血の色なんて関係ない

作品集: 最新 投稿日時: 2009/05/09 23:28:27 更新日時: 2009/06/16 00:58:41 評価: 19/20 POINT: 75 Rate: 1.00
幻想郷の東の端に位置する博麗神社。
空は灰色。
まだ雨は降り始めていないが、今日も降るだろう。
それが梅雨と言う時期なのだから。

「今日も嫌な天気ね」

雨の降り出す前に境内の掃除を終えた博麗霊夢は自分の汗と空気の湿度による不快感を漏らしている。
この言葉は誰かに対して発したものではないように聞こえるが、あいつは私に気付いているだろう。

「よう霊夢、今日もいい天気だな」

私のほうを向いた霊夢は、少しだけ不機嫌そうな顔をする。

「こうも蒸してると文句の一つでも言いたくなるわよ。その上、暑苦しそうな奴も来るし・・・・・・」
「暑苦しそうな奴って誰のことなんだ?」
「光を吸収しそうな色の服を着てる人のことよ」

あいつは不機嫌そうな表情で私を指差した。

「それより霊夢、今日は新しい魔法を見せに来たんだ」
「どうせとてつもないマスタースパークとかでしょ、暑くなるから夏場は来ないでよ。雨雲を吹き飛ばせるなら別だけど」

霊夢はダルそうな動きで賽銭箱の前を陣取り、周囲に被害を受けて困るものはないか確認している。
これは自由にやってくれという意思表示なのだろう。
熱と光の魔法がメインだった私に対して当然の反応だ。

でも、今回のは少し違う。
あいつの驚く顔を見れるのが少しだけ楽しみだ。

「まぁ見てろって」

私は手を広げ、集中する体制を整える。
こんな感じ・・・・・・かな。
氷の冷たさといつも起こしているような爆発をイメージし、それを具現化するよう意識を傾けた。
すると、冷たい風が境内を包み込む。
そして、最後に周辺の湿気を乱暴な冷気で吹き飛ばす。

こんなものでいいだろう。

私は力強く親指を立て、やや驚いた表情をしている霊夢に目線を送った。

「魔理沙、夏は毎日来てもいいわよ」
「だろ、暑い夏を乗り切るために考えたんだぜ。私もようやく属性魔法が使えるようになったんだ」
「図書館のあの子のお陰でしょ。盗んだものは返してあげなさいよ」
「いや、まぁ否定はできないが、本は借りているだけだ」

そして霊夢は新しい魔法に対し「いつの間に」と感嘆の声をあげる。
そこに少しだけ違和感を覚えた。

私は魔法が使え、彼女は巫女ではあるが人間だ。
そこに何か差はあるのだろうか。
私はいつか、人間ではなく種族としての魔法使いになってしまうのだろうか。

「なぁ霊夢。私って魔法使いになるのかな」
「なによいきなり。魔法使いよりかはシーフやローグのほうが向いているんじゃない?」
「そういう意味じゃなくて・・・・・・。なんというか、人間から離れていってるんじゃないかと思って」

属性魔法の使用に他人の魔術書の解読。
普通の人間には、ややハードルの高いことを行っているのかもしれない。
種族というものが頭を過ぎると、急に不安になってきた。
だが、霊夢はこんな私の考えに気付く様子もなく、いつもの調子で口を開いた。

「そんなこと気にしても仕方がないじゃない、魔理沙自身、自分がどうありたいかが大切なんじゃない」
「・・・・・・なぁ、もしも私が妖怪になったら、退治するのか?」
「当たり前じゃない」

少しだけショックだった。
実際に対峙したことは数回あったが、私が妖怪になると容赦はなくなるのだろう。

「でも、それは人間や妖怪なんて関係ない。異変を起こすようなら人間でも神様でも懲らしめるってことよ」

ああ、私の考えていたことは杞憂なのだろう、
そういえば、霊夢はこういう奴なんだな。
スッと心が軽くなった気がした。
こんなことで悩んでいた自分が今では少し滑稽に思えてしまう。

「そうか、そうだよな。魔法使いになったら血の色でも変わってしまうんじゃないかと心配してた私が馬鹿みたいだ」
「そうよ、血の色なんて関係ない。人間でも人間でなくても、あなたは霧雨魔理沙じゃない」

なるほど・・・・・・そういう考えのほうが私らしいな。

「あー、やっぱ霊夢には勝てないな。しばらく修行でもしてようかな」
「それは困るわ、毎日でも来てくれなきゃ」

「え、それはどういう・・・・・・」

顔に血が上り、体温が上がっていくのを感じた。
霊夢は紅潮している私を見て、ニヤけながら口にした。

「私の『快適な夏のために』よ」
『色』といえば、いろいろなものが思い浮かびます。
天気を示す空の『色』
表情を示す顔の『色』
種族によっては血の『色』も代わってくるのかもしれません。
種族としての色の変化について、もしも人間から違う種に変わってしまうのだとしたら、どんなことを思ってしまうのか考えてみました。
考えて親友の意見を聞きたくなるくらい重い内容かもしれませんが
雑談であるかのように軽く流して貰える方が、かえって心の負担はないのかもしれません。

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>>ALLさん
もっと経験を積み、世界観を広げてもう一歩いけるよう頑張りたいと思います。
コメントどうもありがとうございました。

>>三文字さん
魔理沙が普通の娘の代名詞のような存在だったら、幻想郷は毎日大騒ぎになりそうです。
少し沈んでいるときに、いつも同じように接してくれる人こそ大切な存在なのかもしれません。
コメントありがとうございました。

>>パレットさん
もっと内容で勝負できるよう、精進していこうと思います。
着飾るのではなく、内容を掘り下げて自分の手元でリテイクしてみようと思います。
どうもありがとうございました。

>>名前が無い程度の能力さん
日常的な雰囲気を評価して頂けたのが非常に嬉しいです。
どうもありがとうございます。

>>佐藤厚志さん
『モヤシ炒め』という例えが気に入りました。
そして、七味のようなものでアクセントを加えられるよう頑張ります。
どうもありがとうございました。

>>神鋼さん
満足させられるものを作れるよう頑張っていきます。
シンプルさを評価していただけて、励みになりました。
コメントありがとうございました。

>>気の所為さん
blogで我慢できる量ってこのくらいの長さなのかもしれませんね
ありたい『理想の自分』というのがあるからこそ、悩むのかもしれません。
その『理想の自分』のことを夢というのでしょう。
頭に浮かんだことを書き並べてしまいました、ごめんなさい。

>>Asさん
たしかに「こいつ」と書いたほうがしっくり来ますね。
直してあとから「?」となるのもイカンと思うので直さず心に留めておこうと思います。
ご指導ありがとうございます。

>>笊さん
幽霊になっても、魔理沙は魔理沙であって欲しいです。
もう少しかっこいい霊夢を表現できたらいいんだけどなぁ・・・っと、欲が出てしまいそうです。
コメントありがとうございました。

>>有文さん
ダメなものはダメ。
霊夢は自分の価値観をしっかり持っているのだと勝手に解釈しています。
そんな霊夢だからこそ、色んな方(現実世界含み)に愛されているのでしょう。
コメントどうもありがとうございました。

>>ふじむらりゅうさん
テーマに対する弁解をあとがきでしてしまうくらい、強引であったと反省しています。
読みやすかったと言って頂けて、書いた自分自身も報われた気分になりました。
どうもありがとうございました。

>>上泉 涼さん
上泉さんのコメントを読んで、意味も無く友達の家に通っていた子供時代を思い出しました。
お互いに依存はしていないけど、一緒にいてどこか楽しい。
そういう関係を友達と呼ぶのかもしれません。
コメントありがとうございました。

>>ぴぃさん
もう少し内容を広げられるよう、頭の柔軟体操をしていこうと思います。
テーマを上手に活かせるようにもしなければなりませんね。
コメントありがとうございました。

>>名前が無い程度の能力さん-2
「良かった」というひと言が、非常に嬉しいです。
どうもありがとうございます。

>>mokiさん
魔理沙にリクエストすると、スパークされてしまいそうですが・・・・・・
これからは除湿機と冷房の欲しい季節になりますね。
体を壊さないよう、夏を乗り切っていきましょう。
コメントありがとうございました。

>>八重結界さん
心地良いと感じ取って頂けたのが非常に嬉しいです。
もっと色々な話を作れるよう、頑張っていこうと思います。
どうもありがとうございました。

>>木村圭さん
最初にタイトルを思いついてしまい、そっから連想させていったため
最終的にはやや外れた内容になってしまったのかもしれません。
名は体を表すと言いますし、内容と同様にシンプルにいけたほうが良かったと反省しています。
ご指導ありがとうございました。

>>K.Mさん
何事もなく、また次の日も同じような日が繰り返されることが幸せなのかもしれません。
原作のキャラ設定は深くても、本編は(話が)あっさりしているところが私は好きです。
コメントありがとうございました。

>>時計屋さん
〆が在り来たりで、捻りが足りないというのは反省すべき点ですね。
もう一歩踏み込めるよう、努力していきます。
どうもありがとうございました。

>>つくしさん
採点だけでも急いでつけてくださってありがとうございます。
感想本文が記入されてから、改めて返信させていただきます。
どうもありがとうございました。

>>ハバネロさん
「そうなんだろう」のひと言でも頂けるのが嬉しいです。
感想を頂けないというのが、書き手にとって一番辛いことだと思うので
コメントを入れて頂けるだけでも励みになります。
どうもありがとうございました。

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読んでくださった方、コメントを残してくださった方、どうもありがとうございました。
量による指摘が多く、自分の技量不足をヒシヒシと感じました。
それも「もっと読んでみたい」という激励の言葉だと拡大解釈して、頑張りたいと思います。

多くの書き手の方に書いていただけたことが、非常に励みになりました。
私自身は萎縮してしまい、感想は書いていませんが
このコンペを100パーセント楽しむのなら、採点感想まで入れなければ・・・・・・と感じました。
次回からは積極的に参加していきます!

最後に
このコンペに関わるすべての方、本当にお疲れ様でした。
次回も楽しみにしています。
それでは、失礼します。
uto
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/05/09 23:28:27
更新日時:
2009/06/16 00:58:41
評価:
19/20
POINT:
75
Rate:
1.00
1. 5 ALL ■2009/05/13 21:49:26
オチは好みな感じです。ただ私的にはもう少し長さが欲しいところです。
2. 5 三文字 ■2009/05/13 23:18:53
確かに普通の娘にしては色々できるよなぁ、魔理沙。十数年くらいしか生きてない人間なのに、魔女やら吸血鬼やら妖怪に勝つし。
てか、霊夢とかもすでに化け物染みているから、今更人間とかにこだわらないと思われ。
3. 1 パレット ■2009/05/18 00:49:26
良い意味でも悪い意味でも軽く読めてしまうお話かなあと。
4. 8 名前が無い程度の能力 ■2009/05/19 10:00:20
やっぱり霊夢と魔理沙のやりとりはこんな感じがお似合いですね
5. 5 佐藤厚志 ■2009/06/01 01:34:47
穏やかなやり取り中に、キャラクタの明朗快活、磊落な気質が窺える。東方の特徴だろうか。
まるでモヤシ炒めのように、あっさり、かつ短い中に力強さがありました。
6. 5 神鋼 ■2009/06/02 19:34:27
ちょっと物足りないですが引き締まったいい味付けでした。
7. 4 気の所為 ■2009/06/03 17:13:44
このくらいの長さでちょうどいい感じですね。
悩みは深刻に話すと深刻になってしまうんですよね分かります。
8. 5 As ■2009/06/07 12:59:28
最初のほうですが、魔理沙が霊夢を「あいつ」と表しているので変な距離を感じました。
魔理沙と霊夢が話しているのを魔理沙が見ているような、
上手く言い表せませんが会話が始まってからは「こいつ」で良かった気がします。細かいことですが。
9. 5 有文 ■2009/06/08 00:27:48
青だの赤だの血の色なんて関係ないんだ。重要なのはどんな人間かだ、って言葉を思い出しました。しかし、非常に霊夢らしいですね。
10. 4 ふじむらりゅう ■2009/06/11 22:18:41
 色の使い方が強引すぎた。
 シンプルな感じで、余計なものが一切なく読みやすかったです。
11. 4 上泉 涼 ■2009/06/12 02:32:47
やはり霊夢はこれくらいさっぱりとしているのがいいですね。こんな霊夢だからこそ、魔理沙も日々通ってしまう、と。
12. 5 ぴぃ ■2009/06/12 04:53:39
実に軽くて爽やか。
これだけでもいいですけど、あえてこれを前菜にし、主菜とデザートを加えた大きなストーリーも面白そう。
13. 3 名前が無い程度の能力 ■2009/06/12 16:54:19
良かった
14. 3 moki ■2009/06/12 18:45:11
魔理沙さん、この夏はウチに来て是非コールドインフェルノをお願いします。
15. 4 八重結界 ■2009/06/12 18:51:07
ほのぼのとした二人の雰囲気が、とても心地よかったです。
16. 2 木村圭 ■2009/06/12 21:52:41
とてつもないマスタースパーク吹いた。
タイトルがちょっと野暮ったい感じ。ひと単語ふた単語でスパッとやってもらえると作品全体がもっと締まったものになりそう。
17. 3 K.M ■2009/06/12 23:10:22
冷房扱いかもしれないが、まぁみんな幸せならそれがいいんでしょうね。
18. 2 時計屋 ■2009/06/12 23:11:56
 うーん、いまいちオチが効いてないような……。
19. 2 つくし ■2009/06/12 23:14:43
申し訳ありません、時間が差し迫っているため、採点のみにて、感想本文は後ほど改めて。
20. フリーレス ハバネロ ■2009/06/12 23:18:50
異変と退治の定義次第だが、魔理沙が異変の主になって、幻想郷に影響を及ぼすなら巫女の出番になるのだろう

「そうなんだろう」の一言以外が出てこない
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