さよなら魂魄また来て蛇蠍

作品集: 最新 投稿日時: 2009/11/21 11:47:07 更新日時: 2009/11/21 11:47:07 評価: 19/19 POINT: 137 Rate: 1.62
「さあ、私を殺してくれる?」
 濡れそぼった髪を掻き揚げようともせず、滴る雫もそのままに、リグル・ナイトバグは陰惨に微笑み、両手を広げる。
「……」
 対峙する影、魂魄妖夢は唇を噛み締め声も無く、ややあって腰に佩く二本の刀をすらりと抜いた。
 ひたりと、一分の隙も無く構えて、決意と共に呟く。
「……貴方の望みを叶えます」





***

チギリアラバヨキゴクラクニユキアハムマツハレニクシムシノスガタハ 

***





 今日も今日とて幻想郷は宴会日和である。
 もとを正せば伊吹萃香の悪戯が事の発端だが、最早そんな事は誰も覚えてなどいない。
 弾幕ごっこ同様、宴会は幻想郷と相当の親和性があったようだ。
 今宵の会場は、白玉楼である。
 冥界と顕界を隔てるはずの結界は、未だ妖夢の給金の如くぺらぺらだ。
 いつもの面々に幽霊たちが加わり、宴会場は空前絶後、未曽有の大賑わいである。
 そんな中でも主人役たる西行寺幽々子は、いつも通りの掴み所のない笑顔を湛え、生者と死者との間を巡っていた。無論、彼女に付き従い、黙々と給仕をこなす妖夢の姿もある。
 一頻りの挨拶を終え、二人は喧騒を抜け出した。いささか疲れた面持ちで、妖夢は溜め息を吐く。
 一方の幽々子はそんな様子を露ほども見せず、立ち止まることもなく歩を進めていった。
「幽々子様?」
 外れ外れへと向かう彼女の後を、妖夢は慌てて追いかける。
「どちらへ?」
 と問う自らの従者に、幽々子は視線で応えてみせた。
 白玉楼の夜は闇夜ではない。幽霊たちが発するほの白い光が、四六時中庭園を照らしているからだ。
 しかし彼女の見た先は、茫洋たる白ではなく、炯々たる……蛍々たる蒼い光に満たされていた。
 気配に気づいたのか、その源が闇色を翻し、振り向く。
 リグル・ナイトバグ。
「いかがかしら」
 更に気安く足を進め、幽々子は彼女の隣に並んだ。
 今の今までリグルが眺めていた庭園を、同じく見やる。
「壮観だね」
 差し出された酒盃を受け取り、彼女は勿体ぶることもなく感想を述べた。妖夢の表情が、少しばかり得意げなものとなる。
「……紅魔館は壮麗だけれど、私には少し煌びやか過ぎる。こっちの方が、私は好きだな」
「雅びなご趣味で」
「蛍だからね」
 含んだような屋敷の主の言葉に、彼女はしかし、気安く答えた。
「それに」
 ほら、とばかりにリグルは左腕をかざす。
「こんな有り様、余所じゃ絶対見られないし」
 彼女の指の先。
 そこには折り重なるように戯れ合う、幽霊たちの姿があった。
 怪訝そうに、妖夢が首を傾げる。
 転生待ちの幽霊たちでごった返す白玉楼では、一歩歩けば当たるようなありふれた情景でしかない。
 まあ確かに、余所では見られない有り様ではあるかもしれないが……
「蟻と蝶々と蟷螂が、手に手を取って舞踏会なんて、死後でなければ有り得ない話よね」
 楽しげに言って、リグルは酒盃の中身を呷った。
 言われて妖夢は、改めて眼前の光景を見る。
 変わらず遊ぶ、幽霊たち。
「よく、見分けがつきますね」
「つかないの?」
「……恥ずかしながら」
「だーめだなぁ」
 頬を掻く彼女に、リグルは呆れたように溜め息を吐いた。
「蝶よ花よって、見てくればっかり追ってるからよ。毛虫が蝶になるんだから。本質を見なきゃ、本質を。……人として生まれたからには、本質を見極めてから物を語らなくちゃ、ね」
「含蓄深い御言葉ね」
 得意気に言う彼女に、幽々子が口をはさむ。
「受け売りだから」
 悪びれもせずに、リグルは答えた。
「受け売り、ですか」
「そ。受け売り」
 妖夢の反芻に殊更軽い調子で返し、そして思いを馳せる様に目を細める。
「……しかし幽霊か。……そっかぁ」
「え?」
「んーん、なんでも」
 誰とは無しの呟きに妖夢は訝しむが、やはり彼女は軽く頭を振り、そして幽々子へと視線を転じる。
「当然、人の幽霊なんかもいるんでしょ?」
「さあ、どうかしら。本質を見極めてみてはいかが?」
 彼女の答えに、リグルは肩を竦めた。
「なら、そうさせてもらうわね」
「ご随意に。……妖夢、一名様ご案内よ。客間を一室、用意して頂戴」
「お、話せるね」
「人として生まれましたから」
「亡霊でしょうに」
「蛍でしょうに」
「違いなーい」
「え? え?」
 奇妙な言葉遊びを興じながら、リグルと幽々子は再び宴の席へを戻ってゆく。
 目を白黒させながら、妖夢は二人の後を追った。



 かくして妖夢にしてみればなし崩しに、白玉楼の虫との共同生活が始まった。
「改めて言うほど、この御屋敷も蟲と無縁じゃないど」
「うわっ?」
 にゅっ、と朝餉の用意をしていた妖夢の後ろから、当の虫が顔を出す。
「お早う」
「……お早うございます」
「早いね」
「貴方も」
「ま、蟲の知らせサービスは伊達じゃあないってことよ」
 誇らしげに胸を張って、今は絶賛業務停止中の己の事業を自慢してみせた。
「でも、ここには貴方の操れるような蟲なんていないでしょう。冥界ですよ」
「私は生きてる。庭木も生きてる。蟲がいなくて、草木の花実が咲くもんか」
 さも当然とばかりに言って、ぴと右手の人差し指を立てる。
 ひらひらとどこからともなくその指に、一匹の蝶が寄って羽を休めた。
「ね?」
「……そのようですね」
「お望みとあらば、台所の嫌われ者たちも呼べるけど」
「全力で遠慮します。……普通の食事で、いいんですよね?」
 愛嬌ある奴らなのに、とぶつぶつ言っている彼女に一応確認する。
「流石に水だけじゃ、大きくなれないからね」
 元々蛍は肉食だし、と付け加えてリグルは首肯した。
「お好みは人肉ですか?」
 ちょっと警戒してみせる彼女に、彼女は大仰に肩を竦めてみせる。
「あんた、剣の腕前を褒めてくれた相手を、斬り捨てる気になる?」
「いいえ」
「じゃあ、そういうことよ」
「不良妖怪ですね」
「バグだからね」
「蛍でしょうに」
「違いない」
 こういう言葉の小競り合いも、やってみれば案外面白いものだった。
 言い合いの最中でも止まっていなかった仕込みの手は、忠実に一人分多い朝食を作り上げている。
 一日の、始まりだ。



 場所を縛るくらいなら初めから招きはしない、と幽々子は言った。朝食の席で、そう言った。
 つまりそれは、リグルが白玉楼のどこで何をしようとも罷り通るというお墨付きをもらったということである。
 もっとも、幽々子は彼女の思惑を察している節はあったし、妖夢も彼女にはある程度の分別はあるだろうとも思っていた。
 だからこれは、別に無体な場所をのぞかれたとか、秘め事をほじくられたとか、そういう類いの話ではない。
 ただいつもの席にもう一人……あるいは一匹、観客が余計についたに過ぎない。
 ただそれだけのことなのに、常ならぬ身の強張りを妖夢は感じていた。改めて、自らの未熟さを痛感する。
 ならばこそ、一層の研鑽を積まねばなるまい。
 呼気も鋭く、妖夢は二刀を振り上げた。

 妖夢の日課たる剣術鍛錬。庭先で彼女が刀を振るい。
 そして庭に面する縁側に、幽々子とリグルが並んで座っている。
「……ねえ」
 いつも以上の緊張感を持って励む妖夢を尻目に、リグルは隣の少女に声をかけた。
「何かしら」
「なんであんなこと、言ったの?」
「何のことでしょう」
 惚けた口調でこちらを流し見る幽々子に、彼女は苦笑いを浮かべる。
「……渡りに船だったのは、確かだけど。正直、煮詰まってたし」
「それは何より」
「でも、理由が見えないのは気に食わない」
「人の好意は、素直に受け取るべきよ」
「亡霊でしょうが」
「蛍でしょうに」
「それは今は関係ない」
「違いない」
 言って彼女は口元を隠し、忍び笑う。答える気は、ないらしい。
 リグルは苦笑を深くして、両腕を後ろについて空を見上げた。
「……そういうところは似てるよ、本当」
 眩しそうに瞳を細めて、言う。
「光栄に、思うべきなのかしら?」
「多分ね。……まあ」
 呟き再び隣りを見、
「全然、似てないんだけどね」
 屈託なく笑う。
「何がです?」
「うわっ」
 いつの間にやら近寄ってきていた妖夢に、リグルは身を仰け反らせた。
「あら妖夢、今日はもう終わり?」
「もう終わり、じゃありませんよ。これは一応、幽々子様の御稽古の一環なのですよ」
「まあ」
 彼女の言葉に、幽々子が嘆かわしげに頭を振るう。
「一応だなんて」
「だったらしっかり見てて下さい」
 もっともだった。
「……で、何のお話です?」
 溜め息を一つ吐き、
「盗み聞くつもりはありませんでしたが」
「大した話じゃないわ」
 おっとりと、幽々子は言う。
「ただ妖夢が、生き胴したがってたなぁ、って話をね。ほら、蛍……虫ってしぶといから」
「いざ尋常に」
「ちょっとー?!」
 がっしと掴まれた腕をぶんぶんと振りながら、あわせてリグルは首も振る。
「まだ死ぬ気はないわよ私?!」
「じゃあ、その気になったら言って下さいね」
「……多分本気で言ってるよね、この子……」
 渋々と手を離した妖夢に、彼女はげっそりする。
「そもそもさ」
 気を取り直して、リグルは微笑ましそうにこちらを見ていた幽々子にじっとりとした視線を向けた。
「あんたが剣なんて、持つ必要あるの?」
 む、と妖夢は視線をきつくして彼女を見るが、当の本人は取り合わない。
「剣どころか、指の一本も振らずに、死なせられるのに」
「だから、剣を振って、蝶を飛ばすのよ」
 事も無げに、幽々子は言葉を返した。
「……なるほど」
 得心いったとばかりに、リグルは深く頷く。
「持つべき者が、持った力ってわけね」
 その言葉に、幽々子は一瞬声を詰まらせた。ややあって、
「……光栄に思う、べきなのかしら」
 と続ける。
「最上級よ」
「……えっと?」
 話についていけなくなった妖夢が、おずおずと口をはさんだ。
 ああ、とリグルは彼女を横目で見、
「人間は、蝶を見ては喜んで、蛍を見ては嬉しがる。でもかつて、蝶は魂の運び手で、蛍は魂そのものだった」
 今じゃそんな風に思ってる人は碌にありゃしないけど、と彼女は意味ありげに目を細める。
 返す言葉もない。
「だからあんたのご主人は、死を知るが故に死を畏れ、蝶を繰り繰るお方だよ、って話」
「褒めても蝶しか出ないわよ」
「無暗に出すなっての」
 最早いつものようにそう言ってくる幽々子の頭を、思わず引っ叩きそうになるのを何とかこらえる。実際にやっていたら、きっとえらい目にあっただろうなぁと、未だ帯剣したままの妖夢を見、そしてもう一度空を見上げた。
「しかしまあ、蟲が弱くなるわけよね。幻想郷の人間ですら、蟲の霊威を忘れてるんだから」
 そして再び視線を落とす。
 その先の妖夢は唇を尖らせつつ、
「……その上、その頭が不良妖怪ですからね」
 と一矢報いた。
「なら、首を挿げ替えれば強くなるかも」
 幽々子がそう合いの手を入れ、
「さらばその役目、ぜひ私めに」
「物理的に?!」
 楼観剣を引き抜こうとする妖夢を、リグルは必死で押し止めた。引っ叩かなくても、結局ひどい目にはあうのだった。ひええ。



 こんな具合に、妖夢や幽々子の稽古事を見物することもしばしばあった。
 幽々子が奏でる琴の音など、特に喜んで聞き入っていた。
 しかし大半の時間、彼女は幽霊たちの間を飛び回っていた。
 多分、何かを探してる。
 あるいは、誰かを。



 そんな妖夢の疑問が氷解したのは、リグルが白玉楼を訪れて、四日目の夜のことだった。
 呆気にとられた面持ちで、リグルは眼前の光景を見入っている。
 今宵、白玉楼には雨が降っていた。
 しとしとと静かに降りしきる細雨を、幽霊たちの淡い燐光が白に染め上げる。
 白く煙った幽玄玄妙たる風景が、そこに広がっていた。
「いかがですか?」
 得意げな顔で言ってくる妖夢から、渡されるままに湯飲みを受け取る。
 リグルはしばし彼女を眺め、そして言った。
「雨」
「え?」
「降るんだ。雲の上なのに」
 妖夢は思わず身をこけさせる。
「どうしたの?」
「……いえ別に」
 彼女の奇妙な挙動に、リグルは首をかしげる。妖夢は憮然と首を振った。
「上には上が、あるということよ」
 二人のやり取りを楽しげに見ていた幽々子が、そう口をはさむ。
「……そういう問題なわけ?」
「ええ。それに雨が降らなければ、庭木も育たない。そうなれば、私は庭師の首を切らなければならない」
「……恐ろしいことを言わないでください」
 何時ぞやの件を棚に上げ、薄ら寒げに妖夢は首を竦めた。
 そんな彼女を、幽々子は意味ありげに見る。引き攣る彼女の顔。
 主従のやり取りに、リグルは気を取り直したようだった。
 少し笑って、そして。
 靴下を脱ぎ去る。
「リグルさん?」
 意外と律儀に脱いだ靴下を畳んでみせる彼女に、妖夢は訝しげに声をかけた。
 薄い笑顔をそちらに向けて、
「霧雨じゃん」
 濡れていこう。
 言って彼女は、玉砂利の上に躍り出た。
 何をするでもなく、両手の平を天に向け、軽く両腕を広げて天を見上げる。
「ちょっと、リグルさん! 風邪をひきますよ!」
「大丈夫、蛍だから」
「……そう言えば、何でも済むとか思ってません?」
「あっはっは」
 返ってきたのは、誤魔化し笑い。雨に濡れるを、やめるつもりはないらしい。
 困惑と、そして諦念に溜め息をつく。
「体に毒だわ。最近の霧雨は」
「……全くです」
 幽々子の感慨に、湯を沸かしてきます、と言って妖夢は部屋を出ていった。
 残るは庭先の蛍……虫と。
 部屋中の亡霊……姫。
 リグルは彼女を見ず。
 そして幽々子は何も言わず。
 ただ、部屋を後にした。

「湯加減はどうですかー?」
「んー、丁度いいよー」
 妖夢の呼びかけに、風呂場からくぐもった声が返ってくる。
 結局雨は、二刻の間降り続けた。
 何をするでもなく、曇天を見上げて雨を浴び続けるリグルを、しかし妖夢は諌めることができなかった。
 鬼気迫るでもなく、儚げでもなく、ただ……そう、自分が剣を振る時のような信念めいた気配が、声掛けることを躊躇わさせた。
 だから彼女は、雨が止むのをただ待って。
「やー、極楽極楽。……あ」
「どうしました」
 風呂釜に薪を放り込みつつ、妖夢が訊く。
「いや、天国って案外身近な所にあるのかなあって」
「……」
 苦笑交じりに言う彼女に何と返したものか。妖夢は何となく、白楼剣を鍔元を押し上げ、かちりと留めた。
「……それで、これはどういう次第です?」
「ん? 何のこと?」
「白を切るのは、無しです」
「……ま、そうか」
 お湯まで沸かしてもらっちゃったしねー、とリグルは呟く。
 ちゃぽんと、湯の鳴る音がした。伸びをして、背をもたれさせたのだろう。
「雨夜の月をね、探してた」
「雨夜の、月……?」
 口の中で呟き、そして妖夢は眉をひそめる。
「叶わないもの、探していたんですか」
「叶わないものじゃあ、ないよ」
 彼女の言葉に、リグルはやはり苦笑交じりに、言い聞かせるよう反駁した。
「少なくとも御前は、それを信じてた」
「御前」
 初めて出る名に、妖夢は何とはなしに声を上げる。
「そ。変わった方でね。考えが突飛で、発言が奇矯で、でも、とても聡明な方だった」
 彼女の表情は、無論見えない。
 しかし妖夢には、彼女が懐かしげに眼を細め語る様が、容易に感じ取れた。柔らかな、声だった。
「御前は、当時の止ん事無い方たちの中で、本当に破天荒な方だったよ。眉は抜かない、化粧はしない。蝶を追わずに毛虫を喜ぶ、そんな方。虫取りに外に出るのに男装して行くもんだから、若御前なんて呼ばれてたっけ」
「貴方の格好も、その影響で?」
「そうだね」
 臆面なく、寧ろ誇らしげに、彼女は同意した。
「私が地蛍だった頃、私は御前に命を助けられた。川が増水して、私は道端に打ち揚げられちゃってね。そこにお忍びで出ていた御前が通りかかった。何の躊躇いもなく、私を川に返してくださった……」
 対して、リグルの口調が、躊躇うように微かに遅くなる。
「あんた、地蛍って見たことある? 蛍の幼虫。蛍とは似ても似つかない、尺取り虫みたいな……まあ、気味の悪い虫だよ。でも御前には、私が何なのか分かっていたのよ。本質を知る方だった。毛虫が蝶になることを、知った方だった……」
 声音を僅かに落としつつも、彼女は滔々と語った。妖夢は合いの手もなく、ただ聴き入る。
「そんな御前を愛された方も、やっぱり風変わりなお人だった。虫愛ずる姫君の気を引こうと蛇のからくりを贈ったり、姿見たさに女装までして館に忍び込んだり」
 打って変わって声を張り、彼女は語りを続けた。
「虫が苦手で悲鳴を上げて、御前にも邪険にされてはいたけれど」
 くつくつと、リグルは思い出に笑う。
「御前にはあの方しか、右馬佐様しか、いなかったんだなぁ……」
 感じ入ったような息と共に、彼女はそう吐き出し。
 しばし、薪の爆ぜる音と、湯の波立つ音だけが響く。
「……それで?」
「それでって?」
「その後、お二人はどうなったんです」
「……もう分かるでしょ? お二人はやがて契りを結び、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし」
「なら」
 殊更明るい調子で言う彼女の言葉を聞かず、妖夢は続ける。
「どうして貴方は、雨夜の月を探すんですか」
 返ってきたのは、沈黙。
 ややあって、ざぱと一際大きく湯の波立つ音が聞こえる。
「リグルさん?」
「……のぼせたから、上がるね」
 くぐもった声がそう告げると、彼女の気配は湯船から消えた。

 脱衣所の扉をひっそりそっと開けてみれば、澄ました顔で既に妖夢が待ち構えていた。
「似合ってますね」
 軽く吐かれたリグルの溜め息には気付かぬふりをして、彼女は言う。
「ありがと。……用意がいいね、着流しなんて」
 慣れぬ格好に、端々にちらちらと視線をやりながら、彼女は一応礼を言った。
 にっこりと妖夢は微笑み、そのまま彼女を先導すべく歩き出す。
 最早何も言わず、リグルは彼女のあとに続いた。
 寝床まで案内した妖夢は、当然のように座し改まる。
 今度こそ隠す素振りもなく、リグルは大きく溜め息を吐いた。
「なんで、私の話なんか聞きたがるのよ」
「あんな半端なところで止められては、気にもなるというものです」
「まあ、そうか」
 口が滑ったなぁ、と彼女はぼやく様に独り言ちる。
「それに」
「うん?」
 思いがけず続いた言葉に、リグルは視線を彼女へと巡らせた。
「多分、それが理由だからです」
「理由?」
「幽々子様が貴方を白玉楼に招いた理由が、です」
「何でもお見通しってわけ? あのお姫様は。……やっぱり、似てないや」
 どっかと布団に座り込み、彼女は天井を見上げる。
「……でもまあ、そうなんだろうね、そういうことなんだろうね。理由は分かった、腑に落ちた」
 言って彼女は頷き、両脚を崩して、妖夢に向いた。
 大して長い話じゃないよ、と前置いて、
「お二人は、幸せにはなれなかった」
 先とは全く正反対の結論に、しかし妖夢は動じた風もない。
「御前は、生まれた時代が早すぎた。御前を受け入れることができたのは、あの時あの方しか、右馬佐様しかいなかった」
 彼女の容姿、彼女の用紙、彼女の思考、彼女の嗜好。その清濁併せ呑めたのは、彼一人しかいなかった。
「右馬佐様は、生まれた時代が悪すぎた。全く関係のない、身に覚えのない郎党の権力争いの果て、あの方は粗暴な田舎に遠流と処されてしまった」
 嗚呼、と。
「それからよ。御前はずっと、雨夜の月を探されていた。も一度共にあることを、御前はずっと、望み願って、祈ってた。でも」
 言って彼女は、力なく首を振る。
「訃報は、直ぐだったよ。そして御前もほどなくして病に倒れて、そして」
 目を伏せ、唇を噛む。
「あの方達は、何も一つも、悪くなんてなかった。ただ、運だけが悪かった。本当なら、誰よりも幸せになれるはずだったのに。比翼のお二人だったのに!」
 遥か彼方の追憶に、しかし彼女は眼の端に涙さえ浮かべて憤る。
 激して震える痩身に、妖夢にはかける言葉もない。
 しばし、沈黙の帳が落ちる。
 最初に立ち直ったのは、リグルの方だ。目元を拭い、改めて笑顔を浮かべる。
「まあ、そういうわけ。私は雨夜の月を探してる。あのお二人が幸せでありますように。……そしてできるなら事なら、もう一度、お会いできますように。お会いして、お礼が言えますように、って」
「そう、ですか。……すみません」
「いいわよ。私も煮詰まってたし。……多分、誰かに聞かせたかったんだ」
「……それが、私でも?」
「見る目は、あるつもり」
「知っています。……ならば、裏切らぬように致しましょう」
「ありがとう」
「こちらの台詞です」
 いつもと変わらぬ笑みを浮かべた彼女のその言葉に、ようやく妖夢にも笑顔が戻った。
「他言無用よ」
「勿論です。……おやすみなさい」
「うん」



 先日の一件以来、彼女との距離が縮まったのを、妖夢は感じていた。
 明るくはあったが一歩踏み込み辛かった言動は鳴りを潜め、むしろリグルの方から個人的な話題を振ってくることすらある。
 あれだけ腹を割った話を聞いたのだ、当然かもしれない。
 であるなら、自分の話をしないのは公平ではないとも思った。
 が、自分には特段の身の上話があるわけでもない。
 強いて挙げるなら一つ、思い当たることもないではないが、いずれにせよ話す切っ掛けがないのも確かだった。
 悶々としたものを抱えつつも、しかし日々行うことに変わりはない。
 観客もないままに、楼観剣を引き抜き、逆手に小太刀を構える。
 ひとたび剣を握れば、彼女の脳裏に雑念はない。
 愚直とも言えるほど一途に真っ直ぐに、一太刀に全霊を込めて剣を振るう。
 ぱちぱちぱちと、音がした。
 言葉通りの一意専心。縁側のリグルに拍手をもらうまで、彼女に気付きもしなかったのだから。
 はっと我に返り、恥ずかしげに笑い彼女を見……そしてやや不審げに眉根を寄せる。
「お見事」
 それを言葉にする前に、彼女はぴょんと庭に下りてきた。そのまま歩を進め、妖夢の側らに立つ。
 彼女は刀を納め、手渡された手拭いをありがたく受け取った。
「お粗末さま」
「そんな事。達人の琴を聞いている気分だったわ」
「……ありがとう」
 お世辞としても幽々子と並び評されてしまっては、それ以上に謙遜はできない。妖夢は面映ゆげに賞賛を受け止める。満足げに、彼女も笑った。
「……疲れてる?」
 汗を拭きながら、妖夢は先に感じた疑問を彼女に投げかける。
 先ほどの満足げな表情もどこへやら、どこを見るでもなく、ただ妖夢の方をぼうっと視線をやっていたリグルが、虚をつかれたような顔になった。
 そして彼女は眉根を下げ、目尻に小皺を寄せて、肩をすくめて笑ってみせる。
「そうね。……ちょっと張り切り過ぎたかも」
 白玉楼だけが、冥界ではない。西行寺家の館の外にも土地があり、当然そこにも幽霊たちがいる。
 日々幽霊たちは送られてくるし、人員飽和気味なのか、天界への待ち時間も長くなっていた。
 彼女一人で人探しをするには、いささか手に余る容量のはずだ。
「別に、何時まででもいてくれていいわよ」
「そんなこと、あんたが言っていいの?」
 呆れたようにリグルが言えば、今度は彼女が肩をすくめてみせる。
「私は幽々子様の言うとおりにするまでよ」
「唯々諾々じゃ駄目でしょ。事の本質を見極めなくちゃ」
「それはそうだけど。でも今回は別にいいかなって、思ってる」
 言って妖夢は、優しげに微笑んだ。
 思いの外の台詞に、リグルは目を見開き彼女を見上げる。
 恥ずかしいことを言った自覚があるのだろう。妖夢はまともに彼女を見れず、視線を泳がせている。
 そんな彼女の様子がリグルにも伝染したようで、同じく視線をさ迷わせ、
「そ、そういえばさ」
 誤魔化すように、思いついたように言って、彼女はぱんと両手を合わせる。そして妖夢の腰の二刀を見、側らの庭木に立て掛けられたもう一刀に視線をやった。
「そっちのが、いつも使ってる剣だよね。白楼剣だっけ。なんで素振りのときには使わないの? そっちの長い方は使ってるのに」
「……よく見てるわね」
 いつもの調子になったリグルに、妖夢も平常心を取り戻したようだ。意外そうに呟く。
「本質を」
「それはもういい」
 一刀両断してから白楼剣を取り上げ、腰に佩かせる。その柄をとんとんと指先で弾き、
「万が一、これで幽霊を斬ってしまうと危ないから」
「長い方で斬ったって危ないでしょうに」
「……楼観剣で幽霊を斬るのと、白楼剣で幽霊を斬るのとじゃ、意味合いが違うのよ」
 少し考えてから、妖夢はそう答えた。リグルは首を傾げたままだ。
 言ってしまっていいものかと逡巡するも、これを隠すのも公平ではないと、気を改める。
「白楼剣で幽霊を斬ると、天国へ行ってしまうから」
「卑猥な剣なのね」
「なんで?!」
 突拍子もないリグルの感想に、思わず彼女は突っ込んだ。
「顔、赤いよ」
「うるさい」
 彼女のからかいに、妖夢はうー、と唸るが、にやにや笑いをさせっぱなしなのも気に入らないので強引に咳払いをして気を取り直す。
「白楼剣は、迷いを断つ剣。転生前の幽霊を斬れば、閻魔の沙汰も関係無しに、天界送りにしてしまうから。閻魔の慈悲も、懺悔の機会も、文字通り斬り捨ててしまうことになる」
 ふぅん、と呟き、リグルは顎に人差し指を当て何やら考え込み、ややあってへらりと笑った。
「私も天国行けるかな?」
「……楼観剣で、幽霊にしてからになるけど」
「生き胴、する?」
「お断り」
「斬れないものはほとんどないんでしょ? 剣の問題? 腕の問題?」
「……気持ちの問題」
「じゃ、斬れないものは私だけだ」
「他にも色々あるけどね。それは概ね、腕の問題」
 へらへらと笑いながら際どいことを言ってくる彼女に、妖夢は思わず溜め息を吐く。
「霞に雲、水に空気。斬り難きを斬るのが極意。師匠が言ってた」
「師匠?」
「私の祖父よ。孫娘に後を任せて楽隠居。……一体どこで、何をしているのやら」
 顔を顰めて、妖夢はぼやいた。
「会いたいの?」
「……そりゃあね。こんなに長の別れになるとは思ってなかったから。……きちんと挨拶は、したかったな」
「探してあげようか」
「え?」
 眉のあたりに寂寥感を滲ませる彼女にそう、声をかける。
「できるの?!」
「蟲の知らせを、なめちゃあいけない。即日ってわけにはいかないけど、三日もあれば結果を出してみせるわよ」
 勢いよく顔を近づけてきた妖夢に若干引き、そして微かに羨望の眼差しを向けつつも、リグルはこくこくと頷いた。
 対する妖夢は、そんな彼女の様子が目に入っていないのか、胸の前で両手を組み目を輝かせる。
「でさ」
 気後れしつつ躊躇いつつ、おずおずと言ってくるリグルに、はっと彼女も我に返った。
「その代り、妖夢も一つ、私のお願い聞いてくれる?」
「私にできることなら」
 両手を解き、彼女へ向き直って頷く。
「大丈夫、難しいことじゃないよ。寧ろ、あんたにしかできないことだし」
 はてなと首を傾げる彼女にリグルは微笑みかけ、
「さて。なら、早速」
 一歩身を引き、そのままとんと飛び上がる。
「お二人のことはいいの?」
 嬉しいけど、と妖夢は今度は反対側に首を傾げた。
 それこそが、彼女の至上であるはずなのだが。
「友達のお願いだもの、張り切らなくっちゃ嘘ってものよ」
 屈託なく言うリグルに、彼女は目を丸くした。頬が紅潮したのが、自分でも分かる。
 笑顔をにんまりとしたものに変え、じゃね、と今度こそ彼女は飛び去って行った。
 我に返った妖夢が、ありがとう、とその背に声をかけたが、果たして届いたものか。あっという間に、その姿は小さく消えていった。

 彼女に届かないのは公平ではないかな、と思わないでもなかったが、それでもリグルは呟いた。

「もう、終わってるから」
 蟲の知らせを、なめちゃあいけない。





***

はふはふも君があたりにしたがはむ 長き心の限りなき身は

***





「虫のいる生活は、どうだった?」
 書に向かう従者の背に、その主人はそう声をかけた。
 びくりと背筋を強張らせ、そして彼女は幽々子に向き直る。
「……改めて言うほど、ここも蟲とは無縁ではないと、彼女は言っていましたが」
 ばつの悪そうに笑んで、妖夢は答える。
 流石の彼女も、今回ばかりは彼女の意図を理解していた。
 リグルが白玉楼を出て早三日、妖夢は自覚するほどに気もそぞろに上の空であった。
 今もそうだ。ただ書に向かっているだけ。
 蝋燭は半ばに達しているというのに、当の頁は一枚たりとも捲られてはいない。
 そんなにも妖忌に会える事が楽しみなのだろうか、などと答えの分かった自問をする。
「そうですね。悪くはありませんでした。……いえ」
 頭を振る。
「楽しかった、です」
 要は、寂しいのだ。
 彼女が側に、ないことが。
「……幽々子様は、どうして彼女を招いたのです?」
 言葉にするのは気恥ずかしくて、妖夢は誤魔化すように言う。
「理由なんてないわ。気紛れよ。ほんの気の迷い。ちょっとした好奇心」
 目を閉じ、彼女はゆるりと首を振った。
 幽霊のなんたるかを、見極めるのは難しい。
 それをあっさり見極めた、彼女とその失せ物に興味を持った。
「それで見事に、殺されてしまったのだけど」
「殺されたって……」
 物騒なことを言い出した彼女に物申しかけ……妖夢は言葉を失う。
「幽々子様……?」
 彼女の頬に、すうと一筋、光が流れた。
 持つべき者が、持った力ね。
 いつ、言われた言葉だろう。
 自分が何者か、分からなかった時に言われた言葉だ。死を招くことが、楽しくて仕方のなかった時に言われた言葉だ。
 誰に言われた言葉だっただろう。
 皮肉げな口調で、寂しげな、悲しげな、悔しげな眼差しで、彼女に言われた言葉だ。
 そして、感銘と共に、彼女に。
「思い知ったのよ。殺すのなんて簡単なの。私の力なんかより、よっぽど冴えたやり方があるわ」
 それは大した、殺し文句だった。
「妖夢」
「はい」
 視線を上げ、見詰めてくる自らの主の呼びかけに、その従者は畏まる。
「私は殺せる。貴方も殺せる。でも、私には斬れないの。だから」
 言葉を切り、瞳を閉じて、そして見開き、言う。
「貴方が願いを叶えなさい」
「……元より」
 彼女の命に、妖夢は即座にそう答えた。
 戸惑いは、あった。
 だが。
 言われるまでも、ないことだった。
 しばし幽々子は彼女の瞳を見詰め、そう、と相好を崩した。



 胸騒ぎがする。
 あるいはこれが、蟲の知らせなのだろうか。
 脳裏をよぎった不吉な予感に、妖夢はぶるっと頭を振った。
 先の会話の後、幽々子はふらりと何処かへ行ってしまった。
 おそらくは彼女の友人の元へだろうが、ついて行く気にはなれなかった。望んでいなかったようにも思う。
 幽々子の言動に違和感があったのは、確かだ。
 私は殺せる。貴方も殺せる。でも、私には斬れないの。
 つまり、自分にしかできないことをしろということなのだろう。
 しかし最後の一言は、彼女の雰囲気も相まって、覚悟を決めろと言われたように、妖夢には感じられた。
 だが、友の願いを叶えるのに、どうして覚悟が必要なのか。
 彼女が真に望んでいることは、自分には叶える事はできない。
 ならば。
 私にしか叶えられない彼女の願いとはなんなのか、と妖夢は思う。
 そもそも彼女の願いとは何なのか。
 それこそ聞かねば分からない。あるいは斬らねば分からない。
 前者につけ後者につけ――もっとも後者を取る判断はもう有り得なかったのだが――やはり彼女の戻りを待つのが肝要と結論付け、妖夢は瞳を開いた。
 その瞳に映るのは、雲一つない満天の夜空。浮かぶ月は、傷一つない満月。
 満月の側らに、一際強く輝く蒼い星が、一つ。
 それは急速に輝きを増し、ついには満月を飲み込む。
 思わず妖夢は腰を浮かせ、自分の目を疑うかのように目元を擦った。
 その一瞬に、光は更に大きさを増し……音を立て、白玉楼に降り立つ。
 リグル・ナイトバグ。
「ど、どうしたのその格好」
 彼女の風体に、妖夢は思わず声を上げる。
 しとどに濡れ、未だ全身から雫を滴らせるリグルの姿。先の霧雨など生温い、豪雨に身を晒したかのような有り様だった。
「見つけたよ」
「そんなことはいいから、上がって! ともかく早く着替えて……!」
「ねえ、妖夢」
「何?!」
 動こうとしない彼女に業を煮やし、自らも玉砂利に足を踏み出そうとして妖夢は……たじろぐ。
 寂寥、羨望、諦念。その全てを蕩かしたような笑顔を浮かべる、彼女がいた。
「私のお願い、聞いてくれる?」
 囁いて、リグルは再び舞い上がる。
 急速に小さくなっていくその姿を、躊躇わず妖夢は追った。
 瞬く間に白玉楼を翔け抜け、顕界への石段を落ちるように下り。
 雲を破る。
 途端、矢の如く降り注ぐ、雨の洗礼。
 ともすれば視界すら奪われるほどの驟雨に、しかし片隅の光は掻き消されない。
 尚も下へと二つの影は翔け降りて。
 節操無く咲き乱れる花畑の側らに、降り立った。
「あんたの祖父、魂魄妖忌は」
「聞きたくない」
 前振りもなく、唐突に言い出した彼女に、妖夢も身も蓋もなく言葉を遮る。
「どうして?」
「今の貴方からは、聞きたくない」
 形ばかりは不思議そうに問うてくるリグルに、彼女は断固として首を振った。
 そっか、と力無く頷き、俯く。
「一体何があったの。……どうしたっていうのよ」
「何もないよ。何もない。ただ探したら、見つかった。……見つかっちゃったって、話」
 訴えるように言う妖夢に、彼女は淡々と、言葉を紡いだ。
「十日で死ぬ身が二年間。あの方に出会って、あの方が御隠れになる日まで、私はずっと御側にあった」
 命の恩人の側らに、何ら報いることもできず、ただ側にあるだけの日々。
 何もできず、大切な人が床に臥すのを見続けた。
 理不尽に身を焦がし、不条理を恨み、だから幸せな終わりを求めた。
 けれど、と。彼女は絞り出すように言う。
「御前と右馬佐様、お二人を求めて九百余年。私は探して、探して、探し続けて。……見つからなかった」
 滲み出る感情は、嫉妬。
「あんたの御爺ちゃんは、三日足らずで見つかったのに」
 浅はかな、願いだった。返す言葉もない。
「一体、何が。……一体、何を」
 それでも何とか、妖夢は言葉を紡いだ。
 このまま彼女の語るがままにすれば、取り返しのつかないことになりそうな、そんな予感がしたから。
「簡単、だよ」
 うっそりとわらい、彼女は両手を広げる。
「私を、殺してくれる?」
 がつん、と。
 何か重いもので頭を殴りつけられてような、そんな衝撃を覚える。
「な、ぜ」
 ようようと、何とかそれだけ、絞り出す
「人は調べ尽くした。幽霊も照会し尽くした。……あの方たちは、いなかった。心安らかに逝けたはずもないのに。ならば再び巡るはずなのに。私のゆける場所に、あの方たちはいなかった」
 なら、と。
 哀惜に塗れた声が、止め処無く紡がれる。
「ならば、あの方たちが逝かれたのは、遥か空の彼方。私では届き得ぬ場所だから」
 だから貴方に私は言うのだ。
 渇望の瞳を、白楼剣に向ける。
「……善行を積んで逝けばいい。問答無用で地に落とす程に、彼岸の閻魔は無慈悲じゃないわ」
 熱くこもった息と共に、吐き出された言葉。
 それに、は、と。リグルは鼻を鳴らす。
「善行を積む? 私が? どうやって?」
 虚無的な笑顔を浮かべて彼女は言った。
「人を愛した妖が、不良妖怪が! どうして善きを行えるもんか!」
 襲うなど、喰らうなど。
 一体どうして、妖怪の善を行える?
「……嘘をつけば、いいじゃない」
「……え?」
「貴方に友達と言われて」
 月の照らさぬ天を見上げて、雨を厭わず目を見開いて、堪える様に。
「私は本当に、嬉しかったのに」
 その言葉に。
 リグルの顔が、引き歪む。
「だって!」
 それでも涙は零さずに、妖夢を睨め付け彼女は叫ぶ。
「だってもう、しょうがないんだもん。これしかもう、ないんだもん。もうどうしようも、ないんだもん……!」
 何もかもを押し殺して、彼女は言った。
 そしてリグルは、目元の雫を拭い、無理矢理に笑って両手を広げる。
「さあ、私を殺してくれる?」

 ここまで、なのか。
 絶望にも似た暗黒が、心の底に澱と積もる。
 これが、結末なのか? これが終着点なのか? 彼女と自分の袋小路なのか?
 自分を友と呼んだ彼女の言葉は、きっと本当だった。
 でも。
 彼女らを慕い焦がれる心も、やはり本当だったのだ。
 二つを得られぬ彼女の下した結論が、これだったのだろう。
 だが、と。
 彼女は、思う。
 こんな劇の終わりを、幽々子様は望まれたのか。
 私にできる事とは、こういうことなのか。覚悟とは、こういうことなのか。
 死を知るがゆえに死を畏れ、蝶を繰り繰ると評された彼女が、ここで彼女を斬ることを是とするというのか。
 否。
 断じて否だ。
 ならば何をすればいい?
 否。
 ならば、何を斬ればいい?
 一体何を斬れば、彼女の願いを叶えられる。
 師匠。
 もしもこの身が貴方なら、一体何を斬りますか。

 極意を成せ。
 彼女を斬るのは簡単だ。
 ならば斬り難きとは一体何だ。
 本質を見極めろ。
 毛虫が蝶となるのなら、蝶が彼女らというのなら、一体毛虫はどこに在る。

 雨夜を、見上げる。

 極意。
 本質。
 閃きは、一つ。
 ならば二つ、閃かせて見せましょう。

「……貴方の望みを叶えます」
 意を決し、彼女は言う。
 両目を見開き、しかし彼女は見ず。
 壁の如くそびえる暗天を眇め見据える。
 ……我が双脚は二百由旬。行きて帰るは刹那の所業。
「あ……」
 何かに気づいたリグルが声をあげるが、
「照覧あれ!」
 それを制して妖夢は叫び。
 跳ぶ。

 転瞬。
 一息に詰まる黒雲との距離に、妖夢は二振りの刃を改めて握り締める。
 若輩の身なれど、もう未熟者ではいられない。半人前では有り得ない。
 覚悟を決めろ、斬り難きを斬れ。
 雨天の堂々、彼女の懊悩。
 見事!
「相分か断って見せましょう!」
 見得切り叫ぶ。
「斬られて閉じよ、雲の通い路!」
 月を帰すな、月を返せ!
 彼女の思いをこの地に孵せ!
「殻破れ!」
 裂帛の気合と共に、左の楼観剣振るう。
 真一文字の剣閃が、暗雲に吸い込まれていく。傍目には、斬れたか否かは計り知れない。
 白楼剣を、握りしめた。
 死神の、閻魔の言葉が脳裏に響く。
 ……構わない。
 九百余年の彷徨の、一切合財無に帰す事を、見過ごす事が善行ならば。
「ならば私は黒でいい!」
 覆って隠す天空の、罪色の黒、それでいい。
 迷うことなく右の白楼剣を振りかざし、
「魂消よ、白楼!」
 一気呵成に振り抜いた。
 一寸のずれも無く、寸毫のぶれも無く、二の太刀が一の太刀筋をなぞり斬り裂く。
「どう、だ!」
 最早飛ぶことすら忘れ落ちるがままに、しかし眼前の光景を睥睨する。
 篠突く雨は止まず。
 そして。



 振り抜いた切っ先に、露が光る。



 手前勝手な駄々ではあった。拒絶されても、文句など言えるはずもない。
 それでももう、これしか思い至らなかった。最早これしか取り得なかった。
 しかし最後の希望は、空の彼方。
 ならばもう、手は無いのだろう。地の底に、堕ちて逝く他無いのだろう。
 広げた両手をだらりと下げる。
「……所詮、雨夜の月など有り得ぬ事なのですね」
 だから彼女はもう一度、彼に見える事も無く、一人倒れて臥したのだろう。
 溜め息を、吐く。
「……疲れちゃったな」
 疲れた、とても。
 九百余年を生きてきて、犯した罪は数あれど、唯一の善行が友への裏切りとあっては、最早救いようがない。
 地獄の底にて蟄居しようか。
 聞けばそこは灼熱という。夏の虫には、案外極楽かもしれない。
「その地で、私は」
 未だに望みを持ってしまう自分に、自嘲の笑みを禁じえない。
「蜘蛛糸垂れるのを、待つとします」
 この身にできることなど、もう何一つないのだ。
 老女のような細い息を吐き、力無く自らの影に視線を落とす。
 影。
 影?
 貼り付いた前髪を掻き揚げ、弾かれたように空を仰ぐ。
 天に光の雨が降る。
 光が雨を、さながら天から垂れる糸のように白く染め上げる。
 月が、出ていた。
「雨夜の、月、だ……」
 篠突く雨はそのままに、真一文字に切り開かれた雲の瞼から、月の瞳が覗いている。
 半ば呆然と、半ば愕然と、リグルは上の空を上の空に見ていた。
 月は昇っているのに、底に落ち沈んだ感情は上ってこない。
 待ち望んだ光景であったはずなのに、浮かんで消えるのは一人臥したあの方の姿。
 心が置いてけぼりになってしまったかのようだった。
 後ろを向いた、下を向いた思考が、ぐるぐると胸中に渦を巻く。
 貴方もこの月を見たのでしょうか。見る事が、できたのでしょうか。だからこそ、貴方は一人、逝かれたのでしょうか。
 ならば、御身は何処に在らせられる? 極楽? あるいは浄土に?
 ならばやはり、この身が御前に立つことは、最早有り得ぬ事なのでしょうか?
「御前……!」

 かさりと、草鳴る音がした。
 はっと彼女は下を見る。
 自ら放つ光は消えて、月の光に照らされて、足元で咲く花に今やっと気付いた。
 彼女の光は強過ぎた。他の光を霞ますほどに。
 きっといつも、月は輝いていたのに。
 彼女の思いは硬過ぎた。他を思い至らぬほどに。
 本質など、見えてはいなかったのだ。
 彼は彼女に何を贈った。最初で最後の贈り物。
 それ故彼女はなんと詠った。
 何ゆえ在れぬと彼女は詠んだ。
 かさりかさりと音が鳴る。渦巻くようにだんだんと、音は彼女に近づいていく。
 そしてそれは、篠突く雨をものともせずに、ゆるりと、彼女の前に立ちあがった。
「ああ……!」
 感極まった様子で口元を押さえ、濡れた草葉に跪く。
 雨を厭わず、月の光を照り返し、ゆるゆると立つ白い影。
「御逢いしとうございました、御逢いしとうございました……!」
 不遜といわれても仕方はあるまいが、それでもリグルはその感情を押さえつけることができなかった。それを抱きしめ、噛み締めるように呟く。
「蛇に成られたのですね。蛇に、成れたのですね……!」
 そう。彼女の眼前に立つ影は、真白の見事な蛇だった。
 ならば。
「右馬佐様! 右馬佐様は何処に在らせられます?」
 彼女の身を抱いたまま、リグルは首を巡らせる。
 縁があれば、極楽で。貴方が蛇の姿では、一緒にいることは難しいから。
 かつて彼女が詠んだ詩。
 あの時は彼が蛇だった。この時今は、彼女が蛇だ。
 ならばあの時もこの時も、ここが極楽だったのだ。人ならぬ身での人の世が、二人の浄土のはずなのだ。
 地に這いながらお側におりましょう。この身のように長く変わらぬ心を持っていますから。
 あの方が共に、ないはずがないのだ。
 思った矢先。
 ぼたりと何かが降ってきた。
 ぎょっとリグルがそれを見やれば、それは見る間に背を伸ばし、翡翠色した蛇となる。
「右馬佐様……」
 泣き笑いを浮かべて、彼女は呟く。
 にやりと彼が、笑った気がした。
 優に十間は離れた木の上から、ここまで跳ね飛んできたのだろう。
「相変わらず、悪ふざけのお好きなことで……」
 蛇を贈ったその日から、何も変りない様子だった。
 嬉しいやら可笑しいやらで、表情が定まらない。
 そんな彼女の前に、二人が並ぶ。
 言いたいことが、伝えたいことがたくさんあったはずなのに、声が出ない。
 言葉を探して、しかし口を結ぶ彼女に、彼女も惑う様に身を揺らす。
 そんな彼女の背に、彼が優しく身を寄せた。
 それに後を押されるように、彼女は彼女の顔を覗き込む。

『死なずの蛍』

 声が、聞こえた。彼女の声が。

『貴方がいてくれたから、私は今、ここにいる』

 面影が、かんばせが、微笑みが、重なる。指先に止まった彼女に、いつかかけられた笑顔が。

『貴方のような不可思議が、いつでも側にいてくれたから、私は雨夜の月を信じる事ができた』

 助けた。そして、助けられた。ずっとずっと、伝えたかった。

『だから、ありがとう』

 リグルの顔が、くしゃりと歪む。
 幾星霜、吐き出すこと叶わなかった思いがついに堰を切った。
 最早誰にも憚る事無く、彼女はぼろぼろと滂沱に涙を零す。
「わ、私は……私は……!」
 それ以上の言葉が出てこない。
 そんな彼女に、彼女はあやす様に言うのだ。

『さあ、いきましょう。これからも側に、いてくれるのでしょう?』

「はい……はい……!」
 必死に、リグルは頷いた。
 お側におります。その為に私は、生きてきたのですから。
 幾百年の彷徨の結実を、白々と輝く雨夜の月と、
「……」
 十間先の木に引っ掛かった友の笑みだけが、見下ろしていた。





***

契りあらばよき極楽にゆきあはむ まつはれにくし虫のすがたは 福地の園に

***





 射命丸文は名の知れた妖怪である。
 幾多の妖怪が住まう妖怪の山、その中でも勢力を二分する河童と天狗の一党の後者に属し、その中でも一目置かれる存在だ。
 幻想郷のいかなる者の追随を許さない、まさに風のごとき素早さと、天狗特有の強力な神通力を兼ね備えた、名実恥じない大妖怪。
「んぅ……」 
 そんな彼女の朝は遅い。大妖怪なので寝起きも悪い。加えて肝も据わっている。河童謹製の目覚まし時計の爆音も、彼女にとっては小鳥の囀りと同じだ。
 しかし、
「きゃああああ?!」
 目覚めの口付けが数十匹の毒蛇からのものとあれば、さしもの文も悲鳴を上げるというものだった。
 ほとんど無意識に飛び上がり、屋根を破って……
「ひょわああああ?!」
 そしてもう一度悲鳴を上げることとなる。彼女の庵を下に見下ろす、巨大な蛇に見射られていたが故に。
「ってリグルさん?! 何事ですかこの有り様は?!」
 そう。蛇の頭に胡坐をかいて座るのは、呼ばれた通りにナイトバグ。その右腕には真白な蛇を巻きつかせている。そんな彼女のすぐ後ろには、妖夢と翡翠色の蛇が並んで座っていた。
「手っ取り早く蟲の地位を向上するために、戦力外注してみたんだけど」
 どう? とリグルは首を傾げる。
「ど、どうって……蟲と蛇って全然関係ないじゃないですか」
 少し落ち着きを取り戻した文がそう突っ込むが、
「そんなことないよー。虫編だし。それにリグルの名のもとに、のたくる蛇が集うのは、よく考えてみれば当たり前のことだし? まあ語尾が腹減ったなのはちょっとどうかと思うけど、話してみると案外気さくでいい連中だよ?」
 ねえ? と彼女は白蛇に同意を求める。その通りとばかりに頷く彼女。
「いやその……ていうか妖夢さん! 今回は貴方が黒幕ですか?!」
 ようやく後ろの彼女に気づいた文が、非難がましく訴える。リグル自身が画策したと思わない辺り、蟲の地位も知れるというものだった。
 もっとも、斬ればわかるが信条の妖夢が参謀など、勘違い人事も甚だしい。
「いえ、私は単なるお目付け役です。調子に乗ったリグルが色々やり過ぎないように」
「人の寝床に毒蛇けしかけるのは十分やり過ぎです!」
「いや、文さん相手なら、この程度挨拶代りかと思いまして」
「いらん信頼を寄せないでください! そもそも一体何の用ですか?!」
「挨拶と、お披露目と、あと侵略」
「侵略?!」
 リグルからの返事に、身を仰け反らせて文は慄いた。
 よく見れば彼女たちの後ろには、大小様々の蛇はもとより元祖蟲たちも数多に跋扈している。
「いや、あんたたちに対してじゃないよ。聞けば山の天辺に、最近蛇の神様が越してきたって話じゃない。それを傘下に加えれば、蟲の地位も盤石になるというもの! ってわけで」
「……ああ」
 合点がいったとばかりに文は頷く。
 要は山への立ち入りに、天狗に話をつけておこうということか。筋の通った話ではある。それなら尚のこと、毒蛇は控えてほしかったが。
 そんな事を考えている彼女の前で、リグルはたしたしと大蛇の頭に手をやる。
「挨拶も済ませたし、それじゃあ行こうかヨルムンガル子ちゃん」
「何その名前?!」
「お弁当は現地調達! もも肉むね肉食べ放題!」
「その過程は省いてぇぇぇぇ?! 椛、もみじー! 第一種警戒態勢をー?!」
「わはははー!」
 ぶんぶか腕を突き上げるリグルに、行け行けとばかりにしるしると舌を鳴らす白蛇。妖夢と翡翠色の蛇は、顔を見合わせて溜め息を吐く。
 だが、止めるつもりはないらしい。お披露目はまだ、済んでいない。
「お気の毒ですけど、ひとつお相手いただきましょうか」
 勝手なことを呟いて、笑みを浮かべて、お目付け役は、目を閉じた。

 二の巻にあるべし。
 蛇蝎はうねる うねるは水面
 水面は跳ねる 跳ねるは蛙
 蛙は青い 青いは胡瓜
 胡瓜は長い 長いはご縁
 ご縁は五円 五円は神社
 神社は守矢 守矢は八坂
 八坂の神様神奈子様
しょっく。えす
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2009/11/21 11:47:07
更新日時:
2009/11/21 11:47:07
評価:
19/19
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137
Rate:
1.62
1. 10 バーボン ■2009/11/23 20:42:12
雨雲を斬って月を見せるシーン、妖夢がこれ以上無く格好良かったです。
地の文、会話ともに言い回しも洒落が効いていて、読んでいて飽きません。
最後の最後が少し蛇足な気もしましたが、それを補って余りある面白さでした。
2. 8 神鋼 ■2009/12/02 23:46:32
台無しだ! だからこそ面白い。
3. 4 藤木寸流 ■2010/01/04 18:31:03
 いろいろと過去設定などの味付けが濃すぎて、どうもリグルという気がしませんでした。
 格好良すぎる、というか弱いところもあったのですがそれ以上に格好いいところばかり記されていたせいで、これは本当にリグルなのかと首を傾げてみたり。
 妖夢や幽々子は違和感なかったのですけど。
4. 10 ルル ■2010/01/05 16:23:00
堤中納言物語、蟲めづる姫君ですか。
そういえばリグルと繋ぐ発想はありそうでなかったなぁ。めでたしめでたしで終わるのもグッド。
妖夢カッコいいよ妖夢
5. 9 静かな部屋 ■2010/01/06 11:09:57
とりあえず、早く続きを書くのが貴方に積める善行です。

冒頭部分から引き込まれて読んでしまいました。
細かいネタが散在していて飽きずに読ませる、疲れない文章を書く、情景が浮かぶような描写力。

文にとってはものっそい相性の悪い相手ですねー、続きが楽しみです
6. 5 パレット ■2010/01/10 04:54:50
 元ネタの方も眺めながら読ませていただきましたが、いや、すごく良かったです。
 虫愛づる姫君とリグルの過去がうまく調和していたのはもちろんのこと、姫君と右馬佐の話の二の巻としてこのような背景を創り上げ……そのへんオリジナル設定なのに、わかりやすく、退屈させない程度に説明されていて。
 元ネタにある「本質を見る」を妖夢の成長に絡めた燃え話、決め所もきっちりあって。

>『貴方のような不可思議が、いつでも側にいてくれたから、私は雨夜の月を信じる事ができた』

 この一言がすごく好きです。
 本当に素晴らしかったです。「二の巻にあるべし。」の落とし方も良いし。
 頑張って突っ込みどころを探すならば、強いて言うなら、幽々子の心情や背景に関して少し読者の想像に任せすぎかなと思わないことも無いですが、でもやっぱり個人的にはこのくらいが好みだったりもして。
7. 2 白錨 ■2010/01/10 08:53:40
リグルと白玉楼のコラボは珍しかったです。が、ストーリーの流れが把握しにくかった作品でした。でも、その理由が明確に明示できない……。申し訳ないです。
8. 9 椒良徳 ■2010/01/11 17:40:49
感動しました。素晴らしい作品です。
このような作品を書いて下さった貴方に心より感謝いたします。
9. 8 ホイセケヌ ■2010/01/13 15:52:57
、ウ、ホヤ彫ユi、、タ矣、ヌ。「ヤェ・ヘ・ソ、、カ、テ、ネユi、゚、゙、キ、ソ。」
、ス、ヲ、ケ、、ネ。「ラヨミ、ヌミ。・ヘ・ソ、ャスY極「ヤレ、キ、ニ、、、ソ、ウ、ネ、ヒ壥クカ、、、ニ贅、キ、ッ、ハ、熙゙、キ、ソ。」カ、ホ紙、ヒ、「、、ル、キ。」

ホトユツ、ャ・キ・・ラ・、ヌ。「、ハ、ェ、ォ、トユZ升、ポx、モキス、ャ慰ソ爨キ、、、ソ、癸「ユヨアヤ彫ヒネ、テ、ニ、、、ュ、ヒ、ッ、ォ、テ、ソ。」、キ、ォ、キ。「、ス、ホホトユツ、ャラユ゚、ホホカ、ヌ、「、、ウ、ネ、ヒ壥クカ、、、ソ瓶、ヒ、マ。「、、、ト、ホ馮、ヒ、ォヤ彫ヒ、ホ、皃゙z、、ヌ、、、ソ。」・ッ・鬣、・゙・テ・ッ・ケ、ャス、ナ、ッ、ヒ、ト、、ニ。「、オ、鬢ヒ・キ・・ラ・、ヒ、ハ、遙「殪j、ハ、筅ホ、、ス、ョツ荀ネ、キ、ニ。「、タ、、タ、、ネ舮、ッ、ハ、テ、ニ、、、ッ。」・ッ・鬣、・゙・テ・ッ・ケ、ホム廻、ホチ「、チユ、ホ隍、、ャ、ォ、テ、ウ、隍ッ、ニコテ、ュ、ヌ、ケ。」
10. 7 詩所 ■2010/01/13 21:54:02
 ラスボスは神奈子ですね、わかります。
 個人的にはゆゆ様が何処まで知っていたのかが気になります。
 妖夢の決断に至るまで予測してリグルの在住を許していたなら、預言者レベル。
11. 9 deso ■2010/01/14 01:29:18
外連味のある文章で、読んでて楽しいです。
かっこよくもあり、ほろりと泣ける良いお話でした。
それにしても、虫めづる姫君、ノリノリだなあw
12. 7 零四季 ■2010/01/14 21:10:39
会話のテンポが良くて、好きです。こういう会話の書き方には憧れるものがありますね。たまにテンポがぐらっとずれるようなところがあった気がしましたが、内容も良かったので楽しめました。
リグルの株が上がります
13. 10 774 ■2010/01/15 00:18:26
雲を斬るシーンで震えました。
基本的にシリアスな話ながらも何か楽しそうな台詞回しや展開の起伏、潔くはっちゃけたエピローグなど、全面的にツボにハマりました。
14. 7 2号 ■2010/01/15 08:54:54
ええい、烏なんだから蛇ぐらいたべればいいじゃないか!
ともあれ、しんみり美しい話でした。
良い話読ませていただきありがとうございます。
15. 7 やぶH ■2010/01/15 11:06:18
虫愛ずる姫君かぁ……高校の頃やったような。
内容は暗すぎない、じんとくる話でした。でも最後の文ちゃんの目覚めはちょっと可哀想な気もw 
(そして後書きの替え歌で、誰だか確信! 私が覚えたのは、でーぶでーぶ百貫でーぶから始まるやつでした)
16. 5 八重結界 ■2010/01/15 14:00:48
 淡々と流れる文章が心地よく染みいってきました。妖夢とリグルという組み合わせも珍しいものながら、大蛇に仲良く座っている姿が違和感なく思えてくるのだから不思議です。
17. 4 時計屋 ■2010/01/15 22:09:27
 まず、同一シーンでの視点の不一致が気になりました。
 なにせ女性が三人出ていますので、台詞が誰のものか、「彼女」はいったい誰のことを指しているのか、誰の行動か、誰の心象か等々、少々分かりづらく、何度か文章を読み返す必要がありました。
 特徴的な文体で書かれているだけに、それになおさら拍車がかかっているように思えます。
 『虫愛ずる姫君』を題材にしたお話は興味深かったのですが、上記の点もあって取っ付きにくさを感じました。
 終盤の熱い展開は決して嫌いじゃなかっただけに、残念です。
18. 7 木村圭 ■2010/01/15 23:00:14
神奈子は強い 強いはバトル バトルは次のお話で!
妖怪として生まれた者は妖怪として生きること以外は認められない、ってのも難儀な話だよなー。
まあ人間が妖怪染みた所業に走るのは全会一致で罪とされているんだから、逆もまた然りなのかもしれない。
19. 9 ■2010/01/15 23:43:09
タイトルの時点で脱帽
リグルに対する深い愛情が感じられました

あとがきの歌で鳥肌が立った
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