福は雲の如し

作品集: 最新 投稿日時: 2009/11/20 04:42:17 更新日時: 2010/01/17 21:19:18 評価: 22/22 POINT: 96 Rate: 1.05
『福は雲の如し』














妖怪はいいよね。異変起こせてさ。
巫女にも相手にされるし・・・・・・。
私達は異変なんて起こせないし、巫女にも相手にされてないのよね。
このまま消えちゃうのかな?
幻想郷に居られなくなったら、私達はどこに行くのだろう。
どこにも行くところないのかな?

え? 手伝ってくれるの?

あなたが手伝ってくれるのなら、私達でも異変起こせそうね。

あはは、今から楽しみよ。




















「暑いわね」


幻想郷の東端にある博麗神社。その境内では今日も巫女が縁側に座ってだれていた。
だれていながらも膝をちゃんとつけて座っているいるあたり、やはり年頃の少女というところであろうか。
今は葉月にさしかかろうとしている頃である。暑いのは当たり前のことであった。

「そりゃ夏だからな」

そんな博麗霊夢の隣に座って話相手をしているのは、普通の魔法使い霧雨魔理沙である。
正確には煎餅をはさんで隣に座っている。
今日は朝からずっと神社にいて、お茶の相手をしていた。

「そうだけど、暑すぎない?」
「まぁ、最近ずっと晴れているからな」
「こないだ雨が降ったのって二週間くらい前よね」

霊夢がお茶を自分の湯飲みに注ぎながら、魔理沙に確認する。
夏に入ってから雨が全く降っていない。
それどころか毎日雲ひとつ無い快晴になっている。
いや、実際には妖怪の山の頂に一つだけ雲が出ているのだが。

「それぐらいかな」
「んー、やっぱり異変かな」

霊夢が口にした異変と言う単語に、煎餅に伸ばそうとしていた魔理沙の手がピクリと反応した。

そもそも魔理沙が頻繁に神社に来る理由の一つは、妖怪退治の依頼を横取りするためである。
その中でも異変解決は報酬も大きいのだから、異変が起これば願ったり叶ったりであった。
そして、確信はないものの異変の可能性が高いと、魔理沙は踏んでいた。
異変なら霊夢の周りに何か動きがあるかもしれない、そう考えて魔理沙は神社に詰めていたのだ。

「異変だったら私が解決しといてやるから、大人しくお茶を飲んでいればいいぜ」
「そうもいかないわよ」

と言いつつ、やっぱりお茶を飲む霊夢であった。

夏真っ盛りなのに、夕立すら降らないというのは確かに珍しい。
もちろん、ただの異常気象という可能性もあるが、それにしては何か変だと霊夢の勘は告げていた。
異変の可能性は十分にある。そして、異変であれば犯人はあいつだろう、と考えていた。
そんなことを考えていると、霊夢の目の前に見知った顔がぬっと現れた。
空間に隙間を開け顔だけ覗かせたのは、妖怪の賢者八雲紫である。
霊夢はわざとらしく大きな溜息をついた。

「はぁ、そうなのね」

大体において紫が霊夢の前に現れるときはよからぬことが起こるとき、もしくは起こっているときである。
今回も十中八九よからぬこと、つまり異変であると容易に想像がついてしまう。

「まだ何も言ってないわよ」

紫がにこりと笑顔を見せながら言った。

「あんたが現れたってことは異変なんでしょ?」
「ふふ、そうかもしれないわね。でもそうじゃないかもしれない」

扇子で口元を隠しながらいかにも胡散臭い笑顔で紫が言う。

「あんたにもわからないの?」
「まぁ、異変は異変よ。ちゃんと起きているから解決してきなさいな」

と言いながら、紫は霊夢の背後に隙間をもう一つ開く。
そして、その隙間から霊夢に気付かれないようにそっと手を伸ばし、煎餅を一枚掴む。

紫の言い方がちょっと引っかかる霊夢であったが、異変なら解決するしかない。

「仕事だからね、やるわよ。異変は即解決。盗人妖怪は即退治よ」

と言うと霊夢は不敵な笑みを浮かべ、スペルカードを一枚取り出した。
紫はあわてて煎餅を戻し、隙間に手と顔を引っ込め、空間を元に戻す。
霊夢はスペルカードを元に戻すと、再びお茶を飲むという重要任務に戻った。

そんな霊夢に、魔理沙が話しかける。

「よし、やっぱり異変なんだな。それじゃ行くぜ」

そう言うと、魔理沙はまだ一口しか口にしていない煎餅を元に戻し、傍に置いていた帽子に手を掛ける。
霊夢はその食べさしの煎餅に手を伸ばしながら答える。

「はいはい、行ってらっしゃい」

霊夢は口先だけで返事をすると、その煎餅を齧った。

そして、霊夢は勘を働かせ始める。
今回の犯人はわかりきっている。でも問題はどこにいるかだと霊夢は感じていた。
正確にはいつどこで捕捉すればよいか、そこが今回の異変の肝であろうと。

「なんだ、霊夢は行かないのか」
「ん、どこに?」
「異変解決に」
「異変は解決するわよ」
「そうか。ま、呑気に構えていればいいさ。私が解決してきてやる」
「頑張ってきなさいな」

魔理沙は意気揚々と箒に乗って飛んでいった。しかし、霊夢は空になった湯飲みに、また、お茶を注いでいた。




















「咲夜、今日も天気が悪いわね」

朝の紅茶を飲みながら、極めて不機嫌そうに羽をバサバサさせているのは、紅魔館の主レミリア・スカーレットである。
いつもは魔法で雨と太陽を避けている紅魔館であったが、ここしばらくは魔法に効果がなく快晴となっていた。
レミリアが不機嫌なのはそのせいである。
なぜなら、レミリアは吸血鬼であり、吸血鬼は日光に弱い。だから、晴天が続くと不機嫌になる。
こういうときに吸血鬼に近づくと危ない。八つ当たりされるかもしれない。

「そうですね。ずっと晴れています」

そんなレミリア相手に愛想よく答えているのは、紅魔館唯一の人間であり、メイド長である十六夜咲夜。
幼い主をあやすのも彼女の仕事のひとつである。
咲夜は紅魔館の保護者のようなものであり、実質的に紅魔館を取り仕切っている。

「で、いつまで呑気に構えている気?」
「今回は犯人もわかりきっていますから。そんなにあわてて解決してしまっては首謀者に悪いですよ」

最近はあまり動く事はないのだが、咲夜は異変解決も兼業している。
そして、今回はレミリアに実害があるし、何より犯人のことが咲夜は気に入らない。
だから、思う存分懲らしめてやろうと思っていた。
ただ、相手が強すぎる。だから、自分ひとりでは十分に懲らしめることは出来ない、とも思っていた。
そこで、霊夢が動きだすのを待っていたのだが。

「こんな天気のまま放っておいて、私に悪いとは思わないの?」

と言いながら、レミリアは乱暴にティーカップをテーブルへと降ろす。
咲夜はティーカップがテーブルにぶつかる寸前に時を止め、レミリアの手からティーカップを離し軟着陸させた。
レミリアはテーブルを強く叩くだけの結果となった。
咲夜はレミリアに言葉を返す。

「あら、日傘があれば別に晴れていてもいいじゃないですか」
「そうだけどさ、気分は悪いよ」

レミリアは羽を大きくバサっと広げた。近くに控えていた妖精メイドが一匹、壁に叩きつけられ泣きそうになっている。
そんなレミリアの様子を見て、咲夜はレミリアの機嫌が自分の想定以上に悪くなっていると判断した。
まだ動きたくない咲夜であったが、これ以上、主の不機嫌を放置して不興を買ってはつまらない。
咲夜は異変解決にすぐさま動くことにした。

「そうですか。それではそろそろ異変解決に行ってきましょう」
「ああ、行っておいで。そうそう、今度はここに連れてきてよ。私の鬱憤を全てぶち込んでやるから」

レミリアは羽をたたんだ。一時的なものに過ぎないとはいえ、イライラが収まったようだ。
そして、レミリアが直々に懲らしめてくれるのなら、霊夢を待つ必要もない。
咲夜はそう考え、それだったらさっさと解決してしまえばいいと思った。
そして、今回は犯人もその犯人の居場所もわかりきっているのだから、すぐに解決できる、とも思っていた。

「それではそのようにいたします。きっと喜んでついてくるでしょう」

そうレミリアに告げると、咲夜は異変解決に向かったのであった。

レミリアは妖精メイドに紅茶のおかわりを注がせながら、霧の湖上空を飛んでいく咲夜を眺めていた。
着替えを用意していないところを見ると一日で解決するつもりらしい、などと考えながら。






「さて、来てみたけれど、どこにいるのかしらね」

咲夜は紅魔館を出るとまっすぐに天界に来た。
妖怪の山には緋色の雲が出ている上に、その緋色の雲に向かって気も集められていたから。
ただ、今回は全ての者の気が集められているわけではなく、晴れの気だけを集めているようである。
ここまで状況が見えていれば犯人は明白であった。
かつて緋想の剣で気を集め、地震を起し、博麗神社を倒壊させた天人、比那名居天子である。

比那名居天子は非想天という天界に住む天人である。
天人は通常修行を積んでなるのであるが、天子はぐーたらである。
ただ、比那名居家という名家の総領娘であるというだけで天人になった。
天界では桃を食べたり、歌を歌ったり、踊りを踊ったりして生活をしているらしい。うらやましい限りである。
そして、天子は地上でもよく見かける天人である。とても迷惑。

その天子は気の流れを追えば見つかるはずであった。

「おお、メイド。酒か?酒持ってきてくれたのか?」

天界に来た咲夜を出迎えてくれたのは天子ではなく、鬼の四天王の一人伊吹萃香であった。
地震の異変以来天界の一角を自分の土地だと言い張って居ついている。

「ちょっとですね、懲らしめなきゃいけない天人がいるのですが、見かけませんでしたか?」
「ん?その懲らしめなきゃいけない天人なら暫く見てないな」

と言うと、杯になみなみと酒を注ぎ、咲夜に突き出した。おい飲め、と言わんばかりに。
咲夜はその杯を受け取ると、一気に飲み干した。

「そうですか。ここに居ると思って真っ先に来たのですが」

咲夜は萃香に杯を返しながら言った。
気は雲で消えている。
そして、雲が妖怪の山に出来ている以上、天子はその先、つまり、天界にいると咲夜はふんでいたのだが。

「多分、天界にはいないよ。なんだい、あいつまた何かやったのか?」

そう言いながら、萃香は再び杯に酒を注ぐ。
しかし、今度は咲夜に渡さずに、自分の口元へと運んだ。

「ええ、ちょいとおいたが過ぎますので、拉致しにきたのですけど」
「懲らしめるだけじゃないのか?」

萃香が酒を飲む手を休め、咲夜に問いかけた。

「今回はお嬢様が直々に懲らしめてくださるのですよ」
「ほぉ、それは面白そうだな。私も楽しみにしておくよ」

そう言うと、萃香は杯を放り出し、瓢箪に直接口をつけた。そしてぐびぐび酒を飲むと寝てしまった。
咲夜は天界にいても天子の居場所がつかめそうにないと判断して、妖怪の山へと降りていった。
着替えを取りに戻ろうかしら、などと考えながら。

















妖怪の山の頂にある神社、守矢神社。
守矢神社は先年、神社ごと外の世界から引っ越してきた。
守矢神社には実体のある神が二柱いる。
一柱は八坂神奈子である。
地下に間欠泉管理センターを設け、妖怪の山にエネルギー革命を起した神様でもある。
もう一柱は洩矢諏訪子。
こちらは河童のバザーで披露された非想天則を設計したり、命蓮寺の建設に協力した神様である。
そして、もう一人。風祝である東風谷早苗がいる。
東風谷早苗は人間であるが同時に神であるという一子相伝の現人神の末裔で、奇跡を起す程度の能力がある。
しかし、その奇跡とは神の力を借りて風を起すことであり、大したことはできないようだ。
また、博麗の巫女よりも真面目に巫女をやっているというのが、もっぱらの評判である。

その守矢神社の一室である神奈子の部屋。

「神奈子様、今よろしいでしょうか」

障子を開け放って風を入れている部屋の前で、早苗は正座し、神奈子に声をかけた。

「ん、なんだい早苗」

早苗は座した姿勢のまま部屋に入ると、神奈子に正対し目を捉えて話し始める。

「これは異変なのでしょうか?」
「天気のことかい?」
「はい」

ずっと晴れている。ただ晴れているだけならただの異常気象だが、早苗は不自然なものを感じていた。
天気が動いていない、そう感じていたのである。

「異変だろうね」
「やっぱりそうですか。それでは異変解決に行ってこようと思います」

早苗の提案を受けて、神奈子は腕を組み目をつぶると考えるそぶりをみせた。
そして、決意したように目を開くと早苗に告げた。

「そうか、気をつけてな」
「はい」

神奈子は了承した。気になることもあったのだが、早苗の意思を尊重したいと思ったから。

早苗は神奈子の了承を貰うと、諏訪子の部屋に報告しにいった。
今回は異変である以上、勝手に動く事は早苗としては憚れたのであろう。

「諏訪子様、異変解決に行って参ります」

諏訪子は眉間に皺を寄せながら、こう聞き返してきた。

「天気の異変かい?神奈子はどういってるのさ」

早苗は諏訪子の怪訝な表情に違和感を覚えた。

「はい、天気の異変です。神奈子様は行って来いと仰っています」

ますます、諏訪子の眉と眉がさらに近づいた。
諏訪子は自分の不機嫌をまったく隠すつもりがないらしい。

「そうかい、それじゃ行っておいで」

そう言うと、諏訪子は早苗に退室を促し、そっぽを向いてしまった。

「はい、それでは行ってまいります」

異常に不機嫌な諏訪子に、早苗はあっけにとられながら諏訪子の部屋を出た。
しかし、早苗は諏訪子の真意をはかりかねたものの、止められたわけではないので予定通り解決に向かう事にした。
早苗は妖怪退治の準備を整え、守矢神社を飛び出していった。






神社を出て妖怪の山を下りた早苗は、当ても無く飛び回っていた。
そこへ何者かが突然目の前に飛び出してきた。

「おどろけー」

傘の付喪神、多々良小傘である。
付喪神とは厳密に言えば神なのであるが、妖怪と思っていて差し支えない。
小傘は人間を驚かせる事で栄養を得るタイプの妖怪である。
特徴としてはいつも傘を持っているが、その傘は古臭い上にとても趣味が悪い。
割と何処にでも出没し、人里でも見かける。
ただ、驚かされたという話はあまり聞かない。

「だからそんなんでは驚かないですよ」
「じゃ、驚いて!」
「いや、言い方の問題じゃないです」
「やっぱり、弾幕ね!」

小傘は傘をくるりと回し、弾幕を放とうとする。
弾幕ごっこが浸透しているのはいいが、空腹を弾幕で解決できるわけではない。

「はいはい、他所でやってください。今日は忙しいのですよ」

早苗が小傘の相手をせずに去ろうとする。しかし、小傘が早苗の進路に立ちはだかった。

「また異変?だからってそんなに急がなくてもいいじゃない。遊んでいってよ」
「異変ですよ。なのでさっさと解決しないといけないのです」

小傘は少し考えるそぶりを見せた。
早苗は、さっさと退治したほうが早いかな、などと考えながら、小傘を眺めていた。

「私も手伝ってあげる」
「えっ」
「驚いたー」

小傘の想定外の申し出に、早苗は完全に意表をつかれた。
小傘は無邪気に喜ぶ。そんな小傘を早苗は可愛いと思った。
こうして、小傘は早苗の異変解決についていく事になった。






一方、早苗が異変解決に出て行ったあとの守矢神社では、神奈子の部屋に諏訪子が来ていた。

「神奈子、どういうつもりだい?」

神奈子の前に仁王立ちした諏訪子が、仏頂面で神奈子に問う。

「ん、なにが」

神奈子はそんな諏訪子を目の前にし、座ったまま諏訪子に応じる。
ちょっと困ったな、と思いながら。

「早苗を異変解決に行かせてさ」

とぼけるんじゃないよ、と言いたげな諏訪子に、神奈子はつとめて冷静に対応する。

「ああ、そのことか。この異変は解決してもらわないといけないからな」

この異変。つまり、天人が起しているであろう異変のことである。
幻想郷では妖怪退治をすることも人間の信仰を獲得する上では有効な手段である。
だから、神奈子は早苗に妖怪退治をさせている。今回は妖怪が相手ではないけれど。

「そんなのは麓の巫女に任せておけばいいじゃない」

諏訪子は神奈子の意図など百も承知である。神奈子の言ってる事が正しいことも分かりきっている。
しかし、それでも諏訪子は、何でもいいから文句が言いたかった。

「そうもいかないよ。守矢の信仰を守るためにもやってもらうべきさ」
「そうかねぇ」

諏訪子はただ不機嫌であった。

「なぁ、諏訪子。気持ちはわかるが早苗のためだ。我慢してくれないか?」

神奈子が諏訪子をなだめる。
そして、諏訪子も早苗のためと言われれば、これ以上文句も言いにくくなった。
諏訪子は押し黙る。

「すまないな、諏訪子」

諏訪子は神奈子の謝罪を聞くと、どたどたと部屋を出て行った。
諏訪子が不機嫌な理由を、神奈子は十分すぎるほどに把握している。
神奈子も気持ちは同じだからだ。
むしろ諏訪子よりも神奈子のほうが、そういう気持ちが強いかもしれない。
しかし、守矢神社の信仰獲得のため、また、早苗の為に我慢するべきだと神奈子は考えていた。

















幻想郷の中でも魔女達に人気のあるスポットといえば魔法の森である。
博麗神社を飛び出した魔理沙は、その魔法の森にやってきた。

「さて、まずは情報収集だな」

魔理沙は一人でつぶやく。つぶやくと言うには大きすぎる声で。

「人の家の前で何ぶつぶつ言ってるのよ」

そんな魔理沙に声をかけたのは、元人間、今は魔法使いのアリス・マーガトロイドであった。
人里で人形劇をやったりしている少女だ。
魔理沙の声を聞いて、わざわざ外に出てきたのである。

「あぁ、アリス。犯人はお前だろ? 大人しく退治されてくれ」
「はぁ?」
「退治されればいいのだぜ」
「されないわよ」

いつもの挨拶代わりの弾幕ごっこが始まった。
今回は無事魔理沙の勝利に終わったようだ。
というより、用件を聞いてやらなければいけない、と思ったアリスのほうに、勝つ理由がなかっただけかもしれない。

「よし、これで解決だな。さぁ、雨を降らすんだ」
「そんなわけないでしょう。大体、何で私のところに来るのよ」

アリスの意見は至極もっともな意見に思える。
勿論、魔理沙もアリスが犯人だと思っているわけではない。

「近所だからな」
「天気の異変なら他にいく所があるでしょうに」
「そうだな。それじゃ、行くか?」
「なんで私に聞くのよ」
「いいじゃないか。一人より二人だぜ」
「ふん、まぁ、いいわ。あんた一人じゃ勝てそうにないものね」

アリスは目一杯憎たらしそうな顔を作って嫌味をいう。

「ああ、なんとでも言ってくれていいぜ」

しかし、そんな嫌味も魔理沙はまったく気に止めないのであった。

アリスは相手が悪いからあまり動きたくはなかったのだが、魔理沙に任せるのも不安だからついていくことにした。
魔理沙も一対一では分が悪いということが判っているのだろう。
あるいは、数を揃えてやれば犯人も満足してすぐに解決に至るだろう、と思っているのかもしれない。






霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドが異変の犯人がいるであろう天界に向かっていると、何やら飛んできた。

「山の巫女よね、あれ」
「よ、早苗じゃないか」

アリスへの返事も兼ねて魔理沙が早苗に声をかけた。

「あ、魔理沙さん。とアリスさんでしたっけ?」

早苗が答えた。

「ええ、アリスで合ってるわ」

その魔理沙達に早苗が聞く。

「異変で動いているのですか?」
「そうだぜ。早苗もか?」
「はい、そうです。でも全然心当たりがなくって」

早苗は天子の起した異変に関して詳しい知識を持ち合わせていなかった。
だから、全く見当がついていない。

「ああ、それなら一緒にくるといいぜ」
「心当たりあるのですか?」
「ん、多分な」

早苗は一緒についていく事に異存はなかったのだが、一つだけ気になった。

「みんなで押しかけるのはマナー違反、というようなことはないのですか?」

まだ、いまいち弾幕ごっこのやり方いうものを、把握できている自信がないのである。

「そんなことは無いぜ。それに相手は強いから数で押したほうがいい。十連戦ぐらいは平気な奴だぜ」
「そうですか。それでは私もご一緒させてもらいます」

異変解決の先輩の言葉に、早苗は安心した。
小傘がその早苗に同調する。

「わちきもご一緒させてもらうでござるよ」

これには、早苗が返す。

「作りすぎですよ」






魔理沙一向が妖怪の山に差し掛かったとき、誰もが予測していたとおりに彼女が現れた。

「あやややや、また登山者ですか」

鴉天狗の射命丸文である。
いつかの霊夢と魔理沙による守矢神社襲撃以来、天子の件や間欠泉の件などもあり、
霊夢たちが山に来る事が多くなっている。
文はその相手を担当することになっていた。
文としては取材も兼ねる事ができるから割と都合がいい。

「よう、ちょっと天界までいかせてもらうぜ」
「天界にはいまメイドが行ってますよ」
「咲夜か?」
「ええ」

そういうと、文は天狗団扇を振り上げる。

「でも貴方達はここで足止めですけどね」

当然のごとく弾幕ごっこが始まった。

「いちいち面倒なやつだぜ」

と言うと、自分から相手をするつもりのようで、魔理沙は八卦炉を構えた。





その文との弾幕ごっこは魔理沙達が勝利し、魔理沙達は天界へとやってきた。

「あら、貴方達もきたの」

その魔理沙達に声をかけてきたのは、既に天界に来ていた咲夜である。

「もう退治したのか?」

と、魔理沙が聞く。

「いえ、あの天人ならいませんでしたよ」
「そうか」
「萃香さんがいましたが、ここしばらく見かけないと言ってました」
「ますます怪しいな」
「ええ、間違いなく天子が犯人だと思います」

咲夜の断定に天子を知るものたちは一様に賛成であった。

「でもあの緋色の雲は山の頂に出来てるわよ」

アリスが言う。妖怪の山の頂に雲が出来ているのなら、天界にいるはずじゃないのか、と言いたいのである。

「気は山の頂に向かってますが、緋想の剣もないし天子もいません」

魔理沙が口を挟む。

「そんなことより地震が心配だぜ」
「それは心配要らないと思いますよ。竜宮の使いにも確認しましたけど、コレぐらいだったら問題ないそうです」

咲夜の言う竜宮の使いとは、永江衣玖のことである。
永江衣玖は、普段は雲の中を泳いで生活している。そして、大地震が起きる時には下界に降りてきて忠告してまわる。
天人の下に属する種族であり、天子のことも総領娘様などと呼んでいる。
空気を読む程度の能力を持つが、場の空気はいまいち読めないという評判を良く聞く。
ただし、幻想郷には珍しく常識人であるから、他者に迷惑をかけることはまずない。そのため、危険度は低い。

「ああ、あの衣玖が言うのなら間違いないわね。それに神社に要石も挿してあるんだし」

とアリスが言った。
先年の地震の異変のときに博麗神社には地震を鎮めるための要石が挿してある。
だから、幻想郷には地震は起きないはずだとアリスは言っているのである。
しかし、その要石を挿したのは天子であり、抜く事が出来るのも天子を始めとする名居の人である。
魔理沙の心配は的外れというわけでもなかった。

「衣玖とかいう人、信用できるのでしょうか?」

早苗が聞いた。
早苗も衣玖には会ったことがある。
いきなり神社に来て、大地震が来るから備えろ、と告げて帰った。
早苗は真面目に受け取って神社に耐震補強を施したり、非常食をかき集めたりしたが、結局地震は起こらなかった。
早苗はからかわれたのだと思い、当時は酷く落ち込んだものだった。

「ん?衣玖がそういうのだったら間違いはないわよ?」

アリスが答えた。
しかし、早苗はいまいち納得できなかった。
天子が起した異変の顛末を詳しくは知らなかったのだから、仕方が無い。

「それにしても今回は随分器用なことしてるのね」

アリスが器用なことと言っているのは、気の集め方である。
それに、咲夜が同意を示す。

「ええ、まさかこんな器用なことが出来るとは思いませんでした」
「前回は雑だったからその程度なんだろうと思っていたわ」

そういうアリスの言葉に魔理沙が返す。

「やってることは器用でも異変としては二番煎じだぜ。最初から犯人がわかりきっている異変なんて、興醒めもいいところだな」
「そうよ。同じことばっかりやってちゃだめよ」
「小傘が言っても説得力がないですね」

小傘に突っ込みを入れているのは、早苗である。
そして、ふと思い出したように咲夜が聞く。

「そういえば、霊夢はどうしたのですか?」
「ああ、霊夢なら神社に居たぜ。まだ動く気はないみたいだな」

そう答える魔理沙に、咲夜が怪訝な表情を見せる。

「異変には気付いているのですか?」
「ああ、知ってるぜ」

咲夜は自分の間違いに気が付いた。

「しまった!神社に行きましょう」
「どうしたの?」

そう聞き返すアリスに、咲夜が言う。

「霊夢が異変と気付いていて神社から動かないということは、神社に居れば解決できるということですよ」
























魔理沙御一行は博麗神社に来た。
博麗神社では霊夢が未だ呑気にお茶を飲んでいる。

「何よ、あんたたち」

魔理沙達を一瞥すると霊夢が言った。

「霊夢、あなたは何故ここにいるのですか?」

咲夜が問う。
霊夢はお茶を置き、こともなげに言う。

「ここが異変の現場よ」

早苗がその霊夢の一言に反応した。

「あなたが犯人ですね!それでは退治します!」

早合点した早苗がスペルカードを取り出そうとする。
これには霊夢も吹いてしまった。

「違うわよ。犯人がこの近くにいるってことよ」

霊夢は肩を小刻みに揺らしながら早苗に答えた。
霊夢に笑われ、早苗はしゅんとしてしまった。

魔理沙達は、霊夢の話を聞いて、霊夢にならうことにした。
皆でお茶を飲みながら、何か動きがあるのを待つ事にしたのである。
空がだんだん赤く染まっていく。

「今日中にさくっと解決したかったぜ」

魔理沙のつぶやきに、霊夢が答える。

「今日中に解決できるわよ、きっと」

霊夢のお墨付きに咲夜が言う。

「霊夢がそういうのなら大丈夫ですね。もうちょっと待ちましょう」

咲夜の意見に魔理沙達も異論はなかった。






太陽が完全に沈み、博麗神社の境内を闇が包みはじめた。

「あ、気の流れが変わりましたね」

咲夜が声を上げる。
異変解決のメンバーの中にあって、咲夜だけが緋想の剣で集めているであろう気の流れが見えている。

「そうなのか?私にはわからないぜ」
「ええ、今まで気付きませんでしたが、日が暮れてからは気の流れが変っています」

咲夜は、夜は紅魔館でレミリアの世話に忙しいためか、昼間の気の流れしか把握していなかったのだ。
それに、紅魔館には晴れの気を持つ者がいない。それが気付けなかった最大の要因でもある。
しかし、ここ博麗神社には快晴の気を持つ霊夢がいる。
咲夜は霊夢の気の流れをずっと観察していた。

霊夢が咲夜に聞く。

「で、どこに向かっているのよ」
「あっちです。神社のすぐ近くみたいですよ」
「早速、退治にいきましょう」

そう言いながら早苗が立ち上がり、すぐにでも神社を出ようとしている。

「お、早苗は張り切っているな。よし、一番槍は任せたぜ」
「天人が疲れたところで、おいしいところを持って行こうって腹ね、魔理沙」

と、魔理沙に言ったのはアリスである。

「ああ、止めを刺すのは私だぜ」
「そんなこと言っても結局は霊夢にもっていかれるのでしょう?」

咲夜が魔理沙をからかった。

「あちきが止めをさすでありんす」
「小傘、あなたどこに向かっているの?」

小傘のキャラ作りに誰よりも早く反応したのは、早苗であった。
そして、咲夜が現実的な行動を提案する。

「まずは偵察に行ってきますよ」
「ええ、咲夜よろしく」

咲夜の提案に霊夢が同意した。しかし、魔理沙が反対する。

「一気に押しかければいいじゃないか?」
「取り逃がさないためです。状況を確認しておくにこしたことはないですよ」

と説明すると、咲夜は時を止め偵察に向かった。
偵察から帰ってきた咲夜が時を戻す。

「ふふ、わかりましたよ、姿が見えなかった理由が。今から皆さんをお連れします」

そう告げると再び時を止めた。

再び時は動き出す。
博麗神社の境内。その一角。
そこに居たのは、光の三妖精と呼ばれるサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアであった。
三妖精の能力を魔理沙から聞いて知っていた咲夜は、時を止め皆を三妖精の前に連れて来たのであった。
三妖精の周りを取り囲むように、霊夢、魔理沙、アリス、咲夜、早苗、小傘が立っている。
いや、小傘は立っていない。突然景色が変ったことに驚いてしりもちをついていた。
これでは逃げ足だけは一丁前に速い妖精でも逃げられない。
しかも夜だからサニーの能力で姿も隠せない。万事休すである。

「なるほど、こういうことだったのか。灯台下暗しだぜ」

魔理沙は状況を理解した。元から三妖精を知っている霊夢、アリスも理解したようだ。
昼はサニーの能力で姿を消し、ルナの能力で音を消して隠れていたのだ。
そして、夜は博麗神社の近くに潜みながら、スターの察知能力で霊夢たちの動向を伺っていたのだろう。
もし動きがあればいつでも逃げられるように。

突然現れた異変解決の専門家プラスアルファに、三妖精が各々異なる反応を見せた。

「ちょっと、スター! なんで教えてくれなかったの!」

怒り出しているのは、サニーである。
ルナは慌てふためき、逃げようとして一歩目で転び、

「ひぇー、ごめんなさい! ごめんなさい!」

と、しゃがみガードを披露している。

「え?だって私の眼ではわからなかったんだもん」

そう自己弁護するスターは、比較的落ち着いているように見える。
そのスターの言葉に、サニーが意見する。

「またそんなこと言って。どうせさぼってたんでしょ?」
「違う!私は悪くないもん」

三妖精は仲間割れの様相をみせてきた。
しばらく三妖精のどたばたを眺めていた魔理沙が、話かける。

「さて、お前らどうするんだ? 退治されるか?」

魔理沙の一言に、三妖精は震え上がった。

「勘弁してくださいよ、魔理沙さん」

サニーが涙目で魔理沙に懇願する。
そこに咲夜が追い討ちをかける。

「あら、異変を起せば退治されるのですよ?」
「助けてください」

そう言いながら、ルナは泣き出してしまった。
さらに、早苗。

「だめです。妖精とはいえ異変の犯人は見逃せません」
「だからやめようって言ったのに」

ついにはスターまで泣き出した。
妖精の分際で大それたことを考えるから悪いのだ。

「はいはい、そこまでにしておいたら? この子達退治しても仕方ないわ」

霊夢がそんな三人をたしなめる。さすがに妖精を退治しても、異変は解決できない。
その霊夢にアリスが同調する。

「そうよ。そんなことよりすることがあるじゃない」
「さすが霊夢さんに、アリスさん。わかっていらっしゃる」

サニーはもうケロっとしている。

「調子のいいこと言わないの」

霊夢がそういいながら、サニーに陰陽玉を投げつけた。
サニーは避けられずにおでこに被弾し、おでこを抑えながらその痛みに足をじたばたさせた。

「あなたたちはここで大人しくしてなさいね。逃げちゃだめですよ」

咲夜が睨む。三妖精は咲夜の迫力に震え上がった。
しょせん妖精である。脅せば言う事を聞くのだ。
そして、咲夜は天子のいる場所に皆を案内した。
天子は博麗神社の境内の端にある大木に隠れていた。

「さぁ、天人退治の時間だぜ」

魔理沙が天子に声をかけた。
天子は特に驚きもせずこう返した。

「あら、もうきちゃったの」
「ええ、もうきましたわ」

一体どこに隠し持っていたのか、ナイフを数本取り出して咲夜が言った。

「大人しく退治されなさいよね」

そういいながら、霊夢が御札を取り出す。

「たく、こんな人数で押しかけてきて。全員と遊べっていうのね?」

面倒臭そうな口調で天子は言っているのだが、その顔はとても嬉しそうであった。
そんな天子に半ばあきれながら、アリスが答えた。

「そうよ。全員で懲らしめてあげるわ」

天子が結果に関わらず全員と一対一で闘うという取り決めをして、スペルカード戦が始まった。
早苗から始って、小傘、咲夜、アリス、魔理沙、そして、霊夢の順であった。
天子は律儀にもその全てのスペルカード戦を負けた。
最後の最後に負ければ十分なものを全部負けていく天子に、皆はちょっとばかし憎みきれないと思うのであった。

肉体が強化されている天人であっても、これだけの面々の弾幕を全てまともに受けていればダメージも残る。
天子は仰向けに倒れ、月を眺めながら回復を図っていた。
霊夢達も退治した以上急ぐ必要もない。だから、天子が起き上がって来るのを呑気に待つことにした。
霊夢が用意した酒と咲夜の作った肴で宴会を開きながら。

宴会の肴はもう一つあった。光の三妖精である。
彼女達は何かにつけて弾幕をぶつけられたり、からかわれたりしていた。
このように日頃の鬱憤を晴らすのが、妖精の正しい扱い方である。

小一時間ほど天子は月を眺めていた。そして、回復したのか酒の匂いに誘われたのか、天子がむっくりと起き上がった。
その天子を見て、霊夢が声をかける。

「じゃ、天子。宜しくね」
「わかってるわよ。それじゃ、いくよ」

天子は緋想の剣を片手で天に向けて構え、何やら念じている。

「あら、集められている気が変わりましたね」

咲夜がつぶやいた。
さっきまでは霊夢の気が集められていたが、今度は魔理沙の気が集められている。
集められる気が、晴れの気から雨の気へと切り替わったようだ。

「これで、雨が降るんですか?」
「そうよ。人はねそれぞれ気を持っていてね、あの剣はその気を集めるの」

アリスが、早苗に説明を始める。常に早苗の隣をキープしている小傘も、熱心に聞き入っている。
アリスも興が乗ったのか、自分が天子を退治しにいったときの話なども人形に演じさせながら、事細かに説明していた。

天子が気を集めだし、霊夢達は既に全てが片付いた気分でいた。しかし、雨が降ってこない。
それどころか空は未だに晴れ渡っていて月も星も綺麗に瞬いている。
天子が困ったような顔をしながら言う。

「あれ?どうして?」
「何やってるのよ、早く雨降らせなさいよ」

霊夢の言葉に、天子が首を振る。

「駄目、できないよ」
「どういうこと?」
「多分、雨が降らないようにしている奴がいる」
「あんたがでしょうが」
「違う。私じゃない誰かがやってる」

咲夜が口を挟む。

「つまり、雨が降らない異変の犯人は他にもいるというこですね?」
「そうよ。でも、天人の私でも雨を降らす事ができないようにするなんて、神とかそういう奴らよ」
「あぁ、心当たりが一杯ありすぎてわからんぜ」

そういうと、魔理沙は杯に残っていた酒を一気に飲み干し、杯を置いた。
宴は終わりだ、という事だろう。

アリスの説明も受けて状況を把握した早苗は、神奈子に伺いを立てる。

(神奈子様、どうすればよろしいでしょう?)
(そっちの異変は解決したんだろ? だったら一旦戻ってくるといい)
(わかりました)

そして、早苗が告げる。

「それでは私は一旦神社に戻ります。後のことは神奈子様たちに相談してみますよ」
「あいつらが真犯人じゃないのか?」

魔理沙が無遠慮に早苗に問う。
そもそも、神奈子は農業の神であり、雨や風を操る事も出来る。怪しまれるのは当然であろう。
近年の異変には神奈子が絡んだものもあったのだから、なおさらである。

「多分、違います。ただ、何かご存知かもしれないですね」

早苗は否定した。しかし、神奈子達が何か関わっているのかもしれない、そのように思ってもいた。
早苗が話を続ける。

「それに神が犯人というのなら、私も容疑者です。その私が貴方達と一緒に回るのもどうかと思います」
「そうね。とりあえずそっちは任せるわ。私も神様連中に当ってみる」

早苗の主張に霊夢が同意した。
そして、霊夢は神降ろしの準備にかかった。思いついた神を片っ端から降ろして聴取するつもりらしい。

「じゃ、私は明日になったら手当たり次第神を倒していくか。実体のある神は任せておいてくれ」

魔理沙が言うと、

「乗りかかった船だわ。魔理沙だけじゃ心配だし、私もそっちに回るわね」

アリスも魔理沙に同調した。
そして、魔理沙とアリスはそれぞれ自宅へと帰っていった。

「こうなると私の出番はないですね。私は館に戻りますよ」

これは咲夜である。神は自分の専門外だから、と咲夜は撤退宣言をした。
一旦戻ってレミリアと相談するつもりなのかもしれない。

そして、このタイミングを逃すまい、と天子が言う。

「私も帰るよ」

しかし、このタイミングでも駄目であった。
咲夜がナイフを構え天子に睨みをきかせながら告げる。

「あら、貴方はだめですよ」
「え?」
「お嬢様がお待ちです」

そういうと、咲夜は時を止め、天子を縛り上げた。

その後、幻想郷では暫くの間天子の姿を見る事はなかった。
異変が解決するまで紅魔館に囚われていたという。
もっとも、三食弾幕付きのVIP待遇であり、
弾幕の相手がレミリアと、天子が囚われて以来毎日のように遊びに来る萃香である。
昼は萃香と遊び、夜はレミリアと遊ぶ。
天子にとってこれ以上の退屈しのぎはない。よって、今回も天子が懲りることはなかった。

最後に、まだ態度を表明してなかった者が意思を告げる。

「わちきも帰る」
「それ、気に入ってるのね」

小傘の意思表明には小傘担当の早苗が答えた。
また、三妖精はいつの間にか逃げていた。



















守矢神社に戻ってきた早苗が、神奈子の部屋で二柱の前に背筋を伸ばして正座していた。
神奈子の部屋は窓も開け放たれており、
木々の間を通り抜けてきた湿り気のある風が僅かながらの涼を運んできている。

早苗に、神奈子が問いかける。

「お帰り。天人が犯人だって?強かっただろう」
「はい。弾幕ごっこでなければ勝てないのではないかと思いました」

早苗の正直な感想であった。

「そうだろうな。天人狩りの死神は死神の中でも強者揃いだ。その死神を退けつづけているのだからな」

天人は不死なのではない。ただ、寿命を迎えるたびに死の世界に誘いに来る死神を、撃退し続けているにすぎない。
そして、その死神は死神の世界でもエリートである。
三途の河の渡し守をしている死神、小野塚小町らにとっても憧れの存在である。
そのような死神との戦いに勝ち続けているのだから、修行をろくにしない不良天人だからといって侮れるものではない。
それに、天人の食事は肉体を強化する。それだけでも人間である早苗にとっては、十分脅威であった。

「それで、真犯人が他にいるようなのですが、何か心当たりはございませんか?」

早苗の問いに、神奈子が目を細める。
この問いには、諏訪子が返す。

「真犯人に何か目星はついているのかい?」
「いえ、全く。ただ、神ではないかと考えています」
「私達も含めて?」

諏訪子は早苗に問うた。

「もちろんです。少なくとも麓の巫女は、私も含めて神は全て容疑者と考えています」

早苗は正直に返した。
その早苗に神奈子が問う。

「なぁ、早苗。もし、私達が人間と敵対するとなればどうする?」

その神奈子の問いに早苗は屹然と答える。

「私は人間を護る神として戦います」

神奈子が、ほう、と感心をしめす。
そして、神奈子は早苗に額もつかんばかりに顔を寄せ、さらに問う。

「つまり、私達の敵になるということだね」
「そうは言っていません。一時的に人間に敵対することがあっても、結果として人間の為になるように戦います」
「そうか」

と言うと、神奈子は顔を元の位置に戻した。

「お二方も一枚咬んでいらっしゃるのですね?」
「いや、関わっているわけではないがな」

と、神奈子が答える。

「そうですか」

早苗は少し考え、こう言葉を続けた。

「それでは私は黙って見ていましょう」

早苗には二柱の意図は読めなかった。
しかし、出すぎた真似をするものではないと思い、自分は退く事にした。
もちろん、二柱に対する信頼があってのことである。
その早苗の言葉に納得すると、神奈子は話題を変えた。

「ところで早苗、あれはなんだい?」

神奈子は境内で一人待たされている妖怪を指していた。

「あれですか? なんか着いてきちゃいました」

早苗はそう答えると待たせていた妖怪を呼んだ。
その妖怪は腰を屈め、右手を突き出す姿勢で、二柱に挨拶をする。

「お控えなすって。多々良小傘と申す。以後お見知りおきを」
「随分時代錯誤だね」

苦笑まじりに神奈子が言う。

「キャラを作るのが楽しいようでして」
「面白い付喪神じゃないか。いいよ、早苗の友達なんだろ? だったら居ればいいじゃないか」

神奈子の鶴の一声で、小傘はしばらく守矢神社に居候することになった。


















「ここもだめか」

霊夢達が天子を退治してから一週間がたった。
人里の賢者、上白沢慧音は寺子屋を休みにして人里中を廻っていた。
農業用水は雨水をいくつかの貯水池に溜めて使っているのだが、その貯水池の水位が著しく低下している。
今は力のある者達が霧の湖から水を運んでくれているが、十分な水を確保することはできていない。
鬼の手でも借りたいところだろう。しかし、人里の問題はできるだけ人里で解決すべきだ、と慧音は思っていた。
幸い、井戸水が枯れていないので日常の生活には支障がない。
冬に雪が多かったおかげで、地下水は十分に蓄えがあるようだ。
しかし、さほど広くない幻想郷の地下水である。農業用水に回せるほどに豊富なわけではない。

「穣子様、このような状況です」

慧音と共に巡回しているのは、豊穣の神、秋穣子であった。
秋穣子は姉妹の神で妹のほうである。姉は秋静葉であり、紅葉の神である。
共にまだ新しい神であり、未熟なところが多い。
それでも人里では馴染みのある神であり、信仰もそれなりに獲得している。

「このままでは米の出来は悪くなるわね」
「だめでしょうか?」
「うん。『日照りに不作なし』なんてことを言う人もいるけど、あれも程度の問題」

確かに、夏場の日射は稲作にとっては重要であるが、それも度を越してしまえば害にしかならない。
この夏のように始終快晴で空気も乾き猛暑が続いていれば、稲への被害は確実であった。
穣子の説明が続く。

「問題なのは、稲穂の高温状態が続く事なのよ。だから、日照りの年には例年以上の水が必要なの。稲穂の温度を下げるためにね」

日照りで一番問題なのは、高温で稲穂の成長が阻害されてしまうこと。
特に葉月の気温は非常に重要である。高すぎても低すぎても米はだめになってしまう。
水分自体は、夏場に雨が少なかろうと、冬の雪や梅雨の雨が豊富であれば何の問題も無い。
地中に蓄えられているのだから。
しかし、今一番必要なのは水撒き用の水、稲穂の温度を下げるための水であった。

「でも、その水が少ないのだから仕方ないわね」

穣子は情けない心持でそう言った。しかし、神でもどうにもならない事もある。
すくなくとも、穣子には雨を降らせる力などありはしなかった。

「穣子様の御神徳でもだめでしょうか?」
「うん。雨が降らないとどうしようもないわ。私一人ではね」
「といいますと?」
「守矢の神様達とも相談してみる。あの方達なら智恵も出してくれるでしょう」

慧音も異変には気付いているし、神が関わっているとも思っていた。
そして、守矢神社の神なら雨を操る事も可能である。
さらに、諏訪子のほうは祟り神でもある。
もとより慧音は守矢を疑っていた。
そして、穣子は『智恵を出してくれる』と言った。『雨を降らせてくれる』ではなかった。
つまり、それが神が意図的に日照りにしていることの証拠だと、慧音は思った。

「穣子様、私もご一緒させてもらってもよろしいでしょうか?」

穣子の表情がかげる。

「駄目よ」
「そうですか。一体何が起きているのでしょう」
「さぁ、知らないわ」

穣子の目が泳いでいるのを慧音は見逃さなかった。
やはり、穣子も関わっている、と慧音は思った。しかし、豊穣の神である穣子が犯人であるはずはない。
雨を降らさないのでは自分の存在を否定しているのに等しいから。
第一、穣子にそんな力もないであろう。
やはり、守矢が何かを企んでいるのではないか、との疑いを慧音は深めた。
しかし、慧音はこの異変自体の解決に動く気はなかった。
なぜなら、それは巫女の仕事であり、既に巫女が動き出していると聞いてもいたからである。

穣子は慧音との巡回を終えると、守矢神社に向かった。
すると守矢神社の参道で意外な人物と出会う。
その人物を穣子は何度か見たことがある。
永遠亭の薬師八意永琳であった。
穣子は、その永琳とは軽く会釈をして別れた。

穣子は永琳の姿を見て、誰か病気にでもなったのかと考えた。
永琳の薬は天狗や河童の間でも評判であったが、永琳自身が妖怪の山へ来る事はあまりない。
妖怪の山へ薬を届ける場合であっても、大抵は兎がくる。

そんな事を考えているうちに、穣子は守矢神社の境内に着いた。
守矢神社にいけば、いつもなら声をかけずとも巫女が迎えてくれるのだが、今回は迎えがなかった。
その代わり、傘の付喪神がいた。
穣子はなるほどと思った。きっと早苗が風邪でもひいたのだろうと思ったから。
穣子は静葉から聞いた事がある。夏風邪は巫女がひく、と。

「参拝ですか?それとも何かご用ですか?」

穣子の顔を見るとその付喪神、小傘は声をかけてきた。
神に向かって『参拝ですか?』は無いでしょう、と穣子は思ったが、いちいち窘めるのも面倒だった。

「神奈子様に用があるのだけど、いらっしゃる?」
「はい、それでは呼んできますね」
「宜しくね。あ、そうそう早苗は?」
「え?早苗さんですか?え、と、早苗さんは居ません」

何故か小傘はあたふたとしだした。
そんな小傘を穣子は変に思いはしたが、特に気に止めはしなかった。

「あら、そうなの。来る途中薬師に会ったから、ひょっとしたら早苗でも倒れたのかと思ったのだけど」
「早苗さんは元気ですよ?」
「そう、ならいいんだけど」

穣子は神奈子に会うと、人里の件を相談した。
穣子の要望に、神奈子は暫く様子をみましょうと提案した。
穣子は神奈子に伝えておけば十分だろうと考えて、すぐに帰った。
神奈子はそれなりに信頼を獲得していた。
















さらに時はたち、一週間が過ぎた。雨はまだ降らない。
水辺から離れている場所では地面が乾き、酷いところでは雑草も干からび始めた。
貯水地の水位もさらに下がり、畑の土も表面が乾いている。
そして、相変わらず農業用水が不足していた。

また、人里では暑さにやられて倒れるものも出てきた。
しかし、これに関しては、すでに永遠亭の者達が適切な処置と予防法を周知徹底したために、
不幸な事故には繋がっていない。
十分な量の医薬品も、すでに人里に供給済みであった。

そんな状況を打破すべく、動き出した者がいた。聖白蓮である。
春の宝船異変の後、人里の外れに建立された命蓮寺。
聖白蓮は、その寺の住職である。
白蓮は数百年もの間封印されていたのだが、その封印を巫女達が解いたのである。
白蓮は人間から魔法使いになったタイプの魔法使いであった。
若返りの魔法をかけているそうで、見た目は若くても中身は年寄り臭い。
ただし、力は強力なのでそのことには触れないほうがいいだろう。
乙女の心を傷つけることの代償は、ことのほか大きい場合があるから注意が必要である。
白蓮は人間と妖怪が平等に暮らせる社会を目指しているそうである。
そんな白蓮の周りには多数の妖怪達が白蓮を慕って集まっている。

その白蓮は魔法で事態を解決する事は考えていなかった。
さらに白蓮はこの異変自体を解決するつもりはなく、ここまでは静観に徹していた。

その白蓮は妖怪達を集めて話を始めた。

「人里が大変なようですね。貴方達、出来る事があれば協力してきなさい」
「はい。でも姐さん、雨が降らないというのはいかようにも仕様がありません」
   
最初に返事をしたのは、雲居一輪という尼である。
一輪はいつも入道雲を連れている。入道のほうは雲山というらしい。
一輪は雲山の言葉を通訳できるそうだが、うそ臭い。

「そうね。自然現象は仕方がないわ。でも、水を確保する手段はあるのではないかしら?」
「人里に近い水場といえば、霧の湖がありますが」
   
白蓮の問いかけに答えたのは、村紗水密という船幽霊である。
村紗は船を沈没させることができる幽霊である。船に乗っているときは気をつけよう。
また、先日の宝船異変のときの空飛ぶ船を操縦していたのも、彼女である。

「そう。その水を人里に持ってきちゃいましょうか」
「あの、聖、どうやって?」
   
聞き返しているのは、寅丸星である。星は命蓮寺の御本尊である。
もともと白蓮を慕う妖怪の一人であり、毘沙門天の弟子であるという。
命蓮寺では毘沙門天を務めている。
また、星は財宝が集まる程度の能力を持っている。これは文字通り、勝手に財宝が集まってくるのである。
とても羨ましい能力である。

「用水路を作るのよ」
「ふん、聖。そうはいうが、用水路なんてそんなに簡単にできるものじゃない」

白蓮に意見しているのは、ナズーリンという鼠の妖怪である。ナズーリンはダウザーである。
ダウザーというのは、変な棒を使って物を探す技術ダウジングを使える者のことだそうだ。
しかし、実際には部下の子鼠たちに探させていて、本人は探している振りをしているだけじゃないかと思う。
また、ナズーリンは寅丸星の直属の従者であるという。
そして、命蓮寺には正体不明の妖怪もいると聞くが、正体不明である。

「うふふ、大丈夫よ。簡単に作っちゃう人たちなんていくらでもいるじゃない」

白蓮はそう言うと、一人で出かけていった。







白蓮は守矢神社へ来た。
守矢神社は山にあるためか比較的涼しく、人里のような問題は起きていないようである。
川の水量が若干少なくなってはいるが、困るほどではなさそうだった。

その守矢神社では巫女が傘の付喪神相手に弾幕ごっこをしていた。
白蓮は挨拶しようと巫女に近づいていく。
しかし、巫女は白蓮に気付くと、弾幕ごっこをやめ神社の奥に引っ込んでしまった。
しかたなく白蓮は傘の付喪神に声をかけた。

「こんにちは。えーと、小傘さんでよろしかったでしょうか?」
「はい、小傘です。何か御用?」
「ええ、ここの神様に用があるのですよ」
「あ、それじゃ呼んできてあげます」
「お願いします」

小傘に呼ばれた神奈子によって、白蓮は床の間のある和室に通された。
白蓮から一通りの挨拶を受けると神奈子が率直に聞いた。

「今日はどういったご用件で?」
「面白い事をしているようですね」

白蓮が言っているのは近頃の異変についてである。
白蓮は神奈子が首謀者であるとは思っていなかった。
ただ、神が起している異変の意図に気付いていますよ、という意味を含ませたのだろう。
また、先ほどみた巫女、早苗の弾幕ごっこが白蓮の脳裏に焼きついていた。
白蓮の目には、その弾幕ごっこがただの弾幕ごっこでないことは、明らかであった。

「さて?」

神奈子は、どうもこの聖白蓮という少女を信用できずにいた。

「そんなに警戒しなくてもいいですよ。別に邪魔をするつもりはありませんから」

そう言う白蓮の言葉を神奈子は真に受けることはなかったが、腹の探りあいを避けることにした。
というよりも、あまり探られたくなかった、というのが本音であろう。

「用件を言ってくれるかい?」

神奈子に促されて、白蓮は率直に用件を言う。

「霧の湖から農業用水を人里の貯水池に引っ張ってくる用水路をですね、造っていただけないでしょうか?」
「それを私達がやるメリットはあるのかい?」
「あら、あなたたちの目的に沿うことではありませんか」

神奈子はやはりこの聖白蓮に気を許す事はできないと思った。
善人であることは間違いがないが、有能であり、案外世辞にも長けている。
また、善人故に自分が正しいと信じたことは決して曲げないであろう。
正しい事を通すためには、苛烈な手段にでてくることもあるのではないか?
有能すぎる善人ほど厄介な生き物はいない。
神奈子は白蓮をそう評価していた。
数百年前の人間達が白蓮を封印したというのも、神奈子は納得がいっていた。

「さあてね。どうする?諏訪子」

神奈子も白蓮の提案には、異論はなかった。
また、白蓮の言うとおりに目的に叶っていたのだから、むしろ積極的に乗ってもいい話である。
守矢が水不足を解決したとなれば、人里の信仰を増やす事ができるのだから。
しかし、神奈子は諏訪子に遠慮して決断できなかった。

「別に私たちにとって悪い話ではないね。それに豊穣の神からも要望がきていたから、丁度いいんじゃない?」

諏訪子は用水路を作ることに乗り気であるように見える。
やはり、自分の力を誇示できるということは、祟り神として気分がいいのであろう。
神奈子は諏訪子が断るのではないかと思ったが、引き受けてくれて安心した。
また、久しぶりに機嫌のいい諏訪子をみて、少し気が楽になった。

「そうだな、引受けよう。ただし、白蓮、あなたのほうで人里の了承を得てくることが条件だな」

本来なら早苗を交渉役に出したほうが守矢への信仰につながる。
しかし、神奈子は、今はあまり早苗を動かしたくなかった。

「受けてくださりありがとうございます。人里のほうは任せておいてもらって大丈夫です。私から話をします」

白蓮は二柱に深々と頭をさげる。
その姿にも百パーセント純粋な感謝の念が伝わってくる。

「それでは失礼いたします」

そう告げると、白蓮は守矢神社をあとにした。





白蓮はそのまま人里の説得に向かった。人里では白蓮の提案はすんなりと受け入れられた。
なかには安易に神の力を借りるということに異議を唱えるものもいたが、現実問題として他に妙手が無かったのだ。
用水路造成工事は即座に行われた。
守矢神社は諏訪子が土を掘り、その土を堤防として盛っていっただけである。
堤防を補強する作業や水門を作る作業などは、里人と一部有志の妖怪の手によって行われた。
そして、霧の湖から農業用水を貯水池に引く用水路は数日で完成した。

完成した翌日には用水路の落成式が行われた。
出席者の中には直接関わった神奈子や諏訪子、白蓮のほか、秋穣子などの神も呼ばれている。
慧音も出席していた。慧音は、これが今回の異変の目的であったか、と考えた。
そして、それならすぐに雨も降るだろうと。
結論を言えば慧音の推測は間違っていた。その証拠に雨は降らなかったのである。

また、博麗の巫女として霊夢も落成式に呼ばれていた。
この天候異常が異変だと気付いている人間は少ないため、霊夢も肩身の狭い思いをせずにすんだのが幸いである。
また、落成の儀式はなぜか早苗ではなく霊夢が執り行った。
守矢の仕事であったのなら早苗が執り行うのが当然であるのに、早苗は出席すらしていなかった。

また、霊夢はこの用水路の完成と異変自体には、直接的な関係はないと思っていた。
しかし、ヒントにはなるのではないかと考えていた。
特に守矢の者の動きを注意して見ていた。
別に神奈子や諏訪子を疑っているわけではない。
ただ、幻想郷の実体のある神の中でも、力のある神であったからである。
しかし、神奈子や諏訪子からこれといった情報は得られなかった。ただ、早苗がいないことだけは気になった。

落成式が終わり、霊夢は神社への帰路に着いた。
そんな霊夢に声をかけるものがいた。魔理沙である。

「よう、霊夢。調子はどうだ?」
「いまいちよ。調子が狂うわ」
「相手が神だからか?」
「それもあるけど。何より相手が見えないし、いつものように手当たり次第退治していけば解決できる、というわけじゃなさそうだからね」
「何かわかったか?」
「何も。ただひとつ言えるのは、神は全てグルってことよ」

天子を退治して後、霊夢は思いついた神を片っ端から降ろして事情聴取を行った。
しかし、世間話には気軽に応じてくれるくせに、肝心の異変に関わる事には押並べて黙秘権を行使されてしまう。
ただ、神が関わっていると言う事は確実となったが。
問題は、どの神が主犯で目的はなにか、ということ。それが判らなければ解決にはならない。
実体のある神が犯人であればいつもどおりの弾幕ごっこで解決できる。
しかし、実体のない神の場合はそうはいかないのだから。

「早苗もか?」
「ええ、積極的にしろ、消極的にしろ、グルね。ただ、犯人を知っているとは限らないけど」
「じゃ、神を片っ端から倒していけばいいんじゃないのか?」
「実体のない神はそうもいかないわよ」
「それじゃ、手っ取り早く雨を降らせたらどうだ? 雨の神様でも呼んで」
「やってみたわよ。貴船様を降ろして頼んだけどだめだったわ」

それを聞いた魔理沙が意地の悪い顔をする。

「霊夢が嫌われてるんじゃないのか?」
「そうなのかな?」

霊夢は少し不安になった。

「そんな風には感じないのだけど。でも、なんか隠してる感じはするのよね」

そんな調子で、霊夢も取っ掛かりを見つけることが出来ないでいた。

「それで、魔理沙。あなたのほうはどうなのよ」

魔理沙は魔理沙でアリスとコンビを組んで、幻想郷を飛び回っていた。

「さっぱりだぜ」
「なんか気になったことはないの?」

霊夢は何でもいいからヒントが欲しい。

「そうだな、いつもと違うのは妖怪連中のノリが悪いな」
「どういうこと?」
「弾幕ごっこにもあまり乗ってこないし、異変にも関わろうとしないな」
「変ね。あいつら自分に関係なくたって、喜々として弾幕ごっこ仕掛けてくるじゃない」
「ああ。それに幽香みたいな真っ先に怒って暴れそうな奴ですら、無関心なんだ。いや、無関心を装ってる感じだな」

花を操る妖怪である風見幽香。花に危害を与えるものには容赦のない攻撃を行うことで知られる妖怪である。

「ふーん、つまりどういうこと?」
「誰かに遠慮している。そういう風にも見えたな」
「ますます判らないわね。あいつらが遠慮するってありえないわ」
「まぁ、私のほうの成果は大体そんな感じかな」
「そう。で、山の神社はどうなの?」

霊夢はなんとなく、守矢神社が気になった。

「山の神社に行っても、諏訪子としか弾幕ごっこできなかったな」
「早苗は?」
「早苗は見なかった。ああ、その代わり小傘がいたな」
「そう」

そういうと、霊夢は思考の海に潜った。



















天子を退治してから一ヵ月程経過した。そろそろ葉月も終わりに近づき、夏の終わりを感じさせるはずの時節である。
幻想郷には、いまだ雨は降らない。
人里の貯水池は諏訪子の造った用水路のおかげでなんとか水量を確保してはいるものの、
相変わらず暑い日が続いている。
最悪の事態は悉く回避できているものの、猛暑によって里人たちの肉体と精神は疲弊していた。
そして、里人たちは雨を渇望した。

しかし、その異変解決を為すべき霊夢も未だ思案にくれていた。
誰を退治すればいいのか、そもそも退治で解決できるのか、霊夢には見当がつかず、どうにも動きようがなかった。
いつもなら適当に動いていれば行き当たるのだが、今回はそうもいかなかった。

ここのところ魔理沙もずっと神社にいる。
数日前まではアリスと二人で守矢神社はもちろん、紅魔館、地霊殿、永遠亭など神との関係あるなしにかかわらず、
虱潰しに当っていた。
しかし、弾幕ごっこに勝っても何も手がかりは出てこなかった。
それどころか、何かを申し合わせているようにすら見えた。
どうもいつもの異変と勝手が違っていた。

そんな中、アリスが異変解決から手を引いた。
魔理沙がその理由を問いただしたが、アリスは答えない。
ただ、私の出る幕ではないみたい、とだけ言っていた。
咲夜も天子を捕まえて以来動く気配がない。早苗も動かない。もちろん、小傘も。
気が付けば異変解決に動いているのは魔理沙と霊夢だけになっていた。

そんな夏の日、博麗神社では霊夢と魔理沙が二人で朝食をとっていた。
そして、味噌汁を啜っていた霊夢が、お椀をことんと卓袱台に戻して言った。

「そうか、そういうことね」

霊夢が一人で納得している。
それだけでは何のことだか魔理沙にはわからない。
したがってこう聞き返す事になった。

「どうしたんだ?」
「異変の犯人よ。なんで気付かなかったのかしら?」

霊夢は異変の犯人を神の中の誰かだとばかり思っていた。
しかし、神々を主導できる者は神だけではなかったのである。
霊夢は『巫女』も神を主導しうることに、今やっと気付いたのである。

「お、わかったのか? それじゃ早速退治にいこうぜ」

魔理沙は持っていた茶碗と箸を置き、傍に置いていた帽子を手に取った。
霊夢も魔理沙のやる気に呼応する。

「ええ、思う存分暴れてやるわ」

朝食もそこそこに霊夢と魔理沙は博麗神社を後にした。








霊夢と魔理沙は博麗神社を出ると、まっすぐに目的地に向かって飛んでいた。
その道中、人里に差し掛かったところで二人に声をかけるものがあった。

「待っていましたよ、霊夢さん」

人里の上空で待ち構えていたその少女は、守矢の風祝、東風谷早苗であった。
地上では既に弾幕ごっこが行われる事を知っていた人里の人間が、遠巻きに集まっている。
早苗は霊夢をきっと睨み宣戦布告する。

「今回は神側の代表として霊夢さんと戦わせてもらいます」
「早苗様の御指名だぜ、霊夢」
「あんまり嬉しくない御指名ね。指名料でもいただこうかしら?」

本当に迷惑そうに霊夢が言う。

「ま、私は遠くから見守らせてもらうぜ」

そういうと魔理沙は二人から遠く離れた。

「とにかく早苗を倒せばいいのね?さっさとはじめるわよ」

霊夢は御札を取り出し霊力を高める。

「何か勘違いされているようですが、相手は私だけではありませんよ」

と言うと、早苗は精神を一気に集中させる。そして、スペルカードを一枚取り出し口上を述べた。

「さぁ、博麗の巫女よ、八百万の神の御力に畏れるがよい!」

早苗と霊夢のスペルカード戦が始まった。地上の者が固唾を呑む。
早苗から繰り出されるスペルカードは見た事のないものがほとんどであった。
それもそのはずで、そのスペルカードは早苗のものではなかった。早苗が降ろしてきた神々のスペルカードであった。
霊夢が一つのスペルカードを攻略すると、早苗はすぐさま新たな神を降ろし新しいスペルカードを宣言していく。
火の弾幕、光の弾幕、船の弾幕、他あらゆる弾幕が次から次へと繰り出される。
早苗が美しい弾幕を放つたびに里人から感嘆の声があがり、霊夢が攻略するたびに歓声が沸く。

早苗の放つ弾幕、その一つ一つが八百万の神の神徳を顕現しているという事を、霊夢は理解した。
そしてその全てがボム無効、攻撃不可の耐久スペルであった。
それはこの弾幕ごっこがスペルカードを見せることだけに意義があるということを示していた。
地上で見守る者たちに、神徳をわかりやすい形で見せること。それが早苗の目的なのだ、と霊夢は理解した。
神の弾幕を、霊夢はただひたすら避け続けた。
そして、霊夢にとってもただ避けるだけでいいというのは、気が楽であった。
やはり、巫女である以上は、いくら異変であっても神に対して攻撃などしたくないのであろう。

早苗は次から次ぎへとスペルカードを発動し、霊夢は全て避けきっていった。
そして、朝に始まったスペルカード戦を夕日が照らしはじめた。

「ふぅ、本当はこんなことしたくないのですよ?本来私がお力をお借りするのは神奈子様と諏訪子様だけですから。他の神の力を借りるのは本意ではないのです」

と言うと、一息つき早苗が告げる。

「残るスペルカードは三つです。さぁ、いきますよ?」

早苗はまた一枚、スペルカードを取り出した。霊夢が身構え、早苗が宣言する。

「風神様の神徳」

これは霊夢も知っているスペルカードであった。
八坂神奈子のスペルカードである。霊夢も疲れていたがなんとか避けきった。

「祟符『ミシャクジ様』」

今度は洩矢諏訪子のスペルカード。

「さぁ、最後です。大奇跡『八坂の神風』」

最後は早苗自身のスペルカードである。
このスペルカードを霊夢が避けきり霊夢が勝利すると、早苗が霊夢に問う。

「どうですか? これが神徳というものです。わかっていただけましたか?」
「わかったわよ」
「そうですか。それなら私も頑張った甲斐がありました。それでは永遠亭に向かってください」
「やっぱり永遠亭で合っているのね?」
「ええ、全てはそこへいけばわかります」

最後にそう告げると、早苗の姿が霊夢の視界から消えた。
霊夢は疲れているからか、その理由に気付くのが遅れてしまった。
早苗の体は重力に引っ張られるままに、地上へと落下していたのだ。
遠く離れて見ていた魔理沙があわてて追いかける。八卦炉の出力を最大にして追いかける。

「間に合え!」

魔理沙は猛スピードで早苗に向かって飛んでいく。しかし、間に合わない。
このままでは早苗の肉体が地面に叩きつけられてしまう。

「くそ! 万事休すか」

魔理沙が目をつぶった。
霊夢もさすがに顔を青くしている。
里人の悲鳴が響き渡る。
そこに、一迅の風が吹き抜けた。

「あやややや、危ないですね」

取材に駆けつけていた鴉天狗の射命丸文が、間一髪で早苗を受け止めていた。
霊夢も魔理沙も安堵し、里人から拍手と歓声があがる。
文は里人の歓声に手を振り、投げキッスをして応える。
文は歓声に一通り応えると、早苗を霊夢のところに連れてきた。

「この子、気を失っていますね」
「力を使いきったのね。文、悪いけど守矢神社まで送ってやってもらえる?」

普段から慣れている神奈子や諏訪子の力を借りるだけならともかく、八百万の神を入れ替り立ち替り降ろしていくのは、負担が大きかったのだろう。
その上、真夏の直射日光を朝からずっと浴び続けていたのだから、人間であれば倒れてもしようのないことであった。
避けていただけの霊夢も汗だくになっており、その表情には疲労の色がはっきりと出ているのだから。

「あや、それは困りました。取材が続けられませんね。といってもこの子を放っておくわけにもいかないので、仕方ないですか」

守矢神社は妖怪の山の頂にあり、その妖怪の山を守っているのは天狗達である。
文は自分以上の適任者を、残念ながら思い浮かべることができなかった。

「そう、悪いわね」
「その代わり、異変解決後の取材はしっかりさせてもらいますよ?」
「ええ、いいわ」

それでも取材の確約を取っていく辺り、転んでもただでは起きない。

「それでは失礼して」

と言うと風と共に、文は去っていった。早苗の体を抱きかかえて。
霊夢は文が去るとつぶやいた。

「たく、早苗も格好つけるわね」

霊夢の目に涙がうかんでいるように、魔理沙には見えた。
魔理沙が霊夢に寄り添っていく。
しかし、その行動とは裏腹な言葉が、魔理沙の口から出てくることになる。

「それにしてもあいつは神降ろしなんて、いつの間に覚えたんだ?」
「ん、前から出来たんじゃない?いつも神奈子や諏訪子の力を借りているみたいだし」
「そうか。じゃ、正式な神降ろしを知らなかった霊夢のほうがおかしいのか」
「ん?」
「つまりだ、巫女としては早苗のほうが優秀なんだな」

霊夢は返す言葉がなかった。



















「貴方達と戦うのも久しぶりね」

永遠亭にたどり着いた霊夢と魔理沙を庭先で出迎えたのは、兎ではなく永遠亭の薬師八意永琳であった。

「ああ、あんまり遊んでくれないから寂しかったぜ」
「いきなり永琳からなの?」
「ええ、うどんげやてゐとは普段から遊んでいるでしょう? それとも姫様がよかった?」
「いや、あいつのはただの自慢だからな。遠慮しとくぜ」
「ふふ、姫様が能力を使って弾幕ごっこしたら、遊びにならないのよ」

やわらかい表情で軽口を言っていた永琳の顔に、険しさが浮かび上がる。

「それで、どっちから相手してくれるの?」

魔理沙は霊夢の顔をみる。早苗との十時間にわたる戦闘の疲れが色濃く浮かび上がっている。
手で霊夢を制して、魔理沙が宣言する。

「私からいくぜ」
「そう。悪いけど今回は霊夢にしか勝たせてあげられないけど、いいわね?」
「あ?私は勝つぜ」

永琳はいつもどおりのスペルカード戦を始めた。
魔理沙は見覚えのある弾幕を軽快に避けていく。

「なんだ永琳。口ほどにもない弾幕だぜ」
「せっかくの弾幕ごっこですもの。楽しませてもらわないとね」
「へっ、余裕だな」

確かに永琳は余裕だった。そのことがはっきりと見て取れることが、魔理沙は腹立たしかった。
なぜなら永琳は視線の先に魔理沙ではなく、霊夢を捉えていたのだから。
永琳は霊夢の回復のために時間稼ぎをしているようだった。

その霊夢は庭の端にある小さな祠、守矢神社の分社の隣に座り、目を閉じていた。眠っているのだろう。
永琳は極力霊夢のほうに流れ弾がいかないように注意していたが、それでも弾幕が霊夢目掛けて飛んでいく。
しかし、霊夢はその弾幕を眠ったままで体をゆらりゆらりと揺らし避けていく。
おそらく無意識であろう。霊夢はやろうとしてやっているのではない。
永琳はそんな霊夢を見て、改めて霊夢の才能に感心させられ、つぶやいた。

「あの娘達がお熱を上げるのも無理はないわね」

そんな事を考えながらも、永琳は手を休めずに次々とスペルカードを発動していく。
魔理沙は確実にスペルを取得していった。
そして、魔理沙と永琳が闘い始めて三時間ほどがたった。

「なんだ。まだやってるの?」

霊夢が目を覚ました。
すると、その霊夢に呼応して永琳が新しいスペルカードを発動する。
今度は魔理沙の見たことのないものであった。

「お、やっとやる気になってくれたな」

そういうと魔理沙は緊張し身構えた。
初見のスペルカードはいつも以上に神経を使う。
そんな魔理沙に永琳が一気に間合いを詰めた。

魔理沙は目の前に迫ってきた永琳に向けて八卦炉を突き出し、マスタースパークをぶっ放す。
その瞬間、永琳の姿が靄のように消える。目の前に迫ってきたと見えたのは、幻影であった。
そして、魔理沙は背後から永琳の声を聞くこととなった。

「ごめんなさいね、魔理沙。あとで続きをやりましょう」

その声を最後に魔理沙は気を失った。

魔理沙の太ももには矢が突き刺さっていた。永琳が刺したのである。
魔理沙とて魔法使いである。
剣で斬りつけられようが、ナイフで刺してこようが、肉体に損傷を受けないようにする対策は十分に施してあった。
しかし、永琳はその防御をいとも簡単に破ってしまった。

永琳は魔理沙を抱きとめ矢を抜く。魔理沙の太ももからは不思議と出血していない。

「てゐ、この子を奥で休ませておいて」

永琳が屋敷に控えていた妖怪兎の因幡てゐを呼ぶ。
そこへ霊夢が声を荒げる。

「ちょっと何をしたのよ!」

いかにも医者らしい、誰もを安心させるような笑顔を見せて、永琳が答える。

「眠ってもらっただけよ。大丈夫、小一時間もすれば起きるわ」

矢じりに薬が塗ってあったのだろう。

「本当でしょうね?」
「心配かしら? 私はそんなに信用ないのね」

永琳は寂しそうな表情を誇張する。
そこへてゐが口を開く。

「大丈夫だよ。師匠が使った睡眠薬の効果はすぐに切れるし、副作用もないよ」
「あんたが言うともっと信用できないじゃない」
「でも魔理沙は人間だからね、幸せにするよ」

というと、てゐは魔理沙を屋敷の中へと運び込んだ。
なんだかプロポーズに聞こえなくもないてゐの台詞だが、てゐの能力は人間を幸せにする程度の能力である。
それなりに説得力はあった。

「そんなことより、霊夢。あんまり時間がないのよ」

というと永琳が空を見上げる。永琳につられて霊夢も空を見上げた。そこには月があった。

「時間なんか永遠にあるでしょうに。あんた達には」

そういうと霊夢は札を取り出す。
永琳と今度は霊夢のスペルカード戦が始まった。

そのスペルカード戦は霊夢が勝った。

「どこにいるのよ?」

霊夢が永琳に問う。

「この奥にいますよ。でも、行っていいのは霊夢だけ。魔理沙はここで待っていなさい」

魔理沙は永琳が告げたとおりに、一時間もたたずに起きてきていた。

「ああ、仕方ないな。勝ってない私は従うぜ。それに続きをやらないと気がすまないからな」

魔理沙はすぐにでも永琳との弾幕ごっこを再開したいようである。

そんな魔理沙を尻目に、霊夢は永琳に言われたとおりに奥に進んだ。
魔理沙は霊夢が行くと永琳に尋ねた。

「なぁ、永琳。なんで霊夢だけ、なんだ?」

永琳は最初から霊夢しか通す気がなかった。
そこが魔理沙としては気になるし、納得がいかない。
その魔理沙に優しい笑顔を見せながら、永琳が答える。

「今回の異変は霊夢のために起こした異変だからよ」

















十一



霊夢は奥へと廊下を進んだ。
すると、廊下を進んだ先にある襖の前に、月の兎である鈴仙・優曇華院・イナバが控えていた。
鈴仙は霊夢の姿を確認すると、待つように指示した。霊夢は素直に待った。
鈴仙は周囲に何者もいないことを念入りに確認し、襖の封印を解く。そして、霊夢に告げる。

「この襖を開けると廊下があります。その廊下の先に兎がいますので、その兎に声をかけてください」

珍しく畏まった口を利く鈴仙が霊夢にはおかしく思われたが、鈴仙はいたって真面目だったので触れない事にした。
霊夢は襖を開けた。そこには鈴仙の言うとおりに廊下が続いていた。
その廊下を霊夢は飛んでいく。あの永い夜のときみたいに。
そしてどれ程飛んできたのであろうか、鈴仙のいっていたとおりに控えている兎が見えてきた。
その兎はヘルメットを被り銃剣を持っており、耳は垂れていた。
霊夢も見覚えのある月の兎であった。

「ええと、レイセンだったかしら?」
「はい。よく覚えていましたね」

地上の者に対して高飛車な月の兎も、妙に丁寧な応対をする。
客人として接するように言われているのだろう。

「ん?鈴仙と同じ名前だからね」
「そうですか。まぁ、鈴仙さんの名前を戴いたのだから当然ですけど」
「あら、そうなの。それで、どこにいるのかしら?」
「この扉の先で待っておられます」
「そう。それじゃ行って来るわ」

霊夢は一度大きく深呼吸し、覚悟を決め扉を開けた。
そこには見覚えのある部屋があった。
月の都にある綿月邸の一室で、かつて霊夢が寝泊りしていた部屋だった。

綿月邸には綿月姉妹という月人が住んでいる。
彼女達は永遠亭の薬師である八意永琳の弟子でもあった。
また、彼女達は地上から月を護ることを役目として持っていて、かつては鈴仙の上司であったという。
さらに、その役目上、蓬莱山輝夜を始めとして永琳や鈴仙を討伐すべき任務を持っている。
もっとも綿月姉妹がその役目についている限りは、その任務が遂行される可能性は限りなくゼロに近いのであるが。

その綿月邸の一室では、綿月依姫がお茶を啜りながらくつろいでいた。
綿月依姫は妹のほうであり、巫女のような能力を持っている。

「お久しぶりですね、霊夢」

依姫は姪っこに久しぶりに会ったときような優しい笑顔で、霊夢を迎える。
しかし、そんな依姫に対して、霊夢は臨戦態勢をとる。依姫は苦笑した。

「あんたが黒幕よね?」
「そうですよ」

今回の異変は、依姫が神々と共謀して起したのであった。
霊夢は依姫の返事を聞くと宣告した。

「じゃ、退治されなさい」

退治されろと言われて、はい退治されますと答えるのは、天子ぐらいのものである。

依姫は湯飲みを置くと、剣をとり、庭に出た。
霊夢も依姫に続いて庭に出る。
霊夢が構える。しかし、その構えはいつもの霊夢とちがい余裕がなかった。
霊夢の全身の筋肉が固まっている。極度の緊張で。
前回闘ったときは十分に依姫の力を理解していなかった。
しかし、今回は依姫の力を知ったうえでの戦闘である。致し方ないところであろう。
依姫はそんな霊夢を可愛く思いつつ、声をかけた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。幻想郷のルールで闘ってあげますから」

依姫のこの一言に霊夢は安心した。
ここは幻想郷ではない。したがって依姫にはスペルカードルールに縛られる必要がないのだ。
さらに、霊夢は相手が妖怪であれば自分よりも相当強い者でも退治できる自信がある。
しかし、依姫は自分と同じ巫女のような存在であり、なおかつ自分よりも長けている。
正直、最も闘いたくない相手であり、ルールで縛らなければ勝ち目があると思えなかった。
しかし、依姫は幻想郷のルール、つまり、幻想郷の異変システムのなかで闘うと言ってくれている。
だから、霊夢は安心したのだ。
もちろん油断はできない。できないがそれでも安心感が霊夢の心の内を締めている。
それは霊夢の中に依姫に対する信頼や尊敬の念が少なからずあったからだろう。

依姫がスペルカードを取り出す。今回は幻想郷流のスペルカードまで用意していたようだ。

「それでははじめますよ」

依姫がスペルカードを宣言した。
霊夢は依姫がまた神を降ろしながら闘うのかと思ったが、意外と普通の弾幕であった。
しかもどことなく永琳の弾幕に似ている。
周囲を密度の濃い弾幕やレーザーで囲い込み、動きを封じてから攻撃してくる。
永琳の弟子というだけあって発想が似ているのかもしれない。
あるいはただ単に永琳のスペルカードを参考にしただけであろうか。

霊夢はその弾幕を順調に避けながら、確実にショットを当てていく。
依姫も用意したスペルカードを次々と繰り出してくる。
周囲では月の兎達が遠巻きに依姫の応援をしていた。
幻想郷のいつもの異変と同じ弾幕ごっこが、月の都で行われていた。

霊夢が何枚目かのスペルカードを取得したとき、依姫のスペルカードが底をついた。

「あら、勝っちゃったわ」
「だから言ったではないですか。幻想郷のルールで戦ってあげますと」
「うーん、何か釈然としないけど、まぁいいわ」

あからさまに手加減宣言されたような気がして、霊夢は少し面白くなかった。
しかし、手加減してくれないと勝てそうにないのも事実である。
霊夢もそこは流すことにして、本題に入っていった。

「それで、何が目的なのよ」
「幻想郷のある神様がですね、私に訴えかけてこられたのですよ。信仰が少なすぎると」
「ふーん」
「それで私が出てきたのですよ」

依姫の説明はこうであった。
信仰とは神徳に対する畏敬の念である。
神徳というものは特別なものではない。日常にありふれた様々なものが神徳そのものである。
日の光も、雨も、たわわに穣る果実も、大地も、全ての事象は神徳の顕れである。
問題は神の恩恵を受けている者が、それを感じているかどうかなのだ。
だから、信仰を復活させていくには、その神徳というものを目に見える形で示し認識させる必要があった。
そして、幻想郷においてもっとも神徳を示しやすいものは弾幕である。そう判断したのだ。
それが今回の異変の目的の一つであった。

そして、そのように考えているところに永琳から耳寄りな情報を入手した。
天人が天気に関わる異変を起こそうとしている、という情報であった。
それを聞いて便乗したのだと、依姫は霊夢に説明した。

なお、当初は依姫自身が神の弾幕を披露するつもりであった。
しかし、依姫としてはリスクのある手段であるから出来れば避けたかった。
リスクとは、永琳達と接触していることが何らかの形で月に知られるリスクである。

また、守矢神社の巫女も神降しができることは永琳に聞いて知っていた。
しかし、依姫は守矢神社が協力してくれると思っていなかった。
守矢神社は元々、月人の敵対勢力であったのだから。
正確に言えば、建前の祭神である建御名方神が、月人達によって守矢神社に封印されていたのだ。
そういった経緯もあって、守矢の二柱は月を良く思っていない。

諏訪子が不機嫌であったのは、早苗が天子の異変を解決することも、静観することも、
結果として月人に協力することになるからであった。
神奈子さえその気になってくれれば、今回の月人の異変などぶち壊すことも簡単にできることであったのに。
神奈子が自身の力で雨を降らせてしまえば、この異変は成立しなかった。

依姫も守矢のそういう事情は把握しているつもりであった。
だから、守矢神社には静観していてもらえるように配慮していた。
それとなく守矢神社の出る幕を用意しておいたのも、その一つであった。

そこに守矢神社が、協力を申し出てきてくれたのだ。
依姫としては、まさに渡りに舟であった。
守矢神社としても、最終的には協力したほうが自分達にも利益があると考えたのだろう。

また、協力の対価として要求されたのは、守矢神社の分社を永遠亭に建てることであった。
その分社はイナバ達が熱心に参拝しているようである。
建御名方神は、イナバ達の憧れの的であるダイコク様の息子であったから。

霊夢は依姫の説明に納得した。霊夢が納得したのを見ると、依姫はさらに話を続けた。

「ねえ、霊夢。あなたは巫女ですよね?」
「ええ、そうよ」
「ちゃんと巫女の仕事をしていますか?」
「妖怪退治ならちゃんとやってるわ」

依姫の顔つきが急に厳しくなる。

「そうではありません! きちんと神様を祀っていますか? と、聞いているのです」
「神様ならちゃんと祀ってるわよ」
「そうでしょうか?」
「ちゃんとかどうかは知らないけれど、私なりにはやってるつもりよ」
「あなたは出来ていない。少なくとも神々からはそのように聞いていますよ?」

依姫は少し表情をやわらかくする。

「いいですか、ただ儀式をすればいいというものではありません」

依姫は話す速度を落とした。霊夢の理解がきちんと追いついてくるように。

「神を祀るということは、巫女が神と対話をするということです。貴方は対話できていますか?」
「だって、うちの神様とか知らないし」
「それでよく巫女だなんていってられますね」
「仕方ないじゃない」
「確かに、幻想郷には特殊な事情があります。そして、あなたの巫女としての歴史も調べさせてもらいました」

霊夢は物心ついたときから博麗の巫女をやっている。
だが、妖怪退治の訓練は幼い頃からやっていたが、巫女本来の修行は後回しであった。
そして、霊夢の修行は正式なものと言えるような代物ではなかった。
霊夢の場合、天性の才能によってそれとなく近いことが出来ているに過ぎない。
しかし、それらは幻想郷の事情が、まず妖怪退治を必要としていたから仕方のないことではあった。

「それでも、貴方は巫女です。巫女である以上、神へのつとめが第一であるはずです」

依姫は適度に間をとりながら話す。

「しかし、あなたは神への仕え方を知らない。貴方は巫女としての正式な教育を受けていないのでしょう」
「受けていないわ」

霊夢も巫女の修行をやっていないわけではない。
しかし、その修行もほとんどが古い文献などを参考にしての独学であった。

「だから神の扱いを全くわかっていない」
「そうかもしれない」
「幸いあなたのことは幻想郷の神々も良く思ってくださっています。神罰がくだるようなことはないでしょう」

依姫はここですぅっと息を吸い込んだ。そして、霊夢の目を捉え言葉を続けた。

「ただし、貴方が今のまま中途半端な巫女であり続ければ、神々の怒りを受ける事になるかもしれません」

霊夢は依姫の言葉に背筋が寒くなった。
霊夢とて巫女である。神の怒りというものがどういうものか、分からないわけではない。

「そして、幻想郷の人間達に神への信仰心を植え付けることもできていない」

一番気にしている事を言われて、霊夢はうなだれてしまった。

「霊夢、まずはあなたが巫女として一人前になる必要があります」

霊夢は依姫の言葉を重く受け止めた。
霊夢だって巫女としてきちんと神を祀りたい。
しかし、その方法を知らない。
霊夢は顔をあげ、依姫に聞いた。

「どうすればいいの?」
「正式な修行を受けなさい。私が仕込んであげます」

天才は天才を知る。
依姫は霊夢の才を自分と同種の才であると見極めている。
そして、その才は自分と同等かそれ以上であると見込んでいた。
だからこそ、是非とも自分の手で仕込みたいと、かねてより思っていたのである。

「それは紫が許さないかも」
「大丈夫ですよ。あの妖怪も認めるはずです」
「そうかしら?」
「そうですよ。なぜなら思惑は同じはずですから」

紫から神事のことで怒られたりもしていたから、霊夢はそうかもしれないと思った。

「それに」

依姫の顔つきが急に険しくなる。
そして、依姫は剣を抜き霊夢の咽元に突きつけ宣告した。

「あなたをここから帰さないという手もある」

霊夢は息を呑む。依姫の言うとおりであった。
もし、地上に帰る道を閉ざされたら霊夢には帰る手段がない。
しかし、それでも大丈夫だという心証が霊夢にはあった。

「それこそ紫が許さないわよ」

紫が必ず助けてくれる、霊夢には何故かそう思えた。

「あら、随分あの妖怪を信頼しているのですね」
「別にそういう訳じゃないけど」

依姫は剣を鞘に収め、頬をほころばせて優しい表情に戻した。

「冗談ですよ。ちゃんと帰してあげます。それに、あなた自身は幻想郷の神々に気に入られています。だから、帰さないと私がお叱りを受けますよ」

そして、霊夢に告げる。

「それでは急いで幻想郷に戻りましょう。幻想郷に月が出ている時間しか通れないのですよ」
「ちょっと、そういうことは早く言いなさいよ」
「あら、八意様は仰らなかったのでしょうか?」
「ん?時間がないって言ってたかも」












十二



一方、永遠亭の一室。霊夢が鈴仙のところに辿り着いたのを確認すると、永琳は宙の一点に呼びかけた。

「出てきなさい、紫」

永琳の呼びかけに空間の切れ目から八雲紫が現れた。

「あら、今回は高見の見物をきめこむつもりだったのだけど」
「よく言うわよ。あなたもいろいろ動いていたくせに」
「私は何もしてないわよ」
「何もしていない?何もさせていないの間違いじゃないの?」

永琳の指摘に紫が笑みを見せる。
紫は有力な妖怪達が余計な動きをしないように抑えていた。
アリスが身を引いたのも、紫の働きがあってのことであった。

その紫に永琳が告げる。

「紫、ここから先はあなたにも覗かせない。豊姫よろしくね」
「はい、八意様」

永琳の指示をうけ、隣室に控えていた綿月豊姫が出てきた。
綿月豊姫は綿月姉妹の姉のほうである。空間と空間をつなげる能力を持つと言う。
永遠亭と月の都とを繋いでいるのは彼女の能力である。
豊姫は無駄にくるくる回りながら、縄のようなものを取り出す。豊姫は一人だけ楽しそうであった。

「ほら、また縛ってあげるよ、このフェムトファイバーの組紐で。それともスペルカードとやらで私と戦う?」

ふうっと息を吐くと、紫はその場に座り込んだ。

「いいわ。今回も大人しく縛られてあげるわよ。で、何を企んでいるの?」

その問いには永琳が゙答える。

「わかっているでしょうに」

紫は表情だけで、わかっているけどね、と返しながら答える。

「ま、いいわ。今回は邪魔しない」

紫が永琳の目を見てそう言うと、永琳がわずかに頷いてみせる。

「物分りがいいのね」

そう言う永琳に、紫が述べる。

「月の者であっても幻想郷の住人であれば異変を起こしても構いません。幻想郷が崩壊するような危険が無ければおおめにみます」

そこで一呼吸おくと、紫はにやりと笑い、豊姫の顔を見やった。

「でも、貴方達にはあとでオトシマエをつけさせてもらいますわ」

紫は、貴方達と言った。これは豊姫と永琳ではない。
豊姫ともう一人は、霊夢の向かった先に居るであろう依姫のことである。

「あら、お酒ならあげない」

豊姫は能天気な調子で返すと、同じく隣室に控えていたてゐにフェムトファイバーの組紐を渡し、紫を縛らせた。

紫はそのオトシマエを永琳と折衝した。
その結果綿月姉妹に二つの要求を飲ませることとなった。
一つは、異変解決後の宴会に関して料理と酒を全て提供することであり、
もう一つは、霊夢と魔理沙に対する異変解決の報酬全額を負担することであった。

いかにも幻想郷らしいケジメに紫は一応納得した。ただし、それは建前の部分でしかない。
紫個人としてはそれだけでは気が済まない部分もあった。
しかし、綿月姉妹に対する個人的な鬱憤は、また別の機会に晴らすことにした。
もっとも、永遠亭の存在自体が綿月姉妹にとっては弱みでもあるのだから、
紫は鬱憤を晴らすことはいつでも可能だとも思っていた。
月に追われている永琳と輝夜や、月から逃亡した鈴仙と通じているということは、
綿月姉妹の立場を悪くするには十分な材料だから。

永遠亭に残った者達の間ではとりあえず話がついたので、あとは霊夢の帰りを待つだけとなった。
紫は縛られたままであったが、割と呑気に構えていた。
もっとも、不穏な動きを感じた時のために、自分の式である妖孤八雲藍を永遠亭の敷地外に待機させていたが。
また、魔理沙は紫と永琳の態度から安心していた。

永琳はてゐに食事を用意させ皆に振舞う。すでに宴会気分である。
永遠亭の姫君である蓬莱山輝夜も出てきて客のもてなしを始めた。客と言っても魔理沙と縛られている紫だけであるが。
縛られている紫もイナバのお酌で飲んでいる。イナバにアーンして飲食をする姿は微笑ましくもあった。
なお豊姫の姿はなかった。おそらく奥にいる鈴仙に会いに行っているのだろう。

みんないい感じに酔いがまわってきた頃、ようやく霊夢が帰ってきた。依姫と共に。
そして、依姫が紫に問いかける。

「八雲紫。あなたは何故月に霊夢をよこしたの?」

レミリアらが月に攻め込んできたときのことを言っているのである。
紫はつまらなさそうに答えた。

「ただの囮ですわ」

即座に依姫が否定する。

「うそ。あなたは霊夢に修行をさせたかったのでしょう」

紫の口角が僅かに上がる。

「そうだとしたら?」
「もう一度霊夢を私に預けなさい。一ヵ月やそこらじゃ足りないわ」
「だめよ。私の霊夢は私以外持ち出し禁止なの」

そこへ永琳が口を挟む。

「なら依姫、あなたが来るしかないわね」
「そう仰いましても、頻繁にここへはこれませんよ?」
「大丈夫よ。霊夢は貴方に似て優秀だから、月に一度もくれば十分よ」

依姫にそう告げると、永琳は紫のほうを向く。

「ただし、修行の場所はここ永遠亭。それでいいかしら?」
「それでいいわ」

紫は永遠亭と綿月邸が自由に行き来できるのであろうと推測していた。
そして、永遠亭内であれば、綿月邸内にいるのと同様に月の者に動きを悟られる心配がないのだろうと。
つまり、綿月姉妹は永遠亭の敷地内から出なければ、幻想郷に来ても立場を悪くするリスクは極めて低い。
そうでなければ、綿月姉妹が姿を見せるわけがないのだから。
そして、永遠亭なら特に妨害工作を受けないかぎり、紫の目が届く。
したがって、永琳の提案は両者にとって唯一合意できるものであると紫も考えたのである。

「あなたの目論見どおりかしら?」

そう言いながら、永琳が意地の悪い笑顔を見せた。

「さて、どうかしら」

いつもの胡散臭い笑顔で紫が答えた。















十三



翌朝、霊夢はいつもどおりの朝を迎えていた。
いつもどおりに境内の掃除をして、いつもどおりに朝食をとっていた。
昨日まであれほどべったりとくっついていた魔理沙も、今朝はいない。
久々に一人での食事であった。

霊夢は昨日のことを考えていた。
依姫が言うとおり、自分はこの博麗神社に信仰を獲得する事はできていない。
守矢神社や命蓮寺は確実に信仰を増やしているというのに。
霊夢は自分の神様である博麗神社の祭神に申し訳ないと、かねてより思ってはいた。
しかし、具体的にどうすればいいのか、ずっと霊夢にはわからなかった。
結局、信仰というものがどういうものなのか、そもそも理解が足りていなかったのだ。
そのことを今回の一件で十分に思い知らされた。

魔理沙は言った。早苗のほうが優秀なのだな、と。
本当にそのとおりだと、霊夢は思った。
今回の異変の中でも、早苗はまた信仰を増やしていた。
そういう早苗を、霊夢は素直に凄いと思っていた。
そんなことは決して表には出さないのだが。

そして、霊夢は依姫から受ける正式な巫女修行に心を馳せた。
霊夢はこの修行を心待ちにしていた。
この修行によって、自分も一人前の巫女になれると思えば当然のことであった。
霊夢は早く一人前の巫女になりたかった。
博麗神社を、賽銭箱に賽銭を毎日入れてもらえるような、そんな神社に早くしたいと思っていた。
依姫の修行を受ければそれも叶うのではないか、そう思うと霊夢は楽しみで仕方がない。

そんな事を考えながら、霊夢は食事を終えた。そして、食器を片付けると、身支度を整えにかかった。
新品の巫女服に着替え、道具も一番綺麗なものばかり揃えた。
今日は巫女としては晴れの日であり、勝負の日でもある。
巫女としての資質を問われる、非常に重要な行事が行われる事になっていたのだ。

霊夢は今日、人里で雨乞いの儀式をする。
霊夢が神を降ろし、神に雨を降らせてもらえるように頼みこむ。
それを衆人監視のもとで。
これを上手にこなし、実際に雨を降らせる事ができれば、巫女としての面目躍如となる。

しかし、不安もあった。
神が果たして自分のような未熟な巫女の言う事を聞いてくれるのどうかわからないから。
神を降ろしたところで、神がその気にならなければ力を借りる事はできない。
そして、雨の神である貴船様には一度断られている。
今回も断られないか、不安であった。

霊夢は身支度を整えると、精神を集中させ、その不安を追い出した。
そして、自分の両頬を二回、パン、パン、と叩くと神社を出た。








霊夢が人里に着くと、そのときすでに慧音らがつくった祭壇の周りに里人が集まっていた。
珍しく霊夢の表情に緊張の色が浮かんでいる事に、霊夢をよく知る者達は少なからず驚いていた。

霊夢は人々に丁寧に一礼し、祭壇へと歩いていった。
祭壇の前に立つと、神を降ろすための儀式をすませる。
霊夢は準備が整うと、大きく三回深呼吸した。
そして、祭壇に向かって祈祷を始めた。

「思兼神は晴れやかなる空に満足され、天照大御神は隠れられた。幻想郷の大地は潤いを欲している。淤加美神よ、龍の御力により慈悲の雨を賜り給え」

霊夢が祈祷を終えた。
すると、その霊夢の祈祷に呼応して、空一面に雲が広がっていく。
一ヵ月半ぶりに太陽が遮られた。

次には、ぽつり、ぽつり、と待望の雨が降り出した。
里人たちは感嘆の声を上げた。

雨は次第に強くなり、ついに本降りとなった。
乾ききった地面に雨がどんどん吸い込まれていく。
大地が神の恩恵を噛み締める。

里人たちは神の力を目の当たりにし、雨に濡れるのも忘れていた。
久々の恵みの雨に安堵する者、歓喜する者、反応は様々である。
そして、霊夢に向かって手を合わせ祈りを捧げる者もいた。

霊夢は初めて自分が信仰を集めていることを実感した。
そして、心の底から湧き上がってくる歓び、巫女としての歓びを思う存分に味わっていた。








こうして、異変は解決された。
その後、霊夢は月に一度永遠亭に通い、正式な巫女修行を受けている。
その結果、神社では独り言をいう霊夢がよく目撃されるようになった。
恐らく神降ろしではないかと思われる。邪魔してはいけない。






























独白



先年、幻想郷縁起で今後のあり方を考えると私は書いた。そして、今回はこのような物語風に書いてみた。大抵の場合、異変はごっこ遊びとして行われている。ならば、その記録も娯楽としての要素が強くてもいいのではないか、と私は考えたのだ。ただし、綿密な取材の上執筆した物語ではあるが、私の想像などによって補った部分が多々ある。また、話してくれた人妖が本当のことを言っているとは限らない。したがって、物語はあくまで物語であることを忘れずに読んでもらいたい。また、先年の幻想郷縁起の中で紹介できていない人妖は、できるかぎり詳しく解説した。素敵な貴方が楽しい幻想郷ライフを送るための参考にしていただければと思う。

今回の異変は非常に意味の深いものであったと思う。その意味を読者にはよく考えてほしい。この幻想郷における人と神の関わり方は今のままでよいのか、今後どうあるべきなのか、私も今回考えさせられることが多かった。今までの幻想郷縁起においては神様はほんの少ししか触れていなかったが、今後は普段姿を見ることの出来ない神様についても書く機会を作れればと思っている。神様も決して聖人君子ではない。信仰が少なければ拗ねたり、不貞腐れたり、八つ当たりしたりする。案外、人間くさいものだ。信仰が無くなれば消滅してしまうのだから致し方のないところであろう。また、巫女は神を操れるわけではない。あくまで神と対話し、神の気が向いたときに力を貸してもらえるに過ぎない。困ったことがあれば博麗の巫女になんでも頼みにいく、というのは控えたほうがよかろう。

今回の異変の発端は幻想郷における信仰のあり方に不満が溜まっていた神様であったようである。具体的にどの神であったかは、私の取材では明らかにならなかった。永遠亭の薬師の弟子であるという、綿月姉妹(真偽の程は定かではないが、月の使者という役目を持っている月人らしい)の話を直接聞くことが出来なかったのが残念である。八意永琳氏に取材しても上手くはぐらかされてしまった。どうも、人生経験の量で差がありすぎるのか、私には彼女の壁を突き破ることは出来なかったのである。ただ、それでも今まで謎の多かった永遠亭に関しては、かなり詳しい情報を手に入れることが出来た。

また、今回は博麗の巫女が珍しく心の内を語ってくれた。この物語の中にも博麗の巫女が語った言葉を、そのまま使っているところも含まれている。そして、博麗の巫女はこの事件以降、正式な神事というものを学んでいるという。これからは人里の者も博麗神社に参拝するようにするといいのではないだろうか? 以前のように妖怪に襲われる心配がない今の幻想郷なら、妖怪だらけの神社であっても安全である。もちろん相手が人外である以上、その怖さを理解しておく必要はある。しかし、ルールさえ守っていれば命を危険にさらす心配はほぼないと言ってもいいだろう。私も、今回の異変を機に博麗神社に参拝することにした。毎日は無理でも月に一度くらいは参拝しようと思う。しかし、博麗神社の神様には一体どのような御利益があるのだろうか? 全く浅ましい考えなのだが、私も参拝する以上は御利益を期待してしまう。これも人情であろう。神社といえば守矢神社もあるのだが、あちらは妖怪の山にあるためお勧めはできない。人間が参拝するためにはいちいち天狗と話をつけなければいけないからだ。しかし、守矢神社の分社ならあちこちにある。人里にもあるので手近に済ませたいのならそちらに参拝するといいのではないだろうか? そして、博麗神社にも守矢神社の分社はあるので、博麗神社にいけば両方にお参りできてお得である。

今回の執筆においては数多くの人妖に取材をした。そのなかでも妖怪の賢者である八雲紫氏には特にお世話になった。彼女はこの異変の成り行きを全て見守っていたという。そして、この物語を書く事を熱心に勧めてくれたのも彼女であった。また、聖白蓮氏の説法は随分勉強になった。彼女は人里でも大人気であるが、それも頷ける。彼女の話は非常にわかりやすく、澱みがない。そして、今回の取材の多くは天狗である射命丸文氏と協力して行った。彼女はとても顔が広く、私も大いに助かった。おかげで、普段取材した事のない人妖にも話を聞くことができた。そして、この物語を書くにあたっては天狗の書物を随分参考にさせてもらった。また、天狗の描いた漫画というものもいくつか読ませて貰った。実は博麗の巫女に案内してもらって地霊殿に取材に行く予定になっているのだが、そこの妖怪達を漫画で紹介しようかとも考えている。先年書いた幻想郷縁起でも簡単なイラストをつけていたが、それだけでは伝わりきらないものを伝える事ができるのではないかと期待している。

今回の異変の後、幾度かの会合が持たれた。その会合では今後神々の不満を溜めないためにどうあるべきかが話し合われた。話し合いの結果、年に一度祭りが行われることとなった。弾幕祭りである。博霊の巫女と守矢の風祝がそれぞれに八百万の神を降ろし、スペルカード戦を行うことになったのだ。そして、それを見て我々が神の御力を再認識していくこととなった。

最後にタイトルであるが、「福は雲の如し」とつけた。この言葉は聖白蓮氏の説法から取った。以下は会合の中で行われた聖白蓮氏の説法からの抜粋である。

「仏の世界では、福は雲の如しと申します。これは人間も妖怪も様々な恵みを受けて生かされているという意味です。我々生きるものはすべてそのことを忘れてはいけません。そして、神や仏というものはその恵みの象徴でもあるのです。つまり、その恵みに感謝することがそのまま神仏への信仰ということです。神や仏を祀るということは、その恵みに対する感謝を形に表すということです。このことに人間も妖怪も違いはありません」



                                                                                                          九代目阿礼乙女 稗田阿求
拙文を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

1/17追記

まずは、読んでくださった方ありがとうございます。
投稿された作品は全て読ませていただきました。
その上で自分の気に入った作品(1/4程度)を選んで評価しています。

また、拙作にたくさんのコメントを頂き、喜んでいます。
また、様々なご指摘ありがとうございます。
全てのコメント及び参加者、そして、運営様に感謝。
いすけ
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/11/20 04:42:17
更新日時:
2010/01/17 21:19:18
評価:
22/22
POINT:
96
Rate:
1.05
1. 2 バーボン ■2009/11/23 13:20:02
長くなる事は一向に構わないと思うのです。長編でしか表現出来ない物もありましょうから。
しかし見せ所らしい見せ所も無い、ただ冗長な文と言うのは読む事が苦痛ですらあります。

粗筋だけ見れば、個人的には中々に興味を惹かれる物だったと思います。会話も酷く違和感を感じるとまではいきませんでした。
けれど、地の文が淡白過ぎる。長々と描写ではなく説明が続き、見せ場に出来る筈の弾幕シーンすら一行二行で終わってしまう。せっかくの力の入った粗筋が非常に勿体無いと感じました。
2. 2 shinsokku ■2009/11/26 19:08:06
残念ながら、自分には楽しめませんでした。
申し訳ありません。
3. 4 神鋼 ■2009/12/01 21:02:02
全体的に予定調和じみていて、遊びの量の割りに窮屈に感じました。
4. 4 藤木寸流 ■2010/01/04 23:50:01
 どこか変なノリだなあと思ったら阿求さんの書いた文章でした。
 それにしては月のあれこれとかだいぶ詳細書いちゃって大丈夫なのかとか思ったりもしましたが(求聞史紀では紹介してなかったので)。
 想像で補ったにしても、当事者が本当のことを言ってるとき限らないと念押ししても、ほぼ真実ですし。
 それにしても戦闘描写があまりにもばっさり切られすぎてて、盛り上がりどころはあるのに全くといっていいほど盛り上がらなかったのがなんとも。
 全体的に描写が少なく、話のテンポを優先したシンプルな構成ではあったのですが、そのためかどうしても味付けが薄く物語全体の印象が薄まっていたのが残念。
5. 10 ルル ■2010/01/05 17:07:58
平易かつ滑らかで読みやすい、と思ってたら阿求作でしたか。どうりでw
異変のコンセプトがいいですね。未来に繋がる感じで安心します。
綿月姉妹も違和感なく自然な登場で良かったです。というか、この二人だったら好きになれそう。
やや描写が薄いかな?と最初は思いましたが、途中で「STGを小説で読んでる」ような気がしてきてハッとしたり。

お見事でした。
どうもありがとうございます。
6. 9 静かな部屋 ■2010/01/06 11:09:20
バトルシーンが手抜き。
ま、まともに書いたらありえないサイズになるでしょうし、そこがメインでないのは重々承知ですが。

天人のパートは余計ではなかったか?

しかし、冒頭のグダグダからは想像もできないほど、しっかり創ってある作品だと思いました。
登場人物たちの行動が、全て一点に集まる様子は素晴らしかったです
7. 4 白錨 ■2010/01/10 00:48:26
序文→三月精の流れはとっても良かったですし、異変の再来、連鎖の流れも良かったんですが
肝心のオチがいまいちだという印象を受けました。
でも裏返してみると、このスケールの作品をきちんと終らせたのはなかなかだと思います。
8. 6 パレット ■2010/01/10 04:49:21
 なんか全体的に、ダイジェスト版って感じが強いです。戦闘はたくさんあるのに戦闘描写がぜんぜん無いし。
 主に地の文に関して、淡々と、簡潔に描かれすぎてて、小説的文章としての魅力があまり無いというのが正直なところ。ストーリーはきっちり組まれてると思ったので、文章面でもうちょっと艶が欲しかった。個人的に咲夜の口調にちょっと違和感を覚えたところもあったかもです。

 ↑……とここまでが、独白部分にたどり着くまでに読みながらメモっていた感想です。独白部分で全部ひっくり返りました。
 端的でかつ微妙に曖昧な第三者視点、簡潔な地の文、唐突に入るキャラの解説等々、全部に筋が通ったように感じてびっくりしました。阿求の書いた物語としてみるだけで、なんかもうところどころにすごく細かい気配りがあったように思えて。いや、素晴らしかったです。
9. 4 椒良徳 ■2010/01/11 17:25:25
文章はメリハリがなく、ストーリーも盛り上がりに欠けます。
ぐーたら巫女のせいで信仰不足に悩む幻想郷の神が、
神々と共謀して異変を起こすというアイデア自体は面白いのですが、
貴方が書こうとしているSSを書けるだけの実力が貴方にはない。まったくもって力不足です。
とはいえ、アイデア自体は面白く、これだけの長文を書くのも一つの才能なので、
この点数を入れさせて頂きます。つぎはご尽力なさってください。
10. 8 ホイセケヌ ■2010/01/13 15:16:28
オュ。ゥ、ネ、キ、ニホカ壥、ハ、、ホトユツ。」ョ翠荀ムイ、テ、ニアシラ゚、ケ、ネヒ、ソ、チ、ヒ拳、ケ、テ靤エ、ャ@、ッ、ロ、ノコ搓、ヌ。「殪j、ャ、ハ、オ、ケ、ョ、。」・キ・・ラ・、ヌユi、゚、荀ケ、、、ホ、マテタオ网タ、ア、ノ。「、ウ、ウ、゙、ヌテ靤エ、カヒユロ、鬢、ニ、キ、゙、テ、ニ、マ痩、ソ、チ、ヒクミヌ鰓ニネ、ケ、、ヒ、箋タエ、ハ、、。」

、ネヒシ、テ、ニ、キ、゙、テ、ソ瓶オ网ヌヒス、ホリ豆ア、ハ、、ヌ、キ、遉ヲ、ヘ。」
ラウ、ホクミマ、マノマ、ホヘィ、遙」、ハ、ホ、ヒラ矣、ホユツ、メ侃、タ、ア、ヌ。「、「、ホメサ喨メ、、、ソメ雰网ホメ簧カ、ャス筅テ、ニ。ク、荀鬢、ソ」。。ケ、ネヒシ、テ、ニ、キ、゙、テ、ソ。」ヨェ、テ、ニ、ォ、鰈i、゚ヨア、ケ、ネ。「コホ、タ、ォオュ。ゥ、ネ、キ、ソホトユツ、ヒテ、ヒホカ、ャ、「、、隍ヲ、ヒクミ、ク、、ホ、ャイサヒシラh。」ノマハヨ、、、ハ、「。」
11. 4 詩所 ■2010/01/13 21:49:31
 スペルカードに則ってとは言うけれど、異変に巻き込まれている一般人からすればたまったものではないな。
 なんて思うこの頃。
12. 6 零四季 ■2010/01/13 22:47:29
結果として上手く纏まっていたように思うのだけれど、一つ一つの展開が急過ぎるような気がしました。
でも霊夢の神性(?)というなかなか見ないテーマを含んでいながらも良くまとめたな、と。
13. 3 deso ■2010/01/14 01:36:42
地の文が単調で、味が足らないように思います。
また、登場人物が多いわりにうまく活かされてません。
特に、小傘は要らないんじゃないかと感じました。
もっと全体を絞って、書き込むべきところを増やせばもっと良くなるんじゃないかと思います。
14. 5 やぶH ■2010/01/14 23:50:48
魔理沙の弾幕ごっこの最中に寝ている霊夢。この構図に度肝を抜かれました。ある意味、この作品を象徴する場面なような気がします。
つまり、事件は進んでいるのにテンションが低く、テンポがのんびりしていて困ってしまいました。
(東方っぽいといえばそれまでですが、これはSTGではなくSSなので、操作する快感が無いかわりに、文章で読者を引っ張ったりドキドキワクワクさせなくてはいけません)。
つまり、何でこーなるの? というストーリーラインが(特に序盤に)多いです。
説明が多い割にアクションが足りていない場面、あるいは些末な情報が多いわりに必要性の薄い場面、ような、だろう、らしい等の曖昧にしなくてもいい表現等々、文章にもまだ工夫の余地が多く残されていると思います。
いずれにせよ、物語における絶対的な神(あるいはそれに近い何か)を上に立ててその意図のままに優位な立場からキャラクターに影響を及ぼす異変を描いた作品は過去にも多く類似例がありますが、それぞれのキャラクターの動機、それに応じた行動等を、よほど深く丁寧に扱わなければ、読み手を納得させることのできない難しいジャンルです。……ここでは物凄く偉そうなこと書いてますが、私も書ける自信が全くありません。ごめんなさいorz

それはともかく、SSとしての面白さを評価するなら、この点数になります。が、まだ工夫の余地は残されているはずです。次回作に期待しております。
15. 7 2号 ■2010/01/15 08:41:33
神々のことを考えさせられる良いプロットでした。
序文との兼ね合いもよく、読後感がさわやかでした。
文章は、中盤以降ちょっと読みにくかった気がします。
最後に、小傘がかわいかったです
16. 3 八重結界 ■2010/01/15 13:41:29
 単調な文章と展開が続いた為か、中盤でかなり飽きがきてしまいました。
 やたらとキャラクターの紹介をしているのは何でだろうと首を傾げた点については、ラストでああと納得しましたが。
17. -3 Tv ■2010/01/15 19:31:27
うーん。これは申し訳ないのですが、個人的にはさっぱり合いません。
まず、依姫登場以降の霊夢のキャラに違和感ありすぎ。神を祭って飽きて放置して消滅させる霊夢が本気で巫女としてだの神のためだのを考えているとは思えません。
また、何よりも信仰すべきだ、神に感謝すべきだというのが霊夢、阿求などのキャラの主観を超えて押し出されていて正直宗教的過ぎて気持ち悪い。

お読みになったことがあるかもしれませんが、以前創想話でそっくりな展開のものがありました(雨が降らないというのも神の仕業も、それは人間が多くの表に出てきていない神を崇めないから悪いのだと言う論調まで全く同じ)。
そちらと同じく、一方的に被害を受けている人里の扱いが軽すぎてどうにも。メデタシメデタシで終わるというのがまた残念。これならば救いなくバッドEDのほうが、と思ってしまいました。
一度感想を書いてから時間を置いて読み直してみましたが、やはり前向きに捉える事は無理でした。
残念ですが、こちらの評価でさせていただきたいと思います。
18. 4 774 ■2010/01/15 21:08:18
後付けの説明で強引に話が進んでいく感じで、何となく釈然としない感じでした。
あと、(ある程度は狙ってるかもしれませんが)語りが淡々としていて起伏に欠けていた感じもします。
19. 1 時計屋 ■2010/01/15 21:57:22
 不要なシーンが多すぎるように思えます。
 こんなにたくさんの登場人物を出す必要はあったのでしょうか?
 また、SSの前半部分と後半部分のつながりが薄く、冗長な印象をぬぐえませんでした。

 文章も情景描写や心理描写が不足しており、読んでいてイメージのしづらいものでした。
 さらに同一シーンでの視点も一致していないため、誰に感情移入していいのか分かりません。
 まずは場面ごとに主人公を決めて、行動や会話に付随する視線や思考を追っていくと、描写もすっきりするのではないでしょうか?
 もちろん、がちがちに拘る必要などありませんが、意識するだけでもだいぶ違うと思います。
 (もし作者様が複雑になるのを承知で敢えて「神の視点」を採用したのであれば、上記のは戯言として無視してください。ただ不必要に思える視点の切り替えが頻繁にあったため、恐縮ですが意見を述べさせていただきました)

 あくまで私見ですので、ご参考にしていただければ幸いです。
20. 2 木村圭 ■2010/01/15 22:56:02
早苗は力を間借りしてるだけであって降ろしているわけではないのでは……? まあいいやよく分からないし。
文章そのものに面白みが感じられないのは阿求の筆だから、という意図から来ているのだと思います。
が、それならその旨を最初から認識させて欲しかったです。
最後にそーだったのかー、と納得はしても、読み進めている間のもやもや感は無くなってくれませんでした。
21. 6 如月日向 ■2010/01/15 23:26:25
 原作風の文章で最後まで書ききっているのがお見事っ。
 後半はもっと盛り上がって欲しかったです。
22. 5 ■2010/01/15 23:35:24
なんというか「異変ならこうだろう」というテンプレにしたがって書いてみました的な序盤が少々疲れました
ただ、言いたい事は判ったし面白かったです。
けどそこに至るまでがダレ気味で、かなり目が流れたのも事実
「雨が降りません」という理由を丁寧に追って言ったのは好印象。
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