Pride

作品集: 最新 投稿日時: 2008/10/05 07:53:23 更新日時: 2008/10/07 22:53:23 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00

 水の中から眺めても、その姿は色褪せることがない。
 人は死にそうになった際に、走馬燈を見るのだと聞いたことがある。人生を吟味するほど長い時を過ごしたわけではないが、きっと自分もそれなりに過去を振り返るのだろうな、と咲夜は思っていた。
 だが、実際に浮かんできたのは仕える主に対する印象だけ。己の人生なんて、欠片も頭をよぎらなかった。
 口から気泡が漏れる。
 屈折の入り乱れる水の世界から見ても、レミリア・スカーレットの立ち振る舞いは変わらない。白亜の傘を持ちながら、水よりも冷たい視線でこちらを眺めている。微動だにしない。
 無酸素の世界に長くいたせいか、脳は酸素を寄越せと子供のように喚き散らしていた。両手はみっともなく虫のように動かしているが、浮力は得られない。足さえ攣っていなければ、もっと簡単に上へと上げられたものを。
 いや、そもそも咲夜はただの人間ではないのだ。空間を操るなりして、水から出れば良かった。
 しかし、それを溺れる人間に期待するのは酷というもの。
 冷静さを失った人間の末路など、誰に聞かずとも決まっている。だから、最後にこの目へ焼き付けておきたかったのかもしれない。
 自分が生涯を掛けて仕えると決めた、赤く幼い主の姿を。










 目を覚ました瞬間、咲夜は慌てて銀の懐中時計を手に取った。槍のような長針と短針が、とうに始業時間を超えていることを知らせてくれる。
 紅魔館に訪れて以来、寝坊したことなど一度も無いのに。驚く暇もなく、クローゼットを乱暴に開けた。まずは着替えて、身だしなみを整えて、ああそれよりも先に時間を止めないと。薄い藍色のパジャマを脱ごうとしたが、どういうわけか既に身を包んでいるのは着慣れたメイド服だった。勿論、時間はまだ止めていない。
 頭にはヘッドドレス、胸には緑のリボン。エプロンドレスは清楚に巻かれ、銀の髪は相変わらずの光沢だ。レミリアの前へ現れる際に、何度も鏡でチェックしている時の自分がいた。
 いくら咲夜が瀟洒で名を通しているとはいえ、寝起きまで瀟洒なわけではない。一体何がどうなっているのか。咲夜は首を捻る。
「何というか、こうもあからさまに無視されると、それはそれで気持ちがいいわね」
「……人が悪いですね、パチュリー様。いるなら、いるとおっしゃってください。耳がおかしくなったかと思うじゃないですか」
「おかしいのはあなたの注意力よ。それに、私は人じゃないわ」
 軽く咳き込みながら、魔女は立ち上がった。ベッドの側に置かれた椅子に、咲夜は見覚えがない。おそらく、どこかから持ち込んだのだろう。
 しかし、だとすれば妙な話だ。パチュリーは咲夜が目覚めるまで、ここで椅子に座って寝顔を眺めていたのだろうか。そういう趣味があるという話は聞いたことがないけれど、そうだとすれば色々と付き合い方を考えなくてはならない。
 表情の機微で全てを察したのか、パチュリーは呆れた顔で眉間の皺に指をおく。
「おかしな想像をされる前に言っておくけど、私はあなたを介抱していただけよ」
「介抱、ですか?」
 身体のどこにも異常は無い。介抱されるような覚えはないのだが。
 唯一、違和感があるとすれば髪の毛ぐらいか。いつも通りの光沢を放っているが、何故か少し濡れている。
「覚えてない? あなた、レミィとの散歩中に足を滑らせて湖に落ちたのよ。知らなかったわ、式神だけじゃなく咲夜も水が苦手なのね」
「別に水は苦手じゃありません。むしろ好きですよ。暑い時とか」
「それは何か違う気がするけど」
 難しい顔のパチュリーをよそに、咲夜は考え込む。
 散歩、湖、溺れる。幾つかの単語が頭をよぎり、忘れていた過去のシーンを再演し始めた。あれはそう、レミリアが言い出したことだ。
『昼だけどせっかく起きたのだから、湖の周りを散歩するわよ。咲夜、お供なさい』
 咲夜はレミリアお気に入りの白い日傘を用意して、湖の周りを散歩していた。折しも、昨日まで三日に渡る大雨が降った後。湖の周りは土がぬかるんでおり、咲夜はたまたま脆い所を踏んでしまったのだ。
 後は落ちるだけ。とっさに日傘を手放すのがせいぜいで、飛ぼうと思った瞬間にはもう水の中だった。能力を使う余裕すらなく、もがき苦しんでいたいた自分。肺の中から空気は消え去り、朦朧とする意識の中で覚えていたのはレミリアの姿だけだった。
「……ちょっと待ってください。私は溺れてたんですよね。じゃあ、一体誰が私を助けてくれたんですか?」
 レミリアのはずがない。だって彼女は、溺れる咲夜をただ見ているだけだったのだから。
 パチュリーは肩を叩きながら、素っ気なく答える。
「美鈴よ。何でも凄い勢いで水に飛びこんで、あなたを助けたんだとか。私はその場にいなかったけど、館から小悪魔が見ていたそうよ。勿論、ここへあなたを運び込んだのも美鈴。人工呼吸したのは、まあ誰でもいいでしょ」
 かなり重要な部分を省かれた気もするが、良しとしよう。貞操が奪われたわけでもないのだ。初めて唇に触れたのが誰かなんて、気にするだけ馬鹿らしい。
 それよりも、何か美鈴にお礼を考えておかないといけない。義理堅い咲夜にとって、貸しを作るというのはあまり気持ちのいい行為ではなかった。それに、助けて貰ったお礼を純粋にしたいという気持ちもある。
 クッキーでいいかな。頭の中で適当なお菓子のリストを並べる傍らで、ふと気になることがあった。
「ところで、お嬢様は今どこに?」
「部屋で寝てるわ。咲夜が寝かされてから暫くはここにいたんだけど、眠いからって戻ったの」
「そう、ですか……」
 目が覚めるまで側に居て欲しかったわけではない。主にそこまで要求するなど、従者として考えてはならないことだ。
 胸に引っかかるのは、もっと別のこと。
 溺れる自分を、レミリアは助けようとしなかった。その事実が、咲夜の心に僅かな棘を突き刺すのだ。
 ひょっとすると、不甲斐ない従者だと見捨てられたのかもしれない。溺れて主に助けを求めるなど、滑稽を通り越して呆れてしまう。自分を助けなかったのは、きっと見限られたからだ。
 エプロンドレスを握りしめる。涙は出ない。出せない。どれだけ哀しかろうと、館の中で泣くことは許されないのだ。
「勘違いが好きそうなあなたに忠告しておくけど、吸血鬼の弱点を忘れたわけじゃないでしょうね? 十字架には強いけれど、あの子も立派な吸血鬼なのよ」
 日光、ニンニク、鰯の頭。
 そして、
「流れ水を渡れず、泳げず」
 淡々と、言葉を紡ぐパチュリー。胸の内で燻っていた煙は、一瞬にして吹き飛んだ。
 見捨てられたわけではない。吸血鬼は泳げないのだ。だから、助けようにも助けることができなかった。
 咲夜が溺れたのは湖とはいえ、あそこは川と繋がっている部分。流れは川と大差ない。流れ水と呼んでも不思議はなかった。
 なんのことはない。真相が分かれば、悩んでいた自分が馬鹿に思えてくる。
 クローゼットの引き出しからタオルを取り出し、軽く拭き取るように頭に当てた。本当ならドライヤーぐらい当てたいところだけれど、すぐに仕事へ戻らないといけない。
「悩みが解決したのなら、図書館へ紅茶を一杯届けて頂戴。あなたを介抱していたせいで、研究が色々と滞ってるのよ」
「分かりました。すぐにお持ちいたします」
 丁寧にお辞儀をして、文字通り消える。止まった時間の中にありながら、咲夜の一日は再び時を刻み始めたようだ。










 目を覚ましたレミリアは、本が読みたいと言い出した。彼女の周りでは誰もが数奇な運命と辿るというが、その本人の言動も秋の空のようにころころと変わる。友人として付き合うには面白いけれど、従者として接するには少しだけ困ることが多い。
 その中で、この命令はまだマシな方と言えよう。以前、起きしなに竜の肝が食べたいと言われた時は、さすにどうしたものか小一時間ほど頭を悩ませた。最終的にはアンコウの肝で誤魔化したのだが、いまだに気づかれてはいない。目黒の秋刀魚のように、いつか肝は竜に限ると言い出しやしないか心配だ。
「それでは、少々お待ちください」
 大図書館へ向かおうとした咲夜を、レミリアが呼び止める。
「私が欲しい本はパチェのとこに無いわよ。物置を探してきなさい」
 物置と言われて、思い浮かぶのは庭の小屋。剪定道具や何やらが詰められているあの小屋に、本など置いてあるのだろうか。問い返したい気持ちはあったが、レミリアの機嫌を損ねるのもまずい。
 どういうわけか、この頃レミリアの機嫌がとみに悪いのだ。それも、目に見えてわかるほど。何か粗相を働いたとすれば、先日の溺れかけた一件か。クビにするとまで言わないものの、呆れてはいるのかもしれない。
 心苦しいことだが、言い訳をしてどうかなるものでもなし。従者としての働きで、信用は取り戻すつもりだった。
 頭を下げ、レミリアの私室を後にする。本のことなら、幻想郷でも五本の指に入るほど詳しい魔女が紅魔館にはいた。
「パチュリー様、少しよろしいでしょうか?」
 安楽椅子にもたれかかりながら、パチュリーは読書の真っ最中だった。最近かけ始めた眼鏡を外し、色褪せた本をオムレツのように畳む。
 ひんやりと冷たい空気が咲夜の頬を撫で、半袖で来たことを後悔させた。館の外はまだまだ暑いけれど、ここはそろそろストーブを出してもいいのかもしれない。もっとも、魔女がストーブを利用するとは思えないけど。
「本が置いてあるような物置が、どこにあるか分かりますか?」
「本があるような物置ね……ああ、あの部屋のことかしら」
「ご存じで?」
「ご存じだと思ったから、ここに来たんでしょう。無駄な返答をさせないでよ」
 呆れたようにため息をつくパチュリー。言われてみれば、もっともだ。
 咲夜は照れ隠しのように頬を掻きながら、どこにあるんですか、と問いかける。
「妹様の部屋よ。と言っても、地下室の部屋じゃないわ。元々、妹様が住む予定だった部屋のことよ」
 考えてみれば、レミリアの部屋があるのだからフランドールの部屋があってもおかしくはない。まさか、産まれた時からあの地下室が用意されていたわけではないのだろう。以前、その辺りの話をパチュリーから聞いたことはあるけど、詳しくは教えて貰えなかった。従者とはいえ、立ち入ってはいけない話も多々あるのだ。
 パチュリーから部屋の位置を聞き出し、咲夜はおもむろに歩を進めた。ここで走るようでは、一流のメイドとはいえない。そも、メイドとは走る職業にあらず。足で稼ぐ職業など、天狗にでもやらせておけばいい。メイドの仕事は歩くことと、立っていることだ。
 メイドの美学を理解していない妖精メイド達は、咲夜の横をこれ見よがしに飛びながら去っていく。まあ、この辺りの美学を妖精に理解しろという方が無理な話だ。
 軽く苦笑し、目的の部屋へたどり着いた。金色の装飾が眩しいドアノブを握り、扉を開ける。
 瞬間、咲夜は顔をしかめた。
 古くさい本や、ホコリ、それに年季の入ったカーテンや絨毯の臭いが鼻をついた。吸血鬼の寝室だけあって、壁に窓はつけられていない。カビが生えていないことが奇跡的に思える。
「これは……なんとも」
 潔癖性でなくとも、片づけたい衝動に駆られる部屋だ。後日、他のメイドと一緒に大掃除をする必要がある。頭の中で新しい予定を組み立てながら、本探しに移った。
 とはいえ、探すのは一苦労だ。なにしろ窓がないので、部屋の中は基本的に暗い。光源は廊下から差し込んでくる光だけ。そのくせ、全く整理されていないのだ。棚から本を取りだしては、一々光のあるところで確認しないといけない。
 これならまだ、竜の肝を探しに行く方が良い。何十回も同じ行為を繰り返していくうちに、そう思えるようになってきた。
「あ、あった!」
 百回目に達したか達しなかったかの瀬戸際。光の下で確認したタイトルは、レミリアが口にしたタイトルに間違いなかった。探すのに結構な手間を掛けたけれど、時間は止めてあるので問題ない。
 しかし、早いうちに大掃除を決行しないと更なる犠牲者が出るだろう。明日にでもやるべきかもしれないと、本のホコリを払いながら思う。
『目当ての本は見つかった?』
「ええ、苦労しましたけどようやく。掃除をしたら、ここにも燭台を置かないといけませんね」
『燭台か。メイドは大変、大変。我が儘な主に振り回されているのに、他の事にも気を配らないといけない』
「それほど大変なわけでもないですよ。お嬢様に振り回されるのも、それはそれで楽しいですし。ところで」
 ナイフを取り出し、周囲を見渡す。
「先ほどから私に話しかけてくる、あなたは誰です?」
 部屋の中に気配はない。元より、それほど広いわけではない。暗いし、物は山積みになっているけれど誰かいたらわかる。廊下の向こうというわけでもなさそうだ。
 視線の鋭さが増す。しかし、いくら目を凝らしたところで誰の姿も確認できない。
「姿を現さないなら、こちらから仕掛けることになりますが?」
 無論、単なるはったりである。目視できない相手に、どうやって仕掛けるというのか。
『自分なら、ここにいる。目の前、目の前』
 幾重にもマスクを重ねたような声が聞こえる。男のものか、女のものか、それさえも分からない。
 咲夜は用心しながら、前方を確認した。しかし、当然誰も姿もない。
『人を捜している? 違う、違う。自分は箱。目の前の箱』
 言葉に従い、今度は箱を探す。すると、確かに目の前の机には箱が置かれていた。
 外の世界なら箱が喋る段階で恐怖を覚えてもおかしくないが、生憎とここは幻想郷。猫や狐が人の形で喋る世界である。箱が喋ったくらいでは、むしろまだまだ芸が足りないと怒られそうなものだ。
 警戒を解き、咲夜は箱を手に取る。薄暗い部屋では、装飾の欠片も見えやしない。
 光のある廊下に持ち出して、思わず感嘆のため息を漏らした。
 宝石箱のようではあるが、その外見は見窄らしい。木製であるし、美しい装飾品など全くない。両手で収まるほどの大きさでしかなく、迫力など皆無だ。
 にも関わらず、纏う雰囲気は一級品と変わらない。ともすれば薪としてくべてもおかしくないのに、落とすことすら躊躇いを覚える。不思議な箱だった。そも、喋る時点で不思議は不思議なのだが。
「ただの箱が、私に何か用かしら?」
 不思議な箱は急に黙りこみ、咲夜も眉をひそめる。もしも、これが本当は喋る箱でないとしたら。端から見れば自分は気狂いと言われてもおかしくない。どうしたものか。悩んでいると、再び箱が喋り始めた。
『自分は箱。真実を告げるパンドラの箱』
「パンドラ?」
 神話には疎い咲夜だが、パンドラという単語には聞き覚えがあった。確か、開けてはいけない箱を開けた女性だ。
『真実は同時に災厄をもたらす。だから自分はパンドラの箱。でも希望は無い』
 パンドラが開けた箱からは、様々な災厄が飛び出した。パンドラは慌てて箱の蓋を閉めたけれど、後に残ったのは一つだけ。それが希望だ。
「物騒な箱ですわね。希望ぐらい残しといてくれてもいいのに」
『何事も真実には勝てない。あなたも、誰も』
「生憎と、私には打ち明けるような真実は存在していないので。あなたの出番は此処で終わりです」
 くだらない時間を過ごした。箱を手に取り、部屋の中へ戻ろうとする咲夜。
 彼女の足を止めたのは、箱が口にした聞き慣れた名前だった。
『レミリア・スカーレットの真実』
 時を止めたわけでもないのに、己の動作が完全に止まる。期を逸しまいと畳みかけるように箱は続けた。
『流水は弱点に非ず。彼女は泳げる、渡れる』
「何を言い出すのかと思えば、私がそんなことを知らないとでも思ったのですか? 吸血鬼の弱点ぐらい知っていますよ」
『だからこそ真実。あなたは騙されている。本当は、吸血鬼の弱点など一つしかない』
 馬鹿な、と鼻で笑えれば話は此処で終わっていただろう。こんな真実、人間が実は全員不死者でしたなんて与太話と同レベルだ。真面目に聞く必要もない。さっさと部屋に入って、箱を置いて、早く本をレミリアの元へ届けなくては。
 だが咲夜は微動だにしなかった。頭では理解しているのに、身体が動いてくれない。
「じゃあニンニクや鰯の頭や……」
『食べ物の好き嫌いなら人もある。日光こそが本当の弱点。その他の弱点は隠れ蓑に過ぎない』
 確かに、咲夜は以前より不思議に思っていたことがある。夜の帝王を名乗るにしては、弱点が多すぎやしないかと。鬼も大概弱点が多いけれど、吸血鬼はそれ以上に多い。
 だが、もしもそれらが隠れ蓑であるとすれば。日光という唯一の弱点を隠すために、聖水だの十字架だのをダミーとして紛れ込ます。人間は無意味な対抗策をひっさげて、あげくに殺されてしまうのだ。
 嘘が嫌いな鬼と違って、吸血鬼ならば有り得る話に聞こえる。
「だったら!」
 足下の床が、消えてしまったかのような浮遊感に襲われる。もしも、吸血鬼の弱点が本当は一つだけしかなく、それが日光だというのなら。
 本当は流水の上を飛ぶことも、泳ぐことも出来るのだとしたら。
「お嬢様はどうして!」
 私を助けてくれなかったんですか。
 悲痛な叫びに、箱は何も答えなかった。










 夜空を見上げながら、クッキーを貪る門番。何ともシュールな光景だが、本人は至って気にしていなかった。
 咲夜から助けたお礼だとクッキーを貰ったのはいいけれど、生憎美鈴にはティータイムを楽しむような趣味は無かった。かといって、酒のツマミには少し合わない。仕方なく、こうして仕事の合間にボリボリと感触を楽しんでいるのだった。
「あれ、珍しいもの食べてますね。クッキーですか?」
 音か匂いに釣られたのか、小悪魔が興味津々といった顔つきで館からやってくる。これで手元にあるのがツマミだったら、軽く一杯なんてことも可能なのに。咲夜からクッキーから貰うという行為は嬉しかったが、やはりどうにも洋菓子は自分に合わないようだ。
 ピンク色の包みを小悪魔の方へ突き出す。
「いります?」
「いいんですか? いいなら、遠慮無く」
 丸い形のクッキーを手に取り、喜色満面で口の中へと運ぶ。だが、しかめっ面に変わるのにさほど時間は掛からなかった。
「な、なんですかこれ? しょっぱいし、妙に固いです。美鈴さんが作ったんですか?」
 まあ、そう言われても仕方のない出来だった。ただ、自分が作ったとしても、もう少しマシな出来にはなるだろう。
「いえいえ、咲夜さんが作ってくれたんですよ」
「咲夜さんが!?」
 驚くのも無理はない。紅魔館の炊事場を預かっているのは咲夜なのだ。小悪魔も、咲夜の料理を一度ではなく何度も味わっているはず。だとしたら、このクッキーが咲夜の手製だなんて舌が認めても脳が受け付けないだろう。
 かくいう美鈴とて、何度も味わってから、ようやくこれが不味いと判断できた。げに恐ろしきは先入観と言ったところか。
「……そういえば、最近咲夜さんの様子がおかしいですよね。なんか凄く落ち込んでるというか、今にも死にそうというか」
「死神の仕事を増やしそうな顔色をしてるけど、あれは落ち込んでるというより」
 また一つクッキーを頬張り、頑丈で顎で噛み砕く。
「辛いことを考えないようにしてるだけのように見えるけどな……」
 袋の中には、まだまだクッキーが残っていた。










 このところ、紅魔館では調度品や食器類の破損数が鰻登りに増えていた。被害がどれだけあったのか、纏めた書類を見ながら咲夜はため息をつく。
 当然だ。破損の半分以上に、自分が関わっているのだから。このままでは、メイド長なんて肩書きが剥奪される日もそう遠くない。わかってはいるのだ。しかし、わかっているから解決できるなら障害を越えるのに苦労はいらない。
 その日も、咲夜は書類に新しい被害を加えた。レミリアのティータイムの真っ最中だった。不意に手を滑らし、ティーカップがただの欠片へと変わる。最悪なことに、それはレミリアお気に入りのティーカップだった。これには、さすがに周りのメイド達も顔を青くする。
 咲夜は石膏像のように白い顔で、何度も謝罪しながら欠片を拾い集めた。集めたからティーカップが復元されるわけではない。ただ、何かしていないと泣きそうだったのだ。
「別に構わないわよ。ここで壊れたのなら、それはそういう運命だった。私が弄りでもしない限り、ティーカップの破壊を防ぐことなんてできなかったの」
 内容こそ咲夜を気遣ったかのようであったが、声音はまるで突き放すかのように冷たい。ただ、不思議ではあった。咲夜の粗相は増える一方なのに、どうしてかレミリアはそれを咎めようとしなかった。それどころか、逆に今のように半ば慰めるような言葉をかけるのだ。
 メイド達はお嬢様も優しくなられたと、手放しに喜んでいるが咲夜はそう思えない。本当に慰めているにしては、レミリアの表情や声音に優しさがない。まるで怒りや悲しみを抑えながら、無理して優しい言葉を投げかけているような感じだ。
 おそらく、自分に呆れているのだろう。溺れた後にしていた想像は、まるっきり正しかったに違いない。不甲斐ない従者には、最早叱りの言葉すら必要ないということか。レミリアは目をかけた者には厳しい言葉を与える代わりに、どうでもいい者に対しては至極適当な返答しか返さない。
 だが、それはレミリアが泳げると仮定した時の話。あの胡散臭い箱の言葉を信じるならという前提は、どうしても眉に唾を付けたくなる。
 だったら、今のレミリアの態度はどういうことか。レミリアが意味もなく、厳しい言葉を封印したりするのか。何度も自問自答するが、箱の言葉を裏付けるだけだ。むしろ、すればするほど箱を信じている自分がいる。
 お世話をしながら、何度も問いただしたい衝動に駆られていた。本当は、流水の中を泳げるんじゃないですか。しかし、レミリアの口から直接答えが出てくるのを恐れて、寸前でいつも踏みとどまっていた。
 今日も、そればかり考えていたがゆえの失敗である。拾い集めた欠片をゴミ箱に捨てて、書類に新しい破損報告を書き加える。美鈴などは気晴らしに、レミリアと散歩に出たらどうかと言っていたが日傘が無いのでそれも不可能だ。レミリアの話によれば、先日うっかり傘を壊してしまったらしい。かといって、夜の散歩にはお供を連れていかない。
 炊事洗濯掃除で迷惑をかけ、散歩に付きそうわけでもない。ならば、自分の存在価値など無いのでは。浮かぶ思考は、虚しい結論を招くものばかり。疲れているのかもしれない。心も、身体も。
 吐いたため息は、いつにもなく重い。こんなにも悩むなら、いっそレミリアに全て話して貰う方が楽かもしれない。いや、もしもレミリアの口から直接聞けば、自分は二度と立ち直れないかもしれない。ループする思考に対し、結論も同じようにループする。
 しかしそこで、ふと思いつく。あの箱は弱点についての真実を語ったのかもしれない。だが、レミリアの気持ちについて語ったわけではない。本当は、レミリアが何を思っているのか。聞けば、答えが返ってくる可能性はある。
 書類を書き終えてすぐに、咲夜は物置へと向かった。幸いにもまだ掃除は行っておらず、箱もあの時のまま同じ場所に置かれている。
「あ、あの……」
 恐る恐る話しかけるが、箱はうんともすんとも言わない。ひょっとしたら、喋り始めるには何か条件がいるのでは。あの時は気づかずにその条件を満たしていたのだとしたら、一体何が条件になるのだろう。
 下から上から箱を眺めるけれど、それらしきスイッチがあるわけでもなく。そもそも、あの時は箱に触れてもいないのに喋りだしたのだ。条件があるとすれば、箱は関係ない。 自分の行動を振り返る。部屋に入り、本を探し、出ようとしたら喋り出した。とすれば関係ありそうなのはあの本だが、とてもそうとは思えない。内容は単なるお伽噺だし、仮に条件になっているとしても今はレミリアが持っている。まさか部屋に忍び込んで取ってくるわけにもいかないし。
 箱に頼ろうとした自分が愚かだったようだ。箱を戻そうとしたところで、声をかけられた。
「そこで何をしているのかしら、咲夜」
 廊下から聞こえてくる声。背中越しにありながら、顔も姿も一瞬にして思い浮かぶ。平常ならば聞き惚れそうな凛々しい声も、今にあっては恐怖の象徴でしかない。
 こんな場面を見られるなんて。後悔と畏怖に苛まれながら、ゆっくりと咲夜は後ろを振り向いた。
 レミリア・スカーレットが、淡々とした表情でこちらを見ている。
「聞こえなかった? そこで、何を、していたのかしら?」
「あ、いえ、その……」
 言い含めるような声に、身体が小刻みに震え始める。奥歯がカタカタと音を鳴らし、漏れ出る言葉にレミリアが期待するような意味は無い。窓がないせいか、ただでさえ冷たい室内の温度が凍えるほど下がったような幻覚に襲われる。
 ただただ怯える咲夜に対し、レミリアの視線が手の中に移った。まずい。思った時には手遅れだった。
「ふーん、随分と面白そうなものを持ってるじゃない。ねえ、咲夜」
「これは、いえ、違うんです!」
「名前も無いただの箱だけど、確かそれには愉快な機能が付いていたわね。確かそう、真実を見通す程度の能力。教えてくれるかしら。あなたは、どうしてそんなものを持っているの?」
 訊かれたくなかったことを、容赦なく訊いてくる。
 突発的なこともあったが、仮に準備をしていたとしても答えることはできなかっただろう。答えれば、レミリアは間違いなく失望する。主を信じることが出来なくなった、従者を見限る。
 沈黙が唯一の解答だ。例え、真実を言い当てられたとしても。
「真実は自分の手で掴むものよ。それを楽に勝ち取ろうなんてのは、感心しないわね。咲夜、それを渡しなさい」
「……はい」
 断っても仕方ない。素直に箱をレミリアに手渡す。
 これで真実を知るには、レミリアに尋ねる他ない。
 意を決し、咲夜は口を開く。
「あの、お嬢様!」
「何?」
 箱を眺めていたレミリアが、怪訝そうな瞳でこちらを見る。ただそれだけで、咲夜は二の句を継げることができなくなった。
 呼び止めておきながら黙りこくる咲夜に呆れたのか、レミリアは素っ気ない態度で踵を返す。
「用が無いなら呼び止めないでちょうだい」
 レミリアの姿が消えるまで、咲夜は何も言うことができなかった。










 本人に問いただすこともできず、箱もレミリアの元へと消えていった。後、自分に出来ることと言えば調べることぐらいである。
 好意的に解釈すれば、レミリアの言葉は己の手で調べろと言っていたようにも聞こえる。だが、レミリアの真意など知っている者はどこにもいない。勿論、文献になど載っているはずがない。調べるとすれば、それは吸血鬼と流水の関係。本当に渡れ、泳げるのか。それを知ることこそが、最初にすべきことのように思えた。
 レミリアは泳げないから咲夜を助けることができなかったのか、それとも泳げて敢えて見捨てたのか。
 この手の話を調べる上において、頼れる人物は二人しかいない。知識の半獣、上白沢慧音。そして動く大図書館、パチュリー・ノーレッジ。吸血鬼の歴史という観点から見れば慧音の方が頼られそうだが、パチュリーは何と言ってもレミリアの親友である。尋ねるなら、パチュリーの方が適任だ。
 レミリアにばれないように、咲夜はこっそり大図書館へと訪問する。パチュリーはいつものように、文献へ目を通している真っ最中だった。
「レミィが本当は流水の中を泳げるか、ですって?」
 咲夜の質問に、パチュリーは呆れた表情を返す。
「前にも言ったでしょ。吸血鬼の弱点。吸血鬼は……」
「もしも、それが本当の弱点を隠す為のフェイクだったとしたら。本当は流水の中を泳げてもおかしくないですよね」
「……まぁ、それはそうだけど」
 納得いかない顔だが、否定はできないようだ。
「でも、それはあくまで可能性の話よ。否定できないからといって、必ずしも真実であるとは限らない。嘘を吐くかもしれないけど、レミィに訊くのが一番ね。もっとも」
 チラリと咲夜を見る。
「その様子だとそれも無理そうね」
 見透かされていた。だが、パチュリーが特別なのではない。おそらく美鈴にも小悪魔にもわかるのだろう。それほど、自分は追いつめられていたのだ。
「でしたら、上白沢のところに行って来ます」
「あれも大概、既存の歴史しか知らないから。吸血鬼が流水に云々訊いても、私と同じ答えしか返さないでしょうね」
 誰に訊いても同じ答え。当たり前だ。咲夜が尋ねているのは、とても滑稽で既存の価値観を崩すようなものなのだから。実は幻想郷に特別な能力を持っている者など一人もいないのでは。そんなことを訊いているのに等しいぐらい馬鹿げている。
 パチュリーの言うことももっともだ。慧音に訊いたところで、何の意味もないだろう。
「でもそうね、あるいは鬼なら何か違った答えを出してくれるかもしれないわよ。魔女よりかは遙かに吸血鬼に近い存在だし」
 鬼もまた、吸血鬼と同じぐらい弱点の多い種族である。なるほど、彼女らならば何か知っているかもしれない。それに、鬼は嘘をつかない。彼女がもしも咲夜の考えを裏付けてくれるのなら、それは紛れもない真実となる。
 お礼もそこそこに、咲夜は紅魔館を後にした。
 問題は、どちらの鬼に尋ねるかだ。咲夜の知っている限り、鬼は現在二人しかいない。伊吹萃香か、星熊勇儀か。ただ勇儀とは面識が無いし、住んでいるのは遙か地中深くと聞く。訪ねるには少々手間が掛かりすぎる。とはいえ、萃香も最近では天界に入り浸っており、行く手間という事を考えるのならどっちもどっちと言えよう。
 博麗神社にいてくれたらいいのだが。咲夜の願いを聞き入れてくれたのか、はたして萃香は神社にいた。境内に寝転がりながら、酒を楽しんでいる。食べてすぐ横になると牛になるそうだが、はたして横になりながら酒を飲む彼女は何になるのか。
「あん? メイドがこんなとこまで、何の用? お酌してくれるなら、大歓迎だよ」
「残念ながら、私はあなたに少しばかり聞きたいことがあるだけです」
「聞きたいこと、ねえ」
 意地の悪そうな輩が浮かべそうな笑みで、瓢箪へ直に口をつける。どれだけ飲んでいたのか、三メートルも離れているのに酒臭い。思わず咲夜は口元を隠し、顔をしかめた。酒は強いが、酒臭いのは苦手だ。
「まあ、とりあえず駆けつけ一杯。話はそれからでも遅くはないよ」
 どこに隠していたのか、両手を合わせたぐらいの赤く大きな杯を取り出す。駆けつけ一杯という割には、些か大きすぎやしないだろうか。ありありと不満が顔に出ている咲夜を無視して、萃香はなみなみと杯に酒を満たした。
 鬼の酒好きは知れ渡るところ。この酒を飲み干さなければ、本当に萃香は何も喋ってはくれないだろう。引き返すわけにもいかず、咲夜ははらを決めた。杯を受け取り、一息に酒を飲み干す。喉が湯たんぽにでも押しつけられたように熱くなった。
「うーん、いい飲みっぷりだねえ。それじゃあ、もう一杯」
「これを飲んだら聞いてくれるという約束では?」
「酒より話の方が大事なのか。随分と珍しいね、あんた」
 何事より酒が大切な鬼に言われたくない。
 仄かに熱くなる頬を押さえて、深呼吸で呼吸を整える。酒は抜けないけれど、気持ちは落ち着いた。咲夜は改めて萃香に向き直り、吸血鬼の弱点について尋ねた。
「吸血鬼が本当は流水を泳げる、か。ふーん、言われてみれば素直に弱点を広める馬鹿もいないからねぇ。まあ、私ら鬼は別だけど」
 鬼の弱点は、吸血鬼ほど致命的なものではない。炒った豆にしろ柊の葉にしろ、触れば溶けて消えるわけでもなし。せいぜい、嫌がる程度のものだ。
「だけど、嘘をついてまで弱点を隠すような真似はしないと思うんだけどなあ。吸血鬼はさ、ほら、誇り高い連中でしょ。誇り高い奴が、嘘ついて自分の弱点を誤魔化したりはしないと思うよ」
 レミリアの誇り高さは、最早言わずもがなである。それは、誰よりも側にいた咲夜が一番よく知っている。
「現に、レミリアは十字架が平気だって言ってるし。弱点を誤魔化す為なら、そんなこと言う必要ないじゃん」
 萃香の理論は、非の打ち所が無いくらい完璧だった。疑う余地など、微塵も無い。
 だというのに、咲夜の顔色は優れない。
「だったら、お嬢様はどうして私に何も言わないんでしょう」
「うん?」
「最近のお嬢様は、私が何か粗相をしても叱ってくれない。それに、何か隠された真実があるかのように言われていました。私には、それが流水の中を泳げるというものであるとしか思えない」
「……………………」
 本当は泳げるに咲夜を助けなかったのは、不甲斐ない従者を見限るため。誇り高い吸血鬼にとって、足を滑らせて溺れる従者など必要ないのだ。そうして見限った者を注意したところで、無駄手間に終わるだけ。今も近くにいさせて貰っているのは、ひとえに紅魔館の人材不足があるからだろう。
 もしも、代わりの人物が見つかったのなら即座に自分は首を切られる。ひょっとしたら、文字通りの意味で。
「端から疑ってかかってる奴に、何を言っても無駄だったねぇ。いやぁ、結論が出てるなら私に聞かないで貰いたかったよ。ああ、酒が不味くなったじゃないか」
 不機嫌そうな顔で、萃香は愚痴をこぼす。咲夜に反論する余地はなかった。
 出来ることといえば、早くこの場を去ることだけ。これ以上いたところで、出してしまった結論がひっくり返ることはない。
 礼をして去ろうとする咲夜の背中に、萃香が言葉を投げかける。
「そういやさ、日傘はどうしたの?」
「は?」
 飛ぼうとしていた咲夜は思わず動きを止めた。
「いやさ、話を聞くと散歩中に湖へ落っこちたんでしょ。だったらさ、当然日傘を持っていたんだよね、あんた」
「ええ、まあ。もっとも、私が落ちた時にはお嬢様が持っているようでしたけど。それが何か?」
「何かじゃなくて、その日傘はどうしたかって聞いてるの」
「確か……壊れたと聞いています」
 途端、萃香は面白そうな顔で肘の上に頬杖をついた。さながら山賊の頭のような姿勢である。
「壊れたねぇ。ふーん、吸血鬼らしいなぁ」
 意味深な台詞を吐きながら、ニタニタと小馬鹿にするような笑みを浮かべる。何だか馬鹿にされているようで、咲夜は微かな不快感を覚えた。咎めるような口調で、突っかかる。
「何が吸血鬼らしいんですか?」
「いやいや、こっちの話。ただ、どうしても悩みを解決したいってんなら日傘について調べてみると面白いことがわかるかもよ。もっとも、自分の出した結論を信じるって言うなら無駄な調査に終わると思うけど」
 鼻先にニンジンをぶらさげられた気持ちになる。そこまで言われては、無視してしまうこともできない。咲夜は鋭い視線を萃香にぶつける。萃香は飄々と酒を飲み、さあどうする、と賭け事のように訊いてきた。










 紅魔館における備品管理は、主に小悪魔の仕事だった。パチュリーの方が詳しいけれど、彼女には彼女のやることがある。とはいえ、小悪魔はパチュリーの使い魔。本来なら備品管理すら任せるべきではないのだが、人材不足だからと文句を言うものは一人もいない。勿論、当人も。
 大図書館の蔵書を整理するだけでも大変なのに、紅魔館全体の備品を管理するとは。さすがの咲夜も、感心さぜるを得なかった。
「あー、お嬢様の日傘はやっぱり廃品扱いになってますね。既に廃棄された後ですから、さすがにどこにあるかまで確認できません」
 リストを眺めながら、日傘の在処を教えてくれる。廃品となればそれはもう備品でなく、ただの廃棄品。捨ててしまったものなのだから、所在が分かるわけがない。日傘を調べろと言われたわりに、調査は早くも暗礁に乗り上げていた。
 萃香は何を言いたかったのだろうか。日傘が廃棄品になったところで、それが咲夜の悩みを解決してくれるとは思えない。
「あっ、咲夜だ!」
 無邪気な声に振り向く。途端、胸の辺りに強い衝撃を受けた。
 下を見れば、フランドールが人形を扱うように抱きついてきている。
「ねえねえ、暇なら遊んで!」
「すいません、どうしてもやらなくてはいけないことがあるので。遊ぶのはまだ今度にしてください」
 フランドールの頼みをやんわりと断る。いたく残念そうな顔をしていたが、すぐに笑顔へ戻った。大方、次は美鈴のところへ行くのだろう。咲夜と違って、美鈴はフランドールの頼みをあまり断らない。
 門番の仕事を疎かにするのはどうかと思っていたが、シエスタされるぐらいならフランドールの相手をしてもらった方がまだマシである。
 駆けだしたフランドールはしかし、小悪魔の方を見て動きを止めた。
「あっ! ねえ、私のぬいぐるみ見つかった?」
 どうやら、フランドールも頼み事をしていたらしい。小悪魔はこめかみに指をあて、苦々しい顔で答える。
「見つかったことは見つかりました。でも、妹様。あれ、握りつぶしたでしょう?」
「んー、どうだったかな?」
「胴体が悲惨な姿で発見されました。お願いしますよ。これで、ぬいぐるみが壊れたの何十体目だと思ってるんですか」
「知ーらない!」
 子供のように答えをはぐらかし、フランドールは小悪魔を無視して図書館から出ていく。後に残された小悪魔は、リストを小脇に抱えて深いため息をついていた。
「まったく、妹様にも困ったものです」
「わかりますよ」
 苦笑しながら、答える咲夜。自由奔放なところには手を焼かされるが、あの明るさには救われるところがある。暗い気持ちの咲夜だったが、フランドールを見ている間だけは少しだけ明るい気持ちになれるのだ。
 それを思えば、ぬいぐるみの一つや二つや軽いもの。小悪魔には悪いけれど。
 クスリと笑い、笑顔が凍った。
「咲夜さん?」
 小悪魔の声が脳まで届いてこない。
 頭の中を埋め尽くしていたのは、不意に閃いたある推測だった。
 確かに、これなら。
 ぶつぶつと小声で呟きながら、腕を組む。何かを閃いた発明家なら似たような格好をしそうなものだが、端から見ている小悪魔にとってはいずれにしろ不気味に映っただろう。
 怪訝そうな声で何度も、咲夜さん、と話しかけてきている。
 だが、咲夜は答えない。
 筋道は立った。しかし、確かめる術がない。
 レミリアに尋ねたところで素直に答えるわけもなし、かといってまさかレミリアを湖に突き落とすわけにもいかない。
 だとすれば、後は一つ。
 訝しげな小悪魔を後目に、咲夜は里へと向かうことにした。まずは、日傘を買わなくては始まらない。
 全ての真実を、明らかにするためには。









「本当は流水の上を渡れて、泳げるんですって?」
 パチュリーの質問に、レミリアは答えなかった。
 無言で足を組み、小悪魔の入れた紅茶に口をつける。表情はあまり優れない。小悪魔の入れた紅茶は、あまりお気に召さなかったようだ。
「咲夜がいきなり言い出したから、何事かと思ったわよ。大方、またロクでもないことでもめてるんでしょうけど」
「さあてね。咲夜が何を悩んでるのかまでは知らないわよ」
「嘘ね。レミィは嘘をつくとき、必ず唇を舐めるんだもの」
 はっとして、レミリアは唇を押さえる。
「ああ、やっぱり嘘だったのね」
「だ、騙したわね!」
 何とも古典的な手だが、これぐらいシンプルな方が引っかかりやすい。パチュリーは笑いもせずに、本を閉じた。
「あなた達が何でもめているかは知らないけど、私は積極的に介入しようとは思わない。ただ、それで出る影響にまで目を瞑ることはできないのよ。わかるわね、レミィ」
「わかってるわよ、このままじゃまずいことくらい」
 炊事洗濯の中心を担う咲夜が不調だと、それは即ち紅魔館の生活が行き届かないということである。現に、ここ最近はまともな紅茶と食事にありついていない。パチュリーの場合は小悪魔が臨時として入れているものの、やはり咲夜には目劣りする。
 食事も簡易食ばかりになり、美鈴からも味気なくて困るというクレームが届いていた。誰と誰が気まずい関係になろうがパチュリーには関係ないことだけど、それで美味しい食事が無くなるのは困る。
「でもね、事はそう簡単にいかないの」
「どうせ、墓穴を掘ったのはあなたの方なんでしょ」
「……咲夜も悪いのよ」
「つまり、レミィが悪いと」
「うぐっ……」
 苦々しい顔で、ティーカップを置く。無論、紅茶が苦かったわけではない。
 おそらく、レミリアも咲夜の悩みを理解はしているのだろう。ただ、解決策が思いつかないのだ。
 それは咲夜も同じ事で、だからこそあんな質問をしてきたのだろう。小悪魔の話によれば一度紅魔館に戻ってきたらしいが、またどこかへ行ってしまった。何かを掴んだのなら良いのだが。
 パチュリーはため息をつく。どれだけレミリアに否があろうと、目の前の友人はそれを認めない。そして歩み寄らない。だから、この問題を解決できるとすれば、それは咲夜の方からなのだ。
 だから、もしも咲夜が諦めてしまったら全ては完全に終わってしまう。
「お嬢様」
 だが、どうやらそれだけは避けられたらしい。
「散歩へ行きませんか?」
 音もなく現れた咲夜の手には、一本の白い日傘が握りしめられていた。










 このところ晴天が続いた為か、湖の周りは以前ほどぬかるんではいなかった。これなら、足をとられる心配は無いだろう。
 湖の方から吹く風は冷たく、日の暖かさと相まって心地よい。レミリアは目を細め、風を感じるように顔を上げた。咲夜は風を遮らないように傘の位置をあげる。だからといって、直射日光を浴びせるような真似はしない。
 紅魔館で働きはじめた頃はよくミスをしていたが、今ではもう慣れてしまった。だからこそ、レミリアは咲夜以外と散歩をしたがらない。するとしても、夜に一人だけだ。それが嬉しくて、誇らしかった。
 お嬢様に頼って貰える。お嬢様に信頼して貰える。それが咲夜の何よりの喜びであり、生き甲斐であった。
 だが、その信頼が揺らいでしまった。己の失敗により。
 取り戻さなくてはならない。例え、これで怒りを買うようなことになっても。自分は、確かめなければ前へ進めない。
 レミリアも言っていたではないか。
 真実は、自分の手で掴み取るものだと。
 目的の地点まで来たところで、咲夜はわざと足を滑らせた。
 物理法則に従い、咲夜の身体は湖へと投げ出される。あの時と、まったく一緒だ。
 違うところがあるとすれば、自ら身体を投げ出したことか。
 冷静な意識なままで、身体は湖の中へと落ちていった。激しい衝撃が身体を襲い、そして無酸素の世界が訪れる。
 屈折した世界にありながら、レミリアの姿はこちらからでもよく見えた。
 ああ、と心の中で後悔する。
 こんなことをしなくても、自分はレミリアの気持ちを最初から理解できたではないか。
 あの時、溺れながら咲夜は同じ光景を見ていた。
 だけど混乱していたのか、気づくことはできなかった。
 あんなにも、心配そうな表情をしているレミリアの姿を。
「………!」
 何か叫んでいる。だが水の中までは届かない。
 居ても立ってもいられず、咲夜は岸の方へと泳ぎ出す。もう、何も確かめる必要などない。
 水の中から上がった咲夜を待っていたのは、カリスマの欠片もないレミリアの姿だった。
 日傘は彼女の手の中にある。当たり前だ。日光は吸血鬼の弱点なのだから。
 ただ、もう二度と使い物にはならないだろう。傘の柄は吸血鬼の握力に負け、砂糖菓子のように壊されていた。
 萃香の言葉が、ここに繋がる。
 助けたいのに、助けられない。流水を渡れず、泳げずという制約がある限り。
 だからレミリアに出来ることなんて、ただ見ることしかない。
 そのもどかしさと苛立たしさが、あの傘の柄なのだ。
 咳き込んで水を吐く咲夜。岸へ戻る際に、少しだけ水を飲んでしまったらしい。
「咲夜!」
 切羽詰まったレミリアの声。慌てて駆け寄ってきた主を見て、咲夜は自らの愚かしさを嘆いた。何を迷っていたのだろうか。不遜にも、主を試すような真似をしたのだろうか。
「も、申し訳ござい、ませんでした」
 溺れかけた者に謝れ、さしものレミリアも戸惑いの表情を隠せない。
「どうしてあなたが謝るのよ?」
 言うべきか、言わぬべきか。いや、そんな贅沢な選択肢など今の自分にありはしない。例えここでクビを切られたとしても、それは自分が悪いのだ。
「あ、主を、試すような真似をして……」
 聡いレミリアだ。たった一行の言葉で、全てを悟る。
 壊れかけていた傘の柄が、激しい音と共に砕け散った。双眸は鷹のように鋭くつり上がり、昼だというのに紅い瞳が煌々と輝く。ただ視線が合っただけで、咲夜の身体から震えが止まらなくなった。
「そう、なるほど。私を試していたのね」
 紡がれる言葉は、聞いたことがないほど冷たい。フランドールと戦っている時も、機嫌が悪い時も、こんな声色を出したことはなかった。
 初めて見る。これが、レミリア・スカーレットの怒り。
「たかが人間如きが、私を試していたというのね。本当、随分と愉快な話じゃない。ねえ、咲夜」
 思わず、命乞いの台詞が口から飛び出しそうになる。だが、自分にはそんな権利すら許されていないのだ。この事態を招いたのは、全て自分の責任。黙して結末を待つことが、ただ一つだけ許された権利だ。
 何も言わず、固く口を閉じる咲夜。レミリアは凍えるような微笑を携え、言った。
「身の程を知りなさい」
 何も反応できないほどの速度で、レミリアの手が咲夜の首へと伸びる。鋭く尖った爪先が、針のように喉へ刺さった。
 刃物で刺されているような痛みと、呼吸ができない苦しみが、同時に咲夜を襲う。
 脳が酸素を求める中で、咲夜の双眸が見ていたのは、やはりレミリアの姿だった。思い起こせば、溺れていた時も見ていたのはレミリアの姿。
 そして、浮かぶ印象も何一つ変わらない。
 例えその表情が怒りに満ちていようと、例えその手が自分の首を絞めていようと。
 十六夜咲夜が信じるのは、レミリア・スカーレットただ一人なのだ。
「もっとも」
 急に、レミリアが手を離す。先ほどの比ではないほど咳き込み、肺は慌てて酸素を求めた。
 てっきり、このまま絞め落とされるのかと思っていたのに。咳き込みながら怪訝そうな表情を浮かべる咲夜に、レミリアはそっけなく答える。
「今回だけは許してあげる。おあいこってことで」
「?」
 おあいこと言われても、咲夜には何のことだか理解できない。事情を訊こうにも、呼吸はまだ治まってくれない。
「ただし、この次はないものと思いなさい。私は人から試されるのがニンニクと同じぐらい嫌いなんだから」
 咲夜は頷いた。
「それじゃあ、とりあえず里へ傘を買いにいくわよ。あなたのせいで、二本も駄目にしちゃったんだから」
「は、はい、わかりました!」
 呼吸もようやく落ち着いてきた。
 レミリアは咲夜が立ち上がるのを待たず、さっさと里へ向かい始める。咲夜は慌てて、レミリアを止めた。
「その傘で歩くのは少し不格好です。館に戻りましょう。予備の傘を買ってありますから」
 立ち止まり、振り向いて不機嫌そうな顔を見せる。
「私、あなたのそういうところが嫌いよ」
「存じております」
 ふん、と鼻息を荒くしながらもレミリアはちゃんと戻ってきた。
 手に握った傘はもうボロボロだけれども、捨てられることはないだろう。咲夜はあの傘を引き取るつもりだった。戒めと、証の象徴として。
 もっとも、レミリアは嫌がるだろうから密かに事を進めなくてはならない。
 主に見られないように、こっそりと咲夜は笑った。










 ボロ切れのような服を纏い、倒れこむように大図書館へ入ってくる美鈴。慌てて駆け寄った小悪魔が支えなければ、本当に倒れ込んでいただろう。
「あら、随分とやられたみたいね」
「美鈴、弱ーい」
 諸悪の根元は、パチュリーと一緒にお茶を楽しんでいた。可愛い顔をして、能力が桁外れなのだから恐ろしい。
 小悪魔に支えられながら、ゆっくりと美鈴は椅子に腰を下ろす。途端に、疲れが雨のように身体全体へと降り注いできた。ここがベッドの上ならば、今頃夢の世界へ旅立ったいただろう。
 出された紅茶を飲みながら、ふと咲夜のことを気にかける。
「そういえば、咲夜さんは大丈夫ですかね?」
 パチュリーは本に視線を落としながら答える。
「大丈夫でしょ。一緒に散歩へ出かけたくらいだから、きっと何か思いついた事があったのよ」
 どういう悩みを抱えているのかは知らないけど、咲夜から動いたのなら解決も時間の問題か。美鈴はホッと胸を撫で下ろした。
「そういえば、パチュリー様。お嬢様からこのような物を預かっているんですけど」
「どれかしら?」
 話の隙を狙って、小悪魔がパチュリーに本と箱を手渡す。
「何ですか、それ?」
 本と箱を指さしながら、美鈴は尋ねた。パチュリーは説明しようとしたのだが、本は隣にいたフランドールに奪いされてしまう。こうなっては、手出しが出来るのは姉のレミリアしかいない。
 諦めて、パチュリーは箱を手に取った。こちらは見窄らしすぎて、フランドールの目にはとまらなかったようだ。
「これは特殊な箱で、中に入っている小さな箱と通信ができるのよ。ほら」
 そう言って開いたものの、中には何も入っていなかった。
「多分、レミィがまだ持っているんでしょうね。ああ、なるほど……」
 急にパチュリーが黙りこくる。何か新しい研究でも思いついたのか。何にせよ、美鈴が口を挟む余地はない。
「妹様、それ面白いですか?」
「んー、なんかこの鳥がむかつく」
 痛む身体を押さえながら、後ろから本を覗き込む。片言の鳥が、主人公を惑わせようとしている場面だった。
 すっかり感情移入してしまったフランドールから見れば、その鳥は大層不愉快なのだろう。本を破壊しないことを願う。
「どういうストーリーなんでしょうかねえ」
 独り言のつもりだったが、思考の世界から帰ってきたパチュリーが答えてくれた。
「主人公は大きなミスをしてしまった。友人はそれを助けようとしたけれど、怖くてできなかった。だけど友人は、主人公が強い自分を慕ってくれると思っていた」
 いや、どうやらまだ自分の世界から戻ってきていないらしい。
「そこで友人は鳥に化けて、主人公を騙したのね。結局、信頼よりも誇りをとった。本当は怖くありませんでした。ただ、情けないあなたを見捨てただけですよ。そう思いこませることで、友人は主人公に自分を強いんだと思わせた」
 そこまで言って、パチュリーはまた押し黙る。
 美鈴は肩を落とし、再び紅茶に口をつけた。
「しかしまあ、それがストーリーだったとすると……」
 呆れた顔で、美鈴は言った。
「本末転倒な話ですね」
 小さな声で、パチュリーも続ける。
 まったくね。




 何が大切かは人によって違うもの。
 だからこそ争いが起き、すれ違いに苦しむのです。
 でも、願わくばハッピーエンドで終わりたい。
八重結界
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投稿日時:
2008/10/05 07:53:23
更新日時:
2008/10/07 22:53:23
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1. 6 慶賀 ■2008/10/05 13:23:44
テーマは疑惑でしょうか。レミリアと咲夜の
心情の変化が見事に話を運んでいってますね。
その技量が羨ましいなと。
2. 3 小山田 ■2008/10/07 11:23:50
長々と引っ張ってきたそのオチには、意表つく練り込まれたアイデアと読後感を突き抜ける爽快さが欲しかったです。
3. 6 yuz ■2008/10/12 15:13:57
何とも微笑ましい
4. 7 三文字 ■2008/10/12 20:53:32
箱の言葉は結局何だったんだろう?
自分の読解力不足かもしれませんが、そこらへんがイマイチ読み取れませんでした。
しかし、お互いにどこか未熟で、それゆえに小さな擦れ違いをして、でも最後には元通りになる二人が良かったです。
5. 6 あずまや ■2008/10/17 23:11:18
これだけ我の強いのが気の遠くなるような時間も過ごしてたらこんなこともあるでしょうね。最後にはどうにかなってよかったです。
6. 6 神鋼 ■2008/10/23 19:40:25
お嬢様と咲夜さんよりも他の紅魔館のメンツがいい味出してるなあ。
7. 6 deso ■2008/10/23 22:47:16
何が起こったのか、については途中で読めてしまいますが、良いお話でした。
8. 7 詩所 ■2008/10/26 20:46:18
パチュリーさん説明乙です。
無いほうがいいと言う人もいるかもしれませんが、私には必要でした。
9. 2 ミスターブシドー ■2008/10/27 00:58:19
致命的な弱点ではない、という説を信じればこうなるか。
この系統のネタはどうしてか咲夜さんが脆い気がするんだが……そういう方向に行きやすいのか。
こういう相互理解が阻害されている話は読んでいてしんどい。
事態の肝である流水問題に伴う紅魔主従のギクシャクが続き、読んでいる側もモヤモヤしてくるのだが、解決があっさりしていてモヤモヤを払拭しきれなかった。
悪い言い方をすれば、大仰に悩んだ割に「なーんだ」で済んでしまった感じ。
10. 4 眼帯つけた兎さん ■2008/10/30 06:38:24
信頼を求めることは夢を見てるのと同じことなのだろうか。
確たる絆を思い浮かべていた中で、咲夜が疑念を抱くという話は寝耳に水?
瀟洒な従者もただの人。吸血鬼には意地と威厳と驕りがある。
ならばすれ違うのも然り。
それでもやっぱり、ハッピーエンドはいいものだ。
11. 4 つくし ■2008/10/30 22:03:29
 なんだかお話に説得力を感じなかったのですがどうしてかしらん。おそらくお嬢様のほうの描写に説得力を感じなかったのだと思うのですが。それとも既に最初の方からビンビンにおうハッピーエンド臭でしょうか。予定調和に向かう苦悩は滑稽に見えます。
12. 6 PNS ■2008/10/30 22:14:23
序盤で驚かされ、途中まではワクワクして読んでいましたが、オチと最後の場面で拍子抜けでした。
全体的に話としては楽しめるんですが、やっぱり小道具の都合が良すぎやしないでしょうか……。
13. 5 じらふ ■2008/10/31 21:46:36
作中のお話に聞き覚えあるようなないような…はて?
さとりんのように心が読めるか、そうでなくとも萃香のように正直であり続ければ、すれ違いによる争いは減るんでしょうが、なかなか難しいですね、うん難しい(遠い目
14. 7 リコーダー ■2008/11/01 09:17:55
>「私、あなたのそういうところが嫌いよ」
>「存じております」
不覚にも気に入った。
細かく見ると、普通に湖に落っこちる咲夜は流石に瀟洒さ不足だろうとか、吸血鬼の弱点まわりの話が結局よく分からなかったとか突っ込みどころはあるのですが。
15. 5 藤ゅ村 ■2008/11/01 20:22:25
 咲夜さんが好きな人が書いたんだろうな、と思わせる作品。
 それだけに、咲夜さんのレミリアに対する依存心が強い。お互いがお互いなくしてはいられないような危うさとか、寄りかからないと立っていられない弱さがかなり前に押し出されているところとか。
 人間らしい、といえばそうなのかもしれませんが。
16. 3 木村圭 ■2008/11/01 22:02:06
レミリアが余計なことしなかったら開始一分で解決してたような。
それにしてもあの箱がフランドールの部屋にあったことが気になります。
いずれはこっそり会話しようとかそんな感じの空想をレミリアがうふふ。
17. 7 blankii ■2008/11/01 23:15:23
レミリアと水、というお題の使い方は何作もありましたが、今作は逆方向に仮定を向けて見せて、思わずオオッとか唸りました。
そこから導き出されるミステリ風味がスパイスとして効いていて、種明かしもしっかりしてくれているので読後感もスッキリ。
ただ、大仕掛けのどんでん返し、的なスペクタクルがなかったのは少し残念かな、とも思います。
18. 2 つくね ■2008/11/01 23:48:15
勘違いというのは恐いものです。しかし一方でレミリアが一生懸命話している様を想像すると微笑ましくもなる。
19. 7 時計屋 ■2008/11/01 23:52:04
申し分の無い佳作でした。
文章は流麗かつ読みやすく、ストーリーの組み立てもしっかりしています。
咲夜やお嬢様の葛藤の浮き立たせ方も見事です。小道具を交えたミステリの要素も面白い。
ただ大きく胸を打つものも無かった。感心はしても感動には至れませんでした。
的を外したアドバイスかもしれませんが、貴方が表現したかったことはもっと大胆に表現しても良かったのではないかと思いました。
20. フリーレス 八重結界 ■2008/11/05 21:44:43
全体的に少しあっさりしすぎたようです。
オチもあっけなく、インパクトに欠けていました。
やっぱり多少の齟齬はあろうとも、衝撃的で感動的な作品を書きたいものです。

>>慶賀様
咲夜さん側から見れば、確かにテーマは疑惑です。
ですが基本的なテーマはタイトル通りプライドだったりします。

>>小山田様
単純すぎると言われれば、返す言葉もございません。
精進が足りないのです。

>>yuz様
どれだけ困った出来事だろうと、端から見てると割と微笑ましいものです。

>>三文字様
バッドエンドも大好きですけど、やっぱり最後はハッピーエンドで終わらせたかったです。
箱の言葉については、私の力量不足ですね。申し訳ない。

>>あずまや様
人間も妖怪も、長生きすればするほど頑固で融通がきかないもの。
長ければ長いほど、こういう事態にも多く遭遇してきたのだと思ってます。

>>神鋼様
美鈴は動かしやすいので、ついつい便利なキャラクターとして使ってしまいます。
パチュリーも同様。そしていつのものように忘れられる妹様。

>>deso様
ひねりが足りませんでした。
シンプルイズベストも良いけれど、やっぱりインパクトが無いといけませんね。

>>詩所様
必要かどうか悩みましたが、そう言って頂けるのなら書いた甲斐があるというもの。

>>ミスターブシドー様
モヤモヤさせられたのなら、作者側としてはしてやったりなのですが、払拭できないならただ不愉快にさせただけですね。
オチがあっさりしていたのは、改良すべき点でした。

>>眼帯つけた兎さん様
本来なら相性がピッタリな二人ですけど、些細な楔を打ち込めば簡単に壊れてしまいそうな関係でもあるわけで。
それでも、あっさり戻ったりするのがこの二人なんだろうなあと思ったり。

>>つくし様
仲直りすること前提の喧嘩は、確かに見てる側からすれば滑稽に見えますね。
もうちょっと、修復不可能なまでにギスギスさせてもよかったのかもしれません。

>>PNS様
魔法の小道具を使ってしまえば、基本的には何でもありですから。
そういった意味では、かなり卑怯な手段だったのかもしれません。
都合が良く見えるのも、もっともな話だと思います。

>>じらふ様
すれ違えそうにない奴らがいるのもまた、幻想郷の面白いところ。
吸血鬼と人間。考えてみれば、これほどすれ違えそうな二人もいないと思います。

>>リコーダー様
咲夜さんの瀟洒さ不足に関しては、彼女だって人間だからドジだってするかもしれないと弁明してみる。
弱点まわりの話に関しては、説明不足でしたね。申し訳ない。

>>藤ゅ村様
主を支えるメイドではなく、主を支えたいメイドとして書きました。
原作重視で考えるならきっと、咲夜さんは前者なんだろうなと思います。

>>木村圭様
そもそも運命を見ていたのなら、事件すら起こらなかったような気も。今気づきました。
夜な夜なこっそり妹様と会話しようとするお嬢様。なるほど、これはうふふですね。

>>blankii様
後半のあっさり具合は、読者の予想を悪い意味で裏切ることになりました。
あっさりしすぎというのも、良くないようです。

>>つくね様
誰にもばれないように、こっそりと部屋で箱に話しかけてるんでしょうね。

>>時計屋様
纏めようと意識すぎて、インパクトや感動を忘れていたのかもしれません。
長い話を凝縮して、失敗したような感じになってしまいました。
この次は、もっと大胆に攻めてみようと思います。
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