CROSS RIVER

作品集: 最新 投稿日時: 2008/10/05 08:50:30 更新日時: 2008/11/13 00:49:48 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00





 ただ、川だけが滔々と流れている。
 どこに流れゆくのかも知れず、どこから流れくるのかも知れない、川だけが。

 河岸には苔むした岩肌。
 中空には昼も夜もない濃霧。
 そして辺りには、赤い舌を出して嘲笑うかのように咲き乱れる、彼岸花。

 それは、たとえ幾劫の時が流れようとも変わらないように思われる風景。

 そんな幻想の中にあって、いったい幾許の時が流れたのだろうか。

 不意に、場違いに暢気な死神の舟歌が聴こえた。
 だが不思議と船が軋む音も、櫂が水面を掻き分ける音もしない。
 無音の世界の中、死神の船だけがだんだんと大きく見える様は、白昼夢めいて見える。
 そして気が付けば、それは目の前に居た。
 彼岸花と同じ赤い髪を左右に縛り上げた少女。白い服の上から着流に似たものを羽織り、片手で大鎌を大上段に担ぎ上げている。
 粋でありながら少女としての華が薫る。これが舞台なら拍手の一つも聞こえたであろう。

「今日も乗らないのかい、お前さん」

 気さくに語りかける、その口調。
 軽佻浮薄に見えて、その底には死神らしからぬ人情深さが窺える。

「そのままそこに居ても良いことはないんだよ。幽霊は此岸にあっては実に不安定で、儚い存在だ。そのままいればこの世の気と混ざって無に帰るか、火車に旧地獄へと連れ去られる。お前さんはただでさえ、自殺という罪科を背負って審判に望まなきゃならない。想い、煩い、未練などは捨てて、来世でのやり直しだけを考えることが、今歩める最良の道なんだよ。暗夜に惑った挙句、心中なんて最悪の道を選んじまったお前さんには、今度こそ誤らない選択をしてほしいものだねぇ」

 そう言ってから、死神の少女はやれやれと言わんばかりに肩をすくめて嘆息する。

「などと言っても、詮無きことか。人の話に素直に耳を傾けるくらいなら、心中なんて馬鹿なことを仕出かしたりしない。増してや説教なんてするもされるも苦手なあたいにされてもね」

 臍が無い幽霊でもお茶が沸くってものさ――。
 そう言うや否や、死神はぽんと船から飛び降りて、此岸に降り立った。

「さてと、今をもってあたいは渡しの死神じゃなくなった。なにせ絶賛休憩中の身だからね。通りがかりの大鎌担いだ佳い女だとでも思いねえ。だから言うがね、いやあ、お前さんはなかなかたいした人間だと思うよ。昨今は人も幽霊も薄情なものばかりでね、それに比べれば人情なんて有りすぎる方がよっぽど在り難味がある。いやいや、それにしたって泣かせる話じゃないか――」

 川がせせる。
 彼岸花が哂う。
 目の前の鎌がそれに併せて揺ら揺らと踊る。

「心中した相手を此岸で待ち続けるなんてね。いや正確に言えば心中しそこなった、か。ここに来てないということは、相手はまだ生きてるってことだからね。今頃生死の境なのか、お前さんの後をどうやって追おうか思案中なのか。それとも――言わぬが華ってやつなのか、ね」

 嫌味な調子はなかった。
 だたそこには、人を惑い悩ませるものだけを切り捨てた、洗練された悲劇がある。

「しかしお前さん、待ってどうするね。あたいの船には一人ずつしか乗れない。向こう岸に着けばすぐに閻魔様の裁きだ。怖いお人だよ。間違っても二人連れ添って同じ道に、なんてことにはなりやしない。行く先は地獄の果てか冥界の只中か。そこを潜り抜けても次は来世だ。川の水を飲まされるかどうかして、前世のことなんて綺麗さっぱり忘れちまう。どのみち何も残りやしないんだよ。何もね」

 そう言って目を眇め、遠くを見やる。
 そちらには、ただ茫洋と広がる川しかない。
 きっとこの死神が、死神として在る時から、片時もその脳裏を離れることはなかっただろう、光景が。

「ん? なんだやっぱり説教なのか、って? いや違うんだ。こんな仕事をしているとね。日がな一日、川の水をただじっと眺めていると時折思うのさ」

 人は流れ行く川を見つめ、その中に人の生き死にを、出会いと別れを、魂の価値を、命の意味を、想い、表し、そして歌ってきた。
 ならば死神の目に映るものは何であるのか。

「人の魂なんて大河の一滴にすぎないんじゃないか、ってね」

 ただ、無常の諦観のみか。










 川の流れにただ身を浸す。
 秋の葉のさやぐ音が、ただほろほろと。
 川を伝って耳に届くのは、薄命尽きた枯葉の落魂の音か、ともがらを惜しむ紅葉の落涙の音か。
 山の時間はゆっくりと、されども時折性急に。
 最近は随分と騒がしかった。退屈は性に合わないが、こう次から次へと変事が起こっても身が持つまい。
 体に休養を、心に静養を。
 澱むことなく、荒れることなく。
 清流の中の水のように己を自在に――

 突然、轟音がした。
 他ならぬ水と化したはずの己の体内から。
 衝撃は脳天から足の爪までを刹那の間に走りめぐる。
 まるで無理矢理大地に垂直に立たされたところに鬼が巨大な槌を振り下ろしたかのようなイメージが脳裏に去来する。何故そんな具体的なイメージかというと以前そんな目に合わされたからだ。フラッシュバックともいう。

「うおおおう!?」

 心と体を同時に苛む激しい痛みに、慌てて水面から身を起こし、視界も定まらぬまま、開口一番啖呵を斬る。

「やいこら、どこに目をつけていやがる! 私を泣く子も笑う谷の超妖怪弾頭・河城にとりと知っての狼藉か。知ってのことだったら先に言っておこう! ごめんなさい! どなたさまでございますか!?」

 いつでも土下座できる構えを取りながらにとりが目を凝らすと、そこには予期していた鬼の姿は無く、水面に突っ伏す少女の姿があった。
 元は大層華やかであっただろう服は、しっとりと水にぬれ、毒々しい海草のように見える。
 髪は水面に広がり、蛭のようににとりの足に絡み付こうとゆらゆらと――

「いやそんな五体倒地で謝られた日には私は文字通り立つ瀬が無い……って。ありゃ、なんだこりゃ、見事な土左衛門じゃないか」

 こんな場所で、しかもこんな格好で水練を嗜む人間もいないだろうから、事故か自殺だろう。
 なんにせよ不憫なことだと、このまま流して妖怪の餌にするのも忍びなく思い、にとりは少女を岸に揚げようと両脇を抱える。

「おお?」

 冷え切った体から微かに心音が伝わる。
 どうやら発見が早かったためまだ息があるらしい。こんな人気の無い山の中で溺れておきながらなんと運のいい。これも新しい山の神様のご神徳であろうか。

「ふむ。こういうときはまずあれだ、救急医療ってやつだろう。よし、いいぞ。確か外の世界にあるものを真似て作った『えれきてる式心臓マッサージ機』があったはずだ。寝ている魔理沙に事後承諾を見込んで試したときは感激のあまり痙攣して物も言えない様子だったが、ようやく実地で活躍する機会が訪れた」

 すでに心臓の動いている人間に心臓マッサージが必要かどうかという問題は棚に上げておいて。
 にとりは水に重く濡れた人間を苦にもせずに担ぎ上げると、近くにあった洞窟へといそいそと運び込んだ。





 迅速かつ的確な救命措置が功を奏したのだろう。――水を操る能力を持つにとりにとって溺れかかった人間を助けることなど造作無いことではあったが。
 少女はややあって目を覚ました。咳き込みながらゆっくりと身を起こし、沈痛そうに頭に手をやる。
 それをこっそりと岩陰に隠れながら見届けるにとり。もちろん怖いからだ。初対面の人間は突然何をやるかわからない。

「あれ……ここ、何処……?」

 うつろな目で少女は辺りを見渡す。意外と凡庸な反応を見てにとりは胸をなでおろす。
 だがその後、少女は自分の体を見たところで、まるで螺子を無理やり早く回した自動人形のように、ばたばたと意味の無い動作で騒ぎ始めた。

「な、なんでよ。なんで私、裸なの!? いや、なんで、いや、いやあああ!」

 耳をつんざく絶叫が狭い洞窟内をこだまし、にとりは頭を抱える。
 濡れた衣服は当然そのままにしておくわけにもいかないので剥ぎ取ったのだが、どうやらそれを悪い方に解釈してしまったらしい。いやそれが普通なのだろうか。まさか親切な河童に助けられたなどと、いくら幻想郷でも思いつきもしないだろう。

 このまま放っておいても良いほうに収まる可能性は少ないと見て、仕方無くにとりは姿を現すことにした。
 様子を見る限り出会い頭にいきなりお札やら魔法やらをぶっ放してくる類の人間ではないようだ。
 そんな馬鹿なこと、と言えないところが幻想郷の恐ろしいところである。にとりは最近身をもってそれを知った。

 まず咳払いを一つ。
 そして、にとりは前もって用意していた可能な限り友好的な微笑と思いつく限りの常識的台詞を浮かべながら、少女の前に姿を見せる。

「やあ、お目覚めかな。私の名は河城にとり。少女でありながら超紳士なのです。ぜんぜん怪しくないから安心して――」
「きゃあああああ!!」
「ぎゃあああああ!!」

 少女のさらなる絶叫に、思わずにとりも仰天して叫び返す。
 何に驚いたかって今までの絶叫がマックスじゃなかったことだ。
 本気で卒倒しそうになりながら、にとりは顔面いっぱいに引きつった微笑を浮かべる。

「あ……あの、お願いだから落ち着いて」
「誰よ、あなた誰よ! 私をどうする気! こんなところで何をする気なの!」
「いや、その説明を遮ったんでしょうが、あんた。……ああ、もうどうでもいいや。ここらで場を和ませるために一発芸をしまーす」

 にとりはよく見えるように、騒ぐ少女の目の前まで近寄った。

「腕を前から上にあげてー、伸び伸びとー、河童『のびーるアーム』!」
「………………きゅぅ」

 ――静かになりました。





 二度目の目覚めの後、少女は先ほどより落ち着いたように見えた。少なくともにとりが洞窟の外から声をかける分には黙って話を聴いてくれる。

「――とまぁ、こういう経緯であんたがその洞窟に居るわけだが」
「それはいいけどさ」

 初めてまともに少女が話し出す。外見上の年の割には妙に蓮っ葉な印象を与える口調だ。

「なんで妖怪がわざわざ人間を助けるわけ? まさか、喰うため?」
「わざわざ喰うために助けたりなんかしないよ。いや河童と人間は盟友だからさ」
「河童? なんだ、あんた河童なの?」

 なんだ、という言葉は河童への友愛と信頼から出たものだとにとりは強引に解釈した。
 びびって損した、という後の言葉は幸い耳に届かない。

「で、どうしてまたこんな寒いのに川の中で溺れかけてたの? しかも妖怪の山なんて人間がうろついてたら危ないだろうに」
「え? ……ああ、そのこと」

 それを聞いたとたん、少女の目が少しだけ輝く。明るい生命の色ではなく、暗い情念のような光。

「これよ」

 そう言って少女が目の前にかざしたのは手首に巻かれていた赤い色の布だった。
 ただしアクセサリーではないのだろう。何故なら布の切れ端が、途中で綻び切れたようにだらしなく糸くずを垂らしているからだ。
 もちろんにとりにはそれ以上のことはわからない。

「何だい、それ?」
「これね、もう一方は男の手首に巻いてあったの。そうやって、絶対に、死んでも離れないようにしてから、一緒に川に飛び込んだの。わかるでしょう?」
「いんや、皆目」

 にとりの返答に、少女は明らかに気分を害したのであろう。昂然として立ち上がりかけ……、諦めたようにぱたりと座り込んだ。

「心中よ。心中。愛し合っている二人がさぁ、死んでも別れたくない同士がさぁ、この世で結ばれないならせめて来世で結ばれようっていうあれよ」
「ああ、自殺って奴か。人間のやる不思議な習性の一つだね。でも番と一緒にやるなんて初めて聞いたなぁ」
「……もういいわ。河童なんかに聴かせた私が馬鹿だった」

 少女は蔑むように鼻を鳴らす。別にそのような態度を気にするにとりではないが、少女の言葉には引っかかるところがあった。

「愛し合ってる二人?」
「……そうよ。何? 何か文句でも――」
「いや、あんた一人じゃん」

 そう言われたとたん、少女はぽかんとした表情で、切れた布の先にあったはずの、そしてすでにそこには無いものを見やる。

「……あの人は?」
「私に訊かれても。見つけたときはあんた一人だったし」
「嘘!」

 また絶叫が洞内をこだまする。
 今度は外にいたせいか、鼓膜にそれほどのダメージは無い。

「探しに行ってよ!」
「……えーと、なんで私が」
「盟友なんでしょう!」
「じゃなくてあんたが行けば」
「夜に妖怪がうろつく山を歩き回るなんて喰われに行くようなものじゃない!」
「元より死ぬつもりだったのでは?」
「冗談じゃないわ、そんなみっともない死に方! 独りで死ぬのなんてもっと嫌! 私は、あの人と、一緒に、綺麗に、死にたいの!」
「人間ってこだわり屋さんなんだね」

 それでもこの場に留まるよりは幾分ましかと判断して、にとりはよっこらせと墨を流したように黒い川面に飛び込む。

「おっかしいなあ。当初の予定では『命をありがとう、可愛い河童さん。ぜひお名前を……』『何、行きがかりのこって。気にすることじゃありません』『河童ってなんて格好いいの! お礼にこれからは毎年川に河童さんへのお供え物をしなくっちゃ』とこうなるはずだったのに。どこでどう間違ったかなぁ」

 川の中のにとりのつぶやきは誰にも聞こえぬまま、微かな気泡とともに消えていった。










「しかしまたえらい惚れこみようだねぇ、お前さん。いったいどういう女だったんだい」

 休憩だと言っていたはずの死神は優に一刻はここでこうして話を続けている。
 死神の時間の流れは人とは違うのであろうか。それこそ三途の川のように緩やかで、潜り込めばどこまでも沈んでいくようだ。

「はぁ、気が強くて、強情っぱりで、感情的で、天邪鬼で、おまけに口が悪い? そりゃあはずれを引いちまったねぇ。いやいやそれともこれはのろけなのかい。でもお前さんにだけは優しい、とこうくるんだろう? 違う? それはまた……。いったいどういうところに惚れちまったんだい」

 辺りは磐に染み入ったように声も無く、ただ死神の左右に結び束ねた赤い髪が時折頷くように揺れる。その様は涼風も無く揺れる風鈴のようで、相槌はさながら鈴が鳴るかのように、ひたすら夢幻的で美しかった。

「なるほど。それは哀れな女だな。数知れない死者を相手にしてきたあたいをしてもそう言わせてしまうほどだ。でも、だから一緒に死んでやったっていうのかい。この世で幸せになれないのなら死んで来世で。二人一緒に固く結ばれて逝けばきっと来世でも同じ時代同じ世界に生きられると。……お前さん、馬鹿だねぇ」

 大馬鹿さ……。
 つぶやいて死神は持っていた濁酒を杯に注ぐ。靄のかかった液体がその中で渦を巻き、グロテスクな文様を描いた。

「さっきも言った通り、死んで魂だけになれば次に生まれ変わるときには何もかも忘れちまう。水と同じさ。川にある水はかつて自分がどんな存在だったか覚えちゃいない。こんなふうに酒になっていたかも知れないし、雨になって大地に落ちてそのまま土に吸い込まれたのかもしれない。そんなこと、川の一滴一滴は何も覚えちゃいない。川の一部になって、海に出て、雲になって、また雨になって落ちる。何も情も無い。何の意味も無い。輪廻も同じさ。情なんて、意味なんて、お前さんが生きてきた、その人生の中でしか通じないものなんだよ。永遠の苦輪の中の、そのほんの短い一刻にしかないものなんだ。大河の一滴、大海の一滴に意味を見出すことが出来るかい? でも女の頬を流れる涙の一滴には、誰しも感じ入るものがあるだろう。渇ききった喉を潤す一滴に、有り難味を感じない人間がいるものかねぇ。人生というのはまさにそれなんだよ。人の営み、人の社会、そして限られた寿命で縛られて、初めて意味と形を為す。死んで花実が咲くものか、なんて言葉もあるじゃあないか」

 死神の言葉は滔々と。
 それこそ無意味に。
 それこそ無価値に。
 死んで取り返しがつかなくなった魂を割れ鐘のように鳴らして、虚ろに響く。

「報われないことなど百も承知。叶わないことなど千も承知。それでも揺るがないか、お前さんの意思は。それでも信じるか、相手の女を。全く美しいね。でも美しいから、間違っている。美しいということは、そのものの本質ではないんだよ。真実は全て、醜く穢い。お前さんは否応無くそれを知る。そのときお前さんはきっとこの世を恨むだろう。そして怨霊となって地の底の霊殿を彷徨うのだろう。私はそれを……見たくないんだがねぇ」

 死神の最後の呟きにはまぎれも無い悲しさがあり、……だからこそ、彼岸の花はざんざめくその赤をより一層、朱に染めた。










「見つからない!?」
「左様で」

 全くこの少女の矮躯のどこにこれだけの大音声を続けざまに発するだけの動力源があるのだろうと、にとりは感心しつつ嘆息した。相変わらず洞窟の中に立ち入ることは許されなかったのでまともに少女の怒りに当てられることだけは避けられたが、それはさしてありがたい事でもなかった。

「どういう意味よ!」
「勿論、字義通りの意味だけど」
「在り得ないじゃない! 生きていたら向こうもこっちを探しているはずだからすぐに見つかるはずよ! 死んでいたら川に沈んでいるはずだから河童のあんたなら見つけることくらいわけないでしょう!?」
「あー、その前提が違っているんじゃないの?」
「前提って……まさか……」

 少女の血相が変わるのが見なくても分かる。
 きっとまた自分の言葉を都合の良いように誤解しているのだろうと、にとりはまたしても嘆息を抑えられない。

「あいつが逃げたって言うの? 私を死なせておいて? 一緒に死んでくれって言ったのはあいつなのよ!」
「片方が先に死んじゃったらもう一緒では無くなるんじゃない? ま、そんなことはどちらでもいいからさ、いい加減、人間の里に帰れば? 彼が居ようが居まいが心中とやらには失敗したんだからもうどうでも――」
「そんなみっともないことが出来るわけ無いでしょう! 心中するって遺書まで残して出てきたのよ。今更独りでのこのこ帰ったらいい笑いものよ。それこそ死んだほうがマシだわ!」
「さいですか」

 じゃあいつまでここにいる気なんだろうか、と考えかけてにとりはやめた。多分、この少女もそんなことは深く考えていないのだろうから。
 流れるままに生きる。流されるままに生きる。似ているようで大きく異なる生き方。
 この少女は果たしてどちらであるのだろうか。

「訊いていいかな? どうして心中なんて死に方を選んだの?」
「はっ……。なんであんたなんかにそんなこと答えなくちゃならないのよ」
「じゃあ質問を変えようか。あんたが一緒に死のうとした男ってどんな奴?」
「………………」
「こちらの質問は明確な理由がある。どんな人間か分かれば探すヒントになるだろう」

 少女はしばらく黙考しているようだった。
 にとりは月を眺めながら待つ。

「……どうでもいい、男だったわ」

 くぐもり声に聴こえたのは洞窟の奥から響くせいだろうか。

「私に四六時中付きまとって、本当に嫌らしい男だった。口を開けばどうしたら自分のことを好きになってくれる、何か君のために出来ることはある、ってそればっか。だから私、言ってやったわ、じゃあ鬱陶しいから今すぐ死んで、って。そしたらあいつ哀れっぽく泣き出すのよ。人目もはばからずにね。まるでこっちが悪者よ。全くいい迷惑」

 ぎりりと爪を噛むような音が聴こえる。
 それは本当に厭な音だった。どうしてこんなときに限って虫の声が静かなのか、にとりは不思議に思う。

「そいつの中では私は可哀想な女なのよ。誰からも愛されない、好かれない、自分と同じ惨めで不幸な女。だから愛してあげるの。まるで野良猫に餌放り投げるみたいに。勝手に人を哀れんで……! 勝手に人を蔑んで……! ふざけないでよ! そうすれば尻尾を振ってついてくるとでも思ってんの、人を馬鹿にして! でもね……、悔しいけどね……、私は確かに独りだった。そいつ以外は周りに誰もいなかった。でもだからってね、だからってそんなみすぼらしい汚らしい愛は死んでも嫌。だから言ったのよ。私はあんたを愛することは絶対に嫌、でも一緒に死んでくれるのならいいってね。高見から餌を投げるような愛じゃなく、あんたの全てを投げ打った、一切の誤魔化しも偽善も効かない、穢れの無い純白で無垢な真実の愛。あたしが欲しいのはそれだけだって。そしたらあいつ、言ってくれたのよ、震えながら、うん、って」

 洞窟の中は少女一人の舞台だ。あらゆる望みが叶う世界だ。
 どんな妄言も虚言もその中では真実となる。

「嬉しかった。誇らしかった。私は愛された。愛される人間だった。誰にも否定できない。誰にも馬鹿にされない。何十年も夫婦であり続けた? 何十人もの男に愛された? それがどうしたっていうの? そんなもの、そんな紛い物、私が手にいれた完全で完結した愛の前では無意味よ。私は勝ったのよ、世界の全てに。私を蔑み、馬鹿にし続けてきたやつらに。ねぇ見て、見てよ、この赤い紐、この紐がその証。これさえあれば、これさえ千切れなければ……!」
「――その紐がさ、何か引っかかるんだよね」

 ゆらりとにとりが立つ。
 月に照らされ浮かぶ水面の影のように。
 少女が夢から覚めたように入り口を振り返った。

「それさ、川に流されて自然に切れたんじゃないよね?」
「なん……ですって……?」
「その切れ方はさ、刃物で切ったのでも、何かに引っかかって一気に千切れたのでもない。何度も何度も強い力で擦りつけないとそんなふうにはならない。大事な紐がそんなになるほど激流に呑まれ、岩や川底なんかに叩きつけられたとすれば……あんたはもっとぼろぼろになっていないといけない」
「何が言いたいのよ……」

 少女が気色ばむ。だがその声に先ほどのような凄みは無い。
 少女のちっぽけで脆い世界は、その外の、もっと大きく不気味な世界に今飲み込まれつつある。

「紐はあんたが途中で切ったんだ。あんたは心中する気なんてさらさらなく、くだらない自尊心を満足させるためだけに、男を生贄にした」

 時間が止まる。
 息を呑んだ少女が、ようやく体を震わしながらそれを吐き出す。
 そして、己の憤りを声にするためだろうか、もう一度息を吸ったそのとき、不意に空気が弛緩した。

「と、普通ならそう勘違いしてしまうよね」

 にとりの笑みに少女はがくりと脱力する。
 垂れ下がった髪を掻き揚げながら、少女はうんざりな顔をした。

「……いったい何なのよ、さっきから。馬鹿馬鹿しい」
「いや、本当に馬鹿馬鹿しいんだよ。こんな茶番にどうして今までつきあってたんだろ。全くいくら盟友だからってこれはないよねぇ、あははははは」
「はっ……、あんた頭がおかしいわ。それとも河童ってみんなそうなの? ふ……はは……あははははは」

 双方から笑い声がこだまする。
 一方は少女の世界を押しつぶそうと。一方は少女の世界を守ろうと。

「あはははははは!」
「あはははははは!」

 夜が空けるまで続くかと思われた笑い声は、唐突に終わった。
 笑顔のまま、にとりは言った。

「男なんて最初からいなかったんだ」










 風が吹く。
 川のほとりの彼岸花が散る。
 秋の終わりを告げるその光景だけが。
 それだけが、すでに時の間隔さえ虚ろなその魂を、支えていた。










 陽気な声だった。
 少女が出会ったときと同じ、陽気で、人懐こい声。
 だからこそ初めて少女は恐怖を感じた。笑って少女の全てを壊そうとする、その声を。

「さっきまでのお前の言葉は真実だったんだろう。お前の願いも本物だった。ただ、お前にはそうして一緒に死んでくれる男すら居なかった、というその一点を除いて」
「あ……あんた……なに……を……」
「男のほうであれ女のほうであれ、激流に流されながらヤスリか何かで紐を擦り切るなんて不可能だ。現にお前は私が発見したとき、本当に溺れかけていた。本当に死ぬつもりだった。だから考えられる可能性は唯一つ。紐は最初から切れていたんだ。まっ、当然そんなことはとうに気がついていたんだけどね。ただどうしてわざわざそんなことをするのか。そこだけが分からなかった。けど、お前の話を聴いてようやく得心がいったよ」
「ふざけないで!」

 怒声はもはや通じない。
 少女がいくら気勢を張ったところで、その声は虚しく洞窟でひび割れるだけ。
 そこはすでに少女の世界ではない。ただの暗い、行き止まりだった。

「誰かが命をかけて愛してくれる。自分にはそれだけの特別な価値がある。それがお前が描いた妄想だ。昔、あった心中の話。そいつを聴いて憧れでもしたのだろう。心中こそがお前が望んだ最高の物語だった。だからその幻想に酔うために、自分を、他人を騙すためにお前はそれを偽装した。その赤い布が何よりの証だよ」
「あ、うあ……うあああああああああ!」

 少女が狂乱する。
 髪を振り乱し、涙やよだれを流して。それはもはや少女と呼ぶにも憚られる。死者を漁り、死者の服を剥ぎ取る、浅ましい老婆のような印象しか与えない。
 噛み付くように、少女は姿の見えない河童に叫んだ。

「馬鹿にするな、妖怪が、誰にも愛されないけがわらしい妖怪風情が知ったような口を叩くな。里の連中みたいに哀れむような目で私を……! 嘘ですって、虚言ですって!? 何よ、私にはそんな男が現れるわけないって言うの、私は誰にも愛されるわけが無いって……。 畜生、笑いやがって! 皆で私を馬鹿にして! いるわよ、いるのよ、私のために死んでもいいという男くらい……。私だって愛される。私だって幸福になれる……」
「じゃあこれからなればいいだろう。ただしもっと違うやり方でだ。悪いことは言わない。お前はさっさと里に帰れ」

 ――これが最後の忠告だ、と。
 その声だけが妙に優しく。その声だけがひどく人間じみていて。
 だがそれ故に、その声は決して少女に届くことは無かった。

「利いた風な口を叩くな! ……泥臭い河童が! 自分の無能を棚に上げて、くだらない出鱈目ばかり言いやがって。人を頭がおかしいみたいに! 頭がおかしいのはお前だ! さっさと探して来い! 私の……私のためだけに死んだ男を……そうしたら死んでやる! 一緒に死んでやるんだから……。 あんな里になんか、あんなやつらのところになんて誰が戻るか!」
「そうかい……」

 それきり声が途絶える。
 月明かりが不意に消えた。
 辺りは完全な闇に落ちる。
 少女は何故か、自分がどこか遠い、決して戻れぬ場所まで足を踏み入れてしまったように感じた。

「いやあ、悪かったね」

 そんな中、場違いに軽い河童の声が聴こえた。
 だがそれは、出会った頃と同じ口調にも関わらず、何故かまったく別の、異質なものが発しているように聴こえた。

「嘘なんだよ。今まで言ったこと全部嘘。ただ試したんだよ、お前の覚悟が本物かどうか。いやあ恐れ入った。そこまで言うなら、死体はあの川底の中にあったんだ。それに間違いない」
「嘘って……何が……」

 少女は渇いた喉に唾を流し込む。
 今更になって初めて、少女は自分が妖怪と対面しているのだと実感できた。

「死体さ、実は見つけたんだ」
「えっ……?」

 少女が呆けたような声を出す。
 まるで遠い昔に土に埋めて捨てたはずのおもちゃがひょっこりでてきたかのように。

「ただ難点が二つあってねぇ」

 そしてそのおもちゃが眼前で勝手に動き始めたかのように。
 嫌な汗が一群となって少女の背を伝う。

「一つは死体の判別がつき難いことだ。先に悪い妖怪に見つかって喰われでもしたかねぇ、すっかり面影が変わっちゃって」

 少女はここに来て初めて逃げることを考えた。
 歪んだ妄念にまみれて、それでも正常さを残していた本能が、かつてないほどの警報を発している。
 逃げる。是が非でも逃げなければならない。でも入り口にはあの河童がいるのだ。

「もう一つの難点はね――」

 河童が。あの陽気で奇異で、お人よしのあの河童が。
 ああ、そういえばあの河童はどんな顔をしていただろうか――

「たくさん出てきちゃったんだよ、死体。一つだけじゃない、川底をさらったら山ほど出てきた。これじゃどれがお前の相手かわからないから、一人にまとめておいてあげたよ。でも急ごしらえだからあんまりもたないんだ。だからさっさと始めようか、心中とやらの続きを!」

 ぞぶりと、入り口から何かが押し寄せてきた。
 明かりの欠しい闇から微かにわかるのは、それが何かの大群であること。
 最初に想像したのは虫。次いで連想したのは鼠。そして最後に直感したのは――

「ひ、ひぃやああああああああああああ!」

 少女の足に、腕に、腰に、腹に、背に、肩に、髪に、そして悲鳴をあげる口に。
 それの指が幾重にも幾重にも幾重にも絡みつく。
 腐った水の、否、水の中で腐った何かのような酷い臭気が鼻を突く。
 瞬時に強烈な嘔吐感が込み上げる。
 少女はそれに逆らわなかった。そんな余裕などあるはずもなかった。
 撒き散らし、逆に撒き散らかされ、なにもかもがごちゃごちゃになりながら、少女はそれと一体になって洞窟の外へと雪崩を打った。

「ひっ、ひっ、ひっ」

 もはや悲鳴にもならない。
 ぐるぐると回る視界。騒然とした大勢の足音。耳や首筋にかかる生臭い吐息。そして全身を包む生暖かい何かの感触。
 全てが信じられない、悪夢としか思えない出来事だった。

 ややあってどぶんと水の音がする。
 遠く消え入りそうな意識の中にありながら、その音は一気に少女を現実へと引き戻した。

「ひ、あ、いや、な、なんで、なんで私、こんな目に……」
「やあ、気に入ってくれた? 感激して声も出ない?」

 ひょいと少女の視界の端から河童の顔が覗いた。
 視界のほとんどをわけのわからないものに埋め尽くされた中で、その顔だけが奇妙に美しく、そして幻想的だった。
 ああ、私は死ぬのだと、見たものはきっと誰もがそう思ってしまうだろうほどに。
 それでも少女は足掻いた。あまりに儚すぎる希望と知りながら、それでも縋らざるを得ない。
 ――だが、きっと、もっと早く足掻くべきであったのだろう。もっと、遠い昔に。

「ご、ごめんなさい、私、お、お願い……許し……て」

 その声に。
 河童はにこりと微笑みを返した。

「いいんだよ。お詫びもお礼も不要さ。河童と人間は盟友だからね」

 少女の顔から一切が消えた。恐怖も悲哀も、希望も絶望も、何もかもが。
 そのがらんどうの顔の上を、黒い水面が烏の翼のようにさあっと翻った。
 ざぼん、と最後に一際大きな水音が響く。
 波紋が水面をさらに塗り固めようとするかのように、ゆっくりと広がる。
 それが消えてしまうまで、河童はじっとその水面を見つめていた。









 生者と死者、此岸と彼岸とを分ける絶対の境界、三途の川。
 今日もそこを漕ぎいれて死神の渡しがやってくる。
 だがその魂はそれを見慣れた光景だとは思わないだろう。聴きなれた歌だとは思わないだろう。
 何度も繰り返されたにもかかわらず、否、それ故に、今となっては名残惜しさすら感じるものなのだ。

「いやあ、この前は随分と野暮なことを言ってしまったものだ。あたいは自分が恥ずかしいよ」

 死神は陽気に笑う。
 日の射さぬ三途のほとりにあって、太陽のようにからからと。

「まさか本当に待ち人が来るとはね。先に男に逝かれてしまった心中相手が後追い自殺。少し時間が空きはしたが、全くその魂に相違ないよ。良かった。これで目出度しだ。もうお前さんは何の未練も無い。何もかもが報われたんだ」

 死神がゆっくりと客を乗せた船を漕ぎ出す。
 彼岸花が花弁を散らす様が、まるで新たな船出を祝う紙吹雪のようである。

 三途の川の流れをものともせず、船は軽やかに進んでいく。
 死神が櫂を操りながら涼やかに目を閉じてつぶやいた。

「そういえば『われても末に逢わむとぞ思ふ』なんて歌もあったねぇ」

 だが、別れた末に再び結ばれた水は果たして同じ水であったのか。
 それを見定める者は無く、そしてもはや意味も無い。

 三途の川の流れる音だけが、ただ滔々と。
 交差する魂の川の流れを見送った。



―― 了 ――



 彼岸花の花言葉は「再会」そして「あきらめ」。

 地霊殿でのにとりのはっちゃけ具合に衝撃を受けて書き上げました。
 まさかあんなに良いキャラクターだったとは。にとり可愛いよにとり。
 にとりの可愛さ、奇矯さ、そして河童ゆえの怖さなど、拙作から少しでも感じ入っていただければこれに勝る喜びはありません。

 では、この辺で。
 こんぺの採点終了後にまたお会いしましょう。


(11/10追記)

 というわけで相変わらず煮え切らないものを書いている時計屋でございます。
 今回もオリキャラ登場、しかも人の生き死にに関わる話ということで正直びくびくして投稿しました。
 にとりも今回役どころが役どころなのでみなさんに嫌われるんじゃないかと。
 しかし蓋を開けてみれば「にとり可愛いよにとり」という多数のご意見を拝聴し天にも昇る心地でした。

 ではせめてものお礼にコメント返しを。


■つくねさん

 古典の心中話は完成度が高くとてもそれを題材にしてSS書くなんてことはできません。
 ですからこれは心中話の形を借りた似非心中話というような代物なので恐縮ですが、楽しんでいただけたなら何よりです。


■Idさん

 たしかに大げさなんですが、狂気というものをどうすれば表せるかわからず、結局最初に勢いで書き上げたままにしました。
 しかし読み返してみればまだまだ稚拙ですね。
 明確化できない、横から掻っ攫われる。っていうのは正にそうで、そこに味を持たせられなかったのは残念です。


■blankiiさん

 色々とそういうことを考えていただけて嬉しいです。作者冥利に尽きます。
 答えはきっと一人一人異なるのでしょう。そうだといいなぁ。


■藤ゅ村さん

 わーい、きゅーりだー。
 水底から得体の知れないものが……ってのは「水」がお題のとき真っ先に頭に浮かんだものです。
 こわかったという感想、最高の誉め言葉として受け取らせていただきます。


■木村圭さん

 二つのストーリーの起承転結を交差させてみる試みでしたが、気に入っていただいて何よりです。


■八重結界さん

 題名は例の名曲をもじったのかも。
 書き上げてからタイトルがポンと浮かびました。
 やっぱり人や馬を水辺に引きずりこんでこそ河童ですねぇ。


■今回は感想のみさん

 私もこういうラストが好みです。
 読んでくれたあなたにも気に入ってもらえたなら、まさにSS書きとして本望です。


■リコーダーさん

 男と女ですから一筋縄にはいきません。
 しかし幾通りもの解釈ができるのはともかく、そこに釈然としないものが残るのは私の力不足故です。申し訳ない。


■じらふさん

 あの歌は心中を表したようにも見えるという解釈があったのでここで使わせていただきました。
 もちろん大好きで心に残っている歌だったという大前提がありますが。


■つくしさん

 私も地霊殿をプレイしてにとりにぎったんぎたんにされました。
 気に入っていただけて何よりです。


■べにcさん

 ありがとうございます。
 小町もお気に入りです。今回地味ですけど。


■眼帯つけた兎さん さん

 正直、男と女については不評なんじゃないか冷や冷やものでしてた。
 そういっていただいて安心しました。


■PNSさん

 ぎゃあああとかなんという心地よい悲鳴。
 怖く書こうとしたけどこれ本当に怖いのかなぁ、とか思って色々がんばったのが全て報われた。
 客が全然怖がらないオバケ屋敷のオバケ役ほど惨めなものも稀有。


■詩所さん

 あるがままを感じ取っていただけたなら、それがきっと答えです。


■神鋼さん

 私のSSの場合、二転三転しすぎて訳が分からんようになることもしばしば。
 そう言ってくだされば何よりです。


■ミスターブシドーさん

 にとりは公式のキャラが良すぎますからな。
 あんな書きやすいキャラはかつてなかったかもしれません。
 にとり可愛いよにとり。
 反面、女はもっと狂った感じがだせればよかったですねぇ。
 オリキャラは難しい。


■desoさん

 短くスパッと。
 時間が無かったので私のSSにしては短い方ですが、
 逆にそれが功を奏したのかも。


■あずまやさん

 河童の可愛さと怖さ、どうやら矛盾無く表現できたようで何よりです


■yuzさん

 このSSを読んでにとり好きが増えてくれればこれ以上の喜びは無いです。


■あやこふさん

 そういうふうに読んで頂けると色々と工夫を凝らしたかいがありました。


■三文字さん

 不条理こそまさに物語の真髄。
 ありがとうございます。そう言っていただけたことに感謝を。


■佐藤 厚志さん

 人の業なんてまだまだ意識して書けませんが、
 もしそれを感じ取ってくれたならとても嬉しいです。


■歩人さん

 にとりの盟友っぷりを気に入っていただけたなら何よりです。


■#15さん

 ふはははは、もっとさけべー。


■小山田さん

 「つまらなそうだから途中で読むのを止めた」というのが作者にとって一番応えます。
 ですから「引き込まれる筋書き」という言葉にはなんかもうホッとします。


■慶賀さん

 ド、ドS河童だとぉ……!
 なんという良い響きだ……。


 それでは、また。
 次回も皆さんにSSをお見せできるよう頑張ります。
時計屋
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2008/10/05 08:50:30
更新日時:
2008/11/13 00:49:48
評価:
0/0
POINT:
0
Rate:
5.00
1. 7 慶賀 ■2008/10/05 13:10:34
テーマは絶対ドS河童ですよね!
にとりにお嬢さんって呼ばれたい。抱かれたい。責められたい。うんアホだ。
2. 10 小山田 ■2008/10/07 13:41:29
物語としてここまで引き込まれる筋書きに、もはやぐうの音もでません。素晴らしかった。
愛嬌のあるにとりの、空気の変わり方が特に鮮烈な印象を残しました。
3. 9 #15 ■2008/10/07 16:48:12
きゃーー
4. 9 歩人 ■2008/10/08 04:35:08
にとりは間違いなく良い仕事をした。人間の盟友ってのは伊達じゃないな。
5. 6 佐藤 厚志 ■2008/10/08 19:10:49
にとりかっこいいですね。
純粋すぎて愚かな男、軽薄な虚栄心を持つ女。このssに人間の業を見た。
6. 9 三文字 ■2008/10/09 02:40:29
にとり怖っ!!
最後の少女が引き込まれるところはおぞましいの一言です。
ところでこの少女は本心では死にたくなかったから紐を千切ったんですかね……
そこらへんがはっきり分からないのがなんとも。
とはいえ、無常観と男女の不条理感がどろどろとして、圧倒される作品でした。
7. 5 あやこふ ■2008/10/10 00:06:51
にとりのイメージが変わりました。妖怪らしさが出てて興味を引かれました。激しいなぁと思いながらばくばく読めました。
8. 7 yuz ■2008/10/10 22:12:40
キャラが可愛らしい
9. 5 あずまや ■2008/10/11 18:06:49
にとりが少女の物語を掻き回していくのが、よくできていると思いました。やっぱり河童ってこういう怖さありますよね。
10. 7 deso ■2008/10/23 22:34:57
なかなかピリッと良い切れ味。
こういうにとりは見たことなかったので新鮮でした。
面白かったです。
11. 6 ミスターブシドー ■2008/10/27 01:08:37
小町は割とありがちなタイプ(もっともある程度以上の筆力がないと書けないが)だったが、にとりが面白い。
突き放すでも甘やかすでもなく、巧みに惑わせる。
人間側のキャラに少し無茶があるけど、実際心中するような男女っていうと、どこか歪んでる事があるから思い切るわけで。
いろいろ不幸な要素が積み重なった結果だったにせよ、巻き込まれたにとりは災難だ。
いやこのにとりなら「いい暇つぶしにはなったけどね?」 とか言いそうだけどな。
盟友、という言葉を都合よく使っている事は多いが、盟が結ばれないような相手には案外冷たいのかもしれんね。
12. 5 神鋼 ■2008/10/27 19:33:07
こ、これは怖い……まったく軸をずらしてないのに二転三転する展開がお見事です。
13. 5 詩所 ■2008/10/29 00:32:06
これはハッピーエンドがそれとも……。
結局にとりのおかげ(?)で女は先に待っていた男に会えたわけですから。
幸か不幸かは当事者にしか分からない気もします。
14. 9 PNS ■2008/10/29 20:24:12
おお、これはいいにとり→ああ、実にいい文章ですなあ→おお! そんなオチが! これは哀しい。→ときたらそれか!これもいい話だなー→ぎゃああああ! 

こんな感じでした。個人的にはわーい、わーい、という終わりが好きです。
だから、あと一歩手前のオチで踏みとどまってほしかった。
でも、今まで私が読んだ中で、一番魅力的なにとりだったのは間違いありません。
にとり可愛いよにとり。
15. 6 眼帯つけた兎さん ■2008/10/30 06:32:41
なんて愚かな女なのだろうか、なんと愚かな男だったのであろうか。
なんとも美しき人間性。最高に惨めで穢れています。
それにしても思うのは、河童は優しすぎる。流石盟友。
優しい優しい物語でした。
16. 3 べにc ■2008/10/30 13:22:30
にとりこわいよかわいいよにとり
小町は怠けてるけど、真面目な様な印象もうけた
17. 8 つくし ■2008/10/31 12:35:00
 ぎったんぎたんにされました。このにとりはいい。幻想郷の妖怪らしくさっぱりとしてそれでいてブキミでございました。ごちそうさまです。
18. 7 じらふ ■2008/10/31 21:50:19
瀬を早み岩にせかるる滝川のような二人のお話でした。…どっちかというと「生を儚み妄想にせかさる〜」でしょか?
個人的にわれても末に〜って下の句は浪漫があって大好きですけど、やはり現実は非情である事が多いですねー(つか、流刑後の崇徳院だったら別の下の句用意しただろうなあ)

作品としては、我らが盟友の姿に痺れました。それでこそ妖怪、それでこそ河童。小町の無常観溢れる言葉も死神ならではの重さが漂ってよい雰囲気を醸しておりました。
19. 7 リコーダー ■2008/11/01 09:14:56
女と男の生き様について考えさせられた。互いが相手の事をどう考えているのか、互いが相手にとってどういう意味であるのかについても、色々な解釈が出来ると。
全体としても二つの意味で取れる物語、なのでしょうか。しかし紐の切れ方の証拠が覆ってないので、本当に心中相手が居た、と取るのは無理がある?
そうすると今度は最後に女を殺してしまうという終わらせ方が、オチを幽霊に持っていかれたせいで霞んでしまっている気が。
どっちで読んでも、歯の間にモノが挟まったような感じが拭えないんですよね。狙ってるのかな……
20. 9 今回は感想のみ ■2008/11/01 15:24:56
これほど面白いという事実を前にすると、細かい粗がまったく気にならなくなります。
最後の小町の台詞からスパイスを聞かせて終わるのが、個人的にはものすごく好み。
21. 9 八重結界 ■2008/11/01 18:56:55
やられたの一言。題名で気づいても良さそうなものを、あっさりと作者の手のひらで踊っていたようです。
妖怪らしい妖怪というのも変な話ですが、にとりも河童なんだなと改めて認識しました。
22. 10 木村圭 ■2008/11/01 22:06:18
やられた……!
生まれ変わってまた逢いましょう、というのは人間特有の感性なんだなぁ。最高の自己満足にして最低な逃亡。
ふたつのパートを上手く絡めた、とても面白い物語だと思いました。いや、ホント凄いですわこれ。
23. 10 藤ゅ村 ■2008/11/01 22:16:33
 おもしろいなあ。こわいけどさ。こわいけどさ。
 まったくこいつはとんでもないにとりだぜ! きゅうりあげる。
 読んでておなかが底冷えしました。
 いろいろ言いたいこともあるのですけど、この場はひとまずぐうの音も出ないってことで。お見事でした。
24. 8 blankii ■2008/11/01 23:46:53
にとりんG.J.!!

とか言うと(倫理的に)問題ありそうですが、ある意味ハッピーエンドに間違いないので、敢えて言わせていただきます。
妖怪にしろ別物にしろ、一旦助けた対象を屠るってのはどういう心理なのかなぁ、と思います。一度は助け、そうしてから死ぬことに意味があった?(上げてから落とすのが楽しいのよ、的な) それとも単なる衝動? はたまた心中する人間の心情と、その定型が破れたときの感情とかに興味があったのか。

などと妄想が尽かなかったりととても面白かったです。 
25. 6 Id ■2008/11/01 23:56:35
なるほど不思議なお話ですね、河童の怖さも表せていたと思います。女のまくし立てる様が迫力があると同時に、実際そうだとしてもちょっと演技がかりすぎてたかなと。結末は明確化できず、なんだか横から掻っ攫われてしまったような。
26. フリーレス つくね ■2008/11/03 23:34:39
感想期間には間に合いませんでしたが、せめて感想だけでもと思い、書かせて頂きたいと存じます。
さて、どこか日本古来からよくある心中とオカルトを混ぜたような話、あれを彷彿とさせます。しかし大抵のこの心中話は互いに愛し合っているのが前提で、今回のこの物語のようなケースは見ない。どちらかというとこういう人間を懲らしめる、或いは死なせる妖怪のような話は水木先生的。
話の進め方も良く、オチは可哀想でもありますが個人的にはどこかスッとした感じで良かったです。不気味感漂わせつつも後味が残らない、静かで力あるものを読ませて頂きました。
名前 メール
評価 パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード