手向けの花

作品集: 最新 投稿日時: 2008/10/05 04:36:55 更新日時: 2008/11/11 22:06:13 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00



 声が聞こえる。
 さして珍しいわけではないが、些か季節からはずれている。
 流れに乗れなかった奴がいるようだ。
 そういった奴の面倒を見るのもリーダーである自分の役目だ。
「どれ、顔くらいは見ておいてやろうか」







 朝。
 私はいつもと変わらぬ頃合に目が覚めた。

 今代の幻想郷縁起を書き終え、発表も済ませた今となっては特にする事もない身なのだが、日々の習慣というものは簡単に抜けるものではないらしい。
 昨日もこのくらいに目を覚まし、そして至福の二度寝を楽しんだのだ。
 蚊帳の天井をなんとなく見る。
 ちりん、と風鈴が鳴った。
 布団の中でもぞもぞとまどろんでいたが、喉の渇きが気になった。
 枕元の水差しの存在を思い出す。
 身を起こすと夏物の薄い布団と一緒に、寝巻きの肩がするりと落ちた。
 私がなで肩のせいもあるが、寝巻きが引っかかる場所が無いのがさびしい。
「……はしたない、と言うよりは我ながら情けない格好だわ」
 視線を下げると、己の生育に慎ましさに朝から溜息が出た。
 ネグリジェとやらにしようかしら、などとどうでも良い事を考えつつ、ぼんやりと寝巻きの合わせを直す。
 寝ている間に緩んだらしい帯を締め直すと、あまり寝汗をかいていないことに気が付いた。
 夜が涼しくなってきた証拠か。
「もうそろそろ秋、か……」
 水差しに手を伸ばし直接口をつけて呷る。
 無作法が心地よかった。
 体の芯が少し冷やされ、眠気が薄れていく。

 蚊帳を抜け出すと、蚊取り線香の灰が片付けられている事に気付いた。
 普段ならこれのついでに起こされるのだが、大役を果たした後ならば、少しくらいの寝坊や二度寝は大目に見てくれるらしい。
 朝靄に霞む庭をぼうっと眺めていると、漂っていた視線に何かが引っ掛かった。
 地面の上に蝉が落ちている。
 そういえば昨日の夜に鳴いていたか。
 季節も終わりだというのに頑張っているやつも居るものだと思っていたが、どうやら最後の頑張りだったらしい。
 やはり秋は近いのだと実感する。
 ……何となく気になった。

 蝉は土の上、木からは少し離れた所に落ちていた。
 飛んでいる間に力尽きたのか、木から落ちて風に運ばれたのか。
 裾が汚れるのも構わずにしゃがみ込む。
 緑と黒の縞模様の身体。透き通った羽。
 じいじいと鳴く茶色い奴ではなく、みんみんとうるさい方だ。
 元気なうちはあれだけ五月蝿いのに、こうして地面に落ちている姿はとても静かだった。
 仰向けで、足を開いたまま転がっている。
「足は六本、羽は四枚」
 記憶にある虫の特徴を思い出す。
 土の中で一生の大半を過ごす蝉は、昆虫の中では長寿の部類に入る。
 永らえた生き物は妖と化す事もあるが、この蝉にその機会はなかったらしい。
「蝉の妖怪の記事を書いた覚えはないし」
 思えばこうして蝉の腹側を観察した事など無かったかもしれない。
 一度見た物は忘れない能力を持っていても、用事がなければ簡単には思い出せないものだ。
「まして、転生をしたら殆どは薄れててしまうし……」
 呟きながらも蝉を観察する。
 頭の所から針のような細い器官が見える。
 確か、これが口だ。
 蝉は他者を捕食する事はない。幼虫の時から木の養分を吸って成長している。
 木に寄生しているも同然の幼虫期ではあるが、人の子とて親の庇護が必要で、どんな生き物も未熟な内は守られているのだ。
 意外と蝉について知っている自分に若干驚きつつも蝉を眺める。
 蝉は動かない。
 もう死んでいるのだろうか。
 埋めてやれば木の養分にでもなるかと思ったが、蟻に任せる方が自然かもと思い直す。
 不意に、風が凪いだ。
「おや」
 死んだものと思っていた蝉の足が、震えるように動いた。
 風で動いたのかとも思ったが、風が止んでも微かに動いている。
 まだ生きている。
 その事に興味を惹かれ、好奇心のままに震える足に指を伸ばす。
 指先で開いたままの足に触れると、蝉は私の指にしがみついてきた。
 幼い時分、蝉を捕まえるのに難儀した記憶が蘇り、今、指先に留まっている姿に得も言わぬ感動が、
「あ」
 ちくりと、弱い痛みを感じた。
 そのまま持ち上げて真正面から見れば、蝉がその口を突き立てていた。
 私の指を木の幹と勘違いしているのだろうか。
「お前は人の血を吸うような生き物ではないだろうに」
 蚊なら或いは、いやいや、こんな大きさの蚊など願い下げだ。
 指先に感じる爪と口の感触に蝉の必死さを感じ、起き抜けの喉の渇きが思い出された。
 本能なのだろうか、口吻を私の指に当てている。
 残された生にしがみつくようなその姿を、私はただ黙って見つめる。
「――」
 私は指先を見つめたまま、静かに立ち上がった。
 蝉を指に、そのまま庭を横切れば、背の低い木の元たどり着く。
 確か梅の木。梅酒が出来るのはもう少し先だろうか。
「たとえあと少しだけでも」
 幹に指を添える。
 飛ぶ力など残っていないのか、蝉は指に留まったままだった。
「さあ、いきなさい」
 そっと背を押してやると、蝉はそれでも飛ぶ事をせず、押されるままに樹皮へ乗り移った。
 私に出来る事はこの程度だ。
 自己満足にもならない感情を胸に、私は木に背を向けそこから立ち去った。

 鳴き声は聴こえなかった。







 数時間後、私は荷物片手に野道を歩いていた。
 暇であるはずの私が二度寝をしなかったのには理由がある。
 今日は厄払いをお願いしている神様に、縁起の完成報告を兼ねた御礼に行く予定があったのだ。
 予約を入れているわけではないが、晴れている日の方がいいのは言うまでも無い。
 龍神様の天気予報によれば一日晴れとの事なので、早起きついでに出かけることにしたのだ。
 しかし。
「馬の一頭くらい用立ててくれてもいいのに」
 道は山から流れる小川に沿って伸びているが、往来の少ない路面は荒れていて歩きにくい。
 だが、隣を見ればススキの原野だ。こんな道でも野原を掻き分けて行くよりはまだマシというものだろう。
 私は愚痴と風呂敷包みを手荷物に、ゆるゆると歩いて行く。

 既に山の妖怪の縄張りに入っているはずなのだが、山道は静かなものだった。
 夜闇に生きる妖怪たちではあるが、昼間だからと言ってまったく出歩かないわけでもない。
 時折鳥よりも大きな影が頭上を行くが、特に相手にされている様子も無い。
「私が稗田だと知れているからですかね」
 ひと昔前にこんな事をしたら、今ごろは妖怪のおやつになっていることだろうに。
 こういう時、私は自分の背後に潜む存在の大きさを思い知る。
 額の汗を拭い、山へと踏み入る。
 行程は順調に消化されている、この様子なら昼過ぎには目的地に着けるだろう。

 足場の不安定な山道を行くのは、初心者にはなかなかの重労働だ。
 私は出歩かないと思われがちだが、実際はそうでもない。
 見た物を忘れない能力とは言え、実際に目にしなければ話にならず、必然相手の所に出向く必要がある。
 こればかりは他人任せにするわけには行かないので、調査の必要があれば自分の足で赴くしかないのだ。
 調べ物が家の中で済むような生活が羨ましいが、ここは「百聞は一見にしかず」の論を推したい。
 別段鍛えているわけではないが、それでも長い時間歩く事には慣れていると自分でも思う。
「私って自分で思うよりも足腰が強いのかしら?」
 それともこの身体も「そういう風」に出来ているのだろうか。
 埒にもつかないことを考える。

 雑木林を抜け、沢に出た。
 火照った身体に川の涼気が心地よい、ほうっとため息が漏れる。
 目的地は近いはずだ。
 左右に山の斜面を持つ沢は大きく枝が張り出していて、昼間であっても薄暗い。霧が出ている事も相俟って見通しが悪い。
 濡れた足場を慎重に進んでいると、どこからか声が掛かった。
「人の子がこんな所に何の用? 命が惜しければ引き返しなさい」
 女性の声。
 近くもあり遠くもあるような不思議な聴こえ方だ。
 ある種の畏怖を覚えさせる声は、ただ迷い込んだ者ならば今すぐにでも引き返した事だろう。
 しかし私は安堵のため息をつく。どうやら目的地に着いたらしい。
「ご無沙汰しております、稗田でございます。どうかお姿をお見せ下さい」
 相手の居場所は知れないが、こちらを見える位置に居る事は間違いない。
 確信と共に待てば、漂う霧に変化が生じた。
 風は無いはずなのに渦を巻き始め、霧がその渦に吸い込まれていく。
 やがて乳白色の柱となった霧の中に緋色が生まれた。
 熟した紅葉の葉のような洋装を華麗に翻し現れたのは、山の厄神こと鍵山様だ。
「あら、誰かと思えば」
 鍵山様は少し意外なものを見るような顔で出迎えてくださった。

 立ち話をするのも疲れるだろうと、鍵山様が出して下さったのは船だった。
 渡し舟より少し大きい程度の物だが、ただの安舟とは違い随所に装飾が掘り込まれている。
 派手さはないが豪華さと荘厳さがあった。
 船が下り始めると鬼火が付き添ってきた。
 控えめの青白い焔は仄暗い沢を幻想的に照らし出す。

「この度もお世話になりました」
「いえいえ。貴方は常連みたいなものだし」
 私の手荷物の正体は酒瓶と重箱で、重箱の中身は甘党の鍵山様にあわせて牡丹餅が詰まっていた。
 鍵山様は箸でひと口大にしてから口に運んでいる。その所作は上品な仕草なのだが、その速度が少しおかしい。
 私の酌を受けながらも、重箱の中身が見る見る減っていくのだ。
 酒と甘い物の組み合わせをとやかく言うつもりは無いが、見ているだけで胸焼けしそうだった。
「揺れる?」
 私の様子に気付いた鍵山様が小首を傾げる。
「いえ、大丈夫ですお構いなく」
 船は沢をゆっくりと下っているのだが、その速度は水の流れに影響を受けていない。
 揺れも殆ど無く、まるで浮いているような不思議な感触だった。
 というか、それ以前の問題なのだが、それを口にしない程度の慎みはある。
「ならいいのだけど。それにしても今回は早かったのね。いいえ、今回も、かしら?」
「書くことは相変わらず多いですけど、さすがに何回も同じ事をしていると慣れてきますし」
「今は何代目だったかしら?」
「私は阿求。この体で九代目です」
「あら、そんなに。私のところに来るようになってからもう随分になるのね。」
「三代目からです。厄介な病が流行った時に里の者たちと一緒に来たのが始まりでした」
「そんな事もあったわねぇ」

 実を言えば、その時は鍵山様を疫病神と勘違いしていた所がある。
 目に見える程の厄を纏っていれば凶兆と勘違いしても仕方ないだろう。私たちはそのくらい追い詰められていたのだ。
 問答無用で戦いにならなかったのは、当時の山の険しさに村人の一団が消耗しきっていたからに過ぎない。
 死者が出なかったのは運が良かったのだろうと思ったが、それすらも鍵山様の庇護かもしれない。

「昔の方が危なかったです。実際に死んだり死にかけたりもしましたし」
『厄除けも何も、自ら危険に踏み込んでいくんですもの。交通安全でも祈願しておいた方が余程有意義ですわ』
「妖怪の所に出向くのは仕方ないじゃないですか。それ以前の階段を踏み外すとか、餅を喉に詰まらせるといった事で三途の川を渡ったら、それこそ閻魔様に叱られますよ」
 この場に居ない三人目の声が聞こえるが、私にすれば慣れたものだ。
 私は苦笑しながら何処とも知れぬ声に応える。
「態々妖怪に喰われに行くような阿呆の身を守る事は私の本分には無いわ、せいぜい目的地に無事に辿り付くまでに事故が起きないようにする程度よ」
 鍵山様が杯を呷る。
 確かに直接の事は鍵山様には防げないかも知れないが、相手の妖怪が「たまたま」空腹ではないとか、「珍しく」機嫌がいいとか、そういう補正は掛かっていると思う。
 兎の前足が幸運を授けるお守りならば、鍵山様は不運を払う事で道行を守ってくれているのだ。

 鍵山様は過去を振り返っているのか、景色へと目を向け、川のせせらぎに指を浸している。
「貴女は人の身でありながら、私たちと時間を共有している。時間という川の流れの中、貴女の魂は死によって沈み、しかし浮かび上がる」
 鍵山様の視線の先、一緒に流れていた木片がくるくると回って、そして沈んだ。
「私は、自分にしか出来ない事をする為にこの役目を負いました」
「そう」
 こちらに向き直る。
「人が……妖怪に対する為に転生を繰り返す人間。それも、力ではなく知識という方法を用いて」
「……」
「死という自然の条理を捩曲げてまで、貴方がしたい事は何?」
「私の役目は、幻想郷縁起を重ねていくこと、貴方達妖怪の事を記し、後の世に伝えていく事」
「でもそれは本当に、貴方がしたいことなのかしら?」
 私の答えを待っていたかのように、鍵山様が切り返す。
 今更すぎて予想外とも言える問いに、咄嗟に言葉が出なかった。
 声を詰めた私に鍵山様がにじり寄る、狭い船の上に逃げ場は無く、気が付けば息がかかる距離にいた。
 そのまま瞳を覗き込まれる。
「貴方の生は大きな渦に巻き込まれている。抜け出す事の出来ない、大きなおおきな渦に」
 言霊が私を捉え、ゆうらりと視界が揺れる。
 揺れているのは船? それとも私の意識?
「厄などと言うものではない、もっともっと大きな渦。それは宿命という名の私では祓うことの出来ない苦難の道。貴方の小さな魂はその渦に飲み込まれ、軋み、悲鳴をあげている」
 声は溶けるように心に入り込んでくる、抵抗は出来なかった。
 何故?
 何故転生してまで?
 意識が裏返り、答えを求めるように記憶が引き摺り出される。

 ただ能力があるからと言うだけで始めたのではない事は覚えている。
 それは隣人が、愛する家族が容易く失われる時代。
 闇に怯え、勇者に縋る時代。
 生きていたい。
 ただ平和に暮らしていたいという当たり前の願いを叶える。
 その術を欲したのが始まりだった。
 遠い遠い記憶の彼方にあるかつての自分もまた、人と妖怪が共にある世界を信じられず、妖怪を憎んでいたかもしれない。
 力を持たない人間が生き残るための処方。
 少しでも人に笑顔をもたらすための希望のとして。
 その為にかつてのあの日、自身とその未来を捧げる事を決意したのだ。
 古い古い記憶、転生しても消えない深く確かな理由。
 心の奥底、稗田の遺伝子にはそれがある。

「この生き方は」
 自然と声が出た。
「確かに私の時間はこの役目に縛られています。能力の代償に身体も丈夫だとは言えません」
 意識が揺らぎ目眩がする、が、構わず続ける。
「私は……かつての私は、この道を選んだ事をやがて悔いる日が来るかも知れない事も承知で、この身を捧げました」
 確かに今の妖怪は人を昔ほど襲わなくなり、人間も躍起になって妖怪退治をするわけでもない。
 今の幻想郷が理想的なバランスだ、とは誰の言葉だったか。
 もしそうであるならば、もはや縁起はその役目を終えているのかもしれない。
「私の生をどう思われるかは鍵山様の自由です。ですが、どうかその事を不幸と思わないで下さい」
「でも、それは」
「ええ。おいそれと人間に出来る事ではありません」
 続く言葉を奪い、悪戯っぽく笑う。
「人間らしいか、と問われれば確かに首を傾げてしまうかも知れませんけど」
 縁起に関する記憶が残るが、他の事を全く覚えていないと言う訳でもない。
 転生した時に自分が知っている人間は居ないと言うのは、これでなかなか厳しいものがある。
 同じ家に生まれても、中身は毎回別物になっているのだ。
 妖怪なら百年かそこらの昔なら覚えているもので、むしろ其方に馴染みが出来てしまう事もあった。
 ふと思う。
 私にとっては人との縁よりも、妖怪とのそれが強いのではないのだろうか。
 刹那の時間、これまでに出会った顔が浮かび、何を馬鹿なことをと自嘲する。
 自然に出た苦笑に、自分はやはりこの役目をどこかで仕方の無いものと受け止めているのかもしれないとも思う。
「それでも、なの?」
「それでも、です」
 しかし今は。
「私は、この役目のおかげで千年昔の幻想郷と今の幻想郷の違いを見て、それを語ることが出来るのです」
 確かに今は昔と違うと言える。
 幻想郷が変わったのなら、幻想郷を記す縁起とて変わって当たり前なのだ。
 人が妖怪と共にある為の書が幻想郷縁起ならば、ただ敵対するだけの関係ではない世界を綴った縁起であってもいいはずだ。
「私はその事が嬉しく、そして誇りに思います」
 そうあるべきなのだ。
 その思いが熱となり、胸を焦がす。
 私はこれからも書いていく。
 人と妖怪が並び立つ世界を。
 幻想郷の為に、そして自分自身の為に。
「それが御阿礼の子の役目。私たち稗田の矜持」
 間近にある鍵山様の瞳を見つめ返し、その奥に映っている小娘に言い聞かせるように宣誓する。
「そう、わかったわ」
 鍵山様は仄かに微笑んで一言漏らしたきり、それ以上は言葉にしなかった。
 気付けば重圧が無くなり、厄神様は元の場所にいた。夢から覚めたような気分だった。
「稗田阿求。貴方の覚悟を疑った事に謝罪します」
 深々と頭を下げる鍵山様に、むしろ私が慌てた。
「そ、そんな事はもう気にしていません、どうかお顔をおあげ下さいっ」
「じゃあ」
 ずい、と杯が押し付けられる。
「仲直りの印に一杯どうぞ」
 眩い笑顔と仄かな餡の香りに、私は頷く事しか出来ない。

 その後は普通の話題に終始した。
 やれ巫女がどうの、河童がどうしたのと他愛も無い話をする。
 秋が近いという話になると、鍵山様がこの沢も紅葉が見事だと教えて下さった。
 枝葉の天井を仰げば、確かに秋の気配がある。
 これまでに下ってきた景色が緋や黄に染まる様を想像する。その下を流れ行けばさぞや壮観だろう。

 雛は阿求の横顔を見た。
 穏やかに流れていく風景を眺める少女。
 酔いが回ったのか、その頬は少し紅く染まっている。
 稗田は流し雛という間接的な手段ではなく、こうして直接会いに来る人間なのでよく覚えていた。
 御阿礼の子は何度も訪れる。
 あの問答とて実は初めてではない。
 毎回違う答が返ってくるが、稗田の血統はその運命に対して常に前向きらしい。
 厄を払い人間を守るのは雛の本分だが、流れに抗うやる気のある人間は好きだ。
 雛としても昔話のできる人間は稀有で、そして嬉しい。

 川の幅が広くなってきた。
 少し先に煌いて見えるのは、とんぼの群だろうか。
「さあ、山の日は暮れるのが早い。もう帰るといいわ」
 船は些かも揺れることなく岸につく。
「はい。お世話になりました」
「帰り道に気を付けてね。大事な役目が終わっても貴方の生はまだあるのだから」
「鍵山様もお健やかに」

 私は、流れを遡っていく小船を見送りながら、次に会うのは来世だろうかと考えてみる。
 紅葉が見事だというのなら、近いうちに遊びに来るのもいいかもしれない。
 いろいろと軽くなった身を意識しながら、私は家路を急いだ。







 帰宅した頃にはすっかり夜になっていた。
 雲の薄い夜空には、白い皿のような月が浮いている。
 歩き疲れた私はそのまま寝てしまおうかと思ったが、どういうわけか眠気が訪れなかった。
 月に中てられ、気が昂ぶっているのだろうか。
「妖怪でもあるまいに」
 虫や動物が永らえれば妖になるように、人も永らえれば妖怪になるのだろうか。
 人にもその素養があるのなら、成る程月光で気が昂ぶるのも頷ける。
「……」
 ふ、と益体も無い考えに自嘲する。
 昼にあんな話をしたから、妙な意識をしているのかもしれない。
 目を伏せると、月明かりが作る濃い闇の世界に何か落ちていた。
 既視感。
 私はある種の確信を持ってその小さな影の所まで歩いていく。
 足下を見れば夜であるのに自分の影が色濃く落ちていた。
 そしてそこには朝に見た蝉が落ちていた。
 朝とは違い、足を畳みまるで拝むような姿になっていた。
 もう事切れているだろうと思ったが、それでも突付いてみた。
 動かない。
 それはもう蝉ではなく、蝉であった物でしかない。
 蝉の抜け殻、という単語が浮かんだ。
 まだ息絶えて間もないのだろうか、蟻が集っている様子も無かった。
 自分がどういう表情をしているのか分からない。
「ご苦労様でした」
 持ち上げて手の平に載せてみる。朝よりも軽い気がした。
 私の言葉は風に運ばれ、縁側の風鈴がちりん、と鳴った。

「こんばんは」
 その声は、不意でありながら静かで、私はごく自然に顔をあげた。
 屋根の上に一人の少女の姿。
 銀光の中、どこか儚げな気配を見せるのは、碧髪も麗しい妖。
 名はリグル・ナイトバグ。蛍の化生だ。
「こんばんは。こんな夜分に何か御用ですか?」
 さほど危険な妖怪ではないと書いたが妖怪は妖怪。何の用意も無い人間が一人で向き合っていい相手ではない。
 まして私は、彼女の事をあまり良い印象で書いた覚えが無いし。
「我ら蛍は夜が舞台。何時何処にいようとも」
「……そうでした。こちらの失言です」
「でも、そんなに怖がらないで。別に取って喰うとかそういうつもりはないから」
 庭に降りてきた彼女は屈託のない笑みを浮かべる。
 急に幼く見え、その笑顔に私は面食らった。
「そ、それでは、益々何の用か分かりません」
「実は、うちの者がお世話になりまして」
 リグルの視線は私の手の平に向いていた。
「季節を間違えたうっかり者が、貴女のおかげで少しだけ永らえる事が出来ました。その子に代わってお礼を申し上げたく、こうしてやって参りました」
 そう言って頭を垂れる。
「ああ、この……」
 手元を見る。
 戯れに救った命だった。
 成虫となった蝉に残された時間など、たかが知れているというのに。
 しかし、この蝉は最期のその時までを精一杯生きたのだろう。
 それこそ人の指に縋ってまで。
「羽化する時期を間違えたその子は、恋をする相手も居なかった。それでも、僅かだけど長生き出来て嬉しかった、と」
「……そうですか」
 あの時、手を差し延べたのは、きっと同情。
 共に歌う仲間も無く、ただひとり死んでいく蝉にどこか自分を重ねて見たのかもしれない。
 七年を土の下で過ごす蝉と、短い生の為に地獄で長い時間を過ごす自分。
 そこにどれだけの差があるのだろう。
「だから、貴女にも見送ってもらいたくて」
 リグルの声に応えるように、私の手の中で小さな光の珠が現れた。
 淡い光は音も無く浮かび上がると私の鼻先で瞬く。
「……っ」
 指先に幻痛があった。
 この光はあの蝉の魂だ。
 私の目の前にあるのはただの青白い光なのに、みんみん蝉の姿形が見える気がした。
 光は私から離れると、別れの挨拶のつもりなのか周りを一周する。
「さあ、もうお往き」
 リグルが促すと蝉の霊はふらふらと舞い上がり、一人と一つの霊は去っていく。
 その姿に、心がぐらりと揺れた。
「あ……」
 見届けなくては。
 根拠無くそう思った。
「……待って……!」
 勝手口から飛び出し、夜空を探す。リグルの姿が屋根に隠れたが方角は読めた。
「あっちには、川……」
 霊は歩くほどの速さで飛んでいたが、私は地を行くしかない。
 庭歩き用の雪駄は走りにくく、それでも私は懸命に後を追った。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 実際に走った距離は長くないはずだが、私は肩で息をしていた。
 気が付けば裸足で、雪駄がどこで脱げたのかも判らなかった。
 気付いたリグルが振り向き、追ってきた私に少しだけ驚いた顔をしていたが、
「うん。じゃあ貴方も」
 穏やかに微笑む。
 リグルの周りには、いくつもの光があった。
「見送ってあげて。流れている途中で迷子にならないように」
 光の群は音も無く水面に降り、そのまま流されるように去っていく。
 水は幽世との境目でもある。このまま流されていけば、あの魂は死者の国へと辿り着くことだろう。
「見送ってあげて。大きなひとつに還って、またいつか生まれてこられるように」
 光を見つめ、蛍妖が囁くように、祈るように詠う。
 その声に悲しいものは含まれていない。きっと彼女にとって輪廻とは当たり前の概念なのだろう。
 幾重にも世代を重ねる虫たち、それを見送る蛍の妖怪。
「魂と川の流れは似ていると思いませんか」
 流れていく光を見つめながら、私は思ったことを口にした
「天から雨が降り、川となって流れ、海に注ぎ、そして天に昇る。やがて空を巡り、また降り注ぐ為に」
 私の言葉に、リグルが振り向かず応える。
「生まれ、恋をして子を為し、老いて死ぬ。魂は大きなひとつへと還り、いつかまた生まれる」
「虫も人も一緒。いずれは死ぬ」
「身体は土に、魂は天へと還る」
 人と妖は同じ流れを見つめながら言葉を重ねる。
「そうだね。そうかもしれないね」
 私たちは光が見えなくなっても川面を見詰め続けていた。







 さて、私が生きている間にしなければならない事の一つに墓参りがある。
 しなければならないと言うほどでもないが、しなければしないで家人がうるさいのだ。
 正直な話をしてしまえば、私はこの儀式が好きではない。
 なにせ自分の骨が眠っていると言っていいのだ。
 いくら別の生とはいえ、あまりいい気分はしないのは普通の感情だと思う。

 だから、そんな私が自主的に墓参りに行こうと思ったのは、きっと昨日の光景が心から離れなかったからなのだろう。

 花屋に仏花を見繕ってもらい、里外れの共同墓地へ赴く。
 辺りを見回し、自分の他には誰も居ない事に安堵した。やはり心のどこかで苦手に思っている事に変わりない。
「さて、やる事をやりましょうか」
 無人の墓地を行く。
 共同墓地といっても質素な墓石が並ぶ程度だが、ここには確かに幻想郷の歴史がある。
 この中には妖怪の手に掛かった者の墓もあるのだから。
 そんな中、割合広い面積を占めている恥知らずな家がある。
 そこが稗田家の墓地だ。
 遥か昔の稗田の当主が何を考えていたのかは知らないが、この風景には毎回ため息が出る。
 ちょっとした庭園、とまでは言わないが一つの家の墓として見れば無駄に広かった。
 転生を繰り返す身とは言え、私が阿弥から阿求になるまでの間にも稗田の家は続いているわけで、求聞持の力を引き継がない普通の稗田の者の墓もある。だからこその広さなのだが。
 しっかりと手入れされているので草が茂っている事も無く、墓石も綺麗なものだ。
 線香を立て、持ってきた花を半分供える。
「また暫くはお勤めがありますので、その間よろしくお願いします」
 手を合わせ目を閉じれば、昨夜の光景が浮かんだ。
 それなりに神妙な気分になったところで、今度は八本の卒塔婆が立つ墓石の前に立つ。
 こちらは正真正銘の先祖代々の墓で、つまりは私が毎回お世話になっている墓というわけだ。
 どういう理由で別格に見られているのか知らないが、私の墓だけ別に建ててある。
 掃除の必要は殆ど無いものの、自分が入る墓を磨くというのは精神的に重労働だ。

「ふぅ、幻想郷の中でも自分の墓を磨くなんて事をしているのは私くらいなものでしょうよ……」
 一通り作業が済んだ頃には、背中にじっとりと汗が浮かんでいた。
 愚痴をこぼしつつ水筒を呷る。
「ごきげんよう」
「ッ!!?」
 いきなり背後から声を掛けられて、私は飲みかけの水を噴き出した。
「ぶはっ、ごほっ!ごほっ……っ!」
 呼吸が妨げられ涙が滲んだが、構わず振り向く。
「こ、ここ、こ……っ」
「鶏?」
「こんな所で一体なんですか、風見幽香っ」
 洒落た日傘の持ち主は、珍しい動物でも見るような目で私を見ている。
 そう、昼日中から里の近くを出歩く妖怪など居るまいと思っていたが、こういうイレギュラーいるのを失念していた。
「なにって、挨拶しただけでしょう?」
 私の動揺をわざと無視する風見。
「それにしてもやり方というものが……! ああ、もういいですっ」
 涙やその他の液体でぐしゃぐしゃになっていた顔を袖で乱暴に拭う。
 憤りや驚きの連続で心臓がばくばく言っていた。
「お墓参り?」
「え、ええ」
 この場所で他の用事があるなら聞いてみたい気もするが、気難しい事で有名な彼女にそんな口は利けない。
 この数分でだいぶ削れてしまった理性でも、その程度の事はわかる。
「稗田家……ふぅん、ここは貴女達のお墓なのね?」
「はい……」
「ならば、私からも花を手向けましょう」
 風見がそう微笑むと、何も植わってないはずの地面から茎が伸び、見事な菊の花が咲いた。
 ふつりとそれを断ち、花の入った桶に加える。
「あ、ありがとうございます」
「礼など必要は無いわ……、単なる気紛れだもの」
 真意を掴めぬままに礼を言うと、風見は目を細める。告げる表情には心なしか落胆の色があった。
「……え?」
 その顔と、花という単語が記憶の中の何かに引っ掛かった。
 幻想郷に長いこの妖怪も、以前の私が話を聞きに行っている。
 記憶を辿ると像が影を結ぶ。
 過去の風見と、目の前の姿に形容できるほどの差異はない。
 だが、確かに何かある
 あの時私は彼女と何を話した? 何か話したのか?
 しかし、その事を深査する暇は無かった。
 私を見下ろしていた風見幽香は、ずい、と身を乗り出す。
 私の顎を掴み、強引に顔を上げさせる。
 近い。そのまま噛みつかれそうな近さに魂が竦み、背筋に汗が浮く。
 幾度か経験した類の恐怖だが、何度味わっても恐ろしいものは恐ろしい。
「貴女、転生して記憶を引き継いでいると聞いたけど」
「それが、なにか」
 またこの類の質問。
 昨日の鍵山様の問答を思い出し、私は微かに眉をしかめる。そんなに稗田の子が珍しいものなのか。
「なんでもないわ。ただ訊いてみたかっただけ」
 見上げる。
 風見の目には、こちらの出方を窺っている色がある。
 目を逸らさない。
 さっきの花という単語が燻っている。
 風見のこの態度と何か関係がある気がしてならない。
 日を背負い、影になった瞳に怯えながらも睨み返す自分の姿が映っている。
 私は真意を確かめなくてはならない。
「あ、貴女は……」
 問いを放とうとした刹那、不幸が起きた。
 強引に上を向かされた事によって、鼻の奥に僅かに残っていた水分が移動し、あの独特の痛みが私の 鼻腔を襲ったのだ。
 それは先ほどの災害から微妙にむずついていた鼻にとっては十分な引き金であり、人間として当然の 生理現象を引き起こす。
 問いを放とうとした私に、風見もまた注視していたのが不幸の上乗せだった。
 恋人同士なら接吻五秒前という距離から、容赦のない一撃が放たれる。


 その大音響に、供え物目当てに集まっていた鳥達が驚いて飛び立った。


 一切の慎みを放棄した私の渾身のクシャミは、風見幽香の顔面に直撃した。
「……」
「……」
 果てしなく気まずい沈黙が流れる。
 不可抗力だったと主張したいが、私の唾とかでべしゃべしゃになっている風見の顔を見ると、とてもそんな言い訳が通用するようには見えなかった。
「ふ、ふふ……」
 やがて、風見は目を閉じたまま笑い出した。
「な……なかなかやるじゃないの……」
「あの、えと、ごめんなさい、大丈夫ですか……?」
 引きつった笑みに、思わず謝りハンカチを差し出してしまう。事故とは言えこちらの過失だ。
 風見幽香は私の差し出したハンカチを黙って受け取り、黙って顔を拭い、最後におもむろに鼻をかんだ。
「あーー!!」
「これでおあいこよ」
「ひ、ひどい……」
 突っ返されたハンカチは妙にしっとりしていて、私は悄然とうなだれる。このハンカチ、お気に入りだったのに。
 がっかりしている私がよほど面白かったのか、風見はくすくすと笑い出した。
 ひとしきり笑って落ち着いたのか、風見は自分のハンカチを取り出すと、目尻に浮かんだ涙を拭う。
「はー。なんだか知らないけど、笑ったわぁ」
 遭遇時の剣呑な気配は無く、妙にスッキリした顔になっていた。
「でもこれも貴女の成果なのかしらね」
「それは、どういう?」
「いいのよ、こっちの事だから」
 前に話した時も、調子の掴めない相手だった事は覚えている。
 何か忘れている。
 忘れている事は判るのだが、記憶には靄が掛かったように鮮明さに欠けた。
「私は貴方の事がわからなくなりました」
「あら、私の評価が変わるのかしら?」
その言葉に、私は無言で首を振る。
「……確かに危険度などは上方修正してありましたが、これでその評価が下がるという事にはなりません。あのページは私が見るものではなく、いつかどこかで不幸にも風見幽香という危険な妖怪と出会った時の処方の一つでしかありません」
「ふうん」
 手ごろな石に腰掛けた風見は、私の話を聞いているのか聞いていないのか、曖昧な返事をする。
「貴女、逃げないのね。危険度激高の妖怪と一緒に居るのに」
「命乞いでもしたら見逃してくれますか?」
「可愛い声で鳴いてくれたら考えなくも無いわよ?」
 割と本気の目で全身を舐めるように見つめられた。
 別種の緊張に身を硬くしている私を無視するように、風見はくすくすと笑う。
「確かに人間の一人身ですが、私とて、なんの保険もないとは言いませんよ」
 私の言葉に怪訝な顔をしたが、すぐに何かに気付いたように空を仰ぐ。
 その表情が、一瞬だが喜の色に変じたのを私は見逃さなかった。
 空には――
「風見、貴方ですか」
 凛とした声。
 場の空気を変える存在感の持ち主は、白と黒の天秤。
「裁判長さまも随分とヒマなのね」
 呆れた、と言わんばかりに風見が肩をすくめる。

 あまりこういう事は無いから忘れがちだが、実は私にはさまざまな加護がある。
 八雲様と四季様からはだいたい常時監視されているのだ。
 その為、御阿礼の子に生命の危機が迫ったと判断されると、こうして助けが現れる。
 小野塚様の術で駆けつけて下さるのはありがたいのだが、どう考えても小野塚様が直接来た方が早いと思う。
 四季様が来たという事は、小野塚様は絶賛職務放棄中だろう。

 空を見上げていた風見は、私の方を見もせずにこう告げた。
「稗田阿求、見ておきなさい。貴女が記し続けて来た幻想郷の今の姿を」
 楽しそうに傘を回すと、一気に高度をとる。
 険、という雰囲気を纏った四季様と対照的に、風見の口元には笑みが浮かんでいた。
「まったく、貴方の狙いはこれですか」
「残念だけどハズレ。貴女が来たのは予想外だったけど、丁度いいから少し付き合って貰うわよ」
「いいでしょう。貴方には言いたい事もありますし」
「わぁお。話が早いのね」
「今日はオフですから」
「……オフでもその服なのね……」
「何か問題でも?」
「いいえ。何も」
 こほんと咳払いをひとつ。風見が宙にカードを並べる。
「五枚」
「受けましょう。同じく五枚」
 四季様が応じる
 二人の宣誓が世界に届き、決闘が成立した。もはや何者の邪魔も許されない。
 傘を、笏を構える。
「審判――」
「閃光――」
 力が迸り、直後、真昼の空に二つ目の太陽が生まれた。
 凄まじい音は衝撃となり、私は思わず自分の身体を抱きすくめる。
 弾幕勝負。
 それも妖精や小物妖怪のじゃれ合いなどではない。
 正真正銘、大妖怪同士の激突だ。
 目の眩むような閃光、耳をつんざく轟音、焼ける地面、砕ける風。
 それは少女たちの決闘方法。
 それは絢爛華麗、勇壮無比。
「これが……弾幕……」
 私はその光景に、魂を抜かれたように見入った。
「見えているかしら、稗田の子!」
 激しい応酬の中、風見幽香の声が聞こえた。
「は、はい! 聴こえていますっ!」
 真昼の光を塗りつぶす極彩色の弾幕の中、私は爆音に負けじと声を張り上げる。
「見えているかしら! この光が!  聴こえているかしら!この音が!」
 弾幕を伴奏に、風見が詠う。
「この光は、かつての貴女が望んだ世界、人と妖が織り成すこの世界の象徴!」
 風見幽香の叫びに、四季様が続いた。
「この音は貴女が傾かせた天秤が奏でる音。人妖賛歌の夢想の調べ!」
「覚えておきなさい。これが、この光景が、今代の稗田に手向ける私からの花、幻想郷にしか咲かない弾幕という花!!」
 宣言。
「開花――『幻想郷万花狂乱』!!」
「審判――『ラストジャッジメント』!!」
 閃光。
 そして一際大きな爆発が巻き起こり、色と音が荒れ狂った。
 その激しさに鼓膜は痺れ、網膜が焼けそうになる。
 だが私は、豪風に飛ばされそうになりながらも、その全てを見届けた。

 爆発が収まった頃には風見は姿を消していて、残されたのは少し煤けた四季様だけだった。
「まったく、暴れるだけ暴れてくれましたね……」
「お疲れ様でした」
 はじめは、風見幽香は私にちょっかいを出す事で、背後の保護者を引っ張り出そうとしているのだと思っていた。
 しかし、彼女は確かに手向けの花だと言った。
「思い出した……」
 それは確か、前世の私が風見幽香に会いに行った時のことだった。
 私は彼女に彼女自身の能力を尋ねたが、その時の風見幽香は確か、
「妖怪には強さと美しさが備わっているものだ。そしてそれさえあればいい」
 と、眠そうにはぐらかしたのだ。
 そっけなく返された私は、きっと落胆した様子を隠そうともしなかったのだろう。
 別れ際の会話が蘇る。

 ――……貴女って転生しているのよね?
 ――はい
 ――次もまた来るのかしら?
 ――調査の必要があるならば。
 ――そう。なら次も来なさい。その時はもう少し幽香様の秘密を教えてあげるから
 ――何年先になるかなんて判りませんよ?
 ――いいのよ。私は暇だもの。何年だろうと気にしないわ。





 幽香が花の能力を身につけたのは、実はここ百年ほどのことだった。
 阿弥に言われたのが癪に触ったというのもあるが、確かに時間と力を持て余していたところだったので、暇つぶし代わりに新たな能力の獲得に挑戦してみることにしたのだ。
 ところで風見幽香は、この国の季節の移り変わりを気に入っていて、とりわけ華やかで活力に溢れる春が好きだった。
 自然すら凌駕し、四季を通じて好きな花を咲かせる。
 自分を飾るアクセサリーに自然を用いるというアイデアは、スケールの大きさも含めて気に入った。
 強大な力を持つ自分に余裕と優雅さが加われば、それこそ最強に相応しいだろうと考えたのだ。
 しかし、やれば大概の事をこなせる小器用なスキマ妖怪とは違い、細かい加減に不慣れな幽香は、自然物への干渉という繊細な力の制御に難儀した。
 なかなか上手く行かずそれなりに長い時間を苦労したが、それでも幽香は諦めなかった。
 暇だったというのもあるが、あの時の人間の顔がどうしても忘れられなかったのだ。
 苦労の末にようやく開花の力を獲得し、周囲は自然の摂理すら捩じ曲げる幽香の力に恐れを抱いた。
 弱者の畏怖は心地よく、それもそれなりに気分が良かった。

 しかし、本当に見せたい相手はただ一人だった。





「ああ、何と言うことでしょう……」
 彼女は約束を守ってくれたと言うのに、
「私はそれを忘れていた」
 転生で引き継がれる記憶は範囲も深度も不確定とはいえ、こんな大事な事を忘れていたなんて。
 ようやく思い出した約束に私は目の前が暗くなる気がして、思わず両手で顔を覆った。
 闇の中で今回の縁起で書いた風見幽香の頁を思い出す。
 花の能力に関する記述はごく僅かで、前回からの明確な変化であることさえも書かれてはいない。
 プライドの高い風見さんの事だ、新たな能力の獲得にどれだけ苦労をしたかなどは、決して話してくれないだろう。
 あまりの申し訳なさに涙が滲んだ。

 水桶に挿したままだった菊の花が目に入る。
 前回の私に対する風見さんの答えがこの菊だったのだ。
「花は」
 四季様の声。
「花は、水を与えなければ枯れてしまう」
 憮然とした表情の四季様は、風見さんが飛び去ったらしい方向を見据えたまま続ける。
「水、ですか」
「そう、潤いといってもいい。そして水だけでも駄目です、いい土も無ければ綺麗な花は咲きません」
「つまり、潤いの無い生活は心が枯れてしまう……と?」
 妖怪は退屈を嫌う。
 長く生きている者は暇と付き合う方法を心得ている事が多いが、享楽を好む本質は変わらない。
 四季様のおっしゃる水とは、精神的な充足とかそういう事なのだろう。
「彼女なりに貴方のことを気に入っているのでしょう。貴方の生き方に何か想うところがあったのかもしれない」
「そうは見えませんでしたが……」
「照れているのですよ、きっと」
 本人が居ないのをいいことに、四季様は笑顔で恐ろしい事を口にした。
 四季様は風見さんの意図を読み取った様子だった。
 どこか試すような視線でこちらを見つめる。
 確かに風見さんは普通の人間を相手にしない。どちらかといえば霧雨や博麗に興味を示す類の妖怪だ。
 そんな妖怪に目を付けられる点、言い換えれば普通の人間と違う所があるとすれば、それはやはり縁起に関わる事しかない。
「口には出しませんが、妖怪の在り様を変えた貴方の事を買っているようですよ」
 彼女はあれで気難しい妖怪ですから、と四季様が微笑む。いつもの厳格な雰囲気は薄れ、まるで友達の事を話す少女の顔になった。
「閻魔様が憶測で物を口にして良いのでしょうか」
「今日はオフですから」
 四季様はオフでもその服装なのですね。
「何か言いましたか」
「いいえ何も」
 地獄耳とはまさにこの事か。
 とにかく、と四季様は咳払いをする。何時の間にか服装は元通りになっていた。
「縁起を書き上げたからと気を緩めてはいけません、貴方に出来る善行は今代を精一杯生きる事です」
「はい、肝に銘じます」
 心の底から返事をする。私はこの二、三日で頓にそう思うようになっていた。
「宜しい。では私はこれで」
 満足げに頷いた四季様は、振り返る事無く去っていった。
 足どりが軽かったのはオフだからだろうか。そのわりに方角は無縁塚の方向なのだが。
 何となく小野塚様の無事を祈っておく事にした。







 墓参りを済ませた私は、縁側で夕焼けの空を眺めていた。
 膝の上では遊び疲れた猫が丸くなっている。

 沈む夕日、世界が朱に染まる。
 重ね重ね、飽くほどに重ねてきた記憶。
 ずっと見ていた空の記憶。
 夕日の光景は思い出されるが、それがいつの私の物か判らない。
 だけど、この空は幾度となく見上げてきた空とどこか違うのだろう。

 昨日の鍵山様との会話を思い出す。
 時代とは、歴史とは、まるで大きな流れのようだ。
 時には激しく、時には穏やかに。誰にも遡る事は出来ない河のようなものだ。
 私はその中を浮き沈みしながら流れていく。

 明日は何をして過ごそう。
 ああ、史紀という子を残した自分は、今こそ自分の為に生きていいのだ。
 魂の大河に還元されるまでの時間がたとえ残り僅かだろうと、あの蝉のように、意地汚く生に縋っていいのだ。
 釣りにでも行こうか。
 それともレコードを聴いて過ごそうか。
 紅葉が見事だというのなら、近いうちに遊びに行くのもいいかもしれない。

 幻想郷縁起が影響を与えていたのは、人間だけではない。
 妖怪たちもまた幻想郷の一部なのだから、当然のことなのだ。
 風見さんを思い出す。
 彼女は何を思って花を操る能力を手に入れたのだろう。
 それを尋ねることは出来るだろうか。
 あの人は答えてくれるだろうか。
 ああ、来世の私にひとつ宿題が出来た。

 空の色がゆっくりと藍色に染まっていく。
 夜の帳が下りれば、妖怪の時間がやってくる。
 遠くの夕日を受けて、薄雲が金色に輝いている。
 それは些細な日常の中の、当たり前の光景。
 転生で引き継ぐ事の無い、他愛の無い記憶。
 しかし、私の胸には確かに感動がある。
 風の匂い、日差しの暖かさ、雨の味。
 生きていれば当たり前に触れる事の出来るものばかり、そんな当たり前の事すら見方を変えれば侘寂があるのだ。
 縁起の編纂に気を取られて、日々の潤いを忘れていたのかもしれない。
この感動が残らない事を惜しいと思ったが、毎回新鮮な感動が味わえると思えばそう悪いものでもないかと思いなおす。
 慣れは心から潤いを奪うのだ。

 この狭くも美しい箱庭。
 同じ景色に見えたとしても、それはどこか違うはず。
 その時どきで観る側が違うのだから、見えるものが違って当然なのだ。
 変わり続ける幻想郷は、きっと私が次に目にする時も魅力的だろう。
 次代への期待を胸に抱く私には、明日の空の色ですら楽しみだ。
 
 暮れた空に夜風が渡る。
 この閉じた世界の、夢の歌が聞こえるようだ。
 
 膝の上の猫を撫でる。
 阿求は縁側に横になる。

































 そうしてしばらくして。
 物音が絶えた。





では、また来世
作品情報
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投稿日時:
2008/10/05 04:36:55
更新日時:
2008/11/11 22:06:13
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5.00
1. 6 慶賀 ■2009/05/24 10:28:54
テーマは流れでしょうか。なにやら文学っぽいかぐわしさを
嗅ぎ取らせて頂きました。読み込むと楽しそうですね。
2. 5 小山田 ■2009/05/24 10:29:23
テーマの活用が少し浅いかなと高い点をつけられませんでしたが、物語自体は実にまとまりのある完成度の高いものでした。
余韻のある終わり方はいいですね。
3. 5 佐藤 厚志 ■2009/05/24 10:30:08
阿求の性格なり心情なりをを描写するのは大変難しいと思うのですが、このssは良くそれが書かれていたと思います。ただもう少し明るい阿求を見てみたい気がしたりもしました。
4. 7 神鋼 ■2009/05/24 10:30:32
阿求の立ち位置をよく考えて作られた興味深い作品でした。
ラスト二行と後書きへの流れにやられました。
5. 8 twin ■2009/05/24 10:30:54
 平和な日常の一ページを見ていて、理想とも言える今の幻想郷の姿を見ているようで、とても心地の良い作品でした。
 結末の静けさと、そして後書きの言葉も合わせて、静かに逝った阿求の姿が自然と思い起こされるようです。雛や幽香の過去の情景との組み合わせも違和感がなく、むしろこの作品の中に一つの調和を生み出しているようでした。

 表現がくどくなりがちな詩的な台詞なども、この作品にとても合っていて、詠うように紡ぐ言葉を詠うように想像してしまいます。そしてそれぞれが伝えたい事が、明確に伝わってきたと思えました。
 特にリグルの言葉が印象的です。季節遅れの蝉も、その印象を濃くさせてくれました。蝉のような生涯を繰り返し行う阿求に、作中の蝉が見事に重なり、その蝉を見送る時の二人の言葉は、気持ちよく逝けるようにとの願いが込められているように思いました。

 ただ、三人称への移り変わりが唐突過ぎて、一瞬話題が転じられるのに違和感を覚えました。結末での人称の変化は一つの手法として見事だと思ったのですが、幽香の説明や雛と阿求を第三者から見た視点など、別の表現を用いた方がよくなるのでは、と個人的な指摘ですが、そう思いました。
 たとえば抽象的に過去に出会った幽香との記憶を描くだとか。
 これは本当に個人的な意見なのですが。

 阿求の死によって締め括られる物語でありながら、悲しみをあまり感じさせない読後感などが素晴らしく、またそうさせた表現の技量などは感服します。
 夏の終わり、蝉の鳴き声を思い出してみるのもいいかも知れないと考えさせられました。
6. 8 deso ■2009/05/24 10:31:16
これは良いあっきゅん!
面白かったです。
『雛は阿求の横顔を見た。』のあたりの雛視点がちょっと浮いてるように思います。
7. 8 詩所 ■2009/05/24 10:31:36
話は一つ一つ丁寧に書かれていて、時々くすりとさせられる表現もあり、テンポ良く読めました。
でも少し思ったのは、書きたいことが多すぎで話の繋がりが独立的になっているかな、ということです。

誤字報告。
「が『になっている箇所あり、意図的ではないと感じたのですがどうでしょう?
8. 3 ミスターブシドー ■2009/05/24 10:32:01
なんというか粗い印象が。
行間を詰めて書いてあるのは作者の意図かも知れんが、どうにも読みにくさがついて回る。
また描写に終始しているパートが目立ち、淡々と流れてしまっている感じもある。
阿求をとりまく妖怪環境は少々都合のよさを感じるが、不明な所が多いのでなんともいえないか。
確かに一度は面識があるからこういう関係もあるかも知れんね。
お題が水だか花だかわからなくなる場面があるのと、ラストが投げ気味なのがマイナス。
珍しい野菜を使っているが、あまり煮たり焼いたりしないで出された印象
9. 10 三文字 ■2009/05/24 10:32:23
最後の一文はどちらの眠りなんでしょうね。
普通の眠りならそれでよし。もし違うのなら少々悲しいです。
情緒的な文章による、阿求の少々変わった日常。四人の妖怪による問答や話が、どこか詩的で小気味よかったです。
のんびりとしていて、どこまでも和やかなお話でした。
個人的には、リグルとの話が一番綺麗で悲しげなので好きです。
10. 7 眼帯つけた兎さん ■2009/05/24 10:32:43
ああその花はきっと、潤い美しく咲いたのでしょう。
11. 6 PNS ■2009/05/24 10:33:03
文が美しいです。
ストーリーに関しては、二つのエピソードで話の焦点(テーマ)がぼやけてしまっている気がしました。
私の読みが足りないのかもしれませんが……。
12. 7 つくし ■2009/05/24 10:33:22
 死んだああああああああ!!!
 なんか、もう、切なさに胸が締めつけられる思いですちくしょうどうしてくれるッ……!
13. 6 じらふ ■2009/05/24 10:33:45
ええまた来世、新しい幻想郷の歴史が、また1ページ綴られる時に会いましょう。

蝉と阿求の対比や雛との問答が良かったです。ただ幽香が能力を身に付けた下りを、説明文章だけで片付けてしまわずに本人の口から少しだけ匂わせる等したら更に良かったんじゃないかなあ、と。
縁起という「子」を遺して逝った阿求。たとえ短い生でも全力で生き抜いた者に死の悲しさはないものだなあ…としみじみ思いました
14. 7 今回は感想のみ ■2009/05/24 10:34:13
想定を超える他人の想像力に触れられる。
ストーリーの奥底に流れる輪廻にあるものへの死生観も含めて、
SSを読む楽しさを再確認しました。
15. 8 リコーダー ■2009/05/24 10:34:40
「明日は何をしようかな」と思いながら息を引き取るシーンを見ると、「切ない」ではなく「心温まる」でもなく、両方が丁度打ち消しあってただ静かに見送る心持ちで一杯になります。
ぴたテンの悪魔さんとかぴたテンの悪魔さんとか。
雛と幽香のエピソードが、悪くはないんですがラストや蝉の部分と比べてしまうと少し印象深さに欠けたかも。
16. 9 あずまや ■2009/05/24 10:35:02
幻想郷で生きる、って感じがしていいですね。
次の一生は豊潤なものであって欲しいですね。
17. 6 藤ゅ村 ■2009/05/24 10:35:19
 ずるい。
 こういう終わり方をされると、阿求さん死んじゃったのかと疑ってしまう。どっちとも言えないんですけど。ほんとに、読み手の想像に投げられた終わり方だと思う。いやどこかに伏線はあるのかもしれませんが。それをいうなら、阿求さんが阿礼乙女だっていうところからもう伏線だし。もう文章のあちこちから死亡フラグ立ちまくってるのがなんかもう。
 冷静に考えて、閻魔様のところに転生の準備にも行っていないし、閻魔様もあんなこと言ってたんで、ここはただ普通に眠ったと思っていたい。私は。

 なんだかんだで、やっぱり阿求さんには幸せになってもらいたい。
 どんなわがままでも、ちょっとでも長く生きていてほしいんです。
18. 9 八重結界 ■2009/05/24 10:35:42
良いなぁ、この雰囲気。
死に際というのは得てして重く暗くなりがちなのに、読んでる側ですらわからないほどあっさりと逝けるってのは羨ましい限りでもあります。
19. 7 木村圭 ■2009/05/24 10:36:01
あっきゅーん!? いや、いつの事かも分からんし眠っただけかもしれませんし。うん。
そういえば幽香が四季のフラワーマスターになったのは花映塚からでしたっけ。
この辺に突っ込んでいるSSは見た覚えが無かったので新鮮でした。良いところに目をつけるなぁ。
20. 5 つくね ■2009/05/24 10:36:22
お題が弱いとは言わないまでも、ちょっと薄味風味だったように思います。
21. 7 blankii ■2009/05/24 10:36:40
あっきゅんに死生観が絡むと切なさが全開過ぎて困る。
題名から幽香の台詞への落とし込み方がとても心地良く、やはりあの台詞には一番ジーンときました。きっと良い笑顔で(加えてそれなりに禍々しく)言ったのかなぁ、なんて想像しています。
22. 7 時計屋 ■2009/05/24 10:36:56
美しいSSでした。
特に蝉を看取るシーンがとても絵になっており、また、後の展開に対する非常に効果的な伏線になっています。
縁起を書き終えた後の阿求の、一時の人間としての生が、絵巻物のように連続する印象的な出会いで綴られておりました。
堪能させていただきました。
23. 10 774 ■2009/05/24 10:37:18
出てきたキャラの株が一通り上がりました。(※小町は出てこなかったので対象外)
いや何というか、素晴らしい作品を読めて良かった、という感じですね。
私の語彙では感想が出ない…
24. フリーレス ■2009/05/24 10:37:46
>>774さん言葉に出来なくても、その心にある感情が良いものであるなら何も言う事はありません。ありがとうございました

>>時計屋さん
蝉と阿求の関係はお題が決まった日に天啓のように浮かびました。
今回のメインでもあるので、そこを評価頂くととても嬉しいです
ありがとうございました

>>blankiiさん
幽香は本当にいろいろな感情を込めて叫びました。
喜怒哀楽、全てが混ざった笑顔です

>>つくねさん
薄味なのは、直球勝負を避けたからかもしれません
内容的にはこれでもかと詰めた積もりでしたが

>>木村圭さん
阿求さんの結末についてはご想像にお任せします。
幽香は過去の姿が知られている数少ないキャラで、明確な変化を持っているキャラでもあると思います。
その双方を知るであろう阿求さんは、過去に何かあっても良さそうな感じに思えたのでこのようなエピソードが生まれました。

>>八重結界さん
過分な評価を頂き、ありがとうございます個人的には希望を見出した所でポックリという後味最悪の話を書いたつもりだったのですが。

>>藤ゅ村さん
設定を読めばそうなりますね。ただ、阿求さんの転生の準備が、全部が全部、生身で行われているのかは知りませんが。 まぁ、殺して終わるというのはあんまりな気もしますけど。

>>あずまやさん
ありがとうございます幻想郷が続く限り、稗田の子には転生の苦楽が付き添う事でしょう。その先の道が暗いものにならない事を。

>>リコーダーさん
これまた古い喩えが。各パートにまとまりが無いのは、それぞれが示している時間が違うからというのもあります。擦り合わせが甘いだけとも言いますが。

>>今回は感想のみさん
奇をてらった、とも言えます。
人気どころは動かしやすい反面、新たな側面を出しにくいという弱点があると思います。役者達が優秀なので、勝手に演じてくれるのが楽でした。

>>じらふさん
あくまで個人的な幽香観になりますが、彼女はそういう事は口にしない子だと思っています。

>>つくしさん
彼女の死を悼んで下さい。でも、悲しまないで下さい。

>>PNSさん
4つの出会いはそれぞれが阿求という水によって咲く花です。
束ねる事で花束となり、それが手向けになるのです。

>>眼帯つけた兎さん
我等が書く事で幻想郷はほんの少しですが潤います
それが瑣末な日常でも、阿求さんには潤いになるはずです。

>>三文字さん
蝉のくだりは真っ先に浮かんだシーンでした。
リグルとの会話は、阿求にとっての分岐点でもあります。
その先に明るい時間が僅かでもありますように

>>ミスターブシドーさん
粗さの原因は、この話の八割が携帯で書かれたからかもしれません。
幽香がワガママ放題してくれたので、ご指摘のような事態になりまして

>>詩所さん
ご指摘の通りとなりますが、この話は没稿も含めると6つのエピソードに別れています。
個々の話が独立しているように感じられたのはその残滓かと思われます。

>>desoさん
ありがとうございます
三人称視点の唐突さは確かにありました。
話を練る以前の問題ですね。
次回以降の課題にします

>>twinさん
このような至らない話に過分なお言葉、ありがとうございます。
視点の移動に関しては調整出来ていないまま出した点は否めません。
作中の位置付けとしては、三人称視点は時間の経過を司る場面でもあります。
雛なら、双方暫く言葉無く川を下っている、というような。
ここで書いても仕方ない事ですが

>>神鋼さん
阿求さんは、縁起に記載されている妖怪とは全て面識があるという極めて特殊な人間です。
今回示した関係以外にも様々な「稗田の子ならではの関係」があると思います。使い処は難しいでしょうけど

>>佐藤 厚志さん
没稿には早苗さんが出て来て、幻想郷の娯楽にたいするあれこれを語りつつ体験してもらうシーンもありました。川遊びとか。
二人とも、大分はしゃいでました。

>>小山田さん
テーマですか……
全体的にぼやけた話なのですが、基本的には水=命(阿求)でした。
流れたり潤したり。

>>慶賀さん
読み込むと存外底は浅かったりしますが、皆さんこちらの想定した深度よりも深く読んでくださいました。
テーマは阿求(稗田の歴史)=水ですね。
流れ、循環し、少しずつ世界を変えて行く。そんな感じ。
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