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作品集: 最新 投稿日時: 2009/05/09 23:24:51 更新日時: 2009/05/09 23:24:51 評価: 20/20 POINT: 130 Rate: 1.48
 私は、この空の色を忘れない――

     ◆     ◆     ◆

 虫の声も涼やかな夜下がり。りんりんと、きぃきぃと、ちちちと、夏の夜に鳴き声の合奏を響かせている。
 決して幽雅ではない。ただ雑音にも近いそれは、しかし不思議と不快さを覚えさせない。
 気分が完全に晴れるものでもないが。

 ガラス一枚隔てた向こうから聞こえる音の集団に対して、レミリア・スカーレットはそんな感想を抱く。
 長机に顎を乗せ、椅子から垂らした足をぶらぶらとさせながら。
 部屋の中だけを見れば広大で静寂だった。人間の家ほどもあるその空間は赤を基調として塗り込められた箱だ。
 いずれも館の主であるレミリアが自ら命じて用意させた調度品がお洒落に並んでいる。
 クローゼット、ベッド、棚、その他諸々。配置は館に仕える完全で瀟洒なメイドのお陰で完璧だ。
 が、それでも広すぎる空間を埋めるには至らず、有り余った空白が部屋の大部分を占める有様である。

 そしてそこにぽつんと佇む自分ひとり。中々に寂しい風景だと想像する。
 が、自ら動く気にもなれなかった。夏の夜は昼間ほどでなくとも蒸し暑い。
 それだけで行動力がダウンするというのに、館の中は歩くには広すぎる。当然、やる気もダウン。
 加えて、あの事もある――思い出したレミリアははぁ、とらしくもないと思えるため息を吐き出す。
 色々なことが一気に変わった、そのせいもあるかもしれない。
 じっとりと汗が滲み、鬱陶しいと思ったとき、ドアをノックする音が聞こえた。

「お嬢様、宜しいでしょうか」
「入っていいわよ」

 心なしか、だらしなく語尾が延びてしまったがこの熱帯夜に威厳がどうのとか言っていられない。
 というより、考えたくなかったレミリアは机に突っ伏したまま招き入れる。

「失礼します」

 ……ああ、いいタイミングだとレミリアは思った。
 見計らったように現れた十六夜咲夜の腕にはティーセットが一式とタオルが一枚。そしておやつが。
 相も変わらずきっちりとした立ち振る舞いに粛々とした態度。
 半袖とはいえ暑いだろうに、微塵も感じさせない咲夜の様子に、感心するより呆れる。

「今夜も暑いですね」
「貴女は涼しそうね」

 見れば、汗のひとつもかいていない咲夜に意地悪く言ってみたが微笑を返されるだけだった。
 メイドの嗜みです、と一言付け加えて。
 どんな嗜みなのかと思ったレミリアだったが、どうせはぐらかされるに決まっている。
 完全で瀟洒な裏には秘密がつきもの、とは咲夜の弁だ。
 何にせよ、聞いても答えてくれないのなら自分が面白くない。

 それよりも涼を取ろうと結論したレミリアは、タオルで額を拭いつつ咲夜が机にカップを並べていくのを見る。
 気の利いたことにタオルは程よく冷たい濡れタオルだった。
 そしてカップには紅茶ではなくアイスティー。お茶菓子には氷砂糖という徹底振り。
 普段なら熱い紅茶にしろとせがむところなのだが、今は暑い。だから文句も言えない。
 思考を見透かされているようで気に入らないが、願ったり叶ったりなので素直にする他ないのだ。
 タオルをトレーに置き、まずはアイスティーを一口。
 普段の紅茶より甘い味が口の中に広がり、乾いていた喉を潤していく。
 冷たすぎず、温すぎず。ここまで希望通りだと笑うしかない。レミリアの顔に苦笑が浮かび、咲夜も応じて笑った。

「お気に召して頂けましたか」
「うんざりするくらい。全く、人間のくせに」
「光栄ですわ」

 笑みが深くなる。メイドの鏡だ。もうここまで来ると妖怪染みている。
 自分自身の中にあった靄が通るべき道を見つけ、流れて行く感触があった。
 暑さで重くなっていた口が軽くなり、唐突に会話したい気分になる。困ったものだ。
 特に話すつもりもなかったはずなのにと己に言い訳して、レミリアは話を始める。

「暑いわよね、最近は……嫌になるくらい」
「ええ。苛々するくらいです」

 咲夜は自分の話したいことも分かっているのだろう。
 なんとなくそう思いながら、レミリアは氷砂糖を一つつまんで口に入れた。
 飴玉やケーキ程ではない、すっきりとした甘さが心を落ち着けてゆく。
 カリッ、と砕く感触もまた心地良い。

「……ええ、そう。だからあんなことをしてしまったのかしらね。喧嘩、なんて」
「喧嘩というにはいささか度が過ぎているような気も致しますが」
「あれは私じゃない。フランドールが先にやった」
「パチュリー様が嘆いておられました。貴重な魔道書が焼けてしまったと」

 後先の問題ではないらしい。平然と語っているものの言葉の端々に嗜めるものが見え隠れしている。
 確かに、やり過ぎたのは認める。後始末に大わらわだったのも認める。だが自分は悪くない。
 先に手を出してきたのも言葉をぶつけてきたのもフランドールだ。
 そんな風に、必死に自分を正当化しようとしていることに気付き、何故だという気持ちになる。
 いつから己は体面ばかりを重んじるようになったのか。
 この仮面は、どうして外れなくなったのか。
 紅魔館の当主になって以来身につけ続けてきた鉄面皮が、今はこんなにも歯痒い。

 何かが変わってしまった。
 自らが起こした異変を解決されてから、何かが崩れ始めたのだ。
 周囲の環境だけではない、自分の内の心境も……
 窓の外を見る。夜陰の色に覆い尽くされた空が周り一面を塗り潰している。
 あの子はこの空を嫌っているのだろう。或いは、憎んでさえいるのかもしれない。
 牢獄から開放されて尚、閉じ込められたこの場所に。
 もう感じていないはずの痛みがレミリアの頬を刺激し、記憶を呼び覚ます――

     ◆     ◆     ◆

 起こったのは紅霧異変が解決して、しばらく経ったある日のことだった。
 事件以来(以前からでもあるが)暇を持て余していたレミリアは、
 それを切欠に知り合うことになった博麗霊夢の神社によく足を運ぶようになっていた。

 文句は言いつつもお茶は出してくれるし、戦いを望めば付き合ってはくれるし、何より自分に対する畏れを感じていない。
 霊夢の人間性を単純に面白いと思っていたのだ。吸血鬼という存在を全く意にも介さない人間。
 故に、何も取り繕う必要がなかった。自然体に付き合えて楽にしていられた。
 出かけることが、当たり前になってしまっていた。あれほど嫌いだった日中でさえ。
 だからその日も当然のように出かける準備をしていた。
 日傘を咲夜に持たせ、廊下を歩いていた時、彼女と出くわしてしまった。

「お姉様? 傘なんかもってどうしたの?」
「フランドール? 珍しいわね、こんな時間から」

 お姉様だって吸血鬼のくせに、とけらけら笑いながらフランドール・スカーレットは眠そうに欠伸をしていた。
 たまたま起きていたのか、それとも気まぐれで散歩でもしていたのだろうか。
 異変以来、フランドールは館の中を出歩くことが多くなり他者と積極的に会話することも多くなった。
 誰かと話す楽しみを覚えた……というよりは様々なものに興味を持ち始めたというのが正しいだろうか。
 まるで幼子のようにあれはなに、これはなにと聞きまわり、時として遊びと称し弾幕ごっこを吹っかける。

 遊び盛りの子供というべきだろう。もっとも紅魔館を壊さないのであればレミリアにとってさしたる問題ではなく、
 フランドールの好きにさせていた。ただ、レミリアはフランドール自身と会話することは殆どなかった。
 このような挨拶でさえいつ以来だろうか、と思ってしまうくらいに。

「んー、図書館で本を読んでたの。読んでみると、面白いものが多いわ。でも今までずっと読んでたから眠くって」

 ふあ、ともう一度欠伸をするフランドール。よく見れば片手には本が数冊抱えられている。
 それほど分厚くはないことから小説か、とレミリアは想像するも聞く気にはなれなかった。
 小説に興味はない。そもそもレミリア自身、本への興味は薄かった。
 調べものをするときに多少利用するくらいで、その作業さえも咲夜に任せることが多い。
 そう、とレミリアは返事して咲夜を引き連れて先に行こうとする。が、フランドールに引き止められる。

「ちょっと、私の質問に答えてもらってないよ。お姉様、傘なんか持って何してるの?
 館の中で雨を心配する必要はないと思うよ?」

 ちょっと不機嫌そうに、しかし興味は隠せないといった表情で尋ねてくる。
 答えるのが面倒だったので、咲夜に目配せする。承知したという風に頷き、咲夜が理由を説明する。

「これから博麗神社に行くのです。ですから、日傘が必要ということですわ」

 するとフランドールは途端に眠かったはずの目を輝かせ、ぱたぱたと七色の羽を揺らした。

「お出かけするの? いいなぁ、私も連れてってよ! 私も外で遊びたい!」
「ええ、それは――」
「ダメよ」

 ぴしゃりと言ったレミリアに、同意を求めようとしたらしい咲夜が目をしばたかせる。
 関係ないというようにレミリアはフランドールを睨み、嗜めるように言いつける。

「前々から言ってあるでしょう。お前は外に出てはいけない。ただでさえ危ないのに」
「お嬢様、申し上げますがフランドール様も最近は……」
「咲夜は黙ってなさい」

 鋭い言葉を向けられ、咲夜が口をつぐむ。そういえば咲夜もよくフランドールと話すようになった、
 という噂を耳にしていたのを思い出しつつ一歩前に進み出る。
 そこには一転して不満顔のフランドールがいた。にべもない態度に怒るのは分かっていた。

「どうして? いいじゃない、一緒に行くくらい。日傘を差せば別に問題ないでしょ」
「そういう問題じゃないの。危ないのはお前の行儀の方。今回は別に弾幕ごっこをしに行くわけじゃないの」

 言外に行儀が悪いと言われたことにますます腹を立てたらしいフランドールは「そんなことない!」とムキになって反論する。

「私だって弾幕ごっこばかりしてるわけじゃない! 外に出てみたかっただけ、それのどこが悪いの!?」
「さっき遊びたいって言っていたじゃない。自分の言葉すら覚えてないのか」
「違う、それは……!」

 表情を崩すフランドールを見たレミリアは不意に、どうしてこんな攻撃的な言動になっているのか、と思った。
 馬鹿にしたかったわけではない。行儀がなってないと言いたかったわけでもない。
 なら、何故だ? 何故こんな言い方になってしまっている?

 外に出すことに躊躇いを感じているのか。あらゆるモノを破壊する力。全てを無に帰してしまう絶対の力。
 そのせいでスカーレット家は恐れられた。同時に、フランドールに対する風当たりも強くなった。
 気が触れているくせに。歪な羽の出来損ないのくせに。あのような野蛮な力はスカーレット家の名を汚す。
 周囲から言われ続け、必然としてレミリアは体面を保つために言動を考え、淑女として振る舞う場面も増えていった。
 その過程で威厳を保つための鉄面皮を被ることは日常化し、フランドールとまともに向き合うこともしなくなった。

 果てには口をきくこともなくなり――他人同然の家族と化した。
 最初は、家族を守るための行動だったはずなのに。

「……行きましょう、咲夜」

 目を背けるようにレミリアはそれで会話を打ち切った。
 ギスギスした雰囲気に咲夜は戸惑いつつもかける言葉を持てない……いや、持つことさえ許される状況ではなかった。
 数秒の間を置いて「はい」という短い返事がもたれ、もうそれきりになったであろう会話は――まだ終わらなかった。

「お姉様ばっかり、そんなことして……! なんで、なんで私だけいつも!」

 絶叫が聞こえ、紅魔館全体が静まり返ったような気がした。
 足を止めかけたが、ギリギリのところで動きは止めなかった。
 止めてしまえば、何かに呑まれるような気がしたからだった。
 怖いのか? 不意にレミリアはそんなことを思った。

「なんで私は外に出ちゃいけないの! なんでお姉様は私をそんな名前で呼ぶの!
 パチュリーのことはパチェって呼ぶくせに! それに私が知らないとでも思ってるの、お姉様の外出が多くなったってこと!
 私をのけものにして……! 私だって吸血鬼で、お姉様の妹だってことくらい分かってるのに……
 キライ……お姉様なんか、大っキライ!」

 同時に、閃光が爆ぜた。振り向いたときには既に避けることすら叶わぬほどの弾幕が目前に迫っていた。
 そこから先のことは正直、よく覚えていない。多分必死だったのだろう。
 泣き喚いて無茶苦茶に攻め立てるフランドールに反撃することもままならぬ状況だった。
 正確には、フランドールの「キライ」という言葉が応えたのかもしれない。
 想像以上に突き刺さった言葉だった。

 こんなこと、知り抜いていたはずなのに。蔑ろにしてきた事実など分かりきっていたことなのに。
 だが、どうすればいいのかが分からなかった。フランドールにどう向き合えばいいのか、レミリアは分からない。
 それに今さらだ。今さら、家族面を出来る資格が己にあるというのか。
 威厳を保つためなら家族でさえ犠牲にしてきた自分が、仲良くしていい権利などあるのか。

 ならばいっそ、閉じ込めたままにしておけばよかった。
 鉄面皮を外さぬまま、隔絶した距離を保っておけばよかった。
 こんな痛みを、感じずに済むのなら……
 どうすることも出来ない事実、変えようのない過去を思い、レミリアは己の運命を呪った。
 一番変えたい運命すら変えられない。

 ――出来損ないは、どいつなのだろう。

     ◆     ◆     ◆

 熱帯夜だと思った次の日は雨だった。
 夏は嫌いだ。暑い、雨はよく降る、日光はカンカンの三拍子。
 それに、今は嫌いから大嫌いになりそうな気がする。

 フランドールとはあれから一言も会話していない。それどころか目を合わせすらしていない。
 紅魔館にはギスギスした雰囲気が漂っていた。妖精メイドも普段の騒がしさはどこへやら、黙々と仕事をこなしているようだった。
 それもそうだろう。悪魔の姉妹が喧嘩して険悪な雰囲気なのだ。気分を害せば消し飛ばされてもおかしくない。
 会話もひそひそ話になり、あまつさえ自分が横を通ればピタリと会話が止む。
 情けない。たかが姉妹喧嘩を解決できずにいる自分が。しかしこれといった解決策も見つからないのが現状だ。

 何をしてやればいいのかなんて分からないし、そもそも自分の言葉がフランドールに届くのか。
 謝罪の言葉も、仲直りの言葉も、全てが嘘偽りで表面を取り繕ったようにしか思えなかった。
 絶対の王として君臨しているスカーレット・デビルが謝ろうとしているなんて、滅多にお目にかかれないイベントだろうに。
 嘲笑と皮肉を交えた己の言葉にすら嫌気が差し、レミリアは部屋のベッドの中にもぐりこんだ。
 一晩中考え続けてこの有様だ。少し、眠った方が良かったのかもしれなかった。
 しかし温かい毛布にくるまれて尚眠気は訪れない。吸血鬼の不眠症。体調管理も出来なくなったらしいと、もはや笑うしかなった。

「お嬢様、宜しいでしょうか」

 と、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。咲夜だ。
 よく考えれば食事も摂っていなかったのを思い出す。考え疲れたのを見計らって来た、というところだろう。
 こんな状況でも咲夜の瀟洒振りは相変わらずだ。そんなことは昨日から分かりきっていたことだが。
 毛布を巻いたまま「入っていいわよ」とレミリアは告げる。
 無様な姿を晒し続けている気がするが、夏のせいなのだ、きっと。

「失礼します……あら?」

 トレーにシチューとパン、紅茶の乗った皿を携えていた咲夜は軽く首を傾げる。
 ああ、とレミリアは得心する。ベッドの中に入っていたため寝るつもりなのかと思われたのだろう。

「申し訳ありません、お休みになられていましたか」
「寝てもないし、寝るつもりでもなかったわ。休んでいただけよ」

 すると咲夜は納得したように頷き「暑いですからね」と微笑んだ。「ええ、暑いからよ」とレミリアも応じた。
 流石にベッドの中で食事するわけにもいかないので、のそのそとベッドから這い出る。
 咲夜は既にテーブルに食事を並べていた。作りたてなのか、温かな香りがレミリアの鼻腔を刺激し、すきっ腹を刺激してくる。
 忘れていたかのような空腹感が込み上げてくるのを感じながら食卓につく。

 苦笑が漏れた。なかなか現金に出来ているものだ。
 ざわめきだった気分は未だに晴れないが、少しは冷静になれたかもしれないとレミリアは思った。
 シチューをスプーンで掬い、一口運ぶ。熱すぎず、冷めてもいない、温かいと呼ぶに相応しい味が口内に広がってゆくのを感じる。
 絶妙に配合されたミルクと血液が体を中から満たしてゆく。やはり、こんな心境でも美味しいものは美味しかった。

「いかがでしょうか」
「いつも通りね」

 ありがとうございます、と柔らかい返答が寄越された。満足げな色が溢れ出ていた。
 いかにも人間らしい。表情に出すことなく仮面を貼り付けている自分とは違う。
 無論、本心かどうかなんて分からないものの、間違いないという確信があった。
 どんなときだって咲夜は己のすべきことに全力なのだろう。そう断じてレミリアはパンを口に運ぶ。
 堅すぎずしっとりとした食感を伝えるロールパンが口の中で溶ける。口内の水分と交じり合うようで、自然と調和している。

「いつも通り、美味しいわ」

 今度こそ咲夜が笑った。分かっていてもついつい言ってしまう。
 言わなくても分かるのに、どうして言ってしまうのだろうか。全く度し難いさえ思える。
 もし、美味しい食べ物が自らの本音を引き出せるのだとしたら――フランドールとも、気楽に言葉を交わせていたのだろうか。
 考えてみれば楽にしていられる霊夢の傍にはいつもお茶が置いてあった。
 紅茶の方が好きだと文句を言いながらも、ついつい飲んでしまう美味しいお茶が……

「お嬢様、ひとつ宜しいでしょうか」
「……なに?」
「今年の夏は特に暑いですわ。妖精メイドも、門番も、パチュリー様も……フランドール様も参っておられます」

 咲夜が含まれていないのは意地か、それとも本当に平気なのか。
 きっと分かるまい。そんな感じの視線を流しつつ「それで」と次を促す。
 ただ分かることはあった。咲夜は何か企んでいる、と。
 普段は自分が咲夜の立場なのに。文句を覚えながらも聞き入ってしまう己に半ば呆れる。
 美味しい料理のせいだ。そう思うことを決めながら、レミリアは紅茶を喉に入れた。

「そこで、どうでしょう。涼みをとるために紅魔館でパーティを開く、というのは」

 レミリアの中で、カチリとピースが嵌る。なるほど、そういうことか。
 人間らしいお節介だという感想を抱き、同時にそれで何とかなるものなのかと冷めた自分が語りかけている。

 言葉を交わせばいいというものではない。
 五百年近くお互いを遠ざけ、しこりを残してきた過去。
 過去が姉妹同士憎み合っているのではないかという疑念を生み、疑念が不信を起こし、
 それを誤魔化すために自分は鉄面皮を演じ続けてきた。
 言葉はもう、届かない。その事実だけが横たわり、濁流となって溝を生み出している。
 家族ごっこにすらならない。咲夜はそれを分かっていないのだ。所詮人間でしかない咲夜には。
 レミリアの目が伏せられる。隔てる壁を作ったつもりだったが、咲夜はいつになく強気に押してきた。

「いかがでしょうか」

 一歩進み出た咲夜の目には、変わらぬ微笑がある。それがレミリアに料理の味を思い起こさせ、確かに感じたものも思い出させる。
 問題はそれが空白を埋められるだけのものになるか、だ。
 フランドールと向き合えるようになるのか。五百年近くの空白を取り払うことが出来るのだろうか。

「お嬢様」

 巡る思考の流れを彷徨いかけていたレミリアに、凛とした咲夜の声が差した。
 顔を俯かせていたことにも気付かなかったレミリアはハッとして目を上げる。

「お嬢様がやりたいことをおやりになられればよろしいのです。私は、提案しただけに過ぎませんわ」

 やりたいこと、という咲夜の一語が脳を刺激し、ふっと何かが軽くなるのを感じた。
 どうして踏み止まっていたのだろうか。そう、いつだって自分は自由奔放に己の欲することをやり続けてきた。
 それがどんな結果を生むのか、どんな状況に変転するのかなんて考えたこともない。
 運命に縛られないとはそういうこと。切り拓くとはそういうものだと、常日頃から他者に語って聞かせているのではないのか。
 望むから、やる。見失っていたのだ。

 私が一番欲しいもの。そんなもの、自分の手で手に入れてみせる。
 簡単なことだった。時間という言葉の意味に惑わされていたに過ぎないのだ。

「そうね……パチェを呼びなさい、咲夜」

 かしこまりました――その声が聞こえたときには、咲夜の姿は霧のように掻き消えていた。
 窓ガラスに僅かに映った自分の姿を見る。
 不敵な面構えだった。雨も避けて通りそうな程の。

「楽しく、なりそうね」

 この夏で、初めて時間が進む……そんな予感があった。

     ◆     ◆     ◆

 相談、という名目で呼び出されたのは久しぶりだった。
 ここ数十年レミリアからの呼び出しは受けた事がない。
 そういう吸血鬼だった。常に頂点を自負し、何事も一人で考え、何事も一人で決める。
 パチュリー・ノーレッジはそれを寂しいとか、独り善がりだと思ったことはなかった。

 何故なら、自分は知っている。強い自信と責任感を持っている親友の姿を知っている。
 だから安心して任せられた。どんな無茶なことだってレミリアの手にかかれば全てが上手くいく。
 そう信じていたからこそ、パチュリーは新鮮さを感じていた。
 相談と称して難題を吹っかけてきそうなことが、楽しみにも思えた。
 先を歩く十六夜咲夜の後姿にパチュリーは尋ねてみる。

「で、その相談事って何かしら?」
「さあ……私はただ、呼んで来いと命じられただけですので」

 そうは言うが、咲夜の声は僅かに嬉しそうだ。少なくとも面倒事ではなさそうだった。
 だったら何でもいいと結論して、パチュリーはそれきり何も尋ねない。
 そうこうしているうちにレミリアの部屋の前まで辿り着いた。

 いつものことながら、見た目の広さと実際の距離が合っていないような感覚を受ける。
 紅魔館の広さは咲夜の能力があればこそ、というのは理解しているがいつの間に調整されているのか気付かない。
 知識と真理を追い求める魔法使いとしては是非とも謎を解き明かしたい事項ではあったが、
 生憎その空間を操る当事者は油断も隙もなく、容易に秘密を明かしてくれそうにはなかった。

「いかがされました?」

 じっと見つめるのを感じていたのか、咲夜が首を傾げてパチュリーを見る。
 時と空間を操るメイドの姿はどこまでも清楚で、瀟洒だった。
 こんなに暑いのに汗一つかいておらず、寧ろ彼女の周囲には涼風が漂っているかのようにさえ思わせる。
 その印象は白を基調とした彼女の姿ゆえか、はたまた何か仕込んでいるのか。
 透き通るような青の瞳は、透明過ぎて分かりえない。

「いいえ、なんでもないわ」

 生きてきた年月は自分の方が上なのに、年上のように思える咲夜の風情がそう思わせるのだとこの場は断じて、
 パチュリーはレミリアの部屋へと足を踏み入れた。
 入って目の前にある長机。そこに紅魔館の主が頬杖をついて待っていた。

 咲夜とは逆の幼い風貌ながらも主としての威厳を湛え、常に鋭い雰囲気を纏わせている……はずだが。
 レミリア・スカーレットが赤い瞳を細めて、口元を緩める。見た目相応の表情を浮かべている。
 おや、とパチュリーは思う。今日はなにか特別な日だったかと考える。
 それほどまでに意外な表情のように思えたのだった。

「ごきげんよう、レミィ」
「ごきげんよう、パチェ」

 演技の可能性、騙しの可能性も踏まえながらパチュリーは席につく。
 暇つぶしと称した悪戯に付き合わされた経験もある。とりあえず頭の中で魔法の構築をしながら口を開いた。

「で、どうしたの? わざわざ私なんかを呼ぶなんて、珍しいじゃない」
「そう? たかが数十年ぶりでしょう」

 雰囲気は崩さない。どこか砕けたレミリアの様子が不思議なものに思える。
 今までは、親友であっても客人と主という立場が存在していたというのに。

「おかしいって思う?」

 唐突に向けられた言葉に、すぐに返答出来なかった。
 口を濁したパチュリーに、レミリアは苦笑を浮かべた。

「ええ、そうよ。今の私は、ちょっとおかしい。今年の夏は、とても暑いから」
「……確かに、暑いわね。うんざりしてる」

 話を合わせた方がいいのだろうとパチュリーは考える。
 レミリアは暑さに参るような吸血鬼じゃない。参っているとすれば――
 ただ、それで悩むのは余りにらしくないとしか思えず、蚊帳の外に弾き出していた事柄だった。
 けれども今のレミリアの表情を見れば、それもあり得るのではと思える。
 今までの彼女とは違う、自分も知らない一面を晒そうとしてくれているように見える。
 きっとそれは重大なことに違いあるまい。勘違いでなければの話だが。

「暑いでしょう。だから皆、気分が晴れない」
「それで貴女は何を企んでるのかしら、レミィ」
「パーティでも開こうかと思ってね」

 予想していたよりは普通の答えが返ってきた。しかし、現在のレミリアの雰囲気には合致してはいる。
 自分の質問に素直に答えたのも意外と言えば意外だった。普段ならもっともったいぶるはずなのに。
 ああ、これは重症かもしれない。レミリアが悩まされている『暑さ』は。
 まあ『暑さ』の正体について正直でないところはまだレミリアらしいとは感じたが。

「でも正直、立食会だけじゃ面白みがないでしょう? そこで頼みがあるの」

 レミリアの口から頼みごとの内容を教えられる。なるほどこれは私ならではだ、とパチュリーは納得する。
 単純に魔法使いとしても興味をそそられる。相変わらず発想が面白い。
 既に考え始めている自分がいることに気付き、内心苦笑しながら了解の意を示した。

「一応確認しておくけど、これはあの子には内緒なのでしょう?」
「そうね……ああ、その方がいいか」
「……考えてなかったの?」

 たった今気付いたという風なレミリアに、パチュリーは思わずそう聞き返してしまった。
 ええ、と真顔で返され、やはり今回は重症だとパチュリーは嘆息する。
 吸血鬼と言えどこういうものなのだろうか、と他人事のような感想を抱く。いや実際他人事なのだが。
 まあいい。それだけ今回の彼女は本気ということなのだろう。
 貴重な光景だと思うことにして「話はそれだけ?」と尋ねてみる。

「ん、そうね。取り敢えずはそれだけよ」

 頷いて、レミリアはようやく彼女らしい不敵な面構えを見せる。
 瞳の紅が深く染まったような気がして、パチュリーはわけもなく居住まいを正してしまう。

「期待しているわ」

 この時、パチュリーは存外大変な役目を任されたのかもしれない、と思った。
 しばらくは図書館に引き篭もる日々が続きそうだ。
 息を吐いて窓越しに雨降りの空を見上げる。しばらくは降り続きそうな雨だった。
 けれども、必ず晴れ上がる。近いうち、空は満天となるだろう。
 そんな――運命の流れを感じた。

     ◆     ◆     ◆

 雨はまだ降り続いている。一日かそこらで止むようなものではなかったらしい。
 が、それでもすぐに収まるだろうという予感があった。
 その時までには準備も終わり、後は始まるのを待つだけでいい。
 寧ろ雨より、問題は己の内側にあった。

 紅魔館の長い廊下を歩きながらレミリアは顔を俯かせている。
 準備は着々と整っている。咲夜は妖精メイドを引き連れて忙しく飛び回っているし、
 パチュリーは小悪魔と共に図書館に篭りきり。
 美鈴も特別に門番の仕事を休ませて手伝わせているくらいだ。
 重苦しかった館の雰囲気を払拭するかのように慌しい喧騒に包まれ、着実に元の姿を取り戻そうとしている。
 そんな中で変わらないのは紅魔館の地下、フランドールの部屋がある区画だった。
 以前の喧嘩以来フランドールは滅多に部屋から出なくなり、出たとしてもすぐに部屋に戻る有様だ。

 ――戻ったといえば、そうなのだろう。閉じ込めていた時代に戻ったかのようにフランドールの部屋は、
 彼女の周囲は閉ざされている。他ならぬ自分のお陰で。
 異変以来外を出歩くようになってから、確かにここは変わりつつあった。
 他の誰も寄せ付けない、不気味で攻撃的だった館の印象は徐々に和らいでいる。
 変な吸血鬼の住む館。
 騒がしい連中がいつも何がしかを企んでいる秘密基地。そんな風に。
 実を言えばレミリア自身も気に入らないわけではなかった。
 何をしでかすか分からない正体不明の集団、という存在感が性に合っていると思った。
 昔のような攻撃的で、支配を目論む野蛮な連中という認識よりは好意的に受け入れられる。

 もちろん表面上は口にも出さなかったが、内心では悪くないと思っていたし、紅魔館の連中もそうだった。
 とどのつまり、フランドールを発端としてここは変質を始めたのだ。
 陽気で無邪気、何も知らない彼女が少しずつ。
 それを、自分が台無しにしてしまった。

 過去から張り付いて剥がれない、力の倫理の中でしか生きられなかった仮面が無為にしてしまった。
 捨てようと思えばいつでも捨てられたはずだったのに、時間という鎖に縛られとうとう手放すことの出来なかった仮面。
 故にけじめをつけなければならなかった。
 変質していくものに取り残されないように。これからも引っ張っていけるように、自分は変わらなければならない。
 そのためにここまで歩いてきたはず、なのに。

 重く閉ざされた扉は、何者をも寄せ付けぬように聳えている。
 取っ手は自分の目の前で、引けば軽く開くはずの扉に手を出せない。
 フランドールの部屋が、あまりに遠い。
 決意しても尚言葉は見つからなかった。妹を知ろうとしてこなかったことのツケが、ここで回ってきている。
 どうしてもそっけない言葉しか浮かばず、ともすれば攻撃的にとられるのではという不安があった。
 自分は妹の何も知らない。何を思い、何を考えて生きてきたのかも分からない。
 これで姉妹だというのだから、冗談としか思えない。

 嘆息を吐き出しただけで――結局、レミリアは手を引っ込めた。
 振り払ったつもりでも、過去の隔たりは厳然として存在している。
 この結界を打ち破れるアイデアが見つからない。
 ただ呼び出すだけなら簡単だ。咲夜なり誰なりを使って呼び出せばいい。
 だがそれではダメなのだ。自分自身が語りかけないといけない。

 ……見つからないのは、言葉だ。
 ならば探してみよう。見つからないのなら、見つけるしかない。
 意外と必死になっている自らの胸の内を失笑して眺めつつ、レミリアは一旦フランドールの部屋を後にした。

 それからしばらく紅魔館を練り歩く。
 皆が皆バラバラと動き、手には飾りやら食器やらを持って奔走している様子だった。
 労働力の大半が妖精であるため作業は遅々としていたが、進んでいないわけではなさそうだ。
 咲夜の姿は見えない。大方指示を飛ばしているのだろう。その一方で本来の仕事もこなしているというのだから大したものである。
 本人は対して苦にもしていないような風であったので、こうやって働いているのが性に合っているのだろうと思った。
 そうして物思いに耽りながら歩いていたからだろうか、横を通った誰かと肩をぶつけてしまった。

「……っと、あっ、済みませんお嬢様!」

 溌剌とした声に振り向くと、荷物を両手いっぱいに抱え、その間からひょっこりと赤い髪を纏った紅美鈴が顔を出した。
 荷物を持ちすぎていたせいで前方不注意になってしまっていたらしい。
 さして何とも無い様子であるので、レミリアは平気よ、と会釈する。

「ご苦労ね」
「ええ、はい。力仕事を任されたもので、妖精には持てないものをたくさん運んでるんです、あはは」

 すらりとした体躯に似合わず、美鈴は中々の腕自慢だ。でなければ門番は務まらないというのもあるが。

「お嬢様はどちらに?」
「出かけられないから、中を散歩」
「ああ、まだ雨ですもんね」

 いささか気落ちしたように美鈴は息を吐いた。
 門番は外の仕事であるから雨の中続けるのは精神的に疲れるらしいというのを咲夜から聞いた覚えがある。
 しかしすぐに笑顔を取り戻した美鈴は「でももうすぐ止みますよ」と続けた。

「パーティーのときには、きっと晴れます」

 そうね、とレミリアは同意した。自分と違って根拠もなくそう思っているはずであるのに、
 不思議とそんな気にさせられる。美鈴の持つ気質がそう思わせるのだろうかと考えて、ひとつレミリアは尋ねてみる。

「……ねえ、顔を合わせずに言葉を伝える方法を知っているかしら」
「なぞなぞですか?」

 きょとんとした面持ちになった美鈴に、ええ、と頷く。そういうことにしておいた。
 ふーん、としばらく荷物を器用に弄びながら考える美鈴。
 なぞなぞ、は少し遠回しな言い方だっただろうかと思ったが、「分かりました!」という声がその思いをかき消した。

「文通ですね。手紙なら、時間はかかっても必ず言葉を届けられます。合ってますか?」
「はずれ」
「えーっ!? そんなぁ!?」

 自信満々に答えたはずがあっさりと間違いと言われ愕然とする美鈴。
 それはそうだ。答えなんてないし、答えを作った覚えもない。自信満々だったからはずれと言ったまでだ。

「ということで、私はそろそろ行くわ。それじゃあ」
「え、えっ? あの、こ、答えは!? 答えを……わわっ!」

 レミリアの背後でがしゃん、という音が聞こえた。どうやらバランスを崩して落としてしまったらしい。
 悲鳴を上げつつも、ぶつぶつとなぞなぞの答えを考えている美鈴にレミリアは苦笑した。
 なぞなぞに答えはない。けれども結論は見えた。

「時間はかかっても必ず言葉を届けられる、か」

 誰にも聞こえないように、レミリアは虚空に言葉を乗せた。

     ◆     ◆     ◆

 見下ろした風景は小さなコロニー、小人の町と言っても差し支えなかった。
 外に並べられたテーブルには咲夜作の料理の数々が並び、家の明かりのように蝋燭が所々に並べられている。
 周りには妖精メイドたちが集い、ワイワイガヤガヤと料理をつまみつつ雑談に興じている。
 無論ここだけではなく、紅魔館の内部のそこかしこでも同様のパーティが繰り広げられている。
 今頃は咲夜もそこに混じっているか、或いはどこかで休んでいるかのどちらかだろう。

 そんな想像を働かせながら、レミリアはテラスに置かれたテーブルの上、小奇麗に並べられた料理を眺めた。
 咲夜が腕によりをかけて作ったらしいそれはまだ一口も手をつけられてはいない。
 いや正確にはまだ手をつけるわけにはいかなかった。
 レミリアがテラスにいるのも、皆の中に混じらないのも、理由があったからだ。

 キィ、と静かな音を立てて、テラスに通じる扉が開けられる。
 来たな、という感想ともうそんな時間かという感想、その二つを抱いてレミリアはやってきた人物に目を合わせた。
 平静な顔を装いつつ、その実緊張している己の胸の内を確かめつつ口を開く。

「来たわね、フランドール」
「……来いって、書いてあったから」

 仏頂面を抱えて現れたのはフランドールだった。レミリアには視線も合わせようとせず、ばつが悪そうにしている。
 ただ……小さな手にはしっかりと、レミリアが置いた手紙が握られていた。
 それは一晩かけて考えた手紙だ。試行錯誤を繰り返し、ようやく納得のいく形で完成させた手紙、自分の言葉だった。
 くずかごに失敗作の山がうず高く積まれていることは誰にも話すまいと思う。
 それだけ時間をかけて書いた文面は大層なものでもなんでもない、誰にでも書ける文章だった。

『近々パーティを開くので、その時は紅魔館のテラスに来て欲しい。一人で待っている』

 スタートラインに立つための言葉はこんなにも簡素で、しかしとても遠いところにあった。
 それでも自分は辿り着き、届けることには成功した。
 ここからだ。自分は、ここから先に進まなければならない。
 そのためにここにいるのだから。

「何の用なの」

 不自然に視線を逸らしたままフランドールは黄金色の髪を揺らし、レミリアから一番遠い椅子へと腰を下ろす。
 声には触れれば傷つくほどの棘があり、けれどもフランドール自身それをどうしていいか分からないといった様子だった。

「見せたいものがあってね」

 一言、告げる。
 取り繕う必要はなかった。今、何も言う必要はない。
 静かに時を待てばいいのだ。
 怪訝な顔つきになって首を傾げたフランドールに「すぐに分かるわ」と付け足して、それで一度会話は無くなる。
 お互いに無言になるが、空気は悪いという感じではなかった。
 フランドールは少々不機嫌そうな顔ではあるものの、見せたいもの、という言葉に興味を引かれているようであったし、
 レミリアもそれが目的であったので気詰まりだとは感じなかった。

 懐中時計を取り出し、時刻を確認する。
 なんとなく取り出してみたのだが、予定の時間までもう数分になっていた。
 存外時間が経つのが早いと思いながら、手持ち無沙汰に足をぶらぶらさせていたフランドールを手招きする。

「……やっと見せてくれるの?」
「まあ、ね。こっちに来てもらってもいいかしら」

 少し躊躇した姿勢を見せたフランドールだったが、渋々といった具合に席を立ち、レミリアへと寄ってくる。
 手すりの近く。空へと連なる境界に姉妹が並ぶ。思えば、二人で並ぶのは初めてかもしれなかった。
 フランドールも意識しているのか、困惑したように目線がちらと動いていた。
 懐中時計を仕舞い、顔を上げて空を見据える。フランドールもそれに倣った。
 温かい明かりが照らし出していた地上とは違い、空は暗く、三日月の他には米粒ほどの星々が孤独に散らばっていた。

「何があるっていうの? あのお月様にでも旅行に行くとか?」

 面白い発想だと思ったが、それはまた今度だ。
 レミリアは首を横に振った。今回はちょっと趣向が違う。
 夜空は孤独に包まれている。星と星は交じり合うことはなく、月と太陽は永遠に出会うことはない。
 だから、そこに祭りを起こしてやるのだ。少しでもお互いの孤独を紛れさせられるように。
 そして、自分達のために。

「ねぇ、だったら何だって……」

 フランドールの声はそれよりも大きな音にかき消された。
 驚いたらしいフランドールは慌てて音のする方向へと振り向いた。

 一瞬の後。夜空に大輪の花が咲いた。
 色鮮やかな虹色を思わせる光の群れが円状に広がり、眩しいくらいに輝きつつもすぐに姿を消す。
 だがすぐにそれを補うが如く、次々と空に光の花が打ち上げられ見るも壮大な花壇を作り上げてゆく。
 数秒に満たない輝きはしかし、見る者の目を釘付けにし、刹那の時間を網膜へと焼き付ける。
 熱帯夜の空気はあっという間に消し飛び、変わって華やいだ、楽しく騒がしい祭りのそれへと変貌する。
 赤。青。黄色、緑、紫……古今東西の色が現れては消え、それぞれ形を変えながらショーを披露していく。
 紅魔館の周辺を小ぢんまりとした集まりから大騒ぎの祭りへと変えさせた夜空の花の正体を――花火という。

     ◆     ◆     ◆

 よく晴れた空。一片の雲もなく、ばら撒かれた星々が世界を覆い尽くしている。
 周りには何の明かりもなく、木々が立ち並んでパチュリーを見下ろしている。
 肌を照らす三日月の光と耳をつんざく虫の大合唱に晒されながら、パチュリーは空を見上げ、目を細めた。
 いい天気だ。昼と見紛うほどの。
 普段から外に慣れていないためこの気温と温い風が辛い。既にうっすらと汗が浮かび、体も熱を持ち始めている。
 外に出てから十数分しか経っていないというのにこの有様だ。
 果たして上手くいくのだろうかと思っていると、そっと目の前にタオルが差し出された。

「パチュリー様、濡れタオルをお持ちしました」

 やや遠慮がちに差し出したのは小悪魔だ。顔に僅かに赤みが差しているのは気温のせいだけではないだろう。
 ありがとう、と微笑を返してパチュリーはパラパラとノートをめくった。
 レミリアから依頼されたことを行う予定だ。コンディションは最高。
 理論は完璧。というより今までの知識の延長上でしかないことなので成功しなければ魔法使いの名折れだ。
 魔法使いとしての自負がそれなりにあるパチュリーはふん、と鼻息も荒く気合を入れた。
 何故かくす、と小悪魔の笑う声が聞こえたような気がしたが無視することにした。

「すみませ〜ん、お待たせしましたパチュリー様〜!」

 別の意味で荒い吐息と共に現れたのは美鈴だった。背中には大きな筒を抱えている。重そうだった。

「ご苦労様。それじゃあここに置いてくれないかしら」

 美鈴が持ってきたのは大砲。大昔の代物で、いつからあったのか分からないが紅魔館の物置にあったのだ。
 月日を感じさせる黒色の砲身がずっしりとした重量感を出している。
 サイズ的には人間一人分の身長ほどはあり、どこまでも高く砲弾を飛ばせそうだ。

「はぁ〜……どうですかパチュリー様?」
「まあ私次第だけど、問題ないわね。こういうのは古ければ古いほど好都合だわ」

 スペックは問題ではない。モノに宿る魔力的要素のほうが寧ろパチュリーには重要だった。
 古いものには魂が宿る。実際には精霊や神が住み着き、魔力や妖力を気まぐれに与えることがある。
 魔力付きの武具、道具が生まれる経緯は大抵そういうものだ。
 逆に言えば魔力を注ぎやすくもなる。すなわち、これからやろうとすることには都合がいい。

「――さて、始めましょうか」

 小悪魔を下がらせ、パチュリーが手をかざす。
 神経を集中させたと同時、ぼうっと薄い光が大砲の周りを包み込んだ。
 同時に魔方陣が展開される。
 大砲には弾は入っていない。火薬のひとつもない、空っぽの筒だ。
 ならば撃ち出すべき砲弾はどこにあるのか。
 決まっている。それは……

「私たちからも、見えるでしょうか」
「見えますよ。パチュリー様のとっておきですから」

 よほど疲労していたのか、木の幹に身体を預けてへたりこんでいる美鈴の呟きに小悪魔が応じた。
 研究に没頭している間、身の回りを世話してくれていたのは小悪魔だ。
 それだけに自分を見る機会も多く、やけに自信ありげな態度も分かる。

 まあ、やるのは私なんだけど。

 砲身が上を向き、筒先が天を指し示す。無論これも魔法だ。
 光が集まってゆき、筒先を中心にして球を作り出す。
 始まりを予感したのか、美鈴と小悪魔の視線が空へと向けられる。
 二人とも期待に満ちた目だった。魔法の珍しい使い方であるだけに興味が尽きないのだろう。

「特等席よ。さあ、楽しんで眺めましょう」

 収束した光が筒の中へと入ってゆく。
 ――残すは、カウントダウンだけだ。

「……さん」

 言葉の意図を察したのか、美鈴が続ける。

「……にー」

 更に続いて、小悪魔も。

「……いち」

 その一瞬の後の光景。
 幻想郷でも滅多に見られない、美しき夜空の風靡を。
 空に浮かんだこの色を私は、いや、私達は忘れない――

     ◆     ◆     ◆

 誰もいない紅魔館の空き部屋の片隅。
 喧騒も遠く、明かりも途絶えた部屋で十六夜咲夜は一人椅子に腰掛けていた。
 部屋に差し込むのは三日月の心許ない明りのみ。
 ふぅ、と咲夜は息を吐き出す。

 ここ数日は準備やら何やらで忙しかった。メイド長としての仕事もあり、時を止めて尚心身ともに疲労していた。
 今頃妖精メイド達は騒ぎに騒ぎ、主人のレミリアもきっと今頃はよろしくやっていることだろう。
 仲直りさせるのも一苦労だわ、と保護者のような口調で呟き、やれやれと肩を竦めた。

 レミリアもフランドールも、全くの子供だ。何百年生きていようとも感情の正しいぶつけ方を知らない時点で、
 少なくとも精神的には自分よりも幼い。
 ……もっとも、それに気付いていながら何もしてこなかった我が身にも責任の一端はあるのだが。
 だから必死に考えた。きっかけを作れないかと考えた。
 お互いに孤独でありすぎるのは、悲しいから。
 自分の実年齢にそぐわないことを考えていることに気付き、咲夜は溜息の代わりに椅子に深くもたれる。

 まだそんな年でもないのに。それとも苦労を背負い過ぎているのだろうか。
 どちらでもいい、今は祭りに混ざれる気力もない。少し休ませてもらおう。
 時を止めて休憩に入ろうとしたところで――パッ、と窓に光が差し込んだ。

「……?」

 いや正確には違う。窓の外で、閃光が弾けていた。

「ああ、花火か……懐かしいわね」

 何故だかそんな言葉が口走る。どうしてだかそんなことが言いたくなったのだった。
 窓越しなので聞こえる音はどこか遠かったが、鮮明な色はそのままに目に飛び込んでくる。
 なるほど、主の考えた秘策とはこれだったらしい。
 パーティにはうってつけだと思いながら、時を止めるのはお預けにしようと咲夜は思っていた。
 この時間。夜空を共有する時間を、リアルに味わいたかったからだ。

 部屋には自分ひとり。誰もなく、料理のひとつもない味気ない場所ではあったが――
 それでも、一体感というものを確かに、咲夜は感じていた。
 これを機に、紅魔館はまた変わるのだと思う。
 騒がしく、賑やかで、まるで玩具箱をひっくり返したかのような日々が続くのだろう。
 そこに、新しいメンバーを加えて。

 今日はその記念。止めておくことは出来ずとも、この光景を記憶の片隅に、永遠に留めておくことは出来るのだと思う。
 きっと、私は命が尽きるそのときまで。
 この空の色を忘れない――

     ◆     ◆     ◆

 フランドールはぽかんとした顔つきのまま、空を彩る花の数々をじっと眺めていた。
 映る横顔からはどんなことを感じているのか読み取ることはできない。
 それでもフランドールの内面には波紋が生まれ、何かしらの感情を呼び起こさせたようだった。

「すごい……」

 ぽつりと漏らされたその呟きに、レミリアの頬が緩む。どうやら波紋が生じたのは自分もらしい。
 パチュリーは本当にいい仕事をしてくれた。
 心中とはいえ素直に称賛している自分がいるのに気付いて、レミリアはふっと笑った。
 こんな形でも笑えたのはいつ以来だっただろう。
 花火はまだ打ち続けられている。いつまでも続くのではと思わせるくらいに、花火は途切れがなかった。

「これ、私のために……?」

 振り向かないままフランドールが尋ねてくる。目が離せなくなっているのだろう。
 ええ、とレミリアは答えた。

「花火というらしいわ。どうせだから、二人で見たいと思ってね」

 実際には咲夜や美鈴、打ち上げたパチュリーなども見ているだろうがそれは気にしない。
 こういうものを独り占めするのは勿体無いからだ。
 テラスの下では花火のついての話題一色で、時折たーまやー、という声も聞こえる。
 どこで覚えたのやらと思いながら、レミリアはテーブルに置いてある料理を皿に取る。
 勿論、フランドールの分も。
 花火の色によって照らされた咲夜の料理は先ほどよりもずっと美味しそうに見えた。
 色は味付けも行えるらしい。二人分取り終えたレミリアに、フランドールの声がかかった。

「お姉様、その」
「悪かったわ」

 言われる前にレミリアは言った。この言葉だけは先に伝えておかねばならないことだった。
 先に喧嘩を仕掛けたけじめをつけたかった、ある種の意地があったのかもしれない。
 とはいえ意外すぎるほど素直にレミリアは声を紡ぎだしていた。そっけない形だったが、自分から謝ることが出来た。
 主の仮面を被ることなく、一人の姉として。

「フランだって、何も分かってないわけなかったのにね」

 記憶の底、かつて呼んでいた名前を引っ張り出す。ようやく思い出せた愛称は、思ったより親しく発していた。
 あの時は確かに自分達は家族だったのに。遅すぎる再開だと考えながら、レミリアはもう一度呼んだ。

「ごめんなさいね、フラン」

 今度は幾分か柔らかく言葉を伝えることが出来た。
 ごめんなさいという言葉が自分の体を通し、何かを洗い流していく感覚があった。
 謝罪するということは、こんなにも楽になれるものだったか。
 謝ることはすなわち敗北であると、頑なに思っていた過去の自分が可笑しなもののようにしか思えない。
 そうじゃない時だってあるというのに。

「あ……うん……私も、ごめんなさい。大嫌いなんて言っちゃって」

 いいのよ、とレミリアは微笑を返した。それだけのことをしてきた自覚はある。
 今まではそこからやり直す気さえなかった。そんな情けない話だ。

「でも、その……怖かった。ずっとお姉様は私のことを憎んでるんじゃないかって思ってたから。
 あの時も私なんかいらない、って言われた気がして……居場所がなくなった気がしたの」

 寂しさと安堵をない交ぜにした表情を向けられ、レミリアは無言で料理を差し出した。
 何を言っても言い訳にしかならないような気がしたからだ。
 それはずっと言い訳をし続けて目を背けてきたレミリアの決意の証でもあった。
 フランも無言で皿を受け取り、花火へと視線を戻した。
 流石に最初に比べて頻度は落ち、規模も小さなものへと変わっていたが、やさしい色が空を照らしていた。
 静かに流れる演奏のように、爆ぜる音が続いている。

「食べましょう。せっかくの花火パーティなんだから」

 言って、レミリアは料理を口に運んだ。一口大に切り揃えられたソテーの味が広がり、自然と笑みが零れる。
 きっとその原因は、単に咲夜が作ったものだから、というわけではないのだろう。
 それを見たフランも同じものを食べる。口に含んだ瞬間七色の羽がぴくっ、と動いた。

「……うん、美味しい……」
「でしょう?」

 ぱたぱたと羽を動かすフランに、レミリアはそう応じた。思わず美味しいと言ってしまう。
 自分だけでなく、フランもそう思ってくれている。互いの認識が一致した瞬間、心が温かくなるのを感じた。

「いつも食べてるのに、いつもより美味しい……なんでだろ」

 それは、と口を開きかけて、やはり迷う。言ってしまっていいのか、と迷う。
 けれど――フランは笑っている。幼子のように頬を緩ませている表情を見れば、正しいと思える。
 そう断じて、レミリアは答えた。

「決まってるわ。家族で一緒に食べる料理だもの。美味しくないわけが、ないわ」

 言ったと同時、何だか照れ臭くなってレミリアは夜空へと目を移した。
 どうやら打ち止めになってしまったらしく、もう花火の色は見えない。
 最後の一発を見ることが出来ず、少々残念だと思った、その時。
 一際大きな大輪の花が夜空に咲いた。
 虹色よろしく七色で彩られた花火の光景は、狙ったかのようにレミリアの瞳全てに映っていた。

「きれいだなぁ……ね、お姉様、今度はみんなも呼ばない? 魔理沙とか、霊夢とかさ」

 知らぬうちに寄って来ていたフランが自分の腕を取り、面白いことを言っていた。
 なるほど招く分にはフランも外に出さずに済むし、紅魔館主催のイベントということで株も上がる。
 既にアイデアを練り始めている自分に、やはり簡単には変わらないと思いながらも今はそれでいいと結論する。

 すぐに全てを変えなくていい。一歩ずつ、少しずつ変えていけばいいのだ。
 数百年越しに再開した家族の生活も、まだまだこれからなのだから。
 今日はその一歩に過ぎない。

 ぶつかることも、辛いことだってあるだろう。
 そのときにはこの光景を思い出せばいい。
 そうしたら、きっと私達は乗り越えていけるだろうから。
 だから。

 私は、この空の色を忘れない――
紅魔館のメンバーはいい、実にいい。
実に書き甲斐がありまする。
ということでこちらの物語を綴った次第でございます。
この物語を最後まで読んでくれた皆様には、最大の感謝を。
そして紅魔館組に幸あれ。
おーけーわん
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/05/09 23:24:51
更新日時:
2009/05/09 23:24:51
評価:
20/20
POINT:
130
Rate:
1.48
1. 8 三文字 ■2009/05/13 23:55:26
紅魔館はいいねぇ、ZUNの生み出した文化の極みだよ。
優しいお話でございました。やっぱりこの姉妹は不器用でなんぼだと思います。
不器用で仲違いをする姉妹を、周りの人妖が一生懸命にフォローし、支える。
そうして最後はハッピーエンド。
王道ですけど、やっぱいいですね。
2. 6 名前が無い程度の能力 ■2009/05/15 10:12:06
フランちゃんうふふどすえ
3. 4 パレット ■2009/05/18 00:48:15
暖かい、いい紅魔館。個人的には、ちょっとぬるま湯すぎるかなとも思いますが。
4. 9 名前が無い程度の能力 ■2009/05/19 09:35:22
姉妹の絆が取り戻せてよかったです
5. 8 神鋼 ■2009/06/02 19:27:49
文章から受けるイメージが当初は灰色にくすんでいるのに、後半の花火のシーン以降は綺麗に色付くのが圧巻でした。
作者にあやかり私も「紅魔館組に幸あれ」の一言を。
6. 6 気の所為 ■2009/06/03 17:08:07
お題ががっつり消化されていて良いですね。
花火の情景が綺麗にイメージできました。
どうでもいい話ですが花火を見て「あ、ストロンチウムだ」とか思っちゃうのは無粋でしょうか。ですよね。
7. 6 As ■2009/06/07 12:57:57
紅魔館は人数、バランス、地位などかなり整ってますからね。
物書きとしては確かに書き甲斐がありそうです。
レミリアとフランの和解の話、それの手助けをしたのが花火の色。いいお話でした。
8. 7 有文 ■2009/06/08 00:33:44
良い、実に馴染む。少しづつ素直になっていくお嬢様があったかくて良いです。
9. 6 佐藤厚志 ■2009/06/10 03:42:41
紅魔館っていうのは、家族の象徴みたいなものですね。
家族と食う飯は、うまいです。
10. 6 ふじむらりゅう ■2009/06/11 00:38:15
 よくできてました。いい話すぎるというか、仲良すぎるきらいもありましたが。
 レミリアが子どもっぽいというか器小さい感じがして、そのあたりは未熟であることを認めたくない大人、早熟を余儀なくされた子どもみたいな感じなのかも。
11. 8 ぴぃ ■2009/06/12 04:50:27
いやぁ、いい光景ですね、テラスから花火を見上げる姉妹。グッドです。
咲夜さんも外に出てくればいいのにー、なんて考えちゃいました。
12. 6 moki ■2009/06/12 18:46:47
人間食っていかなきゃ生きられない(そんな彼女たちは吸血鬼)わけで、しっかりと飯食って(血は?)地に足つけて(空飛べるけど)前へ進んでいくのがいいなぁと思いました。惜しむらくはお題の要素が薄いような。
13. 6 八重結界 ■2009/06/12 18:48:31
姉妹喧嘩の仲裁に、花火を使うというのはなかなか粋で。
紅魔館組の優しさが温かいです。
14. 7 名前が無い程度の能力 ■2009/06/12 19:09:52
咲夜さんがひとり花火をみるくだりに涙腺を刺激された。
この先が楽しみな、素敵な話でした。
15. 8 リコーダー ■2009/06/12 20:20:09
心の動きが普通より一段階突っ込んで書かれていたと思いますね。
特に気温とシンクロしているところがそれっぽいです。
そして夏は花火と。
16. 4 木村圭 ■2009/06/12 21:52:19
齢五百の大妖怪がこんな体たらくの訳がねえ!
と思いつつこれはこれでイイんだよなぁと思ってしまう私は本当にこの姉妹が大好きなようです。
17. 8 時計屋 ■2009/06/12 23:10:27
 「ああ良い物語だったなあ」という読後感のある、なんとも素晴らしいSSでした。
 文章がとても綺麗でかつ丁寧で、登場人物の挙動の一つ一つが情味に溢れています。
 レミリア、フランドールの、微妙な距離感も実によく表現されていたと思います。こうした物語には片方を一方的に責める様な描写が間々あって、ちょっと厭な感じになることがあるのですが、このSSは自省していながらどうしても一歩を踏み出せないレミリアと、そんな主に余計な口出しをせずに黙って見守るような面々という形で進められており、安心して読んでいられました。
 非常に完成度の高いSSだと思うのですが、ただ一点気にかかったのは、途中レミリア以外の人物に視点を移していたところです。作者様が何らかの効果を狙ってのことだとは思いますが、終始レミリアの一人称で語られていたほうが、移入した感情が途切れず、より物語に入り込めた気がしました。
18. 4 つくし ■2009/06/12 23:13:00
申し訳ありません、時間が差し迫っているため、採点のみにて、感想本文は後ほど改めて。
19. 7 K.M ■2009/06/12 23:14:57
仲良き事は美しき哉。やっぱり本音をぶつけるのが大事ですね。
20. 6 ハバネロ ■2009/06/12 23:16:12
食べ飽きた、とも言える料理だが、だからといって不味いわけではない
丁寧に調理されたそれらは、同じ食材であっても別の感動を与えてくれるのだ

花火の色、というよりは、紅の館が変わっていく、という点を色と判断すべきか
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