如月の最後の日から弥生にかけて

作品集: 最新 投稿日時: 2009/05/09 17:35:00 更新日時: 2009/06/14 23:41:05 評価: 22/22 POINT: 91 Rate: 1.01
 最近、チルノさんがバッタバッタと暴れています。レティが殺されたーとか何とかいいながら、暴れています。しかも殺したのは人間だというのです。
 弾幕的な意味合いではなく身体的能力の問題として、普通の人間が、妖怪であるレティ・ホワイトロック相手にして、勝てるはずがありません。
 とはいうものの、あるいはだからこそ、気になるのも確かです。いくらおバカで有名なチルノちゃんとはいえ、一切の根拠なしに、こんなことを言い出すとは思えません。
 そういうわけでしたから、射命丸文さんは、調査に乗り出してみることにしたのです。幻想郷が、弥生という暦を迎えたときでした……。

 みなさんも、射命丸文さんとともに、この謎について考えてみてください。





・A少年の話

 ぼくのお父さんは染め物をしててさ、色についていろいろなことを知ってるんだよ。いま、面白いって思ったでしょ? え、何が面白かったのかって? ユーモアがないなあ。
 まあいいや。ぼくが全身ムラサキ色に統一してる理由だよね? そんなの決まってるよ、ムラサキが神秘の色だからさ。……ま、お父さんから教えてもらっただけなんだけど。
 お父さんの説明はどんな風だったかって? ええとね、

 ――ムラサキは神秘の象徴なんだ。病気に罹った人は、ムラサキ色がとてもキレイな色に見えるらしい。しかもだ。そうやって見ているうちに、身体もすっかり治ったとか。

 だいたいこんな感じだったと思うよ。不思議だなあって、ぼくは思って。そういう不思議な色を身につけてたら、不思議なことが起こるかもしれないでしょ?
 うん、そう。だからぼくはムラサキ色を身につけてるんだよ。ぼくね、不思議なこととか、幽霊みたいな……超常現象っていうの?……とかが大好きなんだ。
 あの日? そりゃ、もちろんさ! やっぱりムラサキ色は神秘的な色だなって、お父さんのいってたことは本当なんだなって、すごく嬉しくなったよ。
 どうやって捕まえればいいのかなって思ってさ、家に戻って急いで説明したんだよ。そしたらお母さんに、そんな危ないことはやめなさいって怒られたんだけどね、お父さんが、

 ――どうやらお母さんは腰が引けちゃってるみたいだ。任せろ、お父さんが協力してやる。

 それで虫取り網を持って、あそこの、見えるでしょ、あそこの平地に行ったんだ。え、信じられない? 本当だって、正直いうとぼくも不安だったさ、虫取り網で妖怪を捕まえるなんて。
 でも妖怪はこっくりこっくり寝ていてね。大丈夫、虫を手で仕留める要領だ。そうっと近付いて、矢のように攻撃する! お父さんがそういって、やってくれたんだ。
 寝ているその妖怪の頭を……ガバッ!……とね。で、妖怪が混乱しているうちに、ぼくがでっかい布を持って覆い被さったのさ。あとはお父さんの力仕事だよ。
 それで、平地ではキャンプっていうイベントがあったんだ。どういうのか知ってる? 子どもたちが寄り集まって、大人抜きで家を造り、料理をし、洗濯するんだ。すごいでしょ?
 事情を説明して、大きなテントをひとつ借りたんだ。妖怪の手と足をガッチリ縛って、テントのなかに放り込んだ。終わったときは、キャンプの人たちと一緒になって大喜びしたよ。
 本当にお父さんって頼りになるんだよ。ねえ、お姉さんのお父さんってどんな人なの? やっぱり、お姉さんのこと、命がけで守ってくれたりするの?



・大妖精の話

 レティさんはけっこう独特な話しかたをするんですよ。ちょっと刺々しいというか、冷めてるというか、まあそういった細かい点においても、まさしく冬の妖怪でした。
 ……なんですが、今年はいつもと雰囲気が違ったなあ。柔和というか、大人っぽかったというか……。
 毎年、チルノちゃんが元気に絡みに行っても、適当にあしらわれてたんです。でも今年のレティさんは、なぜか細かいところまで構ってあげてたんですね。心境の変化なのかなあ。
 ええ! 結婚して子どもができたんじゃないか? まさか! いや、わたしは妖怪の文化を知りませんが……結婚だなんて……。は、恥ずかしくなってきました。顔が熱いです……。
 えっと! それでですね……もう! からかわないで! 顔が赤くなってるのは自覚してます!

 こほん。それにしても、まさかレティさんが人間さんに捕まってしまうとは、ちっとも思っていませんでしたよ。文さんもそう思うでしょう? レティさん、プライド高いところもあったし。
 どうやって捕まえられたか、文さん、ご存じですか? え、企業秘密? ……そ、そうですよね。新聞に載せてくださいね。拾い読みしますから。いや、定期購読はごめんなさいです。
 どうしてレティさんが捕まった事実をわたしが知ってたか? むしろ訊きたいんですが、文さんは知らなかったんですか? 人間さんの子どもちゃんたちが、いつも自慢げに話してましたよ?
 へえ……。何か、ちょっと嬉しいな。情報通の文さんよりも知ってることがあるなんて。えへへ。
 いや、そんなに悔しそうにしないでくださいよう。この一個だけじゃないですか。というより、ブ、ブン屋? っていうのは、知らないことをいまみたいに聞き込みしていく仕事じゃないですか。

 次は人間さんたちのところへ行くんですか。大変だなあ。わたし、そういう地道な作業は続けていられないですよ。
 たとえば何か大きな事件があったとしても、あんまり関心を持つことはないんですよ。大きな事件は大きな事件、不思議なことは不思議なこと。ありのままがわかれば、別に、みたいな。
 やっぱり文さんのように、伝える人がいないとダメですね、わたしは。
 そうやって考えてみると、子どもって不思議ですよね。これってどういうこと、あれってどうなってるの。そんな風に訊くくせに、説明してもたいして理解してないんですもの。
 でも、本人たちはそれで満足してるんですよね。何でだろうなあ。不思議は不思議じゃないっていわれるのは嫌だけど、不思議には理屈があるっていうのを、知りたいんでしょうかね。




・キャンプメンバーに入っている子どもの母親の話

 キャンプメンバーの子らは、もう見ました? まだ? ホントにびっくりしますよ。大人抜きなのは、そりゃあそうなんですけど、ホントにちっちゃい子らばっかりなんですよ。
 何ていえばいいんですか、青年かな……そういう、リーダーになれる大きめの子は、ひとりもいないんです。ちっちゃい子ばっかりなんですよ。もう心配で、心配で。
 でもね、こんな世のなかですでしょ。里を出ればいつ妖怪に襲われるとも知らない、いやーな世のなかですよ。ウチの子、男の子だから、大人になったら外に出ざるを得ないの。
 だからこういった経験は積ませておいたほうがいいのかなあって……。主人? 主人は最初から、キャンプメンバーに入ることを賛成してました。アウトドアな人間ですから。
 男の人って、年齢関係なく、みいんな同じ考えですのね。どうしてわざわざ危ないことやるんでしょ? もっとおとなしくしておけば、ケガもせずに済むのに。変だと思いませんこと?

 ああ、そのことですか。数日経ったころ、子どもから聞きましたよ。お母さん、絶対誰にもいっちゃだめなんだけど、お母さんにだけ教えてあげるっていってね、とびきりの笑顔で。
 びっくりしたか? ううん……あまり驚かなかったですねえ。といいますのもね、そもそも妖怪を捕まえたなんて話、まず信じるか信じないかの問題がありますでしょ。
 加えてキャンプメンバーは小さな子だけ。常識的に考えて、できるはずがないんですよ。そうでしょ? あとから聞いた話では、大人のかたがひとり手伝ってたらしいですが。
 え、いつ本当の出来事だということを知ったのか? それはかわいらしい妖精さんがやってきたときですよ。チルノって名前みたいですよ。自分で名乗ってました。
 すごい大きな声で騒ぎましてねえ! 子どもたちと大喧嘩して、大人の男のかたも出て行ったんですけど、最終的には慧音様が治められましたよ。
 騒いでた内容ですか。それは子どもたちも不思議がってたんですが……。
 まあ詳しいことは当人たちに聞いたほうがよろしいと思いますよ? わたしは聞いただけで、現場を見ていたわけではありませんから。それでもいいなら、お話しますよ。
 ……わかりました。それではお話しましょう。

 妖怪を捕まえた子どもらは、いくつか建てていたテントのひとつを使って、そこに妖怪を閉じこめたんです。
 先程申し上げました大人の男の人が、妖怪の両手両足を縛ったらしいですね。身動きをガッチリと取れないようにして、テントへ、ぽい、と。
 あ……ごめんなさい、話の時間が前後しちゃいますけど、いいですか。これを説明しておかないと、話が繋がらないんです。ごめんなさい、忘れてましたわ。
 テントはムラサキ色をしてるんです。どうしてだか知ってますか。ああ、よく知ってますね。
 あなたのいうとおりです。あの布を渡した人、ムラサキが神秘の色だっていって、何でもムラサキに染めるんです。そのムラサキの人っていうのが、さっきから出てくる大人の男の人です。
 それでね、男の人がいったらしいんですよ。

 ――正直いって、ぼくらが妖怪を捕まえられるなんて、確率的には奇跡に近いことだ。そんな奇跡が、どうして成り立ったか、みんな、わかるかな。
    それはね、ここにはたくさんのムラサキがあるからなんだ。ムラサキには奇跡を起こす力がある。大量のムラサキを見た天使が、ぼくらに力をくれたんだ。
    つまり、この妖怪は天使からの贈り物ってわけだ。いいかい、絶対に逃がしちゃいけないよ。捕まえておけば幸福がくる、逃がせば罰がある。
    天使ってのは、往々にしてそういうものなんだ。

 いささか宗教めいてますでしょ。正直いって、わたし、あの人はあまり好きじゃないなあ。子どもに悪影響を与えそうでね。わたしがキャンプメンバー参加を渋ったのは、その側面もあります。
 でもまあ、確かに不思議な出来事はありますわね。子どもたちもすっかり彼のいうことを信じちゃって。以来、キャンプは行われなくなりました。代わりに、見張り制が設けられたんです。
 ええ、そうです。テントの入口に三、四人の子を配置して、妖怪が逃げないように見張るんです。妖怪は手足の自由が利かない状態だから、それなら逃がさないことはできるってね。
 でもねえ……。妖怪って、わたしたちには不可能な攻撃手段を持ってるんでしょ? 天狗さんもそうなんですよね? ダンマクっていうんですか。
 それってアレでしょ、手足関係なく撃てるんでしょ。いま思うと、よくダンマクされなかったなあって、安堵するんです。妖怪にも優しさがあるんでしょうかねえ。

 ごめんなさい、また話が逸れちゃったわ。
 見張り制度ができて、何日か経ったの。で、問題となったのは如月の最後の日から弥生に入るまでにかけて。
 如月の最後の日に見張りをしていたのは、件の男の人がひとりでやっていたんですけどね……。深更になったころ、そっとテントのなかを覗いてみたんですって。
 そしたら、なかには誰もいなかったの!
 前日の当番の子らは、自分はちゃんとチェックした、ぼくがやっていたとき妖怪はちゃんとなかにいたっていうんですね。だから逃がしたのは男の人だって、みんないってるんです。
 不思議でしょう? 男の人は、一度たりとも入口を離れていないのに。ぱっと消えてしまったんです。
 子どもたちはみんないってますよ。ぼくらを攻撃しなかった心優しい妖怪のほうに、天使は味方したんだって。捕まえておけなんてひどいことをいう人には、味方しなかったって。



・A少年の父親の話

 部屋の壁一面ムラサキ色にして目が痛くならないのかって? そりゃあ痛くなるよ。でもしかたないじゃないか。いつ天使に罰を与えられるか、わかったもんじゃないからな。
 こんなことになるなら、妖怪なんて捕まえなければよかったな。いや、実をいうと、自分でも捕まえられると思ってなかったんだよ。だって、虫取り網だぜ? 信じられないよ。
 テント? ああ、そうだよ。あの子たちには、ぼくがいつも使ってる布をあげたんだよ。布といっても手拭いのものとかじゃないからね。分厚いやつで、水を弾くんだ。
 ぼくが子どものころに読んだ本にあったんだよ。キャンプっていうやつがね。テントの写真が載ってた。
 あれみたいなテントは作れないんだよな。何でかって? あの手の素材がないからさ。でも幸い、ぼくの仕事柄、雨を弾く分厚い布があったからね。いつかやってみたいと思ってた。
 けっきょくやらないまま大人になっちゃったけど。子どもたちが、まさかキャンプ隊を作るなんてなあ! そういうわけで、布をあげたんだ。とびきり大きなやつをね。
 実物は、まだメンバーの誰かが持ってるんじゃないかな?

 でもさ、聞いてくれよ。最初のころは、こんな色やだあって、ごねやがるんだ。ふざけてるよな。ムラサキよりすばらしい色なんて、この世にないっていうのに……。
 え、何? どうして天狗の自分が知らないうちにこんな事件があったのかって?
 そりゃ当然だろ。ぼくが、絶対に天狗にだけはしゃべるなって、口を酸っぱくして忠告してたからさ。幻想郷全土に知れ渡る事実になってしまったら、不思議でもなんでもないからね。



・上白沢慧音の話

 ああ、レティの一件か。うむ、チルノが大騒ぎでやってきたよ。レティを返せ、レティを返せっていってな。人里に攻撃しかねない勢いだったから、わたしが止めたんだ。
 繕いにわたしはいったんだ。チルノ、よく考えろ。レティは冬の妖怪だ。消えたのはいつだ? 如月の最後の日から弥生にかけてだろう? 弥生は春だ。つまり……。
 これで納得してくれればうまいものだと思ったのだがな、あいにくそうはいかなかったよ。妖怪がポロンと消えるわけないじゃない、バカじゃないのっていわれてしまった、ハハハ。
 腹を立てなかったのかって? まあ、わたしが悪いんだしな。ちゃんと説明せずに、ごまかそうとしたわたしが悪かったんだ。
 ……ああ、知ってるよ。レティがどうやって消えたかなら、おおよその見当はついてる。教えようか。
 ハハハ、おまえならそういうと思ったよ。ブン屋のはしくれ、真実は自分の目で見つける。端から端まで、わたしの思ったとおりのいいかただった、ハハハ。
 だがな、おまえのためにこれだけはいっておいてやる。忠告? いや、そんなたいそうなものじゃない。でも、おまえのためにこれだけはいっておかなくちゃいけない。
 真相ってものはな、いつだって、もっとも単純なことなんだよ。



・キャンプメンバーのひとりの話

 テント? ああ、あるよ。ぼくの家に。持ってこようか。ちょっと待っててね。

(そこに別のキャンプメンバーがやってくる)

 え、キャンプメンバー? そうよ、わたしもメンバーのひとりよ。
 ああ、妖怪さんを捕まえたときのこと? うんうん、よく覚えてるわよ。あんなに近くで妖怪さんを見たのなんて初めて! わたし、思わず抱きついちゃったもん。
 お母さんよりもっとナイスバディだったわよ。胸も大きくて、いいにおいがしたわ。わたし、大きくなったらあの妖怪さんみたいになりたいなあ。
 だからさ、わたし、あの妖怪さんを閉じこめていたくなかったな。逃がしてあげたかった。……っていうのは、う、そ。ホントはね、友達になってほしかったんだ。
 だってさ、さっきからいってるけど、あんなにキレイなのよ。あなた、あの妖怪さん見たことある? 比べものにならないくらいキレイよ。男の子に生まれてたら、結婚したいわ。
 いわゆる一目惚れってやつね。え、何? 子どものくせに妙な言葉を知ってるのね? 遅れてるなあ、お姉さんは。最近はね、大人よりも子どものほうが知的なのよ。

 妖怪さんとお話もしたのよ。わたしね、ふと気になって訊いたのよ。ねえ、妖怪ってすごい力があるんでしょ。だったらいま縛られてるけど、簡単に外せるんじゃないのって。
 そしたらね、妖怪さん、

 ――ええ、できるわよ。
 ――じゃあどうして捕まったままなの。はやく逃げなよ。わたし、黙っておいてあげるから。
 ――別にいいわ。
 ――どうしてっ。
 ――人間と戯れたい。そういう気分になることもあるの。
 ――そうなの? わたしは人間だから、あなたの気持ちがわからないのかな。
 ――いいえ、大人になればわかるわよ。
 ――ホントに?
 ――ええ。

 何だかよくわかんないけど、深い言葉だと思わない? 中身とか関係ないのよね、ホントのところ。それっぽかったら、いいのよ。だってわたし、子どもだもん。
 さて、じゃあわたし、友達と遊んでくるから。お姉さんも、あの妖怪さんを見習っておめかししてみたら。じゃあね。



 ……やあ、お待たせ。これだよ。キャンプに使った布。大きいの重いので、持ってくるのが大変だったよ。
 その表情! ね、すっごい大きい布でしょ。慧音先生のおっぱいが千個以上入りそうだよね。ひょっとしたら一万に届くかな? あ、もちろん、ふたつでワンセットだよ。
 これをバサッと広げてね。木を切ってくるんだ。高くなくていいから、太めに切ってくる。というか、そもそも長く切るなんて無理だよ、ぼくら子どもだもん。切っても運べない。
 五本切ってくるんだ。テントの中央に一本、それから四隅に一本ずつ。中央の木を一番長さのあるやつにする。そうすると三角型になるでしょ。そのなかに入って寝泊まりするのさ。
 まあ所詮は布だからあんまり暖かくないんだけど。でもみんなでだんごに寝るっていうのは、けっこう心地良いものなんだ。
 しかし、やっぱり不思議だなあ! どこかに穴が空いてるわけでもないのに、パッと消えちゃうなんて、信じられないよ。本当はあの人、見張りやってなかったんじゃないのかな?
 まさか、本当にムラサキ色の神秘的能力が発揮されたのかな? それならそれで面白いけど……。

 ……にしても、どうしたのさ。さっきから、唖然とした表情になってるよ?
 
 











 取材を続けてきた射命丸文さんでしたが、この時点で真相を悟りました。彼女はしばらく口をあんぐりと開けて、放心状態でした。何てむだな時間だったの、と憤慨されてたとか。
 レティ・ホワイトロックは、いったいどうやってテントから連れ出された、あるいは脱出したのでしょう?
 そして、彼女はいったいどこへ連れて行かれた、もしくは逃げていったのでしょう?
 賢明な読者諸賢におかれましては、苦笑いしてしまう話だったのではないですか。
 まだおわかりでないかたは、以下に記載しておきました、射命丸文さんの日記を見る前に、もう一度考えてみてください。

 みなさんは大変な正直者ですので、誰ひとり、嘘の証言をしていません。たとえ話や、譬喩も含めて……。











・射命丸文の日記

 乗りかけた船ということで、最後まで取材はしましたが、全くもって時間のむだでしたね。人から話を聞くよりも、事物を直接見たほうがはやくわかることもある。それを知りました。
 なまじっかテントという物体を知っていたから、わけがわからなかったのです。子どもが分厚い布を木の柱で支えただけのテント。そういうものであることを、うっかり忘れていました。
 子どもの身長ではたいして大きな柱は持ってこられないわけで、テントの底辺から頂点までも、自然低くなるわけです。柱の高さがないからです。
 にもかかわらず、あんなに大きな布を使うなんて……。充分以上に布が余るに決まってるじゃないですか。わざわざ入口から出なくても、地面についた布をめくれば外に出られます。
 入口の逆側からのそのそ出て行くレティさんを想像すると、苦笑いもできません。
 チルノさんは相変わらずいっています。レティはどこへ行ったんだ。レティをどこへやったんだ。
 そんなのは次の冬、彼女に直接聞いてください。レティ・ホワイトロックは冬を終えるとどこへ行くのか。それはまだ誰も解明できていないのですから。
 あの日で如月は終わったんですよ、チルノさん。暦の上では、弥生は春。レティさんは、自分のあるべき場所へと戻っただけですよ。
 内から外へ消えるのは不思議でも、外から外へ消えるのは、別に不思議じゃないですからね。

 一番の謎は、レティさんがどうして人間の子どもに付き合ったか、ということですね。チルノさんはああいってましたが……真実かどうかは……。まあそれも次の冬へ持ち越しとしましょうか。
 子どもたちには、ますますムラサキが不思議な色に見えることでしょう。神秘の色ムラサキ。次に新聞のネタが切れたときは、今回の事件も絡めつつ、ムラサキ色について書こうかな。
 この事件については、もう記事にしますまい。不思議なことは不思議なことでいいじゃないですか。子どもたちは、基本的にそう考えてることですし。
 子どもの頃はバカやって、アホやって、間抜けな悪戯をして怒られてばかりだったけど、なぜか思い返すと誇り高い出来事のように感じる。不思議だなあ。
剣@sdsd
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/05/09 17:35:00
更新日時:
2009/06/14 23:41:05
評価:
22/22
POINT:
91
Rate:
1.01
1. 5 名前が無い程度の能力 ■2009/05/14 15:36:18
はいめでたしめでたし
2. 2 パレット ■2009/05/18 00:23:40
うーん、筋は通ってると思うのですが、やられたという爽快感が無いかも……。
3. 5 神鋼 ■2009/05/19 23:27:53
この中に一人、再教育が必要な子供が居ます。ええ、そりゃもうみっちりと。
4. 4 As ■2009/05/24 14:42:52
なんだかお題の色の使われ方が薄いようにも感じました。
ミステリっぽい内容がメインだと思いますが、もうちょっとどこかで色を強調できたら。
5. 6 三文字 ■2009/05/28 02:59:58
干上がった水路を洞窟だと言って探検したり、とんでもないところまで自転車で行ったり、妙な虫捕まえて色んなことしたり……
そんな子供時代の思い出。
それにしてもなんで紫?まあ、お題からするとちょっと苦しいかな、という感じも無きにしもあらずです。
6. 3 気の所為 ■2009/06/01 06:23:58
また来年。
レティは寂しかったのか、な?
色との結びつけがやや強引ではないかと感じました。
7. 7 佐藤厚志 ■2009/06/06 05:00:12
こういう小説の書き方面白いですね。ガルシア・マルケスみたい。
何だかキャンプのカレーを食したくなった小説、でございますね。
8. 4 有文 ■2009/06/08 01:26:10
ふしぎは不思議なままの方が良いのかも知れませんね
9. 4 ふじむらりゅう ■2009/06/11 23:09:03
 まああんまり難しく考えることもなかったってことでしょうか。
 ていうかレティって普通に逃げただけなのね……。
 あとムラサキあんまり関係ない気も。ミスリード?
10. 3 ぴぃ ■2009/06/12 03:42:30
正直に申し上げます!
レティさん殺害の謎よりも、A少年の嗜好が謎過ぎて戦慄しました!(汗)
11. 7 八重結界 ■2009/06/12 17:05:12
慧音のおっぱいが千個以上入りそうとか、思わずその子に弟子入りしたくなった心境です。
難しく考えすぎて、真実に気づけなかったうちの一人になりました。
12. 3 どうたく ■2009/06/12 17:51:58
 三人称にしたのがミスだったと思います。
 この作品は、射命丸の視点で聞き込みをしつつ(または聞いた情報をまとめつつ)謎を追究していくべきであったと思います。
 
13. 1 moki ■2009/06/12 19:15:08
設定の甘さが目に付きました。
・幻想郷で小さな子供だけでキャンプはいくらなんでも危ないでしょう。
・生活水準的に、日常がアウトドアに近くわざわざキャンプをしようという発想は生まれないと思います。
・冬〜春だとしたら、テントじゃ寒くて寝れないですよね。
・三月精など発表時期が実際の時間とリンクしているという考えに立つと三月精第7話は新暦4月(旧暦弥生)の話になりますが、雪が残っている描写があります。新暦の2月末ならまだ普通に雪が積もってるでしょうし、旧暦如月の末(新暦3月末)でも雪が降ることもあるくらいには寒いです。
>暦の上では、弥生は春
気象学的には春は3月からとされるらしいですが、暦の上では春は立春からとされるのでないでしょうか。
それと、紫色が話にもオチにも全く関係ないのが残念でした。
14. 7 実里川果実 ■2009/06/12 21:05:19
 レティからカリスマな香りが!
 それぞれの登場人物の証言がいかにも、な風で面白かったです。
 チルノ……。
15. 5 リコーダー ■2009/06/12 21:20:57
現代のレジャー用テントは底面の布を縫い合わせた袋状になっているので、高さ関係なく入り口以外からは出られないんですけどね。
普通の人がテントと言われて、先入観で想像する構造ってどんなのなんじゃろ。
文章としては悪くなかったんじゃないかと思います。
16. 3 木村圭 ■2009/06/12 21:30:35
なるほど!
17. 1 ハバネロ ■2009/06/12 22:32:39
オチが斜め上というか斜め下というか。
結局、なんだったのか。そういう所に話が落ちるのは、自分がつまらない大人だからなのだろう
18. 5 時計屋 ■2009/06/12 22:34:08
 文章は丁寧で読みやすいのですが、もう少し面白味も欲しかった。

 インタビュー形式で聞き込みを行って推理していく構成はSSとしては目新しくて良かったです。
 ただ、仕込みもタネも今一つ物足りないようにも感じました。
19. 2 つくし ■2009/06/12 22:59:14
申し訳ありません、時間が差し迫っているため、採点のみにて、感想本文は後ほど改めて。
20. 3 K.M ■2009/06/12 23:28:08
フェンスの下をくぐる犬みたいに少し穴を掘ったとか考えたけどそれですらなかったか。色の意味があんまりない気がしたのでこの点数で。
21. 6 渦巻 ■2009/06/12 23:33:33
何故だか懐かしい雰囲気の漂う作品でした
読んでいて楽しかったのだけど、もう一つ足りなかったように感じました
22. 5 つくね ■2009/06/12 23:49:36
いやー謎解き面白かったです。ムラサキというのが強調されていて最後になるまでそれに惑わされました。
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