ藍に説明させず、読者に判断委ねた方が余韻が残って良かったかなあ、とちょっと思ったりも…)
藍さまが水を克服する日が、遠くずっと遠くありますように…。
17. 1 今回は感想のみ ■2008/10/31 22:43:40
すさまじく冗長。これを最後まで読まないといけないのか、水入りしたいぐらいうんざりしました。
話の骨組みはシンプルなので、登場人物をも削る潔さか、巧みな横糸を織り交ぜる構成力が必要です。
それと作者からのメッセージ欄で紫っぽいモノローグがありましたが、唐突だなあと読後感に混迷を加えていました。
ですが、テーマの水が話の骨組みとして使えているので1点を。
18. 4 藤ゅ村 ■2008/11/01 18:12:07
 ちょい、藍がいいひとすぎて素直すぎるきらいがありましたが、いいお話でした。
19. 7 八重結界 ■2008/11/01 18:40:31
タイトルが平仮名だった時点で、何かあるとは勘ぐっていたのですか。
こういうオチだったとは、予想もできませんでした。
コンピューターと式神の違いも、新しい解釈の仕方で、思わず関心してしまいます。
20. 5 つくね ■2008/11/01 21:09:05
安易な方法ではない水の克服方法が凄く良かったです。
21. 2 木村圭 ■2008/11/01 21:53:50
式神やめるつもりはないのに式神じゃなくなってきてるのか。何て皮肉。
ところで、みんな自由に空を飛べるんだからロープなんていらないような。
22. 4 blankii ■2008/11/01 22:25:55
式とコンピュータの違いとなると面白い問題ですよね。最初に語られたのは香霖堂(何話か忘れたけど)だったでしょうか?
藍様や橙の意識というか意志の源が何処にあるか? とか。元々の素体(九尾の狐や黒猫)に因るのか、それともA.I.みたく式(プログラム)に因るのか。
色々と妄想が尽きないです。
23. 3 時計屋 ■2008/11/01 23:46:15
頑張って書かれているとは思うのですが、冗長に過ぎるように思えます。
エピソードはもっと削れますし、描写もあまりに淡々としていて盛り上がりに欠けているように感じました。
24. 5 リコーダー ■2008/11/01 23:51:40
逆に式のどのへんがコンピュータなのでしょうかね、ってちょっと気になった。
25. 8 あずまや ■2008/11/01 23:52:00
これはいい逆誤変換ですね。
橙を救わんと頑張る小さな妖怪たち、藍様の関係がよかったです。
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