色は匂えどHを

作品集: 最新 投稿日時: 2009/05/09 23:39:31 更新日時: 2009/05/09 23:39:31 評価: 24/25 POINT: 123 Rate: 1.18
 紅魔湖のほとりで、チルノは悩んでいた。
 足りない頭を懸命に働かせて考えていた。

「ああ〜もう!」
「イラついてるね。どうしたの、チルノちゃん?」
「あー、大ちゃん。こんちわー」
「こんにちわ、チルノちゃん。大丈夫?」
「うん、平気ー」

 心配そうに尋ねる大妖精。
 答えるチルノの表情は、やはりさえない。

「なにかあったの?」

 大妖精は問う。何があったのとは聞かない。なにもなくてもむしゃくしゃしてたりするのがチルノという妖精だ。
 しかし果たして今回は、彼女には理由があるようだった。
 チルノはしばらく考え、空を見上げながら、

「ねぇ大ちゃん。色ってどんな匂いがするんだろう?」

 なんて、とても形而上学的な疑問を唱えた。

「………」

 そっと、大妖精はチルノの額に手を当てた。
 どうやら熱はないらしい。その事実に大妖精は涙する。
 ああ、熱にうなされたわけでもなく、とうとう真正になってしまったか。いや元からか。
 嘆き悲しむ大妖精を横に、チルノは続ける。

「この前お散歩してたら、人間の子供が歌ってたんだ。色を匂え〜って」
「へ?」

 素っ頓狂な声を上げる大妖精。目の前の妖精だけならまだしも、人間の子供はそこまで脳が足りないわけがない。
 故に大妖精は考える。子供が歌っていたというその歌はなんなのか。色を匂え。いろをにおえ。いろ、におえ……

「ひょっとして、いろは歌?」

 同じ種族とは思えない回転で、大妖精は結論をはじき出した。

「大ちゃん、いろはうたってなに?」
「いろは歌っていうのはね」

 いろは歌とは、手習い歌の一つである。手習い歌というのは、日本語を覚えるためにすべての仮名を使って作られる歌のことだが、いろは歌は中でも最高傑作であり、手習い歌の代表といえる。

 いろはにほへとちるぬるを
 わかよたれそつねならむ
 ういのおくやまけふこえて
 あさきゆめみしゑひもせす


 手習い歌なので通常はひらがなで表記するが、歌詞を読むとすると以下のようになる。

 色は匂へど 散りぬるを
 我が世誰ぞ 常ならむ
 有為の奥山 今日越えて
 浅き夢見し 酔ひもせず


 意味としては、世の儚さを説いた歌であると言われる。仏教の『諸行無常』を読み替えたものであり、生あるモノは必ず死ぬ、永遠に変わらないモノなどこの世にはないのだという内容だ。
 他にもある法則で文字を区切って最後の文字を並べると、『咎なくて死す』という文章が浮かび上がるなどの暗号説もある。

「昔の人が創ったすごい歌なのよ」
「そっか! まさにサイキョーのあたいにぴったりね!」

 そんなことを言っても理解できないだろうから、大妖精は最低限のことだけ教えた。
 これ以上の内容はチルノの頭がパンクする。泣けるほどに小さな容量だ。

「でも、色を匂うだなんて変な歌ね。昔の人はバカだなあ」
「そうだねぇ」

 昔の人が聞いたら、お前にだけは言われたくないと泣きながら訴えるだろう。

「お尻とかヨダレまで出てくるし。最初聞いた時はなに言ってるのか分からなかったわ」
「そうだね……え?」

 お尻? ヨダレ? そんなのいろは歌に出てきたっけ?
 大妖精は一度思い返して、やはり出てきてないと結論する。
 となると、あとは目の前のチビ助が勘違いしていることになるのだが……

「チルノちゃん。お尻とかヨダレって何?」
「なに言ってるの大ちゃん。歌の続きで言ってるじゃない」
「ごめん、私ちょっとド忘れしちゃった。歌ってくれないかな?」
「しょうがないなぁ。いい、じゃ、歌うよ?
 色は匂えと 尻塗るお( ^ω^)
「待て」

 思わず命令口調で突っ込んだ。
 一体なんだその歌詞は。なにが起こった。どういうことだ。
 空耳にしてもひどい。というか( ^ω^) ってなんだ( ^ω^) って。
 訂正しようとしたが、これ以降も同様のひどい歌詞変革が起こっている可能性は否定できない。ていうか絶対起こってる。
 なら、訂正は最後にまとめてやってしまおう。逐一直しても、途中でチルノがへそを曲げるのは目に見えている。そもそも何度もチルノを納得させるような無駄な苦労をしたくはない。6ボスに弾幕勝負仕掛けたほうがまだましだ。

「……いや、ごめん。続けて」
「うん。じゃぁ。もう一回最初から。

 色は匂えと 尻塗るお( ^ω^)
 我がヨダレ乙へなら運
 Wiiの奥や魔境越えて
 朝餉夕飯似非のZUN


 で、意味考えたんだけど――大ちゃん?」

 チルノが視線を戻すと、そこには見事なまでに失意体前屈な大妖精の姿があったorz

 ――この歌詞を見てくれ。こいつをどう思う?
 ――すごく……Hです。

 なんだか変な音声が大妖精の頭をよぎったが、それをおかしいと感じる余裕は、今の彼女にはない。
 わかっていたことだが、まさかこれほどの変革を遂げようとは。げに恐ろしきはHか。
 しかも意味を考えたとな。このカオス歌詞に意味を見出したとな!?

「……意味なんてあるの?」
「もちろん! サイキョーのあたいくらいにしかこの歌は読み解けないわ! えっとね、内容はね」
「待って! ごめん待ってチルノちゃん! あたしに覚悟を決める時間をちょうだい!」

 大妖精はチルノに背を向け、深呼吸を三回。……OK、呼吸は整った。後は覚悟だけだ。
 歌詞で既にこれだけの混沌っぷりを見せつけるHだ。その解釈ともあれば混沌を通り越し、宇宙を一巡してさらに半周してより大きな混沌となること間違いない。
 すでに先のカオスで残機が半分を切っている彼女にしてみればまさに死活問題。ボム? そんなのすでに使い切ったわ。
 しかし、そう。先とは違い、すでにひどいカオスっぷりであることは判っているのだ。判っているのなら、それに対する気構えも変わろうというもの。
 ………………………………………………………………よし。覚悟、完了。

「いいよ、チルノちゃん。説明して。矢でも槍でもどんと来いだわ。耐えきってみせる」
「大ちゃんなにをそんな必死に……ああ、あたいの説明を聞きたくて堪らないんだね! もう、しかたがないなぁ大ちゃんは。教えてあげるから、ちゃんと聞いててね」

 にこやかに笑いながら――怯えすくむ大妖精の様子には気付かない――、チルノは自説を公開する。

「まず、色を匂うってことからこいつは人間じゃないわね。妖怪でもない。きっと宇宙人よ宇宙人。どこの星かまでは分かんないけど、きっとすっごい遠くから来たに違いないわ! あたいたちが目で見る色を匂いとして感じ取る、とっても変な生き物なのよ!
 で、この宇宙人は気に入った色、つまりそいつらにしてみれば匂いね、それをお尻に塗るわけよ。
 でも、ただ塗るだけじゃないの。自分のヨダレを混ぜるのよ! ほら、虫や鳥が彼女作る時に出す臭いがあるじゃない。ポケモンだったっけ? お尻に塗ったヨダレと色はこのポケモンなわけ。あたいったらあったまいい!
 乙ってのは相手ってことなんだ。ほら、甲乙って自分と相手って意味があるでしょ? それくらい知ってるんだよあたいってすごい!
 で、このポケモンを乙――つまり相手が気に入ればカップル成立。運がいいねってこと。
 そうしてめでたくカップルとなった二人はいよいよ結婚! そのために男のほうは強いってことをみんなに教えなくちゃいけないわけ。そこで男はその宇宙人たちにとっての聖地であるWiiってところの奥地まで行ったり、魔境を越えたりいろんな冒険を繰り広げるのよ!
 その間、女のほうは朝ごはんや夕御飯をつくりながら旦那の帰りを待つってわけ。
 そんな宇宙人『ZUN』の生態を、この歌は教えている――とみせかけて、その『ZUN』には寄生体が取りついた偽物がいるぞという警告も加えているのよ!! どうよ、あたいの考えは? ばっちりでしょあたいってすごい! 天才! サイッキョー!!」
「………………」
「あれ? 大ちゃん? なにうつ伏せでFまき散らしながらぴくぴくしてるの? 大ちゃんってばぁ」
「………………ごめんなさい無理でした」

 ピチューン




























 コンティニュ〜?
  あと3回
   はい
 →いいえ



 終わらせてくださいm(_ _)m
テーマは色 → 色は匂えどでなにか → 諸行無常な感じで → でもチルノは1000年経っても変わらなそうだよな → チルノ的いろは歌ってどんなんだろ?

そんな連想から生じた作品。というかネタ。
空耳いろは歌を考えてる時が一番楽しかった。Wiiの奥地なら任○堂か。そこにとってよくないイメージの魔境といえばライバル的な意味でP○3かな? みたいな。
ぶっちゃけ調子に乗ったと思ってる。反省はしていない。
でもチルノならこのくらい平気でやっちゃうと思うんだ。大ちゃんも大変だね!
oka
http://www.geocities.jp/junwahu/
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/05/09 23:39:31
更新日時:
2009/05/09 23:39:31
評価:
24/25
POINT:
123
Rate:
1.18
1. 10 名前が無い程度の能力 ■2009/05/11 16:42:47
笑わせてもらったお( ^ω^)wwwww
2. 6 三文字 ■2009/05/12 01:31:01
そうか……宇宙人の顔って( ^ω^) だったのか……
いろは歌をここまで改変できる脳味噌に乾杯。
3. 9 名前が無い程度の能力 ■2009/05/13 08:26:56
H
4. 6 ユッキー ■2009/05/14 23:29:45
もうその空耳がすげぇしその内容も答えるあたりもっとすげぇwww
5. 6 名前が無い程度の能力 ■2009/05/15 09:45:05
ボリューム満点な作品だらけの中で、よい息抜きになりましたどすえ
6. 1 パレット ■2009/05/18 00:51:11
「似非のZUN」は他に比べても無理があるような。
7. 6 名前が無い程度の能力 ■2009/05/19 12:56:49
ダメだこりゃ(ドリフ風に)
8. 6 らしう ■2009/05/22 01:49:01
すばらしい一発ネタをありがとうございました^q^
9. 4 神鋼 ■2009/06/03 01:07:29
よっしゃ作者はケツを出せ、再調教だ。
10. 6 気の所為 ■2009/06/03 17:28:04
( ^ω^)が出オチ過ぎるw
しかしあそこまで訳が出来るチルノは本当に頭がいいのではないかと思いました。
11. 8 名前が無い程度の能力 ■2009/06/07 00:11:56
( ^ω^)でくそ吹いたww
面白かったです!
12. 5 As ■2009/06/07 13:02:55
さすがチルノとしかいいようがないw
13. 5 有文 ■2009/06/08 00:21:24
ちょっと待て。
いや、やっぱ待たなくて良いです。チルノだし。
14. 8 佐藤厚志 ■2009/06/10 02:49:28
「ねぇ大ちゃん。色ってどんな匂いがするんだろう?」
この文章は素晴らしい。

と思ったらその後で笑ってしまいました。
何じゃそりゃあって。コーリンファイブと双璧を為すギャグ小説でした。
15. 2 ふじむらりゅう ■2009/06/12 00:05:30
 まあチルノらしいといえばらしい。
 おもしろ……くはなかったかな。
16. 5 上泉 涼 ■2009/06/12 02:35:48
下らないのに……( ^ω^) で笑ってしまった……。
それと、頑張れ大ちゃんw
17. 3 ぴぃ ■2009/06/12 04:59:16
大ちゃんの「待て」の声と完全にシンクロしました!
18. 4 moki ■2009/06/12 18:43:08
その空耳っぷりはやばいw というかキバヤシHだな。
19. 4 八重結界 ■2009/06/12 19:05:36
大ちゃん賢いなあ。そして、チルノが何を言っているのか私にはとても理解できませんでした。
さすが最強……なのか。
20. 3 リコーダー ■2009/06/12 19:11:54
大ちゃんふぁいと。
最後一切の突っ込みもなくチルノ解釈がダーってなってるのは要するに大ちゃんが挫けたからなんでしょうが、やっぱり適度に突っ込んで貰った方が文章としてはまともに感じます。
21. 5 どうたく ■2009/06/12 21:35:47
 なんていうHww
 小説の内容よりも色は匂えと 尻塗るお( ^ω^)
 我がヨダレ乙へなら運
 Wiiの奥や魔境越えて
 朝餉夕飯似非のZUN
 に命をかけた作品だと思いましたwww
 
22. 5 K.M ■2009/06/12 23:08:49
予想以上に学ある本音がアレな大妖精ちゃんとどこまでもHなチルノの対比、面白かったです。ってか空耳が色々と反則過ぐるww
23. 5 時計屋 ■2009/06/12 23:14:00
 不覚にもZUNに吹いた。
 いや強引過ぎる、強引過ぎるから。
 しかしあなたの発想には脱帽するしかないです。
 良質な一発ネタでした。
24. 1 つくし ■2009/06/12 23:15:46
申し訳ありません、時間が差し迫っているため、採点のみにて、感想本文は後ほど改めて。
25. フリーレス ハバネロ ■2009/06/12 23:21:45
ここまで捩れればむしろ潔い
名前 メール
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