紫様かわいいよ。〜注意一生、怪我一瞬〜

作品集: 最新 投稿日時: 2008/10/05 08:55:22 更新日時: 2008/10/07 23:55:22 評価: 0/0 POINT: 0 Rate: 5.00
「いや、霊夢。紫様はかわいいぞ」

 思わず、霊夢は茶を吹いた。
 ここは八雲の屋敷。そこには二人、霊夢と藍の姿があった。並んで縁側に腰を置き、庭を眺めつつ茶を啜っている。
 
「……何の冗談?」
「冗談ではない。なんというか、もう、全体的に愛でたい」

 藍の目がキラキラと輝く。思い出に浸るにしては、あまりに満面の笑みであった。

「あぁ〜、紫様ぁ〜♪」

 あまりに嬉しそうなその横顔に、霊夢は少しの頭痛を覚える。そして『思い出なのか妄想なのか判らないが、回想しながら名を呼ぶのは止めて欲しいものだ』と真剣に思った。

「……紫を愛でたいっていうか、まさかあんたがそこまで目出度い頭をしてるとは思わなかったわ。あれのどこがそんなにかわいいと思えるわけ? 飄々としてて掴み所がなくてさ。私なら愛でられるのもお断りよ」
「霊夢、お前は知らないんだ」

 極めて真面目な顔で、藍は霊夢を指さす。真っ直ぐ伸ばされた指が鼻先に触れる。ちょっとぷにぷにされた。 

「な、何をよ」
「へぇ、霊夢って肌柔らかいんだな。紫様に似てる。いいなぁ」
「横道に逸れず話を進めろ色ボケ九尾」

 不機嫌そうに言われると、藍は恥ずかしげに顔を僅か赤く染めてから、こほんと小さく咳払いをして立ち上がった。

「それじゃ、ちょっと待っていてくれ。湯飲みが空だな。新しく茶を淹れてこよう」
「え、なんで?」
「茶飲み話に、茶と茶請けがないのは不自然だろう」

 逆じゃなかろうかと思ったものの、茶と菓子が出てくるのを無理に止めることもないかと思い直す。そんなわけで、浮かれている藍の背を霊夢は見送ることにした。

 今日、霊夢は用もなかったので、幻想郷をふらふらと見回ろうとしていた。そこで空を飛んでいると、里に買い出しに出ていた藍と遭遇し、招かれて今に至る。
 
「しっかし、暇なのかしら」

 話をする為に呼ばれ、軽く肩などを揉まれ、茶を出され、更にこれから茶菓子まで出される。それは、それだけしてもてなせるほどに、あの九尾は暇ということになる。
 ……いいのかそれで。

「霊夢さん」

 霊夢の耳に、柔らかな声が届く。見れば、横には橙が座っていた。

「橙じゃない。どうしたの? 藍なら台所に行ったわよ」
「違うんです。霊夢さんに言っておきたくて」

 思わず首を傾げてしまう。

「何を?」

 思いつかなかったので訊ねてみると、橙はふぅと溜め息を吐いた。
 霊夢はその橙の横顔に、少しだけゾクッとした。影があまりに濃く、普段とは比べようもない程に大人に見えたのだ。

「藍様の話は……長いですよ」
「……えっ?」

 橙の普段とは異なる雰囲気に見取れていた為、少し反応が遅れた。

「藍様、紫様のこととなると……本当にお話が長くて」

 どこか疲れたような、諦めたような、そんな気配が漂う。
 一瞬だけ、肩を震わせた。そんな自分を落ち着かせるように、橙は両肩を抱きしめる。

「……何かあったの?」

 少し心配そうな表情の霊夢。それを見て、橙は柔らかく、けれど大人びて微笑む。

「紫様って、よく眠られるじゃないですか」

 ちなみに、現在も熟睡中である。既に正午だというのに。
 ただし、橙の言うそれは、主に冬眠を指す。

「それで、たまにですけど、いつもより長く眠ってしまうことがあるんです。そうなるともう、藍様寂しいらしくて、苛々したりそわそわしたりおろおろしたりするんです」

 完全に愛玩動物の様相を呈していた。

「う、ちょっと見たいかも」

 霊夢の呟きに、ぶんぶんと橙は首を振った。やめておけ、命が大事なら。そんな感じのハードボイルドな雰囲気を、幼い仕草で愛らしさと共にふりまいた。

「大変なんですよ。もしもその状態の藍様に紫様の話題を少しでも振ろうものなら……」

 苦笑いの影がぐんぐんと濃くなる。さしずめ、怪談を聞かせるかの如く。

「以前、紫様が一週間予定を越えて眠られた時がありまして」
「うん」
「……初日に話題を振ってしまいまして」

 そこで橙が言葉を止める。その為、霊夢はハッとした。

「ま、まさか」
「……本当に長い、一週間でした」

 きらりと光るものが見えた気もしたが、よくよく顔を見ると泣いていなかったので、どうもそんな雰囲気を感じたからそう見えてしまったようだ。
 橙はややげっそりとした顔をしていたが、それでも健気に微笑んでいた。良い子だ。

「おや、橙」

 と、そこに藍が戻ってきた。
 その声に、橙はびくんと飛び上がる。次の言葉が予測できたのだ。

「そうだ、橙も話を聞いていくか?」
「私ちょっと修行とかお使いとかその辺やってきますね!」

 ウィンクしつつ逃げた。
 修行はさておき、お使いは頼まれて初めて成立する気がするのだがどうか。
 ……まぁ、良し。

「ふむ。なら仕方ないか。ほら、霊夢。お茶だ。茶菓子は饅頭だが、いいか?」
「えぇ、構わないけど……悪いわね」

 橙の様子とか色々気になったが、饅頭に釣られ問うのは止めた。いざ延々続きそうになったら、適当なこと言って逃げだそうと思ったのだ。

「さて、何から話そうかな」

 そうして、藍は過去の話を語り始めた。
 それは昔の話。まだ橙のいない頃。幻想郷が外と別たれる前。
 そして、藍がまだ、紫に僅かな対抗心を燃やしていた時の話。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 この日、藍は普段よりやや警戒をしていた。八雲家を狙う敵とかそういったのではなく、日常に潜む危険に対してだ。
 それは例えば、火に掛けた天ぷら油のように、タンスの上や引き出しの中にこっそり隠された官能書籍のように、長年放置してすっかり忘れていたねずみ取りのように。発見しないと大事件になるものもあれば、発見された側がダメージを負ったり、発見した側がトラウマを背負ったりと日常の危険は多種多様だ。
 とまぁ、そんなものに藍は強く警戒してた。ただし、漠然とした何かではなく、かなりターゲットは絞っている。

「水と、鳥……か」

 その二つにである。
 しかし、

「判らない……」

 五里霧中。
 どのようにその二つが自分に危害を加えるのか、考えてはみたが、浮かばない。浮かびきらねば、対処の方法が想定できない。

 さて、何故このようなことを考えているのか、といえば、それは紫様の注意による。その注意というのが、今日、藍が何かしらの危害に遭うということであった。
 
「藍。えっと、九尾が危ないから、注意しなさい。鳥のよ。水に月とも……いや、水落ちって言った方が……あ、なんでもないわ。ごめんね。えっと、とりあえず九尾を気をつけなさい」

 こんな発言である。

 九尾、月、鳥、水。このキーワードがどれも、藍に対する危険を伝えるのだろう。ただ、どうも曖昧にされてしまっていて、どれが何を指しているのかは不明瞭。強いて判ることを上げるのなら、水だけは落ちという言葉までがセットだったので、危害自体は水に落ちるものに間違いはないということだろう。
 ちなみに、どうして注意が曖昧になっているのかということだが、それは別に嫌がらせではない。本来はこんな謎めいたものではなく、もっと単純な注意だったのだろう。だが、紫が口下手ながらに説明しようとした結果、変に情報が混ざって判らなくなってしまったのだ。しかも、言った本人が充分に伝え切れていると現在誤解している為に、藍としては注意内容を聞き返すことは憚られていた。
 聞き返されても、紫は気にしないだろう。しかし、最高の式たらんとする身としては、独力で理解をして自己防衛に励みたい所存なわけだ。聞き返して『こんなことも判らないの?』と思われるのは断固として避けたかったのである。

 そんなわけで、危険になりそうなものに対してビンビンとセンサーを張り巡らせて、藍は今日を過ごしていた。紫が若干引く程度に過敏な反応を示しつつ。

 食事中であっても、藍は思考を停止しない。避けるべき事態を想定し、その防衛策を練っていた。

 ―――月というのは、恐らく夜を指し、九尾というのは尾自体ではなく私自身を指すのだろう。後は鳥と水。それがどのように危害を加えるのだろうか。夜、闇夜に夜雀にでも惑わされ川に落ちる……いくらなんでもありえないな。まぁ何にしても、注意すべきは水に落ちぬこと。
 恐らく、紫様は式が落ちることを危惧したのだろう。そうと判れば、自己防衛も困難ではない。―――

 水に落ちたとして、滅多なことがない限り式が落ちたりはしないが、それでも用心に越したことはない。そういうことで、藍は水を避けることはなく、けれど充分な警戒をしていた。主に、洗面所、便所、庭の池の前と、その辺りである。ただ、警戒はするもののそれ自体を避けようとはしない辺り、意外に頑固であった。

 そんなやや緊迫した藍を、半分面白く、半分怖く思いながら紫は眺めていた。味噌汁相手に軽く戦闘態勢を取った時、紫は思わず口に含んでいた味噌汁を吹き出してしまった。

 そんなわけで、藍は水害なく一日を順調に過ごしていった。
 そして時は進み、藍の警戒した時刻、晴れて月の輝く夜となった。

「……ここからが本番。気張っていかねば。紫様に心配を掛けぬ為にも」

 主のことと珍しい忠告ということもあり、普段はあまりしない緊張が胸を叩く。
 格好悪い姿などは見せられない。自分の式は最高だと、紫に思わせたい。それが、今日の張り切りすぎた警戒の理由であった。空回り気味であることは、まだ本人気付いていない。

「満月。よからぬ妖怪が侵入してくることもあるのか……馬鹿な。ここにそんなものが来るはずない」

 口にしても、もしや、という気持ちは消えない。何せ、わざわざ危険を伝えられたのだ。もしかしたら、想像だにしない何かが訪れるのかも知れない。
 思わず口の端が吊り上がる。

 ―――面白い。何があろうが、乗り越えてみせる。―――

 良いところを見せたいという欲求からか、想像する事態が徐々に大事へとシフトしていった。
 知り得ない敵。鳥の化け物。思考がそんな感じで固まりつつあった。
 そんな思考を巡らせつつ、藍はぼうっと縁側を歩いている。意識が上を向きすぎていて、既に色々と注意が欠けている。慣れぬ自己顕示意欲に、先見性のある頭脳は完全に空回りを始めていた。

 そんな時に、藍は踏んだ。

「へっ?」

 足下には、靴下の片方。色々と考えすぎていた昼間、洗濯物を取り込む際に気付かず落っことしていたものであった。

「お、おぉ!?」

 足を取られ、すっ転ぶ。あまりに九尾らしくない醜態であった。
 思わず体を捻って受け身を取ろうとする。
 だが、迂闊。行動の遅れた尾が体と床に挟まれ、ふんわりと、藍の体はバウンドした。

「いっ!?」

 それは衝撃の吸収効果があった。しかし、今はまずい。縁側は、バウンドして転がれるほど広くない。
 そして、まさに縁側の外は、丁度、池。

「九尾に気をつけろとはこのことかっ!?」

 跳ねた体を空中に止めようとするが、回転している為に制御が難しい。誤れば一瞬で池の中だ。
 縁側に爪を立て、方角を定める。力を微調整し、腕の方角へ体を跳ねさせる。尾は体に巻き付け、もう弾まないよう備えて。
 着地。転がり、壁にぶつかる。尾のお陰で傷はなし。

「……たしかに、注意されてなきゃ落ちてた」

 そう思う反面で、あえて注意されてなきゃなんでもなかった気もする。
 試されたのかもしれない。そう思うと、少し恥ずかしくなってきた。
 その思考を裏付けるかのように、このタイミングで紫が現れる。

「あら、藍」

 白々しい。藍はそう思った。こいつは私を笑いに来たのだろうか。そう思えば、自然と表情が鋭くなる。

「え、どうしたの?」
「……なんでもないです」

 険しい表情に少しだけ気圧され、一歩引く紫。だが、主と式という関係をハッと思い出し、威厳をつけるように扇子で藍を指した。

「藍、言いたいことは言いなさい」

 言われ、藍は少しムカッとして、掴み掛かろうとした。
 そして、また、靴下を踏みつけた。

「ゆか……おっ?」

 先ほどの行動を繰り返すように、藍は足を取られて、前へと倒れていく。
 そしてその先には、紫の突き出した扇子。倒れ込もうとする藍に驚き、紫は硬直していた。真っ直ぐそれは、藍の腹部へと垂直に突き出されている。

 今、頭の中で、紫の言葉が再生される。誤解を訂正し、足りなかった部分を補って。

 まずは、誤解。

「藍。えっと、九尾が危ないから、注意しなさい。鳥のよ。水に月とも……いや、水落ちって言った方が……あ、なんでもないわ。ごめんね。えっと、とりあえず九尾を気をつけなさい」

 そして、正解。

「藍。えっと、鳩尾が危ないから、注意しなさい。鳥の(入っている方の単語)よ。水に月とも(漢字で書く)……いや、みずおち(※鳩尾のこと)って言った方が(判りやすいかな?)……あ、なんでもないわ。ごめんね。えっと、とりあえず鳩尾を気をつけなさい」

 こうして、今更、そして避けようのないこの瞬間に気付く。注意の本当の意味。

 ―――そうか! 鳩尾! 水月! みずおち! 全て、人体の急所のことであったか!―――

 しかし、もう遅い。飛び込む橙の指先が、一直線に藍の鳩尾目掛けて突き出される。

 ドスリ

「あふぅ……」

 それは、一応悲鳴であった。
 奥深くまでめり込んだ紫の扇子によって、強烈な衝撃が脳を走る。あまりに綺麗に骨を避けて急所にはまったお陰で、意識がヘヴンな状態に移行しつつある藍は、どうにか自我を保とうと必死であった。しかし、意識を保とうとすればするほど、神経は鋭敏になり体感時間が遅くする。
 徐々にめり込んでいく扇子に、痛みを飛び越え快楽を跨ぎ、単純に意識をこそぎ取ろうとする悪魔の力を感じてしまう。悪循環であった。

「わっ!? だ、大丈夫、藍!?」
「ぐふぅ」

 思わず近づこうとする紫によって、より深く扇子が突き刺さる。

「わわわ!」

 咄嗟に扇子を後ろに放り、崩れる藍を抱きかかえた。

「し、しっかりしなさい! 大丈夫!?」

 この紫に、藍は気付いた。あの注意に悪意はない。ただ、本当に口下手なのだと。
 普段は見せない天然のおっちょこちょい。そこに……
 
 ―――あぁ、この人……かわいいなぁ。―――

 藍は落ちたのであった。二重の意味で。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 それ以来、藍は紫をジッと観察し、意外なおっちょこちょいな性格を知り、計算尽くされた行動でない限り、結構間の抜けたことを発言や行動をすることを知った。そしていっそう魅了された。
 事細かに説明する嬉々とした藍に、霊夢は橙の言葉を思い出す。茶はなくなり、茶菓子もなくなった。だが、藍は止まらない。

「それでな、そんな強がってる紫様も可愛くて可愛くて♪ うっ、鼻血出るやも……」

 こっちの話にはほとんど耳を貸さず、きらきらと輝く瞳で紫の愛らしさを止めどなく口からこぼす。まるで滝である。

「他にもあってだな、中でも可愛かったのが、橙とお昼寝をされていた時や、調理をされているお姿や、あとは川で水着を」

 次の瞬間、落下した。
 突如開いた隙間に飲まれ、切れ間のないマシンガントークはぶった切られる形で終了した。

 辺りを軽く見回せば、そこにはやはり、紫の姿があった。頬に朱を差し、感情を誤魔化すようにむすっとしている。

「ま、まったく、藍にも困るわ。九尾とはいえ狐。人を騙すのね。さっきの藍の話は全部がでたらめだから、信じちゃ駄目よ」

 今この場に紫が現われなければ、霊夢は藍の話を疑ったままであっただろう。だが、紫が否定する為に現われたことに始まり、表情といい、発言といい、それはもはや裏付けでしかなかった。

 霊夢はなんとなく、自分の鼻を撫でてみる。それから、紫の鼻を突いてみた。

「な、なに?」

 なるほど。ぷにぷにしていた。自分と似ているかは判らないが。

「紫かっわいー」
「あんたも落っことすわよ」

 やる気なく棒読みで口にした霊夢を、紫は悔しげに睨んでいた。
 棒読みではあったが、可愛いところもあるのだなぁと思ったのは、本当だったりする。
 そんな霊夢を見て、紫は自分のことを事細かく説明してくれた藍を呪った。

「藍も昔は、威厳があったのに……いったいどこに落っことしたのかしら」

 口を尖らせて、いじけるような色を混ぜて呟く。

「決まってるじゃないの。神隠しの犯人なんて」
「え?」

 紫の誰にともない問いかけへ答えた霊夢の呟きに、紫は首を傾げる。意味が判らなかったのだ。
 
 首を傾げて思案する紫に、霊夢はハァと溜め息を吐く。
 どんなに気張っていても、一瞬油断をすれば水の泡。自分はこの妖怪と、精々油断なく付き合っていかなければならない。先ほどどこかへ落とされた、偉大なる先人の二の舞にならぬように。

「注意一生、 怪我一瞬……ほんと、ままならないわね」

 そんなことを呟くと、霊夢の横に、サッと庭から飛び込むよう現れる。橙であった。

「思い通り一生じゃ、つまらないよ。きっと」
「……それもそうね」

 霊夢と橙の会話を聞いて、仲間外れにされたような気持ちになった紫が拗ねる。

「今日の私は失敗だわ。計算外のお客様お断り」

 それを見て、二人はくすりと笑った。
 と、遠くから何かが飛んできて、三人の前に降り立つ。藍であった。

「ふぅ、帰ってくるのに時間が掛かった……」
「あら、意外に早かったわね」

 額に随分と汗を浮かべていた。全力で飛んできたようである。

「紫様、いくらなんでも幻想郷の外へ飛ばすのはやり過ぎです。かなり驚きましたし、かなり迷いました」

 なんてことしやがるこいつ。霊夢が感じた感想はそれであった。

「それでよくこんなに早く帰ってこれたわね」
「そりゃー」

 途端、輝き始める藍の瞳。ぞくりと紫は身を震わせた。。

「紫様への愛ゆ」

 また隙間に落ちた。

「えにー♪」

 少し離れた場所から声が響き、続いてどっぽーんという水音が響いた。庭の池に落とされたらしい。

「式外れないの?」
「そんなにやわなわけないでしょ。私の術で、掛かっているのは九尾の狐よ」
「なるほど」

 その会話に、己の未熟さでしょんぼりする橙が一匹。なんか寂しそうだったので、霊夢は橙を抱き寄せて頭を撫でた。微妙な表情だったものが、心地よさげな猫のそれに変わっていく。見てて、撫でてる霊夢も和んできた。

「うえ……びしょびしょ」

 藍カムバック。

「とりあえず洗濯してきなさい。それと、袖に入ってる錦鯉は池に戻してらっしゃい」
「おぉ、いつの間に」

 鯉は驚きのあまり、派手にびっちんびっちんしてた。もっとはよ気付け。

「それじゃ、ついでにお風呂にも入ってきちゃいます。結構泥まみれなので」

 爽やかに前髪を払うと、池の水が跳ね、その水が陽光にきらめいたので、なんだかおしゃれにも見えた。袖の鯉と、至る所の泥汚れさえなければ。

「藍は、後で説教ね」

 呆れながら、ボソッと呟く。すると、途端に藍の耳はびくりと動き、キラキラとした顔で振り返った。

「はぁい♪ 美味しいお茶と水菓子を用意して待ってまぁす♪」
「「「それはおかしい!!」」」

 思わず橙までツッコミを入れた。

 あぁ。今日も平和である。
橙よりも、紫様を愛でる藍様がいても良い。創作とは、そういうものだ。

Cast in the name of Mima. Ye not guilty.

ヤック・モー、ショーーーーーーターーイム!
大崎屋平蔵
http://amugun.hp.infoseek.co.jp/
作品情報
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最新
投稿日時:
2008/10/05 08:55:22
更新日時:
2008/10/07 23:55:22
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1. 4 慶賀 ■2008/10/05 13:08:59
テーマは愛で愛で?自分は今靴下に憧れて焦がれてたまりません。
 言葉遊びが荒いかな、と個人的に思います。
2. 3 小山田 ■2008/10/07 14:04:14
紫を愛でる藍様もいいものですね。
ただ、せっかく他と違う設定をしたのに、その様子をただ見せるだけでは飽きてしまいます。それを生かした仕掛けとか、物語上でできることはいろいろとあったのではかなーと少し思ってしまいました。
3. 6 #15 ■2008/10/07 16:36:02
有りかもしれないw
4. 6 三文字 ■2008/10/08 00:12:47
口べたなゆかりんは確かに可愛い!
ですが、そこに対する味付けがちょっと薄い気がしました。個人的にはもっとエピソードを増やして、ニヤニヤ分を増やしてほしかった……
もっと天然のゆかりんを!!もっと愛らしく強がるゆかりんを!!
5. 2 yuz ■2008/10/10 20:38:17
凄まじいテンションです
6. 7 77号 ■2008/10/12 19:24:40
藍様には何かを愛でる宿命があるのかもしれんね。
ゆかりんの可愛さもそうだけど、ゆかりんを可愛いと言ってる藍様も可愛いと思うんだ。
7. 7 クライヴ ■2008/10/15 12:50:00
内容に吹き、魅魔様の名において鋳造でやられたwww
良いメモリーになりました
8. 7 あじゃこ ■2008/10/17 13:20:22
藍様かわゆい。良いと思います。SSらしい作品で私は好きです。
9. 10 カプチーノ ■2008/10/19 15:56:22
この紫さまマジで鼻血出るッ!!
10. 10 謳魚 ■2008/10/21 08:18:38
終始ニヤけっ放し。
あぁ、ゆかりんは可愛いなぁ。
11. フリーレス 謳魚 ■2008/10/21 13:43:14
>飛び込む橙の指先が〜
何故橙が?
>意外なおっちょこちょい〜
「意外におっちょこちょい」のがしっくりくるよな気がしゃーす。
>結構間の抜けたことや発言や行動を〜
「結構間の抜けた発言や行動を〜」ではないかと。
すいません気になってしまった故。
12. 5 deso ■2008/10/23 22:31:22
終盤、ちょっとぐだぐだになった感があります。
紫が出てきたところで締めた方が良かったかも。
13. 2 ミスターブシドー ■2008/10/27 01:10:50
些か強引なオチだが、もはや焦点はそこにない。
こんな話があってもいいのだろう。
後書きをみるとそんな気になってくる
14. 6 神鋼 ■2008/10/27 19:35:11
なんと強引な……取り敢えず橙頑張れ、超頑張れ。
15. 6 詩所 ■2008/10/29 00:33:00
あとがきビ○グオーで咳き込んだw(スパ○ボでしか知らんけど)
人に伝えたいことを言葉にする難しさってあるよね……ってゆかりん口下手すぎだろ!
16. 8 PNS ■2008/10/29 12:52:25
見事なショーでしたw 
急所のみずおちとは全く予想できませんでした。最後はまた水落ちでこれもうまいw
終わりが少し伸びちゃってるかな、と思いましたが、全体的に楽しめました。
17. 4 眼帯つけた兎さん ■2008/10/30 06:31:53
それはおかしい。
18. 4 つくし ■2008/10/31 12:46:55
 ヤックモ・デカルチャー……。
 そうそう、そうなんだよ、きゅうびとみぞおちってよく聞き違え……ねーよwwwwwなんかもういろんなツッコミどころがそこに全部持ってかれた感じでありました
19. 6 じらふ ■2008/10/31 21:51:06
ゆかりん口下手の域を越えておるよーに思えますが…でもこれはこれで可愛いかも。
お題の使い方が上手かったなあ、と。水月とは予測がつかなかったです(もしかしてくらげ(海月)に尻尾刺されるオチかなあ、とか思ってました)
20. 5 リコーダー ■2008/11/01 09:13:42
お幸せに。藍(「様」が消えた)も、そして作者殿も。
21. 5 今回は感想のみ ■2008/11/01 16:31:59
なんか、ほっとする作品でした。やはり、八雲家というのはどんな組み合わせでも仲良し一家でいいものです。
22. 3 八重結界 ■2008/11/01 18:57:35
文章のおかしな点が多々あり、非常にテンポが悪かったです。
それに、全体的に何を書きたかったのか伝わってきませんでした。
23. 6 名乗る名前がない ■2008/11/01 20:40:01
ナイス出だし。
こんな藍様もいても良い。私は大好き。
24. 6 木村圭 ■2008/11/01 22:07:20
橙可愛いよ橙。……あれ?
ゆかりんは愛で出来ている。これだけ愛されればきっと幸せだと思うんだ。
25. 3 藤ゅ村 ■2008/11/01 22:27:43
 なんか凄い無理やり感が。
 そこを可愛いと思える藍様もかくやといった感じではありましょうが。
 橙可愛いね。
26. 4 774 ■2008/11/01 23:38:41
んー、何が主題なのかよくわかりませんでした。
回想が第三者視点だったのも不自然ですし。
いやこういうお話嫌いでは無いんですけど。
27. 6 blankii ■2008/11/01 23:52:54
紫様を愛でる藍様も可愛いよ!

完全に只の『萌えゆかりん』でない辺りもツボでした。
28. 2 時計屋 ■2008/11/01 23:55:41
こういうのはなんというんだろう。
「親バカ」ならぬ「子バカ」とか?
29. 4 Id ■2008/11/01 23:57:01
みぞおちに関してはなるほどと思いました。突っ込まれたのは橙の指先ではなく紫の指先ではないかしら。全体的に表現が軽く、ひねった面白みが薄い感じを受けます。もう少しギャグに割り切っていくといいかもしれません。
30. フリーレス つくね ■2008/11/04 00:35:50
感想期間には間に合わなかったので、今更ではありますが感想だけでもと思い、投稿させて頂きたいと存じます。
ゆかりん可愛いよゆかりん! さて、実はどちらかというと藍様の方が可愛いように思います。コミカルに動いていたのはそちら、ということで。――まさかそれが狙いかッ!?
楽しく読ませて頂きました。
31. フリーレス 大崎屋平蔵 ■2008/11/06 23:49:01
 コメント数の多さがなんか凄く畏れ多くて……そんな大崎屋です。
 テンションだけで挑んだ結果がこれだよ!
 という感じです。水って聞いて最初に浮かんだのが鳩尾ってどうなんでしょうね。


>慶賀さん
 気をつけて。その靴下には愛がある。
 言葉遊びは丁寧にしないと意味薄れますよね。改良できるようがんばります。


>小山田さん
 仕掛け……むぅ。一つのことに夢中になりすぎたかもです。
 視野の拡大を目指します。


>#15さん
 それは良かったですw


>三文字さん
 ニヤニヤ分、私も好物です。くそう、愛情が足らなかったのか! それとも時間か!
 紫萌えはまた別の所で発散しますw


>yuzさん
 ありがとうです!


>77号さん
 藍様はちょっと盲目的な方が萌えなんですが、可愛がるにしても上の立場の人に萌えてる姿がよりかわいいのではないかと思い至ってございます。
 藍様もかわいですねー♪


>クライヴさん
 魅魔さま登場させたかったという思いが、後書き書いてからふつふつと……
 良いメモリーでしたら何よりですw


>あじゃこさん
 ありがたやー♪


>カプチーノさん
 何故こんな紫様が浮かんだのかさっぱりですが、とにかく満足ですw


>謳魚さん
 ありがたやー♪
 むぅ、誤字が。確認が甘いなぁ。
 橙のはある種比喩のような……でも素でミスしたのかも。すみませぬです。


>desoさん
 ……なるほど。それもなかなかいいですね。
 藍様書きたくて書いてしまったのですが。むぅ、余計な付け足し癖が。


>ミスターブシドーさん
 あとがきが頭悪く申し訳ないw
 強引なオチを押し切るだけのパワーを学びます。


>神鋼さん
 橙は強い子ですw


>詩所さん
 計算しないとうまくいかない紫さまかわいですw


>PNSさん
 最後にだらだらしちゃう癖、どうにかしないとです。
 勢いと切れ味を磨くことにします!


>眼帯つけた兎さんさん
 許して!


>つくしさん
 愛で許して!


>じらふさん
 褒められると調子に乗る駄目な子=私。
 ありがたやー♪


>リコーダーさん
 幸せになりたいなー。藍様は我が道を行ってくだしあ。


>今回は感想のみさん
 仲良きことは美しなのです♪


>八重結界さん
 あやや……
 むぅ、文章を書く力と構成力と、あとネタの出し方をどうにかせなば。
 面白いもの書く術を身につけてきます。


>名乗る名前がないさん
 ありがたやー♪


>木村圭さん
 紫ンの半分は優しさでできてるって誰かが言ってました。きっともっと多いです。


>藤ゅ村さん
 橙かわいいね……あれ?


>774さん
 第一者視点が書けない未熟者でごめんなさい!
 感情移入はするんですが、どうも視点がぶれたり整わなかったり……どうにかせねば。


>blankiiさん
 こういう紫様だったらいいなぁとか書きながら思ったり。
 書けば書くほど気に入りますよね。



>時計屋さん
 子ばか……斬新な言葉ですね。親煩悩……ろくでもなさそう。


>Idさん
 未熟なギャグの書き方をどうにか身につけられるようがんばります!


>つくねさん
 藍様かわいですよねー♪ あれ?
 紫様もかわいですよ。うん、そう。



>ALL
 では、またいつの日かどこかで♪
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