幻想戦隊 コーリンファイブ

作品集: 最新 投稿日時: 2009/05/09 21:39:28 更新日時: 2009/05/09 21:39:28 評価: 17/19 POINT: 71 Rate: 1.07
 第一話「幻想戦隊スクランブル!」





〜OP〜


 幻想郷に蔓延る妖怪たちの中でも最も恐れられている妖怪の一人、八雲紫。
 その彼女が、妖怪たちを率いて人里を襲いにかかってきた!
 なすすべもなく破壊されていく人里。
 幻想郷に住む人間たちの平和はここで潰えてしまうのか!?
 そんなとき、森近霖之助が送り込んだ五人の少女が、今立ち上がる!

 その名も! 


「「「「「幻想戦隊! コーリンファイブ!」」」」」


 ♪待ってなさい(コーリンファイブ)
  生きてなさい(コーリンファイブ)
  絶対そこに飛んでゆく
  大 大 異変 大 大 困難

 <以下ジャス●ックによる検閲のため削除されました>





〜コーリンファイブとのやくそく〜

 SSをみるときは
 へやをあかるくして
 がめんからはなれてみてね!





〜以下本編〜



 この世のどこかにあるといわれている、幻想郷。
 人間・妖怪・幽霊などなど、さまざまな魑魅魍魎が跳梁跋扈している。
 その中でも人間は、人里と呼ばれる地域で、今日も楽しく暮らしていた。
 偶に例外はいるが……。
 この物語は、そんな例外の一人、博麗霊夢の住まう博麗神社から始まる……。

「霊夢ー!」
「あら、魔理沙じゃない。どうしたのよ」

 神社の境内を掃き掃除していた霊夢は、彼女の特徴の一つであるフリルのついた大きな赤いリボンを揺らし、自分を呼んだ声のした方へ振り返った。

「やっと見つけたぜ……」

 走ってきたのだろうか、息を切らしながら魔理沙は喋る。

「一体どうしたのよ。そんなに急いで」
「ああ、香霖が私たちを呼んでるんだよ。今すぐ、香霖堂に来いって」

 突然の出来事に、霊夢は首をかしげた。

「いきなりね。霖之助さん、また何かヘンなものを開発したのかしら?」

 森近霖之助は、人に役立つ道具を研究・販売していることで有名な研究者だった。彼は何故か魔法の森の入り口付近――周辺には妖怪が住んでいて、普通の人間には危険である――に住居と兼用の店舗を構えたり、実用性の高い作品よりも、どう役立つのか分からない研究の方が多いという、一般人には理解しがたい人物である。彼は妖怪と人間のハーフであるが、人間寄りな存在で、人間にはとても親切であった。魔理沙が幼少時、彼女の実家である「霧雨道具店」で、道具について見識を深めるために修行をしていたこともあり、魔理沙や彼女の友人である霊夢にとっては、兄貴分のような存在であった。

「さあな〜。でも今回はなんだか、嫌に真剣な表情してたぜ」
「霖之助さんはいつも真剣な顔じゃない」
「いいや、今回はなんか妙な雰囲気が漂ってるんだよなあ……。どこか切羽詰まったような」
「ふうん……。ま、行くだけ行ってみましょうよ」

 神妙な顔の魔理沙を横目に、霊夢は暢気な態度のまま言った。


        ◆


「あら……? あれは……」

 霊夢と魔理沙が香霖堂に着くと、香霖堂の入り口の前には三人の見慣れた少女たちが立っていた。

「あら、霊夢と魔理沙じゃない」

 霊夢と魔理沙がこちらに歩いてくるのを見つけ、紅魔館のメイド長――十六夜咲夜はにこりと微笑みながら声を掛けた。

「よう、咲夜に優曇華に早苗とは珍しい顔ぶれだな」
「あら、魔理沙も霖之助さんに呼ばれたの?」

 「そうだぜ」と魔理沙は優曇華の質問に返答した。

「で、なんで入口の前に突っ立ってるんだ?」
「さっき霖之助さんに『まだ入ってくるな』って言われたのよ。何なのかしら」
「ふむ、そりゃ謎だな。だいたい五人を集める意味がよく分からん」

 咲夜の言葉に、魔理沙も首をかしげる。

「でも、何で私まで呼ばれたんでしょう?」

 早苗も己が霖之助に呼ばれた理由が分からず、頭をひねって考えてみるが、特に心当たりもあるわけでもなく、理由を思い浮かべることはできなかった。

「さあな……香霖も考えがあってのことなんだろう」
「まあ、霖之助さんが考えてることはよく分からないからねえ」
「違いないな」

 的を射ている霊夢の言に、苦笑気味に笑う魔理沙。
 すると、

「良く分からないとは心外だなあ」

 ガチャリと香霖堂の入口のドアが開き、いつも着ている服の上に、研究者然とした白衣を着込んだ森近霖之助が姿を現した。

「おう、香霖。わざわざ呼び出すほどの用事っていったい何なんだ?」
「そうよ。またくだらない研究だったら怒るわよ」

 魔理沙と霊夢が半笑いを浮かべながら香霖に絡み始める。
 香霖はそんな彼女たちの様子に、「ふう」とため息をひとつ吐いた。
 そして、集まった五人の少女たちをぐるりと見渡すと、固い表情のまま話を始めた。

「今日、君たちに集まってもらったのは他でもない」
「もったいぶってないで、要点を早く言えよう」

 格好つけたような霖之助博士の物言いに、魔理沙はおどけてみせる。
 こんなとき、普段なら「やれやれ」という表情を見せる霖之助博士だが、今日は固い顔つきを崩さないまま「魔理沙、真面目な話なんだ」と彼女の言葉を一蹴した。

「……ん、ごめん」
「いや、僕も強く言いすぎた。謝るよ」

 霖之助は一呼吸置いて、話を再開した。

「今、幻想郷の力ある妖怪たちの中で、派閥ができていることを知っているかい?」
「そのような話、特に聞き及んでいませんが……」

 優曇華が考え込むように答える。
 早苗や霊夢も顔を合わせてアイコンタクトをするが、お互い「そんなこと全然知らなかった」ということを確認するだけに終わった。
 そんなとき、霖之助の話に眉をひそめていた咲夜が、おもむろに口を開いた。

「心当たりが、ありますわ……」

 その言葉に、霖之助は渋い顔つきを、さらに渋くさせた。

「君の主人の吸血鬼、レミリアのところにも話を持ちかけるようなことがあったんじゃないかな、咲夜」
「ええ、境界を操る妖怪、八雲紫の式神である八雲藍が突然紅魔館に現れ、『一緒に人里を手に入れないか』という趣旨の話を持ちかけてきました」

 咲夜の話に、その場にいる全員の表情が凍りつく。

「八雲紫だって!? 幻想郷縁起にも載ってる境界の大妖怪じゃないか!?」

 魔理沙が声を荒げるのも無理もなかった。
 八雲紫。
 それは、最も危険な妖怪の代名詞であり、全ての種族から畏怖の対象とされる程の大妖怪である。太古の昔、いくつもの国を身一つで滅ぼしたという九尾の狐を式神として従えるほど、強大な力を持つ。だが、それは彼女の本質ではない。
 彼女の真の恐ろしさは、彼女の「境界を操る程度の能力」に帰属する。彼女はその力を用い、あらゆる物が持つ境界線を自由に改変することができるのだ。つまり彼女の能力は、論理的創造と破壊の力を持ち、何もないところから何かを作り出したり、既存のものを消滅させたりすることができるという、人智を遥かに超えたものである。それが、彼女を大妖怪とたらしめている由縁である。

「……で、咲夜の主人は何と言ったのかしら?」
「『お前らの下に付くわけがないだろうが』とお嬢様は申し、八雲藍を追っ払いましたわ」

 霊夢の質問に、咲夜が半眼で答える。
 そこで、霖之助が再び話し始めた。

「つまり咲夜の話から分かるように、八雲紫の派閥は、力のある妖怪たちを集めているんだ。咲夜の主人は、あまり紫に賛同していない派閥のようだね」
「ええ、レミリアお嬢様は現状を傍観する様子でしたわ」

 なら君の主人は大丈夫だ、と香霖は漏らす。

「紫は前述したとおり、力のある妖怪を集めている。そして集めた妖怪たちを手先として、人里を手に入れようとしているんだ!」
「「「「「な、なんだってー!?」」」」」

 M●Rを彷彿とさせる五人の突っ込みが入る。
 
「紫の力は強大だ。人間たちの力ではとても紫の手先の妖怪たちには敵わないだろう」
「へっ。私たちの魔砲があれば、あんな奴ら屁でもないぜ」
「魔理沙、さっきも言ったが、これは遊びじゃない。奴らは本気で人里を手中に収めるつもりなんだ」
「へいへい……で、香霖が何でそんなことを知ってるんだ?」
「そうだな……それを説明しよう。まずは、香霖堂の中に入ってくれないか」

 霖之助が手で促すのに従い、少女たちは香霖堂の中に入っていく。
 少女たちの目に映ったのは、埃が舞い、物が乱雑に床や棚の上にうず高く積まれている、見慣れた光景だった。

「こっちだ」

 と霖之助が、カウンターの中に入り、カウンターの上に置かれていた、分厚い一冊の本の表紙を開いた。表紙を開くと、本の中は空洞になっており、押しボタン式の赤く大きなスイッチがあるだけだった。霖之助は、それを握り締めた拳で一度押した。
 すると「ピンポーン」という音が鳴り、カウンターの後ろにある本棚が動き始めた。
 ズゴゴゴゴ、と音を立てて本棚が横に二つに割れ、地下へと続く階段が姿を現す。
 少女たちは、それをあっけにとられたような顔つきで眺めていたが、霖之助はごく自然な表情のまま、少女たちに向かって手招きした。

「さあ、研究室は地下だ」
「いやいやいやいや、こんなもんいつ作ったんだよ」
「ああ、魔理沙たちには話してなかったか。僕の研究室はこの階段の下にあるんだ。話の続きはそこでしよう」

 急展開に次ぐ急展開に、魔理沙がストップをかける。
 が、霖之助は飄々とした態度のままそれを受け流すように、カンカンと足音を立てて階段を下りていく。

「お、おい待てよ」

 魔理沙をはじめ、少女たちは慌てて霖之助に付いていく。

「霊夢も知らなかったの?」
「知らなかったわよ……眉唾だわ」

 早苗が驚いた表情のまま、自分より霖之助と親しい霊夢に尋ねるが、霊夢も驚きの色を隠せない様子であった。
 五人は互いに顔を合わせるが、そんなことをしている間にも階段の下から「おい、どうしたんだ?」なんていう霖之助の声が聞こえ、五人は慌てて階段を降りるのだった。


        ◆


「ようこそ、香霖堂へ」

 五人が階段を降り切ると、霖之助が両手を広げて少女たちを歓迎した。
 彼の後ろにはそれなりに空間が広がっており、幾つもの大小さまざまなモニターや、円卓状になっているテーブル、何に使われているのか分からないパソコンや計器のような機械類が広がっていた。
 そんな、機械尽くしの様子に、少女たちは感嘆の声を漏らす。

「す、すごい……何これ……。師匠の部屋よりすごい……」
「なんだか、別世界に来たみたいですわ……」

 優曇華と咲夜が、信じられないと言わんばかりのため息を吐く。
 霊夢や魔理沙、そして早苗もまるで別世界に来てしまったかのように、辺りをぐるぐると見渡していた。

「こっちへ来てもらえるかな」

 霖之助は階段を降りてすぐの部屋から続く、右側の部屋のドアを開け、中に入っていった。少女たちもそれに続き、中に入る。
 先ほどの部屋と同等くらいの大きさの部屋で、壁はさっきの部屋と同じくパソコンやモニターなどの機械類に囲まれていたが、中央には長方形の白い長テーブルが置かれており、その点だけは異なっていた。
 テーブルの上には、赤・黄・青・白・緑の五色のカラーリングの携帯電話が置かれていた。
 霖之助は、そのうちの赤い携帯電話を手に取り、入口で立ちつくす五人の方へと歩み寄る。そして赤い携帯電話を霊夢に渡した。

「え? 何これ?」
「その携帯電話の名前は、『ゲンソーチェンジャー』」
「げ、げんそーちぇんじゃぁ?」

 聞きなれない単語に、霊夢はそのままオウム返しする。

「そうだ。魔理沙、君はその黄色い携帯。咲夜は青い携帯。優曇華は白で、早苗には緑の携帯をあげよう」
「なんだ、香霖がただで私たちにものをくれるなんて本当に珍しいな。こりゃ明日は雹が降るな」
「人里が炎に包まれるよりはましさ。雹で済むなら大いに結構だ。」
「おい、なんだよそれ」

 魔理沙の軽口に香霖は冗談に聞こえないような声で答えたので、思わず魔理沙は食ってかかった。

「言葉通りの意味さ。さっきも言ったが、紫は幻想郷を手に入れようとしている。そして、そのためなら手段をも選ばないだろう」
「そうだ、そこの説明も聞いてないぜ。一体どういうこと……ん!?」

 魔理沙がそこまで言いかけた瞬間、突然それまで明るかった部屋が暗くなり、天上の赤いランプが点滅し、警報器が鳴り始めた!

『緊急事態発生! 緊急事態発生! 人里に危険な妖怪が出現! 幻想戦隊はただちに出動せよ! 繰り返す! 緊急事態発生! 緊急事態発生! 人里に危険な妖怪が出現! 幻想戦隊はただちに出動せよ! 繰り返す……』

「な、なんなんですか!?」
「何が起こったの!?」

 早苗と霊夢が同時に悲鳴を上げる。
 その間にも警報器は機械的な声で人里に危険な妖怪が出現したことを繰り返し告げていた。

「くそ……もう刺客を送り込んできたのか……! 紫め……!」
「おい香霖! これは一体どういうことだよ!」
「説明している暇はなくなった! 君たちは今すぐ人里へ向かうんだ!」

 魔理沙の質問にも一切答えず、一方的に指示だけを出す香霖。
 突然の展開に次ぐ突然の展開に、霊夢も少し怒ったように声を荒げる。

「ちょっと、そんなこと急に言われても!」
「はやくしろっ! 間に合わなくなってもしらんぞー!」
「わ、わかったわよ。みんな、行くわよ!」

 まるでベ●ータのような剣幕で五人に向かって怒鳴る霖之助に、霊夢も思わず面喰らい、大人しく彼の指示に従うことにした。
 少女たちは霊夢に続いて小走りで部屋から出ていく。
 霖之助は彼女たちが香霖堂から出ていくのを、部屋の壁に設置されているモニターの一つで確認すると、彼女たちに指示を出すべく、階段のある部屋に戻り、「司令長官」との役職名の書かれた三角錐の置かれている、円卓の席に着いた。


        ◆


「はっ……はっ……はっ……、な、何なんだぁ? 訳が分からん……」

 香霖堂から人里へ向って走りながら、魔理沙は他の四人を見やる。
 が、他の四人も「訳が分からない」といった表情で、疑問符を頭の上に浮かべながら走っていた。
 すると、突然五人の携帯電話が一斉に鳴り始めた。

「「「「「もしもし?」」」」」
『やあ、霖之助だ。携帯……もといゲンソーチェンジャーはちゃんと繋がったようだね』

 五人が同時に電話に出た。
 携帯電話……ではなくゲンソーチェンジャーを鳴らしたのは、森近霖之助からのコールだった。

「なんなのよコレ!?」
『説明する時間がなくてすまないが、今は僕の指示に従ってくれ。今、紫の送り込んだ妖怪が人里を襲っているとの情報が慧音先生から入った』

 霊夢が再三に渡って霖之助に説明を求めたが、どうやら答える余裕が彼には無いようだった。

「ぜっ……はっ……、慧音さんまで絡んでるんですか?」

 早苗が息を切らしながらの質問に、霖之助は「そうだ」と答えた。

『慧音先生は人里の守護者として、人々を妖怪の魔の手から逃がそうとしてくれているハズだ。だが、紫の送り込む妖怪は慧音先生ではとても止められないだろう……。人々を守りながらなら、尚更のことだ』
「それで、私たちが人里に行って、妖怪を倒せってことか?」
『そういうことだ』

 予想通りな霖之助の返答に、魔理沙は「うへえ」と辟易した。

「で、私たちに妖怪を退治させようとするのはいいけど、私たちで勝てそうなの?」
『そのために、ゲンソーチェンジャーを渡したんだ。君たちはゲンソーチェンジャーを使い、選ばれし戦士、【幻想戦隊 コーリンファイブ】に変身することができるのだ!』

 どーん! という擬音が漫画だと表示されるのかもしれない、妙に気合の入った霖之助に対し、

「……なにそれ」
「ふーん……」
「あらそう……」
「へえ……」
「ええーっ!? なんか外の世界でやってた戦隊モノみたいですねー! あっ皆さんセーラームーンとかプリキュアって知ってます? 女の子のヒーローがいっぱい出てきて悪者と戦うアニメなんですけど、あっアニメって言うのは以下略」

 少女五人は五者五様の反応を示した。多くは興味のなさそうな返事だったが、早苗だけやたら興奮気味に食いついてきたので、霖之助は少し嬉しくなって、眼尻に堪った涙をそっと拭った。

「で、コーリンファイブとやらに選ばれた私たちはこれからどーすりゃいいのよ」

 霊夢が心底面倒臭そうに言う。
 霖之助は熱っぽく語ったが、霊夢にとっては非常に面倒臭いかつどうでもいいことであった。大体からして「幻想戦隊 コーリンファイブ」という、明らかに「救急戦隊 ゴー●ーファイブ」からパクったネーミングが非常にダサいと思ったのだ。
 どうせなら「美少女戦隊 ミコミコレンジャー」とかにすればよかったのに、と霊夢が小声で愚痴るが、魔理沙は「どっちも大差ないだろ」と思わざるを得なかった。

『……まあ君たちの個人的な意見は置いといて、人里に着く前に幻想戦隊への変身の仕方を教えよう。ゲンソーチェンジャーを開いてローマ字で【GENSOW】と打ってごらん』
「ふぅん、携帯電話って霖之助さんのところで何回か触っただけだけだから、操作には慣れてないけど……これでいいのかしら?」

 霊夢はピ、ポ、パと器用に文字を入力する。

『携帯電話じゃなくてゲンソーチェンジャーね。入力し終えたら、真ん中にある丸いボタンを押してごらん』
「はいはい……これね」
『ああ待て待て、今変身しても仕方ないだろう』
「それもそうね……」
「おい、そろそろ人里に着くぞ!」

 魔理沙が一緒に走っている他の四人に注意を促す。

「じゃあそろそろ電話切るわよ」
『ああ、またこちらから何か指示を出すかもしれない』
「はいはい、じゃあね」

 プツッ、という音がして五人の電話が切れた。

「ん……なんだか入り口の方に人がいっぱいいるわね……」
「あれ、本当だ。珍しいね。これも妖怪の仕業かしら」

 咲夜が指差した先には、人里の入り口辺りで多くの人々が右往左往している姿があった。
 一同は不思議に思いながら、人里の入り口へと到着した。

「……なんか、意外とすごいことになってますねえ」
「これじゃ、まるで異変だぜ」
「違うわよ、早苗、魔理沙。とっくにこれはもう、異変なのよ……」

 霊夢は緊急事態としか思えない光景に、神妙な顔で呟いた。
 五人の目の前では、人里の住人全員かき集めたんじゃないかというくらいの人々が、まるで何かから逃げ惑うかのように、入り口に固まっていた。
 人々の中には怪我を負ったのだろうか、何やら水の張った桶に足を漬けている人もいる。
 目の前に突きつけられた異常事態に、五人は次第に表情を強張らせていく。
 そんなとき、五人の姿を見つけた阿求が涙目でこちらに駆け寄ってきた。

「み、みなさん、助けてください! 慧音さんが!」
「おいおいどうしたんだよこの騒ぎは、それに慧音だって!?」
「慧音さんが、氷精にやられそうなんです!」

 阿求の口から出た意外な単語に、五人は目を丸くした。

「氷精って……ち、ちるのぉ?」

 優曇華が意外だったことを隠しもせずに聞き返す。

「じゃあ、香霖が言ってた妖怪って、チルノのことかぁ?」
「なんか一気に気が抜けたわねえ」
「なあ」
「ねえ」

 魔理沙と咲夜が気の抜けたようなやり取りを交わす。
 しかし、阿求はそんな彼女たちをキッと睨みつけて必死に言う。

「違うんです! 幻想卿縁起に乗ってるチルノみたいな力の弱い妖精じゃなくて……チルノが大人の姿になったような、ありえないくらいに力の強い氷精なんです!」
「何だよそれ……突然変異したチルノかぁ? まあ所詮チルノだし、大丈夫だろ」
「何言ってるんです! 慧音さんが本当にやられちゃいそうなんです! 早く助けに行ってあげてください!」
「そうですよ、魔理沙さん。相手は一応紫の刺客なんだから、油断せずに行きましょう」
 早苗が「まだ慌てるような時間じゃない」のポーズを取りながら言う。

「阿求、慧音とチルノはどこにいるんだ?」
「町の中心の……あっちの方です」
「よしみんな、行きましょう」

 霊夢の呼び掛けに「応!」と応える四人。
 慧音を襲っている氷精を懲らしめるため、五人の少女たちは再び駆け出した。


        ◆


「ぐうっ……あっ……」
「ふふふふふふ……いくら里の守護者といえども、このさいきょーのあたいにはどうやら勝てないみたいね!」

 右足を脛まで凍らされ、立ち上がることのできない慧音に、成長した氷の妖精――チルノはあっはっはと高笑いをしながら勝ち誇った。

「あたい……お前もしかして、チルノか……!?」
「そうさ、あたいはチルノ。紫からもらった力で、この人里を氷の世界にするのがあたいの使命さ」
「止めるんだチルノ……! なんでこんなことをするんだ……? お前はこんなことをするような奴じゃなかっただろう……?」

 地に倒れたまま、いつもと身長や格好の異なる、成長したチルノの方に顔を向け、苦しそうな顔で慧音が言う。
 チルノが妖精ゆえ、よくイタズラを仕掛けることは慧音も重々承知していたが、人里を凍らせるといった、大きな惨事を引き起こすような妖精だとは思っていなかった。
 そして、そのような力があるのだということも。

「ふふふ……紫からもらった力で人里を全部凍らせちゃえば、あいつからアイス百本もらえることになってるのよ! だから人里は、パワーアップしたさいきょーの私の餌食になってもらうわ!」

 そう言いながら、チルノは右横に建っている霧雨道具店に向けて吹雪を放つ。
 轟! という音と共に、たちまち霧雨道具店の建屋は氷漬けになってしまった。

「なっ……! やめろチルノ! やめてくれ!」

 自分の守らねばならない人里が、為すすべもなく氷精に蹂躙されていく。如何ともしがたい現実を突きつけられ、慧音は悔しさで目頭から熱いものがこみ上げてくるのを感じた。悲痛な声を上げてチルノを静止しようとするが、その声はもはやチルノには届いていなかった。

「あはははははは! あたいってばさいきょーね!」

 吹雪がチルノの周囲の建物を襲う。建物に住んでいた人々は慧音が非難させたが、建物は全て氷漬けになってしまった。
 過去の幼い氷精だったチルノとは比べ物にならないくらいの強大な力だった。

「くそ……私は……何もできない……!」

 無力さに打ちひしがれ、慧音は唇を噛んだ。強く噛み過ぎたせいで、唇が紅く滲んでいく。
 どうしようもなさに打ち震えていると、ふと後方から声が聞こえた。

「「「「「お困りのようね」」」」」
「!?」

 慧音が上半身を持ち上げて後方を見ると、そこには五人の少女たちが並んで立っていた。

「お、お前たちは!」

 慧音が、驚きと喜びの入り混じった声を上げる。

「た、助かった! お前たちが霖之助が言っていた、幻想戦隊コーリンファイブなのか!?」
「その名前で定着してるのかよ……」

 魔理沙ががっくりと肩を落とす。

「あんまりその名前好きじゃないけど、そうよ。私たちがコーリンファイブよ。それより慧音、あなた随分と酷くやられているわね……。優曇華、凍傷の応急処置はできる?」

 霊夢の質問に、優曇華は「ええ」と頷く。

「でもちょっとこの場じゃきついわね……。慧音さん、肩を貸しますからあそこの噴水まで運びます。大丈夫ですか? 魔理沙も慧音さんを運ぶの手伝って」
「す、すまない……」
「いいってことよ、気にするな」

 優曇華と魔理沙は近くにあった、まだチルノに凍らされていない噴水に慧音を運んでいった。脛の辺りまで凍り付いている足の氷を溶かすためである。
 霊夢は周囲の建物を笑いながら凍らせている氷精に目を遣ると、

「あーこりゃ、派手にやってくれたわねえ……」

 と半眼でため息を吐いた。

「なによ、あんたら」

 チルノが突然現れた霊夢たちに、不機嫌そうな視線を送る。

「私たちは強きを助け、弱気をくじく、美少女戦隊!」
「意味が逆だし、お前は落ち着け」

 霊夢が握り拳で、空気を読まない早苗の頭を一発殴る。

「あたたたた……こういうカッコいいセリフ、一度言ってみたかったんですよう」

 早苗がヒリヒリと痛みの残る後頭部を手でさすりながら言う。

「どこがカッコいいんだ、どこが。というツッコミはさて置き、チルノ、人里を襲うのをやめなさい!」

 霊夢が腰に手を当て、ビシッとチルノを指差して言い放った。

「やーだよ! 人里を全部凍らしたら、紫からアイス百本もらえるんだから!」

 あまりにもせこい理由で釣られていたチルノに、霊夢と咲夜と早苗は思わずずっこけた。

「そんな理由だったの!?」

 ガビーン、という効果音がどこかで鳴った。
 あんまりな展開に、霊夢はツッコミを自然と口から発していた。
 しかしそんな霊夢と対称的に、咲夜はすぐに冷静さを取り戻した。

「そういうことね。よしチルノ、私が紫よりもいっぱいアイスあげるから、紫を凍らせてきてくれないかしら?」
「……へ?」

 咲夜の突然の持ちかけに、チルノは何がなんだか分からないといった表情を取る。
 咲夜はクスリと微笑みながら、言葉を続ける。

「要するにその力で紫を氷漬けにしてきたら、私がアイスを百と一本あげる、ってことよ!」
「なにいー!? ひゃく、いちほん……?」

 両手を使って計算を始めるチルノ。
 「いくら外見が成長しても、やっぱこいつ馬鹿だ」と思いつつ、咲夜はチルノに分かり易いように説明を続ける。

「百一本は百本よりも多いのよ? つまり、紫より多くあなたにアイスをあげるってこと!」
「まじで!? ひゃっほーよっしゃー! ちょっと紫凍らせてくる!」

 チルノが嬉しそうに、スキップで霊夢たちがいるのとは反対方向へ去っていく。
 それを見つめながら、咲夜はなんとも言い難い充足感に包まれ、とくに汗をかいたわけでもないのに、額を手の甲で拭った。

「ふんふ〜ん! ……おわっ!」

 チルノがスキップしていると、急に目の前の空間がぱっくりと裂け、中から八雲紫の上半身が現れた!

「ゲゲェーッ! ババ……八雲紫!」

 ババァーン! という効果音と共に現れた紫に驚き、尻餅をつきながら彼女を指を差すチルノ。

「なんだって!? 紫!?」

 チルノの声を聞いた霊夢たちの間に戦慄が走る。
 霊夢たちがチルノの方に目をやると、紫がチルノと会話をしているのが見えた。
 一方アイス如きで計画をパァにされそうになった紫は、こめかみに青筋を浮かべながらチルノを怒鳴りつける!

「あんた何やってんのよ! まったく! アイスなら千本でも一万本でもくれてやるから、さっさと人里を凍らせてきなさい!」
「千……? 一万……? なにそれ、おいしいの?」

 チルノは紫の言葉に疑問符を十個くらい頭の上に浮かべながら言った。
 紫は「えーいこれだからおバカはもう!」とヒステリーを起こしながら、頭を抱えた。

「つまり百一本よりずっと多いってことよ! 私のがあいつらよりもアイスいっぱいあげられるんだからね!」
「まじで!? じゃあ人里凍らせる!」
「つ、疲れる……」

 そこまで言って理解できたチルノに、紫はめまいを感じながらこめかみを指で押さえた。

「流石にアイスで釣るのは無理だったか……」

 咲夜は腕組みしながら独白した。

「おーい、慧音はとりあえず避難させたぜ」
「あら、早かったわね」
「ってあれ、八雲紫じゃない。チルノと何か話してるみたいだけど」
「げ、本当だ」

 慧音を避難させて戻ってきた魔理沙と優曇華が紫を発見し、少し身構えた。
 が、そんな二人を尻目に霊夢は何歩か前に出て、紫を指差した。

「そこの紫! 人里を襲うアンタの目的は一体何なの!?」

 あまりにも真っ直ぐで飾り気のない霊夢の物言いに、紫は妖しく笑い「いいわ、教えてあげましょう」と言った。

「私の目的……それは人里のどこかに眠っているという『幻想卿』の遺産よ!」

 その瞬間、霊夢たちの体を戦慄が走り抜けた。

「げ、幻想『卿』ですって!?」

 霊夢は驚きを隠すことができず、いつもの冷静さを忘れて叫んだ。

「幻想卿だと……!? 伝説で『幻想郷を博麗神社神主と共に創造した』っていわれてる、あの幻想卿だと!?」

 魔理沙も語気を荒げて言う。
 それほどまでに、紫の目的は少女たちにとって意外なことであった。



――幻想卿。
 彼は、無法地帯だったある地域を、強大な法力をもって治め、博麗神社初代神主と共に幻想郷を創造したといわれている、伝説上の人物である。なので幻想郷縁起には載っていないが、さまざまな英雄伝が人里にはいくつも語り継がれているほどの人物であった。また、研究者や発明家として多大な功績を残したという伝説も残っている。霖之助は幼い頃から彼に憧れて研究者になったのだという。




「東方創想話のプチの作品集14にある、某氏の誤字SSでは農作業やってるただのオッサンだったけどな」
「シーッ! それ言っちゃだめ!」

 いろいろとSSの御法度な部分に盛大に抵触している魔理沙のツッコミに、紫が思わず人差し指を口元で立てる。
 ちなみにこれを書いている最中に、無印そそわの方で『幻想卿』って検索したら、最近投稿されたある二つのSSの中で、「幻想郷」を「幻想卿」と間違えているのを発見して、盛大に吹いたのは作者だけでいい。(※2009年05月09日 21時39分現在)

「……で、幻想卿の遺産を手に入れてどうしようっての?」

 魔理沙と紫のやりとりを呆れたような目で流しつつ、霊夢がさらに紫に尋ねる。
 それに、紫は相変わらず不敵な笑みを浮かべる。

「ふふふ……幻想卿の遺産の中には、昼間から縁側でお茶飲んで煎餅食べて、腋とへそを出しながらうたた寝してても無限のエネルギーを得られるようなものがあるのよ……素晴らしいでしょ?」

 誰かさんの日中の行動に例えて紫が説明する。
 霊夢はそれを聞いて顔を真赤にする。

「なっ、いつ覗いてたんだあんた……!」

 そんな憤慨した霊夢の様子を見て、「なんのことかしらオホホホホ」と高笑いしながら、紫はいやらしく口元を愉悦に歪めた。

「というわけでチルノ。あいつらごと人里を全部凍らせちゃいなさい!」
「うっしゃー! あんたからもらった力、気に入ったよ! 紫、アイスいっぱい買っておいてよ!」
「ふふふ、期待してるわよ」

 紫はそう言い残すと、スキマの中へと姿を消した。
 後には、チルノと五人の少女たちが残された。

「そういうことか……紫から力をもらったから、あんな姿なのか」

 チルノが成長して大人になったような姿であることに、魔理沙は「なるほど」と腕組みしながら頷く。

「くうー……紫めぇ……絶対ただじゃおかないんだから! みんな、さっさと変身してとりあえず目の前のチルノをぶっ飛ばすわよ!」

 霊夢が怒り心頭の様子で服のポケットからゲンソーチェンジャーを取り出しながら言うが、

「ええ〜本当に変身するのかよ〜」
「なんだか恥ずかしいですわ」
「そうよ……本当にやるの?」

 魔理沙、咲夜、優曇華の三人はなんだか変身すること自体に渋っていて、手でゲンソーチェンジャーを弄んでいた。早苗だけはなんだか興奮した様子で、ゲンソーチェンジャーにすでに「GENSOW」と入力していた。

「恥ずかしがってる場合じゃないですよ、みなさん! さあ変身しましょう!」
「なんでアンタ妙に乗り気なのよ」
「いや〜、私子どもの頃からこういう勧善懲悪のヒーローに憧れてたんですよ〜」

 うっとりと語る早苗に、霊夢はため息を吐く。
 そのまま吐いた息を大きく吸い、「ふっ!」と気合を入れて吐き出した!

「いくわよみんな!」

 霊夢の掛け声に、他の四人が「応!」と応える!

「ゲンソウ、チェンジ! はぁっ!」

 霊夢は「GENSOW」と打った携帯電話型のゲンソーチェンジャーの真ん中のボタンを、ガ●レンジャーのガオ●ッドと同様のポーズを決めて、ポチっと押した。

 すると、携帯電話の画面から真赤なふんどしがスポンと飛び出す!
 そしてそのまま霊夢の顔に纏わりついた!

「ええええええええー! ってちょ! うわ顔に巻きついた! 何なのコレ!?」
「うわー黄色のふんどしが出てきたー!」
「こっちは青色よ!」
「私は白いですうううううう!」
「なんで緑色のふんどしが出てきて……うわあああああ顔にきゃああああああああ!」

 霊夢と同様に変身を決めていた他の面々の顔にもふんどしが巻きつけられていく。
 するとどうしたことだろうか、いつの間にか巻きつけられてふんどしが、戦隊モノのヒーローがかぶるマスクになっているではないか。

「何コレ!? ふんどしがマスクになったわよ!?」
「どういう仕組みなんだよ!?」
「何なんですか本当!?」

 読めない展開に困惑する少女たち。
 そんな彼女らに、霖之助からコールがかかる。

『何やってるんだ! 変身したら敵に向かって自己紹介するのが礼儀だろう!』
「うっさいわね! 今するところよ!」

 ブツッ。
 半ばヤケクソ気味の霊夢は、速攻でゲンソウチェンジャーの通話終了ボタンを押した。

「な、なんだおまえらはー!」

 チルノは目の前で五人が突然変身したことに驚き、ファイティングポーズをとったまま額に汗を浮かべて固まっていた。

「ふふふ……いいわ、教えてあげる!」

 霊夢……いや、ミコレッドをはじめとする五人が、高らかに宣言する!


「楽園の腋巫女、ミコレッド!」

「普通の魔法使い、マジョイエロー!」

「完全で瀟洒なメイド、ショウシャブルー!」

「狂気の月の兎、ウドンホワイト!」

「祀られる風の人間、ミラクルグリーン!」


「「「「「五人合わせて!」」」」」


「「「「「幻想戦隊!」」」」」


「「「「「コーリンファイブ!」」」」」


 その瞬間、ポーズを決めた五人の後ろで「ドカーン」という爆発音がする。
 同時に何の前触れも意味もなく、赤・黄・青・白・緑の色の煙が立ち上る。
 数秒経って、思い思いのポーズを決めたままの体勢の五人とチルノの間に、「ひゅるりら〜」という音がして、一陣の風が舞った。
 そのコーリンファイブの姿を見てチルノはカタカタと肩を震わせ、次の瞬間、

「って、マスク被っただけかよー! だっせぇー! プギャーッ!」

 あーっはっはっはっはっは、と大爆笑して地面を転げ回った。
 そう。コーリンファイブの面々は、私服にマスクを被った姿という、一見してみればただの変態集団であったのだ。チルノが爆笑するのも無理はなかった。

「久しぶりに……キレちまったよ……」

 あんまりなチルノの反応に、早苗……いや、ミラクルグリーンがドスの聞いた声で呟いた。

「大奇跡――『八坂の神風』!」

 怒りに打ち震えるミラクルグリーンは、御幣も持ってないのに、どこかからか凄まじい暴風を巻き起こした。

「ちょっと待てミラクルグリーン! そーいうでかい必殺技は、物語の後半の方で一話丸々使って修行したり、どっかの偉い人から教えてもらって覚える技だろ!? まだ第一話なんだからもっと抑えて抑えて!」

 冷静さを欠いたミラクルグリーンに対し、マジョイエローがメタな発言をするが、止める者は誰もいない。

「……はっ! す、すみません。我を忘れてしまいました……」

 ミラクルグリーンがマジョイエローの言葉を聞いてしゅんとする。

「さて、お遊びはここまでよ、みんな」

 ワキレッドが皆に向かって注意を促す。
 ミラクルグリーンの起こした風に巻き込まれそうになったチルノが、敵対心丸出しの目でこちらを睨みつけているからだった。

「ぐぬぬー! やってくれたわね! 今度はこっちの番よ!」

 チルノは両手を地面に水平に広げ、スペルを発動させた!

「氷符――『アイシクルフォール LUNATIC』」

 氷の弾幕が辺り一帯に展開され、コーリンファイブを襲う!

「あー? 正面安置スペルか。ったく、馬鹿の一つ覚えみたいに……うわらばっ!」

 マジョイエローはチルノの正面に、自慢の移動速度の速さを生かして張り付こうとしたが、正面から弾幕が来るとは考えておらず、何もしていないのに勝手に被弾してしまった。

「「「「イエロー!」」」」

 マジョイエロー以外の四人が一斉に、被弾したマジョイエローに駆け寄った。
 「こうしてる間にも他の四人が次の攻撃を繰り出せばいいのに」と思わないでもないのだが、チームワークが大切な多人数の戦隊モノではよく見られる光景である。

「ちょ! 何被弾してんのよ!」
「ぐ……まさか正面にも玉があるとは……」

 ミコレッドの肩を借りながら、マジョイエローはよろよろと立ち上がった。

「流石に紫の力を与えられただけあるわね……」

 ウドンホワイトがチルノを睨みつけながら言う。
 すると突然、五人のゲンソーチェンジャーが一斉に鳴り始めた。

「「「「「もしもし」」」」」
『みんな、苦戦しているようだな』
「何よ、戦闘中に邪魔よ」

 ワキレッドは吐き捨てるように言葉を遺し、通話終了ボタンを押そうとする。

『待て待て切るな、いいことを教えよう。僕が開発した君たち専用の武器が、ゲンソーチェンジャーから取り出せるようになっているんだ』
「そうなの?」
『そうだ。チェンジャーに【WEAPON】と入力して、真ん中にある丸いボタンを押してごらん。君たちそれぞれ専用の武器が出現するはずだ』
「ピ、ポ、パ……と」

 ワキレッドが入力し終え、真ん中のボタンを押すと、ゲンソウチェンジャーが光り始め、画面から霊夢のお祓い棒が飛び出してきた。

「うわっ! なんかお祓い棒出てきたけど!?」

 驚くミコレッドに、霖之助は説明を続ける。

『それは君の持つお祓い棒を強化したもの。名付けて【ワキミコれいむのドキドキスーパーお祓いロッド】だ!』
「何その名前!?」

 お祓い棒に勝手に変な名前を付けられたミコレッドがツッコミを入れるのも無理はなかった。
 さらに被害は続く。

「おお、私は八卦炉が出てきたぜ」
『それは【燃え萌え白エプロンまりさのフツーの八卦炉】だな』
「だっせえー!?」

 マジョイエローはダサい名前のついた八卦炉を地面に落とし、頭を抱える。

「私のは、ナイフが二本でしたわ」
『ショウシャブルーのは【リリカルマジ狩るさくやちゃんスター印のナイフ】だ』
「ごはあっ!」

 ショウシャブルーは吐血しながらその場にぶっ倒れる。

「私の……これは? バズーカ砲?」
『うむ、ウドンホワイト。君のは特別品だぞ。名付けて【おしおきうどんげちゃん! 恐怖のドッキリ座薬バズーカ】!』
「ぐほあっ!?」

 ウドンホワイトも、あまりの衝撃に体を痙攣させながらその場に倒れ臥す。

「わ、私はいつもの御弊でしたが……」
『グリーンのは、そうだなあ……。【ミラクルくるくるさなえちゃん☆サナエノキワミ、アッー御幣】といったところだな』
「ひでぶっ!」

 ミラクルグリーンも鼻血を噴出しながら卒倒する。

「私らのはあの三人に比べたらまだマシな方だな……」
「自分の武器に自分の名前が『ちゃん』付けで入ってるとか、自殺できるレベルね……」
「「「アンタらのも大差ねーだろ!」」」

 マジョイエローとミコレッドが口元を手で覆いながら会話するが、普段喋るのと同じ声量で話していたため、倒れている三人にも丸聞こえだった。

「――よそ見してていいの?」

 コーリンファイブが茶番を繰り広げている間にも、チルノは次の攻撃を放つための力を蓄えていた。

「おいみんな、来るぞ!」
「雪符――『ダイアモンドブリザード』」

 轟、という寒風と共に氷の弾幕が辺り一面に展開され、コーリンファイブへと次々に襲い掛かる!

「ふん……これくらい避けられるわね はあっ!」

 ミコレッドは目の前から襲い来る弾幕を飄々と避けながら地を駆け、チルノとの間合いを詰める!
 そして、手に持ったワキミコ以下略ロッドでチルノに殴りかかる!

「うわあっ! ……このおっ!」

 チルノはミコレッドの攻撃をぎりぎりのところで回避し、お返しと言わんばかりにミコレッドへと弾幕を放つ!

「ち……!」

 正面から波のように押し寄せる弾幕に、さしものミコレッドも左右に回避できず、後方に撤退する。

「次は私の番よ、チルノ……貴女の時間も私のもの……」

 キィン! という音がして、一切のものが動きを失くす。
 凍りついた世界で、ショウシャブルーはチルノへと向かってリリカルマジ狩る以下略ナイフを投げつける!

「そして、時は動き出す」

 ショウシャブルーが言葉を終えた瞬間、それまで止まっていた世界が再び動きを取り戻した。

「うおわあっ!? ナイフが現れたあっ!?」

 ブルーはもちろん当てるつもりでナイフを投げたのだが、突然目の前に現れたナイフにも、チルノは器用に体を捩るだけでかわしてしまった。

「あら、これもかわされるとは」

 ブルーは「ふーむ」と腕を組みながらステップを踏み、悠々と氷の弾幕を避けながら言った。

「それならこうです!」

 今度はミラクルグリーンが一歩前に出る。
 そして手に持ったミラクル以下略御幣を天に掲げ、思い切り縦に振り下ろした!
 瞬間、弾幕すら跳ね返すほどの突風が巻き起こり、チルノの動きを封じる!

「うっ、何よこの風……!」

 自身の出す弾幕がミラクルグリーンの出した突風によって跳ね返されてしまい、チルノの攻撃が中断される!

「よーし私の番ね! くらいなさいチルノ! 座薬バズーカ!」

 チルノに隙ができたところに、ウドンホワイトが肩に抱えたおしおき以下略座薬バズーカを発射する!
 ボウンッ! という爆発音と共に放たれた座薬がチルノへと一直線に向かっていく!

「ざ、座薬!? ……ってうわあああああああああああああ!」

 ただ巨大になっただけの固形の座薬がそのままチルノへと衝突し、チルノはあまりの衝撃に地面にぶっ倒れた。

「よし、これぞチームワークの勝利ね」
「私だけ何もしてないんだが」

 両手を腰につきながら満足げな表情を浮かべているワキレッドに対し、チルノのアイシクルフォールに被弾しただけのマジョイエローが無表情のまま冷たい声で言う。
 そんなとき、またしてもゲンソーチェンジャーに霖之助からコールがかかった。

「何よ」
『よし今だ! 【ゲンソーブレイクキャノン】で止めを刺すんだ!』
「なにそれ!?」

 霖之助が興奮したように言うが、またしても訳の分からぬ単語が飛び出し、ミコレッドは当惑した。

『ゲンソーブレイクキャノンは、五人の専用ウエポンを合体させるんだ。座薬バズーカを核にして、先端に八卦炉を合体させる。次にナイフの柄と柄をくっつけて、横向きにバズーカ上部に合体。最後にバズーカの両横にお祓い棒と御幣を合体させて完成だ!』
「へえ……なんかそれ、八卦炉以外いらなくないか?」
『君はそーいう子供の夢を壊すようなことを言わんでよろしい』

 あまりにも的確すぎる夢のないマジョイエローの発言に、霖之助がげんなりした声で返す。

「よーしみんな、それじゃゲンソーブレイクキャノンいくわよ!」
「「「「応!」」」」

 五人がそれぞれの恥ずかしい名前の専用ウエポンを取り出し、霖之助が説明したとおりに組み立てていく。
 組み立てが完了したゲンソーブレイクキャノンはミコレッドが構え、他の四人は放射状に広がり、ミコレッドの体を支える体勢を取った。
 
「いててて……ってなにそのでかいの!?」

 座薬の直撃を受けて倒れていたチルノが起き上がり、目の前で構えられているゲンソーブレイクキャノンを見て驚きの声を上げた。

「フフフ、さよならよ、チルノ」
「待てー!?」
「ゲンソウブレイクキャノン、ファイヤー!」

 制止を求めるチルノの悲痛な声が、ワキレッドによるキャノンの発射を告げる声にかき消されると同時に、キャノンの引き金が引かれた!
 キャノンの先端にセットされている八卦炉から、虹色のエネルギーの奔流が止め処なく溢れ、轟音と粉塵を撒き散らしながらチルノへと一直線に向かっていく! それはまさに、魔理沙のマスタースパークを髣髴とさせる……

「どう見ても私のマスタースパークじゃん!?」

 ……本人からツッコミが入るほど、どこからどう見てもマスパだった……。

「う、うわあああああああああああああああ!」

 放出された莫大なエネルギーがチルノの悲鳴すらも遮り、全てを飲み込んでいった。
 十秒と経たないうちに八卦炉の動きが次第に小さくなっていき、それに伴いチルノを包んでいる光の奔流が徐々に収束していく。
 やがて八卦炉が静止し、辺りに舞う砂埃が段々と晴れていく。
 土煙が完全に晴れると、チルノが仰向けになって倒れているのが五人の目に入った。

「って、おいおい。ノリでふっ飛ばしちまったけど、チルノ大丈夫なのか!?」

 マジョイエローから変身を解除した魔理沙は、マスタースパークの直撃を受けて今度こそ沈黙したまま地面に倒れているチルノに駆け寄った。
 チルノの外見はいつもの幼い姿に戻っており、さっきまでの面影はもう残っていなかった。違う点といえば、チルノは丸焦げで、髪の毛からはブスブスと白い煙が噴き出していたことだった。

「おい、大丈夫か?」
「う……あれ……?」

 魔理沙が仰向けに倒れているチルノの肩を揺すると、チルノは薄く目を開けて起き上がった。辺りをきょろきょろと見渡し、「アタイこんなところで何やってんだ?」と魔理沙の顔を見つめながら呟いた。

「てゆーか、アタイなんで丸こげなのさ!」
「自業自得だろ。まったく紫にアイスなんかで釣られやがって」
「なんのことさ? 紫って何? それっておいしい?」
「もう忘れちまったのか? バカだとは思っていたが、違ったんだな……。痴呆症だったんだな……。ごめんな、今まで間違えてて……」
「……なんか、謝られてるけどすっごいバカにされてる気がする」
「気のせいだぜ」

 魔理沙がチルノをからかっているのを見ながら、他の四人も変身を解除した。

「チルノが、さっきのことを覚えてないですって……?」
「あまりの衝撃に頭を打って記憶を無くしたとか、そんなわけないわよね?」

 優曇華と咲夜が顔を見合わせる。

「とにかく、八雲紫の脅威はひとまず去りましたね……」

 早苗が明後日の方向を見つめ、翡翠色の長い髪をかき上げながら呟く。

「ええ……。ん、あれは……」

 霊夢がふと後ろを振り替えると、慧音・阿求を始めとする村人の住人がこちらに近付いてきていた。
 慧音は松葉杖をして、阿求に支えられながら歩いている。「おーい、コーリンファイブ! 大丈夫か〜!?」なんて、慧音が声を上げるのを聞いて、霊夢たちは苦笑しながら慧音たちへと駆け寄った。

「その名前で呼ぶのは恥ずかしいからやめて欲しいのに……まったく!」

 こうして、人里を突然襲ったチルノの脅威は去った……。
 だが、これは少女たちの八雲紫との戦いの最初の一幕に過ぎない。
 これからはより強力な妖怪たちが彼女たちの前に立ち塞がるだろう。
 頑張れコーリンファイブ! 負けるなコーリンファイブ!
 真の平和を取り戻す、その日まで!





〜ED〜


 ♪(ワッショイ!)
  人の為に強く 戦う気持ち(ゲンソウ!)
  振り返りはしない ボム連発道中
  見事にまた 検閲 呼ばれて 照れ笑い
  五つの 本気を合わせて ワッショイ!(う〜パチュリー(>ヮ<))
  
<以下ジャス●ックによる検閲のため削除されました>





〜第二十三話予告〜

 突如コーリンファイブの前に姿を現した六人目の戦士、コンパックシルバー!
 なんと彼女は八雲紫の親友、西行寺幽々子の側近であった!
 敵対するコンパックシルバーとコーリンファイブ。
 しかしコーリンファイブと幾度か出会ううちに、シルバーは段々自分が人間として生きていた頃の記憶を取り戻していく。
 人間の自分と幽霊の自分の狭間で、自分の存在意義について思い悩むシルバー。
 その迷いを、コーリンファイブは断ち切ることができるのか!
 がんばれコーリンファイブ!

 次回! 幻想戦隊コーリンファイブ! 第二十三話「銀の記憶」。
 次回もこのチャンネルで、ファイ●ルフュージョン承認!

 これが勝利の鍵だ!  「ゆゆさまのおっぱい」
OPのパロ元→http://www.youtube.com/watch?v=bx3kfmTHVso
EDのパロ元→http://www.youtube.com/watch?v=dL0mLE8j2OQ

 お読み頂き、ありがとうございました。
 天体戦士サンレッドかっこいい。
Taku
http://1st.geocities.jp/supremacy711/
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/05/09 21:39:28
更新日時:
2009/05/09 21:39:28
評価:
17/19
POINT:
71
Rate:
1.07
1. 2 パレット ■2009/05/18 00:36:21
ニヤニヤしようとしても、地の文があまり笑わせてくれない……文章がきちんとしていて、普通ならそれで問題ないと思うのですが、のっけからコメディじみていたこのお話に関して言えばミスマッチに思えました。というか地の文に限らず、全体的に固いというか。
2. -3 名前が無い程度の能力 ■2009/05/18 12:35:36
あんま面白くなかった
設定が突飛なものこそ、なぜ突飛なのか納得させる理由がほしかったんですけどね
3. 5 三文字 ■2009/05/22 01:27:43
どたばたギャグですな。
いやあ、にしてもパロが多い多い。ほとんどのネタが分かった俺はどうかと思う。
でも、ここまでドタバタでやるなら紫の説明部分も思いっきり変えても良かったと思います。
せっかくだから巨大ロボで変形合体とかやって欲しかった……
4. 7 らしう ■2009/05/27 21:35:29
まさに、色ですねwww

うおおお!!!23話に続けwwwww
5. 9 神鋼 ■2009/05/28 00:18:37
お題弱ッ!最初から最後まで怒涛のバカ話でいったいどこからツッコんでいいやら。
でもしっかり楽しんじゃったので文句の付けようもありません。これは困った。
6. 8 佐藤厚志 ■2009/06/01 01:11:14
まるで火力発電所になったかのように、勢い良く読みました。
ウオォン、と焼肉を食べるような、勢いでした。
とっても笑える小説で御座いました。こういう小説を書いてみたいです。
7. 6 As ■2009/06/01 01:36:40
昔見てた戦隊物を思い出しますねー、面白いお話でした。
ただ途中でミコレッドがワキレッドとなっていたりと、微妙なミスが。
8. 1 気の所為 ■2009/06/02 20:19:05
戦隊ものに思い入れが無い所為で、「ああこういう演出や台詞昔あったよねー」とか、そういう楽しみ方が出来ませんでしたね。
それがあればもう少し楽しめたと思うんですけど。ってこれは自分の所為だ。
とりあえずネーミングがいろいろと。
9. 5 有文 ■2009/06/08 01:03:13
タイトルで予測はしていたけど、これはひどい。でも噴いたもの事実なので、なんか悔しい。
ただ、奇手を使うのは心意気や良しですが、やり過ぎると逆に奇手が色あせてしまうので程々に。
10. 3 ふじむらりゅう ■2009/06/11 23:48:15
 来た、ついに卿が来たぞ!
 つっこみ役がちょっと多くてごちゃごちゃしてました。
11. フリーレス ぴぃ ■2009/06/12 04:05:21
メタなネタはほどほどに! 限界突破しちゃった気がするのでフリーレスですが、全体的に普通に面白いから困りましたw 
あとは地の文章の工夫と、読み返してテンポを意識すればグッド。
そして後半で盛り上げてしっかりとオチをつけることができれば、キャラが壊れてるかどうかなんて関係ありません。
立派な東方SSです。
12. 2 八重結界 ■2009/06/12 18:33:12
テンションだけが先走ったような印象が。
そして早苗さんも違う意味でテンションが先走ってました。
13. 3 moki ■2009/06/12 19:01:36
きっと少女の残り湯を嗜む紳士も登場するんだろうな。
あと、地の文で「優曇華」は流石になしでしょう。
14. 5 どうたく ■2009/06/12 19:43:19
 良い所
 幻想郷のアニメですね。分かります。
 なんてノリがいいやつらなんだ……。
 とにかく勢いがあった文章だと私は感じました。この勢いは受ける人には、かなり受けるので、大切にしていくべきです。

 改善点。
 この勢い。確かに光るものはあるのですが、やはり文章が荒削りでノリと台詞に頼っていると感じました。
 文章だけでも、話を作れるぐらいまで練習することで、作者の真の才能が発揮されると思います。
15. 3 時計屋 ■2009/06/12 22:51:24
 すいません、ちょっと肌に合いませんでした。
 部分的には面白いネタもあったのですが、全体的な雰囲気というかノリというか、そういうものについていけなかった。
16. フリーレス ハバネロ ■2009/06/12 22:58:50
読む前

……このタイトルセンスで期待しろってのがムリと思わせて実は面白いとかそんな事があったらいいなぁ
17. 5 つくし ■2009/06/12 23:06:15
申し訳ありません、時間が差し迫っているため、採点のみにて、感想本文は後ほど改めて。
18. 7 K.M ■2009/06/12 23:32:39
カ オ ス 過 ぎ だ !!(褒めてるつもり)
ガオ●ンジャーとかまた微妙に懐かしいし。
そういえばシン●ンジャーも先週新戦士が出ましたっけ。
19. 3 つくね ■2009/06/12 23:57:07
ん〜私は結構好きなノリなんですけどねぇ……ツッコミどころは多いので割愛。
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