失われた色を求めて

作品集: 最新 投稿日時: 2009/05/09 01:28:31 更新日時: 2009/05/09 01:28:31 評価: 23/25 POINT: 80 Rate: 0.88
 橙はどうして自分が怒られているのかすらわからなくなっていた。苦しくて、悲しくて、泣きたいくらいだけど、泣いたらたぶん、もっと怒られる。
 「あなたはどうしてそんなにも愚かなの?」
 「…めんなさぃ。」
 紫の蔑むような視線が橙を射る。
 「出来損ない。」
 この言葉には藍が黙っていなかった。
 「紫様、お言葉ですが…。」
 「いつ!」
 紫の表情に一瞬鬼が宿る。
 「いつ、あなたに口答えを許したのかしら、藍!いい加減にしなさい、あなたもその猫みたいに無能になったの?」
 「橙は私の式です。責めるのなら、どうか私を。」
 「藍しゃま…。」
 「あらあら、麗しい自己犠牲だこと!いいわ、望みどおりにしてあげる。藍、あなたは…。」
 紫が傘を一振りすると、藍の九尾ははらりと消えて、残ったのはたった一つの黄金の尻尾。後ろに立つ橙もまた一尾の猫に。
 「これで、あなたはただの狐。それと、そこの野良猫は…。」
 「ひっ!」
 憎しみを込めた紫の視線をまともに受けて、小さく悲鳴を上げた橙。
 「八雲の姓に連なることなどできず、私と同列の名を冠することすら我慢がならないわ。青の果てを極めた私ですら手に入らなかった、赤の名を冠する、臆病な黒猫。」
 境界を操る紫の指。それが、橙のある境界を歪ませる。
 「橙、あなたの『色』の境界を弄ったわ。もう、橙の名すらあなたには相応しくないわ。」
 その瞬間、笑顔と色が消え、灰色のくすんだ泣き顔の猫が立っていた。


 東風谷早苗は、一心に祈るその丸い背中に声を掛けずにはいられなかった。
 「なにをお願いしてるんですか?」
 はっ、と顔を上げた橙はほとんど泣き顔で、しゃくりあげた拍子に涙がひとつこぼれて落ちた。
 「私でよければ話してみませんか?私、実は神さまなんですよ。何でもできちゃいます。ね、困ってること一緒に考えましょ。」
 橙はその笑顔を放心したように見つめてから。
 「…〜!!」
 抱きついた。抱きついて、声を押し殺して泣きはじめた。
 「あらあら、困った猫さんですね。」
 早苗はさして困っていないというふうに目を細めた。


+++++


 これが、幻想郷全土を揺るがさない『灰色異変』の始まりだった。


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 「うん、かわいーっ!!橙、くるってやって!」
 姿見の前で一回転する橙。いつもの服とは違って、華やかな外の洋服を身につけた橙。灰色でも、表情は笑み。
 ここは早苗の自室。要領を得ない橙の説明を早苗は根気よく聞き、大体のあらましを知った。この妖猫を使役する紫というものが、橙の色を失わせたというくらいだが。
 「ねえねえ、次はこのワンピ着てみて!これね、私のお気に入りだったの!」
 「うんっ!サナエはキレイな服たくさん持ってるね。」
 「えー、そうかなぁ。あっちじゃ私、地味なほうだったんだよ。」
 「…??あっち、って?」
 ふと、それとはわからないくらいだが早苗の表情が翳る。
 「…あ、橙は尻尾があるから、この服だとパンツ見えちゃうね。」
 「ん?気にしないよ。」
 「ダメです!女の子はそういうの見せちゃいけないの。」
 「サナエが言うなら、そうする。」
 ああ、かわいい。素直な性格も、可愛い顔も全部が理想の妹。私もこんな妹が欲しかった、と早苗はちょっと思った。
 橙から事情を聞いて早苗が真っ先に考えたのは、即席でもいいから橙に色を与えること。肌も服も灰色のままでは気分が落ち込んでしまう。だから、持ってきた服の中からとりあえず橙に合うものを探して…。
 「ね、サナエ。」
 「なぁに、橙。」
 先ほどまで楽しそうだったのに、色のせいかちょっと沈んで見える橙。
 「やっぱり、…いい。」
 「いい、って?」
 「服。キレイなのばっかりで、すごく嬉しいけど、いい…。」
 「どうしたの?着なくなっちゃった服だから、遠慮しなくても良いのに。」
 「ううん、そうじゃない。」
 橙は首を振る。どこか優しく、諦めたみたいに。
 「私の服は藍さまが作ってくれた、大事な大事な服なの。だから、早苗の服がどんなにステキでも、やっぱり私は私の服のほうが好き。」
 笑顔だった。色があるんだったら、大きな真っ直ぐな瞳と、赤みの差した頬で、花の咲くような顔だったんだろう。
 「…うん!わかった。橙はいい子だね。」
 この子は、私が、なんとかしなければ、と決意を固めた早苗だった。


+++++


 「神奈子。早苗も困ってるだけだって。」
 「私だってわかってるつもりなんだけどね、諏訪子。」
 「あっちだったら『なんでもできる』神奈子に泣きついてきたかもしれない。どうにかして欲しいとは言わなくても、相談に来てくれた。」
 「そうね。」
 「だけど、神奈子は負けた。ただの人間に。…だから、早苗はもうあなたを頼れない。」
 「あなただって負けたでしょ。」
 「ここは、…。」
 「ん?」
 「ここは良いところね、神奈子。昔のままの信仰が受け継がれてる。」
 「毎日山の妖怪たちと酒が飲めるわね。」
 「だから、早苗も昔のままの神と人との付き合い方をして欲しいの。」
 「自立しなさいって?親馬鹿ね、諏訪子も。」
 「馬鹿はアンタ。早苗がやっと一人で歩こうとしてるんだから、あんまり邪魔しないでよね。」


+++++


 「…あのね、サナエ。」
 朝が過ぎて、昼へと変わる頃。早苗と橙は森へとつながる道を歩いていた。散り遅れた桜の花びらが、緩い風に乗って遊んでいた。
 早苗はいつもの巫女姿。橙はいつもの服の上に、早苗からもらった春っぽいだいだい色のジャケット、そして顔には。
 「やっぱり変な感じがする。」
 薄く化粧していた。幼い顔の元気さを損ねないよう、あくまで薄く。下地を肌色に、頬には赤を、唇には紅を。満更でもないといった表情だが、鼻をひくひくさせている。
 色を失って、灰色になった表情をせめてもよみがえらせようと、早苗の考え出した方法だった。
 「気になる?」
 「う〜、ちょっと…。」
 「すぐ慣れるよ。」
 目的地は香霖堂という、半人半妖の経営する道具屋。
 早苗は店主の霖之助と知り合いで、最近外界から来た人間として流れ着いた道具の使い方を教えたりしている。その中には、何処から来たのかわからないものもあり、早苗は『香霖堂なら何でもある』と思っていた。
 だから橙に『色』を取り戻させるものがないか探しに来た。
 「橙、ちょっと待っててね。」
 「うんっ!」
 橙を残して店内へと。
 「ごめんくださぁーい。霖之助さん、こんにちは!」
 「やあ、その声は早苗だね。」
 本から顔を上げたのは、眼鏡を掛けた細身の青年。森近霖之助だ。
 「今日はどうしたんだい?」
 「えっとですね、ちょっと言いにくいんですが…。」
 どう説明したものかちょっと悩んだ早苗は、本題を率直に話した。
 ただ、そのためらいを少しだけ勘違いした霖之助。何か言いにくい事情があるのだろうかと邪推した。
 「あの、こちらで『色』は扱ってますか?」
 「『色』…色!?」
 色。商品として扱う、色。早苗が口には出しにくい、色。それはどう考えても、赤や青といった意味での色ではない。
 金で、売買する、色。たぶんそれは桃色吐息。
 「さ、早苗。その、色っていうのは君が売るのかい?そこまで金に困っているなら…」
 「売るんじゃないんです、買いたいんです。」
 「買う!?」
 なんてこったい、外の人間は瞳を輝かせて臆面もなく、女の子が『色を買う』などと言えるなんて。素晴らしく進んでいる。ああ、外の世界に生まれればよかった。
 「どうしても必要なんですよ。」
 「どうしても、って…。ん、なんだ、その。まぁ、そういう人も居るだろうね。」
 「笑顔の素敵な、小さな、可愛い女の子の『色』、ありませんか。」
 「…ちょ、ちょっと待ってくれ。」
 女の子。女って言ったよな、今。
 「確認するが、君に必要なのは女の子の『色』なんだね。」
 「はい。」
 幻想郷万歳!女の子万歳!
 「ど、どうして?」
 「その子のため…なんて言えませんね。その子の『色』を私が手に入れて、その女の子と一緒に笑い合えたらなって思うんです。わがままですね、あははっ。」
 「その我儘さや、潔しっ!」
 グッジョブ早苗と親指を立てて、(架空の)風に服をたなびかせてポーズをとる霖之助。とにかく素晴らしい。パーフェクトな女の子が幻想郷にいるぞ!
 しかし霖之助はがっくりと肩を落とした。
 「…だが、申し訳ない。香霖堂はそういう斡旋をしていないんだ。」
 「そうですよね、やっぱりすぐ手に入るものじゃないですよね。」
 「まぁ、でも、君なら男のだけじゃなくて、女の子の『色』でもすぐに手に入るさ。」
 「変な霖之助さん。男の人(の『色』)なんていらないんですよ、私。」
 「ああ、そうだったね。ガチだ。」
 サムズアップ!
 「今日はありがとうございました。また、よろしくお願いします。」
 「よろしく。『色』はないけど、それ以外なら何でもあるから。」
 店を出る早苗。
 それを見て、橙が駆け寄ってくる。
 「サナエ、どうだった?」
 「やっぱり、『色』は置いてないって。だけど、すぐに手に入るって励ましもらっちゃった。」
 「うん、やったぁ!」
 残された霖之助は東風谷早苗の評価を変えざるをえなかった。外の世界から来た風祝りの現人神から、女の子でありながら女の子の『色』を漁る巫女へと。
 そんなこともつゆ知らず、二人は春の眠たげな空気の中をゆっくりと歩いていった。散り遅れた桜の花びらが、ゆったりと回っていた。


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 「あら、山の上の。」
 「こんにちは霊夢さん。」
 ここは博霊神社。橙から『色』が失われたのはある意味での異変。そして、異変と言えば紅白の巫女だと妖怪たちに聞いたことがある。この巫女ならば、この巫女の力なら、なんとかしてくれる気がした。
 見れば遅咲きの八重桜。傍らには散った桜が山をなして掃き溜めてある。それを見て、どこでも神社の掃除は大変だと早苗は思った。
 「レイム!」
 笑顔の橙が霊夢に走り寄って…。
 「鬼神『飛翔毘沙門でッ!!!』いった〜い!!何するのよっ!」
 「あんたこそいきなりスペルカードぶっ放しておいて、私が悪いみたいに言わないでくれる?」
 スペルカードを使おうとしたところを、箒で叩かれた。
 それだけのやり取りなのに、早苗には二人がすごく仲が良さそうに見えてちょっとうらやましかった。
 「知り合いだったんですか。」
 「残念ながら、ね。」
 「紫さまも藍さまも、よくこの神社で宴会をやってるの。」
 「無断借用だけどね。…で、今日はどうしたの?」
 改めて、早苗に向き直る。
 「この子、橙の『色』が…。」
 「見せて。」
 霊夢は橙の瞳をじっと覗き込んで。
 「尻尾が減ってるわね。それと、いい化粧してるわ。…でも、問題ないでしょ、これくらい。」
 「そんなっ、異変ですよ!」
 「どうせ紫の仕業ね。あいつなら寝れば全部忘れて元に戻すわよ。」
 「でも、橙だって困ってます!あなただって自分の色がなくなったら嫌でしょ!」
 必死に訴えかける早苗。しかし、そんな様子を前にしても紅白はのんびりと。
 「なんでそんなに熱くなってるのよ。困ってるのは橙でしょ、あんたじゃないわ。」
 「そうですけど…。」
 「とはいえ。」
 紅白の巫女はため息をついた。
 「見たところ、橙も藍もずいぶん力が弱められてるわね。尻尾も減ってるし。このままだと式が外れるかもしれない。そしたら、あんたはただの化け猫。」
 「えっ、そうなの橙?」
 早苗はびっくりして橙を見る。
 どうしていいかわからないと言った表情で橙はうつむいた。
 「うん、黙っててごめんね。サナエ。」
 「それで、式が外れるとどうなるの?」
 「そんなに変わらないよ。私、たくさん生きてるから、普段からこの姿だし。」
 「よかった。橙が居なくなっちゃうのかと思った。」
 早苗の安堵に、博霊の巫女は冷たく言い放つ。
 「姿は変わらないけど、力と理性が失われるわ。そうしたら、ただの凶兆の黒猫。…藍はどんな顔をするかしらね。」
 「えっ!?」
 「もって2、3日ね。早ければ明日にも式がはがれ、藍の制御から解放される。私にはわからないけど、案外橙もそれを望んでるんじゃないの?」
 「…。」
 うつむく橙に、早苗は叫んだ。
 「ダメです!」
 今日知り合ったばかりだとか、そんなことは考えなかった。泣きながら抱きついてきた橙は、幻想郷ではじめて心を許せる相手。
 すべてを捨てて、ただの巫女、ただの人間に負けて、しかも信頼していたあの八坂様までが敗れた。何もかもが失われた幻想郷という世界に、楽しい色を描いてくれたあなたのために。
 「橙は、私がなんとかします!だから安心して、橙。」
 「う、うん…。」
 紅白の巫女はため息をついて。
 「まぁ、明日にでも紫に掛け合ってみるけど期待しないでね。魔理沙にも声を掛けてみるわ。…あいつの不貞寝を起こすなんて、まだ異変のほうがマシだわ。」
 「ありがとう、霊夢さん。」
 「レイム、ありがと!でも、紫さまをこれ以上怒らせないで…。」
 「大丈夫よ、紫もあんたのこと嫌っていないわ。ただ、誰しも怒ったり、怖がったりすると周りが見えなくなるだけ。」
 紅白はよく掃除された庭に立ち、背筋を伸ばして北のほうを遠く眺め、目を細めた。
 それだけで、空気までが固く締まった。
 戦ったり、お酒を飲むだけでは見えなかった巫女の一面。早苗は気づいた。
 「幻想郷は…。」
 あの八坂様でさえ負かされた。当たり前だ。この巫女は風や雨といったものを司るのではない。神徳など持たない。この神社にご利益などはないだろう。なるほど、参拝客などないはずだ。
 そう、この神社は幻想郷そのもの。
 彼女は幻想郷を背負っている。その細い肩に、その強い心に。
 「そこまで狭量じゃないわ。」
 早苗は霊夢と同じ方角を見た。遠く遠く、遥か彼方の山並みまで春の陽気にぼんやりと見渡せる。…それだけだった。
 でも、この紅白の巫女には違った風景が見えてるんだろう。苦しいこと、辛いことが。
 それでもいつもの笑顔を浮かべながら、皮肉な言葉を弄びながら、何もかもを乗り越えるに違いない。現人神として生きることがアイデンティティだった私が足元にも及ばない、大きなものを守っている。
 いつか、私にもこんな目ができるだろうか。いつか、この巫女のようにすべてを守り、すべてを変えることができるだろうか。早苗は祈るような気持ちで、霊夢の小さな背中を見つめた。


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 「ただいまー。」
 「おじゃましまーす!」
 夕刻、収穫もなく戻ってきた守矢神社の母屋。
 どうにかしようという気持ちはあったものの、橙と一緒に回る幻想郷は楽しくて、二人で当てもなく歩いているうちに、日が暮れてきた。今日のところは、橙の色を戻す方法はとりあえず保留。早苗は一人で帰っても不安になるだろう橙を、守矢神社に泊めることにした。
 「早苗、今日もどう?」
 お帰りの挨拶もなく、神奈子が猪口を持つ手の形を作って、くいと傾ける。
 「あら、そっちのは?」
 無邪気な笑顔でぴょこりと現れたのは、洩矢諏訪子。こちらも宴会前でそわそわしている。
 「…。」
 早苗の陰に隠れてる橙。
 「橙、大丈夫だよ。この人たちは、うちの神社で奉ってる神様の八坂様と洩矢様。怖い人じゃないよ。」
 「妖怪でも痛いことしない?」
 「うん、この山の妖怪さんたちともスゴク仲がいいんだ。」
 ほら、と笑顔で背中を押されて、おずおずと前に出る橙。
 「橙…。」
 おっかなびっくりの黒猫は、挨拶もままならず。
 「そう、橙ちゃんって言うんだ。諏訪子よ、よろしくね。」
 「私は神奈子。可愛い化け猫ね、食べたいくらいよ。」
 「!!」
 「八坂様!」
 また隠れる。
 「なんてこと言うんですか!」
 「冗談よ、冗談。早苗もそんなに怒ることないでしょ。」
 「もぅ…。」
 そんな空気を読んでか読まずか、諏訪子が言った。
 「ねえ、早苗は今夜どうするの?」
 もちろん、宴会のことだ。
 「遠慮しておきます。お二人で楽しんできてください。…ご飯はどうされますか?」
 「食べてい…もがっ。」
 言いかけて諏訪子に口を塞がれた神奈子。
 「あっち行って食べてくるから、いいよ。河童のきゅうりっておいしいんだ。私たちの心配なんかしないで、たまには早苗もゆっくりしたらどう?」
 「ありがとうございます、洩矢様。」
 落ち込んでいる橙と過ごすのだ。緊張する相手が居ないことが素直にありがたい。そのことに感謝しながら、ちょっとした罪悪感があって、心の中で謝った。
 …かなちゃん、ケロちゃん、ごめんね。
 「じゃ、神奈子。ちょっと早いけど行こっか。大将棋でも見てよ。」
 「あれ、スゴクつまらないわ…。」
 神奈子を引っ張るようにして出て行った諏訪子。
 「もう大丈夫だよ、橙。」
 「行った?」
 「うん。でもね、私の大事な神様だからあんまり嫌わないで欲しいな。」
 「…うん、ゴメンね。」
 素直に謝る橙は、やっぱり可愛い。私の妹候補ナンバーワン!と、早苗は再確認。
 「橙、先に私のお部屋行っててくれる?わかるよね、お着替えしたところ。」
 「早苗は?」
 「ご飯の準備してくるよ、一緒につくろうね。」
 「うんっ!」
 とてててっ、と駆けていく橙を見送って…。
 「…早苗。」
 「!?」
 諏訪子だった。音も気配も全く感じさせずに、すぐそこに立っていた。
 「びっくりしました。」
 雨に濡れた蛙の、冷たい空気を纏って。
 「あの子、どうしたの?」
 「詳しいことはわからないんですが、色が失われたみたいで。」
 「そう。早苗はどうしたいの?」
 それなら決まっていた。
 「助けてあげたいんです。」
 「昔見てたテレビのヒーローみたいに?」
 揶揄するような、冷たい諏訪子の言い方。
 「…。」
 「人間、できることとできないことがあるわ。」
 早苗の手を握る諏訪子。…その手は小さくて暖かかった。
 「じゃあ、洩矢様ならできるんですか。」
 「あなたに無理だとは言ってないの。ただ、あの子は飼い猫よ。他人のうちの子なの。それを忘れちゃダメだからね。」
 「…知ってますよ、そんなこと。」
 不思議なくらい言葉に棘が生えた。
 諏訪子はため息をつく。
 「早苗、あなたが傷つかないためなら、私はあなたに嫌われても構わない。…だから、もう一度言うわ。あの子は、他人の家の子よ。あの時の猫とは関係ないのよ。」
 「知って、ますっ!」
 振り払う手のぬくもり。来たときと同じく、音もなく姿を消す諏訪子。
 落ち着け、私。落ち着け、東風谷早苗。…こんな顔、橙に見せられないから。
 早苗は胸を押さえたまま、しばらく動けなかった。

 「橙!おまたせ、何食べたい?」
 無理のない笑顔、自分自身にそう言い聞かせながら早苗が橙のいる自室へと入った。
 「…。」
 「…どうした、橙?」
 「ごめんね…。」
 「…なぁに、聞こえないよ。」
 「なんでもない。」
 気遣ったのは早苗か橙か。春は夜も緩やかだ。
 「ふふっ、変な橙。」
 「サナエ、ひどぉい!」
 「はいはい、私はひどい人間ですよーっと。」
 「もーいい。」
 ぷいと、顔を背ける橙の表情も春のように緩んで。
 「それで、何作ろっか。橙はおさかなとか好き?」
 「あっ…。」
 一瞬、橙がびくりと体を震わせて。
 「うん…。好き…だけど。」
 「ん?じゃあ、おさかなでいいかな?」
 「…サナエはおさかな好き?おさかな食べても怒らない?」
 「うん、好きだよ。橙と一緒に食べるの楽しみだな。」
 橙はじっと早苗の瞳を覗き込む。何かを疑うみたいに、何かを推し量るみたいに。
 「じゃあ、おさかな、食べたいにゃ。」
 借りてきた猫みたいに、おとなしく言った。


 「橙、お風呂沸いたから、先に入らない?」
 ごはんも終わり、一息ついたころ早苗が橙に声をかける。
 橙は飛び上がらんばかりに驚いた。
 「あ、あのね、私、水を浴びると式が外れちゃうから、お風呂はダメなの。絶対ダメ、もう、どうしてもダメ!」
 不自然なほどに言い訳を重ねる。
 その姿を見て、早苗の中の悪い虫がもぞもぞと動いた。
 「あれ、橙は水が苦手なのかなぁ。私いたところのねこたちは、みんなお風呂が大好きなきれい好きな子ばっかりだったけどなぁ。」
 「…う、うそだよね?」
 「ホントだよ。あれぇ、橙はねこたちの中で一番えらいってさっきまで自慢してたのに、もしかして水が苦手なの?」
 「…そ、そんなこと…。」
 「うん、そうだよね。橙は水なんて怖くないよね。私と一緒にお風呂入ってくれるよね。」
 困ってる橙を見て、にやにやする早苗。
 これくらいでやめようかなと思ったとき。
 「あはは、橙。ごめんごめん、今の…。」
 「う、うん!サナエ、お風呂入ろっ!!ほら、サナエ…ま、まさかサナエも水が怖いの?」
 「あ、ううん、そんなことないけど。」
 「そんなこと言って、や、やっぱり水が怖いよね。ほら、お風呂入るのやめてあげてもいいよ。」
 「あ、いや、私は橙が入った後に…。」
 「そう言ってお風呂入らない気でしょ!」
 「そんなことないけど…。」
 結局二人で入ることになりましたとさ。


 「あー、これね。」
 「う、うん…。」
 見れば背中に、複雑な術式を書いた符があった。
 守矢神社の母屋にある、小さな風呂場。お風呂の小さな椅子に腰掛けて、早苗が橙の頭を洗っていた。
 「すごい複雑な術式だね。」
 「ん。ら、藍しゃまが、その、私のために作ってくれたものだから…。」
 かなりぎこちない橙。お風呂自体が苦手なのに加えて、目に入ると痛い洗剤で頭を洗われている。背中を丸めて、ぎゅっと目を瞑る橙。水に濡れていなければ、全身の毛が逆立っていることだろう。
 「ん…?あ、ほんとだ。この符、水を弾くんだ。」
 「そう、藍しゃま特製。滝に打たれたり、水の中で暴れない限り、式が濡れることはないの。」
 じゃあ、お風呂だって平気でしょ。と、思っても早苗は口に出さなかった。
 早苗も無理やりお風呂に入れたことに、ちょっとした罪悪感があった。だから、もう残りもあんまりない貴重なシャンプーやコンディショナーを惜しげもなく橙に使っていた。
 髪、キレイだなぁ。
 「橙、お湯かけるよ〜。」
 「わ、わわっ!ちょっとまっ…!」
 ざぁー、っと桶に入ったぬるめのお湯を頭から掛ける。
 「サナエ、ひーどーいっ!」
 「ははっ!泡をちゃんと流さないとお風呂から出られないよ。」
 「…うー。」
 半分涙目の橙。
 ああ、その表情ですらかわいいなぁ、もう。
 「…も、もう洗うのも終わったから、先にお風呂あがるねサナエ。」
 ぴょんっと跳ねて出て行こうとする橙。
 その肩をがしっと掴んで離さない早苗。
 「まだ、でしょ。身体洗ってないじゃない?」
 「き、きのう洗ったからいいの。猫はからだ洗っちゃダメなの。」
 「…ねぇ、橙。」
 早苗はちょっと言い難そうに。
 「ちょっと汗のにおいがするよ。…ちゃんと身体洗ってないでしょ。」
 「…にゃあ。」
 「誤魔化しちゃダメです。その、ランさん?もキレイで良いにおいのする橙が好きなんじゃないかな?」
 「…。」
 「ね、痛くないように、怖くないように洗ってあげるから。」
 橙はいつも藍にお風呂にちゃんと入るように言われていたのを思い出した。
 「…ぅん。おねがい、サナエ」
 「うんっ!」
 とはいえ、やっぱり苦手な橙はその後たくさんの悲鳴を上げることになる。
 春の山、どこか遠くで聞き耳を立てていた天狗の走狗。一度ならず、何度も繰り返される猫の悲鳴を聞き『山頂に引っ越してきたあの神社は、よほど恐ろしい場所に違いない。お参りは欠かさないことにしよう』と心に決めた。
 …それから幾日か、天狗にストーカーまがいの取材を受けることになったのは、また別の話。


 浅くぬるめの湯を張った湯船。
 「橙、まだ怖い?」
 早苗は膝の上で小さくなっている橙に声を掛けた。
 「…う、うん。元々怖くなんて、な、ないよ。」
 お湯に浸かろうとしたら、暴れて、泣いて、大変だった橙。仕方なく、早苗が先に入って、その膝の上に乗ることで妥協点を見出した。
 とはいえ、こんな姿勢では橙はほとんど湯につかっていないわけだが。
 「藍しゃまも…一緒にお風呂に入るときは、いつもこうしてくれるの。」
 「ねぇ、橙。その、ランさんってどんな人なの?」
 すべすべの橙の肌を撫でながら、早苗は優しげな口調で聞いた。
 白と黒、色のない橙。たぶん、色が戻ったら元気でハリのある肌に赤みがさして、もっともっとキレイでかわいいんだろうなぁ。
 「厳しくて、優しい私の使い手。お母さんみたいな人だよ。」
 「いいなぁ。私、お母さんとはあんまり仲がよくなかったから。」
 「でもね、酷いの。すぐ怒るの。」
 「それは、橙のためを思ってだよー。だって、橙もランさんのこと嫌いじゃないでしょ。」
 「…うん。大好き。」
 「そっかぁ。じゃあ、ランさんも橙のこと大大大好きだよ。」
 「そ、そうかなぁ。…えへへぇ。」
 いいなぁ、ランさん。
 こんなにちっちゃくて、可愛くて、素直で、お肌もつるつるな橙と一緒にいられるんだから。
 「…ねぇ、橙。」
 「ん?」
 「私ね、橙みたいな妹が欲しかったんだ。」
 「私もサナエみたいなおねえちゃんが欲しかった!キレイで、いい匂いがして、優しいおねえちゃんっ!」
 くるりと振り向いて笑う橙。
 その顔があまりにも近くて、その小さな唇があまりにも可愛かったから。
 「!」
 自分の唇を重ねた。
 「あ、橙!ごめ…これは、その…。」
 自分でも思いも寄らない衝動的な行動に、早苗は言い訳を重ねる。
 もー、何やってんだ私…。
 「にゃー…。」
 橙はにこにこして笑っていた。
 その邪気のない笑顔に、早苗も落ち着いて。
 「い、今のは、守矢神社に伝わる願い事を叶える秘儀です。これで橙の願いも叶うよ。」
 「あ、そうだったんだ…。」
 ちょっとだけテンションの下がる橙。
 あれ、私何か間違えた?
 「私、早苗がキスしてくれたんだと思った。」
 あれ?
 「キスって…。」
 「親しい人に贈る、親愛の証だって。藍様が言ってた。」
 わー、神さま!嘘ついてごめんなさい!さっきのナシにしてー!
 「じゃあ、しよっか。…キス。」
 しかも私なに言ってるんだー!!
 「うんっ!!」
 んー、って唇を突き出す仕草が、こう、なんとも…。
 「…って、わー!サナエ、鼻から血が出てるよー!」
 見れば紅く染まる湯船。
 「わー!サナエが死んじゃうーっ!!!!」
 静かな春の夜も、人と妖怪の賑やかな交わりの中では、陽気さをいや増さずにはいられない。騒がしすぎる二人も、人の子ひとりいない寂しすぎる山中の神社には、ちょうど良いくらいかもしれなかった。


+++++


 「ねぇ、この隙間って何かに似てると思わない?」
 自室で眠ったはずなのに、早苗はどこか見知らぬ空間に囚われていた。手足の自由はない、声さえも出てこなかった。
 あの後、お風呂から上がって、布団を敷いて二人で眠ったはずだ。眠る間際までお話しをして、先に眠ってしまった橙の寝顔を見てるうちに自分も眠りに引き込まれた。
 「あなたたちが、こっちにやってくるときに通った隙間。…ふふっ。」
 上下も左右も感覚がない。ただ、距離感さえもつかめない異様な眼球たちが早苗を見つめていた。
 夢だ、ああ、こんなの悪い夢だ。…目、覚めて。お願いだから。
 「ねえ、早苗ちゃん。こっちの世界に来て、神として生きようとしてた早苗ちゃん。」
 見下ろすのは、日よけの傘を差した金髪の美少女。…いや、その禍々しい雰囲気から人間ではないとすぐに知れる。少女の姿を模した、老獪な紫色の妖怪。
 「でも負けた。巫女に負けた。ただの人間に負けた。あはは。神が、人に敗れたわ。」
 目の前に降り立つ紫の妖怪。
 「ねえ、早苗ちゃん。知ってるでしょう。弱き神は必要がないの。神は、衰弱を許されない。」
 それは、ただ穏やかに笑っているだけなのに、恐ろしく剣呑な空気を放つ。
 「『神殺し』。昔はあなたのところでもあったでしょ。神は死ぬことがない。だが弱ることはある。そして弱き神は、新しくやってきた強き者に殺され受け継がれることで、その強さを新たにする。
 早苗ちゃん。ただの人間に敗れた早苗ちゃん!あなたはどうして生きてるの?」
 そうだ。神として負けたのなら生きてはいられない。
 …それが正しいありかたなのに…。
 「あら、あなたの心にはスキマがたくさんあるのね。」
 妖怪の手が、早苗の胸元へと食い込んでいた。
 「…ああ、だから橙をね。ふぅん。」
 妖怪の顔は見えない。だが、口元が異様なまでににやりと笑っているのは見えた。
 「…『穢れが移るでしょ!』」
 びくんっ、と早苗は跳ねる。
 「思い出した?あなたのお母さんの言葉よ。ステキな人ね。」
 あ、ああ、と声にならないうめきが早苗の口から漏れた。
 「あなたにとって、あっちの世界は灰色だった。ちょうど、今の橙みたいに。ただ自分が操れる力だけを過信して、友達を見下して。溶け込めなかったのね。そして、周囲から孤立すればするほどに修法に打ち込んで、力を得れば得るごとに離れていって。」
 心の隙間を抉る、その繊細な指。暗い、暗い過去が引きずり出される。
 「だけど、ホントは『普通』になりたかった。流行の服を身につけて、キラキラとしたアクセサリーで装って。彼氏だって欲しかった。」
 ぐり、ぐり、ぐるりとかき回される心の奥の黒の自分。
 「あの子、今頃どうしてるかしらねぇ。まさか生きてはいないでしょう!あなたが殺したようなものね。」
 そうだ、私は見捨てたんだ。だから、橙を助けることができたのなら、今度こそ…。
 「偽善者。」
 ごめんなさい、ごめんなさい。でも、どうして私だけがシアワセになっちゃいけないの?
 「ここは、幻想郷。楽園ではないわ。逃げることしかできない早苗ちゃんが、幸せになれるはずなんてないじゃない。」
 ごめんなさい、ごめんなさい。
 シアワセになんてなれなくてもいいんです。だから、せめて普通に…。
 「『普通』が早苗ちゃんの望んだことでしょ。それが無理だと言ってあげてるのよ。
 あなたが通ってきたこの隙間は、夢をかなえる快楽のトンネルではないの。ここはワギナ・デンタータ。愛する相手を食い破る、牙のついたクレヴァスよ。存在しないはずの隙間の世界に生きてる早苗ちゃん。…ねぇ、あなた、もう死んでるのではなくて?」
 ああ、ああ、もうやめてください。死にたく、ない…。
 ケロ、ケロ、ケロ…。
 「あら、何かしらこの蛙。」
 気づいたときには、蛙の大合唱。耳を塞いでも鳴り止まない、頭が割れるような音量に目の前の妖怪が膝をついた。
 「…くっ、気づかれたかしら?ひどい力ね。」
 ケロケロケロケロ!!
 「今度は幻想郷で会いましょう。さよなら、敗れた神の早苗ちゃん。」
 隙間に姿を消す妖怪。ただただ大音量の蛙の声に、早苗の意識は闇へと落ちた。
 ケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロ!!


+++++


 宴会中、ふと見ると諏訪子が必死な形相で、何かに語りかけていた。
 「親ばか。」
 神奈子はあきれたように呟いた。
 「…ほっといてよ。」
 諏訪子はつんと言い返す。
 「あんまり過保護じゃ弱い子になるわよ。あれくらいの歳になったら、心配でも放っておいてあげるほうがいいのよ。」
 「あんたは心配じゃないの?」
 「そりゃ、湖と社ごと幻想郷にもってくるくらいには。」
 「…偽善者。」
 「おおいに結構。」
 酒が並々と満たされた大きな杯を、一息で空ける神奈子。
 春の闇に神々の酒宴は続く。


+++++


 「!!」
 早苗は跳ね起きた。自分でも驚くくらいに呼吸が乱れている。
 時刻は深夜の丑三つ時。隣で眠る橙の寝息は規則正しく静かだった。
 「藍しゃまぁ…もう…食べられないよぉ。…にゃあ。」
 血の気が引くほどの悪夢。それが何だったのかは思い出せないけど、思い出せないことがとても気持ち悪いけど、思い出せないことがありがたかった。
 べったりとした嫌な汗が背中を伝う。
 こんな夜は、あっちにいたときと同じように…湖を散歩しよう。

 春とはいえ、夜は冷える。厚手のコートを羽織れば何とか水辺でも歩けた。
 「…寒い。」
 両手で胸元をあわせる。
 湖の夜の散歩は久しぶりだった。あっちにいた頃はつらいこと、嫌なことがあるとこうして夜の湖を散歩していた。荘厳な湖は宵闇に凄みを加えて、とても怖かったはずなのに早苗はここが大好きだった。
 他人には見えなかった御柱、しめ縄とたなびく紙垂。
 暗い湖畔に静かな水の音を聞いていると、自分が溶けていくようだった。一定なようで、不規則な波。夜の闇に自分自身が溶けてしまう前に、いつも片手に杯を持った神様が早苗にやさしく語りかけてくれたものだ。
 『早苗、どうしたの?』
 それが、今はいない。妖怪の山恒例の酒宴だ。忘れ去られ、時間に置いていかれた神たちの最も輝いている時間。
 …そしてそれは、早苗にとって唯一の家族が遠くに行ってしまうことを意味していた。
 「寒い、よ。」
 気がつけば水際まで下りてきていた。足に冷気が、肌には水気が襲ってくる。波の音だけが変わらない。
 …夢であの紫色の妖怪に何を言われたんだろう。
 思い出せない、だけど、前にいた世界のことを言われた気がする。
 私にとって、あの世界は灰色。今の橙と同じだった。
 幼い頃から、巫女として稀代な才能の持ち主として修法を強制された。周囲の同年代の子供たちと触れ合うこともできず、ただ気を失うほどの冷たい滝に身をさらした日々。
 小学校に上がり、中学生となり、高校へ進学しても何も変わらなかった。友達なんていなかったし、作りたいとも思わない。
 だけど、だけど…どれが本当の心だったんだろう。
 「…冷たい。」
 気がつけば足首まで冷たい水に浸かっていた。
 あれほど熱心に奇跡を伝えてくれた母。だけど、どうしてだろうか。言葉は優しいのに、いつしか距離を感じるようになっていった。
 母も、そう、強い力の持ち主だった。雨を乞い、風を操った。親族は皆こぞって評価していたのだ。もしや現人神の再来では、と。
 …早苗が生まれるまでは。
 母として、東風谷として、早苗の力を歓迎する一方、その力のみにて生きてきた母は、早苗に嫉妬していた。母の力が梢を揺らす風ならば、早苗のそれは木々をなぎ倒す颶風だ。早苗を生んだことで明らかに減退したその能力。全盛期の自分ですら比較にならないほどの力を持って生まれ、しかも自分には見えない『神』を見たという早苗。
 何かを境に、お母さんとは決定的に離れちゃったんだ。なんだっけ。
 「…ああ、そうだ。ごめん、なさい。」
 猫だった。
 学校帰りに見つけた捨て猫。雨のダンボールで、灰色の瞳が震えていた。どうしても放っておけなかった。
 内緒で神社に隠して、餌をあげて、一緒に遊んだ。友達のいなかった早苗の、唯一の親友。それを、母は打ち捨てたんだ。『穢れが移るでしょ!』と言って。
 わかってる、わかってるんだ。
 母は、力が衰えたとはいえ、穢れや怪異を視る能力に長けていた。だから、穢れた気配を…。
 「ううん…。」
 違うんだ。母は、嫉妬していたんだ。
 あれほど気を使って、やりたいこともやらせてもらえずに育ち、やっと手に入れた力。
 それとは対照的に、何の苦労もなく小さい頃から力を行使した早苗。穢れすらも、無邪気に笑ってるだけで避けていく。何も考えず、苦労もなく現人神となった早苗。
 母は、穢れが移ることはないと知っていて、それでも言った。そして、捨てた。
 「許せない…なんて、もう、どうでも…。」
 早苗はうつろな表情で腰まで湖に入っていた。
 ああ、やっと気づいた。
 …私は、あの猫を橙に重ね合わせていたんだ。橙を助けることができれば、あの猫を手放した罪が消えると思って…。
 ああ、なんて自己欺瞞。なんて自分勝手。橙を、罪滅ぼしの道具にしてた。
 「ごめんね、橙…私…。」
 寒い、寒い、寒い。
 ああ、なんて寒いんだろう。ここには神奈子様も諏訪子様もいない。…そして、橙も。
 すべてを捨てて、新しくやり直せると思った幻想郷。現人神としての力を誇示することで、私を仲間はずれにしたみんなを、あの母を見返せると思ってた。
 だけど、だけど負けた。ただの巫女に、ただの、人間に。
 …もう、思い出したくない。もう、いい。
 感覚だってなくなってきた。もう、いいんだ。波の音に、冷たい水に…神奈子様の湖に溶けて消えてしまおう。
 「…ナエー!」
 橙の声が聞こえた気がする。
 ああ、最後にあの笑顔に…。
 「サナエーッ!」
 ざばぁんっ!!
 声が聞こえたかと思うと、早苗の横に派手な水しぶきを上げて着水する橙。
 「サナエ!ダメだよ、こんな冷たい水じゃおぼれちゃうよ!!」
 助けに来た橙は、式まで濡れて、水の恐怖に震えていたけど、しっかりと早苗を見据えて言った。あの、浅いお風呂ですら大騒ぎの橙。足すらつかない、本来ならパニックでも起こしてしまいそうな水深なのに。
 「橙…式が、濡れちゃう…。」
 「なら、手間かけさせないで!ほら、サナエ!」
 差し出された手を、早苗は取れなかった。
 だから、橙は早苗を抱きかかえる。震えてるのはどっちだろう。
 「…ごめんね、橙。」
 「早苗、戻ろう。」
 「うん…。」
 そして、橙はねこかきで岸へと泳いでいく。
 「サナエ。」
 途中、声まで震えさせながら橙は語りかける。
 「サナエは時々すごく苦しそうな顔をするよね。どうして。」
 「…。」
 「私は猫だからわかんないけど、猫はそんなに苦しいものならどこかに捨ててきちゃうよ。」
 「…できないよ、私は風祝りだもの。現人神であることは捨てられないの。」
 早苗の方は見ない。泳ぐだけでも必死、顔を出していないと死んでしまうとでもいうように、引きつった顔で橙は泳いでいく。
 身長の違う早苗は、もう足が届きそう。だけど何もいわなかった。
 「あのね、私は藍さまに鬼神の力を宿してもらった。力比べなら絶対に人間に負けないわ。でもレイムに負けちゃったの。かっこ悪いよね、あはは。ねぇ、サナエ。どうして私は負けちゃったのかな。」
 必死になって岸を目指す橙は気づかないけど、早苗はもう湖底に足がついていた。
 「…それは、あの麓の巫女が強いからでしょ。」
 「ううん、私のほうが強いよ。だって、風よりも早く走れるし、石だって握りつぶせるもの。
 あのね、負けたのは鬼神が人間に劣るからじゃない。ここのルールが、人間も妖怪も鬼神も神さまも、全部ぜんぶ一緒になって遊べるようになってるからだよ。」
 「なに、それ。」
 「早苗は…。」
 身長の低い橙も、そろそろ足が湖底に届く頃だった。
 「背伸びしすぎてるんだよ。サナエは人間。たぶん、私より早くおばあちゃんになって、先に死んじゃうんだ。それは、神さまじゃないから。」
 「…。」
 「そして、私は。」
 気がつけば、もう湖畔。ずぶぬれの橙は振り向いて早苗を見た。
 その笑顔は、この夜中でもやっぱり太陽の花のように輝いていた。
 「サナエが神さまじゃなくても、サナエのこと大好きだから。一緒にいたいから!…それに、気づいてないかもしれないけど、サナエのこと応援してくれてる人、たくさん居るんだよ。」
 「…いるのかな?」
 「いるよ。たくさん、たくさん居るよ。心が狭くなっちゃうと見えなくなっちゃうだけだよ。」
 「…。」
 「サナエ、帰ろうよ。帰って、あったかいお茶でも飲もうよ。」
 「…うん。」
 冬のように冷たい湖畔を、抱き合うようにして去っていく二人。無言で震えていた。


+++++


 「ね、言ったとおりだったでしょ。」
 「う・そ。神奈子はいつでも助けられるように準備してた。」
 「もしものためよ。」
 「信頼しろって言ってみたり、心配してみたり。適当ね。」
 「諏訪子が心配しすぎなのよ。」
 「ねぇ、神奈子。」
 「なにかしら、愛しい諏訪子。」
 「気持ち悪い。…あのね、早苗は、その、大丈夫かな?」
 「当たり前でしょ、私の愛しい娘よ。」
 「私の、よ。適当なこと言わないの、営業。」
 「実務が心配してもどうにもならないわ。必要なときは必ず来るから、それまで営業に任せなさいって。」
 「…そうやって相談もなしに、神社を移転したんだから。」
 「あら、不満でもあったかしら。」
 「ないわよ。毎日が楽しいし。」
 「じゃあ、いいじゃない。」
 「そう言われることが癪なだけね。」
 「ツンデレ?」
 「なにそれ?」
 「ここの住人がよく罹る病らしいわよ。感情の起伏が激しくなるらしいわ。」
 「まぁ、いいわ。呑み直さない?」
 「…上等。」


+++++


 早苗が目を覚ますと、横にいる橙はまだ眠っていた。早苗の手を握っている。
 「あったかい手…。」
 あの笑顔、あの行動力をそのまま熱に変換したように、体温の高い橙。
 上半身を起こして、つないだ手をじっと見る。どうしてか、胸を締め付けられる思いがあった。
 「この子に…。」
 私は命を助けられたんだ。私が助けてあげようとしていたはずの、この小さな猫の少女が。この子がいなくちゃ、私は…。
 「私に、何ができるかな。」
 後悔なら後からでもできる。そうでしょう、八坂様!
 昨日、焼いただけの魚にあれだけ喜んでくれた橙だ。腕によりをかけて、朝ごはんを作ろう。
 武士は食わねど…あれ、違ったっけ。とにかく、ご飯を食べないと、戦えない!
 「よしっ!」
 東風谷早苗は、気合を入れて腕まくり。台所へと向かった。


+++++


 「ねぇ…。」
 「神奈子、何も言わないであげて。」
 「いや、まぁ、作ってもらってる身としては、何でもいいんだけど。」
 「ならいいじゃない。」
 「いや、ほら、一緒に食卓を囲んでればいろいろと言えるんだけど。」
 「あっちにいた頃と変わらず、私たちだけ先に食べさせようとするんだよね。」
 「いくら言っても、一緒に食べてくれないわね。」
 「寂しいわ、たった一人の家族なのに。」
 「ほんと、昔は『かなちゃん』て呼んでくれてたのにねぇ。」
 「私も『洩矢様』より『ケロちゃん』のほうがよかったわ。」
 「…そう言って、問題から目をそらさない。」
 「神奈子は魚好きだったわね。問題ないわね。」
 「ケロちゃんは早苗の作った魚料理、食べ切れるわよね。」
 「あーうー。」
 「退行しないの。」
 「…それよりさ。」
 「あの化け猫でしょう。」
 「うん、大丈夫かな。」
 「大丈夫よ、風祝りの現人神がついてるんだもの。」
 「たいした自信ね。」
 「信じてるのよ、早苗と、諏訪子を。…信仰してるといってもいいわ。」
 「…またぁ。」
 「それに、子供の喧嘩に親がでしゃばるのも、あれだしね。私たちは準備でもして待ってましょう。」
 「相手の親が出てきたら、懲らしめてやるのね。」
 「そうよ、幻想郷にやられっぱなしじゃ癪だもの。諏訪子、頼りにしてるわ。」


+++++


 「橙!ごはんでき…あれ、まだ寝てるんだ。」
 にこにこ笑顔で自室の扉を開けた早苗。
 そこには橙が丸くなって眠っている。
 「猫だから、朝は早起きだと思ったのに。」
 加えて言うなら、魚のにおいで起きだしてくるのかと思ったのに。
 早苗は眠っている橙に近づく。
 頬が赤い、体温が高い。丸くなって眠る姿は、まるで猫そのものだ。
 「お姫様が起きないときは…。」
 ほっぺにちゅーだっけ?
 あれ、私ものすごい恥ずかしいこと考えてる?
 とはいえ、深く物事を考えない早苗は橙の前髪をかきあげて、唇を…。
 「あれ?熱い…。」
 額が熱い。おでこを合わせると、燃えるような熱が伝わってくる。呼びかけにだって答えてくれない。
 猫だから体温が高い?
 頬が赤いのは、元気だから?
 息が荒いのはどうして?
 ねぇ、丸くなって苦しそうに呻いてるのは、いつからなの?
 血の気が引いてきた。
 「…藍しゃま…紫さま…。」
 どうして、どうしてこんなことに。
 よみがえる昨日の風景。式神でありながら、水中に飛び込んだ橙。それが原因じゃ…。
 「サナエ…逃げて…。」
 ぬらりと影のようなものが橙の式から現れる。
 朝日に不釣合いな、その黒い姿は半透明。実体化しきれていない鬼神が、弱まった術式から外界へと出てきた。
 「封!」
 吹き荒れる風。早苗は風を使い強引に式を封じた。その上から、封印を重ねる。
 一時的にだろうが、橙の式が安定する。わずかながら、橙の呼吸も安定した気がする。
 「…場所は、たしか。」
 幻想郷の、最果ての地。
 一刻の猶予もない。橙を、私を助けれくれた橙を、今すぐ助けるために。
 小さな猫のように丸くなる橙を抱えて、早苗は飛び出した。


 博霊大結界の守護するこの地の最果て。そこは人が決して立ち入らない場所、山の妖怪たちも決して近づかない。
 曰く、この幻想郷で最も恐ろしい妖怪が住まう場所であると。
 橙から話を聞いた時、早苗は博霊神社へ相談に行った。本来なら、そのまま乗り込んでもよかったのに。
 だが、そうはしなかった。本能的な恐怖心が早苗を遠ざけた。
 「待ちなさい!」
 声のしたほうへ、
 「秘術『グレイソーマタージ』!」
 挨拶すらもなく、弾幕を張る早苗。
 噂どおりの妖怪なら、この程度の不意打ちでは倒せない。…ならば。
 「ずいぶん幻想郷らしい挨拶だ。でも、話くらい聞きなさいよ。」
 「あなたが紫?橙を、元に戻しなさい。」
 「橙、を…?」
 黄金の妖怪狐が耳をぴくりと動かして、胸に抱いた橙を見る。
 「貴様ッ!橙になにをした!!」
 悪鬼羅刹もかくやという表情で。
 「それは、こっちの台詞です。あなたが橙にしたことをよく思い出してみなさい。」
 「式が剥がれかけてる…。貴様ァ、嫌がる橙を無理やり水に漬けたな。貴様も八つ裂きにして、水底へ沈めてやる!」
 「あなたも従わないのであれば、痛い目を見ますよ。」
 「望むところ!」
 一触即発の雰囲気に、ぱんぱんと手を打ち鳴らす乾いた音が響いた。
 「あー、あんたたち。紫に用があるんでしょ。遊びは後でやってくれない?」
 呆れ顔の紅白と、
 「何だ霊夢、止めることなかったんじゃないか。」
 笑いながら高みの見物をする黒白がいた。
 「とにかく、紫を起こすのが手間なんだから。それに…。」
 早苗に抱かれた橙を見る。そして、早苗と八雲藍をにらみつけた。
 「時間、ないんでしょ?」
 「「はい…。」」


 事情の説明は、紫の住処に向かいながら。
 狐の妖怪は八雲藍。紫の式であり、橙を式として使役するものだった。
 「式が式を…?できるんですか、そんなこと。」
 「見てのとおりだ。まぁ、でも今は力を減らされてるけど。」
 「じゃあ、今回のことは橙の使い手の、使い手…ややこしい。つまり、橙のおばあちゃんが悪いんですね。」
 「おば…ご主人様には絶対に言わないでください。」
 そして、早苗は弱った橙を助けようといろいろと手間を払ってくれたのだと、藍は知った。
 「ありがとう早苗さん。そして、申し訳ない。私が未熟なばかりに。」
 「あなたのせいじゃありません。…それに、私のためでもあるんです。」
 「それでも、もう一度言わせてもらおう。ありがとう。」
 意外なほど意気投合した二人。普段の橙の様子や、あれほど水が苦手な橙をお風呂に入れたときのこと、愛らしい仕草などを話し出すときりがなかった。
 「あなたとは仲良くやっていけそうだ。」
 「私も、です。それよりも、橙は…。」
 「今の私では式を修復するのは難しい。元々、そこの手荒な人間のために、強力な式を打ったんだ。」
 「自業自得でしょ。それよりも、藍。紫は何処に居るの?」
 紅白が口を挟む。とはいえ、確認のようなものだ。向かうべき場所も、すべきことも博霊の巫女にはわかっている。
 周囲は季節感などない、岩ばかりの荒野。季節から取り残された、寒々とした場所だった。
 「もうすぐだ。」
 「あの結界?」
 「!?見えるのか?」
 驚く藍。
 「博霊の巫女を試したの?」
 そっけない紅白。
 「なんだ?私には何も見えないぜ。」
 黒白は笑って。
 「わ、私も見えますよ!ちょっとだけ…。」
 橙を抱いた早苗は自信がなさそうに。
 「まぁ、いい。紫様の結界とはいえ、身隠しの結界くらいなら、私にも解けるだろうから。」
 藍が手元で印を結ぶ。渇いた大地に、美しい雫がひとつ落ちる音を聞いた。
 すると、石ばかりの灰色の風景が、春の芽吹く緑の大地へ。何もない平原には簡素で美しい日本家屋、そして頑丈そうな木造りの門が現れた。
 新緑の力強い息吹が今にも聞こえてきそうだ。
 「…わぁ。」
 「これは、すごいわね。」
 「侵入しがいがありそうだな。」
 「人間に見せるのは初めてだ。白玉楼までとはいかないが、なかなかのものだろう。」
 見とれていた早苗だが、胸元の苦しげな橙の吐息で我に返る。
 「は、早く橙を…!」
 「待て!」
 藍が止めるよりも早く、早苗の脇をすり抜けて走る紅白の符。それが、早苗の目前でばちっと大きな音を立てて燃え尽きた。
 「熱くならないの。あいつが結界のひとつも結ばずに寝てるはずないじゃない。藍、なんとかならない。」
 「残念ながら。」
 「じゃあ、私が行くぜ!下がってな!最大出力、恋符『マスタースパーク』!!」
 「ちょっ…!」
 まばゆい光が一帯を包む。
 一瞬見えた藍の絶望的な表情が、早苗には印象的だった。


 「やっぱり弾幕はパワーだぜ!結界の一つや二つ…。」
 煙が風に攫われて、見れば先ほどと変わらない門。やれやれと、藍がため息をついた。
 「あれ?」
 「馬鹿ね。でも、よくやったわ魔理沙。これだけ騒げば、あいつも起きるでしょうから。」
 霊夢は針を一本、懐から取り出して投げる。
 門の手前一寸の位置で、何かに刺さって止まる。見えない壁に亀裂が走った、と思うとぱりっと甲高い音を立てて結界が崩れた。
 「紫様の結界を力で破るなど…さすが、主が敗れただけはある。」
 「ありがとう、霊夢さん!魔理沙さん!これで中に入れます!」
 「…その必要は、ないみたいよ。」
 ざわりと、鳥肌が立つ。嫌な予感が駆け巡る。ああ、この気配は…。
 「ありえ、ない…。」
 空間を切り裂いて、隙間が現れる。この空間に隙間を作るなど、どんな妖怪にもどんな人間にもできるはずなどない。世界の前提を崩す所作だ。
 「…!」
 隙間から覗く空間を見て、早苗は吐き気を催した。あれは、見てはいけない。引き込まれてしまう、引きずり出されてしまう。…唇を噛んでこらえた。橙を抱く腕に、力が籠もった。
 「人が寝てるのに、あまり騒がないで欲しいわ。」
 その隙間を通って、紫色の妖怪が姿を表した。はじめて見るはずのその姿に、早苗は恐怖で身体が強張った。
 「紫。どうせ忘れてるだろうけど、藍と橙を元に戻しなさい。」
 霊夢が宣言する。戦いの予感を含ませた調子で。
 「何のことかしら…って、どうしたの藍。尻尾が少ないわよ。」
 案の定忘れていた紫に、その場に居る全員ががっかりした。
 「紫様にお怒りを頂戴し、力を奪われました。」
 「あら、悪いことをする私も居たものね。でも、普通に戻すんじゃ面白くないから…。」
 ごおん、と紫のすぐ横に落ちてきたのは人ほどの大きさの陰陽玉。
 そして見れば星の形をした魔法陣が紫を取り囲んでいる。
 「新魔法の実験台、募集中だぜ。」
 「…ゆかりぃ。次は当てるわよ。」
 紫は冷や汗をかきながら、扇を口元にあてて苦笑い。
 「やぁね、冗談じゃない。じょ・う・だ・ん。…ほら、戻してあげたわ。」
 紫が扇子を一振りするだけで、生え揃う九本の黄金の尻尾。
 「…紫様、一本多いです。」
 元々一本あったのに、九尾が生えては合計十尾になってしまう。
 「あら、ごめんなさい。」
 と、一本を落す。
 藍は、少しだけ悔しかった。紫との力の差はわかっているつもりだった。しかし、一尾を増やすのに百年以上、千年以上も修練を積んでやっと得た九尾の力。…それを、遊びのように、ただ指先を動かすだけで操る紫。
 「ありがとう、ございます。」
 「なに、その顔。文句でもあるのかしら。」
 「いえ、紫様。」
 「そう?じゃ、橙はあなたがなんとかしなさい。」
 はい、と小さく頷くと早苗に向き直る藍。
 「早苗さん、橙を。」
 「は、はい!」
 「今まで橙をありがとう。」
 草むらの上に橙を横たえる藍。精神を統一し、式に力を与えていく。
 それを見て、霊夢がのびをする。
 「一件落着でいいのかしら。」
 「ああ、案外すんなりと解決したぜ。」
 笑顔の魔理沙も同調して。
 「ありがとうございましたっ!霊夢さん、魔理沙さん!今度神社に来てくださいね、たくさんお礼しますから。」
 「お、美味い酒でも用意しておいてくれよな!」
 「あんたもたまには賽銭持って麓に来なさいよ。巫女の愚痴くらい聞いてあげるから。」
 そして、紫に釘を刺して戻っていくツートンカラー組。
 「私は…。」
 戻ろうかと思ったけれど、橙の苦しそうな表情を見てやめた。藍の邪魔にならないところで、橙が復活するまで見守ろうと思った。


 「…ところで、あなた。」
 少し離れた木陰に腰かけたところで、紫が声を掛けてきた。美しい顔で笑っているのに、どこか嫌悪を抱かせる表情だった。
 「私は八雲紫、見たとおり境界を操る妖怪ですわ。」
 「はじめまして、挨拶が遅れました。最近幻想郷にやってきました、東風谷早苗と申します。」
 「…ふぅん。早苗ちゃん、ね。」
 その目に、その言葉遣いに、早苗は忘れたはずの記憶が蘇える。蛇のような目が、忍び寄る悪夢の気配が。
 「あ、ああ、…夢、の…。」
 「あなた、神社ごとこの幻想郷に来たのに、私に挨拶がないわ。博霊の大結界を通るのに、誰が力を貸してあげたのか、思い出してみなさい。」
 紫が早苗の顎を掴んで引き寄せた。
 「…や、いや…。」
 「隙間が多い早苗ちゃん。夢を見るのも…。」
 「待ちなさい!」
 バァンと効果音(河童の小道具)付きで現れたのは、しめ縄と御柱を背負った八坂神奈子。
 「うちの子いじめるの、それくらいにしてくれないかしら。じゃないと、あんたを殺してしまいそうよ。」
 そして、目がかなり本気の洩矢諏訪子だった。
 「あら、よおこそ。忘れ去られた神さまたち。」
 「挨拶が遅れたわね、神隠しの正体。幻想郷にお招きいただいて感謝してるわ。」
 「私の早苗から手を離しなさい!妖怪少女趣味!」
 神奈子はびっくりして諏訪子を見た。
 そうだ、諏訪子って本気で怒るとかなり口が悪くなるんだっけ。
 「ちょうどさっき起きたばかりだから、お腹が空いてるんですわ。」
 そう言って、紫は早苗の頬を舐め上げる。
 ひっ、と声を漏らす早苗。
 「そう、なら幾らでも喰らうがいいわ!筒粥『神の粥』!」
 「…あら。」
 隙間へと姿を消す紫。少し離れた場所に現れる。
 「避けにくいわね。直球に見せて変化球なんて、あざといわね。」
 「あなたに言われたくないわよ。」
 駆け寄る諏訪子。早苗を抱きしめて、紫を睨む。
 「大丈夫、早苗!どっか痛いところない?変なことされなかった?」
 「あ、洩矢様…。」
 安心して、肩から力が抜ける。。
 「早苗、大事なことだからよく聞きなさい。」
 「八坂様…。」
 包むような暖かな気配は、神奈子のもの。
 「あなたは、東風谷早苗。巫女で、風祝りで、現人神…そうね?」
 「は、はい。」
 「それ、嘘よ。」
 「えっ…?」
 「騙されてたのよ、向こうの家に。あなたは巫女じゃないし、風祝りでもないし、ましてや現人神なんかじゃないの。ただの駒よ。」
 「そ、そんな…。」
 嘘だ。
 だって、私はあんなにも苦労して、辛い思いもたくさんして、全部を捨ててお二人に仕えようと…。
 「ち、違います!だって私は…。」
 「早苗は?」
 「私は、風を操ることができます。お二人を見ることもできます!」
 悔しい。悔しくて、涙が零れ落ちそう。
 「それだけ?こっちじゃみんなが私たちを認識してくれるわよ。」
 「奇跡だってたくさん起こせます!作物の豊作だって約束できます!」
 歯を食いしばって堪えるのに、涙が、止められない。
 「…それで?」
 「だって、お二人だって、私がいないと生活できないじゃないですか!掃除だって、洗濯だって、料理だってできないじゃないですか!」
 こんな、こんなダメな神さまを世話してるのに!
 「そうね。」
 「それに、前は負けちゃいましたけど、私強いんです!こんな、スキマ妖怪になんて、負けません!」
 自分の足で立って、紫を見据える。
 怒りと悔しさと、それを超える集中力。…早苗は囚われていた自分の限界を超えて、目の前の妖怪に挑む。
 「…秘法『九字刺し』!」
 空間を覆う網目のような弾幕に、さらに網目を抜ける弾幕。
 「あら?」
 避けられないと判断して、再度隙間に隠れる紫。
 それを敗走と見た早苗は、笑顔で諏訪子を見た。
 「天晴れ!それでこそ、守矢の巫女にして風祝り、現人神の東風谷早苗よ!」
 喜んだ諏訪子。
 早苗は神奈子に視線を移す。
 「どうですか、八坂様。これでも私は騙されてただけですか。」
 神奈子は腕組みしたまま頷いた。
 「…できるじゃない。」
 「当たり前です!」
 「その『当たり前』を、あの巫女にたった1回負けたくらいで失くしてたんじゃない。勝つつもりだった?負けたら終わり?なに甘えてたの。」
 厳しい言葉は相手を思って。これが、神奈子の優しさだった。
 「早苗、あなたは守矢を背負った若い稲よ。負けても、踏まれても、折れることは許されない。寒さにも、日照りにも、大雨にも負けず、真っ直ぐに伸びて、頭(こうべ)を垂れるくらいの実を結ぶのよ。それが、あなたの母から送られた、あなたの使命。
 この幻想郷で見事成し遂げて見せなさい!」
 叱咤と、激励。確かにその身に焼き付けて、早苗は笑った。
 「もちろんです!」
 その瞬間、やっと早苗は心の底から安心できる場所を見つけた。
 「…お話の途中ですが。」
 その暖かな雰囲気に間隙を作ったのは、やはり八雲紫。
 それを見て、諏訪子が剣呑な雰囲気で言った。
 「…ねぇ、神奈子。」
 「いいわよ。」
 頷きあう二柱の神。
 「早苗。洩矢の力、その目に焼き付けておくと良いわ。」
 「…はい。」
 神奈子と早苗を守るように、紫の前に立ちはだかる諏訪子。
 一番小さな背中なのに、どこか鉄を思わせる強い意思の力があった。それは、ただただ頼もしい。
 「あんたも空気読んでさっさと消えなさいよ。それともなに、早苗に欲情でもした?」
 「幻想郷のパワーバランスを崩す方々には、早々にご退場願おうと思いまして。」
 「あら、これだから未通女(おぼこ)はイヤね。自分が注目されなくなることが怖いの?」
 あれ?力強く敵を打ち砕くんだと思っていたのに、話がおかしな方向に。
 「…下品な蛙。」
 「今の反応、本物ね。ああ、イヤだわ!何百年と生きて、楽しみ一つ知らないなんて!!」
 「いいから、早く死合いましょう。」
 「ああ、おっかないわ。自分が不利になると暴れて解決するの。やっぱり未通女はヒステリックでいけないわ!」
 「…っく!」
 早苗はぽかんと見ていた。
 「早苗、まぁ、なんだ、その。戦の前に相手の気持ちを挫くのも、戦術のうちだからな。」
 よくわからない神奈子のフォロー。
 「はぁ。」
 「…でも、あんまり真似しないでくれ。」
 ここばかりは本音が漏れた。
 「…はい。」
 しかし、動揺を誘うというのは本気だったのか。気づけば恐ろしい蛇が群れを成していた。
 「祟符『ミシャグジさま』やっちゃいなさい!」
 「ちょっと!」
 三度、隙間へと逃げる紫。隙間を閉じる寸前、蛇がなだれ込んでいった。
 「…かかった。」
 にやりと笑う諏訪子。ちょっとお見せできない表情である。
 「おつかれさん。」
 ぽんと背を叩くのは、神奈子。そして早苗。
 「ありがとうございました、洩矢様。素晴らしい戦いでした。…でも、隙間に逃げちゃいましたね。」
 「逃がしてないわよ。ふふ。」
 ちょっといつものイメージと違った感じの諏訪子。邪悪だ。
 「早苗さん、やっと終わった。橙はもう大丈夫だ。」
 若干疲れた様子の藍が、早苗のもとへと来た。見れば、橙は安心した顔で、丸くなって眠っている。
 「あれ、紫様は?隙間開きっぱなしで…。」
 その隙間から、ごりっ、ごりっ、となにかとても硬いものを咀嚼するような音と、甲高い悲鳴が聞こえてきた。
 びっくりして、毛が逆立って九尾が毬のように円くなる
 「蛇ってどうしてあんな形なのか知ってる?釣竿のような胴に、亀のような頭。隙間に潜って一番奥に到達するためよ。…子を成す為だったかしら、あはは。」
 いろいろと笑えない冗談を面白そうに話す諏訪子を、藍はさらりと受け流して。
 「ともあれ、今回のことは本当にお世話になった。いうなれば身内の恥を、あなた方に雪いでもらったようなものだ。お詫びといっては何だが、何なりとお礼をしよう。」
 全員の視線は早苗に集まっていた。
 早苗は、ちょっと緊張して言った。
 「私も今回のことでたくさん勉強になりました。それに、橙とお友達になれました。お礼もお詫びもいりません。ただ…。」
 いろいろな悩みが消え、晴れやかな笑顔だった。
 「たまに守矢神社に遊びに来てください。おもてなししますよ。」
 「それでは、遠慮なく伺うとしよう。美味しい酒と、腕によりを掛けた料理を持って。」
 「待ってますよ、橙も連れてきてください。」
 「ああ、必ず。」
 早苗と藍は握手を交わす。
 その姿を、守矢神社の神々が暖かく見守っていた。


+++++


 さて、後日。
 「早苗ー、ごはんまだー?」
 ちんちんと箸で茶碗を打つ諏訪子。
 「もぅ…。もうちょっと待ってくださいって言ってるじゃないですかぁ!」
 と、お盆に料理を載せて運んでくる早苗。
 「あ、洩矢様っ!行儀悪くしてると、ご飯抜きですよ。」
 「早苗、もっと言ってやってくれ。」
 と言いながら、運ばれてきたものに早速手をつける神奈子。
 「あーっ、八坂様も!つまみ食いしちゃ、ダメです!」
 「いいじゃないか、少しくらい。」
 「晩酌抜きにしますよ。」
 「…。」
 神々をあしらう早苗。
 あの一件以来、早苗はちょっとだけ二人との距離の取りかたを変えた。
 神は決して下にもおかず、何事にも先に立て、敬い、丁重に扱っていた。…でも、それは距離感を感じさせて寂しい。
 尊敬している、信仰している。けれど、祝詞を唱え、お供えをするだけが神との付き合いではない。
 人間だって、妖怪だって、神だって、ここ幻想郷では同じなのだ。人であることと、現人神であることに、そんなに違いはないこの世界だからこそ、できる付き合い方があるはずだ。
 「…なんて、今日は良いお酒があるんですよ。」
 「おっ、早苗わかってるじゃない。」
 「…神奈子に酒なんて、豚に真珠、どぶに札束よ。」
 にたりと笑う早苗。後ろ手に隠した壜には『スピリタス』なんていう文字が書かれている。
 「いいですよ、お好きなだけ呑んでいただいて。」
 「…?」
 「いいわ、早苗。その挑戦受けてあげるわ!」
 怪訝な表情の諏訪子と、何故かやる気の神奈子。
 もし、人が神と対等に付き合うことができるなら、妖怪と人が姉妹になることもできるかもしれない。

 とはいえ、仲良くなれば間違いも起こる。

 ある日。
 「…ごめん、早苗。」
 「か、神奈子が全部悪いのよ!」
 弁解をする二柱の神さま。その前に置かれた、女子高生の制服。
 「…んてこと。」
 早苗はうつむいて震えていた。
 この制服は、もといた世界で早苗が着ていたもの。早苗にとってもそんなに大事なものじゃなかったのだろう、ぞんざいにタンスの奥に仕舞われていたはずのそれ。
 「早苗が着てるの可愛かったね、って話をしてたの。そしたら、この女が急に着はじめて。」
 「諏訪子が、無断で着たんでしょ。」
 「でも、結局は神奈子が破いたんじゃない!」
 目の前にある制服は、所々が破けている。
 そんなに大事な思い出ではなかった気がする。だけど、こうして改めて見ると、あっちにいたときの楽しいことばかりが思い出される。
 「なんてことするんですかっ!」
 早苗は大声で叫んだ。
 「もう帰れない、大事な思い出なのに…なのに…!」
 言葉も、涙も止まらなかった。
 本当なら来たくなかった、二人のためにしょうがなくこっちに来たのに、こんなことばっかりで。もう、帰りたい、だけど帰れない、どうしてくれるの!
 本当は思ってもいないことまで、涙が悪い言葉を運んできた。
 二柱…いや、二人の神は互いに目を合わせて、優しく頷きあった。
 「早苗。」
 抱きしめる諏訪子。
 「…や、やめてください!私…。」
 同じく二人を抱きしめる神奈子。
 「早苗、やっと泣いてくれた。」
 心底安心したような言葉だった。諏訪子は、優しく言葉を継ぐ。
 「早苗、あなたは小さい頃からとても我慢強かった。誰にも涙を見せず、一人でがんばって…。辛いときでも、ううん、辛いときだからこそ笑顔を見せていた子。」
 神奈子も母のごとき優しさで、語りかける。
 「その強さは、本当は弱さの裏返し。他人を頼ることのできない弱さが、まるで自己を鍛えたかのよう。…でも、それは本当の強さではないわ。今、こうして私たちに見せている涙が、あなたの本当の強さ。自分の弱さを見せる強さを、早苗は今手に入れたのよ。」
 そうして、抱きしめられると、怒っているはずなのに、どうしてか優しい気持ちで一杯になって、それでも涙は前よりもたくさん流れて。
 早苗は声を上げて泣いた。


+++++


 「早苗も、もう大丈夫でしょ。」
 「…計画通りってこと?神奈子もあくどいわね。」
 「何とでも言いなさいよ。本来なら忘れ去られるだけの私たちが、また陽の目を見ることができて、しかも早苗がひとり立ちできたんだから。」
 「その為に、早苗の前で泣き言でも言ったんでしょ。…ああ、これだから性悪女はいやね。」
 「大いに結構。」
 「…感謝、してるわよ。」
 「聞こえなかったわ。愛しの諏訪子、もう一度言って。」
 「死んでしまえ。」
 「はいはい。…それじゃ、私は。」
 「ん、何処行くの?」
 「私のやりたいことでもやろうかな、と。」
 「どうせ迷惑なことでしょ。」
 「失礼ね、全ての妖怪と人間の生活水準を上げるのよ。」
 「何それ。」
 「…技術革新。」
 「はいはい。悪いことしてたら、とっちめてあげるわ。」
 「期待してる。」


+++++


 「橙、忘れ物はないか?」
 「大丈夫です、藍さま!」
 背中にバッグを背負った橙が、靴を履きながら答える。
 「まず、早苗さんにきちんとお礼を言いなさい。それと、お土産を渡すの忘れるんじゃないぞ。」
 「わかってます!」
 「向こうには決して迷惑を掛けないこと。前に紫様に怒られたように、『魚が食べたい』とわがままばかり言わないこと。それと…。」
 今回の件の発端だったのは、橙が魚が食べたいと我儘を言ったこと。…とはいえ、それを一ヶ月も続けて叶え続けた藍にも責任はあるだろう。
 「もう、藍さま。私そんな子どもじゃないですっ!」
 うきうき、わくわくでぴょんぴょん飛び跳ねている橙。事件のことなど、すっかり頭から消えている。
 「それじゃあ、いってきま〜すっ!」
 「道中、気をつけてな。」
 見送る藍は気が気でない。…あ、転んだ。
 「…行ったのかしら?」
 「わっ!紫様。ご無事でいらしたんですか?」
 前回、守矢神社の面々に会ってからしばらく姿を見せなかった紫が、久々に現れた。
 「まったく、あの神社の神は乱暴ね。」
 「早苗さんのところのですか?」
 「ええ。まぁ…いいわ。あそこの子も、そう長くはないだろうし。」
 紫が扇を口元に当てて言った。
 「名前は、そのもののあり方を規定するわ。早苗とは新緑の季節、田に植えられる若い苗。…それは、成長するもの。つまり、刈り取られることを含意する名前よ。」
 まったく、素直じゃないと藍は心の中でため息をついた。
 「そうですね、名前は重要です。私の藍とあの橙の色を合わせれば、紫の色となるように。」
 「だから嫌なのよ。あの子には絶対に八雲の名をあげないわ。」
 「ええ、それでもいいのかもしれません。橙は、もっと自由に生きてほしいですから。」
 藍はのんびりと。
 「この幻想郷に根を下ろして、命の果てまでここで生きる。…紫様もそれをお許しになったんでしょう。」
 「…二度寝するから、起こさないで。」
 紫は隙間へと消えた。
 新緑の季節。藍は橙の去っていった方角を眺める。何処までも広がる青い空と、緑の大地。悠久なる時の狭間に存在する幻想郷。この地に、やってきた新しい人間。彼女の物語はこれから始まる。
 ここまで読んでくださりましてありがとうございました!
りすか
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/05/09 01:28:31
更新日時:
2009/05/09 01:28:31
評価:
23/25
POINT:
80
Rate:
0.88
1. 1 リペヤー ■2009/05/13 00:22:58
うーん……前半はどうなるのかとわくわくしながら読み進められましたが、
なんというか後半の展開が速すぎてちょっと混乱しました。
それに橙の「魚を食べたい」って我が儘だけで、あそこまで紫が怒るというのも違和感を感じます。
あと地の文が少なくも思いました。意図的ならば良いのですが……
2. 5 As ■2009/05/13 01:35:32
あくまで個人的な感想ですが、最後の早苗が涙するシーン、涙の理由に少し違和感がありました。
涙を見せなかったことへの反動ならもうちょっといい理由があってもよかったのかも。
3. 5 名前が無い程度の能力 ■2009/05/13 16:09:58
マヨヒガ勢がなんとも微妙で
ただ早苗のために体張って紫と対陣する二神はカッコよかったよ
4. 2 神鋼 ■2009/05/17 18:15:53
どうしても違和感が拭えませんでした。話の骨子も段々ズレていくようで
「ストライク狙いで隣のレーンで投げたボウリング」のように感じました。
5. 3 パレット ■2009/05/18 00:12:34
ほとんど序盤なのですが、地の文が簡潔で、どんな状況でどんな事態が進んでいるのかとかわかりにくく思う部分が多かったです。でも中盤以降はそれも充実してきて、早苗さんの背景設定もきっちりしていて、一気に面白くなりました。
全体的に、紫がお話のために貶められてる感があったのはやや残念でしたが。
6. 2 読人 ■2009/05/24 04:37:45
所々の展開が強引だったのが気になりました。
キャラクターや設定にも違和感があり話に入り込めませんでした。
7. 5 三文字 ■2009/05/25 22:22:01
紫が微妙に小物臭いなぁ。まあ、個人的な感想ですけどね。
そういやあ、橙の色を戻すっていうのは結局どうなったんでしょうか?
本編では藍様の力が復活して、橙に式を打ち直しただけの様に読めました。
あと、弾幕は避けてなんぼで、例えそれがスキマでも敗走と見るのはちょっと苦しいかなと……
でも、神様達のちょっと捻くれた会話は面白かったです。
8. 6 佐藤厚志 ■2009/05/30 22:01:23
これは暖かい家族のお話なんでしょうか。暖かいけど最後の一文が力強い。
母の作った肉じゃがが喰いたい、そう思ったりしながら読ませていただきました。
9. 6 どうたく ■2009/06/06 22:43:33
 良い所
 スケールが良い意味で大きい!!
 橙が早苗と共に紫を見返してやろうと、奮闘するストーリーだと思いましたが、それがこんな壮大バトル物になるとは……。良い意味で予想が裏切られました。
 そして、紫の怖さw
 私は紫、いやもう、ゆかりんでいいや、は東方でも五本の指に入るほど好きなキャラなのですが、こんなゆかりんを見るのは初めてでした。ゾクゾクしました。
 個人的にとても気に入っているので、これからに期待しています!!

 改善点
 内容については、作者の味が隅から隅へと出ているので、この発想を生かしていけば良いと思います。
 ただ文章については何点か。
 まず会話文と句点について調べましょう。会話文の後は句点をつけないのはルールです(昔の作品、名作ではつけていないのも存在しますが、基本的には小説のルールです)

 次に描写力。
 描写が少ないのではなく、「弱い」と感じました。
 というのは、せっかく内容が良いのに、描写がそれに不釣合いだということです。
 前半の橙の心理描写、早苗との掛け合い、台詞の間に入れる人物の様子、各シーンへ移る描写、そして最後の白熱するバトルシーン。各々の場所に描写を入れ込むことで、更に良い作品になると思います。

 そして文章の統一性
 普段はきっちりとしたり、たまに子供っぽくなるのに違和感を感じました。

 
 
10. 2 有文 ■2009/06/08 01:41:22
たぶん多くの人が、三点リーダとか段落の最初は一文字下げるなどを指摘していると思います。
ただ、それに関してはこの際、どうでも良いです。物語というものは、虚構です。嘘です。つくり事です。だからこそ、その話がそうである説得力というものが、重要だと思います。キャラクターを愛でるSSを否定する気はありませんし、それもまたSSの正統だとは思います。しかし、度が過ぎるのはどうでしょう。
もう少しだけ、物語を紡ぐことを考えてみてください。
11. 4 so ■2009/06/11 07:49:27
筆主様の伝えたいことが全て詰まっていると思います。
ただ、詰まりすぎていて、一番伝えたいことががぼやけていた印象です。
12. 2 ふじむらりゅう ■2009/06/11 22:35:52
 怒涛の展開過ぎた。
 ていうかこれ誰の話だっけ、というくらい途中から話の中心が早苗さんにスイッチしてました。
 あとギャグの混ぜ方がちょっと強引かも。
 感情の移り変わりを描くのに、文量が少ない。遊びの部分というか、もうちょっと長く尺を取った方が読んでるほうにもわかりやすい。
 ゆかりんラスボスすぐる……STGじゃなくてRPGの方の。悪者! みたいな。
13. 4 ぴぃ ■2009/06/12 02:33:36
二次創作において、キャラの性格や行動については、ある程度自由であるべきだと思います。
しかし、読む側にとって説得力のある因果関係や行動などを、きちんと描写しなければ、やはり首をかしげてしまいます。
具体的には、何で紫が冒頭からキレてるのか、割とシリアス調だったのにその霖之助のキャラは何なのか(笑いましたけど)。
SSの土台を作り、ストーリーをゆっくり練ってはどうでしょうか。そうすれば、もっといい作品になると思います。
「こんなSSが書きたいんだ!」という思いは伝わってきましすし、作中にかっこいい台詞もありましたし。
14. 5 リコーダー ■2009/06/12 11:13:41
文章面が気になりました。状況が頭に描きづらい感じです。また、早苗や橙がキャラとして一貫性があるかが微妙で、何だか子供っぽく感じられたり、変な所で急にはしゃぎ出したり心の動きにも不自然な点が見受けられました。
しかし一方でシーンとして中々良いなと思うところは結構ありました。橙を着せ替えて喜ぶ早苗たんは輝いてた。
15. 4 八重結界 ■2009/06/12 16:37:16
どこかギスギスしながらも、一方では強い絆があったり。
幻想郷というのは、面白いところだと改めて実感しました。
16. 2 名前が無い程度の能力 ■2009/06/12 18:06:54
読み進めるうちどんどん印象が変わっていった。
締めは良かったと思います。
17. 2 moki ■2009/06/12 19:23:07
あるキャラを引き立たせるために、他のキャラが踏み台にされるというかかませになるというか、あまりよくない立場で書かれることはある程度はしょうがないことだと思いますが、流石にこれは許容範囲外です。紫がさしたる理由もなく嫌な奴になっており、作中では気まぐれという理由とありますが、気まぐれといってもそういった方向性はないのではないかなと。ラストで紫をフォローしてるのでしょうし理不尽さを表すためにあえて嫌な奴として書かれたのかもしれませんが、それにしてもフォローが足りなく、橙や早苗の成長よりも後味の悪さしか残りませんでした。
また、全体的にもキャラの性格や口調に違和感が。キャラが自由に動いてるというより、作者が描きたいストーリーのためにキャラが動かされているような。
18. 1 木村圭 ■2009/06/12 21:26:09
色々詰め込もうとして結局どれも書ききれていないような。
ダイジェスト版を見せられているようでイマイチ感情移入できませんでした。
19. 1 時計屋 ■2009/06/12 22:05:27
 文章を読んでも情報量が不足しているため、どういう場面で誰が何をしているのか把握しづらい。
 その上、場面転換も人物の登場もかなり唐突で、読んでいて戸惑います。
 読み手の立場になって推敲を重ねてみてください。

 お話も冗長という印象です。
 不要なシーンや人物が多いように感じますので、まずはプロットから練りこんでみたほうがいいかもしれません。
20. フリーレス ハバネロ ■2009/06/12 22:06:34
「いい話」のはずなのだが、ガラス一枚向こうの出来事のように微妙に遠く感じる

とりあえず誤字の確認はしておこう
21. 2 つくし ■2009/06/12 22:54:10
申し訳ありません、時間が差し迫っているため、採点のみにて、感想本文は後ほど改めて。
22. 4 K.M ■2009/06/12 23:18:42
斯くも人間(妖怪?神様?)関係とはままならぬもので……丸く収まってよかったよかった。
23. 6 渦巻 ■2009/06/12 23:40:50
話の焦点が移っていくのが新鮮でした
ただそのせいで橙に関する部分が弱くなったように感じました
24. 6 つくね ■2009/06/12 23:43:39
ちょっと紫が可哀想な気も……自業自得ですが。さて、早苗さんと橙の触れ合いがちょっと怪しく?もあり微笑ましかったです。
25. フリーレス 名前が無い程度の能力 ■2009/10/21 17:05:11
一ヶ月魚が食べたいと言っただけで愚かだとか、出来損ないだとか、罵詈讒謗する紫がこの話の中で一番面白味も何もあった物では有りませんでした。
タイトルからしてかなり重要な理由であるはずかと思っていたら、何のことはなくただの魚のおねだり。
高がそれだけの事で大変な思いをするキャラ達を見ててもあんまり良い気分はしませんね…
いや、キャラが恵まれてれば良いとかじゃなくて、物凄く理不尽な展開であるのが後味悪かったなぁと思いました。

橙と早苗のほのぼのとした部分だけは個人的に本当に素晴らしかったですが、それだけに橙が色を失う云々が失った理由も取り戻し方も大したことがなかったので、この理由にするぐらいならいらなかったと思います。
深い理由があったら名作だったと思えるぐらいの発想や出来映えだっただけにかなり惜しかったです。

早苗さんの過去と橙と灰色の猫の絡みは面白かったです。
早苗の母に一番感情移入してしまった…w

プロットを作ってからそれにあったタイトルを(プロットの前にタイトルを考えたのなら再度)考えた方が良いのではないかと思います。
話の主人公の橙が早苗さんに完全に喰われちゃっているので。
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