銘水選の祭り

作品集: 最新 投稿日時: 2008/10/05 04:19:16 更新日時: 2008/10/07 19:19:16 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
 夏の日差しは博麗神社の庭に、容赦なく溶け込んでくる。じーっとした湿気の中で、暑さは私の体に染みこんでいった。その熱気の中で、私は家事を終え、いつものようにお茶を入れて、ふぅー、と大きく息をはいた。それは、平和な日常であった。それから、私は外を眺めた。神社の脇を清流が流れている。
 それを見た私は、お茶を持って、そっと清流の脇に座り込んだ。清流が爽やかな風を運んでくる。その爽やかさを口に含んで、それから、お茶を一口飲みこんだ。
 そのとき、突然後ろから何者かの声が聞こえてきた。
 「霊夢はいるかしら?」
 その声はすぐ真後ろから聞こえてきた。すぐ振り向くと、やはりあの妖怪が立っているのを、私は見上げた。
 「神社に来るときは玄関で扉を叩いて、私が扉を開いてから、それから入ってきてもらいたい物だわ、紫?」
 この、自分勝手な場所から飛び出てくる妖怪に、私はいつも、うんざりさせられている。しかし、彼女はそれを意識することなどなく、そのまま話を切り出した。
 「お願いがあるわ。祭りを開催するわ。場所を貸してほしいの。あと、それから出来れば、あなたも参加してほしいの」
 それを聞いた私は、突然、とんでもないことを頼みに来たものだと、思った。
 「どんな祭りかもわからないのに許可出来ないわ」
 私は、それを強い態度で断ろうとした。
 「幻想郷の水を集めて、一番おいしい水を選ぶわ」
 紫は、まるで当たり前のことのように、そう言った。
 「そんなお祭り聞いたことないわ」
 私は、困惑して、そう言い放った。しかし、その紫は気にすることもなく、振り向いて、それから言った。
 「そういうわけで。来週は満月になるから、その日の昼間は空けておいてね。じゃねー。」
 そう言った紫を、私が鋭い眼差しでにらんだ頃には、まるで闇の底に続くかのような黒い隙間を広げて、紫はそこに飛び込んで行った。そして、その隙間が閉じた時には、もうそこには最初から何もなかったかのように、いつもの神社の縁側の風景が見えただけだった。
 逃げた。
 この祭りを、どうも開催しないというわけにはいかないらしい。
 「はぁ……」
 ただ一人神社に残された私は、ただため息をつくしかなかった。


        ●        ○


 「というわけで、霊夢も水を探すのに協力してくれないか?」
 黒い魔法使いは私をそう誘っている。
 「残念だけど、魔理沙には協力できないわ」
 私がそう断わったところ、魔理沙の顔は残念そうにへこんだ。
 「霊夢はどうして協力できないんだ?」
 そう訊ねた魔理沙に、私は答えた。
 「私には博麗神社の水があるから、探さなくてもいいのよ」
 私はそう言って、断ろうとした。わざわざ水を探すことなどしなくても、博麗神社の水は清らかだと私は思っている。それに、紫のわがままに付き合う気もない。
 「そうか。それはよかったな」
 魔理沙は落胆した顔を私に見せて、それから立ち上がって、そう言った。
 「行こうぜ、アリス」
 そう言って、魔理沙は、隣に座っているもう一人の魔法使いを促した。
 「わかったわ」
 そう言ったアリスは、それから先に外へと向かった魔理沙の後を追いかけていった。
 「また今度ね、霊夢」
 部屋を出ようとして、一旦振り向いたアリスはそう言って、神社を去っていった。


        @        σ


 「八雲の式がお見えになっています」
 侍女が館の主へ、そう告げた。
 「そう。彼女、また月がどうのとか、そんな話かしらね、妖夢?」
 主はそう侍女に訊ねた。
 「失礼ながら、それは大分昔の話ではないでしょうか、幽々子様」
 侍女である妖夢は、少しおじけづきながらそう答えた。
 「そう」
 「ところで、彼女とは、お会いになりますか? 玄関に人を待たせてはいけません」
 妖夢がそう訊ねると、幽々子は、愛用の扇を広げてから、答えた。
 「また月の話がどうの言うなら、追い返しなさい、妖夢」
 「わかりました」
 妖夢はそう答えてから、すばやく部屋を後にした。

 今日の夜空には雲一つなく、幾多もの星の中で、月が怪しく光っているのを、藍は見つめていた。
 「お待たせいたしました」
 そう言って、侍女は玄関から顔を出した。言葉の割にはあまり待たされた感覚はない。この館にはいい侍女がいるな、とそう私は思った。
 「今夜の月は綺麗ですね。少し一緒に見物しませんか?」
 私は彼女にそう誘ってみた。
 「帰ってください」
 突然断られた。随分冷たい侍女だった。
 「気分を害したなら失礼いたしました。世間話はほどほどにして本題に移りましょう」
 私には任務がある。変なことで失敗しては紫様に見せる顔がない。
 「月の話なら帰ってください」
 ここでは、月の話は厳禁であるようだ。
 「月の話ではありません。次の満月の夜にお祭りを開くのです」
 私はそう話を切り出した。
 「満月を祝うお祭りですね、わかります。帰ってください。」
 満月と言った私は、少しうかつだったようである。
 「いえ、月ではなく……」
 そう言った私は、幻想郷でもっともおいしい水を選ぶこと、それは満月の日に博麗神社で行われること、審査員は河城にとりであること、などを詳しく話した。そう話したところで侍女が答えた。
 「そうですか。失礼いたしました。ところで、お嬢様にお会いになりますか?」
 「そうですね。ですが、今日はお話だけで大丈夫です。参加か不参加か、また明日にお伺いしますので、それまでに答えを決めていただければ結構です」
 「そうですか。それではお嬢様にお伝えいたします」
 そう言って、侍女は頭を下げた。
 「そうですね、わかりました」
 私はそう言ってから、踵を返した。


        *        *


 「反応は如何かしら、藍?」
 八雲紫は厳しい目線を私に向けて、そう私に訊ねた。
 「とりあえず、上々ではないでしょうか」
 私はそう答えた。すると、それを聞いた紫様の顔が、弛んだのがわかった。
 「下がっていいわ、藍」
 紫様は微笑んでそう言った。今日の紫様は機嫌が良さそうである。私にはそう見えたので、私は訊ねてみることにした。
 「お訊ねさせていただいても、よろしいでしょうか」
 「何を」
 紫様が再び厳しい目線を私に向け始めたのがわかった。それでも私は続けた。
 「なぜ、水を選ぶのでしょうか。私は理解できません」
 私がそう言うと、紫様は少しの間黙り込んで、答えた。
 「式は言うこと聞いていればいいのだわ。理解する必要はない――黙って実行すればいいのだわ。――でもいいわ、教えてあげる」
 紫様はそう言って、重い口を開き始めた。
 「もう少し、豊かな暮らしをしてみたくはないかしら――そう、外の世界の連中に、劣らない程度に」
 紫様の欲望が、口から解き放たれていった。
 「幻想郷の素晴らしい水を売れば、彼らの優れた技術を、私たちは交換に享受することが出来ると思うわ。そう思わないかしら?」
 紫様がそう語る。私は、それに答えることができずに、黙った。
 「そう――やっぱり式にはわからないのかしらね。そうね。式は命令された通りに、動けばいいものね」
 紫様の顔が残念そうに歪んだのを、私は感じた。
 「下がっていいわ、藍」
 「わかりました」
 私はそう言って、そして部屋を後にした。


        ○ ○ ○ ○ ○


 「ねぇ、咲夜。おいしい水ってどんな水?」
 私は館のメイドである咲夜に訊ねてみた。
 「そうですね。飲んでみておいしい水じゃないかしら、パチュリー様」
 「それじゃあわからないと思うのだわ。どこの水でも水なんだから変わらないんじゃないかしら」
 私はそう答えた。
 「でも、山の水はおいしい、そう聞いたことがあります」
 「でも私にはわからないわ」
 私はそう返した。
 「どうすればおいしい水ってわかるのかしら」
 「そうですねえ」
 私がそう訊ねたところ、咲夜は困惑して、二人とも黙ってしまった。仕方ないので、話題を変えてみることにした。
 「今晩の料理は何かしら」
 「今晩はシチリア風あさり入りトマトソースのパスタですわ」
 「おいしそうだわ、咲夜」
 私はそう答えた。するとその瞬間、私は閃いた。
 「そうだわ。ねぇ、咲夜。パスタには水を使うわね?」
 「はい。もちろん水を使いますよ」
 「それだわ。一番おいしいパスタを選べばいいのだわ!」
 私は、喜びのあまり咲夜に飛びついた。
 「パチュリー様。くすぐったいので離していただけると……」
 「咲夜。ありがとう。これから水を調合するわ」
 私はそう言って、実験器具を探しにガレキの山の中に飛びかかったのだった。

 お嬢様を先頭に、長いテーブルに沿った横二列に紅魔館の妖怪たちが座って、料理が来るのを、よだれを垂らしながら待ちわびている。しかし、その紅魔館の食卓の中に、一つだけ空席があった。
 「ねぇ、咲夜ー。パチュリーのやつどうかしたのか?」
 お嬢様が、私にそう訊ねてきた。
 「パチュリー様は実験中で引きこもっておられます」
 私はそう答えた。
 「お腹空かしてないかなあ」
 「後で持って差し上げますわ。お嬢様は心配しなくても大丈夫です」
 「そうか。じゃあ大丈夫だな」
 そうお嬢様が言ったところで、下っ端メイドが料理を運んできた。
 「今日はパスタか」
 「はい。シチリア風あさり入りトマトソースのパスタですわ。自信作です」
 私がそう言ったころには、お嬢様はもうパスタを口に運んでいた。ところで、お嬢様のトマトソースは特別で、トマトの代わりにアレが入っている。
 「ところで、パチュリーは何をしているんだ?」
 お嬢様が私に訊ねた。私はそれに答える。
 「おいしいパスタの研究ですわ、お嬢様」
 私はそう答えると、お嬢様はすぐに笑みを浮かべた。
 「でもパチュリーは、おいしいパスタを食べられないじゃないか」
 お嬢様がそう答える。それに私は答えた。
 「ありがとうございます。お嬢様」


        †        †


 私は目を覚ますと、手を上げて、ふあー、そんな、間抜けなあくびをしていた。ふと窓の外を見やると、光は障子から漏れ出て、部屋を照らしている。耳を澄ませば、外から小鳥のさえずりが聞こえる。そして、私はふと、小鳥の群れが外を飛んでいるのを見たくなって、障子を開けたのだった。外の空気が部屋に飛び込んでくる。それから、私はその空気を大きく吸った。すると、私は朝が来たのを、感じたのだった。小鳥の群れを見ることはできなかったが、それでも、私は朝支度を始めなければならなかった。

 朝ご飯の準備が出来たところで、二人を起こしに行こうとした私に、誰かが話しかけてきた。
 「神様は起こされなくても起きるのよ、早苗」
 「たまたま今日は起きただけでしょ、神奈子」
 すかさず私は返した。その神奈子は聞こえなかったのか、それとも無視したのか、返事もせずに、そのまま居間へと向かっていった。私はそれから、もう一人の方を起こしに向かうのだった。

 三人が揃ったところで、いただきます、と礼をして、私たちはご飯を口にした。そうしているうち、諏訪子がせかしく箸を上下させ初めているのを私は見て、
 「そんなに急いで食べますと、ご飯が口の周りに付きます、諏訪子」
 私は諏訪子にそう言ってみたところ、
 「急いで食べても口には付かないもん」
 そう、いたずらっぽく笑って、結局、諏訪子はそのまま食事を食べ続けた。

 そうやって、私たちが黙って食事を済ましているところ、突然、玄関から扉をたたく音が聞こえたのだった。私は仕方なく思い、立ち上がって、玄関に向かい、そして扉を開いた。
 「どなた様でしょう?」
 「文々。新聞でございます。朝刊をお届けに参りましたー」
 その新聞配達員は、威勢のいい声でそう答えた。彼女が新聞を渡すと、それを私は受け取った。
 「朝刊はもう少し早く来るものだと思います、射命丸さん」
 「これでも早くできるように努力しているんです。幻想郷は広いですから」
 「朝遅くても、せめて食事中に来るのはやめてください」
 「食事中でしたか。すいません。あ、次があるのでこのへんで」
 そう言った射命丸は、あっという間に飛び去って行ってしまった。私は、彼女が地平線の向こうに消え去るのを見届けた後、受け取った朝刊を私は部屋へと持ち帰ったのだった。
 
 「なんだったのかしらね?」
 私が居間へ戻ると、神奈子はそう訊ねた。
 「新聞よ」
 私はそう答えた。それから、手を差し出した神奈子にその新聞を渡した。
 「幻想郷一の水を選ぶ祭り」
 神奈子は新聞を受け取ると、すぐその見出しを単調に読み上げた。
 「何それ?」
 私は聞いたことないわ、そう言わんばかりに答えた。
 「博麗神社でやるのね」
 そう神奈子はつぶやいた。
 「清めの水っていうでしょ? 早苗?」
 神奈子が私にそれを確認するように訊ねる。
 「ええ、そうですね」
 私はそう答えた。
 「人々は日々の穢れを清らかな水で流さなければならないの。これが禊ぎね。ところで、神様を迎えるために、穢れはあってはならないものだから、この神社には身を清めるための手水舎があるわね。でも、あれは外の世界で近代以降に水が汚くなってから作られたものなのね。昔は神社の周りの清流で身を清めていたの。つまり要するに……」
 「神社の水は清らかでないといけないんだね」
 そう諏訪子が付け加えた。
 「そう。でね、神社の水は清らかな方がいいんでしょ? だから――」
 「守矢神社の水は博麗神社より綺麗だ、と言いたいんですね?」
 「さすが早苗。話が早い」
 そう言った神奈子は、感心したというような笑みを浮かべていた。
 「博麗神社の水は綺麗だと、そう宣伝しているのを黙って見てるわけにも行かないだろ?」
 そうして神奈子は胸を張って答えた。


        ●        ○


 私たちが山に入ってから、一時間くらいたっただろうか。二つの瓶を腰につり下げて、ひたすら私たちは進んでいった。最初のうちはしっかりとした道であったこの山道も、もう獣道へと化していた。覆い茂った雑草をかき分けながらひたすら進む。

 「まだつかないのかしら、魔理沙?」
 「ああ、きのこの山はまだ遠いぜ」
 「私たちが探しているのはきのこじゃなくて水よ。水」
 「いいきのこはいい水があるところに生えるんだ。いいきのこがあるところにはいい水があるぜ」
 「そうなのね」
 私は適当に納得して、そう答えることにした。


        @        σ


 「幽々様、お目覚めでしょうか」
 私はそう言って寝室の扉を開けた。
 「うーん」
 どうも幽々様は今、目覚めたようだ。
 「もう天道様も高く上がっております。お目覚めになっては如何でしょうか?」
 私がそう言うと、幽々様はいかにも眠たそうな仕草で、体を起こした。私はいつものように、幽々様の着付けをすばやく行う。
 「幽々様、眠らないでください」
 着付けの間にまた眠ってしまうと少々困る。
 「寝てないわ、妖夢」
 そうは言うものの、目は閉じていたと思う。でもそれを言っては機嫌を損なってしまうと思ったので、私は黙って着付けを続けた。
 着付けが終わると、私は急いで調理場に向かう。食事はもう準備がしてあって、机へ出すだけである。幽々様が食堂に着く前に食事を出そうと私は思って、私は食器を手に取った。
 幽々様は座り込むと、箸を手にとって、食事を始めた。
 「妖夢はもう食事は終わったのかしら」
 幽々様は私に聞いた。
 「はい、先に済ませました」
 私は淡々と答えた。
 「そう」
 幽々様は答えた。
 「ところで」
 私は昨日の祭りの件について伺いたくて話を切り出した。
 「昨日の八雲の件ですが……」
 それから、話の中身を私は幽々様に語ったのだった。そして、私は参加かどうかの意思を幽々様に訊ねた。
 「どうでしょう、幽々子様?」
 それを聞いた幽々様は、答えた。
 「あら、おもしろそうね。ねぇ、妖夢? 探してきてはくれないかしら?」
 「幽々子様がそうおっしゃるなら、探しに参ります」
 私はそう答えた。
 「それでは、探してきてもらおうかしら」
 そして、幽々様はそうおっしゃったのだった。

 それから、私は扉を開けて、外への一歩を踏み出した。私の左右には庭園が広がっている。その庭園の様子を見るため、私は石畳の道に足を進めた。日頃の私の手入れによって庭園は美しく保たれている。
 それから、少し先まで進むと、池がある。池の真ん中には島があって、その島までは、池の中の石の足場を渡れば行くことが出来る。その島には、一輪の水仙が花を咲かせていた。その水仙を少し眺めたのち、私は瓶を持ったことを確認してから、庭園を後にして、下界へ水を探しに飛び出した。


        ○ ○ ○ ○ ○


 一晩部屋に籠もり、魔法で水を合成し続けた結果、私はその中のうち五種類の水がパスタ用として適当と判断して、その五種類の水を持って、私は部屋を飛び出して、咲夜の下へと向かった。
 「どいてー」
 喜びのあまり喘息も忘れて、館のメイド妖精を気にかけることもなく私は走った。
 「はぁはぁ」
 しかし、そんな私が調理場についた頃には、喘息が思い出したかのように私を襲っていた。
 「苦しい」
 そう私はつぶやいた。そういえば咲夜はいつも調理場にいるわけじゃないや、と思ったそのとき、外から誰かが駆けてくる足音が聞こえた。それを聞いた私は振り返って叫んだ。
 「咲夜」
 そして、咲夜が駆け込んできたのだった。
 「パチュリー様、駆けてはいけません。体調を崩されます」
 咲夜は優しく私を抱きかかえた。
 「どうしてここがわかったの?」
 「あんなにメイドがいるのに駆け回ってたらわかります」
 そうやって咲夜と語り合っているうちに喘息も収まってきた。
 「咲夜、水を五種類合成したから、試してほしいの」
 「はい、大丈夫ですから、走らないでください……」
 「わかったわ、咲夜……」
 私はそう言うと、咲夜に抱きついた。


        ●        ○


 私が山に入ってから二時間ほどだろうか、数カ所の湧水から私は水を汲んで、最後のあと一瓶に水を満たしたら、もう帰ろうかと思いながら、まさに目の前にあった滝を私は見上げた。囂々と流れる滝の水はその麓の池にたたき付けられ、その水飛沫の染みこんだ空気を私は大きく吸って、それからその滝に近づき、瓶を手に取り、そして水を汲んで瓶にフタをした。
 水を汲んだ私はふと、後ろを振り返った。そしてそこからは何者かが近づいてくる、獣道をかき分ける音が聞こえた。私は迷わずその獣道に向かって、飛びかかった。

 「いきなり斬りかかって来るのはやめて欲しいぜ」
 白黒装束の魔法使いがそこにいた。
 「みね打ちです」
 私はそう答えた。
 「いつもながら失礼だと思うぜ、妖夢」
 「魔理沙? お知り合い?」
 「ああ」
 もう一人の人間が魔理沙に訊ねている。人形を携えている。妖怪だろうか?
 「ところで、幽霊がこんなところで何してるんだ? また春探しか? 夏の次が冬だと、秋が来なくて困るぜ」
 「秋が来ないと魔理沙は食欲を満たせないわね」
 「失礼だな。魔導書も読むぜ? そういうアリスは冬が好きなのか? 妖怪は冬でも寒くないのか?」
 私が幽霊ではないことを突っ込む隙もないまま、二人の会話が続いている。わずかな隙を突いて私は切り出した。
 「ところであなた方こそ何をしているのでしょう」
 「ああ、水を探しているんだ」
 「あなた方もですか」
 「そういうからには、お前も探しているのか」
 「ええ」
 「そうか。じゃあ、来週で神社でまた会うな。妖夢よりおいしい水探してくるからな」
 魔理沙は遊び心に満ちた眼差しで私に言った。そんな魔理沙から私は目を逸らして、
 「負けませんから」
 そう私は答えた。

 それから、私たちは三人で歩いて、またさきほどの滝へと辿り着いた。
 「魔理沙? ここの水じゃだめ?」
 「ああ。ここじゃ妖夢が持ってるだろ? きのこの山はもっと先なんだ」
 「そうなの。しょうがないわね」
 アリスはあっさりとあきらめている。それから、私たちは滝を見上げて黙り込んでしまった。
 「ところで、アリスさんは冬は好きですか?」
 私は訊ねた。
 「魔法使いになっても、冬は寒いわね。冬はベッドから出たいとは思わないわ」
 「そうですか」
 私はそう答えた。
 「それじゃ、私たちは奥までいくぜ。日が暮れる前にかえって来なきゃいけないからな。妖夢はここでお別れだな」
 魔理沙はそう切り出した。
 「そうですね」
 私が二人についていく理由は何もない。
 「また今度会おうな」
 そう言って魔理沙は歩き始めた。
 「また会いましょう」
 私はアリスにそう言って、空へと飛び立った。


        @        σ


 夏の森を飛び立った私は、冥界へと辿り着いた。上空へ上がっていくほど空気が冷たくなっていくのがわかる。私は腰に下げた瓶がちゃんとあることを確認して、白玉楼の狭い門をくぐった。
 私は扉を開けて、靴を脱いで、幽々子様の待つ館の中へ入った。廊下を歩けば、足音が立つ。私は出来る限り音を立てないように、幽々子様の下へと向かった。
 「ただいま帰りました」
 私は幽々子様にそう告げると、幽々子様の下へ近づいていった。
 「おかえり」
 そう幽々子様は言って、それから、私の持っていた水を見つめた。
 「水を頂こうかしら」
 幽々子様はそう言った。
 「かしこまりました」
 そう言って、私は台所に行き、湯飲みを用意した。
 「如何でしょう?」
 私はそう言って、幽々子様に訊ねた。その幽々子様は少しして、考えて、それから首を横に振った。
 「これではだめね。もっとおいしい水があるはずよ」
 幽々子様はそう文句をつけた。
 「妖夢、探してきなさい」
 そう幽々子様は私に命じた。そう言われた私は答えた。
 「しかし……私はそのおいしい水を存じません。どのように探せばよいのでしょう」
 「わからないなら、ありったけの水を探してこればいいわ」
 幽々子様はそう答えた。それを聞いた私は呆れて、
 「わかりました。探してきましょう」
 そう答えて、すぐに部屋を後にした。
 それから、台所へ向かった私は、朝の残飯を皿に盛って、机の上に置いた。それから、筆を持って、紙に走り書きをして、私はそれを皿の脇に置いた。私はそれから靴を履いて、扉を開け、外に出た。私は一度だけ後ろを振り向いて、それから門をくぐって、水を探しに下界へと降りた。


        ●        ○


 ひたすら獣道を歩いた私たちは、やがて清流へと辿り着いた。それは、ただ水の流れる音に、私たちが吸い込まれていっただけのようにも、私には感じられた。その清流の脇には多くのきのこが群生していた。幻想郷のどこにでもいるような青い鳥が水を飲んでいる。
 「ここがきのこの山かしら」
 「ああ、一度来たことあるぜ。そのきのこの山だ」
 魔理沙は答えた。
 「さっさと水汲んで帰りましょう」
 私はそう言って川へと向かっていった。川に手を伸ばして、両手で水をすくって、私はそれを飲んだ。その水はとても甘い味がした。水なのに。
 「ねぇ、魔理沙? どう思う?」
 私はその水の味を確かめたくて、魔理沙にそう聞いた。
 「水の味か? おいしいぜ」
 魔理沙はそう答えた。私はその答えに満足できなくて、もう一度聞き返した。
 「甘いと思わない?」
 そう言った私に、魔理沙は答えた。
 「ああ、甘い味がすると思うぜ」
 そう聞いた私は安心して、ため息をついた。
 「アリス? 疲れたか?」
 そう魔理沙に聞かれて、
 「いいえ、違うの」
 私はそう答えた。
 「体の調子が悪いのか?」
 魔理沙はそう聞き返したが、私は何もなかったように、
 「なんでもないわ」
 と、そう答えた。
 「そうか」
 私の言葉に、ただ魔理沙はそう答えた。
 「日が暮れる前に、帰りましょう」
 私はそう言って、帰りの道に足を進めた。
 「ああ」
 魔理沙はそう言って、私の後を追いかけて、私の横に顔を出した。それから私たち二人は一緒に、山を降りた。


        *        *


 日も暮れて、仕事をすべて終わらせた私は、お茶を入れて一服していた。外では晴れていた昼間とは変わって、大粒の雨粒がしたたり落ちて、地面を濡らしている。お茶を飲むとは言っても話し相手がいるわけでもなく、暇を持て余していたところ、突然、扉を叩く音が聞こえた。こんな時間にやって来るのは、新聞屋の勧誘か紫くらいで、それはともかく、また仕事が増えたな、と思いながら、私は立ち上がって玄関へと向かった。
 「どなた様でしょう?」
 そう私は扉越しに訊ねた。すると扉の向こうの彼女は答えた。
 「今晩止めていただけないでしょうか」
 そう言った彼女の細々とした声は、とても意外な人物のものであった。私は驚いて、訊ねた。
 「喧嘩でもしたの?」
 私はそう言って、その彼女を部屋へと迎え入れた。

 「ところで、話を聞かせて」
 私はそう話を切り出した。それに彼女は答えた。
 「お嬢様が無茶なことばかり言うのです」
 そう彼女は言った。
 「私にだって限界があります。できないことがあります。それでも、お嬢様は、一番でなければならないと、自分で思っているんです。そのお嬢様に私は何もできなくて――」
 そう、彼女は続けた。
 「じゃあ、妖夢は幽々子に、その、難しいことができれば、帰れるのね」
 私はそう答えた。それからお茶を一口飲んだ。
 「そうもそうですが……」
 他にもあるようだ。妖夢は続けた。
 「やはり、お嬢様にも、私にもできないことがあると、わかってもらいたいんです」
 妖夢はそう告げた。それを聞いた私は、思わず、ため息をもらした。
 「幽々子にそれをわからせれば、解決するのね」
 私はそう妖夢に言った。
 「でも、それは私たちの事ですから、霊夢さんに頼むことでは……」
 そう言う妖夢を遮って、私は言った。
 「そう言わずに、私に任せなさい」
 私は立ち上がって、それから胸を叩いた。私が、問題を解決させてあげる。

 ――でも、今日はおあずけにしようかな。
 「ところで、今日はいい酒があるわ。飲まないかしら、妖夢?」
 私は妖夢に提案した。もっとも、それは強制だったのだけれど。


        ○ ○ ○ ○ ○


 「朝だわ、咲夜」
 そう言ってパチュリー様が私を起こしに来た。いつもお寝坊さんなのに、今日は朝早くから起きてきた。
 「起こされなくても、メイドは早起きですよ」
 私はそう答えた。
 「今日は、試食用のパスタを作るわよ」
 そうパチュリー様が言った。
 「少し待ってくださいね、パチュリー様。まだ仕事がいっぱいあります」
 私はそう言って、パチュリー様には少し待ってもらうことにした。

 それから、数時間くらいして、私は仕事を終わらせてパチュリー様の部屋へと向かった。私が部屋に入ったところ、パチュリー様はベッドの上で二度寝に励んでいた。そのパチュリー様を私は優しく揺すった。
 「時間ですよ。早くパスタを作らないと、レミリアお嬢様がお腹を空かして、館がよだれまみれになってしまいます。早くお目覚めになっては如何でしょうか?」
 そうやって私はパチュリー様を起こした。
 「それはいけないわ」
 パチュリー様はそう言って、眠たげな目をこすって、体を起こした。
 「早くパスタを作りましょう」
 そう言って、パチュリー様は調理場へと向かっていった。それを見終えると、私も調理場へと向かっていった。
 調理場へと着いた私たちは、それからせわしくパスタを作り、その結果、五種類のパスタをレミリアお嬢様を待たせることなく作り終えることができた。
 それから、私たちが食堂へとパスタを持ち込んだところ、レミリアお嬢様はちょこんと席に座って、そして私たちを待っていた。
 「思ったより早かったな」
 そう言ったお嬢様は、フォークを上に高く掲げていた。禍々しい紅いオーラが、その周りに漂っている。
 「お下品ですよ、お嬢様」
 私はそう言って、お嬢様を正した。
 「わかったよ、咲夜」
 お嬢様はそう言って、フォークを机へ下ろした。

 「咲夜のパスタはやっぱりうまいなぁ」
 お嬢様はトマトソースパスタを口にすると、一口飲み込んでからそう言った。ふと横を見ると、それを聞いた私の隣りのパチュリー様が、やや不機嫌そうに、頬をゆがめている。
 「うれしいですけど、ちゃんと食べ比べてくださいね」
 今回の目的は食べ比べなので、そうお嬢様に伝えた。そのお嬢様は、私がそう言った頃には、もう一つのパスタへと手を動かしていた。
 「これもうまいな、咲夜」
 お嬢様がそう言う。
 「ちゃんと一つを選んでくださいね」
 私はお嬢様を促す。
 「わかってるよ」
 お嬢様はぶっきらぼうにそう言って、それから続けた。
 「こっちの方がおいしいな」
 お嬢様はそう言って、もう一つのパスタへと手を動かしていった。

 それから、すべてのパスタを口にしたあと、私たちは話し合って、一つのパスタを絞り込んだ。
 「ところで、水には名前を名前をつけないといけないのでしたね」
 八雲の祭りについて、話をパチュリー様から聞いていた私はそう訊ねた。
 「実は名前はもう決めてあるの」
 そうパチュリー様は答えた。
 「何てつけるの?」
 私はそう聞いた。
 「プリンセスウンディネ」
 それを聞いたお嬢様が答える。
 「それは破壊力のあるタイトルだ」
 「でしょ」
 お嬢様もパチュリー様もお気に召しているようだ。もう少し気の利いた名前もありそうだと私は思ったけれど、二人がそう言う以上、それでよいのだろう、私は思った。
 「では、その水を明日神社に持っていけばいいのですね」
 「そうよ。付き合ってくれてありがとう、咲夜」
 そう答えたパチュリー様に、私なりに答える。
 「いえ、私も楽しかったですから」
 そう私が答えると、私もパチュリー様も、手元の紅茶を持って、それを一口飲んだ。それから私たちは、窓の向こう側を見つめた。

 「ところで」
 そうお嬢様が話しかけた。
 「おいしいパスタを研究してたんじゃないのか?」
 それを聞いた私たちは、それからお嬢様に話の顛末を話したのだった。


        †        †


 「早苗ー。もっと胸張ってー」
 諏訪子の言うことに、私はいつも戸惑ってばかりである。神様と遊ぶのって、よくわからない。私は仕方なく言われた通りに、手を上げて、それから諏訪子の言うとおり胸を張った。
 「こ、こうですか?」
 「そうそう」
 そう言った諏訪子は、じっと横から私を見ている。
 「もう少し腰を後ろに反らせてもいいね〜」
 諏訪子は加えてそう言った。言われた通りに腰を反らせる。
 「これでいいですか?」
 「うんうん」
 諏訪子はうなずいた。しかし私は気になって聞いてみることにした。
 「これにはどういう意味があるでしょう? 諏訪子?」
 それを聞いた諏訪子は、それにこう答えた。
 「人の字」
 神様の考えは、やっぱり私にはよくわからなかった。

 「諏訪子ー、早苗ー。ちょっとこっちに来てくれ」
 遠くから神奈子の声が聞こえる。私と諏訪子は声のした方へと向かった。
 「神奈子、何があったのかしら」
 私は神奈子に訊ねた。
 「これから水の名前を決める」
 この前の新聞記事の話だ。私たちは守矢神社の水が清らかであることを示すために、守矢神社の水を出品することになっている。その名前を決めなければならなかった。
 「何かいい案はないかしら?」
 私は二人にそう訊ねた。神奈子は首をかしげて考えている。それから、諏訪子は答えた。
 「風祝の聖水」
 それを聞いた私は、愕然として聞き返した。
 「どうして私なのです!」
 「なんとなく。神社といえば巫女だよね」
 「神社と言えば神様です! とにかく他の名前を考えてください!」
 私はそう言った。それに諏訪子は答えた。
 「じゃあ、諏訪の聖水でいいよ」
 「その聖水をやめていただきたいんです! 他にないんですか」
 「神聖そうでいいじゃん」
 「神聖そうでも美しさの微塵もありません! もっと清らかそうな名前にすべきです」
 「清らかな水と書いて清水だよ。聖水で何を考えたの、早苗?」
 「後付けで加えないでください! せいすいといったら普通は聖水です。他の名前にすべきです」
 「しょうがないなぁ」
 そう諏訪子が答えると、三人とも黙り込んでしまった。いい名前が見つけられないでいると、神奈子が話しかけた。
 「諏訪の名水でいいじゃないか。諏訪は地域名で、名水とつけばそれらしくなる」
 神奈子が言ったもの以外にいい案もなく、結局それで落ち着く事になった。
 「じゃあ、諏訪の名水でいいのね」
 私がそう聞くと、二人ともうなずいた。
 こうして、水の名前は諏訪の名水で決まったのだった。


        @        σ


 昨夜、巫女の酒飲みに付き合わされた私は、神社の一部屋で目を覚ました。日が昇っていることを感じると、私は布団から出て、それから巫女の姿を探した。私は縁側を歩いて、とりあえず居間へと向かった。居間の扉を開くも、中には誰もいない。それから、霊夢を探して、私が庭へと出ようとしたところ、その霊夢が姿を見せた。
 「起きた? 今朝ご飯用意するから」
 霊夢はそう言って、調理場へと向かっていった。朝ご飯まで世話になってしまった。
 「私も手伝います」
 ただ待っているのも悪いと思って、私は霊夢にそう言ってついて行った。
 「それじゃあ、お願いしようかしら」
 そう言った霊夢に、私は笑顔で返して、彼女の後ろをついて行った。

 「いい包丁さばきだったわ。刃物ならなんでもうまいのね」
 「いや……それほどでもないです」
 私のことを褒めた霊夢に、私はそう答えた。それから、私は朝ご飯といっても、野菜や山菜にお米を加えたごく質素な食事に手を伸ばした。
 「ところで、妖夢は庭の手入れは得意だったわね」
 そう私は訊かれたので、私は霊夢に答えた。
 「はい。毎朝手入れをしています」
 そう言えば毎朝欠かさず様子を見ていた。
 「悪いんだけど、私の庭も少し見てくれないかしら?」
 「はい、いいですよ」
 私はそう答えて、それからお茶を一口飲んだ。今頃幽々子様はどうしているのかなとふと、私は思った。


        *        *


 日が昇って、私が目を覚ましても、私を起こしに来る人は誰もいなかった。自分で起きなければと思って、私は体を起こした。それから、私は、庭園をただ見つめていた。
 寝ぼけた目で水面に映り込んだ水仙を私は見つめた。綺麗な花だけれど、昨日よりも少し、生気を抜かれてしおれてしまったようにも見えた。
 そうやって花を見つめていると、誰もいないはずの後ろから、突然、声が聞こえた。
 「綺麗な花ですね。一緒に鑑賞しませんか?」
 この何者かは、勝手に人の家に入ってきている。彼女がそれを気にすることのない、ある妖怪であることを私は知っていた。
 「八雲の式かしら。人の家に勝手に入るのは失礼だとは思わないかしらね」
 私は愛用の扇を広げて、そう言った。
 「失礼だと存じております。しかし、昨晩から訪れても一向に反応がなかったものですから、入ってみれば、侍女がおりませんね」
 八雲の式はそう言った。
 「侍女の留守はすまないと思っているわ。で、用件は何かしら?」
 私は訊ねた。
 「先日水の件で訪れたことはご存じでいられると思いますが、その参加の可否を訊ねに参りました。どうですかね?」
 そう八雲の式は訊ねた。
 「可ね。妖夢は水を探しに出かけているわ。とびっきりのを用意できるわ」
 私はそう返した。妖夢はいつ帰ってくるのか、それが不安だった。
 「わかりました、楽しみにさせていただきます」
 八雲の式はそう答えた。それから、そう言った式は続けた。
 「ところで、後ろの花、綺麗ですね。何て言う名前の花でしょう?」
 八雲の式にそう訊かれた私は答えた。
 「あれは水仙。水面に映った姿がとても美しい花ね」
 私はそう答えた。
 「あれが水仙ですか。実物は始めてみましたね。学名ナルキッソス。花言葉はうぬぼれ、我欲、自己愛、神秘。ナルキッソスはギリシャ神話の登場人物ですね」
 「随分と詳しいのね。その学名に、何の意味があるのかは知らないけど」
 八雲の式がそう言うと、私は扇を仰いで、こう答えた。ギリシャ神話と言われてもどこの話かは私は知らないが、少なくとも、この式の持っている知識は、理解に苦しいほど広い。
 「それが私の取り柄ですから。式とはそういうものなのです」
 そう言った八雲の式は、そう言ったあと、そのまま続けた。
 「ところで、ナルキッソスは美少年でした。しかし、彼はその高慢な性格により、近寄ってくる幾多もの女性を拒み続けたのです。それはきっと、彼にとっては、たとえその彼女たちでも、高みにいる自分よりは、ずっと低い物に見えたからなんでしょうね」
 そうこの八雲の式は語り始めた。まだ続ける。
 「しかし、その彼に対して、女は妬み、呪いをかけたのです。そして、その呪いを、復讐の女神であるネメシスは聞き入れ、願い通り彼にある呪いをかけたのです。そして彼は、水面に映った自分の姿しか愛せなくなってしまったのです」
 彼女がそう語っているうちに、その顔がだんだんと近づいてきたかのように私には感じられた。その顔を見つめて、まるで狐につままれたかのような感じを覚え始めた私は、ずっと語り続けるこの式を遮って、話を切り出した。
 「何を言いたいのかしら」
 私はそう、この八雲の式に訊いた。
 「出会った人間は大切にしないと周りに誰もいなくなってしまいますよ、とそういう意味じゃないでしょうか」
 「そう言う意味じゃなくて」
 その見当外れの答えに、私は強く返した。それに彼女が答える。
 「この話に特に意味なんてありませんよ。ただ、水仙と言えば、この話が出てきただけです。水仙と聞かれて、この話が出てこなければ、式は式にならないのです。辞書を調べろと言われて調べられなければ、役に立ちませんよね」
 そう、式は語った。彼女はそれだけのために作られたと言わんばかりに。
 「お気に召さなかったようなら、この話は止めにしましょうか。しかし、何か引っかかるようなお話があったのでしょうか?」
 「そんなことはないわ。もう用は済んだのだから、お開きにしましょう」
 私はこの式とはもう話したいとは思えず、ただ冷たく返した。この狐め。
 「それでは帰りましょう。では。例の件、とびっきりの水を期待していますよ」
 そう言って、この式は踵を返して、それから私の視界から消えていった。


        @        σ


 私は食事が終わったあと、霊夢に頼まれたとおりに庭に出て、草花の手入れを始めた。とはいえ、特に霊夢の手入れがいい加減ということもなく、庭はそれほど荒れてはおらず、右手に持った鋏で少し形を整えただけで、することもなくなり、神社の周りの風景を私は眺めていた。
 高く舞い上がった太陽の光を浴びて、植物も私も熱く火照る。私は額にあふれた汗を拭き取ると、後ろを振り向いた。すると、霊夢が声をかけてきた。
 「こっちよ」
 そう私に言った霊夢はどこか遠くの方へ走っていく。私はそのあとを追いかけた。
 高い草木が生い茂る中、その草木の作るトンネルを抜けて、私たちは開けた場所へ出た。そこには一輪の花が咲いている。
 「この花はしおれかけているわ。でも、水をあげてもこのままなのよ」
 霊夢はそう言った。
 「もうだめかもしれないですね、この花」
 私はただ、思ったままをそう言った。
 「そう思うにはまだ早いと思うの。違う水を与えたら、元気になるかもしれない」
 「しかし、どこの水を与えればいいか、わかるんですか?」
 こんな話、少し前にあったなと私は思った。
 「どこかはわからないわ」
 巫女はそう言いきった。しかし、さらに続ける。
 「でも、良薬は口に苦しというくらいから、それは苦いものなんじゃないかしら。そう思わない?」
 霊夢にそう聞かれて私は困惑して答える。
 「それで花が元気になるとは思えません」
 私がそう答えると、霊夢はため息をついて、それから返した。
 「それじゃあ、私が探してくるわ。妖夢は何もしないのね。それじゃあ、花は元気にならないわね」
 霊夢はそう言うと、そのまま大空へと飛び立っていった。

 それから、一人取り残された私は、ただ呆然と空を眺めていた。
 そして、周りから何もかもが消えてしまうような感覚がして、私は耐えきれず、ただ漠然と空へと飛び出した。


        ●        ○


 「絶好の飛行日和ね」
 そう私は言った。
 「ああ。快適だぜ」
 そう魔理沙が答える。
 雲一つない快晴で、風もない。魔理沙の箒も切った風を、その後ろから勢いよくまき散らしている。この分だと、神社まではすぐついてしまうだろう。そう、私たちは神社へ向かっている。
 魔理沙は箒の向き先を下へと変えた。前傾して高度を落としていく。それに私はついて、次第に地面に近づいていく。徐々に重力は強くなってくる。切った風が頬に当たって、まるで自然に溶けていくかのような感覚を、私は感じた。
 地面に近づいた私たちは、速度を落として、着地する。やわらかい地面の感触を感じて、それから私たちは止まった。石畳を踏んで、境内に入る。私たちは賽銭箱を素通りして、玄関の扉を叩いた。
 「おじゃましまーす」
 魔理沙はそう言って、返事を待つこともなく、遠慮することなく中へと踏み入っていった。靴を脱いで、廊下に足を踏み入れると、巫女がやってきた。
 「あら、いらっしゃい」
 突然の訪問に特に驚く様子はなく、霊夢は当たり前のように私たちを招き入れた。
 「お茶沸かすから居間で少し待っててね」
 そう言って霊夢は台所へと向かっていった。それを見た私たちは、居間に入って、それから座り込んだ。
 私たちが座布団に腰掛けて待っていると、少しして霊夢がやってきた。
 「お待たせ」
 そう言った霊夢は、机に緑茶の湯呑茶碗三つを一つずつ並べた。早速魔理沙が一つを取って、お茶を口に含み、それから飲み込んだ。
 「こう暑いっていうのによくもまあこんな熱いお茶飲んでられるぜ」
 魔理沙はお茶に不満を示したが、霊夢はそれに返した。
 「私は熱いお茶が好きなのよ。熱いのが嫌ならさめてから飲めばいいわ」
 そう言った霊夢に、魔理沙が返す。
 「よく言うぜ。霊夢はいつも熱いんだな。熱血巫女。間違っているのは見逃せない」
 「もしかしたら、いつも妖怪に冷酷だから、暖を取りたいのかも」
 「ひどいわね。いつもそんなつもりはないんだけど。あなたたちのこと殴ってもいいかしら。弾幕で」
 「ごめん」
 少し悪ふざけが過ぎたと思った私は、そう謝った。
 「これは焼け石に水だな、おっかねえ」
 「ところで、今日は水があるわね」
 私はそう付け加えた。そして、それが今日の本題でもあった。
 「そうだ。水の名前を決めなければいけないんだ」
 魔理沙はそう切り出した。そして続けた。
 「霊夢に相談して水の名前を決めようかと思って。そうしたら博麗神社公認というわけで」
 「博麗神社の名前はだめよ」
 「ケチだな」
 「仕方ないでしょ。うちのえらい人に聞いてよ」
 「しょうがないな」
 「まあ、名前つけるくらいならつきあってあげてもいいけど、そんなに協力できないわよ」
 「ああ、構わないぜ。霊夢にできることだけでいいんだ。よろしくな」
 「ええ」
 そう霊夢はうなずいた。
 「ところで、どんな名前を付けたいと思ってるの?」
 霊夢はそう続けた。
 「そうだな。恋色は入れたいぜ」
 「却下だわ。そんなもの付けたら博麗神社の名が穢れる」
 「別に名前使う訳じゃないんだからいいだろ」
 「私が関わった以上それはだめよ。気に入らない」
 「しょうがないな」
 魔理沙はそう言った。

 こうやって、名前を相談しても、霊夢に反対されるばかりで、一向に名前は決まらなかった。霊夢に言わせるとこうだ。
 「魔理沙の名付けの感性はどうかしてるわ」
 こう言って霊夢は一向に譲ろうとしなかった。
 「ところで、その水はどんなものかしら? 見たいわ」
 そう霊夢は切り出した。
 「ああ。ここにあるぜ」
 そう言った魔理沙は、瓶を出して、空になった霊夢の湯呑みにその水を注いだ。そして、霊夢はその水を一口飲んだ。
 「この水甘いと思わない?」
 気になった私はそう霊夢に訊ねた。
 「そうかしら。ただの水よ。神社の水とそんなに変わらない」
 そう霊夢は言った。
 「私は違うと思うわ」
 私は悔しくて、そう答えた。
 「幻想郷の水なんだから、みんな似たもんだと思うわ」
 霊夢はそう言った。
 「そうかなぁ」
 私は仕方なくそう答えた。しかし、霊夢に理解されなかったことが私には残念に思えた。
 「アリスには甘く感じられたのね」
 そう霊夢が言うと、魔理沙が答えた。
 「ああ、私もそう思ったぜ」
 霊夢は理解してくれなくても、魔理沙はそう言ってくれた。
 「魔理沙もそう思ったのね」
 霊夢はそう言うと、続けた。
 「なら二人には甘く感じられたのね。大切にしなさい。二人だけのものだから」
 霊夢はそう言った。
 「きっと、名前も二人で決めるのがいいと思うわ」
 そう霊夢は言って、空になった急須にお茶を入れに台所へ向かっていった。私たち二人はきょとんとその霊夢をただ見つめた。

 それから私たちは少しの間話し込んで、気がついたときには、もう空の色が赤色に染まろうかとしている時間になっていた。私も魔理沙も、もう帰る時間だった。霊夢は見送りのために玄関から外に出て、境内の石畳を歩いていた。
 「それじゃな、霊夢」
 「またね、霊夢」
 私と魔理沙はそう言って、霊夢に手を振った。
 「またね」
 そう言って、霊夢は見送ってくれた。私たち二人は空高く飛び上がって、それから黄昏色の空の先へと向かっていった。


        @        σ


 私は結局何もしないでいるのが我慢できずに、見つけた水を出来る限り汲んで、持ち帰った。透き通った青い空も徐々に暗く移ろいで行く。私は明るいうちに神社に向かおうと、少しずつ速度を上げていった。速度が上がるほど、切る風は頬を強くたたき付けていった。それでも、私は急いだ。
 私は神社の境内に辿り着くと、神社の扉を開けた。
 「ただいま帰りました」
 そう言って、中へ入っていった。
 「あら、遅かったわね」
 霊夢は口にしていた湯飲みを机に置いて、そう言った。
 「水汲んできました」
 私はそう言って、霊夢に瓶を渡した。
 「これで、花は元気になるかもしれないですね」
 そして、私はそう続けた。
 「だめよ、もうあの花はよみがえらない」
 突然、霊夢はそう言った。その顔が、とても冷酷なものに見える。
 「じゃあ、どうして私は水を汲んできたのです……」
 私はただ困惑して、そう返した。
 「水を汲んだことに意味はなかったかもしれないわね。でもね、その水を本当に求めてる花が、きっとあるわ。その水は、本当に大切な花のために、大事にとっといて欲しいの」
 そう、霊夢は言った。しかし、その霊夢の言葉は、私には理解できなかった。
 「わかりました」
 私は、そう言って部屋を出ようと踵を返した。私が部屋を出ようとした時、後ろから、霊夢が私に話しかけた。
 「ごめんね」
 そう霊夢が言ったのを聞くと、私は、部屋から出て行った。部屋を出た私は、それから訳がわからなくなって、ただ泣いた。


        ●        ○


 私たちは神社を出てから、私の家で名前を決めることにした。私が家の鍵を開けると、魔理沙は私について家に入った。
 「おじゃまするぜ」
 「どうぞ」
 私は魔理沙にそう言って、居間に通した。
 「汚ねえ」
 部屋に入って魔理沙はそう言った。
 「失礼ね。人形の制作中なのよ。いま片付けるから」
 私は人形たちと裁縫道具、それに本などを机の上に持ち上げて、足の踏み場を確保した。
 「紅茶入れてくるから、待っててね」
 私はそう言って、台所へ向かった。
 「お待たせ」
 そう言って私は紅茶を部屋へと持ってきた。魔理沙はさっき片付けた本を手にとって熱心に読んでいて、私に気づいてない。魔導書だろうか。
 「お茶持ってきたわよ」
 私がそう言うと、魔理沙は気がついた。
 「あ、ああ。ありがと」
 慌ててそう言って、魔導書を机の上に置いた。
 「ところで、水の名前どうする?」
 私は早く水の名前を決めようと、そう切り出した。
 「そうだな」
 魔理沙はそう言って、続けた。
 「恋色は欲しいな」
 やっぱり魔理沙は恋色にこだわっているようだった。私が何を言ってもおそらくそれを入れることになるだろう。
 それから、何も想像が沸かなかった私は、人形を取り出した。上海と名付けた人形だった。
 「その人形は何ていう名前なんだ?」
 そう魔理沙が私に訊ねた。
 「上海よ。上海人形」
 「そうか」
 魔理沙はそう答えた。
 「なぁ、アリス? 二人で一つずつ名前を考えようぜ。私は恋色。アリスはもう一つの何か」
 魔理沙はそう提案した。特に考えもなかったので、私も考えてみることにした。
 「そうね。いい考えね」
 私はとりあえずそう答えて、名前を考え始めた。
 「なぁ、アリス? その人形じゃだめか?」
 すると、そう魔理沙は訊ねた。
 「上海ね。確かに私が付けた名前ね」
 私はそう答えた。確かに悪くない。
 「それを合わせて、水を付ける。恋色上海水」
 「そうね。悪くないわね」
 私はそう答えて、
 「恋色上海水でいいわね」
 そう私は続けた。
 「恋色上海水で決まりだな」
 魔理沙はそう言うと、両手を挙げて、それからあくびをした。それを見ていた私は、ふと一瞬、霊夢のことを思い出して、切り出した。
 「博麗神社公認を忘れてるわ。博麗神社公認恋色上海水」
 「ああ、そうだったな。博麗神社公認恋色上海水」
 私がそんなこと言うと、そう、魔理沙は名前を繰り返して言った。
 「冗談よ。霊夢に怒られるわ」
 「もちろん冗談だ」
 魔理沙がそう言うと、それから私たちは二人で笑った。
 
 それから、私は月を見た。満月にほど近い月がもう天井まで上がっている。夜はもう遅い。
 「もう遅くなったし、泊まっていきなさい」
 私はそう言って、魔理沙を一晩家に泊めることにした。


        *        *


 私は朝、目を覚ますと、外を見た。朝日が部屋に注ぎ込んでくるが、まだ日は高くないのがわかる。耳を澄ましてみると、小鳥のさえずりとは別種の何かの音が聞こえてくる。人の声だろうか。私は恐る恐る障子を開いて、外を見ると、けたましい妖怪たちが列を組んで、何かをしていた。妖怪たちが運んでいるのは、布と鉄骨で、神社の拝殿の前でそれを――組み立てているようだった。妖怪たちは大きな掛け声を上げると、組み立てたそれを持ち上げて、神社の境内に立ち上げた。それを見た私は、様子を見に外へ出た。
 外を出た私に、妖怪が話しかけてきた。
 「おはようございます、霊夢さん」
 そう言った妖怪は紫の手下の藍だった。
 「今日はお祭りですよ」
 藍はそう続けた。
 「今日なのね」
 私はそう答えた。何事でもないと察した私は安堵した。
 「はい。日が一番高く昇った時に、始まります」
 彼女はそう答えた。まだ時間があるようだ。事情を理解した私は、踵を返して、すぐに部屋へと戻った。


        @        σ


 私は、食事を済ましたあと、一つだけやり残したことをやらなければならなかった。私は妖夢の寝ている部屋に忍び込み、ある物を探さなければならなかった。ゆっくりと音を立てないように扉を開けて、部屋の中へ入る。私は妖夢の顔を見た。ぐっすり眠っているようだ。部屋を見渡して妖夢の鞄を探す。部屋の向こう側にある。壁伝いに私は忍び足で、そこへと向かっていった。
 「どうして」
 突然、後ろから妖夢の声がした。私は驚いて声を出さずに振り向いた。そして、妖夢は布団の中で、寝ていた。紛らわしいようなことを言わないで欲しい。たとえ、それが寝言でも。私は再び鞄へと向かっていった。
 私は鞄を手に取ると、音を立てないように鞄の中をあさった。しかし、目的のものはその中に見つからない。私は仕方なく、押入れの扉を、中に何かないかと、音を立てないように開けた。
 そのとき、後ろから声が聞こえた。
 「ううん」
 それを聞いた私は鞄を手にとって、押入れの中へと入った。扉を閉めた。音を立てないように、最後までは閉めない。最後に妖夢が手を上げたところを見て、外はもう見えなくなった。
 「霊夢さんいるの?」
 そう妖夢は言った。私はもちろん答えない。私は押入れの中に何もないことを確認すると、鞄の中をまたあさり始めた。外で、妖夢が布団を出た音が聞こえる。私はまだ鞄の中を探している。聞こえる足音はだんだん遠ざかっていく。扉を少しだけ開く音が聞こえる。そういえば、扉を開けっ放しだった。少し迂闊だったと思いながらも、部屋の外へ向かっていくのを聞いて、私は安堵した。
 私は鞄の中を探すと、目的のものらしき物を見つけた。そう、白玉楼の鍵だ。これがないと中に入れない。鍵を手にとって、私は押入れの中から出た。鞄を元の場所に置くと、そのまま、部屋の窓を開けて、私は外に出た。その窓を元通りに閉めたことを確認して、私は神社を飛び去っていった。

 私は冥界へ辿り着くと、白玉楼を探した。空気は冷えて、肩が肌寒く感じられる。白玉楼の門を見つけて、その中へと入っていく。扉の鍵を開けて、中に踏み込んだ。廊下を歩いて、幽々子を探す。昔のことを思い出しながら、幽々子の間へと向かった。扉を開けて、中に入る。前を見ると、幽々子は、床に倒れ込んでいた。
 「大丈夫?!」
 私はそう声を出して、駆け込んだ。
 「ええ」
 そう言った幽々子は立ち上がらない。
 「何故巫女が、ここにいるの」
 そう幽々子はつぶやいた。
 「何があったの?」
 私はそう訊ねた。
 「何でもないわ」
 そう言った幽々子は振り向いた。
 「手出しは無用」
 そう言って、幽々子は帯を結ぼうとしたが、力が入らない。
 「手伝うわ」
 私はそう言って、帯を手に取った。遮ろうとした幽々子の手を私は振り払った。私は幽々子の帯を結んだ。
 「何があったか知らないけれど、このままじゃだめそうね」
 私はそう言ったが、幽々子は答えない。
 「ちょっとごめんね」
 私はそう言って、幽々子を背負った。私たちは、歩き始めた。
 「何処へ行くの」
 「妖夢のところよ、心配しないで」
 私がそう言った。
 「歩けるわ。降ろして」
 幽々子はそう言ったので、私は幽々子を降ろした。私が歩くと、幽々子はついてきた。私たちは白玉楼を出ると、そのまま下界へと飛び降りていった。


        †        †


 私たちが朝ご飯を食べていると、突然、扉を叩く音が聞こえた。
 「また新聞かしら」
 私はそう言って、立ち上がって玄関へと向かった。それから私は玄関の扉をあけた。
 「号外でーす」
 そう新聞屋の射命丸が言ったので、私は返した。
 「朝ご飯中は来ないで欲しいって言ったはずだけど」
 それを聞いた射命丸も返す。
 「号外は必要な時に来るものです。朝刊とは別物です」
 射命丸はそう言ってその号外を渡すと、すぐさま踵を返して、立ち去ってしまった。私は受けとったそれを居間へと持ち帰った。

 私はその号外を神奈子に渡すと、神奈子はそれを読み上げた。
 「本日、水祭り開催」
 そう、見出しを読んだ。
 「それじゃあ、急がないとだめですね」
 私はそう訊ねた。
 「ああ」
 そう神奈子は返した。

 私たちが博麗神社に辿り着くと、妖怪たちの挨拶を受けた。
 「こんにちは。どなた様にゃ」
 そう私たちは訊かれた。子猫の妖怪だった。
 「守矢神社よ。よろしくね」
 私は、その背の低い猫妖怪にそう告げた。
 「水のお名前聞いてもいいかにゃ」
 「諏訪の名水よ」
 私はそう言って、それから水を手渡した。
 「かしこまりましたにゃ。ごゆっくりどうぞ」
 そう言うと、子猫はどこかへ行ってしまった。

 私たちは子猫が遠くへ行くのを見送ると、それから霊夢の姿を探した。
 物好きな妖怪たちが、祭りと聞いて集まってきたのか、妖怪たちの数が徐々に増えてきたのがわかる。人混みをかき分けて私たちは前へ進んだ。
 「何もみえない」
 そう諏訪子が不満そうにそう言った。
 「仕方がないわ」
 私はそう返した。歩く私たちに諏訪子は黙ってついてくる。人混みを抜けて、私たちは神社の裏側まで歩いた。
 「いないわね」
 私はそう言うと、神社の縁側に座り込んだ。
 「そうね」
 神奈子がそう言うと、私たちは黙りこんでしまった。ただ私たちが座っていると、諏訪子がさけんだ。
 「あれ!」
 諏訪子は上を指さした。紅いリボンを揺らして、霊夢が空から降りてくる。私たちは、その霊夢を追った。
 それから、私たちは霊夢を追って歩いた。霊夢に追いついた私たちは、ちょうど玄関に入ろうとしていた霊夢を呼び止めた。
 「どうしたの? 早苗?」
 振り向いた霊夢はそう言って、驚いた表情を見せた。霊夢の瞳を見つめた私は、そしてずっと準備していた言葉を口にした。
 「私たち、今日は負けませんから」
 私はそう言って、霊夢を指さした。
 それから、それを聞いた霊夢は、額に手を当てて、それからため息を漏らした。


        *        *


 「花火の用意はできたかしら、藍」
 そう、黒いスキマから飛び出しながら、会場の裏側に現れた紫様は私に訊ねた。
 「はい。大丈夫です」
 そう私は答えた。
 「花火の打ち上げとともに、祭りを開始するわ。私が空に弾を撃ったら、空が暗くなるから、そのとき手下に指示を出すのよ」
 そう紫様は言った。あの黒いスキマが、空を覆う。そこへ弾幕の花火を打ち出す。
 「わかりました」
 私はそう答えた。
 「オープニングはド派手にやるわよ。失敗したらただですまないからね」
 そう紫様は言って、踵を返して、神社の様子を見に行った。
 「準備はできたでしょうか」
 私はそう言って、部下に確認した。そして、全員がそれにうなずいたのを私は見た。

 「準備はいいかしら?」
 そう、紫様は、後ろから私に訊ねた。私は振り向いて、
 「すべてできてます。お任せください」
 そう私は言って、紫様を見つめた。
 「よろしい」
 そう紫様が言うと、それから後ろに振り向いて、そして手を真上に上げた。一つの弾が打ち上げられる。発射音が神社中に響く。それは開始の合図だった。
 その弾はそして爆散して、黒い空間を作り出した。その黒い空間はだんだん膨らんで、すぐに空を覆い尽くした。
 「今よ」
 そう紫様が言うと、私は部下に命令した。
 「発射!」
 私がそう言うと、幾多もの光り輝く弾が弾幕を形成して、空へと舞い上がっていく。空に上がった弾幕は、爆散して、そして輝いて、空に花を作った。そして、その光が空から地上へと降り注ぐ。さらなる発射音とともに、どんどん花の数は増えていく。その光は、やがて滝のように、地へと落ちていった。その光を私は見つめていた。

 「これより、幻想郷一の水を選ぶ祭り、銘水選の祭りを開催いたします」
 後ろで、そう、司会の天狗が話し始めた。
 「司会の射命丸文です。よろしくお願いします」
 そう天狗は自己紹介をした。
 「本日は審査員として、河童の河城にとりと、主催者である八雲紫氏をお招きしております」
 天狗がそう言うと、河童と、紫様は横から出てきて、そして椅子へ座った。
 「早速一番目の水をご紹介いたしましょう。参加番号一番、パチュリー・ノーレッジさん。水の名前はプリンセスウンディネ!」
 そう天狗が言うと、横から橙が水を持ってきた。
 紫様と河童が水を湯飲みに入れて、そして一口飲んだ。
 場が沈黙する。
 そして、紫様と河童は同時に立ち上がった。
 それを見た、場の沈黙はさらに深まった。観客たちが固唾をのんで見守っていると、突然二人は神社の方へと走り込んでいった。
 それを見た観衆は呆然として、そして誰もいなくなった審査員席を見つめた。
 それから、私もやはり呆然と目の前の光景を眺め、そして走っていく紫様の姿を、私はただ見つめた。


        ●        ○


 「なぁ、霊夢。聞いてくれよ。空を飛んでたら、いきなり空が暗くなったんだ。それから、猛烈な弾幕攻撃を受けたぜ。信じられるか? 酷いと思わないか?」
 「それは私たちが遅刻したから悪いのよ」
 愚痴る魔理沙に私はそう付け加えた。
 私たちは、家を大分遅れて出て、神社へと急いで向かったが、結局間に合わず、たまたま空を飛んでいた私たちに向かって、地上から飛んできた弾幕花火が私たちを直撃したのだった。
 それから、私たちが着陸したところ、祭りが終わっていたので、仕方なく私たちは神社にお邪魔して、こうやって霊夢のお茶を頂いている。
 「おまけに全部躱して神社に着いたら祭りは終わってるしな。やってられないぜ」
 そう言った魔理沙は、そのまま霊夢に愚痴を言い続けた。
 「で、どうして祭りは中止になったんだ? なぁ霊夢?」
 魔理沙はそう言って、霊夢に祭りが中止になった理由を尋ねた。
 「罰が当たったのよ」
 そう霊夢は嘆くように返した。
 「どうせ紫のことだから、選んだおいしい水を外の世界で売ろうかとか考えてたんじゃないかしら。水はそんな簡単に売っちゃいけないのよ」
 そのまま霊夢はそう続けた。
 「売っちゃいけないんだ」
 そう魔理沙が訊くと、霊夢が答えた。
 「そうよ。例えば、二人の今持ってる水は、甘い水よね」
 私はそれに頷いた。
 「二人には甘いけど、私にはただの水。この水は、あなたたち二人のものなの。つまりね、この水は、二人の気持ちなのよ」
 そう霊夢は私たちに言った。それから、なんとなく気恥ずかしくなって、私は魔理沙の顔を見た。その魔理沙も私に振り向いて、私を見つめた。
 「わかったかしら」
 そう霊夢は言って、立ち上がった。
 「外が騒がしいから、ちょっと見てくるわ」
 そして、霊夢はそう言って、部屋の外へと出て行った。


        @        σ


 外で盛大に祭りが開かれている中でも、私は退屈で、箒を持って神社の掃除を始めた。何日間かお世話になったし、それくらいのことはしたいと思ったからだ。私は、神社の裏側を掃き終わると、それから縁側の方へと足を進めた。私が神社の隅で振り向いて、前を見たところ、誰かが座っているのが見えた。その姿を確認しようと前へ近づいていくと、その人影が誰であるかを悟って、私は彼女の元へと走った。
 「どうして、幽々子様がここにおられるのですか……?」
 その人影が幽々子様であることを確認した私は、そう訊ねた。
 「あの……私が留守にしていた間、お食事はどうなさいましたか? お着替えは一人で出来たでしょうか……?」
 私は続けてそう訊ねた。
 「それくらい大丈夫よ」
 それに、そう幽々子様は冷たく答えた。
 「もしお腹を空かせているのなら、今すぐにご飯の用意をします」
 私がそう幽々子様に言って、私が台所に行こうとすると、呼び止められた。
 「待って」
 そう幽々子様が言って、続けた。
 「ねぇ、妖夢? 私のことがそんなに心配なら帰ってくればいいのに。妖夢はどうして帰ってこなかったのかしら?」
 そう幽々子様が言うと、私は言葉に詰まった。そして私たちは黙り込んだ。
 「もし水を探しに行ったのなら、毎日帰ってくるわよね」
 そう幽々子様は言って、庭をただ見つめた。その幽々子様に、私は何も話すことができなかった。
 「私のことがそんなに嫌なら、構わなくてもいいわよ」
 幽々子様はそう加えた。私はそれに答えた。
 「違います」
 「でも、あなたは帰ってこなかった。帰りたくなかったからよ」
 それを言われた私はまた言葉に詰まった。場が静まりかえる。

 「ねぇ。あなたたちもう少し言いたいこと話しなさいよ」
 そう言って、後ろから誰かがやってきた。霊夢だ。霊夢が部屋から出てきた。
 「妖夢が言いづらいのはわかるわ。幽々子はもっと優しく接してあげればいい。妖夢は帰りたい。幽々子は帰ってきて欲しい。だからここにいる」
 「でも妖夢は帰ってこなかったわ」
 「違うわ。妖夢は帰れなかったのよ。あなたの命令を、守れなくて、妖夢は白玉楼にはいられなくなった」
 そう霊夢は言った。そして続ける。
 「だいたいあなたが滅茶苦茶な要求するから……」
 「もういいです。霊夢さん」
 私は、そう諫める霊夢を遮った。
 「私は幽々子様を満足させられませんでした。私が幽々子様を満足させられない限り、白玉楼へは帰れません」
 私はそう言った。
 「ねぇ、妖夢。本当は帰りたいんでしょう? そんなこと言わないで」
 そう霊夢は私にいった。しかし、そこで幽々子様が切り出した。
 「わかったわ。水はもういいわ」
 幽々子様はそう言って、私のことを見つめた。
 「妖夢。もう帰りましょう」
 そう幽々子様が言った。すると、突然、霊夢が切り出した。
 「ねぇ、妖夢? 昔のことを、流す水を、あなたは持っているわ」
 霊夢はそう言った。私は腰に下げた小瓶を見つめた。
 「あなたが昨日探した水よ」
 そう霊夢に言われて、私は小瓶を手に取った。
 「妖夢? その水は私にちょうだい」
 そう幽々子様が言ったので、私は幽々子様にその小瓶を渡すと、幽々子様は、その水を飲み干した。
 「苦いわ」
 そう幽々子様は答えた。
 そして、私はそれに答えた。
 「花には誰かが、水を運ばなければ、枯れてしまいます」
 私がそう言うと、霊夢は自分の部屋へと帰っていった。
 それから、私は、幽々子様に思いっきり飛びついて、涙を流した。その私を、幽々子様は困惑しながらも、精一杯の力で、受け止めた。


        *        *


 それから、収拾のつかなくなった祭りを私は中止して、お腹を壊した紫様を私は連れて帰った。その帰り道のスキマの中は、普段に増して暗かったと、私は思った。
 「夢の生活が台無しだわ。覚えてなさいよ」
 そう紫様が恨み節を漏らし続けるのを、ただ私は聞いていた。紫様は、まったく水を得ることが出来なかった。
 少し思い起こせば、私には、紫様が命令した以上のことは、なにもできなかったような気がする。それに私は、紫様のために、必要な水を探すことは、まったくしなかった。結局のところ、私と紫様の関係は、そんなものでしかないのかもしれない。
 「計画が台無しだわ。いろんな所との契約が守れないわ。どうしましょう!」
 そう紫様は慌てふためいて、そわそわ走り回っている。
 私には、そんな紫様の代わりを務めることはできなかった。ただ、それでも、せめてできることなら、私はなんとなく、外の世界にある、尻ぬぐいを水でやってくれる機械を、紫様にプレゼントしたいと、そう思ったのだった。


        @        σ


 それから、私たちは、その日のうちに白玉楼へと帰った。私はお世話になった神社を見つめて、霊夢に手を振った。
 白玉楼に帰った私は、まず庭園を見つめた。数日間放置されていた白玉楼の庭は、その庭の主が消沈している間にも、すっかり荒れ果てているように見えた。私はその庭の様子を見るために、荒れた庭へと入っていった。
 庭に入った私が、あちこちを観察しているうちに、池の中の島が目についた。そこで、あれだけ美しく咲き誇っていた水仙が、切り取られているのを私は見つけた。近づいてみると、茎が無理矢理捻られ、そのままちぎれたような、ぎこちない跡をその花は見せていた。
 「幽々様ー。妙なことにあの水仙が切り取られていますね」
 私はそう、幽々子様に聞こえるように大きな声でそう言った。
 「ええ、そのようね」
 そう幽々子様は言った。その声色に、花を憐れむ色はまったくなかった。
 「全然なんとも思ってませんが、この花結構綺麗でしたよね? 残念じゃないんですか?」
 「花はいつか枯れるものよ。いつまでも綺麗ではいられないし、こうなったら記憶の中ではいつまでも綺麗なままよ」
 「それはそうでも、誰がこんなことしたんでしょうね? この花結構毒強いんですよ。触ったら痛いですし」
 「知らないわよ」
 幽々子様は、花のことはどうでもいいかのように、そう答えた。
 「お腹空かしたからと言っても、食べないでくださいね」
 私がそう諫めると、それを聞いた幽々子様の顔は、ゆっくりと微笑んでいった。


        †        †


 突然の祭りの中止に神奈子は満足できずに、祭りの終わった後も、守矢神社と博麗神社のどちらが清らかかを、道会う妖怪たちにずっと聞き続けていた。しかし、どの妖怪に水の味を訊いたところで、「どっちもうまい」としか返事は返って来ずに、そのことに神奈子はいらだちを隠せない様子で、もう誰もいなくなった博麗神社の境内を、私たちは歩いていた。
 「帰りますか?」
 そう私が神奈子に訊いてみても、「納得できない」と神奈子は言って、どうしようもなく、私たちは博麗神社の境内を歩き続けていた。
 「こうなったら直接博麗神社に乗り込むわ」
 神奈子はそう言うと、そのまま神奈子は博麗神社の扉を叩いた。

 「それにしても暑いな」
 魔理沙はうなだれるように、そう言った。真夏の太陽は高く昇った後も、地面を照らし続け、神社の一部屋の熱気は、増していくばかりだった。その魔理沙は外を見つめていた。その先には、博麗神社の脇の、滝と池があった。
 「暑いし、一泳ぎでもしてこようぜ」
 魔理沙はそう言うと、アリスの手を引っ張って、「霊夢も後で来いよ」と言って、アリスを引きずりながら、部屋を出て行った。

 神奈子が扉を叩いて、私たちが中に入ろうとしたところ、扉が開いて、そこから出てきたのは、私が過去に出会ったことのあった、魔法使いの魔理沙だった。
 「お前達も来てたのか。これから一泳ぎしてくるから、一緒にこないか?」
 「これから一仕事あるの。それどころじゃないわ」
 神奈子はそう魔理沙の誘いを断った。
 「そうか。しょうがないな」
 魔理沙はそう言うと、もう一人の妖怪の手を引っ張りながら、歩いていった。
 「入るわよ」
 そう神奈子は言うと、そのまま部屋へと入っていった。私と諏訪子は、その神奈子について、中へと入った。
 私たちが部屋に入ろうとすると、霊夢がやってきた。
 「あら、早苗と神様じゃないの。どうしたの?」
 そう霊夢が訊くと、早速神奈子は本題を切り出した。
 「水の話よ。守矢神社の水の方がおいしいわ」
 神奈子がそう言うと、霊夢は額に手を当てて、ため息をついた。
 「あなたにはあきれるわ。私はそこで一泳ぎしてくるから、好きに飲み比べてていいわよ。じゃあね」
 霊夢は、外を指してそう言うと、私たちを素通りして、神社を出て行こうとした。
 「逃げるのか」
 神奈子がそう霊夢に言うと、霊夢は答えた。
 「ばかばかしいわ」
 霊夢はそう言って、立ち止まることなく、神社を出て行った。
 「追いかけるわよ」
 そう神奈子が言うと、私たちは、霊夢の後を追いかけていった。

 それから、私たちは、博麗神社の溜め池に辿り着いた。そこでは、多くの妖怪たちが、涼を得ようと水浴びにふけっている。その中へ、霊夢は飛び込んでいった。
 「霊夢、真面目に答えてくれ」
 神奈子は強い口調で霊夢に迫った。しかし、霊夢は答えようとはしなかった。
 そんな神奈子とは別に、私はこの池の水に手を伸ばした。両手を合わせて、水をすくって、一口飲んだ――すると、博麗神社の水は、私の体の中に、無理なく入り込んでいった。
 「ねぇ、早苗? どっちがおいしい?」
 霊夢はその私を見て、そう訊いてきた。しかし、私の口からは答えが出なかった。
 「どうかしら?」
 そう霊夢は私に訊き返した。
 「博麗神社の水はおいしいです」
 私は、思った通りにそう答えた。
 「早苗。本当なのか?」
 そう神奈子は私に訊いた。
 「悔しいけど、私たちの負けだわ、神奈子」
 私は神奈子にそう言った。
 「そうか。早苗がそう言うなら、そうなんだな」
 そう神奈子は、私から目を逸らして、下を向きながら返した。
 「これで、解決したかしら」
 そう、霊夢は私たちに向かって言った。
 「でも、悔しいわ」
 私はそう霊夢に返した。
 「どうしてなの」
 私はそう、誰にも訊く気もなく、言った。
 「きっと日頃の行いがいいからだわ」
 霊夢は何気なくそう答えた。
 「よく言うぜ」
 たまたまそばにいた魔理沙が、そう答えた。二人はそれから笑った。
 「ところで、早苗も泳ぐ気ない?」
 突然、そう霊夢は私に訊ねてきた。
 「泳ぎたいのは、山々なんですけど、恥ずかしいですし……」
 「別に恥ずかしがる必要はないわ。見られちゃ悪いようなのはいないわ」
 私の言葉に、霊夢はそう堂々と答えた。そう言われると、私の気持ちは揺らいだ。
 「早く来なさいよ」
 そう霊夢が私に誘いの言葉を投げかける。それに応えるように、私は前を向いた。
 そして、私は、博麗神社の水へと、飛び込んでいった。
 どうもこんにちは。
 まず、このお話をここまで読んでくださりましてありがとうございます。
 今回のテーマは水と言うことで、このようなお話になりましたが、書いてる自分でも、随分奇妙な話になってしまったのではないかと、ちょっと心配しています。次はもう少し普通にエンターテイメントなものを作りたいですね。
 ところで、今回、章と章の間に何かが挟んでありますが、これは誰の物語なのかを喚起させるような文字列になってます。フォントによってはうまく想像できないかもしれません。そうだったらごめんなさい。(フォントはMSゴシックを想定しています)
 それでは、まだまだ他の作品もあると思いますし、この辺で終りにしましょう。これからも、服を着たまま水に飛び込んだのかどうかは気にすることなく、ゆっくりと幻想郷ライフをお楽しみください。
あずまや
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/10/05 04:19:16
更新日時:
2008/10/07 19:19:16
評価:
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Rate:
5.00
1. 6 慶賀 ■2008/10/05 13:31:30
テーマは水でいろいろって感じでしょうか。動いてるんだけれど
動かない文章といいますか……。なんか変な感想ですね。
いや雰囲気はあっさりした部分が濃いみたいな。
2. -3 小山田 ■2008/10/07 01:48:06
「そう」「それから」「そして」「それ」
 同一の言葉の多用が目立ちました。特に「そう」ですね。話下手な人から一方的に話しかけられているような感覚です。
 文章は文の連なり。前後の文を意識してつなげていけば、「そう」に頼ることなく物語を書くことができるのではと思いました。

 地の文の語彙の少なさの改善も含めて、次に期待というところでこの点数を入れさせてもらいます。
3. 5 佐藤 厚志 ■2008/10/11 02:03:57
原作に近い霊夢や魔理沙の掛け合いは、読んでいて気持ちのいいものでした。
またこんな作品待っています。
4. 4 yuz ■2008/10/14 18:21:55
独特な読後感が素敵
5. 4 神鋼 ■2008/10/14 19:17:15
どうにも妖夢や他、何人かの行動に違和感を拭い切れませんでした。
6. フリーレス deso ■2008/10/23 23:02:55
地の文が説明的というか平板というかまとまりがないというか、ちょっと読みにくいです。
また、一部、三人称と一人称が混じっています。
というか、複数視点からの一人称でやる意味がちょっとわかりません。
あまりにも短いスパンで視点が切り替わるため、誰のことなのか混乱してしまいます。
全部三人称でまとめた方がいいのではないかと思います。
他にもいろいろ気になる点はありますが、全部読むことができなかったのでフリーレスとさせていただきます。
7. 3 詩所 ■2008/10/26 20:33:20
文体が単調でしかも一人称が次から次へと変わってしまい読みにくいものになっていると感じました。
淡々と起こった事を機械的に説明しているように感じ、文章から良さが伝わりにくかったです。
そのため長さも”長ったるい”と感じ、逆に仇となってしまっていると思います。
8. 3 ミスターブシドー ■2008/10/27 00:43:00
事の発端である紫の動機がわからん。中途半端に説明しているから却って「?」となる。
人数が多い話の常として初動が重いというのがあるが、この話も類に漏れず会が始まるまでに大半を費やしている。まあそういう準備が面白い話もまた過去数限りなくあるので、その件に関してはたいした問題ではない。
全体を書こうとしている事は認めるが、かえって散漫な印象を受ける。
過程を追うのは一組だけで、あとは会の最中にでも少しずつ拾えばよかったのではなかろうか。
すべての組を等量書くことに囚われているのか、話の焦点がぶれている感じがある。

場所が悪いのは運命としか言いようが無いが、やはり普通のSSといった感じは否めずどうにも話のテンポの悪さにストレスを感じる。
9. 3 眼帯つけた兎さん ■2008/10/30 06:46:14
早苗さん、神を呼び捨て下克上を叩きつける。
とまあ冗句は置いておいて、全体として見せ場の盛り上がりが薄めに感じました。
淡白な文は読み進めるには易いのですが盛り上がりでは感動に欠けますね。あと何となく読点多め。
10. 4 PNS ■2008/10/30 09:52:33
ちょっと地の文のテンポが悪くなっています。ほとんどの会話の前後に、いちいち「私は」「言った」「答えた」、あるいは他の行動の文を入れられているためにと読みにくいです。
ストーリーについても、事件の中心である紫の行動動機やオチがギャグ的なものであるはずなのに、地の文があまりにも淡々としていてキャラの言動も水っぽく、困惑してしまいました。
11. 1 つくし ■2008/10/30 18:33:50
 なんというか、事象をそのまま並べただけ、という感じがします。視点がバラけることで話が散漫になっていますし、これだけの長さを読ませるに耐える文章ではありません。何より気になるのは、キャラがしゃべってストーリーが展開するというよりはストーリー展開のためにキャラがしゃべらされている感がずっと漂っていることです。
12. 2 じらふ ■2008/10/31 21:41:00
場面展開のキャラを表す印は面白いアイデアだったですね。
ただ文章が「私(○○)は〜した」と言う表現が主体で、会話からも心情を窺い知れる部分が少なかったので、登場人物の感情の動きが良く分からない&文章全体のテンポを崩していた気がします。その辺りもう少し違う表現を使うなり何なりして頂けていたら…と思いました。

うーん…上記した感情の動きが(推測や妄想は出来るのですが)分からなかったのと、展開が急且つその理由が(これまた推測や妄想でしか)理解しずらかった印象があって(ex.紫が何故お腹を壊したか/早苗さんが何故博麗の水の方が美味しいと言ったのか等)ちょっと辛めにしか評価が出来なかったです。
13. -1 今回は感想のみ ■2008/10/31 22:51:19
どうすれば、ここまで読みづらく書けるのか。
語彙の乏しさといい、場面転換の記号に頼る怠慢といい、「そうそれそして」の多用といい……
小学生の作文じゃないんだから、もうちょっと意識を高くして創作活動していきましょう?
14. フリーレス 三文字 ■2008/11/01 06:27:39
視点が変わりすぎて、正直読みにくかったです。
章の間に記号を挟むより、きちんと文章で人の区別をしたほうがよろしいかと。
あと、早苗さんの神様二柱に対する呼び方が気になりました。
地霊殿はまだやっていないので、きちんとした呼び方はわかりませんが、少なくとも「様」付けであることには間違いないのではないかと思います。
流石に呼び捨ては違和感が強すぎて……
なんとなく、全体的に書き慣れていない印象を受けました。
次回作に期待しております。
点数は付け辛いので、フリーレスでご勘弁を。
15. 5 リコーダー ■2008/11/01 09:21:55
かなり書き慣れていない感じのなか、「幻想郷中でわいわいがやがや」というコンセプトを実現させたのは割と偉業だと思います。お疲れ様でした。
紫の悪企みの部分だけ致命的に浮いてたというか、紫のキャラ付けとやってる事と、それの地の文での書かれ方が全て乖離していた感じです。
そもそも目的が壮大なんだか陳腐なんだか、粋なんだか無粋なんだか。
幽々子と妖夢の話をはじめ、個々のエピソードとして見れば仲々のものだったと思います。
16. 3 藤ゅ村 ■2008/11/01 18:22:04
 不思議な雰囲気だなあ。どういえばいいのかわかりませんが。
 早苗が神様たちを呼び捨てするのが斬新すぎた。
 総じて、いろんな話を書こうとしすぎていて、結局そのどれもが中途半端になってしまったような。唯一、幽々子と妖夢の話はある程度まとまっていましたが、それ以外は尻切れトンボ。
 ところどころ光る表現があって、そのへんはちょっと惹かれるものがありました。
17. 2 八重結界 ■2008/11/01 18:42:04
あまりに淡々としすぎて、ただあらすじを読んでいるような気になりました。
文章も違和感がありましたし。
18. 1 木村圭 ■2008/11/01 21:56:25
一人称視点で頻繁に場面転換されると読み辛くて仕方ないです。記号も最初から気付ける訳でもないし。
それはともかく、語り部が淡々としすぎているせいで文章に面白みが感じられませんでした。
まるでぼそぼそと読み上げられる研究レポートのようで、遅々として進まないストーリーも面白みの無さに拍車をかけています。
プリンセスウンディネで何故腹を壊したのかよく分からないし(名前以外は普通の水なのでは)、終わり方も無理矢理感が強いし。
ウォシュレットは上手いと思いました。藍の扱いが良くないのもかえって新鮮に感じられて良かったです。
19. 5 つくね ■2008/11/01 22:02:11
少し話の展開が短調かなー? と思いました。
20. 5 blankii ■2008/11/01 22:35:33
つH円
『風祝の聖水』をくださいな。

作者様の言うとおりに、ゆったりとした不思議な雰囲気を醸し出していました。一番メイン(?)の冥界組も、そんな空気の中だからこそ問題の解決を見たような気がします。
一人称が頻繁に交代するため(配慮の上でも少し)主格を見失いがちだったのが少し残念かな、と。
21. 1 時計屋 ■2008/11/01 23:47:56
「〜と言った」「〜と思った」等、律儀に会話の後につけていては読んでいてテンポが良くありませんし、余計な情報です。
誰の言動か明らかにわかるようであれば、書かないほうが良いでしょう。
また、情景描写があまりにも淡白です。ただ言動だけが平坦に書き連ねられた長文では面白味が欠けるように思えました。
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