廻りゆく吸血鬼

作品集: 最新 投稿日時: 2008/10/05 03:44:01 更新日時: 2008/11/06 23:15:54 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00


 レミリアはコップの水を見つめている。
 透明の水は何も語らない。
 遠くで雷が鳴っている。
 雨はまだ止みそうになかった。

 外に出られずにいた。
 流れる水には逆らえない。
 夜を生きるものの摂理によって、この館に縛り付けられている。

 レミリアは指を出した。
 壁に映る影が揺れる。
 白く滑らかな肌が、蝋燭の明りを受けて、ほのかに色づいている。

 その人差し指を、そっと口に含む。

 薄い色の唇の奥、鋭く尖った夜の牙にたどりつく。
 ぷつりという感触とともに、小さな痛みが走る。
 指先に浮かび上がる赤い玉。
 それをコップの上へと運び、呪われた血を一滴、中へぽとりと落とした。

 またたく間に水面に溶け、ゆっくりと混ざって消えていく。
 レミリアはそれを、じっと眺めていた。


◇◆◇


「入るわよ」

 紅魔館地下にある大図書館の扉が開かれた。
 館の主であるレミリア・スカーレットは、ノックもせずに部屋に入ると、中をぐるりと一望した。
 高くそびえ立つ本棚が、所狭しと並んでいる。
 それら書物に吸い込まれてしまうのだろうか、ここには外の雨音も響かない。とても同じ館にある空間とは思えなかった。
 そして、部屋の陰気臭い空気の権化とも言うべき存在、七曜の魔女パチュリー・ノーレッジが、奥の読書机で本を読んでいた。
 レミリアは真っ直ぐに、その魔女の座る椅子へと向かった。

「パチェ。ちょっといいかしら」
「……なあに? レミィ」

 パチュリーは返事をするが、本から顔を上げてくれなかった。

「聞きたいことがあるの」

 レミリアは机の側に置いてある椅子に、逆向きに座りながら言った。
 対するパチュリーは、蝋燭の明かりをたよりに、無言でページをめくっている。
 いつものことだとはいえ、ため息をつきたくなった。
 
 時々、この友人は、本を読む機械なんじゃないかと思う時がある。
 紫を基調とした服、肘をつく位置、頭に乗った帽子の角度。
 置かれた本の背表紙以外は、一昨日と全く同じ服装と姿勢で、何も変わっていない。
 この図書館のように、世界と自分を断絶し続ける魔女。
 そう決め付けていると、時々突拍子も無い面白いことをやり出すので、憎めない存在でもある。
 だが、この場合に限っていえば、苛立たしい対応でしかなかった。
 レミリアは、そんな友人に対して、低い声で言った。

「本を読むのを止めて聞いてほしい」
「何か聞きたいならどうぞ。このままでも返答できるわ」
「せめてこっち見なさいよ」
「それは質問の内容によるわね」

 悪びれもせずに返してくる。

 ――全く……動かない図書館の異名は伊達じゃない。

 友人と読書と、どっちが大切なのか。
 一度問いただしてみたいが、どうせ面白くない答えが返ってくるだろう。近い運命を読まずとも予想できる。
 仕方なく、椅子の背もたれに両腕をあずけながら、レミリアは質問した。

「聞きたいのは……吸血鬼についてよ」

 その言葉に、パチュリーは本を読みながら、わずかに頷いた。
 どうやら、話を続けろ、ということらしい。

「もっと言うと、吸血鬼の弱点について」
「……日光、ニンニク、流れる水、炒った豆、ピーマン」
「ピーマンは、この際関係ないわ」
「あれ? レミィは食べられるようになったの?」

 パチュリーがページをめくりながら言った。
 けっ、とレミリアの口から悪態が漏れる。

「少なくとも、五百年生きるのには不要な代物よ」
「そうね。ピーマンを定期的に摂取せずとも、吸血鬼は500年生きていける。それは新たな知識だった。そういう意味では貴重な例だったわ、あなたは」
「パチェ……」
「冗談よ。怒らないでレミィ」

 レミリアはこめかみを引きつらせた。
 目の前で読書に勤しむパチュリーは、文字通りレミリアなど眼中に無いといった様子だった。喧嘩を売られているとしか思えない。
 親友であるとはいえ、ここまで無礼な態度を取られて、怒らないも何もあるだろうか。
 いい加減に本題に入るべきだ。

「私が聞きたいのは、なんで吸血鬼は『流れる水』が苦手か、ってことよ」
 
 レミリアはわずかに語気を強めて、読書机を指で叩いた。
 それを聞いて、はじめて、パチュリーの顔が上がった。
 しばし、見つめ合う。

「……それはレミィの方が詳しいんじゃないの?」
「私が知ってるのは、雨の中はどうしても飛びたくないとか、川の中を渡ることを考えるだけで身の毛がよだつとか、そういう感覚的なことよ」

 その感じについては、嫌というほど知っているし、詳しい。
 レミリアの他に知っているのは、ここ幻想郷では、地下で眠っている妹ぐらいか。
 パチュリーは、白昼夢を見ているような目つきで、確かめてきた。

「つまり、知りたいのはそういうことじゃないのね」
「当たり前でしょ。私が知りたいのはその理由。現象のメカニズムよ。夜の王ともあろうものが、『流れる水』ごときに屈するのが腹立たしいの」
「ピーマン……」
「それ以上言うと殴るわよ」
「レミィにぶたれるのは怖いわね」

 わざと拳を固めて、ゆっくりと持ち上げるレミリアを見ながら、パチュリーはパタンと本を閉じた。
 読むのをやめたようだ。
 急に態度を変えた友人を見て、レミリアはきょとんとした。

「あら。やっと話をする気になってくれたのね」
「最初からレミィと話す気だったわ」
「じゃあ何で本読んでたのよ」
「だって、せっかく面白そうな話なのに、レミィがいつまでたっても本論を言ってくれないから」
「……ああ、そうかい」

 要するにからかわれたのか。
 ふふふ、と笑う親友の顔に、ピーマンを投げつけてやりたかった。
 あとで咲夜に持ってこさせるのもいいかもしれない。食用じゃないと知ったら怒られそうだけど。

「場所を変えましょ。ここじゃ話しづらいわ」
 
 パチュリーはそう言って、おもむろに立ち上がった。
 ……もっとも、その手にはまだ本が残っていた。


◇◆◇


 話の場を二階の談話室に移して、レミリアはパチュリーと向き合っていた。
 窓越しに、外の光景がうかがえる。
 とうに日は沈んでいた。暗くなった湖面が小波を立てているのが、雨の向こうにかすかに見える。
 レミリアは陰鬱とした天気を横目に、ぼやかずにはいられなかった。

「ここのところ、雨が降ったり降らなかったりで外出できなくて、退屈だったのよ」
「そう。図書館には関係無いわね」
「一応、あんたの部屋も私の持ち物なんだけど」
「じゃあ、レミィの紅魔館には関係の無いことね」
「…………」
「冗談よ」

 レミリアが睨んでも全く動じずに、パチュリーは紅茶を飲んでいる。吸血鬼の視線をはね返すとは、大した面の皮の厚さだった。

「早速だけど、さっきの質問に答えるわね。吸血鬼の弱点、『流れる水』について」

 パチュリーはカップをテーブルに置いた。

「その説明に入る前に……水はないかしら?」
「いくらでもあるじゃない。外は雨よ」
「雨は苦手なんでしょ」
「……咲夜。水」

 レミリアがぶっきらぼうに呼ぶと、すぐに彼女の従者である十六夜咲夜が、水差しを持って現れた。
 まるで、最初からそこに立っていたような手際だった。

「ただいま、お持ちしました」
「ご苦労様。下がってよし……いや、咲夜も聞いたらどう?」
「どんな話題ですか?」

 透き通ったガラス製の水差しをテーブルに置きながら、咲夜は主人の目を見て聞いた。
 レミリアは悪戯っぽく笑う。

「私、すなわち夜の王の弱点についてよ。知っておくと便利じゃない? 色々」
「ああ。ピーマンですね」
「やっぱり下がってなさい」
「では失礼します。また何かありましたら、お呼びください」

 一礼して消えるメイドの影に向かって、しっしと腕を振った。
 パチュリーはそのお決まりの喜劇を、ぼんやりとした顔つきで見ながら、感想を述べた。

「便利で愉快な猫ね。鼠は捕らないけど」
「どちらかというと犬よ。ただし気転の利く犬ね。いい意味でも悪い意味でも」
「首輪をつけとかないと逃げちゃうかもよ」
「そんなもの、悪魔の狗には窮屈なだけだわ」
「そう。まあ、それはともかく……レミィこれを見て」

 パチュリーは、咲夜が持ってきた水差しを、手にとって持ち上げた。
 ガラス越しに、飲用水が静かに揺れている。

「あなた、これが怖い?」
「怖いわけないでしょ」
「……ほ〜ら、ほ〜ら」
「顔の前で揺らすな。うざったい」

 レミリアは頬杖を突きながら、水差しを手に妙な踊りを披露する魔女をジト目で見た。
 だが、パチュリーは動くのをやめずに聞いてくる。

「少し言い方を変えるわ。あなたにとってこれは弱点になる? 水だけど」
「そんなわけない」
「そうね。レミィはお風呂にだって入るし、この程度の水が零れたところで、体に変調をきたすわけがない」
「ちょっと、零さないでよ?」
「あら、失礼」

 そこでようやくパチュリーは、水差しをレミリアの顔から離した。
 冷えた気配が遠ざかる。

「『流れる水』。正確に言えば、吸血鬼の弱点は『流れる水を渡れない』という所にあるわ。じゃあ、『流れる水』とは何か。……手を出して、レミィ」

 水差しを片方に持ちながら、パチュリーは招いた。
 レミリアは片眉を上げたが、躊躇せずに右手を出した。
 水差しをそろそろと傾けて、パチュリーはその手のひらに水をこぼしていく。

「あ」
 
 バシャン。
 
 パチュリーの手から水差しが落ちて、テーブルの上に倒れた。
 気まずい空気が漂う。
 レミリアは濡れた手をだしたまま、呆れた目で、硬直する魔女を見た。

「……………………………」
「…………ごめん。重くて」
「……少しは鍛えなよ。咲夜ー」

 レミリアが再び呼ぶと、咲夜はたちどころに現れる。
 既にテーブルの上は元通りになっていた。
 ついでにレミリアの濡れた手も、綺麗に拭き取られていく。
 粗相をした当のパチュリーは、血の気のなかった頬を少し染めながら、軽く咳をした。

「こほん。話を戻すわね。さっき私が、貴方の手の平に水を注いだわ。あれは『流れる水』かしら?」
「……違う。と、言うしかないわね。なぜなら、私にとって弱点にならないから」
「その通りよ。つまり、吸血鬼の弱点である『流れる水』というのは、物理的に流動する水ではない」

 ふむ、とレミリアは興味を示して腕を組んだ。

「だとすると、何なの?」
「雨に川。吸血鬼を脅かすこの二つは、自然界を『循環』する水と言える。だから、『流れる水』というのは、自然界を『廻る』水、という風に推理できる」
「でも、それが何で、私にとって弱点になるのかしら」
「これは私の推測でしかないけど、かなり有り得そうな話だから、聞いてちょうだい」
 
 とそこで、パチュリーは一息ついて紅茶を飲み、横の窓に視線をやった。
 レミリアは顔を動かさずに、雨音を聞くことで、外の様子を確かめた。
 憎たらしいことに、ちっとも止む気配が無い。
 パチュリーの解釈は続く。

「自然界の水は水蒸気となって雲となり、雨となって地上に落ちる。それらは土にしみこみ、あるいは川となって流れ、あるいは生き物が飲む。……水の循環というのは、人の魂の輪廻みたいなものね」
「雲って水だったの。……ああ、ごめん。話を続けて」
「人は死ぬ。死んで魂は廻る。まあ、幻想郷じゃあ、うろついているのも多いけど。とにかく、魂は廻り続け……肉体は朽ち果てて土となり、やがて別の生き物の糧となる。ところが、その自然の摂理である輪廻から、外れた存在もある」

 遠くで雷鳴がした。
 パチュリーは言葉を切り、こちらへと視線を戻してくる。
 暗い顔をした友人の顔を見ながら、レミリアはうなずいた。

「妖怪……吸血鬼ね」
「そう。吸血鬼は人間に近いようでいて遠いけど、その最大の違いは不老不死にある。吸血鬼は輪廻を避ける。輪廻に従って滅ぶことに逆らい続けて、永遠の生を求めた人々」

 呪文のような語りの最後で、パチュリーは魔女の瞳を可笑しそうに細める。

「貴方達にとって、輪廻というのは自らの存在を脅かす禁忌なのかもしれないわね」
「なるほど。それなりに納得できる説明だ」
 
 湿った空気を払うように、レミリアは両手を上げる。
 パチュリーもそこで、前のめりになっていた体を引っ込めた。
 しばしの沈黙の後、レミリアは冗談めいた口調で聞いてみた。

「じゃあ私が雨にうたれたら、人間になったりするのかねぇ」
「一度輪廻を捨てて変わった存在が、再び戻れるとは思えないわね」
「そうだね。ありえない」

 レミリアは再度、窓の外の光景を見た。
 雨を通さぬ固いガラス。光を通さぬ厚いカーテン。
 その向こうには、輪廻をめぐる水を厭わぬ者たちが住んでいる。
 何となく、世界が自分を避けている気がして、レミリアは愚痴りたくなった。
 
「パチェの説明を聞いたら、ますます雨が嫌いになったわ」
「そう」
「最後に一つ聞くわ。何で私たちって友達やってんのかしら」
「鏡に映る自分と友達になれる?」
「鏡に映らないものですから」
「私とレミィはまるで違う。だから面白いのよ。今日も楽しかったわ。また呼んでね」

 パチュリーは立ち上がって、本を手に図書館へと戻っていった。
 テーブルの上に水差しとコップが残る。
 友人の姿が消えたことを確認して、レミリアは小さく呟いた。

「私もよ。パチェ」


◇◆◇


 レミリアはコップの水を見つめている。
 互いに黙したままだった。
 外では雨が降り続けている。
 不愉快に廻り続けている。
 コップの水は動かない。
 器に閉じこめられ、何もすることができない。
 自分と同じく、不自由な存在。
 だが、
 この水を外に流せば、やがては輪廻へと戻っていく。
 この館が吹き飛べば、レミリア・スカーレットは灰になり、土へと還る。
 では、吸血鬼をやめることができるか?
 答えは否だ。
 夜を統べる闇の眷族。
 それは、生まれたときから自分を魅了し続けている。
 だけど、同じくらいに惹かれる存在がある。
 五百年が一瞬に感じられるほどの濃密な時間。
 ここ数年は、驚きと快楽の連続だった。
 そして、自分は永遠にそれと交わることはない。

 本当に?

 ふとレミリアは思いついた。
 人差し指を口に含んで、噛み切る。
 そのまま、コップへと指を運び、血を一滴垂らした。
 輪廻ごときに屈するのは腹立たしい。
 手に入れられないから、と諦めるのも自分らしくない。
 血を溶かしたコップの水からは、強い魔力が感じられた。
 効力は六日程度だろうか。
 いわば自分の分身みたいなものだ。
 
「咲夜」
「はい」

 一声呼ぶと、音もなく彼女の従者が現れた。

「このコップの水、明日にでも、日の当たるところで流してちょうだい」

 咲夜は怪訝そうな顔をしながらも、コップを受け取った。

「大事に扱いなさいね。私だと思って」
「お嬢様を、お日様に当てて流す、なんてことできませんよ」
「……じゃあ、日頃のストレス解消だとでも思いなさい」
「かしこまりました」

 それで納得するのか。
 ふざけたメイドだが、こういう答えを返してくれるからこそ、この従者は惜しいのだ。
 咲夜の手で運ばれていく水を、レミリアは幻視した。

 ――輪廻の中の『私』。果たしてどこに行き着くことやら。

 待っているのは希望か、絶望か。
 運命の糸は繋がるだろうか。
 外の雨はようやくおさまりかけていた。




◇∴∵∴◇




 自分は漂っていた。

 交じり、離れ。

 風に乗って飛んで行く。

 すこぶる快適だ。

 周りには、自分と同じ仲間がいる。

 いっせいに浮き上がり、いっせいに沈んでいく。
 
 だけど、自分は一人で、別の道へと向かった。

 行く手に巨大な何かが現れた。

 止まれない。

 全身がぶつかる。

 とても熱くて動けない。

 慌てふためく自分は、無造作にぬぐわれてしまった。




◇∴∵∴◇




 ………………。
 目が開いた。
 ぼやけた視界が、いつもの寝室の天井へと変わっていく。
 それにつれて、レミリアの意識がはっきりしていった。
 寝てからまだわずかしか経ってない気がする。部屋に窓が無いので分からないが、時間は早朝だろうか。
 珍しいことだ。日が出ている間は、いつも健康的に寝ているのだが。
 レミリアはベッドの上で伸びをしてから、ひょいっと軽やかに起き上がった。
 少し体が重い。だが、感覚は冴えていた。
 先ほどの不思議な夢も、しっかりと覚えている。
 そこで、ふと気がついて、レミリアは指を見た。
 左手の人差し指。三日前に噛んだ傷は、すでに治っている。
 その指に赤い糸が巻きついていた。
 レミリアは目を見張った。
 『運命の糸』だ。

「これはこれは」

 どうやら、もう一人の自分は、無事にこの世を廻っているらしい。
 しかも『糸』の数は三つ。その内の一つは色濃く、すぐに機会がやってくることを示している。
 面白いことになりそうな予感がした。

「咲夜ー」

 呼ぶとたちまち、部屋の中に従者が現れた。

「どうしましたか、お嬢様」
「ちょっと出かけてくるよ。着替えを手伝って」
「お休みになって間もないですよ。まだ朝です。曇りで、少し霧がかってますけど」
「……ふうん。霧か」

 レミリアは、咲夜が用意した服に袖を通していきながら、ほくそ笑んだ。
 間違いなく、その霧の中に、自分の血を含んだ水がいるに違いない。
 そして、誰か知っているものの運命と交錯するのだ。
 これこそが、レミリアが仕掛けた魔術の種だった。
 果たしてそれは、誰だろうか。
 せまる出会いに浮き立ちながら、レミリアは服を着替え終わった。
 それにしても、こんな時間でも律儀に対応してくれるとは、さすがは瀟洒で完全なメイドだ。

「そういえば、咲夜っていつ寝てるの?」
「休むときは時間を止めています」
「たまには、私の見てる前で寝てみなさいな」
「お嬢様に寝顔を見せるのは、少し怖いですね」
「別になにもしたりしないわよ」
「いえ、何となくです」

 咲夜は笑顔のままだった。
 何だか引っかかる。ひょっとして、自分は子供扱いされているのだろうか。
 前から思っていたが、一度きっちり教育し直さなくてはいけないかもしれない。

「ちょうどいい。私は一人で出てくるから、あんたは休んでなさい」
「え?」
「たぶん邪魔になるから」
「そうですか。では念のため日傘を」
「ん」

 いつの間にか用意ができていた日傘を、咲夜から受け取る。

「じゃあ留守番よろしく」
「行ってらっしゃいませ。お気をつけて」

 メイドの声を背中に、レミリアは寝室を後にした。


◇◆◇


 その日の幻想郷の朝は、空も大地も曇っていた。湖が一面、霧で覆われている。
 その上を、レミリアは日傘を手にして飛んでいた。
 視界が遮られているため、いつもと違って目印が無いので、方向が分かりにくい。
 しかし、彼女の目的は、指から伸びる『糸』にそって飛んで行くだけなので、問題は無かった。
 レミリアの感覚が正しければ、この糸は魔法の森に伸びている。

「あれ? そういえば、霧は『流れる水』に入らないのかしら」

 レミリア自身は、霧の中を飛ぶのは億劫だが、苦しいというほどでもない。
 粒が小さいのが問題なのか。それとも循環の内に入っていないのか。

「パチェに聞いてみればよかったわね」

 レミリアは水煙の中を漂うようにして、目的の場所へと急いだ。



 森の中も霧でいっぱいだった。糸にそって真っ直ぐ飛べば、木にぶつかってしまう。
 羽を痛めないように、なるべく高い位置を飛ぶ。
 気の短いレミリアにとっては、面倒なやり方だった。
 問答無用で全て吹っ飛ばして行くのと、どちらが楽だろうか。
 そんなことを考えている内に、目的地が近付いてくる。
 霧の向こうに一軒家が現れた。
 レミリアのよく知っている魔法使いが、井戸水で顔を洗っている。
 魔法の森に住むその人間は、こちらに気がついて顔を上げ、手を振ってきた。

「おお。霧の向こうから現れるとは、吸血鬼っぽいな」
「滅多に言われたことない台詞ね」

 霧雨魔理沙の軽口に、レミリアもやり返しながら、羽を閉じて地に降り立った。

「一人とは珍しいな。こんなところでうろちょろしてると、お前んとこのメイド長が心配するぜ」
「今日は咲夜抜き。貴方に一人で会いにきたの」
「珍しいことだらけだな」

 顔をタオルで拭きながら、魔理沙は邪気のない笑みを見せた。
 その魔理沙とレミリアを、指から伸びた『運命の糸』が真っ直ぐに繋いでいる。
 つまり、ここで彼女と過ごせば、何かがあるということだ。

「んで何の用だ? 話でもあるのか?」

 問われてレミリアは戸惑った。
 とりあえず行ってみればいい、と考えていたので、話題なんて用意していない。
 だが、運命の時は迫っている。魔理沙から離れるわけにはいかなかった。
 ためしに、一番気になっていることを聞いてみることにした。

「貴方、不老不死についてどう思う?」

 唐突な質問にも、魔理沙は驚いた様子見せなかった。
 んー、とレミリアから視線を外し、髪を掻きながら考えている。

「……まあ、魅力的だな」
「そうなの。じゃあ、いずれは……」
「勘違いするな。魅力的ではあるが、なりたいとは言ってないぜ」

 魔理沙はきっぱりと否定してくる。
 不思議な返答に、レミリアは首をかしげた。

「それって違うかな」
「全然違う。ましてや吸血鬼なんてまっぴらごめんだ。 一日お試し、とかならともかく」
「無理な話ね。でも、魅力的だというのに、どうしてなろうとしないの、不老不死に」
「お前に話すつもりはないな」
「聞きたいわね。力尽くでも」

 そう脅してみると、魔理沙は不敵に笑って、一枚のカードを取り出した。

「久しぶりにやるか」
「いいねぇ」

 口上と共に、辺り一帯の空気が変わる。
 一瞬視線を交えてから、二人は同時に森の上へと飛び立った。
 重たい霧を抜ける。
 箒に腰をかけた魔理沙が、すでにスペルカードを宣言していた。
 星型の弾幕が展開される中で、レミリアは余裕を見せながら、大きく構えた。
 そして、朝一番の弾幕ごっこが始まった。


◇◆◇


「はぁ、はぁ。くそっ」
「私の勝ちね」

 大の字になって息をつく魔理沙の前で、レミリアは勝利を宣言した。
 とはいえ、それほど余裕があるわけではなかった。次にやれば勝てるかどうかは分からないし、初めて会ったときには負けている。
 ごっこ遊びとはいえ、ただの人間が、五百年生きた吸血鬼を脅かす実力を持っているのだから面白い。
 レミリアは倒れた魔理沙の近くまで歩み寄り、しゃがんで顔を覗き込んだ。

「それじゃあ、さっきの続きを教えてもらおう」
「嫌だ」
「ルール違反よ、人間さん」
「ぬぅ」

 魔理沙が、目を閉じたまま、苦い顔をした。
 よほど話したくない内容らしい。

「誰にも話したりしないよ。事によっては応援してあげるかもよ」
「応援するならお宝くれ」
「お宝が欲しいの?」
「……間違った。手を貸してくれ」

 レミリアが差し伸べた手を摑み、魔理沙は立ち上がった。
 そのまましばらく呼吸を整えていたが、やがて決心したように長く息をついた。

「……とりあえず中で話す」

 そして、レミリアは魔理沙の家へと招かれた。



 中に案内されたレミリアは、とりあえず一言、感想を述べずにはいられなかった。

「噂通りの散らかりっぷりね」

 その噂自体が、少し信じにくいものでもあったが。まさか、本当に部屋の床が見えないとは思わなかった。どこから集めたかは知らないが、幻想郷中のガラクタが集まっているのではないだろうか。
 レミリアは翼を天井にぶつけないように、ふわふわと低く飛んで、テーブルへとたどり着いた。さすがにテーブルの近くは、椅子を引くだけの余地はあった。
 奥から魔理沙がカップを二つ持ってやってくる。置かれた物に、足をとられそうになっている感じはしない。
 この呆れるほど乱雑した空間も、住む本人にとっては問題ないようだった。
 彼女といい、館に住む友人といい、魔法使いというのは妙な環境に住むのが好きなのかもしれない。
 魔理沙は口を閉ざしたまま、カップをレミリアの前に置き、自分も椅子に座った。

「それで、なんで不老不死になりたくないの」

 レミリアは、先ほどと同じく、単刀直入に聞いた。
 魔理沙はこちらを見ずに、仏頂面で茶をすすっている。
 答えを待つのは嫌いだったが、これ以上へそを曲げられても面倒なので、放っておいた。
 やがて、ぽつりと声がした。

「私は負けず嫌いだからな」
「……はい?」

 よく聞こえなかったので、レミリアは聞き返した。

「私は負けず嫌いだと言ったんだ」
「…………」

 今度はよく分からなかったので、レミリアは無言で続きを促した。
 魔理沙は、心底無念そうに、額に手をやってうめく。

「いいか。今から話すことは他言無用だ。というか、聞いたら忘れろ」
「努力はしてみてもいいかもね。さっさと言いなよ」

 不遜な態度をとっていると、魔理沙はいよいよ、頭をかきむしりたくなるのを抑えるように、髪の毛を摑みだした。
 レミリアの目が少し丸くなる。いつもの強気で生意気な魔理沙とは思えない。

 ――帽子が無いと印象が変わるのね、こいつ。……それとも別の理由かな。

 ブランデーの香りが混じる紅茶を一口飲みながら、そんなことをレミリアは思った。
 やがて観念した魔理沙は、吐き出すように言った。

「……私は今より強くなりたい。ただそれだけだ」
「じゃあ妖怪になっちゃえばいいじゃない。うちの魔女みたいに」
「それじゃあ駄目なんだよ」

 魔理沙は首を振って、レミリアの意見を否定してくる。

「それじゃあ、そいつらの後をただ追うだけだろ。いつまでたっても追いつけやしない」
 
 テーブルの上に拳を作り、目の前に座る人間は。力強く宣言した。

「私は……私の道を選んで、あいつらより早く、そこへたどり着く。いずれは最強になってやる。必ずな」
「…………」

 レミリアは、熱い口調で語る魔理沙の様子を、じっと眺めた。
 魔理沙の言葉に、偽りは無いようだし、言いたいこともわかった。
 ただ少しだけ、引っかかることがあった。
 だから、レミリアは聞いていた。

「理由は、それだけじゃないんじゃない?」
「………………」
「人間のままで追いつきたい存在が、お前の身近にいるんじゃないの?」
「………………」

 魔理沙は黙りこんだままだ。
 しかし、否定はしてこなかった。
 頃合か、と思い、レミリアはお茶を一口飲んで、立ち上がった。

「ごちそうさま。もういいわ。聞きたいことは聞けたから」
「…………言っておくが」
「言わないわよ。それに応援してあげる」
「ふん」

 魔理沙も帽子を手にとって、立ち上がった。

「あら、見送ってくれるの?」
「まあ、一応お客様だからな」
「霊夢に聞かせたい台詞ね」
「あいつには、言っても意味ないと思うぜ」

 いつもの調子に戻ったようで、普通の魔法使いは少し笑みを見せた。


◇◆◇


「まだ霧はやんでないか」

 玄関から出て、レミリアは不満を述べた。
 外は相変わらず靄がかっている。
 道案内は消えてしまったため、ここから飛んで帰るのは少々面倒だった。

「じゃあね、魔理沙。面白かったわ」
「私にも教えろ。お前は何しにきたんだ。本当にあんなこと聞きにきたのか?」

 そう聞かれて、レミリアは当初の目的を思いだした。
 と同時に、『レミリアの水』の行方が見えてくる。
 濃い霧の中で、魔理沙が顔をごしごしとこすっていた。

「……? 何だよ。ジロジロと見て」
「いや別に」
「何か顔についているか?」
「何もついてないわ。ただ……」

 レミリアはくすりと笑った。

「今日は凄く綺麗な顔をしているわ、魔理沙。吸血鬼みたいよ。見に来た甲斐があったわ」
「笑えん冗談だな」
 
 そう言いながらも魔理沙は苦笑する。
 吸血鬼である自分を恐れている様子は全く無い。
 神社の娘ほどではないが、彼女も興味深い人間の一人だった。

「それじゃ、また」
「ああ」
 
 無事に運命を見届け、満足したレミリアは、紅魔館へと飛び立った。




◇≡≡≡◇




 自分は滑り続けていた。

 流れにのって突き進む。

 離れ合い、ぶつかり合いながら、溶け合う私たち。

 命を運びながら、怒濤の勢いで進んでいく。

 自分だけ、何かに気がついた。

 誰かが見ている。

 とても大切な人。

 ただし、それは遠くて。

 悲しくなるほど遠くて。

 自分を見つけて拾ってほしいのに。

 流れがあまりにも速すぎて。

 結局、すれ違うことしかできないのだ。




◇≡≡≡◇




「また……か」

 レミリアは小さく呟いて、むくりと体を起こした。
 予想通り、指から伸びている『運命の糸』に既視感を覚える。昨日と似たような状況だ。
 しかし、あの夢はなんだろうか。
 運命を操る程度の能力。レミリアはその力の副次的な効果により、わずかながら、自らを含めた運命の導く先を見通すことができた。
 つまり、未来が読めるのだ。
 特に、寝ている時には、その力が無意識に働くことがある。その影響は、彼女の見る夢に顕著に現れた。
 予知夢の類など日常茶飯事だ。
 しかし、あの夢は、今ここでベッドから降りようとしている自分の未来ではない。
 だとすれば何者の未来か。
 いや、それについては見当がつく。
 問題なのは、あの夢の終わり方だ。

 ――あの時、私を見ていたのは……。

 そこで、コンコン、とレミリアの思考が遮られた。
 寝室の扉が、控えめなノックの音を立てている。

「お目覚めですか、お嬢様」

 従者の声がする。
 レミリアはとりあえず、考えるのをやめた。

「起きてるわ。入っていいわよ、咲夜」
「では失礼します」

 蝙蝠の絵が彫られた豪奢な扉が、静かに向こう側へと開かれていく。
 いつもと同じ、メイド服姿の昨夜が現れた。
 脇にはポットを乗せた台車を用意している。

「ただいまお茶を入れます。その後はお着替えを……、どうしましたか?」

 寝室に台車を押して入った咲夜が、怪訝そうな顔になる。
 対するレミリアは、ぽかんと口を開けていた。
 指から『運命の糸』が伸びている。
 その先が、目の前に立つ従者へと結ばれている。
 なんと、その細首に巻きついていた。
 まるで犬の散歩に使う首輪のように。

「………………」
「お嬢様?」
「な、なんでもないわ!」

 少々動揺しながら、レミリアは口を押さえた。
 咲夜は表情を変えずに、首輪をしたまま立っている。
 あまりにも似合いすぎているため、レミリアは吹き出すのをこらえるのに必死だった。

「何か顔についていますか?」
「い、いや。大丈夫よ」

 この従者のことだ。レミリアがそう答える間にも、恐らく時を止めて何度も身だしなみを確認したであろう。
 それを思うと、お腹が引きつって仕方がない。

「こほん! それよりも咲夜」

 精一杯、威厳を含ませた咳をして、レミリアは問うた。

「今日の予定を言いなさい」
「はい。目覚めの紅茶をお飲みになられた後に、お着替えをすまして食堂で夕食となります。曇り空でも構わなければ、テラスに用意いたします。パチュリー様は昨晩と同じく、図書館にて召し上がるそうです。それから……」
「私の予定じゃなくて、あんたの」
「失礼しました。私のこれからの予定は、お嬢様に紅茶を用意した後、お着替えを手伝って……」
「私の世話は抜かせ」
「しかし、私の行動予定は、お嬢様のご活動によって決まるものですが」
「…………」

 レミリアは口を閉じた。
 言われてみれば、その通りだ。呼べばいつでも主のもとへ飛んでくる従者に、決まった予定なんてあるはずがない。

「ですから、お嬢様に予定を決めていただきませんと」
「うーん」
 
 レミリアは腕を組んで考え込んだ。
 何か違う気がする。
 今こうして、運命が交錯する予兆が示されているということは、咲夜がすでに歩もうとしている行動と、『レミリアの水』の行方がめぐりあうということなのだ。自分が能力を使って手を加えれば、ある程度好きな方向へと操れるが、イカサマでは面白くない。
 運命はあらかじめ定まっているからこそ価値がある。

「じゃあ仮に、今日一日、私が何も世話を頼まなかったとしたら?」
「…………?」
「たとえば、水が関係しているような所で、なんかやろうとしてない?」
「水……ですか」

 咲夜は顎に手を当てて考えていたが、ふと何かを思い出した顔つきになった。

「特にお嬢様に言うべき話とは思えませんが」
「何かあるのね、やっぱり」
「はい。川の様子を見に行こうかと」

 川!
 そうか、次は川か。

「でも、どうして川に?」
「はい。ここの所、雨が続いていたので。川が増水を起こして、里に被害が出るかもしれないと思って」
「……あんたはいつから人道主義者になったの? 放っておきなよ、そんなの」
「ですが、紅魔館で使う消耗品は、人里で仕入れているものが少なくありません。もし里に被害がでれば、結局はお嬢様に、ご不便を強いることになってしまいます」
「………………」

 再びレミリアは口を閉じることになった。

「いかがいたしますか? お嬢様のお気に触るのであれば、行きはしませんが」
「いや、いい」

 出された紅茶を飲みながら、とりあえずレミリアは承知した。
 なんだか納得がいかなかった。だが、筋は一応通っているし、何より、せっかく本人が運命へと進んでいるのだから邪魔することはない。
 自分はせいぜい楽しませてもらうことにしよう。

「ただし、私もついていくわ」

 レミリアが出した条件に、咲夜の表情が固まった。
 着替えの準備をする手も止まっている。

「嫌とは言わないわね?」
「…………」
「咲夜? 返事しなさい。あんた自身が時間止めてどうするの」
「……失礼しました。ですが、お嬢様にとって別に楽しいものとも思えませんが」
「くどいわよ。いつ行くかどうかを決めるのはあんた。それが楽しいかどうかを決めるのは私。いいわね」
「はい。申し訳ございませんでした。度重なる非礼をお許しください」

 咲夜は深々と頭を下げた。
 レミリアはその対応に満足して、着替えを始めた。

「それで、いつ行くの?」
「お嬢様を待たせるわけには行きません。すぐにでも行く準備をします」
「あんたの都合でいいのよ。元々行くはずだった時間……は私が決めていたのか。ああ、もうややこしいわね、本当に!」

 ぶんぶんと拳を振りながら、レミリアはわめいた。

「お嬢様?」
「…………ああ、ごめん。とりあえずいつでもいいわ、たぶん」
「わかりました。ではお嬢様の夕食後ということで。食堂にてお待ちしております」
「はいはい」

 返事をすると、咲夜の姿が消える。
 だがご安心を。『運命の糸』はまだ伸びていた。

「いい娯楽を見つけたわね。これから、ちょくちょくやってみようかな」

 くるくると人差し指を回しながら、レミリアは赤く染まった『糸』を見つめた。
 前回の成果を思い出すと胸が躍る。今度はどんな楽しいことになるやら。
 と、レミリアは回す指を止めた。
 ひとつだけ気がかりなことがあったのだ。
 先ほどの夢だ。
 あの夢の感触は覚えている。魔理沙に会いに行った時と同じものだ。
 あれは、『レミリアの水』の行く末を体験したのだろうと、すでに確信があった。
 だが今回の夢とは違う部分もある。
 それに付随する感情が、前の夢は心浮き立つものであった。
 それに対し、今朝の夢はとても寂しかった。
 あれは一体何を意味しているのか。

「考えすぎかねぇ」
 
 と、そこでお腹が鳴っていることに気がつく。
 ひとまずを脳を使うのは、やめだ。
 腹ごしらえを済ましたら、咲夜と二人でデートか。
 レミリアは上機嫌で、食堂へと向かった。


◇◆◇


 出発の夜は、快晴とはいかなかった。
 月が雲の裏で明滅している。
 レミリアは咲夜と並んで、川に向かって飛んでいた。
 横を飛ぶ従者は、主を追い越さぬよう、しかし離れすぎぬよう注意して飛んでいる。
 いつだって、彼女は自分の側にいるのだ。

「こうして並んで飛ぶと、あの夜のことを思い出すわね」
「どちらですか。満月を取りに戻しに行った夜? それとも肝試し?」
「両方。まあ、しいて言えば、肝試しのほうかな。今日は満月じゃないし」

 肝試しとはいうものの、実際には刺客として利用されただけだったが。
 
「あの蓬莱人は面白かったわね」
「ええ、そうですね」
「不死の人間。輪廻から外れた存在は、すでに人と呼べるかしら。どう思う?」
「私は死ぬ人間ですので、よくわかりませんわ。お嬢様」
 
 咲夜は軽妙な語り口で返してくる。
 その一言で、レミリアはあることを思い出した。
 あの時、レミリアは咲夜に、不老不死にならないかと勧めた。
 しかし、咲夜にきっぱりと断られている。
 その理由が、レミリアにはよくわからなかった。
 もし彼女が不死になれば、ずっと一緒にいられるのに。
 咲夜はそれが嫌なのだろうか。

 目的地に近付くにつれて、レミリアの心はざわめいていた。
 朝の夢は、とてもじゃないが、幸せな感じではなかった。
 あれはもしかして、自分たちが別れる前兆だったのだろうか。
 肝試しのとき、生きている間はずっと共にいると言ってくれた。
 それから心変わりでも起こしてしまったのではないか。
 しかし、レミリアは咲夜と別れる気などなかった。

 ――手放してなるものか。
 
 レミリアはひそかに決心して、少しだけ、横の従者との間を詰めた。


◇◆◇


 雨続きの後の川は荒れていた。
 わずかに飲み込んだ星光から、濁流がうねるようにして進んでいくのが分かる。
 足を踏み入れれば、陸には戻ってこれそうにない。 
 吸血鬼にとっては薄ら寒い光景だったが、横に立つ人間は、特に怯えた様子を見せてはいなかった。

「よかった。この程度なら問題ありませんね」

 穏やかな表情で川に臨むその姿には、厳粛な雰囲気さえ感じられる。
 従者の態度が、わからなかったので、レミリアは聞いてみた。

「咲夜は川を眺めるのが好きなの?」
「ええ、好きです」

 よどみなく肯定してくるのが、不快だった。
 レミリアは川へと逃がさぬように、さりげなくメイド服の端を摑んだ。
 咲夜の言葉は続く。

「時が流れるのを忘れがちな私は、川を見ていると落ち着きます」
 
 その理由は見当がついた。
 十六夜咲夜は、時間を操る程度の能力を持っている。
 彼女は周囲の時を自由に止めて、ただ一人の時間を作り出すことができるのだ。
 一介の人間が持てるレベルの力ではない。一歩間違えれば狂い、破滅しかねない力だ。
 しかし、咲夜はその力を、日々の仕事のために惜しげもなく、巧みに使っている。
 流れる川を見つめるという作業は、彼女にとって精神安定剤の役割を果たしているのだろう。
 自分には到底理解できないが。

 レミリアは、ふと顔を上げた。
 腕を組み、視線を鋭くする。
 咲夜は少し、首をひねった。

「でも、今日の川は、何だか悲しくなりますね」
「今過ぎた」
「え?」
「……まあ、そんなものね」
 
 レミリアは下流へと消えていく『自分』を見つめていた。
 失望しつつも、潔く諦める。
 ただ通り過ぎただけのことだ。特別悪いことが起こったわけではない。
 軽い嘆息ののちに、レミリアは咲夜を見上げた。

「まだ、見ているの?」
「いえ。もう用は済みました。帰っていつものように、お嬢様に仕えさせていただきます」
「そう。咲夜は優秀ね」
「お嬢様の従者ですから」
「……人間のね」

 皮肉をこめて付け加えてやったが、咲夜は何も言ってこなかった。
 レミリアの赤い瞳が絞られていく。

「今も人をやめる気はないの?」
「はい」
「私が頼んでも?」
「人としてお嬢様に仕えること、それが私の誇りなのです」
「ふん。それはどうも。まあ、無理強いしても、ろくな運命にならないことは、わかってるけどね」

 わかっていた。
 もう何度読んだか、数えるのも馬鹿らしいほど。
 だが、わかっていても腹は立つのだ。
 レミリアの耳には、咲夜の言葉は単なる詭弁にしか聞こえなかった。
 だから、つい言ってしまった。

「ただ、私があんたをどれだけ必要としているか分かってほしいわね。いつかは、あなたも私の前からいなくなっちゃうんだから」

 自分には相応しくない、弱音のような一言。
 そこには逆さの棘が含まれていた。
 抜けば痛む。抜かなければ腐る。
 卑怯な呪いだったが、愛なんてそんなもんじゃないだろうか。

 目の前を流れる川。
 すくっても、すくっても足りない。
 流れを止めることはできない。
 その無力感を知ったのは、咲夜と出会ってからだった。
 だが、考えてみれば馬鹿馬鹿しい。
 夜の支配者である自分が、いちいち悩むほどのことじゃないはずなのだ。
 それが欲しければ、川をせき止めて、自分の庭のプールにしてやればいい。
 それだけの価値が、この人間にはある。
 逆に、彼女にとって自分にはそれだけの価値がないんだろうか。
 それがどうにも不満だった。

「お嬢様」

 その短い言葉は、帰る、と言いかけたレミリアの意表を突いた。

「私が人である限り、お嬢様の辛さを知ることはできないかもしれません。ただし、」

 そこからは、従者とは違う、十六夜咲夜の声だった。

「私がどれだけ貴方を必要としているのか。どれほど感謝しているのか。それをそのまま伝えられないのが、どれほど悲しく、もどかしいことか」

 レミリアは川に視線を向けていた。
 だがそれは、目に映るばかりで、見えてはいなかった。
 咲夜の非難めいた口調に、頭の芯が殴られていく。

「お嬢様も、私の辛さを知りません」

 川の音が遠のいていく。
 視界が澱んだ黒で塗りつぶされていく。
 牙を噛みしめる。
 レミリアの指が、鉤爪のように曲がっていった。
 
「……ご無礼、失礼しました」
 
 咲夜が頭を下げる気配がする。
 レミリアは振り向かなかった。
 煮えくり返ったはらわたが落ち着くまで、じっと耐えた。

「帰るよ」

 やっと一言、声が出た。


◇◆◇


 行きと違って、館に帰る道中は、会話がなかった。
 食事の場で、咲夜はいつもと変わらぬ給仕ぶりを見せてくれた。
 だが、レミリアは彼女に対してうなずくのみで、一言も声をかけてやることができなかった。
 就寝前の食事を早めに済ませ、寝室へと急ぐ。
 悔しさで涙が出そうになる。
 ドアを開けて、早々とベッドに倒れこんだ。
 凶暴な声を発する。洗い立てのシーツを噛みしめる。引き裂いて燃やしてやろうかとまで思った。
 結局、自分が我儘なだけなのは分かっていた。
 それでも、川での会話は、手を噛まれるよりも痛かった。
 恥ずかしくてたまらなくなると同時に、咲夜を本当に愛しく感じた。
 あの思いに答えてやりたいのに、もう一つのドロドロとした感情が自分を引き止めてくる。
 だから、咲夜と話せなかった。

 ずるいじゃないか。
 理屈なんてどうだっていい。
 ただ、ずるい。咲夜はずるい。
 だって彼女はいなくなってしまうんだから。
 こんなに感謝しているのに、自分を捨てて行ってしまうのだから。
 五百年。そして、また五百年。吸血鬼の一生は続く。彼女と過ごす時間なんて、ほんのすれ違い程度の長さだ。
 永遠の咲夜を欲しがるのが、そんなにいけないのか。
 好きな者とずっといたいのは当然じゃないか。
 彼女が側にいないことを考えるだけで、震えて吐き気がするのに。
 あの時、泣いてすがるべきだった。だが、激情にまかせて牙を突き立ててしまったかもしれない。
 そうなれば、彼女は永遠に私を許してはくれないだろう。
 そんな一生は耐えられない。

 怒りと喜び、哀しみがせめぎあって、頭が爆発しそうだった。
 運命を楽しんだ罰なのだろうか。そんな罰など蹴り飛ばしてやりたい。
 だがそんなことをしても、この苦しみは、おさまりそうにない。
 咲夜に呪いをかけるつもりが、自分がかけられてしまった。
 
 うめきながら、枕を抱きかかえる。
 今日は疲れた。
 頭が重い。
 早く、こんな悩みからはおさらばしたい。
 
 レミリアは、着替えもせずに、うつ伏せのまま、まどろみへと沈んでいった。




◇;;;◇




 母の懐は広く、冷たかった。

 兄弟姉妹は、迫る時を、今か今かと待ち構えている。

 誰もが興奮し、自らの重さに耐えられなくなってくる。

 その中でもっともはしゃいでいるのが自分だった。

 やがて、落下が始まった。

 大地に引き寄せられるままに、落ちて行く。

 先頭はやはり私だった。

 母の元を去る。

 風を切り裂いていく。

 愛する人のもとへと、真っ直ぐに落ちていく。



 そして私は







 闇の中へと。




◇;;;◇




「ハッ!」

 肺から空気を漏らしながら、レミリアは飛び起きた。
 勢いのまま、左右に視線を走らせる。
 そこは闇ではなかった。いつもの自分の寝室だ。
 いまだに風をきる音が鳴っているような気がしたが、それも幻聴だと気づく。
 荒れた呼吸を長く整えようとしたが、上手くいかなかった。
 汗ばんだ手で、寝間着の繋ぎ目を握り締め、服越しに暴れ狂う心臓を押さえつけようとした。

「何なの? 一体」

 混乱する頭で、ようやく発した言葉は、疑問だった。
 今まで見たどの夢とも違った。
 楽しさもなければ、哀しさもない。
 あるのは興奮と衝撃。
 そして甘美な一瞬、いや苦痛かもしれない。
 あれが自分の分身が経験することなのだろうか。
 自分はそれに耐えることができるだろうか。
 指を見るのが怖かった。
 はっきりと『糸』が伸びている。
 自分を逃さぬよう、指はがんじがらめにされていた。
 その先には、最後の運命が待っている。
 向こうにあるのは希望か、それとも絶望か。
 レミリアは『糸』を握り締め、しっかりと前を向いた。

「面白いじゃないか」

 震えながら、強がりを言う自分。
 だけど、それが私の生き方だ。
 強く、自分の思うままに進む。
 私は逃げない。
 レミリア・スカーレットは、決して運命から逃げたりしないのだ。
 
 早速レミリアは自分で着替えようとして、ふと手を止めた。
 寝間着を見下ろす。
 苦笑が漏れる。
 先に寄るところができてしまった。


 ◇◆◇

 
「ちょっと出てくるよ」

 ほぼ一日ぶりに従者にかける言葉にしては、そっけなかった。

「一人で、ですか?」
「一人で」

 咲夜がいつものように返事してくれたことに、レミリアは少し安心した。

「しかし、雨が降りそうですよ」
「雨……か」

 なるほど。最後に見届ける『自分』は、宿敵である『雨』に違いない。
 相手にとって不足はなかった。

「お嬢様は、何をしに行かれるのでしょうか?」
「決闘よ」
 
 レミリアはさらりと言った。
 
「じゃあ、行ってくるから」
 
 やはり、自分にはまだ言えそうにない。
 レミリアは、さっさと立ち去ろうとする。
 その前に、咲夜が立ち塞がった。
 レミリアは苛立った。

「邪魔よ」
「お供します」

 無意識の内に、レミリアの手に魔力が溜まりはじめた。

「来なくていいわ。留守番していな」
「お嬢様の側に控えるのが、私の務めです」
「いい加減にしろ。いいと言っている」
「嫌です」
 
 その一言で、レミリアの瞳が発火する。
 手の内で凝縮した熱量が槍の形となり、咲夜に向けられた。
 当たれば無事にはすまない一撃だ。
 しかし、

「嫌です! 私にとって、お嬢様と過ごす時ほど、稀少な時間はないんです! わかってください!」
 
 咲夜は脅しなどものともせずに叫んだ。
 思わぬ嘆願に、レミリアは唖然とした。
 咲夜の顔は真剣そのものだ。
 それは、より長く生きるはずの、自分が言うべき台詞だったはずなのに。
 一人で悩んでいた自分が馬鹿らしくなってきた。
 手の魔力がしぼんでいく。
 だけど、彼女を連れて行くわけにはいかなかった。
 ばつが悪く、もじもじと指をいじりながら、レミリアは説明した。

「だから……今度もたぶん、あなたが来ると外れてしまうのよ。わかってちょうだい」
「どうしても、ですか?」
「…………そうね。昨日、川であなたから話を聞かなかったら、連れていったかもね」

 咲夜の顔が青ざめた。身じろぎして、半歩下がる。
 仕返しが成功したのを見て、レミリアはふっ、と笑った。

「違うわ。悪い意味じゃないのよ。パチェが猫だなんて言うから……」
「猫……ですか?」
 
 うっかり、パチュリーのせいにしてしまった。
 でもあいつめ。ちっとも猫なんかじゃないじゃない。
 この従者が逃げだしたりなんてするものか。
 一晩寝てすっきりしたからだろうか。
 昨晩の悩みが、そんなに難しいことに思えなくなってきた。
 あとは自分も、ちゃんと伝えるだけだ。

「咲夜、この前の返事を言うわ」

 今なら自信を持って言える。
 レミリアは左手を胸に当てた。

「ありがとう」

 五百年を生きた吸血鬼は、自らの従者に、感謝と敬意を表した。
 隙のなかった咲夜の表情が揺れ動く。
 レミリアは彼女の手をとって、その上に自らの左手を乗せた。

「おかげで、『安心して』貴方を連れていかずにすむわ。……これからもよろしくね、咲夜」
 
 その言葉で、咲夜は崩れ落ちるように、その場にひざまずいた。
 ただの少女となった従者の目元を、レミリアはそっと撫でてあげる。

 ――『流れる水』か。こういうのなら悪くないのだけどね。

 大切な人間の頭を胸に抱きながら、レミリアは苦笑した。
 再び、咲夜が立ち上がったとき、従者の顔は、いつもの瀟洒で完全な表情に戻っていた。
 力強い笑みを見せて、丁寧にお辞儀してくる。

「行ってらっしゃいませ、レミリア様。お気をつけて」
「ああ」

 最高の忠臣に見送られながら、レミリアは堂々と正門へ向かった。


◇◆◇


 曇り空の下を、レミリアは一人で飛んでいる。
 実のところ、最後の『糸』の行方は、館に出る前から気づいていた。
 この道はよく知っている。何度となく通った道だ。
 しかし、いつもとは空模様が違っていたし、一人で飛ぶのも初めてだった。
 今この場で雨に降られてしまえば、死んでしまうかもしれない。
 だが、例え雨に降られようと、意地でもたどりつきたかった。
 これまでの『運命の糸』について考える。
 出会ったのは、どちらも輪廻の中で悩める者達だった。

 霧雨魔理沙は努力していた。
 人の身で怪物共に追いつこうと。
 それがどれほど無謀であろうと、彼女は諦めないだろう。
 だが時として、怪物にも人の存在は遠いのだ。
 
 十六夜咲夜は悲しんでいた。
 心をありのままに伝えられないもどかしさを。
 だが、それは人であろうと妖怪であろうとかわりない。
 互いに生きる時間が、不安になるほど短すぎるのだ。
 
 そして、レミリアにとって何よりも遠い存在が、この先にある。
 相手が誰であっても等に接し、相手が誰であってもなびくことはない人間。
 もっとも強く、もっとも孤独で、それを苦とせぬ化け物。
 だからこそ、何よりも美しく魅力的な彼女。
 思い悩むレミリアの目に、東洋の神殿が見えてきた。

 博麗神社。
 そこには、幻想郷に生きるものすべての憧れが住んでいる。


◇◆◇


 神社の境内を、一人の巫女が掃除していた。

「こんにちは、霊夢」

 レミリアは鳥居をくぐらずに、上空から境内へと入った。

「誰か来ると思ったら、あんたか」

 箒の手を止めて、博麗霊夢が見上げてくる。
 その横の石畳に、レミリアは静かに降り立った。
 霊夢がふと、辺りを見回した。

「あら。咲夜はいないのね」
「ちょっと暇に出してるのよ」
「あのね。言っておくけど、私はメイドなんてやらないわよ」
「いくら私でも、霊夢をスカウトするほど向こう見ずではないわ」
「あっそ」

 霊夢はそこで興味を無くしたかのように、境内の掃き掃除を再開する。
 レミリアはその態度に文句を言った。

「客に対してお茶も出さないの?」
「参拝のお客になら出すわよ。ちなみに素敵なお賽銭箱はそっちね」
「ふん。庶民と違って、貴族はお金なんて持ち歩かな……」
 
 そこまで言って、レミリアはポケットに妙な感触を覚えた。
 小さくて平べったい手応えがある。
 手を入れてみると、五円玉が出てきた。
 もちろん自分が入れるはずはない。
 呆然とするレミリアの手の中を、霊夢がのぞきこんできた。
 そのまま、じーっと七色の蛙でも見るかのような目をしていたが、やがてため息をついてくる。

「仕方ないわね。全く……なんでうちには妖怪しかこないんだか」

 ぶつぶつ言いながら、霊夢はお茶を用意しに神社へと向かった。
 レミリアはしばし立ちすくんでいたが、やがてぎゅっと五円玉を握りしめた。
 そして、来たときよりも少し軽い足取りで、神社前の賽銭箱へと向かった。


◇◆◇

 
 レミリアは神社の裏にある、母屋の縁側に腰掛けていた。
 手元には、緑茶の入った湯飲みがある。
 紅茶好きなレミリアにとって、日本茶の味はどうも苦手だった。いまだに、苦いのが好きな者のための飲み物だと思っている。
 神社の造りも、裏庭の景観も、どうにも渋すぎる。これが、わびさびというものだろうか。
 とそこに、苦いもの好きな巫女が、お茶菓子を持って戻って来た。

「何を変な目で見ているのよ」
「いや何でも」
「あんたも暇ね。わざわざこんな天気にお参りに来るなんて」
「別に、ここの神には興味は無いよ。興味があるのは霊夢」
「またその話か」
「霊夢はとっても魅力的よ。食べちゃいたいくらい」
「言っとくけど、首噛んだら承知しないからね」
「残念ね」

 レミリアは肩をすくめてみせた。
 ここでは、お決まりの会話だ。
 しかし、繰り返すうちに虚しさがたまっていくのがわかった。
 
「素敵な吸血鬼ライフを味わおうとか思わない?」
「私は素敵なお茶とお賽銭ライフで生きる巫女なの」
「巫女で吸血鬼っていうのも面白いんじゃなくて?」
「帰れ」
「つれないわね」

 改めて冷静に考えてみると、本当に無意味なやり取りだった。 
 レミリアには、すでに霊夢を眷族に加えるつもりなど毛頭無い。
 そんなことをすれば、霊夢の価値が失われてしまう。
 顔では余裕たっぷりに笑っていても、レミリアの気持ちは落ち込んでいくばかりだった。
 パチュリーの言うとおりだ。
 相手と違うからこそ付き合うことができ、違うからこそ魅力的に映る。
 しかし近付けようとすれば、自分のものにしようとすれば、その美しさを失ってしまう。
 血を吸うことでは、本当の彼女を手に入れることはできない
 そのジレンマが、どうにももどかしい。
 霊夢は悩む自分を、無慈悲な顔で一蹴する。

「くだらない話なら間に合ってるのよ。帰って咲夜に頭でも撫でてもらいなさい」
「頭を撫でるのは主人の役目よ」
「何だっていいわよ。こんな変な天気の日に、妖怪を相手にするのは面倒なの」

 霊夢は立ち上がって、縁側から降りた。
 裏庭を歩くその姿が眩しく見える。
 循環する命の中で生きる少女。
 輪廻から外れた自分は、何と遠いことだろう。
 こんな感情を味わうのは、生まれて初めてだった。
 あの隣で歩いてみたい。
 誰よりも近くで接してみたい。
 しかし、そこに雨が降れば、自分は滅んでしまうのだ。
 
 一雨きそうね、と霊夢が天を仰いでいる。
 雲の色が濃くなっている。湿った風が鼻をくすぐる。
 レミリアは憎悪の瞳で空を睨んだ。
 雨は嫌いだ。流れる水なんて大嫌いだ。輪廻なんて糞くらえとしか思えない。
 奴は、たった数歩の距離にある二人を、明確に分けてしまう。
 これほど酷くて滑稽な話があるだろうか。
 そして今、自分は道化の役を演じているのだ。
 何という残酷な世界。
 レミリアは長いため息をついた。

 『糸』は頼りなく、霊夢を結んでいる。
 特にこの、性悪の運命の女神は、いくら呪っても足りなかった。
 この期に及んで、何が来るというのか。
 結局私は、彼女とは永遠に外様なのに。
 手の届かない先で生きる霊夢を見て、レミリアは絶望するしかなかった。

「ん?」

 と、そこで、レミリアの人差し指が痺れ始めた。
 頭上に『自分』を感じる。
 はるか彼方、空の向こう。
 上から雨となって、『レミリア』の降る予感がある。

 しかし、レミリアは空を見上げていられなかった。
 瞠目して、目の前の光景を見つめていた。
 ぶらぶらと定まらぬ歩みを見せていた霊夢が、ぴたりと立ち止まる。
 そして、無垢な表情で空を見上げて。

「えっ、えっ、嘘」

 縁側に座るレミリアは、思わず身を乗り出してその光景を凝視した。
 目の前で行われている人間の舞台で、予想していなかった事態が起ころうとしていた。
 霊夢が微笑んで、その口をゆっくりと開けていく。

「あーん」

 その間延びした声に、レミリアの心臓は早鐘を打ち始めた。
 一瞬たりとも見逃さぬよう、レミリアは祈る気持ちで、痺れ出す左手を握り、そして待った。
 降ってくる。
 自分が降ってくる。
 廻り続けた最後に、ここへやって来ようとしている。
 指に巻かれた『糸』が燃えるように熱い。
 レミリアの視界が白く霞んでいく。
 その向こうで、博麗霊夢が一粒の雨を、

 その口で受け止めていた。


◇;;;◇


 運命の流れに乗って、『レミリア』は突き進む。
 母なる雲の元を離れて、他の誰よりも先へと向かう。
 下へ、はるか下へと。
 地上で待ち受ける、愛する人の元へと。

 周囲の光景が引き伸ばされていく。
 風に揺られるたびに、不安でたまらなくなる。
 彼女は受け止めてくれるだろうか。
 水となったレミリアは、必死で運命に祈った。

 やがて、幻想郷が見えてくる。
 それすらも一瞬で過ぎ、神社の裏庭が間近に迫る。
 両手をわずかに広げ、霊夢が目を閉じてこちらを向き、小さく口を開けていた。
 
 レミリアの息が止まる。距離がぐんぐんと近付く。
 もう落ちる先は間違いなかった。
 ついに、叶わぬ筈だった巫女の舌で、レミリアはしっかりと受け止められる。
 
 そして、こくりと飲み込まれた。


 衝撃の後に、信じられないほどの緩やかな世界がやってきた。
 レミリアは、はじめて感じる闇に包まれていた。
 温かく、どこか懐かしい。
 全てを受け入れる優しい闇だった。
 一人だった。だけど、独りではなかった。
 自分は今、彼女の中にいるのだから。
 鼓動が聞こえる。
 こんなにはっきりと聞こえる。
 さっきまで、あんなに遠くにあったのに。
 自分は今、誰よりも近くで、彼女の心臓を感じているのだ。
 優しいリズムが、子守り歌のように体を震わせる。
 気持ちが落ち着いていく。
 心地よい夢の中で、ゆっくりと溶けていく。
 そして最後に一つとなって。
 
 レミリアは消えた。




◇;;;◇




 ぽつ。
 ぽつぽつ。
 小振りだった雨足が、しだいに強くなっていく。

「あちゃー、こりゃまいった」

 庭にいた霊夢は、慌てて神社に引き上げた。
 髪についた雨粒を払いながら、縁側へと上がる。
 そこで、ギョッとして、手を止めた。
 縁側に、変な体勢をした吸血鬼がいた。
 体を丸め、肩を震わせながら、寝転がっている。
 レミリア・スカーレットが、床で身悶えしていた。

「何してんのあんた」
「ふふふ。何でもないわ」

 レミリアは心底可笑しそうに笑い転げながらポツリと言った。

「霊夢に食べられちゃった」
「は?」

 眉をひそめる霊夢だが、レミリアの笑いは止まらなかった。

「何がそんなに面白いんだか。妖怪は分からないわね」
「あはは、霊夢だってちっともわからないわよ。それが面白くて」
「だからって、涙を流すほど笑うことはないでしょ」
 
 呆れたように嘆息して、霊夢はレミリアの頭を小突いた。

「どうすんの、あんたは。朝まで続きそうよこの雨」
「別に構いやしないわ。今夜はこの神社に泊まるから」
「勝手に決めるな。あんたの従者はどうしたのよ」
「夜明けには迎えに来るんじゃないかしら」
「……誰かこのお子様を見張っていてほしいんだけど」
「もう、噛みつこうなんて思わないわよ。必要が無いって分かったし」
「はぁ!? どういう意味よ!」

 怒鳴る霊夢に向かって、レミリアは起き上がり、にっこりと微笑んだ。

「単に私たちは、相性がいいってことよ」

 言ってから、レミリアはすっきりした。
 不機嫌だった霊夢も、毒気を抜かれたような顔になる。

「……何か変なもんでも食べたの?」
「この場合、食べたのは私じゃないわ。まあ、何でもいいじゃない。霊夢も座って、景色でも眺めたら?」

 そう言って、レミリアは隣をすすめる。
 ここは私の神社なんだけど、と呟きながら、霊夢は湯飲みを手に取って座った。
 二人で並んで景色を眺める。

 幻想郷に雨が満ちていた。
 屋根を叩く水音が、耳に心地よい。
 同じ流れを生きた兄弟姉妹が、祝福してくれているような気がする。

「ふふ。たまには雨もいいわね」
「ふーん、珍しいわね。あんたがそんなこと言うなんて」
「長く生きてると、そう感じることもあるのよ」

 残念ながら、吸血鬼は永遠に廻ることはできなかった。
 しかし、途中の駅で、大切な存在と出会うことができた。
 どれも自分だけが味わえた、とても素敵な出会いだ。


 苦いお茶を一口。
 吸血鬼と人間は、仲良く降る雨を眺め続けた。




 この話を、寂しがり屋の吸血鬼さんへ捧げます。

11/3
そして! 読んでくださった貴方へ!
ありがとうございました。お疲れ様です。PNSです。

こんぺの存在を知り、「水」というお題を聞いて思いついたのがこのストーリーです。
寄せられた温かいコメントの数々を読んで、無事に書き上げることができて良かった、と思います。

そして凹みましたorz
自分が他の方々の作品に投稿したコメントのなんと傲慢なことか。
不快に感じた方がいれば、申し訳ありません。
次はもっと愛のあるコメントを目指します。
それではレスを。

>慶賀様
目当たりが良い、とはありがたい。
テーマについては「友達」……に近い何かですかね。

>小山田様
軟着陸が好きです。いや、墜落もありだとは思いますけど。
さらなる完成度を目指して精進します。

>名無し様
それはうれすぃ(笑)

>佐藤 厚志様
吸血鬼ならではの寂しさを解消してあげたい、と思って書きました。

>神鋼様
天候はレミリ雨でした(笑)
心地良いという感想は本当に嬉しいです。

>yuz様
どうぞ。微笑んでくださいませ。

>deso様
可愛いお嬢様が表現できていれば、と思います。

>詩所様
>>いいんです! 寂しいのを我侭で隠す姿がいいんです!
やっぱりそうですよね!(笑)
霊夢のシーンは、もっと強めに工夫できたかも……。

>ミスターブシドー様
登場人物と読んでくれた人が幸せになるように、という思いで書きました。
そして今、私はコメントを読んで幸せになりました(笑)

>尾張典待様
エピソードは、レミリアにとっての「廻り行く水」、すなわち「人間」に絞りました。
妹様にすれば、全く違うエンディングを書けたかもしれませんね。

>眼帯つけた兎さん(様)
どうも(笑)

>つくし様
ラストは楽しんでいただけたでしょうか。このシーンを台無しにしないように頑張ってみたつもりです。

>三文字様
お嬢様って、ピーマンが嫌いだと思いませんか?(笑)
霊夢を吸血鬼にせずとも幸せになる運命が、レミリアにはちゃんと残されている……そう信じて書きました。
堪能していただけたのであれば幸いです。

>じらふ様
深く読んでくださったようで嬉しいです。
パチェについては、何だかんだいってレミィの話を聞いてあげるキャラが好き(笑)

>今回は感想のみ様
>>いまいちわからなかった
私の力不足です。申し訳ない。

>藤ゅ村様
>>その次にあっさり霊夢霊夢っていうのは、なんかこう釈然としないというか
ですよねー。私も最初に書いていて思いました(おい)
ただ、霊夢も咲夜も両方欲しがる我儘なお嬢様もいいかなーと。
あと、変態なのはレミリアじゃなくて書いている作(ry

>八重結界様
>>すんなりと最後まで読むことができました
途中で飽きられないかと心配していたので救われました、いや本当に(汗)

>あずまや様
いい意味での予想外を狙いました。面白かったというコメントにでホッとしております。

>名乗る名前がない様
>>パチェとレミィの流れる水の行が少し早すぎたような気がします
冒頭のことでしょうか。テンポ悪く感じさせてしまったのであれば申し訳ありません

>つくね様
むむむ、難しいコメントですね。
よく分からなかったのですが、あやふやで回りくどくなっているのは、確かにあるかもしれません。
その雰囲気が狙いの一つでもあるんですが……。

>木村圭様
誉め言葉の嵐に恐縮です。
ただ、どうも自分の書くものは王道になってしまうようです。
次はもう少し捻った展開を本気で目指してみようかな……。

>blankii様
なぜ吸血鬼は「流れる水」に弱いのか。前にあるSSを読んで、そう疑問に思ったのが出発点でした。
お題が「水」でなければ、この話もラストのシーンも思い浮かばなかったことでしょう。

>時計屋様
すみません。塩を入れ忘れました……というのは冗談で。
次は「何か」が足りるように頑張ります。技量を誉めていただけるとは思っていなかったので嬉しいです。

>リコーダー様
>>霧化した吸血鬼を吸い込むと不老不死になる、って設定があった気がするけどまさかまさか。
うわ! そう考えると怖い話になりますねこれ! でも、この話の霊夢には無害です、たぶん。
>>レミリアのしたかった事が抽象的すぎたせいで、途中までいまいちのめりこめなかった感が
うーむ、もう少しはっきりした目的を書いてみるべきでしたかね。
PNS
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/10/05 03:44:01
更新日時:
2008/11/06 23:15:54
評価:
0/0
POINT:
0
Rate:
5.00
1. 7 慶賀 ■2008/10/05 13:32:47
テーマは友達でしょうか。さらさらした小気味よい
話で、とても目当たりが良かったです。
2. 4 小山田 ■2008/10/07 01:25:10
人と妖怪の寿命の差異というのは、各所のSSで散々に題材にされ尽くしていることではありますが、長い模索の果てに軟着陸というのも安心できるいいパターンですね。
完成度の高い話ですが、長さを感じてしまった冗長さな部分が直れば、さらに完成度が増すと感じました。
3. 8 名無し ■2008/10/08 22:08:21
すばらすぃ
4. 7 佐藤 厚志 ■2008/10/11 03:29:41
吸血鬼の寂しさというものが、ひしひしと身にしみるようでした。
私は、永夜抄の『あのセリフ』を思い出しましたよ。
5. 9 神鋼 ■2008/10/12 15:02:41
天候とレミリアとのマッチングや、緩やかにそれでも心情を深く掘り下げていく内容に得も言えぬ感情がありました。
決して派手なところは無いですが、染み入るような心地よさでした。
6. 5 yuz ■2008/10/14 21:30:14
微笑ましい。
7. 8 deso ■2008/10/23 23:04:54
面白かったです。
レミリアが可愛いなあ。
8. 7 詩所 ■2008/10/26 20:31:31
いいんです! 寂しいのを我侭で隠す姿がいいんです!

ちょっと〆となった霊夢の話がさっぱりしすぎていたかな。
起承転結の”転”となる咲夜との絡みがツボだったために萎んでしまった感が残りました。
9. 7 ミスターブシドー ■2008/10/27 00:39:41
おー、上手いこと人間三人でまとめたものだ。
無駄に紅魔館全員集合とかならなかったのも好感が持てる。
レミリアの葛藤が丁寧に綴られている。気持ち長めだが、行間や改行に筆者の気遣いを感じる。
キャラの味もよく出ている。咲夜さんの脆さが少しだけ気になったが、昨日の今日なら仕方なし。
ラストの降り始めのシーンは何ともいえない気分になる、幸せさで。
10. 7 尾張典待 ■2008/10/29 16:55:12
楽しませて頂きました。特に咲夜のくだりは、お互い惹かれるが故の苦悩のようなものを感じられて目頭が熱くなりました。

あくまで感想でしかありませんが、最初の話を魔理沙ではなく妹様にしたりすると
物語としてより纏まりが出て「レミリアを取り巻く運命」が現せたのではないかな?と思いました。
11. 8 眼帯つけた兎さん ■2008/10/30 06:46:49
素敵。
12. 8 つくし ■2008/10/30 18:01:54
 さみしがりやのおぜうさまかわいい。おぜうさまかわいい。(大事な以下略
 話の展開の仕方が楽しく読めました。ラストにはお嬢様が感じた喜びと官能が伝わるような心地さえ。
13. 10 三文字 ■2008/10/30 22:13:08
霊夢が吸血鬼になるのかと、はらはらして見てしまった……
まあ、そんなことはなくて安心しましたが。
おぜうさまはピーマンが嫌いなのかーそーなのかー。
子供っぽくて、カリスマに溢れてて、我儘で唯我独尊。
原作通りの私の大好きなお嬢様でした。咲夜さんも瀟洒で格好良かったです。
水となったお嬢様の行く末、何が起こるか分からず、とても面白かったです。
情緒的な文章による寂しがりやな吸血鬼のお話。堪能させていただきました。
面白かったです。
14. 7 じらふ ■2008/10/31 21:39:57
レミリアの水を介して、レミリアと「輪廻の中にいる者」の関係、そしてそれぞれの対比が綺麗に描かれていたな、と。

人間はみな水のように「流れて行く」存在ですが、そうやって流れて行く途中では色々なモノの近くにいったりわずかに触れたり…一つになったり。
やっぱりそういう縁は大切にしなきゃいけないよなあ、と読み終わって思いました。

しかし、こういう寂しがりやで可愛いレミリアさまも良いなあ。パチェとのやり取りでもニヤニヤしてしまったです(笑
15. 3 今回は感想のみ ■2008/10/31 22:45:17
表現したい、書きたいという気持ちが伝わる。
ただ、それが何だったのかは話の経緯含めていまいちわからなかった。
16. 6 藤ゅ村 ■2008/11/01 18:12:39
 アイディアが素敵。
 キャラ同士のやり取りも楽しく、かなり面白く読ませて頂きました。続きが気になってどんどん読んでた記憶が。
 咲夜らへんで止めとくと、レミリアの浮気性(本気かもしれないけど)が気にならなかったかも。咲夜であんなに悶々としておいて、その次にあっさり霊夢霊夢っていうのは、なんかこう釈然としないというか。それだけ、レミリアと咲夜の距離感が素晴らしかったというのもあるんですが。
 しかし最後のレミリアはどこか変態的ですね! 吸血鬼ならでは。
17. 7 八重結界 ■2008/11/01 18:40:54
延命する事を望むレミリアと、拒む咲夜というのはよくある話ですが、そこに水を絡ませたのはお見事です。
話の展開とピッタリ合って、すんなりと最後まで読むことができました。
18. 7 あずまや ■2008/11/01 20:22:20
伏線の回収が見事でした。こう来るとは思ってませんでした。面白かったです。
19. 5 名乗る名前がない ■2008/11/01 20:54:05
静かな感じでゆっくり進むのが良い感じ。
あえて言うならパチェとレミィの流れる水の行が少し早すぎたような気がします
20. 6 つくね ■2008/11/01 21:23:35
お題そのままにも関わらずずいぶんとあやふやで不思議な感じがします。廻り廻って遠廻りしすぎたせいでしょうか? 或いは、吸血鬼の彼女と同じものを見たせいかもしれません。なにしろ輪廻において転生については感知していませんので。
21. 8 木村圭 ■2008/11/01 21:54:50
おお、これは上手い。
パチュリーの解釈もそれを聞いたレミリアの行動も実にシャレていて格好いい。
欲を言えば人選および展開に捻りがきいてると最高だったのですが……王道は王道で読み応えがありました。
お題の水を独特の方法で活用し、かつ中心に据えた見事なSSだと思います。お題補正でプラス一点。
22. 6 blankii ■2008/11/01 22:28:31
不思議な味わいのあるお話でした。発想自体が面白く、吸血鬼が流水に弱いというお題は何度か見たものの、その中でも最も斬新だったように思います。
三者三様、そのままキレイに終結させたラストシーンがとても印象的でした。
23. 6 時計屋 ■2008/11/01 23:46:37
巡り回る輪廻の物語。堪能させていただきました。
文章の技量は高く、丁寧に書かれていると思うのですが、お話にもう一味なにかが欲しかった。
24. 6 リコーダー ■2008/11/01 23:57:43
すいません、コメントは後で
25. フリーレス リコーダー ■2008/11/03 15:22:41
霧化した吸血鬼を吸い込むと不老不死になる、って設定があった気がするけどまさかまさか。いや、もう噛み付く必要ないってそんな……
霊夢に食べられちゃうシーンのそこはかとないエロさがツボでした。ただ、レミリアのしたかった事が抽象的すぎたせいで、途中までいまいちのめりこめなかった感が。
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